説明

ルーフパネルの開閉システム及びそれに用いられる分割駆動ケーブル

【課題】ロック機構が複数ある場合において部品点数を削減する。
【解決手段】フック81を介して電動モータ10によって引っ張られることで駆動される入力ケーブル84と、入力ケーブル84の出力端部が連結され且つ車体に回動自在に設けられた連結部材110と、入力端部が連結部材110に連結され且つ出力端部がリンク拘束機構500に連結されて入力ケーブル84の引張力をリンク拘束機構500に伝達させる第1駆動ケーブル503と、入力端部が連結部材110に連結され且つ出力端部が収納時ロック機構510に連結されて入力ケーブル84の引張力を収納時ロック機構510に伝達させる第2駆動ケーブル514とを有する分割駆動ケーブル100とをさらに備え、リンク拘束機構500と収納時ロック機構510とは分割駆動ケーブル100を介して電動モータ10によって駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク機構を介して車体に支持され、車室空間を閉じた全閉状態と、該車室空間を開放し且つ車体後部の収納室に収納された収納状態との間で開閉移動可能なルーフパネルを該全閉状態と収納状態とで保持するルーフパネルの開閉システム及びそれに用いられる分割駆動ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に設けられたルーフパネル等のパネル部材を開閉移動可能に構成した車両がある(特許文献1、2参照)。この特許文献1に係る車両においては、ルーフパネルをリンク機構を介して車体に支持すると共に、該リンク機構を電動モータで駆動することによってルーフパネルを、車室空間を閉じる全閉状態と車室空間を開放してトランク内に収納される収納状態との間で開閉移動可能に構成している。
【0003】
このように自動的に開閉可能なルーフパネル等のパネル部材は、全閉時には走行時の空力や振動によって浮き上がる虞があり、収納時には走行時の振動によりがたつく虞があるため、全閉状態や収納状態で車体に対して確実に保持する必要があり、種々のロック機構が必要となる。
【0004】
例えば、特許文献1に係る車両においては、ルーフパネルが車室空間を閉じた全閉状態においてルーフパネルの前端部を車体のフロントヘッダに保持するためのルーフロック機構が設けられている。このルーフロック機構によって、ルーフパネルが全閉状態に保持される。このルーフロック機構は、コネクティングロッドを介して電動モータによって駆動されている。
【0005】
また、ルーフパネルが全閉時においてルーフパネルと車体とを連結するリンク機構を拘束するリンクロック機構がさらに設けられている。このようにリンク機構を拘束することによって全閉時のルーフパネルの保持剛性を向上させている。つまり、リンクロック機構は、リンク機構を拘束することによってルーフパネルを間接的に保持している。このリンクロック機構は、駆動手段は不明であるがワイヤを介して駆動されている。
【0006】
さらに、特許文献2に係る車両においては、ルーフパネルが車体後部の収納室に収納された収納状態において、ルーフパネルを収納室内に保持する収納時ロック機構が設けられている。このように収納時のルーフパネルを該収納時ロック機構で保持することによって、走行中等に収納室内でルーフパネルが上下にがたつくことを防止している。この収納時ロック機構は、コネクティングロッドを介して電動モータによって駆動されている。
【特許文献1】特開2002−264657号公報
【特許文献2】特開2002−264658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のように、必要なロック機構が増えれば増えるほど、それらを駆動する駆動手段やその駆動力をロック機構に伝える駆動ケーブル等の伝達部材の部品点数が増える。その結果、コストの抑制が困難となると共に、組立性が低下する。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロック機構が複数ある場合において部品点数を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1つの入力から2つの出力を得ることができる分割駆動ケーブルを用いて、複数のロック機構を1つの駆動手段で駆動するようにしたものであって、このとき、複数のロック機構として、1つの駆動手段で駆動したとしてもそれぞれが適切に機能することができるロック機構を選択したものである。詳しくは、第1の発明は、リンク機構を介して車体に支持され、車室空間を閉じた全閉状態と、該車室空間を開放し且つ車体後部の収納室に収納された収納状態との間で開閉移動可能なルーフパネルと、上記ルーフパネルが全閉時に該ルーフパネルを保持するための全閉時ロック機構と、上記ルーフパネルが収納時に該ルーフパネルを保持するための収納時ロック機構とを備えたルーフパネルの開閉システムが対象である。そして、上記収納室を開閉可能に設けられた収納室パネルに関連した駆動手段と、上記駆動手段によって引っ張られることで駆動される入力ケーブルと、該入力ケーブルの出力端部が連結され且つ車体に回動自在に設けられた連結部材と、入力端部が該連結部材に連結され且つ出力端部が上記全閉時ロック機構に連結されて該入力ケーブルの引張力を該全閉時ロック機構に伝達させる第1出力ケーブルと、入力端部が該連結部材に連結され且つ出力端部が上記収納時ロック機構に連結されて該入力ケーブルの引張力を該収納時ロック機構に伝達させる第2出力ケーブルとを有する分割駆動ケーブルとをさらに備え、上記全閉時ロック機構と上記収納時ロック機構とは、上記分割駆動ケーブルを介して上記駆動手段によって駆動されるものとする。
【0010】
上記の構成の場合、1つの入力で、上記全閉時ロック機構と収納時ロック機構とを駆動することができる。詳しくは、ルーフパネルが全閉時に上記入力ケーブルが駆動されると、全閉時ロック機構がルーフパネルを保持する。このとき、収納時ロック機構も作動するが、ルーフパネルが収納状態にないのでルーフパネルを保持する機能を果たすわけではない。一方、ルーフパネルが収納時に該入力ケーブルが駆動されると、収納時ロック機構がルーフパネルを保持する。このとき、全閉時ロック機構も作動するが、ルーフパネルが全開状態にないのでルーフパネルを保持する機能を果たすわけではない。
【0011】
つまり、該全閉時ロック機構はルーフパネルが全閉時に必要なロック機構である一方、該収納時ロック機構はルーフパネルが収納時に必要なロック機構であって、ルーフパネルの全閉状態と収納状態とは同時に起こり得ないため、1つの入力で、全閉時ロック機構と収納時ロック機構とをそれぞれ必要なときに適切に駆動させることができる。こうすることで、全閉時ロック機構と収納時ロック機構とを上記分割駆動ケーブルを介して駆動することによって駆動手段を共通化できる。
【0012】
また、ルーフパネルが収納状態から全閉状態へ移動するとき、及び全閉状態から収納状態へ移動するときには、上記収納室パネルが必ず開閉する必要がある。つまり、上記全閉時ロック機構及び収納時ロック機構は該収納室パネルと連動して作動するものであるため、上記全閉時ロック機構及び収納時ロック機構を該収納室パネルに関連した駆動手段で駆動するように構成している。こうすることで、上記分割駆動ケーブルによって共通化した駆動手段を該収納室パネルに関連した駆動手段とさらに共通化することができ、さらに部品点数を削減することができる。
【0013】
こうして、駆動ケーブルや駆動手段を共通化することができるため、部品点数を削減してコストを削減することができると共に、組立性を向上させることができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記収納室パネルには、上記収納室を閉じたときに該収納室パネルを保持するための収納室パネルロック機構が設けられ、上記駆動手段は、上記収納室パネルロック機構を駆動するものであって、上記全閉時ロック機構及び上記収納時ロック機構は、上記収納室パネルロック機構が上記収納室パネルを保持するときに上記ルーフパネル及び上記収納室パネルを保持する一方、上記収納室パネルロック機構が上記収納室パネルの保持を解除するときに上記ルーフパネル及び上記収納室パネルの保持を解除するように連動して駆動されるものとする。
【0015】
上記の構成の場合、上記収納室パネルは、上記収納室パネルロック機構によって全閉状態で保持されていると共に、ルーフパネルを全閉状態から収納状態へ移動させるとき、又は収納状態から全閉状態へ移動させるときに全開状態となる。
【0016】
上記のような、開閉移動するルーフパネルにおいては、ルーフパネルを収納又は全閉にする際の所要時間は短い方が好ましい。そこで、この所要時間を短縮するために、上記収納室パネルロック機構が上記収納室パネルの保持を解除するときに、上記全閉時ロック機構及び収納時ロック機構がルーフパネルの保持を解除するように構成している。仮に、ルーフパネルの保持と収納室パネルの保持とを別々のタイミングで解除すると、先に保持が解除されたパネルは、後のパネルの保持が解除されるのを待ってから作動を開始する必要があり、その待ち時間の分だけ、ルーフパネルを収納又は全閉にする際の所要時間が長くなる。ところが、上記の構成では、収納室パネルの保持とルーフパネルの保持とがほぼ同時に解除されるため、例えば、収納室パネルとルーフパネルとを同時に作動開始させる等、収納室パネル及びルーフパネルそれぞれの作動タイミングを他方のパネルの保持解除を待つことなく柔軟に設定することができる。その結果、ルーフパネルを収納又は全閉にする際の所要時間を短縮することが可能となり、ルーフパネルの性能を向上させることができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記第1出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第1距離離れた位置に取り付けられ、上記第2出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第2距離離れた位置に取り付けられ、上記入力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第3距離離れた位置に取り付けられているものとする。
【0018】
上記の構成の場合、上記所定の第1〜第3距離を調整することによって、上記入力ケーブルに入力された引張力を増減して出力ケーブルに伝達することができ、又は入力ケーブルが駆動されるときのストローク量(引張長さ)を増減して出力ケーブルを駆動することができる。つまり、上記連結部材における上記所定の第1〜第3距離を調整することによって、入力された引張力又はストローク量をそれぞれのロック機構に応じた値に調節して出力することができる。
【0019】
尚、上記第1〜第3距離は、必ずしも異なる距離である必要はなく、同じ距離であってもよい。
【0020】
第4の発明は、分割駆動ケーブルが対象であって、引張力によって駆動される入力ケーブルと、該入力ケーブルの出力端部が連結され且つ回動自在な連結部材と、出力端部が該連結部材に連結され且つ入力端部が第1の被駆動手段に連結される第1出力ケーブルと、出力端部が該連結部材に連結され且つ入力端部が第2の被駆動手段に連結される第2出力ケーブルとを備えたものとする。
【0021】
上記の構成の場合、駆動ケーブルの入力側を共通化させて、1つの入力ケーブル(上記入力ケーブル)と2つの出力ケーブル(上記第1出力ケーブルと第2出力ケーブル)とを有する分割構造とすることによって、2つの被駆動手段を駆動する駆動ケーブルを1つの組立体として構成することができる。その結果、ケーブル類の部品点数を削減することができ、コストを抑制することができると共に組立性を向上させることができる。
【0022】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、上記第1出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第1距離離れた位置に取り付けられ、上記第2出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第2距離離れた位置に取り付けられ、上記入力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第3距離離れた位置に取り付けられているものとする。
【0023】
上記の構成の場合、上記所定の第1〜第3距離を調整することによって、上記入力ケーブルに入力された引張力を増減して出力ケーブルに伝達することができ、又は入力ケーブルが駆動されるときのストローク量(引張長さ)を増減して出力ケーブルを駆動することができる。つまり、上記連結部材における上記所定の第1〜第3距離を調整することによって、入力された引張力又はストローク量をそれぞれの被駆動手段に応じた値に調節して出力することができる。
【0024】
尚、上記第1〜第3距離は、必ずしも異なる距離である必要はなく、同じ距離であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記分割駆動ケーブルによって上記全閉時ロック機構と収納時ロック機構とを駆動すると共に、その駆動手段を上記収納室パネルに関連した駆動手段と共通化することによって、部品点数を削減してコストを抑制することができると共に組立性を向上させることができる。
【0026】
また、別の本発明によれば、上記第1の被駆動手段と第2の被駆動手段とを駆動する駆動ケーブルを1つの入力ケーブルと2つの出力ケーブル(即ち、第1出力ケーブル及び第2出力ケーブル)とを有する分割構造で構成することによって、部品点数を削減して、コストを抑制することができると共に、従来、複数本であったケーブルを1つの組立体としてまとめて、組立性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を「前」と、車両後側を「後」と、車幅方向左側を「左」と、車幅方向右側を「右」というものとする。
【0029】
図1は本発明の実施形態に係るトランクリッドを有する車両Vを示す。符号12は車体1に設けられたルーフパネルであり、符号13は車体1に設けられたバックウインドウパネルであり、符号14は車体1の車両後部に形成されたトランクルーム15を開閉するトランクリッドである。
【0030】
上記ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13は、ルーフパネル開閉装置2によって、図1に示すように車体1の車室空間11を閉じた全閉状態と、図3に示すように車体後部に設けられたトランクルーム15内に収納される収納状態(全開状態)との間で、開閉動作可能に構成されている。
【0031】
また、上記トランクリッド14は、トランクリッド開閉装置6によってトランクルーム15を閉じた全閉状態とトランクルーム15を開放した全開状態との間で開閉動作可能に構成されている。このトランクリッド14は、上記ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13の開閉動作と連動して開閉動作を行う。すなわち、上記ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13が全閉状態又は収納状態のときにはトランクリッド14は全閉状態となっている一方(図1、3参照)、上記ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13が全閉状態から収納状態へ、又はその逆へ開閉動作しているときは、トランクルーム15を開放した状態となる(図2参照)。
【0032】
<トランクリッド開閉装置>
まず、トランクリッド開閉装置6について説明する。トランクリッド開閉装置6は、トランクリッド14に対して左右両側に設けられているが、それらの構成は同じであるため、左側のトランクリッド開閉装置6について図4〜図8を用いて説明する。
【0033】
このトランクリッド開閉装置6は、トランクリッド14と車体1とを連結するリンク機構7と、該トランクリッド14を全閉状態で保持するためのロック機構8と、該リンク機構7及びロック機構8を駆動するための電動モータ10(図5〜7では省略)と、該電動モータ10の駆動力をリンク機構7に伝達するための伝達機構9とを有し、トランクリッド14を全閉状態と全開状態との間で開閉動作させると共に、該トランクリッド14を全閉状態において車体に保持するものである。
【0034】
上記リンク機構7は、車体1に取り付けられたベースブラケット71と、トランクリッド14に取り付けられたリッド側ブラケット72と、該ベースブラケット71とリッド側ブラケット72とを連結する前側連結リンク73及び後側連結リンク74とを有する。
【0035】
上記ベースブラケット71は、取付ブラケット71a、71a、…を有しており、これら取付ブラケット71a、71a、…が車体1のサイドボディに対して車室内側から取り付けられている。
【0036】
上記前側連結リンク73は、リッド側端部がリッド側ブラケット72に対して回動自在に連結され且つ車体側端部がベースブラケット71に対して回動自在に連結されている。また、上記後側連結リンク74は、前側連結リンク73よりも後方位置において、リッド側端部がリッド側ブラケット72に対して回動自在に連結され且つ車体側端部がベースブラケット71に対して回動自在に連結されている。
【0037】
このように、ベースブラケット71、リッド側ブラケット72、前側連結リンク73及び後側連結リンク74は所謂4節リンク機構を構成しており、前側連結リンク73と後側連結リンク74とがそれぞれの車体側端部を中心に回動することによって、トランクリッド14に開閉動作させる。
【0038】
上記伝達機構9は、一端部が上記後側連結リンク74に連結された駆動リンク91と、電動モータ10に連結されて回転駆動されるセクターギヤ92と、該駆動リンク91の他端部と該セクターギヤ92とを連結する連結ピン93とを有し、電動モータ10の駆動力をリンク機構7に伝達させる伝達状態と該駆動力をリンク機構7に伝達させない非伝達状態とを切換可能に構成されている。
【0039】
上記駆動リンク91は、その一端部が連結部91aにおいて上記後側連結リンク74に対して回動自在に連結されている一方、他端部には上記連結ピン93が挿通する挿通孔91b(図8参照)が貫通形成されている。
【0040】
上記セクターギヤ92は、上記電動モータ10の出力軸に設けられた出力ギヤ(図示省略)に噛合するギヤ部92aと上記駆動リンク91の他端部が連結される連結部92bとが一体に形成されている。上記ギヤ部92aは該出力ギヤに対して電動モータ10の駆動力を減速するギヤ比となっており、つまり、セクターギヤ92は減速ギヤとしても機能することになる。また、上記連結部92bには、該セクターギヤ92の回動中心に対する半径方向に延びる長穴形状をした嵌合穴92cが貫通形成されている。
【0041】
そして、上記駆動リンク91の挿通孔91bに挿通させた連結ピン93を上記セクターギヤ92の嵌合穴92cに嵌合させることによって、該駆動リンク91がセクターギヤ92に対して回動自在に且つ該嵌合穴92cの長穴が延びる方向に変位可能に連結している。尚、連結ピン93は、駆動リンク91の挿通孔91bに挿通することによって該駆動リンク91に対して回動自在に設けているが、駆動リンク91に溶接等により固定して設ける構成であってもよい。また、嵌合穴92cは必ずしも貫通している必要はなく、連結ピン93が嵌合する形状であれば有底形状であってもよい。
【0042】
これら連結ピン93を介して連結された駆動リンク91とセクターギヤ92とは、図8に示すように、互いに対向して取り付けられるガイドアウタ75(図8にのみ図示)とガイドインナ76(図8にのみ図示)とで挟持されている。そして、このガイドアウタ75をベースブラケット71に取り付けることで、駆動リンク91、セクターギヤ92及び連結ピン93等がベースブラケット71に対して取り付けられることになる。
【0043】
ここで、上記ガイドアウタ75には外側ガイド溝75aが形成されていると共に、ガイドインナ76には該外側ガイド溝75aと対向して同様の形状をした内側ガイド溝76aが形成されている。これら一対の外側ガイド溝75aと内側ガイド溝76aとで1つのガイド部94を構成している。尚、外側ガイド溝75a及び内側ガイド溝76aは、連結ピン93の外径と略同じか若干広く、該連結ピン93が嵌る程度の溝幅を有している。
【0044】
詳しくは、上記駆動リンク91とセクターギヤ92とをガイドアウタ75とガイドインナ76とで挟持するときに、セクターギヤ92をガイドアウタ75及びガイドインナ76に対して回動自在に支持すると共に、駆動リンク91及びセクターギヤ92を貫通する連結ピン93の両端部をそれぞれ外側ガイド溝75aと内側ガイド溝76aとに係合させる。さらに、電動モータ10を、その出力軸の出力ギヤがセクターギヤ92のギヤ部92aと噛合するようにガイドインナ76に取り付ける。尚、セクターギヤ92の連結部92bには、上記駆動リンク91以外にも後述のロック伝達リンク83が連結されている。
【0045】
このように構成された伝達機構9は、電動モータ10によってセクターギヤ92が回動駆動されると、連結ピン93によりセクターギヤ92と連結された駆動リンク91が駆動される。このとき、連結ピン93がガイド部94に係合しているため、駆動リンク91は連結ピン93をガイド部94で案内されながら駆動される。
【0046】
上記ガイド部94の形状についてさらに詳しく説明すると、ガイド部94(外側ガイド溝75a及び内側ガイド溝76a)は、前方下側に位置する一端部から後方上側に位置する他端部へ向かって湾曲した湾曲形状をしていて、電動モータ10の駆動力をリンク機構7に伝達させない非伝達案内部94aと、電動モータ10の駆動力をリンク機構7に伝達させる伝達案内部94bとが切換点94cを介して連続的に形成されている。
【0047】
上記非伝達案内部94aは、前方下側の一端部から切換点94cまでの間に形成され、トランクリッド14全閉時の駆動リンク91と後側連結リンク74との連結部91aを中心として連結ピン93上を通る円弧C1(図4にのみ図示)形状をしている。つまり、連結ピン93が非伝達案内部94aに沿って案内されるときは、図4、5に示すように、駆動リンク91は連結部91aを中心に回動するのみで、該連結部91aは変位しない。その結果、後側連結リンク74は動かず、トランクリッド14は全閉状態で静止したままである。つまり、伝達機構9は、連結ピン93をこの非伝達案内部94aに沿って案内しているときに、電動モータ10の駆動力をリンク機構7に伝達させない非伝達状態となる。
【0048】
上記伝達案内部94bは、切換点94cから後方上側の他端部までの間に形成され、セクターギヤ92の回動中心を中心として連結ピン93上を通る円弧C2(図4にのみ図示)形状をしている。つまり、連結ピン93が伝達案内部94bを案内されるときは、図6に示すように、駆動リンク91と後側連結リンク74との連結部91aが変位するように駆動リンク91が動き、後側連結リンク74を車体側端部74aを中心に回動させる。その結果、リンク機構7によってトランクリッド14が開閉動作を行う(図1〜3参照)。つまり、伝達機構9は、連結ピン93をこの伝達案内部94bに沿って案内しているときに、電動モータ10の駆動力をリンク機構7に伝達させる伝達状態となる。
【0049】
上記ロック機構8は、図4に示すように、上記ベースブラケット71に回動自在に取り付けられたフック81と、上記リッド側ブラケット72に設けられ該フック81と係合する係合ピン82と、上記電動モータ10の駆動力をフック81に伝達するロック伝達リンク83とを有し、トランクリッド14全閉時にフック81を係合ピン82に係合させて該トランクリッド14を全閉状態に保持するためのものである。
【0050】
上記フック81は、前記係合ピン82と係合する鉤状部81aが形成されている。
【0051】
上記ロック伝達リンク83は、その一端部が上記セクターギヤ92の連結部92bに回動自在に連結され且つ、その他端部が上記フック81に回動自在に連結されていて、該セクターギヤ92の回動運動をフック81に伝達する。そして、ロック伝達リンク83は、セクターギヤ92が連結ピン93をガイド部94の非伝達案内部94aに沿って切換点94cから一端部側の方向(図4において時計回り)に駆動するときにフック81を係合ピン82に係合する方向(図4において反時計回り)に回動させる一方、セクターギヤ92が連結ピン93をガイド部94の非伝達案内部94aに沿って一端部側から切換点94cの方向(図4において反時計回り)に駆動するときにフック81を係合ピン82との係合を解除する方向(図4において時計回り)に回動させる。尚、セクターギヤ92が連結ピン93をガイド部94の伝達案内部94bに沿って案内されるときには、フック81は、係合ピン82との係合とは無関係にセクターギヤ92の回動に合わせて回動する。
【0052】
また、フック81には、後述する入力ケーブル84のインナケーブル84b入力端部が取り付けられている。
【0053】
このように構成されたトランクリッド開閉装置6によって駆動されるトランクリッド14及びロック機構8の動作について以下に説明する。
【0054】
まず、トランクリッド14が全閉状態においては、図4に示すように、連結ピン93はガイド部94の非伝達案内部94aの前方下側の一端部に位置する。このガイド部94の非伝達案内部94a側の一端部は、ガイド部94においてセクターギヤ92の回動中心から最も離れた位置であるため、該連結ピン93は嵌合穴92cの外端部に位置する。
【0055】
一方、フック81は、その鉤状部81aがリッド側ブラケット72の係合ピン82と係合しており、トランクリッド14を全閉状態で保持している。
【0056】
この状態から電動モータ10を駆動して、セクターギヤ92を反時計回りに回動させると、図5に示すように、連結ピン93はセクターギヤ92の回動に伴ってガイド部94の非伝達案内部94aを一端部側から切換点94c側へ移動する。この非伝達案内部94aは、トランクリッド14全閉時の駆動リンク91と後側連結リンク74との連結部91aを中心とする円弧C1形状であるため、該連結ピン93が非伝達案内部94aに案内されている間は、駆動リンク91は該連結部91aを中心に回動するだけである。つまり、該連結部91aが変位しないため、後側連結リンク74は動かず、トランクリッド14は全閉状態のまま静止している。また、この非伝達案内部94aは、切換点94cに近付くほどセクターギヤ92の回動中心との距離が近くなるため、連結ピン93は非伝達案内部94aを伝達案内部94b側に移動するにつれて嵌合穴92c内を外端部側から内端部側に向かって相対的に移動することになる。そして、連結ピン93が切換点94cに位置するときには、該連結ピン93は、嵌合穴92cの内端部に位置することになる。
【0057】
一方、フック81は、鉤状部81aが係合ピン82と係合した状態から係合を解除する方向へ回動し始め、連結ピン93がガイド部94の切換点94cに位置するときには、係合ピン82との係合が完全に解除される。つまり、ロック機構8は伝達機構9が非伝達状態のときにアンロック動作を行う。
【0058】
電動モータ10をさらに駆動してセクターギヤ92を反時計回りに駆動させると、図6に示すように、連結ピン93がガイド部94の伝達案内部94bに沿って案内されるようになる。すると、連結ピン93は上記連結部91aを中心とする円弧C1形状から逸れて移動するため、駆動リンク91は該連結部91aを中心に回動するだけではなく、該連結部91aを上方に変位させるように動く。その結果、後側連結リンク74は車体側端部74aを中心に回動し、それに伴って、トランクリッド14が開き始める。このとき、ロック機構8はアンロック状態になっているため、トランクリッド14は開閉動作を行うことができる。
【0059】
尚、フック81は、既に係合ピン82との係合が解除されており、係合ピン82との係合とは無関係にセクターギヤ92の回動に伴って係合解除方向にさらに回動することになる。
【0060】
そして、最終的に連結ピン93が、図7に示すように、ガイド部94の伝達案内部94bにおける後方上側の他端部まで移動すると、トランクリッド14は全開状態(図2参照)となる。
【0061】
逆に、トランクリッド14が全開状態から全閉状態となるときは、上述の全閉状態から全開状態への動作と逆の動作になる。
【0062】
まず、電動モータ10を、トランクリッド14を全開状態にするときとは逆方向(図において時計回り)に駆動する。すると、連結ピン93が伝達案内部94bを他端部側から切換点94c側に向かって移動する。この連結ピン93の移動に伴って、駆動リンク91が連結部91aを変位させ、後側連結リンク74を車体側端部74aを中心にトランクリッド14を閉じる方向に回動させる。その結果、トランクリッド14が閉じ始める。
【0063】
そして、連結ピン93がガイド部94の切換点94cまで移動すると、トランクリッド14はトランクルーム15を完全に閉じた全閉状態となる(図5参照)。
【0064】
その後、連結ピン93が切換点94cを通過して非伝達案内部94aを切換点94c側から一端部側へ向かって移動するとき、即ち、伝達機構9が非伝達状態のときには、上記フック81の鉤状部81aが係合ピン82に係合し始める。そして、連結ピン93が非伝達案内部94aの一端部まで移動したときには、フック81の鉤状部81aが係合ピン82に完全に係合してロック状態となる。この連結ピン93が非伝達案内部94aに沿って移動している間は、上述の如く、駆動リンク91は連結部91aを中心に回動するだけで連結部91aは変位しないので、トランクリッド14は全閉状態で静止したままである。つまり、ロック機構8は、伝達機構9が非伝達状態のときにロック動作を行う。
【0065】
このように、トランクリッド開閉装置6は、連結ピン93を非伝達案内部94aに沿って移動させるときには、トランクリッド14を静止させたままロック機構8を駆動してロック又はアンロック動作をさせる一方、連結ピン93を伝達案内部94bに沿って移動させるときには、トランクリッド14を開閉動作させる。
【0066】
<ルーフパネル開閉装置>
次にルーフパネル開閉装置2について説明する。ルーフパネル開閉装置2は、ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13に対して左右両側に設けられているが、それらの構成は同じであるため、左側のルーフパネル開閉装置2について図9〜図15を用いて説明する。
【0067】
このルーフパネル開閉装置2は、図9に示すように、ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13と車体1とを連結するリンク機構3(図1参照)と、該リンク機構3を駆動する電動モータ4(図9にのみ図示)と、該ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13の全閉状態において該リンク機構3を拘束するリンク拘束機構500と、該ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13の収納状態において該ルーフパネル12を保持するための収納時ロック機構510とを有し、ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13を全閉状態と収納状態との間で開閉動作させると共に、該全閉状態において該リンク機構3を拘束する一方、該収納状態においてルーフパネル12を保持するものである。
【0068】
上記ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13はその周縁部にシール部材(図示省略)が設けられていて、全閉状態において車室空間11を気密に保持するように構成されている。
【0069】
上記リンク機構3は、図1〜3に示すように、車体1に取り付けられたベースブラケット31と、ルーフパネル12に取り付けられたパネル側ブラケット32と、該ベースブラケット31とパネル側ブラケット32とを連結する前側連結リンク33及び後側連結リンク34とを有する。
【0070】
上記前側連結リンク33は、パネル側端部がパネル側ブラケット32に対して回動自在に連結され且つ車体側端部がベースブラケット31に対して回動自在に連結されている。また、上記後側連結リンク34は、前側連結リンク33よりも後方位置において、パネル側端部がパネル側ブラケット32に対して回動自在に連結され且つ車体側端部がベースブラケット31に対して回動自在に連結されている。この後側連結リンク34には、バックウインドウパネル13が取り付けられている。
【0071】
このように、ベースブラケット31、パネル側ブラケット32、前側連結リンク33及び後側連結リンク34は所謂4節リンク機構を構成している。
【0072】
上記電動モータ4は、図9に示すように、前側連結リンク33の車体側端部に設けられている。詳しくは、前側連結リンク33の車体側端部には減速ギヤ33aが取り付けられており、電動モータ4はその出力軸に設けられた出力ギヤ4aが該減速ギヤ33aと噛合するようにして上記ベースブラケット31に取り付けられている。こうして、電動モータ4の駆動力を減速して前側連結リンク33に伝達して、該前側連結リンク33をその車体側端部を中心に回動させることによって、リンク機構3を駆動して、ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13の開閉動作を行っている。
【0073】
以下に、ルーフパネル12及びバックウインドウパネル13(以下、ルーフパネル12等ともいう)の開閉動作について説明する。尚、ルーフパネル12等はトランクリッド14の開閉動作と連動して開閉するため、トランクリッド14との連動についても併せて説明する。
【0074】
まず、全閉状態においては、図1に示すように、前側連結リンク33と後側連結リンク34とは側面視で互いに重なった状態で前方に傾倒しており、ルーフパネル12等は、車室空間11を閉じた全閉状態となっている。このとき、ルーフパネル12は、前端部がフロントヘッダ16と当接した状態で、該フロントヘッダ16に対してロック機構(図示省略)によって保持されている。また、ルーフパネル12の後端部とバックウインドウパネル13の前端部とはシール部材を介して当接している。
【0075】
このとき、トランクリッド14も全閉状態となっている。
【0076】
この状態から、上記電動モータ4を駆動させると、図2に示すように、前側連結リンク33が後方へ回動し始め、それに伴ってルーフパネル12等が車室空間11を開放して後方へ回動し始める。ここで、ルーフパネル12はパネル側ブラケット32に、バックウインドウパネル13は後側連結リンク34に取り付けられているため、リンク機構3の回動してパネル側ブラケット32と後側連結リンク34とが折れ曲がるのに伴って、バックウインドウパネル13がルーフパネル12に対して折り畳まれていく。
【0077】
このとき、トランクリッド14は、ルーフパネル12とバックウインドウパネル13との動きに合わせて開閉する。詳しくは、図2に示すように、トランクリッド14は、ルーフパネル12等の開閉動作と干渉しないように、ルーフパネル12等がトランクリッド14の開閉軌跡と重なる位置まで移動してきたときには、該ルーフパネル12等の開閉軌跡と干渉しない位置まで開いた状態となっている。
【0078】
最終的には、図3に示すように、前側連結リンク33と後側連結リンク34とは側面視で互いに重なった状態で後方に傾倒し、ルーフパネル12とバックウインドウパネル13とが折り畳まれて上下に重なった状態でトランクルーム15内に収納された収納状態となる。
【0079】
このとき、トランクリッド14は、トランクルーム15内に収納されていくルーフパネル12等に追従して閉じていき、ルーフパネル12等がトランクルーム15内に収納されたときには、トランクルーム15を完全に閉じた全閉状態となる。
【0080】
逆に、収納状態から全閉状態となるときは、上述の全閉状態から収納状態への開閉動作と逆の動作をすることになる。
【0081】
まず、トランクリッド14の開き始めると共に、ルーフパネル12等がトランクルーム15内から全閉状態へ向かって開閉動作し始める。このとき、トランクリッド14は、全閉状態へ向かって開閉動作するルーフパネル12等と干渉しないように開く。
【0082】
そして、ルーフパネル12等がトランクリッド14の開閉軌跡と重ならない位置まで移動すると、トランクリッド14は閉じ始める。一方、ルーフパネル12等は全閉状態へ向かって移動し続ける。
【0083】
最終的に、ルーフパネル12等とトランクリッド14とが略同時に全閉状態となる。
【0084】
続いて、ルーフパネル12等を保持するための機構について説明する。
【0085】
このように構成されたルーフパネル12及びバックウインドウパネル13は、全閉状態では、ルーフパネル12の前端部をロック機構によってフロントヘッダ16に保持されているが、走行時には空力による上方へ引き上げる力や振動を受けて浮き上がる虞がある。また、収納状態においても、ルーフパネル12等が振動によりトランクルーム15内でがたつく虞がある。そこで、ルーフパネル12等を保持するためのいくつかの機構が必要となる。本実施形態においては、全閉状態においてリンク機構3の動きを拘束するリンク拘束機構500と、収納状態においてルーフパネル12を保持するための収納時ロック機構510とを設けている。
【0086】
<リンク拘束機構>
まず、リンク拘束機構500について説明する。このリンク拘束機構500は、左右両側に設けられたルーフパネル開閉装置2それぞれに設けられているが、それらの構成は同じであるため、左側のリンク拘束機構500について説明する。
【0087】
リンク拘束機構500は、ルーフパネル12全閉時にリンク機構3の動きを拘束するものであって、図9に示すように、ベースブラケット31に対して回動自在に取り付けられたフック部材501と、該フック部材501を後方から前方へ上側周りで回動する方向(図において反時計回り。以下、係合方向という。)へ付勢する付勢バネ502と、該フック部材501を該付勢バネ502の付勢力に抗して前方から後方へ上側周りで回動する方向(図において時計回り。以下、解除方向という。)へ回動させる第1駆動ケーブル503と、上記後側連結リンク34に設けられ、上記フック部材501と係合する係合ピン504とを有する。
【0088】
上記係合ピン504は、上記後側連結リンク34に設けられているため、ルーフパネル12が開閉動作するときに回動する該後側連結リンク34と共に、ルーフパネル12全閉時に対応する全閉位置(図9に示す位置)とルーフパネル12収納時に対応する収納位置(図14、15に示す位置)との間を円弧状の移動軌跡Tを描きながら移動する。
【0089】
上記フック部材501には、鉤形状の鉤状部501aが形成されており、この鉤状部501aの内側端縁501b(図10、11参照)がルーフパネル12が全閉状態のときの係合ピン504に係合する。また、フック部材501には、詳しくは後述するが、ルーフパネル12が収納状態となるように開閉動作するときに前側連結リンク33に設けられた当接ブラケット33bと当接する当接ピン505が設けられている。
【0090】
このように構成されたフック部材501を上記第1駆動ケーブル503の駆動を解除(非駆動)することによって付勢バネ502の付勢力で係合方向に回動させて、鉤状部501aをルーフパネル12全閉時の係合ピン504に係合させる。一方、第1駆動ケーブル503を駆動することによってフック部材501を付勢バネ502の付勢力に抗して解除方向に回動させて、鉤状部501aと係合ピン504との係合を解除させる。
【0091】
こうしてフック部材501を係合ピン504に係合させることによって後側連結リンク34を車体1に対して拘束しており、これによって、ルーフパネル12を全閉状態で保持するようにしている。
【0092】
ここで、フック部材501についてさらに詳しく説明すると、上記フック部材501の鉤状部501aの内側端縁501bは、図10に示すように、先端側部分501cが該フック部材501の回動中心を中心として鉤状部501a上を通る円周C3に対して該円周C3の外側に開いた形状となっている。こうすることで、係合ピン504を後側連結リンク34に取り付ける際の誤差や係合ピン504自体の誤差により、ルーフパネル12が全閉状態になっても、係合ピン504が本来の全閉位置から若干ずれた位置に位置する場合であっても、フック部材501が係合方向へ回動するときに、鉤状部501aの先端側部分501cが確実に係合ピン504と当接し、該係合ピン504を鉤状部501aの内側端縁501bに係合させることができる。
【0093】
また、フック部材501は、万が一、第1駆動ケーブル503が断線した場合には、付勢バネ502の付勢力によって係合方向に回動するが、図11に示すように、鉤状部501aの外側端縁501dが係合ピン504の移動軌跡T上に位置する停止位置で停止して、それ以上回動しないようにフック部材501と当接するストッパ506が設けられている。そして、フック部材501は、上記停止位置に停止したときに鉤状部501aの外側端縁501dが係合ピン504の移動軌跡Tに対して傾斜するような傾斜形状となっている。すなわち、鉤状部501aの外側端縁501dは、その先端側が円弧状の移動軌跡Tの外側に位置し、その基端側が円弧状の移動軌跡Tの内側に位置するように、該移動軌跡Tに対して傾斜している。
【0094】
つまり、第1駆動ケーブル503が断線すると、フック部材501には付勢バネ502の付勢力が係合方向へ作用する。この断線がルーフパネル12全閉時に起こった場合は、フック部材501と係合ピン504との係合を解除できなくなるが、ルーフパネル12の全閉状態を維持することはできる。一方、この断線がルーフパネル12全閉時以外のとき(例えば、収納時)に起こった場合は、フック部材501は付勢バネ502の付勢力により上記停止位置まで回動する。そして、この状態でルーフパネル12が全閉状態へと開閉動作すると、後側連結リンク34と共に回動する係合ピン504が鉤状部501aの外側端縁501dに当接する。ここで、該外側端縁501dは上述の如く傾斜しているため、係合ピン504が全閉位置(図8参照)へ向かって移動するときの押圧力がフック部材501に対して該フック部材501を解除方向へ回動させるように作用する。その結果、係合ピン504は、ルーフパネル12の全閉状態への開閉動作に伴って、フック部材501を解除方向へ回動させながら移動軌跡Tに沿って全閉位置へ移動する。このとき、係合ピン504は鉤状部501aの外側端縁501dを基端側から先端側に向かって相対的に移動することになるが、係合ピン504が鉤状部501aに当接している部分が外側端縁501dから内側端縁の先端側部分501cに切り替わると、フック部材501は付勢バネ502の付勢力により係合方向へ回動し始め、係合ピン504が全閉位置まで移動したときに該係合ピン504と係合する。
【0095】
こうして、第1駆動ケーブル503が断線した場合であっても、ルーフパネル12が全閉状態となるときに全閉位置へ移動する係合ピン504の押圧力でフック部材501を解除方向に回動させてフック部材501と係合ピン504との係合を行えるように構成することによって、ルーフパネル12が全閉状態へ開閉動作するときに係合ピン504がフック部材501と干渉して、全閉状態まで移動することができないという事態を防止することができ、ルーフパネル12を確実に全閉状態にすることができる。
【0096】
<収納時ロック機構>
次に、収納時ロック機構510について説明する。この収納時ロック機構510は、左右両側に設けられたルーフパネル開閉装置2それぞれに設けられているが、それらの構成は同じであるため、左側の収納時ロック機構510について説明する。
【0097】
収納時ロック機構510は、ルーフパネル12収納時にトランクルーム15内で該ルーフパネル12を保持するためのものであって、図9に示すように、ベースブラケット31に設けられた案内ガイド512に取り付けられて前後方向に直動可能な係合バー511と、該係合バー511を後方へ付勢する付勢バネ513と、該係合バー511を該付勢バネ513の付勢力に抗して前方へ移動させる第2駆動ケーブル514と、ルーフパネル12の前端部に設けられ、上記係合バー511が係合する被係合穴515が形成された被係合部材516(図1〜3、14、15参照)とを有する。
【0098】
上記係合バー511は、先端がトランクルーム15内に突出するように設けられていて、収納状態となったルーフパネル12の被係合部材516の被係合穴515に挿入する位置に設けられている(図14、15参照)。
【0099】
詳しくは、第2駆動ケーブル514の駆動を解除(非駆動)することによって係合バー511を付勢バネ513の付勢力で後方(トランクルーム15内方)へ移動させて、全閉状態となったルーフパネル12の被係合部材516の被係合穴515に係合させる。一方、第2駆動ケーブル514を駆動することによって係合バー511を付勢バネ513の付勢力に抗して前方(トランクルーム15外方)へ移動させて、係合バー511と被係合穴515との係合を解除させる。
【0100】
<分割駆動ケーブル>
上記リンク拘束機構500と収納時ロック機構510とは、分割駆動ケーブル100を介して電動モータ10によって駆動されている。
【0101】
この分割駆動ケーブル100は、図9に示すように、上記にフック81連結された入力ケーブル84と、上記リンク拘束機構500を駆動する第1駆動ケーブル503と、上記収納時ロック機構510を駆動する第2駆動ケーブル514と、該入力ケーブル84、第1駆動ケーブル503及び第2駆動ケーブル514を連結する連結部材110とを有する。
【0102】
上記連結部材110は、車体1に対して取り付けられた固定ブラケット110aと該固定ブラケット110aに対して回動自在に設けられた連結プレート110bとから構成される。
【0103】
上記入力ケーブル84は、アウタケーブル84aと、該アウタケーブル84a内に摺動可能に設けられたインナケーブル84bとで構成される。そして、アウタケーブル84aの入力端部は上記ベースブラケット71に取り付けられていると共に、インナケーブル84bの入力端部はフック81に取り付けられている。一方、アウタケーブル84aの出力端部は上記固定ブラケット110aに取り付けられていると共に、インナケーブル84bの出力端部は上記連結プレート110bに対して該連結プレート110bの回動中心から所定の第3距離L3だけ離れた位置に取り付けられている。
【0104】
上記第1駆動ケーブル503は、アウタケーブル503aと、該アウタケーブル503a内に摺動可能に設けられたインナケーブル503bとで構成される。そして、アウタケーブル503aの入力端部は固定ブラケット110aに取り付けられていると共に、インナケーブル503bの入力端部は連結プレート110bに対して該連結プレート110bの回動中心から所定の第1距離L1だけ離れた位置に取り付けられている。一方、アウタケーブル503aの出力端部はベースブラケット31に取り付けられていると共に、インナケーブル503bの出力端部はフック部材501に取り付けられている。
【0105】
上記第2駆動ケーブル514は、アウタケーブル514aと、該アウタケーブル514a内に摺動可能に設けられたインナケーブル514bとで構成される。そして、アウタケーブル514aの入力端部は固定ブラケット110aに取り付けられていると共に、インナケーブル514bの入力端部は連結プレート110bに対して該連結プレート110bの回動中心から所定の第2距離L2だけ離れた位置に取り付けられている。一方、アウタケーブル514aの出力端部はベースブラケット31に取り付けられていると共に、インナケーブル514bの出力端部は係合バー511に取り付けられている。尚、本実施形態では、上記入力ケーブル84のインナケーブル84bと第2駆動ケーブル514のインナケーブル514bとは連結プレート110bに対して同じ位置に取り付けられており、従って上記第2距離L2と第3距離L3とは同じ値である。
【0106】
上記フック81はロック伝達リンク83を介して電動モータ10によって駆動されており(図4等参照)、つまり、入力端部がフック81に取り付けられた分割駆動ケーブル100によって駆動されるリンク拘束機構500と収納時ロック機構510とは電動モータ10によって駆動されることになる。
【0107】
以下に、フック81の動作と連動したリンク拘束機構500及び収納時ロック機構510の動作について説明する。
【0108】
まず、ルーフパネル12全閉時においては、図4、9に示すように、フック81は係合ピン82と、フック部材501は係合ピン504と係合した状態にある。尚、係合バー511は後方に移動した状態にあるが、ルーフパネル12が全閉状態であるためロック機構としては機能していない。
【0109】
この状態から、フック81と係合ピン82との係合を解除する方向に電動モータ10が駆動すると、図12に示すように、入力ケーブル84のインナケーブル84bはフック81の回動に伴って引っ張られることになる。インナケーブル84bが引っ張られると、その出力端部に連結された連結プレート110bが一方の回動方向(図8において反時計回り)へ回動し、この連結プレート110bが一方の回動方向へ回動すると、第1駆動ケーブル503のインナケーブル503bと第2駆動ケーブル514のインナケーブル514bとが引っ張られることになる。その結果、第1駆動ケーブル503はフック部材501を解除方向へ回動させ、該フック部材501と係合ピン504との係合が解除させる。また、上述の通り、ルーフパネル12全閉時には収納時ロック機構510はロック機構としては機能していないが、第2駆動ケーブル514が引っ張られることにより、係合バー511は前方へ移動する。
【0110】
このように、フック81の回動に伴う引張力が分割駆動ケーブル100を介してリンク拘束機構500及び収納時ロック機構510へ伝達する。ここで、第1駆動ケーブル503のインナケーブル503bの入力端部と第2駆動ケーブル514のインナケーブル514bの入力端部とは連結プレート110bに対してその回動中心からそれぞれ第1距離L1及び第2距離L2だけ離れた位置に取り付けられているため、入力ケーブル84から入力された引張力は、第1駆動ケーブル503と第2駆動ケーブル514とへL1:L2の割合で分配されて伝達する。また、ストローク量の観点からは、第1駆動ケーブル503のインナケーブル503bの入力端部と第2駆動ケーブル514のインナケーブル514bの入力端部と入力ケーブル84のインナケーブル84bの出力端部とは連結プレート110bに対してその回動中心からそれぞれ第1距離L1、第2距離L2及び第3距離L3だけ離れた位置に取り付けられているため、入力ケーブル84に入力されたストローク量(即ち、インナケーブル84bが引っ張られた量)は、(L1/L3)倍されて第1駆動ケーブル503へ伝達すると共に、(L2/L3)倍されて第2駆動ケーブル514へ伝達する。
【0111】
こうして、リンク拘束機構500によるリンク機構3の拘束が解除されると、図13に示すように、電動モータ4が駆動されて、前側連結リンク33及び後側連結リンク34が後方へ回動を始める。
【0112】
そして、ルーフパネル12が全閉状態から収納状態へ開閉動作する間、すなわち、トランクリッド14が全閉状態から一旦開状態となって、再び全閉状態となるまでの間は、フック81は係合ピン82との係合が解除される方向に回動したままなので、入力ケーブル84のインナケーブル84bは引っ張られた状態のままである。よって、フック部材501も解除方向へ回動した状態で維持されると共に、係合バー511も前方へ移動した状態で維持される。
【0113】
やがて、図14に示すように、ルーフパネル12とバックウインドウパネル13とが上下に折り畳まれてトランクルーム15内に収納される。その後、トランクリッド14が全閉状態になると、上記伝達機構9が非伝達状態となり、ロック機構8がロック動作を行ってトランクリッド14をロックする。すなわち、フック81が係合ピン82と係合するように回動する。そうすると、入力ケーブル84のインナケーブル84bに作用していた引張力が解除され、その結果、図15に示すように、フック部材501は付勢バネ502の付勢力によって係合方向へ回動すると共に、係合バー511は付勢バネ513の付勢力によって後方へ移動する。
【0114】
このとき、ルーフパネル12はトランクルーム15内に収納され、ルーフパネル12の前端部に設けられた上記被係合部材516の被係合穴515は係合バー511と対向する位置に位置している。つまり、係合バー511が付勢バネ513の付勢力により後方へ移動すると、該被係合穴515に係合し、収納状態のルーフパネル12をロックする。つまり、収納時ロック機構510はロック機構として機能することになる。
【0115】
一方、ルーフパネル12収納時には、全閉状態のルーフパネル12を保持するためのリンク拘束機構500はロック機構としては機能する必要はない。そこで、ルーフパネル12が収納状態へ開閉動作するときに、図14、15に示すように、後方へ回動する前側連結リンク33の上記当接ブラケット33bがフック部材501に設けられた当接ピン505と当接することによって、フック部材501を前側連結リンク33と共に後方(即ち、解除方向)へ回動させて、フック部材501が、車体1の上端縁及びトランクリッド14の上端縁で形成されるベルトラインBLよりも下方に位置する状態で保持している。
【0116】
このフック部材501は、第1駆動ケーブル503が非駆動状態となって係合位置まで回動したときには、図8に示すように、ベルトラインBLよりも上方に突出した状態となる。ルーフパネル12全閉時には、フック部材501がベルトラインBLより上方に突出してもバックウインドウパネル13に隠れるため車外から視認することができないが、ルーフパネル12収納時には、バックウインドウパネル13はルーフパネル12と共にトランクルーム15内に収納されるため、フック部材501がベルトラインBLよりも上方に突出していると、車外から視認できて、美感が悪くなる。そこで、上述の如く、ルーフパネル12収納時には、後方へ回動する前側連結リンク33と共に解除方向へ、ベルトラインBLから突出しない位置まで回動させて、側面視で車体1に隠れた位置で保持するようにしている。
【0117】
こうして、ルーフパネル12が収納時ロック機構510によって全閉状態で保持されると共に、トランクリッド14もロック機構8によって全閉状態で保持された状態となる。
【0118】
一方、ルーフパネル12が収納状態から全閉状態へ開閉動作するときには、電動モータ10が駆動されて、まず、フック81と係合ピン82との係合解除が行われる。これに伴って、入力ケーブル84のインナケーブル84bが引っ張られるため、フック部材501を解除方向へ回動させると共に係合バー511を前方へ移動させる。その結果、係合バー511と被係合穴515との係合が解除される。こうして、トランクリッド14を保持するロック機構8とルーフパネル12を保持する収納時ロック機構510のアンロック動作が略同時に行われる。
【0119】
そして、ルーフパネル12が収納状態から全閉状態へ開閉動作する間、すなわち、トランクリッド14が全閉状態から一旦開状態となって、再び全閉状態となるまでの間は、フック81は係合ピン82との係合が解除される方向に回動したままなので、入力ケーブル84のインナケーブル84bは引っ張られた状態のままである。よって、したがって、フック部材501も解除方向へ回動した状態で維持されると共に、係合バー511も前方へ移動した状態で維持される。
【0120】
やがて、ルーフパネル12の前端部がフロントヘッダ16と当接して全閉状態になると、トランクリッド14も全閉状態となっており、この全閉状態のトランクリッド14に対してロック機構8がロック動作を行う。すなわち、フック81が係合ピン82と係合するように回動する。そうすると、入力ケーブル84のインナケーブル84bに作用していた引張力が開放され、その結果、フック部材501は付勢バネ502の付勢力によって係合方向へ回動すると共に、係合バー511は付勢バネ513の付勢力によって後方へ移動する。
【0121】
このとき、ルーフパネル12は全閉状態となっており、後側連結リンク34に設けられた係合ピン504はフック部材501と係合可能な全閉位置に位置する。つまり、フック部材501が付勢バネ502の付勢力により係合方向へ回動すると、鉤状部501aが係合ピン504に係合し、ルーフパネル12全閉時のリンク機構3を拘束する。つまり、リンク拘束機構500はロック機構として機能することになる。
【0122】
一方、収納時ロック機構510は、ルーフパネル12が全閉状態となりトランクルーム15内には存在しないため、係合バー511は後方へ移動するだけでロック機構としては機能していない。
【0123】
こうして、ルーフパネル12がリンク拘束機構500によって全閉状態で保持されると共に、トランクリッド14もロック機構8によって全閉状態で保持された状態となる。
【0124】
したがって、上記実施形態によれば、フック81を介した電動モータ10からの1つ入力で、リンク拘束機構500と収納時ロック機構510とを駆動することができる。つまり、リンク拘束機構500はルーフパネル12が全閉時に必要なロック機構である一方、収納時ロック機構はルーフパネル12が収納時に必要なロック機構であり、ルーフパネル12の全閉状態と収納状態とは同時に起こり得ないため、リンク拘束機構500と収納時ロック機構510は、二者択一的にロック機構として機能すればよい。よって、ルーフパネル12全閉時には、リンク拘束機構500だけを考慮して電動モータ10で作動させればよく、ルーフパネル12収納時には、収納時ロック機構510だけを考慮して電動モータ10で作動させればよい。こうして、1つの入力ケーブル84と2つの駆動ケーブル(即ち、第1駆動ケーブル503と第2駆動ケーブル514)とを有する分割駆動ケーブル100によってリンク拘束機構500と収納時ロック機構510とを駆動することによって、駆動源を共通化することができ、部品点数を削減することができる。
【0125】
また、リンク拘束機構500と収納時ロック機構510とを別々の駆動ケーブルで駆動するのではなく、1つの分割駆動ケーブル100で駆動することができるため、駆動ケーブルの本数を削減することができると共に、本数を削減することにより組立性を向上させることもできる。
【0126】
さらに、リンク拘束機構500及び収納時ロック機構510をフック81を介して駆動することによって、全閉時及び収納時におけるルーフパネル12のロック/アンロックをトランクリッド14のロック/アンロックと連動させて行うことができる。つまり、トランクリッド14をアンロックするときに全閉状態又は収納状態のルーフパネル12をアンロックすることができ、トランクリッド14をロックするときに全閉状態又は収納状態のルーフパネル12をロックすることができる。こうすることで、どちらか一方のアンロックを待ってから開閉動作を開始するのではなく、トランクリッド14の開閉動作とルーフパネル12の開閉動作とを略同じタイミングで開始させる等、ルーフパネル12及びトランクリッド14それぞれの作動タイミングを柔軟に設定することができる。その結果、ルーフパネル12等を全閉状態から収納状態へ、収納状態から全閉状態へ動作させる際の所要時間を短縮することができる。
【0127】
さらにまた、連結部材100の連結プレート110bを回動自在に構成し、この連結プレート110bに対して入力ケーブル84のインナケーブル84bの出力端部、第1駆動ケーブル503のインナケーブル503bの入力端部および第2駆動ケーブル514のインナケーブル514bの入力端部を取り付けると共に、それぞれの取り付け位置を連結プレート110bの回動中心から第1距離L1、第2距離L2および第3距離L3離れた位置とすることによって、入力ケーブル84に入力された引張力を分配して第1駆動ケーブル503と第2駆動ケーブル514とを駆動することができ、または、入力ケーブル84が引っ張られたストローク量(インナケーブル84bが引っ張られた長さ)を増減して第1駆動ケーブル503と第2駆動ケーブル514とを駆動することができる。つまり、前記第1距離L1、第2距離L2および第3距離L3を調整することによって、入力ケーブル84に入力された引張力およびストローク量を調整して第1駆動ケーブル503および第2駆動ケーブル514を駆動することができる。
【0128】
尚、上記実施形態では、分割駆動ケーブル100は、フック81の駆動力で、リンク拘束機構500と収納時ロック機構510とを駆動しているが、これに限られるものではない。すなわち、分割駆動ケーブル100の第1駆動ケーブル503及び第2駆動ケーブル514のそれぞれの出力端部に、同時に機能する2つの被駆動手段、又は二者択一的に機能すべき2つの被駆動手段を接続することで、1つの駆動源で2つの被駆動手段を駆動することができ、部品点数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明は、リンク機構を介して車体に支持され、車室空間を閉じた全閉状態と、該車室空間を開放し且つ車体後部の収納室に収納された収納状態との間で開閉移動可能なルーフパネルを該全閉状態と収納状態とで保持するルーフパネルの開閉システム及びそれに用いられる分割駆動ケーブルについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施形態に係るパネル部材の開閉装置を採用した車両において、ルールパネル及びトランクリッドが全閉状態のときの車両を示す概略側面図である。
【図2】ルールパネル及びトランクリッドが開閉動作しているときの車両を示す概略側面図である。
【図3】ルールパネル及びトランクリッドが収納状態のときの車両を示す概略側面図である。
【図4】トランクリッドが全閉状態でロックされているときのトランクリッド開閉装置の概略側面図である。
【図5】トランクリッドが全閉状態でロックが解除されているときのトランクリッド開閉装置の概略側面図である。
【図6】トランクリッドが開閉動作しているときのトランクリッド開閉装置の概略側面図である。
【図7】トランクリッドが全開状態のときのトランクリッド開閉装置の概略側面図である。
【図8】トランクリッド開閉装置の分解斜視図である。
【図9】ルーフパネルが全閉状態でロックされているときのルーフパネル開閉装置の概略側面図である。
【図10】フック部材の鉤状部の内側端縁の形状を説明するための概略側面図である。
【図11】フック部材の鉤状部の外側端縁の形状を説明するための概略側面図である。
【図12】ルーフパネルが全閉状態でロックが解除されているときのルーフパネル開閉装置の概略側面図である。
【図13】ルーフパネルが開閉動作しているときのルーフパネル開閉装置の概略側面図である。
【図14】ルーフパネルがトランクルームに収納されたときのルーフパネル開閉装置の概略側面図である。
【図15】ルーフパネルがトランクルーム内でロックされ収納状態となったときのルーフパネル開閉装置の概略側面図である。
【符号の説明】
【0131】
1 車体
10 電動モータ(駆動手段)
11 車室空間(所定の空間)
12 ルーフパネル
14 トランクリッド(収納室パネル)
15 トランクルーム(収納室)
500 リンク拘束機構(全閉時ロック機構)
503 第1駆動ケーブル(第1出力ケーブル)
510 収納時ロック機構
514 第2駆動ケーブル(第2出力ケーブル)
7 リンク機構
8 ロック機構(収納室パネルロック機構)
84 入力ケーブル
100 分割駆動ケーブル
110 連結部材
L1 第1距離
L2 第2距離
L3 第3距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク機構を介して車体に支持され、車室空間を閉じた全閉状態と、該車室空間を開放し且つ車体後部の収納室に収納された収納状態との間で開閉移動可能なルーフパネルと、上記ルーフパネルが全閉時に該ルーフパネルを保持するための全閉時ロック機構と、上記ルーフパネルが収納時に該ルーフパネルを保持するための収納時ロック機構とを備えたルーフパネルの開閉システムであって、
上記収納室を開閉可能に設けられた収納室パネルに関連した駆動手段と、
上記駆動手段によって引っ張られることで駆動される入力ケーブルと、該入力ケーブルの出力端部が連結され且つ車体に回動自在に設けられた連結部材と、入力端部が該連結部材に連結され且つ出力端部が上記全閉時ロック機構に連結されて該入力ケーブルの引張力を該全閉時ロック機構に伝達させる第1出力ケーブルと、入力端部が該連結部材に連結され且つ出力端部が上記収納時ロック機構に連結されて該入力ケーブルの引張力を該収納時ロック機構に伝達させる第2出力ケーブルとを有する分割駆動ケーブルとをさらに備え、
上記全閉時ロック機構と上記収納時ロック機構とは、上記分割駆動ケーブルを介して上記駆動手段によって駆動されることを特徴とするルーフパネルの開閉システム。
【請求項2】
請求項1に記載のルーフパネルの開閉システムにおいて、
上記収納室パネルには、上記収納室を閉じたときに該収納室パネルを保持するための収納室パネルロック機構が設けられ、
上記駆動手段は、上記収納室パネルロック機構を駆動するものであって、
上記全閉時ロック機構及び上記収納時ロック機構は、上記収納室パネルロック機構が上記収納室パネルを保持するときに上記ルーフパネル及び上記収納室パネルを保持する一方、上記収納室パネルロック機構が上記収納室パネルの保持を解除するときに上記ルーフパネル及び上記収納室パネルの保持を解除するように連動して駆動されることを特徴とするルーフパネルの開閉システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のルーフパネルの開閉システムにおいて、
上記第1出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第1距離離れた位置に取り付けられ、
上記第2出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第2距離離れた位置に取り付けられ、
上記入力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第3距離離れた位置に取り付けられていることを特徴とするルーフパネルの開閉システム。
【請求項4】
引張力によって駆動される入力ケーブルと、
該入力ケーブルの出力端部が連結され且つ回動自在な連結部材と、
出力端部が該連結部材に連結され且つ入力端部が第1の被駆動手段に連結される第1出力ケーブルと、
出力端部が該連結部材に連結され且つ入力端部が第2の被駆動手段に連結される第2出力ケーブルとを備えたことを特徴とする分割駆動ケーブル。
【請求項5】
請求項4に記載の分割駆動ケーブルにおいて、
上記第1出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第1距離離れた位置に取り付けられ、
上記第2出力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第2距離離れた位置に取り付けられ、
上記入力ケーブルは、上記連結部材に対して該連結部材の回動中心から所定の第3距離離れた位置に取り付けられていることを特徴とする分割駆動ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−261420(P2007−261420A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88854(P2006−88854)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000108889)ベバスト ジャパン株式会社 (36)
【Fターム(参考)】