説明

モータ固定用マウント

【課題】取付プレートと防振用の弾性部材を堅牢に接着することが可能であると共にモータ筐体を確実に取付プレートに接地することを可能とする。
【解決手段】金属などの取付プレート2、3に、モータの回転軸17を挿通する開口9と、この開口9の周囲にリング状に形成した接着面2a、3aを設け、この接着面に塗布した接着剤でリング状弾性部材4を接着して一体化し、この弾性部材4と取付プレート表面との間に導電性塗料5をブリッジ状に塗布して電気的に導通する。これによって弾性部材4と取付プレート2、3とを堅牢に接着することが可能であると共に、両者間を電気的に導通することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータなどのモータ固定用マウントに係わり、モータ筐体と各種機器の据付フレームとの間にゴムなどの弾性部材を介在させて防振する防振マウント機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータを各種機器の据付フレームに固定する場合に、モータ筐体との間にマウントを介在させて、モータに生起する振動、騒音を吸収するダンパー機構が広く用いられている。このマウント機構は一対の取り付け用の金属プレートにサンドイッチ状にゴム層を介在させ、このゴム層で防振防音する機構として知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、第1第2取付プレートの間に弾性体層を設け、この第1プレートをモータ筐体に、第2プレートを据付フレームにビスなどで固定する装置が開示されている。そして第1第2プレートは金属で、弾性体層はゴム材料で構成し、この弾性体とプレートを加硫接着によって一体化している。
【0004】
この他、モータの外筐体(ブラケットなど)と一枚の取付プレートとの間に弾性体(防振ゴム)を加硫接着する方法も知られている。この方法によるときには1枚のプレートでコストを低減することが可能となる。また、このような防振マウントで防振防音と同時に接地(アース)するために、防振ゴムと接着剤を導電性の組成で構成することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−148556号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように金属などの取付プレートに弾性部材を接着して、モータに生起する振動騒音を逓減する際に、取付プレートと弾性部材との接着が問題となる。例えば一対の取付プレート間に弾性部材を介在させる場合、或いは1枚の取付プレートとモータ外筐体との間に弾性部材を介在させる場合、いずれの場合にも取付プレートと弾性部材が堅牢に接着されなければ、モータが使用途上で脱落する装置故障を招く。
【0007】
このため接着剤は、モータに発生する振動に強く、同時にモータに発生する熱に強い組成であることが要求される。これと共に接着剤はモータを据付フレームに設置するためには導電性を有することが要求される。ところが現在市販されている接着剤では耐熱温度が高く、同時に導電性を有する組成では高価となり、コストアップの原因となる。
【0008】
そこで本発明者は、取付プレートと弾性部材の接着強度を実験したところ、接着面の油脂分が接着強度に大きな影響を与えていることを究明するに至った。そこで金属プレス加工で製作した取付プレートを洗浄して接着面の油脂分を除去することを試みた。その結果洗浄レベル(油脂分が完全に除去されたか否かの程度)を目視で簡単に判別することが出来ないため、接着後に全数検査して接着強度を確認している。このため仕損コストが高くなる問題に遭遇した。
【0009】
これと共に、取付プレートから設置フレームにアースする為には、従来は接着剤を仕様に応じた導電性を有する組成の材料を選択していた。この接着剤の選択には導電性と同時に上述した接着強度と耐熱強度が要求されるため、高価な材料を使用せざるを得ない問題に遭遇した。
【0010】
そこで本発明者は、接着剤として導電性を備えることなく導電性弾性部材と導電性プレートを導電性塗料で導通することに着目した。
【0011】
本発明は取付プレートと防振用の弾性部材を堅牢に接着することが可能であると共にモータ筐体を確実に取付プレートに接地することが可能なモータ固定用マウントの提供をその課題としている。
更に本発明は簡単な製造設備で安価に製造することが可能なモータ固定用マウントの提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するため本発明は、金属などの取付プレートに、モータの回転軸を挿通する開口と、この開口の周囲にリング状に形成した接着面を設け、この接着面に塗布した接着剤でリング状弾性部材を接着して一体化し、この弾性部材と取付プレート表面との間に導電性塗料をブリッジ状に塗布して電気的に導通するように構成することを特徴としている。これによって弾性部材と取付プレートとを堅牢に接着することが可能であると共に、両者間を電気的に導通することが可能となる。
【0013】
以下その構成を詳述すると、モータ筐体と据付フレームとの間に所定厚さのリング状弾性部材を介在させて防振するモータ固定用マウントであって、据付フレームにモータを固定するための取付プレートと、取付プレートに貼着されたリング状弾性部材とを備える。そして取付プレートには、モータの回転軸を挿通する開口と、この開口の周囲にリング状に形成された接着面とを設ける。
【0014】
またリング状弾性部材は、上記接着面に適合するリング形状に構成され、この取付プレートとリング状弾性部材とは、接着面に塗布された接着剤で一体的に固着されると共に、この取付プレートとリング状弾性部材とは、その表面の少なくとも一部に導電性塗料をブリッジ状に塗布して互いに電気的に導通するように構成する。
【0015】
更に、モータ筐体と据付フレームとの間に所定厚さのリング状弾性部材を介在させて防振するモータ固定用マウントであって、据付フレームにモータを取り付けるための一対の第1、第2取付プレートと、この第1第2取付プレート間に貼着されたリング状弾性部材とを備える。
【0016】
そして第1第2取付プレートとリング状弾性部材は、それぞれ所定の導電性を有する材料で構成され、この第1第2取付プレートにはそれぞれ、モータの回転軸を挿通する開口と、この開口の周囲にリング状に形成された接着面とを設ける。またリング状弾性部材は、接着面に適合するリング形状に形成され、一対の第1第2取付プレートとリング状弾性部材は、接着面に塗布された接着剤で一体的に固着すると共に、この第1第2取付プレートとリング状弾性部材とは、その表面の少なくとも一部に導電性塗料をブリッジ状に塗布して電気的に導通するように構成する。
【0017】
また本発明に係わるモータ固定用マウントの製造方法は、モータの回転軸を挿通する開口を有する一対の取付プレートを製造するプレス工程と、一対の取付プレートにそれぞれ開口の周囲にリング形状の研磨面を形成する研磨工程と、研磨面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、接着剤を塗布された研磨面に未架橋状態のエラストマー層を形成するエラストマー添着工程と、エラストマー層を加硫する架橋工程とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、取付プレートにリング状に形成した接着面を設けて接着剤でリング状弾性部材を固着し、この弾性部材と取付プレート表面との間に導電性塗料をブリッジ状に塗布して導通したものであるから以下の効果を奏する。
【0019】
取付プレートとリング状弾性部材とは接着剤の組成に係わらず、導電性塗料で導通され、この塗料は弾性を呈するリング状弾性部材の作用でモータの振動で剥離する恐れがない。従って接着剤の組成として導電性材料を選択する必要が無く、安価に製造することが可能であると同時に耐久性に富んだモータ固定用マウントを提供することが可能となる。
【0020】
更に、取付プレートを樹脂などの非導電性材料で構成し、このプレートにリング状弾性部材を接着した後に、この両者の外表面をディッピングその他の方法で導電性塗料によって導電性被膜を形成することによって、確実な導通と同時に振動の伝播を軽減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係わるモータ固定用マウントの全体構成を示す組み立て分解図。
【図2】図1の装置における組み立て状態の説明図であり、(a)は平面状態の説明図(b)は断面状態の説明図。
【図3】図1及び図2とは異なるモータ固定用マウントの実施形態を示し、(a)は、その平面構成の説明図、(b)は断面構成の説明図であり、(c)は(b)に示すI部の拡大説明図。
【図4】図2の実施形態において、第1第2取付プレート2、3間を導電性塗料を全表面に塗布(ディッピング)して導通被膜を形成する形態の説明図であり、(a)は断面構成の説明図、(b)は(a)図における導通被膜を示す説明図。
【図5】本発明に係わるモータ固定用マウントの製造方法を示す工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図示の実施形態に基づいて本発明を詳述する。まず本発明に係わるモータ固定用マウントを、次いでその製造方法を説明する。図1及び図2にはモータ固定用マウントの第1実施形態を、図3には第2実施形態を示す。
【0023】
[モータ固定用マウント]
[第1実施形態]
図1に示すマウントAの第1実施形態は、各種機器の据付フレーム(例えばシャーシ)10に取り付ける第1取付プレート2と、モータ筐体8を取り付ける第2取付プレート3と、この両プレートを連結するリング状弾性部材4とで構成する場合を示す。
【0024】
このマウントAは図1に示すように第1取付プレート2と第2取付プレート3と、このプレート間に固着されたリング状弾性部材4と、各取付プレート2、3とリング状弾性部材4とを導通するアース接続部5(図2(b)に示す)で構成されている。図示Mはステッピングモータであり、6はその回転軸であり、7は伝動歯車である。
【0025】
第1取付プレート2は、金属などの導電性を有する材料で構成する。その形状はモータ筐体8の寸法に応じて適宜の形状に構成する。図示のものは鉄系金属(SS、SC、SCM導電性を有するSUSなど)で構成し、モータを支持するのに十分な強度に構成する。そしてその中央には、モータの回転軸6を挿通する開口9と、据付フレーム10にネジ止めする螺子孔11a、11bが形成してある。
【0026】
第2取付プレート3も、第1取付プレート2と同様に導電性を有する材料で構成し、その中央に、モータの回転軸6を挿通する開口12と、モータ筐体8にネジ止めする螺子孔13a、13bが形成してある。
【0027】
リング状弾性部材4は、天然ゴム、人工ゴムなどの防振性に富んだゴム質材料で構成する。図示のものは加硫ゴムなどのエラストマーで形成してある。このリング状弾性部材4も前述の第1第2取付プレート2,3と同様に導電性の素材で構成されている。図示のものは後述するように加硫ゴムで形成されている。導電性素材を含浸した未加硫状態のエラストマーを金型内に充填し、加熱して加硫(架橋)する。
【0028】
このとき前述の第1取付プレート2と第2取付プレート3の接着面2a、3aに接着剤を塗布し、その上にエラストマーを充填する。そして加熱炉内で加熱する。するとエラストマーが第1第2取付プレート2,3に接着された状態で架橋され加硫ゴム層が添着される。その詳細は後述する製造方法で説明する。
【0029】
本発明は、図1に示すように、第1第2取付プレート2、3を金属材料で例えばプレス加工によって適宜形状の取付座を形成し、その中央部にモータの回転軸6を挿通する開口9、12と、この開口の周囲にリング状の接着面2a、3aを設ける。この接着面2a,3aはリング状弾性部材4に適合するリング形状の接着エリアを構成し、このエリアに接着剤を塗布(図示のものは加硫接着)してリング状弾性部材4を接着する。
【0030】
[第1実施形態の作用]
上述のように第1実施形態は、第1第2取付プレート2、3間にリング状弾性部材4をサンドイッチ状に添着する。そして第1取付プレート2を装置の据付フレーム10側に、第2取付プレート3をモータ筐体8側にビスなどで固定する。するとステッピングモータMに発生した振動はモータ筐体8から第2取付プレート3にその接触部から伝搬され、このときビス15a、15bからも振動が第2取付プレート3に伝搬される。騒音も振動と同様の系路から第2取付プレート3に伝搬される。
【0031】
一方、ステッピングモータMに発生した熱はモータ筐体8から外部に放熱され、その一部は第2取付プレート3に伝搬される。このためモータ筐体8は放熱効果に富んだ構造、例えば放熱フィンを一体成形するように構成する。
【0032】
そこで第2取付プレート3に伝搬された振動、騒音、熱はこのプレートに添着されているリング状弾性部材4に接着剤層3bを介して伝搬される。このとき振動、騒音はリング状弾性部材4の吸振特性に応じて減衰される。そしてこのリング状弾性部材4で減衰された振動、騒音は第1取付プレート2に接着剤層2bを介して伝搬される。このとき第1取付プレート2には外部の据付フレーム10に影響を及ぼす程には振動、騒音は伝搬されない。また熱はリング状弾性部材4の熱伝導率に応じて第1取付プレート2に伝搬されるが、その熱量は無視し得る程度に減衰する。
【0033】
そして第1取付プレート2に伝搬された振動、騒音、熱はこの第1取付プレート2と据付フレーム10との接触面及びビス16a、ビス16bを介して据付フレーム10に伝搬される。しかし、その物理量は無視し得る程度に減衰して据付フレーム10に影響を及ぼすことはない。
【0034】
次にステッピングモータMのアース特性について説明すると、モータ筐体8は金属などの導電性材料で構成され、導電性金属で構成されている第2取付プレート3に接触面及びビス15a、15bを介して電気的に結線される。そして第2取付プレート3は導電性を有するリング状弾性部材4が接着剤層3bを介して添着されている。そしてこの第2取付プレート3とリング状弾性部材4とは図2で説明したアース接続部(導電性塗料)5で導通されている。
【0035】
従って接着剤層2b、3bが非導電性であっても、また所定(装置仕様で要求される抵抗値)の導電特性を備えていないときにもモータ筐体8はリング状弾性部材4と導通されることとなる。
【0036】
同様にリング状弾性部材4と第1取付プレート2とはアース接続部5で導通されている。その結果、モータ筐体8は第1取付プレート2と電気的に接続され、この取付プレート2とビス16a、16bを介して据付フレーム10と電気的に接続されることとなる。従ってリング状弾性部材4が振動で波動変形しても、その弾性部材表面の一部と第1取付プレート2及び第2取付プレート3とは導電性塗料(アース接続部)5で連結され電気的に破断する恐れがない。
【0037】
尚、図2に示すアース接続部(導電性塗料)5はリング状弾性部材4の内壁面(図2に示す4d)の一部、例えば円周4個所に塗布されている。このように構成することによってモータ取付け作業時に導電性塗料5が剥離される恐れがない。つまりリング形状の弾性部材4の内壁面4dに導電性塗料5が塗布されているため、外観上も美観を損ねることがなく、また輸送過程、取付作業中に破損(剥離)されることがない。
【0038】
導電性塗料としては、金属粉、カーボン、銀粉などの導電物質とアクリル、ビニル、エポキシ等のバインダーを混合した塗料を用いる。この場合金属酸化物等の添加剤、カーボンブラックなどの帯電防止剤を用途に応じて含有させる。また、導電性樹脂(ドータイト;樹脂中に銀粒子、カーボンブラックなどをフィラーとして分散した接着性樹脂)を用いる。
【0039】
そしてアース接続部(導電性塗料)5は図2に示すようにリング状弾性部材4の内壁面4dに形成する場合には、刷毛などで塗布する。またこの場合リング状弾性部材4とこれを添着した第1第2取付プレート2、3を槽内でディッピングして全表面に塗布しても良い。
【0040】
図4には、第1取付プレート2と第2取付プレート3を合成樹脂などの非導電性材料で構成し、リング状弾性部材4を非導電性弾性材料で構成する。そして前述と同様に第1取付プレート2と第2取付プレート3にそれぞれ接着面2a、3aを形成する。この第1第2取付プレート2、3を非導電性接着剤で接着して一体化する。そこでこの一体化したマウント(半製品)を例えば導電性塗料槽に浸漬する。その後、表面に形成された導電性被膜層を乾燥して仕上げる。この状態を図4(a)に示すが、その表面には同図(b)に示すような導電性塗料の被膜が全体に形成される。この導電性被膜によって第1取付プレート2の取付面と、第2プレート3の取付面間は電気的に導通されることとなる。このように構成することによってマウントAは、取付プレートに導電性金属を使用する必要が無く、例えばステンレス鋼、合成樹脂などの材料を使用することが可能となる。これによって錆などの腐食が発生することがなく、メッキなどの表面処理の必要もない。
【0041】
同様にリング状弾性部材4として導電性ゴム、接着剤として導電性接着剤を使用する費用がないから、材料コストと加工コストを低減することが可能である。
【0042】
尚、上述の第1取付プレート2、第2取付プレート3はいずれも導電性を有する金属で構成する場合を示したが、本発明は、この第1第2取付プレート2、3を、非導電性材料例えば合成樹脂で構成し、これに非導電性のリング状弾性部材を接着し、次いでこれを導電性塗料槽にディッピングして表面に導電性被膜を形成する。これによって第1第2取付プレート2、3間を導電性被膜によって導通させることが出来る。
【0043】
[第2実施形態]
図3に示すマウントBの第2実施形態は、各種機器の据付フレーム10に取り付ける取付プレート20と、この取付プレートに添着されたリング状弾性部材21で構成する場合を示す。図3(a)にその平面構造を、同図(b)に断面構造を示すが、このマウントBは図3に示すように取付プレート20と、この取付プレートに固着されたリング状弾性部材21と、この取付プレート20とリング状弾性部材21とを導通するアース接続部22(図3(c)に示す)で構成されている。図示Mはステッピングモータであり、23はその回転軸、24は伝動歯車である。
【0044】
上記取付プレート20は、金属その他の導電性を有する材料でモータ筐体25の寸法に応じた適宜形状に構成する。例えば鉄系金属のプレス加工で作成し、モータ回転軸23を挿通する開口26と、据付フレーム10にネジ止めする螺子孔27a、27bを形成する。
【0045】
上記リング状弾性部材21は、防振性と導電性に富んだゴム質材料で、上記開口26に適合する内孔21dを有するリング形状に構成する。図示のものは第1実施形態と同様に導電性を有する加硫ゴムで構成されている。そしてこのリング状弾性部材21は、その表面21aを上記取付プレート20に接着剤で接着し、裏面21bをモータ筐体25に接着剤で接着する。
【0046】
そこで、上記取付プレート20には開口26の周囲にリング状弾性部材21に適合するリング形状の接着面20aが設けられ、この面に接着剤を塗布(図示のものは加硫接着)してリング状弾性部材21を添着する。このとき接着面20aはリング状に形成されている。また同様にモータ筐体25にもリング状弾性部材21に適合する形状の接着面25aが形成され、この接着面25aも取付プレート20と同様にリング状に形成されている。
【0047】
そして取付プレート20にリング状弾性部材21の表面21aを、モータ筐体25にリング状弾性部材21の裏面21bを接着してある。図示のものはリング状弾性部材21を加硫ゴムで構成する関係で次の手順で製造してある。
【0048】
まず取付プレート20と、モータ筐体25をそれぞれ個別に製作する。例えば取付プレート20は金属プレス加工で、モータ筐体25はダイカスト成型で形成する。そして取付プレート20の接着面20aとモータ筐体25の接着面25aとを研磨加工した粗い研磨面に形成する。
【0049】
このように形成された接着面20aに接着剤を塗布し、成形型内に取付プレート20とモータ筐体25をセットし、未架橋状態のエラストマーを充填する。そして加熱架橋してリング状弾性部材21を形成し、同時にこの弾性部材21と取付プレート20及びモータ筐体25を加硫接着する。その後、リング状弾性部材21の内孔21dの壁面と取付プレート20の表面およびモータ筐体25の表面の少なくとも一部に導電性塗料を塗布してアース接続部22を形成する。
【0050】
次に上述の第2実施形態の作用について説明する。上述のようにモータ筐体25と取付プレート20とはリング状弾性部材21を介して一体的に結合されている。そこでステッピングモータMに生起する振動、騒音、熱は、接着剤層20bを介してリング状弾性部材21に伝搬される。またリング状弾性部材21に伝搬された振動、騒音、熱は、接着剤層20bを介して取付プレート20に伝搬される。このときリング状弾性部材21の作用で振動、騒音は減衰され、取付プレート20に伝搬される振動、騒音は、実質的に無視し得る程度に軽減される。またステッピングモータMからの熱はリング状弾性部材21の熱伝導率によって同様に軽減される。
【0051】
そこでモータ筐体25は、導電性を有するリング状弾性部材21にアース接続部22の導電性塗料によって電気的に導通され、同様にこのリング状弾性部材21と取付プレート20との間もアース接続部22で電気的に導通される。そして取付プレート20は据付フレーム10に、互いに接する当接面と連結ビス28a、28bで電気的に導通される。従ってステッピングモータMはモータ筐体25、導電性塗料(アース接続部)22、リング状弾性部材21、取付プレート20を介して据付フレーム10に設置されることとなる。
【0052】
尚、この第2実施形態の場合、前述の第1実施形態における第2取付プレート3に相当する部品を必要としないため、部品点数が少なく同時にモータへの取付け作業を必要としないため組み立て工数を少なくすることが出来、コストを低減することが可能である。
【0053】
[マウント製造方法]
次に、上述の第1実施形態及び第2実施形態におけるマウントの製造方法について説明する。図5の工程図に示すように、次の「プレス工程」「接着剤塗布工程」「エラストマー添着工程」「架橋工程」で構成される。
【0054】
「プレス工程(Step1)」
このプレス工程で取付プレートを作成する。取付プレート(第1実施形態における第1第2取付プレート2、3及び第2実施形態における取付プレート20;以下同様)を金属その他の導電性材料でプレス加工する。このプレス加工でモータ筐体8(25)に応じた形状で中央にモータ回転軸6(23)を挿通する開口9,12(26)を有する板状部材を形成する。
【0055】
「接着剤塗布工程(Step2)」
上記プレス加工工程で形成した取付プレート2,3(20)の接着面2a,3a(20a)を研磨し、接着面に接着剤を塗布する。この接着剤塗布は接着面2a,3a(20a)に刷毛などで塗布するか、チューブなどで充填する。
【0056】
「エラストマー添着工程(Step3)」
上記工程で接着剤を塗布した取付プレート2,3(20)を成形型内にセットして未架橋状態のエラストマーを充填する。すると接着面2a,3a(20a)には接着剤層2b,3b(20b)と、その上にエラストマー層がリング形状に形成される。
【0057】
「架橋工程(Step4)」
上記工程でリング形状に形成されたエラストマー層を加熱炉内で加熱して架橋する。このとき接着剤層2b,3b(20b)は架橋されたエラストマー層と取付プレート2,3(20)とを一体的に接着する。
【0058】
「導通工程(Step5)」
上記工程で、一体的に接着された取付プレート2,3(20)とリング状弾性部材4(21)とを、その表面の少なくとも一部に導電性塗料をブリッジ状に塗布する。これによって取付プレート2,3(20)とリング状弾性部材4(21)とは境界面に接着剤層2b,3b(20b)が存在することに関係なく導電性塗料で導通されアース接続部5(22)が形成される。
【0059】
尚、前述の第1実施形態においては、第1取付プレート2と第2取付プレート3とを上記工程(Step1)(Step2)で製作し、この第1取付プレート2と第2取付プレート3との間にエラストマー層を上記工程(Step3)で形成する。そして上記工程(Step4)(Step5)でマウントAを製造する。
【0060】
また、前述の第2実施形態においては、取付プレート20を上記工程(Step1)(Step2)で製作し、この取付プレート20と別途製作されたモータ筐体25との間にエラストマー層を上記工程(Step3)で形成する。そして上記工程(Step4)(Step5)でマウントBを製造する。尚このときモータ筐体25の接着面25aを粗面仕上げした上で接着剤を塗布することが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
A マウント(第1実施形態)
B マウント(第2実施形態)
M ステッピングモータ
2 第1取付プレート
2a 接着面
2b 接着剤層
3 第2取付プレート
3a 接着面
3b 接着剤層
4 リング状弾性部材
4d 内壁面
5 アース接続部(導電性塗料)
6 回転軸
7 伝動歯車
8 モータ筐体
9 開口
10 据付フレーム
11a 螺子孔
11b 螺子孔
12 開口
13a 螺子孔
13b 螺子孔
15a ビス
15b ビス
16a ビス
16b ビス
20 取付プレート
20a 接着面
20b 接着剤層
21 リング状弾性部材
21a 表面
21b 裏面
21d 内孔
22 アース接続部
23 回転軸
24 伝動歯車
25 モータ筐体
25a 接着面
26 開口
27a 螺子孔
27b 螺子孔
28a 連結ビス
28b 連結ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ筐体と据付フレームとの間に所定厚さのリング状弾性部材を介在させて防振するモータ固定用マウントであって、
前記据付フレームにモータを固定するための取付プレートと、
前記取付プレートに貼着されたリング状弾性部材と、
を備え、
前記取付プレートには、
モータの回転軸を挿通する開口と、
この開口の周囲にリング状に形成された接着面と、
が設けられ、
前記リング状弾性部材は、
前記接着面に適合するリング形状に構成され、
この取付プレートとリング状弾性部材とは、
前記接着面に塗布された接着剤で一体的に固着されると共に、
この取付プレートとリング状弾性部材とは、その表面の少なくとも一部に導電性塗料がブリッジ状に塗布され互いに電気的に導通するように構成されていることを特徴とするモータ固定用マウント。
【請求項2】
前記導電性塗料は、ディッピングによって前記取付プレートとリング状弾性部材の表面を覆うように導電性被膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載モータ固定用マウント。
【請求項3】
前記取付プレートと前記リング状弾性部材とは、リング状内壁の一部に導電性塗料が塗布されて電気的に導通していることを特徴とする請求項1に記載のモータ固定用マウント。
【請求項4】
前記取付プレートに固着された前記リング状弾性部材の他面は、モータ筐体に接着剤で一体的に固着され、
このリング状弾性部材とモータ筐体との間には、少なくとも一部に導電性塗料がブリッジ状に塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ固定用マウント。
【請求項5】
モータ筐体と据付フレームとの間に所定厚さのリング状弾性部材を介在させて防振するモータ固定用マウントであって、
前記据付フレームにモータを取り付けるための一対の第1、第2取付プレートと、
この第1第2の取付プレート間に貼着されたリング状弾性部材と、
を備え、
前記第1、第2の取付プレートにはそれぞれ、
モータの回転軸を挿通する開口と、
この開口の周囲にリング状に形成された接着面と、
が設けられ、
前記リング状弾性部材は、前記接着面に適合するリング形状に形成され、
前記一対の第1第2リング状弾性部材と前記リング状弾性部材は、
前記接着面に塗布された接着剤で一体的に固着されると共に、
この第1第2取付プレートとリング状弾性部材とは、その表面の少なくとも一部に導電性塗料がブリッジ状に塗布され電気的に導通するように構成されているモータ固定用マウント。
【請求項6】
前記接着面に塗布される接着剤は、前記導電性塗料と比して導電性の低い組成であることを特徴とする請求項1に記載のモータ固定用マウント。
【請求項7】
モータ筐体と据付フレームとの間に所定厚さのリング状弾性部材を介在させて防振するモータ固定用マウントの製造方法であって、
モータの回転軸を挿通する開口を有する一対の取付プレートを製造するプレス工程と、
前記一対の取付プレートにそれぞれ開口の周囲にリング形状の接着面を形成する工程と、
前記接着面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤を塗布された接着面に未架橋状態のエラストマー層を形成するエラストマー添着工程と、
前記エラストマー層を加硫してリング状弾性部材を形成する架橋工程と、
前記リング状弾性部材と取付プレートとの表面の少なくとも一部にブリッジ状に導電性塗料を塗布する導通工程と、
を有するモータ固定用マウントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−120408(P2011−120408A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276869(P2009−276869)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(595165047)株式会社セーコウ (38)
【Fターム(参考)】