説明

メンブレンスイッチ

【課題】雰囲気温度が上昇したときに、パネル部材に面するメンブレンスイッチのシート部材の延伸が規制されることはなく、スイッチの誤動作を防止することができるスイッチを提供する。
【解決手段】スイッチにおいて、一対の電極(12c、12d)が互いに対向するように配置される一対のシート部材(12a、12b)を有するメンブレンスイッチ(12)と、シート部材(12a、12b)とは熱膨張率が異なるパネル部材(10)と、パネル部材(10)に面するシート部材(12a)と、前記パネル部材(10)と、の間に設けられ、パネル部材(10)に面するシート部材(12a)とパネル部材(10)とを相対的に移動可能に分離するための分離部材(11)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
メンブレンスイッチは、互いに対向する一対の接点用電極が貼り付けられた一対のシートからなるスイッチである。かかるメンブレンスイッチは、パネルスイッチや車両用シートの感圧スイッチ等、様々な用途に応じて使用されている。
【0003】
ここで、パネルスイッチの表示の視認性を向上させ、デザイン性の向上を図るために、自己発光による文字又は図形表示が可能なエレクトロルミネッセンス素子からなるパネルをメンブレンスイッチに貼り付けた、エレクトロルミネッセンス付きメンブレンスイッチが広く知られている。かかるエレクトロルミネッセンス付きメンブレンスイッチは、例えば車両用のパネルスイッチとして使用され、車両に搭載された機器に対する入力操作が行われる。
【0004】
メンブレンスイッチを構成する一対のシートのうちの一方のシートは、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネルに貼り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−147505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5及び図6は、従来のエレクトロルミネッセンス付きメンブレンスイッチの積層方向の断面を示す図である。先ず、図5を参照しながら説明する。エレクトロルミネッセンス付きメンブレンスイッチは、メンブレンスイッチ18とエレクトロルミネッセンス素子からなるパネル19とが積層されて構成されている。メンブレンスイッチ18は、一対の樹脂製シート18a、18bを備えている。その一対のシート18a、18bの表面には、一対の接点用電極18c、18dがそれぞれ設けられている。一対のシート18a、18bは、その一対の接点用電極18c、18dが互いに対向するように、スペーサを挟んで配置されている。互いに対向して配置される一対の電極18c、18dの間には、所定の隙間が形成されている。メンブレンスイッチ18を構成する一対のシート18a、18bのうちパネル19に面するシート18bは、パネル19に貼付されて、パネル19と一体化されている。
【0007】
次に、図6を参照しながら説明する。雰囲気温度が上昇すると、メンブレンスイッチ18を構成する一対のシート18a、18bは共に伸びようとするが、パネル19に貼り付けられている側のシート18bは、パネル19によって延伸を規制されてしまう。一方、パネル19に貼り付けられていない他方のシート18aは、雰囲気温度の上昇によって膨張する。そうすると、図6に示すように、その膨張したシート18aがパネル19に貼り付けられているシート18bの方に湾曲することによって、シート18a、18bにそれぞれ設けられている一対の接点用電極18c、18dが接触してしまい、スイッチが誤動作する恐れがある。
【0008】
特に、車両用のパネルスイッチにおいては、環境温度範囲が広いため、誤動作する恐れが大きいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、それぞれ電極を備え、それらの電極が互いに対向するように配置される一対のシート部材を有するメンブレンスイッチと、前記シート部材とは熱膨張率が異なるパネル部材と、前記一対のシート部材のうち前記パネル部材に面するシート部材と、前記パネル部材と、の間に設けられ、前記パネル部材に面するシート部材と前記パネル部材とを相対的に移動可能に分離するための分離部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、メンブレンスイッチを構成する一対のシート部材のうちパネル部材に面するシート部材とパネル部材とは相対的に移動可能であるため、雰囲気温度が上昇しても、パネル部材に面するシート部材の延伸が規制されることはなく、スイッチの誤動作を防止することができる。
【0011】
本発明のスイッチであって、前記分離部材は、0.01mm〜0.1mmの直径を有する粒子であることが好適である。
【0012】
かかる構成によれば、微小粒子を用いることで、パネル部材に面するシート部材とパネル部材との滑らかな相対移動を実現することができる。
【0013】
本発明のスイッチであって、前記分離部材は、セラミック粒子であることが好適である。
【0014】
本発明のスイッチであって、前記パネル部材は、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネル部材であることが好適である。
【0015】
特に、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネルをメンブレンスイッチと組み合わせて用いる場合に、上記問題が発生することが多かったが、本発明の構成によれば、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネルとメンブレンスイッチとを相対的に移動可能に分離できるため、上記問題が発生することはない。
【0016】
本発明のスイッチであって、前記メンブレンスイッチと前記分離部材と前記パネル部材との積層体を収納するハウジングを更に備え、前記積層体は、前記積層体の外縁に面する前記ハウジングの壁面に設けられた弾性部材によって、積層方向とは垂直な方向に押圧され、前記ハウジング内に固定されることが好適である。
【0017】
かかる構成によれば、メンブレンスイッチと分離部材とパネル部材との積層体をハウジング内に位置決めして固定することができる。また、雰囲気温度が上昇して、メンブレンスイッチのシート部材が熱膨張しても、その膨張を弾性部材で吸収することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、雰囲気温度が上昇しても、パネル部材に面するシート部材の延伸が規制されることはなく、スイッチの誤動作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に従って説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る車両用パネルスイッチの正面図である。図2は、図1のA−A線断面を示す図面である。説明の便宜上、先ず図2を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態に係る車両用パネルスイッチは、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネル10と、セラミック粒子からなる分離部材11と、メンブレンスイッチ12と、これらを収納し、車両のインパネ等に組み付けられるハウジング13と、から構成される。パネル10と分離部材11とメンブレンスイッチ12との積層体は、ハウジング13内に積層方向に密着して収納されている。この積層体の積層方向端部の面に面するハウジング13の壁面には開口部14が設けられ、この開口部14を通じて、外部からパネル10の表面を視認することができる。
【0022】
図3は、図2のB部分を拡大した図面である。以下、図3を参照しながら説明する。パネル10は、有機EL層と、酸化インジウム(ITO)等からなる電極と、をガラス等の基板上に積層させたエレクトロルミネッセンス素子からなる。有機EL層は、公知の構成のものが用いられ、例えば電子輸送層、発光層、正孔輸送層から構成される。電極に交流電圧又は直流電圧を印加することによって、有機EL層からの発光を得ることができ、印加される電圧の強さにより発光する輝度が変化する。
【0023】
メンブレンスイッチ12は、一対のシート12a、12bを備える。その一対のシート12a、12bの表面には、一対の接点用電極12c、12dがそれぞれ設けられている。一対のシート12a、12bは、一対の接点用電極12c、12dが互いに対向するようにスペーサ12eを挟んで配置される。互いに対向して配置される一対の電極12c、12dの間には、所定の隙間Dが形成されている。
【0024】
一対のシート12a、12bは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料をフィルム状に加工して形成され、その熱膨張率は、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネル10よりも大きい。上記シート12a、12bについては、メンブレンスイッチに要求される耐熱性等の各種条件に応じて種々の材料を選択することが可能である。該シート12a、12bの電極12c、12dを形成する材料としては、銅、銀等の金属からなる金属箔、銀ペースト等の導電ペースト等が用いられる。
【0025】
本実施形態のメンブレンスイッチ12においては、一対のシート12a、12bのうちパネル10に面するシート12a側から荷重が加わると、シート12aの、スペーサ12eと接触していない部分が変形し、シート12aの接点用電極12cが、他方のシート12bの電極12dと接触して導通状態となる。
【0026】
分離部材11は、微小粒子からなる。分離部材11を構成する微小粒子は、パネル10に面するシート12aとパネル10との間に、均一に薄く敷設される。パネル10に面するシート12aとパネル10は、分離部材11によって相対的に移動可能に分離される。そうすると、雰囲気温度が上昇したときであっても、パネル10に面するシート12aは、パネル10によってその延伸を規制されることなく自由に熱膨張する。従って、スイッチの誤動作が引き起こされることはない。
【0027】
本実施形態においては、分離部材11を構成する粒子の直径は、例えば0.01mm〜0.1mmである。かかる構成によれば、パネル10に面するシート12aとパネル10との間隔を小さくすることができ、パネルスイッチの一層の薄型化を図ることができる。また、直径が0.01mm〜0.1mmの微小粒子を用いることで、パネル10に面するシート12aとパネル10との滑らかな相対移動を実現できる。なお、粒子の直径は、パネルスイッチの薄型化の観点からすると、0.01mm〜0.1mmの範囲内において、より小さい方が好ましいが、シート12aとパネル10との滑らかな相対移動とパネルスイッチの薄型化を達成できる範囲で種々の変更が可能である。
【0028】
なお、従来のパネルスイッチにおいては、パネルに接触するメンブレンスイッチのシートが所定値以上の厚さを有していれば、パネルに接触するシートの、パネルと接触している面の反対側の面では、パネルによる規制の影響が軽減される。本実施形態においては、直径が0.01mm〜0.1mmの微小粒子からなる分離部材11によって、シート12aとパネル10が相対的に移動可能に分離されるので、シート12aの厚さを上記所定値以上とする必要はない。本実施形態の構成によれば、スイッチ誤動作の防止とスイッチの薄型化の両立を図ることができる。
【0029】
本実施形態においては、分離部材11は、例えばセラミック粒子からなる。なお、これに限らず種々の変更が可能であり、例えば、分離部材11をプラスチック等からなる粒子で構成しても良い。分離部材11を構成する粒子の種類は、パネル10に面するシート12aとパネル10とを相対的に移動可能に分離するという目的を達成できる範囲内において種々の変更が可能である。
【0030】
次に、図1を参照しながら操作用スイッチ部15の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両用パネルスイッチを正面から見た図面である。パネル10の表面には操作用スイッチ部15が印刷されている。操作用スイッチ部15は、ハウジング13に設けられた開口部14を通じて、外部から視覚することができる。操作用スイッチ部15の印刷面の裏側には、操作用スイッチ部15に対応するように、メンブレンスイッチ12を構成する一対のシート12a、12bに設けられた一対の電極12c、12dが配置されている。そして、操作者が、操作用スイッチ部15を押圧すると、操作用スイッチ部15の印刷面の裏側に配置された、メンブレンスイッチ12のパネル10に面するシート12a、が変形し、シート12aの接点用電極12cが、他方のシート12bの接点用電極12dと接触して導通状態となる。
【0031】
図4は、図2のC−C線断面を示す図面である。上述したように、ハウジング13内には、パネル10と分離部材11とメンブレンスイッチ12との積層体が収納されている。ハウジング13の、積層体の外縁に面する壁面16には弾性部材17が設けられている。積層体は、この弾性部材17によって、積層方向とは垂直な方向に押圧されてハウジング13内に位置決めして固定されている。かかる構成によれば、雰囲気温度が上昇して、メンブレンスイッチ12を構成する一対のシート12a、12bが熱膨張しても、その膨張を弾性部材17で吸収することができる。
【0032】
本実施形態においては、弾性部材17の形状は、例えば半円柱形状としているが、これに限らず種々の変更が可能である。例えば、弾性部材17の形状は、円柱形状であっても良いし、直方体形状や立方体形状であっても良く、シート12a、12bの熱膨張を吸収するという目的を達成できる範囲内で種々の変更が可能である。
【0033】
本実施形態においては、ハウジング13の、積層体の外縁に面する壁面16には、複数の弾性部材17が設けられている。そして、上記積層体の外縁のうち、隣り合う2つの外縁は、ハウジング13の壁面16に設けられた複数の弾性部材17と接触し、これらの弾性部材17によって、積層方向とは垂直な方向に押圧されている。上記積層体の外縁のうち、他の隣り合う2つの外縁は、ハウジング13の、複数の弾性部材17が設けられていない壁面に接触している。
【0034】
上記本実施形態の構成は、一実施例に過ぎず、種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、複数の弾性部材17の代わりに、1本の弾性材からなるシートを壁面16に取り付け、その弾性材シートと積層体の外縁とを接触させ、積層体の外縁が弾性材シートによって覆われているという態様であっても良い。そのような態様によれば、分離部材11を構成する微小粒子を確実にシールすることができる。
【0035】
本実施形態においては、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネル10を、分離部材11を介してメンブレンスイッチ12に積層させるという例を中心に説明したが、これに限らず種々の変更が可能である。例えば、メンブレンスイッチ12を押さえるための板状のパネル部材をメンブレンスイッチ12に積層させるという態様であっても良く、種々のパネル部材をメンブレンスイッチ12に積層させることが可能である。
【0036】
本実施形態においては、本発明を車両用パネルスイッチに適用した例を中心に説明したが、これに限らず種々の変更が可能である。例えば、液晶モニターのパネルスイッチに本発明を適用しても良いし、家電製品などのパネルスイッチに本発明を適用しても良い。本発明は、特に、雰囲気温度の変化が大きい環境下で用いられるパネルスイッチに適用するのが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るパネルスイッチの正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパネルスイッチのA−A線断面を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るパネルスイッチの要部であるB部分の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係るパネルスイッチのC−C線断面を示す図である。
【図5】従来のパネルスイッチの積層方向の断面を示す図である。
【図6】従来のパネルスイッチにおいて、雰囲気温度が上昇したときに、メンブレン スイッチを構成するシートの熱膨張による変形を表した図面である。
【符号の説明】
【0038】
10 パネル、11 分離部材、12 メンブレンスイッチ、12a,12b シート、12c,12d 電極、12e スペーサ、13 ハウジング、14 開口部、15 操作用スイッチ部、16 壁面、17 弾性部材、18 メンブレンスイッチ、18a,18b シート、18c,18d 電極、18e スペーサ、19 パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ電極を備え、それらの電極が互いに対向するように配置される一対のシート部材を有するメンブレンスイッチと、
前記シート部材とは熱膨張率が異なるパネル部材と、
前記一対のシート部材のうち前記パネル部材に面するシート部材と、前記パネル部材と、の間に設けられ、前記パネル部材に面するシート部材と前記パネル部材とを相対的に移動可能に分離するための分離部材と、を備えることを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチであって、
前記分離部材は、0.01mm〜0.1mmの直径を有する粒子であることを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチであって、
前記分離部材は、セラミック粒子であることを特徴とするスイッチ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のスイッチであって、
前記パネル部材は、エレクトロルミネッセンス素子からなるパネル部材であることを特徴とするスイッチ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のスイッチであって、
前記メンブレンスイッチと前記分離部材と前記パネル部材との積層体を収納するハウジングを更に備え、
前記積層体は、前記積層体の外縁に面する前記ハウジングの壁面に設けられた弾性部材によって、積層方向とは垂直な方向に押圧され、前記ハウジング内に固定されることを特徴とするスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−152954(P2008−152954A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337039(P2006−337039)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】