説明

リソグラフィ装置及びデバイス製造方法

【課題】液浸リソグラフィ投影システムの光学性能を効果的に制御可能にする。
【解決手段】投影システムの最終エレメントと基板の間に充填された液浸液から形成された、調整装置によって調整することができる光学特性を有するレンズを備えた液浸リソグラフィ装置である。調整装置は、液体レンズの特性、たとえば形状、組成、屈折率或いは吸収率などを空間若しくは時間の関数として調整するべく構成されており、それにより液浸リソグラフィ装置の画像化性能を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
−投影放射ビームを供給するための放射システムと、
−投影ビームを所望のパターンに従ってパターン化するべく機能するパターン化手段を支持するための支持構造と、
−基板を保持するための基板テーブルと、
−パターン化されたビームを基板の目標部分に投射するための投影システムと
を備えたリソグラフィ投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に使用する「パターン化手段」という用語は、入射する放射ビームに、基板の目標部分に生成すべきパターンに対応するパターン化された断面を与えるために使用することができる手段を意味するものとして広義に解釈されたい。また、この文脈においては、「光バルブ」という用語を使用することも可能である。一般的には、パターンは、目標部分に生成されるデバイス、たとえば集積回路若しくは他のデバイス(以下を参照されたい)中の特定の機能層に対応している。このようなパターン化手段の実施例としては、以下のものが挙げられる。
−マスク
マスクの概念についてはリソグラフィにおいては良く知られており、バイナリ、交番移相及び減衰移相などのマスク・タイプ、及び様々なハイブリッド・マスク・タイプが知られている。このようなマスクを放射ビーム中に配置することにより、マスクに衝突する放射をマスク上のパターンに従って選択的に透過させ(透過型マスクの場合)、或いは選択的に反射させている(反射型マスクの場合)。マスクの場合、支持構造は、通常、入射する放射ビーム中の所望の位置に確実にマスクを保持することができ、且つ、必要に応じてマスクをビームに対して確実に移動させることができるマスク・テーブルである。
−プログラム可能ミラー・アレイ
粘弾性制御層及び反射型表面を有するマトリックス処理可能表面は、このようなデバイスの例の1つである。このような装置の基礎をなしている基本原理は、(たとえば)反射型表面の処理領域が入射光を回折光として反射し、一方、未処理領域が入射光を非回折光として反射することである。適切なフィルタを使用することにより、非回折光を反射ビームからフィルタ除去し、回折光のみを残すことができるため、この方法により、マトリックス処理可能表面の処理パターンに従ってビームがパターン化される。プログラム可能ミラー・アレイの代替実施例には、マトリックス配列された微小ミラーが使用されている。微小ミラーの各々は、適切な局部電界を印加することによって、或いは圧電駆動手段を使用することによって、1つの軸の周りに個々に傾斜させることができる。この場合も、微小ミラーは、入射する放射ビームを反射する方向が、処理済みミラーと未処理ミラーとでそれぞれ異なるようにマトリックス処理することが可能であり、この方法により、マトリックス処理可能ミラーの処理パターンに従って反射ビームがパターン化される。必要なマトリックス処理は、適切な電子手段を使用して実行される。上で説明したいずれの状況においても、パターン化手段は、1つ又は複数のプログラム可能ミラー・アレイを備えている。上で参照したミラー・アレイに関する詳細な情報については、たとえば、いずれも参照により本明細書に援用する米国特許US5,296,891号及びUS5,523,193号、並びにPCT特許出願WO98/38597号及びWO98/33096号を参照されたい。プログラム可能ミラー・アレイの場合、支持構造は、たとえば、必要に応じて固定或いは移動させることができるフレーム若しくはテーブルとして具体化されている。
−プログラム可能LCDアレイ
参照により本明細書に援用する米国特許US5,229,872号に、このような構造の例が記載されている。この場合の支持構造も、プログラム可能ミラー・アレイの場合と同様、たとえば、必要に応じて固定或いは移動させることができるフレーム若しくはテーブルとして具体化されている。
分かり易くするために、本明細書の以下の特定の部分、とりわけ例の部分にはマスク及びマスク・テーブルが包含されているが、このような例の中で考察されている一般原理は、上で説明したパターン化手段のより広義の文脈の中で理解されたい。
【0003】
リソグラフィ投影装置は、たとえば集積回路(IC)の製造に使用することができる。このような場合、パターン化手段によってICの個々の層に対応する回路パターンが生成され、このパターンが、放射線感応材料(レジスト)の層で被覆された基板(シリコン・ウェハ)上の目標部分(たとえば1つ又は複数のダイからなる)に画像化される。通常、1枚のウェハには、投影システムを介して順次照射される目標部分に隣接する回路網全体が含まれている。現在、マスク・テーブル上のマスクによるパターン化を使用した装置には2つの異なるタイプの装置がある。第1の種類のリソグラフィ投影装置では、マスク・パターン全体を1回の照射で目標部分に露光することによって目標部分の各々が照射される。このような装置は、一般にウェハ・ステッパと呼ばれている。一般にステップ・アンド・スキャン装置と呼ばれている代替装置では、マスク・パターンを投影ビームの下で所与の基準方向(「走査」方向)に連続的に走査し、且つ、基板テーブルを基準方向に平行に、或いは非平行に同期走査することによって目標部分の各々が照射される。通常、投影システムは、倍率係数M(通常<1)を有しているため、基板テーブルを走査する速度Vは、マスク・テーブルを走査する速度を係数M倍した速度になる。上で説明したリソグラフィ装置に関する詳細な情報については、たとえば、参照により本明細書に援用するUS6,046,792号を参照されたい。
【0004】
リソグラフィ投影装置を使用した製造プロセスでは、パターン(たとえばマスクのパターン)が、少なくとも一部が放射線感応材料(レジスト)の層で被覆された基板上に画像化される。この画像化段階に先立って、プライミング、レジスト・コーティング及びソフト・ベークなどの様々な処理手順が基板に加えられる。放射線への露光後、露光後ベーク(PEB)、現像、ハード・ベーク及び画像化されたフィーチャの測定/検査などの他の処理手順が基板に加えられる。この一連の処理手順は、たとえばICなどのデバイスの個々の層をパターン化するための基本として使用されている。次に、パターン化されたこのような層に、エッチング、イオン注入(ドーピング)、メタライゼーション、酸化、化学機械研磨等、様々な処理が施される。これらの処理はすべて個々の層の仕上げを意図したものである。複数の層を必要とする場合、すべての処理手順又はそれらの変形手順を新しい層の各々に対して繰り返さなければならないが、最終的にはデバイスのアレイが基板(ウェハ)上に出現する。これらのデバイスは、次に、ダイシング又はソーイングなどの技法を使用して互いに分離され、分離された個々のデバイスがキャリアに実装され、或いはピンに接続される。このようなプロセスに関する詳細な情報については、たとえば、参照により本明細書に援用する書籍「Microchip Fabrication:A Practical Guide to Semiconductor Processing」(Peter van Zant著、第3版、McGraw Hill Publishing Co.、1997年、ISBN 0−07−067250−4)を参照されたい。
【0005】
分かり易くするために、以下、投影システムを「レンズ」と呼ぶが、この用語には、たとえば、屈折光学系、反射光学系及びカタディオプトリック系を始めとする様々なタイプの投影システムが包含されているものとして広義に解釈されたい。また、放射システムには、投影放射ビームを導き、整形し、或いは制御するための任意の設計タイプに従って動作するコンポーネントが含まれており、以下、このようなコンポーネントについても、集合的若しくは個々に「レンズ」と呼ぶ。また、リソグラフィ装置は、場合によっては複数の基板テーブル(及び/又は複数のマスク・テーブル)を有しており、このような「多重ステージ」デバイスの場合、追加テーブルが並列に使用されているか、或いは1つ又は複数の他のテーブルが露光のために使用されている間、1つ又は複数のテーブルに対して予備ステップが実行されている。たとえば、参照により本明細書に援用するUS5,969,441号及びWO98/40791号に、二重ステージ・リソグラフィ装置が記載されている。
【0006】
投影システムの最終エレメントと基板の間の空間を充填するべく、比較的屈折率の大きい液体中、たとえば水中に、リソグラフィ投影装置内の基板を浸す方法が提案されている。この方法のポイントは、液体中では露光放射線の波長がより短くなるため、より小さいフィーチャを画像化することができることである。(また、液体の効果は、システムの有効NAが大きくなり、且つ、焦点深度が長くなることにあると見なすことができる。)
【0007】
しかしながら、基板又は基板と基板テーブルを液体槽に浸す(たとえば、参照によりその全体を本明細書に援用するUS4,509,852号を参照されたい)ことは、走査露光の間、加速しなければならない大量の液体が存在していることを意味しており、そのためにはモータを追加するか、或いはより強力なモータが必要であり、また、液体の攪乱により、望ましくない予測不可能な影響がもたらされることになる。
【0008】
提案されている解決法の1つは、液体供給システムの場合、基板の局部領域上のみ、及び投影システムの最終エレメントと基板の間に液体を提供することである(基板の表面積は、通常、投影システムの最終エレメントの表面積より広くなっている)。参照によりその全体を本明細書に援用するWO99/49504号に、そのために提案されている方法の1つが開示されている。図2及び3に示すように、液体は、好ましくは基板が最終エレメントに対して移動する方向に沿って、少なくとも1つの入口INによって基板に供給され、投影システムの下を通過した後、少なくとも1つの出口OUTによって除去される。つまり、基板が最終エレメントの下を−X方向に走査される際に、最終エレメントの+X側で液体が供給され、−X側で除去される。図2は、入口INを介して液体が供給され、最終エレメントのもう一方の側で、低圧源に接続された出口OUTによって除去される構造を略図で示したものである。図2に示す図解では、液体は、必ずしもそれには限定されないが、基板が最終エレメントに対して移動する方向に沿って供給されている。最終エレメントの周りには、様々な配向及び数の入口及び出口を配置することが可能であり、図3はその例の1つを示したもので、両側に出口を備えた4組の入口が、最終エレメントの周りに一定のパターンで提供されている。
【0009】
提案されているもう1つの解決法は、投影システムの最終エレメントと基板テーブルの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って展開したシール部材を備えた液体供給システムを提供することである。シール部材は、Z方向(光軸の方向)における若干の相対移動が存在する可能性があるが、投影システムに対して実質的にXY平面内に静止している。シール部材と基板の表面の間にシールが形成される。このシールは、ガス・シールなどの非接触シールであることが好ましい(たとえば、参照によりその全体を本明細書に援用するEP03252955号を参照されたい)。
【0010】
システムの分解能の向上に伴い、レンズの収差及び焦点の制御がますます困難になり、且つ、高価になっている。液体の光学特性は複雑であり、また、いずれも時間及び位置によって変化するわずかな温度変化及び汚染物質濃度の変化に敏感であるため、液浸液の導入によってタスクがより困難になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、液浸リソグラフィ投影システムの光学性能をより効果的に制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的及び他の目的は、本発明による、冒頭の段落で明記したリソグラフィ装置によって達成される。このリソグラフィ装置は、液体から形成された、調整可能な光学特性を有するレンズと、光学特性を調整するための調整装置とを備えたことを特徴としている。
【0013】
画像化放射は、基板の手前で遭遇する液体ポケットの影響を受けることがある。これらのポケットの光学特性を調整し、液体レンズとして使用するための調整装置を提供することにより、リソグラフィ装置の画像化性能に対する柔軟で、且つ、動的な制御を達成することができる。レンズの液体性質により、従来の固体レンズでは不可能なモードに調整することができる。
【0014】
本発明は、液浸リソグラフィ投影装置及び非液浸リソグラフィ投影装置の両方に適用することができる。実施例が液浸システムに関連している場合、その実施例は、投影システムの最終エレメントと基板の間の空間の少なくとも一部に液体を充填するための液体供給システムをさらに備えることができ、該空間中の液体によって液体レンズが形成される。大量の液体を新たに導入する必要がなくなるため、液浸液を液体レンズとして使用することは、とりわけ有利である。また、液浸液の光学特性を自由に制御することができるため、投影システムによる広範囲に渡る液浸液の調整が不要である。一例示的実施例のように、液体レンズを使用して投影システムに特有の問題を補償することができる。この手法には、さもなければ投影システムの調整に必要になるであろう内部レンズ・マニピュレータ(たとえばZマニピュレータ、ALEマニピュレータ)などの複雑で、且つ、費用のかかる機構の必要性が軽減される利点がある。このようなレンズ・マニピュレータを尚且つ必要とする場合においても、本発明により、レンズ・マニピュレータに要求される動作範囲が狭くなる。また、液体レンズにより、画像/レンズ色修正のためのCaF2の代替が提供される。
【0015】
調整装置は、液体レンズの光学特性の空間依存性を制御し、一様なオフセットまたは空間的に変化する光学特性プロファイルを生成するべく構成することができる。アナモルフィック光学特性プロファイル(すなわち直交する2つの方向に沿って光学特性が異なるプロファイル)を生成することによってアナモルフィック画像化効果(たとえば非点収差オフセット、非対称レンズ倍率)を補償することができる。この構成を使用してレンズ加熱誘導効果を補償することができる。
【0016】
また、調整装置は、液体レンズの時変光学特性を提供し、且つ、制御するべく構成することができる。たとえば、投影システムに対する基板の走査運動と整合した時間で温度プロファイルを変化させることにより、横方向の屈折率変化を誘導することができ、この屈折率の変化を使用して画像の傾斜/湾曲及び歪曲収差効果を補償することができる。
【0017】
調整装置は、温度プロファイルを制御するための液体温度コンコトーラを備えることができ、それにより液体レンズを形成している液体の屈折率プロファイル及び吸収率プロファイルを特性に含めることができる。屈折率プロファイルは、レンズを通過する放射の光路に影響を及ぼすため、この屈折率プロファイルを使用して、画像の幾何学的機構、たとえば焦点及び収差などを制御することができる。温度によって柔軟性に富んだ制御手段が提供される。また、温度プロファイルを制御することによって粘性に影響を及ぼし、また、対流を発生させることができるため、それにより液体の動特性に影響を及ぼすことができる。
【0018】
温度コントローラは、液体レンズを形成している液体中に均一若しくは不均一温度プロファイルを確立することができる1つ又は複数の熱交換器を備えることができる。熱交換器の各々は、液浸液を加熱若しくは冷却するべく作用する。
【0019】
これに代えて、温度コントローラは、基板に平行の平面内に位置している軸に対して異なる高さ、半径及び/又は角度で配置された、独立した複数の熱交換器を備えることができる。
【0020】
熱交換器は、液体を交換することなく液体レンズを加熱若しくは冷却するべく構成することができる。したがって構成される熱交換器は、液体中に浸され、且つ、それぞれ加熱若しくは冷却の必要性に応じて液体の温度より高い温度若しくは低い温度に維持されたエレメントを備えることができる。
【0021】
別法としては、液体レンズを加熱若しくは冷却し、且つ、温度調節済みの液体と交換するべく熱交換器を構成することも可能である。液体と液体レンズとを交換しない熱交換器は、熱の移送に熱伝導及び対流を利用しているため、遅延及び予測不能性をもたらすことがある。温度制御された液体の流れを生成する熱交換器を設計することにより、より迅速に、且つ、より正確に温度プロファイルを調整することができる。一例示的実施例のように、熱交換器を複数の対で配置し、各々の対の第1のエレメントを使用して温度調節済みの液体を加え、第2のエレメントを使用して液体を除去することも可能である。また、熱交換器の対の各々を基板の平面に平行の平面に整列して配置することにより、より有効な熱伝達を達成することができる。さらに、一様に制御された液体の流れを基板に平行に提供することによって対流、攪乱等が減少し、より予測可能で、且つ、均一な光学特性を得ることができる。
【0022】
熱交換器は、温度調節済みの液体の交換を実施するべく液体供給システムに結合することができる。この構造は、制御された液浸液の流れを供給するべく予め液体供給システムを構成することができるため、製造の観点からすると費用有効性が高い。
【0023】
調整装置は、圧力を制御するための液体圧力コントローラを備えることができ、それにより前記液体レンズを形成している液体の屈折率及び吸収率を特性に含めることができる。高い安定性及び予測可能性を得るには圧力を使用することが有利である。
【0024】
また、調整装置は、液体レンズの形状を制御するための液体幾何学コントローラを備えることができる。この液体幾何学コントローラは、液体圧力コントローラと組み合わせて動作させることができ、それにより液体レンズの画像化特性を変化させることができる。この方法でレンズの形状を変化させることによって柔軟な調整が得られ、且つ、高度に安定した液体レンズ環境が提供される。
【0025】
液体幾何学コントローラは、液体レンズの厚さを投影システムの最終エレメントの軸に平行の方向に制御することができる。この方法でレンズの相対厚さを分厚くすることにより、たとえば球面収差を制御することができる。このモードには、一般的には限られた範囲でしか調整することができない球面収差オフセットを補償するための追加手段を提供する利点がある。たとえば、Zマニピュレータは、結局は他の収差に対するクロス・トークの原因になっている。
【0026】
また、調整装置は、組成を制御するための液体組成コントローラを備えることができ、それにより液体レンズを形成している液体の屈折率及び吸収率を特性に含めることができる。
【0027】
この液体組成コントローラは、液体に不純物イオンを添加し、或いは液体から不純物イオンを除去するための1つ又は複数の粒子交換器を備えることができる。液体組成コントローラは、純度調節済みの液体の流入を提供するための液体供給システムに結合することができる。
【0028】
液体組成コントローラは、液体レンズを形成している第1の液体と、組成が異なる第2の液体とを完全に交換するべく構成することができる。水、エタノール、アセトン及びベンゾアートは、第1の液体若しくは第2の液体のいずれかに使用することができる物質の例である。液体レンズを形成している液体を完全に新しくすることにより、画像操作の制御が向上し、且つ、画像操作範囲が広くなる。
【0029】
リソグラフィ投影装置は、さらに、温度、圧力、境界幾何学、組成、屈折率及び吸収率のうちの任意の1つを含むレンズの特性を、位置若しくは時間の関数として測定するための液体センサ・システムを備えることができる。また、リソグラフィ投影装置は、リソグラフィ投影装置の焦点を、液体レンズを形成している液体の該液体センサ・システムを使用して測定した屈折率プロファイルの関数として修正するための装置を備えることができる。焦点の変化は、液体の屈折率の変化に大きく依存している。この装置は、物理的に最も関連する特性に的を絞ることによって焦点制御の効率を改善している。
【0030】
これに代えて、リソグラフィ投影装置は、リソグラフィ投影装置の露光量を、液体レンズを形成している液体の上記液体センサ・システムを使用して測定した吸収率プロファイルの関数として修正するための装置を備えることができる。基板に到達する放射強度の変化は、液体の吸収率の変化に大きく依存している。この装置は、物理的に最も関連する特性に的を絞ることによって露光量制御の効率を改善している。投影システムの光学特性を調整し、それにより液体の特性のインサイチュー測定を参照することなく液浸液を補償するための手法には、大きなパラメータ空間の探求が必要であり、したがって時間がかかり、且つ、経費が必要である。通常、液浸液は、独自に光学性能に影響するシステムの流れ及び対流による動的特性を始めとする様々な物理特性を有している。本発明のこの実施例によれば、液浸液から形成される液体レンズに適用される場合、液体特性のインサイチュー測定と、個々の特性が投影システムの光学性能の特定のアスペクトに如何に影響するかの知識を組み合わせることにより、投影システムをより有効に調整することができる。
【0031】
調整装置は、球面収差及び/又は像面湾曲を含む光学効果を生成するべく構成することができる。この機能を使用して、投影システムによって生じる球面収差及び像面湾曲を補償することができるため、内部レンズ・マニピュレータ或いは他の調整装置を追加する必要はない。
【0032】
また、調整装置は、測定した特性に基づいて、投影システム及び/又は液体の光学特性の修正に必要なサイズを計算するためのコンピュータ・コントローラを備えることができる。この手法により、屈折率プロファイル及び/又は吸収率プロファイルの調整に対する投影システムの応答を決定するための広範囲に渡る実験試験の必要が排除される。コンピュータ・コントローラは、このような応答の予測値を、関連する物理方程式の正確な解若しくは数値解法を提供する投影システム及び液浸液のコンピュータ・モデルを介して入手することができる(このモデルは、簡略化することも或いは複雑にすることも可能である)。
【0033】
本発明の他の態様によれば、
−少なくとも一部が放射線感応材料の層で覆われた基板を提供する段階と、
−放射システムを使用して投影放射ビームを提供する段階と、
−投影ビームの断面をパターン化するべくパターン化手段を使用する段階と、
−パターン化された放射ビームを放射線感応材料の層の目標部分に投射する段階とを含むデバイス製造方法であって、液体から形成されたレンズを提供する段階と、レンズの光学特性を調整するべく調整装置を使用する段階とを特徴とするデバイス製造方法が提供される。
【0034】
本明細書においては、本発明による装置の、とりわけICの製造における使用に言及しているが、本発明による装置は、他の多くの可能アプリケーションを有していることを明確に理解されたい。たとえば、本発明による装置は、集積光学系、磁気領域メモリのための誘導及び検出パターン、液晶表示パネル、薄膜磁気ヘッド等の製造に使用することができる。このような代替適用例の文脈においては、本明細書における「レチクル」、「ウェハ」或いは「ダイ」という用語の使用はすべて、それぞれより一般的な「マスク」、「基板」及び「目標部分」という用語に置換されているものと見なすべきであることは、当分野の技術者には理解されよう。
【0035】
本明細書においては、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外放射(たとえば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nmの放射)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含するべく使用されている。
【0036】
以下、本発明の実施例について、単なる実施例に過ぎないが、添付の略図を参照して説明する。
【0037】
図において、対応する参照記号は、対応する部品を表している。
【実施例】
【0038】
「実施例1」
図1は、本発明の特定の実施例によるリソグラフィ投影装置を略図で示したものである。この装置は、
−投影放射ビームPB(たとえばDUV放射)を供給するための放射システムEx、IL(この特定の実施例の場合、放射システムは放射源LAをさらに備えている)と、
−マスクMA(たとえばレチクル)を保持するためのマスク・ホルダを備えた、アイテムPLに対してマスクを正確に位置決めするための第1の位置決め手段に接続された第1の対物テーブル(マスク・テーブル)MTと、
−基板W(たとえばレジスト被覆シリコン・ウェハ)を保持するための基板ホルダを備えた、アイテムPLに対して基板を正確に位置決めするための第2の位置決め手段に接続された第2の対物テーブル(基板テーブル)WTと、
−マスクMAの照射部分を基板Wの目標部分C(たとえば1つ又は複数のダイからなる)に結像させるための投影システム(「レンズ」)PL(たとえば屈折系)とを備えている。図に示すように、この装置は透過型(たとえば透過型マスクを有する)の装置であるが、一般的にはたとえば反射型(たとえば反射型マスクを備えた)の装置であっても良い。別法としては、この装置は、たとえば上で参照したタイプのプログラム可能ミラー・アレイなどの他の種類のパターン化手段を使用することもできる。
【0039】
放射源LA(たとえばエキシマ・レーザ)は放射ビームを生成している。この放射ビームは、照明システム(イルミネータ)ILに直接供給され、或いは、たとえばビーム拡大器Exなどの調整手段を介して供給される。イルミネータILは、ビーム内の強度分布の外部及び/又は内部ラジアル・エクステント(一般に、それぞれσ−外部及びσ−内部と呼ばれている)を設定するための調整手段AMを備えている。また、イルミネータILは、通常、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の様々なコンポーネントを備えている。この方法により、マスクMAに衝突するビームPBの断面に、所望する一様な強度分布を持たせることができる。
【0040】
図1に関して、放射源LAをリソグラフィ投影装置のハウジング内に配置し(放射源LAがたとえば水銀灯の場合にしばしば見られるように)、且つ、リソグラフィ投影装置から離して配置することにより、放射源LAが生成する放射ビームをリソグラフィ投影装置に供給する(たとえば適切な誘導ミラーを使用することによって)ことができることに留意されたい。この後者のシナリオは、放射源LAがエキシマ・レーザの場合にしばしば見られるシナリオである。本発明及び特許請求の範囲には、これらのシナリオの両方が包含されている。
【0041】
次に、ビームPBが、マスク・テーブルMT上に保持されているマスクMAによって遮断される。マスクMAを通過したビームPBは、ビームPBを基板Wの目標部分Cに集束させるレンズPLを通過する。第2の位置決め手段(及び干渉測定手段IF)を使用することにより、たとえば異なる目標部分CをビームPBの光路中に配置するべく、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1の位置決め手段を使用して、たとえばマスク・ライブラリからマスクMAを機械的に検索した後、或いは走査中に、マスクMAをビームPBの光路に対して正確に配置することができる。通常、対物テーブルMT及びWTの移動は、図1には明確に示されていないが、長ストローク・モジュール(粗位置決め)及び短ストローク・モジュール(精密位置決め)を使用して実現されているが、ウェハ・ステッパ(ステップ・アンド・スキャン装置ではなく)の場合、マスク・テーブルMTは、短ストローク・アクチュエータに接続するだけで良く、或いは固定することも可能である。
【0042】
図に示す装置は、2つの異なるモードで使用することができる。
1.ステップ・モードでは、マスク・テーブルMTは、基本的に静止状態に維持され、マスク画像全体が目標部分Cに1回の照射(すなわち単一「フラッシュ」で)投影される。次に、基板テーブルWTがx及び/又はy方向にシフトされ、異なる目標部分CがビームPBによって照射される。
2.走査モードでは、所与の目標部分Cが単一「フラッシュ」に露光されない点を除き、ステップ・モードと基本的に同じシナリオが適用される。代わりに、マスク・テーブルMTを所与の方向(いわゆる「走査方向」、たとえばy方向)に速度νで移動させることができるため、投影ビームPBでマスク画像を走査し、且つ、基板テーブルWTを同時に同じ方向又は逆方向に、速度V=Mνで移動させることができる。MはレンズPLの倍率である(通常、M=1/4若しくはM=1/5)。この方法によれば、解像度を犠牲にすることなく、比較的大きい目標部分Cを露光することができる。
【0043】
図2及び3は、上で説明した、本発明の一実施例による液体供給システムを示したものである。本発明の実施例によれば、上で説明した液体槽及びシール部材を始めとする他の液体供給システムを何ら制限されることなく使用することができる。
【0044】
図4から10は、本発明の実施例による液体レンズを示したもので、液浸液が液体レンズを形成している。液体供給システムは、投影レンズPLと基板Wの間の画像視野貯蔵容器12に液体を供給している。この液体は、屈折率が実質的に1より大きくなるように選択されることが好ましく、これは、液体中における投影ビームの波長が空気中若しくは真空中より短いことを意味しており、より小さいフィーチャを解像することができる。投影システムの解像度は、とりわけ投影ビームの波長及びシステムの開口数によって決定されることは良く知られている。また、液体の存在によって有効開口数が大きくなると見なすことができる。
【0045】
貯蔵容器12の少なくとも一部は、投影レンズPLの最終エレメントの下方に、該最終エレメントを取り囲んで配置されたシール部材13によって拘束されている。シール部材13は、投影レンズPLの最終エレメントの若干上まで展開し、液体のレベルは、投影レンズPLの最終エレメントの底端より上に上昇している。シール部材13は、上端が投影システム若しくは投影システムの最終エレメントの段差に緊密に整合した、たとえば円形の内部周囲を有している。内部周囲の底部は画像視野の形状に緊密に一致しており、たとえば長方形であるが、この形状は任意の形状にすることができる。
【0046】
シール部材13と基板Wの間の液体は、シール部材13と基板Wの間の間隙に加圧状態で提供されたガスによって形成されたガス・シールなどの非接触シール14によって貯蔵容器に拘束されている。この液体は、循環するように、或いは停滞を維持するように配置することができる。
【0047】
図4は、本発明による、調整装置が温度プロファイル・コントローラ24を備えた実施例を示したものである。液体の温度プロファイルは、屈折率プロファイルに対する優勢な影響力を有しているが、局部的な加熱/冷却も吸収率及び粘性などの特性に影響することがある。温度プロファイル・コントローラ24は、液体を加熱若しくは冷却することができる熱交換器(22、23)のアレイを備えることができる。熱交換器は、接触手段(局部的に作用する)のみによって動作させることができ、或いは温度調節済みの液体の流れを供給するべく作用させることができる。図4に示す実施例では、熱交換器(22、23)のアレイは、対の形で配置された入口22及び出口23を介して温度調節済みの液体を提供している。液体は、閉回路26内を温度プロファイル・コントローラ24から熱交換器入口22を通って貯蔵容器12に入り、熱交換器出口23を介して閉回路26に戻るよう循環させることができる。この実施例の場合、軸方向(つまり、投影システムPLの最終エレメントの軸に平行の方向)の温度勾配をサポートする、対流が減少した水平方向の温度調節済み液体の流れが得られる。図に示す構造は、このような軸方向の温度勾配を維持するための適切な構造であるが、異なる半径で配置された熱交換器を同様に配置することによって、半径方向(投影システムの最終エレメントの軸の延長線から)の温度勾配を生成若しくは制御することができ、また、入口及び出口を異なる方位角(つまり、基板Wに平行な平面内の固定方向に対する角度)で配置することにより、より複雑な流れを取り扱うことができる。また、時変温度プロファイルを提供することも可能であり、これは、走査運動と協同して実施することができ、また、付随する画像傾斜/湾曲及び歪曲収差効果と共に横方向の屈折率を誘導することができる。
【0048】
入口22及び出口23は、図3に示すように液体供給システムに結合することができる。この実施例では4つのグループのダクトが配置されており、それぞれ隣接するダクトから90°の角度を隔てている。しかしながら、液浸液の光学特性の調整を目的として、任意の数のダクトを様々な温度、圧力、高さ及び角度位置で使用することができる。
【0049】
図5は、調整装置が液体組成コントローラ30を備えた代替実施例を示したものである。液体組成コントローラ30は、屈折率プロファイル若しくは吸収率などの特性に影響を及ぼすべく、液浸液に不純物イオンを添加し、或いは液浸液から不純物イオンを除去することができる。図に示す実施例には単一の粒子交換器28が示されているが、必要に応じて複数の粒子交換器28を貯蔵容器12の周りに配置し、不純物濃度勾配を生成することも可能である。別法としては、貯蔵容器12の境界の特定の領域、たとえば基板Wの近傍などから主として生じる不純物を制御するべく粒子交換器28を構成することも可能である。この場合も、温度プロファイル・コントローラ24の場合と同様、液体組成コントローラ30は、図3に示すように液体供給システムに結合することができる。
【0050】
代替として、組成が全く異なる液体を添加することができる。第2の液体は、既に液体レンズを形成している液体と混合するか、或いは元の液体と完全に交換するべく配置することができる。使用可能な液体の例としては、水、エタノール、アセトン及びベンゾアートを挙げることができる。
【0051】
いずれの場合においても、投影装置の抽象コンピュータ・モデルを介して当該物理パラメータに必要な変更を計算するコンピュータ20によって調整装置の動作を制御することができる。
【0052】
調整装置を使用して、液体レンズに球面収差及び像面湾曲効果を生成することができる。数ppm(パート/ミリオン)と数百ppmの間の屈折率変化を使用してこのような効果を生成することができる。22℃の水の場合、温度によって屈折率が変化する割合dn/dTは100ppm/Kであり、したがって屈折率を50ppmの段差で変化させるためには、0.5Kの温度段差が必要である。典型的なレンズ設計(開口数が異なるシステム間で変化を期待することができる)の場合、この温度段差によって10〜20nm焦点段差及び約1nmZ9球面収差が得られる。通常、汚染の影響によって、1ppmの不純物濃度の変化に対して約1ppmの屈折率変化がもたらされる。水中にアセトンが含まれている場合、この効果はより強力であり、アセトンを1ppm添加することによって屈折率が10ppm変化する。
【0053】
図6は、本発明の一実施例による、液体の屈折率プロファイルを測定するための測定装置2を備えた投影装置を示したものである。測定装置2に接続された屈折率センサ16が液体貯蔵容器12の側面の周りに配置されている。軸方向の屈折率変化を必要とする場合、このような構造が有利である。半径方向の変化は、センサ16を異なる半径で配置することによって正確に測定することができる。レンズを通して測定するセンサをこの目的に使用することができる。
【0054】
図7は、屈折率センサ16の構造を略図で示したものである。試験入口1を介して貯蔵容器12から微量の液体が抽出され、試験室3に充填される。光源5からの十分に平行な光は、屈折率が分かっている制御媒体7を固定角度で、制御媒体貯蔵容器9と試験室3の間の界面に向かって通過するように配置されている。光源5には、たとえば低出力レーザを使用することができる。光は、制御媒体7及び液浸液を通過し、位置感応光センサによって検出される(ビーム経路15の例を参照されたい)。法線に対する角度が計算され、スネルの法則を使用して屈折率が引き出される。
【0055】
図8は、本発明の一実施例による、液体の吸収率プロファイルを測定するための測定装置4を備えた投影装置を示したものである。液体貯蔵容器12の側面の周りに複数の吸収率センサ18が対をなして配置され、各センサ対の一方のエレメントがトランスミッタとして作用し、もう一方のエレメントがレシーバとして作用している。吸収率センサは、互いに水平になるように配置されている(基板の平面に平行の平面内に)。貯蔵容器12を横切る伝搬による光の減衰を測定することによって吸収率が誘導される。軸方向の吸収率プロファイルの変化を測定し、且つ、平均総合吸収率を確立するには、図に示す構造が適している。センサ18は、吸収率のあらゆる半径方向依存性を測定するべく、異なる半径で配置することができ、且つ/又はレンズを通して測定するべく配置することができる。
【0056】
また、個々のセンサによる吸収率の測定も可能であり、それにより、より局部的な吸収率を測定することができる。図9は、このようなセンサ32の構造を示したものである。この構造の場合、貯蔵容器12から微量の液浸液が吸収率試験室34に移される。トランスミッタ36とレシーバ38の間の信号減衰をモニタすることによって吸収率が誘導される。
【0057】
測定装置2は、圧力、温度、境界幾何学及び組成などの一次特性を測定するためのセンサ・システムを備えることも可能である。これらの特性の較正は、リソグラフィ装置の一部を形成しているセンサ(たとえば焦点センサ、収差センサ及び線量センサ)を参照することによって実行することができる。焦点センサ、収差センサ及び線量センサは、ウェット・ウェハ・ステージに統合することも可能であるが、有効な情報を生成するためには、これらのセンサを使用した光学測定は、画像化波長で実施しなければならず、したがって画像を損傷する恐れのある漂遊光の生成を回避するためにはオフライン(つまり、画像化中ではなく)で測定することが望ましい。
【0058】
また、上で説明した、貯蔵容器12から液浸液を抽出するこれらのセンサは、液体サンプルを浄化し、補給するための機構を備えることができる。
【0059】
図6及び8では、屈折率測定装置2及び吸収率測定装置4は、コンピュータ20を介して投影装置の焦点を修正するための装置8及び投影装置の露光量を修正するための装置10にそれぞれ結合されている。コンピュータ20は、測定した特性に基づいて、加えるべき必要な焦点変化及び/又は露光量変化を計算している。この計算は、目標値に対する焦点若しくは露光量の最適集束を保証するPID(比例−積分−微分)コントローラを備えた帰還機構に基づいて実施することができる。別法としては、基板ホルダ内に既に存在している、伝送画像センサ(TIS)、スポット・センサ及びスキャナ集積レンズ干渉計(ILIAS)などのセンサを使用した帰還構造を利用することがより有効である。別法としては、適切な修正量を投影システム及び液浸液の抽象機械モデルに基づいてコンピュータに計算させることも可能である。上記構造の重要な利点は、液浸液の個々の特性の物理的な影響がそれらの構造に明確に考慮されていることである。上で説明した実施例では、露光量に関しては液体の吸収率が極めて重要であり、一方、焦点に関しては屈折率プロファイルが重要であることが分かっている。他の物理特性についても同様の方法で処理することができ、たとえば液浸液の運動とリンクした動的効果によって投影装置の焦点、露光量及び他の性能に関連する機構に影響を及ぼすことも可能である。液体の吸収率及び屈折率の影響をモデル化する際に使用するアルゴリズムと同様のアルゴリズムを使用したコンピュータ・モデリングを介してこれらの効果に取り組むことも可能である。
【0060】
液体レンズの光学特性は、レンズの幾何学を変更することによっても変化させることができる。図10は、レンズの厚さ(投影システムの最終エレメントの軸に平行の方向から測定した厚さ)が変化する実施例を示したものである。この実施例では、液体幾何学コントローラ19は、液体圧力コントローラ31及び第2成分圧力コントローラ21と協調して動作している。投影システムの最終エレメントと基板の間の空間は、液体12及び第2の成分25が充填されている。第2の成分には、空気などガスを使用することができる。液体及び第2の成分は、上部シール部材17及び非接触シール14によって空間の内部に拘束されている。液体12の厚さであるレンズの厚さは、液体12と第2の成分25の相対圧力によって決定され、液体12と第2の成分25の相対圧力は、液体圧力コントローラ31及び第2成分圧力コントローラ21によって制御されている。第2の成分25は必ずしもガスである必要はなく、第1の組成とは異なる液体を選択することも可能である。投影システムPLの最終エレメントと基板Wの間の空間に含まれている2つの成分の相対量を操作することにより、2つの成分の間の界面の位置を制御することができ、延いては球面収差などの光学特性を制御することができる。
【0061】
代替動作モードでは、液体圧力コントローラ31を独立して動作させることができ、それにより液体12及び/又は液体レンズを通って流れるあらゆる液体の圧力を制御することができる。
【0062】
図11及び12は、液体レンズを形成している液体の投影システムPLの最終エレメントに近い方の側にペリクル(薄膜:たとえばガラスなどの透明な固体材料の箔)が界面として提供された実施例を示したものである。ペリクルは、横方向に非拘束にすることができ(図11)、その場合、図10に示すような構造では平らな界面が得られるため、ペリクルは、界面の光学的な滑らかさを改善し、望ましくない散乱を低減するべく作用する。
【0063】
別法としては、図12に示すように、変形可能であり、且つ、ペリクルの両側の圧力の不均衡によって変形が生じるように拘束することができる材料でペリクルを形成することができる。図12では、液体12の過剰圧力によって凹変形が形成されている。他の変形例として、ペリクル27の厚さ及び材料を調整し、より一層の画像操作を提供することができる。
【0064】
他の可能変形例には、たとえば一方をもう一方に対して傾斜させることによる、液体12に対する優勢な界面の一方若しくは両方の非対称変形が含まれている。図11に示す構造の場合、たとえばペリクル27を傾斜させるための装置を提供することができる。
【0065】
上述の実施例は、液浸液から形成された液体レンズを示したものであるが、液体レンズは、ビーム経路中の任意の場所に形成することができる。図13は、一実施例として、液体12が2つのペリクル35と37の間に拘束された代替実施例を示したものである。このようにして形成される液体レンズの形状は、液体12の圧力を入口33を介して調整することによって変更することができる。ペリクル35及び37は、そのいずれか一方若しくは両方をフレキシブルに構成し、或いは剛直に構成することができる。
【0066】
投影システムPLの最終エレメントは、平行平面プレート29を使用して構成することができる。このプレートは、焦点及び球面収差をオフセットさせるべく、基板Wに向かって移動させることができるように取り付けることができる。また、プレート29は傾斜させることも可能であり、それにより焦点傾斜及び球面収差傾斜がもたらされる。これは、プレート29の表面全体に渡って液体12の圧力勾配が確立される走査運動中に生じる(これは、プレート29が投影レンズPLの残りの部分に如何に固着されているかによって決まる)。焦点傾斜によって焦点ドリリング(FLEX)が生じるが、これは、プレート29の傾斜を慎重に制御することによって操作することができる。一方、球面収差オフセットは、投影レンズの残りの部分に対するプレート29の位置に影響を及ぼすレンズの過剰圧力を制御することによって操作することができる。
【0067】
以上、本発明の特定の実施例について説明したが、説明した以外の方法で本発明を実践することができることは理解されよう。以上の説明は、本発明を制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例によるリソグラフィ投影装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による投影システムの最終エレメントの周りの領域に液体を供給するための液体供給システムを示す図である。
【図3】本発明の一実施例による投影システムの最終エレメントの周りの、図2に示す液体供給システムの入口及び出口の配置を示す図である。
【図4】本発明の一実施例による温度プロファイル・コントローラを備えた投影装置を示す図である。
【図5】本発明の一実施例による液体組成コントローラを備えた投影装置を示す図である。
【図6】本発明の一実施例による、液浸液の屈折率プロファイルを測定するための屈折率測定装置を備えた投影装置を示す図である。
【図7】図6に示す屈折率センサの構造を示す略図である。
【図8】本発明の一実施例による、液浸液の吸収率プロファイルを測定するための吸収率測定装置を備えた投影装置を示す図である。
【図9】本発明の一実施例による吸収率センサの構造を示す略図である。
【図10】本発明の一実施例による液体圧力コントローラ及び液体幾何学コントローラを備えた投影装置を示す図である。
【図11】本発明の一実施例によるプレーナ・ペリクルを備えた液体レンズを示す図である。
【図12】本発明の一実施例による変形拘束ペリクルを備えた液体レンズを示す図である。
【図13】本発明の一実施例による2つのペリクルの間に液体が拘束された液体レンズを示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 試験入口
2 液体の屈折率プロファイルを測定するための測定装置
3、34 試験室
4 液体の吸収率プロファイルを測定するための測定装置
5 光源
7 制御媒体
8 投影装置の焦点を修正するための装置
9 制御媒体貯蔵容器
10 投影装置の露光量を修正するための装置
12 画像視野貯蔵容器(液体)
13、17 シール部材
14 非接触シール
15 ビーム経路
16 屈折率センサ
18、32 吸収率センサ
19 液体幾何学コントローラ
20 コンピュータ
21 第2成分圧力コントローラ
22 熱交換器(入口、熱交換器入口)
23 熱交換器(出口、熱交換器出口)
24 温度プロファイル・コントローラ
25 第2の成分
26 閉回路
27、35、37 ペリクル
28 粒子交換器
29 平行平面プレート
30 液体組成コントローラ
31 液体圧力コントローラ
33 入口
36 トランスミッタ
38 レシーバ
AM 調整手段
C 目標部分
CO コンデンサ
Ex、IL 放射システム(ビーム拡大器、照明システム(イルミネータ))
IF 干渉測定手段
IN インテグレータ
IN 入口
LA 放射源
MA マスク
MT 第1の対物テーブル(マスク・テーブル)
OUT 出口
PB 投影放射ビーム
PL 投影システム(レンズ)
W 基板
WT 第2の対物テーブル(基板テーブル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影放射ビームを提供するための放射システムと、
前記投影ビームを所望のパターンに従ってパターン化するべく機能するパターン化手段を支持するための支持構造と、
基板を保持するための基板テーブルと、
パターン化されたビームを前記基板の目標部分に投射するための投影システムとを備えたリソグラフィ投影装置であって、液体から形成された、調整可能な光学特性を有するレンズと、前記光学特性を調整するための調整装置とを備えたことを特徴とするリソグラフィ投影装置。
【請求項2】
前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液体を充填するための液体供給システムをさらに備え、前記空間に充填された前記液体が前記液体レンズを形成する、請求項1に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項3】
前記調整装置が、前記液体レンズの前記光学特性の空間依存性を制御するべく構成された、請求項1又は請求項2に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項4】
前記調整装置が、前記液体レンズの時変光学特性を提供し、且つ、制御するべく構成された、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項5】
前記調整装置が、温度を制御するための液体温度コントローラを備え、それにより前記液体レンズを形成している前記液体の屈折率及び吸収率が特性に含まれる、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項6】
前記調整装置が、圧力を制御するための液体圧力コントローラを備え、それにより前記液体レンズを形成している前記液体の屈折率及び吸収率が特性に含まれる、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項7】
前記調整装置が、前記液体レンズの形状を制御するための液体幾何学コントローラを備えた、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項8】
前記調整装置が、組成を制御するための液体組成コントローラを備え、それにより前記液体レンズを形成している前記液体の屈折率及び吸収率が特性に含まれる、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項9】
前記温度コントローラが、前記液体レンズを形成している前記液体中に均一若しくは不均一温度プロファイルを確立することができる1つ又は複数の熱交換器を備えた、請求項5又は請求項5に従属する場合は請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項10】
前記温度コントローラが、前記基板に平行な平面内に位置する軸に対して異なる高さ、半径及び/又は角度で配置された、独立した複数の熱交換器を備えた、請求項5又は請求項5に従属する場合は請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項11】
前記熱交換器が、液体を交換することなく前記液体レンズを加熱若しくは冷却するべく構成された、請求項9又は請求項10に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項12】
前記熱交換器が、前記液体レンズを加熱若しくは冷却し、且つ、温度調節済みの液体と交換するべく構成された請求項9又は請求項10に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項13】
前記熱交換器が、前記温度調節済みの液体の交換を実施するべく前記液体供給システムに結合された、請求項12に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項14】
温度、圧力、境界幾何学、組成、屈折率及び吸収率のうちの任意の1つを含むレンズの特性を、位置若しくは時間の関数として測定するための液体センサ・システムをさらに備えた、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項15】
前記液体幾何学コントローラが、前記レンズの厚さを前記投影システムの前記最終エレメントの軸に平行の方向に制御する、請求項7又は請求項7に従属する場合は請求項8から請求項14までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項16】
前記液体組成コントローラが、前記液体レンズを形成している前記液体に不純物イオンを添加し、或いは前記液体から不純物イオンを除去するための1つ又は複数の粒子交換器を備えた、請求項8又は請求項8に従属する場合は請求項9から請求項15までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項17】
前記液体組成コントローラが、前記液体レンズを形成している第1の液体と、前記液体レンズを形成する、前記第1の液体の組成とは異なる組成を有する第2の液体とを完全に交換するべく構成された、請求項16に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項18】
水、エタノール、アセトン及びベンゾアートのうちの1つ又は複数を使用して前記第1若しくは第2の液体を形成することができる、請求項17に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項19】
前記装置の焦点を、前記液体レンズを形成している前記液体の前記液体センサ・システムを使用して測定した屈折率プロファイルの関数として修正するための装置を備えた、請求項14又は請求項14に従属する場合は請求項15から請求項18までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項20】
前記装置の露光量を、前記液体レンズを形成している前記液体の前記液体センサ・システムを使用して測定した吸収率プロファイルの関数として修正するための装置を備えた、請求項14又は請求項14に従属する場合は請求項15から請求項19までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項21】
前記調整装置が、球面収差及び/又は像面湾曲を含む光学効果を生成するべく構成された、請求項1から請求項20までのいずれか一項に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項22】
少なくとも一部が放射線感応材料の層で覆われた基板を提供する段階と、
放射システムを使用して投影放射ビームを提供する段階と、
前記投影ビームの断面をパターン化するべくパターン化手段を使用する段階と、
パターン化された放射ビームを前記放射線感応材料の層の目標部分に投射する段階とを含むデバイス製造方法であって、液体から形成されたレンズを提供する段階と、前記レンズの光学特性を調整するべく調整装置を使用する段階とを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−71316(P2009−71316A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−274669(P2008−274669)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【分割の表示】特願2004−300866(P2004−300866)の分割
【原出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・アーゲー (435)
【Fターム(参考)】