説明

リナグリプチン及び必要に応じてSGLT2阻害薬を含む医薬組成物、並びにその使用

本発明は、リナグリプチンの医薬組成物、医薬剤形、それらの製法、代謝障害を治療するためのそれらの使用及び方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、第1の活性医薬成分としてリナグリプチンを含む医薬組成物に関する。さらに本発明は、該医薬組成物を含む医薬剤形に関する。加えて本発明は、該医薬剤形の調製方法に関する。加えて本発明は、選ばれた疾患及び医学的状態、特にとりわけ1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖異常及び高血糖から選択される1つ以上の状態の治療及び/又は予防における該医薬組成物及び医薬剤形の使用に関する。さらに本発明は、治療及び/又は予防が必要な患者に本発明の医薬組成物又は医薬剤形を投与する、該疾患及び医学的状態の治療及び/又は予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
化合物リナグリプチンはDPP-IV阻害薬である。CD26としても知られる酵素DPP-IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)は、N末端にプロリン又はアラニン残基を有するいくつかのタンパク質のN末端からのジペプチドの開裂を引き起こすことが分かっているセリンプロテアーゼである。この特性のためDPP-IV阻害薬は、ペプチドGLP-1などの生理活性ペプチドの血漿レベルを妨げ、糖尿病、特に2型糖尿病の治療の有望な薬物であると考えられている。
リナグリプチン等の選ばれたDPP-IV阻害薬を調製する試みでは、一級又は二級アミノ基を有するDPP-IV阻害薬が、微結晶性セルロース、ナトリウムデンプングリコラート、クロスカルメロースナトリウム、酒石酸、クエン酸、グルコース、フルクトース、サッカロース、ラクトース、マルトデキストリン等のいくつかの通例の賦形剤との不適合性、分解問題、又は抽出問題を示すことが認められている。この化合物自体は非常に安定しているが、固体剤形で用いられる多くの賦形剤及び特に錠剤中で密接して高い賦形剤/薬物比で与えられる賦形剤の不純物と反応する。アミノ基が還元糖及び他の反応性カルボニル基及び例えば微結晶性セルロースの表面で酸化によって形成されたカルボン酸官能基と反すると思われる。これらの不測の困難性は、リナグリプチン等の選ばれた阻害薬の驚くべき効力のため必要とされる低い薬用量範囲で主に認められる。従って、医薬組成物は、選ばれたDPP-IV阻害薬化合物の予想外の効力に伴うこれらの技術的課題を解決する必要がある。リナグリプチンを唯一の活性医薬成分として含む医薬組成物は、WO2007/128724に記載されている。
【0003】
2型糖尿病は、ますます蔓延してきている疾患であり、高頻度の合併症のため平均余命の有意な減少をもたらす。糖尿病関連の微小血管合併症のため、先進工業国において現在2型糖尿病が成人発症の失明、腎不全、及び切断術の最多原因である。さらに、2型糖尿病の存在は、心血管疾患リスクの2〜5倍増と関係がある。
長い罹患期間後、多くの2型糖尿病患者は最終的に経口療法に失敗し、毎日の注射と毎日複数回の血糖測定を必要とするインスリン依存性になるであろう。
治療(例えば一次若しくは二次、及び/又は単剤若しくは(初期若しくは追加)併用療法)で常用される経口抗糖尿病薬として、限定するものではないが、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾロジンジオン、グリニド及びα-グルコシダーゼ阻害薬が挙げられる。
治療失敗の高い発生率は、2型糖尿病患者における高率の長期の高血糖関連合併症又は慢性障害(微小血管及び大血管合併症、例えば糖尿病性腎症、網膜症又は神経障害など、又は心血管合併症が挙げられる)に主に起因している。
従って、血糖コントロールに関して、疾患修飾特性に関して並びに心血管性の罹患率及び死亡率の低減に関して良い効率を有しながら、同時に改善された安全性プロファイルを示す方法、薬物及び医薬組成物に対して未だ対処されていない医学的必要性がある。
SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者の治療又は血糖コントロールの改善のために開発されている新分類の薬剤を代表する。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、SGLT2阻害薬として先行技術、例えばWO01/27128、WO03/099836、WO2005/092877、WO2006/034489、WO2006/064033、WO2006/117359、WO2006/117360、WO2007/025943、WO2007/028814、WO2007/031548、WO2007/093610、WO2007/128749、WO2008/049923、WO2008/055870、WO2008/055940に記載されている。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、尿糖排泄の誘発物質として及び糖尿病の治療薬として提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(本発明の目的)
本発明の目的は、リナグリプチンを含む医薬組成物であって、リナグリプチンの分解の兆候を示さないか又は最低限の兆候しか示さないので、良い乃至非常に良い有効期間を可能にする医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、リナグリプチンを含む医薬組成物であって、高い含量均一性を有し及び/又は医薬剤形の時間と費用に関して効率的な製造を可能にする医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、リナグリプチンを含む医薬剤形であって、良い有効期間を有し、短い崩壊時間を有し、良い溶解特性を有し及び/又は患者におけるリナグリプチンの高いバイオアベイラビリティーを可能にする医薬剤形を提供することである。
本発明のさらなる目的は、DPPIV阻害薬とSGLT2阻害薬の組合せを含む医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、SGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物であって、リナグリプチンの分解の兆候を示さないか又は最低限の兆候しか示さないので、良い乃至非常に良い有効期間を可能にする医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、SGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物であって、高い含量均一性を有し及び/又は医薬剤形の時間と費用に関して効率的な製造を可能にする医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、SGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬剤形であって、良い有効期間を有し、短い崩壊時間を有し、良い溶解特性を有し及び/又は患者におけるリナグリプチンの高いバイオアベイラビリティーを可能にする医薬剤形を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、それぞれSGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物及び医薬剤形、並びに代謝障害、特に2型糖尿病の予防、進行の減速、遅延又は治療方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、それぞれSGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物及び医薬剤形、並びに血糖コントロールの改善が必要な患者、特に2型糖尿病の患者の血糖コントロールの改善方法を提供することである。
本発明の別の目的は、それぞれSGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物及び医薬剤形、並びに抗糖尿病薬、例えばメトホルミン又はSGLT2阻害薬又はDPPIV阻害薬による単剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な患者の血糖コントロールの改善方法を提供することである。
本発明の別の目的は、それぞれSGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物及び医薬剤形、並びに耐糖能障害(IFG)、空腹時血糖異常(IGT)、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群から2型糖尿病への進行の予防、減速又は遅延方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、それぞれSGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物及び医薬剤形、並びに糖尿病の合併症から成る群より選択された状態又は障害の予防、進行の減速、遅延又は治療方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、それぞれSGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む医薬組成物及び医薬剤形、並びに体重の減少又は体重増加の予防が必要な患者の体重の減少又は体重増加の予防方法を提供することである。
本発明の別の目的は、それぞれSGLT2阻害薬と共にリナグリプチンを含む新規の医薬組成物及び医薬剤形であって、代謝障害、特に糖尿病、耐糖能障害(IFG)、空腹時血糖異常(IGT)、及び/又は高血糖症の治療に高い効力があり、良い乃至非常に良い薬理学的及び/又は薬物動態学的及び/又は物理化学的特性を有する、医薬組成物及び医薬剤形を提供することである。
本発明の別の目的は、本発明の医薬剤形の調製方法であって、費用及び/又は時間において非常に有効な方法を提供することである。
当業者には、本明細書の前記及び後記説明並びに実施例によって、本発明のさらなる目的が明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
第1態様では本発明は、第1の活性医薬成分としてのリナグリプチンと、1種以上の賦形剤、特に1種以上の希釈剤、1種以上の結合剤及び/又は1種以上の崩壊剤とを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、好ましくは固体医薬組成物、例えば経口投与用の固体医薬組成物である。
本発明の範囲内では、第1の活性医薬成分としてX90<200μmの粒径分布を有するリナグリプチンを含む医薬組成物が有利な溶解プロファイル及び/又は良いバイオアベイラビリティーを示し、かつ高い含量均一性及び医薬剤形の時間と費用に関して効率的な製造を可能にすることが分かった。
従って、別の態様では本発明は、第1の活性医薬成分としてのリナグリプチンと、1種以上の賦形剤とを含む医薬組成物であって、第1の活性成分が、好ましくはレーザー回折法で体積によって決定されたX90<200μmの粒径分布を有する、医薬組成物を提供する。
さらに本発明の範囲内では、特定の賦形剤と併用したリナグリプチンは、リナグリプチンの分解の兆候を示さないか又は最低限の分解しか示さないので、良い乃至非常に良い有効期間を可能にすることが分かった。特に1種だけの希釈剤を含む上記医薬組成物によって本発明の目的を達成できることが分かった。
さらに本発明の範囲内では、SGLT2阻害薬としての後述する式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体と共に、第1の活性医薬成分としてリナグリプチンを含む医薬組成物は、リナグリプチンの分解の兆候を示さないか又は最低限の分解しか示さないので、良い乃至非常に良い有効期間を可能にすることが分かった。この結果は、リナグリプチン及びグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の官能基、特にグルコピラノシル環及びその中のヒドロキシ基の化学的性質を考慮すると予測できなかった。
従って、別の態様では本発明は、活性医薬成分としてのリナグリプチンと、活性医薬成分としての下記式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1はクロロ又はメチルを表し;かつR3はエチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシを表す)
のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、又はそのプロドラッグと、1種以上の希釈剤と、1種以上の結合剤と、1種以上の崩壊剤とを含む医薬組成物を提供する。
本発明の範囲内では、活性医薬成分として1μm<X90<200μmの粒径分布を有するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含む医薬組成物が有利な溶解プロファイル及び/又は良いバイオアベイラビリティーを示し、かつ高い含量均一性及び医薬剤形の時間と費用に関して効率的な製造を可能にすることが分かった。
従って、本発明の別の態様は、第1の活性医薬成分としてのリナグリプチンと、第2の活性医薬成分としての本明細書で後述する式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体と、1種以上の賦形剤とを含む医薬組成物であって、第2の活性成分が、好ましくはレーザー回折法で体積によって決定された1μm<X90<200μmの粒径分布を有する、医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物は、高い含量均一性並びに錠剤及びカプセル剤等の医薬剤形の時間と費用に関して効率的な製造を可能にする。さらに本発明のこれらの医薬剤形、特に錠剤、例えば一層錠剤又は二層錠剤は、リナグリプチンの分解の兆候を示さないか又は最低限の兆候しか示さないので長い有効期間を可能にする。
従って別の態様では本発明は、本発明の医薬組成物を含む医薬剤形を提供する。本発明の医薬剤形は好ましくは固体医薬剤形、なおさらに好ましくは経口投与用の固体医薬剤形である。
別の態様では本発明は、本発明の医薬剤形の調製方法であって、1又は2種の活性医薬成分を1種以上の賦形剤と共に造粒する1つ以上の造粒プロセスを含む方法を提供する。
さらに、本明細書で後述する式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体と共にリナグリプチンを含む医薬組成物は、代謝障害の予防、進行の減速、遅延又は治療のため、特に患者、例えば経口抗糖尿病薬による現存療法では血糖コントロールが不十分な患者の血糖コントロールの改善に有利に利用できることが分かる。このことは、2型糖尿病、過体重、肥満、糖尿病合併症及び隣接疾患状態の治療と予防における新しい療法の可能性を広げる。
【0009】
本発明の別の態様により、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満及び代謝症候群から選択される代謝障害の予防、進行の減速、遅延又は治療が必要な患者の前記予防、進行の減速、遅延又は治療方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の別の態様により、血糖コントロールの改善並びに/或いは空腹時血糖、食後血糖及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減が必要な患者の前記改善及び/又は低減方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の医薬組成物及び医薬剤形は、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群に関連する疾患又は状態に関して有益な疾患修飾特性をも有し得る。
本発明の別の態様により、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群から2型糖尿病への進行の予防、減速、遅延又は逆転が必要な患者の前記予防、減速、遅延又は逆転方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
この発明の医薬組成物及び医薬剤形の使用によって、血糖コントロールが必要な患者の血糖コントロールの改善が得られるので、血糖値上昇に関連又は起因する当該状態及び/又は疾患を治療することもできる。
【0010】
本発明の別の態様により、糖尿病合併症、例えば白内障並びに微小血管及び大血管疾患、例えば腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、糖尿病性足病変、動脈硬化症、心筋梗塞、急性冠動脈症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害及び血管再狭窄から選択される状態又は障害の予防、進行の減速、遅延又は治療が必要な患者の前記予防、進行の減速、遅延又は治療方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。用語「組織虚血」は、特に糖尿病性大血管障害、糖尿病性微小血管障害、創傷治癒障害及び糖尿病性潰瘍を含む。特に糖尿病性腎症の1以上の態様、例えば過灌流、タンパク尿及びアルブミン尿を治療し、それらの進行を減速させるか或いはそれらの発症を遅延又は予防することができる。この出願では、用語「微小血管及び大血管疾患」並びに「微小血管及び大血管合併症」を互換的に使用する。
本発明の医薬組成物及び医薬剤形の投与によって、かつSGLT2阻害薬の活性のため、過剰の血糖値が脂肪のような不溶性貯蔵型に変換されるのではなく、患者の尿を介して排泄される。従って、体重が増えることはなく、結果として体重が減少さえする。
本発明の別の態様により、体重の減少又は体重増加の予防又は体重減少の促進が必要な患者の前記減少又は予防又は促進方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の医薬組成物におけるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体のSGLT2阻害薬としての薬理作用はインスリンとは無関係である。従って、膵臓β細胞にさらに負担をかけずに血糖コントロールの改善が可能である。この発明の医薬組成物又は医薬剤形の投与によって、例えば膵臓β細胞のアポトーシス又は壊死のようなβ細胞変性及びβ細胞機能性の低下を遅延させるか又は予防することができる。さらに、膵臓細胞の機能性を改善するか又は回復させることができ、膵臓β細胞の数及びサイズを増大させ得る。高血糖によって乱された膵臓β細胞の分化状態及び過形成を本発明の医薬組成物又は医薬剤形による治療で正常化することができる。
【0011】
本発明の別の態様により、膵臓β細胞の変性及び/又は膵臓β細胞の機能性の低下の予防、減速、遅延若しくは治療並びに/或いは膵臓β細胞の機能性の改善及び/又は回復並びに/或いは膵臓インスリン分泌の機能性の回復が必要な患者の前記予防、減速、遅延若しくは治療並びに/或いは改善及び/又は回復方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の医薬組成物及び医薬剤形の投与によって、肝臓における脂肪の異常蓄積を減少させるか又は阻害することができる。従って、本発明の別の態様により、肝脂肪の異常蓄積に起因する疾患又は状態の予防、減速、遅延又は治療が必要な患者の前記予防、減速、遅延又は治療方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。肝脂肪の異常蓄積に起因する疾患又は状態は、特に一般的脂肪肝、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、過栄養誘発脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコール誘発脂肪肝又は中毒性脂肪肝から成る群より選択される。
それらの結果として、本発明の別の態様は、インスリン感受性の維持及び/又は改善並びに/或いは高インスリン血症及び/又はインスリン抵抗性の治療又は予防が必要な患者の前記維持及び/又は改善並びに/或いは治療又は予防方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様により、
−1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満及び代謝症候群から成る群より選択される代謝障害の予防、進行の減速、遅延又は治療;又は
−血糖コントロールの改善並びに/或いは空腹時血糖、食後血糖及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減;又は
−耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群から2型糖尿病への進行の予防、減速、遅延又は逆転;又は
−糖尿病合併症、例えば白内障並びに微小血管及び大血管疾患、例えば腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、糖尿病性足病変、動脈硬化症、心筋梗塞、急性冠動脈症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害及び血管再狭窄から成る群より選択される状態又は障害の予防、進行の減速、遅延又は治療;又は
−体重の減少又は体重増加の予防又は体重減少の促進;又は
−膵臓β細胞の変性及び/又は膵臓β細胞の機能性の低下の予防、減速、遅延若しくは治療並びに/或いは膵臓β細胞の機能性の改善及び/又は回復並びに/或いは膵臓インスリン分泌の機能性の回復;又は
−肝脂肪の異常蓄積に起因する疾患又は状態の予防、減速、遅延又は治療;又は
−インスリン感受性の維持及び/又は改善並びに/或いは高インスリン血症及び/又はインスリン抵抗性の治療又は予防
が必要な患者の
それらのための薬物製造のための本発明の医薬組成物の使用を提供する。
本発明の別の態様により、前記及び後記治療及び予防方法のための薬物製造のための本発明の医薬組成物又は医薬剤形の使用を提供する。
【0013】
(定義)
本発明の医薬組成物又は医薬剤形の「活性成分」又は「活性医薬成分」という用語は、リナグリプチン及び必要に応じて本発明に従う式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)を意味する。
ヒト患者の「肥満度指数(body mass index)」又は「BMI」は、身長(メートル)の二乗で除した体重(キログラム)と定義されるので、BMIはkg/m2の単位を有する。
用語「過体重」は、個体が25kg/m2以上30kg/m2未満のBMIを有する状態と定義される。用語「過体重」と「前肥満」は互換的に使用される。
用語「肥満」は、個体が30kg/m2以上のBMIを有する状態と定義される。WHO定義によれば、用語「肥満」は以下のように分類される:用語「クラスI肥満」はBMIが30kg/m2以上35kg/m2未満の状態であり;「クラスII肥満」はBMIが35kg/m2以上40kg/m2未満の状態であり;用語「クラスIII肥満」はBMIが40kg/m2以上の状態である。
用語「内臓肥満」は、男性で1.0以上、女性で0.8以上のウエスト・ヒップ比が測定される状態と定義される。それはインスリン抵抗性及び前肥満の発生のリスクを規定する。
用語「腹部肥満」は通常、ウエスト周囲が男性で>40インチ又は102cm、女性で>35インチ又は94cmの状態と定義される。日本の民族性又は日本の患者に関しては、腹部肥満は男性でウエスト周囲≧85cm、女性で≧90cmと定義される(例えば日本の代謝症候群調査委員会参照)。
用語「正常血糖」は、対象が70mg/dL(3.89mmol/L)より高く、100mg/dL(5.6mmoI/L)未満の正常範囲内の空腹時血糖濃度を有する状態と定義される。「空腹時」という言葉は、医学用語としての通常の意味を有する。
用語「高血糖」は、対象が正常範囲超えの100mg/dL(5.6 mmoI/L)より高い空腹時血糖濃度を有する状態と定義される。「空腹時」という言葉は、医学用語としての通常の意味を有する。
用語「低血糖」は、対象が正常範囲未満、特に70mg/dL(3.89mmol/L)未満の血糖濃度を有する状態と定義される。
用語「食後高血糖」は、対象が200mg/dL(11.11 mmol/L)より高い、食後2時間の血糖又は血清グルコース濃度を有する状態と定義される。
用語「空腹時血糖異常」又は「IFG」は、対象が100〜125mg/dl(すなわち5.6〜6.9mmol/l)の範囲、特に110mg/dLより高く126mg/dI(7.00mmol/L)未満の空腹時血糖濃度又は空腹時血清グルコース濃度を有する状態と定義される。「正常空腹時グルコース」の対象は、100mg/dl未満、すなわち5.6mmol/l未満の空腹時グルコース濃度を有する。
【0014】
用語「耐糖能障害」又は「IGT」は、対象が140mg/dL(7.78mmol/L)より高く200mg/dL(11.11mmol/L)未満の食後2時間の血糖又は血清グルコース濃度を有する状態と定義される。異常な耐糖能、すなわち食後2時間の血糖又は血清グルコース濃度は、絶食後75gのグルコースを摂取した後の血漿1dL当たりのmgのグルコースで血糖レベルとして測定され得る。「正常な耐糖能」を有する対象は、140mg/dL(7.78 mmol/L)未満の食後2時間の血糖又は血清グルコース濃度を有する。
用語「高インスリン血症」は、正常血糖を有するか又はそうでない、インスリン抵抗性の対象が、ウエスト・ヒップ比<1.0(男性)又は<0.8(女性)を有する、インスリン抵抗性でない正常な痩せた個体より高い空腹時又は食後血清又は血漿インスリン濃度を有する状態と定義される。
用語「インスリン感作」、「インスリン抵抗性改善」又は「インスリン抵抗性低減」は同義であり、互換的に用いられる。
用語「インスリン抵抗性」は、正常血糖状態を維持するために糖負荷への正常反応を超える循環インスリンレベルが必要とされる状態と定義される(Ford ES, et al. JAMA. (2002) 287:356-9)。インスリン抵抗性の判定方法は、正常血糖-高インスリン血症クランプ試験である。併用インスリン-グルコース注入法の範囲内でインスリン対グルコースの比を決定する。グルコース吸収が、調査されるバックグラウンド集団の25位パーセンタイル未満である場合にインスリン抵抗性であることが分かる(WHO定義)。静脈内グルコース負荷試験中に、血液中のインスリンとグルコースの濃度を一定の時間間隔で測定し、これらからインスリン抵抗性を計算する、いわゆる最小モデルはクランプ試験より面倒でない。この方法では、肝性インスリン抵抗性と末梢性インスリン抵抗性を区別できない。
さらに、インスリン抵抗性の信頼できる指標である「インスリン抵抗性指数(homeostasis model assessment to insulin resistance)(HOMA-IR)」スコアを評価することによって、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性患者の治療に対する反応、インスリン感受性及び高インスリン血症を定量化し得る(Katsuki A, et al. Diabetes Care 2001; 24: 362-5)。さらにインスリン感受性についてのHOMA-指数の決定方法(Matthews et al., Diabetologia 1985, 28: 412-19)、未変化プロインスリン対インスリンの比の決定方法(Forst et al., Diabetes 2003, 52(Suppl.1): A459)及び正常血糖クランプ試験を参照されたい。加えて、インスリン感受性の有望な代用として血漿アディポネクチンレベルをモニターすることができる。下記式:
HOMA-IR=[空腹時血清インスリン(μU/mL)]×[空腹時血漿グルコース(mmol/L)/22.5]
を用いてインスリン抵抗性指数(HOMA)-IRスコアによってインスリン抵抗性の推定値を計算する(Galvin P, et al. Diabet Med 1992;9:921-8)。
原則として、インスリン抵抗性を評価するための毎日の診療では他のパラメーターを使用する。例えば、トリグリセリドレベル上昇はインスリン抵抗性の存在とかなり関係があるので、好ましくは患者のトリグリセリド濃度を利用する。
【0015】
IGT又はIFG又は2型糖尿病の発症の素因がある患者は、正常血糖を有する高インスリン血症の当該患者であり、かつ定義によってインスリン抵抗性である。インスリン抵抗性の典型的患者は、通常は過体重又は肥満である。インスリン抵抗性を検出できたら、これは前肥満の存在の特に強い徴候である。従って、このような人はグルコースホメオスタシスを維持するために健康な人より2〜3倍のインスリンが必要であり、そうでないと何らかの臨床症状をもたし得る。
膵臓β細胞の機能を調査するための方法は、インスリン感受性、高インスリン血症又はインスリン抵抗性に関する上記方法と同様であり:例えばβ細胞機能についてHOMA-指数(Matthews et al., Diabetologia 1985, 28: 412-19)、未変化プロインスリン対インスリンの比(Forst et al., Diabetes 2003, 52(Suppl.1): A459)、経口糖負荷試験若しくは食事負荷試験後のインスリン/C-ペプチド分泌を決定することによって、又は高血糖クランプ試験及び/若しくは高頻度サンプリング静脈内糖負荷試験後の最小モデリング(Stumvoll et al., Eur J Clin Invest 2001, 31: 380-81)を利用することによって、β細胞機能の改善を測定することができる。
用語「前糖尿病」は、個体が2型糖尿病を発症しやすい状態である。前糖尿病は、耐糖能障害の定義を拡大して、高い正常範囲≧100mg/dLの空腹時血糖(J. B. Meigs, et al. Diabetes 2003; 52:1475-1484)及び空腹時高インスリン血症(血漿インスリン濃度上昇)を有する個体を包含する。前糖尿病を重大な健康脅威として特定するための科学的及び医学的基礎は、アメリカ糖尿病学会並びに糖尿病及び消化器及び肝臓疾患の国立研究所(American Diabetes Association and the National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)によって共同発行された表題「2型糖尿病の予防又は遅延(The Prevention or Delay of Type 2 Diabetes)」の状況声明(Position Statement)で説明されている(Diabetes Care 2002; 25:742-749)。
【0016】
インスリン抵抗性を有する可能性がある個体は、下記性状:1)過体重又は肥満、2)高血圧、3)高脂血症、4)1人以上のIGT若しくはIFG若しくは2型糖尿病と診断された第一度近親者;の2つ以上を有する当該個体である。これらの個体ではHOMA-IRスコアを計算することによってインスリン抵抗性を確認することができる。この発明の目的では、インスリン抵抗性は、個体が、HOMA-IRスコア>4.0又はグルコース及びインスリンアッセイを行なう検査室のために定義された正常の上限を超えるHOMA-IRスコアを有する臨床状態と定義される。
用語「2型糖尿病」は、対象が125mg/dL(6.94mmol/L)より高い空腹時血糖又は血清グルコース濃度を有する状態と定義される。血糖値の測定は、日常的医学分析の標準手順である。糖負荷試験を行なうと、糖尿病患者の血糖値は、空の胃に75gのグルコースを摂取した2時間後に血漿1dL当たり200mgのグルコース(11.1 mmol/l)を超えるであろう。糖負荷試験では、10〜12時間の絶食後に被験患者に75gのグルコースを経口投与し、グルコース摂取直前とグルコース摂取1時間後と2時間後に血糖レベルを記録する。健康な対象では、グルコースを摂取する前の血糖レベルが血漿1dL当たり60〜110mgであり、グルコース摂取1時間後には200mg/dL未満であり、2時間後には140mg/dL未満である。2時間後に値が140〜200mgである場合、これは耐糖能異常とみなされる。
用語「後期2型糖尿病」は、二次薬物で失敗し、インスリン療法の適応症があり、かつ微小血管及び大血管合併症、例えば糖尿病性腎症、又は冠動脈心疾患(CHD)に進行している患者を包含する。
【0017】
用語「HbA1c」は、ヘモグロビンB鎖の非酵素的グリコシル化の産物を意味する。当業者にはその定量が周知である。モニタリングにおいて、糖尿病の治療をモニターする際にはHbA1c値が極めて重要である。その生産は本質的に血糖レベル及び赤血球の生命に依存するので、「血糖記憶」という意味のHbA1cは、先行する4〜6週間の平均血糖レベルを反映する。HbA1c値が集中的な糖尿病治療によって常に良く調整される(すなわちサンプル中の総ヘモグロビンが<6.5%)糖尿病患者は、糖尿病性微小血管障害に対して有意に良く保護されている。例えば、メトホルミンはそのままで糖尿病患者のHbA1c値の1.0〜1.5%のオーダーの平均的改善を達成する。HbA1C値のこの減少は、全ての糖尿病患者が<6.5%、好ましくは<6%のHbA1c値の所望の目標範囲を達成するためには十分でない。
「不十分な血糖コントロール」又は「不適切な血糖コントロール」は本発明の範囲内では、患者が6.5%超え、特に7.0%超え、さらに好ましくは7.5%超え、特に8%超えのHbA1c値を示す状態を意味する。
「症候群X」とも呼ばれ(代謝障害の文脈で使用されるとき)、「代謝異常症候群」とも呼ばれる「代謝症候群」は、インスリン抵抗性という基本的特徴を有する複合症候群である(Laaksonen DE, et al. Am J Epidemiol 2002;156:1070-7)。ATP III/NCEP指針(Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III) JAMA: Journal of the American Medical Association (2001) 285:2486-2497)によれば、以下の危険因子の3つ以上が存在する場合に代謝症候群と診断される。
1. ウエスト周囲が男性で>40インチ又は102cm、女性で>35インチ又は94cmと定義され;或いは日本の民族性又は日本の患者に関しては、ウエスト周囲が男性で≧85cm、女性で≧90cmと定義される腹部肥満;
2. トリグリセリド:≧150mg/dL
3. 男性でHDL-コレステロール<40mg/dL
4. 血圧≧130/85mmHg(SBP≧130又はDBP≧85)
5. 空腹時血糖≧100mg/dL。
【0018】
NCEP定義は検証されている(Laaksonen DE, et al. Am J Epidemiol. (2002) 156:1070-7)。血液中のトリグリセリド及びHDLコレステロールを医学分析の標準的方法で決定することもでき、例えばThomas L (Editor): "Labor und Diagnose“, TH-Books Verlagsgesellschaft mbH, Frankfurt/Main, 2000に記載されている。
常用されている定義によれば、収縮期血圧(SBP)が140mmHgの値を超え、かつ拡張期血圧(DBP)が90mmHgの値を超えると、高血圧と診断される。患者が顕在性糖尿病を患っている場合、収縮期血圧が130mmHg未満のレベルに低減させ、かつ拡張期血圧を80mmHg未満に下げることが現在は推奨されている。
「治療」及び「治療する」という用語は、既に特に顕在型の前記状態を発症している患者の治療法を含む。治療法は、特異的な適応症の症状を軽減するための対症療法或いは適応症の状態を逆転させるか若しくは部分的に逆転させるため又は疾患の進行を停止させるか若しくは減速させるための原因療法であってよい。従って、本発明の組成物及び剤形及び方法を例えば長期間の治療法として並びに慢性療法のために使用し得る。
「予防的に治療する」、「予防的治療」及び「予防」という用語は互換的に使用され、前述した状態の発生のリスクがある患者の治療、それによって前記リスクを減少させることを含む。
本明細書で使用する場合、用語「治療的に有効な量」は、哺乳動物対象又は患者に所望の治療反応、例えば血糖レベルの低減、HbA1cの低減又は体重減少をもたらすが、対象又は患者の低血糖を引き起こさない、活性医薬成分の量又は用量を意味する。医薬組成物又は医薬剤形が2種の活性医薬成分を含む場合、本明細書では用語「治療的に有効な量」は、他の活性医薬成分と併用して、哺乳動物対象又は患者に所望の治療反応、例えば血糖レベルの低減、HbA1cの低減又は体重減少をもたらすが、対象又は患者の低血糖を引き起こさない、それぞれの活性医薬成分の量又は用量を意味する。
用語「錠剤」はコーティングのない錠剤及び1以上のコーティングのある錠剤を含む。さらに用語「錠剤」は、1、2、3又は4以上の層を有する錠剤及びプレスコーティン錠を含み、前記タイプの各錠剤は1以上のコーティングを含まなくても含んでもよい。用語「錠剤」は、ミニ、メルト、咀嚼可能、発泡性及び経口的に崩壊する錠剤をも含む。
用語「薬局方(pharmacopoe)」及び「薬局方(pharmacopoeia)」は、標準的薬局方、例えば「第2補足によるUSP 31-NF 26」(United States Pharmacopeial Convention)又は「欧州薬局方6.3」(European Directorate for the Quality of Medicines and Health Care, 2000-2009)を表す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】化合物(I.3)の結晶形(I.3X)のX腺粉末ディフラクトグラムを示す。
【図2】化合物(I.3)の結晶形(I3.X)のDSCによる熱分析及び融点の決定を示す。
【図3】コントロール、リナグリプチン(Cpd. A)、化合物(I.3)(Cpd. B)又はリナグリプチンと化合物(I.3)の組合せ(組合せA+B)を受けた4つの異なる群のZDFラットにおいてグルコース投与後に計算した反応性グルコースAUCによって定量化した場合のグルコース偏位(glucose excursion)を示す。
【図4】API 1が化合物(I.3)であり、API 2がリナグリプチンである実施例4及び実施例6の錠剤の溶解プロファイルを示す。
【図5】API 1が化合物(I.3)であり、API 2がリナグリプチンである実施例8の錠剤の溶解プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
本発明の態様、特に医薬組成物、医薬剤形、方法及び使用は、前記及び後記定義どおりのリナグリプチン及びグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を表す。
本明細書で使用する場合、用語「リナグリプチン」は、リナグリプチン及びその医薬的に許容できる塩を表し、その水和物及び溶媒和物、並びにその結晶形を包含する。結晶形はWO2007/128721に記載されている。好ましい結晶形は、本明細書に記載の多形A及びBである。リナグリプチンの製造方法は、例えば、特許出願WO2004/018468及びWO2006/048427に記載されている。リナグリプチンは、この発明に従ってグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体と併用したときに非常に優れた効力及び持続性作用と有利な薬理学的特性及び有利な副作用プロファイルを併せ持ち、或いは予想外の治療利益をもたらすので、構造的に匹敵するDPP IV阻害薬と区別される。
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、下記式(I)
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R1はクロロ又はメチルを表し;かつR3はエチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシを表す)
又はそのプロドラッグによって定義される。
式(I)の化合物及びそれらの合成は、例えば以下の特許出願に記載されている:WO2005/092877、WO2006/117360、WO2006/117359、WO2006/120208、WO2006/064033、WO2007/028814、WO2007/031548、WO2008/049923。
式(I)の上記グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体では、置換基の以下の定義が好ましい。
好ましくはR1がクロロを表す。
好ましくはR3がエチニル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシを表す。最も好ましくはR3が(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシを表す。
式(I)の好ましいグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、下記化合物(I.1)〜(I.5)の群から選択される。
【0023】
【化3】

【0024】
式(I)のなおさらに好ましいグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、化合物(I.2)及び(I.3)から選択される。
この発明により、式(I)の上掲グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、それらの水和物、溶媒和物及びその多形、並びにそのプロドラッグをも含むものと解釈すべきである。好ましい化合物(I.1)について、有利な結晶形が国際特許出願WO2007/028814(参照によってその全体が本明細書に援用される)に記載されている。好ましい化合物(I.2)について、有利な結晶形が国際特許出願WO2006/117360(参照によってその全体が本明細書に援用される)に記載されている。好ましい化合物(I.3)について、有利な結晶形が国際特許出願WO2006/117359(参照によってその全体が本明細書に援用される)に記載されている。好ましい化合物(I.5)について、有利な結晶形が国際特許出願WO2008/049923(参照によってその全体が本明細書に援用される)に記載されている。これらの結晶形は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の良いバイオアベイラビリティーを可能にする良い溶解特性を有する。さらに、これらの結晶形は物理化学的に安定しているので、医薬組成物の良い有効期間安定性をもたらす。
化合物(I.3)の好ましい結晶形(I.3X)は、18.84、20.36及び25.21度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含むX腺粉末回折パターンによって特徴づけられ、ここで、前記X腺粉末回折パターン(XRPD)は、CuKα1線を用いて作られる。
特に前記X腺粉末回折パターンは、14.69、18.84、19.16、19.50、20.36及び25.21度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含み、ここで、前記X腺粉末回折パターン(XRPD)は、CuKα1線を用いて作られる。
特に前記X腺粉末回折パターンは、14.69、17.95、18.43、18.84、19.16、19.50、20.36、22.71、23.44、24.81、25.21及び25.65度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含み、ここで、前記X腺粉末回折パターン(XRPD)は、CuKα1線を用いて作られる。
さらに好ましくは、結晶形(I.3X)は、表1に含まれるとおりの度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含む、CuKα1線を用いて作られたX腺粉末回折パターンによって特徴づけられる。
【0025】
表1:結晶形(I.3X)のX腺粉末回折パターン(30°(2Θ)までのピークのみ収載):

【0026】
なおさらに詳細には、結晶形(I.3X)は、図1に示すような度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含む、CuKα1線を用いて作られたX腺粉末回折パターンによって特徴づけられる。
さらに結晶形(I.3X)は、約149℃±3℃(DSCによって決定;開始温度として評価した;加熱速度10K/分)によって特徴づけられる。得られたDSC曲線を図2に示す。
本発明の範囲内では、位置感受性検出器(OED)及びX線源としてのCu陽極(CuKα1線、λ=1,54056Å、40kV、40mA)と適合した透過型のSTOE-STADI P-回折計を用いてX腺粉末回折パターンを記録する。上表1中、値「2Θ[°]」は、度での回折角を表し、値「d[Å]」は、格子面間のÅでの規定距離を表す。図1に示す強度は、cps(1秒毎のカウント)の単位で与えられている。
実験誤差を考慮に入れるため、上記2Θ値は正確には±0.1度2Θ、特に±0.05度2Θと考えるべきである。すなわち、化合物(I.3)の結晶の所定サンプルが本発明の結晶形であるかを評価するとき、該サンプルについて実験的に観察された2Θ値が、上記特性値の±0.1度2Θの範囲に入れば、特に上記特性値の±0.05度2Θの範囲に入れば、該サンプルは上記特性値と同一とみなすべきである。
融点は、DSC 821(Mettler Toledo)を用いてDSC(示差走査熱量測定)によって決定される。
【0027】
活性医薬成分に関しては、医薬組成物及び剤形の溶解特性、ひいては活性成分のバイオアベイラビリティーは、とりわけそれぞれの活性医薬成分の粒径及び粒径分布の影響を受けることが分かる。本発明の医薬組成物及び医薬剤形では、活性医薬成分は好ましくは、体積による分布に関して、それぞれの活性医薬成分粒子の少なくとも90%が200μm未満の粒径、すなわちX90<200μmを有する。
特に本発明の医薬組成物及び医薬剤形では、リナグリプチン、例えばその結晶形は、好ましくはそれぞれの活性医薬成分の少なくとも90%が200μm未満の粒径を有するような粒径分布(体積による)、すなわちX90<200μm、さらに好ましくはX90≦150μmを有する。さらに好ましくは、X90≦100μm、なおさらに好ましくはX90≦75μmであるような粒径分布である。さらに好ましくはX90>0.1μm、さらに好ましくはX90≧1μm、最も好ましくはX90≧5μmであるような粒径分布である。従って、好ましい粒径分布は、0.1μm<X90<200μm、特に0.1μm<X90≦150μm、さらに好ましくは1μm≦X90≦150μm、なおさらに好ましくは5μm≦X90≦100μmであるようなものである。リナグリプチンの粒径分布の好ましい例は、X90≦50μm又は10μm≦X90≦50μmであるようなものである。
さらに本発明の医薬組成物及び医薬剤形では、リナグリプチン、例えばその結晶形は、好ましくはX50≦90μm、さらに好ましくはX50≦75μm、なおさらに好ましくはX50≦50μm、最も好ましくはX50≦40μmであるような粒径分布(体積による)を有する。さらに、粒径分布は好ましくはX50≧0.1μm、さらに好ましくはX50≧0.5μm、なおさらに好ましくはX50≧4μmであるようなものである、従って、好ましい粒径分布は、0.1μm≦X50≦90μm、特に0.5μm≦X50≦75μm、さらに好ましくは4μm≦X50≦75μm、なおさらに好ましくは4μm≦X50≦50μmであるようなものである。好ましい例は、8μm≦X50≦40μmである。
さらに本発明の医薬組成物及び医薬剤形では、リナグリプチン、例えばその結晶形は、好ましくはX10≧0.05μm、さらに好ましくはX10≧0.1μm、なおさらに好ましくはX10≧0.5μmであるような粒径分布(体積による)を有する。
【0028】
特に式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)については、驚くべきことに、小さ過ぎる粒径は、例えば固着(sticking)又はフィルミング(filming)によって、製造可能性に影響を及ぼすことが分かる。他方で、大き過ぎる粒径は、医薬組成物及び剤形の溶解特性、ひいてはバイオアベイラビリティーに悪影響を与える。以下に粒径分布の好ましい範囲について述べる。
本発明の医薬組成物及び医薬剤形では、式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)、例えばその結晶形(I3.X)は、好ましくはそれぞれの活性医薬成分の少なくとも90%が200μm未満の粒径を有するような粒径分布(体積による)、すなわちX90<200μm、好ましくはX90≦150μmを有する。さらに好ましくはX90≦100μm、さらに好ましくはX90≦90μmであるような粒径分布である。さらに好ましくはX90≧1μm、さらに好ましくはX90≧5μm、なおさらに好ましくはX90≧10μmであるような粒径分布である。従って、1μm≦X90<200μm、特に1μm≦X90≦150μm、さらに好ましくは5μm≦X90≦150μm、なおさらに好ましくは5μm≦X90≦100μm、なおさらに好ましくは10μm≦X90≦100μmであるような粒径分布が好ましい。好ましい例は、X90≦75μmである。別の好ましい例は20μm≦X90≦50μmである。
さらに本発明の医薬組成物及び医薬剤形では、式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)、例えばその結晶形(I3.X)は、好ましくはX50≦90μm、さらに好ましくはX50≦75μm、なおさらに好ましくはX50≦50μm、最も好ましくはX50≦40μmであるような粒径分布(体積による)を有する。さらにX50≧1μm、さらに好ましくはX50≧5μm、なおさらに好ましくはX50≧8μmであるような粒径分布が好ましい。従って、好ましい粒径分布は、1μm≦X50≦90μm、特に1μm≦X50≦75μm、さらに好ましくは5μm≦X50≦75μm、なおさらに好ましくは5μm≦X50≦50μmであるようなものである。好ましい例は8μm≦X50≦40μmである。
さらに本発明の医薬組成物及び医薬剤形では、式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)、例えばその結晶形(I3.X)は、好ましくはX10≧0.1μm、さらに好ましくはX10≧0.5μm、なおさらに好ましくはX10≧1μmであるような粒径分布(体積による)を有する。
従って、この発明の医薬組成物又は医薬剤形は、好ましくは上記粒径分布X90、X50及びX10又は下記実施形態の1つによって特徴づけられる。
【0029】

【0030】
値X90は、レーザー回折計を用いて測定した体積分布の90%値を意味する。言い換えれば、本発明の目的では、X90値は、粒子の量の90%が体積分布に基づいてその粒径未満であることが分かる粒径を表す。同様にX50値は、レーザー回折計を用いて測定した体積分布の50%値(メジアン)を意味する。言い換えれば、本発明の目的では、X50値は、粒子の量の50%が体積分布に基づいてその粒径未満であることが分かる粒径を表す。同様にX10値は、レーザー回折計を用いて測定した体積分布の10%値を意味する。言い換えれば、本発明の目的では、X10値は、粒子の量の10%が体積分布に基づいてその粒径未満であることが分かる粒径を表す。
好ましくは前記及び後記の全てのX90、X50、X10値は、体積によるものであり、かつレーザー回折法、特に低角レーザー光散乱、すなわちフラウンホーファー(Fraunhofer)回折によって決定される。好ましい試験については実験セクションで記載する。レーザー回折法は、粒子の体積に敏感であり、体積-平均粒径を与える。これは密度が一定の場合は質量-平均粒径と等価である。当業者は、ある技法による粒径分布決定の結果が、例えば日常の実験による経験的根拠に基づいた別の技法による結果と相関し得ることを知っている。或いは顕微鏡、特に電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって医薬組成物又は剤形の粒径分布を決定することができる。
【0031】
活性医薬成分、例えばリナグリプチン又はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)及びその結晶形(I.3X)を含む適切な出発原料を供給するため、製粉、例えばジェット製粉又はピン製粉される。
以下、本発明の医薬組成物の好ましい賦形剤及び担体についてさらに詳述する。好ましくは賦形剤は医薬的に許容できる。
好ましくは賦形剤はリナグリプチンと適合性である、すなわち医薬組成物内でリナグリプチンが分解しないか又は最低限しか分解しないように選択される。例えば40℃及び75%の相対湿度で6カ月の貯蔵後に標準試験で分解を試験することができる。この文脈では、用語「最低限の分解」はリナグリプチンの質量の5質量%未満、好ましくは3質量%未満、なおさらに好ましくは2質量%未満のリナグリプチンの化学分解を意味するものとする。周知の分析方法、例えばHPLC又はUV法を用いて含量及びこのような分解を決定することができる。
本発明の医薬組成物では、賦形剤は好ましくは1種以上の希釈剤を含む。
さらに本発明の医薬組成物では、賦形剤は好ましくは1種以上の希釈剤と1種以上の結合剤を含む。
さらに本発明の医薬組成物では、賦形剤は好ましくは1種以上の希釈剤と、1種以上の結合剤と、1種以上の崩壊剤と、必要に応じてさらなる成分を含む。
さらに本発明の医薬組成物では、賦形剤はなおさらに好ましくは1種以上の賦形剤と、1種以上の結合剤と、1種以上の崩壊剤と、1種以上の潤沢剤と、必要に応じてさらなる成分を含む。
賦形剤には同時に2つ以上の機能を有するものがあり、例えば希釈剤としてかつ結合剤として又は結合剤としてかつ崩壊剤として又は希釈剤として、結合剤としてかつ崩壊剤として作用し得る。
1種以上の希釈剤(別の用語は充填剤である)は、活性医薬成分の量が少ないので、最小限の錠剤質量(例えば100mg以上)及び薬局方に従う満足のいく含量均一性(例えば<3%の標準偏差)を達成するために加えられる。例えばラクトース、スクロース、及び微結晶性セルロースのような一般的な希釈剤は、リナグリプチンと適合性でないと認められている。
好ましくは本発明の医薬組成物に適した1種以上の希釈剤は、セルロース、特にセルロース粉末、二塩基性リン酸カルシウム、特に二塩基性リン酸カルシウム無水物又は二水和物、エリスリトール、マンニトール、デンプン、アルファ化デンプン、及びキシリトール(前記物質の誘導体及び水和物を含めて)から成る群より選択される。希釈剤アルファ化デンプンはさらに結合剤特性を示す。上記希釈剤のうち、マンニトール及びアルファ化デンプンが特に好ましい。
本発明の医薬組成物が1種の希釈剤を含む場合、希釈剤は好ましくはマンニトール又はアルファ化デンプン、最も好ましくはマンニトールである。
本発明の医薬組成物が2種以上の希釈剤を含む場合、第1の希釈剤は好ましくはマンニトールであり、第2の希釈剤は前記希釈剤の群から選択され、なおさらに好ましくは、さらに結合剤特性を示すアルファ化デンプンである。
本明細書で前述及び後述するマンニトールは、好ましくは造粒に適した小さい粒径のグレードである。例はPearlitolTM 50C(Roquette)である。
本明細書で前述及び後述するアルファ化デンプンは、市販グレードのいずれであってもよい。例はStarch 1500TM(Colorcon)である。
【0032】
本発明の医薬組成物は、好ましくはグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース及びマルトデキストリンから成る群より選択される物質、特にラクトースを含まない。好ましくは本発明の医薬組成物は、上記群の物質、特にラクトースを組成物全体の2質量%の量より多く含まず、なおさらに好ましくは組成物全体の0.5質量%の量より多く含まない。
医薬組成物中の1種以上の結合剤は、例えば造粒中、医薬組成物、及び圧縮錠剤に接着性を与える。結合剤は、希釈剤中で既に利用可能な凝集力を増加させる。一般的な結合剤は例えばスクロース及び微結晶性セルロースであるが、リナグリプチンとは適合性でないことが認められた。
好ましくは本発明の医薬組成物に適した1種以上の結合剤は、コポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、及び低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)(前記物質の誘導体及び水和物を含めて)から成る群より選択される。なおさらに好ましい結合剤はコポビドン及び/又はアルファ化デンプンである。
本明細書で前述及び後述するコポビドンは、好ましくはビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合物であり、好ましくは約45000〜約70000の分子量を有する。例は、KollidonTM VA 64(BASF)である。
本明細書で前述及び後述するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC又はヒプロメロースとも呼ばれる)は、好ましくはヒプロメロース2910である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは好ましくは約4〜約6cpsの範囲の粘度を有する。例は、MethocelTM E5 Prem LV(Dow Chemicals)である。
本明細書で前述及び後述するヒドロキシプロピルセルロース(HPCとも呼ばれる)は、好ましくは約300〜約600mPa*sの範囲の粘度を有する。ヒドロキシプロピルセルロースは好ましくは約60000〜約100000、例えば約80000の分子量を有する。例は、KlucelTM EF(Aqualon)である。
本明細書で前述及び後述するポリビニルピロリドン(PVP、ポリビドン又はポビドンとも呼ばれる)は、好ましくは約28000〜約54000の分子量を有する。ポリビニルピロリドンは、好ましくは約3.5〜約8.5mPa*sの範囲の粘度を有する。例は、KollidonTM 25又はKollidonTM 30(BASF)である。
【0033】
本明細書で前述及び後述する低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPCとも呼ばれる)は、好ましくは約5〜約16質量%の範囲のヒドロキシプロポキシ含量を有する。
上記結合剤アルファ化デンプン及びL-HPCは、さらに希釈剤及び崩壊剤特性を有し、第2の希釈剤又は崩壊剤として使用することもできる。
1種以上の崩壊剤は、投与後の医薬組成物及び剤形の細分化を助けるのに役立つ。一般的な崩壊剤は例えば微結晶性セルロースであるが、リナグリプチンと適合性でないと認められた。
好ましくは本発明の医薬組成物に適した1種以上の崩壊剤は、クロスポビドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、及びデンプン、例えば天然デンプン、特にトウモロコシデンプン、及びアルファ化デンプン(前記物質の誘導体及び水和物を含めて)から成る群より選択される。前記崩壊剤のうち、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン及びクロスポビドンがなおさらに好ましい。
特に1つの剤形、例えば錠剤又はカプセル剤の本発明の医薬組成物においてリナグリプチンとグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を併用する場合、驚くべきことに、少なくとも2種の崩壊剤が好ましいことが分かった。好ましい崩壊剤はトウモロコシデンプン及びクロスポビドンである。
特に1つの剤形、例えば錠剤又はカプセル剤の本発明の医薬組成物においてリナグリプチンと式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体阻害薬を併用する場合、少なくとも3種の崩壊剤がなおさらに好ましい。好ましい崩壊剤はウモロコシデンプン、アルファ化デンプン及びクロスポビドンである。
本明細書で前述及び後述するクロスポビドンは、好ましくは不溶性ポリビドン、すなわちPVPの架橋型である。例はKollidonTM CL又はKollidonTM CL-SF(BASF)である。
本明細書で前述及び後述するトウモロコシデンプンは、好ましくは天然デンプンである。例はトウモロコシデンプン(エクストラホワイト(extra white))(Roquette)である。
上記崩壊剤デンプン及びアルファ化デンプンは、さらに希釈剤特性を示すので、例えば第2の希釈剤として使用することもできる。
【0034】
医薬組成物中の1種以上の潤沢剤は、錠剤の調製において、すなわち、圧縮と放出のサイクル中に摩擦を減少させる。さらに、潤沢剤は錠剤原料のダイ及びパンチへの付着を防止するのに役立つ。
好ましくは本発明の医薬組成物はさらに1種以上の潤沢剤を含む。本発明の医薬組成物に適した1種以上の潤沢剤は、タルク(例えばLuzenac)、ポリエチレングリコール、特に約4400〜約9000の範囲の分子量のポリエチレングリコール、水素化ヒマシ油、脂肪酸及び脂肪酸の塩、特に脂肪酸のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はカリウム塩、例えばベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ナトリウムステアリルフマラート又はステアリン酸マグネシウム(例えば(例えばHyQual(登録商標)、Mallinckrodt又はLigamed(登録商標)、Peter Greven)から成る群より選択される。さらに好ましい潤沢剤はステアリン酸マグネシウム及びタルクである。
特に1つの剤形、例えば錠剤又はカプセル剤の本発明の医薬組成物においてリナグリプチンと式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を併用する場合、驚くべきことに、少なくとも2種の潤沢剤が好ましいことが分かった。好ましい潤沢剤はタルク及びステアリン酸マグネシウムである。2種以上の潤沢剤を併用すると、低い放出力が可能になり、例えば錠剤の製造における最終ブレンドの固着を回避する。
1種以上の流動促進剤は、医薬組成物における粉末流動性を改善する薬剤である。
本発明の医薬組成物は、さらに1種以上の流動促進剤を含んでよい。好ましくは本発明の医薬組成物に適した1種以上の流動促進剤は、タルク及びコロイド状二酸化ケイ素(例えばAerosilTM 200 Pharma(Evonik))から成る群より選択される。
賦形剤、特にマンニトール等の1種以上の希釈剤は、1〜500μmの粒径を有することが好ましい。造粒プロセスでは25〜160μmの粒径が好ましい。直接錠剤化プロセスでは180〜500μmの粒径が好ましい。好ましくはふるい分けによって粒径を分析する。好ましくは粒子の少なくとも80質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは少なくとも95質量%が所定範囲内である。
【0035】
本発明の第1の実施形態によれば、医薬組成物は、リナグリプチンである1種のみの活性医薬成分を含む。
本発明の第1の実施形態の好ましい組成物は、希釈剤、結合剤及び崩壊剤を含む。好ましくは前記組成物は1種のみの希釈剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1種のみの希釈剤と1種のみの結合剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1種のみの希釈剤、1種のみの結合剤及び1種のみの崩壊剤を含む。組成物がさらに少なくとも1種の潤沢剤を含んでよい。さらに組成物が少なくとも1種の流動促進剤をさらに含んでよい。
第1の実施形態の医薬組成物は、好ましくは
0.5〜20%の活性医薬成分、
40〜88%の1種以上、好ましくは1種の希釈剤、
0.5〜20%の1種以上の結合剤、
0.5〜20%の1種以上の崩壊剤
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
を含む。
下記範囲:
0.5〜10%の活性医薬成分、
50〜75%の1種以上、好ましくは1種の希釈剤、
1〜15%の1種以上の結合剤、
1〜15%の1種以上の崩壊剤
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
がなおさらに好ましい。
第1の実施形態の別の医薬組成物は、好ましくは
0.5〜20%の活性医薬成分、
40〜88%の1種以上、好ましくは1種の希釈剤、
0.5〜20%の1種以上の結合剤、
0.5〜20%の1種以上の崩壊剤、及び
0.1〜4%の1種以上の潤沢剤
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
を含む。
下記範囲:
0.5〜10%の活性医薬成分、
50〜75%の1種以上、好ましくは1種の希釈剤、
1〜15%の1種以上の結合剤、
1〜15%の1種以上の崩壊剤、及び
0.5〜3%の1種以上の潤沢剤
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
がなおさらに好ましい。
上記医薬組成物では、好ましい希釈剤はマンニトールである。好ましい結合剤はコポビドンである。好ましい崩壊剤はトウモロコシデンプンである。好ましい潤沢剤はステアリン酸マグネシウムである。医薬組成物が第2の希釈剤を含む場合、アルファ化デンプンが好ましいであろう。それはさらに結合剤特性を有する。
第1の実施形態の医薬組成物で調製した医薬剤形、例えば錠剤又はカプセル剤は、活性成分として好ましくは治療的に有効な量のリナグリプチンを含む。好ましい薬用量範囲は0.1〜100mg、さらに好ましくは0.5〜20mg、なおさらに好ましくは1〜10mgである。好ましい薬用量は例えば0.5mg、1mg、2.5mg、5mg及び10mgである。
【0036】
本発明の第2の実施形態によれば、医薬組成物は、2種の活性医薬成分、すなわちリナグリプチンと、本明細書で前述及び後述する式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特にリナグリプチンと化合物(I.3)を含む。
驚くべきことに、式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)は、フリーのヒドロキシル基のあるグルコピラノシル成分を有するにもかからわず、リナグリプチンと適合性である、すなわちグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体と併用したリナグリプチンは分解を示さないか又は最低限の分解しか示さないことが認められた。
第2の実施形態の好ましい医薬組成物は、2種の活性医薬成分としてリナグリプチンと化合物(I.3)を含む。好ましくは医薬組成物又は剤形はリナグリプチンと化合物(I.3)を含み、ここで、該化合物(I.3)の少なくとも50質量%が本明細書で前述したようにその結晶形(I.3X)の形態である。さらに好ましくは前記医薬組成物又は剤形では、該化合物(I.3)の少なくとも80質量%、なおさらに好ましくは少なくとも90質量%が本明細書で前述したようにその結晶形(I.3X)の形態である。好ましくは医薬組成物又は剤形は、WO2007/128721(参照によってその全体が本明細書に援用される)に記載されているように、1つ以上の結晶形、特に多形A及びBのリナグリプチンを含む。
本発明の第2の実施形態の好ましい医薬組成物は1種以上の希釈剤、1種以上の結合剤及び1種以上の崩壊剤を含む。本発明の第2の実施形態のなおさらに好ましい医薬組成物は、1種以上の希釈剤、1種以上の結合剤、1種以上の崩壊剤及び1種以上の潤沢剤を含む。好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤及び1種の結合剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤、1種の結合剤及び1種の崩壊剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤、1種の結合剤及び少なくとも2種の崩壊剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤、1又は2種の結合剤及び少なくとも2種の崩壊剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤、1又は2種の結合剤、少なくとも2種の崩壊剤及び1種の潤沢剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤、1又は2種の結合剤、少なくとも2種の崩壊剤及び1又は2種の潤沢剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤、1又は2種の結合剤、少なくとも2種の崩壊剤及び2種の潤沢剤を含む。なおさらに好ましくは前記組成物は1又は2種の希釈剤、1又は2種の結合剤、3種の崩壊剤及び2種の潤沢剤を含む。さらに該組成物が少なくとも1種の流動促進剤をさらに含んでよい。好ましい希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤及び流動促進剤は本明細書で前述及び後述される。
【0037】
第2の実施形態の医薬組成物は好ましくは
0.5〜25%の活性医薬成分、
40〜88%の1種以上の希釈剤、
0.5〜20%の1種以上の結合剤、
0.5〜20%の1種以上の崩壊剤、
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
を含む。
下記範囲:
1〜20%の活性医薬成分、
50〜75%の1種以上の希釈剤、
1〜15%の1種以上の結合剤、
1〜15%の1種以上の崩壊剤、
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
がなおさらに好ましい。
さらに前記医薬組成物は、組成物全体の0.1〜15質量%の範囲で1種以上の潤沢剤を含んでよい。
第2の実施形態の医薬組成物は、好ましくは
0.5〜25%の活性医薬成分、
40〜88%の1種以上の希釈剤、
0.5〜20%の1種以上の結合剤、
0.5〜20%の1種以上の崩壊剤、
0.1〜15%の1種以上の潤沢剤
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
を含む。
【0038】
上記医薬組成物では、好ましい希釈剤はマンニトールであり、好ましい結合剤はコポビドンであり、かつ好ましい崩壊剤はトウモロコシデンプン及びクロスポビドンから選択される。好ましい潤沢剤はステアリン酸マグネシウム及びタルクから選択される。医薬組成物が第2の希釈剤を含む場合、アルファ化デンプンが好ましい。アルファ化デンプンはさらに結合剤及び崩壊剤特性を有する。
従って、第2の実施形態の好ましい医薬組成物は、下記組成:
1〜20%の活性医薬成分、
50〜75%のマンニトール、
2〜4%のコポビドン、
8〜12%のウモロコシデンプン
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
によって特徴づけられる。
第2の実施形態の別の好ましい医薬組成物は、下記組成:
1〜20%の活性医薬成分、
50〜75%のマンニトール、
0〜15%のアルファ化デンプン、
2〜4%のコポビドン、
8〜12%のトウモロコシデンプン、
0〜2%のクロスポビドン
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
によって特徴づけられる。
【0039】
好ましくは上記医薬組成物はさらに潤沢剤を含む。潤沢剤は好ましくは組成物全体の0.5〜2質量%の量のステアリン酸マグネシウムである。
好ましくは上記医薬組成物はさらに少なくとも2種の潤沢剤を含む。第1の潤沢剤は好ましくは組成物全体の0.5〜2質量%の量のステアリン酸マグネシウムである。第2の潤沢剤は好ましくは組成物全体の0.5〜10質量%の量のタルクである。
従って、第2の実施形態の好ましい医薬組成物は、下記組成:
1〜20%の活性医薬成分、
50〜75%のマンニトール、
0〜15%のアルファ化デンプン、
2〜4%のコポビドン、
8〜12%のトウモロコシデンプン、
0〜2%のクロスポビドン、
0.5〜2%のステアリン酸マグネシウム、
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
によって特徴づけられる。
第2の実施形態の別の好ましい医薬組成物は、下記組成:
1〜20%の活性医薬成分、
50〜75%のマンニトール、
0〜15%のアルファ化デンプン、
2〜4%のコポビドン、
8〜12%のトウモロコシデンプン、
0〜2%のクロスポビドン、
0.5〜2%のステアリン酸マグネシウム、
0.5〜10%のタルク
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
によって特徴づけられる。
【0040】
本発明の医薬組成物は、さらに1種以上の矯味剤(taste masking agent)、例えば甘味剤又は香味剤、及び色素を含んでよい。
本発明の医薬組成物は、さらに1種以上のコーティングを含んでよい。非機能性コーティングが好ましい。
本発明の医薬組成物は好ましくは特に経口投与を意図した固体医薬組成物である。本発明の医薬組成物を含む本発明の医薬剤形は好ましくは特に経口投与を意図した固体医薬剤形である。例はカプセル剤、錠剤、例えばフィルムコーティング錠、又は顆粒である。
本発明の第1の実施形態の医薬剤形、例えばカプセル剤又は錠剤は、リナグリプチンである1種のみの活性医薬成分を含む。
本発明の第2の実施形態の医薬剤形、例えばカプセル剤又は錠剤は2種の活性医薬成分、すなわちリナグリプチンと、本明細書で前述及び後述する式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特にリナグリプチンと化合物(I.3)を含む。錠剤は、2種の活性医薬成分が1つの層内に存在する一層錠剤であってよい。或いは錠剤は、2種の活性医薬成分の一方が第1の層内に存在し、他方の活性医薬成分が第2の層内に存在する二層錠剤であってよい。或いは製剤は、2種の活性医薬成分の一方がコア錠剤内に存在し、他方の活性医薬成分がフィルムコーティング層内に存在するフィルムコーティング錠であってよい。或いは錠剤は、それぞれ1種のみの活性医薬成分を含む2つの層が、いずれの活性医薬成分も含まない第3の層で隔てられている三層錠剤であってよい。或いは錠剤は、プレスコーティング錠、すなわち一方の活性医薬成分が例えば2〜6mm径の小錠剤に含まれ、かつ他方の活性医薬成分が第2の顆粒又はブレンドに含まれ、1つの小錠剤と共に大きいプレスコーティング錠に圧縮された錠剤であってよい。ここで前述した全てのタイプの錠剤はコーティングがなくてよく、或いは1以上のコーティング、特にフィルムコーティングを有してよい。好ましくは非機能性コーティングである。
【0041】
当然のことながら、本発明の1種以上の活性医薬成分の、本発明の治療又は予防で使うために患者に投与され及び必要とされる量は、投与経路、治療又は予防が必要な状態の性質及び重症度、患者の年齢、体重及び状態、併用薬によって変化し、究極的には付き添い医師の自由裁量であろう。しかしながら、一般に、医薬剤形の投与によって、治療すべき患者の血糖コントロールが改善されるような量が好ましい。
以下に本発明の医薬剤形で使用するリナグリプチン及びグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の量の好ましい範囲を示す。これらの範囲は、成人患者、特に例えば約70kgの体重のヒトについて1日に投与すべき量を表し、かつ投与については1日に2、3、4又はそれより多い回数に応じて、また他の投与経路及び患者の年齢についてそれ相応に適応させ得る。薬用量及び量の範囲は個々の活性成分に対して計算される。
第2の実施形態の好ましい医薬剤形は、治療的に有効な量のリナグリプチンと治療的に有効な量のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体(特に化合物(I.3))を含む。リナグリプチンの好ましい量は0.1〜30mg、好ましくは0.5〜20mg、なおさらに好ましくは1〜10mg、最も好ましくは2〜5mgの範囲である。好ましい薬用量は例えば0.5mg、1mg、2.5mg、5mg及び10mgである。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体(特に化合物(I.3))の量は0.5〜100mg、好ましくは0.5〜50mg、なおさらに好ましくは1〜25mg、なおさらに好ましくは5〜25mg、最も好ましくは10〜25mgの範囲である。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の好ましい薬用量は例えば1mg、2mg、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、20mg、25mg及び50mgである。第2の実施形態の医薬剤形は、例えば下表に示す実施形態から選択される薬用量の組合せを含む。
【0042】

【0043】
本発明の錠剤をフィルムコーティングしてよい。典型的にフィルムコーティングは組成物全体の2〜5質量%に相当し、好ましくはフィルム形成剤、可塑剤、流動促進剤及び必要に応じて1種以上の色素を含む。典型的なコーティング組成物はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、タルク、二酸化チタン及び必要に応じて酸化鉄(酸化鉄レッド及び/又はイエローを含めて)を含んでよい。典型的名コーティング組成物はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、タルク、二酸化チタン、マンニトール及び必要に応じて酸化鉄(酸化鉄レッド及び/又はイエローを含めて)を含んでよい。
本発明の医薬剤形は、好ましくは45分後に1又は2種の医薬活性成分のそれぞれについてそれぞれの医薬活性成分の少なくとも75質量%、なおさらに好ましくは少なくとも90質量%が溶解されるような溶解特性を有する。さらに好ましい実施形態では、30分後に1又は2種の医薬活性成分のそれぞれについてそれぞれの医薬活性成分の少なくとも75質量%、なおさらに好ましくは少なくとも90質量%が溶解される。最も好ましい実施形態では、15分後に1又は2種の医薬活性成分のそれぞれについてそれぞれの医薬活性成分の少なくとも75質量%、なおさらに好ましくは少なくとも90質量%が溶解される。溶解特性は、例えばUSP31-NF26 S2、第711章(溶解)のような薬局方に記載されているように、標準的な溶解試験で決定され得る。好ましい試験については実験セクションで述べる。
本発明の医薬剤形は、好ましくは40分以内、さらに好ましくは30分以内、なおさらに好ましくは20分以内、最も好ましくは15分以内で医薬剤形が崩壊されるような崩壊特性を有する。崩壊特性は、例えばUSP31-NF26 S2、第701章(崩壊)のような薬局方に記載されているように、標準的な崩壊試験で決定され得る。好ましい試験については実験セクションで述べる。
本発明の医薬剤形は、好ましくは1又は2種の活性医薬成分のそれぞれについて高い含量均一性、好ましくは85〜115%、さらに好ましくは90〜110%、なおさらに好ましくは95〜105質量%の範囲内の含量均一性を有する。含量均一性は例えばUSP31-NF26 S2、第905章(薬用量単位の均一性(uniformity of dosage units))のような薬局方に記載されているように、ランダムに選ばれた30の医薬剤形を用いる標準的な試験で決定され得る。
【0044】
本発明の剤形、例えば錠剤、カプセル剤又はフィルムコーティング錠は、当業者に周知の方法で調製される。
錠剤の好ましい製造方法は、粉末形態の医薬組成物の圧縮、すなわち直接圧縮、又は顆粒形態の医薬組成物と、必要な場合は追加の賦形剤との圧縮である。
本発明の医薬組成物の顆粒は、当業者に周知の方法で調製される。賦形剤と共に1種以上の活性成分を造粒するための好ましい方法には、湿式造粒、例えば高せん断湿式造粒又は流動床湿式造粒、及びローラーコンパクションとも呼ばれる乾式造粒がある。
好ましい湿式造粒プロセスでは、造粒液は溶媒又は溶媒の混合物だけであるか或いは溶媒又は溶媒の混合物中の1種以上の結合剤の製剤である。適切な結合剤については上述している。例はコポビドンである。適切な溶媒は、例えば水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、好ましくは精製水であり、その混合物が含まれる。溶媒は、揮発性成分であり、最終製品には残らない。例えば高せん断造粒機を用いて、1種以上の活性成分及び他の賦形剤、特に1種以上の希釈剤、必要に応じて1種以上の結合剤及び必要に応じて1種以上の崩壊剤、普通は潤沢剤以外を前混合し、造粒液と造粒する。湿式造粒工程の後に普通は1つ以上の乾燥及びふるい分け工程がある。任意の湿式ふるい分け工程の後に顆粒の乾燥及び乾式ふるい分け工程がある。例えば次に流動床乾燥機を使用することができる。
【0045】
この発明の調製プロセスは、第1及び第2の活性医薬成分を1種以上の希釈剤、1種以上の結合剤及び1種以上の崩壊剤と共に造粒する造粒プロセスによって特徴づけられる。
この発明の調製プロセスは、好ましくは1つの造粒プロセスで第1の活性医薬成分を1種以上の希釈剤、1種以上の結合剤及び1種以上の崩壊剤と共に造粒し、別の造粒プロセスで第2の活性医薬成分を1種以上の希釈剤、1種以上の結合剤及び1種以上の崩壊剤と造粒する少なくとも2つの造粒プロセスによって特徴づけられる。
好ましくは上記プロセスでは、1つ以上の造粒プロセスで得られた顆粒を必要に応じて1種以上の追加の崩壊剤及び1種以上の潤沢剤とブレンドする。
乾燥した顆粒を適切なふるいに通して選別する。他の賦形剤、特に1種以上の崩壊剤及び流動促進剤及び必要に応じて潤沢剤タルク(潤沢剤、特にステアリン酸マグネシウムを除いて)の添加後、混合物を適切なブレンダー、例えば自由落下ブレンダーでブレンドした後、1種以上の潤沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムを添加し、ブレンダー内で最終ブレンディングを行なう。
【0046】
従って、本発明の医薬組成物を含む顆粒の調製のための典型的な湿式造粒プロセスは、
a. 必要に応じて1種以上の結合剤を溶媒又は溶媒の混合物、例えば精製水に周囲温度で溶解させて造粒液を生成する工程;
b. 1種以上の活性医薬成分、1種以上の希釈剤、必要に応じて1種以上の結合剤及び必要に応じて1種以上の崩壊剤を適切なミキサーでブレンドしてプレミックスを生成する工程;
c. プレミックスを造粒液で湿らせ、その湿ったプレミックスを引き続き例えば高せん断ミキサーで造粒する工程;
d. 該顆粒状プレミックスを必要に応じて少なくとも1.0mm、好ましくは3mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する工程;
e. 該顆粒を例えば流動床乾燥機内で約40〜75℃、好ましくは55〜65℃の入口空気温度にて、1〜5%の所望乾燥減量値が得られるまで乾燥させる工程;
f. 乾燥した顆粒を例えば0.6mm〜1.6mm、好ましくは1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別することによって塊を除く工程(delumping);及び
g. 好ましくはふるい分けした潤沢剤を例えばキューブミキサー内で最終ブレンディングのため顆粒に添加する工程
を含む。
代替プロセスでは、賦形剤の一部、例えば1種以上の崩壊剤の一部、例えばトウモロコシデンプン、又は追加の崩壊剤、例えばクロスポビドン、及び/又は1種以上の希釈剤、例えばアルファ化デンプンを、工程gの最終ブレンディングの前に顆粒外にて添加することができる。
本プロセスの別の代替変形では、工程a〜eで生成した顆粒をワンポット高せん断造粒プロセスで生成し、引き続きワンポット造粒機内で乾燥させる。従って、本発明の一態様は、この発明の医薬組成物を含む顆粒に関する。
【0047】
本発明の医薬組成物を含む顆粒の調製のための典型的な乾式造粒プロセスは、
(1) 1又は2種の活性医薬成分を全て又は一部の賦形剤とミキサー内で混合する工程;
(2) 工程(1)の混合物の適切なローラー圧縮機での圧縮;
(3) 工程(2)中に得られたリボンを適切な製粉又はふるい分け工程によって小顆粒に縮小する工程;
(4) 工程(3)の顆粒を必要に応じてミキサー内で残りの賦形剤と混合して最終混合物を得る工程;
(5) 工程(3)の顆粒又は工程(4)の最終混合物を適切な錠剤プレス機で圧縮することによって錠剤化して錠剤コアを生成する工程;
(6) 工程(5)の錠剤コアを必要に応じて非機能性コーティング剤でフィルムコーティングする工程
を含む。
この発明の第1の実施形態の顆粒は、リナグリプチンである1種のみの活性医薬成分(薬)を含む。
この発明の第2の実施形態の顆粒は、2種の活性医薬成分、すなわちリナグリプチンと、本明細書の前記及び後記定義どおりの式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特にリナグリプチンと化合物(I.3)を含む。
顆粒の好ましいサイズは25〜800μm、なおさらに好ましくは40μm〜500μmの範囲内である。好ましくはサイズは、例えばソニックシフター(sonic sifter)を用いてふるい分け分析によって測定される。好ましくは少なくとも80質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは少なくとも95質量%の顆粒が所定範囲内である。
【0048】
カプセル剤の調製のため、例えば工程(f.)及び(g.)で上述した顆粒又は最終ブレンドをさらにカプセルに詰める。
本発明の第2の実施形態のカプセル剤の調製のため、本発明の第2の実施形態の顆粒、すなわち2種の活性医薬成分を含む顆粒を使用してよい。或いは本発明の第1の実施形態の顆粒、すなわち1種の活性医薬成分としてリナグリプチンを含む顆粒、及び本明細書の前記及び後記定義どおりの式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含む顆粒を使用してよい。
錠剤又は錠剤コアの調製のため、適切な錠剤プレス機を用いて、顆粒又は例えば上記工程(g.)の最終ブレンドをさらに圧縮して、適切なサイズと破砕強度を有する目標の錠剤コア質量の錠剤にする。最終ブレンドは本発明の顆粒と、1種以上の潤沢剤と、必要に応じて1種以上の崩壊剤と、任意の1種以上の流動促進剤とを含む。該追加の崩壊剤は例えばクロスポビドンである。
本発明の第2の実施形態の一層錠剤の調製のため、本発明の第2の実施形態の顆粒、すなわち2種の活性医薬成分を含む顆粒を使用してよい。或いは本発明の第1の実施形態の顆粒、すなわち1種の活性医薬成分としてリナグリプチンを含む顆粒、及び本明細書の前記及び後記定義どおりの式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)を含む顆粒を使用し得る。
本発明の第2の実施形態の二層錠剤の調製のため、本発明の第1の実施形態の顆粒、すなわち1種の活性医薬成分としてリナグリプチンを含む顆粒を第1の層で使用し、本明細書の前記及び後記定義どおりの式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)を含む顆粒を第2の層で使用し得る。
【0049】
本発明の第2の実施形態の錠剤、例えば二層錠剤は、好ましくは
0.5〜25%の活性医薬成分、
40〜88%の1種以上の希釈剤、
0.5〜20%の1種以上の結合剤、
0.5〜20%の1種以上の崩壊剤、
0.1〜15%の1種以上の潤沢剤
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
を含む。
下記範囲:
0.5〜20%の活性医薬成分、
50〜75%の1種以上の希釈剤、
1〜15%の1種以上の結合剤、
1〜15%の1種以上の崩壊剤、
0.5〜10%の1種以上の潤沢剤
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
がなおさらに好ましい。
さらに下記賦形剤及び範囲:
0.5〜20%の活性医薬成分、
50〜75%のマンニトール(例えばPearlitol 50C、Roquette)
0〜15%のアルファ化デンプン(例えばトウモロコシデンプン 1500 INT(Colorcon))、
2〜4%のコポビドン(例えばPolyvidone VA 64 INT(BASF))、
8〜12%のトウモロコシデンプン(例えば未乾燥トウモロコシデンプン(Roquette))、
0.5〜2%のステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual、(Mallinckrodt))、
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
が好ましい。特に高い錠剤質量が達成される場合、例えば2種の顆粒(各活性成分に1種)で作られる一層錠剤又は上述したような二層錠剤の場合、追加の崩壊剤、例えば組成物全体の0〜2質量%の量のクロスポビドンを使用してよい。
さらに下記賦形剤及び範囲:
0.5〜20%の活性医薬成分、
50〜75%のマンニトール(例えばPearlitol 50C, Roquette)
0〜15%のアルファ化デンプン(例えばトウモロコシデンプン 1500 INT(Colorcon))、
2〜4%のコポビドン(例えばPolyvidone VA 64 INT (BASF))、
8〜12%のトウモロコシデンプン(例えば未乾燥トウモロコシデンプン(Roquette))、
0〜2%のクロスポビドン(KollidonTM CL〜SF,(BASF))
0.5〜2%のステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual, (Mallinckrodt))、
0〜10%のタルク(Talc, (Luzenac))
(パーセンテージは組成物全体の質量による)
がさらに好ましい。
錠剤中の潤沢剤の必要量を減らすため外部潤沢システムの使用は1つの選択肢である。
フィルムコーティング錠の調製のため、コーティング懸濁液を調製し、標準的なフィルムコーターを用いて該コーティング懸濁液で約2〜5%、好ましくは約3%増量まで圧縮錠剤コアをコーティングする。フィルムコーティング溶媒は揮発性成分であり、最終製品に残存しない。代替実施形態では、フィルムコーティング剤が2種の活性医薬成分の1つを含み得る。
【0050】
或いは本発明の錠剤を直接圧縮で調製することができる。適切な直接圧縮プロセスは、以下の工程を含む:
(1) 1又は2種の活性成分及び賦形剤の主要部分をミキサー内で前混合してプレミックスを得る工程;
(2) 粘着性粒子を分離するため及び含量均一性を改善するため必要に応じて該プレミックスをふるいに通して乾式ふるい分けする工程;
(3) ミキサー内で工程(1)又は(2)のプレミックスを混合し、必要に応じて残りの賦形剤を混合物に添加して混合を続ける工程;
(4) 工程(3)の最終混合物を適切な錠剤プレス機で圧縮することによって錠剤化して錠剤コアを生成する工程;
(5) 工程(4)の錠剤コアを必要に応じて非機能性コーティング剤でフィルムコーティングする工程。
【0051】
この発明の医薬組成物及び剤形、特に錠剤又はカプセル剤は、既知の包装材料、例えばPVC-ブリスター、PVDC-ブリスター、PVC/PVDC-ブリスター又は防湿包装材料、例えばアルミニウム箔ブリスターパック、alu/aluブリスター、小袋付き透明若しくは不透明ポリマーブリスター、ポリプロピレンチューブ、ガラス瓶、PPボトル及びHDPEボトルを用いて包装され、必要に応じて子供には扱えない特徴(例えば押してひねる閉鎖)を含むか又は不正開封の跡がすぐ分かるものであってよい。主な包装材料は、活性医薬成分の化学的安定性を改善するため分子ふるい又はシリカゲル等の乾燥剤を含み得る。不透明な包装、例えば着色ブリスター材料、チューブ、褐色ガラス瓶などを用いて、光分解の減少によって活性医薬成分の有効期間を延長することができる。配布用物品は、前述した包装材料で包装された医薬組成物又は剤形及びラベル又は添付文書を含み得る。ラベル又は添付文書は、治療製品の市販パッケージに習慣的に含まれる説明書を意味し、該治療製品の使用に関する適応症、使用法、服用量、投与、忌避及び/又は警告についての情報を含み得る。一実施形態では、ラベル又は添付文書は、本明細書に記載のいずれかの目的のために組成物を使用できることを指摘する。
【0052】
この発明の医薬組成物及び医薬剤形は、本明細書で前述した当該疾患及び状態の治療及び予防において抗糖尿病単剤療法と比較して有利な効果を示す。有利な効果は、例えば効力、有効成分含量(dosage strength)、投薬頻度(dosage frequency)、薬力学的特性、薬物動態学的特性、少ない副作用、利便性、コンプライアンス等について見られる。
この発明の医薬組成物及び医薬剤形は、SGLT2阻害薬若しくはDPP IV阻害薬のみを使用する単剤療法又はメトホルミンの単剤療法と比較して、特に本明細書で後述する患者の血糖コントロールを有意に改善する。改善された血糖コントロールは、血糖低減の増加及びHbA1c低減の増加として決定される。患者、特に本明細書で後述する患者の単剤療法では、普通は一定の最高用量を超える薬物を投与しても血糖コントロールをさらに有意に改善することはできない。さらに、最高用量を用いた長期治療は副作用の可能性に鑑みて望ましくない可能性がある。従って、SLGT2阻害薬若しくはDPP IV阻害薬のみ又は別の抗治療薬、例えばメトホルミンを使用する単剤療法によっては全ての患者で満足のいく血糖コントロールを達成できるわけではない。このような患者では、糖尿病の進行が継続し、糖尿病に伴う合併症、例えば大血管合併症が起こり得る。本発明の医薬組成物及び医薬剤形並びに方法は、抗糖尿病単剤療法と比較して多数の患者及び長い治療期間に対して、HbA1c値を所望の目標範囲、例えば<7%、好ましくは<6.5%に低減させる。
本発明の医薬組成物及び医薬剤形は、患者にとって良く耐えられる療法及び患者のコンプライアンスの改善を可能にする。
【0053】
DPP IV阻害薬を使用する単剤療法は、患者のインスリン分泌能力及びインスリン感受性と無関係でない。他方で、SGLT2阻害薬の投与による治療は患者のインスリン分泌能力及びインスリン感受性に左右されない。従って、支配的なインスリンレベル又はインスリン抵抗性及び/又は高インスリン血症と無関係ないずれの患者も本発明の医薬組成物及び医薬用量の組合せを利用する療法から利益を受け得る。自分たちの支配的なインスリンレベル又は自分たちのインスリン抵抗性又は高インスリン血症と無関係なこれらの患者は、SGLT2阻害薬の併用又は交互投与のため医薬組成物及び医薬用量で治療され得る。
本発明のリナグリプチンは、活性GLP-1レベルの上昇によって、患者のグルカゴン分泌を減少させることができる。従って、これは肝糖産生を制限するであろう。さらに、リナグリプチンによってもたらされた活性GLP-1レベルの上昇はβ細胞の再生及び新生に有利な効果を及ぼすであろう。全てのこれらの特徴が、医薬組成物及び医薬用量を非常に有用かつ治療的に関連性のあるものにする。
【0054】
この発明が治療又は予防を要する患者に言及する場合、本発明は主にヒトの治療及び予防に関するが、本医薬組成物を哺乳動物の獣医薬で適宜使用してもよい。この発明の範囲では、成人患者は好ましくは18歳以上の年齢のヒトである。また、この発明の範囲では、患者は青年期のヒト、すなわち10〜17歳、好ましくは13〜17歳の年齢のヒトである。青年期の集団では、本発明の医薬組成物の投与によって非常に良いHbA1c低減及び空腹時血糖の非常に良い低減が見られると想定される。さらに青年期の集団、特に過体重及び/又は肥満の患者では、顕著な体重減少が認めらると想定される。
前述したように医薬組成物及び医薬用量の投与によって、特にその中のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の高いSGLT2阻害薬活性を考慮すると、過剰の血糖が患者の尿を介して排泄されるので、結果として体重の増量がなく、減量さえ起こり得る。従って、この発明の治療又は予防は、過体重及び肥満、特にクラスI肥満、クラスII肥満、クラスIII肥満、内臓肥満及び腹部肥満から成る群より選択される1つ以上の状態と診断された該治療又は予防が必要な当該患者に有利に適している。さらにこの発明の治療又は予防は、体重増加が禁忌となる当該患者に有利に適している。
この発明の医薬組成物及び医薬剤形は、特に空腹時血糖、食後血糖及び/又はグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)を鑑みると血糖コントロールについて非常に良い効力を示す。この発明の医薬組成物又は医薬剤形を投与することによって、好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、なおさらに好ましくは3.0%以上のHbA1cの低減を達成することができ、この低減は特に1.0%〜3.0%の範囲内である。
【0055】
さらに、この発明の方法及び/又は使用は、下記状態:
(a) 100mg/dLより高い、特に125mg/dLより高い空腹時血糖又は血清グルコース濃度;
(b) 140mg/dL以上の食後血漿グルコース;
(c) 6.5%以上、特に7.0%以上、特に7.5%以上、なおさらに特に8.0%以上のHbA1c値
の1又は2つ以上を示す当該患者で有利に適用できる。
本発明は、2型糖尿病を有するか又は前糖尿病の最初の兆候を示している患者の血糖コントロールを改善するための医薬組成物又は医薬剤形の使用をも開示する。このように、本発明は糖尿病予防をも包含する。従って、前糖尿病の上記兆候の1つが現れたらすぐにこの発明の医薬組成物又は医薬剤形を用いて血糖コントロールを改善すれば、顕性2型糖尿病の発症を遅延させるか又は予防することができる。
さらに、この発明の医薬組成物及び医薬剤形は、インスリン依存性の患者、すなわちインスリン又はインスリン誘導体又はインスリン代用物又はインスリン若しくはインスリン誘導体若しくはインスリン代用物を含む製剤で治療しているか或いはそうでなくても治療するであろうか又はそれによる治療が必要であろう患者の治療に特に適している。これらの患者には2型糖尿病患者及び1型糖尿病患者が含まれる。
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、血糖コントロールの改善並びに/或いは空腹時血糖、食後血糖及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減が必要な、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性、代謝症候群及び/又は2型若しくは1型糖尿病と診断されている患者の前記改善及び/又は低減方法であって、前記及び後記定義どおりの医薬組成物又は医薬剤形を患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
本発明の別の実施形態によれば、食事制限及び運動の補助として、2型糖尿病の患者、特に成人患者の血糖コントロールを改善する方法が提供される。
【0056】
この発明の医薬組成物又は医薬剤形を使用することによって、特に抗糖尿病薬による治療にもかかわらず、例えばメトホルミン、SGLT2阻害薬又はDPPIV阻害薬による最大推奨用量又は耐性用量の経口単剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不完全な当該患者でさえ血糖コントロールの改善を達成できることが分かる。メトホルミンに関して最大推奨用量は例えば1日当たり2000mg又は1日3回850mg又はそのいずれかの等価用量である。この発明のSGLT2阻害薬に関して、特に化合物(I.3)に関して最大推奨用量は、例えば1日1回100mg、好ましくは50mg若しくは25mg又はそのいずれかの等価用量である。リナグリプチンに関して最大推奨用量は、例えば1日1回10mg、好ましくは5mg又はそのいずれかの等価用量である。
従って、この発明の方法及び/又は使用は、下記状態:
(a) 食事制限と運動では不完全な血糖コントロール;
(b) メトホルミンによる経口単剤療法にもかかわらず、特に最大推奨又は耐性用量のメトホルミンでの経口単剤療法にもかかわらず不完全な血糖コントロール;
(c) 別の抗糖尿病薬による経口単剤療法にもかかわらず、特に最大推奨又は耐性用量の他の抗糖尿病薬での経口単剤療法にもかかわらず不完全な血糖コントロール;
(d) SGLT2阻害薬による経口単剤療法にもかかわらず、特に最大推奨又は耐性用量のSGLT2阻害薬での経口単剤療法にもかかわらず不完全な血糖コントロール;
(e) DPPIV阻害薬による経口単剤療法にもかかわらず、特に最大推奨又は耐性用量のDPPIV阻害薬での経口単剤療法にもかかわらず不完全な血糖コントロール
の1、2又は3つ以上を示す当該患者に有利に適用できる。
【0057】
この発明のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の投与による血糖レベルの低減はインスリン非依存性である。従って、この発明の医薬組成物は、下記状態:
−インスリン抵抗性、
−高インスリン血症、
−前糖尿病、
−2型糖尿病、特に後期2型糖尿病を有する
−1型糖尿病
の1つ以上を有すると診断されている患者の治療に特に適している。
さらに、この発明の医薬組成物及び医薬剤形は、下記状態:
(a)肥満(クラスI、II及び/又はIII肥満を含め)、内臓肥満及び/又は腹部肥満、
(b)トリグリセリド血中レベル≧150mg/dL、
(c)HDL-コレステロール血中レベル<40mg/dL(女性患者)及び<50mg/dL(男性患者)、
(d)収縮期血圧≧130mmHg及び拡張期血圧≧85mmHg、
(e)空腹時血糖レベル≧100mg/dL
の1つ以上を有すると診断されている患者の治療に特に適している。
耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群と診断されている患者は、例えば心筋梗塞、冠動脈心疾患、心不全、血栓塞栓症などの心血管疾患を発症するリスク上昇に苦しむと想定される。この発明の血糖コントロールは、心血管疾患のリスクの減少をもたらし得る。
【0058】
この発明の医薬組成物及び医薬剤形は、良い安全性プロファイルを示す。従って、この発明の治療又は予防は、有利なことにメトホルミン等の別の抗糖尿病薬による単剤療法が禁忌である及び/又は治療用量の該薬物に対して不耐性を有する当該患者で可能である。特に、この発明の治療又は予防は、有利なことに下記障害:腎機能不全若しくは腎疾患、心疾患、心不全、肝疾患、肺疾患、異化状態(catabolytic state)及び/又は乳酸アシドーシスの危険の1つ以上のリスク上昇を示すか又は有する当該患者、或いは妊娠してるか又は授乳中の女性患者で可能である。
さらに、この発明の医薬組成物又は医薬剤形は、低血糖のリスクをもたらさないか又は低いリスクをもたらす。従って、この発明の治療又は予防は、有利なことに低血糖のリスク上昇を示すか又は有する当該患者でも可能である。
この発明の医薬組成物又は医薬剤形は、本明細書で前述及び後述する疾患及び/又は状態の長期治療又は予防、特に2型糖尿病患者の長期血糖コントロールに特に適している。
本明細書で前述及び後述する用語「長期」は、12週間より長い、好ましくは25週間より長い、なおさらに好ましくは1年より長い期間内の患者の治療又は該患者における投与を示す。
従って、本発明の特に好ましい実施形態は、2型糖尿病患者、特に後期2型糖尿病患者、特にさらに過体重、肥満(クラスI、クラスII及び/又はクラスIII肥満など)、内臓肥満及び/又は腹部肥満と診断された患者の血糖コントロールの改善、特に長期改善のための治療方法、好ましくは経口療法を提供する。
【0059】
本明細書で前述及び後述する全ての方法及び使用、特に治療、予防方法などでは、この発明の医薬組成物又は医薬剤形を好ましくは1日1回患者に投与する。
本発明の範囲内のいずれの上記組成物及び剤形も当該技術のみならず臨床研究で既知の動物モデルによって試験し得る。以下、この発明の医薬組成物及び剤形の薬理学的に関連性のある特性を評価するのに適しているin vivo実験について述べる。
db/dbマウス、ob/obマウス、Zucker Fatty(fa/fa)ラット又はZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットのような遺伝的に高インシュリン性又は糖尿病の動物でこの発明の医薬組成物、剤形及び方法を試験することができる。さらに、ストレプトゾトシンで前処理したHanWistar又はSprague Dawleyラットのような実験的に誘発した糖尿病の動物で試験することができる。
前記動物モデルの経口糖負荷試験でこの発明の医薬組成物及び剤形の血糖コントロールに対する効果を試験することができる。一晩絶食した動物に経口グルコース投与後に血中グルコースの時間経過を追跡する。本発明の組成物及び剤形は、ピークグルコース濃度の低減又はグルコースAUCの減少によって測定した場合、各単剤療法に比べてグルコース偏位を有意に改善する。さらに、前述した動物モデルに活性医薬成分のみ及び医薬組成物又は剤形を複数回投与した後、血中のHbA1c値を測定することによって、血糖コントロールの効果を決定することができる。この発明の組成物及び剤形は、各単剤療法に比べて有意にHbA1cを低減させる。
【0060】
前述した動物モデルの経口糖負荷試験における単回投与後に、この発明の治療の改善されたインスリン非依存性を示すことができる。一晩絶食した動物のグルコース投与後に血漿インスリンの時間経過を追跡する。本発明の組成物及び剤形は、リナグリプチンのみより低いインスリンピーク濃度又は低い血糖偏位でのインスリンAUCを示すであろう。
空腹時又は食後状態の前記動物モデルの血漿中の当該レベルを測定することによって、この発明の治療による単回又は複数回投与後の活性GLP-1レベルの上昇を決定することができる。同様に、血漿中のグルカゴンレベルの低減を同一条件下で測定できる。本発明の組成物及び剤形は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体のみより高い活性GLP-1濃度及び低いグルカゴン濃度を示すであろう。
前述した動物モデルに単回投与後に、膵臓インスリン含量の増加を測定することによって、又はβ細胞の質量増加を測定することによって、又は膵臓切片の免疫組織化学的染色後の形態計測分析によって、又は単離膵島におけるグルコース刺激性インスリンの増加を測定することによって、本発明の組成物及び剤形がβ細胞の再生及び新生に及ぼす優れた効果を判定することができる。
【実施例】
【0061】
(薬理学的実施例)
以下の実施例は、本発明の組合せが血糖コントロールに及ぼす有利な効果を示す。
実施例I:
第1の実施例により、一晩絶食した9週齢のオスのZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラット(ZDF/Crl-Leprfa)で経口糖負荷試験を行なう。尾出血によって投与前血液サンプルを得る。グルコメーター(glucometer)で血糖を測定し、血糖について動物をランダム化する(n=5/群)。引き続き、群はビヒクルのみ(3mMのHClと0.015%のPolysorbat 80を含む0.5%のヒドロキシエチルセルロース水溶液)又はSGLT2阻害薬若しくはDPPIV阻害薬若しくはSGLT2阻害薬プラスDPP IV阻害薬の組合せを含むビヒクルの単一経口投与を受ける。化合物投与30分後に動物は経口糖負荷(2g/kg)を受ける。グルコース投与30分、60分、90分、120分及び180分後に尾出血で血糖を測定する。反応性グルコースAUCを計算することによって、グルコース偏位を定量化する。データを平均±SEMとして表す。コントロール群と活性群の統計比較のため両側対応のないスチューデントt検定(two-sided unpaired Student t-test)を使用する。
結果を図3に示す。「Cpd. A」は1mg/kgの用量のリナグリプチンである。「Cpd. B」は3mg/kgの用量の化合物(I.3)、すなわち1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンである。「組合せA+B」は、同用量のリナグリプチンと化合物(I.3)の組合せである。P値対コントロールを棒上の記号によって示してある。組合せ対単剤療法のP値を図の下に示してある(*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001)。リナグリプチンはグルコース偏位を56%だけ低減させ、化合物(I.3)はグルコース偏位を51%だけ低減させる。組合せは経口グルコース負荷試験でグルコース偏位を84%だけ低減させた。グルコースAUCのこの低減は、各単剤療法に対して統計的に有意である。
【0062】
実施例II:
第2の実施例により、一晩絶食した約200gの体重のオスのSprague Dawleyラット(Crl:CD(SD))で経口糖負荷試験を行なう。尾出血によって投与前血液サンプルを得る。グルコメーターで血糖を測定し、血糖について動物をランダム化する(n=5/群)。引き続き、群はビヒクルのみ(0.015%のPolysorbat 80を含む0.5%のヒドロキシエチルセルロース水溶液)又はSGLT2阻害薬若しくはDPPIV阻害薬若しくはSGLT2阻害薬プラスDPPIV阻害薬プラス第3の抗糖尿病薬の組合せを含むビヒクルの単一経口投与を受ける。或いは群はビヒクルのみ又はSGLT2阻害薬若しくはDPPIV阻害薬プラス第3の抗糖尿病薬若しくは第3の抗糖尿病薬若しくはSGLT2阻害薬プラスDPPIV阻害薬プラス第3の抗糖尿病薬の組合せを含むビヒクルの単一経口投与を受ける。化合物投与30分後に動物は経口グルコース負荷(2g/kg)を受ける。グルコース投与30分、60分、90分、及び120分後に尾出血で血糖を測定する。反応性グルコースAUCを計算することによってグルコース偏位を定量化する。データを平均±S.E.M.として表す。統計比較はスチューデントのt検定(Student's t-test)を使用する。
【0063】
実施例III:前糖尿病の治療
病的空腹時血糖及び/又は耐糖能障害によって特徴づけられる前糖尿病の治療における本発明の医薬組成物又は医薬剤形の効力を臨床研究を利用して試験することができる。短期間(例えば2〜4週間)の研究では、空腹時血糖値及び/又は食後若しくは負荷試験(経口グルコース負荷試験又は規定食後の食物負荷試験)後血糖値を研究の治療期間の最後に測定し、それらを研究の開始前の値及び/又はプラセボ群の当該値と比較することによって、治療の成功を調べる。さらに、治療の前後にフルクトサミン値を測定し、初期値及び/又はプラセボ値と比較することができる。空腹時又は非空腹時血糖値の有意な低下が治療の効力を実証する。より長期(12週間以上)の研究では、HbA1c値を決定することによって、初期値及び/又はプラセボ群の値との比較により治療の成功を調べることができる。初期値及び/又はプラセボ値に比べた有意なHbA1c値の変化は、前糖尿病を治療するためのの本発明の組成物又は剤形の効力を実証する。
【0064】
実施例IV:顕性2型糖尿病の予防
病的空腹時血糖及び/又は耐糖能障害(前糖尿病)を治療することは、顕性2型糖尿病への移行を予防するという目標をも追求する。前糖尿病患者を長期間(例えば1〜5年)にわたってこの発明の医薬組成物又はプラセボ又は非薬物療法又は他の薬物で治療する比較臨床研究で治療の効力を調査することができる。療法中又はその最後に、空腹時血糖値を定量することによって及び/又は負荷試験(例えばoGTT)によって調べて、どれだけ多くの患者が顕性2型糖尿病、例えば>125mg/dlの空腹時血糖値及び/又は>199mg/dlのoGTTの2h値を示すかを判定する。この発明の医薬組成物又は剤形で治療したときの顕性2型糖尿病を示す患者数の他形態の治療の患者数に比べた有意な減少は、前糖尿病から顕性糖尿病への移行の予防の効力を実証する。
【0065】
実施例V:2型糖尿病の治療
本発明の医薬組成物又は剤形で2型糖尿病患者を治療すると、糖代謝状況の急激な改善をもたらすことに加えて、長期の代謝状況の悪化を予防する。このことは、患者を長期間、例えば3カ月〜1年又は1〜6年でさえ本発明の医薬組成物又は剤形で治療し、かつプラセボ又は他の抗糖尿病薬で治療した患者と比較すると認められる。空腹時血糖値及び/又はHbA1c値の上昇が認められないか又はわずかな上昇しか認められない場合、プラセボ又は他の抗糖尿病薬で治療した患者に比べて治療が成功したという証拠である。他の薬物で治療した患者に比べて、有意に少ないパーセンテージの本発明の医薬組成物又は剤形で治療した患者が、追加の経口抗糖尿病薬又はインスリン又はインスリン類似体による治療が必要とされる点への糖代謝位置の悪化(例えば>6.5%又は>7%へのHbA1c値の上昇)を受けるならば、治療の成功のさらなる証拠が得られる。
【0066】
実施例VI:インスリン抵抗性の治療
異なる長さの時間(例えば2週間〜12カ月)行なう臨床研究では、高インスリン血症正常血糖クランプ(hyperinsulinaemic euglycemic glucose clamp)研究を利用して治療の成功を調べる。研究の最後において、初期値と比較して又はプラセボ群、若しくは異なる療法を与えた群と比較してグルコース注入率の有意な上昇は、インスリン抵抗性の治療における本発明の医薬組成物又は剤形の効力を証明する。
【0067】
実施例VII:高血糖の治療
異なる長さの時間(例えば1日〜24カ月)行なう臨床研究では、空腹時血糖又は非空腹時血糖(例えば食後又はoGTT若しくは規定食による負荷試験後)を定量することによって、高血糖患者の治療の成功を調べる。初期値と比較して又はプラセボ群、若しくは異なる療法を与えた群と比較して、研究中又は研究の最後のこれらの血糖値の有意な低下は、高血糖の治療における本発明の医薬組成物又は剤形の効力を証明する。
【0068】
実施例VIII:大血管又は微小血管合併症の予防
本発明の医薬組成物又は剤形による2型糖尿病又は前糖尿病患者の治療は、微小血管合併症(例えば糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性足病変、糖尿病性潰瘍)又は大血管合併症(例えば心筋梗塞、急性冠動脈症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、血管再狭窄)を予防又は軽減するか又はその発症するリスクを減少させる。2型糖尿病又は前糖尿病の患者を長期間、例えば1〜6年間、本発明の医薬組成物又は剤形又は本発明の活性成分の組合せで治療し、他の抗糖尿病薬又はプラセボで治療した患者と比較する。他の抗糖尿病薬又はプラセボで治療した患者と比べた治療の成功の証拠は、少数の単一又は複数の合併症で分かる。大血管イベント、糖尿病性足病変及び/又は糖尿病潰瘍の場合、既往症及び種々の試験法によって数をカウントする。糖尿病性網膜症の場合、コンピューター制御照明及び眼に対する背景の評価又は他の眼科的方法によって治療の成功を判定する。糖尿病性神経障害の場合、既往症及び臨床検査に加えて、例えば較正された音叉を用いて神経伝達速度を測定することができる。糖尿病性腎症に関しては、下記パラメーターを研究の前、研究中及び研究の最後に調査し得る:アルブミンの分泌、クレアチニン・クリアランス、血清クレアチニン値、血清クレアチニン値が二倍になるのにかかる時間、透析が必要になるまでの時間。
【0069】
実施例IX:代謝症候群の治療
実行時間を変える(例えば12週間〜6年)臨床研究で空腹時血糖又は非空腹時血糖(例えば食後又はoGTT若しくは規定食による負荷試験後)又はHbA1c値を測定することによって、本発明の医薬組成物又は剤形の効力を試験することができる。初期値と比較するか又はプラセボ群、若しくは異なる療法を与えた群と比較して、研究中又は研究の最後のこれらの血糖値の有意な低下は、代謝症候群の治療におけるこの発明の医薬組成物又は剤形の効力を証明する。この例は、研究の開始時の出発値と比較するか又はプラセボ若しくは異なる療法で治療した患者群と比較した場合の収縮期及び/又は拡張期血圧の低減、血漿トリグリセリドの低減、総コレステロール又はLDLコレステロールの減少、HDLコレステロールの増加又は体重減少である。
【0070】
(医薬組成物及び医薬剤形の実施例)
以下、用語「API 1」は、式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、特に化合物(I.3)、好ましくはその結晶形の化合物(I3.X)を表し、用語「API 2」はリナグリプチンを表す。
医薬組成物又は剤形の製造前に、所望の粒径分布を得るため、活性医薬成分、すなわちリナグリプチン及び化合物(I.3)、好ましくはその結晶形の化合物(I3.X)をピンミル又はジェットミルのような適切なミルで製粉する。
本発明の好ましい活性医薬成分に典型的な粒径分布値X90、X50及びX10の例を下表に示す。
【0071】

【0072】
実施例1:1つの造粒、単層錠剤
コポビドンを精製水に周囲温度(約20℃)で溶解させて造粒液を生成する。API 2及びAPI 1、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通してふるい分けする。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
塊を除くためステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、顆粒に添加する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって最終ブレンドを生成し、15kNの圧縮力で8mmの丸錠剤コアに圧縮する。
適切なミキサー内で周囲温度にてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン及び酸化鉄を精製水に懸濁液させてコーティング懸濁液を生成する。錠剤コアをコーティング懸濁液で約3%増量するまでコーティングしてフィルムコーティング錠を生成する。以下の処方変形を得ることができる。
【0073】

【0074】
結果として生じる錠剤は、約85Nの錠剤硬度、0.5%未満の砕けやすさを有する。含量均一性は、USPの要件を満たす。崩壊時間は約7分であり、API 1とAPI 2の両方の溶解は、15分後に>85%、例えば97%のAPI 1及び101%のAPI 2である。
【0075】
実施例2:1つの造粒、単層錠剤
コポビドンを精製水に周囲温度で溶解させて造粒液を生成する。API 1、API 2、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
塊を除くためステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、顆粒に添加する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって最終ブレンドを生成し、17kNの圧縮力で8mmの丸錠剤コアに圧縮する。
適切なミキサー内で周囲温度にてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン及び酸化鉄を精製水に懸濁液させてコーティング懸濁液を生成する。錠剤コアをコーティング懸濁液で約3%増量するまでコーティングしてフィルムコーティング錠を生成する。以下の処方変形を得ることができる。
【0076】

【0077】
前述したように、錠剤硬度、砕けやすさ、含量均一性、崩壊時間及び溶解特性を決定する。
【0078】
実施例3:1つの造粒、単層錠剤
コポビドンを精製水に周囲温度で溶解させて造粒液を生成する。API 1、API 2、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。クロスポビドンを乾燥顆粒に添加し、5分間混合して主ブレンドを生成する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって最終ブレンドを生成し、16kNの圧縮力で8mmの丸錠剤コアに圧縮する。
適切なミキサー内で周囲温度にてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン及び酸化鉄を精製水に懸濁液させてコーティング懸濁液を生成する。錠剤コアをコーティング懸濁液で約3%増量するまでコーティングしてフィルムコーティング錠を生成する。以下の処方変形を得ることができる。
【0079】

【0080】
前述したように、錠剤硬度、砕けやすさ、含量均一性、崩壊時間及び溶解特性を決定する。
【0081】
実施例4:2つの造粒、単層錠剤
それぞれ1種だけ活性医薬成分を含む2つの別々の造粒を調製する。両造粒のため、コポビドンを精製水に周囲温度で溶解させて造粒液を生成する。
API 2、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
API 1、マンニトール、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン及び必要に応じて酸化鉄レッドのような色素を適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
適切なミキサー内で2種の顆粒を混ぜ合わせ、クロスポビドンを添加し、全成分を5分間混合して主ブレンドを生成する。塊を除くためステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、主ブレンドに添加する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって最終ブレンドを生成し、17kNの圧縮力で15×6mmの卵円形錠剤コアに圧縮する。以下の処方変形を得ることができる。
【0082】

【0083】
結果として生じる錠剤は、約105Nの錠剤硬度を有する。含量均一性はUSPの要件を満たす。砕けやすさは0.5%未満である。崩壊時間は約5分であり、両APIの溶解は、15分後に>85%である。
【0084】
実施例5:2つの造粒、単層錠剤
それぞれ1種だけ活性医薬成分を含む2つの別々の造粒を調製する。
コポビドンを精製水に周囲温度で溶解させて造粒液を生成する。API 2、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
API 1、マンニトール、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロー及び必要に応じて酸化鉄レッドのような色素を適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
適切なミキサー内で2種の顆粒を混ぜ合わせ、クロスポビドンを添加し、全成分を5分間混合して主ブレンドを生成する。塊を除くためステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、主ブレンドに添加する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって最終ブレンドを生成し、15kNの圧縮力で15×6mmの卵円形錠剤コアに圧縮する。以下の処方変形を得ることができる。
【0085】

【0086】
前述したように、錠剤硬度、砕けやすさ、含量均一性、崩壊時間及び溶解特性を決定する。
【0087】
実施例6:2つの造粒、二層錠剤
それぞれ1種だけ活性医薬成分を含む2つの別々の造粒を調製する。両造粒のため、コポビドンを精製水に周囲温度で溶解させて造粒液を生成する。
API 2、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
API 1、マンニトール、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン及び必要に応じて酸化鉄レッドのような色素を適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別し、クロスポビドンを添加し、適切なミキサー内で成分を5分間混合する。
塊を除くためステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、2種の顆粒に別々に添加する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって2種の最終ブレンドを生成する。API 1を含む最終ブレンドを第1の層に使用し、API 2を含む最終ブレンドを二層錠剤の第2の層に使用する。適切な錠剤プレス機で第1の層のためには2kNの第1の圧縮力を用い、10mmの丸錠剤コアを生成するためには12kNの主圧縮力を用いて二層錠剤を生成する。以下の処方変形を得ることができる。
【0088】

【0089】
結果として生じる錠剤は約120Nの錠剤硬度を有する。砕けやすさは0.5%未満である。含量均一性はUSPの要件を満たす。崩壊時間は約6分であり、両APIの溶解は、15分後に>85%である。
【0090】
実施例7:2つの造粒、二層錠剤
それぞれ1種だけ活性医薬成分を含む2つの別々の造粒を調製する。
コポビドンを精製水に周囲温度で溶解させて造粒液を生成する。API 2、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
API 1、マンニトール、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロー及び必要に応じて酸化鉄レッドのような色素を適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別し、クロスポビドンを添加し、適切なミキサー内で成分を5分間混合する。
塊を除くためステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、2種の顆粒に別々に添加する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって2種の最終ブレンドを生成する。API 1を含む最終ブレンドを第1の層に使用し、API 2を含む最終ブレンドを二層錠剤の第2の層に使用する。適切な錠剤プレス機で第1の層のためには2kNの第1の圧縮力を用い、10mmの丸錠剤コアを生成するためには12kNの主圧縮力を用いて二層錠剤を生成する。以下の処方変形を得ることができる。
【0091】

【0092】
前述したように、錠剤硬度、砕けやすさ、含量均一性、崩壊時間及び溶解特性を決定する。
【0093】
実施例8:1つの造粒、単層錠剤
コポビドンを精製水に周囲温度(約20℃)で溶解させて造粒液を生成する。API 1、API 2、マンニトール、アルファ化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー内でブレンドしてプレミックスを生成する。プレミックスを造粒液で湿らせ、引き続き造粒する。湿った顆粒を適切なふるいに通して選別する。流動床乾燥機内で入口空気温度約60℃にて、1〜4%の乾燥減量値が得られるまで顆粒を乾燥させる。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュサイズのふるいに通して選別する。
クロスポビドンとタルクを乾燥顆粒に添加し、5分間混合して主ブレンドを生成する。塊を除くためステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、主ブレンドに添加する。引き続き適切なブレンダー内で3分間最終ブレンディングによって最終ブレンドを生成し、16kNの圧縮力で8mmの丸錠剤コアに圧縮する。API 1とAPI 2を1つの造粒において併用し、引き続き1つの錠剤において、低放出力を可能にし、かつ最終ブレンドの錠剤パンチへの固着を回避することによって併用する場合、2種の潤沢剤タルク及びステアリン酸マグネシウムの組合せが特に有用であることを発見した。
適切なミキサー内で周囲温度にてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン、マンニトール及び酸化鉄を精製水に懸濁液させてコーティング懸濁液を生成する。錠剤コアをコーティング懸濁液で約3%増量するまでコーティングしてフィルムコーティング錠を生成する。以下の処方変形を得ることができる。
【0094】

【0095】
前述したように、錠剤硬度、砕けやすさ、含量均一性、崩壊時間及び溶解特性を決定する。
【0096】
(医薬組成物及び医薬剤形の特性に関する試験の実施例)
1. 崩壊試験
USP31-NF26 S2、第701章(崩壊)に記載されているように崩壊試験を行なった。
2. 溶解試験
標準溶解試験はUSP31-NF26 S2、第711章(溶解)に記載されている。50rpmの撹拌速度でパドル法(Apparatus 2)を利用した。溶解媒体は、900mLの0.05Mリン酸カリウム緩衝液pH 6.8、温度37℃である。10、15、20、30及び45分後にサンプルを採取する。サンプルをHPLCによって分析する。
API 1が化合物(I.3)であり、かつAPI 2がリナグリプチンである実施例4及び実施例6の錠剤の溶解プロファイルを図4に示す。
API 1が化合物(I.3)であり、かつAPI 2がリナグリプチンである実施例8の錠剤の溶解プロファイルを図5に示す。
【0097】
3. レーザー回折による粒径分布の測定
例えば光散乱又はレーザー回折技術によって粒径分布の測定を行なった。粒径を決定するため、例えば分散装置を利用して粉末をレーザー回折分光計に供給する。試験法を以下に詳細に示す:
機器:Laser Diffraction Spectrometer Sympatec HELOS Particle Sizer。
レンズ:R31(0.5/0.9μm〜75μm)
サンプル分散装置:乾燥分散機RODOS/M
バキューム:Nilfisk
供給装置:ASPIROS
供給速度:60.00mm/秒
一次圧:2.00バール
注射器押下げ:最大にする(mbar)2
基準測定:10秒
サイクル時間:100ミリ秒
誘発条件:開始0.0秒後最適濃度≧1%常に有効
最適濃度≦1%になって5.0秒後又は実時間30秒後に停止
最適濃度:約3〜12%の範囲
評価:HRLD
サンプルサイズ:約100mg
測定数:2(二つ組)
機器を製造業者の推奨に従い、製造業者提供ソフトウェアを用いてセットアップする。サンプルの一部を取り出す前にサンプル容器を徹底的に混合かつひっくり返して、必ず代表サンプルを試験するようにする。スパーテルを用いて約100mgのサンプルをASPIROSガラスバイアルに移し、バイアルに蓋をすることによって二つ組サンプルを調製する。蓋をしたバイアルを供給装置に入れる。
4. 錠剤硬度及び砕けやすさ
USP31-NF26 S2、第1217章(錠剤破壊力)に記載されているように錠剤硬度及び砕けやすさ試験を行なった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の活性医薬成分としてのリナグリプチン及び1種以上の賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項2】
さらに第2の活性医薬成分として下記式(I)
【化1】

(式中、R1はクロロ又はメチルを表し;かつR3はエチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシを表す)
のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、又はそのプロドラッグを含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記第1の活性医薬成分が、X90<200μmの粒径分布を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記第2の活性医薬成分が、1μm<X90<200μmの粒径分布を有する、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記1種以上の賦形剤が、1種以上の希釈剤を含む、請求項1、2、3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記1種以上の賦形剤が、1種以上の希釈剤及び1種以上の結合剤を含む、請求項1、2、3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記1種以上の賦形剤が、1種以上の希釈剤、1種以上の結合剤及び1種以上の崩壊剤を含む、請求項1、2、3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
下記成分
0.5〜25%の前記1又は2種の活性成分、
40〜88%の前記1種以上の希釈剤、
0.5〜20%の前記1種以上の結合剤、及び
0.5〜20%の前記1種以上の崩壊剤
(前記パーセンテージは組成物全体の質量による)
を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
顆粒、カプセル剤、錠剤又はフィルムコーティング錠の形態の、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物を含んでなる医薬剤形。
【請求項11】
固体医薬剤形、特にカプセル剤又は錠剤であることを特徴とする請求項10に記載の医薬剤形。
【請求項12】
第1の活性医薬成分として0.1〜30mgの量でリナグリプチンを含む、請求項10又は11に記載の医薬剤形。
【請求項13】
さらに第2の活性医薬成分として0.5〜100mgの量で、請求項2の定義どおりの式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含む、請求項10、11又は12に記載の医薬剤形。
【請求項14】
溶解試験において45分後に前記第1の活性医薬成分の少なくとも75質量%又は前記第1の活性医薬成分の少なくとも75質量%及び前記第2の活性医薬成分の少なくとも75質量%が溶解されることを特徴とする請求項10、11、12又は13に記載の医薬剤形。
【請求項15】
崩壊試験において該医薬剤形が30分以内に崩壊されることを特徴とする請求項10、11、12、13又は14に記載の医薬剤形。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載の医薬剤形の調製方法であって、1種以上の賦形剤と共に前記1又は2種の活性医薬成分を造粒する1つ以上の造粒プロセスを含む方法。
【請求項17】
1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖異常、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満及び代謝症候群から成る群より選択される代謝障害の予防、進行の減速、遅延又は治療が必要な患者の前記予防、進行の減速、遅延又は治療方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項10〜15のいずれか1項に記載の医薬剤形を前記患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項18】
血糖コントロールの改善並びに/或いは空腹時血糖、食後血糖及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減が必要な患者の前記改善及び/又は低減方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項10〜15のいずれか1項に記載の医薬剤形を前記患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項19】
耐糖能障害、空腹時血糖異常、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群から2型糖尿病への進行の予防、減速、遅延又は逆転が必要な患者の前記予防、減速、遅延又は逆転方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項10〜15のいずれか1項に記載の医薬剤形を前記患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項20】
糖尿病合併症、例えば白内障並びに微小血管及び大血管疾患、例えば腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、糖尿病性足病変、動脈硬化症、心筋梗塞、急性冠動脈症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害及び血管再狭窄から成る群より選択される状態又は障害の予防、進行の減速、遅延又は治療が必要な患者の前記予防、進行の減速、遅延又は治療方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項10〜15のいずれか1項に記載の医薬剤形を前記患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項21】
体重の減少又は体重増加の予防又は体重減少の促進が必要な患者の前記減少又は予防又は促進方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項10〜15のいずれか1項に記載の医薬剤形を前記患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項22】
以下
−1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖異常、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満及び代謝症候群から成る群より選択される代謝障害の予防、進行の減速、遅延又は治療;又は
−血糖コントロールの改善並びに/或いは空腹時血糖、食後血糖及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減;又は
−耐糖能障害、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群から2型糖尿病への進行の予防、減速、遅延又は逆転;又は
−糖尿病合併症、例えば白内障並びに微小血管及び大血管疾患、例えば腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中及び末梢動脈閉塞性疾患から成る群より選択される状態又は障害の予防、進行の減速、遅延又は治療;又は
−体重の減少又は体重増加の予防又は体重減少の促進;又は
−膵臓β細胞の変性及び/又は膵臓β細胞の機能性の低下の予防、減速、遅延若しくは治療並びに/或いは膵臓β細胞の機能性の改善及び/又は回復並びに/或いは膵臓インスリン分泌の機能性の回復;又は
−肝脂肪の異常蓄積に起因する疾患又は状態の予防、減速、遅延又は治療;又は
−インスリン感受性の維持及び/又は改善並びに/或いは高インスリン血症及び/又はインスリン抵抗性の治療又は予防
が必要な患者の
それらのための薬物製造のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
前記患者が、過体重、肥満、内臓肥満及び腹部肥満から成る群より選択される1つ以上の状態と診断された個体である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法又は請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記患者が下記状態:
(a) 100mg/dLより高い、特に125mg/dLより高い空腹時血糖又は血清グルコース濃度;
(b) 140mg/dL以上の食後血漿グルコース;
(c) 6.5%以上、特に7.0%以上のHbA1c値
の1又は2つ以上を示す個体である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法又は請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記患者が下記状態:
(a)肥満、内臓肥満及び/又は腹部肥満、
(b)トリグリセリド血中レベル≧150mg/dL、
(c)HDL-コレステロール血中レベル<40mg/dL(女性患者)及び<50mg/dL(男性患者)、
(d)収縮期血圧≧130mmHg及び拡張期血圧≧85mmHg、
(e)空腹時血糖レベル≧100mg/dL
の1、2又は3つ以上が存在する個体である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法又は請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記患者が、食事制限及び運動にもかかわらず又は抗糖尿病薬による単剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法又は請求項22に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−517458(P2012−517458A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549561(P2011−549561)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051735
【国際公開番号】WO2010/092124
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】