説明

リチウム二次電池およびその製造方法

【課題】 大容量であり、かつ、高率充放電を行った場合にも電池温度の上昇が少ないリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】 本発明によると、放電レート1Cにおける電池容量Cが5Ah以上であり、放電レート5Cにおける高率放電容量CHが前記容量Cの80%以上である扁平形状のリチウム二次電池1が提供される。その電池1は、正極側電流経路の最小断面積Spが次式:Sp[mm2]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2;を満たし、かつ、負極側電流経路の最小断面積Snが次式:Sn[mm2]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2;を満たすように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大容量であってかつ高率充放電(または急速充放電)に適したリチウム二次電池およびその製造方法に関する。本発明に係る二次電池は、たとえば、ハイブリッド電池自動車に搭載される用途等において好適である。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車等に用いられるリチウム二次電池には、容量が大きくかつ良好な高率充放電性能を有することが求められる。このような二次電池は、高率充放電(例えば、その電池の容量Cに対して5C以上の電流による急速放電)され得る条件で使用されることが想定される。このように大容量のリチウム二次電池を急速に充電または放電する用途では、充放電に伴う発熱(例えば、電池の内部抵抗によるジュール発熱、あるいはリチウムイオンの出入りに伴って活物質のエントロピーが変化することによる発熱)によって電池の温度が上昇する現象を緩和することが重要な関心事となる。
この点に関し、例えば特許文献1には、正極、負極、セパレータおよびリチウム塩を含む非水系電解質を電池容器内に収容したリチウムイオン二次電池であって、厚さが12mm未満の扁平形状であり、エネルギー容量が30Wh以上かつ体積エネルギー密度が180Wh/L以上のリチウム二次電池が記載されている。
【0003】
【特許文献1】国際公開第99/60652号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成は、大容量の二次電池において所定の扁平形状を採用することにより、該電池の放熱性を高めることを意図している。しかしながら、単に電池の厚みを規定することのみによっては、高率充放電に伴う電池温度の上昇を十分に抑制することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、大容量でかつ高率充放電性能のよいリチウム二次電池であって、高率充放電時における電池温度の上昇がよりよく抑制されたリチウム二次電池を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、かかるリチウム二次電池を適切に製造する方法を提供することである。関連する他の目的は、かかるリチウム二次電池の設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される一つの発明は、正極集電体上に正極活物質を有する正極および負極集電体上に負極活物質を有する負極を含む電極ユニットと非水電解質とが扁平形状の電池容器内に封止された構成のリチウム二次電池(典型的には、リチウムイオン二次電池)に関する。該電池は、1Cの定電流で放電した場合における電池容量Cが凡そ5Ah以上であり、好ましくは凡そ7Ah以上である。また、該電池は、5Cの定電流で放電した場合における放電容量(高率放電容量)CHが前記容量Cの概ね80%以上であり、好ましくは概ね90%以上である。該電池を構成する電池容器の厚みTは概ね12mm未満である。ここで、前記厚みTは、扁平形状の電池容器における対向する二つの幅広面(扁平面)の外側同士の間隔に相当する。前記正極集電体は、前記電池容器外に引き出された正極端子であって外部回路と連結可能な正極端子と電気的に接続されている。その正極集電体から正極端子の外部回路連結部(すなわち、外部回路との連結機能を有する部分)に至る正極側電流経路の最小断面積Spは、以下の式:
Sp[mm2]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2
を満たす。また、前記負極集電体は、前記電池容器外に引き出された負極端子であって外部回路と連結可能な負極端子と電気的に接続されている。その負極集電体から負極端子の外部回路連結部に至る負極側電流経路の最小断面積Snは、以下の式:
Sn[mm2]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2
を満たす。
ここで、上記電池容量Cおよび上記高率放電容量CHは、例えば、当該電池を所定の条件(典型的には定電流定電圧充電)により完全充電した後に所定の放電レートで終止電圧まで放電することによって測定することができる。
【0007】
一般に、リチウム二次電池に求められる電池容量が大きくなるにつれて、その電池容量を確保するために必要な電池容器の容積は大きくなる。本発明の電池では、電池容器の形状が厚み12mm未満の扁平形状に規定されていることから、該電池の電池容量が大きくなるにつれて幅広面(扁平面)の面積は大きくなる。かかる扁平形状の電池は、電池容量の割に電池容器の表面積(例えば、上記幅広面の面積)が大きい。したがって放熱性が良好である。本発明に係る電池は、さらに、その正極側電流経路および負極側電流経路が、該電池の性能に基づいてそれぞれ算出される最小断面積Sp,Sn以上の断面積を確保し得るように設計されている。このことによって、これらの電流経路における発熱を、高率充放電時においても十分に抑制することができる。本発明によると、放熱性のよい扁平形状を採用したこと、および、正極側電流経路および負極側電流経路における発熱が抑制されていることによって、充放電時(特に高率充放電時)における電池温度の上昇が少ないリチウム二次電池を実現することができる。
【0008】
このような構成の電池において、前記正極側電流経路を形成する部材(例えば、正極集電体、正極端子)は、いずれもアルミニウムおよび/またはアルミニウム合金(アルミニウムを主成分とする合金をいう。)により構成されていることが好ましい。また、前記負極側電流経路を形成する部材(例えば、負極集電体、負極端子)は、いずれも銅合金および/または銅合金(銅を主成分とする合金をいう。)により構成されていることが好ましい。
【0009】
ここに開示される電池の一つの好ましい態様では、前記正極集電体はシート状であって、前記正極活物質が付与されたコア部と、該コア部から引き出され前記正極活物質が付与されていない正極リード部とを有する。その正極リード部の幅は、前記コア部の幅の凡そ40〜45%である。一方、前記負極集電体はシート状であって、前記負極活物質が付与されたコア部と、該コア部から引き出され前記負極活物質が付与されていない負極リード部とを有する。その負極リード部の幅は、前記コア部の幅の凡そ40〜45%である。前記電極ユニットは、複数の前記正極と複数の前記負極とがセパレータを介して交互に積層された構造を有する。そして、前記電池をその電池容器の厚み方向から透視したとき、前記正極リード部および前記負極リード部は、前記電極ユニットの同一側に、それぞれ重なって配置されている。すなわち、複数の正極リード部同士が互いに重なり、複数の負極リード部同士が互いに重なるように配置されている。また、前記正極リード部と前記負極リード部とは互いに重ならないように配置されている。かかる態様の電池によると、正極リード部と負極リード部との接触による短絡を防止しつつ、高率充放電時における電池温度の上昇をよりよく抑制することができる。また、このような態様の電池は、正極リード部と負極リード部とが電極ユニットの同一側に引き出された構成を有するので、該電池と外部回路との接続(連結)が容易である。したがって使い勝手がよい。
【0010】
ここに開示される電池の好ましい態様では、前記正極側電流経路および前記負極側電流経路のいずれにおいても、5Cの定電流で放電した場合における温度上昇幅の最大値が凡そ15℃以下であり得る。より好ましい態様では、該温度上昇幅の最大値が凡そ10℃以下であり得る。さらに好ましい態様では、正極側電流経路および負極側電流経路を含めた電池全体のいずれの箇所においても、5Cの定電流で放電した場合における温度上昇幅の最大値が凡そ15℃以下(より好ましくは凡そ10℃以下)であり得る。
【0011】
ここに開示される他の一つの発明は、電池容量Cが凡そ5Ah以上であり、かつ、5Cの定電流で放電した場合における高率放電容量CHが前記容量Cの凡そ80%以上(好ましくは凡そ90%以上)であって、正極集電体上に正極活物質を有する正極および負極集電体上に負極活物質を有する負極を含む電極ユニットと非水電解質とが扁平形状の(好ましくは、厚みTが概ね12mm未満の)電池容器内に封止された構成を有するリチウム二次電池を製造する方法に関する。その方法は、前記正極集電体から正極端子と外部回路との連結部(すなわち、正極端子のうち外部回路との連結機能を有する部分)に至る正極側電流通路の最小断面積Spが以下の式:
Sp[mm2]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2
を満たすように該通路の形状を設計することを含む。また、前記負極集電体から負極端子と外部回路との連結部に至る負極側電流通路の最小断面積Snが以下の式:
Sn[mm2]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2
を満たすように該通路の形状を設計することを含む。さらに、その設計された構成の正極側電流通路および負極側電流通路を備えるリチウム二次電池を構築することを含む。かかる方法によると、上述したいずれかのリチウム二次電池を効率よく設計および製造することができる。
【0012】
また、この明細書により開示される内容には以下のものが含まれる。
1Cの定電流で放電した場合における電池容量Cが凡そ5Ah以上であり、かつ、5Cの定電流で放電した場合における高率放電容量CHが前記容量Cの凡そ80%(好ましくは凡そ90%以上)以上であって、正極集電体上に正極活物質を有する正極および負極集電体上に負極活物質を有する負極を含む電極ユニットと非水電解質とが扁平形状の(好ましくは、厚みTが概ね12mm未満の)電池容器内に封止された構成を有するリチウム二次電池を設計する方法。その設計方法は、前記正極集電体から前記電池容器の外方に引き出された正極端子に至る正極側電流通路の形状を、該通路の最小断面積Spが以下の式:
Sp[mm]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2
を満たすように設計することを含む。また、前記負極集電体から前記電池容器の外方に引き出された負極端子に至る負極側電流通路の形状を、該通路の最小断面積Snが以下の式:
Sn[mm]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2
を満たすように設計することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
本発明は、電池容量Cが5Ah以上(より好ましくは7Ah以上)という比較的大容量のリチウム二次電池(典型的には、リチウムイオン二次電池)であって、かつ、5Cの定電流で放電した場合における放電容量(高率放電容量)CHが上記容量Cの80%以上であるリチウム二次電池に関する。このように大容量でかつ高率充放電特性の良好なリチウム二次電池は、例えば、ハイブリッド電気自動車等に搭載される電池として有用である。
ここで、上記リチウム二次電池を1Cの定電流で放電した場合における電池容量Cとは、例えば、その電池を定格充電電圧で完全充電した後、該電池をその定格放電電圧(終止電圧)まで1Cの放電レートで放電した場合における放電容量をいう。一般に、リチウム遷移金属複合酸化物(リチウムニッケル系酸化物、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物類)を正極活物質に用いたリチウム二次電池では、上記定格充電電圧は概ね4.0〜4.4V程度であり、上記終止電圧は概ね3V程度である。また、上記リチウム二次電池を5Cの定電流で放電した場合における放電容量(または高率放電容量)CHとは、例えば、その電池を定格充電電圧で完全充電した後、該電池をその定格放電電圧(終止電圧)まで5Cの放電レートで放電した場合における放電容量をいう。
本発明のより好ましい適用対象は、電池容量Cが5Ah以上(より好ましくは7Ah以上)であって、定格充電電圧で完全充電した後に10Cの定電流で放電した場合における放電容量CHが前記容量Cの80%以上(より好ましくは90%以上)であるリチウム二次電池である。
なお、これらの特性値は本発明に係る電池の使用方法(使用条件)を何ら限定するものではない。例えば、5Cの定電流で放電した場合における放電容量CHが前記電池容量Cの80%以上であるリチウム二次電池を、5Cを超える充電レートおよび/または放電レートにおいて使用することはもちろん可能である。
【0015】
また、一般に放電レート(放電電流値)が大きくなると、該放電レートにおいて得られる放電容量は小さくなる。そこで、例えば、1Cを超える種々の放電レートでそれぞれ定電流放電させた場合における放電容量CHを求め、その放電容量CHが電池容量Cの80%以上(好ましくは90%以上)となり得る最も大きい電流値を、この電池が所定の電池性能(例えば放電容量)を発揮し得る最大連続充放電電流IMAXとして把握することができる。上述のように5Cの定電流で放電した場合における放電容量CHが電池容量Cの80%以上であるということは、この電池の最大連続充放電電流IMAXが少なくとも5C以上(すなわち、IMAX≧5C)であることを示唆している。ここに開示される発明は、このように放電容量CHが上記電池容量Cの80%以上(好ましくは90%以上)となり得る最も大きい電流値(すなわち、最大連続充放電電流IMAX)が5C以上である電池に対して好ましく適用され得る。さらに、最大連続充放電電流IMAXが10C以上である電池に対しても好ましく適用され得る。
【0016】
本発明は、また、電池容器の厚み(すなわち、対向する二つの幅広面の外側同士の間隔)Tが凡そ12mm未満(好ましくは凡そ10mm未満)である電池に好ましく適用される。このように厚みが小さくかつ大容量の電池は、その電池容器の表面積が比較的(例えば電池容量の割に)大きなものであり得る。したがって、充放電に伴って発生する熱を効率よく放散させることができる。該電池の厚みTの下限は特に限定されない。電池容量と電池容器のサイズ(幅広面の面積)との兼ね合いから、通常は、該厚みTを凡そ2mm以上とすることが適当である。
ここに開示される電池を構成する電池容器の外形は、厚みTが12mm未満の板状または筒状であり得る。板状の電池容器においては、該板の表面および裏面が、上記対向する二つの幅広面に相当する。かかる板状電池容器を構成する幅広面の形状は、例えば、三角形、四角形(典型的には矩形)、六角形等の多角形状であり得る。また、円形、長円形等の幅広面を有する電池容器であってもよい。また、筒状の電池容器においては、該筒の外周面および内周面が、上記対向する二つの幅広面に相当する。上記厚みTは、このような形状の電池容器の一方の幅広面の外面から他方の幅広面の外面までの距離に該当する。なお、電池容器の各部で厚みが異なる場合には、それらの平均値が12mm未満であることが好ましく、最大値が12mm未満であることがより好ましい。
【0017】
前記電池容器の厚みTは、該幅広面の長さLおよび幅Wのうち小さいほうの値の凡そ10%以下であることが好ましく、凡そ5%以下であることがより好ましい。また、電池容器の全表面積に対して、対向する二つの幅広面の合計面積の占める割合が凡そ80%以上であることが好ましい。このように扁平度の高い電池容器を備える電池は、より放熱性に優れたものであり得る。
【0018】
かかる形状の電池を構成する電池容器の材質は特に限定されない。その電池の用途、使用環境等を考慮して適当な材料を適宜選択することができる。通常は、ある程度の剛性を発揮し得る材料からなる電池容器の使用が好ましい。例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属材料(典型的には金属板)から主として構成される電池容器を好ましく使用することができる。
電池容器のうち少なくとも幅広面を構成する壁面の厚さ(壁厚)は、凡そ1mm以下(例えば凡そ0.2〜1mm)であることが好ましく、凡そ0.7mm以下(例えば凡そ0.2〜0.7mm)であることがより好ましく、凡そ0.4mm以下(例えば凡そ0.2〜0.4mm)であることがさらに好ましい。幅広面の壁厚が大きすぎると電池の放熱性が低下傾向となる。また、電池容器の内容積が少なくなって電池の外形が大型化しがちである。電池容器の壁厚の下限は特に限定されないが、主として金属板から構成される電池容器では通常は凡そ0.2mm以上の壁厚とすることが適当である。
なお、本発明はフィルムタイプの電池容器(外装)を備える電池にも適用可能である。例えば、金属箔の両面に樹脂がラミネートされた三層構造のラミネートフィルムを電池容器として使用することができる。
【0019】
ここに開示される発明における電極ユニットは、正極集電体上に正極活物質を有する正極と、負極集電体上に負極活物質を有する負極とを含む。これら正極および負極の構成材料は従来公知のリチウム二次電池と同様でよく、特に限定されるものではない。
例えば、正極としては、正極活物質を主成分とする正極合材が、シート状の導電性部材(正極集電体)の片面または両面に層状に保持された構成を有するシート状の正極を好ましく使用することができる。正極集電体としては、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等から選択されるいずれかの金属またはこれらの金属のいずれかを主成分とする合金からなる箔状体を使用することができる。アルミニウム箔の使用が特に好ましい。
【0020】
正極活物質としては、リチウムイオンをドープおよび脱ドープし得る材料であれば特に限定なく使用することができる。本発明にとり好ましい正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物を例示することができる。例えば、リチウムニッケル系酸化物、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物およびこれらの混合物を主成分とする正極活物質が好ましい。
ここで「リチウムニッケル系酸化物」とは、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを構成金属元素とする酸化物であって主たる(第一の)遷移金属元素がNiである酸化物の他、LiおよびNi以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、LiおよびNi以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)をNiよりも少ない割合(原子数比)で含む組成の酸化物をも包含する意味である。その金属元素は、例えば、Co,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上であり得る。リチウムコバルト系酸化物およびリチウムマンガン系酸化物についても同様である。
【0021】
正極合材に含まれ得る正極活物質以外の成分としては、導電材、バインダ等が挙げられる。導電材としては、例えば、カーボンブラック(アセチレンブラック等)のような炭素材料、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等を用いることができる。バインダとしては、例えば、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース(EC)等のセルロース類;ポリビニルアルコール;ポリアクリル酸塩;ポリアルキレンオキサイド(例えばポリエチレンオキサイド);ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)等のフッ素系ポリマー;スチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)等の有機ポリマーを使用することができる。
【0022】
また、負極としては、負極活物質を主成分とする負極合材がシート状の導電性部材(負極集電体)の片面または両面に層状に保持された構成を有するシート状の負極を好ましく使用することができる。負極集電体としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等から選択されるいずれかの金属またはこれらの金属のいずれかを主成分とする合金からなる箔状体を使用することができる。銅箔の使用が特に好ましい。
【0023】
負極活物質としては、リチウムイオンをドープおよび脱ドープし得る材料であれば特に限定なく使用することができる。天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン、金属リチウム等の、一般的なリチウム二次電池の負極に用いられる活物質の一種または二種以上を好ましく用いることができる。あるいは、錫酸化物系、ケイ素酸化物系等の負極活物質を用いてもよい。本発明にとり好ましい負極活物質として、アモルファス構造および/またはグラファイト構造の炭素材料が挙げられる。負極合材に含まれ得る負極活物質以外の成分としては、導電材、バインダ等が挙げられる。導電材としては正極合材用と同様のもの等を使用することができ、バインダについても同様である。
【0024】
ここに開示される電池の一つの好ましい態様では、該電池が、シート状の正極とシート状の負極とがセパレータを介して積層された構成の電極ユニットを備える。典型的には、複数のシート状の正極と複数のシート状の負極とがセパレータを介して交互に積層された構成(すなわち積層型)の電極ユニットを備える。このような積層型の電極ユニットを、その電極面(シート面)が容器の幅広面とほぼ平行になるように収容した構成のリチウム二次電池が好ましい。かかる構成によると、電池容器の内部空間を有効に利用することができる。
このような態様の電極ユニットを構成するセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン系(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)樹脂からなる多孔質膜を好ましく用いることができる。あるいは、ポリオレフィン系、セルロース系(例えばメチルセルロース)等の有機質繊維またはガラス繊維等の無機繊維からなる織布または不織布を用いてもよい。
【0025】
ここに開示される電池は、典型的には、電極ユニットの正極と電気的に接続されているとともに電池容器外に引き出された正極端子を備える。ここで、「電池容器外に引き出された」とは、正極端子の少なくとも一部が電池容器の外部に露出していることをいい、電池容器から外方に突出している態様に限られない。負極端子についても同様である。該正極端子が電池容器を貫通して配置されていることが好ましい。かかる正極端子のうち電池容器外に引き出された部分に外部回路を直接接続(連結)することができる。好ましい一つの態様では、電池容器を貫通する正極端子のうち電池容器内に位置する部分に、電極ユニットを構成する正極が直接(物理的に、例えば溶接により)接続されている。
同様に、ここに開示される電池は、典型的には、電極ユニットの負極と電気的に接続されているとともに電池容器外に引き出された負極端子を備える。該負極端子が電池容器を貫通して配置されていることが好ましい。かかる負極端子のうち電池容器外に引き出された部分に外部回路を直接接続することができる。好ましい一つの態様では、電池容器を貫通する負極端子のうち電池容器内に位置する部分に、電極ユニットを構成する負極が直接(例えば溶接により)接続されている。
【0026】
ここに開示される電池は、正極集電体から正極端子の外部回路連結部(すなわち、正極端子のうち電池容器外に引き出された部分であって外部回路との連結機能を備える部分)に至る正極側電流経路の断面積が、該経路のいずれの箇所においても所定の最小断面積Spを下回らないように設計されている。ここで、「正極側電流経路の断面積」とは、充電電流および/または放電電流が流れる部材(正極端子、正極集電体等)を、該電流の流れる方向に対してほぼ垂直に切断した場合における断面積をいう。かかる電流経路の一部または全部において電流が分岐して流れる場合には、それら分岐した電流経路の各々を電流の流れる方向に対して垂直に切断した場合における断面積の総和が最小断面積Spを下回らないようにするとよい。例えば、積層型電極ユニットを構成する複数枚の正極集電体が正極端子に接続されている場合には、(各集電体の厚さ)×(各集電体の幅)×(集電体の枚数)により該集電体の断面積の総和を算出することができる。負極側電流経路の断面積についても同様である。
【0027】
好ましい一つの態様では、正極側電流経路の最小断面積Spが、次式:Sp[mm2]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2;を満たすように設計されている。他の好ましい一つの態様では、正極側電流経路の最小断面積Spが、次式:Sp[mm2]≧−1.3+0.23×IMAX[A]+0.0023×(IMAX[A])2;を満たすように設計されている。ここでIMAXは、放電容量CHが電池容量Cの80%以上(好ましくは90%以上)となり得る最も大きい電流値を表す。すなわち、上述した最大連続充放電電流IMAXを表す。
【0028】
ここに開示される電池は、負極集電体から負極端子の外部回路連結部(負極端子のうち電池容器外に引き出された部分であって外部回路との連結機能を備える部分)に至る負極側電流経路の断面積が、該経路のいずれの箇所においても所定の最小断面積Snを下回らないように設計されている。好ましい一つの態様では、負極側電流経路の最小断面積Snが、次式:Sn[mm2]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2;を満たすように設計されている。他の好ましい一つの態様では、負極側電流経路の最小断面積Snが、次式:Sn[mm2]≧−1.2+0.18×IMAX[A]+0.0015×(IMAX[A])2;を満たすように設計されている。
【0029】
本発明に係る電池に備えられる非水電解質は、いわゆる非水系有機溶媒を主成分とする液状の電解質(非水電解液)であってもよく、ゲル状または固体状の電解質であってもよい。非水電解液としては、従来のリチウム二次電池に用いられる非水電解液等を特に限定なく用いることができる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸メチル、蟻酸メチル等の非水系有機溶媒から選択されるいずれかの溶媒または二種以上の溶媒を含む混合溶媒に、LiPF6,LiBF4,LiClO4,LiCF3SO3,LiC49SO3,LiN(CF3SO22,LiC(CF3SO23等のリチウム塩(支持塩)の一種または二種以上を溶解させた組成の電解液等を使用することができる。この電解質におけるリチウム塩の濃度は特に限定されないが、通常は凡そ0.5〜2mol/Lの範囲とすることが適当である。水分含有率100ppm以下の非水電解液を用いることが好ましい。
【0030】
<実施例>
以下、図面を参照しつつ、本発明をさらに具体的に説明する。
図1は、本実施例に係るリチウム二次電池を示す平面図であり、図2はそのII方向矢視図である。これらの図に示されるように、リチウム二次電池1は、厚みTが約6.5mmである扁平な電池容器10と、その容器10に収容された電極ユニット20および非水電解液(図示せず)とを備える。このリチウム二次電池1の定格充電電圧は4.1Vであり、その定格充電電圧で完全充電した後に10Aの定電流で3V(この電池の放電終止電圧)まで放電した場合における容量Cが凡そ10Ahとなるように設計されている。また、この電池1は、上記定格充電電圧で完全充電した後に5C(すなわち50A)の定電流で3Vまで放電した場合における高率放電容量CHが、1C(すなわち10A)で放電した場合における容量Cの凡そ90%以上(すなわち、凡そ9Ah以上)となるように設計されている。
【0031】
以下、電極ユニット20の構成について説明する。この電極ユニット20は、図3に示すように、複数のシート状の正極22と複数のシート状の負極24とがセパレータ26を介して交互に積層された構造を有する。
電極ユニット20を構成する各正極22は、図4(a)に示すように、厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体222と、その集電体222の両面に設けられた正電極層224とを有する。正極集電体222は、長辺(図中のL1)177mm、短辺(図中のW1)130mmの長方形状のコア部222aと、その短辺の一端(図4(a)では左端)から引き出された幅57mmの正極リード部222bとを有する。このリード部222bの幅は、コア部222aの幅の凡そ44%に相当する。正電極層224は、コア部222aの両面に設けられ、リード部222bには設けられていない。正電極層224は、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)とカーボンブラック(CB)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを質量比でLiNiO2:CB:PTFE=87:10:3の割合で含む正極組成物を正極集電体222に塗布し、乾燥後にプレスして形成されたものである。本実施例の正極22では、正極集電体222のコア部222aの両面に、プレス後における厚さが片面当たり約29μmの正電極層224がそれぞれ設けられている。
【0032】
負極24は、図4(b)に示すように、厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体242と、その集電体242の両面に設けられた負電極層244とを有する。
負極集電体242は、長辺(図中のL2)181.5mm、短辺(図中のW2)133の長方形状を呈するコア部242aと、その短辺の一端(図4(b)では右端)から引き出された幅59mmの負極リード部242bとを有する。このリード部242bの幅は、コア部242aの幅の凡そ44%に相当する。負電極層244は、コア部242aの両面に設けられ、リード部242bには設けられていない。負電極層244は、カーボン(黒鉛粉末)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)とを質量比でカーボン:CMC:SBR=98:1:1の割合で含む負極組成物を負極集電体242に塗布し、乾燥後にプレスして形成されたものである。本実施例の負極24では、負極集電体242のコア部242aの両面に、プレス後における厚さが片面当たり約34μmの負電極層244がそれぞれ形成されている。
【0033】
セパレータ26は、図4(c)に示すように長方形状であって、その長辺(図中のL3)の長さは185mm、短辺(図中のW3)の長さは136mmである。本実施例では、セパレータ26として厚さ25μmの微多孔性ポリプロピレンシートを使用した。
電極ユニット20は、図3に示すように、24枚の正極22と、25枚の負極24とを、各々の間にセパレータ26を挟んで交互に積層して構成されている。ただし、この積層体を構成する25枚の負極24のうち最も外側に配置される二枚の負極24は、該積層体の内部に配置される負極24とは異なり、負極集電体242の片面(積層体の内側面)にのみ負電極層244が形成された構成を有する。また、上記最も外側に配置された負極24のさらに外側には、該負極24と電池容器10とを絶縁するための樹脂フィルム27が配置されている。ここでは、樹脂フィルム27として厚さ約40μmのポリエステルシートを使用した。
【0034】
かかる構成の電極ユニット20が電池容器10に収容されている。この電池容器10は、図1,2および5に示されるように、主として底容器12と蓋14とから構成されている。ここで、図5は図1のV−V線における分解断面図であって、図を見やすくするため電極ユニットの表示を省略している。
底容器12は、厚さ0.3mmのステンレス板(SUS304製)を絞り加工して成形されたものであって、ほぼ長方形状の底面122と、その底面122の外周から立ち上がる側壁124と、側壁124の上端から外方に広がるフランジ126とを有する。これにより底容器12には、フランジ126の内方に、底面122および側壁124により区画された凹部128が形成されている。なお、側壁124は、底面122からフランジ126に向けてやや広がるように(テーパ状に)設けられている。底面122は、電極ユニット20の全体を収容し得る広さ(平面形状)を有する。すなわち、底面122の幅(本実施例では、底面122の短辺に相当する。)は電極ユニット20の幅よりもやや大きく、底面122の長さは電極ユニット20の長さ(リード部222b,242bを含む。本実施例では、底面122の長辺に相当する。)よりもやや大きい。
【0035】
蓋14もまた厚さ0.3mmのステンレス板(SUS304製)を用いて作製されたものであって、その形状はほぼ長方形の板状である。蓋14は、正極22のリード部222bに対応する位置(すなわち、蓋14の面に垂直な方向から電池1を透視したときリード部222bと重なる位置)に正極端子用の貫通孔142を有する。図6によく示されるように、この貫通孔142にアルミニウム製の正極端子32が取り付けられている。
この正極端子32は、直径約7.35mmの円柱状であって貫通孔142に挿通された端子本体322と、電池容器10の外側から正極端子本体322にねじ止め可能なねじ部材324とを備える。端子本体322の外側端322bには、該ねじ部材324の形状に対応したねじ穴が設けられている。端子本体322と蓋14との間はガスケット33により密閉および絶縁されている。複数枚(ここでは24枚)の正極22に備えられた各リード部222bは、まとめて、端子本体322の内側端322a(電池容器10の内側に配置される側の端面)に超音波溶接されている。端子本体322の外側端322bは蓋14の外部に突出している。ねじ部材324は、頭部直径6mmのM3ねじとして構成されている。そして、例えば図6に示すように、任意の外部回路2の一端に設けられたねじ穴を通してねじ部材324を端子本体322の上端(外部回路連結部)にねじ止めすることにより、外部回路2と正極端子32と(さらに電極ユニット20を構成する正極22と)を接続することができる。
【0036】
負極側の接続構造は正極側とほぼ同様であるので図6を用いて説明する。正極側と負極側とで符号が異なる部材については、図6中において負極側の部材に対応する符号をカッコ内に示している。
蓋14には、負極24のリード部242bに対応する位置に、負極端子用の貫通孔144が設けられている。この貫通孔144に銅製の負極端子34が取り付けられている。この負極端子34は端子本体342およびねじ部材344とからなる。これら端子本体342およびねじ部材344は、構成材料が異なる(すなわち、アルミニウム製ではなく銅製である)点以外は、正極端子32を構成する端子本体322およびねじ部材324とそれぞれ実質的に同一の形状を有する。端子本体342と蓋14との間はガスケット35によろい密閉および絶縁されている。この端子本体342の内側端342aに、複数枚(ここでは25枚)の負極24に備えられた各リード部242bがまとめて超音波溶接されている。負極端子342の外側端342bは蓋14の外部に突出している。かかる構成の負極端子34を介して、正極端子32の場合と同様にして、任意の外部回路2と負極端子34と(さらには電極ユニット20を構成する負極24と)を接続することができる。
なお、本実施例の電池1では正極端子32および負極端子34を各々一個づつ設けているが、端子の数はこれに限定されない。例えば、正極端子および負極端子を各々二個以上設けた構成としてもよい。
【0037】
かかる接続構造において、正極端子32の内側端322aから外部端子2に至る電流経路のうち、電流が流れる方向に対する断面積が最も小さいのは正極端子32が蓋14を貫通する部分(すなわち端子本体322)であり、その断面積は凡そ42.4mm2である。同様に、負極端子34の内側端342aから外部端子2に至る電流経路のうち、電流が流れる方向に対する断面積が最も小さいのは負極端子34が蓋14を貫通する部分であり、その断面積は凡そ42.4mm2である。
【0038】
また、前述のように、正極集電体222の厚さは15μmであり、リード部222bの幅は57mmである。電極ユニット20の有する24枚の正極22の最小断面積は、これらの正極22の有するリード部222bの断面積の合計として求められ、その値は0.015mm×57mm×24=20.5mm2である。これは正極端子32の最小断面積(42.4mm2)よりも小さい。したがって、本実施例における正極側電流通路の最小断面積は20.5mm2である。
ここで、正極側電流通路の最小断面積の適正範囲を求める式:Sp[mm2]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2;の右辺に5C=50[A]を代入すると、Sp≧15.95mm2となる。本実施例の正極側電流通路の形状はこの関係式を満たしている。
【0039】
一方、負極集電体242の厚さは10μmであり、リード部242bの幅は59mmである。電極ユニットの有する25枚の負極24の最小断面積は、これらの負極22の有するリード部242bの断面積の合計として求められ、その値は0.01mm×59mm×25=14.75mm2である。これは負極端子34の最小断面積(42.4mm2)よりも小さい。したがって、本実施例における負極側電流通路の最小断面積は14.75mm2である。
ここで、負極側電流通路の最小断面積の適正範囲を求める式:Sn[mm2]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2;の右辺に5C=50[A]を代入すると、Sn≧11.55mm2となる。本実施例の負極側電流通路の形状はこの関係式を満たしている。
【0040】
図1および図5に示されるように、蓋14には、正極端子用の貫通孔142と負極端子用の貫通孔144との間にさらに別の貫通孔146が設けられている。この貫通孔146は、例えば、電池1を製造する際に電池容器10内に非水電解液を供給(注入)するための注入口として利用することができる。電池1の使用時には、貫通孔146は封止部材147により塞がれた状態にある。封止部材147としては、例えば、厚さ0.08mm程度のアルミニウム箔−変性ポリプロピレンラミネートフィルムを使用することができる。
【0041】
蓋14は、その外周が底容器12のフランジ126と重なるように配置されて、図5に示す凹部128の上端(開口部)を塞いでいる。そして、蓋14の外周(フランジ126の外周でもある。)からやや内側に入った位置にその全周に亘って設定された溶接線に沿って蓋14をフランジ126に溶かし込み溶接することにより、底容器12と蓋14とが接合されている。かかる構成の電池容器10の外形は、長さ(縦)Lが210mm、幅(横)Wが148mm、厚さTが6.5mmの矩形扁平形状(ノート状)である。
【0042】
本実施例では、上記構成のリチウム二次電池1を以下のようにして作製した。
すなわち、所望する電池の電池容量、厚さ(すなわち12mm未満であること)、使用状態(設置場所)等を考慮して、電池の組成および構造(正極および負極の活物質の種類および使用量、底容器12および蓋14の各部のサイズ等)を決定した。また、その電池の性能(例えば電池容量)を考慮して、正極側電流通路の最小断面積Spが上記式を満たすように、その正極側電流通路を構成する各部材の構造を決定した。具体的には、正極端子の形状(例えば断面積)、正極集電体の厚さおよびそのリード部の幅、電極ユニットを構成する正極の枚数等を適切に設定することにより、正極側電流通路の最小断面積Spが上記式を満たすようにした。同様に、負極側電流通路の最小断面積Snが上記式を満たすように、その負極側電流通路を構成する各部材の構造を決定した。
【0043】
一方、所定の位置に貫通孔142,144および146を有する蓋14を用意した。また、所定枚数の正極22、負極24およびセパレータ26が積層された構成の電極ユニット20を用意した。貫通孔142に正極端子32を取り付け、その端子本体322の内側端322aに正極リード部222bを溶接した。同様に、貫通孔144に負極端子34を取り付け、その端子本体342の内側端342aに負極リード部242bを溶接した。図示しない絶縁テープを用いて電極ユニット20を蓋14に固定し、この電極ユニット20を底容器12の凹部128内に収めるようにして底容器12と蓋14とを重ね合わせた。そして、底容器12のフランジ126と蓋14との外周とをその全周に亘ってレーザー溶接して電池容器10を作製した。
【0044】
蓋14の貫通孔146から電池容器10内に非水電解液を供給した。ここでは、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DEC:EMC=3:3:4の体積比で含む混合溶媒に1mol/LのLiPF6を含有させた非水電解液を使用した。次いで、この電池1のエージング(初期充放電)を行った。すなわち、該電池1を1〜3回程度充電および放電させた。その後、貫通孔146を封止した。具体的には、厚さ0.08mmのアルミニウム箔−変性ポリプロピレンラミネートフィルムを直径12mmの円形に打ち抜いて成る封止部材147を用意し、貫通孔146の周縁を構成する蓋14に該封止部材147を電池容器10の外側から熱融着した。このようにして電池1を作製した。
【0045】
得られた電池1につき、以下のようにして電池性能の確認試験を行った。
すなわち、温度25℃において、この電池1に対し、10Aの定電流で4.1V(定格充電電圧)まで充電した後に4.1Vの定電圧を印加する定電流定電圧(CC−CV)充電を合計で1.4時間行った。続いて、この電池1を10Aの定電流で3V(放電終止電圧)まで放電した。このときの電池1の容量Cは10Ahであった。次いで、この電池1を上記と同様の条件で定電流定電圧充電した後、50A(すなわち5C)の定電流で放電した。このときの電池1の容量(高率放電容量)CHは9.4Ah(すなわち、上記容量Cの94%)であった。以上より、本実施例の電池1が、5Cを超える放電レートにおいても、1C(ここでは10A)で放電させた場合の90%以上に相当する高率放電容量CHを発揮する電池であることを確認した。換言すれば、この電池1について、1Cで放電させた場合における容量Cの90%以上の容量を実現し得る放電電流の最大値(最大放電電流)IMAXが5C以上であることが確認された。
【0046】
上記において電池1を50Aの定電流で3Vまで急速放電させた際、電池1の各部について温度上昇の程度を測定した。その結果、電池1の中央部(幅広面の中央部)における温度上昇は約8℃であった。正極側電流通路と負極側電流通路とを比較すると正極側電流通路の方が温度上昇が大きく、最も大きな温度上昇が見られたのは正極リード部222bであって、その上昇幅は約10℃であった。すなわち、電池1のいずれの部分においても、5Cの急速放電による温度上昇を10℃以下に抑制することができた。
【0047】
<比較例>
本比較例に係るリチウム二次電池は、上記実施例に係るリチウム二次電池1とは正極リード部および負極リード部の幅が異なる。その他の点については上記実施例に係る電池1と同様であるため重複する説明は省略する。また、上記実施例に係る電池1と同様の機能を果たす部材には電池1と同じ符号を付して説明する。
すなわち、本比較例に係るリチウム二次電池は、正極リード部および負極リード部の幅がいずれも24mmである。したがって、この電池の正極側電流通路の最小断面積は0.015mm×24mm×24=8.6mm2である。この値は、上記実施例で求めた関係式Sp≧15.95mm2を満たさない。すなわち、本比較例の電池は、正極側電流通路の最小断面積が適正範囲よりも小さい。
また、負極側電流通路の最小断面積は0.01×24mm×24=6.0mm2である。この値は、上記実施例で求めた関係式Sp≧11.55mm2を満たさない。すなわち、本比較例の電池は、負極側電流通路の最小断面積が適正範囲よりも小さい。
【0048】
かかる構成のリチウム二次電池につき、上記実施例と同様の条件により電池性能の確認試験を行った。その結果、この電池の容量Cは10Ahであり、50A(すなわち5C)の定電流で放電した場合における容量(高率放電容量)CHは上記容量Cの94%であることが確認された。そして、上記において50Aの定電流で3Vまで急速放電させた際の温度上昇の程度を測定したところ、少なくとも正極リード部において20℃を超える温度上昇が観察された。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例に係るリチウム二次電池の平面図である。
【図2】図1のII方向矢視図である。
【図3】電極ユニットの構成を模式的に示す説明図である。
【図4】電極ユニットの構成を模式的に示す説明図であって、(a)は正極を示し、(b)は負極を示し、(c)はセパレータを示している。
【図5】図1のV−V線における分解断面図である。
【図6】電極ユニットを構成する正極(または負極)と正極端子(または負極端子)との接続構造を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 リチウム二次電池
2 外部回路
10 電池容器
12 底容器
14 蓋
20 電極ユニット
22 正極
222 正極集電体
222a コア部
222b 正極リード部(正極側電流通路)
24 負極
242 負極集電体
242a コア部
242b 負極リード部(負極側電流通路)
32 正極端子(正極側電流通路)
34 負極端子(負極側電流通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体上に正極活物質を有する正極および負極集電体上に負極活物質を有する負極を含む電極ユニットと非水電解質とが扁平形状の電池容器内に封止されたリチウム二次電池であって、
以下の条件:
1Cの定電流で放電した場合における電池容量Cが5Ah以上である;
5Cの定電流で放電した場合における高率放電容量CHが前記容量Cの80%以上である;
前記電池容器の厚みTが12mm未満である;
前記正極集電体は、前記電池容器外に引き出された正極端子であって外部回路と連結可能な正極端子と電気的に接続されており、該集電体から該端子の外部回路連結部に至る正極側電流経路の最小断面積Spが以下の式:
Sp[mm2]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2
を満たす;および、
前記負極集電体は、前記電池容器外に引き出された負極端子であって外部回路と連結可能な負極端子と電気的に接続されており、該集電体から該端子の外部回路連結部に至る負極側電流経路の最小断面積Snが以下の式:
Sn[mm2]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2
を満たす;
をいずれも満たすことを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
前記正極側電流経路を形成する部材はいずれもアルミニウムおよび/またはアルミニウム合金により構成され、
前記負極側電流経路を形成する部材はいずれも銅および/または銅合金により構成されている、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記正極集電体はシート状であって、前記正極活物質が付与されたコア部と、該コア部から引き出され前記正極活物質が付与されていない正極リード部とを有し、該リード部の幅は前記コア部の幅の40〜45%であり、
前記負極集電体はシート状であって、前記正極活物質が付与されたコア部と、該コア部から引き出され前記負極活物質が付与されていない負極リード部とを有し、該リード部の幅は前記コア部の幅の40〜45%であり、
前記電極ユニットは、複数の前記正極と複数の前記負極とがセパレータを介して交互に積層された構造を有し、
前記電池容器の厚み方向から前記電池を透視したとき、前記正極リード部および前記負極リード部は前記電極ユニットの同一側にそれぞれ重なって配置され、かつ、前記正極リード部と前記負極リード部とは互いに重ならないように配置されている、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
5Cの定電流で放電した場合における温度上昇幅の最大値が15℃以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
1Cの定電流で放電した場合における電池容量Cが5Ah以上であり、かつ、5Cの定電流で放電した場合における高率放電容量CHが前記容量Cの80%以上であって、正極集電体上に正極活物質を有する正極および負極集電体上に負極活物質を有する負極を含む電極ユニットと非水電解質とが扁平形状の電池容器内に封止されたリチウム二次電池を製造する方法であって、
前記正極集電体から正極端子と外部回路との連結部に至る正極側電流通路の最小断面積Spが以下の式:
Sp[mm2]≧−1.3+0.23×5C[A]+0.0023×(5C[A])2
を満たすように該正極側電流通路の構成を設計すること、および、
前記負極集電体から負極端子と外部回路との連結部に至る負極側電流通路の最小断面積Snが以下の式:
Sn[mm2]≧−1.2+0.18×5C[A]+0.0015×(5C[A])2
を満たすように該負極側電流通路の構成を設計すること、および、
その設計された構成の正極側電流通路および負極側電流通路を備えるリチウム二次電池を構築すること、
を包含するリチウム二次電池製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−244833(P2006−244833A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58066(P2005−58066)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】