説明

レジスト膜乾燥装置およびレジスト膜乾燥方法

【課題】周囲の環境を損なうことなく、レジスト膜の膜厚のばらつきが発生することを抑制するレジスト膜乾燥装置を提供する。
【解決手段】レジスト膜乾燥装置は、基板9に塗布された溶媒成分を含むレジスト膜10を加熱する加熱プレート2を有している。また、レジスト膜乾燥装置は、レジスト膜10の表面に近接するように、下面がレジスト膜10の表面に対向する位置に配置された対流抑制板3と、対流抑制板3の下面の外周の外側上方に排気口5aが形成された外装排気カバー5と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜乾燥装置およびレジスト膜乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録ヘッドなどの電子デバイス等の製造工程には、基板にレジスト膜を形成する工程が含まれていることが多い。レジスト膜形成工程は、通常、基板にレジストを塗布する塗布工程と、塗布工程で基板に塗布したレジスト膜を乾燥させる乾燥工程と、を有している。
【0003】
塗布工程では、スピンコートなどの方式により基板にレジストを塗布する。スピンコート方式は、基板面の中央部に液状のレジストを滴下し、基板を高速回転させることで生じる遠心力によってレジストを基板面の外周部へ向けて広げることにより、レジストを基板面全体に均一に塗布する方式である。
【0004】
乾燥工程では、塗布工程で基板に塗布したレジスト膜を、加熱プレート(ホットプレート)や熱風循環炉(オーブン)などで加熱して、レジスト膜に含まれている溶媒成分を除去することにより、レジスト膜を硬化する。その後、基板およびレジスト膜を冷却プレート(コールドプレート)で冷却して、乾燥工程が終了する。
【0005】
従来から用いられている乾燥工程では、レジスト膜を加熱プレートによって基板の下側のみから加熱するため、レジスト膜の上方の空間には熱対流が生じやすい。そのため、乾燥工程において、レジスト膜に乾燥ムラや温度ムラが生じることがある。
【0006】
レジスト膜は、乾燥工程において、乾燥前のレジスト膜に含まれている溶媒成分が蒸発して、レジスト膜の樹脂成分の密度が高くなることにより粘性が高くなっていき、最終的に溶媒成分が除去されて硬化する。一方、それと同時に、加熱によりレジスト膜の樹脂成分の粘性が低下することによる軟化作用も生じる。したがって、乾燥工程において、レジスト膜に乾燥ムラや温度ムラが生じると、レジスト膜には硬さのばらつきが発生する。
【0007】
乾燥工程において、レジスト膜に硬さのばらつきが発生すると、乾燥工程終了後に風紋や吹かれムラと呼ばれる膜厚のばらつきが発生することがある。この膜厚のばらつきは、膜厚が厚いレジスト膜ほど顕著に発生し、30μm以上のレジスト膜が形成される場合に特に顕著に発生する。
【0008】
特許文献1にはレジスト膜の膜厚のばらつきの発生が抑制されるように構成されたレジスト膜乾燥装置が記載されている。このレジスト膜乾燥装置では、対流抑制板が、加熱プレート上の基板に塗布されたレジスト膜の表面に近接するように、対流抑制板の下面がレジスト膜の表面に対向する位置に配置されている。
【0009】
このレジスト膜乾燥装置では、レジスト膜の表面と対流抑制板の下面との間の空間が狭く、乾燥工程中、この空間内に大きな温度差が発生しないため、レジスト膜の表面近傍には熱対流が発生しにくい。また、対流抑制板より上方の空間に熱対流が発生しても、レジスト膜の表面近傍は対流抑制板に覆われているため、レジスト膜はこの熱対流の影響を受けにくい。このように、このレジスト膜乾燥装置では、対流抑制板が配置されていることにより、レジスト膜が熱対流の影響を受けることを抑制できる。
【特許文献1】特開2003−305399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載されたレジスト膜乾燥装置は、大気中で使用されるため、乾燥工程中に蒸発したレジスト膜の溶媒成分が周囲に充満することが考えられる。また、レジスト膜と対流抑制板との隙間にゴミ等が混入してレジスト膜の表面に付着することによりレジスト膜の品質が低下することがありうる。
【0011】
これらを抑制するために、レジスト膜乾燥装置の周囲を覆う外装および排気機構を設けることが考えられる。しかし、外装および排気機構を設けると、外装の内部には排気による強制的な空気の流れが発生する。そのため、乾燥工程において、対流抑制板を配置させることでレジスト膜が熱対流の影響を受けることを抑制できても、レジスト膜が排気による空気の流れの影響を受けることで膜厚のばらつきが発生することが考えられる。
【0012】
そこで、本発明は、周囲の環境を損なうことなく、レジスト膜の膜厚のばらつきが発生することを抑制するレジスト膜乾燥装置およびレジスト膜乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のレジスト膜乾燥装置は、基板に塗布された溶媒成分を含むレジスト膜を加熱する加熱手段を有するレジスト膜乾燥装置において、前記レジスト膜の表面に近接するように、下面が前記レジスト膜の表面に対向する位置に配置された板部材と、該板部材の下面の外周の外側上方から排気を行う排気手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周囲の環境を損なうことなく、レジスト膜の膜厚のばらつきが発生することを抑制するレジスト膜乾燥装置およびレジスト膜乾燥方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るレジスト膜乾燥装置を備えたレジスト膜塗布乾燥装置の内部を示した上面図である。このレジスト膜塗布乾燥装置は、基板9を搬入するセンダ6と、基板9にレジストを塗布するスピンコータ7と、基板9に塗布されたレジスト膜を乾燥させるレジスト膜乾燥装置1と、レジスト膜が形成された基板9が搬送されるレシーバ8と、を有している。レジスト膜乾燥装置1は、レジスト膜を加熱して乾燥させる3つの加熱プレート2と、レジスト膜が形成された基板9を冷却する冷却プレート4と、を有している。
【0017】
レジスト膜乾燥装置1では、3つの加熱プレート2が並べて配置されており、各々の加熱プレート2は個別に温度条件の設定が可能である。よって、レジスト膜乾燥装置1では、レジストが塗布された基板9を、段階的に温度条件が変更された各々の加熱プレート2に連続して搬送させて、レジスト膜をより安定して乾燥させることによりレジスト膜の高品質化が図れる。なお、レジスト膜乾燥装置は、加熱プレートを複数有していることが望ましいが、少なくとも1つ有していればよい。
【0018】
このレジスト膜塗布乾燥装置では、まず、センダ6にセットされた基板9が、スピンコータ7のカップに搬送され、バキュームチャックされる。その後、液状のレジストが基板9の中央部に滴下され、スピンコータ7のカップが高速回転させられることにより、レジストが基板9の全面に均一に広げられる。そして基板9が、各加熱プレート2に搬送され、加熱されることによりレジスト膜が乾燥させられた後に、冷却プレート4に搬送され基板9およびレジスト膜が冷却される。その後、レジスト膜が形成された基板9がレシーバ8に搬送され、レジスト膜形成工程が終了する。
【0019】
次に、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置の詳細について図2を参照して説明する。
【0020】
図2(A)は本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向の側断面図で、図2(B)はそのレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向に直交する側断面図である。図2(A),(B)は、レジスト膜乾燥装置1の、基板9上に塗布されたレジスト膜10が加熱プレート2に加熱されて乾燥させられる乾燥工程中の状態を示している。
【0021】
レジスト膜乾燥装置1は、内部にヒータ(不図示)を備えた加熱プレート2と、板部材である対流抑制板3と、加熱プレート2を収容した加熱プレートボックス2aと、対流抑制板3の上面の全体を覆った外装排気カバー5と、を有している。
【0022】
加熱プレート2上には基板9を支持する少なくとも3つのプロキシピン2bが設けられており、レジストが塗布された基板9が、搬送ハンド(不図示)等によりスピンコータ7のカップから加熱プレート2のプロキシピン2b上に搬送される。加熱プレート2によって基板9およびレジスト膜10が加熱されると、基板9に塗布されたレジスト膜10の温度が上昇し、レジスト膜10に含まれている溶媒成分が蒸発する。
【0023】
なお、プロキシピン2bの高さを変更することによって、加熱プレート2と基板9との距離を調整することができる。これにより、基板9の昇温速度を変更することで、レジスト膜10の溶媒成分を蒸発させる速度を調整して、レジスト膜10の高品質化を図ることができる。レジスト膜乾燥装置1ではプロキシピン2bの高さは0.2mmに設定している。
【0024】
レジスト膜乾燥装置1では、対流抑制板3が、レジスト膜10の表面に近接するように、対流抑制板3の下面がレジスト膜10の表面に対向する位置に配置されている。対流抑制板3は、厚さ1mmの円盤状に、レジスト膜10の表面よりも表面の面積が大きくなるように形成され、下面がレジスト膜10の表面の全体を覆うように配置されている。
【0025】
レジスト膜乾燥装置1では、レジスト膜10の表面に近接するように対流抑制板3が配置されていることにより、乾燥工程においてレジスト膜10の表面近傍に熱対流が生じにくく、レジスト膜10の膜厚のばらつきの発生が抑制される。また、対流抑制板3がレジスト膜10の表面の全体を覆っていることにより、レジスト膜10は、より外周に近接する部分まで膜厚のばらつきの発生が抑制される。
【0026】
また、レジスト膜乾燥装置1では、加熱プレート2が加熱プレートボックス2aに収容されている。加熱プレートボックス2aは、側壁となる壁部材が対流抑制板3の下面よりも高く形成されており、上部が開口されている。これにより、レジスト膜乾燥装置1では、レジスト膜10と対流抑制板3とのとの間に形成された隙間空間が、加熱プレートボックス2aの側壁に囲まれているため、レジスト膜10の表面にゴミ等が付着することを抑制できる。
【0027】
また、レジスト膜乾燥装置1には、対流抑制板3の上面の全体を覆うように対流抑制板3の上面に対して対向配置されたカバー部材である外装排気カバー5が設けられている。これにより、加熱プレートボックス2aの開口された上部からゴミ等が混入することを防止できる。
【0028】
また、外装排気カバー5には、対流抑制板3の外周に対向する部分よりも外側の領域に排気口5aが形成されており、レジスト膜10から蒸発した溶媒成分が排気口5aから吸引されて排気管(不図示)等を介して屋外に排出される。外装排気カバー5による排気は、遅くともレジスト膜10が加熱プレート2によって加熱される以前に開始される。これにより、レジスト膜10から蒸発した溶媒成分が周囲に充満することが抑制される。
【0029】
また、レジスト膜乾燥装置1では、排気口5aが、加熱されて蒸発したレジスト膜10の溶媒成分が向かおうとする、対流抑制板3の外周の外側上方に配置されていることにより、強制的な空気の流れを作らずにレジスト膜10の溶媒成分が排気される。また、加熱プレートボックス2aと外装排気カバー5とが互いに離間して配置されており、加熱プレートボックス2aの内部は密閉されていないため、排気による空気の流れによって加熱プレートボックス2aの内部に対流が発生しにくい。
【0030】
さらに、外装排気カバー5の下面には、中央領域から排気口5aへ向けて上方に傾斜する傾斜面が形成されている。これにより、上方へ向かおうとする加熱されて蒸発した溶媒成分が効率良く、強制的な空気の流れを作ることなく排気される。
【0031】
以上述べたように、レジスト膜乾燥装置1では、加熱プレートボックス2a内に排気による空気の流れが発生しにくいため、レジスト膜10に膜厚のばらつきが発生することを抑制できる。
【0032】
レジスト膜10の加熱プレート2による乾燥が終了すると、対流抑制板3を支持している対流抑制板支持アーム3aが対流抑制板昇降シリンダ3bにより上昇させられ、レジスト膜10が形成された基板9が搬送ハンド等により冷却プレート4に搬送される。
【0033】
本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1と比較するために、図3および図4に示すレジスト膜乾燥装置を用意した。
【0034】
図3(A)は比較用のレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向の側断面図で、図3(B)はそのレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向に直交する側断面図である。レジスト膜乾燥装置11の加熱プレート12は加熱プレートボックス12aに収容されている。また、加熱プレートボックス12aの、加熱プレート12の上方の中央領域には排気口12bが形成されており、レジスト膜20から蒸発した溶媒成分が排気口12bから吸引されて排気管等を介して屋外に排出される。なお、加熱プレートボックス12aの排気口12b以外の部分は密閉されている。
【0035】
レジスト膜乾燥装置11と本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1とは、2つの点において異なる。まず1点目は、レジスト膜乾燥装置1ではレジスト膜の表面の全体を覆うように対流抑制板3が配置されているのに対し、レジスト膜乾燥装置11では対流抑制板が配置されていない点である。2点目は、レジスト膜乾燥装置1では、外装排気カバー5に形成された排気口5aから排気が行われるのに対し、レジスト膜乾燥装置11では、密閉された加熱プレートボックス12aの中央領域に形成された排気口12bから排気が行われる点である。
【0036】
図4(A)は比較用のレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向の側断面図で、図4(B)はそのレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向に直交する側断面図である。レジスト膜乾燥装置11aは、図3に示したレジスト膜乾燥装置11に、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1の対流抑制板3と同様の対流抑制板13を取り付けたものである。対流抑制板13は、レジスト膜20aの表面に近接するように、対流抑制板13の下面がレジスト膜20aの表面に対向する位置に配置されている。
【0037】
レジスト膜乾燥装置11aと本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1とは、1つの点において異なる。すなわち、レジスト膜乾燥装置1では、外装排気カバー5に形成された排気口5aから排気を行っているのに対し、レジスト膜乾燥装置11aでは、密閉された加熱プレートボックス12aの中央領域に形成された排気口12bから排気を行っている点である。
【0038】
図5は、比較用のレジスト膜乾燥装置を備えたレジスト膜塗布乾燥装置の内部を示した上面図である。このレジスト膜塗布乾燥装置では、図1に示したレジスト膜塗布乾燥装置と同様に、基板が、センダ16から、スピンコータ17、加熱プレート12、冷却プレート14、レシーバ18へと連続して搬送されて、レジスト膜が形成される。
【0039】
次に、比較用のレジスト膜乾燥装置11,11aを用いて乾燥させたレジスト膜と、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1を用いて乾燥させたレジスト膜とを比較した結果について説明する。なお、いずれのサンプルも、レジストには同等の成分を有するものを用い、以下に特に示す条件以外は同様の条件で、乾燥後のレジスト膜の平均膜厚が75μmになるように処理した。また、いずれのサンプルでも、基板には厚さ0.625mmの6インチSi基板を使用し、乾燥工程では、加熱プレートを1つのみ用いて基板の温度を90℃で15分間保持することにより基板に塗布されたレジスト膜を乾燥させた。また、膜厚分布は、基板外周部5mmを除き2mmピッチで測定した約3800ポイントを評価の対象とした。
【0040】
図6は、図3に示した比較用のレジスト膜乾燥装置を用いて基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。レジスト膜20の表面には目視で確認できる風紋が発生しており、乾燥工程において、レジスト膜20が熱対流の影響を受けていることが確認された。また、最大膜厚と最小膜厚との差は15μmであり、膜厚分布は平均膜厚に対して20%の幅を有しており不均一であることがわかった。
【0041】
図7は、図4に示した比較用のレジスト膜乾燥装置を用いて基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。レジスト膜乾燥装置11aにおいて基板19aに塗布されたレジスト膜20aの表面と対流抑制板13の下面との間隔はd=6mmとした。レジスト膜20aの表面には、レジスト膜20よりは抑制されてはいるものの風紋が見られた。また、最大膜厚と最小膜厚との差は10μm以上あり不均一であることがわかった。
【0042】
レジスト膜乾燥装置11aでは、対流抑制板13が配置されているにもかかわらず、レジスト膜20aに風紋が見られたことから、レジスト膜20aが熱対流以外の空気の流れの影響を受けていることがわかる。すなわち、レジスト膜乾燥装置11aでは、排気口12bから排気されることにより、排気口12bへ向かう空気の流れが発生することによって、密閉された加熱プレートボックス12a内に対流が発生したことが考えられる。
【0043】
図8は、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1を用いて基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。基板に塗布されたレジスト膜の表面と対流抑制板3の下面との間隔はd=6mmとした。レジスト膜の表面には風紋等の乱れは確認されなかった。また、最大膜厚と最小膜厚との差は7〜8μmであり、膜厚分布は平均膜厚に対して10%程度の幅に収まっており均一であることがわかった。
【0044】
これは、レジスト膜乾燥装置1では、対流抑制板3によってレジスト膜の表面近傍での熱対流の発生が抑制され、かつ、外装排気カバー5によって加熱プレートボックス2a内での排気による空気の流れの発生が抑制されたことの効果であると考えられる。
【0045】
また、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1を用いて、レジスト膜の表面と対流抑制板3の下面との間隔をd=8mmとして基板に形成されたレジスト膜も、膜厚分布は平均膜厚に対して10%程度の幅に収まっており均一であることがわかった。
【0046】
また、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1を用いて、レジスト膜の表面と対流抑制板3の下面との間隔をd=10mmとして基板に形成されたレジスト膜には、若干の風紋が見られた。また、最大膜厚と最小膜厚との差は10μm以上あり不均一であった。これは、レジスト膜の表面と対流抑制板3の下面との間隔を大きくしたことにより、対流抑制板3の熱対流を抑制する効果が弱まり、レジスト膜の表面近傍に熱対流が発生したためであると考えられる。
【0047】
図9は、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1を用いて、レジスト膜の表面と対流抑制板3の下面との間隔をd=4mmとして基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。レジスト膜の表面には風紋等の乱れは確認されず、対流抑制板3および外装排気カバー5を設置したことの効果が確認できた。しかし、最大膜厚と最小膜厚との差は10μm以上あり膜厚が不均一であった。この結果は、レジスト膜の表面と対流抑制板3の下面とをより近接させた場合には、温度条件等をさらに検討する必要があることを示唆していると考えられる。
【0048】
以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
◎:良好であった。
○:風紋等の乱れは見られなかったが、最大膜厚と最小膜厚との差が10μm以上であった。
△:風紋が若干見られた。
×:風紋が多く見られた。
【0051】
この結果から、レジスト膜乾燥装置1において、対流抑制板3および外装排気カバー5を設置したことの効果が確認できた。また、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1では、レジスト膜の表面と対流抑制板との間隔を6mm以上8mm以下にした場合に、特にレジスト膜の膜厚のばらつきが発生することを抑制できることがわかった。
【0052】
また、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置1を用いて、同様の方法で、膜厚を変更して基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を評価した。その結果、乾燥後の平均膜厚が100μm以下のレジスト膜において、膜厚分布が平均膜厚の10%程度の幅に収まっており、均一な膜厚が得られることが確認できた。よって、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置によれば、30μm以上100μm以下のレジスト膜を形成する場合に、特に効果的にレジスト膜の膜厚のばらつきが発生することを抑制できる。
【0053】
以上述べたように、本実施形態に係るレジスト膜乾燥装置によれば、周囲の環境を損なうことなく、レジスト膜に、風紋等の乱れが発生することや膜厚のばらつきが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るレジスト膜乾燥装置を備えたレジスト膜塗布乾燥装置の内部を示した上面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向の側断面図および基板搬送方向に直交する側断面図である。
【図3】比較用のレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向の側断面図および基板搬送方向に直交する側断面図である。
【図4】比較用のレジスト膜乾燥装置の加熱プレート部分の基板搬送方向の側断面図および基板搬送方向に直交する側断面図である。
【図5】比較用のレジスト膜乾燥装置を備えたレジスト膜塗布乾燥装置の内部を示した上面図である。
【図6】図3に示したレジスト膜乾燥装置を用いて基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。
【図7】図4に示したレジスト膜乾燥装置を用いて基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。
【図8】図2に示したレジスト膜乾燥装置を用いて基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。
【図9】図2に示したレジスト膜乾燥装置を用いて基板に形成されたレジスト膜の膜厚分布を示した図である。
【符号の説明】
【0055】
1 レジスト膜乾燥装置
2 加熱プレート
2a 加熱プレートボックス
2b プロキシピン2b
3 対流抑制板
3a 対流抑制板支持アーム
3b 対流抑制板昇降シリンダ
4 冷却プレート
5 外装排気カバー
5a 排気口
6 センダ
7 スピンコータ
8 レシーバ
9 基板
10 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された溶媒成分を含むレジスト膜を加熱する加熱手段を有するレジスト膜乾燥装置において、
前記レジスト膜の表面に近接するように、下面が前記レジスト膜の表面に対向する位置に配置された板部材と、該板部材の下面の外周の外側上方から排気を行う排気手段と、を有することを特徴とするレジスト膜乾燥装置。
【請求項2】
前記レジスト膜の表面と前記板部材の下面との間に形成された隙間空間の周囲を囲む壁部材をさらに有する、請求項1に記載のレジスト膜乾燥装置。
【請求項3】
前記排気手段は、前記板部材の上面の全体を覆うように前記上面に対して対向配置されたカバー部材を有し、前記カバー部材の、前記板部材の外周に対向する部分よりも外側の領域には排気口が形成されている、請求項1または2に記載のレジスト膜乾燥装置。
【請求項4】
前記カバー部材の下面には、前記カバー部材の中央領域から前記排気口へ向けて上方に傾斜する傾斜面が形成されている、請求項3に記載のレジスト膜乾燥装置。
【請求項5】
前記カバー部材と前記壁部材とが互いに離間して配置されている、請求項3または4に記載のレジスト膜乾燥装置。
【請求項6】
前記板部材の下面は、前記レジスト膜の表面の全体を覆っている、請求項1から5のいずれか1項に記載のレジスト膜乾燥装置。
【請求項7】
前記レジスト膜の表面と前記板部材の下面との間隔が6mm以上8mm以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載のレジスト膜乾燥装置。
【請求項8】
基板に塗布された溶媒成分を含むレジスト膜を加熱して前記溶媒成分を蒸発させる蒸発工程を有するレジスト膜乾燥方法において、
前記レジスト膜の表面に近接するように、板部材を、該板部材の下面が前記レジスト膜の表面に対向する位置に配置する配置工程と、前記板部材の下面の外周の外側上方から排気を行う排気工程と、を有しており、
遅くとも前記蒸発工程を開始する以前に前記配置工程および前記排気工程を開始することを特徴とするレジスト膜乾燥方法。
【請求項9】
前記配置工程は、前記板部材を、前記板部材の下面が前記レジスト膜の表面の全体を覆うように配置することを含む、請求項8に記載のレジスト膜乾燥方法。
【請求項10】
前記配置工程は、前記レジスト膜の表面と前記板部材の下面との間隔が6mm以上8mm以下になるように前記板部材を配置することを含む、請求項8または9に記載のレジスト膜乾燥方法。
【請求項11】
前記蒸発工程は、前記レジスト膜の乾燥後の平均膜厚を30μm以上100μm以下とすることを含む、請求項8から10のいずれか1項に記載のレジスト膜乾燥方法。
【請求項12】
前記レジスト膜と前記板部材との間に形成された隙間空間の周囲を壁部材で囲んだ状態で前記蒸発工程を行う、請求項8から11のいずれか1項に記載のレジスト膜乾燥方法。
【請求項13】
前記板部材の上面に対して対向配置されたカバー部材によって前記上面の全体を覆った状態で前記蒸発工程を行う、請求項8から12のいずれか1項に記載のレジスト膜乾燥方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−260010(P2009−260010A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106786(P2008−106786)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】