説明

リソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤

【課題】 レジスト、反射防止膜等の溶解性、剥離性に優れるリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤を提供する。
【解決手段】 リソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤は、(a1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート、(a2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート及び(a3)酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Aと、(b1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテル及び(b2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Bとからなり、等容量の水と混合した場合に均質な溶液を形成しうるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路素子、カラーフィルタ、液晶表示素子等における基板或いはレジスト塗布装置などから、硬化及び未硬化の不要なレジスト、反射防止膜等を溶解或いは剥離除去するために有用なリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子、カラーフィルタ、液晶表示素子等の製造のため、従来からリソグラフィー技術が用いられている。リソグラフィー技術を用いる集積回路素子等の製造では、例えば基板上に必要に応じて反射防止膜を形成した後、ポジ型或いはネガ型のレジストが塗布され、ベーキングにより溶剤を除去した後、レジスト膜上に必要に応じ反射防止膜が形成され、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の各種放射線により露光され、現像されてレジストパターンが形成される。
【0003】
上記レジストなどの塗布は、スピンコート、ロールコート、リバースロールコート、流延塗布、ドクターコート、浸漬塗布などの種々の公知の方法が採られており、例えば集積回路素子の製造においては、レジスト塗布法としてスピンコート法が主として用いられている。スピンコート法では、基板上にレジスト溶液が滴下され、この滴下されたレジスト溶液は基板の回転により基板外周方向に流延され、過剰のレジスト溶液は基板外周から飛散除去され、所望の膜厚を有するレジスト膜が形成される。
【0004】
しかし、その際レジスト溶液の一部が基板の背面にまで回り込んだり、或いは基板の外周縁にはレジスト溶液が他の部分より厚く残る、いわゆるビードの形成がなされる欠点があり、基板側面周辺部或いは裏面から不要なレジストを除去したり、ビードの除去を行う必要がある。これは、集積回路素子の製造に限らず、カラーフィルタ、液晶表示素子等の製造においても同様である。また、スピンコート法以外の塗布法においても、不必要な部分にレジストが付着することがあることはスピンコート法における場合と同様である。
【0005】
また、基板とレジスト膜との間に反射防止膜がある集積回路素子の場合、パターンが形成された後、反射防止膜の除去を行う必要がある。塗布装置にもレジスト溶液が付着するため、さらなる使用に際し、塗布装置を洗浄することも必要である。
【0006】
これらの解決策として、特公平4−49938号公報の実施例には、プロピレングリコールメチルエーテルとプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの1:1混合物からなる剥離剤を用いてフォトレジスト層を剥離する例が記載されている。
【0007】
特開平6−324499号公報には、樹脂溶解性、開始剤溶解性を改善したレジスト洗浄除去用溶剤として、β型プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いたレジスト洗浄除去用溶剤が開示されている。
【0008】
特開2001−117242号公報には、1,3−プロパンジオールメチルエーテルや1,3−プロパンジオールメチルエーテルアセテートを洗浄剤として用いて不要なレジストを除去する例が記載されている。特開2001−117241号公報には、1,3−プロパンジオールメチルエーテルや1,3−プロパンジオールメチルエーテルアセテートと水との混合液をリンス液として用いて不要なレジストを除去する例が記載されている。また、特開平10−186680号公報には、プロピレングリコールアルキルエーテル及びプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートを使用した、火災、取扱いの安全性を有する洗浄剤、リンス液が開示されている。
【0009】
しかしながら、上記の溶剤や溶剤組成物は、溶解性や剥離性が充分ではなく、また比較的長い溶解時間を要するという点で、実用上充分なものとはいえない。
【0010】
【特許文献1】特公平4−49938号公報
【特許文献2】特開平6−324499号公報
【特許文献3】特開2001−117242号公報
【特許文献4】特開2001−117241号公報
【特許文献5】特開平10−186680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記欠点を有さない、有機溶剤溶液から形成されるレジスト或いは反射防止膜などに対してはもちろん、さらに水溶液から形成される反射防止膜などに対しても良好な溶解性、剥離性を有するリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記特性に加え、火災の危険性が改善され、取扱いにも優れたリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究した結果、特定の有機溶剤の組み合わせからなり且つ特定の特性を有する有機溶剤混合液、又はそれらと水との混合液により上記の目的を達成できることを見出し本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(a1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート、(a2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート及び(a3)酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Aと、(b1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテル及び(b2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Bとからなり、等容量の水と混合した場合に均質な溶液を形成しうるリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤を提供する。
【0014】
前記リソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤には、例えば、(i)プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)と溶剤Bとを、前者/後者(重量比)=1/99〜75/25の割合で含むリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤、(ii)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)と溶剤Bとを、前者/後者(重量比)=1/99〜55/45の割合で含むリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤、(iii)酢酸アルキルエステル(a3)と溶剤Bとを、前者/後者(重量比)=1/99〜15/85の割合で含むリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤が含まれる。
【0015】
プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)として、例えば1,2−プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテートが挙げられる。プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)、1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)、プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(b1)又は1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテル(b2)におけるアルキル基として、例えばメチル基などが挙げられる。酢酸アルキルエステル(a3)として、例えば酢酸ブチルが挙げられる。
【0016】
前記リソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤は、溶剤A及び溶剤Bに加えて、さらに水を含有していてもよい。
【0017】
なお、本明細書において、特に断りのない限り、「プロピレングリコール」は、α型プロピレングリコール(1,2−プロピレングリコール=1,2−プロパンジオール)及びβ型プロピレングリコール(1,3−プロパンジオール)を含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤は、有機溶剤溶液から形成されるレジスト又は反射防止膜などに対してのみならず、水溶液から形成される反射防止膜などに対しても良好な溶解性、剥離性を示す。また、水を含んだものは、火災の危険性が改善され、取扱いにも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤は、(a1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート、(a2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート及び(a3)酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Aと、(b1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテル及び(b2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Bとからなる。溶剤A、溶剤Bは、それぞれ、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)、1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)、プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(b1)、1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテル(b2)におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などの炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。これらの中でもメチル基が特に好ましい。
【0021】
プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)の代表的な例として、例えば、プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−エチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール−1−C1-6アルキルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、α型プロピレングリコール−1−メチルアセテート(1,2−プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート)等のα型プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(1,2−プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート)が好ましい。
【0022】
1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)の代表的な例として、例えば、1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオール−3−エチルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオール−3−プロピルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオール−3−ブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0023】
酢酸アルキルエステル(a3)におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などの炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。酢酸アルキルエステル(a3)の代表的な例として、例えば、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどが挙げられ、これらの中でも、特に酢酸ブチルが好ましい。
【0024】
プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(b1)の代表的な例として、例えば、プロピレングリコール−1−メチルエーテル、プロピレングリコール−1−エチルエーテル、プロピレングリコール−1−プロピルエーテル、プロピレングリコール−1−ブチルエーテル等のプロピレングリコール−1−C1-6アルキルエーテルなどが挙げられる。なかでも、α型プロピレングリコール−1−メチルエーテル(1,2−プロピレングリコール−1−メチルエーテル)及びβ型プロピレングリコール−1−メチルエーテル(1,3−プロパンジオール−1−メチルエーテル)が好ましい。
【0025】
1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテル(b2)の代表的な例として、例えば、1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル、1,3−ブタンジオール−3−エチルエーテル、1,3−ブタンジオール−3−プロピルエーテル、1,3−ブタンジオール−3−ブチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルが特に好ましい。
【0026】
溶剤Aと溶剤Bの好ましい組み合わせとして、α型プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート(1,2−プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート)と1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルとの組み合わせなどのα型プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(1,2−プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート)と1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルとの組み合わせ;1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルアセテートと1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルとの組み合わせなどの1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテートと1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルとの組み合わせ;酢酸ブチルと1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルとの組み合わせなどの酢酸アルキルエステルと1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルとの組み合わせ;1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルアセテートとα型プロピレングリコール−1−メチルエーテル(1,2−プロピレングリコール−1−メチルエーテル)との組み合わせなどの1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテートとα型プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(1,2−プロピレングリコール−1−アルキルエーテル)との組み合わせ;1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルアセテートとβ型プロピレングリコール−1−メチルエーテル(1,3−プロパンジオール−1−メチルエーテル)との組み合わせなどの1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテートとβ型プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(1,3−プロパンジオール−1−アルキルエーテル)との組み合わせなどが挙げられる。
【0027】
溶剤Aと溶剤Bとの混合比率は、混合後の溶液を等容量の水と混合した場合に(例えば、30〜35℃において)均質な溶液を形成しうるような比率であればよく、溶剤の種類に応じて選択する。このように、等量の水と混合した場合に均質な溶液を形成する特性を有する混合溶剤は、レジストや反射防止膜の溶解性、剥離性に極めて優れる。また、水と極めて容易に溶解して均質な溶液を形成するため、水と適宜な割合で混合することにより、取扱性、安全性に優れた洗浄剤、リンス剤(最終仕上げに用いる洗浄剤)として使用できる。
【0028】
溶剤Aとしてプロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)(例えば、α型プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテートなどのα型プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート等)を用いる場合には、該プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)と溶剤B(例えば、1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルなどの1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテル等)との割合は、例えば前者/後者(重量比)=1/99〜75/25、好ましくは前者/後者(重量比)=10/90〜70/30である。
【0029】
溶剤Aとして1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)(例えば、1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルアセテート等)を用いる場合には、該1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)と溶剤Bとの割合は、前者/後者(重量比)=1/99〜55/45の範囲が好ましい。特に、溶剤Bとして、1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテル(例えば、1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル等)又はβ型プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(例えば、β型プロピレングリコール−1−メチルエーテル等)を用いる場合には、1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)と1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテル又はβ型プロピレングリコール−1−アルキルエーテルとの割合は、前者/後者(重量比)=1/99〜50/50がより好ましい。また、溶剤Bとして、α型プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(例えば、α型プロピレングリコール−1−メチルエーテル等)を用いる場合には、1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)とα型プロピレングリコール−1−アルキルエーテルとの割合は、前者/後者(重量比)=1/99〜45/55がより好ましく、1/99〜40/60が特に好ましい。
【0030】
また、溶剤Aとして酢酸アルキルエステル(a3)(例えば、酢酸ブチル等)を用いる場合には、該酢酸アルキルエステル(a3)と溶剤Bとの割合は、例えば前者/後者(重量比)=1/99〜15/85、好ましくは1/99〜10/90である。
【0031】
本発明のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤は、水に対する溶解性を損なわない範囲で、溶剤Aと溶剤B以外の有機溶剤(例えば、従来レジスト或いは反射防止膜などの溶剤或いはリンス液として用いられ且つ水に可溶性の有機溶剤など)を1種又は2種以上含んでいてもよい。本発明のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤における前記溶剤A及び溶剤Bの総含有量は、洗浄剤又はリンス剤を構成する有機溶剤全体に対して、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上(特に90重量%以上)である。本発明のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤の有機溶剤分が実質的に溶剤Aと溶剤Bのみにより構成されていてもよい。
【0032】
上記の溶剤Aと溶剤Bとからなる混合液は、そのままリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤として使用できるが、均一溶液を形成する範囲で水と混合した状態で、リソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤として使用することも可能である。この場合の水の量は、溶剤A及び溶剤Bの種類やその割合によっても異なるが、一般的には、全有機溶剤100重量部に対して0.5〜50重量部(例えば、5〜50重量部)、好ましくは0.5〜40重量部(例えば、5〜40重量部)、さらに好ましくは0.5〜30重量部(例えば、5〜30重量部)である。
【0033】
本発明の洗浄剤及びリンス剤は、公知のポジ型レジスト、ネガ型レジスト、反射防止膜の何れにも適用することができる。本発明の洗浄剤及びリンス剤が適用できるレジストの代表的なものを例示すると、ポジ型では、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるもの、化学増幅型レジスト等が、ネガ型では、例えば、ポリケイ皮酸ビニル等の感光性基を有する高分子化合物を含むもの、芳香族アジド化合物を含有するもの或いは環化ゴムとビスアジド化合物からなるようなアジド化合物を含有するもの、ジアゾ樹脂を含むもの、付加重合性不飽和化合物を含む光重合性組成物、化学増幅型ネガレジスト等が挙げられる。
【0034】
本発明の洗浄剤やリンス剤が適用されるに好ましいレジスト材料として、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるレジスト材料が挙げられる。キノンジアジド系感光剤の例としては、例えば、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミド等が挙げられる。また、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸又はメタクリル酸の共重合体や、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類から製造されるノボラック樹脂等が挙げられる。
【0035】
また、化学増幅型レジストも本発明の洗浄剤及びリンス剤が適用されるに好ましいレジストである。化学増幅型レジストは、放射線照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により放射線照射部分の現像液に対する溶解性を変化させてパターンを形成するもので、例えば、放射線照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0036】
一方、本発明の洗浄剤及びリンス剤が適用される反射防止膜としては、有機材料からなる反射防止膜であれば何れのものでもよい。このような反射防止膜としては、例えば染料を添加したポリアミン酸又はポリブテン酸、染料を添加した共重合体、無水マレイン酸重合体、無水イタコン酸重合体、ポリアクリレート又はポリメタクリレートからなる重合体に染料等をグラフトさせたもの、アミノ芳香族発色団と無水基を有する重合体との反応生成物、水溶性ポリマーと水溶性パーフルオロカルボン酸からなるもの、水溶性高分子を含むテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ溶液、水溶性膜形成成分とフッ素系界面活性剤からなるもの、パーフルオロアルキルカルボン酸、有機アミン、ポリビニルピロリドンからなるもの、パーフルオロアルキルスルホン酸、有機アミン、ポリビニルピロリドン、水溶性アルキルシロキサン重合体からなるものなど、有機溶剤或いは水溶液から形成される膜が挙げられる。
【0037】
なお、本発明の洗浄剤及びリンス剤は、水溶性を有する有機溶剤からなるため、水溶液から形成された膜ともなじみがよく(接触角が小さい)、水溶液から形成された反射防止膜に対しても良好な洗浄及びリンス効果が得られる。
【0038】
本発明の洗浄剤及びリンス剤の適用は、工業調査会編「洗浄技術入門」や、工業調査会編「すぐ使える洗浄技術」などに記載されている方法で行うことができる。
【0039】
本発明の洗浄剤及びリンス剤の適用について、レジストパターンの形成方法とともに、より詳細に説明すると、まず、レジスト溶液はスピンコート法など従来公知の塗布法により、必要に応じて前処理されたシリコン基板、ガラス基板等に塗布される。レジストの塗布に先立ち、或いは塗布形成されたレジスト膜上に、必要に応じて反射防止膜が塗布、形成される。例えば、スピンコート法においては、レジスト或いは反射防止膜のビードが基板縁に形成される傾向があるが、本発明の洗浄剤、リンス剤を回転する縁ビード上にスプレーすることによりビードの流動を促進させ、基板上に実質的に均一な厚みを有するレジスト膜或いは反射防止膜の形成をなすことができる。
【0040】
また、基板側面周辺或いは背面に回り込んだレジスト或いは反射防止膜は、本発明の洗浄剤及びリンス剤のスプレーにより除去することができる。また、例えばポジ型レジストの場合で基板とレジスト膜の間に反射防止膜が存在する場合には、露光、現像によりパターンが形成された後、レジスト膜のない部分の反射防止膜を本発明のリンス剤を用いて湿式除去することもできる。
【0041】
基板に塗布されたレジストは、例えばホットプレート上でプリベークされて溶剤が除去され、厚さが通常1〜2.5μm程度のレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶剤或いはレジストの種類により異なるが、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度の温度で行われる。レジスト膜は、その後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー、軟X線照射装置、電子線描画装置などの公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0042】
露光後、現像性、解像度、パターン形状等を改善するため、必要に応じアフターベーキングを行った後、現像が行われ、レジストパターンが形成される。レジストの現像は、通常、現像液を用い、露光域と未露光域の溶剤或いはアルカリ溶液に対する溶解性の差を利用して行われる。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの水溶液或いは水性溶液が用いられる。
【0043】
また、上記レジスト膜或いは反射防止膜の塗布は塗布装置を用いて行われるが、レジスト膜或いは反射防止膜が基板上に塗布された後、塗布後の装置を別種の材料の塗布装置として再度利用する場合がある。例えば、レジストから反射防止膜、レジストから別種のレジスト、或いは反射防止膜からレジスト等の塗布装置として使用することがある。かかる場合、別種の材料の塗布装置として使用する前に当該塗布装置を洗浄するが、このような場合にも本発明の洗浄剤及びリンス剤を有効に利用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、表中の各略号は以下の有機溶剤を表す。
MMPGAC :α型プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート(1,2−プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート)
MMPG :α型プロピレングリコール−1−メチルエーテル(1,2−プロピレングリコール−1−メチルエーテル)
MBA :1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテルアセテート
MB :1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル
BA :酢酸ブチル
1,3−PDME :β型プロピレングリコール−1−メチルエーテル(1,3−プロパンジオール−1−メチルエーテル)
【0045】
実施例1〜5、比較例1〜5
各実施例及び比較例について、表1に示す2種の有機溶剤を所定の比率で混合し、均一の混合溶媒とした。この混合溶媒の容量を測定し、同容量の水を添加し、表1に記載の温度において、分液の有無を調べた。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例6〜10、比較例6
各実施例及び比較例について、表2に示す2種の有機溶剤を所定の比率で混合して洗浄剤を調製した。この洗浄剤をサンプリングしてその容量を測定し、同容量の水を添加し、表2に記載の温度において、分液の有無を調べた。その結果を表2に示す。
次に、ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=6/4とホルムアルデヒドの縮重合物)100重量部と、キノンジアジド感光剤(2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロライドのエステル化物)24重量部とを固形分が25重量%になるようにα型プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解してなるレジストを、4インチシリコン基板に、プリベーク後の膜厚が2μmになるようスピンコートし、ダイレクトホットプレートにて、100℃、90秒でプリベークして、レジスト膜を形成した。このレジスト膜上に、表2に示す組成の洗浄剤0.03mlを滴下し、滴下してから下地のシリコンが見えるまでの時間(sec)を測定し、レジスト膜厚(オングストローム)を時間(sec)で割った値(オングストローム/sec)を溶解速度とした。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
実施例11〜15、比較例7
各実施例及び比較例について、表3に示す2種の有機溶剤及び水を所定の比率で混合してリンス剤を調製した。このリンス剤を用いて、実施例6〜10と同様にして、レジスト膜の溶解速度(オングストローム/sec)を測定した。結果を表3に示す。
なお、各実施例及び比較例にいて、2種の有機溶剤のみ(水を含まない)を混合して得た混合溶媒を調製し、この混合溶媒と同容量の水を添加し、30〜35℃の温度で、分液の有無を調べたところ、実施例11〜15に係る2種の有機溶剤の混合溶媒は分液しなかったが、比較例7に係る2種の有機溶媒の混合溶媒は分液した。
【0050】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の洗浄剤及びリンス剤は、レジスト膜、反射防止膜等の溶解性が高く、実用性に優れる。また、製造現場、工場で安全且つ簡単に取り扱うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート、(a2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート及び(a3)酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Aと、(b1)プロピレングリコール−1−アルキルエーテル及び(b2)1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶剤Bとからなり、等容量の水と混合した場合に均質な溶液を形成しうるリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。
【請求項2】
プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)と溶剤Bとを、前者/後者(重量比)=1/99〜75/25の割合で含む請求項1記載のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。
【請求項3】
1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)と溶剤Bとを、前者/後者(重量比)=1/99〜55/45の割合で含む請求項1記載のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。
【請求項4】
酢酸アルキルエステル(a3)と溶剤Bとを、前者/後者(重量比)=1/99〜15/85の割合で含む請求項1記載のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。
【請求項5】
プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)が1,2−プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテートである請求項1記載のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。
【請求項6】
プロピレングリコール−1−アルキルエーテルアセテート(a1)、1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテルアセテート(a2)、プロピレングリコール−1−アルキルエーテル(b1)又は1,3−ブタンジオール−3−アルキルエーテル(b2)におけるアルキル基がメチル基である請求項1記載のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。
【請求項7】
酢酸アルキルエステル(a3)が酢酸ブチルである請求項1記載のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。
【請求項8】
溶剤A及び溶剤Bに加えて、さらに水を含有する請求項1〜7の何れかの項に記載のリソグラフィー用洗浄剤又はリンス剤。

【公開番号】特開2007−72332(P2007−72332A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261580(P2005−261580)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】