説明

ユーザの移動に伴って住所/居所を推定する携帯端末、サーバ、プログラム及び方法

【課題】携帯端末に搭載された測位機能のみを用いて、ユーザの移動に伴う住所/居所を自動的に推定する携帯端末、サーバ、プログラム及び方法を提供する。
【解決手段】携帯端末は、測位電波を受信する測位部と、測位部を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する位置取得手段と、時刻に応じた測位位置を蓄積する位置蓄積手段とを有する。また、携帯端末は、時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する滞留位置抽出手段と、複数の滞留位置を、位置的なクラスタに区分するクラスタリング手段と、クラスタ毎に、滞留位置が1回でも存在する滞在日数を、日属性に基づいて計数する滞在率算出手段と、滞在日数が多いクラスタから順に、日属性に基づいて、当該クラスタの滞在特性を推定する滞在特性推定手段とを更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に搭載された測位機能を用いて、ユーザの移動に伴う位置を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機に代表される携帯端末には、GPS(Global Positioning System)のような測位機能が、一般的に搭載されてきている。そのため、ユーザは、携帯端末を用いて、現在位置を測位できると共に、その位置をネットワークを介してサーバへ送信することによって、位置に応じた様々なサービス情報を受信することができる。
【0003】
従来、携帯端末の測位位置をサーバへ送信し、当該サーバが、その携帯端末を所持するユーザが頻繁に滞在するエリアを検出する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、エリア毎の滞在頻度を検出するために、地域を事前にエリア単位に区切る必要がある。例えば、東京都のような地域を、一定のメッシュに区切る必要がある。この技術は、エリアの区分の仕方によって、異なる目的・効果に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−44512号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】遠山緑生、服部隆志、萩野達也、「携帯電話の測位機能を用いた有意位置の学習」、情報処理学会論文誌46(12)、pp.2915-2924、2005年
【非特許文献2】Ester M., et.al: “A Density-Based Algorithmfor Discovering Clusters in Large Spatial Databases with Noise”, Proc. 2nd int.Conf. on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD‘96), Portland, Oregon, 1996,AAAI Press, 1996.
【非特許文献3】「駅データ」、[online]、[平成22年2月14日検索]、インターネット<URL:http://www.ekidata.jp/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯端末の現在位置の緯度経度情報は、GPSによって取得できる一方で、その現在位置がどのような意味を持つのか(有意な位置であるか否か)についてまで取得することはできない。サーバが、位置に応じたサービス情報を携帯端末へ提供する場合であっても、その位置における「意味付け」(有意性)によっては、提供すべきサービス情報も異なる。例えば、同程度の頻度で訪れる場所であっても、お気に入りの店と、取引先のオフィスとでは、提供すべきサービス情報の内容も全く異なる。有意な位置は、個人によって様々であるが、その中でも、自宅のような「住所」と、職場・学校のような「居所」とは、最も有意な位置と考えられる。特許文献1に記載された技術を用いることによって、「滞在頻度が多い場所」を抽出できたとしても、その有意性についてまで特定することできない。通常、測位位置に対する「意味付け」は、ユーザによって指定されるか、又は、他の登録情報を用いる必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、携帯端末に搭載された測位機能のみを用いて、ユーザの移動に伴う住所/居所を自動的に推定する携帯端末、サーバ、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ユーザの移動に伴って所持される携帯端末であって、測位電波を受信する測位部と、測位部を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する位置取得手段と、時刻に応じた測位位置を蓄積する位置蓄積手段とを有する携帯端末であって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する滞留位置抽出手段と、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分するクラスタリング手段と、
クラスタ毎に、滞留位置が1回でも存在する滞在日数を、日属性に基づいて計数する滞在率算出手段と、
滞在日数が多いクラスタから順に、日属性に基づいて、当該クラスタの滞在特性を推定する滞在特性推定手段と
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、滞在特性推定手段について、
日属性は、カレンダ又はユーザ設定による平日及び休日に基づいており、
滞在特性は、自宅のような「住所」、及び、職場・学校のような「居所」に基づいており、
全日滞在率が高い第1のクラスタを住所と規定し、第1のクラスタ以外に平日滞在率が高い第2のクラスタを居所と規定するか、
全日滞在率が高い2つのクラスタを選択し、平日滞在率が高い一方のクラスタを居所と規定し、他方のクラスタを住所と規定するか、又は、
全日滞在率が高い2つのクラスタを選択し、休日滞在率が高い一方のクラスタを住所と規定し、他方のクラスタを居所と規定することも好ましい。
【0010】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、滞在特性推定手段によって抽出された第1のクラスタ及び第2のクラスタについて、多数の滞留位置から重心位置を算出し、第1のクラスタの重心位置を「住所」位置として規定し、第2のクラスタの重心位置を「居所」位置として規定する重心位置決定手段を更に有することも好ましい。
【0011】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
地域名称に対応付けて位置を記憶した地域名称記憶手段と、
地域名称記憶手段を用いて、住所位置及び居所位置に最も近い「地域名称」を検索し、当該「地域名称」を、住所位置の住所及び居所位置の居所と規定する名前解決手段と
を更に有することも好ましい。
【0012】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、滞留位置抽出手段は、
現時刻tから直近過去所定時間T以内に取得された複数の測位位置pt〜pt-nを平滑化し、現時刻tにおける平滑化位置patを算出し、
現時刻tの平滑化位置patに対する直近過去の平滑化位置pat-1からの変位距離を算出し、
変位距離に対する変位時間から移動速度を算出し、
移動速度が所定閾値以下となる平滑化位置paを「滞留位置」として抽出することも好ましい。
【0013】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、位置は、緯度・経度のベクトルであり、クラスタリング手段は、DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering)を用いることも好ましい。
【0014】
本発明によれば、ユーザの移動に伴って所持される携帯端末と通信可能なサーバであり、
携帯端末は、測位電波を受信する測位部と、測位部を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する位置取得手段と、時刻に応じた測位位置を蓄積する位置蓄積手段と、位置蓄積手段に蓄積された多数の測位位置を送信する位置送信手段とを有し、当該携帯端末から多数の測位位置を受信する滞在特性推定サーバであって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する滞留位置抽出手段と、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分するクラスタリング手段と、
クラスタ毎に、滞留位置が1回でも存在する滞在日数を、日属性に基づいて計数する滞在率算出手段と、
滞在日数が多いクラスタから順に、日属性に基づいて、当該クラスタの滞在特性を推定する滞在特性推定手段と
を有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、測位電波を受信する測位部を有し、ユーザの移動に伴って所持される携帯端末に搭載されたコンピュータを、測位部を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する位置取得手段と、時刻に応じた測位位置を蓄積する位置蓄積手段として機能させるプログラムであって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する滞留位置抽出手段と、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分するクラスタリング手段と、
クラスタ毎に、滞留位置が1回でも存在する滞在日数を、日属性に基づいて計数する滞在率算出手段と、
滞在日数が多いクラスタから順に、日属性に基づいて、当該クラスタの滞在特性を推定する滞在特性推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、測位電波を受信する測位部を有し、ユーザの移動に伴って所持される携帯端末であって、測位部を所定時間周期で起動し、測位位置を取得し、時刻に応じた測位位置を蓄積する携帯端末について、ユーザの住所及び居所を推定する方法であって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する第1のステップと、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分する第2のステップと、
クラスタ毎に、滞留位置が1回でも存在する滞在日数を、日属性に基づいて計数する第3のステップと、
滞在日数が多いクラスタから順に、日属性に基づいて、当該クラスタの滞在特性を推定する第4のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の携帯端末、サーバ、プログラム及び方法によれば、携帯端末に搭載された測位機能のみを用いて、ユーザの移動に伴う住所/居所を自動的に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】所定時間周期毎の測位位置における空間的なプロット図である。
【図2】本発明における携帯端末の機能構成図である。
【図3】多数の測位位置から平滑化位置を抽出する説明図である。
【図4】複数の平滑化位置から滞留位置を抽出する説明図である。
【図5】複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分した説明図である。
【図6】クラスタ毎に、滞在日数を計数した説明図である。
【図7】多数の滞留位置から重心位置を算出する説明図である。
【図8】携帯端末及び滞在特性サーバを有するシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は、所定時間周期毎の測位位置における空間的なプロット図である。
【0021】
ユーザの移動に伴って所持される携帯端末(例えば携帯電話機)は、GPS衛星からの測位電波を受信することによって、位置を取得することができる。図1によれば、ユーザは、自宅の住所が「埼玉県ふじみ野市」にあり、職場の居所が「東京都港区飯田橋」にある。そのユーザは、自宅と職場との間を、池袋を経由して通勤している。また、そのユーザは、訪問先として「東京都千代田区大手町」へも頻繁に移動している。このような場合、ユーザに所持される携帯端末は、所定時間周期(例えば15分間隔)で測位することによって、時刻に応じた多数の測位位置が取得される。尚、測位位置は、GPSを用いた場合、「緯度・経度」として表される。
【0022】
本発明について、「住所」とは、ユーザ各人の生活の本拠をいい、例えば生活の中心となっている自宅の所在地を意味する。また、「居所」とは、継続して居るものの、生活の本拠というほどその場所との結びつきが強くない場所をいい、例えば職場又は学校の所在地をいう。
【0023】
図2は、本発明における携帯端末の機能構成図である。
【0024】
図2によれば、携帯端末1は、測位部100と、位置取得部111と、位置蓄積部112と、アプリケーション処理部113とを有する。測位部100は、GPS衛星から送信される測位電波を受信し、現在位置を特定する。位置取得部111は、測位部100を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する。位置蓄積部112は、時刻に応じた測位位置を蓄積する。アプリケーション処理部113は、本発明によって推定されたユーザに滞在特性に応じて、様々なサービスを実行する。
【0025】
また、本発明における携帯端末1は、滞留位置抽出部121と、クラスタリング部122と、滞在率算出部123と、滞在特性推定部124と、重心位置決定部125と、地域名称記憶部126と、名前解決部127とを更に有する。これら機能構成部は、携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0026】
[滞留位置抽出部]
滞留位置抽出部121は、時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する。具体的には、ユーザが自動車や電車等における移動中位置を取り除き、自宅や職場における滞留位置を抽出する。
【0027】
図3は、多数の測位位置から平滑化位置を抽出する説明図である。
【0028】
図3(a)によれば、所定時間周期I毎における多数の測位位置p(t)(t=1〜6)が表されている。また、図3(b)によれば、現時刻tにおける平滑化位置pa(t)(t=3〜6)が表されている。平滑化位置pa(t)は、現時刻tから直近過去所定時間T以内に取得された複数の測位位置p(t)〜p(t-n)を平滑化したものである。GPSによって得られた測位位置は誤差を含むために、実際に移動していない場合であっても、測位位置が変位している場合がある。そのために、平滑化位置pa(t)を算出することによって、誤差分を吸収することができる。
【0029】
図3(b)によれば、以下のように表される。
I:所定時間周期
T:平滑化のための直近過去所定時間
p(t):時刻tにおける測位位置 P(t)=ベクトル(latt, lont)
n(t):時刻tにおける直近過去所定時間T以内に測位に成功したデータ数
0≦n(t)≦(T/I)
pa(t):n(t)>0である場合、時刻tにおける平滑化位置
pa(t)=(1/n(t))Σt-Ttp(t)
【0030】
図4は、複数の平滑化位置から滞留位置を抽出する説明図である。
【0031】
図4(a)によれば、直近過去の平滑化位置pa(t-1)から、現時刻tの平滑化位置pa(t)への変位距離を算出する。変位距離は、例えば以下のように、ユークリッド距離によって算出される。
d(pa(t),pa(t-1))
=√((lata(t)-lata(t-1))2+(lona(t)-lona(t-1))2
d(a,b):点aと点bとの間のユークリッド距離
【0032】
次に、平滑化位置pa間毎の変位距離に対する変位時間から、移動速度を算出する。
移動速度は、例えば以下の式によって算出される。
v(t)=d(pa(t),pa(t-1))/変位時間
変位時間:pa(t)の時刻tと、pa(t-1)の時刻t-1との時間差
【0033】
図4(b)によれば、最後に、移動速度v(t)が、所定閾値Vth以下となる平滑化位置paのみを抽出する。即ち、移動速度v(t)が、所定閾値Vthよりも速い平滑化位置を除去することによって、移動中位置を取り除く。そして、移動速度が所定閾値以下となる滞留位置のみを残すことができる。
【0034】
[クラスタリング部]
クラスタリング部122は、複数の滞留位置の群を、空間的な0個以上のクラスタに区分する。
【0035】
図5は、複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分した説明図である。
【0036】
例えば、図5によれば、4つのクラスタに区分されている。複数の滞留位置をクラスタリングするために、既知のアルゴリズム、例えばDBSCAN(Density-Based Spatial Clustering)(例えば非特許文献2参照)を用いることができる。k-meansを用いてもよいが、クラスタ数kを事前に与える必要がある。これに対し、DBSCANの場合、クラスタ数を事前に与えことなく、比較的に直感的なクラスタを抽出できる点で適している。
【0037】
DBSCANは、超球状ではない任意形状のクラスタの抽出を目的としたクラスタリング方法であって、2つの点における直接密度到達可能(directly density-rechable)を導出するものである。あるseed点から、直接密度到達可能な関係を推移的に辿って、到達可能な極大集合を1つのクラスタとして抽出する。
【0038】
DBSCANによれば、Eps(epsilon、距離)及びMinPts(minimum points、最低ポイント)の2つのパラメータを用いる。例えばEps=0.0005及びMinPts=10を事前に与えるものであってもよい。また、これらパラメータを、測位の所定時間周期や最終的な住所居所推定の結果によって変更するものであってもよい。
【0039】
[滞在率算出部]
滞在率算出部123は、クラスタ毎に、滞留位置が1回でも存在する滞在日数を用いて、日属性に基づく滞在率を算出する。
【0040】
図6は、クラスタ毎に、滞在日数を計数した説明図である。
【0041】
滞在率算出部123は、クラスタ毎に、日属性(全日、平日、及び休日)に基づいて、滞留位置が1回でも存在する滞在日数を計数する。
nd(c):クラスタcにおける全日滞在日数
ndw(c):クラスタcにおける平日滞在日数
ndh(c):クラスタcにおける休日滞在日数
【0042】
ここで、日数ベースで、滞留位置をカウントする理由について説明する。本発明によれば、測位位置が1日に1回以上存在すれば、滞在日数を1増分する。この場合、測位位置が少なくても、全ての日で1回以上その測位位置が存在すれば、滞在率は100%となる。逆に、いずれかの特定の1日のみで、測位位置が多く存在しても、その滞在率は低くなる。
【0043】
滞在率を「測位位置の数」で見ないのは、GPSの場合、測位位置の数は、滞在時間の長さではなく、測位容易性(測位のし易さ)に依存してしまうためである。
【0044】
また、滞在率を「滞在時間」で見ないのは、3つの理由がある。
【0045】
第1の理由は、滞在時間を導出するために、クラスタへの入場時刻と出場時刻とを追跡する必要があり、計算量が多くなるからである。入場時刻とは、クラスタ外からクラスタ内へ測位位置が変位した時刻である。出場時刻とは、クラスタ内からクラスタ外へ測位位置が変位した時刻である。
【0046】
第2の理由は、GPSの測位容易性によって、クラスタごとに滞在時間の厳密さに、ばらつきが生じるからである。即ち、測位のし易いクラスタの滞在時間は正確に求められるが、測位のし難いクラスタの滞在率は極めて荒くなる。
【0047】
第3の理由は、クラスタの面積の大きさが、滞在時間に対して影響を与えやすいからである。即ち、大きい面積のクラスタほど滞在時間が長くなる。従って、クラスタリング精度が、滞在時間の精度に影響を与えてしまう。例えば、同じ測位位置に対するクラスタリングの結果が、パラメータによって、図6のクラスタAのような場合もあれば、クラスタBのような場合もあり得る。このとき、滞在時間はクラスタの面積が大きいクラスタBの方が長くなるが、滞在日数は等しい。
【0048】
このような理由から、日数ベースで滞在率を算出することによって、GPSの測位容易性の不安定さや、クラスタリングの精度の不安定さを吸収し、高い精度で、滞在場所を推定することが可能となる。
【0049】
ここで、平日/休日の定義は、カレンダ情報に基づいて土曜日及び日曜日に設定されたものであってもよいし、ユーザに利用態様に応じて設定されたものであってもよい。携帯端末が、携帯電話機である場合、アプリケーションとして搭載されたカレンダ/スケジューラの機能を用いることもできる。
【0050】
次に、滞在率算出部123は、クラスタ毎に、日属性に基づいて、滞在日数から滞在率を算出する。滞在率は、例えば以下のように算出される。
D:全日日数
Dw:平日日数
Dh:休日日数
R(c):クラスタcにおける全日滞在率
R(c)=nd(c)/D
Rw(c):クラスタcにおける平日滞在率
Rw(c)=ndw(c)/Dw
Rh(c):クラスタcにおける休日滞在率
Rh(c)=ndh(c)/Dh
【0051】
[滞在特性推定部]
滞在特性推定部124は、日属性に基づく滞在率が高いクラスタについて、当該クラスタの滞在特性を推定する。滞在特性は、自宅のような「住所」、及び、職場・学校のような「居所」に基づいている。推定方法としては、例えば以下の3通りがある。
【0052】
第1に、平日休日を問わず、全日滞在率(滞在日数/記録日数)が高い第1のクラスタを「住所」と規定し、第1のクラスタ以外に平日滞在率が高い第2のクラスタを「居所」と規定するものであってもよい。
【0053】
第2に、全日滞在率が高い2つのクラスタA及びクラスタBを選択し、平日を基準とした以下の関係に基づいて、「住所/居所」を規定するものであってもよい。
RwA>RwBの場合:クラスタA「住所」、クラスタB「居所」
RwA<RwBの場合:クラスタA「居所」、クラスタB「住所」
RwA=RwBの場合:休日滞在率が高い方のクラスタを「住所」
【0054】
第3の、全日滞在率が高い2つのクラスタA及びクラスタBを選択し、休日を基準とした以下の関係に基づいて、「住所/居所」を規定するものであってもよい。
RhA>RhBの場合:クラスタA「住所」、クラスタB「居所」
RhA<RhBの場合:クラスタA「居所」、クラスタB「住所」
RhA=RhBの場合:平日滞在率が高い方のクラスタを「居所」
【0055】
例えば、図6によれば、クラスタ1が「住所」として規定され、クラスタ3が「居所」として規定されている。
【0056】
[重心位置決定部]
重心位置決定部125は、滞在特性推定部124によって抽出された第1のクラスタ及び第2のクラスタについて、多数の滞留位置から重心位置を算出する。
【0057】
図7は、多数の滞留位置から重心位置を算出する説明図である。
【0058】
重心位置を算出することによって、クラスタリングの精度の不安定さを吸収し、比較的正確な住所/居所の位置を推定することができる。また、クラスタの面積が広くても、その重心位置はほぼ近い位置とる。例えば、同じ測位位置に対するクラスタリングの結果が、パラメータによって、図7のクラスタAのような場合もあれば、クラスタBのような場合もあり得る。このとき、クラスタの示す領域は異なるが、重心位置は大きく変わらない。
【0059】
あるクラスタcの重心位置pcは、そのクラスタに属する滞留位置の群の平均値を算出すればよい。クラスタcにnc個の滞留位置(平滑化位置)が含まれている場合、以下の式によって算出される。
pcx=(1/ncpai∈cpai
【0060】
そして、重心位置決定部125は、第1のクラスタの重心位置を「住所」位置として規定し、第2のクラスタの重心位置を「居所」位置として規定する。
【0061】
[地域名称記憶部]
地域名称記憶部126は、地域名称に対応付けて位置を記憶する。例えば、駅名を地域名称として、その駅名に対応付けて緯度経度を記憶したデータベースもある(例えば非特許文献3参照)。非特許文献3によれば、例えば以下のようなデータを記憶している。
鉄道概要コード rr_cd 整数2桁
路線コード line_cd 整数5桁 鉄道コード+エリアコード+連番
駅コード station_cd 整数77桁 路線コード+連番
・・・・
鉄道概要名 rr_name 文字列64byte
路線名 line_name 文字列128byte
駅名 station_name 文字列128byte
都道府県コード pref_cd 整数2桁 北海道〜沖縄+その他
緯度 lat 数値
経度 lon 数値
【0062】
[名前解決部]
名前解決部127は、地域名称記憶部126を用いて、住所位置及び居所位置に最も近い「地域名称」を検索し、当該「地域名称」を、住所位置の住所及び居所位置の居所と規定する。具体的には、駅データを用いた場合、住所位置の緯度・経度に最も近い緯度・経度となる駅名を、住所位置の地域名称とする。また、居所位置の緯度・経度に最も近い緯度・経度となる駅名を、居所位置の地域名称とする。地域名称を規定することによって、重心位置精度の不安定さを吸収することができる。また、これら地域名称は、アプリケーション処理部113によって様々に利用することができる。
【0063】
例えば、図7によれば、住所位置に最も近い「ふじみ野」駅を、住所位置の地域名称と規定される。また、居所位置に最も近い「飯田橋」駅を、居所位置の地域名称と規定される。従って、居所位置から離れた「水道橋」駅及び「神保町」駅は、居所位置の地域名称として選択されない。重心位置が正しい住所位置からずれている場合であっても、地域名称は正しい名称をつけることができる。
【0064】
図8は、携帯端末及び滞在特性サーバを有するシステム構成図である。
【0065】
図8によれば、携帯端末1は、ユーザの移動に伴って所持され、所定時間周期で測位位置を取得する。取得された測位位置は、位置情報送信部114から、ネットワークを介して、滞在特性推定サーバ2へ送信される。滞在特性推定サーバ2は、前述した滞留点抽出部121〜名前解決部127の機能を有する。これによって、サーバは、携帯端末の移動における滞在特性を推定し、様々なサービス情報を携帯端末へ送信することができる。
【0066】
以上、詳細に説明したように、本発明の携帯端末、サーバ、プログラム及び方法によれば、携帯端末に搭載された測位機能のみを用いて、ユーザの移動に伴う住所/居所を自動的に推定することができる。
【0067】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0068】
1 携帯端末
100 測位部
101 無線通信インタフェース
102 通信インタフェース
111 位置取得部
112 位置蓄積部
113 アプリケーション処理部
114 位置情報送信部
115 位置情報受信部
121 滞留位置抽出部
122 クラスタリング部
123 滞在率算出部
124 滞在特性推定部
125 重心位置決定部
126 地域名称記憶部
127 名前解決部
2 滞在特性推定サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの移動に伴って所持される携帯端末であって、測位電波を受信する測位部と、前記測位部を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する位置取得手段と、時刻に応じた前記測位位置を蓄積する位置蓄積手段とを有する携帯端末であって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する滞留位置抽出手段と、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分するクラスタリング手段と、
前記クラスタ毎に、前記滞留位置が1回でも存在する滞在日数を用いて、日属性に基づく滞在率を算出する滞在率算出手段と、
日属性に基づく滞在率が高いクラスタについて、当該クラスタの滞在特性を推定する滞在特性推定手段と
を有することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記滞在特性推定手段について、
前記日属性は、カレンダ又はユーザ設定による平日及び休日に基づいており、
前記滞在特性は、自宅のような「住所」、及び、職場・学校のような「居所」に基づいており、
全日滞在率が高い第1のクラスタを前記住所と規定し、第1のクラスタ以外に平日滞在率が高い第2のクラスタを前記居所と規定するか、
全日滞在率が高い2つのクラスタを選択し、平日滞在率が高い一方のクラスタを前記居所と規定し、他方のクラスタを前記住所と規定するか、又は、
全日滞在率が高い2つのクラスタを選択し、休日滞在率が高い一方のクラスタを前記住所と規定し、他方のクラスタを前記居所と規定する
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記滞在特性推定手段によって抽出された第1のクラスタ及び第2のクラスタについて、多数の滞留位置から重心位置を算出し、第1のクラスタの重心位置を「住所」位置として規定し、第2のクラスタの重心位置を「居所」位置として規定する重心位置決定手段を更に有する特徴とする請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
地域名称に対応付けて位置を記憶した地域名称記憶手段と、
前記地域名称記憶手段を用いて、前記住所位置及び居所位置に最も近い「地域名称」を検索し、当該「地域名称」を、前記住所位置の住所及び前記居所位置の居所と規定する名前解決手段と
を更に有することを特徴とする請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記滞留位置抽出手段は、
現時刻tから直近過去所定時間T以内に取得された複数の測位位置pt〜pt-nを平滑化し、現時刻tにおける平滑化位置patを算出し、
現時刻tの平滑化位置patに対する直近過去の平滑化位置pat-1からの変位距離を算出し、
前記変位距離に対する変位時間から移動速度を算出し、
前記移動速度が所定閾値以下となる平滑化位置paを「滞留位置」として抽出する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記位置は、緯度・経度のベクトルであり、
前記クラスタリング手段は、DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering)を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
ユーザの移動に伴って所持される携帯端末と通信可能なサーバであり、
前記携帯端末は、測位電波を受信する測位部と、前記測位部を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する位置取得手段と、時刻に応じた前記測位位置を蓄積する位置蓄積手段と、前記位置蓄積手段に蓄積された多数の測位位置を送信する位置送信手段とを有し、当該携帯端末から多数の測位位置を受信する滞在特性推定サーバであって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する滞留位置抽出手段と、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分するクラスタリング手段と、
前記クラスタ毎に、前記滞留位置が1回でも存在する滞在日数を用いて、日属性に基づく滞在率を算出する滞在率算出手段と、
日属性に基づく滞在率が高いクラスタについて、当該クラスタの滞在特性を推定する滞在特性推定手段と
を有することを特徴とする滞在特性推定サーバ。
【請求項8】
測位電波を受信する測位部を有し、ユーザの移動に伴って所持される携帯端末に搭載されたコンピュータを、前記測位部を所定時間周期で起動し且つ測位位置を取得する位置取得手段と、時刻に応じた前記測位位置を蓄積する位置蓄積手段として機能させるプログラムであって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する滞留位置抽出手段と、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分するクラスタリング手段と、
前記クラスタ毎に、前記滞留位置が1回でも存在する滞在日数を用いて、日属性に基づく滞在率を算出する滞在率算出手段と、
日属性に基づく滞在率が高いクラスタについて、当該クラスタの滞在特性を推定する滞在特性推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする携帯端末用のプログラム。
【請求項9】
測位電波を受信する測位部を有し、ユーザの移動に伴って所持される携帯端末であって、前記測位部を所定時間周期で起動し、測位位置を取得し、時刻に応じた前記測位位置を蓄積する携帯端末について、ユーザの住所及び居所を推定する方法であって、
時系列の測位位置の移動に応じて、移動中位置以外の滞留位置のみを抽出する第1のステップと、
複数の滞留位置を、空間的なクラスタに区分する第2のステップと、
前記クラスタ毎に、前記滞留位置が1回でも存在する滞在日数を用いて、日属性に基づく滞在率を算出する第3のステップと、
日属性に基づく滞在率が高いクラスタについて、当該クラスタの滞在特性を推定する第4のステップと
を有することを特徴とする携帯端末の住所居所推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−171876(P2011−171876A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32054(P2010−32054)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】