説明

レトロフォーカス型の広角レンズ系及びこれを有する光学機器

【課題】レトロフォーカス型でフィルタ内挿式の広角レンズ系において、絞りより物体側のレンズで発生する負の歪曲収差を効果的に補正できるレトロフォーカス型の広角レンズ系及びこれを有する光学機器を得ること。
【解決手段】レトロフォーカス型の広角レンズ系において、全光学系を、最も焦点距離が短い状態で条件式(1)を満足する切り分け箇所において、負の屈折力の仮想前群と絞りを含む正の屈折力の仮想後群に切り分けて、この切り分け位置に平行平面板を配置したことを特徴とする広角レンズ系。
(1)1.2<|fF/f|<4.0
但し、
fF:負の屈折力の仮想前群の焦点距離、
f:全光学系の焦点距離。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトロフォーカス型の広角レンズ系及びこれを有する光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラ用の広角レンズ系として、物体側から順に、負の前群レンズと絞りを含む正の後群レンズとからなり、90度から100度程度の画角をカバーするレトロフォーカス型の広角レンズ系が提案されている(特許文献1−3)。
【0003】
レトロフォーカス型の広角レンズ系においては、その画角の広さから前群レンズのレンズ径が大きい。このため、レンズ系(前群レンズ)より物体側に通常サイズの光学フィルタを配置することは難しい。前群レンズ径および広い画角に対応させて光学フィルタを大きくするのは商品としても、コスト面からも現実的ではない。
【0004】
レンズ系(後群レンズ)より像側に光学フィルタを配置する方式も利用されているが、外部から回転操作する偏光フィルタは事実上使用できない。また、像側に光学フィルタを配置するために長いバックフォーカスを確保すると、レンズ系がより大きく重くなる。さらに、絞りよりも像側に光学フィルタが位置していることから、絞りより物体側のレンズ(主として前群レンズ)で発生する負の歪曲収差が増大する。
【0005】
一方、レンズ系の途中に光学フィルタを内挿する方式も提案されている(特許文献4)。しかし従来提案されているこの内挿方式は、光学フィルタに対する斜光線の入射角度を緩くして(光学フィルタに対してアフォーカルに近づけて)、光学フィルタの角度特性の影響を回避するものにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−225804号公報
【特許文献2】特開2006−300972号公報
【特許文献3】特開2006−201526号公報
【特許文献4】特開2004−226740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来のフィルタ内挿式のレトロフォーカス型広角レンズ系において、内挿フィルタを収差、特に歪曲収差の補正に用いるという着眼の広角レンズ系は知られていない。
【0008】
本発明は、レトロフォーカス型の広角レンズ系においては、特定の内挿位置に平行平面板(光学フィルタ)を配置すると、負の屈折力の仮想前群で発生する負の歪曲収差を効果的に補正できることを見出してなされたものである。すなわち、本発明は、レトロフォーカス型でフィルタ内挿式の広角レンズ系において、絞りより物体側のレンズで発生する負の歪曲収差を効果的に補正できるレトロフォーカス型の広角レンズ系及びこれを有する光学機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レトロフォーカス型の広角レンズ系において、全光学系を、最も焦点距離が短い状態で条件式(1)を満足する切り分け箇所において、負の屈折力の仮想前群と絞りを含む正の屈折力の仮想後群に切り分けて、この切り分け位置に平行平面板を配置したことを特徴としている。
(1)1.2<|fF/f|<4.0
但し、
fF:負の屈折力の仮想前群の焦点距離、
f:全光学系の焦点距離、
である。
【0010】
本発明の広角レンズ系は、広角単焦点レンズ系と広角ズームレンズ系のいずれにも適用可能である。本発明の「最も焦点距離が短い状態における全光学系の焦点距離」とは、広角単焦点レンズ系にあっては、無限遠物体合焦時におけるその単焦点距離を意味し、広角ズームレンズ系にあっては、無限遠物体合焦時における短焦点距離端(ワイド端)の焦点距離を意味する。
【0011】
レトロフォーカス型の広角レンズ系は一般的に、負の屈折力の前群レンズと絞りを含む正の屈折力の後群レンズとから構成されるが、本発明の「仮想前群」と「仮想後群」は、必ずしもこの一般的な意味での前群レンズと後群レンズとは一致しない(結果として一致することはあり得る)。すなわち、本発明の「仮想前群」と「仮想後群」の切り分けは、一般的なレトロフォーカスの前群レンズと後群レンズの切り分けとは別の概念である。
【0012】
広角ズームレンズ系の態様にあっては、平行平面板は、ズーミングに際して光軸上の位置が固定されている(変化しない)ことが好ましい。
【0013】
本発明の広角レンズ系はさらに、最も焦点距離が短い状態で条件式(2)を満足することが好ましい。
(2)0.1<d/f
但し、
d:平行平面板の厚み、
f:全光学系の焦点距離、
である。
【0014】
平行平面板は、光学フィルタ又はダミーガラスとすることができる。光学フィルタの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、ダミーガラスを使用するのが実際的である。光学フィルタは、色調をコントロールする色フィルタ、光量の調整を行うNDフィルタ、余分な反射光をカットする外部から回転可能な偏光フィルタなどの異なる光学特性を持つ2種類以上を交換可能にして自由に使用することができる。外部から回転操作が必要な偏光フィルタは、レンズ系の途中に配置できて好適である。各光学フィルタとダミーガラスとは、空気換算距離が同じになるように厚み及び硝材の屈折率を決定する。
【0015】
交換可能な2種類以上の平行平面板を鏡筒などに内蔵させれば、使用する平行平面板の切り換えがスムーズになる。例えばターレット機構またはスライド機構を有していると、異なる光学特性を持つ2種類以上の異なる平行平面板を容易に交換使用可能である。
【0016】
さらにこれらの平行平面板が外部から交換可能であると、用途に応じて様々な特性の平行平面板を使用することができる。
【0017】
本発明は、上述したいずれかのレトロフォーカス型の広角レンズ系を有する光学機器である。この光学機器は、一眼レフカメラのようなレンズ交換可能な機器でもよいし、レンズとフィルムないし撮像素子が一体となったカメラおよびそのレンズ鏡筒でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レトロフォーカス型でフィルタ内挿式の広角レンズ系において、絞りより物体側のレンズで発生する負の歪曲収差を効果的に補正できるレトロフォーカス型の広角レンズ系及びこれを有する光学機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による広角レンズ系(広角単焦点レンズ系)の数値実施例1の無限遠物体合焦時のレンズ構成図である。
【図2】図1の構成における縦収差図である。
【図3】図1の構成における横収差図である。
【図4】本発明による広角レンズ系(広角単焦点レンズ系)の数値実施例2の無限遠物体合焦時のレンズ構成図である。
【図5】図4の構成における縦収差図である。
【図6】図4の構成における横収差図である。
【図7】本発明による広角レンズ系(広角単焦点レンズ系)の数値実施例3の無限遠物体合焦時のレンズ構成図である。
【図8】図7の構成における縦収差図である。
【図9】図7の構成における横収差図である。
【図10】本発明による広角レンズ系(広角単焦点レンズ系)の数値実施例4の無限遠物体合焦時のレンズ構成図である。
【図11】図10の構成における縦収差図である。
【図12】図10の構成における横収差図である。
【図13】本発明による広角レンズ系(広角ズームレンズ系)の数値実施例5の長焦点距離端における無限遠物体合焦時のレンズ構成図である。
【図14】図13の構成における縦収差図である。
【図15】図13の構成における横収差図である。
【図16】本発明による広角レンズ系(広角ズームレンズ系)の数値実施例5の短焦点距離端における無限遠物体合焦時のレンズ構成図である。
【図17】図16の構成における縦収差図である。
【図18】図16の構成における横収差図である。
【図19】光学フィルタ(平行平面板)による負の歪曲収差の補正を示す第1の概念図である。
【図20】光学フィルタ(平行平面板)による負の歪曲収差の補正を示す第2の概念図である。
【図21】光学フィルタ(平行平面板)の厚みと像ずれ量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態のレトロフォーカス型の広角レンズ系は、広角単焦点レンズ系の態様(数値実施例1−4)にあっては、物体側から順に、負の屈折力の前群レンズGF、及び正の屈折力の後群レンズGRから構成されたレトロフォーカス系である。無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは、後群レンズGR全体あるいはその一部を移動させて行う。
【0021】
図1に示すように、数値実施例1において、前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1、物体側に凸の負メニスカスレンズF2、両凹負レンズF3、及び物体側から順に位置する両凸正レンズF4と像側に凸の負メニスカスレンズF5の接合レンズからなる。負メニスカスレンズF2はその両面が非球面である。後群レンズGRは、物体側から順に、物体側から順に位置する両凸正レンズR1と像側に凸の負メニスカスレンズR2の接合レンズ、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR3と両凹負レンズR4と両凸正レンズR5の接合レンズ、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR6と両凸正レンズR7の接合レンズからなる。両凸正レンズR7はその像側の面が非球面である。Iは像面である。
【0022】
図4に示すように、数値実施例2において、前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1'、物体側に凸の負メニスカスレンズF2'、両凹負レンズF3'、物体側から順に位置する両凸正レンズF4'と両凹負レンズF5'の接合レンズ、及び両凸正レンズF6'からなる。負メニスカスレンズF2'はその物体側の面が非球面である。両凸正レンズF6'の物体側の面には、合成樹脂材料による非球面層が接着形成されている。後群レンズGRは、物体側から順に、物体側から順に位置する両凸正レンズR1'と両凹負レンズR2'の接合レンズ、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR3'と両凹負レンズR4'と両凸正レンズR5'の接合レンズ、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR6'と両凸正レンズR7'の接合レンズからなる。両凸正レンズR7'はその像側の面が非球面である。Iは像面である。
【0023】
図7に示すように、数値実施例3において、前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF2’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF3’’、物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズF4’’と像側に凸の負メニスカスレンズF5’’の接合レンズ、及び像側に凸の正メニスカスレンズF6’’からなる。負メニスカスレンズF2’’の像側の面には、合成樹脂材料による非球面層が接着形成されている。正メニスカスレンズF6’’はその物体側の面が非球面である。後群レンズGRは、物体側から順に、物体側に凸の正メニスカスレンズR1’’、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR2’’と像側に凸の負メニスカスレンズR3’’の接合レンズ、両凸正レンズR4’’、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR5’’と両凸正レンズR6’’の接合レンズからなる。両凸正レンズR6’’はその像側の面が非球面である。Iは像面である。
【0024】
図10に示すように、数値実施例4において、前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1’’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF2’’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF3’’’、及び物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズF4’’’と物体側に凹の平凹負レンズF5’’’と像側に凸の平凸正レンズF6’’’の接合レンズからなる。負メニスカスレンズF2’’’と負メニスカスレンズF3’’’の像側の面には、合成樹脂材料による非球面層が接着形成されている。後群レンズGRは、物体側から順に、物体側から順に位置する両凸正レンズR1’’’と両凹負レンズR2’’’の接合レンズ、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR3’’’と両凹負レンズR4’’’と両凸正レンズR5’’’の接合レンズ、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR6’’’と両凸正レンズR7’’’の接合レンズからなる。両凸正レンズR7’’’はその像側の面が非球面である。Iは像面である。
【0025】
数値実施例1−4の広角単焦点レンズ系を一般的なレトロフォーカスという意味で負の前群レンズと正の後群レンズに切り分けようとすると、前群レンズGFと後群レンズGRの間のほかにも、例えば、レンズF1(F1'、F1’’、F1’’’)とレンズF2(F2'、F2’’、F2’’’)の間、レンズF2(F2'、F2’’、F2’’’)とレンズF3(F3'、F3’’、F3’’’)の間、レンズF3(F3'、F3’’、F3’’’)とレンズF4(F4'、F4’’、F4’’’)の間などで切り分けることも可能である。その中でも数値実施例1−4の広角単焦点レンズ系は、全光学系を、前群レンズGFと後群レンズGRとの間の条件式(1)を満足する切り分け箇所で「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」とに切り分けて、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)OPを配置している。つまり、数値実施例1−4では、「負の屈折力の仮想前群」は前群レンズGFと一致しており、「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」は後群レンズGRと一致している。なお、光学フィルタOPの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、前群レンズGFと後群レンズGRの間に、光学フィルタOPと同じ厚みのダミーガラスが配置される。
【0026】
図13、図16に示すように、本実施形態のレトロフォーカス型の広角レンズ系は、広角ズームレンズ系の態様(数値実施例5)にあっては、物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群G1、正の屈折力の第2レンズ群G2、正の屈折力の第3レンズ群G3、及び正の屈折力の第4レンズ群G4から構成される。短焦点距離端から長焦点距離端への変倍(ズーミング)に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2のレンズ群間隔が減少し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3のレンズ群間隔が増加し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4のレンズ群間隔が減少するように、第1レンズ群G1ないし第4レンズ群G4の全てのレンズ群が移動する。
【0027】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズ11、物体側に凸の負メニスカスレンズ12、物体側に凸の負メニスカスレンズ13、及び物体側に凸の正メニスカスレンズ14からなる。負メニスカスレンズ11及び負メニスカスレンズ13は、その像側の面が非球面である。第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸の正メニスカスレンズ21、及び物体側から順に位置する両凸正レンズ22と像側に凸の負メニスカスレンズ23の接合レンズからなる。第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズ31と両凹負レンズ32の接合レンズ、及び物体側に凸の正メニスカスレンズ33からなる。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に位置する絞りSは、第3レンズ群と一体に移動する。第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸正レンズ41、物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズ42と像側に凸の負メニスカスレンズ43の接合レンズ、及び像側に凸の正メニスカスレンズ44からなる。両凸正レンズ41はその像側の面が非球面である。Iは像面である。
【0028】
数値実施例5の広角ズームレンズ系を一般的なレトロフォーカスという意味で負の前群レンズと正の後群レンズに切り分けようとすると、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間のほかにも、例えば、レンズ11とレンズ12の間、レンズ12とレンズ13の間、レンズ13とレンズ14の間で切り分けることも可能である。その中でも数値実施例5の広角ズームレンズ系は、全光学系を、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間の条件式(1)を満足する切り分け箇所で「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」とに切り分けて、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)OPを配置している。つまり、数値実施例5では、「負の屈折力の仮想前群」は第1レンズ群G1と一致しており、「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」は第2レンズ群G2ないし第4レンズ群G4と一致している。なお、光学フィルタOPの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に、光学フィルタOPと同じ厚みのダミーガラスが配置される。
【0029】
数値実施例1ないし5のいずれにおいても、広角レンズ系の全光学系は、条件式(1)を満足する切り分け箇所において、「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」に切り分けられている。
【0030】
条件式(1)は、「負の屈折力の仮想前群」の焦点距離と全光学系の焦点距離との比の絶対値を規定しており、絞りより物体側のレンズで発生する負の歪曲収差を効果的に補正するための条件式である。すなわち、広角レンズの全光学系のうちから条件式(1)を満足するような切り分け位置を探し出し、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)を配置すれば、この光学フィルタ(平行平面板)が入射する軸外光線に対して正の歪曲を付加するので、絞りより物体側のレンズで発生する負の歪曲収差を打ち消してこれを効果的に補正することができる。
【0031】
より具体的には、図19、図20に示すように、光学フィルタ(平行平面板)に軸外光線が入射すると、入射の前後で軸外光線の入射角度θは変わらないが、軸外光線の光軸直交方向の位置がΔだけずれる。このため軸外光線に正の歪曲が付加され、絞りSより物体側のレンズで発生する負の歪曲収差が打ち消される。軸外光線の位置ずれ量Δは、次の数式(1)で規定される。数式(1)からわかるように、光学フィルタ(平行平面板)のd線に対する屈折率が高いほど軸外光線の位置ずれ量Δが大きくなり、歪曲収差の補正効果が高くなる。
【数1】

【0032】
条件式(1)は、歪曲収差を効果的に補正するための軸外光線の入射角度θの最適範囲を規定している。
条件式(1)の上限を超えると、「負の屈折力の仮想前群」による発散のパワーが弱いため、長いバックフォーカスを確保しようとすると「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」の間隔を大きくする必要がある。この場合、「負の屈折力の仮想前群」のレンズ系が大きくなりすぎて負の歪曲収差が大きく発生してしまう。条件式(1)の下限を超えると、「負の屈折力の仮想前群」による発散のパワーが強いため、光学フィルタ(平行平面板)に対する軸外光線の入射角度θが小さくなって、歪曲収差の補正効果(正の歪曲収差の付加)が小さくなってしまう。
【0033】
広角ズームレンズ系では、短焦点距離端(ワイド端)で負の歪曲収差が大きく発生し、長焦点距離端(テレ端)へのズームに際して負の歪曲収差が少なくなり、やがて正の歪曲収差が発生する。従って、広角ズームレンズ系の態様(数値実施例5)にあっては、短焦点距離端(ワイド端)でのみ歪曲収差の補正効果(正の歪曲収差の付加)を発現させるため、短焦点距離端(ワイド端)では条件式(1)を満たし長焦点距離端(テレ端)では条件式(1)を満たさないような位置に光学フィルタ(平行平面板)を配置する。
【0034】
図21に示すように、光学フィルタ(平行平面板)は、厚みdが大きいほど像ずれ量Δが大きくなり、歪曲収差の補正効果(正の歪曲収差の付加)が大きくなる。そこで、光学フィルタ(平行平面板)の厚みdを条件式(2)を満たすように設定することで、ある程度の像ずれ量Δを確保して歪曲収差の補正効果(正の歪曲収差の付加)を発現させることができる。条件式(2)の下限を超えると、像ずれ量Δが小さすぎて、歪曲収差の補正効果(正の歪曲収差の付加)が不十分となる。
【実施例】
【0035】
次に具体的な数値実施例を示す。縦収差図及び横収差図並びに表中において、d線、g線、C線はそれぞれの波長に対する収差、Sはサジタル、Mはメリディオナル、FNO.はFナンバー、fは全系の焦点距離、Wは半画角(゜)、Yは像高、fB はバックフォーカス、Lはレンズ全長、rは曲率半径、dはレンズ厚またはレンズ間隔、N(d)はd線の屈折率、νdはd線に対するアッベ数、「E-a」は「×10-a」を示す。Fナンバー、焦点距離、半画角、像高、バックフォーカス、レンズ全長及び変倍に伴って間隔が変化するレンズ間隔dは、短焦点距離端−中間焦点距離−長焦点距離端の順に示している。
回転対称非球面は次式で定義される。
x=cy2/[1+[1-(1+K)c2y2]1/2]+A4y4+A6y6+A8y8 +A10y10+A12y12・・・
(但し、cは曲率(1/r)、yは光軸からの高さ、Kは円錐係数、A4、A6、A8、・・・・・は各次数の非球面係数)
【0036】
[数値実施例1]
図1〜図3と表1〜表3は、本発明による広角レンズ系を広角単焦点レンズ系に適用した数値実施例1を示している。図1は無限遠物体合焦時のレンズ構成図、図2はその縦収差図、図3はその横収差図である。表1はその面データ、表2はその非球面データ、表3はその各種データである。
【0037】
本数値実施例1の広角単焦点レンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の前群レンズGF(面番号1から9)、及び正の屈折力の後群レンズGR(面番号12から22)から構成されたレトロフォーカス系である。無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは、後群レンズGRのうち、絞りSより像側のレンズR3〜R7を物体側に移動させて行う。
【0038】
前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1、物体側に凸の負メニスカスレンズF2、両凹負レンズF3、及び物体側から順に位置する両凸正レンズF4と像側に凸の負メニスカスレンズF5の接合レンズからなる。負メニスカスレンズF2はその両面が非球面である。
【0039】
後群レンズGRは、物体側から順に、物体側から順に位置する両凸正レンズR1と像側に凸の負メニスカスレンズR2の接合レンズ、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR3と両凹負レンズR4と両凸正レンズR5の接合レンズ、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR6と両凸正レンズR7の接合レンズからなる。両凸正レンズR7はその像側の面が非球面である。
【0040】
本数値実施例1の広角単焦点レンズ系は、全光学系が、前群レンズGFと後群レンズGRとの間の条件式(1)を満足する切り分け箇所で「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」とに切り分けられており、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)OP(面番号10から11)が配置されている。つまり、本数値実施例1では、「負の屈折力の仮想前群」は前群レンズGFと一致しており、「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」は後群レンズGRと一致している。なお、光学フィルタOPの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、前群レンズGFと後群レンズGRの間に、光学フィルタOPと同じ厚みのダミーガラスが配置される。
【0041】
(表1)
面データ
面番号 r d N(d) νd
1 78.423 3.00 1.83481 42.7
2 30.589 11.00
3* 56.395 7.00 1.73077 40.5
4* 27.480 16.17
5 -112.052 2.50 1.61800 63.4
6 44.248 5.16
7 60.515 11.92 1.74400 44.9
8 -39.126 2.50 1.83481 42.7
9 -109.767 5.00
10 ∞ 3.00 1.51680 64.2
11 ∞ 19.37
12 55.742 6.00 1.64769 33.8
13 -25.052 1.20 1.77250 49.6
14 -173.995 3.20
15絞 ∞ 9.38
16 29.809 7.40 1.49700 81.6
17 -121.824 1.20 1.80610 33.3
18 22.145 9.00 1.48749 70.4
19 -35.199 1.30
20 -651.902 1.20 1.83481 42.7
21 30.413 7.40 1.58913 61.2
22* -100.773 -
*は回転対称非球面である。
(表2)
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である)
面番号 K A4 A6 A8
3 0.000 0.1088E-04 -0.4936E-08 0.1220E-11
4 0.000 0.7529E-05 -0.2475E-08 -0.3269E-10
22 0.000 0.5796E-05 0.2608E-09
(表3)
各種データ
FNO. 4.1
f 25.69
W 54.7
Y 34.85
fB 62.01
L 195.91
【0042】
[数値実施例2]
図4〜図6と表4〜表6は、本発明による広角レンズ系を広角単焦点レンズ系に適用した数値実施例2を示している。図4は無限遠物体合焦時のレンズ構成図、図5はその縦収差図、図6はその横収差図である。表4はその面データ、表5はその非球面データ、表6はその各種データである。
【0043】
本数値実施例2の広角単焦点レンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の前群レンズGF(面番号1から12)、及び正の屈折力の後群レンズGR(面番号15から25)から構成されたレトロフォーカス系である。無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは、後群レンズGRのうち、絞りSより像側のレンズR3'〜R7'を物体側に移動させて行う。
【0044】
前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1'、物体側に凸の負メニスカスレンズF2'、両凹負レンズF3'、物体側から順に位置する両凸正レンズF4'と両凹負レンズF5'の接合レンズ、及び両凸正レンズF6'からなる。負メニスカスレンズF2'はその物体側の面が非球面である。両凸正レンズF6'の物体側の面には、合成樹脂材料による非球面層が接着形成されている。
【0045】
後群レンズGRは、物体側から順に、物体側から順に位置する両凸正レンズR1'と両凹負レンズR2'の接合レンズ、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR3'と両凹負レンズR4'と両凸正レンズR5'の接合レンズ、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR6'と両凸正レンズR7'の接合レンズからなる。両凸正レンズR7'はその像側の面が非球面である。
【0046】
本数値実施例2の広角単焦点レンズ系は、全光学系が、前群レンズGFと後群レンズGRとの間の条件式(1)を満足する切り分け箇所で「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」とに切り分けられており、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)OP(面番号13から14)が配置されている。つまり、本数値実施例2では、「負の屈折力の仮想前群」は前群レンズGFと一致しており、「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」は後群レンズGRと一致している。なお、光学フィルタOPの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、前群レンズGFと後群レンズGRの間に、光学フィルタOPと同じ厚みのダミーガラスが配置される。
【0047】
(表4)
面データ
面番号 r d N(d) νd
1 58.874 3.00 1.83481 42.7
2 26.785 14.69
3* 48.991 4.00 1.80610 40.7
4 26.493 14.47
5 -71.737 2.50 1.61800 63.4
6 71.737 2.34
7 184.266 9.33 1.67270 32.2
8 -30.158 2.50 1.84666 23.8
9 149.776 1.66
10* 61.757 0.20 1.52972 42.7
11 75.302 10.16 1.58267 46.6
12 -34.896 13.05
13 ∞ 3.00 1.51633 64.1
14 ∞ 5.00
15 47.152 3.89 1.84666 23.8
16 -94.756 1.50 1.51742 52.2
17 38.948 5.00
18絞 ∞ 12.79
19 28.083 4.40 1.45860 90.2
20 -64.295 1.50 1.83400 37.3
21 25.283 8.12 1.48749 70.4
22 -40.321 0.95
23 -86.642 1.50 1.90366 31.3
24 39.900 7.73 1.58913 61.2
25* -32.524 -
*は回転対称非球面である。
(表5)
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である)
面番号 K A4 A6 A8
3 0.000 0.8062E-05 -0.2103E-08 0.7168E-11
10 0.000 -0.9285E-05 0.9335E-08 -0.4413E-11
25 0.000 0.4918E-05 0.2318E-08
(表6)
各種データ
FNO. 4.1
f 25.71
W 54.7
Y 34.85
fB 60.49
L 193.77
【0048】
[数値実施例3]
図7〜図9と表7〜表9は、本発明による広角レンズ系を広角単焦点レンズ系に適用した数値実施例3を示している。図7は無限遠物体合焦時のレンズ構成図、図8はその縦収差図、図9はその横収差図である。表7はその面データ、表8はその非球面データ、表9はその各種データである。
【0049】
本数値実施例3の広角単焦点レンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の前群レンズGF(面番号1から12)、及び正の屈折力の後群レンズGR(面番号15から25)から構成されたレトロフォーカス系である。無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは、後群レンズGRのうち、絞りSより像側のレンズR2’’〜R6’’を物体側に移動させて行う。
【0050】
前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF2’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF3’’、物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズF4’’と像側に凸の負メニスカスレンズF5’’の接合レンズ、及び像側に凸の正メニスカスレンズF6’’からなる。負メニスカスレンズF2’’の像側の面には、合成樹脂材料による非球面層が接着形成されている。正メニスカスレンズF6’’はその物体側の面が非球面である。
【0051】
後群レンズGRは、物体側から順に、物体側に凸の正メニスカスレンズR1’’、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR2’’と像側に凸の負メニスカスレンズR3’’の接合レンズ、両凸正レンズR4’’、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR5’’と両凸正レンズR6’’の接合レンズからなる。両凸正レンズR6’’はその像側の面が非球面である。
【0052】
本数値実施例3の広角単焦点レンズ系は、全光学系が、前群レンズGFと後群レンズGRとの間の条件式(1)を満足する切り分け箇所で「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」とに切り分けられており、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)OP(面番号13から14)が配置されている。つまり、本数値実施例3では、「負の屈折力の仮想前群」は前群レンズGFと一致しており、「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」は後群レンズGRと一致している。なお、光学フィルタOPの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、前群レンズGFと後群レンズGRの間に、光学フィルタOPと同じ厚みのダミーガラスが配置される。
【0053】
(表7)
面データ
面番号 r d N(d) νd
1 48.954 2.50 1.77250 49.6
2 21.336 6.76
3 35.596 2.50 1.80420 46.5
4 27.789 0.20 1.52972 42.7
5* 25.145 5.34
6 85.493 2.00 1.77250 49.6
7 27.446 5.87
8 -252.845 4.89 1.60342 38.0
9 -54.581 1.50 1.58913 61.2
10 -200.390 3.00
11* -78.777 5.00 1.58913 61.2
12 -35.500 8.00
13 ∞ 4.00 1.74400 44.9
14 ∞ 10.00
15 38.468 3.00 1.62004 36.3
16 360.226 5.00
17絞 ∞ 12.87
18 134.338 10.00 1.45860 90.2
19 -22.362 1.50 1.80420 46.5
20 -324.793 1.35
21 37.789 6.25 1.45860 90.2
22 -37.117 1.11
23 -80.507 1.50 1.80420 46.5
24 21.927 9.19 1.58913 61.2
25* -37.401 -
*は回転対称非球面である。
(表8)
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である)
面番号 K A4 A6 A8
5 0.000 -0.8564E-05 -0.6393E-08 0.1878E-10
11 0.000 0.4258E-05 0.1265E-07 0.2096E-10
25 0.000 0.6469E-05 0.3383E-08
(表9)
各種データ
FNO. 4.1
f 26.75
W 47.1
Y 27.60
fB 62.11
L 175.44
【0054】
[数値実施例4]
図10〜図12と表10〜表12は、本発明による広角レンズ系を広角単焦点レンズ系に適用した数値実施例4を示している。図10は無限遠物体合焦時のレンズ構成図、図11はその縦収差図、図12はその横収差図である。表10はその面データ、表11はその非球面データ、表12はその各種データである。
【0055】
本数値実施例4の広角単焦点レンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の前群レンズGF(面番号1から12)、及び正の屈折力の後群レンズGR(面番号15から25)から構成されたレトロフォーカス系である。無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは、後群レンズGRのうち、絞りSより像側のレンズR3’’’〜R7’’’を物体側に移動させて行う。
【0056】
前群レンズGFは、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズF1’’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF2’’’、物体側に凸の負メニスカスレンズF3’’’、及び物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズF4’’’と物体側に凹の平凹負レンズF5’’’と像側に凸の平凸正レンズF6’’’の接合レンズからなる。負メニスカスレンズF2’’’と負メニスカスレンズF3’’’の像側の面には、合成樹脂材料による非球面層が接着形成されている。
【0057】
後群レンズGRは、物体側から順に、物体側から順に位置する両凸正レンズR1’’’と両凹負レンズR2’’’の接合レンズ、絞りS、物体側から順に位置する両凸正レンズR3’’’と両凹負レンズR4’’’と両凸正レンズR5’’’の接合レンズ、及び物体側から順に位置する両凹負レンズR6’’’と両凸正レンズR7’’’の接合レンズからなる。両凸正レンズR7’’’はその像側の面が非球面である。
【0058】
本数値実施例4の広角単焦点レンズ系は、全光学系が、前群レンズGFと後群レンズGRとの間の条件式(1)を満足する切り分け箇所で「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」とに切り分けられており、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)OP(面番号13から14)が配置されている。つまり、本数値実施例4では、「負の屈折力の仮想前群」は前群レンズGFと一致しており、「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」は後群レンズGRと一致している。なお、光学フィルタOPの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、前群レンズGFと後群レンズGRの間に、光学フィルタOPと同じ厚みのダミーガラスが配置される。
【0059】
(表10)
面データ
面番号 r d N(d) νd
1 62.443 3.00 1.83481 42.7
2 28.278 15.06
3 55.215 3.30 1.77250 49.6
4 37.141 0.20 1.52972 42.7
5* 26.856 6.88
6 37.116 2.80 1.58913 61.2
7 24.641 0.20 1.52972 42.7
8* 25.017 13.10
9 -86.709 14.18 1.80459 46.5
10 -24.670 2.50 1.83400 37.3
11 ∞ 7.05 1.73596 43.0
12 -41.739 5.60
13 ∞ 3.00 1.90366 31.3
14 ∞ 19.00
15 46.534 5.16 1.69181 30.5
16 -26.627 3.50 1.69306 48.4
17 93.069 2.00
18絞 ∞ 10.27
19 26.360 6.44 1.45860 90.2
20 -67.028 1.50 1.80610 33.3
21 21.733 7.27 1.48749 70.4
22 -31.808 0.30
23 -841.652 1.50 1.83481 42.7
24 28.353 5.78 1.58913 61.2
25* -94.711 -
*は回転対称非球面である。
(表11)
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である)
面番号 K A4 A6 A8
5 0.000 -0.2548E-04 0.2528E-07 -0.1908E-10
8 0.000 0.1846E-04 -0.3342E-07 -0.4296E-10
25 0.000 0.6347E-05 -0.3052E-09
(表12)
各種データ
FNO. 4.1
f 25.67
W 54.7
Y 34.85
fB 60.45
L 200.04
【0060】
[数値実施例5]
図13〜図18と表13〜表16は、本発明による広角レンズ系を広角ズームレンズ系に適用した数値実施例5を示している。図13は長焦点距離端における無限遠物体合焦時のレンズ構成図、図14はその縦収差図、図15はその横収差図であり、図16は短焦点距離端における無限遠物体合焦時のレンズ構成図、図17はその縦収差図、図18はその横収差図である。表13はその面データ、表14はその非球面データ、表15はその各種データ、表16はそのレンズ群データである。
【0061】
本数値実施例5の広角ズームレンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群G1(面番号1から8)、正の屈折力の第2レンズ群G2(面番号11から15)、正の屈折力の第3レンズ群G3(面番号17から21)、及び正の屈折力の第4レンズ群G4(面番号22から28)から構成される。
【0062】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸の負メニスカスレンズ11、物体側に凸の負メニスカスレンズ12、物体側に凸の負メニスカスレンズ13、及び物体側に凸の正メニスカスレンズ14からなる。負メニスカスレンズ11及び負メニスカスレンズ13は、その像側の面が非球面である。
【0063】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸の正メニスカスレンズ21、及び物体側から順に位置する両凸正レンズ22と像側に凸の負メニスカスレンズ23の接合レンズからなる。
【0064】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズ31と両凹負レンズ32の接合レンズ、及び物体側に凸の正メニスカスレンズ33からなる。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に位置する絞りS(面番号16)は、第3レンズ群と一体に移動する。
【0065】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸正レンズ41、物体側から順に位置する像側に凸の正メニスカスレンズ42と像側に凸の負メニスカスレンズ43の接合レンズ、及び像側に凸の正メニスカスレンズ44からなる。両凸正レンズ41はその像側の面が非球面である。
【0066】
本数値実施例5の広角ズームレンズ系は、全光学系が、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間の条件式(1)を満足する切り分け箇所で「負の屈折力の仮想前群」と「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」とに切り分けられており、この切り分け位置に光学フィルタ(平行平面板)OP(面番号9から10)が配置されている。つまり、本数値実施例5では、「負の屈折力の仮想前群」は第1レンズ群G1と一致しており、「絞りを含む正の屈折力の仮想後群」は第2レンズ群G2ないし第4レンズ群G4と一致している。なお、光学フィルタOPの非使用時には、ピント位置の変化を防ぐために、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に、光学フィルタOPと同じ厚みのダミーガラスが配置される。
【0067】
(表13)
面データ
面番号 r d N(d) νd
1 54.577 1.50 1.80500 34.9
2* 25.604 2.00
3 36.010 1.50 1.80500 46.7
4 18.205 11.41
5 402.624 1.80 1.64610 57.2
6* 25.534 3.92
7 39.824 3.00 1.84697 23.9
8 123.764 d8
9 ∞ 2.00 1.51633 64.1
10 ∞ d10
11 44.796 2.72 1.55374 43.8
12 331.611 0.10
13 27.991 3.64 1.48749 70.2
14 -19.756 1.00 1.80518 25.4
15 -33.364 d15
16絞 ∞ 1.50
17 -33.026 2.40 1.77194 26.4
18 -10.635 1.00 1.77250 48.5
19 26.496 0.00
20 23.806 1.90 1.62489 35.5
21 167.952 d21
22 161.568 4.22 1.56907 71.3
23* -15.157 0.10
24 -21.560 4.48 1.48749 70.2
25 -11.516 1.00 1.80518 25.4
26 -37.857 0.10
27 -635.386 3.14 1.57552 43.0
28 -30.202 -
*は回転対称非球面である。
(表14)
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である)
面番号 K A4 A6 A8 A10
2 0.000 -0.2179E-04 0.2040E-07 -0.2875E-10 -0.3088E-14
6 0.000 0.1127E-04 -0.1572E-06 0.5429E-09 -0.1220E-11
23 0.000 0.1423E-04 0.5497E-07 -0.3793E-09
(表15)
各種データ
ズーム比(変倍比) 1.94
短焦点距離端 中間焦点距離 長焦点距離端
FNO. 3.6 3.9 4.6
f 12.33 16.04 23.91
W 50.6 42.1 30.5
Y 14.24 14.24 14.24
fB 37.91 42.16 50.34
L 135.49 128.72 127.15
d8 12.24 5.46 3.88
d10 21.01 15.24 4.00
d15 2.20 4.04 8.90
d21 7.70 7.39 5.60
(表16)
レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -20.62
2 9 ∞
3 11 28.66
4 17 -32.82
5 22 34.35
【0068】
各数値実施例の各条件式に対する値を表17に示す。
(表17)
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
条件式(1) 1.43 3.35 1.30 2.85 1.67
条件式(2) 0.117 0.117 0.150 0.117 0.162
【0069】
表17から明らかなように、数値実施例1〜数値実施例5は、条件式(1)及び(2)を満足しており、また諸収差図から明らかなように諸収差は比較的よく補正されている。
【符号の説明】
【0070】
GF 前群レンズ
GR 後群レンズ
F1 F1' F1'’ F1'’’ 負レンズ
F2 F2' F2'’ F2'’’ 負レンズ
F3 F3' F3'’ F3'’’ 負レンズ
F4 F4' F4'’ F4'’’ 正レンズ
F5 F5' F5'’ F5'’’ 負レンズ
F6' F6'’ F6'’’ 正レンズ
R1 R1' R1'’ R1'’’ 正レンズ
R2 R2' R2'’’ 負レンズ
R2'’ 正レンズ
R3 R3' R3'’’ 正レンズ
R3'’ 負レンズ
R4 R4' R4'’’ 負レンズ
R4'’ 正レンズ
R5 R5' R5'’’ 正レンズ
R5'’ 負レンズ
R6 R6' R6'’’ 負レンズ
R6'’ 正レンズ
R7 R7' R7'’’ 正レンズ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
11 負レンズ
12 負レンズ
13 負レンズ
14 正レンズ
21 正レンズ
22 正レンズ
23 負レンズ
31 正レンズ
32 負レンズ
33 正レンズ
41 正レンズ
42 負レンズ
43 正レンズ
OP 光学フィルタ(平行平面板)
S 絞り
I 像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトロフォーカス型の広角レンズ系において、
全光学系を、最も焦点距離が短い状態で条件式(1)を満足する切り分け箇所において、負の屈折力の仮想前群と絞りを含む正の屈折力の仮想後群に切り分けて、この切り分け位置に平行平面板を配置したことを特徴とする広角レンズ系。
(1)1.2<|fF/f|<4.0
但し、
fF:負の屈折力の仮想前群の焦点距離、
f:全光学系の焦点距離。
【請求項2】
請求項1記載の広角レンズ系は、広角単焦点レンズ系である広角レンズ系。
【請求項3】
請求項1記載の広角レンズ系は、広角ズームレンズ系である広角レンズ系。
【請求項4】
請求項3記載の広角レンズ系において、上記平行平面板は、ズーミングに際して光軸上の位置が固定されている広角レンズ系。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の広角レンズ系において、最も焦点距離が短い状態で条件式(2)を満足する広角レンズ系。
(2)0.1<d/f
但し、
d:平行平面板の厚み、
f:全光学系の焦点距離。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の広角レンズ系において、上記平行平面板は、光学フィルタ又はダミーガラスである広角レンズ系。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の広角レンズ系において、上記平行平面板は、外部から交換可能である広角レンズ系。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の広角レンズ系において、上記光学フィルタは、外部から回転可能である広角レンズ系。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の広角レンズ系を有する光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−63756(P2012−63756A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173105(P2011−173105)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】