説明

リザーバタンク、これを用いたマスタシリンダ、およびこのマスタシリンダを備えたブレーキ装置

【課題】作動液の貯留量が少なくかつ車両が傾動した状態でも、エアの吸引を抑制して、できるだけ多くの作動液を確保する。
【解決手段】液貯留室5f,5gに延設された作動液供給ポート5a,5bの開口部5n,5rは、作動液供給ポート5a,5bの径方向に形成され、且つ、液貯留室5f,5g内に開口し、更に開口部5n,5rの対向する側には、所望高さを有し液貯留室5f,5gを少なくとも補償液量確保室5v,5xと補償液量補給室5w,5yに区画する仕切り壁60を備えており、更に補償液量確保室5v,5xと補償液量補給室5w,5yとの間の液移動を可能とする連通路50,51を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧等の液圧を利用した液圧ブレーキ装置等の液圧作動装置に用いられ、マスタシリンダから離間して配設されかつ作動液を貯留するリザーバタンク、これを用いて液圧を発生するためのマスタシリンダ、およびこのマスタシリンダを備えたブレーキ装置の各技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、液圧を利用した液圧作動装置として液圧ブレーキ装置を採用した車両がある。この液圧ブレーキ装置には、液圧を発生させるマスタシリンダが用いられているとともに、このマスタシリンダに供給する作動液を貯留するリザーバタンクが用いられている。
【0003】
このリザーバタンクおよびマスタシリンダを用いた従来の液圧ブレーキ装置として、リザーバ本体の径外方向にマスタシリンダ側に接続されるポートが形成されている。このポートは、予め水平方向に対して、所定角度だけ傾斜して形成され、マスタシリンダのプライマリ側とセカンダリ側に各々接続されている。
また、リザーバ本体側に嵌入するポートの一端は、フロート室近傍まで嵌入し、その近傍には、リザーバ本体を形成する外周壁、リザーバ本体内の作動液貯留量を検出するフロート室を構成する隔壁、プライマリ側とセカンダリ側を区画する仕切り壁が配置されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4327652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のリザーバタンクでは、次の点が懸念される。
例えば、リザーバ本体内に貯留されている作動液が少ない(リザーバ本体のMINライン程度しか作動液が貯留されていない)場合や、このリザーバ本体が車両に搭載され、その車両が傾動することにより液面変動が生じている場合に、自動ブレーキ装置や横滑り防止装置(ESC)が作動し、液圧制御ユニット(HU)のポンプが作動すれば、リザーバ本体内の作動液とともに、リザーバ本体内のエアを吸引する可能性が生じる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、作動液の貯留量が少なくかつ車両が傾動した状態でも、エアの吸引を抑制して、できるだけ多くの作動液を確保することができるリザーバタンク、これを用いたマスタシリンダ、およびこのマスタシリンダを備えたブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明のリザーバタンクでは、複数の隔壁により区画、および又は隔壁と外周壁により区画された作動液を貯留することが可能な作動液貯留室を少なくとも備え、一端が外周壁の下部から外方に突設されるとともに他端が前記作動液貯留室に延設された作動液供給ポートを有するリザーバタンクにおいて、前記作動液貯留室に延設された作動液供給ポートの開口部は、当該作動液供給ポートの径方向に形成され、且つ、前記作動液貯留室内に開口し、更に前記開口部の対向する側には、所望高さを有し作動液貯留室を少なくとも補償液量確保室と補償液量補給室に区画する仕切り壁を備えており、更に前記補償液量確保室と補償液量補給室との間の液移動を可能とする連通路を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のリザーバタンクでは、前記他端の作動液供給ポートの開口部は、前記補償液量確保室に対して開口しており、また、前記仕切り壁は、該仕切り壁と交差する方向に屈曲延伸された屈曲延伸部とが一体的に成形されていることを特徴としている。
【0009】
更に、本発明のリザーバタンクでは、前記仕切り壁の水平方向の断面は、L字型、あるいは円弧状であることを特徴としている。
【0010】
更に、本発明のリザーバタンクでは、前記仕切り壁は、該リザーバタンクの短手方向に伸びる仕切り部と該リザーバタンクの長手方向に伸びる前記屈曲延伸部とが一体成形されていることを特徴としている。
【0011】
更に、本発明のリザーバタンクでは、前記仕切り壁は、前記作動液供給ポートの開口部の近傍に配置し、前記開口部は、前記仕切り壁と隔壁あるいは外周壁により囲まれていることを特徴としている。
【0012】
更に、本発明のリザーバタンクでは、前記補償液量確保室は、前記補償液量補給室よりも小さいことを特徴としている。
【0013】
更に、本発明のリザーバタンクでは、補償液量確保室は、前記外周壁と前記仕切り壁を構成要素に含み、前記連通路は、前記仕切り壁に成形されるスリットを構成要素に含んでいることを特徴としている。
【0014】
更に、本発明のマスタシリンダは、作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が配管、あるいは液通路を介して供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、を少なくとも備え、前記リザーバタンクが請求項1〜7のいずれか一つに記載のリザーバタンクであることを特徴としている。
【0015】
更に、本発明のブレーキ装置は、作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が配管、あるいは液通路を介して供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダからの液圧で作動するブレーキシリンダと、を少なくとも備え、前記リザーバタンクが請求項1〜7のいずれか一つであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明のリザーバタンクによれば、複数の隔壁により区画、および又は隔壁と外周壁により区画された作動液を貯留することが可能な作動液貯留室を少なくとも備え、一端が外周壁の下部から外方に突設されるとともに他端が前記作動液貯留室に延設された作動液供給ポートを有するリザーバタンクにおいて、前記作動液貯留室に延設された作動液供給ポートの開口部は、当該作動液供給ポートの径方向に形成され、且つ、前記作動液貯留室内に開口し、更に前記開口部の対向する側には、所望高さを有し作動液貯留室を少なくとも補償液量確保室と補償液量補給室に区画する仕切り壁を備えており、更に前記補償液量確保室と補償液量補給室との間の液移動を可能とする連通路を備えている。
これにより、リザーバタンクの傾斜に応じて、補償液量確保室内の作動液の液面が低下しても、補償液量補給室からの作動液の補給を行うことができ、前記開口部が液面下に埋没するので、自動ブレーキ装置や横滑り防止装置(ESC)が作動し、液圧制御ユニット(HU)のポンプが作動しても、リザーバ本体内のエアを吸引する可能性がない。
【0017】
また、本発明のリザーバタンクによれば、前記他端の作動液供給ポートの開口部は、前記補償液量確保室に対して開口しており、また、前記仕切り壁は、該仕切り壁と交差する方向に屈曲延伸された屈曲延伸部とが一体的に成形されている。
更に、本発明のリザーバタンクによれば、前記仕切り壁の水平方向の断面は、L字型、あるいは円弧状である。
これにより、リザーバタンクの傾斜に応じて、補償液量確保室の作動液が補償液量補給室側に液移動することを抑制することができ、前記開口部が液面下に埋没するので、自動ブレーキ装置や横滑り防止装置(ESC)が作動し、液圧制御ユニット(HU)のポンプが作動しても、リザーバ本体内のエアを吸引する可能性がない。また、補償液量確保室の作動液が補償液量補給室側に液移動することを抑制することを確実にすることができる。
【0018】
更に、本発明のリザーバタンクによれば、前記仕切り壁は、該リザーバタンクの短手方向に伸びる仕切り部と該リザーバタンクの長手方向に伸びる前記屈曲延伸部とが一体成形されている。また、前記仕切り壁は、前記作動液供給ポートの開口部の近傍に配置し、前記開口部は、前記仕切り壁と隔壁あるいは外周壁により囲まれているので、補償液量確保室の作動液が補償液量補給室側に液移動することを抑制することを確実にするとともに、前記液移動の容量を低減させ、補償液量確保室内に多くの作動液を貯留することができる。
【0019】
更に、本発明のリザーバタンクによれば、前記補償液量確保室は、前記補償液量補給室よりも小さいので、必要最小限の作動液で対応可能である。
【0020】
更に、本発明のリザーバタンクによれば、補償液量確保室は、前記外周壁と前記仕切り壁を構成要素に含み、前記連通路は、前記仕切り壁に成形されるスリットを構成要素に含んでおり、容易に形成することが可能である。
【0021】
更に、本発明のマスタシリンダによれば、作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が配管、あるいは液通路を介して供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、を少なくとも備え、前記リザーバタンクが請求項1〜7のいずれか一つであるため、前記マスタシリンダと前記リザーバタンクとが別位置に配置されるタイプであっても、前記マスタシリンダの直上位置に前記リザーバタンクが配置されるタイプであっても良く、種々の車両に採用することが可能である。
【0022】
更に、本発明のブレーキ装置によれば、作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が配管、あるいは液通路を介して供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダからの液圧で作動するブレーキシリンダと、を少なくとも備え、前記リザーバタンクが請求項1〜7のいずれか一つであるため、リザーバタンクの傾斜に応じて、補償液量確保室内の作動液の液面が低下しても、補償液量補給室からの作動液の補給を行うことができ、前記開口部が液面下に埋没するので、自動ブレーキ装置や横滑り防止装置(ESC)が作動し、液圧制御ユニット(HU)のポンプが作動しても、リザーバ本体内のエアを吸引する可能性がない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明に係るリザーバタンクの実施の形態の一例を用いたマスタシリンダを備えたブレーキ装置を模式的に示す図、(b)は(a)においてIB方向から見た部分拡大図である。
【図2】(a)は図1に示す例のリザーバタンクの平面図、(b)はこのリザーバタンクの右側面図である。
【図3】は図2(a)においてリザーバタンクの上半体を除いて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態について説明する。
図1(a)は本発明に係るリザーバタンクの実施の形態の一例を用いたマスタシリンダを備えたブレーキ装置を模式的に示す図、図1(b)は図1(a)においてIB方向から見た部分拡大図である。
【0025】
図1(a)に示すように、この例の液圧ブレーキ装置1は、基本的に従来公知の一般的な2系統の液圧ブレーキ装置と同じである。すなわち、液圧ブレーキ装置1は、ブレーキペダル2、負圧倍力装置等からなるブレーキ倍力装置3、タンデムマスタシリンダ4、リザーバタンク5、リザーバタンク接続コネクタ6、2系統のブレーキ用作動液供給配管であるホース7,8、2系統のブレーキシリンダ9,10、2系統のブレーキ液圧配管11,12、及び車両安定制御装置などのブレーキ液圧制御装置13を備えている。
【0026】
タンデムマスタシリンダ4は、従来公知のタンムデマスタシリンダと同様に、シリンダ本体内に液密にかつ摺動可能に挿入されたプライマリピストン4a、このプライマリピストン4aにより区画形成されたプライマリ液圧室4b、シリンダ本体内に液密にかつ摺動可能に挿入されたセカンダリピストン4c、及びこのセカンダリピストン4cにより区画形成されたセカンダリ液圧室4dを有している。
【0027】
リザーバタンク5はタンデムマスタシリンダ4から離間して配設される。このリザーバタンク5は筒状の一対のブレーキ用作動液供給プライマリポート5aおよびブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bを有する。なお、図1において、5cは図示しないクラッチ用マスタシリンダにクラッチ用作動液を供給するためのクラッチ用作動液供給ポートであり、5dは作動液をリザーバタンク5内に注入するための作動液注入口である。すなわち、作動液が作動液注入口5dからブレーキ用作動液およびクラッチ用作動液としてリザーバタンク5内に注入される。なお、本発明においては、リザーバタンク5内の作動液がブレーキ用作動液およびクラッチ用作動液に共通である場合には単に作動液と記載し、また、ブレーキ用作動液またはクラッチ用作動液に個別である場合にはそれぞれブレーキ用作動液またはクラッチ用作動液と記載する。
【0028】
リザーバタンク接続用コネクタ6は、この例ではタンデムマスタシリンダ4の上方に装着される。このリザーバタンク接続用コネクタ6は一対のリザーバタンク接続用ニップル6a,6bを有する。リザーバタンク5の一方のブレーキ用作動液供給プライマリポート5aとリザーバタンク接続用コネクタ6の一方のリザーバタンク接続用ニップル6aとが2系統の一方のホース7を介して互いに接続されるとともに、リザーバタンク5の他方のブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bとリザーバタンク接続用コネクタ6の他方のリザーバタンク接続用ニップル6bとが2系統の他方のホース8を介して互いに接続される。
【0029】
また、リザーバタンク接続用コネクタ6の一方のリザーバタンク接続用ニップル6aは、シリンダ本体に設けられ、かつプライマリ液圧室4bに連通する図示しないプライマリ作動液供給孔に接続されている。更に、リザーバタンク接続用コネクタ6の他方のリザーバタンク接続用ニップル6bは、シリンダ本体に設けられ、かつセカンダリ液圧室4dに連通する図示しないセカンダリ作動液供給孔に接続されている。
【0030】
そして、リザーバタンク5内のブレーキ用作動液が各ホース7,8およびリザーバタンク接続用コネクタ6を介してそれぞれタンデムマスタシリンダ4のプライマリ液圧室4bおよびセカンダリ液圧室4dに供給される。タンデムマスタシリンダ4に供給されたブレーキ用作動液は、更に2系統のブレーキ液圧配管11,12を介してそれぞれ各系統のブレーキシリンダ9,10に供給されるようになっている。
【0031】
ブレーキ液圧制御装置13は所定の作動条件により作動して、ブレーキ液圧制御装置13の図示しないポンプによりリザーバタンク内のブレーキ用作動液をタンデムマスタシリンダ4を介して吸い込み、吸い込んだブレーキ用作動液により自動的にブレーキを作動するとともにそのブレーキ液圧の制御を行う。
【0032】
運転手がブレーキペダル2を踏み込むと、ブレーキ倍力装置3が作動してペダル踏力を所定のサーボ比で倍力して出力する。このブレーキ倍力装置3の出力でタンデムマスタシリンダ4のプライマリピストン4aが作動してプライマリ液圧室4bのブレーキ用作動液を一方の系統のブレーキシリンダ9にブレーキ液圧配管11を介して送給する。また、セカンダリピストン4cが作動してセカンダリ液圧室4dのブレーキ用作動液を他方のロスストロークが消滅すると、タンデムマスタシリンダ4がブレーキ液圧を発生する。このタンデムマスタシリンダ4のブレーキ液圧が各ブレーキシリンダ9,10に伝達され、各ブレーキシリンダ9,10がブレーキ力を発生して、各系統の車輪14,15にブレーキがかけられる。
【0033】
また、ブレーキ液圧制御装置13の所定の作動条件が成立すると、ブレーキ液圧制御装置13が作動し、このブレーキ液圧制御装置13のポンプによりリザーバタンク5内のブレーキ用作動液が、ブレーキ用作動液供給プライマリポート5aおよびブレーキ用作動液供給セカンダリポート5b、ホール7,8、リザーバタンク接続用ニップル6a,6b、タンデムマスタリンダ4、およびブレーキ液圧配管11,12を介して吸い込まれる。そして、吸い込まれたブレーキ用作動液がそれぞれ各系統のブレーキシリンダ9,10に供給されることで、自動ブレーキが行われる。このとき、自動ブレーキのブレーキ力が所望の大きさになるようにブレーキ液圧がブレーキ液圧制御装置13により制御される。
【0034】
図2(a)はこの例のリザーバタンクの平面図、図2(b)はこのリザーバタンクの右側側面図(図2(a)において右方から見た図)、図3は、図2(a)においてリザーバタンクの上半体を除いて示す図である。
【0035】
図2(a),(b)および図3(a)に示すように、リザーバタンク5はその水平断面が略矩形状に形成され、その長辺が車両前後方向または略車両前後方向となるように車両に搭載される。また、リザーバタンク5の一対のブレーキ用作動液供給プライマリポート5aおよびブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bは、リザーバタンク5の車両後方側の外周壁5uの下部から車両左側方に突設される(なお、各ブレーキ用作動液供給プライマリポート5aおよびブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bは、リザーバタンク5の車両右側方に突設することもできる。)。リザーバタンク5内には、従来公知のリザーバタンクと同様に隔壁5eにより、プライマリ液貯留室5f、セカンダリ液貯留室5g、クラッチ用作動液貯留室5h、および液面検出室5iが区画形成されている。各室5f,5g,5h,5iは公知のリザーバタンクと同様にして互いに連通している。
【0036】
ブレーキ用作動液供給プライマリポート5aの内孔5jはリザーバタンク5内でプライマリ液貯留室5fまで直線状に延設されているとともに、他方のブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bの内孔5oもリザーバタンク5内でセカンダリ液貯留室5gまで直線状に延設されている。また、ブレーキ用作動液供給プライマリポート5aの内孔5jのプライマリ液貯留室側端は閉塞壁5kにより閉じられ、ブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bの内孔5oのプライマリ液貯留室側端は閉塞壁5pにより閉じられている。更に、ブレーキ用作動液供給プライマリポート5aの内孔5jを形成する部分のプライマリ液貯留室側端部5mの周壁には、略矩形状のプライマリ液供給口5nが開口され、ブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bの内孔5oを形成する部分のセカンダリ液貯留室側端部5qの周壁には、略矩形状のプライマリ液供給口5rが開口されている。
【0037】
つまり、この例のリザーバタンク5においては、プライマリ液貯留室5fがプライマリ液供給口5n、内孔5j、ホース7、及びリザーバタンク接続用ニップル6aを介してタンデムマスタシリンダ4のプライマリ液圧室4bと連通するようになる。そして、セカンダリ液貯留室5gがセカンダリ液供給口5r、内孔5o、ホース8、及びリザーバタンク接続用ニップル6bを介してタンデムマスタシリンダ4のセカンダリ液圧室4dと連通するようになる。
【0038】
プライマリ液供給口5nに対向する側には、所望高さを有しプライマリ液貯留室5fを少なくとも2つの室に区画する仕切り壁60を備え、これによりプライマリ側補償液量確保室5vとプライマリ側補償液量補給室5wに区画される。同様にセカンダリ液供給口5qに対向する側には、所望高さを有しセカンダリ液貯留室5gを少なくとも2つの室に区画する仕切り壁60を備え、これによりセカンダリ側補償液量確保室5xとプライマリ側補償液量補給室5yに区画される。
なお、この例のリザーバタンク5では、プライマリ側補償液量補給室5w、プライマリ側補償液量補給室5yは、1つしか形成していないが、これについては、複数設定しても良い。また、この例のリザーバタンク5においては、各補償液量確保室は、各補償液量補給室よりも小さく設定されているが、これは作動液の有効利用を考慮したためである。
【0039】
プライマリ側補償液量確保室5vとプライマリ側補償液量補給室5wとの間には、仕切り壁60に成形されるスリット52から成り、作動液の液移動を可能とする連通路50が備えられている。また、同様にセカンダリ側補償液量確保室5xとセカンダリ側補償液量補給室5yとの間には、仕切り壁60に成形されるスリット53から成り、作動液の液移動を可能とする連通路51が備えられている。なお、この例のリザーバタンク5においては、連通路50,51は、スリット52,53により構成されているが、作動液の液移動が可能であれば、それ以外の構成であっても良い。
【0040】
また、仕切り壁60は、この仕切り壁60と交差する方向に屈曲延伸された屈曲延伸部62とが一体的に成形され、その水平断面は、L字型を呈している。この水平断面については、L字型に限定されることではなく、円弧状であっても良い。
【0041】
更に、仕切り壁60は、リザーバタンク5の短手方向に伸びる仕切り部61とリザーバタンク5の長手方向に伸びる屈曲延伸部62とが一体成形され、更に、仕切り壁60は、プライマリ液供給口5n、およびセカンダリ液供給口5rの近傍に配置し、プライマリ液供給口5n、およびセカンダリ液供給口5rは、仕切り壁60と隔壁5あるいは外周壁5uにより囲まれている。
【0042】
この例のリザーバタンク5では、上述の構造および形状を呈しており、特許文献1で挙げたリザーバタンクのように、リザーバタンク5内に貯留されている作動液の液面がMIN近傍で、且つ、車両が前方傾斜(図1(a)において左側が下方に傾斜している場合)している時は、プライマリ側補償液量確保室5v、セカンダリ側補償液量確保室5xは、仕切り壁60、隔壁5あるいは外周壁5uにより囲まれているため、プライマリ側補償液量確保室5v、セカンダリ側補償液量確保室5x内に貯留されていた作動液は、プライマリ側補償液量補給室5w、セカンダリ側補償液量補給室5y側に移動することが規制され、これによりプライマリ液供給口5n、セカンダリ液供給口5rは、作動液の液面より下方に埋没した状態を確保する。この時に、自動ブレーキ装置や横滑り防止装置(ESC)が作動し、液圧制御ユニット(HU)のポンプが作動すれば、リザーバ本体内の作動液とともに、リザーバ本体内のエアを吸引する可能性が低くなる。
そして、車両が後方傾斜(図1(a)において右側が下方に傾斜している場合)している時は、プライマリ側補償液量補給室5w、セカンダリ側補償液量補給室5yに貯留していた作動液をプライマリ側補償液量確保室5v、セカンダリ側補償液量確保室5xに60の高さを超えた作動液が移動し、プライマリ側補償液量確保室5v、セカンダリ側補償液量確保室5x内の作動液が増加することから、プライマリ液供給口5n、セカンダリ液供給口5rは、作動液の液面より下方に埋没した状態を確保する。この時に自動ブレーキ装置や横滑り防止装置(ESC)が作動し、液圧制御ユニット(HU)のポンプが作動すれば、リザーバ本体内の作動液とともに、リザーバ本体内のエアを吸引する可能性がない。
【0043】
なお、仕切り壁60に対して、所望の高さを備えているのは、車両が水平状態(リザーバタンク5も水平状態)にある時、一定量の作動液を貯留させておくために必要であり、この高さは、搭載するリザーバの車両毎に設定すれば良い。
また、仕切り壁60は、プライマリ液供給口5n、セカンダリ液供給口5rに近傍している方が作動液を確保する面で有効である。
【0044】
本発明では、上述の例を用いて説明しているが、これに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能である。例えば、前述の例では、内孔5j、5oとプライマリ液供給口5nおよびセカンダリ液供給口5rとがそれぞれ直交またはほぼ直交するようにしているが、内孔5j,5oとプライマリ液供給口5nおよびセカンダリ液供給口5rとはそれぞれ所定角度となるように設けることもできる。
【0045】
また、図3に示す例では、一対のブレーキ用作動液供給プライマリポート5aおよびブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bが、リザーバタンク5内に配設される部分がリザーバタンク5に配設される部分より高くなるように傾斜して設けられているが、これらのブレーキ用作動液供給プライマリポート5aおよびブレーキ用作動液供給セカンダリポート5bは水平または略水平に設けることができる。更に、マスタシリンダはタンデムに限定されることなくシングルマスタシリンダでも良い。その場合には、ブレーキ用作動液供給ポートは1つとなる。要は、本発明は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るリザーバタンクは、作動液を貯留するとともに配管によりマスタシリンダに接続されるリザーバタンクに好適に利用することができる。
また、本発明に係るリザーバタンクを用いたマスタシリンダは、油圧等の液圧を利用した液圧ブレーキ装置等の液圧作動装置に用いられ、液圧を発生するためのマスタシリンダに好適に利用することができる。
更に、本発明に係るブレーキ装置は、マスタシリンダを用いた液圧ブレーキ装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…液圧ブレーキ装置、2…ブレーキペダル、3…ブレーキ倍力装置、4…タンデムマスタシリンダ、5…リザーバタンク、5a…ブレーキ用作動液供給プライマリポート、5b…ブレーキ用作動液供給セカンダリポート、5e…隔壁、5f…プライマリ液貯留室、5g…セカンダリ液貯留室、5j,5o…内孔、5k,5p…閉塞壁、5m…プライマリ液貯留室側端部,5q…セカンダリ液貯留室側端部、5n…プライマリ液供給口、5r…セカンダリ液供給口、5v…プライマリ側補償液量確保室、5w…プライマリ側補償液量補給室、5x…セカンダリ側補償液量確保室、5y…セカンダリ側補償液量補給室、7,8…ホース、9,10…ブレーキシリンダ、11,12…ブレーキ液圧配管、13…ブレーキ液圧制御装置、50,51…連通路、52,53…スリット、60…仕切り壁、62…屈曲延伸部













【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隔壁により区画、および又は隔壁と外周壁により区画された作動液を貯留することが可能な作動液貯留室を少なくとも備え、一端が外周壁の下部から外方に突設されるとともに他端が前記作動液貯留室に延設された作動液供給ポートを有するリザーバタンクにおいて、 前記作動液貯留室に延設された作動液供給ポートの開口部は、当該作動液供給ポートの径方向に形成され、且つ、前記作動液貯留室内に開口し、更に前記開口部の対向する側には、所望高さを有し作動液貯留室を少なくとも補償液量確保室と補償液量補給室に区画する仕切り壁を備えており、更に前記補償液量確保室と補償液量補給室との間の液移動を可能とする連通路を備えていることを特徴とするリザーバタンク。
【請求項2】
前記他端の作動液供給ポートの開口部は、前記補償液量確保室に対して開口しており、また、前記仕切り壁は、該仕切り壁と交差する方向に屈曲延伸された屈曲延伸部とが一体的に成形されていることを特徴とする請求項1記載のリザーバタンク。
【請求項3】
前記仕切り壁の水平方向の断面は、L字型、あるいは円弧状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリザーバタンク。
【請求項4】
前記仕切り壁は、該リザーバタンクの短手方向に伸びる仕切り部と該リザーバタンクの長手方向に伸びる前記屈曲延伸部とが一体成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリザーバタンク。
【請求項5】
前記仕切り壁は、前記作動液供給ポートの開口部の近傍に配置し、前記開口部は、前記仕切り壁と隔壁あるいは外周壁により囲まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリザーバタンク。
【請求項6】
前記補償液量確保室は、前記補償液量補給室よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のリザーバタンク。
【請求項7】
補償液量確保室は、前記外周壁と前記仕切り壁を構成要素に含み、前記連通路は、前記仕切り壁に成形されるスリットを構成要素に含んでいることを特徴とする請求項1に記載のリザーバタンク。
【請求項8】
作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が配管、あるいは液通路を介して供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、を少なくとも備え、前記リザーバタンクが請求項1〜7のいずれか一つに記載のリザーバタンクであることを特徴とするマスタシリンダ。
【請求項9】
作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が配管、あるいは液通路を介して供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダからの液圧で作動するブレーキシリンダと、を少なくとも備え、前記リザーバタンクが請求項1〜7のいずれか一つに記載のリザーバタンクであることを特徴とするブレーキ装置。






























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136145(P2012−136145A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289754(P2010−289754)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】