説明

リセット回路

【課題】マイコンのリセット端子をトランジスタによってグランドに接続することによりマイコンにリセットをかけるリセット回路において、リセット動作不能な電源電圧の領域を無くす。
【解決手段】リセット回路10は、マイコン11のリセット端子13を電源電圧(以下、VM)にプルアップする抵抗R1と、VMが所定値未満のときにトランジスタT1をオンしてリセット端子13を0Vにするリセット信号出力回路15とに加え、オンすることで抵抗R1の上流側にVMを供給するトランジスタT2と、抵抗R1の上流側とグランドとの間に接続された抵抗R2と、トランジスタT1がオン可能なVMの最低値(Vbe)より高く、上記所定値よりは低い電圧(Vbe+ダイオードD1のVf)を動作閾値電圧とし、VMがその動作閾値電圧未満である場合にトランジスタT2をオフさせておいて、マイコン11のリセットを確保する回路T3,D1,R3,R4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコン(マイクロコンピュータ)にリセットをかけるリセット回路に関する。
【背景技術】
【0002】
マイコンのリセット回路として、マイコンのリセット端子を該マイコンの電源電圧にプルアップするプルアップ抵抗と、マイコンのリセット端子とグランドラインとの間にコレクタとエミッタが接続されたNPNトランジスタとを備え、電源電圧の投入時において、電源電圧が安定するまでの所定期間の間、そのNPNトランジスタをオンさせることにより、リセット端子をグランドラインに接続してマイコンにリセット(いわゆるパワーオンリセット)をかけるものが知られている。
【0003】
そして、マイコンにパワーオンリセットをかける上記所定期間(即ち、パワーオンリセット期間)を作る方式としては、電源電圧によってコンデンサが抵抗を介して充電されるようにしておき、そのコンデンサの充電電圧が所定値に達するまでの期間をパワーオンリセット期間とするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、パワーオンリセット期間を作る他の方式として、電源電圧が所定のリセット解除電圧以上になったか否かを比較器で判定し、電源電圧がリセット解除電圧以上となるまでの期間をパワーオンリセット期間とするものもある。
【0005】
ここで、後者の方式のリセット回路の具体例について、図5を用い説明する。
図5(A)に例示するリセット回路100は、マイコン11の電源電圧VM(この例では5V)が一端に供給され、他端がマイコン11のリセット端子13に接続されたプルアップ抵抗R1と、電源電圧VMによって動作し、マイコン11のリセット端子13をグランドラインに接続することでマイコン11をリセットするリセット信号出力回路15とを備えている。更に、そのリセット信号出力回路15は、マイコン11のリセット端子13とグランドラインとの間にコレクタとエミッタが接続されたNPNトランジスタT1と、NPNトランジスタT1のオン/オフを制御するリセット制御回路17とを備えている。
【0006】
そして、図5(B)に示すように、リセット制御回路17は、電源電圧VMの上昇時(投入時)には、電源電圧VMが最終値の5Vより若干低い所定のリセット解除電圧VR11以上になるまで、NPNトランジスタT1をオンして、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresをグランドラインの電圧(=0V:但し実際には、NPNトランジスタT1のコレクタ・エミッタ間電圧であり、約0.1V)にすることにより、マイコン11にパワーオンリセットをかける。
【0007】
また、図5(B)に示すように、リセット制御回路17は、電源電圧VMが5Vから下降して所定のリセット検出電圧VR2を下回っても、NPNトランジスタT1をオンしてマイコン11にリセットをかける。これは、電源電圧VMの遮断時や一時的な低下時においても、マイコン11の誤動作を防止するためである。
【0008】
尚、図5(B)では、リセット解除電圧VR1とリセット検出電圧VR2とを、同じ値に示しているが、両電圧VR1,VR2に差(即ち、ヒステリシス)を持たせることもある。
【0009】
一方、特許文献1には、リセット回路の他の構成として、マイコンのリセット端子とグランドラインとの間にプルダウン抵抗を接続して、リセット端子を常時プルダウンしておき、電源電圧のラインとリセット端子との間に設けられたPNPトランジスタをオンすることで、パワーオンリセットを解除する構成も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−298421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、マイコンのリセット端子をトランジスタによってグランドラインに接続することによりマイコンにリセットをかけるリセット回路では、そのトランジスタを、マイコンの電源電圧を用いてオンさせるため、電源電圧が、そのトランジスタをオンさせることが可能な最低値よりも低い領域では、マイコンに対するリセット動作が不能となる。
【0012】
例えば、図5(A)に例示したリセット回路100では、図5(B)に示すように、電源電圧VMの立ち上がり時または立ち下がり時において、NPNトランジスタT1をオンさせることが可能な該トランジスタT1のベース・エミッタ間電圧Vbe(約0.7V)よりも電源電圧VMが低い領域では、リセット信号出力回路15が正常に動作せず(即ち、トランジスタT1をオンさせることができず)、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresは電源電圧VMと同じ電圧となってしまう。つまり、マイコン11に対するリセット動作が不能となる。
【0013】
特に、近年では、マイコン11における処理の高速化や低消費電力化を実現するために、5Vの電源電圧VMはマイコン11におけるコア(プログラムを実行するCPU)11a以外の部分(I/OやAD変換器やメモリ等)の電源とし、コア11aには、その電源電圧VMよりも低い別の電源電圧VC(例えば1.5V)を供給するようにしている。このため、リセット端子13の電圧Vresが上記Vbeであっても、その電圧(0.7V)は、コア11aの電源電圧VCの1/2程度であるため、コア11aを確実にリセット状態にすることができない。よって、そのような状況において、マイコン11のコア11aは、どのように動作するか分からず、例えば、データ書き換え可能な不揮発性メモリ内の保存対象データを破壊するような処理や、マイコン11の周辺素子に悪影響を与えるような出力をする処理等をしてしまう可能性がある。
【0014】
尚、前述の特許文献1に記載されている他の構成では、マイコンのリセット端子をトランジスタでグランドラインに接続するローサイド駆動の構成ではなく、マイコンのリセット端子を抵抗でグランドラインに常時プルダウンしておき、電源電圧のラインとリセット端子との間に設けられたPNPトランジスタをオンすることで、パワーオンリセットを解除する構成であるため、他のリセット回路によってもワイヤードオアでマイコンにリセットをかける、という構成を採ることができない。
【0015】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、マイコンのリセット端子をトランジスタによってグランドラインに接続することによりマイコンにリセットをかけるリセット回路において、リセット動作不能な電源電圧の領域を無くすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1のリセット回路は、マイコンと、マイコンが動作するための電源電圧を出力する電源回路と、を備えたマイコン搭載装置において、マイコンをリセットするために設けられる。
【0017】
そして、このリセット回路は、一端に電源電圧が供給され、他端がマイコンのリセット端子に電気的に接続されたプルアップ抵抗と、電源電圧によって動作する回路であって、電源回路が電源電圧の出力を開始して該電源電圧が上昇し始めた場合に、所定のリセット解除条件が成立するまでの間、マイコンのリセット端子を第1のトランジスタにより0Vのグランドラインに接続して該マイコンをリセットするリセット信号出力回路と、を備えている。
【0018】
尚、リセット解除条件としては、例えば、電源電圧が上昇し始めたときから所定時間が経過した、という条件が考えられる。そして、この場合の所定時間は、例えば、電源電圧によってコンデンサが抵抗を介して充電されるようにしておき、そのコンデンサの充電電圧が所定値に達するまでの時間、として設定することができる。また、リセット解除条件としては、電源電圧が所定のリセット解除電圧以上になった、という条件でも良い(請求項4)。
【0019】
ここで特に、請求項1のリセット回路では、電源電圧とプルアップ抵抗の前記一端との間に、第2のトランジスタが設けられており、その第2のトランジスタがオンすることで、プルアップ抵抗の前記一端に電源電圧が供給されるようになっている。そして、プルアップ抵抗の前記一端とグランドラインとの間には、プルダウン抵抗が接続されている。このため、第2のトランジスタがオフしていれば、リセット信号出力回路における第1のトランジスタのオン/オフにかかわらず、マイコンのリセット端子の電圧はグランドラインの電圧(0V)となる。
【0020】
更に、このリセット回路は、駆動手段を備えている。その駆動手段は、リセット信号出力回路を動作させることが可能な電源電圧の最低値である動作下限電圧よりも高く、且つ、リセット信号出力回路がリセット端子のグランドラインへの接続を解除するときの電源電圧の値よりは低い所定電圧を動作閾値電圧とし、電源電圧がその動作閾値電圧未満である場合に、第2のトランジスタをオフさせ、電源電圧がその動作閾値電圧以上である場合に、第2のトランジスタをオンさせる。
【0021】
このようなリセット回路によれば、まず、電源電圧がリセット信号出力回路の動作下限電圧未満であり、リセット信号出力回路が動作不能(即ち、第1のトランジスタがオン不能)である場合には、第2のトランジスタがオフする。よって、第1のトランジスタをオンすることができなくても、マイコンのリセット端子の電圧はグランドラインの電圧となる。
【0022】
また、電源電圧が動作下限電圧以上で、駆動手段の動作閾値電圧未満である場合には、リセット信号出力回路が第1のトランジスタをオンさせる上に、第2のトランジスタもオフしている。このため、やはり、マイコンのリセット端子の電圧はグランドラインの電圧となる。
【0023】
そして、電源電圧が駆動手段の動作閾値電圧以上である場合には、第2のトランジスタがオンするため、リセット信号出力回路が第1のトランジスタをオンからオフさせたタイミング(即ち、リセット解除条件が成立したタイミングであり、リセット信号出力回路がリセット端子のグランドラインへの接続を解除するタイミング)で、マイコンのリセット端子の電圧が電源電圧となり、マイコンのリセットが解除されることとなる。
【0024】
このように、電源電圧がリセット信号出力回路の動作下限電圧未満である場合にも、マイコンのリセット端子の電圧をグランドラインの電圧にすることができるため、リセット動作不能な電源電圧の領域を無くすことができる。
【0025】
また、このリセット回路は、マイコンのリセット端子を第1のトランジスタでグランドラインに接続するローサイド駆動の構成であるため、他のローサイド駆動形式のリセット回路によってもワイヤードオアでマイコンにリセットをかける、という装置構成を採ることができる。
【0026】
次に、請求項2のリセット回路では、請求項1のリセット回路において、リセット信号出力回路は、第1のトランジスタとして、コレクタがリセット端子に接続され、エミッタがグランドラインに接続されたNPNトランジスタを備え、該第1のトランジスタをオンすることでリセット端子をグランドラインに接続するものであると共に、第1のトランジスタをオンさせることが可能な該第1のトランジスタのベース・エミッタ間電圧が、動作下限電圧となっている。そして、駆動手段は、アノードに電源電圧が供給されるダイオードと、該ダイオードのカソードがベースに接続され、エミッタがグランドラインに接続されたNPNトランジスタである第3のトランジスタとを備え、該第3のトランジスタがオンすることで、第2のトランジスタをオンさせる。
【0027】
この構成によれば、NPNトランジスタをオンさせることが可能な該NPNトランジスタのベース・エミッタ間電圧(約0.7V)を「Vbe」と記載し、ダイオードの順方向電圧(約0.7V)を「Vf」と記載することにすると、リセット信号出力回路の動作下限電圧が「Vbe」であるのに対して、駆動手段の動作閾値電圧は「Vf+Vbe」となる。このため、動作閾値電圧を動作下限電圧よりも高くすることを、簡単な構成で実現することができる。
【0028】
尚、請求項3に記載のように、例えば、第2のトランジスタがPNPトランジスタであると共に、その第2のトランジスタのエミッタに電源電圧が供給され、該第2のトランジスタのコレクタがプルアップ抵抗の前記一端に接続されているのであれば、その第2のトランジスタのベースに、第3のトランジスタのコレクタが接続されていれば、第3のトランジスタがオンすることで、第2のトランジスタがオンすることとなる。
【0029】
次に、請求項4のリセット回路は、請求項1〜3のリセット回路において、リセット信号出力回路は、電源電圧が動作下限電圧よりも高いリセット解除電圧未満である間、マイコンのリセット端子を第1のトランジスタによりグランドラインに接続し、電源電圧がリセット解除電圧以上になると、マイコンのリセット端子のグランドラインへの接続を解除する(即ち、第1のトランジスタをオフさせる)ものである。
【0030】
この構成によれば、電源回路が電源電圧の出力を開始して該電源電圧が上昇し始めた場合に、電源電圧がリセット解除電圧以上になった、ということが、リセット解除条件となる。そして、電源電圧が立ち上がってリセット解除電圧になるまでの間、マイコンを確実にリセット状態にすることができる。
【0031】
次に、請求項5のリセット回路は、請求項4のリセット回路において、リセット信号出力回路は、電源電圧が下降して、前記動作下限電圧よりも高いリセット検出電圧を下回ると、マイコンのリセット端子を第1のトランジスタによりグランドラインに接続する。そして、駆動手段の動作閾値電圧は、リセット解除電圧とリセット検出電圧との両方よりも低くなっている。
【0032】
この構成によれば、電源回路が電源電圧の出力を停止して該電源電圧が下降する場合においても、電源電圧が動作閾値電圧未満になれば、第2のトランジスタがオフするため、電源電圧がリセット検出電圧を下回ってから0Vになるまでの全領域において、マイコンを確実にリセット状態にすることができる。
【0033】
尚、リセット解除電圧とリセット検出電圧とは、異なる電圧であっても、同じ電圧であっても、何れでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態の電子制御装置の構成を表す構成図である。
【図2】リセット制御回路の構成を表す構成図である。
【図3】実施形態の作用を説明する説明図である。
【図4】変形例を説明する説明図である。
【図5】従来技術と課題を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明が適用された実施形態のマイコン搭載装置としての電子制御装置について説明する。尚、本実施形態の電子制御装置は、車両(自動車)に搭載されて、例えば、その車両のエンジンを制御するものである。また、図5(A)に示したものと同じものについては、図5(A)で使用した符号と同じ符号を用いるため、詳細な説明を省略する。
【0036】
図1に示すように、本実施形態の電子制御装置1には、車両のバッテリ3の電圧(詳しくは、バッテリ3のプラス端子の電圧であり、以下、バッテリ電圧という)Vbatが、車両に設けられているスイッチ手段5を介して、外部電源電圧として供給される。尚、スイッチ手段5は、例えば、車両の運転者によってオン/オフされる手動のイグニッションスイッチ、あるいは、車両内の電源制御装置によってオン/オフされる電源供給用のリレー(いわゆるメインリレー)である。
【0037】
そして、電子制御装置1は、外部電源電圧としてのバッテリ電圧Vbatから、該バッテリ電圧Vbatよりも低い2種類の電源電圧VM(この例では5V)と電源電圧VC(この例では1.5V)とを生成して出力する電源回路7と、その2種類の電源電圧VM、VCを受けて動作するマイコン11とを備えている。
【0038】
そして、前述したように、5Vの電源電圧VMは、マイコン11におけるコア11a以外の部分(I/OやAD変換器やメモリ等)の電源であり、それよりも低い1.5Vの電源電圧VCは、コア11aの電源である。
【0039】
尚、マイコン11は、エンジンの制御に関する処理を行うが、その処理自体は本発明に直接関係がないため説明を省略する。また、電源電圧VMのラインとグランドラインとの間と、電源電圧VCのラインとグランドラインとの間とのそれぞれには、電源電圧VM,VCがノイズ等の影響で変動しないようにするために、静電容量が比較的大きいコンデンサ8,9が接続されている。
【0040】
更に、電子制御装置1は、電源電圧VMを監視してマイコン11にリセットをかけるリセット回路10を備えている。
そして、リセット回路10は、前述した図5(A)のリセット回路100と比較すると、下記(1)〜(3)の構成要素が追加されている。
【0041】
(1)電源電圧VMとプルアップ抵抗R1の一端(マイコン11のリセット端子13に接続される側とは反対側の端部であり、以下、上流側端部という)との間に、PNPトランジスタT2が設けられている。具体的には、PNPトランジスタT2のエミッタに電源電圧が供給されており、そのPNPトランジスタT2のコレクタが、プルアップ抵抗R1の上流側端部に接続されている。
【0042】
(2)プルアップ抵抗の上流側端部とグランドラインとの間に、プルダウン抵抗R2が接続されている。
(3)PNPトランジスタT2を駆動する駆動回路として、コレクタがPNPトランジスタT2のベースにされ、エミッタがグランドラインに接続されたNPNトランジスタT3と、アノードに電源電圧VMが供給され、カソードがNPNトランジスタT3のベースに接続されたダイオードD1と、NPNトランジスタT3のベースとグランドラインとの間に接続されたプルダウン用の抵抗R3と、ダイオードD1のアノードとグランドラインとの間に接続されたプルダウン用の抵抗R4と、からなる駆動回路を備えている。
【0043】
ここで、以下の説明では、NPNトランジスタT1,T3をオンさせることが可能な該NPNトランジスタT1,T3のベース・エミッタ間電圧(約0.7V)を「Vbe」と記載し、ダイオードD1の順方向電圧(約0.7V)を「Vf」と記載する。
【0044】
そして、上記(3)で述べたNPNトランジスタT3、ダイオードD1及び抵抗R3,R4からなる駆動回路によれば、電源電圧VMが「Vf+Vbe」未満の場合には、NPNトランジスタT3がオンしないため、PNPトランジスタT2をオフさせることとなり、電源電圧VMが「Vf+Vbe」以上の場合には、NPNトランジスタT3がオンして、PNPトランジスタT2をオンさせることとなる。
【0045】
一方、リセット回路10におけるリセット信号出力回路15(NPNトランジスタT1及びリセット制御回路17)は、図5(A)のリセット回路100と同様のものである。そして、本実施形態においても、リセット解除電圧VR1とリセット検出電圧VR2は、同じ値であり、例えば3.7Vである。その場合のリセット制御回路17の構成例を、図2に示す。
【0046】
図2に示すように、リセット制御回路17は、直列に接続されて電源電圧VMを分圧する2つの抵抗21,22と、基準電圧Vrefを発生する基準電圧回路23と、抵抗21,22同士の接続点の電圧(以下、分圧電圧という)Vaが反転入力端子(−端子)に入力され、基準電圧回路23による基準電圧Vrefが非反転入力端子(+端子)に入力される比較器24とを備えている。そして、比較器24の出力信号がNPNトランジスタT1のベースに供給されるようになっている。また、基準電圧回路23は、例えば、電源電圧VMとグランドラインとの間に直列に接続された定電流回路とツェナーダイオードとから構成されており、その定電流回路とツェナーダイオードとの接続点に、基準電圧Vrefを発生させる。そして、基準電圧Vrefは、電源電圧VMが3.7Vであるときの上記分圧電圧Vaの値と同じ値に設定されている。
【0047】
このようなリセット制御回路17では、電源電圧VMが、リセット解除電圧VR1及びリセット検出電圧VR2に該当する3.7Vよりも低い場合には、比較器24からNPNトランジスタT1のベースに電源電圧VMが出力されて、NPNトランジスタT1をオンさせる。また、電源電圧VMが3.7V以上である場合には、比較器24の出力が0Vとなり、NPNトランジスタT1をオフさせる。
【0048】
但し、既述したように、電源電圧VMが3.7Vより低くても、NPNトランジスタT1のVbeより低い領域では、NPNトランジスタT1をオンさせることができない。つまり、本実施形態においても、リセット信号出力回路15が動作可能な電源電圧VMの最低値(動作下限電圧)は、NPNトランジスタT1のVbeである。
【0049】
尚、例えば、リセット解除電圧VR1を3.8Vとし、リセット検出電圧を3.7Vにする、といった具合に、両電圧VR1,VR2が異なる値に設定されていても良い。その場合、図2の比較器24にヒステリシスを持たせれば良い。
【0050】
また、図1における点線の枠で示しているように、リセット回路10におけるリセット信号出力回路15は、電源回路7と共に、1つのICになっていても良い。また、リセット信号出力回路15やリセット制御回路17が単独でIC化されていても良い。
【0051】
次に、以上のような電子制御装置1におけるリセット回路10の作用について、図3を用い説明する。
まず、スイッチ手段5のオンに伴って、電源回路7が電源電圧VM,VCの出力を開始し、それにより電源電圧VMが0Vから5Vへ上昇する場合(即ち、電源電圧VMの立ち上がり時であり、パワーオン時)の動作について説明する。
【0052】
図3(A)に示すように、電源電圧VMの立ち上がり時において、電源電圧VMが、NPNトランジスタT1のVbe未満である場合には、NPNトランジスタT3がオンしないため、PNPトランジスタT2もオフする。このため、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオン不能(オフ)であるものの、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresは、プルダウン抵抗R2によりグランドラインの電圧(GND=0V)となる。
【0053】
そして、電源電圧VMが、NPNトランジスタT1のVbe以上で、且つ、「ダイオードD1のVf+NPNトランジスタT3のVbe」未満の値になると、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオンする。更に、NPNトランジスタT3は未だオンしないため、PNPトランジスタT2も未だオフしている。このため、やはり、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresはグランドラインの電圧となる。
【0054】
そして、電源電圧VMが、「ダイオードD1のVf+NPNトランジスタT3のVbe」以上で、且つ、リセット解除電圧VR1未満の値になると、NPNトランジスタT3がオンして、PNPトランジスタT2もオンするが、既にNPNトランジスタT1がオンしているため、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresはグランドラインの電圧(厳密には、NPNトランジスタT1のコレクタ・エミッタ間電圧であり、約0.1V)に維持される。
【0055】
そして、電源電圧VMがリセット解除電圧VR1以上になると、リセット解除条件が成立したとして、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオフする。そして、この時点で、PNPトランジスタT2は既にオンしているため、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresが電源電圧VMとなり、マイコン11のリセット(この場合、パワーオンリセット)が解除される。
【0056】
このため、図3(B)における左半分に示すように、電源電圧VMの立ち上がり時においては、電源電圧VMがリセット信号出力回路15の動作下限電圧であるVbe未満であっても、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresをグランドラインの電圧にすることができるため、電源電圧VMが0Vからリセット解除電圧VR1に達するまでの全領域において、マイコン11(特にコア11a)にリセットをかけ続けることができる。
【0057】
次に、スイッチ手段5のオフに伴って、電源回路7が電源電圧VM,VCの出力を停止し、それにより電源電圧VMが5Vから0Vへ下降する場合(即ち、電源電圧VMの立ち下がり時であり、パワーオフ時)の動作について説明する。
【0058】
図3(A)に示すように、電源電圧VMの立ち下がり時において、電源電圧VMがリセット検出電圧VR2以上である場合には、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオフしていると共に、PNPトランジスタT2はオンしている。このため、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresは電源電圧VMとなっている。
【0059】
そして、電源電圧VMが、リセット解除電圧VR2未満で、且つ、「ダイオードD1のVf+NPNトランジスタT3のVbe」以上の値になると、PNPトランジスタT2がオンしている状態で、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオンするため、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresは、NPNトランジスタT1により、グランドラインの電圧(厳密には、NPNトランジスタT1のコレクタ・エミッタ間電圧)となる。つまり、マイコン11のリセットが行われる。
【0060】
そして、電源電圧VMが、「ダイオードD1のVf+NPNトランジスタT3のVbe」未満で、且つ、NPNトランジスタT1のVbe以上の値になると、NPNトランジスタT3がオフして、PNPトランジスタT2もオフする。また、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1は未だオンしている。このため、やはり、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresはグランドラインの電圧となる。
【0061】
そして、電源電圧VMが、NPNトランジスタT1のVbe未満になると、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオン不能(オフ)となるが、PNPトランジスタT2が既にオフしているため、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresは、プルダウン抵抗R2によりグランドラインの電圧に維持される。
【0062】
よって、図3(B)における右半分に示すように、電源電圧VMの立ち下がり時においても、電源電圧VMがリセット検出電圧VR2を下回ってから0Vになるまでの全領域において、マイコン11のリセット端子13の電圧Vresをグランドラインの電圧にすることができ、延いてはマイコン11にリセットをかけ続けることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態のリセット回路10によれば、電源電圧VMがVbe未満であっても、マイコン11にリセットをかけることができ、リセット動作不能な電源電圧VMの領域を無くすことができる。
【0064】
また、リセット回路10は、マイコン11のリセット端子13をトランジスタT1でグランドラインに接続するローサイド駆動の構成であるため、他のローサイド駆動形式のリセット回路によってもワイヤードオアでマイコン11にリセットをかける、という装置構成を採ることができる。つまり、他のリセット回路において、トランジスタT1に相当するトランジスタの出力端子(グランドライン側とは反対側の出力端子)をマイコン11のリセット端子13に接続すれば、該他のリセット回路によっても、マイコン11をリセットすることができるようになる。
【0065】
また、本実施形態のリセット回路10によれば、PNPトランジスタT2をオンさせるNPNトランジスタT3のベースに、ダイオードD1を介して電源電圧VMを供給しているため、PNPトランジスタT2をオフからオンに転じさせるときの電源電圧VMの値(駆動手段の動作閾値電圧に相当)が「Vf+Vbe」となり、その電圧値をリセット信号出力回路15の動作下限電圧であるVbeよりも高くすることができる。
【0066】
このため、電源電圧VMの立ち上がり時においては、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオンしてから(オン可能になってから)PNPトランジスタT2がオンする、という順序動作を実現することができ、逆に、電源電圧VMの立ち下がり時においては、PNPトランジスタT2がオフしてから、リセット信号出力回路15のNPNトランジスタT1がオフする(オン不能になる)、という順序動作を実現することができる。よって、マイコン11のリセットを連続的に確実に行うことができる。
【0067】
尚、本実施家形態では、NPNトランジスタT1が、第1のトランジスタに相当し、PNPトランジスタT2が、第2のトランジスタに相当し、NPNトランジスタT3が、第3のトランジスタに相当している。また、NPNトランジスタT3、ダイオードD1及び抵抗R3,R4からなる駆動回路が、駆動手段に相当している。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0069】
例えば、リセット信号出力回路15は、パワーオンリセット専用の回路でも良い。そして、その場合、パワーオンリセット期間を作る方式としては、コンデンサの充電電圧が所定値に達するまでの期間をパワーオンリセット期間とするタイマ型のものでも良い。
【0070】
具体例として、図4に示すリセット信号出力回路25は、パワーオンリセット専用の回路であり、そのリセット信号出力回路25は、リセット信号出力用のNPNトランジスタT1を制御するリセット制御回路27として、エミッタに電源電圧VMが供給されるPNPトランジスタ31と、PNPトランジスタ31のエミッタとベースとの間に接続された抵抗32と、PNPトランジスタ31のベースに一端が接続された抵抗33と、その抵抗33の他端とグランドラインとの間に接続されたタイマ用のコンデンサ34と、PNPトランジスタ31のコレクタに一端が接続され、他端がNPNトランジスタT1のベースに接続された抵抗35と、NPNトランジスタT1のベースとグランドラインとの間に接続された抵抗36と、からなる回路を備えている。
【0071】
このようなリセット信号出力回路25では、電源電圧VMが0Vから上昇し始めると、PNPトランジスタ31のエミッタ・ベース間と抵抗33を介してコンデンサ34が充電される。そして、PNPトランジスタ31にベース電流が流れることにより、該PNPトランジスタ31がオンして、NPNトランジスタT1もオンし、マイコン11のリセット端子13がグランドラインに接続される。その後、コンデンサ34の充電が進み、コンデンサ34の電圧(抵抗33側の端子の電圧)が、「VM−0.7V」程度になると(尚、この時点で、電源電圧VMは目標値(例えば5V)に到達している)、PNPトランジスタ31にベース電流が流れなくなって該PNPトランジスタ31がオフし、それに伴い、NPNトランジスタT1がオフして、マイコン11のリセットが解除される。
【0072】
一方、NPNトランジスタT1の出力端子であるコレクタ及びプルアップ抵抗R1は、マイコン11のリセット端子13と抵抗を介して接続されていても良い。電気的に接続されていれば良いからである。
【0073】
また、例えばPNPトランジスタT2の代わりに、MOSFETを用いても良い。
また、リセット回路10が用いられるマイコン搭載装置は、車両用以外の電子制御装置でも良い。
【符号の説明】
【0074】
1…電子制御装置(マイコン搭載装置)、3…バッテリ、5…スイッチ手段
7…電源回路、8,9…コンデンサ、10…リセット回路、11…マイコン
11a…コア、13…リセット端子、R1…プルアップ抵抗、R2…プルダウン抵抗
R3,R4,21,22…抵抗、23…基準電圧回路、24…比較器、
D1…ダイオード、T1…NPNトランジスタ(第1のトランジスタ)、
T2…PNPトランジスタ(第2のトランジスタ)、
T3…NPNトランジスタ(第3のトランジスタ)、
15,25…リセット信号出力回路、17,27…リセット制御回路
31…PNPトランジスタ、32,33,35,36…抵抗
34…タイマ用のコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコンと、該マイコンが動作するための電源電圧を出力する電源回路と、を備えたマイコン搭載装置において、前記マイコンをリセットするために設けられるリセット回路であって、
一端に前記電源電圧が供給され、他端が前記マイコンのリセット端子に電気的に接続されたプルアップ抵抗と、
前記電源電圧によって動作する回路であって、前記電源回路が前記電源電圧の出力を開始して該電源電圧が上昇し始めた場合に、所定のリセット解除条件が成立するまでの間、前記リセット端子を第1のトランジスタにより0Vのグランドラインに接続して前記マイコンをリセットするリセット信号出力回路と、に加えて更に、
前記電源電圧と前記プルアップ抵抗の前記一端との間に設けられ、オンすることで、前記プルアップ抵抗の前記一端に前記電源電圧を供給する第2のトランジスタと、
前記プルアップ抵抗の前記一端と前記グランドラインとの間に接続されたプルダウン抵抗と、
前記リセット信号出力回路を動作させることが可能な前記電源電圧の最低値である動作下限電圧よりも高く、且つ、前記リセット信号出力回路が前記リセット端子の前記グランドラインへの接続を解除するときの前記電源電圧の値よりは低い所定電圧を動作閾値電圧とし、前記電源電圧が前記動作閾値電圧未満である場合に、前記第2のトランジスタをオフさせ、前記電源電圧が前記動作閾値電圧以上である場合に、前記第2のトランジスタをオンさせる駆動手段と、
を備えていることを特徴とするリセット回路。
【請求項2】
請求項1に記載のリセット回路において、
前記リセット信号出力回路は、
前記第1のトランジスタとして、コレクタが前記リセット端子に接続され、エミッタが前記グランドラインに接続されたNPNトランジスタを備え、該第1のトランジスタをオンすることで前記リセット端子を前記グランドラインに接続するものであると共に、前記第1のトランジスタをオンさせることが可能な該第1のトランジスタのベース・エミッタ間電圧が、前記動作下限電圧となっているものであり、
前記駆動手段は、
アノードに前記電源電圧が供給されるダイオードと、該ダイオードのカソードがベースに接続され、エミッタが前記グランドラインに接続されたNPNトランジスタである第3のトランジスタとを備え、該第3のトランジスタがオンすることで、前記第2のトランジスタをオンさせること、
を特徴とするリセット回路。
【請求項3】
請求項2に記載のリセット回路において、
前記第2のトランジスタは、エミッタに前記電源電圧が供給され、コレクタが前記プルアップ抵抗の前記一端に接続されたPNPトランジスタであり、
前記第3のトランジスタのコレクタが、前記第2のトランジスタのベースに接続されていること、
を特徴とするリセット回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のリセット回路において、
前記リセット信号出力回路は、前記電源電圧が前記動作下限電圧よりも高いリセット解除電圧未満である間、前記リセット端子を前記第1のトランジスタにより前記グランドラインに接続し、前記電源電圧が前記リセット解除電圧以上になると、前記リセット端子の前記グランドラインへの接続を解除するものであること、
を特徴とするリセット回路。
【請求項5】
請求項4に記載のリセット回路において、
前記リセット信号出力回路は、前記電源電圧が下降して、前記動作下限電圧よりも高いリセット検出電圧を下回ると、前記リセット端子を前記第1のトランジスタにより前記グランドラインに接続し、
前記駆動手段の前記動作閾値電圧は、前記リセット解除電圧と前記リセット検出電圧との両方よりも低いこと、
を特徴とするリセット回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−38464(P2013−38464A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170417(P2011−170417)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】