説明

メラニン含有層を含む光学積層体および該積層体を含む光学製品

【課題】メラニン含有層を含む光学積層体および該積層体を含む光学製品、特に、メラニン含有層を含む光学積層体に含有されるメラニン濃度を高め、紫外線から目を保護する性能に優れたメラニン含有層を含む光学積層体および該光学積層体を含む光学製品を提供する。
【解決手段】本発明の光学積層体は、メラニン含有層を含む光学積層体であり、前記メラニン層がメラニン、重合性モノマー、およびウレタン系組成物を少なくとも含む組成物を硬化させて形成され、本発明の光学積層体用組成物は、上述の光学積層体の製造に用いる光学積層体用組成物であり、メラニン、重合性モノマー、およびウレタン組成物を少なくとも含み、本発明の光学製品は、上述の光学積層体を含んで形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン含有層を含む光学積層体および該積層体を含む光学製品に関し、詳しくは、メラニン含有層を含む光学積層体に含有されるメラニンの濃度を高め、紫外線から目を保護する性能に優れたメラニン含有層を含む光学積層体および該積層体を含む光学製品に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンは広く動植物界に存在し、紫外線を吸収することにより有害な紫外線から目や皮膚を保護することが知られている。従来から、動植物に存在するメラニンの他に、カテコール等のメラニン前駆体を水溶液中で酸化することで合成メラニンが得られることが知られている。そこで、このメラニンの性質を利用して、紫外線から目を保護することができる、メラニンを含有する光学積層体の開発が期待されている。
【0003】
従来、カテコール等のメラニン前駆体を水溶液中で酸化することで得られる水溶性メラニンの製造方法が開示されている(下記特許文献1および2)。
【0004】
上述のようにして得られるメラニンを、塩の共存下に有機溶媒で抽出して機能性フィルムに用いることが提案されている(下記特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特表平8−500371号公報
【特許文献2】特表2002−533516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の方法では、メラニンは基本的には水溶性であり、有機溶媒への溶解性が低いため、濃縮などでもメラニンが高濃度の溶液とすることができない。このため、メラニンが高濃度で含有される機能性フィルムを製造するには複雑な工程を必要とするなどの問題点を有する。例えば、2度塗り、3度塗りなどのような煩雑な操作が必要となる。
【0007】
本発明者らは、上述のようにして得られるメラニンが水溶性のため、水に溶かして水溶液とし、親水性の高いポリビニルアルコール・フィルムをこの水溶液に浸漬する方法(以下、「浸漬法」という。)を開発した。この方法によれば、メラニンを含浸させたポリマーフィルムを製造できる。
【0008】
しかし、この浸漬法では親水性フィルムの使用が必須条件となり、親水性がないか不十分なポリマーフィルムにこの方法を適用することができないという問題点がある。
【0009】
また、従来の浸漬法には連続的に処理できる利点があるが、浸漬液への老廃物の蓄積のため、浸漬液が経時的に老化するという欠点を有する。このため、浸漬液を定期的に廃棄し、新たに調製し直すことが必要であるため、コスト、時間および人手を要するという問題点もある。
【0010】
一方、本発明者らは、偏光層と調光層とを積層することにより偏光特性および調光特性を併せ持つ光学積層体を製造し、これを用いて機能性フィルムを作る方法も開発した。しかし、この方法は目を保護するためのメラニンを含有するという技術的な思想を含まず、メラニンを溶解させることもできないという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、メラニン含有層を含む光学積層体および該積層体を含む光学製品、特に、メラニン含有層を含む光学積層体に含有されるメラニンの濃度を高め、紫外線から目を保護する性能に優れたメラニン含有層を含む光学積層体および該光学積層体を含む光学製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、メラニンを高濃度で溶解させることができる系について鋭意研究をすすめたところ、重合性モノマーおよびウレタン系組成物の混合系がメラニンを高濃度に溶解することができること、さらにメラニンを高濃度に含有する重合性モノマーおよびウレタン系組成物の混合系が、光学積層体の形成に好適な接着性のメラニン含有層となり得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は上記の技術的思想に基づくものであり、具現化された形態として下記の発明を提供するものである。
〔1〕 メラニン含有層を含む光学積層体であって、前記メラニン層がメラニン、重合性モノマー、およびウレタン系組成物を少なくとも含む組成物を硬化させて形成されることを特徴とする光学積層体。
〔2〕 前記メラニン層のメラニン含有率が1.5重量%以上であることを特徴とする〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕 前記メラニンが、ユーメラニン,フェオメラニン、アロメラニンからなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記重合性モノマーが、(メタ)アクリル酸エステルまたはアクロイルモノマーであることを特徴とする〔1〕から〔3〕いずれかに記載の光学積層体。
〔5〕 前記(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルからなる群から選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする〔4〕に記載の光学積層体。
〔6〕 前記アクロイルモノマーが、N−アクロイルモルフォリンおよびN−アクロイル−2−ピロリドンの少なくとも1つであることを特徴とする〔4〕に記載の光学積層体。
〔7〕 前記ウレタン系組成物が、ポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤からなる熱硬化性組成物であることを特徴とする〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔8〕 メラニン層と、該メラニン層の両面を挟む2つの透明樹脂層とからなることを特徴とする〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔9〕 偏光フィルムと、該偏光フィルムの両面を挟むメラニン層および調光層と、さらには前記メラニン層および調光層の外面を挟む2つの透明樹脂層とからなることを特徴とする〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔10〕前記透明樹脂が、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする〔8〕または〔9〕に記載の光学積層体。
〔11〕前記透明樹脂がポリカーボネートであることを特徴とする〔8〕または〔9〕に記載の光学積層体。
〔12〕〔1〕から〔11〕のいずれかに記載の光学積層体の製造に用いる光学積層体用組成物であって、メラニン、重合性モノマー、およびウレタン組成物を少なくとも含むことを特徴とする光学積層体。
〔13〕前記メラニンが、ユーメラニン,フェオメラニン、アロメラニンからなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする〔12〕に記載の光学積層体。
〔14〕前記重合性モノマーが、(メタ)アクリル酸エステルまたはアクロイルモノマーであることを特徴とする〔12〕または〔13〕いずれかに記載の光学積層体。
〔15〕前記ウレタン系組成物が、ポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤からなる熱硬化性組成物であることを特徴とする〔12〕または〔14〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔16〕〔1〕から〔11〕のいずれかに記載の光学積層体を含んで形成されるメラニン含有光学製品。
〔17〕偏光レンズ、偏光板、サングラス、ゴーグル、自動車のガラス、窓ガラス、サンバイザーからなる群から選択されるいずれか1つである〔16〕に記載のメラニン含有光学製品。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる光学積層体は、高濃度のメラニンを含有することができるため、紫外線から目を保護する性能に優れた光学製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
すなわち、本発明の光学積層体は、メラニン含有層を含む光学積層体であって、前記メラニン層がメラニン、重合性モノマー、およびウレタン系組成物を少なくとも含む組成物を硬化させて形成されることを特徴とする。重合性モノマーおよびウレタン系組成物の混合系を用いることにより、メラニンを高濃度に溶解することができ、さらにメラニンを高濃度に含有する重合性モノマーおよびウレタン系組成物の混合系を接着性のメラニン含有層とすることにより、紫外線から目を保護する性能に優れた光学積層体を形成することができる。
【0016】
前記メラニンとしては、天然または合成した各種のメラニンを用いることができるが、コスト的に人工的に合成したメラニンを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ユーメラニン、フェオメラニン、アロメラニンおよびそれらの誘導体を挙げることができる。
【0017】
前記メラニンに加えて、紫外線吸収能をさらに補助する意味で、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収材を加えることもできる。
【0018】
前記重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルおよびアクロイルモノマーが好ましい。さらに重合度2〜10程度のそれらのオリゴマーを用いることもできる。重合度が高すぎるとメラニンの溶解度が低下し好ましくない。
【0019】
前記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどを挙げることができる。
【0020】
前記アクロイルモノマーの具体例としては、N−アクロイルモルフォリン、N−アクロイル−2−ピロリドンなどを挙げることができる。
【0021】
前記ウレタン系組成物の具体例としては、ポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤よりなる2液型の熱硬化性組成物を挙げることができる。
【0022】
前記ポリウレタンプレポリマーとしては、ジイソシアネート化合物とポリオキシアルキレンジオールとを一定割合で反応させた化合物であって、両末端にイソシアネート基を有する化合物が好ましい。
【0023】
前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニールメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。これらのなかでも、ジフェニールメタン−4,4’−ジイソシアネートが好ましい。
【0024】
前記ポリオキシアルキレンジオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールを挙げることができる。これらなかでも、5〜30の重合度を有するポリプロピレングリコールが好ましい。
【0025】
前記ポリウレタンプレポリマーの分子量は、数平均分子量で500〜5000であり、好ましくは1500〜4000、より好ましくは2000〜3000である。ここで数平均分子量とは、末端基定量法、沸点上昇法、凝固点降下法、浸透圧法、およびゲル浸透クロマトグラフィーなどの方法によって求められる平均分子量のことをいう。
【0026】
前記硬化剤としては、水酸基を2個以上有する化合物であれば、特に限定されない。このような化合物としては、例えば、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。これらの中でも特定のイソシアネートと特定のポリオールから得られる、末端に水酸基を有するポリウレタンポリオールが好ましく、特にジイソシアネート化合物とポリオールから誘導される少なくとも両末端に水酸基を有するポリウレタンポリオールがさらに好ましい。
【0027】
前記硬化剤に用いるジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニールメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートを挙げることができ、なかでも、トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0028】
前記硬化剤に用いるポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン等をエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイドと反応させて得た化合物を挙げることができ、なかでも、重合度が5〜30のポリプロピレングリコール誘導体が好ましい。
【0029】
前記硬化剤の分子量は数平均分子量で500〜5000であり、好ましくは1500〜4000、より好ましくは2000〜3000である。
【0030】
前記ウレタン系組成物として用いるポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤には、粘度調節のために酢酸エチルおよびテトラヒドロフランなどの溶媒を使用することができる。これらの溶媒の使用は、特に、フォトクロミック化合物をウレタン樹脂中に均一に分散させるために有効な方法である。
【0031】
前記重合性モノマーとウレタン系組成物の混合比率は、重合性モノマーが10〜80%となる比率が用いられる。重合性モノマーが10%以下ではメラニンの溶解性が弱くなり、80%以上では積層体の接着力が弱くなる。
【0032】
前記重合性モノマーとウレタン系組成物からなる層の厚みは、約10〜200μmが好ましい。厚みが薄過ぎると積層体の接着力が弱くなり、厚すぎるとメラニンや調光色素等の含有物により光透過率が低下する。
【0033】
前記メラニン層のメラニン含有率は、メラニンとしてユーメラニン、フェオメラニン、アロメラニンのような合成メラニンを用いた場合、約1.0重量%以上である。紫外線の吸収を低減させる点から、メラニンの含有率は、約1.5重量%以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の光学積層体の具体例として、例えば、メラニン層と、該メラニン層の両面を挟む2つの透明樹脂層とからなる光学積層体、および偏光フィルムと、該偏光フィルムの両面を挟むメラニン層および調光層と、さらに前記メラニン層および調光層の外面を挟む2つの透明樹脂層とからなる光学積層体などを挙げることができる。
【0035】
前記光学積層体に用いる前記偏光フィルムは、基本的にはある程度の耐熱性さえ有すれば、特に限定されず、所定の樹脂で形成された偏光シートを用いることができる。このような偏光シートとしては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されてなることが好ましい。
【0036】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、特に限定なく一般的なポリビニルアルコール系フィルムであれば使用することができる。このようなポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。これらのポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
【0037】
前記偏光フィルムの厚みは特に制限はないが、薄いと破れやすく、厚いと光透過率が低下するため、約10μm〜50μmが好ましい。
【0038】
前記偏光フィルムとしては、2色性色素を含むものが耐熱性に優れるために好ましい。例えば、前記ポリビニルアルコール樹脂の場合には、2色性色素溶液中に該樹脂を室温〜50℃の加温下で浸漬することにより染色することができる。
【0039】
前記偏光フィルムの製造に用いる前記色素としては、例えばクリソフェニン(C.I.24895)、クロランチンファストレッド(C.I.28160)、シリウスイエロー(C.I.29000)、ベンゾパープリン(C.I.23500)、ダイレクトファーストレッド(C.I.23630)、ブリリアントブルーB(C.I.24410)、クロラゾールブラックBH(C.I.22590)、ダイレクトブルー2B(C.I.22610)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ジアミングリーン(C.I.30295)、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)、ダイレクトコッパーブルー2B(C.I.24185)、ニッポンブリリアントヴァイオレットBKconc(C.I.27885)、コンゴーレッド(C.I.22120)、アシドブラックC.I.20470)等が挙げられ、これらの色素の中から目的に応じて2色以上の色素を選択して用いることができる。なお、括弧内には、有機合成協会編「新版 染料便覧」(丸善株式会社、1970年)に記載のColour Index No.を示した。
【0040】
前記偏光フィルムは、さらに耐熱性および耐溶剤性を付与するために、金属化合物およびほう酸により処理することもできる。
【0041】
また、前記光学積層体に用いる調光色素であるフォトクロミック化合物としては、ウレタン系接着剤との相溶性が良ければ特に制限されず、市販の有機フォトクロミック化合物が使用できる。この中でも、フォトクロミック性能から、スピロベンゾピラン誘導体、ナフトピラン誘導体およびスピロオキサジン誘導体が好ましい。これらの有機フォトクロミック化合物の中でも、特に、耐光性の点からスピロオキサジン誘導体が好ましい。
【0042】
また、調光色素の寿命を確保するために、ヒンダードアミン系の光安定剤やヒンダードフェノール等の酸化防止剤等を安定剤として添加することができる。
【0043】
前記光学積層体に用いる前記透明樹脂としては、基本的にはある程度の耐熱性さえあれば特に限定されないが、好ましくは、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレ−ト系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、トリアセチルセルロ−ス系樹脂、ポリエステル系樹脂などを挙げることができる。この中でも、各種ポリカーボネート樹脂、TACに代表される酢酸セルロース、プロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、各種アクリル系樹脂、ポリエチレンナフタレレートやポリエチレンテレフタレート、あるいは優れた光学特性を有するフルオレン系ポリエステル樹脂、「ARTON」、「Zeonoa」、「APEL」等に代表される脂環式オレフィン系樹脂などがより好ましく、機械的強度および耐熱性の特性の点からポリカ−ボネート系樹脂がさらに好ましい。
【0044】
透明樹脂の厚みは、薄過ぎると機械的強度が弱くなり、厚すぎると加工性が悪くなるため、約20μm〜2mmが好ましい。
【0045】
本発明の光学積層体用組成物は、上述の光学積層体の製造に用いる光学積層体用組成物であり、メラニン、重合性モノマー、およびウレタン組成物を少なくとも含むことを特徴とする。前記メラニンが、ユーメラニン、フェオメラニン、アロメラニンからなる群から選択されるいずれか1つであることが好ましく、前記重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルまたはアクロイルモノマーであることが好ましく、前記ウレタン系組成物が、ポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤からなる熱硬化性組成物であることが好ましい。
【0046】
本発明の光学積層体用組成物に用いるメラニン、重合性モノマー、およびウレタン組成物は、上述の本発明の光学積層体で記載されるメラニン、重合性モノマー、およびウレタン組成物と同様である。
【0047】
本発明の光学製品は、上述の光学積層体を含んで形成されることを特徴とする。この光学製品として、偏光レンズ、偏光板、サングラス、ゴーグル、自動車のガラス、窓ガラス、サンバイザーを挙げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限を受けるものではない。
【0049】
<製造例1>ユーメラニンの製造
攪拌機およびオーバーフロー口を有する1Lの反応器に、200g/Lのカテコール、および500g/Lの過硫酸ナトリウムを、おのおの2.7mL/分で供給した。100g/Lの水酸化ナトリウムを用いてPHを9.5±0.2に、反応温度を35℃±0.1℃に管理した。オーバーフローした反応液を、塩酸を用いてPH1とした。析出するメラニンをろ過し、洗浄後のpHが6となるまで50g/Lの硫酸ナトリウムを含む水溶液で洗浄した。その後、70℃で1日乾燥して粉末状ユーメラニンを得た。
【0050】
<製造例2>偏光フィルムの製造
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製、商品名:クラレビニロン#750)をクロランチンファストレッド(C.I.28160)0.25g/L、クリソフェニン(C.I.24895)0.18g/L、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)1.0g/Lおよび硫酸ナトリウム10g/Lを含む水溶液中で35℃で3分間染色した。この染色フィルムを酢酸ニッケル2.5g/Lおよびほう酸6.6g/Lを含む水溶液中35℃で3分浸漬し、溶液中で4.5倍に延伸した。ついでそのフィルムを緊張状態が保持された状態のまま水洗、乾燥を行った後、70℃で3分間加熱処理し、偏光フィルムを得た。
【0051】
本発明の3層メラニン含有積層体の製造
<実施例1>
合成例1で得られたメラニン7重量部を、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)93重量部に溶解し、該メラニン溶液10重量部をウレタンプレポリマー(東洋モートン株式会社製、商品名:オリバインBHS6020A)40重量部および硬化剤(東洋モートン株式会社製、商品名:オリバインBHS6020C)4重量部と混合した。
【0052】
該混合液を、100ミクロンのクリアランスを有するドクターブレード(ヨシミツ精機株式会社製)を用い、厚さ300ミクロンのポリカーボネートシート(三菱ガス化学株式会社製、商品名ユーピロンシート)上に塗布し、40℃の熱風乾燥機に10分間入れ、溶媒を揮発させた。この塗布層の上に厚み300μmのポリカーボネートシートを積層し、ラミネーター(三芝商事株式会社製)を用いて、4.0kg/cm2のニップ圧で張り合わせた。40℃で3日間エージング後、さらに70℃で3日間加熱硬化させ、メラニンを中間層に含む透明な3層積層体を得た。
【0053】
メラニンを含む中間層の厚みは25ミクロン(多層膜厚計;グンゼ株式会社製、DC−8200型)であった。フィルム中のメラニン含有率は1.8重量%であり、塗布液の調合比より計算される1.7重量%とよく一致した。(得られたフィルムを細断し、pH10、50℃のアルカリ温水で24時間抽出し、HPLC分析した(株式会社島津製作所製、LC−10AT−VP、ODSカラム、リン酸緩衝液で溶離)。積層体のUVA透過率は41.7%(分光光度計;日本分光株式会社製V−550型)、UVB透過率は16.8%と穏やかな紫外線透過特性を示した。
【0054】
<実施例2および3>
実施例1におけるドクターブレードのクリアランスを、200ミクロンおよび400ミクロンに変えた以外は、実施例1と同様に行い、メラニンを中間層に含む透明な3層積層体を得た。得られた本発明の光学積層体の特性を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
<実施例4>
実施例1において、メラニン10重量部をテトラヒドロフルフリルメタクリレート90重量部に溶解した以外は、実施例1と同様に行い、メラニンを中間層に含む透明な3層積層体を得た。中間層の厚みは25ミクロン(多層膜厚計:グンゼ株式会社製、DC−8200型)であった。
【0057】
得られた本発明の光学積層体におけるメラニン層のメラニン含有率は2.5重量%であり、塗布液の調合比より計算される2.4重量%とよく一致した。UVA透過率は28.6%(分光光度計:日本分光株式会社製V−550型)、UVB透過率は7.8%と穏やかな紫外線透過特性を示した。
【0058】
<実施例5>
実施例1において、メラニン溶液10重量部に代わり、メラニン溶液30重量部および50重量部を用いてウレタンプレポリマー、硬化剤および酢酸エチルと混合した以外は、実施例1と同様に行い、メラニンを中間層に含む透明な3層積層体を得た。得られた本発明の光学積層体の特性を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
<実施例6>
実施例1において、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)に代わり、テトラヒドロフルフリルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、メラニンを中間層に含む透明な3層積層体を得た。得られた本発明の光学積層体の特性を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
<比較例1>
合成例1に従って製造したメラニンを、アンモニア水でpH8.3とした水溶液に、1.2g/Lの濃度になるように溶解させ、メラニン水溶液を得た。一方、ポリビニルアルコールフィルム(株式会社クラレ製、商品名クラレビニロン#750)を30℃の水中に5分間浸漬して水洗し、次いで30℃に調整した前述のメラニン水溶液に5分間浸漬しながら1軸方向に3.5倍延伸させた。続いて硫酸ナトリウム8g/Lを含む水溶液中に3分間浸漬し、緊張状態を保ったままフィルムを取出し、70℃で3分間乾燥してメラニン含有ポリアルコールフィルムを得た。
【0063】
このフィルムの厚みは25ミクロン(マイクロメーター:株式会社ミツトヨ製、MDQ−30型)であり、フィルム中のメラニン含有量は1.0重量%であった。PVAフィルムを温水に溶かしHPLC(株式会社島津製作所製、LC−10AT−VP,ODSカラム、リン酸緩衝液で溶離)で分析した。
【0064】
得られたメラニン含有フィルムの両面に、熱硬化型の接着剤であるウレタンプレポリマー(東洋モートン株式会社製、商品名:オリバインBHS6020A)および硬化剤(東洋モートン株式会社製、商品名:オリバインBHS6020C)を塗布し、実施例1と同様の操作により厚み300μのポリカーボネートシート(三菱ガス化学株式会社製、商品名ユーピロンシート)を貼り合わせた後、熱硬化させ、メラニン含有PVA層を含む積層体を得た。接着剤層を含めたPVA層厚みは40μmであった。
【0065】
得られた積層体のUVA透過率は60.1%、UVB透過率は36.6%であった。メラニン水溶液の濃度を高めるとメラニンの染色ムラが生じてしまうため、PVAフィルムへの含浸濃度はこれ以上あげることはできなかった。又、メラニン溶液は、染色処理量の増加と共に老廃するので定期的な更新が不可避であった。
【0066】
<比較例2>
比較例2においては、比較例1におけるポリビニルアルコールの延伸倍率を1.7倍とし染色時間を40分とした以外は比較例1と同様に行った。得られた積層体のUVAおよびUVB透過率はそれぞれ41.8%、19.8%であったが、ポリビニルアルコールフィルムのメラニン含有量は0.7%でありフィルムには染色ムラがあり染色時間も長時間を必要とした。得られた積層体の特性を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
<比較例3および4>
実施例1のテトラヒドロフルフリルメタクリレーに代えて、それぞれメタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸メチルにした以外は実施例1と同様にしてウレタン系組成物を調製した。反応性モノマーへの溶解性が殆んどなく、メラミン含有組成物が得られなかった。
【0069】
本発明の3層メラニン含有光学積層体の実施例1〜6および比較例1〜4について、表5にまとめた。表5から明らかなように、本発明の3層メラニン含有光学積層体では比較例に比較して、高濃度のメラニンが含有され、光透過率が低下することが判明した。
【0070】
【表5】

【0071】
<実施例7>本発明のメラニン含有光学積層体組成物の調製
実施例1と同様にして、メラニンを含有する硬化性樹脂組成物を調製し、該組成物を厚さ300ミクロンのポリカーボネートシート(三菱ガス化学株式会社製、商品名ユーピロンシート)上に100ミクロンのクリアランスを有するドクターブレード(ヨシミツ精機株式会社製)を用いて塗布した。その後40℃の熱風乾燥機に10分間入れ、溶媒を揮発させた。その後、塗布層の上に、<製造例2>で得られた偏光フィルムを積層し、ラミネーター(三芝商事株式会社製)を用いて、4.0kg/cm2のニップ圧で張り合わせ、積層体Aとした。メラニン層の厚みは25ミクロンであった。積層体Aにおけるメラニン層のメラニン含有率は1.7重量%であり、塗布液の調合比より計算される1.7重量%とよく一致した。
【0072】
一方、調光色素4−[4−〔6−(4−モルフォニル)−3−フェニル−3H−ナフト(2,1−b)ピラン−3−イル〕フェニル]−モルフィン(商品名:Reversacol Flame,James Robinson LTD社製)0.1重量部および紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名:Tinuvin 400)0.05重量部をウレタンプレポリマー(東洋モートン株式会社製、商品名:オリバインBHS6020A)100重量部、硬化剤(東洋モートン株式会社製、商品名:オリバインBHS6020C)0.8重量部と混合し、厚さ300ミクロンのポリカーボネートシート(三菱ガス化学株式会社製、商品名ユーピロンシート)上に100ミクロンのクリアランスを有するドクターブレード(ヨシミツ精機株式会社製)を用いて塗布した。その後40℃の熱風乾燥機に10分間入れ、溶媒を揮発させ、積層体Bとした。
【0073】
次いで前記積層体Aの偏光層の上に積層体Bの調光層を重ねて積層し、ラミネーター(三芝商事株式会社製)を用いて、4.0kg/cm2のニップ圧で張り合わせた。40℃で3日間エージング後、さらに70℃で3日間加熱硬化させ、メラニンを含む紫外線吸収能、偏光特性および調光特性を併せ持つ透明な本発明の5層光学積層体を得た。
【0074】
得られた光学積層体のUVA透過率は0.32%(分光光度計:日本分光株式会社製V−550型)、UVB透過率は0.01%であった。光を照射しないときの可視部透過率は13.52%、偏光度は99.8%であり、偏光フィルム基板そのものの光学特性とほぼ同等であった。また、該積層フィルムに23℃においてキセノンランプ(SAN−EI ELECTRIC社製、SUPERCURE−203S)で25W/mの光を照射すると速やかに発色し、7分後の可視部透過率は9.15%と優れた調光特性を示した。
【0075】
本発明の5層メラニン含有光学積層体の実施例1について、表6にまとめた。表6から明らかなように、本発明の5層メラニン含有光学積層体では、高濃度のメラニンが含有され、光透過率が低下することが判明した。
【0076】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる光学積層体は、紫外線から目を保護する性能に優れた偏光レンズ、偏光板、サングラス、ゴーグル、自動車のガラス、窓ガラス、サンバイザーなどの光学製品に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラニン含有層を含む光学積層体であって、前記メラニン層がメラニン、重合性モノマー、およびウレタン系組成物を少なくとも含む組成物を硬化させて形成されることを特徴とする光学積層体。
【請求項2】
前記メラニン層のメラニン含有率が1.5重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記メラニンが、ユーメラニン、フェオメラニン、アロメラニンからなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記重合性モノマーが、(メタ)アクリル酸エステルまたはアクロイルモノマーであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルからなる群から選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記アクロイルモノマーが、N−アクロイルモルフォリンおよびN−アクロイル−2−ピロリドンの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記ウレタン系組成物が、ポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤からなる熱硬化性組成物であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
メラニン層と、該メラニン層の両面を挟む2つの透明樹脂層とからなることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
偏光フィルムと、該偏光フィルムの両面を挟むメラニン層および調光層と、さらに前記メラニン層および調光層の外面を挟む2つの透明樹脂層とからなることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記透明樹脂が、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項8または9に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記透明樹脂がポリカーボネートであることを特徴とする請求項8または9に記載の光学積層体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の光学積層体の製造に用いる光学積層体用組成物であって、メラニン、重合性モノマー、およびウレタン組成物を少なくとも含むことを特徴とする光学積層体用組成物。
【請求項13】
前記メラニンが、ユーメラニン、フェオメラニン、アロメラニンからなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項12に記載の光学積層体用組成物。
【請求項14】
前記重合性モノマーが、(メタ)アクリル酸エステルまたはアクロイルモノマーであることを特徴とする請求項12きたは13に記載の光学積層体用組成物。
【請求項15】
前記ウレタン系組成物が、ポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤からなる熱硬化性組成物であることを特徴とする請求項12または14のいずれか1項に記載の光学積層体用組成物。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか1項に記載の光学積層体を含んで形成されるメラニン含有光学製品。
【請求項17】
偏光レンズ、偏光板、サングラス、ゴーグル、自動車のガラス、窓ガラス、サンバイザーからなる群より選択されるいずれか1つである請求項16に記載のメラニン含有光学製品。

【公開番号】特開2007−226005(P2007−226005A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48431(P2006−48431)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(597003516)MGCフィルシート株式会社 (33)
【Fターム(参考)】