説明

メソ構造化ゼオライト材料並びに該材料の製造方法及び使用方法

本発明の一態様は、メソ構造化ゼオライトに関する。また、本発明は、メソ構造化ゼオライトの製造方法並びにこれらのものを有機化合物用の分解触媒及び重合体用の分解触媒として使用する方法に関するものでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2004年4月23日に出願された米国特許出願第10/830714号(発明の名称「Mesostructured Zeolitic Materials, and Methods of Making and Using the Same」)に基づく優先権を主張する。
米国政府による資金供与
本発明は、米国陸軍研究所によって与えられる認可番号DAAD19−02−D0002の下での支援によってなされた。従って、米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
本発明は、メソ構造に組織化された結晶性無機材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ゼオライト及び関連する結晶性モレキュラーシーブは、それらの規則的な微孔構造、強い酸性度及びイオン交換能力のため、幅広く使用されている(van Bekkum,H.,Flanigen,E.M.,Jacobs,P.A.,Jansen,J.C(著者),ゼオライト科学及び実践の序論,第2版,表面科学及び触媒における研究,第137巻(2001);Corma,A.,Chem.Rev.,1997,97,2373−2419;Davis,M.E.,Nature,2002,417,813−821)。しかしながら、それらの用途は、典型的には1nmよりも狭いそれらの小さな気孔の大きさによって制限される。2〜10nmの調節可能なメソ細孔を有するMCM−41の発見によって、ゼオライトに関連する制限のうちいくつかが克服される。Corma,A.,Chem.Rev.,1997,97,2373−2419;Kresge,C.T.,外,Nature,1992,259,710−712;Kosslick,H.,外,Appl.Catal.A:Gen.,1999,184,49−60;Linssen,T.,Cassiers,K.,Cool,P.,Vansant,E.F.,Adv.Coll.Interf.Sci.,2003,103,121−147。しかしながら、ゼオライトとは異なり、MCM−41型の材料は結晶質ではなく、しかも所定の触媒用途に重要な強い酸性度、高い熱水安定性及び高いイオン交換能力を有しない。Corma,A.,Chem.Rev.,1997,97,2373−2419。
【0003】
過去10年にわたって、MCM−41の構造的特徴を理解し及び改良することに多大な努力が払われてきた。Al−MCM−41の特性は、(i)表面のシリル化、(ii)酸性度を増大させるための細孔壁上へのAlグラフト、(iii)アルミノシリケート基の縮合を促進させるための、合成中における塩の付加、(iv)MCM−41の壁部をゼオライト様構造に部分的に変化させるための、ゼオライト合成において典型的に使用される有機物質の使用、(v)ゼオライト/MCM−41複合材の製造、(vi)壁部を厚くするための、トリブロック共重合体及び双性アミン界面活性剤による陽イオン性界面活性剤の置換、及び(vii)規則性メソ細孔構造へのゼオライトナノ結晶の集成によって改善され得ることが分かった。Liu,Y.,Pinnavaia,T.J.,J.Mater.Chem.,2002,12,3179−3190。後者のアプローチにおいて、Liu外は、基礎単位としてゼオライトYナノクラスターを使用して第1蒸気安定六方アルミノシリケート(MSU−Sと命名された)を製造することができた。また、ペンタシルゼオライトナノクラスターを使用してMSU−S(MFI)及びMSU−S(BEA)も製造した。
【0004】
米国特許第5849258号(Lujano外)は、結晶性微孔質モレキュラーシーブの核(ゼオライトの核)を凝集させてメソ細孔寸法の細孔容量の限られた寸法分布を与え、多結晶質材料を形成させている。図1Aは、例えば、Lujano及びPinnavaiaによって説明されている先行技術の非晶質メソ細孔材料100の概略図である。米国特許第5849258号(Lujano外)及びLiu,Y.,Pinnavaia,T.J.,J.Mater.Chem.,2002,12,3179−3190。図1Aに示すように、ゼオライト核105a、105b、105cは、制御された条件下で界面活性剤のミセル周辺で凝集して固形物を形成した。その後、これらの凝集した核105a、105b、105cを水で洗浄し、乾燥させ、そして界面活性剤を抽出して所望のメソ細孔寸法の細孔容量110を与え、非晶質メソ細孔ゼオライト核材料100を形成させる。ゼオライト核、例えば、105a、105b、105cのそれぞれは、ナノ寸法の結晶である。これらのものが凝集するときに、材料100は、該核材料が結晶状態の広範囲規則格子構造を欠いているため、多結晶質である(すなわち、これらの凝集した核は、完全には結晶質ではない又は正確には結晶質でない)。
【0005】
Al−MCM−41材料の酸性特性をかなりの程度改善させるために、いくつかの戦略がとられてきた。Liu,Y.,Pinnavaia,T.J.,J.Master.Chem.,2002,12,3179−3190;van Donk,S.,外,Catal.Rev.,2003,45,297−319;Kloetstra,K.R.,外,Chem.Commun.,1997,23,2281−2282;Corma,A.,Nature,1998,396,353−356;Karlsson,A.,外,Microporous Mesoporous Mater,1999,27,181−192;Jacobsen,C.J.H.,外,J.Am.Chem.Soc.,2000,122,7116−7117;Huang L.,外,J.Phys.Chem.B.,2000,104,2817−2823;On,D.J.外,Angew.Chem.Int.Ed.,2001,17,3248−3251;Liu,Y.,外,Angew.Chem.Int.Ed.,2001,7,1255−1258。しかしながら、これらの材料には広範囲の結晶性が欠如しているため、それらの酸性度は、ゼオライトが示すものほど強くない。Corma,A.,Chem.Rev.,1997,97,2373−2419。例えば、慣用のAl−MCM−41よりもさらに活性なナノ結晶性アルミノシリケートPNA及びAl−MSU−S(MFI)のような半結晶性メソ細孔材料は、クメン分解に対してH−ZSM−5よりも有意に低い活性を示した。この反応についての触媒活性は、通常、該触媒のブレンステッド酸の強度に相関している。Corma,A.,Chem.Rev.,1997,97,2373−2419;Liu,Y.,Pinnavaia,T.J.,J.Mater.Chem.,2002,12,3179−3190;Kloetstra,K.R.,外,Chem.Commun.,1997,23,2281−2282;Jacobsen,C.J.H.,外,J.Am.Chem.Soc.,2000,122,7116−7117。
【0006】
メソ構造化ゼオライト材料を製造する先の試みは効果的ではなく、別個のゼオライト相と非晶質メソ細孔相とを生じさせた。Karlsson,A,外,Microporous Mesoporous Mater,1999,27,181−192;Huang L.,外,J.Phys.Chem.B.,2000,104,2817−2823。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに、数名の著者は、該メソ構造の高い曲率に関わる表面張力のため、ゼオライト構造を有するMCM−41のような薄壁メソ細孔材料を合成することが困難であることを指摘した。Liu,Y.,Pinnavaia,T.J.,J.Mater.Chem.,2002,12,3179−3190。従って、規則メソ多孔性を有するゼオライト単結晶並びにそれらの製造方法及び使用方法に対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
一態様では、本発明は、メソ構造で組織化された結晶性無機材料に関する。さらなる具体例では、該無機材料は、金属酸化物である。さらなる具体例では、該無機材料はゼオライトである。さらなる具体例では、該無機材料は、ゼオタイプ(Zeotype)である。さらなる具体例では、該無機材料は、フォージャサイト、モルデナイト又はZSM−5(MFI)構造を有する。さらなる具体例では、該メソ構造は、MCM−41の六方細孔配置を有する。さらなる具体例では、該メソ構造は、MCM−48の立方細孔配置を有する。さらなる具体例では、該メソ構造は、MCM−50の層状細孔配置を有する。さらなる具体例では、該メソ構造は、フォーム配置で組織化された細孔を有する。さらなる具体例では、該メソ構造は、ランダムに配置された細孔である。
【0009】
さらなる具体例では、該メソ構造は、一次元ナノ構造である。さらなる具体例では、該ナノ構造は、ナノチューブ、ナノロッド又はナノワイヤーである。
【0010】
さらなる具体例では、該メソ構造は、二次元ナノ構造である。さらなる具体例では、該ナノ構造は、ナノスラブ、ナノレイヤー又はナノディスクである。
【0011】
さらなる具体例では、該結晶性無機材料は、Y[MCM−41]、MOR[MCM−41]又はZSM−5[MCM−41]である。
【0012】
さらなる具体例では、メソ構造内の平均細孔直径は、約2〜約5nmである。さらなる具体例では、該メソ構造内の平均細孔直径は、約2〜約3nmである。さらなる具体例では、該メソ構造内の壁厚は、約1〜約5nmである。さらなる具体例では、該メソ構造内の壁厚は、約1〜約3nmである。
【0013】
別の態様では、本発明は、次の工程:(a)ゼオライトを酸又は塩基及び随意に界面活性剤を含む媒体に添加し、(b)前記界面活性剤がまだ存在しない場合には工程(a)からの媒体に界面活性剤を添加し、(c)随意に工程(b)からの媒体に膨張剤を添加し、(d)随意に工程(b)又は(c)からの媒体を熱水反応させ、及び(e)得られた材料を洗浄し、そして乾燥させることを含む、メソ構造化ゼオライトの製造方法に関する。
【0014】
さらなる具体例では、得られた材料を高温でさらに焼成させる。さらなる具体例では、この焼成工程を空気又は酸素中で実行する。さらなる具体例では、該焼成工程を不活性ガス中で実行する。さらなる具体例では、該不活性ガスはN2である。さらなる具体例では、最大の高温は、約500〜600℃である。さらなる具体例では、最大の高温は、約550℃である。
【0015】
さらなる具体例では、ゼオライトは、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)及びZSM−5(MFI)よりなる群から選択される。さらなる具体例では、工程(a)の媒体は、塩基を含む。さらなる具体例では、該塩基は、アルカリ水酸化物、アルカリ土類水酸化物、NH4OH又は水酸化テトラアルキルアンモニウムである。さらなる具体例では、該塩基は、NaOH、NH4OH又は水酸化テトラメチルアンモニウムである。さらなる具体例では、工程(a)の媒体は酸を含む。さらなる具体例では、該酸はHFである。さらなる具体例では、界面活性剤は、ハロゲン化アルキルアンモニウムである。さらなる具体例では、該界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)界面活性剤である。さらなる具体例では、工程(b)又は(c)からの媒体のを熱水処理は、約100〜約200℃で行う。さらなる具体例では、工程(b)又は(c)からの媒体の熱水処理は、約120〜180℃で行う。さらなる具体例では、工程(b)又は(c)からの媒体の熱水処理は、約140〜約160℃で行う。さらなる具体例では、工程(b)又は(c)からの媒体を熱水処理することは、約150℃で行う。さらなる具体例では、工程(b)又は(c)からの媒体の熱水処理は一晩行う。さらなる具体例では、工程(b)又は(c)からの媒体の熱水処理は、約20時間にわたって行う。
【0016】
別の態様では、本発明は、上記方法のうち任意のものによって製造されたメソ構造化ゼオライトに関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、次の工程:(a)酸性の形態にあるゼオライトを、塩基及び随意に界面活性剤を含む媒体に添加し、ここで、該ゼオライトは部分的に溶解して懸濁液を生じ、(b)前記界面活性剤がまだ存在していない場合には工程(a)からの媒体に界面活性剤を添加し、(c)随意に工程(b)からの媒体に膨張剤を添加し、(d)随意に工程(b)又は(c)からの媒体を熱水処理し、(e)得られた材料を洗浄し、そして乾燥させ、及び(f)該得られた材料から該界面活性剤を高温での焼成又は溶媒抽出のいずれかによって除去することを含む、メソ構造化ゼオライトの製造方法に関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、上記方法によって製造されたメソ構造化ゼオライトであって、該メソ構造化ゼオライトがナノチューブ、ナノロッド又はナノワイヤーの形態にあるものに関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、上記方法によって製造されたメソ構造化ゼオライトであって、該メソ構造化ゼオライトがナノスラブ、ナノレイヤー又はナノディスクの形態にあるものに関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、正に荷電した化学種をメソ構造化ゼオライトに固定させる方法であって、該メソ構造化ゼオライトと該正に荷電した化学種とを媒体中で接触させることを含むものに関する。さらなる具体例では、該正に荷電した種は、ある種の元素の陽イオン、第四アミン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオン及びそれらの混合物よりなる群から選択される。
【0021】
別の態様では、本発明は、化学種をメソ構造化ゼオライトに固定させる方法であって、酸性形態のメソ構造化ゼオライトと塩基性化学種とを媒体中で接触させることを含むものに関する。さらなる具体例では、該塩基性化学種は、無機塩基又は有機塩基である。さらなる具体例では、該塩基性化学種は、水酸化物、アミン、ピリジン、ホスフィン及びそれらの混合物よりなる群から選択される。
【0022】
別の態様では、本発明は、メソ構造化ゼオライトであってその上に固定される化学種を含むものと均一系触媒とを媒体中で接触させることを含む、メソ構造化ゼオライト上に均一系触媒を固定させる方法において、該固定される化学種が該均一系触媒に対する配位子として作用することができる該方法に関する。
【0023】
別の態様では、本発明は、メソ構造化ゼオライト上に不均一系触媒を担持させる方法であって、該メソ構造化ゼオライトと該不均一系触媒とを、物理的混合法、乾式含浸法、湿式含浸法、初期湿式含浸法、イオン交換法及び蒸発法よりなる群から選択される方法によって接触させることを含むものに関する。さらなる具体例では、該不均一系触媒は、金属又はその混合物を含む。さらなる具体例では、該不均一系触媒は、金属酸化物又はその混合物を含む。さらなる具体例では、該不均一系触媒は、ナノ粒子、クラスター又はコロイドを含む。
【0024】
別の態様では、本発明は、有機化合物を接触分解させる方法であって、該有機化合物とメソ構造化ゼオライトとを接触させることを含むものに関する。さらなる具体例では、該有機化合物は炭化水素である。さらなる具体例では、該有機化合物は不飽和炭化水素である。さらなる具体例では、該有機化合物は芳香族炭化水素である。さらなる具体例では、該有機化合物はアルキル化ベンゼンである。さらなる具体例では、該有機化合物は1,3,5−トリイソプロピルベンゼンである。さらなる具体例では、該有機化合物は原油である。さらなる具体例では、該有機化合物は軽油である。さらなる具体例では、該有機化合物は減圧軽油である。さらなる具体例では、該メソ構造化ゼオライトは、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)又はZSM−5(MFI)のゼオライト構造を有する。さらなる具体例では、該メソ構造化ゼオライトは、MCM−41の六方細孔配置を有する。さらなる具体例では、該メソ構造化ゼオライトは、Y[MCM−41]、MOR[MCM−41]又はZSM−5[MCM−41]である。
【0025】
別の態様では、本発明は、原油の精製方法であって、該原油とメソ構造化ゼオライトとを接触させることを含むものに関する。さらなる具体例では、該原油と該メソ構造化ゼオライトとの接触は、流動接触分解ユニット内で行う。さらなる具体例では、ガソリンの生成量が、メソ構造化ゼオライトの非存在下で生成されるガソリンの量に対して増加する。さらなる具体例では、形質オレフィンの生成量は、該メソ構造化ゼオライトの非存在下で生成される形質オレフィンの量に対して増加する。
【0026】
別の具体例では、本発明は、重合体を接触分解させる方法であって、該重合体とメソ構造化ゼオライトとを接触させることを含むものに関する。さらなる具体例では、該重合体は炭化水素重合体である。さらなる具体例では、該重合体は、ポリアルキレン、ポリアルキニル又はポリスチレンである。さらなる具体例では、該重合体はポリエチレン(PE)である。さらなる具体例では、該メソ構造化ゼオライトは、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)又はZSM−5(MFI)のゼオライト構造を有する。さらなる具体例では、該メソ構造化ゼオライトは、MCM−41の六方細孔配置を有する。さらなる具体例では、該メソ構造化ゼオライトは、Y[MCM−41]、MOR[MCM−41]又はZSM−5[MCM−41]である。
【0027】
別の態様では、本発明は、完全結晶性メソ構造を有する無機材料に関する。この完全結晶性メソ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。一具体例では、該材料は所定の細孔容量を有する。例えば、該複数のメソ細孔は、該材料の細孔容量を有し、しかも該複数のメソ細孔の細孔容量は制御される。該細孔容量は、約0.05cc/g〜約2cc/gであることができ、別の具体例では、該細孔容量は、約0.5cc/g〜約1cc/gである。該完全結晶性無機材料は、例えば、単一結晶質(mono crystalline)、多結晶質又は単結晶質であることができる。
【0028】
該複数のメソ細孔のそれぞれの領域は、制御された断面積の範囲を有する。該制御された断面積は、例えば、制御された分布範囲を有する。随意に、該制御された断面積は所定の直径を有し、そして該直径は、約2nm〜約60nmを範囲とする。一具体例では、それぞれのメソ細孔直径は、制御された分布範囲を有し、例えば、それぞれのメソ細孔直径は、1nmの分布範囲内にある。或いは、該制御された断面積は、約2nm〜約5nm又は約2nm〜約3nmの範囲の直径を有する。
【0029】
該無機材料は、例えば、該複数のメソ細孔を画定する前に、1D細孔構造、2D細孔構造又は3D細孔構造を有することができる。該材料は、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、ZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0030】
該完全結晶性メソ構造は、制御された細孔配置を有することができる。該メソ構造細孔配置は、組織化された細孔配置、MCM−41の六方細孔配置、MCM−48の立方細孔配置、MCM−50の層状細孔配置、SBA−15の六方細孔配置又はフォーム様配置であることができる。或いは、該メソ構造は、ランダムに配置された細孔を有することができる。該完全結晶性メソ構造は、例えば、Y[MCM−41]、MOR[MCM−41]、ZSM−5[MCM−41]、Y[MCM−48]、MOR[MCM−48]、ZSM−5[MCM−48]、Y[MCM−50]、MOR[MCM−50]又はZSM−5[MCM−50]であることができる。隣接するメソ細孔間の壁厚は、約1nmから約5nm、又は約1nm〜3nmと測定できる。
【0031】
荷電した化学種、例えば、正に荷電した化学種は、該完全結晶性メソ構造に固定できる。該荷電した化学種は、元素の陽イオン、第四アミン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン若しくはホスホニウムイオン又はそれらの任意の組合せであることができる。或いは、所定の化学種は、該完全結晶性メソ構造に固定及び/又は共有結合できる。これらの化学種は、塩基性の化学種、無機塩基、有機塩基、水酸化物、アミン、ピリジン若しくはホスフィン又はそれらの任意の組合せであることができる。別の具体例では、均一系触媒が無機材料に付着し、しかも化学種が該均一系触媒に結合する。不均一系触媒は、該完全結晶性メソ構造によって担持されることができる。該不均一系触媒は、金属、金属酸化物、ナノ粒子、クラスター若しくはコロイド又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0032】
別の態様では、本発明は、無機材料であって、複数のメソ細孔を画定する前の材料の外部表面の外形と実質的に同一の外部表面の外形を有する無機材料に関する。別の態様では、本発明は、所定の材料であって、複数のメソ細孔を画定する前の材料の化学組成骨格と実質的に同一の化学組成骨格を有する材料に関する。例えば、該骨格は、該メソ細孔が画定された後でも化学量論が変化しない。
【0033】
別の態様では、本発明は、所定の材料であって、複数のメソ細孔を画定する前の材料の結合性と実質的に同一の結合性を有する材料に関する。別の態様では、本発明は、所定の材料であって、複数のメソ細孔を画定する前の材料の結晶内拡散と比較して改善された結晶内拡散を有する材料に関する。
【0034】
別の態様では、本発明は、次の工程:(a)完全結晶性無機材料を準備し、(b)該完全結晶性無機材料を第1の時間及び温度条件セット下でpH制御媒体にさらし、(c)該完全結晶性無機材料を第2の時間及び温度条件セット下で界面活性剤にさらし、(d)該無機材料を、該第1及び第2の時間及び温度条件セットを制御することによって処理して該完全結晶性無機材料内に制御された断面積を有する複数のメソ細孔を形成させる工程を含む、無機材料の製造方法に関する。随意に、該方法は、該第1及び第2の時間及び温度条件セットを、該複数のメソ細孔が該完全結晶性無機材料において六方[MCM−41]細孔配置、立方[MCM−48]細孔配置、層状[MCM−50]細孔配置、六方[SBA−15]細孔配置、フォーム様細孔配置、ランダム細孔配置、組織化細孔配置又は制御された細孔配置で配置されるように調節する工程(e)を含む。
【0035】
一具体例では、工程(b)は、該pH制御媒体を選択して、該完全結晶性無機材料における該完全結晶性無機材料の細孔容量を制御し、該複数のメソ細孔のそれぞれの直径を制御し、又は複数のメソ細孔のそれぞれの断面積を制御することを含む。別の具体例では、工程(c)は、該界面活性剤の量を選択して、該完全結晶性無機材料における該完全結晶性無機材料の細孔容量を制御し、該複数のメソ細孔のそれぞれの直径を制御し、又は複数のメソ細孔のそれぞれの断面積を制御することを含む。別の具体例では、該方法は、該pH制御媒体に膨張剤及び/又はトリブロック共重合体を添加する工程をさらに含む。
【0036】
別の具体例では、工程(d)で製造された材料を洗浄し、そして乾燥させる。別法として、又はそれに加えて、界面活性剤を、工程(a)〜(d)を実施した後に、工程(d)で製造された材料から、例えば、該界面活性剤を抽出し及び/又は該界面活性剤を焼成させることによって除去する。
【0037】
別の具体例では、第1の又は第2の温度条件としては熱水条件を挙げることができる。該第1の又は第2の温度条件としては室温条件を挙げることができ、及び/又はこれは、約100〜200℃の範囲にあることができる。該第1の又は第2の時間条件は、約1時間〜約2週間の範囲にあることができる。
【0038】
該完全結晶性無機材料は、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、ZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せであることができる。pH制御媒体は、少なくとも約8〜約12、少なくとも約10〜約14、少なくとも約2〜約6、又は少なくとも約−2〜約2のpH制御設定値を含むことができる。
【0039】
界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤若しくは中性界面活性剤又はそれらの任意の組合せであることができる。例えば、該界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)であることができる。
【0040】
また、無機材料の製造方法は、工程(d)で製造された完全結晶性無機材料に荷電化学種を導入することを含むこともできる。該荷電化学種は、正に荷電したものであることができる。さらに、該荷電化学種は、元素の陽イオン、第四アミン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン若しくはホスホニウムイオン又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0041】
また、該無機材料の製造方法は、工程(d)で製造された完全結晶性無機材料に所定の化学種を導入することを含むこともできる。該化学種は、塩基性化学種、無機塩基、有機塩基、水酸化物、アミン、ピリジン若しくはホスフィン又はそれらの任意の組合せであることができる。均一系触媒を該化学種が該均一系触媒に結合するように添加することができる。不均一系触媒と、工程(d)で製造された完全結晶性無機材料とを接触させることができる。該不均一系触媒は、金属、金属酸化物、ナノ粒子、クラスター若しくはコロイド又は任意の組合せであることができる。
【0042】
別の態様では、本発明は、(a)完全結晶性無機材料を準備し、(b)該完全結晶性無機材料を第1の時間及び温度条件セット下でpH制御媒体にさらし、(c)該完全結晶性無機材料を第2の時間及び温度条件セット下で界面活性剤にさらし、(d)該無機材料を、該第1及び第2の時間及び温度条件セットを制御することによって処理して該完全結晶性無機材料内に制御された断面積を有する複数のメソ細孔を形成させる方法によって作られた無機材料に関する。
【0043】
別の態様では、本発明は、完全結晶性メソ構造を有する無機材料を含む触媒の存在下で大きな炭化水素材料を反応させる方法によって製造された炭化水素材料に関する。該完全結晶性ナノ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。この方法によって製造された炭化水素材料は、1,3−ジイソプロピルベンゼン、ガソリン、プロピレン、ブテン、コークス、全乾性ガス若しくは液化石油ガス又はそれらの組合せであることができる。
【0044】
別の態様では、本発明は、有機化合物を接触分解させる方法に関する。該方法は、該有機化合物と、完全結晶性メソ構造を有する無機材料とを接触させる工程を含む。該完全結晶性メソ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。該有機化合物は、炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、アルキル化ベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、原油、軽油又は減圧軽油の少なくとも一つであることができる。随意に、該断面積は、分解される有機化合物の直径よりも大きい直径を有する。
【0045】
別の態様では、本発明は、原油の処理方法に関する。該方法は、原油と、完全結晶性メソ構造を有する無機材料とを接触させることを含む。該完全結晶性メソ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。該原油を、該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応させる。該原油は、流動接触分解ユニット内で無機材料の存在下に反応できる。一具体例では、生じたガソリン留分は、完全結晶性無機材料を使用して生成されるガソリンの量に対して増加する。別の具体例では、軽質オレフィン生成量は、完全結晶性無機材料を使用して生成された軽質オレフィンの量に対して増加する。
【0046】
別の態様では、本発明は、重合体の処理加工方法に関する。該方法は、重合体と、完全結晶性メソ構造を有する無機材料とを接触させることを含む。該完全結晶性メソ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。該重合体は、該無機材料の存在下で熱処理できる。該重合体は、炭化水素重合体、ポリアルキレン、ポリアルキニル、ポリスチレン若しくはポリエチレン(PE)又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0047】
別の態様では、本発明は、原油と完全結晶性メソ構造を有する無機材料とを接触させる方法によって作られたベンゼン化合物に関する。該完全結晶性メソ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。該原油は、該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応される。該ベンゼン化合物としては、例えば、トルエン及びキシレンのようなベンゼン誘導体を挙げることができる。一具体例では、完全結晶性メソ構造を有する無機材料で生成されるベンゼン化合物の量は、従来型の改質されていない完全結晶性ゼオライトで生成される量よりも少ない。
【0048】
別の態様では、本発明は、原油と完全結晶性メソ構造を有する無機材料とを接触させる方法によって作られたにガソリン化合物関する。該完全結晶性メソ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。該原油は、該無機材料の存在下で制御された温度及び圧力の条件下で反応される。一具体例では、完全結晶性メソ構造を有する無機材料で生成されるガソリンの量は、従来型の改質されていない完全結晶性ゼオライトで生成される量よりも多い。
【0049】
別の態様では、本発明は、汚染水と完全結晶性メソ構造を有する無機材料とを接触させることを含む水処理の方法に関する。該完全結晶性メソ構造は、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する。該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は、実質的に同一である。水からの汚染物は、無機材料で除去される。一具体例では、除去される汚染物は染料である。
【0050】
別の態様では、本発明は、複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料に関する。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。一具体例では、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、約3nm〜約20nmである。一具体例では、該無機材料は、半結晶又は多結晶である。該ナノ構造は、一次元、二次元又は三次元であることができる。該ナノ構造は、ナノチューブ、ナノリング、ナノロッド、ナノワイヤー、ナノスラブ、ナノレイヤー又はナノディスクであることができる。一具体例では、ある要素はあるナノ構造を有し、そして別の要素は別のナノ構造を有し、例えば、ナノロッドはナノチューブに隣接する。該無機材料としては、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)及びZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せを挙げることができる。該ナノ構造は、例えば、Y[ZNR]、MOR[ZNR]又はZSM−5[ZNR]であることができる。
【0051】
別の態様では、本発明は、次の工程:(a)結晶性無機材料を準備し、(b)該結晶性無機材料をpH制御媒体にさらして結晶性無機材料を部分的に溶解させ、それにより非晶質無機材料を生じさせ、(c)該非晶質無機材料のpHを調整し、(d)該非晶質材料を界面活性剤にさらし、そして(e)工程(b)〜(d)の時間及び温度条件を制御することによって該無機材料を処理してナノ構造を形成させることを含む無機材料の製造方法に関する。随意に、該方法は、該時間及び温度条件を制御することによって該無機材料を処理して、まず[MCM−50]メソ構造を形成させ、次いでナノ構造を形成させることをさらに含む。
【0052】
該方法の一具体例では、該pH制御媒体は、少なくとも約10〜約14以下、少なくとも約2〜約6以下、又は少なくとも約−2〜約2以下であるpH制御設定点を有する。別の具体例では、該非晶質無機材料は、約8〜約12を範囲とするpHを有する。該温度条件は、約100〜約200℃を範囲とすることができる。該時間は、約12時間〜約2週間を範囲とすることができる。該温度条件は、熱水温度条件であることができる。
【0053】
一具体例では、該方法に従って使用される界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤又は中性界面活性剤又はそれらの任意の組合せである。例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)が界面活性剤として使用できる。完全結晶性無機材料は、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)及びZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0054】
別の態様では、本発明は、(a)結晶性無機材料を準備し、(b)該結晶性無機材料をpH制御媒体にさらして結晶性無機材料を部分的に溶解させ、それによって非晶質無機材料を生じさせ、(c)該非晶質無機材料のpHを調整し、(d)該非晶質材料を界面活性剤にさらし、そして(e)工程(b)〜(d)の時間及び温度条件を制御することによって該無機材料を処理してナノ構造を形成させる方法によって作られた無機材料に関する。
【0055】
別の態様では、本発明は、有機化合物と、複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させる方法によって作られた分解有機化合物に関する。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。一具体例では、該炭化水素材料は、1,3−ジイソプロピルベンゼン、ガソリン、プロピレン、ブテン、コークス、全乾性ガス若しくは液化石油ガス又はそれらの組合せである。
【0056】
別の態様では、本発明は、有機化合物を接触分解させる方法に関する。該方法は、該有機化合物と複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させることを含む。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。一具体例では、該有機化合物は、炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、アルキル化ベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、原油、軽油又は減圧軽油のうちの少なくとも一つである。
【0057】
別の態様では、本発明は、原油を処理する方法に関する。該方法は、原油と複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させることを含む。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。該原油は、該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応する。随意に、該原油は、該無機材料の存在下で流動接触分解ユニット内において反応する。一具体例では、生じるガソリン留分は、完全結晶性無機材料を使用して生成されるガソリンの量に対して増加する。別の具体例では、軽質オレフィンの生成量は、完全結晶性無機材料を使用して生成される軽質オレフィンの量に対して増加する。
【0058】
別の態様では、本発明は、重合体の処理加工方法に関する。該方法は、重合体と複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させることを含む。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。該重合体は、該無機材料の存在下で熱処理できる。該重合体は、炭化水素重合体、ポリアルキレン、ポリアルキニル、ポリスチレン若しくはポリエチレン(PE)又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0059】
別の態様では、本発明は、原油と複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させる方法によって作られたベンゼン化合物に関する。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。該原油は、該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応する。ベンゼン化合物としては、例えば、トルエン及びキシレンのようなベンゼン誘導体を挙げることができる。一具体例では、結晶性ナノ構造材料で生成されるベンゼン化合物の量は、従来型の改質されていない完全結晶性ゼオライトで生成される量よりも少ない。
【0060】
別の態様では、本発明は、原油と複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させる方法によって作られたガソリン化合物に関する。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。該原油は、該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応する。一具体例では、結晶性ナノ構造を有する無機材料で生成されるガソリンの量は、従来型の改質されていない完全結晶性ゼオライトで生成される量よりも多い。
【0061】
別の態様では、本発明は、汚染水と複数の要素を有する結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させることを含む水処理の方法に関する。それぞれの要素は、複数の細孔を画定し、そして隣接する要素は、それらの間に空隙を画定する。該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法は、100nm以下である。水からの汚染物は、無機材料で除去される。一具体例では、除去される汚染物は染料である。
【0062】
本発明のこれらの具体例、他の具体例並びにそれらの特徴及び特性は、次の説明、図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
図面の簡単な説明
図1Aは、先行技術の多結晶メソ多孔性材料の概略図である。
図1Bは、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトの略図である。
図1Cは、ナノ構造形状がナノロッドを含む本発明のメソ構造化ゼオライトのTEM画像を示す図である。
図1Dは、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]のX線回折パターンを示す図である。規則性メソ構造MCM−41(低角度でのXRDピークによって明らかにされる)と、非改質ゼオライト完全結晶性構造H−Yの両方が存在する。
図2は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−41]のX線回折パターンを示す図である。規則性メソ構造MCM−41(低角度でのXRDピークによって明らかにされる)と、非改質ゼオライト完全結晶性構造H−MORの両方が存在する。
図3は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−ZSM−5[MCM−41]のX線回折パターンを示す図である。規則性メソ構造MCM−41(低角度でのXRDピークによって明らかにされる)及び非改質ゼオライト結晶構造H−ZSM−5の両方が存在する。
図4は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)及び非改質ゼオライトYについてのFTIRキャラクタリゼーションのピークを示す図である。
図5は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](上段上線)、H−MOR[MCM−41](中段上線)、H−ZSM−5[MCM−41](下段上線)のFTIRスペクトル及びそれらの非改質完全結晶性ゼオライト変種H−Y(上段下線)、H−MOR(中段下線)、H−ZSM−5(下段下線)のFTIRスペクトルを示す図である。それぞれの完全結晶性メソ構造化ゼオライトとその相当する非改質ゼオライトとの間の一致が観察されるが、これは、完全結晶性メソ構造化ゼオライトには完全ゼオライト系の結合性が存在していることを示している。
図6は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)及びその非改質ゼオライト変種H−Yの77KでのN2の物理吸着等温線を示す図である。完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細孔径分布(BJH方法)を差し込み図に含めている。メソ構造化試料におけるよく発達した狭い細孔寸法のメソ多孔性の存在は、P/P0〜0.3での急激な取り込みによって明白である。
図7は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−41](メソ−H−MORという)及びその非改質ゼオライト変種H−MORの77KでのN2の物理吸着等温線を示している。完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細孔径分布(BJH方法)を差し込み図に含めている。メソ構造化試料におけるよく発達した狭い細孔寸法のメソ多孔性の存在は、P/P0〜0.3での急激な取り込みによって明白である。
図8は、完全結晶性メソ構造H−ZSM−5[MCM−41](メソ−H−ZSM−5という)及びその非改質ゼオライト変種H−ZSM−5の77KでのN2の物理吸着等温線を示している。完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細孔径分布(BJH方法)を差し込み図に含めている。メソ構造化試料におけるよく発達した狭い細孔寸法のメソ多孔性の存在は、P/P0〜0.3での急激な取り込みによって明白である。
図9は、次のものの細孔容量(黒い柱):完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](左)、H−MOR[MCM−41](中央)及びH−ZSM−5[MCM−41](右)並びにそれらの非改質ゼオライト変種(明るい方の柱):H−Y(左)、H−MOR(中央)及びH−ZSM−5(右)を示す。
図10は、異なる焦点でのa)H−Y[MCM−41]完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細部、及びb)H−Y[MCM−41]完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細部の透過電子顕微鏡(TEM)によって得られた画像を示している。この電子回折像を差し込み図として含めている。
図11は、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトのTEM画像を示している。
図12は、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトのTEM画像を示している。
図13は、非改質の従来型ゼオライトH−Yによる1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解の略図を示している。
図14は、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトによる1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解の略図を示している。
図15は、転化率対時間として示された、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−HYという)、その非改質ゼオライト変種H−Y及び従来型のAl−MCM−41についての1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示している。120℃で1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより飽和された50mL/分のHe流れを50mgの触媒に対して200℃で流した。
図16は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)による1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの、ジイソプロピルベンゼン及びクメンへの接触分解を示している。該H−Y[MCM−41]の結果を、非改質完全結晶性ゼオライトH−Yの商用試料からの基準化された結果と比較している。完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]による接触分解は、高い選択性及びベンゼン生成量の減少を生じさせる。
図17は、従来型の非メソ分解性ゼオライトAl−MCM−41と比較した、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y、H−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)熱水安定性を示している。
図18は、転化率対時間として示された、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−48](メソ−HMORという)及びその非改質ゼオライト変種H−MORについての1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示している。120℃での1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより飽和された50mL/分のHe流れを50mgのそれぞれの触媒H−MOR[MCM−48]及びH−MORに対して200℃で流した。
図19は、転化率対時間として示された、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−ZSM−5[MCM−41](メソ−H−ZSM−5という)及びその非改質ゼオライト変種H−ZSM−5についての1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示している。120℃での1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより飽和された50mL/分のHe流れを、200℃で50mgのそれぞれの触媒H−ZSM−5[MCM−41]及びH−ZSM−5に対して流した。
図20Aは、左側のY軸に、該ナノ構造H−MOR[ZNR]及び非改質完全結晶性ゼオライトH−MORについての1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの転化率対時間を示している。また、時間の関数としてのH−MORによって生成されるベンゼン/H−MOR[ZNR]によって生成されるベンゼンの比も右側のY軸上に示している。120℃での1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより飽和された50mL/分のヘリウム流れを、200℃で50mgのそれぞれの触媒H−MOR[ZNR]及びH−MORに対して導入した。
図20Bは、従来型の完全結晶性ゼオライトH−Y(Si/Al=15)及びその完全結晶性メソ構造化変種H−Y[MCM−41]のマイクロ活性試験(MAT)の結果を示している。
図20Cは、従来型の完全結晶性ゼオライトH−Y(Si/Al=15)及びその完全結晶性メソ構造化変種H−Y[MCM−41]のマイクロ活性試験(MAT)によって得られたLPG留分の組成を示している。
図21は、触媒の混合物についてのポリエチレン(PE)の損失重量対温度のパーセンテージを標識されたPEに対する重量比で表している:(A):触媒なし、(B):H−ZSM−5:PE1:2、(C):H−ZSM−5[MCM−41]:PE1:2、(D):H−ZSM−5:PE1:1、(E)H−ZSM−5:PE2:1、(F):H−ZSM−5[MCM−41]:PE1:1及び(G)H−ZSM−5[MCM−41]:PE2:1。
図22は、a)H−Y[MCM−41]、b)NH4−Y[MCM−41]、c)NH2(CH22NMe3Cl、d)NH2(CH22NMe3−Y[MCM−41]、d)Rh(PPh33Cl及びe)Rh(PPh33NH2(CH22NMe3−Y[MCM−41]のFTIRスペクトルを示している。
【0064】
発明の詳細な説明
定義
便宜上、本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例及び特許請求の範囲において使用した所定の用語をここに集める。これらの定義は、これ以後の開示を考慮して解釈すべきであり、かつ、当業者として理解すべきである。
【0065】
不定冠詞「a」及び「an」は、該冠詞の文法上の対象の1以上(すなわち、少なくとも1)をいうために使用する。例えば、「要素(an element)」は、1の要素又は2以上の要素を意味する。
【0066】
用語「触媒」とは、技術的に認識されているものであり、そして化学反応速度に著しく影響を与える任意の物質であって、それ自体は消費されず又は有意に変化しないものをいう。
【0067】
用語「含む」は、包括的で制限のない意味で使用され、追加の要素を含むことができることを意味する。
【0068】
用語「分解」とは、技術的に認識されているものであり、そして有機化合物をさらに小分子に分解させる任意の方法をいう。
【0069】
用語「を含め」は、「を含め・・・これらに限定されない」を意味する。「を含め」及び「を含め・・・これらに限定されない」は、区別なく使用する。
【0070】
「MCM−41」は、Mobil複合物を表し、そして六方細孔配置を有する非晶質メソ多孔性シリカであって、その平均孔径が約2〜10nmの範囲にあるものをいう。
【0071】
「MCM−48」は、Mobil複合物を表し、そして立方細孔配置を有する非晶質メソ多孔性シリカであって、その平均孔径が約2〜10nmの範囲にあるものをいう。
【0072】
「MCM−50」は、Mobil複合物を表し、そして層状細孔配置を有する非晶質メソ多孔性シリカであって、その平均孔径が約2〜10nmの範囲にあるものをいう。
【0073】
用語「メソ多孔体」とは、技術的に認識されているものであり、そして約2〜約50ナノメートルのいずれかを範囲とする中間寸法の細孔を含む多孔性材料をいう。
【0074】
用語「メソ構造」とは、技術的に認識されているものであり、そして規則性及び非規則性メソ構造化材料並びにナノ構造化材料、すなわち、それらの寸法の少なくとも一つがナノメートル寸法の範囲にある材料、例えば、ナノチューブ、ナノリング、ナノロッド、ナノワイヤー、ナノスラブなどを含め、該材料の構造をメゾスコピック又はナノメートルスケールで制御するメソ細孔を含む構造をいう。
【0075】
ここで使用するときに、用語「メソ構造化ゼオライト」には、結晶メソ多孔性材料、例えば、ゼオライト、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェートなどの全てが含まれる。そのメソ構造は、規則性メソ多孔体(例えばMCM−41、MCM−48又はSBA−15のような)、非規則性メソ多孔体(メソ気泡フォーム(MCF)のような)又はメソスケール形態(ナノロッド及びナノチューブ)の形であるかもしれない。表記ゼオライト[メソ構造]は、異なるタイプのメソ構造化ゼオライトを示すために使用する。
【0076】
「MOR」は、その斜方晶構造内にほぼ2モルのナトリウム及びカリウムと、ほぼ1モルのカルシウムとを含むゼオライトであるモルデナイトを表す。また、この用語には、「H−MOR」として表すこともできるMORの酸性形態も含まれる。
【0077】
「MSU−S(MFI)」は、約2〜15nmの細孔範囲を有するナノ寸法ゼオライトで作られたメソ多孔性材料を表す。該(MFI)はその構造を指す。
【0078】
「MSU−S(BEA)」は、約1〜15nmの細孔範囲を有するナノ寸法ゼオライトで作られたメソ多孔性材料を表す。該(BEA)はその構造を指す。
【0079】
「PNA」は、MCM−41の半結晶化形態を表す。
【0080】
「SBA−15」は、六方晶の態様で配置される30nmまでの細孔直径と、6nmまでの厚さの孔壁とを有するメソ多孔性(アルミノ)シリカを表す。
【0081】
用語「界面活性剤」とは、技術的に認識されているものであり、そして表面の性質を改変させ、多くの場合水の表面張力を減少させる任意の表面活性剤又は物質をいう。臭化セチルトリメチルアンモニウムが界面活性剤の限定されない例である。
【0082】
「Y」は、その八面結晶構造内に2モルのナトリウムと1モルのカルシウムを含むゼオライトであるフォージャサイトを表す。また、この用語には、「H−Y」としても表すことができるYの酸性形態が含まれる。
【0083】
用語「ゼオライト」は、国際ゼオライト学会規約(第1.3条)と同様に、天然ゼオライト及び合成ゼオライトの両方並びにモレキュラーシーブ並びに関連する特性及び/又は構造を有する他の微孔性材料及びメソ多孔性材料を包含するように定義される。また、用語「ゼオライト」とは、ナトリウム及びカルシウム又は一般的ではないが、バリウム、ベリリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム及びストロンチウムのような陽イオンを含む構造化アルミノシリケート無機物からなる群又はこれらからなる群の任意の一員であって、比(Al+Si):O=ほぼ1:2、イオン交換が可能な開4面体骨格構造及び可逆的脱水を可能にする緩く保持された水によって特徴付けられるものをもいう。また、用語「ゼオライト」には、アルミノホスフェート(例えば、MeAPO、SAPO、ElAPO、MeAPSO及びElAPSO)、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノシリケートなどの場合と同様にSi4+又はAl3+を他の元素で置き換えることによって製造される「ゼオライト関連材料」又は「ゼオタイプ」も含まれる。
【0084】
「ZSM−5」又は「ZSM−5(MFI)」は、Mobil合成ゼオライト−5を表す。また、この用語には、「H−ZSM−5」として表すこともできるZSM−5の酸性形態も含まれる。該(MFI)は、その構造に関連する。
【0085】
当該技術分野において通常の知識を有する有機化学者によって利用されている略語の総覧は、「Journal of Organic Chemistry」の各巻の創刊号に出ている。このリストは、典型的には、「Standard List of Abbreviations」という題名がつけられた表に与えられている。
【0086】
本発明の目的上、化学元素は、元素の周期律表(CASバージョン, Handbook of Chemistry and Physics, 第67版,1986−87,内表紙)に従って特定される。
【0087】
上記のゼオライト構造、サブユニット及び他の組成物の意図される均等物としては、さもなくばそれに相当し、かつ、その同一の一般的特性(例えば、生体適合性)を有するこのような材料であって、1以上の単純な置換基変化があるが、それがその意図される目的を達成するためのこのような分子の有効性に悪影響を及ぼさないものが挙げられる。一般に、本発明の化合物は、例えば、以下に記載するような一般的な反応スキームで例示される方法によって又はその改変法によって、容易に入手できる出発材料、試薬及び慣用の合成手順を使用して製造できる。これらの反応において、それら自体公知であるが、ここには挙げていない様々なものを使用することも可能である。
【0088】
完全結晶性メソ構造化ゼオライトの合成
近年、構造指向剤(SDA)として使用される有機分子の選択、合成条件の制御及び合成後処理によって、所望の特性を有するゼオライトを合成するに際しての専門的知識が得られた。van Bekkum, H.,Flanigen, E. M., Jacobs, P. A., Jansen, J. C.(著者)「ゼオライト科学及び応用入門」第2版,Studies in Surface Science and Catalysis, 2001, 137; Corma, A., Chem. Rev., 1997, 97, 2373-2419; Davis, M. E., Nature, 2002, 417, 813-821; Davis, M.E.,外, Chem. Mater., 1992, 4, 756-768; de Moor P-P.E.A.外, Chem. Eur. J., 1999, 5(7),2083-2088; Galo, J. de A. A.,外, Chem. Rev., 2002, 102, 4093-4138。同時に、規則性メソ多孔材料の一群は、異なる界面活性剤及び合成条件の使用によって大きく拡大した。Corma, A., Chem. Rev., 1997, 97, 2373-2419; Davis, M. E., Nature, 2002, 417, 813 - 821; Galo, J. de A. A.,外, Chem. Rev., 2002, 102, 4093-4138; Ying, J. Y.,外, Angew. Chem. Int. Ed., 1999, 38, 56-77。ここに開示した完全結晶性メソ構造化ゼオライトの一群は、結晶質メソ多孔性材料と非晶質メソ多孔性材料との間の間隙を架橋する、制御されたメソ多孔性を有するゼオライト構造からなる1相ハイブリッド材料である。本発明にしたがって、界面活性剤は、細孔を形成する、より具体的には完全結晶性ゼオライト構造の容量の少なくとも一部分にわたって複数のメソ細孔を形成する完全結晶性ゼオライト構造を貫通させるために使用される。メソ細孔表面は、該メソ構造内の各メソ細孔の周囲を取り囲んでいる。完全結晶性には、少なくとも10nmにわたって所定の間隔で反復する、単位格子と呼ばれる反復構造を有する1以上の相を有する全ての固体が含まれる。完全結晶性ゼオライト構造は、例えば、単結晶、単一結晶又は多結晶を有することができる。多結晶には、少なくとも10nmにわたって所定の間隔で反復する、単位格子と呼ばれる反復構造を有する1以上の相を有する固体の全てが含まれる。完全結晶性ゼオライトは、所定の時間にわたって、完全結晶性ゼオライトの容量の全て又は一部分にわたって所望のメソ細孔構造を達成するのに好適な温度及びpH条件下で該界面活性剤にさらされる。いかなる完全結晶性無機材料も、例えば、ゼオライト、完全結晶性ゼオライト又はゼオライト類について記載するのと同様の構造を有し、同様に製造でき、及び/又は同様に使用できるであろうことが予期される。
【0089】
図1Aとは対照的に、図1Bは本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライト200の略図であるが、これは、ゼオライト構造205の容量にわたって貫通するメソ細孔210を有する完全結晶性ゼオライト構造205を特徴とする。メソ細孔210を取り囲む該メソ構造215は完全結晶性である。隣接するメソ細孔間の孔壁又は内壁は、壁厚230を有する。図1Bに示すように、メソ構造215及びメソ細孔210は、ゼオライト構造205の側部200から見ている。この略図には示されていないが、該メソ構造及び該メソ細孔は、メソ構造化ゼオライト200の他の側面から見ることもできる。
【0090】
ここで、図1A及び1Bを参照すると、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライト200の完全結晶性メソ構造215とは異なり、凝集した結晶性メソ多孔性ゼオライト核材料100において、メソ細孔寸法の細孔容量110を取り囲む孔壁は不連続であり、これはゼオライト核の多結晶、例えば、105a、105b、105cを特徴付ける。
【0091】
完全結晶性メソ構造化ゼオライトの合成は、様々な材料に適用できる。この第1の戦略は、ゼオライトの完全結晶性を失うことなくメソ多孔性を与えるために界面活性剤の存在下でゼオライト構造を狭い範囲で再編成させることに基づく。ゼオライトは、界面活性剤を含有するpH制御溶液に添加される。或いは、ゼオライトはpH制御溶液に添加され、そしてその後界面活性剤が添加される。該pH制御溶液は、例えば、約8〜約12又は約9〜約11を範囲とするpHを有する塩基性溶液であることができ、或いは、該塩基性溶液のpHは約10であることができる。該塩基の強さ及び該塩基性溶液の濃度は、所望の範囲内のpHを与えるように選択される。所望のpH範囲内にある任意の好適な塩基を使用することができる。
【0092】
本発明に従って使用できる好適な界面活性剤としては、陽イオン性、イオン性、中性界面活性剤及び/又はそれらの組合せが挙げられる。界面活性剤の量は、例えば、混合される界面活性剤及びゼオライトに従って変更される。例えば、一具体例では、この界面活性剤の重量は、該溶液に添加されるゼオライトの重量にほぼ等しい。或いは、該界面活性剤の重量は、該溶液に添加されるゼオライトの重量の約半分であることができる。
【0093】
混合物は、該完全結晶性ゼオライトが所望のメソ構造を得るように選択される所定期間にわたて熱水処理され、例えば、H−Y[MCM−41]は、六方細孔配置を取り囲む完全結晶性メソ構造を有するフォージャサイトの完全結晶性酸性型である。同様に、H−Y[MCM−48]は、立方細孔配置を取り囲む完全結晶性メソ構造を有するフォージャサイトの完全結晶性酸性型であり、そしてH−Y[MCM−50]は、層状細孔配置を取り囲む完全結晶性メソ構造を有するフォージャサイトの完全結晶性酸性型などである。一般に、その時間及び温度は、温度をさらに高くすると、所望のメソ多孔性及び所定のメソ構造を達成するためには、それよりも低い温度と比較してさらに短い時間が必要となるように関連している(低温では、同一のメソ多孔性を得るために比較的長い時間を必要とするであろう。)。時間と温度は関連しているため、混合物を熱水処理するときに、任意の好適な時間及び温度の組合せが使用できる。例えば、該温度は、約室温〜約60℃の範囲にあり、或いは、該温度は100〜約200℃の範囲にある。該温度が約60℃以上である場合には、この制御された温度条件は、例えば、密閉反応器内で、熱水条件下で生じる。該時間は、約1時間〜約2週間を範囲とする。
【0094】
2種の合成実験では、時間、温度、ゼオライトのタイプと量及び界面活性剤のタイプと量のパラメーターを一定に保持するが、ただし、該第1合成におけるpHは9であり、第2合成におけるpHは11である。該2種の合成実験における異なるpH値の結果として、該2種の完全結晶性ゼオライトメソ構造は、互いに異なる。具体的には、pH9の溶液で合成された該完全結晶性ゼオライトメソ構造は、pH11で合成された完全結晶性ゼオライトメソ構造(高塩基濃度によりメソ多孔性が増大したため、さらに多くのメソ細孔表面を有する)と比較して、少数のメソ細孔が従来型の完全結晶性ゼオライトに取り入れられたため、さらに少数のメソ細孔表面を特徴とする。
【0095】
代表的な合成では、ゼオライトは、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)界面活性剤を含有する希釈NH4OH溶液に添加される。この混合物を、約100〜約200℃、約120〜約180℃、約140〜約160℃又は約150℃で約20時間又は一晩にわたって熱水処理し、その間に、該ゼオライト構造は狭い範囲の再構成を受けてMCM−41型のメソ構造に適応する。さらに高い界面活性剤濃度及び長い熱水処理は、MCM−48型のメソ構造を有するメソ構造化ゼオライトを生じさせるであろう。洗浄及び乾燥後に、該界面活性剤を、例えば、焼成又は界面活性剤抽出によって除去される。一具体例では、得られた材料をN2雰囲気中で約500〜600℃又は約550℃の最大温度で焼成し、次いで界面活性剤除去のために空気中で焼成する。該界面活性剤除去技術は、例えば、該メソ構造化ゼオライトから該界面活性剤の全てを除去するのに必要な時間に基づき選択される。この合成スキームを使用して様々なゼオライト構造を有するメソ構造化ゼオライトを製造することができた。
【0096】
任意の一つの理論に拘泥されることを望まないが、この制御pH溶液が従来型の完全結晶性ゼオライト表面を軟化させ、該界面活性剤がゼオライトに浸透し、該メソ構造化ゼオライトを生じさせるものと思われる。より具体的にいえば、使用される該pH条件は、界面活性剤がゼオライトの構造に浸透するのを可能するが、ただし、該pH条件では、該ゼオライトは溶解しない。該界面活性剤がゼオライトに浸透し、メソ細孔を形成するときに、この浸透した部分は、制御pH溶液にさらされ、そして軟化し、該界面活性剤によるさらなる浸透を可能にする。該浸透は、該ゼオライトの容量全体にわたってこの態様で続く。ゼオライト容量を介した浸透は、任意の単一の方向又は方向の組合せであることができ、例えば、該浸透は、x方向、y方向、z方向又はそれらの任意の組合せを介することができる。該浸透方向又は速度は、必ずしも直線的ではない。浸透は規則的であり、又は随意に該浸透、しかしてメソ細孔は不規則若しくはランダムであることができる。随意に、該メソ細孔の一つ以上は、交差し、相互に連絡し、集中し及び/又は整列しているが、これは、得られるメソ多孔性完全結晶性メソ構造の配置に影響を与える。該界面活性剤は、完全結晶性ゼオライトへの浸透を可能にし、メソ細孔を生じさせる。界面活性剤のタイプは、少なくとも部分的に、例えば、メソ細孔直径の寸法及び/又はメソ細孔断面の寸法を含め、メソ細孔の寸法を決める。従来型の完全結晶性ゼオライトへの浸透は、制御された時間及び温度条件で保持された制御pH溶液、例えば、10のpHを有する塩基が界面活性剤なしでゼオライトと混合される場合には観察されない。
【0097】
ある種の従来型の完全結晶性ゼオライトが非常に安定であり(例えば、ZSM−5、MOR、CHAなど)、これらのゼオライトにメソ多孔性を取り入れるのは困難である。このような場合には、例えば、約11〜約14若しくは約12〜約13の範囲のpHを有する強塩基又は酸、例えば、例えば約2〜約6若しくは約3〜約5を範囲とするpH若しくは約4のpHを有するHFが、シリカを溶解させ、そして従来型の完全結晶性ゼオライト表面を軟化させて界面活性剤が浸透しそして完全結晶性ゼオライトにメソ細孔を生じさせるために必要である。
【0098】
高密度構造を有する従来型の完全結晶性ゼオライト(例えばZSM−5)は、高密度構造が少ない完全結晶性ゼオライトよりも酸及び塩基に対して抵抗性がある。低い溶解度を有するゼオライト(例えばZSM−5)及び/又は高密度構造を有するゼオライトは、酸及び塩基による浸透に対して比較的安定であるため、約10〜約14の範囲のpHを有する希釈水酸化テトラメチルアンモニウム(TMA−OH)又は酸溶液、例えば約2〜約6を範囲とするpHを有する弗化水素酸HFを、合成スキームにおいて、約9〜約10を範囲とするpHを有する希釈NH4OH溶液の代わりに使用できる。より具体的にいえば、塩基処理単独では、非常に高いpHであったとしても、非常に安定なゼオライトを軟化させるのには十分でない。該酸のHFは、シリカを溶解させ、そして稠密に構造化された従来型の完全結晶性ゼオライト(例えば、ZSM−5)の構造を軟化させる。該従来型の完全結晶性ゼオライトをHFにさらすことによってこれを軟化させた後に、そのpHを、約9〜約11のpHを有する塩基溶液を含めることによって増加させ、そして好適な界面活性剤を、例えば、ゼオライトの量及び所望のメソ多孔容量に従って選択される量で添加する。該混合物を好適な時間及び温度条件に付して完全結晶性メソ構造化ゼオライト内に所望のメソ多孔性を及び得られるメソ構造を与える。
【0099】
別の代表的な合成では、完全結晶性ゼオライトを、約−2〜約2又は約−1〜約1又は約0のpHを有し、中性界面活性剤、例えば、PLURONIC(C)(BASF(ニュージャージー州フローハムパーク)から入手可能)を含有する酸溶液に添加する。該混合物を好適な温度条件に所望のメソ構造を得るために選択される時間にわたって暴露する。該混合物を室温で保持し、そして約1日〜約1週間にわたって撹拌することができる。或いは、該混合物を熱水処理する。一具体例では、混合物を約120℃で約4時間〜約1週間にわたって熱水処理する。得られたメソ細孔は、約5〜60nmの細孔直径を有する。メソ細孔表面は、それぞれのメソ構造のメソ細孔を取り囲む。
【0100】
また、該メソ細孔の寸法及び構造は、異なる脂肪族鎖長を有する界面活性剤、非イオン性界面活性剤、トリブロック共重合体、膨張剤などの使用のような周知技術によっても都合よく調整できる。例えば、さらに長い鎖長の界面活性剤を使用すると細孔寸法が増大するが、逆にさらに短い鎖長の界面活性剤を使用すると細孔寸法が減少する。例えば、膨張剤を使用すると界面活性剤のミセルが膨張するであろう。これらのメソ細孔寸法及びメソ構造の構造改変特性のうち任意のものを単独で又は組み合わせて使用できる。また、合成後処理(例えば、シラン化、グラフト、表面官能化、イオン交換、均一系触媒の固定及び金属ナノクラスターの付着)を使用して該材料の組織上の特性をさらに改善させ及び/又はそれらの表面化学的性質を改変させることができる。
【0101】
本発明の別の態様は、例えば、図1Cに示すように、メソ構造を特徴とする。このようなメソ構造は、pH制御媒体、すなわち酸性媒体又は塩基性媒体のいずれかでゼオライトを溶解させ、その後界面活性剤の存在下で熱水処理することに基づき達成できる。使用できる好適な界面活性剤としては、陽イオン性、イオン性、中性界面活性剤及び/又は該陽イオン性、イオン性及び中性界面活性剤の組合せが挙げられる。該界面活性剤の量は、例えば、選択される界面活性剤及び選択されるゼオライトに従って変更される。例えば、該界面活性剤の重量は、該溶液に添加されるゼオライトの重量にほぼ等しく、或いは該界面活性剤の重量は、該溶液に添加されるゼオライトの重量の約半分に等しいことができる。該pH制御媒体が塩基性である場合には、ゼオライトを溶解させるpHは、約10〜約14の範囲にある。該pH制御媒体が酸性である場合には、ゼオライトを溶解させるpHは、約−2〜約2の範囲にあり、HFを使用するときには、該pH範囲は約2〜約6である。これらのさらに厳しいpH条件下で、孔壁が初めのうちは非晶質であるメソ多孔性固体が得られた。該孔壁は、メソ多孔性構造に影響を与えることによって又は与えることなく、その後ゼオライト相に変換され得る。より具体的にいえば、該ゼオライトがこの攻撃的なpH処理に付された後に、該pHを、例えばNH4OH及び界面活性剤(例えば、CTAB)を添加することによって約10に調整して自己集合性の部分溶解ゼオライトを生じさせる。この合成混合物を所定時間にわたって熱水処理し又は室温で撹拌して非常に安定なメソ多孔性非晶質アルミノシリケートを得ることができる。より具体的にいえば、該合成混合物を、例えば、約100〜約150℃で熱水処理する場合には、非常に安定なメソ多孔性非晶質アルミノシリケートが得られる。或いは、該合成混合物を室温で非常に安定なメソ多孔性非晶質アルミノシリケートを得るのに十分な時間(約4時間〜約1日)にわたって撹拌する。該メソ多孔性非晶質アルミノシリケートは、還流条件下で48時間にわたって沸騰させた後でもそのメソ多孔性を保持する。製造される材料の酸性度は、非ゼオライト系シリカ及びアルミナ源から得られた非晶質メソ多孔性材料の酸性度よりも高い。該合成混合物を長時間(約12時間〜約2週間)にわたって熱水処理する場合には、ゼオライト系のメソ構造が得られる。該合成条件(例えば、pH、時間、温度、ゼオライトのタイプ、界面活性剤濃度)を調節することによって、異なるゼオライトナノ構造、例えば、ナノチューブ、ナノリング、ナノロッド、ナノワイヤー、ナノスラブ、ナノファイバー、ナノディスクなどが製造できる。再度図1Cを参照すると、例えばナノロッドを含めたナノ構造は隣接する要素(例えば、第2ナノロッドに隣接する第1ナノロッド)から作られる。隣接する要素(例えば、隣接するナノロッド)間には間隙が形成され得る。それぞれのナノ構造要素は、複数の細孔を画定する(例えば、それぞれのナノロッドは、その構造内に細孔を有する)。異なる要素は単一のナノ構造内で互いに連結でき、例えば、ナノロッドはナノリングに隣接し得る。
【0102】
ゼオライトナノロッド(ZNR)は、このアプローチによって、次の3工程:(i)pH制御媒体中でゼオライトを塩基処理して該ゼオライトを部分的に溶解させ、そして非晶質アルミノシリケートの懸濁液を生じさせること、(ii)pHを調整し、そして界面活性剤を添加してMCM−41を生じさせること、及び(iii)得られた固形物を典型的には約100〜約200℃の範囲の温度で約12時間〜約2週間にわたって熱水処理すること
で製造されている。この最後の工程中に、まず該MCM−41(六方細孔配置)メソ構造をMCM−48(立方細孔配置)に転換させ、次いでMCM−50(層状細孔配置)に転換させると共に、該非晶質孔壁を結晶質ゼオライト相に転換させる。MCM−50は層状構造であり、しかも例えば、ナノチューブ、ナノリング、ナノロッド、ナノワイヤー、ナノスラブなどを含むゼオライトナノ構造に対する先駆物質である。工程(i)〜(iii)を使用することによって形成されたこの特定のナノ構造は、選択されるゼオライト、界面活性剤、温度、時間及びpHによって決定される。該ゼオライト及び他の条件を選択して単一のナノ構造形状(例えば、全てナノロッド)或いは複数のナノ構造形状を達成することができる。任意の一つの理論に拘泥されないが、ナノ構造は、pH制御溶液によって非晶質アルミノシリケートの懸濁液に溶解した該ゼオライトがゼオライト出発材料の特徴たるある程度のゼオライト結合性を保持するため、少なくとも部分的に達成されるように思われる。ゼオライトのIRスペクトル特性のうちいくらかは、該溶解溶液、すなわち、非晶質アルミノシリケートの懸濁液中に存在したままであることが予期される。対照的に、ゼオライトを溶解させて非晶質アルミノシリケートの懸濁液を生じさせるのではなく、アルミナ、シリカ又は非晶質アルミノシリケートを上記工程(ii)〜(iii)に付した場合には、該ナノ構造は形成しない。該溶解ゼオライト溶液中に存在するこれら結合性成分は、ナノ構造の形成に関与するように思われる。
【0103】
該ナノ構造は結晶性ではあるが、完全結晶性ではない。これらのものは、一方向に数個の単位を有し、かつ、半結晶質であり、又は多結晶質である。半結晶質及び多結晶質とは、例えば、凝集して固形物を形成する、例えばナノ寸法の結晶、結晶核又は晶子をいう。単位格子は、結晶性構造又は結晶性材料内の最も単純な反復単位である。ナノ構造は開いた構造を有する。これらのものは、空間内での拡張した構造のため並びに該構造そのものの内部にある多数の構造又は空隙間の空間のため、高い表面積を有する。一般に、これらのナノ構造は高い外部表面積も有する。一具体例では、一方のナノ構造は、別のナノ構造に隣接する。図1Cは、ナノ構造形状がナノロッドを含む本発明のナノ構造ゼオライトのTEM画像を示している。該ナノロッドは、約5nmの厚さを有する。示されるように、該ナノロッドは互いに隣接してあり、しかも該ナノロッドは湾曲している。該TEM画像で見られる該湾曲ロッドの背景はノイズであり、これは無視されるべきである。
【0104】
また、成長を続ける無機及び有機/無機モレキュラーシーブの一群を表すゼオライト様材料もメソ構造化ゼオライトの合成用先駆物質として使用できる。というのは、上記合成アプローチが様々な材料に適合できるからである。
【0105】
本発明のメソ構造化ゼオライト及び該メソ構造化ゼオライトの製造方法は、入手可能で、安価な、非毒性の、廃棄物を生じさせない材料を使用する。ゼオライトの多孔性を改善させようとする先の試みは、さらに多くの工程を必要とし、最終構造に制限された制御を及ぼし、しかもさらに高価でかつ毒性の材料を使用した。該方法は、材料のコスト及び先行技術の方法の生産効率に改良を加えているが、ゼオライトにおいて改善された多孔性を達成するために2、3の工程しか必要としない。さらに、本発明の方法は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトを生じさせる。また、本発明の方法は、高い表面積を有するナノ構造化ゼオライトも製造する。
【0106】
メソ構造化ゼオライトの構造
該メソ構造化ゼオライトのハイブリッド構造をXRDによって検討した。図1D〜3は、それぞれ、H−Y[MCM−41]、H−MOR[MCM−41]及びH−ZSM−5[MCM−41]のXRDパターンを示している。ここで使用するときに、メソ構造化ゼオライト、例えば、H−Y[MCM−41]についての命名規則は、最初に出発ゼオライト構造、例えば、H−Y、そして次に、その隣の角括弧内にあるメソ構造の名称、例えば、[MCM−41]を包含する。該メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]は、該ゼオライトH−Yの完全結晶性を保持し、かつ、六方細孔[MCM−41]を特徴とする。該完全結晶性メソ構造は、本発明によって形成されたこれらの六方メソ細孔を取り囲む。従って、得られた構造は、[MCM−41]型のメソ構造を特徴とする完全結晶性H−Y材料である。便宜上、これをH−Y[MCM−41]と表す。
【0107】
図1Dは、メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]のX線回折パターンを示しており、そして規則性メソ構造MCM−41(低角度でのXRDピークによって明らかにされる)及びゼオライト系の完全結晶性構造H−Yの両方が存在する。図2は、メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−41]のX線回折パターンを示しており、そして規則性メソ構造MCM−41(低角度でのXRDピークによって明らかにされる)及びゼオライト結晶構造H−MORの両方が存在する。図3は、メソ構造化ゼオライトH−ZSM−5[MCM−41]のX線回折パターンを示しており、そして規則性メソ構造MCM−41(低角度でのXRDピークによって明らかにされる)及びゼオライト結晶構造H−ZSM−5の両方が存在する。ここで、図1D〜3を参照すると、低及び高2θ°値の両方での非常に強いピークは、この材料群の規則性メソ構造及びゼオライト結晶性の両方を示している。全ての場合において、低2θ°値でのこれらのピークは、MCM−41の存在を示す六方対称に対する指標となり得るが、高2θ°値での明確なXRDピークは、それぞれ、ゼオライトY、MOR及びZSM−5に相当する。この観察は注目すべきものである。というのは、長距離結晶性はメソ多孔性金属酸化物ではこれまでに観察されておらず、しかも半結晶性しか(ゼオライトナノクラスターの存在のため)、トリブロック共重合体を使用して生成される厚壁メソ多孔性材料では達成されなかったからである。Kloetstra, K. R.外,Chem. Commun, 1997, 23, 2281-2282; Liu, Y.外, Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 7, 1255-1258; On, D. T., 外,Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 17, 3248-3251。
【0108】
メソ構造化ゼオライトの結合性を赤外分光法(FTIR)によって検討した(図4〜5参照)。図4は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)及びゼオライトYについてのFTIRキャラクタリゼーションピークを示している。さらに図4を参照すると、該完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)のFTIRスペクトルは上にあり、非改質の従来型完全結晶性ゼオライトH−YのFTIRスペクトルは下にある。図5は、H−Y[MCM−41](上段上線)、H−MOR[MCM−41](中段上線)、H−ZSM−5[MCM−41](下段上線)のFTIRスペクトル及び従来型の非改質形態にあるそれらの完全結晶性ゼオライト変種、H−Y(上段下線)、H−MOR(中段下線)、H−ZSM−5(下段下線)のFTIRスペクトルを示している。完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]のスペクトルは上段上線のスペクトルであり、非改質完全結晶性ゼオライトH−Yのスペクトルは上段下線のスペクトルである。完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−41]のスペクトルは中段上線のスペクトルであり、非改質完全結晶性ゼオライトH−MORのスペクトルは中段下線のスペクトルである。完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−ZSM−5[MCM−41]のスペクトルは下段上線のスペクトルであり、非改質完全結晶性ゼオライトH−ZSM−5のスペクトルは下段下線スペクトルである。図5では、それぞれの完全結晶性メソ構造化ゼオライトとその相当する非改質完全結晶性ゼオライトとの一致が観察されるが、これはゼオライト結合性が完全結晶性メソ構造化ゼオライト内に存在することを示している。図5は、不十分なゼオライト結合性のために一つの広いピークのみを与える非常に安定なAl−MCM−41に反して、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]、H−MOR[MCM−41]及びH−ZSM−5[MCM−41]のIRスペクトルと、それらの対応する非改質完全結晶性ゼオライト変種であるH−Y、H−MOR、H−ZSM−5のIRスペクトルとの間の注目すべき一致を示している。Liu, Y., Pinnavaia, T.J., J. Mater. Chem., 2002, 12, 3179-3190; Kloetstra, K. R.,外, Chem. Commun, 1997, 23, 2281-2282; Liu, Y.外, Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 7, 1255-1258。壁表面上のシラノール基の特徴である、H−Y[MCM−41] メソ構造化ゼオライト試料における960cm-1でのピークは、メソ構造化ゼオライトのメソ多孔性/ゼオライトのハイブリッドの性質についての追加の証拠である。Geidel, E.,外, Microporous and Mesoporous Materials, 2003, 65, 31-42。
【0109】
メソ構造化ゼオライトにおける明確なメソ多孔性の存在は、77Kでの窒素物理吸着によって好適に試験できる。Storck,S.外, Applied Catalysis A: General, 1998, 17, 137-146。図6〜8は、それぞれ、完全結晶性メソ構造化ゼオライトであるH−Y[MCM−41]、H−MOR[MCM−41]及びH−ZSM−5[MCM−41]並びにそれらの非改質ゼオライト変種であるH−Y、H−MOR及びH−ZSM−5の77Kでの窒素等温線を示している。よく発達した狭い細孔寸法直径分布のメソ多孔体の存在は、それぞれのメソ構造化試料において明白である。該メソ多孔体の細孔寸法は、特定の完全結晶性メソ構造化ゼオライトにおけるメソ細孔のそれぞれの直径及び/又は断面積が狭い細孔寸法直径分布の範囲に含まれるように制御される。本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトによれば、一具体例では、メソ細孔の95%以上が平均細孔寸法のプラス又はマイナス10%の範囲に収まる細孔寸法(例えば、直径及び/又は断面積)を有する。別の具体例では、メソ細孔の95%以上が平均細孔寸法のプラス又はマイナス30%の範囲に収まる細孔寸法(例えば、直径及び/又は断面積)を有する。さらに別の具体例では、メソ細孔の95%以上が平均細孔寸法のプラス又はマイナス75%の範囲に収まる細孔寸法(例えば、直径及び/又は断面積)を有する。直径制御メソ細孔を取り囲むそれぞれの孔壁又はメソ細孔表面は、実質的に同等の寸法である。本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、制御されたメソ多孔性細孔寸法の断面積を有する。メソ細孔が、細孔寸法断面積を有することに加えて、実質的に円筒の形状である場合には、これらの細孔は細孔寸法直径を有する。しかしながら、メソ細孔の形状が円筒様ではなく、例えば、代表的なメソ細孔を取り囲むメソ細孔表面の深さの少なくとも一部分にわたって変化する直径を有する、例えばスリット形状であったりウォーム様であったりする場合又は定まらない形状の場合には、このようなメソ細孔表面の少なくとも一部分は、制御されたメソ細孔断面積を有する。メソ細孔の寸法は、例えば、従来型の改質されていない完全結晶性ゼオライトから完全結晶性メソ構造化ゼオライトを作るときに使用される選択された界面活性剤及び/又は界面活性剤の量によって制御される。メソ構造をゼオライト取り入れようとする先の試みは、実質的に同様の寸法(例えば、直径及び/又は断面積)及び制御された細孔配置(例えば、六方細孔配置を有する[MCM−41])を有するゼオライトにおいて実質的に全てメソ細孔を生じさせるこのような制御されたメソ多孔性を達成することができなかった。むしろ、ゼオライトにメソ構造を形成させる先の試みは、小さい〜中程度〜大きいという寸法の細孔を範囲とする広い細孔径分布、異なる形状の細孔及び制御されていない配置のうち任意のもの又はそれらの組合せを生じさせる。
【0110】
かなりの容量のメソ多孔性が該試料に導入できる。例えば、図6を参照すると、該ゼオライトがメソ構造化されるときに該メソ細孔の容量はおよそ2倍である。本発明の原理によれば、この例において、該非改質ゼオライトH−Yは30cc/gのメソ細孔容量を有していたが、HY[MCM−41]である完全結晶性メソ構造化ゼオライト(メソ−HYという)は、0.65cc/gのメソ細孔容量を有する。従来のゼオライトは、低圧でのみ窒素を吸着し、微孔性材料の特徴であるI型等温線を生じる。Storck, S.,外, Applied Catalysis A: General, 1998, 17, 137-146。しかしながら、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、狭い細孔径分布(細孔直径〜2.5nm)を有するメソ構造化材料の特徴的な性質である、さらに高い分圧(P/P0〜0.3)での際立った窒素の取り込みを示す。Storck, S.,外, Applied Catalysis A: General, 1998, 17, 137-146。図6〜8は、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]、H−MOR[MCM−41]及びH−ZSM−5[MCM−41]並びにそれらの非改質の従来型ゼオライト変種H−Y、H−MOR及びH−ZSM−5についての同様の結果を示している。図9は、次のもののメソ構造化ゼオライト細孔容量(黒い柱):H−Y[MCM−41](左)、H−M0R[MCM−41](中央)及びH−ZSM−5[MCM−41](右)並びにそれらのゼオライト変種(明るい方の柱):H−Y(左)、H−MOR(中央)及びH−ZSM−5(右)を示している。従来のゼオライトと比較すると、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、細孔寸法直径のメソ多孔性のよく発達した狭い分布の取り込みのため、2倍以上の細孔容量(図9参照)を有していた。さらに図9を参照すると、メソ多孔性の取り込み量は制御できる。該完全結晶性メソ構造化ゼオライトのメソ多孔性容量は、例えば、ゼオライトの量のパーセンテージとして添加される界面活性剤の量によって制御される。メソ多孔性容量に寄与する他の要因としては、使用されるpH、時間及び温度条件が挙げられる。一具体例では、添加される制御pH媒体の容量は、ゼオライトの量を考慮して、所望の界面活性剤濃度を達成するのに好適な量である。該細孔容量は、cc/gで表される、ゼオライトのグラムに対する細孔の立方センチメートルである。該完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細孔容量は、約0.05cc/g〜約2cc/g、又は約0.5cc/g〜約1cc/gの範囲にあることができる。メソ細孔の寸法を制御し、そしてメソ細孔容量を使用される界面活性剤のタイプと量によって制御してゼオライトから該ゼオライトメソ構造を創り出す。また、時間及び温度条件は、メソ細孔寸法及び/又はメソ細孔容量にも寄与する。
【0111】
該メソ構造化ゼオライトは、低い分圧でさらに際立った取り込みを有するが、これは微孔性及び僅かに大きい細孔寸法の存在を示している。界面活性剤をテンプレートとするメソ多孔性固体合成においてよく知られているように、メソ構造化ゼオライトにおけるメソ細孔の寸法は、該界面活性剤の脂肪族鎖の長さを変化させることによって容易に調整又は制御できる。Corma, A., Chem. Rev. 1997, 97, 2373-2419;Linssen, T., Cassiers, K., Cool, P., Vansant, E. F., Advances in Colloid and Interface Science, 2003, 103, 121-147; Ying, J. Y.,外, Angew. Chem. Int. Ed., 1999, 38, 56-77。随意に、メソ細孔の細孔寸法直径は、例えば、界面活性剤の選択及び/又は界面活性剤の量によっても制御できる。
【0112】
ゼオライト系のメソ構造化材料を製造する他の者による従前の試みは、ゼオライト及び非晶質メソ多孔性固体への相分離に至った。Karlsson, A.,外,Microporous and Mesoporous Materials, 1999, 27, 181-192; Huang L.,外, J. Phys. Chem. B. 2000, 104, 2817-2823。さらに、数名の著者は、ゼオライト系の壁を有する薄壁性メソ多孔性材料、例えばMCM−41を作るのは、該構造の高度な湾曲によって生じる表面張力のため、困難であることを指摘した。Yang, P.,外, Nature, 1998, 396, 152-155。
【0113】
本発明の一態様では、完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、上記のように、従来型のゼオライトを、好適な濃度の選択された界面活性剤を含有する好適なpH制御溶液に、所望のメソ細孔寸法及びメソ細孔容量を得るのに望ましい時間及び温度条件下でさらすことによって製造される。該完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、完全結晶性メソ構造化ゼオライトを作るために使用される非改質の従来型完全結晶性ゼオライトと実質的に同一の外部表面外形を有し(例えば、実質的に同一の外寸及び外部形状を有する)、しかも実質的にそれと同一の外周を有する。好適な非改質従来型ゼオライトは、寸法が約400nm〜約5ミクロンの範囲にあることができる。メソ細孔を形成させるために使用される条件は、実質的に該非改質ゼオライトの外寸、外部形状又は外周を変化させない。完全結晶性メソ構造化ゼオライトの密度は、非改質ゼオライトの密度未満であるが、該密度の相違は、メソ細孔が形成されたときに除去された該ゼオライトによるものである。さらに、該完全結晶性メソ構造化ゼオライトが完全結晶性の従来型非改質ゼオライトから製造される場合には、該完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、該非改質従来型ゼオライトの完全結晶性を保持する。
【0114】
該非改質従来型ゼオライトが、メソ細孔が該従来型ゼオライトに形成された後に、その骨格内にある種の化学組成を有する場合に、得られた完全結晶性メソ構造化ゼオライト骨格における該化学組成は、原材料として使用された非改質従来型ゼオライト骨格と実質的に同一の化学組成を保持するであろう。非改質従来型ゼオライトの化学組成は、外部表面(例えば、ほぼ該ゼオライトの外周)からその内部コアにまで変化し得る。しかしながら、非改質従来型ゼオライト骨格の化学組成は、一貫しているか又は該ゼオライトの外周から内部コアまで変動し得るかどうかを問わず、メソ細孔が該ゼオライト内に形成されるときには変化しない。従って、メソ細孔を形成させて完全結晶性メソ構造化ゼオライトを創り出しても、従来型ゼオライトの骨格は化学的に変化しない。該ゼオライトの化学量論は、非改質従来型完全結晶性ゼオライトから完全結晶性メソ構造化ゼオライトに至るまで変化しない。
【0115】
ゼオライト内にメソ構造を形成させる他の者による従前の試みは、非改質従来型ゼオライト骨格の化学組成の変化を生じさせた。例えば、Si及びAlを含有するゼオライトにおいて、従来の方法は、該ゼオライトと、該ゼオライトからSiよりもAlを除去するように選択された塩基とを反応させる。脱アルミニウム方法を使用する場合には、該ゼオライトの骨格の化学組成の少なくとも一部分が変化し、具体的には、四配位アルミナ比が変化する。本発明の方法をSi及びAlを含有するゼオライトで使用する場合には、本発明のメソ構造化ゼオライトにおいて、メソ構造化ゼオライト骨格内の該アルミナは四配位状態を保持する。
【0116】
メソ構造化ゼオライトのハイブリッド単一層の性質についての直接の証拠が透過電子顕微鏡(TEM)によって得られた。図10a及び10bは、結晶性と規則性メソ多孔性の両方が単一の相で観察できる異なる焦点でのH−Y[MCM−41]メソ構造化ゼオライト微小構造の2つの細部を示している。メソ構造化ゼオライトの追加のTEM画像を図11〜12に示している。
【0117】
メソ構造化ゼオライトのハイブリッド性についてのさらなる証拠は触媒作用によってもたらされる。メソ細孔、高い表面積が存在し、隣接するメソ細孔間の細孔壁及び内壁の厚さは(〜2nm)である。これは、従来型の非改質ゼオライトと比較して、さらに嵩高な分子に近づけ、かつ、本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトにおける結晶内拡散抵抗性を減少させなければならない。そのため、ゼオライトと比較して、嵩高分子に対して向上した触媒活性がメソ構造化ゼオライト内で観察されなければならない。
【0118】
例えば、ナノ結晶性アルミノシリケートPNA及びAl-MSU−S(MFI)のような半結晶質メソ多孔性材料は、従来のH−ZSM−5よりも有意に低いクメン分解活性(これは、通常、強いブレステッド酸性度と相関関係がある)を示す。しかしながら、メソ構造化ゼオライトは、恐らくそれらの完全ゼオライト構造及びメソ細孔の存在のため、ゼオライトよりもさらに大きい活性を示す。例えば、H−ZSM−5[MCM−41]は300℃でクメンの98%を変換するのに対し、商用のH−ZSM−5は同様の条件で95%を変換する。
【0119】
メソ構造化ゼオライト上での化学種の固定を赤外分光法(FTIR)で確認した。固定されるべき純粋な化学種、メソ構造化ゼオライト及びここに記載される方法に従って製造された種改質メソ構造化ゼオライトを全てFTIRで解析した。この種改質メソ構造化ゼオライトは、これらの試料を洗浄した後でも消失しない該化学種のFTIRバンドを示した。
【0120】
メソ構造化ゼオライト上に固定される化学種のいくつかを均一系触媒様の配位子として使用した。均一系触媒が固定されていることを赤外分光法(FTIR)及び均一系触媒と該メソ構造化ゼオライト上に固定された均一系触媒との両方の触媒試験によって確認した。これらの実験をこれらの試料の洗浄後に繰り返し、そして大きな変化は全く観察されなかったが、これは、この方法が化学種及び均一系触媒の両方を固定するのに好適であることを示している。
【0121】
応用
該メソ構造化ゼオライトのユニークな構造は、様々な分野に有用であり、また従来型のゼオライトに関連する所定の制限に対処するであろう。触媒作用は、ゼオライトについての最も重要な適用分野であるため、メソ構造化ゼオライトを触媒として応用することに特別に重点が置かれる。van Bekkum, H., Flanigen, E. M., Jacobs, P. A., Jansen, J. C.(著者)。ゼオライト科学及び応用入門, 第2版, Studies in Surface Science and Catalysis, 2001, Vol. 137; Corma, A., Chem. Rev. 1997, 97, 2373-2419; Davis, M. E., Nature 2002, 417, 813-821。
【0122】
メソ構造、高表面積、及び隣接するメソ細孔間で測定されるような制御された細孔又は内部厚さ(〜2nm)の組合せは、嵩高分子へのアクセスを提供し、かつ、結晶内拡散の障害を低減させるはずである。従って、従来型ゼオライトと比較して、嵩高分子に対する向上した触媒活性がメソ構造化ゼオライトについて観察されるはずである。図13〜14を参照されたい。図13〜20は、1,3,5−トリイソプロピルベンゼンを接触分解させて1,3−ジイソプロピルベンゼンを形成させる反応を包含する。該1,3,5−トリイソプロピルベンゼンは、原油中に存在する分子を代表するものであり、そして1,3−ジイソプロピルベンゼンは、ガソリン範囲内の生成物を代表するものである。これらの実験は、ガソリンを形成するように分解される原油中に存在する分子の代わりとなる。
【0123】
図13は、ゼオライトH−Yによる1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解方法を示している。接触分解は選択的であり及び/又は効率が制限される。というのは、拡散は、該ゼオライトH−Yの小さな細孔寸法によって制限されるからである。従来型の非転換ゼオライト結晶は拡散が限られており、その反応生成物、例えば、1,3−ジイソプロピルベンゼンが該ゼオライトを出るのは困難である。結果として、過剰分解が起こり、そして軽質化合物が形成され、望ましくない生成物であるクメン、ベンゼン及びコークスが過剰に形成される。図14は、本発明のメソ構造化ゼオライトによる1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解の方法を示している。非改質従来型ゼオライトH−Yによる接触分解とは対照的に、完全結晶性メソ構造化ゼオライト内に存在するより大きな細孔寸法、制御されたメソ細孔容量及び制御された内部又は孔壁厚さは、該メソ構造から所望の生成物、例えば1,3−ジイソプロピルベンゼンが出るのを促進させ、そしてクメン、ベンゼン及びコークスを生じさせる過剰分解が回避される。結果として、所望の生成物1,3−ジイソプロピルベンゼンの接触分解転化率がさらに高くなる。
【0124】
明確な巨大細孔を有する酸触媒は、多くの用途、特に石油の軽油留分の接触分解にとって極めて望ましく、それによって触媒活性又は選択性の僅かな改善がかなりの経済的利益へと変わるであろう。Venuto, P. B., Habib, E. T., Jr.「ゼオライト触媒による流動性接触分解。」Marcel Dekker, New York, 1979; Harding, R. H.,外, Appl. Catal. A: Gen., 2001, 221, 389-396; Degnan, T. F.,外, Microporous Mesoporous Mater., 2000, 35-36, 245-252。試験反応として、本出願人は、1,3,5− トリイソプロピルベンゼン(限界寸法〜0.95nm)を接触分解させて1,3−ジイソプロピルベンゼンを生じさせることを試験した。図15は、メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](これを「メソ−H−Y」という)、ゼオライトH−Y及び従来型のAl−MCM−41についての1,3−ジイソプロピルベンゼンへの転化率(%)対時間として示した1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示している。接触分解は、1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより120℃で飽和させたHeの50mL/分を200℃で50mgのそれぞれの触媒について流したときに実行した。該H−Y[MCM−41]メソ構造化ゼオライトは、H−Yゼオライト(71%転化率)及びメソ多孔性Al−MCM−41(39%転化率)と比較して、200℃で400分後にこの分解反応に対して優れた触媒活性を示した(93%転化率)(図15参照)。この結果は、強い酸性度とメソ構造化性質とのその組み合わせによるものである。該メソ細孔及び該メソ細孔を取り囲むメソ構造は、H−Y[MCM−41]触媒内で炭化水素拡散を大きく促進させ、それによって転化率が改善された。該H−Y[MCM−41]メソ構造化ゼオライトは安定であり、しかも過酷な条件下でさえもメソ構造の完全性を保持する。図17は、非メソ分解性ゼオライトAl−MCM−41と比較した、H−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)の熱水安定性を示している。例えば、沸騰したメソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)は、数日間にわたって沸騰させた後でさえも、その物理化学的完全性を保持し、このような過酷な処理後でさえも高い1,3,5−トリイソプロピルベンゼン活性を示した(400分後に87%の1,3−ジイソプロピルベンゼンへの転化率)。用語沸騰は便宜上使用するが、該材料に対するこの特定の処理は、該固形物を水中で懸濁すること及び該水と固形物材料とを還流条件下で加熱することを包含する。図17を参照されたい。この結果は、非晶質Al−MCM−41触媒(同様の条件にさらされた後にその活性及び規則性メソ構造を喪失する)に対するH−Y[MCM−41]の優れた熱水安定性を例示する。これらの結果は、熱水に安定なH−Y[MCM−41]が結晶材料であり、しかもその結晶性が、沸騰後に構造的に崩壊し、接触分解によってかなりの量を変換することをできなくする非晶質Al−MCM−41触媒とは対照的であることを示している。
【0125】
図19は、H−ZSM−5[MCM−41](メソ-H−ZSM−5という)及びそのゼオライト変種であるH−ZSM−5についての転化率(%)対時間として示される1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を図示している。1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより120℃で飽和された50mL/分のHe流れを200℃で50mgのそれぞれの触媒H−ZSM−5[MCM−41]及びH−ZSM−5に対して流した。H−ZSM−5を分解触媒における重要な添加剤として使用してプロピレン生産量を増加させ、そしてガソリンにおけるオクタン価を改善させる。Degnan, T. F.,外,Microporous Mesoporous Mater., 2000, 35-36, 245-252。しかしながら、その小さな細孔のため、H−ZSM−5は、200℃での1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解において不活性である(400分後に<1%の1,3−ジイソプロピルベンゼンへの転化率)。このゼオライトにおけるMCM−41メソ構造の取り込み(H−ZSM−5[MCM−41])は、400分後に1,3,5−トリイソプロピルベンゼンから1,3−ジイソプロピルベンゼンへの40%の転化率で、実質的な活性を成功裏に達成した(図19参照)。この場合に、該活性は、該メソ構造化ゼオライトのメソ細孔及び強い酸性度によるものであった。
【0126】
今日までに135種以上の異なるゼオライト構造が報告されているが、これらのうち12種のみが商業的に適用されており、そのほとんどが3D細孔構造を有するゼオライトである。Corma, A., Chem. Rev., 1997, 97, 2373-2419; Davis, M. E., Nature, 2002, 417, 813-821。3Dメソ細孔の取り込みは、結晶内拡散を大きく促進させるため、1D及び2D細孔構造を有するゼオライトにとって特に有益であろう。1D及び2D細孔構造を有するゼオライトは、その細孔構造がさほど最適ではないため、広くは使用されていない。低い細孔相互結合性を有するゼオライトのメソ構造処理能力を例示するために、1D細孔を有するH−MORを、MCM−48メソ構造を使用して、該1D細孔を有するH−MORゼオライトを上記好適な時間及び温度条件下で界面活性剤の存在下にpH制御溶液にさらすことによって調製した。得られた3Dメソ構造化構造を有するH−MOR[MCM−48]を200℃で1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解について試験した。図18は、H−MOR[MCM−48](メソ−HMORという)及びそのゼオライト変種であるH−MORについての1,3−ジイソプロピルベンゼン転化率対時間として示される1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示している。120℃で1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより飽和された50mL/分のHe流れを、200℃で50mgのそれぞれの触媒H−MOR[MCM−48]及びH−MORに対して流した。H−MOR[MCM−48]による接触分解は、400分後に50%転化率を示したが、これは、H−MORで達成された7%転化率と比較して有意に高かった(図18参照)。1D細孔構造を有するゼオライトは、1D細孔構造ゼオライトがさらに制限された拡散から始まるため予期されることであるが、2D細孔構造を有するゼオライトと比較してメソ構造処理に付されたときにさらに劇的な改善を示す。メソ構造処理に付されたときに、2D細孔構造を有するゼオライトは3Dメソ構造を生じる。完全結晶性無機材料、例えばゼオライト中にメソ構造を形成させるために1D及び2D細孔構造ゼオライトを即時の処理に付すと、そうでなければ十分に使用されていないこれらのゼオライト有用性を上げることができる。
【0127】
メソ構造化ゼオライトは、さらに高い触媒活性を示すだけでなく、ゼオライトを超えて向上した選択性を示す。ここで、図16を参照すると、市販のゼオライトH−Yを使用して1,3,5−トリイソプロピルベンゼンを接触分解させた。得られた生成物は、1,3−ジイソプロピルベンゼン、ベンゼン及びクメンであり、そしてそれらの留分組成の結果を100%となるように一般化した。メソ−HYと示された該メソ構造化ゼオライト(これはH−Y[MCM−41]である)を使用してH−Yで使用したのと同一の条件下で1,3,5−トリイソプロピルベンゼンを接触分解させた。1,3−ジイソプロピルベンゼンの生成量の増加(該ゼオライトH−Yで製造された1,3−ジイソプロピルベンゼンの約110%)及びベンゼンとクメンの生成量の減少(該ゼオライトH−Yで製造されたベンゼン及びクメンの約75%)が観察された。この例では、H−Y[MCM−41]メソ構造化ゼオライトは、H−Yゼオライトによって生成されるベンゼンの75%しか生成しなかった。図16を参照されたい。ベンゼンは毒性化合物であり、ガソリン中におけるその存在は法令によってますます制限されつつある。Degnan, T. F.,外,Microporous Mesoporous Mater., 2000, 35-36, 245-252。ベンゼン生成量は、H−MOR[MCM−48]の場合にさらに低くなり、そしてH−ZSM−5[MCM−41]の場合に最小になる。ベンゼン生成量の減少は、小さなゼオライト結晶で観察されており、そしてこれはさらに高い表面積を有する結晶が有する連続的な分解反応を制限する固有の能力に関連していた。Al-Khattaf, S.,外, Appl. Catal. A: Gen. 2002, 226, 139-153。また、このものは、触媒失活に関与する分解プロセスの望ましくない最終生成物であるコークスの形成も減少させた。したがって、該メソ構造化ゼオライトは、さらに高い触媒活性及び選択性を提供するだけでなく、さらに長い触媒寿命を与える。
【0128】
また、メソ構造化ゼオライトの別の形態であるゼオライトナノロッド(ZNR)も、活性部位の接近性を増大させることによって触媒活性を向上させる。このロッド形状ZNRは、わずかナノメートル寸法の直径しかないため、内部拡散抵抗性は最小である。これらの新規なメソ構造化ゼオライト(ナノ構造ともいう。)を石油の軽油留分用の分解触媒として試験してそれらの能力を評価した。図20Aは、左側のY軸に、H−MOR[ZNR]及びH−MORについての1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの1,3−ジイソプロピルベンゼンへの転化率(%)対時間を示している。また、時間の関数としての、H−MORによって生成されるベンゼン/H−MOR[ZNR]によって生成されるベンゼンの比率も、図20Aの右側に位置する2次Y軸上に示しており、そして矢印は、このデータをつなぐ線上に存在している。1,3,5−トリイソプロピルベンゼンにより120℃で飽和された50mL/分のヘリウム流れを50mgのそれぞれの触媒H−MOR[ZNR]及びH−MORに対して200℃で導入した。
【0129】
1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの分解の際に、従来型のH−MORゼオライトは、その媒体寸法(0.65×0.70nm)の1D細孔のため、低い活性(400分後に7%の1,3−ジイソプロピルベンゼンへの転化率)を示した。対照的に、H−MOR[ZNR]は、同様の条件下でさらに高い触媒活性(〜52%の1,3−ジイソプロピルベンゼンへの転化率)を達成した(図20A参照)。この触媒活性の有意な増加は、ZNRの高い表面積、容易に接近できる活性部位及び改善された内部結晶拡散率によるものである。
【0130】
活性の増加のほかに、ZNRは、それらのナノ構造化ロッド形状形態のため、改善された選択性も示した。例えば、H−MOR[ZNR]は、商用のゼオライトH−MORと比較して、3倍少ない転化された1,3,5−トリイソプロピルの1モル当たりのベンゼンを生成した(図20Aの右側の2次Y軸を参照)。ベンゼンとしては、例えば、ベンゼン誘導体、例えば、トルエン、キシレン及び他の関連する誘導体化合物のようなものが挙げられる。また、この選択性の有意な増大は、コークス形成(これは、従来型の分解触媒、特にモルデナイトのような1D細孔を含有するものに関連する大きな問題であった。)を低減させるのに役立つ。
【0131】
ここで説明した単純で、安価で、しかも一般化された合成戦略は、僅か数ナノメートルの厚さ(3〜20nm)の壁を有する結晶性材料であってナノリングとジャンクションが共通するものであるZNRを製造することが可能になる。この新規な合成戦略は、ナノスケールのゼオライト合成の典型的な欠点(例えば、低い収率、分離の困難さ及び高い圧力降下)を回避する、メソ多孔性材料の「プログラムされた」ゼオライト変換に基づいており、かつ、層状先駆物質の使用を必要としなかった。このユニークなZNR結晶構造は、その微孔性に対する接近性を増大させることによって嵩高な分子の触媒的変換を改善させると共に、粒子間及び粒子内の拡散障壁を減少させた。
【0132】
ここで、図20B及び20Cを参照すると、メソ構造化ゼオライトをマイクロ活性試験(ASTM D−3907)によって原油精製について試験した。これは、FCC(流動接触分解)触媒の性能を予測するための周知で且つ広く受け入れられている技術である。減圧軽油を流動床ステンレス鋼反応器内で供給物として使用した。この実験は、メソ構造化ゼオライト及びそれらの従来型ゼオライト相当物と同一の条件下で実行した。
【0133】
図20Bは、従来型の完全結晶性ゼオライトH−Y(Si/Al=15)及びその完全結晶性メソ構造化変種H−Y[MCM−41]のマイクロ活性試験(MAT)結果を示している。マイクロ活性試験条件は、500℃の反応温度を包含し、触媒接触時間は60秒であり、触媒装填量は1グラムであり、触媒/減圧軽油比は2であり、WHSVは30g/h/gであった。転化率、特に、減圧軽油供給物が生成物に転化した量(全ての収率は、比較のために100%に一般化される)は、非改質完全結晶性ゼオライトH−Yについては61.22%であり、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]については67.20%であった。図20Bには示していないが、この試験の結果は、17.45%のH−YのLPG留分及び15.27%のH−Y[MCM−41]のLPG留分を与える。
【0134】
図20Cは、図20Bと併せて、上記した従来型の完全結晶性ゼオライトH−Y(Si/Al=15)及びその完全結晶性メソ構造化変種H−Y[MCM−41]のマイクロ活性試験(MAT)によって得られたLPG留分の組成を示している。該LPG留分の組成を分析してLPG留分の成分を決定した。完全結晶性ゼオライトH−Yを使用した場合には、該LPG留分は17.45%であった。完全結晶性メソ構造化ゼオライトHY[MCM−41]を使用した場合には、LPG留分は15.27%であった。さらに、完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、望ましい生成物であるオレフィンをさらに多く生成した。ここで、図20CのX軸を参照すると、符号C3はプロパンを示し、符号C3=はプロペンを示し、符号i−C4はイソブタンを示し、符号n−C4は通常のブタンを示し、符号i−C4=はイソブテンを示し、符号n−C4=は通常のブテンを示す。特に、完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、LPG留分において、非改質完全結晶性ゼオライトよりも増加したプロペン、イソブテン及び通常のブテンを生成した。さらに、該完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、その相当物である従来型の非改質完全結晶性ゼオライトよりも少ないLPG留分を生成した。該完全結晶性メソ構造化ゼオライトの内部壁厚は、非改質完全結晶性ゼオライトの内部壁厚よりも小さい。したがって、該完全結晶性メソ構造化ゼオライトにおけるさらに薄い内部壁は、オレフィンからパラフィンへの望ましくない転化に関与する水素転移反応を低減させる。したがって、完全結晶性メソ構造化ゼオライトを従来型の非改質完全結晶性ゼオライトの代わりに使用すると、多数の所望のオレフィンが生成される。
【0135】
METでは、一般に、これらの試料を流動床ステンレス鋼反応器内でディスプレイした。反応温度は500℃であり、触媒の量は3.0gであり、触媒/オイル比は2.0であり、WHSVは30g/h/gであり、接触時間は60秒であった。これらの試験は、従来のH−Yの代わりにH−Y[MCM−41]を使用すると、ガソリン生成量が43%増加し、プロピレンが75%増加し、そしてブテンが110%増加することを示した。さらに、コークス形成が32%減少し、全乾性ガスが23%減少し、そしてLPG(液化石油ガス)が12%減少する。H−Yの表面積の少なくとも2倍を有するH−Y[MCM−41]におけるメソ細孔の存在は、従来型ゼオライトの微細孔内では変換できない、原油中に存在するさらに大きな分子の分解に有利である。典型的には、従来型ゼオライトは、約0.7nmの細孔を有するが、これは、重質原油留分中に含まれる望ましい生成物、例えばアルキルベンゼンを効率的に処理するのには小さすぎる。それよりも大きな細孔寸法は、該炭化水素材料との表面積接触(孔壁又はメソ細孔表面内にあるものを含む)の改善を促進させるために必要である。比較のために、本発明の完全結晶性メソ構造のメソ細孔表面によって取り囲まれるメソ細孔のそれぞれの直径は、例えば、約2nmに達し得る。この軽質オレフィン生成量の増加は、従来型ゼオライトの厚い結晶(〜1000nm)とは対照的な完全結晶性メソ構造化ゼオライトの有利な内部又は孔壁厚さ(〜2nm)の存在のため、水素転移反応の減少に関連していた。また、この内部又は孔壁厚さは、過剰分解の減少を生じさせ、コークス形成を有意に減少させ、そして全乾性ガス及びLPGの生成量を減少させる。
【0136】
プラスチックの熱分解が、これらの豊富な廃棄物を価値のある化学物質に変換すると共にエネルギーをも生成することができるため、再び注目を集めている。Williams, P. T. 「廃棄物の処理と処分」; John Wiley and Sons, Chichester, UK,1998。ゼオライトのような酸性触媒は、プラスチックの分解温度を有意に減少させ、かつ、生成される生成物の範囲を制御することができることが示されている。Williams, P. T. 「廃棄物の処理と処分」 John Wiley and Sons, Chichester, UK, 1998; Park, D. W.,外,Polym. Degrad. Stabiliry 1999, 65, 193-198; Bagri, R.,外, J. Anal. Pyrolysis, 2002, 63, 29-41。しかしながら、プラスチックの分解中に生成される嵩高分子の接近性は、ゼオライトの微細孔によって大幅に制限された。
【0137】
市販のゼオライト及びそれらの相当するメソ構造化ゼオライトによるポリエチレン(PE)の接触分解を熱重量分析(TGA)によって検討した。図21は、ポリエチレン(PE)に対する重量比で表す次の触媒混合物についてのPEの損失重量(%)対温度を示している。符号(A)〜(G)の曲線は、次の分解曲線の結果を示す:(A):触媒なし、(B):H−ZSM−5:PE1:2、(C):H−ZSM−5[MCM−41]:PE1:2、(D):H−ZSM−5:PE1:1、(E)H−ZSM−5:PE2:1、(F):H−ZSM−5[MCM−41]:PE1:1及び(G)H−ZSM−5[MCM−41]:PE2:1。全ての場合において、完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、高い触媒:PE比であっても、非改質の商用ゼオライトと比較して低い分解温度((C)H−ZSM−5[MCM−41]対(B)H−ZSM−5の場合には〜35℃)を可能にする(図21参照)。事実、符号(F)の曲線を参照すると、1:1のH−ZSM−5[MCM−41]:PE重量比で、2:1のZSM−5:PE重量比で必要な分解温度(符号(E)の曲線を参照)と比較してさらに低い分解温度を達成した。
【0138】
また、完全結晶性メソ構造化ゼオライトの接近可能な大きな表面積及びイオン交換特性は、表面の官能化、均一系触媒の固定及び金属クラスターの付着も促進させるであろう。したがって、完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、様々な反応用の非常に有用な触媒担体としての役割も果たす。
【0139】
従来のゼオライトと比較してそれらの改善された接近性及び拡散率により、完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、気相及び液相吸着、分離、触媒作用、接触分解、接触水素化分解、接触異性化、接触水素化、接触ヒドロホルミル化、接触アルキル化、接触アシル化、イオン交換、水処理、汚染改善などのような他の用途にも非改質従来型ゼオライトの代わりに使用できる。今のところ、これらの用途の多くは、特に嵩高分子が包含されるときに、ゼオライトの小さな細孔に関わる制限がある。van Bekkum, H., Flanigen, E. M., Jacobs, P. A., Jansen, J. C.(著者),ゼオライト科学及び応用入門, 第2版. Studies in Surface Science and Catalysis, Vol. 137, 2001; Corma, A., Chem. Rev., 1997, 97, 2373-2419; Davis, M. E., Nature, 2002, 417, 813-821。メソ構造化ゼオライトは、このような用途においてゼオライトを超える魅力的な利益を与える。
【0140】
水からの有機染料及び汚染物質の除去は、環境上の重要性が大きいものであり、かつ、ゼオライトの第3の主たる用途を示す(1年当たり80トンのゼオライトに当たる)。GaIo, J. de A. A.,外, Chem. Rev. 2002, 102, 4093-4138。しかしながら、有機染料の大部分は嵩高であり、このことは、それらの除去を遅くし又は不完全にするため、このプロセスにおいて非常に過剰のゼオライトを必要とする。完全結晶性メソ構造化ゼオライトは、それらの大きな表面積及び細孔寸法により、有機染料及び汚染物質の除去の際に非改質の従来型ゼオライトを超える顕著な利益を与える。
【0141】
キット
また、本発明は、本発明の方法を都合よく且つ効果的に実施するためのキットも提供する。このようなキットは、本発明の該ゼオライト構造のうち任意のもの又はそれらの組み合わせと、本発明の方法と調和してそれらを使用するのを容易にするための手段とを含む。このようなキットは、該方法を効果的な態様で実施することを保証する便利で効果的な手段を提供する。このようなキットのコンプライアンス手段は、本発明の方法を実施するのを容易にする任意の手段を包含する。このようなコンプライアンス手段は、説明書、包装及び小分け手段並びにそれらの組み合わせを含む。キットの構成要素は、前記の方法の手作業又は部分的に若しくは完全に自動化された手法のためにパッケージ化できる。キットに関する他の具体例では、本発明は、本発明のブロック共重合体及び随意にそれらの使用説明書を含むキットを意図する。
【実施例】
【0142】
例示
本発明を一般的に説明してきたが、本発明は、次の実施例を参照することによってさらに容易に理解されるであろう。これらの実施例は、単に本発明のある種の態様及び具体例を例示する目的で含めるものであり、本発明を限定することを目的とするものではない。
【0143】
例1
H−Y[MCM−41]の合成
0.79gのゼオライトH−Y(Zeolyst CBV−720 Si/Al=15)を、0.55gのCTABを含有する0.37MのNH4OH溶液の50mL中で20分にわたって撹拌し、その後、該合成混合物を150℃で10時間にわたって熱水処理した。この固形物を濾過し、洗浄し、そして最終的に窒素雰囲気中で5℃/分で550℃まで上昇させ、次いで4時間にわたって空気に切り替えた。同様の条件を使用してこれらの試料の全てを焼成した。別法として、1gのH−Y(Zeolyst CBV−720 Si/Al=15)を0.09Mの水酸化テトラメチルアンモニウム(TMA−OH)溶液の30mL中で撹拌した。次いで、0.5gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を添加した。撹拌の30分後に、該懸濁液20時間にわたって150℃で熱水処理した。構造パラメーターを表1に与えている。
【0144】
例2
H−MOR[MCM−41]の合成
2.0gのゼオライトH−MOR(焼成されたZeolyst CBV21A Si/Al=10)を0.27MのTMA−OH溶液の50mL中で撹拌した。その後、1.0gのCTABを添加した。撹拌の30分後に、該合成溶液を150℃で20時間にわたって熱水処理した。構造パラメーターを表1に与えている。
【0145】
例3
H−ZSM−5[MCM−41]の合成
1.0gのNH4−ZSM−5(Zeolyst CBV3024E Si/Al=15)を0.8MのHF溶液の50mL中で4時間にわたって撹拌した。この懸濁液を0.69gのCTABを含有する溶液に添加し、そして30分にわたって撹拌した。得られた合成混合物を、2.5gの30%NH4OH溶液をゆっくりと添加することによって塩基性化させた。最後に、これを150℃で20時間にわたって熱水処理した。構造パラメーターを表1に与えている。壁厚を、2個の細孔中心間の間隔(X線回折によって得られるa0)から細孔寸法(N2吸着によって決定される)を引くことによる技術常識内の標準的な方法によって決定した。
【0146】
【表1】

【0147】
例4
クメン及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解
接触試験を、DBガソリン(50m×0.2mm×0.5ミクロン)カラムを有するガスクロマトグラフ(ヒューレット・パッカード社製HP6890シリーズ)に連結された実験室規模の充填床反応器内で実施した。全ての場合において、50mL/分のHeを50mgの触媒を通して流した。クメン分解については、該ガス流れをクメンにより室温で飽和させ、その反応温度は300℃であった。1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解については、該ガス流れを120℃で飽和させ、その反応温度は300℃であった。
【0148】
例5
ポリエチレン(PE)分解
1:2、1:1及び2:1の比率を有する触媒:PE試料の〜10mgの初期重量を熱重量分析器(パーキンエルマーTGA7)内において10℃/分で250mL/分のHe流れ中で600℃まで増温させた。結果を図21に示す。
【0149】
例6
化学種及びメソ構造化ゼオライト上への均一な固定
フォージャサイト構造及びMCM−41構造H−Y[MCM−41](Si/Al〜15)を有する完全結晶性メソ構造化ゼオライトの酸性形態を、0.1MのNH4OH溶液中で24時間にわたってイオン交換させてNH4−Y[MCM−41]を生成させた。得られた材料を7.0mMのNH2(CH22NMe3Cl溶液中で24時間にわたって再度イオン交換させた。濾過及び完全に洗浄した後に、該試料を一晩60℃で乾燥させた。最後に、このアミン官能化メソ構造化ゼオライトを2.0mMのRh(PPh33溶液(ウィルキンソン触媒)に24時間にわたって添加した。濾過及び完全に洗浄した後に、該試料を一晩60℃で乾燥させた。全ての生成物並びに第四アミン及びウィルキンソン触媒をFTIRで分析して完全な洗浄後でもメソ構造化ゼオライト上に異なる種が存在することを確認した(図22参照)。図22は、a)H−Y[MCM−41]、b)NH4−Y[MCM−41]、c)NH2(CH22NMe3Cl、d)NH2(CH22NMe3−Y[MCM−41]、d)Rh(PPh33Cl及びe)Rh(PPh33NH2(CH22NMe3−Y[MCM−41]のFTIRスペクトルを示している。
【0150】
例7
ゼオライトナノロッド(ZNR)の合成
ナノ構造化ゼオライトの合成では、0.36gのNaOHを30mLの水に溶解させて13.5のpHを有する塩基性溶液を生じさせる。その後〜15の初期Si/Al比を有する1gのH−Y(Zeolyst CBV720)を該塩基性溶液に添加する。室温で12時間撹拌した後に、該ゼオライトと塩基の混合物は、11.5のpHを有していた。その後、0.5gのCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)を該ゼオライト・塩基混合物に添加して濁った懸濁液を生じさせた。この濁った懸濁液をテフロン被覆ステンレス鋼オートクレーブに移し、そして自然圧力下において150℃で熱水処理した。これらの試料を異なる時点で集め、洗浄し、乾燥させ、そしてX線回折法、IR分光分析法、TEM、77KでのN2吸着、TGA及び元素分析によって分析した。同様の合成手順で、H−ZSM−5[ZNR]を、H−Y(Zeolyst Si/Al〜80)を使用して生成させた。
【0151】
参照による援用
本明細書において引用した全ての特許文献及び論文は、参照によって援用するものとする。
【0152】
均等
当業者であれば、ここに説明した本発明の特定の具体例に対する多くの均等物を認識し又は慣例的に過ぎない実験を使用して確認できるであろう。このような均等物は、特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1A】先行技術の多結晶メソ多孔性材料の概略図である。
【図1B】本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトの略図である。
【図1C】ナノ構造形状がナノロッドを含む本発明のナノ構造ゼオライトのTEM画像を示す図である。
【図1D】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41]のX線回折パターンを示す図である。
【図2】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−41]のX線回折パターンを示す図である。
【図3】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−ZSM−5[MCM−41]のX線回折パターンを示す図である。
【図4】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)及び非改質ゼオライトYについてのFTIRキャラクタリゼーションのピークを示す図である。
【図5】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](上段上線)、H−MOR[MCM−41](中段上線)、H−ZSM−5[MCM−41](下段上線)のFTIRスペクトル及びそれらの非改質完全結晶性ゼオライト変種H−Y(上段下線)、H−MOR(中段下線)、H−ZSM−5(下段下線)のFTIRスペクトルを示す図である。
【図6】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)及びその非改質ゼオライト変種H−Yの77KでのN2の物理吸着等温線を示す図である。
【図7】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−41](メソ−H−MORという)及びその非改質ゼオライト変種H−MORの77KでのN2の物理吸着等温線を示す図である。
【図8】完全結晶性メソ構造H−ZSM−5[MCM−41](メソ−H−ZSM−5という)及びその非改質ゼオライト変種H−ZSM−5の77KでのN2の物理吸着等温線を示す図である。
【図9】次のものの細孔容量(黒い柱):完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](左)、H−MOR[MCM−41](中央)及びH−ZSM−5[MCM−41](右)並びにそれらの非改質ゼオライト変種(明るい方の柱):H−Y(左)、H−MOR(中央)及びH−ZSM−5(右)を示す図である。
【図10】異なる焦点でのa)H−Y[MCM−41]完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細部及びb)H−Y[MCM−41]完全結晶性メソ構造化ゼオライトの細部の透過電子顕微鏡(TEM)によって得られた画像図である。
【図11】本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトのTEM画像図である。
【図12】本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトのTEM画像図である。
【図13】非改質の従来型ゼオライトH−Yによる1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解の略図である。
【図14】本発明の完全結晶性メソ構造化ゼオライトによる1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの接触分解の略図である。
【図15】転化率対時間として示された、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−HYという)、その非改質ゼオライト変種H−Y及び従来型のAl−MCM−41についての1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示す図である。
【図16】完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)による1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの、ジイソプロピルベンゼン及びクメンへの接触分解を示す図である。
【図17】従来型の非メソ分解性ゼオライトAlMCM−41と比較した、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−Y、H−Y[MCM−41](メソ−H−Yという)の熱水安定性を示す図である。
【図18】転化率対時間として示された、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−MOR[MCM−48](メソ−HMORという)及びその非改質ゼオライト変種H−MORについての1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示す図である。
【図19】転化率対時間として示された、完全結晶性メソ構造化ゼオライトH−ZSM−5[MCM−41](メソ−H−ZSM−5という)及びその非改質ゼオライト変種H−ZSM−5についての1,3,5−トリイソプロピルベンゼン分解に対する触媒活性を示す図である。
【図20A】左側のY軸に、該ナノ構造H−MOR[ZNR]及び非改質完全結晶性ゼオライトH−MORについての1,3,5−トリイソプロピルベンゼンの転化率対時間を、また、右側のY軸上に、時間の関数としてのH−MORによって生成されるベンゼン/H−MOR[ZNR]によって生成されるベンゼンの比を示している。
【図20B】従来型の完全結晶性ゼオライトH−Y(Si/Al=15)及びその完全結晶性メソ構造化変種H−Y[MCM−41]のマイクロ活性試験(MAT)の結果を示す図である。
【図20C】従来型の完全結晶性ゼオライトH−Y(Si/Al=15)及びその完全結晶性メソ構造化変種H−Y[MCM−41]のマイクロ活性試験(MAT)によって得られたLPG留分の組成を示す図である。
【図21】触媒の混合物についてのポリエチレン(PE)の損失重量対温度のパーセンテージを標識されたPEに対する重量比で表している:(a):触媒なし、(b):H−ZSM−5:PE1:2、(c):H−ZSM−5[MCM−41]:PE1:2、(d):H−ZSM−5:PE1:1、(e)H−ZSM−5:PE2:1、(F):H−ZSM−5[MCM−41]:PE1:1及び(G)H−ZSM−5[MCM−41]:PE2:1。
【図22】a)H−Y[MCM−41]、b)NH4−Y[MCM−41]、c)NH2(CH22NMe3Cl、d)NH2(CH22NMe3−Y[MCM−41]、d)Rh(PPh33Cl及びe)Rh(PPh33NH2(CH22NMe3−Y[MCM−41]のFTIRスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0154】
100 結晶性メソ多孔性ゼオライト核材料
110 細孔容量
105a ゼオライト核多結晶
200 完全結晶性メソ構造化ゼオライト
205 ゼオライト構造
210 メソ細孔
215 メソ構造
230 壁厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料であって、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積が実質的に同一である無機材料。
【請求項2】
前記複数のメソ細孔が前記材料の細孔容量を有し、しかも該細孔容量が制御されている、請求項1に記載の無機材料。
【請求項3】
前記細孔容量が約0.05cc/g〜約2cc/gである、請求項2に記載の無機材料。
【請求項4】
前記細孔容量が約0.5cc/g〜約1cc/gである、請求項2に記載の無機材料。
【請求項5】
前記材料が単結晶質である、請求項1に記載の無機材料。
【請求項6】
前記材料が単一結晶質(mono crystalline)である、請求項1に記載の無機材料。
【請求項7】
前記材料が多結晶質である、請求項1に記載の無機材料。
【請求項8】
前記材料が、前記複数のメソ細孔を画定する前の材料の外部表面外形と実質的に同一の外部表面外形を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項9】
前記材料が、前記複数のメソ細孔を画定する前の材料の化学組成骨格と実質的に同一の化学組成骨格を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項10】
前記材料が、前記複数のメソ細孔を画定する前の材料の結合性と実質的に同一の結合性を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項11】
前記材料が、前記複数のメソ細孔を画定する前の材料の結晶内拡散と比較して改善された結晶内拡散を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項12】
前記複数のメソ細孔のそれぞれの領域が、制御された断面積範囲を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項13】
制御された断面積が、制御された分布範囲を有する、請求項12に記載の無機材料。
【請求項14】
制御された断面積が約2nm〜約60nmの範囲の直径を有する、請求項12に記載の無機材料。
【請求項15】
制御された断面積が所定の直径を有し、しかもそれぞれのメソ細孔の直径が制御された分布範囲を有する、請求項12に記載の無機材料。
【請求項16】
制御された断面積が所定の直径を有し、しかもそれぞれのメソ細孔の直径が1nmの分布範囲内にある、請求項12に記載の無機材料。
【請求項17】
制御された断面積が約2nm〜約5nmの範囲の直径を有する、請求項12に記載の無機材料。
【請求項18】
制御された断面積が約2nm〜約3nmの範囲の直径を有する、請求項12に記載の無機材料。
【請求項19】
前記材料が前記複数のメソ細孔を画定する前に1D細孔構造を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項20】
前記材料が前記複数のメソ構造を画定する前に2D細孔構造を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項21】
前記材料が前記複数のメソ細孔を画定する前に3D細孔構造を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項22】
前記無機材料が、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、ZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の無機材料。
【請求項23】
メソ構造が所定の細孔配置を有し、該細孔配置が制御されている、請求項1に記載の無機材料。
【請求項24】
メソ構造が組織化された細孔配置を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項25】
メソ構造が、
(a)MCM−41の六方細孔配置
(b)MCM−48の立方細孔配置
(c)MCM−50の層状細孔配置、及び
(d)SBA−15の六方細孔配置
から選択される細孔配置を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項26】
メソ構造がフォーム様配置で組織化された細孔を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項27】
メソ細孔がランダムに配置された細孔を有する、請求項1に記載の無機材料。
【請求項28】
メソ構造が、Y[MCM−41]、MOR[MCM−41]、ZSM−5[MCM−41]、Y[MCM−48]、MOR[MCM−48]、ZSM−5[MCM−48]、Y[MCM−50]、MOR[MCM−50]又はZSM−5[MCM−50]である、請求項1に記載の無機材料。
【請求項29】
隣接するメソ細孔間の壁厚が約1nm〜約5nmである、請求項1に記載の無機材料。
【請求項30】
隣接するメソ細孔間の壁厚が約1nm〜約3nmである、請求項1に記載の無機材料。
【請求項31】
前記メソ構造に固定された荷電化学種をさらに含む、請求項1に記載の無機材料。
【請求項32】
荷電化学種が正に荷電している、請求項31に記載の無機材料。
【請求項33】
荷電化学種が、元素の陽イオン、第四アミン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン若しくはホスホニウムイオン又はそれらの任意の組合せを含む、請求項31に記載の無機材料。
【請求項34】
完全結晶性メソ構造に固定された化学種をさらに含む、請求項1に記載の無機材料。
【請求項35】
完全結晶性メソ構造に共有結合した化学種をさらに含む、請求項1に記載の無機材料。
【請求項36】
化学種が塩基性化学種を含む、請求項35に記載の無機材料。
【請求項37】
化学種が、無機塩基、有機塩基、水酸化物、アミン、ピリジン若しくはホスフィン又はそれらの任意の組合せを含む、請求項35に記載の無機材料。
【請求項38】
前記無機材料に付着する均一系触媒をさらに含み、しかも前記化学種が該均一系触媒に結合している、請求項34に記載の無機材料。
【請求項39】
前記完全結晶性メソ構造によって担持された不均一系触媒をさらに含む、請求項1に記載の無機材料。
【請求項40】
不均一系触媒が、金属、金属酸化物、ナノ粒子、クラスター若しくはコロイド又はそれらの任意の組合せを含む、請求項39に記載の無機材料。
【請求項41】
次の工程:
(a)完全結晶性無機材料を準備し、
(b)該完全結晶性無機材料を第1の時間及び温度条件セット下でpH制御媒体にさらし、
(c)該完全結晶性無機材料を第2の時間及び温度条件セット下で界面活性剤にさらし、
(d)該無機材料を、該第1及び第2の時間及び温度条件セットを制御することによって処理して該完全結晶性無機材料内に制御された断面積を有する複数のメソ細孔を形成させること
を含む、無機材料の製造方法。
【請求項42】
次の工程:
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料において六方[MCM−41]細孔配置で配置されるように調節すること、
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料において立方[MCM−48]細孔配置で配置されるように調節すること、
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料において層状[MCM−50]細孔配置で配置されるように調節すること、
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料において六方[SBA−15]細孔配置で配置されるように調節すること、
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料においてフォーム様細孔配置で配置されるように調節すること、
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料においてランダム細孔配置で配置されるように調節すること、
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料において組織化細孔配置で配置されるように調節すること、又は
(e)前記第1及び第2の時間及び温度条件セットを、前記複数のメソ細孔が前記完全結晶性無機材料において制御された細孔配置で配置されるように調節すること
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
次の工程:
(b)前記pH制御媒体を選択して前記完全結晶性無機材料の細孔容量を制御し、そして
(c)前記界面活性剤の量を選択して前記完全結晶性無機材料の細孔容量を制御すること
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
次の工程:
(b)前記pH制御媒体を選択して前記完全結晶性無機材料内にある複数のメソ細孔のそれぞれの直径を制御し、そして
(c)前記界面活性剤を選択して前記完全結晶性無機材料内にある複数のメソ細孔のそれぞれの直径を制御すること
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
次の工程:
(b)前記pH制御媒体を選択して前記完全結晶性無機材料内にある複数のメソ細孔のそれぞれの断面積を制御し、そして
(c)前記界面活性剤を選択して前記完全結晶性無機材料内にある複数のメソ細孔のそれぞれの断面積を制御すること
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記pH制御媒体に膨張剤を添加する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記pH制御媒体にトリブロック共重合体を添加する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
工程(d)で製造された完全結晶性無機材料を洗浄し、そして乾燥させる工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
工程(d)で製造された完全結晶性無機材料から界面活性剤を除去する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
工程(d)で製造された完全結晶性無機材料から界面活性剤を抽出する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
工程(a)〜(d)を実行した後に界面活性剤を焼成する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記第1温度条件又は第2温度条件が熱水条件を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
前記第1温度条件又は第2温度条件が約100〜約200℃の範囲にある、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
前記第1温度条件又は第2温度条件が室温条件である、請求項41に記載の方法。
【請求項55】
前記第1時間条件又は第2時間条件が約1時間〜約2週間の範囲にある、請求項41に記載の方法。
【請求項56】
前記完全結晶性無機材料が、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、ZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項57】
前記pH制御媒体が少なくとも約8〜約12までのpH制御設定点を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項58】
前記pH制御媒体が少なくとも約10〜約14までのpH制御設定点を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項59】
前記pH制御媒体が少なくとも約2〜約6までのpH制御設定点を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項60】
前記pH制御媒体が少なくとも約−2〜約2までのpH制御設定点を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項61】
界面活性剤が、陽イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤若しくは中性界面活性剤又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項62】
界面活性剤が臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項63】
工程(d)で製造された完全結晶性無機材料に荷電化学種を導入する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項64】
荷電化学種が正に荷電している、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
荷電化学種が、元素の陽イオン、第四アミン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン若しくはホスホニウムイオン又はそれらの任意の組合せを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
工程(d)で製造された完全結晶性無機材料に化学種を導入する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項67】
化学種が塩基性化学種を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
化学種が、無機塩基、有機塩基、水酸化物、アミン、ピリジン若しくはホスフィン又はそれらの任意の組合せを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
均一系触媒をさらに含み、しかも化学種が該均一系触媒に結合している、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
次の工程(e):
(e)不均一系触媒と、工程(d)で製造された完全結晶性無機材料とを接触させること
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項71】
不均一系触媒が、金属、金属酸化物、ナノ粒子、クラスター若しくはコロイド又はそれらの任意の組合せを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
次の方法:
(a)完全結晶性無機材料を準備し、
(b)該完全結晶性無機材料を第1の時間及び温度条件セット下でpH制御媒体にさらし、
(c)該完全結晶性無機材料を第2の時間及び温度条件セット下で界面活性剤にさらし、
(d)該無機材料を、該第1及び第2の時間及び温度条件セットを制御することによって処理して該完全結晶性無機材料内に制御された断面積を有する複数のメソ細孔を形成させること
によって作られた無機材料。
【請求項73】
複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料を含む触媒の存在下で高分子炭化水素材料を反応させる方法によって製造された炭化水素材料であって、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積が実質的に同一である、炭化水素材料。
【請求項74】
炭化水素材料が、1,3−ジイソプロピルベンゼン、ガソリン、プロピレン、ブテン、コークス、全乾性ガス若しくは液化石油ガス又はそれらの組合せを含む、請求項73に記載の方法によって製造された炭化水素材料。
【請求項75】
有機化合物と、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させる工程を含む有機化合物の接触分解方法であって、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積が実質的に同一である、有機化合物の接触分解方法。
【請求項76】
有機化合物が、炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、アルキル化ベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、原油、軽油又は減圧軽油の少なくとも一つである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記断面積が、分解される有機化合物の直径よりも大きい直径を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
次の工程:
原油と、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は実質的に同一であるものとし、
該原油を該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応させること
を含む、原油の処理方法。
【請求項79】
前記原油を流動接触分解ユニット内で無機材料の存在下に反応させることをさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
生成されるガソリンの留分が、完全結晶性無機材料を使用して生成されるガソリンの量に対して増加する、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
軽質オレフィンの生産量が、完全結晶性無機材料を使用して生成される軽質オレフィンの量に対して増加する、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
次の工程:
重合体と、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は実質的に同一であるものとし、及び
該重合体を該無機材料の存在下で熱処理すること
を含む、重合体の処理方法。
【請求項83】
前記重合体が、炭化水素重合体、ポリアルキレン、ポリアルキニル、ポリスチレン若しくはポリエチレン(PE)又はそれらの任意の組合せを含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
次の方法:
原油と、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は実質的に同一であるものとし、及び
該原油を該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応させること
を含む方法によって製造されたベンゼン化合物。
【請求項85】
次の方法:
原油と、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は実質的に同一であるものとし、及び
該原油を該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応させること
を含む方法によって製造されたガソリン化合物。
【請求項86】
次の工程:
汚染された水と、複数のメソ細孔を画定するメソ細孔表面を有する完全結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数のメソ細孔のそれぞれの断面積は実質的に同一であるものとし、及び
該無機材料によって該水から汚染物を除去すること
を含む、水処理方法。
【請求項87】
除去される汚染物が染料を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に空隙を画定するものを含む結晶性ナノ構造を備える無機材料であって、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が100nm以下である、無機材料。
【請求項89】
前記複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が約3nm〜約20nmである、請求項88に記載の無機材料。
【請求項90】
無機材料が半結晶質である、請求項88に記載の無機材料。
【請求項91】
無機材料が多結晶質である、請求項88に記載の無機材料。
【請求項92】
ナノ構造が一次元である、請求項88に記載の無機材料。
【請求項93】
ナノ構造が二次元である、請求項88に記載の無機材料。
【請求項94】
ナノ構造が三次元である、請求項88に記載の無機材料。
【請求項95】
ナノ構造がナノチューブ、ナノリング、ナノロッド又はナノワイヤーである、請求項88に記載の無機材料。
【請求項96】
ナノ構造がナノスラブ、ナノレイヤー又はナノディスクである、請求項88に記載の無機材料。
【請求項97】
前記材料が、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)及びZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せを含む、請求項88に記載の無機材料。
【請求項98】
ナノ構造がY[ZNR]、MOR[ZNR]又はZSM−5[ZNR]である、請求項88に記載の無機材料。
【請求項99】
次の工程:
(a)結晶質無機材料を準備し、
(b)該結晶質無機材料をpH制御媒体にさらして結晶質無機材料を部分的に溶解させ、それによって非晶質無機材料を生じさせ、
(c)該非晶質無機材料のpHを調整し、
(d)該非晶質材料を界面活性剤にさらし、及び
(e)工程(b)〜(d)の時間及び温度条件を制御することによって該無機材料を処理してナノ構造を形成させること
を含む無機材料の製造方法。
【請求項100】
時間及び温度条件を制御することによって前記無機材料を処理して、まず[MCM−50]メソ構造を形成させ、次いでナノ構造を形成させることをさらに含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記pH制御媒体が、少なくとも約10〜約14以下のpH制御設定点を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記pH制御媒体が、少なくとも約2〜約6以下のpH制御設定点を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記pH制御媒体が、少なくとも約−2〜約2以下であるpH制御設定点を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
前記非晶質無機材料が、約8〜約12を範囲とするpHを有する、請求項99に記載の方法。
【請求項105】
前記温度条件が、約100〜約200℃を範囲とする、請求項99に記載の方法。
【請求項106】
前記時間が約12時間〜約2週間を範囲とし、しかも前記温度条件が熱水温度条件である、請求項99に記載の方法。
【請求項107】
前記界面活性剤が陽イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤又は中性界面活性剤又はそれらの任意の組合せを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項108】
前記界面活性剤が臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項109】
前記完全結晶性無機材料が、金属酸化物、ゼオライト、ゼオタイプ、アルミノホスフェート、ガロホスフェート、ジンコホスフェート、チタノホスフェート、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)及びZSM−5(MFI)若しくはCHA又はそれらの任意の組合せを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項110】
次の方法:
(a)結晶質無機材料を準備し、
(b)該結晶質無機材料をpH制御媒体にさらして結晶質無機材料を部分的に溶解させ、それによって非晶質無機材料を生じさせ、
(c)該非晶質無機材料のpHを調整し、
(d)該非晶質材料を界面活性剤にさらし、そして
(e)工程(b)〜(d)の時間及び温度条件を制御することによって該無機材料を処理してナノ構造を形成させること
によって作られた無機材料。
【請求項111】
複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に空隙を画定するものを含む結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させる方法によって作られた分解有機化合物であって、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が100nm以下である、分解有機化合物。
【請求項112】
前記炭化水素材料が、1,3−ジイソプロピルベンゼン、ガソリン、プロピレン、ブテン、コークス、全乾性ガス若しくは液化石油ガス又はそれらの組合せを含む、請求項111の方法によって製造された炭化水素材料。
【請求項113】
有機化合物と、複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に空隙を画定するものを含む結晶性メソ構造を備える無機材料とを接触させる工程を含む有機化合物の接触分解方法であって、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が100nm以下である、有機化合物の接触分解方法。
【請求項114】
前記有機化合物が、炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、アルキル化ベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、原油、軽油又は減圧軽油のうちの少なくとも一つである、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
原油と、複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に間隙を画定するものを含む結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つが100nm以下であるものとし、及び
該原油を該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力の条件下で反応させること
を含む、原油の処理方法。
【請求項116】
前記原油を前記無機材料の存在下で流動接触分解ユニット内において反応させることをさらに含む、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
生成されるガソリンの留分が、完全結晶性無機材料を使用して生成されるガソリンの量に対して増加する、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
軽質オレフィン生成量が、完全結晶性無機材料を使用して生成された軽質オレフィンの量に対して増加する、請求項115に記載の方法。
【請求項119】
次の工程:
重合体と、複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に空隙を画定するものを含む結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が100nm以下であるものとし、及び
該重合体を該無機材料の存在下で熱処理すること
を含む、重合体の処理方法。
【請求項120】
該重合体が、炭化水素重合体、ポリアルキレン、ポリアルキニル、ポリスチレン若しくはポリエチレン(PE)又はそれらの任意の組合せを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
次の方法:
原油と、複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に空隙を画定するものを含む結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が100nm以下であるものとし、及び
該原油を該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力条件下で反応させること
によって製造されたベンゼン化合物。
【請求項122】
次の方法:
原油と、複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に空隙を画定するものを含む結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が100nm以下であるものとし、及び
該原油を該無機材料の存在下に制御された温度及び圧力条件下で反応させること
によって製造されたガソリン化合物。
【請求項123】
次の工程:
汚染水と、複数の要素であってそれぞれの要素が複数の細孔を画定しそして隣接する要素がそれらの間に空隙を画定するものを含む結晶性ナノ構造を備える無機材料とを接触させ、ここで、該複数の要素のそれぞれの少なくとも一つの寸法が100nm以下であるものとし、及び
該無機材料によって該水から汚染物を除去すること
を含む、水処理方法。
【請求項124】
除去される汚染物が染料を含む、請求項123に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−534589(P2007−534589A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509727(P2007−509727)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/014129
【国際公開番号】WO2006/038912
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506356494)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】