説明

リフトベルトおよびシステム

本発明はプーリ係合面にリブ付形状(25)を有するリフトベルト(10)を備える。リフトベルトはまた、エラストマ本体の内部に張力コード(15)を備える。リブはプーリのリブに係合する。リフトベルトは、平ベルトに比較して、リブの増加した面積により増加した負荷リフト性能を示す。ベルト(10)は、抵抗(Br)を有する導電性の張力コードをさらに備える。抵抗の変化はベルト負荷とともにベルト状態の測定に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリフトベルトおよびシステムに関し、特にリブ付面を備えた平リフトベルトを有するリフトベルトおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータを含むリフトシステムは一般的に、エレベータケージあるいは他の負荷の重量に耐えるロープあるいはリフトベルトを備える。リフトベルトは、電気モータのような駆動源とともに、負荷およびプーリにある態様で係合される。
【0003】
リフトベルトは平ベルトであってもよい。平ベルトはエラストマ本体の内部に含まれる張力コードを備える。平ベルトは厚さtよりも大きな幅Wを備える。
【0004】
平ベルトはリフト滑車に係合する。リフト滑車は平ベルト受面およびサイドフランジを有する。リフト滑車はプーリのベルト受面にゴム材料を備えてもよい。
【0005】
従来技術の代表はオーティスエレベータ会社(Otis Elevator Company)の国際公開第99/43885号公報(1999年)であり、これは1よりも大きいアスペクト比を有するエレベータシステムのための張力コードを開示する。張力コードは共通の被覆層の中に包まれた複数のロープを備える。
【0006】
従来技術の代表はまた、オーティスエレベータ会社(Otis Elevator Company)の国際公開第00/58706号公報(2000年)であり、これは導電性張力コードを有するロープにおける欠陥を検出あるいは測定して、測定された抵抗が欠陥を示す方法およびシステムを開示する。
【0007】
従来技術のベルトおよびプーリ滑車における平らな係合面は、負荷を持ち上げるために用いられるリフトトルクを制限する。リフトトルクは滑車に接触するベルトの面積の関数である。平ベルトの滑車は動作中騒音を発生するかもしれない。さらに、従来技術のロープあるいはベルトは、システムプーリとの接触によりエラストマ本体の磨耗を減少させるためにジャケットを備えない。
【0008】
必要なものは高められたリフト性能を有するリフトベルトである。必要なものはプーリに係合するためのリブを有するリフトベルトである。必要なものはジャケットを有するリフトベルトである。本発明はこれらのニーズに合致する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主要な目的は、高められたリフト性能を有するリフトベルトを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、プーリに係合するリブを有するリフトベルトを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的はジャケットを有するリフトベルトを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、本発明の後述の説明と添付図面により指摘され、あるいは明らかにされる。
【0013】
本発明はプーリ係合面にリブ付形状を有するリフトベルトを備える。リフトベルトはまた、エラストマ本体の内部に張力コードを備える。リブはプーリのリブに係合する。リフトベルトは、平ベルトに比較して、リブの増加した面積により増加した負荷リフト性能を示す。ベルトは、抵抗を有する導電性の張力コードをさらに備える。抵抗の変化はベルト負荷とともにベルト状態の測定に用いられる。
【0014】
明細書に組み込まれて明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、記述とともに、本発明の原理を説明するために役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明ベルトの断面図である。ベルト10はエラストマ本体20の内部に包まれた張力コード15を備える。エラストマ本体は、天然ゴムおよび合成ゴム、HNBR、EPDM、あるいはさまざまな組み合わせ、およびそれらに等価なものであってもよい。張力コードは、意図された使用のために十分な引張り強度を有するいかなる材料であってもよい。張力コードは、ポリエステル、カーボン、鋼、アラミド、および組み合わせ、そしてそれらに等価なものであってもよい。張力コードは、ベルトが曲がってプーリの外周に係合することを許容するのに十分な可撓性を備える。
【0016】
ベルトは幅Wおよび厚さtを有する。ベルトはまた、W/tが1よりも大きいアスペクト比を備える。
【0017】
プーリ係合面25はリブ付形状を有する。プーリ係合面はさらに、繊維が充填されている。繊維はセルロース、アラミド、ポリエステル、コットン、ナイロン、カーボン、アクリル、ポリウレタン、ガラスの単体あるいは組合せであってもよく、あるいは従来公知の等価な材料であってもよい。繊維は、約10μmから30μmの範囲の長さで、約10μmから20μmの範囲の厚さを有するものであってもよいが、好ましい実施形態では、約18μmの長さで、約15μmの厚さを有する。繊維は、約25から30phrの量だけエラストマに充填され、好ましくは約28.7phrの量である。
【0018】
繊維はベルトのプーリ係合面から延びる。繊維は、ベルトリブとプーリ溝の間の係合摩擦を高める。繊維はまた、プーリ係合面の磨耗を減少させる。繊維はまた、動作中にクラックが発達するのを防ぎ、それによりベルト寿命の期待値を大きくする。
【0019】
ベルト10はまた、ジャケット40を備える。ジャケット40はポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、織布または不織布、あるいは従来公知の等価な材料であってもよい。ジャケット40は、この明細書に記載されているように、「背面」プーリに係合するベルトの裏面すなわち平面によって生じる磨耗を十分に減少させる。
【0020】
動作中、ベルトはプーリ溝に係合する各リブにより自己案内する。自己案内の特性は、従来技術の平ベルトに要求される、フランジ付プーリの必要性を除去する。これはシステムにおいて使用されるプーリのコストを低下させる。
【0021】
リブ角αはプーリ溝に係合するベルトリブ面を増加させる。リブ角は約60°から120°の範囲であってもよいが、好ましいリブ角は、プーリ係合面の面積を最大にするために約90°である。
【0022】
約90°のリブ角の場合、リブ角αは約√2の係数でプーリ係合面の面積を増加させる。この方法におけるーリに係合するベルト面の増加は、リフトプーリによって伝達されるトルクを増加させる。これは、ひいてはリフトシステムの負荷容量を増加させる。他の方法として、負荷とトルクのために、従来技術の平ベルトよりも小さい幅Wを有してもよい。これは、ひいては、従来技術の平ベルトシステムと比較して、システムに要求されるスペースを減少させる。
【0023】
リブの使用はまた、ベルトがプーリに係合するときに、動作ノイズレベルを減少させるという望ましい効果を有する。本発明ベルトに溝付プーリを使用することは、プーリへのゴムのコーティングの必要性をなくす。
【0024】
張力コードの少なくとも1つは、従来公知の導電性のある等価物と同様に、例えば鋼のように抵抗を有する導電材料を備える。張力コード材料の抵抗は、従来公知のように略直線的に、負荷と温度に従って変化する。鋼のような鉄を含む材料において、抵抗の変化は温度の変化に通常比例する。この結果、温度の効果は知られており、補正することができ、したがって測定される負荷に基づいて抵抗の変化を取り除く。
【0025】
抵抗および抵抗の変化はホイートストンブリッジあるいは他の等価な電圧ブリッジ装置において測定される。図4参照。抵抗変化は張力コードそして、ひいてはベルトにおける負荷と相関関係がある。これは負荷の大きさを測定することになる。
【0026】
例えば、オペレータはシステムモータの動作、したがってエレベータ、フォークリフトあるいは等価なリフト装置の動作を制御するために、この負荷の大きさの測定特性を用いるかもしれない。特に、負荷検知回路が過負荷状態あるいは張力コードの破損を示すならば、モータおよびシステムはオペレータによる応対により自動あるいは手動で停止される。
【0027】
図2はフォークリフト装置の側面図である。本発明のベルト10はリフトフォークFに係合される。
【0028】
図3は本発明のベルト備えたエレベータシステムの側面図である。ベルト10は第1プーリP1からエレベータプーリPEの周りにかけ回される。PEからベルト10の端部は固定金具A2に連結される。固定金具A2は、例えば、ビルディングのいかなる構造部分に固定されてもよい。
【0029】
ベルト10はまた、駆動モータプーリP2から第3プーリP3を越えて、カウンタウエイトプーリPCWにかけ回される。PCWからベルト10の端部は固定金具A1に連結される。A2のように、固定金具A1は、例えば、ビルディングのいかなる構造部分に固定されてもよい。
【0030】
この明細書に記載されているように、ベルトはリブ付のプーリ係合面を有するので、プーリP1、P2、およびPEはそれぞれ溝を有する。プーリP1、P2、およびPEのそれぞれはベルトのリブを受けるために約90°の角度の溝を有する。
【0031】
プーリP3およびPCWはまた、「背面」プーリと呼ばれる。平ベルト受面を有するそれぞれはベルトの平面に係合する。各プーリはベルトの平らな背面に係合するので、平らなベルト受面を有する。ジャケット40が係合するのは、プーリのベルト受面である。ジャケット40は、プーリの動作および移動により引き起こされるかもしれないベルト10の磨耗を十分に減少させ、それにより動作寿命を十分に長くする。
【0032】
この実施形態において、ベルト10は無端状のベルトではない。むしろ、それは端部および長さを有する。ベルトは端部で固定金具A1およびA2に連結される。抵抗を測定するための装置、例えばホイートストンブリッジのような電気回路は各端部でベルトの張力コードに取付けられる。これにより、ベルトの応力の発生する全長が抵抗の変化によって測定され、これにより負荷の測定が可能になる。もちろん、ベルトの破損は、ほぼ無限の抵抗を有する開回路によって証明され、検出される。
【0033】
図4は抵抗検出回路の図である。図示された回路は単純なホイートストンブリッジの構成である。Brはベルト10の張力コード15における抵抗である。抵抗を有する抵抗器R1、R2、およびR3は既知である。Eは電源である。検流計Gは以下の式が成立するようにゼロの電圧を示すために用いられる:
Br=R1(R3/R2)
【0034】
電圧変化の大きさを検出するために、他の回路がGに接続されてもよい。もし電圧変化が所定値を越えたら、そのときスイッチが開放され、モータ動作(図示せず)を停止させる。例えば、注目している電圧変化は、張力コードにおける破損を示すR1を越える最大電圧低下以下の電圧までの増加を含む。
【0035】
本発明のひとつの形態が説明されたが、ここに記載された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と関連した部分に種々の変形が施されることは当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のベルトの断面図である。
【図2】フォークリフト装置の側面図である。
【図3】本発明のベルトを備えたエレベータシステムの側面図である。
【図4】抵抗検出回路の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅Wおよび厚さtを有し、プーリ係合面を有するエラストマ本体を備え、
前記エラストマ本体は1よりも大きいアスペクト比W/tを有し、
前記エラストマ本体の内部に含まれ、長手方向に延びる張力コードを備え、
前記プーリ係合面はリブ付形状を有し、
前記リブ付形状は約90°の角度のリブを有する
リフトベルト。
【請求項2】
前記張力コードが抵抗を有する導電材料を備える請求項1に記載のリフトベルト。
【請求項3】
前記張力コードの抵抗が変化してリフトベルトの負荷を示す請求項2に記載のリフトベルト。
【請求項4】
複数のリブの多数を備える請求項1に記載のリフトベルト。
【請求項5】
端部を有する請求項4に記載のリフトベルト。
【請求項6】
複数の張力コードの多数を備える請求項3に記載のリフトベルト。
【請求項7】
前記プーリ係合面の反対側の面にジャケットをさらに備える
請求項3に記載のリフトベルト。
【請求項8】
前記ジャケットがナイロンを備える請求項7に記載のリフトベルト。
【請求項9】
張力コードが金属材料を備える請求項8に記載のリフトベルト。
【請求項10】
張力コードが鋼を備える請求項9に記載のリフトベルト。
【請求項11】
張力コードの負荷を測定するために張力コードに連結された電気回路をさらに備える
請求項1に記載のリフトベルト。
【請求項12】
張力コードの破損を検出するための電気回路をさらに備える
請求項1に記載のリフトベルト。
【請求項13】
幅Wおよび厚さtを有し、プーリ係合面を有するエラストマ本体を有するベルトを備え、
前記エラストマ本体は1よりも大きいアスペクト比W/tを有し、
前記エラストマ本体の内部に含まれ、長手方向に延びる張力コードを備え、
前記プーリ係合面はリブ付形状を有し、
前記リブ付形状は約90°の角度のリブを有し、
前記プーリ係合面に係合するリブ付形状を有する少なくとも1つのプーリを備える
エレベータリフトシステム。
【請求項14】
前記張力コードが抵抗を有する導電材料を備える請求項13に記載のリフトシステム。
【請求項15】
前記張力コードの抵抗がリフトベルトの負荷により変化する請求項14に記載のリフトシステム。
【請求項16】
前記プーリ係合面が複数のリブを備える請求項13に記載のリフトシステム。
【請求項17】
前記ベルトが端部を有する請求項16に記載のリフトシステム。
【請求項18】
複数の張力コードを備える請求項15に記載のリフトシステム。
【請求項19】
前記プーリ係合面の反対側の面にジャケットをさらに備える
請求項15に記載のリフトシステム。
【請求項20】
前記ジャケットがナイロンを備える請求項19に記載のリフトシステム。
【請求項21】
張力コードが金属材料を備える請求項18に記載のリフトシステム。
【請求項22】
張力コードが鋼を備える請求項21に記載のリフトシステム。
【請求項23】
張力コードの負荷を測定するために張力コードに連結された電気回路をさらに備える
請求項13に記載のリフトシステム。
【請求項24】
張力コードの破損を検出するための電気回路を備える
請求項13に記載のリフトシステム。
【請求項25】
プーリ係合面から延びる繊維をさらに備える
請求項1に記載のリフトベルト。
【請求項26】
幅Wおよび厚さtを有し、プーリ係合面を有するエラストマ本体を有するベルトを備え、
前記エラストマ本体は1よりも大きいアスペクト比W/tを有し、
前記エラストマ本体の内部に含まれ、長手方向に延びる張力コードを備え、
前記プーリ係合面はリブ付形状を有し、
前記リブ付形状は約90°の角度のリブを有し、
前記プーリ係合面に係合するリブ付形状を有する少なくとも1つのプーリと、
張力コードの負荷を検出し、システムの動作を制御するための電気回路を備える
リフトシステム。
【請求項27】
モータと負荷の間のプーリにわたって張力コードをかけ回し、
前記張力コードの電気抵抗を測定し、
前記電気抵抗に従って前記モータの動作を制御する
ステップを備えるリフトシステムの制御方法。
【請求項28】
幅Wおよび厚さtを有し、プーリ係合面を有するエラストマ本体を備え、
前記エラストマ本体は1よりも大きいアスペクト比W/tを有し、
前記エラストマ本体の内部に含まれ、長手方向に延びる張力コードを備え、
前記プーリ係合面はリブ付形状を有し、
前記リブ付形状はリブ角を有するリブを有する
リフトベルト。
【請求項29】
前記張力コードが抵抗を有する導電材料を備える請求項28に記載のリフトベルト。
【請求項30】
前記張力コードの抵抗が変化してリフトベルトの負荷を示す請求項29に記載のリフトベルト。
【請求項31】
前記リブ角が約60°から120°の範囲である請求項28に記載のリフトベルト。
【請求項32】
前記リブ角が約90°である請求項28に記載のリフトベルト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502928(P2006−502928A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−559917(P2003−559917)
【出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2002/040916
【国際公開番号】WO2003/059798
【国際公開日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】