説明

モータ及び電動ポンプ

【課題】 樹脂層を成形する際に、2個のコアの相対的な位置ずれを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】 モータ部は、ロータとステータ50を備える。ステータ50は、第1のコアと第2のコアと樹脂層14を有する。樹脂層14は、第1及び第2のコアを覆って、第1及び第2のコアを接続すると共に、ロータを配置するための空間を形成する。樹脂層14は、第1の空隙部50bと第2の空隙部50cを備える。第1の空隙部50bは、第1のコアの第2のコアと対向する第1の対向面に接すると共に、第2のコアの第1のコアと対向する第2の対向面に接する。第2の空隙部50cは、第1のコアの表面のうちの第1のコアと第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面に接すると共に、第2のコアの表面のうちの第1のコアと第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面に接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、モータ及び電動ポンプを開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数個のコアで構成されるステータを備えるモータが開示されている。複数個のコアは、ロータの周囲を一巡するようにリング状に並んで配置されている。各コアは、隣接するコアに当接している。複数個のコアは、樹脂層で覆われている。樹脂層は、複数個のコアを成形型内に配置して、インサート成形によって成形される。成形型内に複数個のコアがセットされると、成形型に設けられている押し当てピンがスライドして、リング状の外側から内側に向けて、複数個のコアを押圧する。この結果、複数個のコアは、リング状の内側に設けられている成形型の芯金に押し当てられて、成形型に対して位置決めされる。また、複数個のコアのそれぞれは、隣接する両端のコアに当接されて、隣接する両端のコアに対して位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−17746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステータが、分離した2個のコアで構成される場合、成形型内で、2個のコアを当接させることができない。このため、引用文献1のように、コア同士を当接させることによって、コア同士の相対位置を決めることはできない。2個のコアの相対位置がずれると、ステータとロータとの間隔が一定とならない。このため、ロータの回転が安定せず、モータの効率が悪化する。本明細書では、2個のコアの相対的な位置ずれを抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示されるモータは、ロータとステータを備える。ステータは、第1のコアと、ロータを挟んで第1のコアと対向する第2のコアと、第1及び第2のコアを覆って、第1及び第2のコアを接続すると共に、ロータが配置される空間を形成する樹脂層とを、有する。第1及び第2のコアのそれぞれは、ヨークと、ヨークに設けられている3個のティースを備える。各ティースは、その後端がヨークに接続される一方でその先端がロータの外周に隙間を空けて対向している。樹脂層は、第1の空隙部と第2の空隙部とを備える。第1の空隙部は、第1のコアの第2のコアと対向する第1の対向面に接すると共に、第2のコアの第1のコアと対向する第2の対向面に接する。第2の空隙部は、第1のコアの表面のうちの第1のコアと第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面に接すると共に、第2のコアの表面のうちの第1のコアと第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面に接する。
【0006】
この構成によれば、第1のコアと第2のコアを接続する樹脂層をインサート成形により成形する際には、第1の空隙部と第2の空隙部を形成する位置には成形型の一部が配置される。第1の空隙部は、第1のコアの第1の対向面と第2のコアの第2の対向面に接している。このため、第1の空隙部が形成される位置に配置される成形型の一部には、第1のコアの対向面と第2のコアの対向面とが当接することとなる。従って、第1のコアと第2のコアとの第1の位置決めを、第1の空隙部が形成される位置に配置される成形型の一部によって行うことができる。このため、樹脂層の成形時に、第1のコアと第2のコアとが、接近する方向に位置ずれすることを抑制することができる。また、第2の空隙部は、第1のコアの表面の一部(第1のコアと第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面)と第2のコアの表面の一部(第1のコアと第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面)に接している。このため、第2の空隙部が形成される位置に配置される成形型の一部も、第1のコアの表面の一部と第2のコアの表面の一部に当接することとなる。従って、樹脂層を成形する際に、第1のコアと第2のコアとの第2の位置決めを、第2の空隙部が形成される位置に配置される成形型の一部によって行うことができる。このため、樹脂層の成形時に、第1のコアと第2のコアとが、第1のコアと第2のコアとが対向する方向に対して、垂直な方向に位置ずれすることを抑制することができる。即ち、位置ずれを抑制した状態で、樹脂層によって2個のコアの相対位置が決定されるため、2個のコアの相対的な位置ずれを抑制することができる。
【0007】
樹脂層は、さらに、第3の空隙部と第4の空隙部とを有していてもよい。第3の空隙部は、第1のコアの表面のうちの第2のコアと反対側に位置する表面に接していてもよい。第4の空隙部は、第2のコアの表面のうちの第1のコアと反対側に位置する表面に接していてもよい。この構成によれば、樹脂層をインサート成形により成形する際には、第1のコアと第2のコアとが離間する方向に位置ずれすることを抑制する第3の位置決めを、第3及び第4の空隙部が形成される位置に配置される成形型の一部によって行うことができる。この結果、樹脂層を成形する際に、第1のコアと第2のコアとが、離間する方向に位置ずれすることを抑制することができる。
【0008】
第1から第4の空隙部は、モータの下端部に開口するとともに共に、モータの下端部から上端部に向かって伸びていてもよい。第1及び第2の空隙部は、第3及び第4の空隙部よりも深くてもよい。この構成によれば、第1及び第2の位置決めを行う部分を、第3の位置決めを行う部分よりも長くすることができる。
【0009】
なお、本明細書は、上記のモータを用いた新規な電動ポンプを開示する。即ち、この電動ポンプは、上記のモータと、モータによって駆動されるインペラと、モータの上方に配置され、インペラを回転可能に収容するポンプ室と、モータを制御する制御回路と、モータの下方に配置され、制御回路を収容する制御室と、を備える。この構成によれば、樹脂層によって、ポンプ室と制御室とを隔離することができる。なお、コアの一部は、第1〜第4の空隙部に露出している。制御室がモータの下方に配置されているため、ポンプ室から第1〜第4の空隙部に流体が侵入する心配がなく、第1〜第4の空隙部を塞ぐ必要がない。
【0010】
同一のヨークに設けられる3個のティースは、当該ヨークの両端部に接続される一対の第1のティースと、当該ヨークの中央部に接続される第2のティースとを有していてもよい。第1のコアの一対の第1のティースのそれぞれは、第2のコアの一対の第1のティースのそれぞれに対向していてもよい。対向する2個の第1のティースの先端は、ロータに対向する対向範囲と、ロータに対向しない非対向範囲とを、有していてもよい。第1の対向面は、第1のコアの一対の第1のティースのそれぞれについて、当該第1のティースの非対向範囲に位置していてもよい。第2の対向面は、第2のコアの一対の第1のティースのそれぞれについて、当該第1のティースの非対向範囲に位置していてもよい。この構成によれば、第1の空隙部を、ロータとステータ(即ち、第1のティース)とが対向する範囲外に設けられる。この結果、第1の空隙部を設けるために、ロータとステータとの間隔を大きくする必要はない。
【0011】
また、本明細書は、上記のモータを用いた新規な電動ポンプを開示する。即ち、電動ポンプは、上記のいずれかのモータと、モータによって駆動されるインペラと、インペラの回転可能に収容するポンプ室と、を備える。この電動ポンプでは、上記のモータが用いられるため、ステータとロータとの間の間隔がロータの周方向でばらつくことを抑制することができる。この結果、ポンプ効率の低下を抑制することができる。
【0012】
上記の電動ポンプでは、ポンプ室とロータが配置されている空間とが連通していてもよい。樹脂層のロータと対向する面には、隣り合う2個のティースの間に、ロータの回転軸方向に伸びる溝が設けられていてもよい。この構成では、ポンプ室からロータが配置される空間に、流体が流入する。樹脂層にはロータの回転軸方向に伸びる溝が設けられているため、ロータが配置されている空間に流入した流体の流路面積を大きくすることができる。このため、流体は、溝を通過することによって、ロータが位置する空間内を円滑に流れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電動ポンプの概略縦断面図を示す。
【図2】樹脂層の成形方法を説明するための図を示す。
【図3】支持部材に載置された状態の2個のコアの平面図を示す。
【図4】支持部材に載置された状態の2個のコアの側面図を示す。
【図5】ステータの底面図を示す。
【図6】ステータの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電動ポンプ10の構成)
電動ポンプ10は、自動車のエンジンルーム内に設置され、エンジンやインバータ等を冷却する冷却水を循環するために用いられる。図1に示すように、電動ポンプ10は、ポンプ部20、モータ部40及び回路部70を備える。
【0015】
ポンプ部20は、ケーシング12の上部に形成されている。ポンプ部20は、ポンプ室26を有している。ポンプ室26には、ケーシング12に形成された吸入口22と吐出口24が接続されている。吸入口22は、ポンプ室26の上端に接続されている。吸入口22は、回転体28の回転軸が伸びる方向に伸びている。吐出口24は、ポンプ室26の外周に接続されている。吐出口24は、ポンプ室26の外周の接線方向に伸びている。ポンプ室26内には、回転体28のインペラ30が配置されている。
【0016】
モータ部40は、ポンプ部20の下方に配置されている。モータ部40は、ブラシレスモータを構成する。モータ部40は、固定軸42と、ロータ44と、ステータ50を備えている。固定軸42の下端は、ケーシング12に固定されている。固定軸42は、ケーシング12内を上下方向に伸びており、その先端はポンプ室26内に達している。固定軸42には、回転体28が回転可能に取り付けられている。回転体28は、インペラ30とロータ44を備えている。インペラ30の上面には、一定の間隔で複数枚の羽根が形成されている。インペラ30の下方には、円筒形状のロータ44が設けられている。ロータ44は、磁性材料によって形成されており、周方向に複数の磁極を有するように磁化処理が施されている。インペラ30とロータ44とは一体に連結されている。このため、ロータ44が回転すると、インペラ30も回転する。ステータ50は、ロータ44の外周側に配置され、ロータ44と対向している。ステータ50の詳細な構成については、後で詳述する。
【0017】
回路部70は、モータ部40の下方に配置されている。回路部70は、回路室74を有している。回路室74には、ステータ50への給電制御を行う制御回路72が配置されている。制御回路72は、図示しない配線により図示しない外部電源(例えば、車両に搭載されているバッテリ)に接続されている。制御回路72は、外部電源から供給される電力をモータ部40に供給する。
【0018】
(ステータ50の構成)
次に、ステータ50について詳述する。ステータ50は、2個のコア51,61と、樹脂層14を備える。各コア51,61は、複数個の電磁鋼板を積層して形成されている。2個のコア51,61は、ケーシング12を構成する樹脂層14によって覆われている。2個のコア51,61は、樹脂層14によって一体化されている。
【0019】
2個のコア51,61は、互いに離間した状態で、ロータ44を挟んで左右対称に配置されている。図3に示すように、第1のコア51は、1個のヨーク52と、3個のティース54,56,54を備える。第2のコア61は、1個のヨーク62と、3個のティース64,66,64を備える。第2のコア61は、ロータ44に対して左右対称に配置される点を除いて、第1のコア51と同一構成であるため、以下では、第1のコア51について主に説明する。
【0020】
ヨーク52は、Y方向に伸びている。ヨーク52には、3個のティース54,56,54が接続されている。3個のティース54,56,54は、その後端がヨーク52に接続される一方で、その先端がロータ44の外周に間隔を空けて対向する。ティース54,56,54は、互いに平行に配置され、ヨーク52から第2のコア61に向けてX方向に伸びている。
【0021】
3個のティース54,56,54は、ヨーク52の両端部に接続される一対の第1のティース54,54と、ヨーク52の中央部に接続される第2のティース56から構成されている。第1のティース54の先端側(ロータ44側の端)の対向面55は、後述する第1のティース64の先端側の対向面65と対向する。対向面55は、ロータ44に対向するロータ側面55aと、ロータ44に対向しない非ロータ側面55bとに区別される。ロータ側面55aは、ロータ44の外周形状に倣った形状に形成されている。非ロータ側面55bは、ヨーク52と平行に形成されている。第1のティース54の中間部55cには、コイル68が巻回されている。コイル68は、図示しない配線によって制御回路72に接続されている。
【0022】
第2のティース56の先端側(ロータ44側の端)の先端面57aは、ロータ44の外周形状に倣った形状に形成されている。また、第2のティース56の中間部57cには、コイル68が巻回されている。コイル68は、図示しない配線によって制御回路72に接続されている。
【0023】
ヨーク62と、そのヨーク62に接続される3個のティース64,66,64は、上記のヨーク52と、3個のティース54,56,54と同様の構成を備えている。即ち、3個のティース64,66,64(第1のティース64,64と第2のティース66)は、その後端がヨーク62に接続される一方で、その先端がロータ44の外周に間隔を空けて対向する。
【0024】
左右対称の位置関係にある第1のティース54と第1のティース64とは、ロータ44を挟んで対向している。より詳細には、第1のティース54のロータ側面55aは、ロータ44を挟んで、第1のティース64の先端部65のロータ側面65aと対向する。一方、第1のティース54の非ロータ側面55bは、ロータ44を挟まずに、間隔を空けて、第1のティース64の非ロータ側面65bと対向する。
【0025】
(樹脂層14の成形方法)
次いで、樹脂層14の成形方法について説明する。図2に示すように、樹脂層14は、2個のコア51,61を成形型200内に配置して成形するインサート成形により成形される。成形型200は、成形型200内で2個のコア51,61を支持する支持装置100を備える。
【0026】
樹脂層14の成形では、最初に、2個のコア51,61を、支持装置100にセットする。支持装置100は、直方体形状を有する基部材102と、2個の中央位置決め部材104と、4個の端部位置決め部材106,107を備える。各位置決め部材104〜107は、基部材102の上面からZ方向に伸びている。
【0027】
中央位置決め部材104は、基部材102の上面のX方向における中央O(図3参照)において、他方の中央位置決め部材104に対向して配置されている。各中央位置決め部材104は、下方支持部104aと第1の位置決め部104bと第2の位置決め部104cを備える。下方支持部104aは、基部材102の上面からZ方向に伸びている。下方支持部104aの上面には、1個の第1のティース54と、当該第1のティース54に対向する1個の第1のティース64とが載置される。下方支持部104aにおいて、Y方向の中央O(図3参照)側に位置する面(他の下方支持部104aに対向する側面)(以下では、単に「下方支持部104aの内面」と呼ぶ)は、ロータ44の外周形状に倣った形状に形成されている。
【0028】
各下方支持部104aの上面には、第1の位置決め部104bと第2の位置決め部104cが配置されている。2個のコア51,61が支持装置100にセットされた状態では、第1の位置決め部104bは、第1のティース54,64の非ロータ側面55b,65bの間に位置する。詳細には、第1の位置決め部104bの左側面には、第1のティース54の非ロータ側面55bが当接し、第1の位置決め部104bの右側面には、第1のティース64の非ロータ側面65bが当接する。第1の位置決め部104bは、2個のコア51,61が接近することを防止する。第1の位置決め部104bは、両側に配置される第1のティース54,64のロータ側面55a,65aに連続する曲面(即ちロータ44の外周形状に倣った形状に形成されている面)を有する。第1の位置決め部104bの高さ(下方支持部104aの上面からの高さ)は、2個のコア51,61が支持装置100にセットされた状態における各コア51,61の高さよりも低く、各コア51,61の重心の高さよりも高い。
【0029】
第1の位置決め部104bのY方向における外側には、第2の位置決め部104cが第1の位置決め部104bと接触した状態で配置されている。2個のコア51,61が支持装置100にセットされた状態では、第2の位置決め部104cは、第1のティース54,64のロータ側面55a,65bと反対側の面(外側の面)に当接される。言い換えると、2個のコア51,61は、Y方向において、2個の第2の位置決め部104cに挟まれている。第2の位置決め部104cは、2個のコア51,61がY方向にずれることを防止する。第2の位置決め部104cの高さ(下方支持部104aの上面からの高さ)は、第1の位置決め部104bの高さと同一である。
【0030】
基部材102の上面の左端側の2個の角部のそれぞれには、1個の端部位置決め部材106が設けられている。図4に示すように、各端部位置決め部材106は、下方支持部106aと第3の位置決め部106bを備える。下方支持部106aは、直方体形状を有しており、基部材102の上面からZ方向に伸びている。2個の下方支持部106aの上面には、ヨーク52の端部が載置される。
【0031】
下方支持部106aの上面には、第3の位置決め部106bが配置されている。第1のコア51が支持装置100にセットされた状態では、第3の位置決め部106bは、ヨーク52の端面52aに当接する。端面52aは、ヨーク52の角部に形成されており、X軸及びY軸に対して45度傾斜している。第3の位置決め部106bは、端面52aに沿った形状を有する。第3の位置決め部106bは、第1のコア51が第2のコア61と離間する方向(X方向)及びY方向にずれることを防止する。なお、図2に示すように、第3の位置決め部106bの高さ(下方支持部106aの上面からの高さ)は、第1及び第2の位置決め部104b,104cよりも低い。なお、下方支持部106aは、下方支持部104aと同一の高さを有する。
【0032】
基部材102の上面の右端側の2個の角のそれぞれには、1個の端部位置決め部材107が設けられている。端部位置決め部材106と端部位置決め部材107とは同一形状を有する。即ち、端部位置決め部材107は、下方支持部107aと第3の位置決め部107bとを備える。2個の下方支持部107aの上面には、ヨーク62の端部が載置される。第3の位置決め部107bは、第3の位置決め部106bと同様に、端面62aに当接して、第2のコア61が第1のコア51と離間する方向(X方向)及びY方向にずれることを防止する。
【0033】
2個のコア51,61が支持装置100に載置された状態では、2個のコア51,61のX方向の位置は、第1の位置決め部104bと第3の位置決め部106b,107bによって決定される。2個のコア51,61のY方向の位置は、第2の位置決め部104cと第3の位置決め部106b,107bによって決定される。2個のコア51,61のZ方向の位置は、下方支持部104a,106a,107aによって決定される。
【0034】
2個のコア51,61を支持装置100に載置すると、次いで、支持装置100に支持された2個のコア51,61を、成形型200内に配置する(図2の状態)。この状態では、各コア51,61の外周面と成形型200との隙間C1(X方向において、ヨーク52,62とヨーク52,62に対向する成形型200との間)は、各コア51,61の内周(ロータ44と対向する面)と成形型200との隙間C2よりも大きい。この構成では、各コア51,61の外周面を覆う樹脂層14の厚みT1は、各コア51,61の内周を覆う樹脂層14の厚みT2よりも厚くなる。
【0035】
続いて、成形型200内に樹脂の溶湯が注入され、樹脂が凝固すると、樹脂層14が成形される。成形型200内に樹脂の溶湯が注入されると、溶湯は、流路経路が広い方から先に、即ち、隙間C1と隙間C2とでは、隙間C1の方に先に流入する。隙間C1に溶湯が流入すると、各コア51,61は、溶湯の圧力で、非対向面55b,65bが第1の位置決め部104bに押圧される。この結果、第1のコア51と第2のコア61との位置関係は、最終的には、中央位置決め部材104によって決定される。
【0036】
この構成によれば、中央位置決め部材104の位置及び寸法の精度を高くすることによって、第1のコア51と第2のコア61との相対的な位置関係を正確に決定することができる。言い換えると、端部位置決め部材106,107の位置及び寸法精度を厳密に調整せずに済む。さらに、端部位置決め部材106,107の高さを、中央位置決め部材104のように高くする必要がない。このため、成形型200に溶湯が注入される際に、端部位置決め部材106,107が、樹脂のスムースな流れを妨げることを抑制することができる。
【0037】
成形型200は、ロータ44が配置される空間、即ち、モータ室46を形成するための突出部202を有する。突出部202の外周面には、Z方向に伸びる突条部(図示省略)が形成されている。突条部は、第1のティース54と第2のティース56の間、及び、第1のティース64と第2のティース66の間に配置される。
【0038】
成形型200に注入された樹脂が凝固すると、樹脂層14を有するステータ50と支持装置100を成形型200から取り出し、支持装置100を取り外す。これにより、2個のコア51,61が樹脂層14に覆われたステータ50が形成される。
【0039】
図5に示すように、ステータ50には、中央位置決め部材104が挿入されていた2個の中央空隙50aと、端部位置決め部材106,107が挿入されていた4個の端部空隙50dが形成されている。各空隙50a,50dは、ステータ50の底面側に開口を有する。各中央空隙50aは、第1の位置決め部104bが挿入されていた第1の空隙部50bと、第2の位置決め部104cが挿入されていた第2の空隙部50cとを含む。
【0040】
第1の空隙部50bは、非ロータ側面55b,65bと接触している。第1の空隙部50bは、第2の空隙部50cのロータ44側に位置する。第2の空隙部50cは、ロータ44側で第1の空隙部50bと接触(連通)している。第2の空隙部50cは、第1のティース54,64の先端部のロータ側面55a,55bと反対側の面に接触している。
【0041】
左側に形成されている端部空隙50dは、第3の位置決め部106bが挿入されていた第3の空隙部50eを含む。右側に形成されている端部空隙50dは、第3の位置決め部107bが挿入されていた第4の空隙部50fを含む。第3の空隙部50eは、端面52aと接触しており、第4の空隙部50fは、端面62aと接触している。第1の空隙部50bと第2の空隙部50cとは、第3の空隙部50eと第4の空隙部50fよりも深い。この構成によれば、第1の位置決め部104bと第2の位置決め部104cとを、第3の位置決め部106b,107bよりも高くすることができる。なお、第1の位置決め部104bと第2の位置決め部104cとを、各コア51,61の重心よりも高くすることによって、樹脂の溶湯の圧力で、各コア51,61が傾くことを防止することができる。
【0042】
ステータ50を底面視すると、2個のコア51,61のうち、第1のティース54,64の中央位置決め部材104に当接していた部分は、中央空隙50aに露出している。また、ヨーク52,62の端部位置決め部材106,107に当接していた部分は、端部空隙50dに露出している。一方、図6に示すように、ステータ50を平面視すると、2個のコア51,61は、露出していない。
【0043】
突出部202の突条部に対応する位置には、ロータ44の回転軸であるシャフト42の軸方向に伸びる4個の溝16が形成されている。即ち、2個の溝16は、ティース54,56の間に形成されており、他の2個の溝16は、64,66の間に形成されている。
【0044】
(電動ポンプ10の動作)
次に、電動ポンプ10の動作について説明する。制御回路72からコイル68に電力が供給されると、ロータ44が固定軸42回りを回転する。この結果、インペラ30が回転し、冷却水が吸入口22よりポンプ室26内に吸引される。ポンプ室26内に吸引された冷却水は、インペラ30の回転によって昇圧され、吐出口24からケーシング12外へ吐出される。
【0045】
ポンプ室26は、ロータ44が収容されるモータ室46に連通している。このため、モータ室46にも冷却水が流入する。モータ室46は、樹脂層14によって、各コア51,61と隔離されているため、各コア51,61が冷却水に接触することはない。冷却水は、モータ室46内では、ロータ44とステータ50との間及び溝16内を流れる。このため、溝16が形成されていない構造と比較して、モータ室46内の冷却水の流路面積を大きくすることができる。冷却水は、溝16を通過することによって、モータ室46内を円滑に流れることができる。また、モータ室46内の冷却水に含まれる気泡を、ポンプ室26に的確に排出することができる。
【0046】
また、ポンプ室26と回路室74とは、樹脂層14によって隔離されている。このため、回路室74に冷却水が浸入することを防止するための隔壁を設ける必要がない。回路室74に冷却水が浸入しないため、各空隙50a,50dの開口を塞ぐ必要がない。
【0047】
上記のモータ部40によれば、第1のコア51と第2のコア61を接続する樹脂層14をインサート成形により成形する際には、第1の空隙部50bを形成する位置には第1の位置決め部104bが配置され、第2の空隙部50cを形成する位置には第2の位置決め部104cが配置される。第1の空隙部50bは、第1のコア51の非ロータ側面55bと第2のコア61の非ロータ側面65bに接している。このため、第1の空隙部50bが形成される位置に配置される第1の位置決め部104bには、非ロータ側面55b,65bが当接することとなる。従って、第1のコア51と第2のコア61との第1の位置決め部104bを、第1の空隙部50bが形成される位置に配置される成形型200の一部(支持装置100の一部)によって行うことができる。このため、樹脂層14の成形時に、第1のコア51と第2のコア61とが、接近する方向(X方向)に位置ずれすることを抑制することができる。
【0048】
また、第2の空隙部50cは、第1のコア51の表面の一部(X方向に伸びる表面)と第2のコア61の表面の一部(X方向に伸びる表面)に接している。このため、第2の空隙部50cが形成される位置に配置される第2の位置決め部104cも、第1のコア51の表面の一部と第2のコア61の表面の一部に当接することとなる。従って、樹脂層14を成形する際に、第1のコア51と第2のコア61との第2の位置決め部104cを、第2の空隙部50cが形成される位置に配置される成形型200の一部(支持装置100の一部)によって行うことができる。このため、樹脂層14の成形時に、第1のコア51と第2のコア61とが、第1のコア51と第2のコア61とが、Y方向に位置ずれすることを抑制することができる。このため、位置ずれを抑制した状態で、樹脂層14によって2個のコア51,61の相対位置が決定されるため、2個のコア51,61の相対的な位置ずれを抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0050】
上記の実施例では、第2の空隙部50cは、ロータ44側で第1の空隙部50bと接触している。しかしながら、第2の空隙部50cは、第1の空隙部50bと接触していなくてもよい。この場合、第1の位置決め部材104bと第2の位置決め部材104cとは、接触していなくてもよい。
【0051】
上記の実施例では、第3の空隙部50eは、端面52aに接触している。しかしながら、第3の空隙部50eは、ヨーク52の表面のうちの第2のコア61と反対側の表面の一部に接触していればよい。例えば、第3の空隙部50eは、ヨーク52のうちの第2のコア61と反対側の表面のY方向における中央付近に配置されていてもよい。同様に、第4の空隙部50fは、ヨーク62の表面のうちの第1のコア51と反対側の表面の一部に接触していればよい。また、第3の空隙部50eと第4の空隙部50fは、それぞれ1個であってもよい。
【0052】
また、例えば、溝16は、シャフト42の軸方向に平行に伸びていなくてもよい。例えば、溝16は、ロータ44の回転方向に傾斜していてもよい。
【0053】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
10:電動ポンプ
12:ケーシング
14:樹脂層
16:溝
20:ポンプ部
26:ポンプ室
30:インペラ
40:モータ部
44:ロータ
46:モータ室
50:ステータ
50b:第1の空隙部
50c:第2の空隙部
50e:第3の空隙部
50f:第4の空隙部
51:第1のコア
52,62:ヨーク
54,64:第1のティース
56,66:第2のティース
61:第2のコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
第1のコアと、前記ロータを挟んで前記第1のコアと対向する第2のコアと、前記第1及び第2のコアを覆って、前記第1及び第2のコアを接続すると共に、前記ロータが配置される空間を形成する樹脂層と、を有するステータとを、備え、
前記第1及び第2のコアのそれぞれは、ヨークと、前記ヨークに設けられている3個のティースとを、備え、
各ティースは、その後端が前記ヨークに接続される一方でその先端が前記ロータの外周に隙間を空けて対向し、
前記樹脂層は、
前記第1のコアの前記第2のコアと対向する第1の対向面に接すると共に、前記第2のコアの前記第1のコアと対向する第2の対向面に接する第1の空隙部と、
前記第1のコアの表面のうちの前記第1のコアと前記第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面に接すると共に、前記第2のコアの表面のうちの前記第1のコアと前記第2のコアとが対向する方向と平行に伸びる表面に接する第2の空隙部、を備えるモータ。
【請求項2】
前記樹脂層は、さらに、
前記第1のコアの表面のうちの前記第2のコアと反対側に位置する表面に接する第3の空隙部と、
前記第2のコアの表面のうちの前記第1のコアと反対側に位置する表面に接する第4の空隙部とを、有する、請求項1のモータ。
【請求項3】
前記第1から前記第4の空隙部は、前記モータの下端部に開口するとともに共に、前記モータの前記下端部から上端部に向かって伸びており、
前記第1及び前記第2の空隙部は、前記第3及び前記第4の空隙部よりも深い、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
同一のヨークに設けられる前記3個のティースは、当該ヨークの両端部に接続される一対の第1のティースと、当該ヨークの中央部に接続される第2のティースとを、有し、
前記第1のコアの一対の第1のティースのそれぞれは、前記第2のコアの一対の第1のティースのそれぞれに対向し、
対向する2個の前記第1のティースの先端は、前記ロータに対向する対向範囲と、前記ロータに対向しない非対向範囲とを、有し、
前記第1の対向面は、前記第1のコアの一対の第1のティースのそれぞれについて、当該第1のティースの前記非対向範囲に位置し、
前記第2の対向面は、前記第2のコアの一対の第1のティースのそれぞれについて、当該第1のティースの前記非対向範囲に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項5】
請求項3に記載のモータと、
前記モータによって駆動されるインペラと、
前記モータの上方に配置され、前記インペラを回転可能に収容するポンプ室と、
前記モータを制御する制御回路と、
前記モータの下方に配置され、前記制御回路を収容する制御室と、を備える電動ポンプ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のモータと、
前記モータによって駆動されるインペラと、
前記インペラを回転可能に収容するポンプ室と、を備える電動ポンプ。
【請求項7】
前記ポンプ室と前記ロータが配置されている前記空間とが連通しており、
前記樹脂層の前記ロータと対向する面には、隣り合う2個のティースの間に、ロータの回転軸方向に伸びる溝が設けられている、請求項5又は6に記載の電動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110921(P2013−110921A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255987(P2011−255987)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】