説明

メタボリックシンドローム予防剤

【課題】日常的に摂取している天然物であるコーヒーの、生豆抽出物を用いて、脂肪細胞の数をコントロールし、脂肪組織を大きくしないようにすることができるメタボリックシンドローム予防剤を提供する。
【解決手段】コーヒー生豆抽出物を含有するメタボリックシンドローム予防剤であって、抽出物中の関与成分が、3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4,5−diCQA、3−FQA、4−FQA、5−FQAからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分であり、コーヒー生豆抽出物は、超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有の抽出物である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組織量を減少・適正化させることができ、肥満の解消・抑制、延いてはメタボリックシンドロームを予防し得る剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のライフスタイルの変化によって過栄養、運動不足を来たし、肥満や代謝異常が問題となっている。肥満、すなわち、脂肪組織における脂肪細胞の増加並びに肥大化は、インスリン抵抗性(血中のインスリン濃度に見合ったインスリン作用が得られない状態)が高くなり、また脂肪組織における炎症を引き起こし、さらには、アディポサイトカイン(脂肪細胞からの内分泌因子)の生産・分泌異常を招き、糖尿病、高血圧症、高脂血症、ひいては動脈硬化症の危険因子につながる(図1を参照)。
このようなリスクファクターの複数重なった状態は、メタボリックシンドロームとして定義されており、今日、その予防・対策が重要視されている。従って、メタボリックシンドロームに対する根本的な対策として、重要な病態である内臓脂肪蓄積の減少などを中心とした肥満の予防・解消の意義は極めて大きいと言える。
【0003】
特に近来、細胞増殖に相反して作用するp27とSkp2の二種類のノックアウトマウスを用いた解析により、脂肪細胞数の増加が脂肪組織の肥大化を通してメタボリックシンドロームの一因となり得ることが報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。このことからも、脂肪細胞の肥大化の抑制、数の増加の抑制を行うことがメタボリックシンドローム予防に有用であると考えられる。
【0004】
一般に、抗肥満作用のある医薬品での治療は他の医薬品との併用上の制約があり、副作用を招くなどの危険を伴うため、日常的に摂取している天然物由来の抽出物で脂肪細胞の数をコントロールし、メタボリックシンドロームを予防できるものが望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】阪上浩 セラピューティック・リサーチ Vol.26 p.1578 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況に鑑みて、本発明は、日常的に摂取している天然物であるコーヒーの、生豆抽出物を用いて、脂肪細胞の数をコントロールし、脂肪組織を大きくしないようにすることができるメタボリックシンドローム予防剤を提供することを目的とする。
特に、コーヒー生豆の抽出物において、インスリン抵抗性を助長し得るカフェイン未含有のコーヒー生豆の抽出物を用いたメタボリックシンドローム予防剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明のメタボリックシンドローム予防剤は、コーヒー生豆抽出物を含有するメタボリックシンドローム予防剤であって、抽出物中の関与成分が、3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4,5−diCQA、3−FQA、4−FQA、5−FQAからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分であることを特徴とするものである。
ここで、コーヒー生豆抽出物は、超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物であることが好ましい。インスリン抵抗性を助長しないからである。
【0008】
また、超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物であれば、カフェインが含まれず、かつ、クロロゲン酸(5−CQA等)が十分に含まれており、好適にメタボリックシンドローム予防剤として利用できる。これらのメタボリックシンドローム予防剤は、前駆脂肪細胞から脂肪細胞に至るまでの脂肪細胞分化抑制による脂肪組織量の減少促進作用を有する。また、脂肪蓄積抑制作用や、脂肪細胞増殖抑制による脂肪組織量の減少促進作用を有する。さらに、アポトーシス誘導による脂肪組織量の減少促進作用を有する。
【0009】
また、超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物は、好適に、抗肥満剤、脂肪蓄積抑制剤、脂肪細胞分化抑制による脂肪組織量減少促進剤、脂肪細胞増殖抑制による脂肪組織量減少促進剤、アポトーシス誘導による脂肪組織量減少促進剤に利用できる。
ここで、脂肪は、特に、胴回り及び内臓に分布する白色脂肪に効果的である。
【0010】
本発明のメタボリックシンドローム予防剤における上述の超臨界流体処理工程は、超臨界流体の二酸化炭素を用いて、圧力10 MPa 以上の高圧、65〜80℃の高温で、抽出処理されることを特徴とするものである。
超臨界流体の二酸化炭素を用いて、コーヒー生豆抽出物中のカフェインを溶出するときは、一般的に、超臨界流体の二酸化炭素の温度、圧力がそれぞれ高ければ高いほど抽出される。二酸化炭素は、約7.3
MPa・31℃で、気体とも液体ともつかない状態になり(臨界点)、この臨界点を超える状態を超臨界流体の状態という。本発明の超臨界流体処理の条件としては、圧力10
MPa以上、更に好ましくは45 MPa以上であり、温度は65〜80℃である。温度が65℃以下であるとカフェインは除去しにくく、80℃以上にするとクロロゲン酸がコーヒー生豆から溶出、分解され始めるからである。仮に、80℃で抽出した場合には10%程度ロスが発生してしまう。
【0011】
また、コーヒー生豆抽出物にカフェインが含まれないようにすべく、超臨界流体処理工程の前処理として、コーヒー生豆を浸水(調湿)し、コーヒー生豆に水分量を与える。この調湿をしない場合、コーヒー生豆からカフェインは抽出されないことになる。水分を50%程度まで多くすると、機械に負担をかけることとなり、また、湿ったコーヒー生豆に微生物が増殖しやすい条件となり、その後のクロロゲン酸類抽出に影響を及ぼすので好ましくなく、調湿のための水分量は50%未満とするのが好ましい。
【0012】
また、上記の超臨界流体処理工程において、原料となるコーヒー生豆は、粉砕径3〜5 mmとされることが好ましい態様である。一般的に、コーヒー生豆を超臨界流体処理してカフェインを取り除く場合、コーヒー生豆そのものが商品になるため粉砕はしないのが普通である。
本発明では、コーヒー生豆の抽出成分が商品(メタボリックシンドローム予防剤)になるため、抽出効率の向上を目的として豆を粉砕する方が好ましいのである。コーヒー生豆の粉砕径が3〜5 mmとされるのは、3
mm未満とあまり細かくしすぎるとアルコール抽出工程、濾過工程で目詰りを起こすため好ましくなく、また5 mmより大きいと抽出効率の向上の観点から好ましくない。特に、好ましくは、コーヒー生豆の粉砕径は4 mmである。
【0013】
上記のメタボリックシンドローム予防剤は、好適に、医薬品や医薬部外品などの医薬組成物、化粧品、飲食品(特に、コーヒー飲料)に利用される。
本発明のメタボリックシンドローム予防剤は、上記の超臨界流体処理工程を経て得られた抽出物をそのまま直接使用することもできるし、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造し、使用することもできる。また、医薬品として用いる場合、投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤などによる経口投与、粉末飲料、液体飲料(ドリンク剤など)などの食品の形態、注射剤、坐剤などによる非経口投与を挙げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のメタボリックシンドローム予防剤によれば、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化抑制、脂肪細胞増殖抑制、アポトーシスの誘導による内臓や皮下の脂肪組織量の減少促進に繋がるといった効果を有する。
また、本発明のメタボリックシンドローム予防剤によれば、分化抑制効果やTG(トリアシルグリセロール)蓄積抑制効果により、脂肪細胞や脂肪組織の大型化、さらにはそれらの機能破綻を防ぎ、アディポサイトカイン作用の増悪化を防ぎ得るといった効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】メタボリックシンドロームの説明図
【図2】超臨界流体二酸化炭素による処理工程を経て、カフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を製造する処理フローを示す図
【図3】分化誘導済3T3‐L1細胞の添加培養48時間後におけるCaspase−3活性についてコントロールを1.0とした時の各吸光度比率を示したグラフ
【図4】分化誘導済3T3‐L1細胞の添加培養24時間後における増殖活性(OD450)を示したグラフ
【図5】分化誘導済3T3‐L1細胞の添加培養8日目におけるTG蓄積量を示したグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、以下の実施例や参照する図中の説明では、超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物(Extract of decaffeinated green coffee beans)をEDGCBと略記する。
【0017】
先ず、超臨界流体二酸化炭素による処理工程を経て、カフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を製造する処理について、図2のフローを参照しながら各々の工程の説明を行う。
(1)コーヒー生豆を粉砕する工程(ステップS01)
コーヒー生豆を平均粒子径が約4.0
mmになるよう粉砕する。粉砕は、通常の機械的粉砕や凍結粉砕処理などで行うが、この粉砕する手段は特に限定されるものではない。
【0018】
(2)コーヒー生豆を浸水(調湿)する工程(ステップS02)
コーヒー生豆を粉砕したものに対し、水を添加し調湿を行う。カフェインを除くための条件としてコーヒー生豆の水分量を43%(増減2%)にしている。
【0019】
(3)コーヒー生豆を超臨界流体処理する工程(ステップS03)
コーヒー生豆を70℃以上、45 MPa以上の状態にある超臨界流体二酸化炭素を用いて、S/F50の条件の超臨界流体処理を施すことにより、所定時間、接触抽出を行い、コーヒー生豆からカフェインやその他の物質を抽出除去する。ここで、S/Fとは原料(コーヒー生豆)に対して流す二酸化炭素の重量比のことで、例えば、S/F=50であれば、コーヒー量が1(重量)に対して、二酸化炭素重量は、50(重量)となる。
【0020】
(4)含水アルコールにて抽出する工程(ステップS04)
上記の超臨界流体処理する工程により、コーヒー生豆からカフェインやその他の物質を抽出除去した後、除去後のコーヒー生豆から、更に含水アルコールにて抽出、濃縮、乾燥して抽出物を得る。
なお、抽出溶媒としては、極性溶媒を使用できる。極性溶媒としては、水、または、アルコール類(例えば、エタノール、メタノールの低級アルコール、あるいは、プロピレングリコールなどの多価アルコール)などの極性有機溶媒が挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を任意に組み合わせて使用することが可能である。好ましくは、水単独または水と極性有機溶媒の混合溶媒である。水と極性有機溶媒との混合溶媒の場合、水と極性有機溶媒の混合比は特に制限されないが、極性有機溶媒の容量比が50%以上であるのが好ましい。水と混合する極性有機溶媒としては、低級アルコールが好ましく、メタノールまたはエタノールがより好ましい。また、抽出時間は特に制限されない。
【0021】
(5)濃縮・乾燥する工程(ステップS05)
抽出した液は、減圧下で加熱することなどにより溶媒を除去して濃縮した後、スプレードライ、フリーズドライなどの手法を用いて乾燥することでコーヒー生豆粉末を得る方法等が挙げられる。あるいは、抽出液に賦形剤等を添加して乾燥してもよい。
【実施例1】
【0022】
1.コーヒー生豆抽出物の作製方法の具体例
本発明のメタボリックシンドローム予防剤におけるコーヒー生豆抽出物の作製方法について、以下の(a)〜(f)に具体的に説明する。
(a)コーヒー生豆(Indonesia AP−1/カフェイン含有量1.94%)を平均粒子径4.0
mmになるよう粉砕した。
(b)コーヒー生豆を粉砕したもの87.3
kgに対し、水43.2 kgを添加し調湿を行った。
(c)その後、このコーヒー生豆を80℃、45MPaの状態にある超臨界流体二酸化炭素を用いて、S/F50の条件にて200分間接触抽出を行った。
(d)次に、超臨界流体二酸化炭素処理後のコーヒー生豆160.0 kgに対し、56%(w/v)エタノール1600
Lを添加し、バブリングを行いつつ、50℃で1時間抽出を行った。
(e)抽出物に対して固液分離を行なった後、56%(w/v)エタノール800
Lを添加し、バブリングを行いつつ、再度50℃で1時間抽出を行った。
(f)上記の2回の抽出で得られた抽出液を濾過、125℃、1分間殺菌した後、50℃で減圧濃縮し、180℃でスプレードライを行ない、27.8
kgのコーヒー生豆抽出物を得た。
【0023】
2.アポトーシス誘導効果について
先ず、マウス由来前駆脂肪細胞(3T3−L1)の培養について説明する。前培養として、3T3−L1細胞を1×10
細胞/mLの密度で播種し、10%子牛血清、100 U/100 ng ペニシリンストレプトマイシンを含むD−MEM培地中で、37℃・5%COの条件下で培養を行った。
【0024】
次に、分化誘導について説明する。分化誘導は、3〜4日間の前培養によってコンフルエントにした後、10%牛胎児血清を含むD−MEMに、インスリン,3−isobutyl−methylxanthine,dexamethasoneをそれぞれ最終濃度2
μM、0.25 mM、1 μMで溶解し、3T3−L1の分化誘導に供した。
【0025】
そして、サンプルとして、EDGCBを0.5、1.0
mg/mL、5−CQAを0.5、1.0 mM、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4、5−diCQAを0.5 mMの最終濃度で分化誘導試薬を含むD‐MEMに溶解した後、孔径0.22
μmの滅菌フィルターユニット(MILLIPORE)に通し、分化誘導と同じタイミングで添加培養に供した。
なお、コントロール試験区では分化誘導試薬を含むD‐MEMのみで、陰性対照試験区ではCaspase Inhibitor Z−VAD−FMKを最終濃度50μMで添加し、培養を行った。
【0026】
アポトーシス誘導効果を確認するために、Caspase−3活性の測定を行った。測定は、48時間の添加培養の後、CaspACE Assay
System, Colorimetric(Promega)を用いてCaspase−3活性の測定を行った。なお、試験区間のCaspase−3活性は405 nmの吸光度をもとにコントロールを1.0として吸光度比率を算出し、比較を行った。
【0027】
測定結果を図3に示す。図3は、分化誘導済3T3‐L1細胞の添加培養48時間後におけるCaspase−3活性について、コントロールを1.0とした時の各吸光度比率を示したグラフである。
【0028】
測定結果は、コントロールに対してEDGCB
0.5 mg/mL、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4,5−diCQA 0.5 mM添加区において、有意な脂肪細胞のCaspase−3活性亢進効果が認められた。また、繰り返し行った実験においても同様に、有意な脂肪細胞のCaspase−3活性亢進効果が認められた。
【0029】
3.脂肪細胞増殖抑制効果について
先ず、マウス由来前駆脂肪細胞(3T3−L1)の培養について説明する。
前培養として、3T3−L1細胞を50
細胞/mLの密度で播種し、10%牛胎児血清、100 U/100 ng ペニシリンストレプトマイシンを含むD−MEM培地中で、37℃・5%COの条件下で培養を行った。
【0030】
次に、分化誘導について説明する。分化誘導は、2〜3日間の前培養によってコンフルエントにした後、10%牛胎児血清を含むD−MEMに、インスリン,3−isobutyl−methylxanthine,dexamethasoneをそれぞれ最終濃度2
μM、0.25 mM、1 μMで溶解し、3T3−L1の分化誘導に供した。
【0031】
そして、サンプルとして、EDGCBを0.5、1.0
mg/mL、5−CQAを0.5、1.0 mM、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4、5−diCQAを0.5 mMの最終濃度で分化誘導試薬を含むD‐MEMに溶解した後、孔径0.22
μmの滅菌フィルターユニット(MILLIPORE)に通し、分化誘導と同じタイミングで添加培養に供した。
なお、コントロール試験区では分化誘導試薬を含むD‐MEMのみで培養を行った。
【0032】
脂肪細胞増殖活性を確認するために、24時間の添加培養の後、Premix WST−1 Cell Proliferation Assay System(タカラバイオ)を用いて増殖活性の測定を行った。なお、脂肪細胞増殖活性は、マイクロプレートリーダー(測定波長450
nm)の吸光度として間接的に測定した。
【0033】
吸光度の測定結果を図4に示す。図4は、分化誘導済3T3‐L1細胞の添加培養24時間後における増殖活性(OD450)を示したグラフである。
【0034】
測定結果は、コントロールに対してEDGCB
1.0 mg/mL、5−CQA 1.0 mM、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4,5−diCQA 0.5 mM添加区において有意な脂肪細胞の増殖抑制効果が認められた。また、繰り返し行った実験においても同様に有意な脂肪細胞の増殖抑制効果が認められた。
【0035】
4.脂肪細胞分化抑制効果について
先ず、マウス由来前駆脂肪細胞(3T3−L1)の培養について説明する。
前培養として、3T3−L1細胞を1×10
細胞/mLの密度で播種し、10%牛胎児血清、100 U/100 ng ペニシリンストレプトマイシンを含むD−MEM培地中で、37℃・5%COの条件下で培養を行った。
【0036】
次に、分化誘導について説明する。分化誘導は、4〜5日間の前培養によってコンフルエントにした後、10%牛胎児血清を含むD−MEMにインスリン,3−isobutyl−methylxanthine,dexamethasoneをそれぞれ最終濃度2
μM、0.25 mM、1 μMで溶解し、3T3−L1の分化誘導に供した。
【0037】
そして、サンプルとして、EDGCBを0.25、0.50
mg/mL、5−CQAを0.5、1.0 mMの濃度で分化誘導試薬を含むD‐MEMに溶解した後、孔径0.22 μmの滅菌フィルターユニット(MILLIPORE)に通し、分化誘導と同じタイミングで添加培養に供した。
なお、コントロール試験区では分化誘導試薬を含むD‐MEMのみで培養を行った。
【0038】
脂肪細胞分化抑制効果を確認するために、GPDH活性の測定を行った。測定は、11日間の添加培養の後、2回のPBSでの洗浄を経て、グリセロール
3−リン酸脱水素酵素(GPDH)活性測定キット(タカラバイオ)を用いてGPDH活性の測定を行った。得られた測定結果は上清のタンパク量で補正を行った。なお、タンパクの定量には、BCA Protein Assay Kit (Pierce) を使用した。
GPDH活性の測定結果を下記の表1と表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
GPDH活性の測定結果は、EDGCB
0.50 mg/mL、5−CQA 1.0 mM添加区において、コントロールに対する有意な脂肪細胞のGPDH活性抑制効果が認められ、この結果は繰り返し行った実験においても同様であった。
【0042】
5.脂肪蓄積抑制効果について
先ず、マウス由来前駆脂肪細胞(3T3−L1)の培養について説明する。前培養として、3T3−L1細胞を3×10
細胞/mLの密度で播種し、10%子牛血清、100 U/100 ng ペニシリンストレプトマイシンを含むD−MEM培地中で、37℃・5%COの条件下で培養を行った。
【0043】
次に、分化誘導について説明する。分化誘導は、3〜4日間の前培養によってコンフルエントにした後、10%牛胎児血清を含むD−MEMにインスリン,3−isobutyl−methylxanthine,dexamethasoneをそれぞれ最終濃度2
μM,0.25 mM,1 μMで溶解し、3T3−L1の分化誘導に供した。
【0044】
そして、サンプルとして、EDGCBを1
mg/mLの濃度で分化誘導試薬を含むD‐MEMに溶解した後、孔径0.22 μmの滅菌フィルターユニット(MILLIPORE)に通し、分化誘導と同じタイミングで添加培養に供した。
なお、コントロール試験区では分化誘導試薬を含むD‐MEMのみで培養を行った。
【0045】
脂肪蓄積抑制効果を確認するために、TG蓄積量の測定を行った。測定は、8日間の添加培養の後、PBSで2回洗浄し、0.5%Tween20液中でセルスクレーパーを用いて細胞を回収した。30分静置後、2回の凍結融解処理を行い、遠心分離後の上清に含まれるTG蓄積量についてトリグリセライド
E−テストワコー(和光純薬工業)を用いて定量を行った後、上清のタンパク量で補正を行った。タンパクの定量にはBCA Protein Assay Kit (Pierce) を使用した。
【0046】
TG蓄積量の測定結果を図5に示す。図5は、分化誘導済3T3‐L1細胞の添加培養8日目におけるTG蓄積量を示したグラフである。
【0047】
測定結果は、コントロールに対してEDGCB添加区において有意な脂肪細胞のTG蓄積抑制効果が認められた。また、繰り返し行った実験においても同様、有意な脂肪細胞のTG蓄積抑制効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、脂肪細胞分化抑制、脂肪蓄積抑制、脂肪細胞増殖抑制、アポトーシス誘導による脂肪組織量の減少促進の効果を有し、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー生豆抽出物を含有する剤であって、抽出物中の関与成分が、3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4,5−diCQA、3−FQA、4−FQA、5−FQAからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分であることを特徴とするメタボリックシンドローム予防剤。
【請求項2】
前記コーヒー生豆抽出物は、超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物であることを特徴とする請求項1に記載のメタボリックシンドローム予防剤。
【請求項3】
超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を含有する、メタボリックシンドローム予防剤。
【請求項4】
脂肪蓄積抑制作用を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタボリックシンドローム予防剤。
【請求項5】
前駆脂肪細胞から脂肪細胞に至るまでの脂肪細胞分化抑制による脂肪組織量減少促進作用を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタボリックシンドローム予防剤。
【請求項6】
脂肪細胞増殖抑制による脂肪組織量減少促進作用を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタボリックシンドローム予防剤。
【請求項7】
アポトーシス誘導による脂肪組織量減少促進作用を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタボリックシンドローム予防剤。
【請求項8】
超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を含有する抗肥満剤。
【請求項9】
超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を含有する脂肪蓄積抑制剤。
【請求項10】
超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を含有する、前駆脂肪細胞から脂肪細胞に至るまでの脂肪細胞分化抑制による脂肪組織量減少促進剤。
【請求項11】
超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を含有する、脂肪細胞増殖抑制による脂肪組織量減少促進剤。
【請求項12】
超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を含有する、アポトーシス誘導による脂肪組織量減少促進剤。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかにおいて、前記脂肪は、胴回り及び内臓に分布する白色脂肪であること。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれかにおいて、前記コーヒー生豆抽出物中の関与成分が、3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−diCQA、3,5−diCQA、4,5−diCQA、3−FQA、4−FQA、5−FQAからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分であること。
【請求項15】
請求項2,3,8〜12のいずれかにおいて、前記超臨界流体処理工程は、超臨界流体の二酸化炭素を用いて、圧力10 MPa以上の高圧、65〜80℃の高温で、抽出処理されること。
【請求項16】
請求項15の超臨界流体処理工程において、原料となるコーヒー生豆は、粉砕径3〜5mmとすること。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載の剤を含有する医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれかに記載の剤を含有する飲食品。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれかに記載の剤を含有する化粧品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−57561(P2011−57561A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205383(P2009−205383)
【出願日】平成21年9月5日(2009.9.5)
【出願人】(390006600)ユーシーシー上島珈琲株式会社 (28)
【出願人】(592156482)大峰堂薬品工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】