レティクルおよびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法ならびに磁気ディスク媒体
【課題】 ドーナツ型パターンであっても強度が強いレティクルおよびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法ならびに磁気ディスク媒体を得ることを可能にする。
【解決手段】 ドーナツ型パターンを有し、ドーナツ型パターンの中心部のパターン10が開口部14と非開口部12とを備えたことを特徴とする。
【解決手段】 ドーナツ型パターンを有し、ドーナツ型パターンの中心部のパターン10が開口部14と非開口部12とを備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリート型の磁気ディスク媒体と、その作製工程中のインプリントに用いるスタンパの型となる原盤の作製のための投影露光用レティクル、およびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク(以下、磁気ディスクともいう)の高密度化に対する技術潮流のなかで、磁気信号を発する磁性部領域が非磁性部によって区分けされたいわゆるディスクリート型の媒体構造が提案されており、データゾーンおよびサーボゾーンを有するディスクリート型の媒体の記録再生システムが特許文献1に記載されている。しかし、特許文献1に記載のディスクリート型の媒体がどのような手法で作製されるのかは明らかでない。
【0003】
一方、特許文献2には、ナノインプリントリソグラフィと呼ばれる200nm以下のモールドパターンをフィルムに転写する技術が記載されている。また、特許文献3にはディスクリート型の磁気ディスクパターンをインプリントによって転写する技術について記載されている。特許文献3においては、媒体パターンは電子線リソグラフィにより作製された原盤からおこしたスタンパによって形成した例が記載されているが、その電子線リソグラフィの手法については述べられていない。
【0004】
一般に、磁気ディスク装置では、筐体の内部に、ドーナツ型の円盤形状の磁気ディスクと、磁気ヘッドを含むヘッドスライダと、ヘッドスライダを支持するヘッドサスペンションアッセンブリと、ボイスコイルモータ(VCM)と、回路基板とを備える。
【0005】
磁気ディスク内部は、輪切りされた同心円状のトラックに区分され、そのトラックが一定角度毎に区切られたセクタを有し、磁気ディスクはスピンドルモータに取り付けられて回転され、ヘッドにより各種のディジタルデータが記録・再生される。そのため円周方向にユーザーデータトラックが配される一方、位置制御のためのサーボマークが各トラックを跨ぐ方向に配される。サーボマークの中にはプリアンブル部、アドレス部、バースト部などの領域を含む。また、これらの領域に加えてギャップ部を含んでいることもある。
【0006】
インプリント方式でディスクリート型の磁気ディスクを作製するためのスタンパ原盤においてはユーザーデータトラック領域およびサーボ領域双方を同時に形成することが望まれる。さもないと後からどちらかを付加するという、位置合わせが困難で、複雑な工程を経ることとなるからである。
【0007】
原盤の作製においてはそのパターンを水銀ランプ、紫外線、電子線、エックス線等の化学線によって感光性樹脂を露光して形成することができる。特に、信号源と同期させた電子線で直接描画する手法が、電子線であれば偏向がかけられる点で同心円を描く必要性がある磁気ディスクパターンの形成にとって好ましい。例えば、1方向の移動軸の移動機構と回転機構を有するステージ連続移動方式の電子線描画装置を用い、ステージに載った基板上の感光性樹脂に対して当該移動軸上の1点からスポットビームを当てて電子線露光することでパターンの形成ができる。
【0008】
しかし、電子線になにも外力を与えないと、螺旋を描くことになる。これを防止するために、その露光工程において1回転毎にその強度を次第に変化させながら電子線に偏向をかけることにより、同心円を描くことができる。一方、半径方向の線はその角度位置に来たときのみ毎周ビームを出すもしくは出さないようにすれば、それが繋がって線を描くことができる。具体的には、サーボ領域とデータ領域が配置される媒体を得ようとする場合には、各回転ごとにステージが回転するにつれて偏向量を線形に増大させ、1回転して元の位置に戻ると偏向量を零にするような偏向をかけてやることにより、線が繋がった所望の露光パターンを得ることができる。ポジ型レジストを使用した場合、露光部は現像後凹部となり、電鋳してスタンパ化すると凸部となる。なお、媒体のサーボ部は、半径方向にまっすぐでなく、ヘッド部のアームの軌跡である弧状になっていても構わない。
【0009】
ところで、露光の際、実際には1方向の移動軸の移動機構と回転機構にその送り精度誤差や回転ジッタがいくらか存在するため、パターンの崩れが生ずる。この問題を解決する手法の一つとして、縮小投影露光を用いることができる。
【0010】
この縮小投影露光によれば、パターンにムラがある場合においても、縮小投影されることにより、そのムラの大きさも低減する。縮小投影にあたっては、その投影したいパターンが開口したマスク(以下、レティクルともいう)に電子線等のビームを照射し、その開口部を通過したビームを光学系で縮小化して、その縮小化されたビームを被露光基板に照射する。
【0011】
電子線縮小投影露光技術としては、非特許文献1に示されるSCALPEL(Scattering with Angular Limitation in Projection Electron Lithography)方式や特許文献4のPREVAIL(Projection Exposure with Variable Axis Immersion Lens)方式が主なものとして挙げられ、これらの方式で用いるマスクとして、ステンシルタイプのマスク(以下、ステンシルマスクとも云う)と、メンブレンタイプのマスク(以下、メンブレンマスクとも云う)がある。
【0012】
ステンシルマスクを用いた場合は、電子ビームがステンシルマスクの開口部を通過し、非開口部で散乱する。メンブレンマスクは、電子ビームが透過し易い軽元素からなるメンブレン部と、メンブレン上に形成された電子ビームを散乱させる重金属パターン層から成る。メンブレン部はシリコンやシリコン窒化膜などが、パターン層はクロム(Cr)やタングステン(W)などが用いられる。
【0013】
ステンシルマスクの、ビームが通過する開口部は貫通しているため、メンブレンマスクにあるような低散乱や色収差が起こらない。しかし、その構造上、中央に開口を有するドーナツ型パターンなどのパターンは抜けが生じてしまうためマスク化することができない。そのため相補的なマスクを用い、複数回露光をして対応する手法などが取られている。このような対応は位置合わせやスループット上の問題が存在する。また、片持ちパターンは機械的強度が低くなりがちで、破損が生じ易い。
【0014】
一方、メンブレンマスクではメンブレン部が存在するため、ドーナツ型パターンなどのパターンでも形成可能である。しかし、ドーナツ型パターンや片持ちパターンは機械的強度が弱くなる傾向はステンシルマスクの場合と同様である。また、メンブレンマスクでは電子線がメンブレンを透過する際に、わずかながらも低散乱を起こしてしまい、色収差が出てしまう欠点がある。
【0015】
また、特にステンシルマスクにおいて、細いパターン線で大きな非開口パターンを支えることは強度的に問題である。逆に大きな開口パターンがある場合はその周辺パターンが、支えが不足したパターンとなり、片持ちパターンと同様の問題が生じ易い。メンブレンマスクではこのような強度的な問題は比較的緩和されるが、重金属と軽元素薄膜と間の応力差によってパターンに依存する歪が発生し易い問題がある。
【0016】
ここで、ハードディスク媒体、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disk)等はドーナツ型形状であるので、必然的にその原盤作製に用いるマスクもドーナツ型パターンを有するものとなる。そのようなドーナツ型ディスクの原盤作製に用いる投影マスクを作製しようとした場合、通常そのドーナツパターンの中心部は非開口もしくは開口パターンとなるが、そのようなマスクは上述のように強度が脆弱となる問題がある。
【特許文献1】特開2004−110896号公報
【特許文献2】米国特許第5,772,905号明細書
【特許文献3】特開2003−157520号公報
【非特許文献1】S. D. Berger et al., Applied Physics Letters, 57, 153 (1990)
【特許文献4】特許第2829942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、ドーナツ型パターンであっても強度が強いレティクルおよびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法ならびに磁気ディスク媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によるレティクルは、ドーナツ型パターンを有し、前記ドーナツ型パターンの中心部のパターンが開口部と非開口部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
なお、前記中心部のパターンは、扇状、3角形の網目状、4角形の網目状、正6角形の網目状のいずれか、またはそれらの組み合わせからなっていてもよく、また、点対称な図形であることが好ましい。
【0020】
なお、前記中心部のパターン内にアライメントマークまたは識別マークが設けられてもよい。
【0021】
なお、前記レティクルはメンブレン型であってもよい。
【0022】
なお、前記レティクルはステンシル型であってもよい。
【0023】
なお、前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、前記ドーナツ型パターンの開口部面積率以上であることが好ましい。
【0024】
なお、前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、50%以上かつ98%以下であることが好ましい。
【0025】
なお、前記レティクルは、電子線縮小投影露光に用いることが好ましい。
【0026】
また、本発明の第2の態様による磁気ディスク媒体の製造方法は、インプリント法を用いて磁気ディスク媒体の製造を行う磁気ディスク媒体の製造方法において、前記インプリント法に用いるスタンパを作製するためのレジスト原盤を、上記レティクルを用いて電子線投影露光を行うことにより形成することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の第3の態様による磁気ディスク媒体は、上記製造方法により製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ドーナツ型パターンであっても強度が強いレティクルおよびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法ならびに磁気ディスク媒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態およびその変形例によるレティクルを説明する。本実施形態のレティクルは、投影露光装置に用いられる。この投影露光装置は、図9に示すように、電子ビーム源100から放射された電子ビーム101が、偏向器102によってある範囲内偏向され、本実施形態のレティクル2を透過したビームのみが複数の投影レンズ104およびアパーチャー106を通って、ステージ110に載置された基板120上に形成された感光性樹脂からなるレジスト122に照射される。図10に示すようにレティクル2と、基板120が載置されたステージ110が駆動系112、115によってそれぞれ駆動されて、移動回転することにより、電子ビーム101が均一に照射され、レティクル2を通して得られるパターンがレジスト122に投影露光される。
【0031】
以下、磁気ディスク媒体としては、図11に示すように、4個のデータ領域d1〜d4と、これらデータ領域d1〜d4の間に設けられたサーボ領域s1〜s4とを備えているものを例にとって説明する。図11は磁気ディスク媒体の一具体例の上面図である。各データ領域は複数のトラックtrを有している。なお、図11においてはサーボ領域s1〜s4はアームの軌跡に沿った弧状に形成されている。このような磁気ディスク媒体を作製するための、ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルは、一般に図12〜図14に示すような中心部に穴が開いているか、中心部が塞がっているかのいずれかである。例えば、図12、図14は、中心部が塞がっているレティクルのドーナツ型パターンを示し、図13は中心部に穴があいているレティクルのドーナツ型パターンを示す。なお、図12においては、サーボ領域s1〜s4は外周に向かって直線的に延びている。
【0032】
これに対して、本実施形態によるレティクル2のドーナツ型パターンは、図1に示すように、中心部10が放射状の線(非開口部)12を備えるように構成されている。すなわち、従来の 場合と異なり、本実施形態では、中心部10は非開口部12と、開口部14とを備えた構成となっている。なお、図1においては、放射状の線は非開口部と一致しており、開口部は複数の扇状の組み合わせとなっており、また、点対称な図形となっている。
【0033】
このように、ドーナツ型パターンの中心部のパターンが非開口部12と、開口部14とを備えた構成であれば、図2に示すように、非開口部12が放射状の線12aと、円12bとからなっていてもよい。また、図3に示すように、非開口部12が放射状の線12aと、四角形もしくは三角形を構成する辺12cとからなっていてもよい。さらに、図4に示すように、開口部が四角形状の穴14aが複数個並んだパターンであってもよい。また、図5に示すように、開口部が正6角形状の穴14bが並んだパターンであってもよい。また、図6に示すように、四角形状と三角形状の穴14cが並んだパターンにさらに文字が形成されているものでもよい。さらに、図7に示すように、四角形状と三角形状の穴14cが並んだパターンにアライメントマークパターンが形成されていてもよい。また、図7に示すように、四角形状と三角形状の穴14cが並んだパターンに識別マーク、例えばバーコード図形が形成されているものであってもよい。したがって、ドーナツ型パターンの中心部のパターンは扇状、3角形の網目状、4角形の網目状、正6角形の網目状のいずれか、またはそれらの組み合わせからなっていてもよい。
【0034】
いずれにしても、ドーナツ型パターンの中心部のパターンが非開口部12と、開口部14とを備えたレティクル2であればよく、さらに、均一性を得るために点対称な図形であることが好ましい。
【0035】
また、ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率(=中心部の開口部の面積/中心部の面積)は、少なくともドーナツ型パターンの開口面積率(=パターン全体の開口部の面積/パターン全体の面積)と同等以上、より好ましくは50%以上であって、98%以下であることが望ましい。ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率が98%を超えるようであると、ドーナツ型パターンを十分に支えられず、片持ちパターンの強度と比べてあまり強化が図ることができない。逆に、ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率が50%未満、特にドーナツ型パターンの開口面積率以下であると、ドーナツ型パターンの中心部を周りのドーナツパターン部が支えることが難しいという非開口の状態とあまり変わらず、強度が強いレティクルを得る可能性が少なくなるからである。
【0036】
図1〜図8に示すようなパターンであれば抜け落ちることもなく、大きな片持ち部もなく、強度が強いレティクル2が得られる。なお、ここで、レティクル2はステンシルタイプであっても、メンブレンタイプであっても構わない。但し、図6〜図8に示すパターンの場合は、ステンシルタイプであると抜け落ちてしまうため、メンブレンタイプでなければならない。
【0037】
レティクルの製法は特に問わないが、一般によく用いられるサブフィールドは位置合わせを省く観点から、無いことが好ましい。
【0038】
セクタ数は本実施形態では、説明を簡単にするため4個である場合を示したが、もっと多く、100個を超ても構わない。また、トラック間にある半径方向の非開口部(図示せず)は連続に真っ直ぐでなくても構わない。ただし、ある程度一定な範囲の間隔で配置されることが、強度のムラをなくすためには好ましい。
【0039】
また、図1乃至図8においては、レティクルの外枠部は円形で図示しているが、必ずしも円形でなくてはならないことはなく、正方形等であっても構わない。ただし、強度の均一性を保つためにはパターンと同心円の円形に近い形状であるか、レティクルのパターン部に対してレティクルの外枠が、強度の均一性が得られる程度の距離を置いた外側があることが好ましい。
【0040】
本実施形態においては、レティクルのサイズおよび磁気ディスク媒体のサイズおよびそのサイズ比率に限定されるものではない。しかし、レティクルのサイズが大きいと強度不足や装置が大型化する問題があり、縮小率が小さくレティクルと磁気ディスク媒体のサイズがあまり変わらなければ、縮小投影露光を用いた場合に得られるパターンのムラを低減する効果の達成が難しくなる。このため、例えば、磁気ディスク媒体のサイズが2インチ以下であり、レティクルのサイズが8インチ以下であり、かつ、縮小倍率が1/2乃至1/5程度であることが好ましい。
【0041】
なお、レティクルのパターンと磁気ディスク媒体のパターンは必ずしも相似形でなくても良く、レティクルのパターンは露光による光学的な補償を見込んだパターンであっても良い。
【0042】
以上説明したように、本実施形態およびその変形例によれば、ドーナツ型パターンであっても強度が強いレティクルを得ることができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を図15(a)乃至16(f)を参照して説明する。本実施形態の磁気ディスク媒体の製造方法は、露光工程で第1実施形態で説明したレティクルを用いる。
【0044】
基板22上に感光性樹脂(以下、レジストという)24を塗布する(図15(a)参照)。レジスト24はポジ型でもネガ型でも、化学増幅型でも非化学増幅型でも構わないが、非化学増幅型のポジ型レジストなどが、電子線に対する感度が良好で、解像度も良く好ましい。他にもPMMA(ポリメチルメタクリレート)やノボラック樹脂などを主成分とする材料を用いることができる。レジスト24を塗布後、プリベークを行った後、電子線描画装置の真空チャンバー内に入れられ、縮小投影露光される(図15(b)参照)。この縮小投影露光に例えば第1実施形態のレティクルが使用される。なお、図15(b)に示している電子線は、レティクルを通過後のコンデンサレンズ等のレンズ以降を示している。また、ポジ型レジストを使用した場合を示している。このようにしてレジスト24が露光される。
【0045】
その後、レジスト24を、現像液によって現像し、レジストパターン24aを形成し、レジスト原盤を作製する(図15(c)参照)。なお、レジスト24を現像する前にポストベーク工程を行っても良い。
【0046】
次に、レジスト原盤のレジストパターン24a上に、Niスパッタ等によって薄い導電膜26を形成する(図15(d)参照)。このとき、レジストパターン24aの膜厚はレジストパターン24aの凹部の形状が充分に保たれる程度の厚さとする。その後、電鋳によってNi膜28を、レジストパターン24aの凹部に充分埋め込み、所望の膜厚となるように形成する(図15(e)参照)。
【0047】
次に、Ni膜28を、レジスト24aおよび基板22からなるレジスト原盤から剥離し、導電膜26およびNi膜からなるスタンパ30を形成する(図15(f)参照)。その後、スタンパ30についたレジストを除去するため、酸素RIE(反応性イオンエッチング)等を行う(図15(g)参照)。
【0048】
次に、図16(a)に示すように、基板30上に記録層となる磁性層32が形成され、この磁性層32上にレジスト34が塗布された磁気ディスク媒体基板を用意する。この磁気ディスク媒体基板上に塗布されたレジスト34に上述のスタンパ30を用いてインプリントし(図16(a)参照)、スタンパ30のパターンをレジスト34に転写する(図16(b)参照)。
【0049】
次に、レジスト34に転写されたパターンをマスクとしてレジスト34をエッチングし、レジストパターン34aを形成する(図16(c)参照)。その後、このレジストパターン34aをマスクとして磁性層32をイオンミリングする(図16(d)参照)。続いて、レジストパターン34aをドライエッチングまたは薬液によって除去し、ディスクリートな磁性層32a形成される(図16(e)参照)。
【0050】
次に、全面に保護膜36を形成し、磁気ディスク媒体を完成する(図16(f)参照)。なお、別途、溝等の凹の部分を非磁性材料で埋め込む工程を有していても構わない。
【0051】
本実施形態の製造方法によって製造される磁気ディスク媒体の形状はその方式上、円盤形状、特にドーナツ型形状が好ましいが、そのサイズは方式上特に限定されるものではない。しかしながら、電子線による描画時間が過剰なものにならないよう3.5インチ以下であることが望ましく、さらにインプリント時に用いるプレス能力が過大なものにならないために、2.5インチ以下であることが望ましく、より好ましくは縮小露光投影を用いる場合特に、マスク生産性の観点から、0.85インチ等、1インチのサイズであることが望ましい。また、磁気ディスク媒体として使われる面が片面であっても両面であっても構わない。
【0052】
また、本実施形態の製造方法を用いてパターンを形成する基板の形状は、特に限定されるものではないが、円盤形状のもの、例えばシリコンウエハーなどが好ましい。ここで、円盤にノッチやオリフラがあっても構わない。他に基板としては、ガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、化合物半導体基板などを用いることができる。ガラス基板には、アモルファスガラスまたは結晶化ガラスを用いることができる。アモルファスガラスとしては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスなどがある。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスなどがある。セラミック基板としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの焼結体を繊維強化したものなどを用いることができる。化合物半導体基板としては、GaAs,AlGaAsなどがある。
【0053】
磁気ディスク媒体内部は、輪切りされた同心円状のトラックに区分され、そのトラックが一定角度毎に区切られたセクタを有し、磁気ディスクはスピンドルモータに取り付けられて回転され、ヘッドにより各種のディジタルデータが記録・再生される。そのため円周方向にユーザーデータトラックが配される一方、位置制御のためのサーボマークが各トラックを跨ぐ方向に配される。サーボマークの中にはプリアンブル部、トラックまたはセクタ番号情報が書きこまれたアドレス部、トラックに対するヘッドの相対位置検出のためのバースト部などの領域を含む。また、これらの領域に加えてギャップ部を含んでいることもある。
【0054】
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
本発明の実施例1によるレティクルの製造方法を図17(a)乃至図図18(c)を参照して説明する。本実施例の製造方法によって製造されるレティクル(マスク)はメンブレン型である。
【0055】
まず、シリコン基板40上に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により0.1μm厚のダイヤモンドからなるメンブレン膜41を形成し、その上にエッチング時のストッパーとなるシリコン酸化膜42を形成した(図17(a)参照)。続いて、プラズマCVDにより1.2μm厚のダイヤモンドからなるメンブレン膜43を形成し、その上にレジストをアニソールで1.5倍に希釈し、0.2μmのメンブランフィルタでろ過後、スピンコートし、200℃で3分間プリベークして、0.2μm厚のレジスト層44を形成した(図17(a)参照)。
【0056】
次に、この基板を電子線描画装置(図示せず)内の所定位置に装置の搬送系(図示せず)によって搬送し、真空のもと、x−y型電子線描画装置内で電子線により図7に示すドーナツ型パターンの中心部のパターンを露光した。次に、同様に真空のもと、r−θ型電子描画装置内で電子線により得ようとするハードディスクパターンの4倍のサイズとなる外径3.4インチに拡大したパターン(図7のドーナツ部)を露光した。露光後、上記シリコン基板を現像液に90秒間浸漬して現像し、その後、リンス液に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させることにより、レジストパターン44aを形成した(図17(b)参照)。
【0057】
その後、レジストパターン44aをマスクとしてメンブレン膜43をシリコン酸化膜42が露出するまで酸素ガスプラズマによりドライエッチングし、メンブレン膜パターン43aを形成した(図17(c)参照)。その後、レジストパターン44aを除去した。
【0058】
次に、シリコン基板40の裏面にレジストを塗布し、リソグラフィー技術でレジストパターン45を形成した(図18(a)参照)。その後、シリコン基板40をメンブレン膜41が露出するまでKOH(水酸化カリウム)でエッチングし(図18(b)参照)、その後、レジストパターン45を除去してメンブレンマスク(レティクル)を得た(図18(c)参照)。
【0059】
次に、本実施例の製造方法によって製造されたメンブレンマスク(レティクル)を用いた磁気ディスク媒体の製造方法の実施例を図15(a)乃至図16(f)を参照して説明する。
【0060】
図15(a)に示すようにシリコン基板22上に、レジスト24をアニソールで2倍に希釈し、0.2μmのメンブランフィルタでろ過後、スピンコートした。その直後、200℃で3分間プリベークして、0.1μm厚のレジストを得た。
【0061】
上述のメンブレンマスクを介して縮小投影電子線露光装置を用いて、マスクサイズの1/4にあたる外径0.85インチに縮小したパターンを、露光することにより上記レジストに転写した。露光後、上記シリコン基板を現像液に90秒間浸漬して現像し、その後、リンス液に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させることにより、レジストパターン24aを有するレジスト原盤を得た(図15(c)参照)。
【0062】
次に、図15(d)に示すようにレジスト原盤上にスパッタリング法によっての薄い導電膜26を形成した。ターゲットには純ニッケルを使用し、8×10-3Pa迄真空引きした後、アルゴンガスを導入して1Paに調整されたチャンバー内で400WのDCパワーをかけて40秒間スパッタリングさせて、膜厚30nmの導電膜26を得た。
【0063】
その後、導電膜26のついたレジスト原盤をスルファミン酸ニッケルメッキ液を使用し、90分間電鋳し、電鋳膜28を形成した(図15(e)参照)。電鋳浴条件は次の通りである。
スルファミン酸ニッケル:600g/L
ホウ酸:40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム):0.15g/L
液の温度:55℃
P.H:4.0
電流密度:20A/dm2
このとき得られた電鋳膜28の厚さは300μmであった。
【0064】
この後、レジスト原盤から電鋳膜を剥離することにより、導電膜26及び電鋳膜28並びにレジスト残渣を備えたスタンパ30を得た(図15(f)参照)。続いて、レジスト残渣を酸素プラズマアッシング法で除去した(図15(g)参照)。酸素プラズマアッシングは酸素ガスを100ml/minで導入し4Paの真空に調整されたチャンバー内で100Wで20分間プラズマアッシングを行なった。これにより、導電膜26及び電鋳膜28を備えたファザースタンパ30を得た。その後、得られたスタンパの不要部を金属刃で打ち抜くことによりインプリント用スタンパとした。
【0065】
スタンパ30をアセトンで15分間超音波洗浄をした後、インプリント時の離型性を高めるため、フルオロアルキルシラン[CF3(CF2)7CH2CH2Si(OMe)3](GE東芝シリコーン株式会社製、TSL8233)をエタノールで5%に希釈した溶液で30分浸し、ブロアーで溶液を飛ばした後に、120℃で1時間アニールした。
【0066】
一方、図16(a)に示すように、被加工材基板30として、0.85インチドーナツ型ガラス基板上に垂直記録用の磁気記録層32をスパッタリング法で形成したものノボラック系レジストを回転数3800rpmでスピンコータし、レジスト膜34を形成した。その後、上述のスタンパ30の4つの十字のアライメントマーク(図示せず)の中心を光学的に検出しながら、被加工材基板30の位置合わせを行って、両者を重ね合わせた後、2000barで1分間プレスすることによって、レジスト膜34にそのパターンを転写した。パターンが転写されたレジスト膜34を5分間UV照射した後、160 ℃ で30分間加熱した。
【0067】
以上のようにインプリントされた基板をICP(誘導結合プラズマ)エッチング装置を用い、2mTorrのエッチング圧下でレジスト膜34に酸素RIEを行ってレジストパターン34aを形成した(図16(c)参照)。続いて、レジストパターン34aをマスクとして、Arイオンミリングを用いて磁気記録膜32をエッチングし、ディスクリートな磁気記録層32aが形成された(図16(e)参照)。磁気記録層32aを形成後、エッチングマスクとなっていたレジストパターン34aを剥離するため、400W、1Torrで酸素RIEを行った。
【0068】
磁気記録層32aの形成後、保護膜としてCVD(Chemical Vapor Deposition)法で3nm厚のDLC(Diamond Like Carbon)36を成膜した(図16(f)参照)。さらに、潤滑剤をディップ法で1nm厚となるように塗布し、磁気ディスク媒体を得た。本実施例で得た磁気ディスク媒体を磁気記録装置に組みこみ、信号評価を行ったところ、良好に磁気信号が得られた。また位置エラー信号からの検出値も小さかった。
【0069】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2によるレティクルの製造方法を図19(a)乃至図20(c)を参照して説明する。本実施例の製造方法によって製造されるレティクル(マスク)はステンシル型である。
【0070】
まず、図19(a)に示すように、シリコン基板50上にエッチング時のストッパーとなるシリコン酸化膜51が形成され、その上にSOI(Silicon on Insulator)層52が形成されたSOI基板を準備する。SOI層52上にレジストをアニソールで1.5倍に希釈し、0.2μmのメンブランフィルタでろ過後、スピンコートし、200℃で3分間プリベークして、0.2μm厚のレジスト層を形成した(図19(a)参照)。
【0071】
次に、この基板を電子線描画装置(図示せず)内の所定位置に電子線描画装置の搬送系によって搬送し、真空の下、r−θ型電子線描画装置内で電子線により図2に示すパターンをレジスト層53に露光した。露光後、上記SOI基板を現像液に90秒間浸漬してレジスト層53を現像し、その後、リンス液に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させ、レジストパターン53aを形成した(図19(b)参照)。
【0072】
続いて、レジストパターン53aをマスクとしてSOI層52をシリコン酸化膜51が露出するまで異方性エッチングを行い、パターニングされたSOI層52aを得た(図19(c)参照)。その後、レジストパターン53aを除去した。
【0073】
次に、シリコン基板50の裏面にレジストを塗布し、リソグラフィー技術でレジストパターン54を形成した(図19(d)参照)。その後、レジストパターン54をマスクとしてシリコン基板50をシリコン酸化膜51が露出するまでKOH(水酸化カリウム)でエッチングした(図20(a)参照)。続いて、レジストパターン54を除去した(図20(b)参照)。さらに、フッ酸によりシリコン基板50とパターニングされたSOI層52aとの間のシリコン酸化膜を除いて他のシリコン酸化膜51を除去して、ステンシルマスクを得た(図20(c)参照)。
【0074】
このステンシルマスクを用いて、以下、実施例1と同様の工程で、磁気ディスク媒体を作製した。このようにして得た磁気ディスク媒体を磁気記録装置に組みこみ、信号評価を行ったところ、良好に磁気信号が得られた。
【0075】
上記実施例1および実施例2で説明した磁気ディスク媒体は、磁性体加工型、すなわち、基板上に形成された磁性体(磁気記録層)を加工することにより得られたが、基板加工型であってもよい。この基板加工型の磁気記録媒体(磁気ディスク媒体)の製造方法を実施例3として説明する。
【0076】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3による磁気記録異媒体の製造方法を図21を参照して説明する。本実施例の製造方法によって製造される磁気記録媒体は、基板加工型の磁気記録媒体(Substrate-patterned Discrete track media)である。
【0077】
まず、インプリントスタンパを、図15(a)乃至図15(g)に示した手法と同様の手法を用いて作製する。
【0078】
次に、以下のようにインプリントリソグラフィー法を用いて凹凸加工基板を作製する。図21(a)に示すように、基板60上にインプリント用のレジスト61を塗布する。続いて、図21(b)に示すように、基板60上のレジスト61にスタンパ30を対向させ、圧力をかけてレジスト61にスタンパ30を押し付けてスタンパ30の表面の凸部パターンをレジスト61の表面に転写する。その後、スタンパを取り外す。これにより、レジスト61に凹凸パターンが形成されたレジストパターン61aとなる(図21(b)参照)。
【0079】
次に、レジストパターン61aをマスクとして基板60をエッチングすることにより、凹凸パターンが形成された基板61aを得る。その後、レジストパターン61aを除去する(図21(c)参照)。
【0080】
続いて、図21(d)に示すように、基板61a上に垂直記録に適した材料からなる磁性膜63を成膜する。このとき、基板60aの凸部に成膜された磁性膜が凸部磁性体部63aとなり、基板60aの凹部に成膜された磁性膜が凹部磁性体部63bとなる。なお、磁性膜63として、軟磁性下地層と強磁性記録層との積層膜とすることが好ましい。さらに磁性膜63上にカーボンからなる保護膜65を設け、さらに潤滑剤を塗布することにより、磁気記録媒体を作製する。
【0081】
図16(f)に述べた磁性体加工型の磁気記録媒体(Magnetic film-patterned Discrete track media)の磁性体部位と非磁性体部位が、それぞれ本実施例の凸部磁性体部63aと凹部磁性体部63bに相当する。磁気記録装置中での両者の機能は同じである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図2】第1実施形態の第1変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図3】第1実施形態の第2変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図4】第1実施形態の第3変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図5】第1実施形態の第4変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図6】第1実施形態の第5変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図7】第1実施形態の第6変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図8】第1実施形態の第7変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図9】第1実施形態のレティクルが用いられる投影露光装置の構成を示す図。
【図10】第1実施形態のレティクルが用いられる投影露光装置の構成を示す図。
【図11】磁気ディスク媒体の一具体例の上面図。
【図12】ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルのパターンを示す上面図。
【図13】ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルのパターンを示す上面図。
【図14】ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルのパターンを示す上面図。
【図15】本発明の第2実施形態によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を示す断面図。
【図16】本発明の第2実施形態によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を示す断面図。
【図17】本発明の実施例1によるメンブレン型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図18】本発明の実施例1によるメンブレン型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図19】本発明の実施例2によるステンシル型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図20】本発明の実施例2によるステンシル型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図21】本発明の実施例3によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0083】
2 レティクル
10 ドーナツ型パターンの中心部
12 非開口部
14 開口部
22 基板
24 レジスト
24a レジストパターン
26 導電膜
28 Ni膜(電鋳膜)
30 スタンパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリート型の磁気ディスク媒体と、その作製工程中のインプリントに用いるスタンパの型となる原盤の作製のための投影露光用レティクル、およびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク(以下、磁気ディスクともいう)の高密度化に対する技術潮流のなかで、磁気信号を発する磁性部領域が非磁性部によって区分けされたいわゆるディスクリート型の媒体構造が提案されており、データゾーンおよびサーボゾーンを有するディスクリート型の媒体の記録再生システムが特許文献1に記載されている。しかし、特許文献1に記載のディスクリート型の媒体がどのような手法で作製されるのかは明らかでない。
【0003】
一方、特許文献2には、ナノインプリントリソグラフィと呼ばれる200nm以下のモールドパターンをフィルムに転写する技術が記載されている。また、特許文献3にはディスクリート型の磁気ディスクパターンをインプリントによって転写する技術について記載されている。特許文献3においては、媒体パターンは電子線リソグラフィにより作製された原盤からおこしたスタンパによって形成した例が記載されているが、その電子線リソグラフィの手法については述べられていない。
【0004】
一般に、磁気ディスク装置では、筐体の内部に、ドーナツ型の円盤形状の磁気ディスクと、磁気ヘッドを含むヘッドスライダと、ヘッドスライダを支持するヘッドサスペンションアッセンブリと、ボイスコイルモータ(VCM)と、回路基板とを備える。
【0005】
磁気ディスク内部は、輪切りされた同心円状のトラックに区分され、そのトラックが一定角度毎に区切られたセクタを有し、磁気ディスクはスピンドルモータに取り付けられて回転され、ヘッドにより各種のディジタルデータが記録・再生される。そのため円周方向にユーザーデータトラックが配される一方、位置制御のためのサーボマークが各トラックを跨ぐ方向に配される。サーボマークの中にはプリアンブル部、アドレス部、バースト部などの領域を含む。また、これらの領域に加えてギャップ部を含んでいることもある。
【0006】
インプリント方式でディスクリート型の磁気ディスクを作製するためのスタンパ原盤においてはユーザーデータトラック領域およびサーボ領域双方を同時に形成することが望まれる。さもないと後からどちらかを付加するという、位置合わせが困難で、複雑な工程を経ることとなるからである。
【0007】
原盤の作製においてはそのパターンを水銀ランプ、紫外線、電子線、エックス線等の化学線によって感光性樹脂を露光して形成することができる。特に、信号源と同期させた電子線で直接描画する手法が、電子線であれば偏向がかけられる点で同心円を描く必要性がある磁気ディスクパターンの形成にとって好ましい。例えば、1方向の移動軸の移動機構と回転機構を有するステージ連続移動方式の電子線描画装置を用い、ステージに載った基板上の感光性樹脂に対して当該移動軸上の1点からスポットビームを当てて電子線露光することでパターンの形成ができる。
【0008】
しかし、電子線になにも外力を与えないと、螺旋を描くことになる。これを防止するために、その露光工程において1回転毎にその強度を次第に変化させながら電子線に偏向をかけることにより、同心円を描くことができる。一方、半径方向の線はその角度位置に来たときのみ毎周ビームを出すもしくは出さないようにすれば、それが繋がって線を描くことができる。具体的には、サーボ領域とデータ領域が配置される媒体を得ようとする場合には、各回転ごとにステージが回転するにつれて偏向量を線形に増大させ、1回転して元の位置に戻ると偏向量を零にするような偏向をかけてやることにより、線が繋がった所望の露光パターンを得ることができる。ポジ型レジストを使用した場合、露光部は現像後凹部となり、電鋳してスタンパ化すると凸部となる。なお、媒体のサーボ部は、半径方向にまっすぐでなく、ヘッド部のアームの軌跡である弧状になっていても構わない。
【0009】
ところで、露光の際、実際には1方向の移動軸の移動機構と回転機構にその送り精度誤差や回転ジッタがいくらか存在するため、パターンの崩れが生ずる。この問題を解決する手法の一つとして、縮小投影露光を用いることができる。
【0010】
この縮小投影露光によれば、パターンにムラがある場合においても、縮小投影されることにより、そのムラの大きさも低減する。縮小投影にあたっては、その投影したいパターンが開口したマスク(以下、レティクルともいう)に電子線等のビームを照射し、その開口部を通過したビームを光学系で縮小化して、その縮小化されたビームを被露光基板に照射する。
【0011】
電子線縮小投影露光技術としては、非特許文献1に示されるSCALPEL(Scattering with Angular Limitation in Projection Electron Lithography)方式や特許文献4のPREVAIL(Projection Exposure with Variable Axis Immersion Lens)方式が主なものとして挙げられ、これらの方式で用いるマスクとして、ステンシルタイプのマスク(以下、ステンシルマスクとも云う)と、メンブレンタイプのマスク(以下、メンブレンマスクとも云う)がある。
【0012】
ステンシルマスクを用いた場合は、電子ビームがステンシルマスクの開口部を通過し、非開口部で散乱する。メンブレンマスクは、電子ビームが透過し易い軽元素からなるメンブレン部と、メンブレン上に形成された電子ビームを散乱させる重金属パターン層から成る。メンブレン部はシリコンやシリコン窒化膜などが、パターン層はクロム(Cr)やタングステン(W)などが用いられる。
【0013】
ステンシルマスクの、ビームが通過する開口部は貫通しているため、メンブレンマスクにあるような低散乱や色収差が起こらない。しかし、その構造上、中央に開口を有するドーナツ型パターンなどのパターンは抜けが生じてしまうためマスク化することができない。そのため相補的なマスクを用い、複数回露光をして対応する手法などが取られている。このような対応は位置合わせやスループット上の問題が存在する。また、片持ちパターンは機械的強度が低くなりがちで、破損が生じ易い。
【0014】
一方、メンブレンマスクではメンブレン部が存在するため、ドーナツ型パターンなどのパターンでも形成可能である。しかし、ドーナツ型パターンや片持ちパターンは機械的強度が弱くなる傾向はステンシルマスクの場合と同様である。また、メンブレンマスクでは電子線がメンブレンを透過する際に、わずかながらも低散乱を起こしてしまい、色収差が出てしまう欠点がある。
【0015】
また、特にステンシルマスクにおいて、細いパターン線で大きな非開口パターンを支えることは強度的に問題である。逆に大きな開口パターンがある場合はその周辺パターンが、支えが不足したパターンとなり、片持ちパターンと同様の問題が生じ易い。メンブレンマスクではこのような強度的な問題は比較的緩和されるが、重金属と軽元素薄膜と間の応力差によってパターンに依存する歪が発生し易い問題がある。
【0016】
ここで、ハードディスク媒体、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disk)等はドーナツ型形状であるので、必然的にその原盤作製に用いるマスクもドーナツ型パターンを有するものとなる。そのようなドーナツ型ディスクの原盤作製に用いる投影マスクを作製しようとした場合、通常そのドーナツパターンの中心部は非開口もしくは開口パターンとなるが、そのようなマスクは上述のように強度が脆弱となる問題がある。
【特許文献1】特開2004−110896号公報
【特許文献2】米国特許第5,772,905号明細書
【特許文献3】特開2003−157520号公報
【非特許文献1】S. D. Berger et al., Applied Physics Letters, 57, 153 (1990)
【特許文献4】特許第2829942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、ドーナツ型パターンであっても強度が強いレティクルおよびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法ならびに磁気ディスク媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によるレティクルは、ドーナツ型パターンを有し、前記ドーナツ型パターンの中心部のパターンが開口部と非開口部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
なお、前記中心部のパターンは、扇状、3角形の網目状、4角形の網目状、正6角形の網目状のいずれか、またはそれらの組み合わせからなっていてもよく、また、点対称な図形であることが好ましい。
【0020】
なお、前記中心部のパターン内にアライメントマークまたは識別マークが設けられてもよい。
【0021】
なお、前記レティクルはメンブレン型であってもよい。
【0022】
なお、前記レティクルはステンシル型であってもよい。
【0023】
なお、前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、前記ドーナツ型パターンの開口部面積率以上であることが好ましい。
【0024】
なお、前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、50%以上かつ98%以下であることが好ましい。
【0025】
なお、前記レティクルは、電子線縮小投影露光に用いることが好ましい。
【0026】
また、本発明の第2の態様による磁気ディスク媒体の製造方法は、インプリント法を用いて磁気ディスク媒体の製造を行う磁気ディスク媒体の製造方法において、前記インプリント法に用いるスタンパを作製するためのレジスト原盤を、上記レティクルを用いて電子線投影露光を行うことにより形成することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の第3の態様による磁気ディスク媒体は、上記製造方法により製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ドーナツ型パターンであっても強度が強いレティクルおよびそれを用いた磁気ディスク媒体の製造方法ならびに磁気ディスク媒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態およびその変形例によるレティクルを説明する。本実施形態のレティクルは、投影露光装置に用いられる。この投影露光装置は、図9に示すように、電子ビーム源100から放射された電子ビーム101が、偏向器102によってある範囲内偏向され、本実施形態のレティクル2を透過したビームのみが複数の投影レンズ104およびアパーチャー106を通って、ステージ110に載置された基板120上に形成された感光性樹脂からなるレジスト122に照射される。図10に示すようにレティクル2と、基板120が載置されたステージ110が駆動系112、115によってそれぞれ駆動されて、移動回転することにより、電子ビーム101が均一に照射され、レティクル2を通して得られるパターンがレジスト122に投影露光される。
【0031】
以下、磁気ディスク媒体としては、図11に示すように、4個のデータ領域d1〜d4と、これらデータ領域d1〜d4の間に設けられたサーボ領域s1〜s4とを備えているものを例にとって説明する。図11は磁気ディスク媒体の一具体例の上面図である。各データ領域は複数のトラックtrを有している。なお、図11においてはサーボ領域s1〜s4はアームの軌跡に沿った弧状に形成されている。このような磁気ディスク媒体を作製するための、ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルは、一般に図12〜図14に示すような中心部に穴が開いているか、中心部が塞がっているかのいずれかである。例えば、図12、図14は、中心部が塞がっているレティクルのドーナツ型パターンを示し、図13は中心部に穴があいているレティクルのドーナツ型パターンを示す。なお、図12においては、サーボ領域s1〜s4は外周に向かって直線的に延びている。
【0032】
これに対して、本実施形態によるレティクル2のドーナツ型パターンは、図1に示すように、中心部10が放射状の線(非開口部)12を備えるように構成されている。すなわち、従来の 場合と異なり、本実施形態では、中心部10は非開口部12と、開口部14とを備えた構成となっている。なお、図1においては、放射状の線は非開口部と一致しており、開口部は複数の扇状の組み合わせとなっており、また、点対称な図形となっている。
【0033】
このように、ドーナツ型パターンの中心部のパターンが非開口部12と、開口部14とを備えた構成であれば、図2に示すように、非開口部12が放射状の線12aと、円12bとからなっていてもよい。また、図3に示すように、非開口部12が放射状の線12aと、四角形もしくは三角形を構成する辺12cとからなっていてもよい。さらに、図4に示すように、開口部が四角形状の穴14aが複数個並んだパターンであってもよい。また、図5に示すように、開口部が正6角形状の穴14bが並んだパターンであってもよい。また、図6に示すように、四角形状と三角形状の穴14cが並んだパターンにさらに文字が形成されているものでもよい。さらに、図7に示すように、四角形状と三角形状の穴14cが並んだパターンにアライメントマークパターンが形成されていてもよい。また、図7に示すように、四角形状と三角形状の穴14cが並んだパターンに識別マーク、例えばバーコード図形が形成されているものであってもよい。したがって、ドーナツ型パターンの中心部のパターンは扇状、3角形の網目状、4角形の網目状、正6角形の網目状のいずれか、またはそれらの組み合わせからなっていてもよい。
【0034】
いずれにしても、ドーナツ型パターンの中心部のパターンが非開口部12と、開口部14とを備えたレティクル2であればよく、さらに、均一性を得るために点対称な図形であることが好ましい。
【0035】
また、ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率(=中心部の開口部の面積/中心部の面積)は、少なくともドーナツ型パターンの開口面積率(=パターン全体の開口部の面積/パターン全体の面積)と同等以上、より好ましくは50%以上であって、98%以下であることが望ましい。ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率が98%を超えるようであると、ドーナツ型パターンを十分に支えられず、片持ちパターンの強度と比べてあまり強化が図ることができない。逆に、ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率が50%未満、特にドーナツ型パターンの開口面積率以下であると、ドーナツ型パターンの中心部を周りのドーナツパターン部が支えることが難しいという非開口の状態とあまり変わらず、強度が強いレティクルを得る可能性が少なくなるからである。
【0036】
図1〜図8に示すようなパターンであれば抜け落ちることもなく、大きな片持ち部もなく、強度が強いレティクル2が得られる。なお、ここで、レティクル2はステンシルタイプであっても、メンブレンタイプであっても構わない。但し、図6〜図8に示すパターンの場合は、ステンシルタイプであると抜け落ちてしまうため、メンブレンタイプでなければならない。
【0037】
レティクルの製法は特に問わないが、一般によく用いられるサブフィールドは位置合わせを省く観点から、無いことが好ましい。
【0038】
セクタ数は本実施形態では、説明を簡単にするため4個である場合を示したが、もっと多く、100個を超ても構わない。また、トラック間にある半径方向の非開口部(図示せず)は連続に真っ直ぐでなくても構わない。ただし、ある程度一定な範囲の間隔で配置されることが、強度のムラをなくすためには好ましい。
【0039】
また、図1乃至図8においては、レティクルの外枠部は円形で図示しているが、必ずしも円形でなくてはならないことはなく、正方形等であっても構わない。ただし、強度の均一性を保つためにはパターンと同心円の円形に近い形状であるか、レティクルのパターン部に対してレティクルの外枠が、強度の均一性が得られる程度の距離を置いた外側があることが好ましい。
【0040】
本実施形態においては、レティクルのサイズおよび磁気ディスク媒体のサイズおよびそのサイズ比率に限定されるものではない。しかし、レティクルのサイズが大きいと強度不足や装置が大型化する問題があり、縮小率が小さくレティクルと磁気ディスク媒体のサイズがあまり変わらなければ、縮小投影露光を用いた場合に得られるパターンのムラを低減する効果の達成が難しくなる。このため、例えば、磁気ディスク媒体のサイズが2インチ以下であり、レティクルのサイズが8インチ以下であり、かつ、縮小倍率が1/2乃至1/5程度であることが好ましい。
【0041】
なお、レティクルのパターンと磁気ディスク媒体のパターンは必ずしも相似形でなくても良く、レティクルのパターンは露光による光学的な補償を見込んだパターンであっても良い。
【0042】
以上説明したように、本実施形態およびその変形例によれば、ドーナツ型パターンであっても強度が強いレティクルを得ることができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を図15(a)乃至16(f)を参照して説明する。本実施形態の磁気ディスク媒体の製造方法は、露光工程で第1実施形態で説明したレティクルを用いる。
【0044】
基板22上に感光性樹脂(以下、レジストという)24を塗布する(図15(a)参照)。レジスト24はポジ型でもネガ型でも、化学増幅型でも非化学増幅型でも構わないが、非化学増幅型のポジ型レジストなどが、電子線に対する感度が良好で、解像度も良く好ましい。他にもPMMA(ポリメチルメタクリレート)やノボラック樹脂などを主成分とする材料を用いることができる。レジスト24を塗布後、プリベークを行った後、電子線描画装置の真空チャンバー内に入れられ、縮小投影露光される(図15(b)参照)。この縮小投影露光に例えば第1実施形態のレティクルが使用される。なお、図15(b)に示している電子線は、レティクルを通過後のコンデンサレンズ等のレンズ以降を示している。また、ポジ型レジストを使用した場合を示している。このようにしてレジスト24が露光される。
【0045】
その後、レジスト24を、現像液によって現像し、レジストパターン24aを形成し、レジスト原盤を作製する(図15(c)参照)。なお、レジスト24を現像する前にポストベーク工程を行っても良い。
【0046】
次に、レジスト原盤のレジストパターン24a上に、Niスパッタ等によって薄い導電膜26を形成する(図15(d)参照)。このとき、レジストパターン24aの膜厚はレジストパターン24aの凹部の形状が充分に保たれる程度の厚さとする。その後、電鋳によってNi膜28を、レジストパターン24aの凹部に充分埋め込み、所望の膜厚となるように形成する(図15(e)参照)。
【0047】
次に、Ni膜28を、レジスト24aおよび基板22からなるレジスト原盤から剥離し、導電膜26およびNi膜からなるスタンパ30を形成する(図15(f)参照)。その後、スタンパ30についたレジストを除去するため、酸素RIE(反応性イオンエッチング)等を行う(図15(g)参照)。
【0048】
次に、図16(a)に示すように、基板30上に記録層となる磁性層32が形成され、この磁性層32上にレジスト34が塗布された磁気ディスク媒体基板を用意する。この磁気ディスク媒体基板上に塗布されたレジスト34に上述のスタンパ30を用いてインプリントし(図16(a)参照)、スタンパ30のパターンをレジスト34に転写する(図16(b)参照)。
【0049】
次に、レジスト34に転写されたパターンをマスクとしてレジスト34をエッチングし、レジストパターン34aを形成する(図16(c)参照)。その後、このレジストパターン34aをマスクとして磁性層32をイオンミリングする(図16(d)参照)。続いて、レジストパターン34aをドライエッチングまたは薬液によって除去し、ディスクリートな磁性層32a形成される(図16(e)参照)。
【0050】
次に、全面に保護膜36を形成し、磁気ディスク媒体を完成する(図16(f)参照)。なお、別途、溝等の凹の部分を非磁性材料で埋め込む工程を有していても構わない。
【0051】
本実施形態の製造方法によって製造される磁気ディスク媒体の形状はその方式上、円盤形状、特にドーナツ型形状が好ましいが、そのサイズは方式上特に限定されるものではない。しかしながら、電子線による描画時間が過剰なものにならないよう3.5インチ以下であることが望ましく、さらにインプリント時に用いるプレス能力が過大なものにならないために、2.5インチ以下であることが望ましく、より好ましくは縮小露光投影を用いる場合特に、マスク生産性の観点から、0.85インチ等、1インチのサイズであることが望ましい。また、磁気ディスク媒体として使われる面が片面であっても両面であっても構わない。
【0052】
また、本実施形態の製造方法を用いてパターンを形成する基板の形状は、特に限定されるものではないが、円盤形状のもの、例えばシリコンウエハーなどが好ましい。ここで、円盤にノッチやオリフラがあっても構わない。他に基板としては、ガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、化合物半導体基板などを用いることができる。ガラス基板には、アモルファスガラスまたは結晶化ガラスを用いることができる。アモルファスガラスとしては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスなどがある。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスなどがある。セラミック基板としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの焼結体を繊維強化したものなどを用いることができる。化合物半導体基板としては、GaAs,AlGaAsなどがある。
【0053】
磁気ディスク媒体内部は、輪切りされた同心円状のトラックに区分され、そのトラックが一定角度毎に区切られたセクタを有し、磁気ディスクはスピンドルモータに取り付けられて回転され、ヘッドにより各種のディジタルデータが記録・再生される。そのため円周方向にユーザーデータトラックが配される一方、位置制御のためのサーボマークが各トラックを跨ぐ方向に配される。サーボマークの中にはプリアンブル部、トラックまたはセクタ番号情報が書きこまれたアドレス部、トラックに対するヘッドの相対位置検出のためのバースト部などの領域を含む。また、これらの領域に加えてギャップ部を含んでいることもある。
【0054】
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
本発明の実施例1によるレティクルの製造方法を図17(a)乃至図図18(c)を参照して説明する。本実施例の製造方法によって製造されるレティクル(マスク)はメンブレン型である。
【0055】
まず、シリコン基板40上に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により0.1μm厚のダイヤモンドからなるメンブレン膜41を形成し、その上にエッチング時のストッパーとなるシリコン酸化膜42を形成した(図17(a)参照)。続いて、プラズマCVDにより1.2μm厚のダイヤモンドからなるメンブレン膜43を形成し、その上にレジストをアニソールで1.5倍に希釈し、0.2μmのメンブランフィルタでろ過後、スピンコートし、200℃で3分間プリベークして、0.2μm厚のレジスト層44を形成した(図17(a)参照)。
【0056】
次に、この基板を電子線描画装置(図示せず)内の所定位置に装置の搬送系(図示せず)によって搬送し、真空のもと、x−y型電子線描画装置内で電子線により図7に示すドーナツ型パターンの中心部のパターンを露光した。次に、同様に真空のもと、r−θ型電子描画装置内で電子線により得ようとするハードディスクパターンの4倍のサイズとなる外径3.4インチに拡大したパターン(図7のドーナツ部)を露光した。露光後、上記シリコン基板を現像液に90秒間浸漬して現像し、その後、リンス液に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させることにより、レジストパターン44aを形成した(図17(b)参照)。
【0057】
その後、レジストパターン44aをマスクとしてメンブレン膜43をシリコン酸化膜42が露出するまで酸素ガスプラズマによりドライエッチングし、メンブレン膜パターン43aを形成した(図17(c)参照)。その後、レジストパターン44aを除去した。
【0058】
次に、シリコン基板40の裏面にレジストを塗布し、リソグラフィー技術でレジストパターン45を形成した(図18(a)参照)。その後、シリコン基板40をメンブレン膜41が露出するまでKOH(水酸化カリウム)でエッチングし(図18(b)参照)、その後、レジストパターン45を除去してメンブレンマスク(レティクル)を得た(図18(c)参照)。
【0059】
次に、本実施例の製造方法によって製造されたメンブレンマスク(レティクル)を用いた磁気ディスク媒体の製造方法の実施例を図15(a)乃至図16(f)を参照して説明する。
【0060】
図15(a)に示すようにシリコン基板22上に、レジスト24をアニソールで2倍に希釈し、0.2μmのメンブランフィルタでろ過後、スピンコートした。その直後、200℃で3分間プリベークして、0.1μm厚のレジストを得た。
【0061】
上述のメンブレンマスクを介して縮小投影電子線露光装置を用いて、マスクサイズの1/4にあたる外径0.85インチに縮小したパターンを、露光することにより上記レジストに転写した。露光後、上記シリコン基板を現像液に90秒間浸漬して現像し、その後、リンス液に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させることにより、レジストパターン24aを有するレジスト原盤を得た(図15(c)参照)。
【0062】
次に、図15(d)に示すようにレジスト原盤上にスパッタリング法によっての薄い導電膜26を形成した。ターゲットには純ニッケルを使用し、8×10-3Pa迄真空引きした後、アルゴンガスを導入して1Paに調整されたチャンバー内で400WのDCパワーをかけて40秒間スパッタリングさせて、膜厚30nmの導電膜26を得た。
【0063】
その後、導電膜26のついたレジスト原盤をスルファミン酸ニッケルメッキ液を使用し、90分間電鋳し、電鋳膜28を形成した(図15(e)参照)。電鋳浴条件は次の通りである。
スルファミン酸ニッケル:600g/L
ホウ酸:40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム):0.15g/L
液の温度:55℃
P.H:4.0
電流密度:20A/dm2
このとき得られた電鋳膜28の厚さは300μmであった。
【0064】
この後、レジスト原盤から電鋳膜を剥離することにより、導電膜26及び電鋳膜28並びにレジスト残渣を備えたスタンパ30を得た(図15(f)参照)。続いて、レジスト残渣を酸素プラズマアッシング法で除去した(図15(g)参照)。酸素プラズマアッシングは酸素ガスを100ml/minで導入し4Paの真空に調整されたチャンバー内で100Wで20分間プラズマアッシングを行なった。これにより、導電膜26及び電鋳膜28を備えたファザースタンパ30を得た。その後、得られたスタンパの不要部を金属刃で打ち抜くことによりインプリント用スタンパとした。
【0065】
スタンパ30をアセトンで15分間超音波洗浄をした後、インプリント時の離型性を高めるため、フルオロアルキルシラン[CF3(CF2)7CH2CH2Si(OMe)3](GE東芝シリコーン株式会社製、TSL8233)をエタノールで5%に希釈した溶液で30分浸し、ブロアーで溶液を飛ばした後に、120℃で1時間アニールした。
【0066】
一方、図16(a)に示すように、被加工材基板30として、0.85インチドーナツ型ガラス基板上に垂直記録用の磁気記録層32をスパッタリング法で形成したものノボラック系レジストを回転数3800rpmでスピンコータし、レジスト膜34を形成した。その後、上述のスタンパ30の4つの十字のアライメントマーク(図示せず)の中心を光学的に検出しながら、被加工材基板30の位置合わせを行って、両者を重ね合わせた後、2000barで1分間プレスすることによって、レジスト膜34にそのパターンを転写した。パターンが転写されたレジスト膜34を5分間UV照射した後、160 ℃ で30分間加熱した。
【0067】
以上のようにインプリントされた基板をICP(誘導結合プラズマ)エッチング装置を用い、2mTorrのエッチング圧下でレジスト膜34に酸素RIEを行ってレジストパターン34aを形成した(図16(c)参照)。続いて、レジストパターン34aをマスクとして、Arイオンミリングを用いて磁気記録膜32をエッチングし、ディスクリートな磁気記録層32aが形成された(図16(e)参照)。磁気記録層32aを形成後、エッチングマスクとなっていたレジストパターン34aを剥離するため、400W、1Torrで酸素RIEを行った。
【0068】
磁気記録層32aの形成後、保護膜としてCVD(Chemical Vapor Deposition)法で3nm厚のDLC(Diamond Like Carbon)36を成膜した(図16(f)参照)。さらに、潤滑剤をディップ法で1nm厚となるように塗布し、磁気ディスク媒体を得た。本実施例で得た磁気ディスク媒体を磁気記録装置に組みこみ、信号評価を行ったところ、良好に磁気信号が得られた。また位置エラー信号からの検出値も小さかった。
【0069】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2によるレティクルの製造方法を図19(a)乃至図20(c)を参照して説明する。本実施例の製造方法によって製造されるレティクル(マスク)はステンシル型である。
【0070】
まず、図19(a)に示すように、シリコン基板50上にエッチング時のストッパーとなるシリコン酸化膜51が形成され、その上にSOI(Silicon on Insulator)層52が形成されたSOI基板を準備する。SOI層52上にレジストをアニソールで1.5倍に希釈し、0.2μmのメンブランフィルタでろ過後、スピンコートし、200℃で3分間プリベークして、0.2μm厚のレジスト層を形成した(図19(a)参照)。
【0071】
次に、この基板を電子線描画装置(図示せず)内の所定位置に電子線描画装置の搬送系によって搬送し、真空の下、r−θ型電子線描画装置内で電子線により図2に示すパターンをレジスト層53に露光した。露光後、上記SOI基板を現像液に90秒間浸漬してレジスト層53を現像し、その後、リンス液に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させ、レジストパターン53aを形成した(図19(b)参照)。
【0072】
続いて、レジストパターン53aをマスクとしてSOI層52をシリコン酸化膜51が露出するまで異方性エッチングを行い、パターニングされたSOI層52aを得た(図19(c)参照)。その後、レジストパターン53aを除去した。
【0073】
次に、シリコン基板50の裏面にレジストを塗布し、リソグラフィー技術でレジストパターン54を形成した(図19(d)参照)。その後、レジストパターン54をマスクとしてシリコン基板50をシリコン酸化膜51が露出するまでKOH(水酸化カリウム)でエッチングした(図20(a)参照)。続いて、レジストパターン54を除去した(図20(b)参照)。さらに、フッ酸によりシリコン基板50とパターニングされたSOI層52aとの間のシリコン酸化膜を除いて他のシリコン酸化膜51を除去して、ステンシルマスクを得た(図20(c)参照)。
【0074】
このステンシルマスクを用いて、以下、実施例1と同様の工程で、磁気ディスク媒体を作製した。このようにして得た磁気ディスク媒体を磁気記録装置に組みこみ、信号評価を行ったところ、良好に磁気信号が得られた。
【0075】
上記実施例1および実施例2で説明した磁気ディスク媒体は、磁性体加工型、すなわち、基板上に形成された磁性体(磁気記録層)を加工することにより得られたが、基板加工型であってもよい。この基板加工型の磁気記録媒体(磁気ディスク媒体)の製造方法を実施例3として説明する。
【0076】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3による磁気記録異媒体の製造方法を図21を参照して説明する。本実施例の製造方法によって製造される磁気記録媒体は、基板加工型の磁気記録媒体(Substrate-patterned Discrete track media)である。
【0077】
まず、インプリントスタンパを、図15(a)乃至図15(g)に示した手法と同様の手法を用いて作製する。
【0078】
次に、以下のようにインプリントリソグラフィー法を用いて凹凸加工基板を作製する。図21(a)に示すように、基板60上にインプリント用のレジスト61を塗布する。続いて、図21(b)に示すように、基板60上のレジスト61にスタンパ30を対向させ、圧力をかけてレジスト61にスタンパ30を押し付けてスタンパ30の表面の凸部パターンをレジスト61の表面に転写する。その後、スタンパを取り外す。これにより、レジスト61に凹凸パターンが形成されたレジストパターン61aとなる(図21(b)参照)。
【0079】
次に、レジストパターン61aをマスクとして基板60をエッチングすることにより、凹凸パターンが形成された基板61aを得る。その後、レジストパターン61aを除去する(図21(c)参照)。
【0080】
続いて、図21(d)に示すように、基板61a上に垂直記録に適した材料からなる磁性膜63を成膜する。このとき、基板60aの凸部に成膜された磁性膜が凸部磁性体部63aとなり、基板60aの凹部に成膜された磁性膜が凹部磁性体部63bとなる。なお、磁性膜63として、軟磁性下地層と強磁性記録層との積層膜とすることが好ましい。さらに磁性膜63上にカーボンからなる保護膜65を設け、さらに潤滑剤を塗布することにより、磁気記録媒体を作製する。
【0081】
図16(f)に述べた磁性体加工型の磁気記録媒体(Magnetic film-patterned Discrete track media)の磁性体部位と非磁性体部位が、それぞれ本実施例の凸部磁性体部63aと凹部磁性体部63bに相当する。磁気記録装置中での両者の機能は同じである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図2】第1実施形態の第1変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図3】第1実施形態の第2変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図4】第1実施形態の第3変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図5】第1実施形態の第4変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図6】第1実施形態の第5変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図7】第1実施形態の第6変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図8】第1実施形態の第7変形例によるレティクルのパターンを示す上面図。
【図9】第1実施形態のレティクルが用いられる投影露光装置の構成を示す図。
【図10】第1実施形態のレティクルが用いられる投影露光装置の構成を示す図。
【図11】磁気ディスク媒体の一具体例の上面図。
【図12】ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルのパターンを示す上面図。
【図13】ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルのパターンを示す上面図。
【図14】ドーナツ型パターンを有する従来のレティクルのパターンを示す上面図。
【図15】本発明の第2実施形態によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を示す断面図。
【図16】本発明の第2実施形態によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を示す断面図。
【図17】本発明の実施例1によるメンブレン型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図18】本発明の実施例1によるメンブレン型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図19】本発明の実施例2によるステンシル型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図20】本発明の実施例2によるステンシル型のレティクルの製造方法を示す断面図。
【図21】本発明の実施例3によるディスクリート型の磁気ディスク媒体の製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0083】
2 レティクル
10 ドーナツ型パターンの中心部
12 非開口部
14 開口部
22 基板
24 レジスト
24a レジストパターン
26 導電膜
28 Ni膜(電鋳膜)
30 スタンパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーナツ型パターンを有し、前記ドーナツ型パターンの中心部のパターンが開口部と非開口部とを備えたことを特徴とするレティクル。
【請求項2】
前記中心部のパターンは、扇状、3角形の網目状、4角形の網目状、正6角形の網目状のいずれか、またはそれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1記載のレティクル。
【請求項3】
前記中心部のパターンが、全体として点対称な図形であることを特徴とする請求項1または2記載のレティクル。
【請求項4】
前記中心部のパターン内にアライメントマークまたは識別マークが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3記載のレティクル。
【請求項5】
前記レティクルはメンブレン型であることを特徴とする1乃至4のいずれかに記載のレティクル。
【請求項6】
前記レティクルはステンシル型であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のレティクル。
【請求項7】
前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、前記ドーナツ型パターンの開口部面積率以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレティクル。
【請求項8】
前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、50%以上かつ98%以下であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のレティクル。
【請求項9】
前記レティクルは、電子線縮小投影露光に用いられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のレティクル。
【請求項10】
インプリント法を用いて磁気ディスク媒体の製造を行う磁気ディスク媒体の製造方法において、
前記インプリント法に用いるスタンパを作製するためのレジスト原盤を、請求項1乃至9記載のレティクルを用いて電子線投影露光を行うことにより形成することを特徴とする磁気ディスク媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法により製造されたことを特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項1】
ドーナツ型パターンを有し、前記ドーナツ型パターンの中心部のパターンが開口部と非開口部とを備えたことを特徴とするレティクル。
【請求項2】
前記中心部のパターンは、扇状、3角形の網目状、4角形の網目状、正6角形の網目状のいずれか、またはそれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1記載のレティクル。
【請求項3】
前記中心部のパターンが、全体として点対称な図形であることを特徴とする請求項1または2記載のレティクル。
【請求項4】
前記中心部のパターン内にアライメントマークまたは識別マークが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3記載のレティクル。
【請求項5】
前記レティクルはメンブレン型であることを特徴とする1乃至4のいずれかに記載のレティクル。
【請求項6】
前記レティクルはステンシル型であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のレティクル。
【請求項7】
前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、前記ドーナツ型パターンの開口部面積率以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレティクル。
【請求項8】
前記ドーナツ型パターンの中心部の開口部面積率は、50%以上かつ98%以下であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のレティクル。
【請求項9】
前記レティクルは、電子線縮小投影露光に用いられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のレティクル。
【請求項10】
インプリント法を用いて磁気ディスク媒体の製造を行う磁気ディスク媒体の製造方法において、
前記インプリント法に用いるスタンパを作製するためのレジスト原盤を、請求項1乃至9記載のレティクルを用いて電子線投影露光を行うことにより形成することを特徴とする磁気ディスク媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法により製造されたことを特徴とする磁気ディスク媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−276266(P2006−276266A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92759(P2005−92759)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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