ラジカル測定装置及びラジカル測定管
【課題】平板状のサンプル材料の組み合わせにより形成されるサンプル管を有するラジカル測定装置及びラジカル測定管を提供すること
【解決手段】本発明のラジカル測定装置1は、ラジカル生成室2と、測定管4と、支持体16と、真空排気部10とを具備する。ラジカル生成室2は、原料ガスのプラズマを発生させることで原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段6を有する。測定管4は、ラジカル生成室2に連通する。支持体16は測定管4内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板Sにより管状のサンプル管が形成されるように、それぞれのサンプル板を支持する。真空排気部10は、測定管4を真空排気する。温度センサ9は、サンプル管に挿通され、サンプル管の軸方向に沿って移動可能である。
【解決手段】本発明のラジカル測定装置1は、ラジカル生成室2と、測定管4と、支持体16と、真空排気部10とを具備する。ラジカル生成室2は、原料ガスのプラズマを発生させることで原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段6を有する。測定管4は、ラジカル生成室2に連通する。支持体16は測定管4内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板Sにより管状のサンプル管が形成されるように、それぞれのサンプル板を支持する。真空排気部10は、測定管4を真空排気する。温度センサ9は、サンプル管に挿通され、サンプル管の軸方向に沿って移動可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカルの結合熱を測定するためのラジカル測定装置及びラジカル測定管に関する。
【背景技術】
【0002】
アッシング、化学エッチング等、ラジカル(不対電子を有する化学種)を反応種として用いるプロセスが知られている。ラジカルは、原料ガスをプラズマ化することにより生成される。ラジカルは、一般に、分子に比べて不安定であり、生成されたラジカルの一部は互いに、又は他の化学種と結合(再結合)して分子等になり、活性が消失(失活)する。失活は、主にプロセスチャンバ等の固相表面において生じ、その速度は当該表面を構成する材料に依存する。このため、ラジカルが接触する表面を、そのラジカルの失活の速度(再結合係数)が小さい材料によって構成することにより、失活によって失われるラジカル量を低減し、所望の反応の速度を向上させることが可能となる。
【0003】
特定のラジカル種の各種材料に対する再結合係数は、測定により求めることができる。例えば、非特許文献1には、失活によるラジカル濃度の減少速度から、各種材料による水素ラジカルの再結合係数を求める測定装置が開示されている。当該測定装置は、原料ガスのラジカルを発生させるラジカル生成室と、ラジカル生成室に連通する測定管を有する。測定管内にはサンプル材料からなるサンプル管が配置され、サンプル管の軸方向に沿って可動する熱電対が設けられている。ラジカル生成室において生成した原料ガスのラジカルは、真空排気手段によって測定管に流入し、サンプルの表面で失活することによりその濃度が次第に減少する。熱電対によって測定される温度(ラジカルの結合熱)からラジカルの濃度勾配を求め、濃度勾配から当該ラジカルのサンプル材料に対する再結合係数を算出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R.K.Grubbs、S.M.George著 「Attenuation of hydrogen radicals traveling under flowing gas conditions through tubes of different materials」 The Journal of Vacuum Science and Technology A Vol.24 No.3 P486 American Vacuum Society
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の測定装置では、円管形状に形成されたサンプル管が用いられている。これは、サンプル表面から熱電対までのラジカルの輸送速度を均一にして、再結合係数の算出式を単純にするためである。しかしながら、多くは平板状で供給されるサンプル材料を円管形状に加工することは困難であり、高コストとなる。また、基体上に表面処理等によりサンプル材料を付着させる場合にも、円管形状では表面処理が困難である。これに対し、平板状のサンプル材料を組み合わせることによりサンプル管を作成することができれば、容易にサンプル管を準備することが可能である。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、平板状のサンプル材料の組み合わせにより形成されるサンプル管を有するラジカル測定装置及びラジカル測定管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るラジカル測定装置は、ラジカル生成室と、測定管と、支持体と、真空排気部とを具備する。
上記ラジカル生成室は、原料ガスのプラズマを発生させることで上記原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段を有する。
上記測定管は、上記ラジカル生成室に連通する。
上記支持体は上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
上記真空排気部は、上記測定管を真空排気する。
上記温度センサは、上記サンプル管に挿通され、上記サンプル管の軸方向に沿って移動可能である。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るラジカル測定管は、測定管と、支持体とを具備する。
上記測定管は、ラジカルの流路を形成する。
上記支持体は、上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るラジカル測定装置を示す模式図である。
【図2】同ラジカル測定装置の、支持部材が設置されていない状態の測定管を示す斜視図である。
【図3】同ラジカル測定装置の支持部材を示す斜視図である。
【図4】同ラジカル測定装置の、組み合わされた支持部材を示す斜視図である。
【図5】同ラジカル測定装置の支持部材が挿入された測定管を示す斜視図である。
【図6】同ラジカル測定装置の支持部材が挿入された測定管を示す平面図である。
【図7】同ラジカル測定装置に配置されるサンプル板を示す斜視図である。
【図8】同ラジカル測定装置のサンプル板が設置された測定管を示す斜視図である。
【図9】同ラジカル測定装置のサンプル板が設置された測定管を示す平面図である。
【図10】同ラジカル測定装置の遮蔽蓋が設置された測定管を示す斜視図である。
【図11】同ラジカル測定装置の遮蔽蓋が設置された測定管を示す平面図である。
【図12】実施例及び比較例に係るラジカル測定装置の温度測定の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るラジカル測定装置は、ラジカル生成室と、測定管と、支持体と、真空排気部とを具備する。
上記ラジカル生成室は、原料ガスのプラズマを発生させることで上記原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段を有する。
上記測定管は、上記ラジカル生成室に連通する。
上記支持体は上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
上記真空排気部は、上記測定管を真空排気する。
上記温度センサは、上記サンプル管に挿通され、上記サンプル管の軸方向に沿って移動可能である。
【0011】
ラジカル生成室において生成されたラジカルは、真空排気部による圧力差によりラジカル生成室から測定管に向かって流れる。測定管に流入したラジカルのうち、サンプル管の表面に到達したものはその表面において失活するため、ラジカルの濃度は次第に減少する。温度センサによりラジカルの温度センサ表面への再結合熱を測定することにより、測定管内の複数の位置でラジカル濃度の減少量を算出することができる。このラジカル濃度の減少量から、当該ラジカル種のサンプル材料に対する失活の程度(速度)を示す再結合係数を算出することが可能である。ここで、上記構成によれば、平板状のサンプル板が支持体によって支持されることにより、測定管の内部にサンプル管が形成される。平板状のサンプル板は、曲板状などの形状を有するものに比べて成形が容易であり、また表面処理を施すことも容易である。
【0012】
上記支持体は、上記測定管と複数の上記サンプル板とに面接触するものであってもよい。
【0013】
支持体が測定管とサンプル板とに面接触することにより、サンプル板と測定管の間の熱伝導率を向上させることが可能である。当該ラジカル測定装置では、測定管の外壁の温度をサンプル板の温度として扱うため、サンプル板と測定管の温度差が小さい方が正確なラジカル結合熱の測定が可能である。
【0014】
上記ラジカル測定装置は、上記測定管内に配置され、上記支持体及び上記サンプル板の端面を上記測定管内に露出しないように被覆する被覆部材をさらに具備してもよい。
【0015】
上記のように測定管に流入したラジカルのサンプル表面における失活を測定するため、測定管内には、サンプル表面以外の表面が露出していないことが望ましい。上記構成によれば、被覆部材により支持体及びサンプル板の端面が被覆され、当該面でのラジカルの失活を防止することが可能である。
【0016】
上記支持体は、複数の、上記測定管に面接触する第1の面と上記サンプル板に面接触する第2の面を有する支持部材からなるものであってもよい。
【0017】
この構成によれば、1枚のサンプル板を1基の支持部材が支持するため、第1の面は平面状とすることができる。このため、支持部材とサンプル板の間の隙間の発生を防止し、支持部材とサンプル板の間の熱伝導を良好なものとすることができる。
【0018】
上記測定管は、円管であり、上記支持体は、上記サンプル管が矩形管となるように上記サンプル板を支持してもよい。
【0019】
円管は、他の形状の管に比較して耐圧性が高く、同じ耐圧性とするならば少ない材料で作成することが可能である。このため、測定管を円管とし、内部に平板状のサンプル板を組み合わせた矩形管を配置するものである。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係るラジカル測定管は、測定管と、支持体とを具備する。
上記測定管は、ラジカルの流路を形成する。
上記支持体は、上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[ラジカル測定装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るラジカル測定装置1を示す模式図である。
同図に示すように、ラジカル測定装置1は、ラジカル生成室2、L字管3、測定管4及び排気管5によって構成されている。ラジカル生成室2にL字管3が接続され、L字管3に測定管4が接続され、測定管4に排気管5が接続されている。測定管4には、温度センサ9が挿通されている。
【0023】
ラジカル生成室2は、原料ガスがプラズマ化され、ラジカルが生成される室である。ラジカル生成室2は室内を室外と隔絶し、室内と室外の圧力差を維持可能に構成されている。ラジカル生成室2には、生成されたラジカルが流出するための開口2aが設けられている。ラジカル生成室2にはプラズマ発生器6及びガス導入系7が接続されている。
【0024】
プラズマ発生器6は、ガス導入系7によってラジカル生成室2に導入された原料ガスに対して、マイクロ波(例:周波数2.45GHz)等の電磁波を照射し、原料ガスをプラズマ化することが可能に構成されている。また、プラズマ発生器6は、レーザによる励起等によって原料ガスをプラズマ化するものとすることもできる。
【0025】
ガス導入系7はラジカル生成室2の室内に原料ガスを供給する。ガス導入系7は、例えばガスボンベと配管により構成されている。ガス導入系7は、ラジカル生成室2に供給される原料ガスの流量を調節可能なものとされる。
【0026】
L字管3は、L字形状の管路を有する管であり、ラジカル生成室2の開口2aに接続されている。L字管3は、後述するラジカルの失活が発生しない材料、例えば石英からなるものとすることができる。L字管3は、ラジカル生成室2において発生する原料ガスのプラズマから放射される輻射熱が測定管4に到達することを防止するために配置される。L字管3は、ラジカル生成室2に接続されるフランジ3aと、測定管4に接続されるフランジ3bとを有する。
【0027】
測定管4は、サンプルが配置される管であり、L字管3に接続されている。測定管4は円管形状に形成されている。測定管4には、サンプル板Sを支持する支持部材16と、サンプル板S及び支持部材16の端面を被覆する遮蔽蓋18が設けられている。これらの構成の詳細は後述する。測定管4は、L字管3に接続されるフランジ4aと、排気管5に接続されるフランジ4bを有する。
【0028】
排気管5は、測定管4内にラジカルを流通させるための管であり、測定管4に接続されている。排気管5には、排気口5aが設けられ、排気口5aには排気系10が接続されている。後述するが、排気口5aが測定管4に近接していると、排気口5aに吸引される気体の流れにより、測定管4内の気体の流れが層流ではなくなり、結合熱の算出に影響が生じるおそれがある。このため、排気管5によって排気口5aと測定管4とが離間されている。排気管5の測定管4と反対側の開口は蓋12によって閉塞されている。排気管5は、測定管4に接続されるフランジ5bと、蓋12が接続されるフランジ5cを有する。
【0029】
排気系10は、ラジカル生成室2、L字管3、測定管4及び排気管5によって形成されてる空間の気体を排気管5に形成された排気口5aから排気する。排気系10は、例えば真空ポンプと配管によって構成される。排気系10は、排気速度を調節可能なものとされる。
【0030】
温度センサ9は、測定管4に流入したラジカルを検出する。温度センサ、ラジカルが付着して再結合する触媒表面を有するものとされる。温度センサ9は、例えばR熱電対(+極:Pt-Rh(13%)合金、−極:Pt)とすることができる。温度センサ9は測定管4の軸方向に伸びる支持棒14に支持され、測定管4の中心軸上に配置される。
【0031】
支持棒14は、測定管4から排気管5を挿通して蓋12を貫通し、排気管5の外部に伸びる。支持棒14は、蓋12に設けられた駆動機構15に連結されている。駆動機構15は、モータ、ギア等を内蔵し、支持棒14を測定管4の軸方向に駆動する。駆動機構15は、支持棒14に取り付けられている温度センサ9が測定管4の内部において移動可能となるように構成される。即ち、駆動機構15によって支持棒14が駆動され、支持棒14に取り付けられている温度センサ9が測定管4の軸方向において任意の位置をとることが可能とされる。なお、支持棒14及び駆動機構15は、ここに示す構成に限られず、温度センサ9を支持し、駆動することが可能な他の構成とすることも可能である。
【0032】
ラジカル測定装置1は以上のように構成されている。ラジカル生成室2、L字管3、測定管4及び排気管5によって、連通した空間(以下、測定空間)が形成される。測定空間は、ガス導入系7及び排気系10によって圧力が調節可能に構成されている。
【0033】
[測定管の構成]
以下、測定管4の詳細な構成について説明する。
図2は支持部材16が設置されていない状態の測定管4を示す斜視図である。同図に示すように、測定管4は、円形の管路を有する円管である。測定管4には、遮蔽蓋18が装着されるための凹部4cが形成されている。凹部4cはフランジ4aの当接面から一段繰り下げられている。
【0034】
図3は、支持部材16を示す斜視図である。図3(a)は支持部材16を一方向からみた図であり、図3(b)は支持部材16を反対方向からみた図である。
同図に示すように、支持部材16は、欠円(直線と円弧からなる円の一部)を上面及び下面とする柱状の形状を有し、側面に当たる第1の面16aと第2の面16bを有する。第1の面16aは平面状であり、サンプルSが配置される面である。第2の面16bは曲面であり、測定管4に当接する面である。支持部材16の長さ(測定管4の軸方向)は測定管4の長さと同一とすることができる。支持部材16は、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニウムからなるものとすることができる。
【0035】
支持部材16は、4基が組み合わされた状態で測定管4に挿入される。図4は、支持部材16を組み合わせた状態を示す斜視図である。同図に示すように、支持部材16は、それぞれの第1の面16aが直交するように組み合わされる。これにより、内周が4面の第1の面16aからなる面であり、外周が4面の第2の面16bからなる面である筒状形状が形成される。
【0036】
図5は、支持部材16が挿入された測定管4を示す斜視図である。図6は、支持部材16が挿入された測定管4を示す平面図である。これらの図に示すように、4基の支持部材16は、それぞれの第2の面6bが測定管4の内周面に面接触する。この状態の測定管4に4枚のサンプル板Sが載置される。
【0037】
図7サンプル板Sを示す斜視図である。図7(a)は1枚のサンプル板Sを示し、図7(b)は、測定管4に載置される状態の4枚のサンプル板Sを示す。サンプル板Sは、測定対象の材料からなり、略同一の大きさを有する平板状である。サンプル板Sは、支持部材16の第1の面16aと同等の大きさに形成されている。サンプル板Sは、1枚ずつがそれぞれ1基の支持部材16に載置され、図7(b)に示すように角管状に配置される。
【0038】
図8は、サンプル板Sが設置された測定管4を示す斜視図である。図9はサンプル板Sが設置された測定管4を示す平面図である。同図に示すように、測定管4の管内に、サンプル板Sからなる管(以下、サンプル管とする)が形成される。サンプル板Sは、それぞれ支持部材16の第1の面16aに面接触する。
【0039】
さらに、測定管4には、遮蔽蓋18が装着される。図10は、遮蔽蓋18が装着される測定管4を示す斜視図である。図11は、遮蔽蓋18が装着された測定管4を示す平面図である。なお、図10では、遮蔽蓋18は測定管4から離間して示されている。これらの図に示すように、遮蔽蓋18は、矩形状の開口を有する円板状である。遮蔽蓋18は、ラジカルが失活しない材料、例えば石英からなり、ラジカルが支持部材16の端面及びサンプル板Sの端面において失活することを防止する。開口の大きさは、支持部材16の端面と、サンプル板Sの端面が被覆され、かつ最大の開口面積となる大きさである。
【0040】
測定管4は以上のような構成を有する。4基の支持部材16により、4枚のサンプル板Sが管状に支持される。これにより、平板状のサンプル板Sを用いてサンプル管とすることができる。平板状のサンプル板Sは、曲面状のもの等に比べて製造が容易であり、サンプル管のコストを低減することが可能である。また、熱伝導性の高い支持部材16により、サンプル管の温度と測定管4の外面の温度を同等とすることが可能となる。さらに、サンプル板Sと支持部材16の熱容量が大きくなるため、測定中のサンプル板Sの温度変化を小さくすることができ、ラジカルの結合熱を正確に測定することが可能となる。
【0041】
[ラジカル測定装置によるラジカル測定方法]
以上のように構成されたラジカル測定装置1による測定方法を説明する。
【0042】
最初に、排気系10により測定空間が排気され、測定空間が清浄になるまで十分に減圧される。次にガス導入系7からラジカル生成室2に原料ガスが供給される。排気系10の排気速度と、ガス導入系7からの原料ガスの供給速度が調節され、測定空間が所定の圧力に維持される。この状態において、測定空間では、ラジカル生成室2からL字管3、測定管4、排気管5を経由して排気口5aに至る、一定流量の原料ガスのガスフローが形成される。ここで、測定管4を流通するガスフローは層流とされる。
【0043】
次に、プラズマ発生器6により原料ガスがプラズマ化される。プラズマ中の電子が原料ガスの分子に衝突することにより分子の結合が開裂し、ラジカルが生成する。ラジカルは不安定であるため再結合して分子に戻るが、プラズマ中では電子衝撃が継続するため、ラジカルの生成と再結合が平衡し、所定の濃度のラジカルがプラズマ中に存在する。生成したラジカルは、ガスフローによってラジカル生成室2の開口2aから流出し、L字管3を通過して測定管4に流入する。
【0044】
測定管4を流通するラジカルのうち、サンプル板Sの表面に到達したものは、サンプル板Sの表面において所定の速度(割合)で失活する。この失活の速度は、ラジカル種とサンプル板Sの表面の材質によって決定される。これにより、測定管4内のラジカル濃度は、上流から下流に向かって次第に減少する。
【0045】
測定管4を流通するラジカルの一部は、温度センサ9の表面に付着して再結合し、結合熱を生じる。結合熱は、ラジカルが結合して分子を生成する際に放出する結合解離エネルギーと温度センサ9に輸送されるラジカルの数の積として考えられる。これにより、結合熱から温度センサ9に輸送されるラジカルの数を求めることができる。測定管4を流れるガスフローが層流であれば、結合熱からラジカルの濃度を算出することが可能である。
【0046】
温度センサ9は特定の位置においてその出力が測定された後、測定管4の軸方向に移動する。温度センサ9の移動は駆動機構15によって支持棒14が駆動されることによってなされる。温度センサ9は移動した新たな位置において出力が測定され、さらに移動及び出力の測定が繰り返される。このようにすることによって、温度センサ9は測定管4内の複数の位置においてその出力を測定される。
【0047】
測定管4を通過したラジカルは、排気管5に流入し、排気系10によって排気口5aから排出される。排気口5aと測定管4は十分離間されているため、測定管4内のガスフローは層流として維持される。
【0048】
[再結合係数の算出方法]
以上のようにして測定された温度センサ9の出力から、当該ラジカル種のサンプル板Sの表面における再結合係数を算出する。以下、再結合係数の算出方法について説明する。
【0049】
温度センサ9の出力、即ち温度センサ9の熱収支は、以下の式(1)で表すことが出来る。
Q1+Q3+Q4=Q2+Q5 (1)
ここで、Q1は温度センサ9からの電磁波の放射により失われる熱、Q2はプラズマからの輻射によって温度センサ9に加えられる熱、Q3は温度センサ9の周囲に存在する気体の層流によって温度センサ9から失われる熱、Q4は温度センサ9の熱電対ワイヤから支持棒14への熱伝導によって失われる熱、Q5は温度センサ9の表面において生じるラジカルの結合熱によって温度センサ9に加わる熱である。温度センサ9の出力が一定となるまで、その位置を維持することにより温度センサ9への熱の流入(式(1)の左辺)と温度センサ9からの熱の流出(式(1)の右辺)が一致し、式(1)が成り立つ。
【0050】
Q1はステファンボルツマン(Stefan-Boltzmann)の法則(黒体の表面から単位面積、単位時間当たりに放出される電磁波のエネルギーはその黒体の熱力学温度の4乗に比例)から以下の式(2)によって求めることができる。
Q1=σAε(Tw4−Tf4) (2)
σはステファンボルツマン係数(5.67×10−8[W・m−2・K−4])、Aは温度センサ9の表面積、εは温度センサ9の輻射率、Twは各測定位置の温度(温度センサ9の出力)、Tfはガス温度(測定管4の外壁温度と仮定)である。
【0051】
Q3は以下の式(3)によって求めることができる。
Q3=hA(Tw−Tf) (3)
hはガス流れ中の温度センサ9の熱伝達率である。
【0052】
Q4は温度センサ9の熱電対ワイヤの断面積が十分小さいため無視することができる。
Q2は、プラズマからの輻射がL字管3によって遮蔽されるため無視することができる。
【0053】
以上により、温度センサ9の出力TwからQ1及びQ3を算出することでラジカルの結合熱であるQ5が得られる。温度センサ9の位置に対するQ5の傾きが減衰係数α[W/m]である。この減衰係数αから、以下の[数1]に示す行列式を用いて再結合係数γを算出する。
【0054】
【数1】
【0055】
[数1]に示す式において、Dはラジカルの拡散係数(m2/s)、Vfは測定管8を流れる気体の平均流速(m/s)、Lはサンプル管の一辺の長さ(m)、vtはラジカルの熱速度(m/t)である。
【0056】
[数1]の式の導出について説明する。
【0057】
角管の移流拡散方程式は以下の[数2]のように記述することができる。
【0058】
【数2】
【0059】
以下の[数3]に示すように関数形を仮定して[数2]に示す移流拡散方程式に代入すると、以下の[数4]に示す式が得られる。
【0060】
【数3】
【0061】
【数4】
【0062】
また、[数3]に示した関数形を、[数5]に示す境界条件に代入すると、[数6]に示す式が得られる。
【0063】
【数5】
【0064】
【数6】
【0065】
[数4]に示す式と[数6]に示す式から、[数7]に示す連立一次方程式が得られる。
【0066】
【数7】
【0067】
[数7]に示す式において、非ゼロの解が存在するためには、以下の[数8]に示す行列式が0となるγを求めればよい。[数8]に示す行列式において、各係数を求めると、[数9]に示した行列式となる。
【0068】
【数8】
【0069】
【数9】
【0070】
以上のようにして算出した[数9]の式を用いて、減衰係数αから再結合係数γを求めることができる。本実施形態では、上述のように、サンプル板Sと測定管4の熱伝導が良好であるため、ラジカルの結合熱Q5を正確に算出することができ、したがって、再結合係数γを正確に求めることが可能である。
【0071】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【0072】
上記実施形態において、測定管4は円管であるものとしたがこれには限られず、楕円形断面を有する管等とすることも可能である。この場合、支持部材16も測定管4の形状に応じた形状に形成される。
【0073】
上記実施形態において、サンプル管は4枚のサンプル板Sの組み合わせによって形成される角管であるものとしたがこれには限られない。例えば5枚のサンプル板Sの組み合わせてによって形成される、5角形の断面形状を有する管とすることも可能である。
【実施例】
【0074】
本発明の実施例及び比較例について説明する。実施例及び比較例では測定管を除いて上記実施形態に示したラジカル測定装置を用い、測定管を下記の各種構成とした。
【0075】
(実施例1)
円管(φ84mm×350mm)を測定管とした。その中に上記実施形態に示した支持部材を配置した。サンプル板として、A5052(アルミニウム:JIS規格)圧延板4枚(59.4mm×345mm×2tmm:2枚、55.4mm×345mm×2tmm:2枚)を用いた。4枚のサンプル板を支持部材上に角管状に配置した。測定管には、石英からなる遮蔽蓋を配置した。
【0076】
(比較例1)
サンプル材料であるA5052からなるφ84mm×350mmの円管を測定管とした。即ち、測定管自体をサンプル管として用いた。
【0077】
(比較例2)
角管(外径60mm×350mm、厚さ3mm)を測定管とした。その中に、A5052からなる板であり、サンプル板としてL字状に折り曲げられたL字板(L54mm×345mm×2tmm)2枚を管状に組み合わせて配置した。測定管には、石英からなる遮蔽蓋を配置した。
【0078】
(比較例3)
角管(外径60mm×350mm、厚さ3mm)を測定管とした。その中に、A5052からなる板であり、サンプル板として、A5052圧延板4枚(54mm×345mm×2tmm:2枚、50mm×345mm×2tmm:2枚)を用いた。4枚のサンプル板を支持部材上に角管状に配置した。測定管には、石英からなる遮蔽蓋を配置した。
【0079】
サンプル管作成の容易性について評価した。実施例1のサンプル管は、平板上のサンプル板を4枚組み合わせることにより、角管状のサンプル管を作成することが可能である。これに対し、比較例1のサンプル管は、サンプル材料を管状に加工する必要がある。サンプル材料が溶接ができる材料であるならば、平板状のサンプル材料を管状に折り曲げて溶接したのち、さらにフランジを溶接する必要がある。溶接できない材料であるならば、削り出しにより作成する必要がある。このため、実施例1の場合に比べて高コストとなる。
【0080】
比較例2及び比較例3では、サンプル材料を管状に加工する必要はないものの、角管状の測定管の角部にRが存在することにより、サンプル板と測定管の間に隙間が発生した。即ち、実施例1の場合に比べて測定管とサンプル板との密着性が低下する。また、角管をフランジを溶接する際に、溶接ビートの発生により削り出しで作成する場合に比べて隙間が大きくなった。
【0081】
サンプル材料を表面処理により作成する場合について評価した。サンプル材料が高価である場合等、特定の材料に表面処理を施したものをサンプル材料とする場合ある。実施例1の場合には、平板状の材料に表面処理を施せばよく、容易にすることが可能である。これに対し、比較例1や比較例2の場合には、表面処理を施す材料が平板状ではないため、アルマイト処理等のアノード酸化処理や化成処理等のウエット処理ならまだしも、蒸着や溶射等の表面処理は困難である。
【0082】
サンプル管の熱伝導率について評価した。上記実施例及び比較例の測定管を有する各ラジカル測定装置において実際に測定を行い、温度センサと測定管外壁の温度を測定した。測定結果を図12に示す。なお、この測定において原料ガスは酸素とし、マイクロ波パワー700W、ガス流速1.5m/s、温度センサの位置100mmとした。図12に示すように、実施例1と比較して比較例1の温度センサの温度は約70℃低く、外壁温度は約2℃高い。外壁温度が高いのは、酸素ラジカルの再結合熱の他に、熱容量の違いが考えられる。
【0083】
比較例2及び比較例3では、実施例1に比べて温度センサの温度が200℃程度低かった。角管の測定管とサンプル板の隙間やサンプル板同士の隙間が影響していると考えられる。温度センサの温度が高い方がS/N比のよい測定ができるが、比較例2及び比較例3では正確な測定に適していないといえる。比較例2及び比較例3では外壁温度も実施例1に比べて約3℃低かった。測定管とサンプル板の間の隙間により、熱が伝わり難くなっているためだと考えられる。以上のように、実施例1の構成は、比較例1乃至3の構成に比べてサンプル管の作成が容易であり、より正確な測定も可能であると考えられる。
【符号の説明】
【0084】
2…ラジカル生成室
4…測定管
9…温度センサ
10…真空排気管
16…支持部材
18…遮蔽部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカルの結合熱を測定するためのラジカル測定装置及びラジカル測定管に関する。
【背景技術】
【0002】
アッシング、化学エッチング等、ラジカル(不対電子を有する化学種)を反応種として用いるプロセスが知られている。ラジカルは、原料ガスをプラズマ化することにより生成される。ラジカルは、一般に、分子に比べて不安定であり、生成されたラジカルの一部は互いに、又は他の化学種と結合(再結合)して分子等になり、活性が消失(失活)する。失活は、主にプロセスチャンバ等の固相表面において生じ、その速度は当該表面を構成する材料に依存する。このため、ラジカルが接触する表面を、そのラジカルの失活の速度(再結合係数)が小さい材料によって構成することにより、失活によって失われるラジカル量を低減し、所望の反応の速度を向上させることが可能となる。
【0003】
特定のラジカル種の各種材料に対する再結合係数は、測定により求めることができる。例えば、非特許文献1には、失活によるラジカル濃度の減少速度から、各種材料による水素ラジカルの再結合係数を求める測定装置が開示されている。当該測定装置は、原料ガスのラジカルを発生させるラジカル生成室と、ラジカル生成室に連通する測定管を有する。測定管内にはサンプル材料からなるサンプル管が配置され、サンプル管の軸方向に沿って可動する熱電対が設けられている。ラジカル生成室において生成した原料ガスのラジカルは、真空排気手段によって測定管に流入し、サンプルの表面で失活することによりその濃度が次第に減少する。熱電対によって測定される温度(ラジカルの結合熱)からラジカルの濃度勾配を求め、濃度勾配から当該ラジカルのサンプル材料に対する再結合係数を算出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R.K.Grubbs、S.M.George著 「Attenuation of hydrogen radicals traveling under flowing gas conditions through tubes of different materials」 The Journal of Vacuum Science and Technology A Vol.24 No.3 P486 American Vacuum Society
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の測定装置では、円管形状に形成されたサンプル管が用いられている。これは、サンプル表面から熱電対までのラジカルの輸送速度を均一にして、再結合係数の算出式を単純にするためである。しかしながら、多くは平板状で供給されるサンプル材料を円管形状に加工することは困難であり、高コストとなる。また、基体上に表面処理等によりサンプル材料を付着させる場合にも、円管形状では表面処理が困難である。これに対し、平板状のサンプル材料を組み合わせることによりサンプル管を作成することができれば、容易にサンプル管を準備することが可能である。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、平板状のサンプル材料の組み合わせにより形成されるサンプル管を有するラジカル測定装置及びラジカル測定管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るラジカル測定装置は、ラジカル生成室と、測定管と、支持体と、真空排気部とを具備する。
上記ラジカル生成室は、原料ガスのプラズマを発生させることで上記原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段を有する。
上記測定管は、上記ラジカル生成室に連通する。
上記支持体は上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
上記真空排気部は、上記測定管を真空排気する。
上記温度センサは、上記サンプル管に挿通され、上記サンプル管の軸方向に沿って移動可能である。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るラジカル測定管は、測定管と、支持体とを具備する。
上記測定管は、ラジカルの流路を形成する。
上記支持体は、上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るラジカル測定装置を示す模式図である。
【図2】同ラジカル測定装置の、支持部材が設置されていない状態の測定管を示す斜視図である。
【図3】同ラジカル測定装置の支持部材を示す斜視図である。
【図4】同ラジカル測定装置の、組み合わされた支持部材を示す斜視図である。
【図5】同ラジカル測定装置の支持部材が挿入された測定管を示す斜視図である。
【図6】同ラジカル測定装置の支持部材が挿入された測定管を示す平面図である。
【図7】同ラジカル測定装置に配置されるサンプル板を示す斜視図である。
【図8】同ラジカル測定装置のサンプル板が設置された測定管を示す斜視図である。
【図9】同ラジカル測定装置のサンプル板が設置された測定管を示す平面図である。
【図10】同ラジカル測定装置の遮蔽蓋が設置された測定管を示す斜視図である。
【図11】同ラジカル測定装置の遮蔽蓋が設置された測定管を示す平面図である。
【図12】実施例及び比較例に係るラジカル測定装置の温度測定の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るラジカル測定装置は、ラジカル生成室と、測定管と、支持体と、真空排気部とを具備する。
上記ラジカル生成室は、原料ガスのプラズマを発生させることで上記原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段を有する。
上記測定管は、上記ラジカル生成室に連通する。
上記支持体は上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
上記真空排気部は、上記測定管を真空排気する。
上記温度センサは、上記サンプル管に挿通され、上記サンプル管の軸方向に沿って移動可能である。
【0011】
ラジカル生成室において生成されたラジカルは、真空排気部による圧力差によりラジカル生成室から測定管に向かって流れる。測定管に流入したラジカルのうち、サンプル管の表面に到達したものはその表面において失活するため、ラジカルの濃度は次第に減少する。温度センサによりラジカルの温度センサ表面への再結合熱を測定することにより、測定管内の複数の位置でラジカル濃度の減少量を算出することができる。このラジカル濃度の減少量から、当該ラジカル種のサンプル材料に対する失活の程度(速度)を示す再結合係数を算出することが可能である。ここで、上記構成によれば、平板状のサンプル板が支持体によって支持されることにより、測定管の内部にサンプル管が形成される。平板状のサンプル板は、曲板状などの形状を有するものに比べて成形が容易であり、また表面処理を施すことも容易である。
【0012】
上記支持体は、上記測定管と複数の上記サンプル板とに面接触するものであってもよい。
【0013】
支持体が測定管とサンプル板とに面接触することにより、サンプル板と測定管の間の熱伝導率を向上させることが可能である。当該ラジカル測定装置では、測定管の外壁の温度をサンプル板の温度として扱うため、サンプル板と測定管の温度差が小さい方が正確なラジカル結合熱の測定が可能である。
【0014】
上記ラジカル測定装置は、上記測定管内に配置され、上記支持体及び上記サンプル板の端面を上記測定管内に露出しないように被覆する被覆部材をさらに具備してもよい。
【0015】
上記のように測定管に流入したラジカルのサンプル表面における失活を測定するため、測定管内には、サンプル表面以外の表面が露出していないことが望ましい。上記構成によれば、被覆部材により支持体及びサンプル板の端面が被覆され、当該面でのラジカルの失活を防止することが可能である。
【0016】
上記支持体は、複数の、上記測定管に面接触する第1の面と上記サンプル板に面接触する第2の面を有する支持部材からなるものであってもよい。
【0017】
この構成によれば、1枚のサンプル板を1基の支持部材が支持するため、第1の面は平面状とすることができる。このため、支持部材とサンプル板の間の隙間の発生を防止し、支持部材とサンプル板の間の熱伝導を良好なものとすることができる。
【0018】
上記測定管は、円管であり、上記支持体は、上記サンプル管が矩形管となるように上記サンプル板を支持してもよい。
【0019】
円管は、他の形状の管に比較して耐圧性が高く、同じ耐圧性とするならば少ない材料で作成することが可能である。このため、測定管を円管とし、内部に平板状のサンプル板を組み合わせた矩形管を配置するものである。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係るラジカル測定管は、測定管と、支持体とを具備する。
上記測定管は、ラジカルの流路を形成する。
上記支持体は、上記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの上記サンプル板を支持する。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[ラジカル測定装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るラジカル測定装置1を示す模式図である。
同図に示すように、ラジカル測定装置1は、ラジカル生成室2、L字管3、測定管4及び排気管5によって構成されている。ラジカル生成室2にL字管3が接続され、L字管3に測定管4が接続され、測定管4に排気管5が接続されている。測定管4には、温度センサ9が挿通されている。
【0023】
ラジカル生成室2は、原料ガスがプラズマ化され、ラジカルが生成される室である。ラジカル生成室2は室内を室外と隔絶し、室内と室外の圧力差を維持可能に構成されている。ラジカル生成室2には、生成されたラジカルが流出するための開口2aが設けられている。ラジカル生成室2にはプラズマ発生器6及びガス導入系7が接続されている。
【0024】
プラズマ発生器6は、ガス導入系7によってラジカル生成室2に導入された原料ガスに対して、マイクロ波(例:周波数2.45GHz)等の電磁波を照射し、原料ガスをプラズマ化することが可能に構成されている。また、プラズマ発生器6は、レーザによる励起等によって原料ガスをプラズマ化するものとすることもできる。
【0025】
ガス導入系7はラジカル生成室2の室内に原料ガスを供給する。ガス導入系7は、例えばガスボンベと配管により構成されている。ガス導入系7は、ラジカル生成室2に供給される原料ガスの流量を調節可能なものとされる。
【0026】
L字管3は、L字形状の管路を有する管であり、ラジカル生成室2の開口2aに接続されている。L字管3は、後述するラジカルの失活が発生しない材料、例えば石英からなるものとすることができる。L字管3は、ラジカル生成室2において発生する原料ガスのプラズマから放射される輻射熱が測定管4に到達することを防止するために配置される。L字管3は、ラジカル生成室2に接続されるフランジ3aと、測定管4に接続されるフランジ3bとを有する。
【0027】
測定管4は、サンプルが配置される管であり、L字管3に接続されている。測定管4は円管形状に形成されている。測定管4には、サンプル板Sを支持する支持部材16と、サンプル板S及び支持部材16の端面を被覆する遮蔽蓋18が設けられている。これらの構成の詳細は後述する。測定管4は、L字管3に接続されるフランジ4aと、排気管5に接続されるフランジ4bを有する。
【0028】
排気管5は、測定管4内にラジカルを流通させるための管であり、測定管4に接続されている。排気管5には、排気口5aが設けられ、排気口5aには排気系10が接続されている。後述するが、排気口5aが測定管4に近接していると、排気口5aに吸引される気体の流れにより、測定管4内の気体の流れが層流ではなくなり、結合熱の算出に影響が生じるおそれがある。このため、排気管5によって排気口5aと測定管4とが離間されている。排気管5の測定管4と反対側の開口は蓋12によって閉塞されている。排気管5は、測定管4に接続されるフランジ5bと、蓋12が接続されるフランジ5cを有する。
【0029】
排気系10は、ラジカル生成室2、L字管3、測定管4及び排気管5によって形成されてる空間の気体を排気管5に形成された排気口5aから排気する。排気系10は、例えば真空ポンプと配管によって構成される。排気系10は、排気速度を調節可能なものとされる。
【0030】
温度センサ9は、測定管4に流入したラジカルを検出する。温度センサ、ラジカルが付着して再結合する触媒表面を有するものとされる。温度センサ9は、例えばR熱電対(+極:Pt-Rh(13%)合金、−極:Pt)とすることができる。温度センサ9は測定管4の軸方向に伸びる支持棒14に支持され、測定管4の中心軸上に配置される。
【0031】
支持棒14は、測定管4から排気管5を挿通して蓋12を貫通し、排気管5の外部に伸びる。支持棒14は、蓋12に設けられた駆動機構15に連結されている。駆動機構15は、モータ、ギア等を内蔵し、支持棒14を測定管4の軸方向に駆動する。駆動機構15は、支持棒14に取り付けられている温度センサ9が測定管4の内部において移動可能となるように構成される。即ち、駆動機構15によって支持棒14が駆動され、支持棒14に取り付けられている温度センサ9が測定管4の軸方向において任意の位置をとることが可能とされる。なお、支持棒14及び駆動機構15は、ここに示す構成に限られず、温度センサ9を支持し、駆動することが可能な他の構成とすることも可能である。
【0032】
ラジカル測定装置1は以上のように構成されている。ラジカル生成室2、L字管3、測定管4及び排気管5によって、連通した空間(以下、測定空間)が形成される。測定空間は、ガス導入系7及び排気系10によって圧力が調節可能に構成されている。
【0033】
[測定管の構成]
以下、測定管4の詳細な構成について説明する。
図2は支持部材16が設置されていない状態の測定管4を示す斜視図である。同図に示すように、測定管4は、円形の管路を有する円管である。測定管4には、遮蔽蓋18が装着されるための凹部4cが形成されている。凹部4cはフランジ4aの当接面から一段繰り下げられている。
【0034】
図3は、支持部材16を示す斜視図である。図3(a)は支持部材16を一方向からみた図であり、図3(b)は支持部材16を反対方向からみた図である。
同図に示すように、支持部材16は、欠円(直線と円弧からなる円の一部)を上面及び下面とする柱状の形状を有し、側面に当たる第1の面16aと第2の面16bを有する。第1の面16aは平面状であり、サンプルSが配置される面である。第2の面16bは曲面であり、測定管4に当接する面である。支持部材16の長さ(測定管4の軸方向)は測定管4の長さと同一とすることができる。支持部材16は、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニウムからなるものとすることができる。
【0035】
支持部材16は、4基が組み合わされた状態で測定管4に挿入される。図4は、支持部材16を組み合わせた状態を示す斜視図である。同図に示すように、支持部材16は、それぞれの第1の面16aが直交するように組み合わされる。これにより、内周が4面の第1の面16aからなる面であり、外周が4面の第2の面16bからなる面である筒状形状が形成される。
【0036】
図5は、支持部材16が挿入された測定管4を示す斜視図である。図6は、支持部材16が挿入された測定管4を示す平面図である。これらの図に示すように、4基の支持部材16は、それぞれの第2の面6bが測定管4の内周面に面接触する。この状態の測定管4に4枚のサンプル板Sが載置される。
【0037】
図7サンプル板Sを示す斜視図である。図7(a)は1枚のサンプル板Sを示し、図7(b)は、測定管4に載置される状態の4枚のサンプル板Sを示す。サンプル板Sは、測定対象の材料からなり、略同一の大きさを有する平板状である。サンプル板Sは、支持部材16の第1の面16aと同等の大きさに形成されている。サンプル板Sは、1枚ずつがそれぞれ1基の支持部材16に載置され、図7(b)に示すように角管状に配置される。
【0038】
図8は、サンプル板Sが設置された測定管4を示す斜視図である。図9はサンプル板Sが設置された測定管4を示す平面図である。同図に示すように、測定管4の管内に、サンプル板Sからなる管(以下、サンプル管とする)が形成される。サンプル板Sは、それぞれ支持部材16の第1の面16aに面接触する。
【0039】
さらに、測定管4には、遮蔽蓋18が装着される。図10は、遮蔽蓋18が装着される測定管4を示す斜視図である。図11は、遮蔽蓋18が装着された測定管4を示す平面図である。なお、図10では、遮蔽蓋18は測定管4から離間して示されている。これらの図に示すように、遮蔽蓋18は、矩形状の開口を有する円板状である。遮蔽蓋18は、ラジカルが失活しない材料、例えば石英からなり、ラジカルが支持部材16の端面及びサンプル板Sの端面において失活することを防止する。開口の大きさは、支持部材16の端面と、サンプル板Sの端面が被覆され、かつ最大の開口面積となる大きさである。
【0040】
測定管4は以上のような構成を有する。4基の支持部材16により、4枚のサンプル板Sが管状に支持される。これにより、平板状のサンプル板Sを用いてサンプル管とすることができる。平板状のサンプル板Sは、曲面状のもの等に比べて製造が容易であり、サンプル管のコストを低減することが可能である。また、熱伝導性の高い支持部材16により、サンプル管の温度と測定管4の外面の温度を同等とすることが可能となる。さらに、サンプル板Sと支持部材16の熱容量が大きくなるため、測定中のサンプル板Sの温度変化を小さくすることができ、ラジカルの結合熱を正確に測定することが可能となる。
【0041】
[ラジカル測定装置によるラジカル測定方法]
以上のように構成されたラジカル測定装置1による測定方法を説明する。
【0042】
最初に、排気系10により測定空間が排気され、測定空間が清浄になるまで十分に減圧される。次にガス導入系7からラジカル生成室2に原料ガスが供給される。排気系10の排気速度と、ガス導入系7からの原料ガスの供給速度が調節され、測定空間が所定の圧力に維持される。この状態において、測定空間では、ラジカル生成室2からL字管3、測定管4、排気管5を経由して排気口5aに至る、一定流量の原料ガスのガスフローが形成される。ここで、測定管4を流通するガスフローは層流とされる。
【0043】
次に、プラズマ発生器6により原料ガスがプラズマ化される。プラズマ中の電子が原料ガスの分子に衝突することにより分子の結合が開裂し、ラジカルが生成する。ラジカルは不安定であるため再結合して分子に戻るが、プラズマ中では電子衝撃が継続するため、ラジカルの生成と再結合が平衡し、所定の濃度のラジカルがプラズマ中に存在する。生成したラジカルは、ガスフローによってラジカル生成室2の開口2aから流出し、L字管3を通過して測定管4に流入する。
【0044】
測定管4を流通するラジカルのうち、サンプル板Sの表面に到達したものは、サンプル板Sの表面において所定の速度(割合)で失活する。この失活の速度は、ラジカル種とサンプル板Sの表面の材質によって決定される。これにより、測定管4内のラジカル濃度は、上流から下流に向かって次第に減少する。
【0045】
測定管4を流通するラジカルの一部は、温度センサ9の表面に付着して再結合し、結合熱を生じる。結合熱は、ラジカルが結合して分子を生成する際に放出する結合解離エネルギーと温度センサ9に輸送されるラジカルの数の積として考えられる。これにより、結合熱から温度センサ9に輸送されるラジカルの数を求めることができる。測定管4を流れるガスフローが層流であれば、結合熱からラジカルの濃度を算出することが可能である。
【0046】
温度センサ9は特定の位置においてその出力が測定された後、測定管4の軸方向に移動する。温度センサ9の移動は駆動機構15によって支持棒14が駆動されることによってなされる。温度センサ9は移動した新たな位置において出力が測定され、さらに移動及び出力の測定が繰り返される。このようにすることによって、温度センサ9は測定管4内の複数の位置においてその出力を測定される。
【0047】
測定管4を通過したラジカルは、排気管5に流入し、排気系10によって排気口5aから排出される。排気口5aと測定管4は十分離間されているため、測定管4内のガスフローは層流として維持される。
【0048】
[再結合係数の算出方法]
以上のようにして測定された温度センサ9の出力から、当該ラジカル種のサンプル板Sの表面における再結合係数を算出する。以下、再結合係数の算出方法について説明する。
【0049】
温度センサ9の出力、即ち温度センサ9の熱収支は、以下の式(1)で表すことが出来る。
Q1+Q3+Q4=Q2+Q5 (1)
ここで、Q1は温度センサ9からの電磁波の放射により失われる熱、Q2はプラズマからの輻射によって温度センサ9に加えられる熱、Q3は温度センサ9の周囲に存在する気体の層流によって温度センサ9から失われる熱、Q4は温度センサ9の熱電対ワイヤから支持棒14への熱伝導によって失われる熱、Q5は温度センサ9の表面において生じるラジカルの結合熱によって温度センサ9に加わる熱である。温度センサ9の出力が一定となるまで、その位置を維持することにより温度センサ9への熱の流入(式(1)の左辺)と温度センサ9からの熱の流出(式(1)の右辺)が一致し、式(1)が成り立つ。
【0050】
Q1はステファンボルツマン(Stefan-Boltzmann)の法則(黒体の表面から単位面積、単位時間当たりに放出される電磁波のエネルギーはその黒体の熱力学温度の4乗に比例)から以下の式(2)によって求めることができる。
Q1=σAε(Tw4−Tf4) (2)
σはステファンボルツマン係数(5.67×10−8[W・m−2・K−4])、Aは温度センサ9の表面積、εは温度センサ9の輻射率、Twは各測定位置の温度(温度センサ9の出力)、Tfはガス温度(測定管4の外壁温度と仮定)である。
【0051】
Q3は以下の式(3)によって求めることができる。
Q3=hA(Tw−Tf) (3)
hはガス流れ中の温度センサ9の熱伝達率である。
【0052】
Q4は温度センサ9の熱電対ワイヤの断面積が十分小さいため無視することができる。
Q2は、プラズマからの輻射がL字管3によって遮蔽されるため無視することができる。
【0053】
以上により、温度センサ9の出力TwからQ1及びQ3を算出することでラジカルの結合熱であるQ5が得られる。温度センサ9の位置に対するQ5の傾きが減衰係数α[W/m]である。この減衰係数αから、以下の[数1]に示す行列式を用いて再結合係数γを算出する。
【0054】
【数1】
【0055】
[数1]に示す式において、Dはラジカルの拡散係数(m2/s)、Vfは測定管8を流れる気体の平均流速(m/s)、Lはサンプル管の一辺の長さ(m)、vtはラジカルの熱速度(m/t)である。
【0056】
[数1]の式の導出について説明する。
【0057】
角管の移流拡散方程式は以下の[数2]のように記述することができる。
【0058】
【数2】
【0059】
以下の[数3]に示すように関数形を仮定して[数2]に示す移流拡散方程式に代入すると、以下の[数4]に示す式が得られる。
【0060】
【数3】
【0061】
【数4】
【0062】
また、[数3]に示した関数形を、[数5]に示す境界条件に代入すると、[数6]に示す式が得られる。
【0063】
【数5】
【0064】
【数6】
【0065】
[数4]に示す式と[数6]に示す式から、[数7]に示す連立一次方程式が得られる。
【0066】
【数7】
【0067】
[数7]に示す式において、非ゼロの解が存在するためには、以下の[数8]に示す行列式が0となるγを求めればよい。[数8]に示す行列式において、各係数を求めると、[数9]に示した行列式となる。
【0068】
【数8】
【0069】
【数9】
【0070】
以上のようにして算出した[数9]の式を用いて、減衰係数αから再結合係数γを求めることができる。本実施形態では、上述のように、サンプル板Sと測定管4の熱伝導が良好であるため、ラジカルの結合熱Q5を正確に算出することができ、したがって、再結合係数γを正確に求めることが可能である。
【0071】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【0072】
上記実施形態において、測定管4は円管であるものとしたがこれには限られず、楕円形断面を有する管等とすることも可能である。この場合、支持部材16も測定管4の形状に応じた形状に形成される。
【0073】
上記実施形態において、サンプル管は4枚のサンプル板Sの組み合わせによって形成される角管であるものとしたがこれには限られない。例えば5枚のサンプル板Sの組み合わせてによって形成される、5角形の断面形状を有する管とすることも可能である。
【実施例】
【0074】
本発明の実施例及び比較例について説明する。実施例及び比較例では測定管を除いて上記実施形態に示したラジカル測定装置を用い、測定管を下記の各種構成とした。
【0075】
(実施例1)
円管(φ84mm×350mm)を測定管とした。その中に上記実施形態に示した支持部材を配置した。サンプル板として、A5052(アルミニウム:JIS規格)圧延板4枚(59.4mm×345mm×2tmm:2枚、55.4mm×345mm×2tmm:2枚)を用いた。4枚のサンプル板を支持部材上に角管状に配置した。測定管には、石英からなる遮蔽蓋を配置した。
【0076】
(比較例1)
サンプル材料であるA5052からなるφ84mm×350mmの円管を測定管とした。即ち、測定管自体をサンプル管として用いた。
【0077】
(比較例2)
角管(外径60mm×350mm、厚さ3mm)を測定管とした。その中に、A5052からなる板であり、サンプル板としてL字状に折り曲げられたL字板(L54mm×345mm×2tmm)2枚を管状に組み合わせて配置した。測定管には、石英からなる遮蔽蓋を配置した。
【0078】
(比較例3)
角管(外径60mm×350mm、厚さ3mm)を測定管とした。その中に、A5052からなる板であり、サンプル板として、A5052圧延板4枚(54mm×345mm×2tmm:2枚、50mm×345mm×2tmm:2枚)を用いた。4枚のサンプル板を支持部材上に角管状に配置した。測定管には、石英からなる遮蔽蓋を配置した。
【0079】
サンプル管作成の容易性について評価した。実施例1のサンプル管は、平板上のサンプル板を4枚組み合わせることにより、角管状のサンプル管を作成することが可能である。これに対し、比較例1のサンプル管は、サンプル材料を管状に加工する必要がある。サンプル材料が溶接ができる材料であるならば、平板状のサンプル材料を管状に折り曲げて溶接したのち、さらにフランジを溶接する必要がある。溶接できない材料であるならば、削り出しにより作成する必要がある。このため、実施例1の場合に比べて高コストとなる。
【0080】
比較例2及び比較例3では、サンプル材料を管状に加工する必要はないものの、角管状の測定管の角部にRが存在することにより、サンプル板と測定管の間に隙間が発生した。即ち、実施例1の場合に比べて測定管とサンプル板との密着性が低下する。また、角管をフランジを溶接する際に、溶接ビートの発生により削り出しで作成する場合に比べて隙間が大きくなった。
【0081】
サンプル材料を表面処理により作成する場合について評価した。サンプル材料が高価である場合等、特定の材料に表面処理を施したものをサンプル材料とする場合ある。実施例1の場合には、平板状の材料に表面処理を施せばよく、容易にすることが可能である。これに対し、比較例1や比較例2の場合には、表面処理を施す材料が平板状ではないため、アルマイト処理等のアノード酸化処理や化成処理等のウエット処理ならまだしも、蒸着や溶射等の表面処理は困難である。
【0082】
サンプル管の熱伝導率について評価した。上記実施例及び比較例の測定管を有する各ラジカル測定装置において実際に測定を行い、温度センサと測定管外壁の温度を測定した。測定結果を図12に示す。なお、この測定において原料ガスは酸素とし、マイクロ波パワー700W、ガス流速1.5m/s、温度センサの位置100mmとした。図12に示すように、実施例1と比較して比較例1の温度センサの温度は約70℃低く、外壁温度は約2℃高い。外壁温度が高いのは、酸素ラジカルの再結合熱の他に、熱容量の違いが考えられる。
【0083】
比較例2及び比較例3では、実施例1に比べて温度センサの温度が200℃程度低かった。角管の測定管とサンプル板の隙間やサンプル板同士の隙間が影響していると考えられる。温度センサの温度が高い方がS/N比のよい測定ができるが、比較例2及び比較例3では正確な測定に適していないといえる。比較例2及び比較例3では外壁温度も実施例1に比べて約3℃低かった。測定管とサンプル板の間の隙間により、熱が伝わり難くなっているためだと考えられる。以上のように、実施例1の構成は、比較例1乃至3の構成に比べてサンプル管の作成が容易であり、より正確な測定も可能であると考えられる。
【符号の説明】
【0084】
2…ラジカル生成室
4…測定管
9…温度センサ
10…真空排気管
16…支持部材
18…遮蔽部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスのプラズマを発生させることで前記原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段を有するラジカル生成室と、
前記ラジカル生成室に連通する測定管と、
前記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの前記サンプル板を支持する支持体と、
前記測定管を真空排気する真空排気部と、
前記サンプル管に挿通され、前記サンプル管の軸方向に沿って移動可能な温度センサと
を具備するラジカル測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラジカル測定装置であって、
前記支持体は、前記測定管と複数の前記サンプル板とに面接触する
ラジカル測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のラジカル測定装置であって、
前記測定管内に配置され、前記支持体及び前記サンプル板の端面を前記測定管内に露出しないように被覆する被覆部材
をさらに具備するラジカル測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のラジカル測定装置であって、
前記支持体は、複数の、前記測定管に面接触する第1の面と前記サンプル板に面接触する第2の面を有する支持部材からなる
ラジカル測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のラジカル測定装置であって、
前記測定管は、円管であり、
前記支持体は、前記サンプル管が矩形管となるように前記サンプル板を支持する
ラジカル測定装置。
【請求項6】
ラジカルの流路を形成する測定管と、
前記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの前記サンプル板を支持する支持体と
を具備するラジカル測定管。
【請求項1】
原料ガスのプラズマを発生させることで前記原料ガスのラジカルを生成させるラジカル生成手段を有するラジカル生成室と、
前記ラジカル生成室に連通する測定管と、
前記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの前記サンプル板を支持する支持体と、
前記測定管を真空排気する真空排気部と、
前記サンプル管に挿通され、前記サンプル管の軸方向に沿って移動可能な温度センサと
を具備するラジカル測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラジカル測定装置であって、
前記支持体は、前記測定管と複数の前記サンプル板とに面接触する
ラジカル測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のラジカル測定装置であって、
前記測定管内に配置され、前記支持体及び前記サンプル板の端面を前記測定管内に露出しないように被覆する被覆部材
をさらに具備するラジカル測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のラジカル測定装置であって、
前記支持体は、複数の、前記測定管に面接触する第1の面と前記サンプル板に面接触する第2の面を有する支持部材からなる
ラジカル測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のラジカル測定装置であって、
前記測定管は、円管であり、
前記支持体は、前記サンプル管が矩形管となるように前記サンプル板を支持する
ラジカル測定装置。
【請求項6】
ラジカルの流路を形成する測定管と、
前記測定管内に配置され、複数の、平板状のサンプル材料からなるサンプル板により管状のサンプル管が形成されるように、それぞれの前記サンプル板を支持する支持体と
を具備するラジカル測定管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−94399(P2012−94399A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241427(P2010−241427)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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