説明

リポキシンA4類似体の結晶カリウム塩

本発明は、式(I)で表されるリポキシンA4類似体の結晶カリウム塩に関し:その結晶カリウム塩の製造工程、炎症により特徴付けられる病態を治療するためにそれらを使用する方法、及びそのような結晶カリウム塩を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポキシンA4類似体の結晶カリウム塩、炎症により特徴付けられる病態の治療におけるそれらの使用、並びにその類似体の結晶カリウム塩を含む医薬組成物及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポキシンは、ロイコトリエン、プロスタグランジン、及びトロンボキサンと並び、エイコサノイドと総称される生物学的に活性な酸化脂肪酸の群を構成する。エイコサノイドは、酵素のアラキドン酸カスケードを経て膜リン脂質から全てデノボ合成される。1984年にそれらが最初に発見されて以来、エイコサノイドの構造的に特異なクラスであるリポキシンは、それらが治療的な能力を有するであろうことを示唆する強力な抗炎症特性を有することが明らかになってきていた(Serhan, CN. , Prostaglandins (1997), Vol. 53, pp. 107-137; O'Meara, Y.M. et al., Kidney Int. (Suppl.) (1997), Vol. 58, pp. S56-S61 ; Brady, H. R. et al., Curr. Opin. Nephrol. Hypertens. (1996), Vol. 5, pp. 20-27; 及び Serhan, CN. , Biochem. Biophys. Acta. (1994), Vol. 1212, pp. 1-25)。特に興味深いのは、血小板活性化因子、fMLP(Formyl‐Met‐Leu‐Phe)ペプチド、免疫複合体、及びTNFα等の他の炎症性薬剤に加えてロイコトリエンの前炎症機能を拮抗するリポキシンの能力である。したがって、リポキシンは、多形核好中球(PMN)の走化性、同型の凝集、接着、内皮及び上皮細胞を横切る移動、辺縁趨向/血管外遊出並びに組織浸潤を阻害する強力な抗好中球薬剤である(Lee, T. H., et al., Clin. Sci. (1989), Vol. 77, pp. 195-203; Fiore, S., et al., Biochemistry (1995), Vol. 34, pp. 16678-16686; Papyianni, A., et al., J. Immunol. (1996), Vol. 56, pp. 2264-2272; Hedqvist, P., et al., Acta. Physiol. Scand. (1989), Vol. 137, pp. 157-572; Papyianni, A., et al., Kidney Intl. (1995), Vol. 47, pp. 1295-1302)。加えて、リポキシンは、内皮のP‐セレクチンの発現及びPMNの接着性(Papyianni, A., et al., J. Immunol. (1996), Vol. 56, pp. 2264-2272)、気管支平滑筋及び血管平滑筋の収縮、メサンギウム細胞の収縮及び接着性(Dahlen, S. E., et al., Adv. Exp. Med. Biol. (1988), Vo.. 229, pp. 107-130; Christie, P.E., et al., Am. Rev. Respir. Dis. (1992), Vol. 145, pp. 1281-1284; Badr, K.F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1989), Vol. 86, pp. 3438-3442; 及び Brady, H.R., et al., Am. J. Physiol. (1990), Vol. 259, pp. F809-F815)並びに好酸球の走化性及び脱顆粒(Soyombo, O., et al., Allergy (1994), Vol. 49, pp. 230-234)を下方制御し得る。
【0003】
この特異なリポキシン、特にリポキシンA4の抗炎症特性は、炎症又は自己免疫不全並びに肺及び気管の炎症の治療のための治療法としてのそれらの能力を引き出すことにおける関心を刺激してきた。顕著な炎症性浸潤を呈するこのような障害及び炎症には特に関心が高く、限定されないが、クローン病等の炎症性腸疾患、乾癬等の皮膚疾患、関節リウマチ、及び喘息等の呼吸器障害が含まれる。
【0004】
他の内在性エイコサノイドと同様に、天然に存在しているリポキシンは、急速に代謝され不活性化される不安定な生産物である(Serhan, C. N., Prostaglandins (1997), Vol. 53, pp. 107-137)。これはリポキシンの研究分野、特にリポキシンの抗炎症性特性のインビボの薬学的評価に関する研究の発達を制限してきた。リポキシンA4の活性部位を有する化合物が指向された幾つかの米国特許が公開されているが、それらは組織中の半減期が延長するに過ぎない。例えば、米国特許第 5,441 ,951号及び同第5,648,512号を参照されたい。これらの化合物は、リポキシンA4受容体結合活性、並びに天然のリポキシンのインビトロ及びインビボの抗炎症特性を保持する(Takano, T., et al., J. Clin. lnvest.(1998), Vol. 101 , pp. 819-826; Scalia, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1997), Vol. 94, pp. 9967-9972; Takano, T., et al., J. Exp. Med. (1997), Vol. 185, pp. 1693-1704; Maddox, J.F., et al., J. Biol. Chem. (1997), Vol. 272, pp. 6972-6978; Serhan, C. N., et al., Biochemistry (1995), Vol. 34, pp. 14609-14615)。
【0005】
本発明にとって興味深いリポキシンA4の類似体は、米国特許第6,831 ,186号及び米国特許出願公開第2004/0162433号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固形の医薬的な物質は、アモルファスよりも結晶であることの方が特に有利であることは当該技術分野において認識されている。典型的には、溶液から結晶化することにより結晶性の固体を形成する間、結晶性生産物の精製が得られる。結晶性の固体状態の形態は明白に特徴付けられ、そして、通常、アモルファス状態と比較してより高い安定性を呈する。薬物物質又は薬物生産物の成分として結晶性の固体を使用することにより、薬物物質又は薬物生産物の特徴の変化を含むアモルファス状態の潜在的な再結晶化が回避される。故に、米国特許第6,831 ,186号及び米国特許出願公開第2004/0162433号に開示されるリポキシンA4類似体の安定な結晶性の固体状態形態の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、強力で、選択的で、並びに代謝的に及び化学的に安定なリポキシンA4類似体の結晶カリウム塩、並びに哺乳類における、特にヒトにおける炎症性又は自己免疫性疾患及び肺又は気管の炎症等の炎症により特徴付けられる病態の治療における使用に関する。
【0008】
故に、一側面においては、本発明は、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
で表されるリポキシンA4類似体の結晶カリウム塩に関し、
上記式中:
1は、‐O‐、‐S(O)t‐(ここで、tは0、1、又は2である)、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン鎖であり;そして
2は、アリール(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)又はアラルキル(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)であり、
そして、ここで、上記式(I)で表される化合物は、単一の立体異性体又は立体異性体の任意の混合物である。
【0011】
本発明は、式(I)で表されるカリウム塩の全ての結晶形態を包含する。
【0012】
本発明の塩は、負荷試験条件下で優れた安定性を呈する。
【0013】
もう一つの側面において、本発明は、式(I)で表される結晶カリウム塩を製造する方法に関し、該方法は:i)適切な溶媒中のカリウム塩基(base)を混合する工程と、適切な溶媒中で、式(I)で表される塩に対応する遊離酸と混合する工程;ii)得られた懸濁液を任意に冷却する工程;iii)得られた懸濁液から結果物の結晶を単離する工程;iv)単離された結晶を適切な溶媒で任意に洗浄する工程;及びv) 単離された結晶を乾燥させて、結晶カリウム塩(I)得る工程
を含む。
【0014】
一の態様における本発明の方法には、酸及び塩基の適切な溶液の製造が含まれ、具体的には高い結晶化度で結晶の形成を誘導するための適量の水の添加が含まれる。
【0015】
一の態様における本発明の方法には所望の水和状態にするために制御された塩の乾燥が含まれ、この形態は二水和物、一水和物又は脱水和物形態のいずれかである。
【0016】
一の態様における本発明の方法は、式(I)で表されるカリウム塩の結晶無水和物形態の製造に関し、その方法には適切な溶媒中のカリウム塩(I)の水和物又は水和物の混合物の温浸(digestion)が含まれる。
【0017】
更なる一の側面において、本発明は、治療的に有効な量の上記のような式(I)で表される結晶カリウム塩、及び1以上の医薬として許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0018】
もう一つの側面において、本発明は、例えば炎症性若しくは自己免疫性疾患又は肺若しくは気管の炎症等の、炎症により特徴付けられる病態を有する哺乳類を治療するための薬剤の製造のための、上記のような、式(I)で表される結晶カリウム塩の使用に関する。
【0019】
もう一つの側面において、本発明は、炎症により特徴付けられる哺乳類、特にヒトにおける病態を治療する方法に関し、その方法は、その治療を要する哺乳類に対し治療的に有効な量の上記のような式(I)で表される結晶カリウム塩を投与することを含む。その病態は、例えば、炎症性若しくは自己免疫性疾患及び肺又は気管の炎症等であり得る。
【0020】
A.定義
米国特許、米国公開特許出願及び学術論文を含む本明細書中に引用されている全ての参考文献は、参照により全て本明細書中に援用される。
【0021】
本明細書中で使用するとき、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」及び「その(the)」はその前後関係で別に明確な指示が無い限り複数の対象を含む。例えば、「ある化合物」とは、1つ以上のそのような化合物を指し、一方「その酵素」は特定の酵素並びに当業者に知られているような他のファミリーのメンバー及びその同等物を含む。
【0022】
本明細書中の全てのパーセンテージは、別に示唆が無い限り体積による。
【0023】
更に、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、これに反して特定されていない限り、以下の用語は以下に示された意味を有する:
【0024】
「アルキル」とは、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素鎖のラジカルを指し、炭素原子及び水素原子のみを含み、不飽和を含まず、1個から8個の炭素原子を有し、及びそれは単結合により分子の残りの部分に結合し、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、1‐メチルエチル(イソプロピル)、n‐ブチル、n‐ペンチル、1,1‐ジメチルエチル(t‐ブチル)等が挙げられる。
【0025】
「アルキレン」とは、直鎖状又は分岐鎖状の二価の炭化水素鎖を指し、炭素原子及び水素原子のみからなり、不飽和を含まず、1個から8個の炭素原子を有し、及びそれは単結合により分子の残りの部分に結合し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n‐ブチレン等が挙げられる。
【0026】
「アルコキシ」とは、式‐ORaの基を指し、ここでRaが上記で定義されるようなアルキルラジカルである。
【0027】
「アリール」とは、フェニル又はナフチルラジカルを意味する。別に記述されない限り、そのアリールラジカルは、アルキル、アルコイ(alkoy)、ハロ、ハロアルキル又はハロアルコキシからなる群から選択される1つ以上の置換基により任意に置換され得る。本明細書において特段別に記述されない限り、そのような置換はアリールラジカルの任意の炭素において生じ得ると解される。
【0028】
「アラルキル」とは、式‐Rabのラジカルを指し、ここでRaが上記で定義されるようなアルキルラジカルであり、Rbが上記で定義されるようなアリールラジカルであり、例えばベンジル等が挙げられる。そのアリールラジカルは上記のように任意に置換され得る。
【0029】
「ハロ」とは、ブロモ、クロロ、ヨード又はフルオロを指す。
【0030】
「ハロアルキル」とは、1つ以上で定義されるようなハロラジカルにより置換される上記で定義されるようなアルキルラジカルを指し、例えばトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2‐トリフルオロエチル、1‐フルオロメチル‐2‐フルオロエチル(1,3‐ジフルオロイソプロピル)、3‐ブロモ‐2‐フルオロプロピル、1‐ブロモメチル‐2‐ブロモエチル(1,3‐ジブロモイソプロピル)等が挙げられる。
【0031】
「ハロアルコキシ」とは、式‐Rcのラジカルを指し、ここでRcが上記で定義されるようなハロアルキルラジカルであり、例えばトリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、2,2,2‐トリフルオロエトキシ、1‐フルオロメチル‐2‐フルオロエトキシ、3‐ブロモ‐2‐フルオロプロポキシ、1‐ブロモメチル‐2‐ブロモエトキシ等が挙げられる。
【0032】
本明細書中で使用するとき、「市販の」化合物は標準的な化学製品供給企業及び他の商業的供給源から収得され得て、限定されないが、Acros Organics (Pittsburgh PA)、 Aldrich Chemical (Milwaukee Wl, including Sigma Chemical and Fluka)、 Apin Chemicals Ltd. (Milton Park UK)、Avocado Research (Lancashire U.K.)、BDH Inc. (Toronto, Canada)、Bionet (Cornwall, U.K.)、Chemservice Inc. (West Chester PA)、Crescent Chemical Co. (Hauppauge NY)、Eastman Organic Chemicals、Eastman Kodak Company (Rochester NY)、Fisher Scientific Co. (Pittsburgh PA)、Fisons Chemicals (Leicestershire UK)、Frontier Scientific (Logan UT)、ICN Biomedicals, Inc. (Costa Mesa CA)、Key Organics(Cornwall U.K.)、Lancaster Synthesis (Windham NH)、Maybridge Chemical Co. Ltd. (Cornwall U.K.)、Parish Chemical Co. (Orem UT)、Pfaltz & Bauer,Inc. (Waterbury CN)、Polyorganix (Houston TX)、Pierce Chemical Co. (Rockford IL)、Riedel de Haen AG (Hannover, Germany)、Spectrum Quality Product, Inc. (New Brunswick, NJ)、TCI America (Portland OR)、Trans World Chemicals,Inc. (Rockville MD)、及びWako Chemicals USA,Inc. (Richmond VA)が含まれる。
【0033】
「哺乳類」にはヒト、及びネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ等が含まれる。
【0034】
本明細書中で使用するとき、「当業者に知られている方法」は、様々な参考書及びデータベースにより特定され得る。本発明の化合物の製造に有用な反応物の合成を詳述し、又はその製造を記載する学術論文に参照を提供する適切な参考書及び論文には、例えば、"Synthetic Organic Chemistry", John Wiley & Sons, Inc., New York; S. R. Sandler et al., "Organic Functional Group Preparations," 2nd Ed., Academic Press, New York, 1983; H. O. House, "Modern Synthetic Reactions", 2nd Ed., W. A. Benjamin, Inc. Menlo Park, Calif. 1972; T. L. Gilchrist, "Heterocyclic Chemistry", 2nd Ed., John Wiley & Sons, New York, 1992; J.March, "Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure", 4th Ed., Wiley- Interscience, New York, 1992が含まれる。また、特定の及び類似の反応物も、殆どの公共図書館及び大学の図書館で入手可能なAmerican Chemical SocietyのChemical Abstract Serviceにより作製される既知の化学部質の索引、並びにオンライン‐データベース(the American Chemical Society, Washington, D.C., www.acs.orgは更に詳しく記載されていよう)を通じて特定され得る。既知であるがカタログにおいて市販されていない化学製品は、受注化学合成企業により製造され得て、そこで多くの標準的な化学製品供給企業(例えば、前に列挙したような)が受注合成役務を提供する。
【0035】
「任意の」又は「任意に」又は「あり得る」は、後に記載される事象又は状況が生じてもよく又は生じなくてもよく、及びその記載にはそこで記述される事象又は状況が生じている場合及びそれが生じていない場合が含まれる。例えば、「任意に置換されるアリールラジカル」は、アリールラジカルが置換されてもよく又は置換されなくてもよく、及びその記載は置換されたアリールラジカル及び置換基を有しないアリールラジカルを含むことを意味する。
【0036】
「多形体(polymorphs)」とは、本発明の同一の化学物(chemical compound)の複数の結晶形態を指す。ここで「化学物」は分子若しくはイオン(塩)又は分子及びイオン(塩)の混合物を含む。固体は、アモルファス又は結晶形態のいずれかで存在する。結晶形態の場合において、分子は三次元的な格子部位において系統的に配置される。ある化合物が溶液又はスラリーから結晶化するとき、それは異なる空間的格子配置で結晶化され得て、その特性は「多形性(polymorphism)」と称され、異なる結晶形態は個別に「多形体(polymorph)」と称される。所定の物質の異なる多形的形態は、溶解度及び分解(dissolution)、真密度、結晶形態、圧密挙動、流動性、及び/又は固体形態の安定性等の1つ以上の物理的特性に関して互いに異なり得る。2つの(又はそれ以上の)多形的形態において存在する化学物質の場合においては、不安定な形態は、一般的に所定の温度で十分な時間が経過することで熱力学的に安定な形態に転換する。その熱力学的に不安定な形態は、「準安定」形態と称される。あるより安定な形態への転換は、薬物物質の使用を考慮してもその形態の特性を評価するために十分な程度に緩やかであり得る。従って、準安定形態は、商業的な形態におけるその使用が許容される程度の通常の保存条件下における化学的及び物理的に十分な安定性を呈することが見出され得る。この場合において、その準安定形態は、安定性は低いものの、溶解性の増加又は良好な経口バイオアベイラビリティ等の、安定な形態のものよりも望ましい特性を呈し得る。
【0037】
「溶媒和物」とは、本発明の化合物の1つ以上の分子に加え1つ以上の溶媒の分子又は溶媒の非化学量論的な内容物を含む集合体を指す。その溶媒は水であり得て、その場合溶媒和物は水和物と呼ばれる。あるいは、その溶媒は有機溶媒であり得る。従って、式(I)で表されるリポキシンA4類似体のカリウム塩は、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物、非化学量論的な含水量の脱水和された水和物等を含む水和物、並びにそれらに対応する溶媒和物化された形態として存在し得る。式(I)で表されるカリウム塩は真の溶媒和物であり得て、一方、他の場合において、その塩は単に付随的な水を保持するか、又は水に加え複数の付随的な溶媒の混合物であり得る。
【0038】
例えば、多形体及び溶媒和物、それらの特徴付け及び特性、並びに薬物物質及び薬物生産物としての妥当性の考察については、Byrn, S et al. "Solid State Chemistry of Drugs", SSCI (1999);塩、それらの製造及び特性の考察については、Stahl, P and Wermuth, C "Handbook of Pharmaceutical Salts", Wiley (2002)を参照されたい。
【0039】
本明細書中で使用するとき、合成工程を実施するための「適切な条件」は本明細書中に明確に提供され、又は有機合成化学において使用される方法に関する刊行物を参照することにより判別され得る。また、本発明の化合物の製造に有用な反応物の合成を詳述する上記の参考書籍及び学術論文も本発明による合成工程の実施のための適切な条件を提供する。
【0040】
「適切な溶媒」とは、反応の成分及び反応の条件に適合するいずれかの溶媒を指す。その用語は1つの溶媒又は複数の溶媒の混合物を包含し、並びに、限定されないが有機溶媒及び水を含む。適切な溶媒は当業者に知られており、又は有機合成化学において使用される方法に関する刊行物を参照することにより判別され得る。
【0041】
「治療的に有効な量」とは、後述のように、炎症により特徴付けられる病態のために、その治療を要する哺乳類、特にヒトに投与したとき、治療を達成するために十分な本発明のカリウム塩の量を指す。「治療的に有効な量」を構成する本発明のカリウム塩の量は、その塩、その溶媒和物の形態、治療されるべき病態及びその重症度、治療されるべき哺乳類の年齢等に依存して変化するが、当業者により日常的に判定され得る。
【0042】
「治療する」又は「治療」とは、本明細書中で使用するとき、哺乳類、特にヒトにおいて、炎症により特徴付けられる病態、例えば炎症性若しくは自己免疫性疾患又は肺若しくは気管の炎症等の治療を包含し、及び:
(i)哺乳類における発症から障害又は炎症を予防し、特にそのような哺乳類がその障害に罹り易いが未だにその障害を有するとは診断されていないときに予防すること;
(ii)障害若しくは炎症を阻害すること、即ち、その進行を停止させること;又は
(iii)障害若しくは炎症を緩和すること、即ち、障害若しくは炎症の退縮を引き起こすことを含む。
【0043】
式(I)で表されるカリウム塩は3つの不斉中心を有し、それらは絶対立体化学の用語において、(R)‐若しくは(S)‐として、又は(D)‐若しくは(L)‐として定義されてもよい、鏡像体、ジアステレオマー、及び他の立体異性体の形態を生じる。本発明は、とり得る全ての異性体、並びにそれらのラセミ混合物であって光学的に純粋な形態を含むことが意図される。光学的に活性な(+)及び(−)、(R)‐及び(S)‐、又は(D)‐及び(L)‐異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を用いて製造され得るか、又はキラルカラムを用いるHPLC等の確立された技術を用いて分離され得る。本明細書中に記載される化合物は、オレフィン二重結合又は他の幾何学的非対称の中心を含み、並びに他に特定されていない限り、その化合物はE及びZ幾何異性体を含むことが意図される。また同様に、全ての互変異性体の形態も含まれることが意図される。
【0044】
「立体異性体」とは、同一の結合により結合される同一の原子により構成されるが異なる三次元構造を有し、それらが互換しない化合物を指す。本発明は、様々な立体異性体及びそれらの混合物を意図し、そして分子同士が重ね合わさられない鏡像である2つの立体異性体を指す「鏡像体」を含む。
【0045】
B. 本発明の結晶カリウム塩
塩の形成はその遊離酸に関して医薬品の安定性を劇的に上昇させ得て、及び塩の安定性は塩を形成する様々な作用因子の間で異なることが知られている。また、結晶カリウム塩の形態はアモルファス塩の形態より安定であり得ることも知られている。
【0046】
故に、式(II):
【0047】
【化2】

【0048】
{式中、
1は‐O‐、‐S(O)t‐(ここで、tは0、1、又は2である)、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン鎖であり;そして
2はアリール(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)又はアラルキル(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)である}
で表される酸の適切で安定な結晶塩を見出す目的で調査が行われた。ここで上記式(II)で表される酸は、単一の立体異性体、又は複数の立体異性体の任意の混合物である。
【0049】
様々な有機及び無機カチオンを使用した塩スクリーニング試験を通じて、非常に驚くべきことに、酸(IIa)
【0050】
【化3】

【0051】
の結晶カリウム塩は、製造された他の全ての塩よりも実質的に安定で、また酸(IIa)自体よりも安定であることが見出された。
【0052】
一の態様において、本発明は概要に開示され、定義されたような、式(I)で表される結晶カリウム塩に関する。
【0053】
もう一つの態様において、本発明は、R1が‐O‐であり、及びR2がフルオロ、クロロ及びヨードから選択される1つ以上の置換基により任意に置換されるフェニルである、式(I)で表される結晶カリウム塩に関する。
【0054】
更なる一の態様において、本発明の化合物は、R1が‐O‐であり、及びR2が4‐フルオロフェニルである、式(I)で表される結晶カリウム塩である。
【0055】
もう一つの態様において、本発明の化合物は、以下;
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3S,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3S,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3R,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3S,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;及び
2‐((2R,3S,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム
から選択される。
【0056】
もう一つの側面において、本発明は、上記結晶カリウム塩が、2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム(Ia):
【0057】
【化4】

【0058】
で表される、結晶カリウム塩に関する。
【0059】
C. 塩スクリーニング
以下に、塩スクリーニングアッセイをより詳細に記載する:
【0060】
材料:
カリウム、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、リチウム及び亜鉛を含む、多くの無機カチオンが調査され、それらの酸(IIa)の安定な結晶塩を形成する能力が判定された。
【0061】
N‐メチルグルカミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、コリン、リシン、及びアルギニンを含む、複数の有機アミンが調査された。
【0062】
前述の調査に加え、式(IIa)で表される酸と、多価の無機カチオン及び有機酸の混合塩の形成が調査された。
【0063】
試験パラメーター
一般的に、塩スクリーニング実験は、以下:
i)利用されるカチオン化合物のタイプ(例えば、炭酸塩、水酸化物、メチレート、エチレート等)。
ii)利用される溶媒のタイプ。
iii)水の特定の添加又は排除(水和物又は無水和物の形成を助けるため)。
iv)利用される晶析法のタイプ(冷却晶析法、貧溶媒晶析法、又は蒸発晶析法、及びそれらの組合わせ)。
v)スクリーニングのタイプ(手動スクリーニング及びハイスループットスクリーニング)
等の、異なる試験パラメーターの変化を含むものであった。
【0064】
結果
驚くべきことに、塩基としてカリウム化合物を使用した場合においてのみ、懸濁液の形成及び酸(IIa)の結晶塩の単離が可能であることが明らかとなった。他のカチオンによる試験では、固相が生じない、油相、又はアモルファス固体が生じた溶液が得られた。なお、混合塩の形成は失敗であった。また、ハイスループットスクリーニングでは更なる酸(IIa)の結晶塩は得られなかった。
【0065】
D. 式(Ia)で表されるカリウム塩の固体状態の形態
式(Ia)で表される結晶カリウム塩は、3つの明確な結晶形態:1つの無水和物及び2つの水和物を形成する。加えて、2つの脱水和物化された水和物の形態(脱水和物形態I及び脱水和物形態II)が収得され、そしてある研究において、1つのアモルファス相が検出された。溶媒和物は検出されなかった。本発明は、式(I)及び(Ia)で表されるカリウム塩の全ての結晶形態を包含する。
【0066】
カリウム塩(Ia)の異なる固体状態の形態は、X線粉末回折(XRPD)パターンにおける反射のピーク位置により識別され得る。結晶カリウム塩(Ia)の無水和物、一水和物及び二水和物の最も強い反射を下記の表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
式(Ia)で表される結晶カリウム塩の無水和物形態は、d=約26.7Å及びd=約3.7Åの特性ピークを呈する。
【0069】
式(Ia)で表される結晶カリウム塩の一水和物形態は、d=約26.5Å、d=約4.3Å及びd=約4.0Åの特性ピークを呈し、一方、式(Ia)で表される結晶カリウム塩の二水和物形態は、d=約27.1Å、d=約4.2Å、及びd=約4.1Åの特性ピークを呈する。
【0070】
式(Ia)で表される結晶カリウム塩の脱水和物形態I及び脱水和物形態IIのXRPDパターンは、いずれの脱水和物形態のピーク位置も様々なな溶媒残留物により若干バッチ間変動が生ずることを示す。従って、両方の形態に特徴的な、正確なd値、2Θ度及び相対強度は得られない。しかしながら、それらはd=約27.1Åとd=約4.2Åとの間に特性ピークを呈する。
【0071】
当業者は、X線回折パターンが、採用された測定条件に依存する測定誤差を含んで収得されることを理解するであろう。特に、X線回折パターンにおける強度が、材料の晶癖及び採用された条件に依存して変動し得ることは一般的に知られている。また更に、相対強度も実験条件に依存して変動し得て、そしてそれ故に、強度の正確なオーダーは考慮され得ないことが理解される。加えて、所定の温度において確立されたX線回折パターンの回折角シータの測定誤差は、典型的には±約0.1°であり、そしてその程度の測定誤差は、前述された回折角に付帯するものとして考慮されるべきである。従って、X線粉末回折パターンを参照して本明細書中で「約」という用語が使用されるときは、本発明の結晶形態は、本明細書中で開示される添付図面において表現されるX線回折パターンと完全に同一なX線回折パターンを示す結晶形態に限定されないことを意味する。添付図面に開示される結晶形態と実質的に同一であるX線回折パターンを示す任意の結晶形態も、本発明の範囲内である。ある化合物の多形的な形態が同一であるが、X線回折パターンが完全には一致しないか否かを確認する能力は、当業者の技術の範囲内である。
【0072】
カリウム塩(Ia)の水和物の赤外分光法により、それらが1214cm-1及び1127cm-1に特徴的な赤外帯域を有することが示された。
【0073】
結晶カリウム塩(Ia)の含水量は、その固体状態の形態(無水和物、一水和物、二水和物、脱水和物形態I、又は脱水和物形態II)を判定する。塩の実際の含水量は、周囲の相対湿度及び温度により判定される。
【0074】
一水和物及び二水和物、及び脱水和物形態IIの、互いへの転換は可逆的である。無水和物は、一水和物を経て二水和物に転換される。この転換は可逆的ではない。二水和物は、脱水により脱水和物形態IIに転換される。また、脱水和物形態Iは、一水和物及び二水和物にも転換される。一水和物又は二水和物形態の脱水和物形態Iへの転換は観察されなかった。
【0075】
一水和物形態から二水和物形態への、及びその逆の転換は速やかに起こり、それは25℃及び40℃で明確に定義されている。これは、動的蒸気吸着による調査により示された。例えば、25℃及び相対湿度0%における一水和物の前乾燥の間に、4.0%の水が一水和物から放出される。これは、脱水和物形態IIの形成をもたらす。相対湿度が20%と40%との間で、1モルの水が吸収され、一水和物の形成をもたらす。その一水和物は、相対湿度約50%までは安定であり、そして相対湿度が50%と60%との間で、もう1モルの水の吸収により、二水和物に転換される。その二水和物は、25℃で相対湿度98%までは安定な形態である。40%と50%との間の脱着サイクルの間に、一水和物への転換が起こる。形成された一水和物は、相対湿度10%までは存在する。相対湿度0%と10%との間で、一水和物の脱水和物形態IIへの転換が起こる。対応する吸収等温線は、図1に示される。2つのサイクルの間に顕著な差異は観察されなかった。
【0076】
一水和物及び二水和物の転換に関する吸湿性は、相対湿度45%及び55%の間で相対湿度の細分化工程を使用して再調査された。この調査により、上記2つの水和物の平衡点が相対湿度48%と50%との間にあることが示された。40℃における一水和物と二水和物との間の可逆的な転換は相対湿度57%と59%との間であり、25℃のときより約10%高い。相対湿度0%と10%との間での、40℃における一水和物の脱着範囲のより詳細な調査により、脱着は相対湿度2%と3%との間で起こることが示された。
【0077】
また、カリウム塩(Ia)の無水和物形態の水和物への転換は、25℃における動的蒸気吸着により示された。相対湿度40%までは無水和物は安定であった。相対湿度40%と50%との間で約2モルの水が吸収され、二水和物の形成がもたらされた。
【0078】
XRPDのデータ収集は、ゲルマニウム単色化CuKα1線(λ=1.5406Å)を用いた伝送モードにおいて室温(20℃と25℃との間)で行われた。銅陽極が組み込まれたX線管は、40kV及び30mAで作動された。2Θスキャンは小型の線形位置高感度検出器を使用して0.08°の角分解能で3°<2Θ<35°と2°<2Θ<35°との間で(階段幅0.5°)、又はウェルプレートが使用される場合は、7°<2Θ<35°で(階段幅0.5°)実行された。サンプルは、測定の間の湿度の影響を避けるため、両面接着テープにより貼り合わされた2枚のポリアセテートフィルムの間に、又は2枚のアルミ箔の間に囲まれた。データの収集及び評価は、STORE WinXPOWソフトウェアパッケージを使用して実行された。
【0079】
赤外スペクトルは、拡散反射技術を使用して記録された。サンプルは、1:100の割合で臭化カリウムで希釈された。
【0080】
吸湿性を調査するためのデータ収集は、自動水分吸着分析装置により行われた。約20mgの調査される結晶カリウム塩(Ia)の固体状態の形態は、予め定められた、定常的な相対湿度の連続的な窒素の流れに晒された。掃引ガスの流量は、200cm3/minに設定された。基本的な実験として、2つの完全なサイクル(吸着/脱付)が25℃で測定された。表面の水分を除去するため、相対湿度0%で測定が開始された。一度恒量に達してから、次の湿度は自動的に設定された。水分の吸着/脱着は、本明細書中に記載の第一の段階の開始のための基準に従い、相対湿度0%と90%との間を10%ごとに調査された。加えて、相対湿度約98%での吸着が調査された。データはDVSWinソフトウェアを使用して収得された。加えて、40℃での調査が行われ、そしてより詳細な一水和物/二水和物の評価のため、関連する領域における段階は短縮された(各段階は相対湿度1%に等しい)。
【0081】
E. カリウム塩(Ia)の固体状態の形態の化学的安定性
本発明の式(Ia)で表されるカリウム塩の無水和物及び一水和物、あるいは本発明のカリウム塩(Ia)の脱水和物形態Iの化学的安定性は、40℃/75%rHで4週間の期間の負荷の下で安定性を比較することにより評価された。その結果は、下記の表2に示される。
【0082】
【表2】

【0083】
カリウム塩(Ia)の3つの形態の全てが、十分に安定であった;しかしながら、カリウム塩(Ia)の無水和物及び一水和物は、分解する兆候を示さない。
【0084】
F. 式(I)及び(Ia)で表されるカリウム塩の製造
式(II)で表される化合物、即ち酸は、米国特許第6,831 ,186号及び米国特許出願公開第2004/0162433号において詳細に開示されており、それらの関連する開示は、全て本明細書中の参照により援用される。
【0085】
結晶カリウム塩を製造する方法は、式(Ia)で表される塩を使用することにより例証されるが、式(I)で表される他の化合物の結晶カリウム塩に使用される場合もある。一般的に、結晶カリウム塩(Ia)を製造する方法は、塩基により処理することによる酸(IIa)の中和を基礎とする。得られた混合物は懸濁液を形成し、その後、それは任意に冷却される。結晶は懸濁液から単離され、そして乾燥され、結晶カリウム塩(Ia)の所望の水和物形態が得られる。
【0086】
より詳しくは、酸(IIa)は、例えばエタノール等の適切な溶媒中に溶解される。そして例えばカリウムメチレート又は水酸化カリウム等のカリウム塩基は、例えばエタノール等の適切な溶媒中に溶解される。カリウム塩基の溶液は酸(IIa)の溶液に加えられる。又はその逆も同様である。
【0087】
酸(III)の溶液へのカリウム塩基の添加量は、湿式pHインジケーターストリップ等の、当該技術分野で知られた方法により、得られた混合物のpHを測定することにより制御される。一の態様において、カリウム塩基溶液の添加は、一般的にpHが6〜15に達したとき、通常はpHが7〜14に達したとき、及び一の目下好ましい態様において、pHが8〜13に達したとき、停止される。
【0088】
カリウム塩(Ia)の脱水和物形態Iは、反応混合物において水分を排除することにより収得される。例えば、これは無水溶媒を使用することにより、及びカリウムメチレートを添加して塩を形成することにより達成され得る。
【0089】
加えて、カリウム塩(Ia)の脱水和物形態Iは、例えばアセトニトリル等の有機溶媒中に結晶カリウム塩(Ia)の一水和物形態を懸濁することにより収得され得る。乾燥又は加熱処理によっては、一水和物又は二水和物の脱水和物形態Iへの転換は観察されない。
【0090】
結晶化段階の間に、カリウム塩(Ia)の目下あまり望ましくない脱水和物化された水和物形態(I)の形成を避けるため、結晶化の溶液は、少なくとも一定量の水を含む。一般的に、最終反応混合物は少なくとも約0.01%の水、通常は約0.5%〜約99%の水、そして一の目下好ましい態様において、約1%〜約30%の水を含む。従って、例えば一の態様において、酸(IIa)‐溶媒溶液が少なくとも一定量の水を含み得る。一般的に、酸(IIa)‐溶媒溶液は少なくとも約0.01%の水、通常は約0.5%〜約99%の水、そして一の目下好ましい態様において、約1%〜約30%の水を含む。同様に、一の態様において、カリウム塩基‐溶媒溶液が少なくとも一定量の水を含み得る。一般的に、カリウム塩基‐溶媒溶液は少なくとも約0.01%の水、通常は約0.5%〜約99%の水を、そして一の目下好ましい態様において、約1%〜約30%の水を含む。得られた反応混合物は少なくとも一定量の水を含み得る。得られた混合物は懸濁液を形成し、固体/液体の単離、及び適切な溶媒による任意な洗浄に先立ち任意に冷却される。一般的に、洗浄溶媒は少なくとも約0.01%の水、通常は約0.5%〜約99%の水、そして一の目下好ましい態様において、約1%〜約30%の水を含む。そして、乾燥段階に進む。
【0091】
単離された結晶の乾燥手順は、製造された結晶カリウム塩の水和物形態を定義する(一水和物又は二水和物又は脱水された水和物)ため、カリウム塩(Ia)の一水和物又は二水和物を収得しようとするときは、十分に制御されるべきである。また、乾燥手順において、生産物の過剰乾燥により収得される、あまり望ましくないカリウム塩(Ia)の脱水和物形態(II)の形成を避ける。この工程の最適化は、後述の項目Gにおいて記載される。
【0092】
また、カリウム塩(Ia)の脱水和物形態IIは、加熱処理(通常は100℃より低い温度で)による水和物の脱水により、又は相対湿度0%での保存により形成され得る。一水和物を経る二水和物の脱水は、脱水和物形態IIをもたらす。
【0093】
一般的に、カリウム塩(Ia)の無水和物形態を製造する方法は、適切な溶媒中のカリウム塩(Ia)の水和物形態を、一定の時間高温で温浸することを基礎とする。結晶は懸濁液から単離され、そして乾燥され、カリウム塩(Ia)の無水和物形態が得られる。
【0094】
より詳しくは、カリウム塩(Ia)の水和物は、例えば1,4‐ジオキサン等の適切な溶媒中で温浸される。懸濁液は撹拌され、約0.1〜約10時間、通常は約1〜約8時間、及び好ましくは約2〜約6時間、その溶媒の沸点近くまで加熱される。そして、懸濁液は冷却され、結晶が単離され、そして例えば1,4‐ジオキサン等の適切な溶媒により任意に洗浄され、その後結晶が乾燥され、カリウム塩(Ia)の無水和物形態が得られる。
【0095】
G. 式(Ia)で表されるカリウム塩の乾燥工程の最適化
好ましい水和物形態のカリウム塩(Ia)の形成は、乾燥条件の変化により最適化された。
【0096】
湿った濾過ケーキのXRPD解析により、結晶化段階においてカリウム塩の二水和物形態の形成が見出された。乾燥工程の間に、濾過ケーキ(それは、カリウム塩の二水和物形態である)はその水分を失う。しかしながら、そのカリウム塩の二水和物がその水を失い、一水和物形態に転換するとき、その一水和物はそのまま、あまり望ましくない脱水和物形態IIへと転換が続く場合がある。
【0097】
DVSデータから、脱水和物‐一水和物の遷移は急速であることが明らかとなり、例えば真空乾燥チャンバーを用いた確立された乾燥工程によっては、二水和物を得ることは出来ないであろう。また、一水和物が過剰乾燥し、脱水和物形態IIを生じる潜在的な危険もある。
【0098】
従って、乾燥工程は、二水和物又は一水和物のいずれかが得られ、過剰乾燥による脱水和物形態IIの形成を安全に回避するように最適化された。
【0099】
最適化された乾燥工程は、極めて十全に調整され、制御された掃引ガス流を使用する。掃引ガス(例えばN2等)の相対湿度の、並びに乾燥機中の圧力及び温度の特定の調整及び設定を経て、乾燥工程は所望の水和物形態の安定領域に関連する温度及び湿度の条件下で行われた。この工程の後に、カリウム塩(Ia)の特定の水和物形態が収得され得た。
【0100】
また、調査により掃引ガスは、十分な乾燥時間の保持、及び乾燥機中の液体の濃縮の回避に有用であることが明らかになった。前述の掃引ガスに加え、本発明では任意の適切な掃引ガスが使用され得て、それらのガスは当業者に知られ、又は過度の実験を要さず判定され得る。
【0101】
真空乾燥チャンバーの使用に加え、任意の乾燥方法又は器具が式(I)及び(Ia)で表されるカリウム塩を乾燥するため本発明の乾燥工程において用いられ得て、限定されないが、当業者に知られ、識別されるように、混合乾燥機(例えば、パドル式乾燥機又は円錐型乾燥機)、接触乾燥機、対流式乾燥機、赤外線乾燥機等を含む。
【発明の効果】
【0102】
H. 本発明の結晶カリウム塩の有用性
式(I)で表される結晶カリウム塩は、天然のリポキシンA4と同様の生物学的活性を有するが、化学的及び代謝的な分解に対する耐性が高められている。ゆえに、式(I)で表される結晶カリウム塩は哺乳類における、特にヒトにおける、炎症性又は自己免疫性疾患の治療に有用である。特に、式(I)で表される結晶カリウム塩は、炎症性、免疫性又は自己免疫性疾患の発症に寄与する、好中球、好酸球、Tリンパ球、NK細胞又は他の免疫細胞により誘起される、急性若しくは慢性の炎症、又は炎症性若しくは自己免疫性の応答の抑制に有用である。また、式(I)で表される結晶カリウム塩は、限定されないが、癌等の炎症性又は免疫性の応答における障害に関連するものが含まれる増殖性の疾病の治療にも有用である。また、式(I)で表される結晶カリウム塩は、癌の発症における血管新生応答の抑制剤としても有用である。
【0103】
故に、式(I)で表される結晶カリウム塩は、哺乳類、特にヒトの、以下の炎症性又は自己免疫性疾患:アナフィラキシー反応、アレルギー反応、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、化学的及び非特異的な刺激性接触皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、クローン病を伴う瘻孔、回腸嚢炎、敗血症又は内毒素性ショック、出血性ショック、ショック様症候群、癌の免疫治療により誘導される毛細血管漏出症候群、急性呼吸窮迫症候群、外傷性ショック、免疫に誘導される肺炎及び病原体に誘導される肺炎、免疫複合体により誘起される肺障害、及び慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病及び手術後の外傷を含む)、消化管潰瘍、虚血再灌流障害に関連する疾患(急性心筋虚血及び急性心筋梗塞、急性腎不全、虚血性腸疾患及び急性出血性又は急性虚血性脳卒中を含む)、免疫複合体により誘起される糸球体腎炎、自己免疫性疾患(インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、変形性関節症及び全身性エリテマトーデスを含む)、急性及び慢性の臓器移植拒絶反応、移植による動脈硬化及び線維症、心血管機能障害(高血圧、動脈硬化、動脈瘤、重症下肢虚血、末梢動脈閉塞性疾患及びレイノー症候群を含む)、糖尿病の合併症(糖尿病性腎症、神経症及び網膜症を含む)、眼疾患(黄斑変性症及び緑内障を含む)、神経変性障害(脳卒中における遅発性神経変性、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳炎及びHIV認知症を含む)、関節痛を含む炎症性及び神経性の痛み、歯肉炎を含む歯周病、耳感染、偏頭痛、良性前立腺過形成、限定されないが、白血病及びリンパ腫、前立腺癌、乳癌、肺癌、悪性黒色腫、腎臓癌腫、頭部及び頸部腫瘍、及び結腸直腸癌を含む癌の治療に使用され得る。
【0104】
また、式(I)で表される結晶カリウム塩は、固形腫瘍の治療に用いられる上皮細胞増殖因子(EGF)又は上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)キナーゼの阻害因子に誘起される毛嚢炎の治療にも有用である。臨床試験により、毛嚢炎(顔面、胸部、背中に生ずる重度の座瘡様皮膚発疹が兆候として現れる、毛包の炎症)がそのような治療の投薬量を制限する主要な副作用であることが明らかになった。そのような毛嚢炎は、好中球の浸潤に関連していることから、活性化された好中球により分泌される生産物が炎症を引き起こすことが示唆される。式(I)で表される結晶カリウム塩は、好中球又は好酸球に誘起される炎症を阻害するため、従って、そのような毛嚢炎の治療に有用であり、それによって、治療を受けている癌患者の生活の質を改善するが、更にEGF阻害剤若しくはEGFRキナーゼ阻害剤の投薬量の増量、又は治療継続期間の延長が可能となり、所望の阻害剤の有効性を改善する結果をもたらす。
【0105】
また、式(I)で表される結晶カリウム塩は、限定されないが、喘息、慢性気管支炎、細気管支炎、閉塞性細気管支炎(器質化肺炎を伴うもの等を含む)、気管のアレルギー性炎症(鼻炎及び副鼻腔炎を含む)、好酸球性肉芽種、肺炎、肺線維症、結合組織病の肺における兆候、急性又は慢性の肺障害、慢性の閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、並びに好酸球浸潤により特徴付けられる他の非炎症性の肺不全を含む、肺及び気管の炎症の治療にも有用である。例えば、式(I)で表される結晶カリウム塩は:好酸球により誘起される肺又は組織の炎症;好中球により誘起される肺の炎症;リンパ球により誘起される肺の炎症;インターロイキン‐5、インターロイキン‐13及びエオタキシンを含む、サイトカイン並びにケモカインの生産;プロスタグランジンE2及びシステイニルロイコトリエンを含む脂質誘導因子の生産;気道過敏;並びに気道及び血管の炎症の抑制に有用である。
【0106】
I. 本発明の結晶カリウム塩の試験
炎症の特徴は、好中球、好酸球及び他の炎症系細胞の接着並びに内皮細胞を横切る移動である。肺、消化管及び他の器官で生ずる極性化された上皮細胞を横切る細胞の移動において、同様な過程が観察される。これらの過程の細胞培養モデルが利用可能であり、使用の結果、リポキシンA4及び安定なリポキシンA4の類似体が、ヒト内皮細胞、及びヒト小腸上皮細胞株T84を含む上皮細胞を横切るヒト好中球の移動を阻害することが示された。ゆえに、当業者は、Colgan, S. P., et al., J. Clin. Invest. (1993), Vol. 92, No. 1, pp. 75- 82;及びSerhan, C.N., et al., Biochemistry (1995), Vol. 34, No. 44, pp. 14609-14615に記載されているものと同様な実験を実行することにより、式(I)で表される結晶カリウム塩のヒト内皮細胞を横切るヒト好中球及び好酸球の移動を阻害する能力を試験することが出来る。
【0107】
空気嚢モデル及び/又はマウスのザイモサンにより誘起される腹膜炎モデルは、炎症反応の治療における式(I)で表される結晶カリウム塩のインビボの有効性の評価に使用され得る。これらは、極限部分への炎症性細胞の浸潤により特徴付けられる炎症の鋭敏な実験モデルである。例えば、Ajuebor, M. N., et al., Immunology (1998), Vol. 95, pp. 625-630; Gronert, K., et al., Am. J. Pathol. (2001), Vol. 158, pp. 3-9; Pouliot, M., et al., Biochemistry (2000), Vol. 39. pp. 4761-4768; Clish, C.B., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1999), Vol. 96, pp. 8247-8252;及びHachicha, M., et al., J. Exp.Med. (1999), Vol. 189, pp. 1923-30に記載されているインビボ実験を参照されたい。
【0108】
また、動物モデル(即ち、インビボアッセイ)も、喘息並びに関連する肺及び気管の障害の治療における式(I)で表される結晶カリウム塩の有効性の判定に利用され得る。例えば、De Sanctis, GT. et al., Journal of Clinical Investigation (1999), Vol. 103, pp. 507-515;及びCampbell, E. M., et al., J. Immunol. (1998), Vol.161 , No. 12, pp. 7047-7053に記載されている実験を参照されたい。
【0109】
あるいは、式(I)で表される結晶カリウム塩は、米国特許第6,831,186号及び米国特許出願公開第2004/0162433号(それらの関連する開示は全て、本明細書中の全てに援用される)に記載されているアッセイを採用することにより、主張される使用方法のその有効性が試験され得る。
【0110】
J. 本発明の結晶カリウム塩の投与
単一の立体異性体若しくは複数の立体異性体の混合物として、又はそれらのシクロデキストリンクラスレートとして、又は溶媒和物若しくは多形体として、純粋な形態で、又は適切な医薬組成物で、式(I)で表される結晶カリウム塩の投与は、任意の許容される投与の様式又は同様の有用性を供する因子を経て実行される。従って、投与は、例えば、経口投与、経鼻投与、非経口投与、肺投与、局所投与、経皮投与、又は直腸投与であり得て、その形態は、例えば錠剤、座薬、丸薬、軟エラスチン及び硬ゼラチンカプセル、粉薬、水薬、懸濁液、エアロゾル、パッチ等、好ましくは正確な用量の単純な投与に適した単位投与形態を含む、例えば、固形、半固形、凍結乾燥粉末、又は液体調剤形態であり得る。その組成物は、その/一つの活性因子として本発明のカリウム塩、及び確立された医薬として担体又は賦形剤を含み、並びに、それらに加え、当該技術分野で一般的に知られているような他の医薬因子、薬学的因子、担体、アジュバント等を含み得る。
【0111】
そのような剤形を製造する実際の方法は、当業者により知られており、又は明らかになるだろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences. 18th Ed., (Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 1990)を参照されたい。投与されるべき組成物は、本明細書の教示に従って、任意の事象において、炎症により特徴付けられる病態の治療のため、治療的に有効な量の式(I)で表される結晶カリウム塩を含むであろう。
【0112】
一般的に、意図される投与の様式に依存して、医薬として許容される組成物は、約0.1重量%〜約99.9重量%の式(I)で表される結晶カリウム塩、約99.9重量%〜0.1重量%の適切な医薬としての賦形剤を含み得る。
【0113】
一の態様において、投与経路は経口投与であり、治療されるべき病態の進行の程度により調整され得る簡便な日常投薬計画を使用する。そのような経口投与のため、式(I)で表される結晶カリウム塩を含む医薬として許容される組成物は、1つ以上の通常採用される医薬として許容される賦形剤(単数又は複数)に組み込まれることにより形成される。そのような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤等の形態をとる。
【0114】
好ましくは、そのような組成物は、カプセル、カプレット又は錠剤の形をとり、また、一般的に希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、及び結合剤を含み得る。
【0115】
また、式(I)で表される結晶カリウム塩は、体内で緩やかに溶解する担体に、例えばこの容量で通常採用されるものなどに配置された有効成分を含む座薬としても処方され得る。
【0116】
液体の医薬として投与可能な組成物は、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等であるがこれに限られない担体中に本発明のカリウム塩及び任意の医薬として許容されるアジュバントを溶解し、拡散等し、それによって溶液又は懸濁液を形成することにより製造され得る。
【0117】
また、必要に応じて、本発明の医薬組成物は、湿潤化剤又は乳化剤、pH緩衝剤、酸化防止剤等の少量の補助物質を含み得る。
【0118】
式(I)で表される結晶カリウム塩は、治療的に有効な量で投与され、その量は、採用される特定の化合物の活性;式(I)で表される結晶カリウム塩の代謝的安定性及び作用の長さ;患者の年齢、体重、一般的な健康、性別、及び食生活;投与の時間及び様式;排出率;薬剤の組合わせ;治療されるべき特定の病態(単数又は複数)の進行度;並びに治療を受ける動物種(host)を含む様々な要素に依存して変化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0119】
(原文記載なし)
【実施例】
【0120】
以下の実施例は、式(Ia)で表される結晶カリウム塩の製造を更に記載する。また、式(I)で表される他のリポキシンA4類似体の結晶カリウム塩も、類似的に製造され得る。
【0121】
実施例1: 結晶化による結晶カリウム塩(Ia)の一水和物の製造、及び一水和物の安定領域に関連する条件下の乾燥
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム(化合物(IIa))(964g)は、無水エタノール(3.850L)及び水(0.580L)の混合物に溶解された。二番目のフラスコにおいて、水酸化カリウムのペレット(172.2g)は、水(0.580L)及び無水エタノール(3.850L)の混合物に溶解された。水酸化カリウム溶液は、20℃で湿式pH試験紙を用いてpH8.5が測定されるまで、最初の酸(IIa)溶液に徐々に添加された。種結晶(2.5g)が、その溶液に添加された。22℃で90分後、播床が形成され、その懸濁液は−10℃で45分以内に冷却され、そして加えて2時間の間、この温度で撹拌された。その冷却した懸濁液は、それから濾紙を着けた吸込フィルターを用いて濾過された。回収された結晶は、1.5Lの冷却されたエタノール/水の混合物(−10℃;水が6.0%wt)で3回洗浄され、そして、200mbar/30℃の真空乾燥キャビネットの中で、掃引ガスとして空気(相対湿度約30%)を使用し、恒量となるまで乾燥された。乾燥工程は、乾燥工程の間に取り出した幾つかのサンプルの含水量を判定する(カールフィッシャー滴定法による)ことにより調節された。式(Ia)で表されるカリウム塩の結晶一水和物形態(901g)が収得された。
【0122】
実施例2: マイクロ波乾燥機による、結晶カリウム塩(Ia)の一水和物形態の製造
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム(化合物(IIa))(50.05g)は、無水エタノール(158.11g)及び水(30.07g)の混合物に溶解された。二番目のフラスコにおいて、水酸化カリウムのペレット(12.24g)は、水(41.22g)及び無水エタノール(216.15g)の混合物に溶解された。水酸化カリウム溶液(180.21g)は、20℃で湿式pH試験紙を用いてpH8.5が測定されるまで、最初の酸(IIa)溶液に徐々に添加された。その溶液は0℃に冷却された。種結晶がエタノールに懸濁され、得られた懸濁液(0.3g)がその溶液に添加された。30分後、播床が形成され、その懸濁液は−12℃で30分以内で冷却され、そして更に1時間の間、この温度で撹拌された。その冷却した懸濁液は、それから濾紙を着けた吸込フィルターを用いて濾過された。回収された結晶は、0.1Lの冷却されたエタノール/水の混合物(−12℃;水が4.0%wt)で洗浄された。湿ったフィルターパッド上のサンプルをXRPDを使用して解析したところ、二水和物の形成が示された。そして、マイクロ波乾燥機中で乾燥工程が開始された。乾燥条件は:電力=80W、乾燥機中の気圧<150mbarであった。3.7時間の乾燥時間の後、結晶の質量は恒量に達し、そして、式(Ia)で表されるカリウム塩の結晶一水和物形態(XRPD解析、熱重量分析)(38.97g)が収得された。
【0123】
実施例3: 結晶化による結晶カリウム塩(Ia)の一水和物形態の製造、及び二水和物の安定領域に関連する条件下の乾燥
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム(化合物(IIa))(500mg)は、エタノール(2ml)に溶解された。水(0.75mL)がその溶液に添加された。得られた清澄な溶液が撹拌された。水酸化カリウムのペレット(85.3mg)がエタノール(2.84mL)に溶解された。得られた溶液は清澄で、固相は無かった。等モル量の清澄な水酸化カリウム溶液が、最初の酸(IIa)の溶液に添加された。添加された水酸化カリウム溶液の用量は、pHのチェック(湿式pHインジケーターストリップ)により実行された。水酸化カリウム溶液の添加は、その溶液がpH8.5に達したときに停止された。撹拌された溶液は、−10℃に冷却された。2時間後、懸濁が検出可能となった。懸濁液は、更に1時間撹拌された。懸濁液は予冷却された遠心分離機で遠心分離され、母液がデカントされた。固相は空気循環型乾燥機中で30℃で乾燥された。空気循環型乾燥機の空気は、掃引ガスの加湿により相対湿度70%に調整された。掃引ガス流(N2)は、定常的に乾燥機中に導入された。掃引ガス流は、交互に乾燥又は水で加湿された。N2流の加湿と乾燥の時間周期は、乾燥機内の相対湿度を捉える自動調整技術により制御された。この技術を使用することにより、保存期間中の乾燥機内の相対湿度を70%に保持することが可能となった。湿ったフィルターパッド並びに乾燥機中に置いた乾燥時間8時間、及び32時間の固体のサンプル(=乾燥生産物)のXRPD解析により、カリウム塩(Ia)の結晶二水和物形態の形成が示された。
【0124】
実施例4: 二水和物条件下の保存による一水和物形態からの結晶カリウム塩(Ia)の二水和物形態の製造
カリウム塩(Ia)の一水和物形態(1.697g)が、ディッシュに移された。その工程の最初の前記物質の一水和物は、XRPD解析及び熱重量分析により確立された。取られたサンプルは127mgであった。ディッシュは、空気循環型乾燥機中に移された。保存条件は、大気圧で25℃であった。実施例2と同様の湿潤化した掃引ガス流(N2)が、定常的に乾燥機内に導入された。この技術を使用することにより、保存期間中の乾燥機内の相対湿度を70%に保持することが可能となった。約48時間後に、最初のサンプル(質量=239mg)が取られ、そしてカリウム塩(Ia)の二水和物形態の形成が示された(XRPD解析、熱重量分析)。更に24時間後に、第二のサンプル(質量=220mg)が取られた。この保存された物質のサンプルも、二水和物の形成が示された(XRPD解析、熱重量分析)。カリウム塩(Ia)の結晶二水和物形態のディッシュ内の残りの質量は、1.168gであった。
【0125】
実施例5: 適切な溶媒中の懸濁による、一水和物形態からの結晶カリウム塩(Ia)の無水和物形態の製造
結晶カリウム塩(Ia)の一水和物形態(12.42g)が、フラスコ内に移された。前記物質の一水和物形態は、XRPD解析及び熱重量分析により確立された。1,4‐ジオキサン溶媒(125mL)がフラスコ内に添加され、そして柔軟膜で密封された。その懸濁液はマグネチックスターラーで撹拌され、6時間95℃で加熱され、その後その懸濁液はおよそ室温で冷却され、そして吸込フィルターで溶液から結晶が単離された。湿った濾過ケーキは50mLの溶媒(1,4‐ジオキサン、室温)で洗浄され、そして真空乾燥キャビネット中で100mbar及び40℃で乾燥された。44時間の乾燥時間の後、10.851gのカリウム塩(Ia)の結晶無水和物形態(XRPD解析、熱重量分析)が得られた。
【0126】
本発明は、特定の実施態様を参照して記載されているが、当業者によって、発明の精神と範囲から逸脱することなしに、様々な変更がなされ、及び同等物で置換され得ることが理解されるべきである。加えて、特定の状況、材料、対象の組成物、工程、工程の段階(単数又は複数)を目的とする発明の精神と範囲に適応するよう、多くの改変がなされてもよい。そのような改変の全ては、本明細書に添付された特許請求の範囲内であることが意図される。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

{式中、
1は、‐O‐、‐S(O)t‐(ここで、tは0、1、又は2である)、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン鎖であり;そして
2は、アリール(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)又はアラルキル(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)である}
で表される結晶カリウム塩であって、ここで、上記式(I)で表されるで表される化合物は、単一の立体異性体又は立体異性体の任意の混合物である、上記結晶カリウム塩。
【請求項2】
1が‐O‐であり、及びR2がフルオロ、クロロ及びヨードから選択される1つ以上の置換基により任意に置換されるフェニルである、請求項1に記載の結晶カリウム塩。
【請求項3】
単一の立体異性体又は立体異性体の任意の混合物として、下記式:
【化2】

を有する、請求項2に記載の結晶カリウム塩。
【請求項4】
上記結晶カリウム塩が:
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3S,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3S,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3R,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3S,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;及び
2‐((2R,3S,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
から選択される、請求項3に記載の結晶カリウム塩。
【請求項5】
上記結晶カリウム塩が2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム:
【化3】

である、請求項3に記載の結晶カリウム塩。
【請求項6】
上記結晶カリウム塩が無水和物(anhydrate)の形態である請求項1〜5のいずれか1項の記載の結晶カリウム塩。
【請求項7】
上記結晶カリウム塩が、d=約26.7Åの特性ピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる無水和物形態である、請求項5に記載の結晶カリウム塩。
【請求項8】
上記結晶カリウム塩が、d=約26.7Å及びd=約3.7Åの特性ピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる無水和物形態である、請求項5に記載の結晶カリウム塩。
【請求項9】
上記結晶カリウム塩が水和物を形成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶カリウム塩。
【請求項10】
上記結晶カリウム塩が一水和物形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶カリウム塩。
【請求項11】
上記結晶カリウム塩が、d=約26.5Åの特性ピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる一水和物形態である、請求項5に記載の結晶カリウム塩。
【請求項12】
上記結晶カリウム塩が、d=約26.5Å、d=約4.3Å及びd=約4.0Åの特性ピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる一水和物形態である、請求項5に記載の結晶カリウム塩。
【請求項13】
上記結晶カリウム塩が二水和物形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶カリウム塩。
【請求項14】
上記結晶カリウム塩が、d=約27.1Åで特性ピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる二水和物形態である、請求項5に記載の結晶カリウム塩。
【請求項15】
上記結晶カリウム塩が、d=約27.1Å、d=約4.2Å及びd=約4.1Åの特性ピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる二水和物形態である、請求項5に記載の結晶カリウム塩。
【請求項16】
上記結晶カリウム塩が、脱水された水和物形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶カリウム塩。
【請求項17】
上記結晶カリウム塩が、d=約27.1Å及びd=約24.1Åの間で特性ピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる脱水された水和物形態である、請求項5に記載の結晶カリウム塩。
【請求項18】
上記結晶カリウム塩が請求項6〜17に記載されたいずれかの形態の混合物の形態である、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶カリウム塩。
【請求項19】
式(I):
【化4】

{式中、
1は、‐O‐、‐S(O)t‐(ここで、tは0、1、又は2である)、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン鎖であり;そして
2は、アリール(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)又はアラルキル(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)である}
で表される結晶カリウムを合成する方法であって、
上記方法が:
1)適切な溶媒中のカリウム塩基(base)を混合する工程と、適切な溶媒中で、式(I)で表される塩に対応する遊離酸と混合する工程;
2)得られた懸濁液を任意に冷却する工程;
3)得られた懸濁液から結果物の結晶を単離する工程;
4)単離された結晶を適切な溶媒で任意に洗浄する工程;及び
5) 単離された結晶を乾燥させて、結晶カリウム塩(I)得る工程;
を含み、ここで、上記式(I)で表される化合物が単一の立体異性体又は立体異性体の任意の混合物である、上記方法。
【請求項20】
カリウム塩基に適切な溶媒が有機溶媒及び水を含み、遊離酸に適切な溶媒が有機溶媒及び水を含み、及びここで単離された結晶を洗浄するための適切な溶媒が有機溶媒及び水を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記結晶カリウム塩が一水和物、二水和物、脱水された水和物、水和物の混合物、又は水和物及と脱水された水和物との混合物の形態である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
上記乾燥工程が、一水和物又は二水和物形態の安定領域に関連する条件下で行われ、それぞれ、上記カリウム塩の一水和物形態又は脱水和物(dehydrate)形態を得る、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
上記乾燥工程の条件が、水で湿潤化した掃引ガスであって、一水和物形態の又は二水和物形態の安定領域に関連する水の特定の分圧又は活性を有する上記ガスを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記掃引ガスがN2である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
所望の水和物状態を得るために厳密に監視及び制御される、請求項19〜24のいずれか1に記載の乾燥方法。
【請求項26】
請求項1に記載の結晶カリウム塩:
【化5】

ここで:
1は、‐O‐、‐S(O)t‐(ここで、tは0、1、又は2である)、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン鎖であり;そして
2は、アリール(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)又はアラルキル(アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシから選択される1つ以上の置換基により任意に置換される)である}
を合成する方法であって、該方法は:
1)適切な溶媒中で式(I)で表されるカリウム塩の水和物又は水和物の混合物を温浸する工程;
2)得られた懸濁液を任意に加熱する工程;
3)得られた結晶を単離する工程;
4)単離された結晶を適切な溶媒で任意に洗浄する工程;及び
5)単離された結晶を乾燥させて、カリウム塩(I)の結晶無水和物形態を得る工程
を含み、ここで、上記式(I)で表される化合物は、単一の立体異性体又は立体異性体の任意の混合物である、上記方法。
【請求項27】
上記カリウム塩の水和物又は水和物の混合物に適切な溶媒が有機溶媒を含み、及び上記単離された結晶を洗浄するために適切な溶媒が有機溶媒を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記乾燥工程が無水和物形態の安定領域に関連する条件下で行われる請求項27又は28に記載の方法。
【請求項29】
上記乾燥工程の条件が、掃引ガスであって、無水和物形態の安定領域に関連する水の特定の分圧又は活性を有する上記ガスを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
掃引ガスがN2である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
無水和物を生産するために厳密に監視及び制御される、請求項26〜30のいずれか1項に記載の乾燥方法。
【請求項32】
1が‐O‐であり、R2がフルオロ、クロロ及びヨードからなる群から選択される1つ以上の置換基により任意に置換されるフェニルである、請求項19〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
上記結晶カリウム塩が:
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3S,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3S,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2R,3R,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;
2‐((2S,3S,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム;及び
2‐((2R,3S,4E,6E,10E,12R)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム
から選択される、請求項32のいずれか1に記載の方法。
【請求項34】
上記結晶カリウム塩が2‐((2S,3R,4E,6E,10E,12S)‐13‐(4‐フルオロフェノキシ)‐2,3,12‐トリヒドロキシトリデカ‐4,6,10‐トリエン‐8‐イニロキシ)酢酸カリウム:
【化6】

である、請求項32のいずれか1に記載の方法。
【請求項35】
1以上の医薬として許容される賦形剤(単数又は複数)及び治療的に有効な量の請求項1〜18のいずれか1に記載の結晶カリウム塩を含む医薬組成物。
【請求項36】
炎症により特徴付けられる病態を有する哺乳類の治療のための薬剤を製造するための請求項1〜18のいずれか1に記載の結晶カリウム塩の使用。
【請求項37】
上記哺乳類がヒトである、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
上記病態が炎症性又は自己免疫性疾患である、請求項36又は37に記載の使用。
【請求項39】
上記炎症性又は自己免疫性疾患が、アナフィラキシー反応、アレルギー反応、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、化学的及び非特異的な刺激性接触皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、クローン病を伴う瘻孔、回腸嚢炎、敗血症又は内毒素性ショック、出血性ショック、ショック様症候群、癌の免疫治療により誘導される毛細血管漏出症候群、急性呼吸窮迫症候群、外傷性ショック、免疫に誘導される肺炎及び病原体に誘導される肺炎、免疫複合体により誘起される肺障害、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病及び手術後の外傷を含む炎症性腸疾患、消化管潰瘍、急性心筋虚血及び急性心筋梗塞、急性腎不全、虚血性腸疾患及び急性出血性又は急性虚血性脳卒中を含む虚血再灌流障害、免疫複合体により誘起される糸球体腎炎、インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、変形性関節症及び全身性エリテマトーデスを含む自己免疫性疾患、急性及び慢性の臓器移植拒絶反応、移植による動脈硬化及び線維症、高血圧、動脈硬化、動脈瘤、重症下肢虚血、末梢動脈閉塞性疾患及びレイノー症候群を含む心血管機能障害、糖尿病性腎症、神経症及び網膜症を含む糖尿病の合併症、黄斑変性症及び緑内障を含む眼疾患、脳卒中における遅発性神経変性、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳炎及びHIV認知症を含む神経変性障害、関節痛を含む炎症性及び神経性の痛み、歯肉炎を含む歯周病、耳感染、偏頭痛、良性前立腺過形成、限定されないが、白血病及びリンパ腫、前立腺癌、乳癌、肺癌、悪性黒色腫、腎臓癌腫、頭部及び頸部腫瘍、及び結腸直腸癌を含む癌を含む群から選択される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
上記炎症性又は自己免疫性疾患が、クローン病、回腸嚢炎、潰瘍性大腸炎及び消化管潰瘍を含む群から選択される炎症性腸疾患である、請求項38に記載の使用。
【請求項41】
炎症性又は自己免疫性疾患がクローン病である、請求項38に記載の使用。
【請求項42】
上記病態が、肺又は気道の炎症性疾患である請求項36又は37に記載の使用。
【請求項43】
肺又は気道の炎症性疾患が、喘息、慢性気管支炎、細気管支炎、器質化肺炎を伴う細気管支炎を含む閉塞性細気管支炎、鼻炎及び副鼻腔炎を含む気管のアレルギー性炎症、好酸球性肉芽種、肺炎、肺線維症、結合組織病の肺における兆候、急性又は慢性の肺障害、慢性の閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、並びに好酸球浸潤により特徴付けられる他の非炎症性の肺不全を含む群から選択される請求項42に記載の使用。
【請求項44】
哺乳類において炎症により特徴付けられる病態を治療する方法であって、該方法がその治療を要する哺乳類に対し、治療的に有効な量の請求項1〜18のいずれか1に記載の結晶カリウム塩を投与することを含む、上記方法。

【公表番号】特表2010−511649(P2010−511649A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539669(P2009−539669)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010785
【国際公開番号】WO2008/068041
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】