説明

リアルタイムキネマティック(RTK)測位における距離依存性誤差の軽減

【課題】
全地球的航法衛星システム内の複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の距離依存性大気誤差を軽減する。
【解決手段】
残差対流圏遅延及び複数の残差電離層遅延をカルマンフィルタ内の状態としてモデル化する(340)。カルマンフィルタの状態更新関数は少なくとも1つの基線距離依存因子を含み、ここで基線距離は基準受信機と移動受信機との間の距離である(340)。複数のアンビギュイティ値をカルマンフィルタ内の状態としてモデル化する。アンビギュイティ状態のためのカルマンフィルタの状態更新関数は動的ノイズ因子を含む(図3Bの360)。残差対流圏遅延(372)、複数の残差電離層遅延(374)及び/又は複数のアンビギュイティ値(376)に従って移動受信機の推定位置を更新する(370)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施の形態は、包括的には全地球測位システム(GPS)又は欧州ガリレオシステムのような測位システムに関連する技術に関し、より詳細にはコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本願は、2007年5月31日に出願された「Distance Dependent Error Mitigation in Real-Time Kinematic (RTK) Positioning」と題する米国仮特許出願第60/941,273号に対する優先権を主張する。該特許文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0003】
本願は、2008年5月12日に出願された「Partial Search Carrier-Phase Integer Ambiguity Resolution」と題する米国仮特許出願第12/119,450号(代理人整理番号60877−5018−US)に関連する。該特許出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0004】
全地球測位システム(GPS)のような広域測位システムは、一群の衛星を使用して地上の物体を測位又は誘導する(navigate)。GPSシステム内の各衛星は現在、周波数が1.5754GHzで波長が0.1903mのL1と、周波数が1.2276GHzで波長が0.2442mのL2との2つの搬送波信号を送信している。現代的なGPS及びガリレオシステムのような次世代の全地球的航法(navigation)衛星システム(GNSS)は、3つ目の搬送波信号L5を提供することになる。GPSシステムにおいて、L5は1.1765GHzの周波数、及び0.2548mの波長を有することになる。
【0005】
通常、GPS受信機によって2種類のGPS測定、すなわち疑似レンジ測定及び搬送波位相測定が行われる。
【0006】
疑似レンジ測定(又はコード測定)は、すべての種類のGPS受信機が成すことができるな基本的なGPS観測量である。疑似レンジ測定は、搬送波信号上に変調されるC/A又はPコードを利用する。GPS測定が利用可能である場合、GPS受信機と、複数の衛星のそれぞれとの間のレンジ(range)又は距離(distance)が、信号の(衛星から受信機までの)移動時間に光速を乗算することによって計算される。GPS測定値は、衛星クロックタイミング誤差、天体暦誤差、電離層屈折効果及び対流圏屈折効果、受信機追跡ノイズ、並びにマルチパス誤差等のようなさまざまな誤差因子に起因する誤差を含む場合があるため、これらのレンジは通常、疑似レンジと呼ばれる。これらの誤差をなくすか又は低減するために、多くのGPSアプリケーションにおいて差動動作が使用されている。差動GPS(DGPS)動作は通常、基地基準GPS受信機と、ユーザGPS受信機と、ユーザ受信機と基準受信機との間の通信機構とを含む。基準受信機は既知のロケーションに配置され、上記の誤差因子のうちのいくつか又はすべてに関連付けられる補正を生成するのに使用される。基準局において生成される補正、又は基準局において測定される生データ、又は基準局(及び場合によっては同様に他の基準局)から受信される情報に基づいて第三者(たとえばコンピュータ若しくはサーバ)によって生成される補正はユーザ受信機に供給され、該ユーザ受信機は該補正又は生データを使用してその計算された位置を適切に補正する。
【0007】
搬送波位相測定値は、信号が受信機に到達するときに該信号の再構築された搬送波を積分することによって得られる。受信機が信号の搬送波位相の追跡を開始する時点では衛星と受信機との間の遷移における全サイクルの数は分からないため、搬送波位相測定値には全サイクルアンビギュイティが存在する。高精度の搬送波位相測定を達成するために、この全サイクルアンビギュイティを解決しなくてはならない。解決された後の全サイクルアンビギュイティは「整数値アンビギュイティ」としても既知であり、解決する前の全サイクルアンビギュイティは「浮動アンビギュイティ」としても既知である。搬送波位相測定を使用する差動動作はリアルタイムキネマティック(RTK)測位/ナビゲーション(navigation)動作と呼ばれることが多い。
【0008】
高精度GPS RTK測位は、地上、海上及び空中の多くの調査及びナビゲーションの用途に広範に使用されている。ユーザ受信機から最も近い基準受信機までの距離は数キロメートルから数百キロメートルに及ぶ場合がある。受信機の分離(すなわち、基準受信機と、その位置を求めている移動受信機との間の距離)が増大すると、距離依存性バイアスを考慮する問題が大きくなり、結果として確実なアンビギュイティ解決がより一層困難になる。主要な課題は、アンビギュイティ解決の目的のためには、二重求差(double-differencing)の後の残差バイアス又は誤差を、2つの受信機の間の距離が約10kmを下回る場合にしか無視することができないことである。より長い距離の場合に、軌道誤差並びに電離層遅延及び対流圏遅延のような距離依存性誤差が重大な問題となる。確実なアンビギュイティ解決を得るために必要な観測間隔の長さを求めることが、GPS RTK測位にとっての課題である。必要な観測間隔が長くなるほど、その間は正確な測位が不可能である「無駄な」時間が長くなる。アンビギュイティ解決プロセスは、GPSナビゲーション及び/又は調査の開始時に、また、GPS信号の多くが遮断されるか又は減衰することによってサイクルスリップ又は測定中断が発生するときはいつでも必要とされる。GPS RTK測位の品質管理は重要であり、データ収集、データ処理及びデータ送信のすべてのプロセス中に必要である。品質管理プロシージャは搬送波位相ベースのGPS RTK測位及び疑似レンジベースのDGPSの双方に適用される。アンビギュイティ解決に関する品質管理及び検証の基準は、正確なGPS RTK測位に対する重大な課題を表す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
コード測定値及び搬送波位相測定値の距離依存性大気誤差を軽減する方法は、残差対流圏遅延、複数の残差電離層遅延及びアンビギュイティ値を推定することを含む。次いで、これらの推定値に従って移動受信機の推定位置を更新する。
【0010】
一実施の形態では、残差対流圏遅延をカルマンフィルタ内の状態としてモデル化する。一実施の形態では、複数の残差電離層遅延をカルマンフィルタ内の状態としてモデル化する。カルマンフィルタの状態更新関数は、少なくとも1つの基線距離依存性因子を含む。基線距離依存性因子は基準受信機と移動受信機との間の距離に対応する。
【0011】
一実施の形態では、複数のアンビギュイティ値をカルマンフィルタ内の複数の状態内に記憶する。次いで、これらの状態を、少なくとも1つの動的ノイズ因子を含む状態更新関数に従って更新する。
【0012】
大気誤差源を推定することによって、GPS RTKシステムの距離依存性誤差が限定され、位置推定が正確なより長いレンジの用途が可能となる。
【0013】
図面全体を通じて、同様の参照符号は対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】全地球的航法衛星システムを示す。
【図2】コード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する方法を実行するために使用することができるコンピュータシステムのブロック図である。
【図3A】いくつかの実施形態による、コード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する方法を示す流れ図である。
【図3B】いくつかの実施形態による、コード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する方法を示す流れ図である。
【図4】いくつかの実施形態による、全地球的航法衛星システム内の構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による全地球的航法衛星システム100を示す。全地球的航法衛星システム(GNSS)は、複数の衛星110−1、110−2、...、110−nを含み、nは移動受信機120、及び通常既知の事前に確立されている位置に配置される基準受信機130の視野内の衛星の数である。複数の衛星110−n又はそれらのうちの任意の1つ若しくは複数を、本明細書において以降、衛星(複数可)110と呼ぶことがある。
【0016】
移動受信機120が、衛星110から受信されるGPS信号142及び146のコード測定及び搬送波位相測定を行う。基準受信機130が、衛星110から受信されるGPS信号144及び148のコード測定及び搬送波位相測定を行い、該基準受信機の事前に確立されているロケーションに少なくとも部分的に基づいて、それらの測定値に対する補正132を生成する。次いで、補正132は移動受信機120に通信される。本明細書内の記載には用語「GPS」及び「GPS信号」等が頻繁に使用されるが、本発明は他のGNSSシステム、及び該システム内のGNSS衛星からの信号にも均等に適用可能である。
【0017】
移動受信機120と基準受信機130との間の基線距離150はlメートルに等しく、及び移動受信機120と基準受信機130との間の高度差155はΔHメートルに等しい。基線距離150は、移動受信機120と基準受信機130との間の距離の水平成分を表す。移動受信機120に関して、GPS信号142に関する衛星仰角160はα度であり、GPS信号146に関する衛星仰角160はθ度である。基準受信機130に関して、GPS信号144に関する衛星仰角160はα度であり、GPS信号148に関する衛星仰角160はθ度である。
【0018】
GPS信号142、144、146、148は、衛星110によって地球の電離層185及び対流圏190を通じて送信される。
【0019】
対流圏190は地表面195から約16kmまでの高さに延在しており、乾燥した気体及び水蒸気から成る。GPS信号142、144、146、148は対流圏190によって屈折する。対流圏遅延の度合いは(受信機から衛星への)衛星仰角160によって決まる。対流圏遅延は天頂方向(90度の仰角)において約2.3mに等しく、仰角160が5度増すごとに25m超増加する。乾燥成分は高精度でモデル化することができるが、より小さい湿潤成分はモデル化することがはるかに困難である。主として湿潤大気成分の差分対流圏遅延は通常、基線距離150の0.2百万分率(ppm)から0.4百万分率までで変動する。残差対流圏遅延の空間的特性及び時間的特性は確立法則又は統計モデルによって特性化することができる。次いで、対流圏が無線波伝播に及ぼす影響を、さまざまな空間次元及び時間的尺度にわたって、所与の確率密度関数に従って又はその変動の空間相関及び時間相関に関連して確率的に予測することができる。一実施形態では、残差対流圏遅延は一次ガウス−マルコフプロセスとみなすことができる。
【0020】
電離層185は地表面195の上方約50kmから始まり、高さ1000km以上まで延在する。電離層185における太陽放射によって原子がイオン化され、それによって無線波の伝播に重大な影響を及ぼすのに十分な量の自由電子が存在する。電離層185は搬送波位相を促進し、それによって搬送波位相測定値が減少するが、コード変調を遅延させ、それによってコード測定値が増加する。電離層遅延の度合いは信号の周波数及び太陽放射効果によって決まる。したがって、電離層遅延は日中と夜間とで、また季節ごとに異なる。日中には、電離層遅延は通常、現地時間14:00頃に第1のピークに達し、現地時間22:00頃に第2のピークに達し、日の出の直前に最小値まで下降する。極端な条件下では、電離層遅延は天頂方向において15mに達し、水平線付近では仰角で200mを超える可能性がある。電離層は通常、差分処理に関して最も大きな誤差源であり、日中の間、中緯度地方における低電離周期の間の基線距離150の1百万分率(ppm)から、低磁気緯度地方における10ppm超までで変動する。GPS衛星はリアルタイムで、単一周波数受信機が平均で電離層屈折効果の約50%を取り除くことを可能にする補正データ(たとえば、クロブチャールモデルの係数)をブロードキャストする。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による大気誤差を軽減する方法を実行するのに使用することができるコンピュータシステム200を示す。コンピュータシステム200は、コンピュータシステム200に衛星からの信号に基づくGPSコード測定値及びGPS搬送波位相測定値を供給する移動受信機120に結合される。
【0022】
いくつかの実施形態において、移動受信機120及びコンピュータシステム200は、携帯可能な、ハンドヘルドの、若しくは装着さえ可能な位置追跡装置、又は車両に搭載されるか若しくは他の様態の移動測位及び/又はナビゲーションシステムのような、単一のハウジング内の単一の装置に一体化される。他の実施形態では、移動受信機120及びコンピュータシステム200は単一の装置に一体化されない。
【0023】
図2に示すように、コンピュータシステム200は、1つ又は複数の通信バス248によって互いに結合される、中央処理装置(CPU)240と、メモリ250と、入力ポート242と、出力ポート244と、(任意選択で)ユーザインタフェース246とを備える。メモリ250は高速ランダムアクセスメモリを含むことができ、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリ装置、又は他の不揮発性固体状態記憶装置のような不揮発性大容量記憶装置を含むことができる。メモリ250は好ましくは、オペレーティングシステム252、データベース256、及びGNSSアプリケーションプロシージャ254を記憶する。GNSSアプリケーションプロシージャは、より詳細に後述するように、本発明のいくつかの実施形態による大気誤差を軽減する方法を実施するためのプロシージャ255を含むことができる。メモリ250内に記憶されるオペレーティングシステム252及びアプリケーションプログラム並びにプロシージャ254及び255は、コンピュータシステム200のCPU240が実行するものである。メモリ250は好ましくは、GNSSアプリケーションプロシージャ254及び255の実行中に使用される、GPSコード測定値及び/又はGPS搬送波位相測定値257を含むデータ構造、並びに本明細書において論述される他のデータ構造も記憶する。
【0024】
入力ポート242は移動受信機120からデータを受信するためのものであり、出力ポート244はデータ及び/又は計算結果を出力するのに使用される。データ及び計算結果もユーザインタフェース246の表示装置上に示すことができる。
【0025】
図3A及び図3Bは、衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する動作を含むナビゲーション方法300を示す。カルマンフィルタの説明は本明細書の範囲外であるが、コンピュータシステム200は通常、位置、及びカルマンフィルタ状態とも呼ばれる、ユーザGPSの受信機120の状態の他の態様を更新するためのカルマンフィルタを備える。カルマンフィルタ状態は実際には、そのそれぞれがGPS受信機の位置の一態様(たとえば位置のX成分、Y成分、及びZ成分、すなわち緯度成分、経度成分及び天頂方向成分)、又は動き(たとえば速度及び/若しくは加速度)、又はカルマンフィルタにおいて使用されている計算プロセスの状態を表す多くの状態を含む。
【0026】
カルマンフィルタは通常、プロセッサによって実行されるプロシージャ、又はプロシージャのセットである。カルマンフィルタは反復して(たとえば1秒間に1回)実行され、そのたびに新たなコード測定値(疑似レンジ測定値とも呼ばれる)及び搬送波位相測定値が使用されて、カルマンフィルタ状態が更新される。カルマンフィルタが使用する式は複雑であるが、カルマンフィルタはナビゲーションの技術分野において広範に使用されており、したがってカルマンフィルタの、本発明に関連する態様のみをいくらか詳細に論述する必要がある。カルマンフィルタはGPS受信機及び他のナビゲーションシステムにおいて広範に使用されているが、これらのカルマンフィルタの多くの態様は実施態様ごとに変化することを強調すべきである。たとえば、いくつかのGPS受信機に使用されるカルマンフィルタは他のカルマンフィルタに含まれない状態を含んでもよく、又は他のカルマンフィルタに使用される式とはいくぶん異なる式を使用してもよい。
【0027】
カルマンフィルタの、本論述に関連する一態様は、カルマンフィルタ状態内に、視野内の衛星から受信される信号の対流圏遅延及び電離層遅延を表す値、並びにこれらの値のステータスが含まれることである。加えて、カルマンフィルタ状態は、複数の衛星からの搬送波位相測定値のアンビギュイティ値を含むことができる。
【0028】
図1に関して上述したように、信号は衛星110から受信され、補正132は基準受信機から受信される(310)。動作は、コード測定値及び搬送波位相測定値を取得することを含む。二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成して(320)GPS測定値内に存在する定誤差の多くを相殺する。メートル単位の二重差コード観測量及び二重差搬送波位相観測量は以下のように形成することができる。
【0029】

▽△P=▽△ρ+▽△T+(▽△I)/(f)+▽△O+ε▽△Pi
(1)

λ▽△φ=▽△ρ+▽△T-(▽△I)/(f)+▽△O+λ・▽△N▽△φi (2)

式中、下付き文字iは周波数、すなわちL1、L2又はL5を表す。Pはコード観測量であり、φは搬送波位相観測量である。∇Δは二重差演算子である。ρは衛星から受信機までの幾何学的距離である。∇ΔTは、仰角に対する依存性を記述するマッピング関数と共に残差天頂方向対流圏遅延の関数として表すことができる残差差分対流圏バイアスである。∇ΔIは二重差分電離層バイアスである。∇ΔOは、Navcom Technology社のStarFire(商標)ネットワークのようなネットワークRTKシステム又は広域補強システム(WAAS)から取得することができる二重差分軌道遅延補正である。λはi番目の搬送波周波数の波長であり、fはi番目の搬送波周波数の周波数である。∇ΔNはi番目の搬送波周波数の二重差整数アンビギュイティである。項ε▽△Piはコード誤差を表し、項ε▽△φiは位相誤差を表し、これらは受信機のランダムノイズ、及びマルチパス誤差、残差軌道誤差等のような任意のモデル化されていない定誤差を含む。
【0030】
二重差搬送波位相観測の線形化を以下の式のセットによって表すことができる。
【0031】

V=HX−Z (3)

式中、Vはエポックkにおける近似後の(post-fit)残差ベクトルである。Zは現在のエポックの二重差測定値に基づく近似前の(prefit)残差である。Hはデザイン行列である。Xは、3つの位置成分、すなわち残差電離層バイアス及び残差対流圏バイアス、並びに二重周波数アンビギュイティ又は三重周波数アンビギュイティを含む推定状態ベクトルである。推定状態ベクトルXの値はカルマンフィルタ状態内に記憶される。
【0032】
一実施形態では、カルマンフィルタは、それぞれが異なる方向又は次元に対応する3つの位置状態、残差対流圏遅延状態、N−1個の残差電離層遅延状態を含むがこれらに限定されない複数の状態を含む。カルマンフィルタ状態は任意選択的に、それぞれが異なる方向又は次元に対応する3つの速度状態を含むことができ、任意選択的に、それぞれが異なる方向又は次元に対応する3つの加速度状態を含むことができる。いくつかの実施形態では、カルマンフィルタ状態はN−1個のL1二重差アンビギュイティ状態、及びN−1個のL2二重差アンビギュイティ状態を含み、Nは測定値が取得される衛星の数である。
【0033】
一実施形態では、カルマンフィルタ投射及び状態更新が取得される。k−1エポック後のカルマンフィルタ推定値は分散Pk−1
【0034】
【数1】

【0035】
であると仮定され、エポックkにおける予測状態ベクトルは以下の状態式(4)及び(5)から取得することができる。
【0036】
【数2】

【0037】
式中、
【0038】
【数3】

【0039】
は、エポックk−1におけるカルマンフィルタ状態に基づいて予測される、エポックkにおける予測カルマンフィルタ状態ベクトルである。Φk,k−1は、Xk−1をXに関連付ける遷移行列である。Wは動的行列である。Wは、残差対流圏遅延値、残差電離層遅延値、及びアンビギュイティ値を含む。
【0040】
エポックkにおける測定値ベクトルを使用する更新状態及び分散行列は以下の式によって与えられる。
【0041】
【数4】

【0042】
式中、Kは利得行列である。Rは観測量の分散共分散である。Iは恒等行列である。
【0043】
図3Aに示すように、方法300はコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を推定すること(330)を含み、これは次に記載する動作のうちの2つ以上を含むことができる。
【0044】
残差対流圏遅延を推定する(340)。一実施形態では、これは、対流圏遅延を、残差対流圏天頂方向遅延(RTZD)、及び任意の所与の衛星仰角160における遅延を取得するマッピング関数として表すこと(342)を含む。大気状態の、標準状態からのすべてのずれがRTZD内に含まれる。対流圏遅延モデルを適用した後、残差二重差分対流圏遅延を以下の式によって近似することができる。
【0045】

▽△T=RTZD/[MF(ε)−MF(ε)] (9)

式中、εは衛星pに対する移動受信機120及び基準受信機130の平均衛星仰角であり、εは衛星qに対する移動受信機120及び基準受信機130の平均衛星仰角である。衛星qは最も高い衛星110である。衛星pは、受信機が測定可能な信号を受信している任意の他の衛星110である。一実施形態では、単一のRTZD推定値がすべての見えている衛星に使用される。RTZD値はカルマンフィルタ状態の成分(すなわち対流圏遅延成分)であり、カルマン状態更新関数によってエポックごとに更新される。したがって、どのような衛星仰角160であっても、式(1)及び(2)の∇ΔTは、式(9)を使用して移動受信機120及び基準受信機130のロケーションのマップ関数因子によってスケーリングされる。
【0046】
一実施形態では、残差対流圏遅延を推定すること(340)は、残差対流圏遅延(たとえばRTZD)をカルマンフィルタ内の状態としてモデル化すること、及び、少なくとも1つの基線距離150依存性因子を含む(すなわち、基準受信機と、そのロケーションを求めている移動受信機との間の距離に対応する)状態更新関数を使用することを含む。いくつかの実施形態では、残差対流圏遅延を推定すること(340)は、基線距離150及び基準受信機と移動受信機との間の高度差155に基づく少なくとも1つの因子を有する状態更新関数を使用すること(344)を含む。これらの実施形態のうちのいくつかでは、遷移行列φk,k−1及び動的モデルQは以下の式によって与えられる。
【0047】
【数5】

【0048】
式中、1/βtropは対流圏湿潤成分の相関時間であり、通常600秒〜1800秒である。σtropは対流圏湿潤分散成分であり、基線距離l及び高度差ΔHの関数である。σhorは水平湿潤成分の分散であり、通常、基線距離lの0.1ppm〜0.5ppmである。σは垂直湿潤成分の分散であり、通常、基線距離lの1ppm〜10ppmである。Qは式(5)内のWの残差対流圏遅延部分であり、φk,k−1は式(4)内のΦk,k−1の残差対流圏遅延部分である。いくつかの実施形態では、σhorは0.1ppmのような固定値に設定され、1/βtropは600秒のような固定値に設定される。いくつかの他の実施形態では、σhor及び1/βtropの値は、移動受信機と基準受信機との間の基線距離のような、移動受信機が利用可能な情報に基づいて計算される。いくつかの実施形態では、σhor及び1/βtropの値は、移動受信機と基準受信機との間の基線距離(又は基線距離に関連する値)をルックアップテーブル内へのインデックスとして使用してルックアップテーブルから取得される。
【0049】
少なくとも1つの残差電離層遅延を推定する(350)。一実施形態では、コード測定値及び搬送波位相測定値がブロードキャスト電離層モデルによって調整されて基準受信機130からの補正132との差が求められた後、残りの電離層遅延がカルマンフィルタにおいて状態ベクトルの成分として推定される。一実施形態では、残差電離層遅延を推定すること(350)は、残差電離層遅延をカルマンフィルタ内の状態としてモデル化すること、及び少なくとも1つの基線距離150依存性因子を含む状態更新関数を使用することを含む。別の実施形態では、現地時間及び電離層活動に基づく少なくとも1つの因子を有する状態更新関数を使用する(354)。この実施形態では、状態更新関数の遷移行列φk−1,k及び動的モデルQは以下の式によって与えられる。
【0050】
【数6】

【0051】
式中、1/βionは差分電離層バイアスの相関時間であり、通常30秒〜300秒である。σsion及びσvionは差分傾斜電離層バイアス及び差分垂直電離層バイアスの分散を表し、σvionは現地時間及び電離層活動の関数である。lは基線距離150である。Eは衛星仰角160である。Hは電離層185の高さであり、たとえば350kmと仮定することができる。Rは6371km、すなわち地球の平均半径である。σvionは通常、基線距離150の0.5ppm〜2ppmで変動する。Qは式(5)内のWの残差電離層遅延部分であり、φk,k−1は式(4)内のΦk,k−1の残差電離層遅延部分である。いくつかの実施形態では、σvionは1ppmのような固定値に設定され、1/βionは30秒のような固定値に設定される。いくつかの実施形態では、σvion及び1/βionの値は、GMT又はGPS時間を使用して予備GPSソリューションから計算される現地時間及び受信機の計算される経度のような、移動受信機が利用可能な情報に基づいて計算される。いくつかの実施形態では、σhor及び1/βtropの値はルックアップテーブルから取得される。
【0052】
残差対流圏バイアスとは異なり、残差電離層遅延は基準衛星以外のすべての衛星に関して推定される(352)。したがって、N−1回の電離層バイアス推定、及び該N−1回の電離層バイアス推定を表すN−1個のカルマンフィルタ状態値が存在することになる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本方法は、カルマンフィルタ内の、複数のアンビギュイティ値に対応する複数の状態にアクセスすること(360)をさらに含む。次いで、これらの状態は少なくとも1つの動的ノイズ因子を含む状態更新関数に従って更新される。状態更新関数の遷移行列φk−1,k及び動的モデルQは以下の式によって与えられる。
【0054】

φk−1,k=1 (16)
=δamb(t−tk−1) (17)

式中、δambは0.001サイクルのような小さな動的ノイズ値である。Qは式(5)内のWのアンビギュイティ値部分であり、φk,k−1は式(4)内のΦk,k−1のアンビギュイティ値部分である。
【0055】
いくつかの実施形態では、ナビゲーション方法300は移動受信機120の推定位置を更新すること(370)を含む。通常、推定位置は二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値(378)、並びに移動受信機(又は移動受信機のロケーションを求めているコンピュータシステム)が利用可能な他の情報に従って更新される。いくつかの実施形態では、推定位置を推定残差対流圏遅延に従って更新する(372)。いくつかの実施形態では、推定位置は推定残差電離層遅延に従って更新される(374)。これらの実施形態のうちのいくつかでは、複数の衛星110ごとに(たとえば、最も頭上に近い衛星以外の視野内のすべての衛星に関して)、カルマンフィルタ内の区別可能な残差電離層遅延状態を更新する(375)。いくつかの実施形態では、推定位置をカルマンフィルタ状態におけるアンビギュイティ状態値に従って更新する(376)。
【0056】
図4はコンピュータシステム200の一実施形態を示す。コンピュータシステム200は、信号プロセッサ420と、少なくとも1つのプロセッサ430と、メモリ250とを備える。高速ランダムアクセスメモリを含むことができ、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、EEPROM及び/又はフラッシュEEPROMのような不揮発性メモリを含むこともできるメモリ250は、オペレーティングシステム252と、コード測定値及び搬送波位相測定値257と、カルマンフィルタ更新プログラム460と、カルマンフィルタ状態470と、プログラム430によって実行される少なくとも1つの大気誤差推定プログラムモジュール255とを含む。カルマンフィルタ状態470内には複数の状態値、すなわち位置472と、残差対流圏遅延値474と、複数の(たとえばN−1個の)残差電離層遅延値476と、複数の(たとえばN−1個の)L1整数アンビギュイティ値478と、複数の(たとえばN−1個の)L2整数アンビギュイティ値479とが記憶され、これらのそれぞれは上記で論述されている。少なくとも1つの大気誤差推定プログラムモジュール255は、少なくとも1つの残差電離層遅延推定プログラム452と、少なくとも1つの残差対流圏遅延推定プログラム454と、少なくとも1つの整数アンビギュイティ値推定プログラム456とを含む。
【0057】
実施形態によっては、2つ以上のプログラム430が存在してもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム200は、大気誤差推定プログラムモジュール255の機能のいくつか又はすべてを実施する特定用途向け集積回路(ASIC)を含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステム200は移動受信機120(図1)のような受信機410に結合される。他の実施形態では、コンピュータシステム200及び受信機410は単一の装置に一体化される。
【0059】
説明を目的とする上記の記述は特定の実施形態を参照して記載されている。しかしながら、上記の例示的な論述は網羅的であることも、本発明を開示されている正確な形式に限定することも意図していない。上記の教示に鑑みて多くの変更及び変形が可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を最良に説明し、それによって当業者が、本発明、及び意図される具体的な使用に適しているさまざまな変更を伴うさまざまな実施形態を最良に利用することが可能となるように選択及び記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全地球的航法衛星システム(global navigation satellite system)内の複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する(mitigating)方法であって、該方法は、
残差対流圏遅延(residual tropospheric delay)を推定することであって、該残差対流圏遅延はカルマンフィルタ内の状態としてモデル化され、該残差対流圏遅延のための前記カルマンフィルタの状態更新関数(state update function)は少なくとも1つの基線距離依存性因子(baseline distance dependent factor)を含み、該少なくとも1つの基線距離依存性因子は基準受信機(reference receiver)と移動受信機(mobile receiver)との間の距離に対応する、推定すること、並びに
前記推定された残差対流圏遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の推定位置を更新することであって、該移動受信機の該推定位置は前記カルマンフィルタ内の座標状態(coordinate states)としてモデル化される、更新すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得すること、
前記取得された測定値から二重差値(double difference values)を計算することであって、二重差コード測定値(double difference code)及び二重差搬送波位相測定値(carrier phase measurements)を形成する、計算すること、並びに
前記推定された残差対流圏遅延並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カルマンフィルタは、前記残差対流圏遅延をスケーリングする単一の状態を含む複数の状態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記残差対流圏遅延のための前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、前記基準受信機及び前記移動受信機に対する衛星の平均仰角に部分的に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記残差対流圏遅延のための前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、前記基線距離、及び前記基準受信機と前記移動受信機との間の高度差に基づく少なくとも1つの因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの残差電離層遅延を推定することであって、該少なくとも1つの残差電離層遅延は前記カルマンフィルタ内の少なくとも1つの状態としてモデル化され、該少なくとも1つの残差電離層遅延のための該カルマンフィルタの状態更新関数は少なくとも1つの基線距離依存性因子を含む、推定すること、並びに
前記少なくとも1つの推定された残差電離層遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得すること、
前記取得された測定値から二重差値を計算することであって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算すること、並びに
前記推定された残差対流圏遅延、前記少なくとも1つの推定された残差電離層遅延、並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記更新することは、複数の衛星ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能な電離層遅延状態を更新することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの残差電離層遅延のための前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、現地時間及び電離層活動に基づく少なくとも1つの因子を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
N−1個の残差電離層遅延を推定することであって、該N−1個の残差電離層遅延は前記カルマンフィルタ内のN−1個の状態としてモデル化され、該N−1個の残差電離層遅延のための該カルマンフィルタの状態更新関数は前記N−1個の状態のそれぞれのための少なくとも1つの基線距離依存性因子を含み、Nは衛星の数を含み、該衛星から信号が受信されると共に、該衛星に関してコード測定及び搬送波測定が行われる、推定すること、並びに
前記N−1個の推定された残差電離層遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得すること、
前記取得された測定値から二重差値を計算することであって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算すること、並びに
前記推定された残差対流圏遅延、前記推定されたN−1個の残差電離層遅延、並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記更新することは、複数の衛星ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能な電離層遅延状態を更新することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記N−1個の残差電離層遅延のための前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、現地時間及び電離層活動に基づく少なくとも1つの因子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
全地球的航法衛星システム内の複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する方法であって、該方法は、
少なくとも1つの残差電離層遅延を推定することであって、該少なくとも1つの残差電離層遅延はカルマンフィルタ内の少なくとも1つの状態としてモデル化され、該少なくとも1つの残差電離層遅延のための該カルマンフィルタの状態更新関数は少なくとも1つの基線距離依存性因子を含み、該少なくとも1つの基線距離依存性因子は基準受信機と移動受信機との間の距離に対応する、推定すること、並びに
前記少なくとも1つの残差電離層遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の推定位置を更新することであって、該移動受信機の該推定位置は前記カルマンフィルタ内の状態としてモデル化される、更新すること、
を含む、方法。
【請求項15】
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得すること、
前記取得された測定値から二重差値を計算することであって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算すること、並びに
前記少なくとも1つの推定された残差電離層遅延並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記更新することは、複数の衛星ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能な残差電離層遅延状態を更新することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
全地球的航法衛星システム内の複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減する方法であって、該方法は、
N−1個の残差電離層遅延を推定することであって、該N−1個の残差電離層遅延はカルマンフィルタ内のN−1個の状態としてモデル化され、該N−1個の残差電離層遅延のための該カルマンフィルタの状態更新関数は前記N−1個の状態のそれぞれのための少なくとも1つの基線距離依存性因子を含み、Nは衛星の数を含み、該衛星から信号が受信されると共に、該衛星に関してコード測定及び搬送波測定が行われ、前記少なくとも1つの基線距離依存性因子は基準受信機と移動受信機との間の距離に対応する、推定すること、並びに
前記推定されたN−1個の残差電離層遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の推定位置を更新することであって、該移動受信機の該推定位置は前記カルマンフィルタ内の状態としてモデル化される、更新すること、
を含む、方法。
【請求項18】
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得すること、
前記取得された測定値から二重差値を計算することであって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算すること、並びに
前記推定されたN−1個の残差電離層遅延並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記更新することは、複数の衛星ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能な残差電離層遅延状態を更新することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
全地球的航法衛星システム内の複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を処理する方法であって、該方法は、
カルマンフィルタ内の複数の状態にアクセスすることであって、該複数の状態は、移動受信機の推定位置に対応する1つ又は複数の状態と、複数のアンビギュイティ値に対応する複数の状態とを含み、該複数のアンビギュイティ値の各該アンビギュイティ値はそれぞれの衛星からのそれぞれの搬送波測定値に対応する、アクセスすること、並びに
前記カルマンフィルタ内の前記複数の状態を更新することであって、
前記複数の推定されたアンビギュイティ値並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、並びに
少なくとも1つの動的ノイズ因子を含む状態更新関数に従って前記アンビギュイティ値を更新すること、
を含む、前記カルマンフィルタ内の前記複数の状態を更新すること、
を含む、方法。
【請求項21】
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得すること、
前記取得された測定値から二重差値を計算することであって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算すること、並びに
前記複数のアンビギュイティ値並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新すること、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記更新することは、複数の衛星ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能なアンビギュイティ値状態を更新することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記更新することは、衛星から受信される複数の信号ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能なアンビギュイティ値状態を更新することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
測位又はナビゲーションシステムであって、
全地球的航法システム内の複数の衛星から衛星信号を受信するように構成される移動受信機と、
前記受信機に結合されるコンピュータシステムであって、該コンピュータシステムは、プロセッサと、該プロセッサに結合されるメモリとを備え、該メモリは前記衛星から受信される前記信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減するための1つ又は複数のプログラムを記憶し、該1つ又は複数のプログラムは、
残差対流圏遅延を推定するための命令であって、該残差対流圏遅延はカルマンフィルタ内の状態としてモデル化され、該カルマンフィルタの状態更新関数は少なくとも1つの基線距離依存性因子を含み、該少なくとも1つの基線距離依存性因子は基準受信機と前記移動受信機との間の距離に対応する、推定するための命令と、
前記推定された残差対流圏遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の推定位置を更新するための命令であって、該移動受信機の該推定位置は前記カルマンフィルタ内の状態としてモデル化される、更新するための命令と、
を含む、コンピュータシステムと、
を備える、測位又はナビゲーションシステム。
【請求項25】
前記1つ又は複数のプログラムは、
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得するための命令と、
前記取得された測定値から二重差値を計算するための命令であって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算するための命令と、
前記推定された残差対流圏遅延並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記カルマンフィルタは、前記残差対流圏遅延を含む単一の状態を含む複数の状態において動作する、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、前記基準受信機及び前記移動受信機に対する衛星の平均仰角に部分的に基づく、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、前記基線距離、及び前記基準受信機と前記移動受信機との間の高度差に基づく少なくとも1つの因子を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
測位又はナビゲーションシステムであって、
全地球的航法システム内の複数の衛星から衛星信号を受信するように構成される移動受信機と、
前記受信機に結合されるコンピュータシステムであって、該コンピュータシステムは、プロセッサと、該プロセッサに結合されるメモリとを備え、該メモリは、前記衛星から受信される前記信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減するための1つ又は複数のプログラムを記憶し、該1つ又は複数のプログラムは、
N−1個の残差電離層遅延を推定するための命令であって、該N−1個の残差電離層遅延はカルマンフィルタ内の状態としてモデル化され、該カルマンフィルタの状態更新関数は少なくとも1つの基線距離依存性因子を含み、該少なくとも1つの基線距離依存性因子は基準受信機と前記移動受信機との間の距離に対応する、推定するための命令と、
前記推定されたN−1個の残差電離層遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の推定位置を更新するための命令であって、該移動受信機の該推定位置は前記カルマンフィルタ内の状態としてモデル化される、更新するための命令と、
を含む、コンピュータシステムと、
を備える、測位又はナビゲーションシステム。
【請求項30】
前記1つ又は複数のプログラムは、
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得するための命令と、
前記取得された測定値から二重差値を計算するための命令であって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算するための命令と、
前記推定されたN−1個の残差電離層遅延並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
を含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記更新することは、複数の衛星ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能な残差電離層遅延状態を更新することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記N−1個の残差電離層遅延のための前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、現地時間及び電離層活動に基づく少なくとも1つの因子を含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
測位又はナビゲーションシステムであって、
全地球的航法システム内の複数の衛星から衛星信号を受信するように構成される移動受信機と、
前記受信機に結合されるコンピュータシステムであって、該コンピュータシステムは、プロセッサと、該プロセッサに結合されるメモリとを備え、該メモリは、前記衛星から受信される前記信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減するための1つ又は複数のプログラムを記憶し、該1つ又は複数のプログラムは、
カルマンフィルタ内の複数の状態にアクセスするための命令であって、該複数の状態は、前記移動受信機の推定位置に対応する1つ又は複数の状態と、複数のアンビギュイティ値に対応する複数の状態とを含み、該複数のアンビギュイティ値の各該アンビギュイティ値はそれぞれの衛星からのそれぞれの搬送波測定値に対応する、アクセスするための命令と、
前記カルマンフィルタ内の前記複数の状態を更新するための命令であって、
前記複数の推定されたアンビギュイティ値並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
少なくとも1つの動的ノイズ因子を含む状態更新関数に従って前記アンビギュイティ値を更新するための命令と、
を有する、前記カルマンフィルタ内の前記複数の状態を更新するための命令と、
を含む、コンピュータシステムと、
を備える、測位又はナビゲーションシステム。
【請求項34】
前記1つ又は複数のプログラムは、
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得するための命令と、
前記取得された測定値から二重差値を計算するための命令であって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算するための命令と、
前記アンビギュイティ値並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
測位又はナビゲーション装置であって、
全地球的航法システム内の複数の衛星から衛星信号を受信するように構成される移動受信機と、
メモリと、
1つ又は複数のプロセッサと、
前記メモリ内に記憶される、前記1つ又は複数のプロセッサによって実行するための1つ又は複数のプログラムであって、該1つ又は複数のプログラムは、前記衛星から受信される前記信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減するためのものであり、該1つ又は複数のプログラムは、
残差対流圏遅延を推定するための命令であって、該残差対流圏遅延はカルマンフィルタ内の状態としてモデル化され、該カルマンフィルタの状態更新関数は少なくとも1つの基線距離依存性因子を含み、該少なくとも1つの基線距離依存性因子は基準受信機と前記移動受信機との間の距離に対応する、推定するための命令と、
前記推定された残差対流圏遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の推定位置を更新するための命令であって、該移動受信機の該推定位置は前記カルマンフィルタ内の状態としてモデル化される、更新するための命令と、
を含む、1つ又は複数のプログラムと、
を備える、測位又はナビゲーション装置。
【請求項36】
前記1つ又は複数のプログラムは、
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得するための命令と、
前記取得された測定値から二重差値を計算するための命令であって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算するための命令と、
前記推定された残差対流圏遅延並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
を含む、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記カルマンフィルタは、前記残差対流圏遅延を含む単一の状態を含む複数の状態において動作する、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、前記基準受信機及び前記移動受信機に対する衛星の平均仰角に部分的に基づく、請求項35に記載の装置。
【請求項39】
前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、前記基線距離、及び前記基準受信機と前記移動受信機との間の高度差に基づく少なくとも1つの因子を含む、請求項35に記載の装置。
【請求項40】
測位又はナビゲーション装置であって、
全地球的航法システム内の複数の衛星から衛星信号を受信するように構成される移動受信機と、
メモリと、
1つ又は複数のプロセッサと、
前記メモリ内に記憶される、前記1つ又は複数のプロセッサによって実行するための1つ又は複数のプログラムであって、該1つ又は複数のプログラムは、前記衛星から受信される前記信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減するためのものであり、該1つ又は複数のプログラムは、
N−1個の残差電離層遅延を推定するための命令であって、該N−1個の残差電離層遅延はカルマンフィルタ内の状態としてモデル化され、前記カルマンフィルタの状態更新関数は少なくとも1つの基線距離依存性因子を含み、該少なくとも1つの基線距離依存性因子は基準受信機と前記移動受信機との間の距離に対応する、推定するための命令と、
前記推定されたN−1個の残差電離層遅延並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の推定位置を更新するための命令であって、該移動受信機の該推定位置は前記カルマンフィルタ内の状態としてモデル化される、更新するための命令と、
を含む、1つ又は複数のプログラムと、
を備える、測位又はナビゲーション装置。
【請求項41】
前記1つ又は複数のプログラムは、
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得するための命令と、
前記取得された測定値から二重差値を計算するための命令であって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算するための命令と、
前記推定されたN−1個の残差電離層遅延並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記更新することは、複数の衛星ごとに前記カルマンフィルタ内の区別可能な残差電離層遅延状態を更新することを含む、請求項40に記載の装置。
【請求項43】
前記N−1個の残差電離層遅延のための前記カルマンフィルタの前記状態更新関数は、現地時間及び電離層活動に基づく少なくとも1つの因子を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項44】
測位又はナビゲーション装置であって、
全地球的航法システム内の複数の衛星から衛星信号を受信するように構成される移動受信機と、
メモリと、
1つ又は複数のプロセッサと、
前記メモリ内に記憶される、前記1つ又は複数のプロセッサによって実行するための1つ又は複数のプログラムであって、該1つ又は複数のプログラムは、前記衛星から受信される前記信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値の大気誤差を軽減するためのものであり、該1つ又は複数のプログラムは、
カルマンフィルタ内の複数の状態にアクセスするための命令であって、該複数の状態は、移動受信機の推定位置に対応する1つ又は複数の状態と、複数のアンビギュイティ値に対応する複数の状態とを含み、該複数のアンビギュイティ値の各該アンビギュイティ値はそれぞれの衛星からのそれぞれの搬送波測定値に対応する、アクセスするための命令と、
前記カルマンフィルタ内の前記複数の状態を更新するための命令であって、
前記複数の推定されたアンビギュイティ値並びに前記コード測定値及び前記搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
少なくとも1つの動的ノイズ因子を含む状態更新関数に従って前記アンビギュイティ値を更新するための命令と、
を有する、前記カルマンフィルタ内の前記複数の状態を更新するための命令と、
を含む、1つ又は複数のプログラムと、
を備える、測位又はナビゲーション装置。
【請求項45】
前記1つ又は複数のプログラムは、
前記基準受信機及び前記移動受信機において前記複数の衛星から受信される信号に基づいてコード測定値及び搬送波位相測定値を取得するための命令と、
前記取得された測定値から二重差値を計算するための命令であって、二重差コード測定値及び二重差搬送波位相測定値を形成する、計算するための命令と、
前記アンビギュイティ値並びに前記二重差コード測定値及び前記二重差搬送波位相測定値に従って前記移動受信機の前記推定位置を更新するための命令と、
を含む、請求項44に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−528320(P2010−528320A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510300(P2010−510300)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/006608
【国際公開番号】WO2008/150389
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(504278123)ナヴコム テクノロジー インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】