説明

レイアウト検証装置及びレイアウト検証方法

【課題】素子と配線、配線と配線の交差部分の耐圧を検証することができるレイアウト検証装置及びレイアウト検証方法を提供する。
【解決手段】レイアウト検証装置は、半導体集積回路の回路図データと、該回路図データに基づいて生成されたレイアウトデータとの整合性を検証する整合性検証手段と、整合性検証手段により整合性が検証された場合に、レイアウトデータに基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出する抽出手段と、判定基準となる基準電位差を記憶する記憶手段と、回路図データに基づいて、交差対の電位差を求める電位差検出手段と、交差対の電位差と基準電位差とを比較する電位差比較手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路のレイアウト検証を行う装置及び検証方法に関し、特に互いに交差する部分の耐圧を検証するための装置及び検証方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、半導体集積回路の回路図データ(回路図データD1)と、回路図データに基づいて生成されたレイアウトパターンのデータ(レイアウトデータD2)の整合性を検証する整合性検証手段(LVS検証K)を備えたレイアウト検証装置(回路レイアウト検証装置)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−41922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体集積回路は、素子及び配線が、半導体基板に形成、又は、半導体基板の表面上に配置されて、3次元的に構成される。したがって、レイアウトパターンによっては、素子と配線、配線と配線が交差する箇所も存在しうる。
【0005】
このような互いに交差する位置関係にある素子と配線、配線と配線(例えば1層目のメタル配線と2層目のメタル配線)においては、電位差が大きいと素子と配線、配線と配線の間の耐圧を確保することができない。
【0006】
しかしながら、従来のレイアウト検証装置(検証方法)では、このような互いに交差する位置関係にある素子と配線の間の耐圧、配線と配線の間の耐圧については考慮されていなかった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、交差部分の耐圧を検証することができるレイアウト検証装置及びレイアウト検証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1に記載のレイアウト検証装置は、
半導体集積回路の回路図データと、該回路図データに基づいて生成されたレイアウトデータとの整合性を検証する整合性検証手段と、
整合性検証手段により整合性が検証された場合に、レイアウトデータに基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出する抽出手段と、
判定基準となる基準電位差を記憶する記憶手段と、
回路図データに基づいて、交差対の電位差を求める電位差検出手段と、
交差対の電位差と基準電位差とを比較する電位差比較手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、回路図データとレイアウトデータの整合性をとった後で、レイアウトデータに基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出することができる。そして、回路図データに基づいて交差対の電位差を求め、求めた電位差を基準電位差と比較することができる。したがって、互いに電位が異なる素子と配線間、配線と配線間の耐圧についても検証することができる。
【0010】
請求項2に記載のように、電位差比較手段による比較結果をレイアウトデータに重ねて外部に出力する出力手段を備えると良い。これによれば、基準電位差を超える電位差を有した交差対の部分をレイアウトデータ上において確認することができる。
【0011】
次に、請求項3に記載のレイアウト検証方法は、
半導体集積回路の回路図データと、該回路図データに基づいて生成されたレイアウトデータとの整合性を検証するステップと、
整合性を検証した後に、レイアウトデータに基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出するステップと、
回路図データに基づいて、交差対の電位差を求めるステップと、
交差対の電位差と基準電位差とを比較するステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の作用効果は、請求項1に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【0013】
請求項4に記載のように、交差対の電位差が基準電位差を超えた場合、該当する交差対をなす素子と配線、又は、配線と配線が、互いに交差しないようにレイアウトを変更するステップを備えると良い。これにより、交差対部分の耐圧を考慮したレイアウト設計を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るレイアウト検証装置の概略構成を示す図である。
【図2】半導体集積回路のレイアウトの一例を示す図である。
【図3】回路シミュレーションにより電位差検証される半導体集積回路の回路図である。
【図4】レイアウト検証方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0016】
図1に示すレイアウト検証装置10は、例えばPC(Personal Computer)やEWS(Engineering WorkStation)等のコンピュータにより構成されており、CAD(Computer Aided Design)ツールが組み込まれている。そして、レイアウト検証機能は、レイアウト検証装置10に組み込まれたプログラムにより実現されている。
【0017】
レイアウト検証装置10は、図1に示すように、要部として、回路図データ11とレイアウトデータ14との整合性を検証するLVS(Layout Versus Schematic)手段17と、レイアウトデータ14に基づいて交差対情報19を抽出する交差抽出手段18と、交差対情報19を加味して回路シミュレーションを実行する回路シミュレーション手段21と、を備える。
【0018】
回路図データ11は、半導体集積回路を構成するトランジスタ、ダイオード、抵抗、容量などの素子名、素子特性といった素子情報と、素子間などを接続する配線の接続情報を含む。この回路図データ11は、回路設計者が作成した回路図であって、回路シミュレーションにより動作検証されたものである。
【0019】
一方、レイアウトデータ14は、回路図データ11に基づいて、例えば自動配置配線技術により生成されたレイアウト図である。したがって、レイアウトデータ14は、回路図データ11により記載される回路の構造を規定するレイアウトパターンデータと、素子情報と素子間などを接続する配線の接続情報とで構成される。
【0020】
レイアウト検証装置10は、接続情報抽出手段12,15を備えており、接続情報抽出手段12は、回路図データ11から素子情報及び接続情報を抽出して、第1のネットリスト13を生成する。接続情報抽出手段15は、レイアウトデータ14から素子情報及び接続情報を抽出して、第2のネットリスト16を生成する。
【0021】
LVS手段17は、特許請求の範囲に記載の整合性検証手段に相当し、接続情報抽出手段12,15により生成されたネットリスト13,16の照合を行い、整合性を判定する。すなわち、回路図データ11とレイアウトデータ14の整合性を検証する。
【0022】
交差抽出手段18は、LVS手段17により、第1のネットリスト13(回路図データ11)と第2のネットリスト16(レイアウトデータ14)の整合性が検証された場合、すなわち、レイアウトデータ14の素子情報及び接続情報が回路図データ11における素子情報及び接続情報と一致する場合、レイアウトデータ14から図形の交差部分(重なり部分)を抽出する。そして、該交差部分を構成する素子と配線、又は、配線と配線の情報(交差対情報)を生成する。
【0023】
ここで、素子と配線がなす交差対とは、薄膜抵抗や拡散抵抗などの抵抗素子と配線、トランジスタと配線などがある。また、配線と配線がなす交差対とは、配線と該配線とは別の配線とがなす交差対であり、例えば3層アルミニウム配線の場合、1層目アルミニウム配線と2層目アルミニウム配線、1層目アルミニウム配線と3層目アルミニウム配線、2層目アルミニウム配線と3層目アルミニウム配線がある。
【0024】
一例として示す図2では、npnトランジスタ30のベースと入力端子(図示略)との間には薄膜抵抗31が配置されている。具体的には、上記ベースに対する入力端子と薄膜抵抗31が、2層目に配置されたアルミニウム配線32及び層間接続ビアによって接続され、ベースと薄膜抵抗31が、2層目に配置されたアルミニウム配線33及び層間接続ビアによって接続されている。また、npnトランジスタ30のエミッタには、1層目に配置されたアルミニウム配線34が接続されており、このアルミニウム配線34はグランド電位とされている。また、npnトランジスタ30のコレクタには、1層目に配置されたアルミニウム配線35が接続されており、このアルミニウム配線35により、コレクタが出力端子に接続されている。
【0025】
そして、図2に示すように、2層目に配置された、アルミニウム配線32,33とは別のアルミニウム配線36が、実際にはその下層に位置する薄膜抵抗31、及び、1層目のアルミニウム配線34と交差している。このような回路において、交差抽出手段18は、薄膜抵抗31とアルミニウム配線36の交差部分40、アルミニウム配線34,36の交差部分41をそれぞれ抽出し、交差対情報を生成する。
【0026】
回路シミュレーション手段21は、交差抽出手段18により抽出された交差対情報19と、基準電位差記憶手段20としてのメモリに予め記憶された基準電位差データを加味して、回路図データ11に基づき回路シミュレーションを実行する。なお、判定基準となる基準電位差データは、半導体集積回路全体に対して共通値(例えば10V)として設定される。
【0027】
この回路シミュレーション手段21は、特許請求の範囲に記載の電位差検出手段、電位差比較手段を兼ねる。具体的には、回路図データ11に基づき回路シミュレーションを実行することで、素子(端子部分)や配線の電位データを得る。このとき、交差対情報を入力することで、交差対をなす素子と配線間、配線と配線間の電位差を検出する。さらには、検出した電位差と入力された基準電位差とを比較し、比較した結果22を出力する。
【0028】
したがって、例えば図2に示した回路において、図3に示すように、交差部分40をなす薄膜抵抗31とアルミニウム配線36の電位差ΔV1、交差部分41をなすアルミニウム配線34とアルミニウム配線36の電位差ΔV2を検出することができる。そして、電位差ΔV1,V2を基準電位差とそれぞれ比較し、交差部分40,41の電位差が許容値以内であるか否かを判定する、すなわち耐圧を検証することができる。なお、図3に示すように、アルミニウム配線32〜35の配線抵抗R1〜R4や、アルミニウム配線間の寄生容量C1,C2についても、回路シミュレーションの際のデータとして入力され、遅延検証などがなされる。
【0029】
このように、本実施形態に係るレイアウト検証装置10によれば、回路図データ11とレイアウトデータ14の整合性をとった後で、レイアウトデータ14に基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出することができる。そして、回路図データ11に基づいて交差対の電位差を求め、求めた電位差を基準電位差と比較することができる。したがって、互いに電位が異なる素子と配線間、配線と配線間の耐圧についても検証することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では特に言及しなかったが、レイアウト検証装置10が、回路シミュレーション手段21(電位差比較手段)により比較された結果22をレイアウトデータ14に重ねて外部に出力する出力手段を備えると良い。例えばレイアウト検証装置10が備えるモニタ(図示略)に、レイアウトデータ14(レイアウト図)を表示するとともに、上記した結果22に基づいて、互いに電気的に接続されない交差対のうち、基準電位差を超える電位差を有する交差対の部分を、例えば強調表示するなどしても良い。これによれば、基準電位差を超える電位差を有した交差対の部分を、レイアウトデータ14上において確認することができる。すなわち、レイアウト設計者が、レイアウトパターンを容易に修正することができる。
【0031】
以上、レイアウト検証装置10について説明したが、レイアウト検証方法について説明する。
【0032】
図4に示すように、先ず上記した回路図データ11を作成し(ステップ10)、次いで回路図データ11をもとにレイアウトデータ14を作成する(ステップ11)。そして、回路図データ11とレイアウトデータ14の整合性があるか否かを検証する(ステップ12)。
【0033】
ステップ12にて整合性なしと判定すると、ステップ11に戻ってレイアウトデータ14を作り直す。
【0034】
ステップ12にて整合性ありと判定すると、レイアウトデータ14に基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出する(ステップ13)。
【0035】
交差対を抽出すると、抽出した交差対と回路図データ11に基づいて、交差対の電位差を求める(ステップ14)。
【0036】
そして、求めた電位差と予め設定された基準電位差とを比較し、電位差が基準電位差以下であるか否かを判定する(ステップ15)。そして、電位差が基準電位差を超える交差対が存在する場合には、その旨を出力(エラー出力)する(ステップ16)。
【0037】
このようなレイアウト検証方法によれば、上記したレイアウト検証装置10と同等の効果を奏することができる。
【0038】
なお、ステップ16のあとに、ステップ16のエラー出力を受けて、基準電位差を超えた該当する交差対をなす素子と配線、又は、配線と配線が、互いに交差しないようにレイアウトを変更するステップを備えると良い。これにより、交差対部分の耐圧を考慮したレイアウト設計を行うことができる。この場合、レイアウト変更を行って終了としても良いし、ステップ16のあと、ステップ11にもどって以下のステップ(ステップ11〜ステップ15)を実行しても良い。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10・・・レイアウト検証装置
17・・・LVS手段(整合性検証手段)
18・・・交差抽出手段(抽出手段)
19・・・回路シミュレーション手段(電位差検出手段、電位差比較手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路の回路図データと、該回路図データに基づいて生成されたレイアウトデータとの整合性を検証する整合性検証手段と、
前記整合性検証手段により整合性が検証された場合に、前記レイアウトデータに基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出する抽出手段と、
判定基準となる基準電位差を記憶する記憶手段と、
前記回路図データに基づいて、前記交差対の電位差を求める電位差検出手段と、
前記交差対の電位差と前記基準電位差とを比較する電位差比較手段と、を備えることを特徴とするレイアウト検証装置。
【請求項2】
前記電位差比較手段による比較結果を前記レイアウトデータに重ねて外部に出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のレイアウト検証装置。
【請求項3】
半導体集積回路の回路図データと、該回路図データに基づいて生成されたレイアウトデータとの整合性を検証するステップと、
整合性を検証した後に、前記レイアウトデータに基づいて、互いに交差する位置関係にある素子と配線、又は、配線と配線がなす交差対を抽出するステップと、
前記回路図データに基づいて、前記交差対の電位差を求めるステップと、
前記交差対の電位差と基準電位差とを比較するステップと、を備えることを特徴とするレイアウト検証方法。
【請求項4】
前記交差対の電位差が前記基準電位差を超えた場合、該当する交差対をなす素子と配線、又は、配線と配線が、互いに交差しないようにレイアウトを変更するステップを備えることを特徴とする請求項3に記載のレイアウト検証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−248815(P2011−248815A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124030(P2010−124030)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】