説明

ラジカル発生装置

【課題】各種のラジカルを選択的発生し、それらの濃度を制御できるようにすること。
【解決手段】第1平板11には多数の第1貫通孔31a、31b、31c、第2平板12には多数の第2貫通孔32a、32b、32c、第3平板13には、多数の第3貫通孔33a、33b、33cが形成されている。第1貫通孔31a、31b、31cの内周面には、リング状の陽電極41a、41b、41cが、第2貫通孔32a、32b、32cの内周面には、リング状の陰電極42a、42b、42cが、第3貫通孔33a、33b、33cの内周面には、リング状の中性化電極43a、43b、43cが、それぞれ、配設されている。また、第1平板11の陽電極41a、41b、41cの端面と接触して配線層51a、51b、51cが形成されいる。この配線層は、第1平板11の側面に引き出されており、その端子から電圧が、それぞれに、独立して印加できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のラジカル源を供給して、各種のラジカルの発生を独立して制御することが可能なラジカル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、プラズマを用いた、成膜、エッチングなどの技術が知られている。例えば、下記特許文献1に示されるように、ラジカルを発生して、そのラジカルで工作物の表面をコーティングする装置や方法が知られている。その特許文献1では、大気圧でラジカルを効率良く発生する装置として、マイクロホローカソードが用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−356558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1によると、一種類のラジカルしか発生できないという問題がある。最近の複雑な処理においては、各種のラジカルを選択して発生させて、加工段階に応じた最適なラジカル種を用いたり、加工段階に応じて最適なラジカル種の最適な混合比での混合ラジカルを用いることが、精密な加工や成膜を行う上で必要となっている。
【0005】
ところが、従来の技術では、このようなラジカルの種類を制御したり、混合ラジカルの各ラジカル種の濃度比を制御することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、各種のラジカル種の発生を可変制御したり、ラジカル種の混合体の濃度比を可変制御できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多数の第1貫通孔を有し、該第1貫通孔にリング状の陽電極を配設した第1平板と、前記第1貫通孔と同軸に形成された多数の第2貫通孔を有し、該第2貫通孔にリング状の陰電極を配設し、前記第1平板と電気的に絶縁分離され、前記第1平板と平行に配設された第2平板と、前記第1及び第2貫通孔と同軸に形成された多数の第3貫通孔を有し、該第3貫通孔にリング状の中性化電極を配置し、前記第2平板に対して、電気的に絶縁分離された第3平板と、複数の貫通孔のそれぞに対して前記陽電極と前記陰電極との間に電圧を印加する第1電圧印加手段と、複数の貫通孔のそれぞれに対して前記陰電極と前記中性化電極との間に電圧を印加する第2電圧印加手段とを有することを特徴とするラジカル発生装置である。
【0008】
また、他の発明は、記第1電圧印加手段は、前記陽電極と接続され、前記第1平面上に配設された配線と、前記陰電極と接続され、前記第2平面上に配設された配線とから成ることを特徴とする請求項1に記載のラジカル発生装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の貫通孔に配設されたそれぞれの電極には、独立して、電圧を印加することができる。したがって、貫通孔の、それぞれに、異なる種類のガスを供給することで、そのガスによって生じるラジカルの種類を独立して制御することができる。また、複数種類のラジカルの混合を発生させる場合には、そられの濃度比を制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態について説明する。実施の形態は、発明概念の理解を容易にするために、具体的に説明するのであって、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0011】
図1はラジカル発生装置20の構成を示した断面図である。第1平板11、第2平板12、第3平板13が平行に配置されている。これらの平板はセラミックスからなり、第1平板11には多数の第1貫通孔31a、31b、31cが形成されている。同様に、第2平板12には多数の第2貫通孔32a、32b、32cが形成されている。同様に、第3平板13には、多数の第3貫通孔33a、33b、33cが形成されている。また、第1平板11と第2平板12の間には、セラミックスから成る絶縁板14が設けられており、それには、多数の貫通孔34a、34b、34cが形成されている。同様に、第2平板12と第3平板13との間には、絶縁板15が設けられており、その絶縁板15には、多数の貫通孔35a、35b、35cが形成されている。
【0012】
そして、第1貫通孔31a、第2貫通孔32a、第3貫通孔33a、貫通孔34a、35aは、それぞれ、同軸に配列されており、これらが繋がって、一つの貫通孔が形成されている。同様に、第1貫通孔31b、第2貫通孔32b、第3貫通孔33b、貫通孔34b、35bは、それぞれ、同軸に配列されており、これらが繋がって、一つの貫通孔が形成されている。同様に、第1貫通孔31c、第2貫通孔32c、第3貫通孔33c、貫通孔34c、35cは、それぞれ、同軸に配列されており、これらが繋がって、一つの貫通孔が形成されている。
【0013】
また、図2は、多数の貫通孔のうち、代表して3つの貫通孔だけを表示した図である。第1貫通孔31a、31b、31cの内周面には、リング状の陽電極41a、41b、41cが、それぞれ、配設されている。同様に、第2貫通孔32a、32b、32cの内周面には、リング状の陰電極42a、42b、42cが、それぞれ、配設されている。同様に、第3貫通孔33a、33b、33cの内周面には、リング状の中性化電極43a、43b、43cが、それぞれ、配設されている。また、第1平板11の陽電極41a、41b、41cの端面と接触して配線層51a、51b、51cが形成されいる。この配線層は、第1平板11の側面に引き出されており、その端子から電圧が、それぞれに、独立して印加できるように構成されている。
【0014】
また、図3に示すように、第2平板12の陰電極42a、42b、42cの端面と接触し、第2平板12の面上に一様に、配線層52が形成されている。そして、第2平板12の端面に引き出された配線層52の端面にアース電位が印加されるように構成されている。
【0015】
また、図4に示すように、第3平板13の中性化電極43a、43b、43cの端面と接触して配線層53a、53b、53cが形成されている。この配線層は、第3平板13の側面に引き出されており、その端子から電圧が、それぞれに、独立して印加できるように構成されている。
【0016】
陽電極41a、41b、41c、陰電極42a、42b、42c、中性化電極43a、43b、43c、内径は、それぞれ、直径0.1mm程度である。すなわち、これらの電極の内面で構成される貫通孔はマイクロホローと言われるものである。
【0017】
上記の構成において、第1平板11の貫通孔31a、31b、31cから、それぞれ、異なる種類のガスが導入される。また、各電極間には、各ガスをプラズマ化して目的とするラジカル種とその濃度を得るのに最適な大きさの電圧が印加される。反応室60は、筒状の筐体61を有し、その筐体61の上部に、本ラジカル発生装置20が設置される。反応室60には、プラズマ処理する物体を設置する基板ステージ62が設けられており、第3平板13の下方に設けられたメッシュ電極16との間で交流電圧が印加される。また、反応室60は外部に排気されている。
【0018】
各種のガスを反応室60に流しながら、陽電極41a、41b、41cと、陰電極42a、42b、42cのそれぞれの間に、直流電圧が印加されると、陰電極42a、42b、42c(マイクロホローカソード)の内部において放電が発生してプラズマが得られる。このプラズマ粒子は、第3平板13の有する中性化電極43a、43b、43cの内部空間を通過するときに、電子は捕獲され、イオンは中性化される。このようにして、中性化電極43a、43b、43cを通過する粒子をラジカル粒子とすることができ、各種のラジカルを選択的に反応室60に供給して、所望の加工や処理をすることができる。また、この時、陽電極41a、41b、41cと陰電極42a、42b、42cの間に印加される電圧の大きさを調整することで、各陰電極42a、42b、42cを通過するラジカルの濃度を調整することができる。勿論、ガス流量を制御することでも、供給されるラジカルの量を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、成膜、エッチング、クリーニングなど、ラジカル反応を用いた物体の処理に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の具体的な実施例に係るラジカル発生装置の構成を示した構成図。
【図2】同ラジカル発生装置に用いられている第1平板の構成を示した平面図。
【図3】同ラジカル発生装置に用いられている第2平板の構成を示した平面図。
【図4】同ラジカル発生装置に用いられている第3平板の構成を示した平面図。
【符号の説明】
【0021】
11…第1平板
12…第2平板
13…第3平板
31a、31b、31c…第1貫通孔
32a、32b、32c…第2貫通孔
33a、33b、33c…第3貫通孔
35a、35b、35c…貫通孔
14、15…絶縁板
41a、41b、41c…陽電極
42a、42b、42c…陰電極
43a、43b、43c…中性化電極
51a、51b、51c…配線層
52…配線層
53a、53b、53c…配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の第1貫通孔を有し、該第1貫通孔にリング状の陽電極を配設した第1平板と、
前記第1貫通孔と同軸に形成された多数の第2貫通孔を有し、該第2貫通孔にリング状の陰電極を配設し、前記第1平板と電気的に絶縁分離され、前記第1平板と平行に配設された第2平板と、
前記第1及び第2貫通孔と同軸に形成された多数の第3貫通孔を有し、該第3貫通孔にリング状の中性化電極を配置し、前記第2平板に対して、電気的に絶縁分離された第3平板と、
複数の貫通孔のそれぞに対して前記陽電極と前記陰電極との間に電圧を印加する第1電圧印加手段と、
複数の貫通孔のそれぞれに対して前記陰電極と前記中性化電極との間に電圧を印加する第2電圧印加手段と
を有することを特徴とするラジカル発生装置。
【請求項2】
前記第1電圧印加手段は、前記陽電極と接続され、前記第1平面上に配設された配線と、前記陰電極と接続され、前記第2平面上に配設された配線とから成ることを特徴とする請求項1に記載のラジカル発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−95536(P2007−95536A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284381(P2005−284381)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(304036008)NUエコ・エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(501111902)株式会社片桐エンジニアリング (11)
【Fターム(参考)】