説明

レボドパプロドラッグメシラート、その組成物、およびその使用法

(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよびその結晶形態、それを作製する方法、その医薬組成物、ならびにそれらを使用してパーキンソン病等の疾患または障害を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月5日に出願された米国仮出願第60/741,876号の利益を主張するものであり、当該出願は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本願において開示するのは、レボドパプロドラッグのメシラート塩およびその結晶形態、ならびに、それを含有する、パーキンソン病等の疾患または障害を治療するために有用な医薬組成物である。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病は、1000人に1人に影響を及ぼしている身体に障害を引き起こす進行性の病気であり、概して50歳台以上の人々において発生する。パーキンソン病を患っている患者は、黒質の変性によって引き起こされる黒質線条体路崩壊の結果として、脳内の神経伝達物質ドーパミンが欠乏している。ドーパミンの直接前駆体であるレボドパ(L-ドパまたはL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)は、この疾患の治療に最もよく処方される薬物である。
【0004】
経口投与後、レボドパは上部小腸内に存在するアミノ酸輸送体によって迅速に吸収される。この輸送体システムの狭い分布により、レボドパ吸収に利用できる窓は限定され、吸収の程度は、薬物が上部胃腸管を通過する速度に依存し得る。
【0005】
レボドパの腸内代謝は、薬物の初回通過損失の最大原因である。レボドパの投薬量の約35%が、患者への経口投与後、無傷のレボドパとして全身循環に達する(Sasahara、J.Pharm.Sci 1990年、69、261)。吸収されると、レボドパは、周辺組織(例えば、小腸および肝臓)中のL-芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(Amino Acid DeCarboxylase;AADC)酵素によって迅速にドーパミンに代謝される。このため、レボドパは通常、カルビドパまたはベンセラジド等のデカルボキシラーゼ酵素阻害剤と同時投与される。カルビドパと共に投与した場合、無傷のレボドパの血漿中濃度が増大するため、より多くのレボドパを中枢神経系に輸送し、そこでドーパミンに変換させるために利用することが可能になる。カルビドパおよびベンセラジドは、血液脳関門を横断する程度があまり高くなく、したがって、脳内におけるレボドパのドーパミンへの必要な変換を阻害しない。
【0006】
レボドパの薬物動態を改良するためにレボドパのプロドラッグを使用することが提案されている。これらのプロドラッグの多くは、レボドパの単エステルである(米国特許第5,017,607号、第4,826,875号、第4,873,263号、第4,771,073号、第4,663,349号、第4,311,706号、日本特許第58024547号、Juncosら、Neurology、1987年、37、1242、およびCooperら、J.Pharm.Pharmacol.1987年、39、627−635を参照)。レボドパメチルエステル(Levomet(登録商標)、CHF1301)の経口製剤について記載されている(Chiesi Pharmaceuticals社)。レボドパのエチルエステル(TV-1203)は、カルビドパと同時投与した場合の、パーキンソン病の潜在的治療法として臨床試験が行われている(米国特許第5,607,969号、当該特許は参照することによりその全体が本願に組み込まれる)。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒロドキシプロピルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーの混合物中における、レボドパエチルエステルの持続放出セルロース製剤についても記載されている(米国特許第5,840,756号)。しかしながら、カルビドパで前治療した成人健常者にこの製剤を経口投与すると、わずか2時間の終末半減期の、Sinemet(登録商標)CRのものに相当する血漿中レボドパを産出した。
【0007】
レボドパのピバロイルエステル(NB-355)についての記載がされている(ヨーロッパ特許第0309827号)。NB-355の経口投与後、レボドパの血漿中濃度または排出における迅速な増大は観測されず、レボドパの血漿中濃度は低かったが、レボドパを循環させる持続時間は延長された。薬物の直腸吸収を強化するためにレボドパのエステルプロドラッグを使用することの可能性についても記載されている(米国特許第4,663,349号、第4,771,073号、および第4,873,263号)。とりわけ、レボドパの単一アルキルエステルの吸収は、経口服用後よりも直腸吸収後のほうが大きいことが分かった(Fixら、Pharm.Res.1989年、6、501−5、およびFixら、Pharm.Res.1990年、4、384−7)。この効果は、小腸と比較して、大腸におけるエステラーゼ量の減少に起因する。したがって、レボドパのプロドラッグを、持続放出製剤で大腸へ選択的送達することにより、高い経口バイオアベイラビリティおよび当該薬物への全身曝露の延長を提供することが予測される場合がある。
【0008】
レボドパのプロドラッグを含有する一連のグリコール酸エステルについて記載されている(Wermuth、米国特許第4,134,991号)。細胞および組織へのレボドパの侵入を容易にするための、レボドパの脂質複合体についても記載されている(Yatvin、米国特許第5,827,819号)。
【0009】
したがって、結腸を含む胃腸管全体において効率的に吸収され、レボドパの初回通過代謝を削減することができるレボドパプロドラッグの開発は、非常に望ましい。
【0010】
ヒトの胃腸管は、小腸および大腸を含む。ヒトの小腸は、胃と大腸との間にある、長さ約20フィートの回旋状の管である。小腸は、十二指腸、空腸、および回腸に細分される。大腸は、長さ約5フィートで、回腸から肛門まで続いている。大腸は、盲腸、結腸、および直腸に分けられる。結腸は、上行、横行、下行、およびS状結腸曲を含む4つの部分に分けられる。概して、経口摂取された化合物は、胃の中で約1〜6時間、小腸の中で約2〜7時間、結腸の中で約8〜18時間、滞留する。したがって、化合物の持続放出のための最長時間は、当該化合物が結腸を通過している際に生じる。
【0011】
いくつかの能動輸送タンパク質は、胃腸管全体において発現することが知られている。能動輸送体は、基質を認識し、担体媒介輸送または受容体媒介輸送による、細胞への基質の侵入またはそこからの退出に影響を及ぼす、膜結合タンパク質を指す。能動輸送は、例えば、ATP加水分解によって、または変調溶質チャネルを通る特定の輸送タンパク質との相互作用によって媒介された促進拡散により発生するイオン勾配によって駆動されるプロセス等のエネルギー媒介プロセスに直接間接を問わず依存する、細胞膜を越える分子の動きを含む。溶質媒介輸送体の例としては、小腸においてだけでなくヒト結腸の内側を覆う上皮細胞において発現する、OCTN1およびOCTN2等の有機カチオン輸送体を含む。
【0012】
最近では、小腸および大腸の両方で吸収されるように設計されたレボドパプロドラッグが、Xiangら、米国出願公開第2005/0282891号および第2006/0020028号に記載されており、これらはそれぞれ参照することによりその全体が本願に組み込まれる。これらのレボドパプロドラッグは、当量モルベースで経口投与した場合のレボドパの経口バイオアベイラビリティより少なくとも2倍優れたレボドパの経口バイオアベイラビリティを実現することができる。より具体的には、Xiangら、米国出願公開第2005/0282891号が、非晶質または結晶形態の、化合物(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート塩酸塩(Xiangらの実施例8を参照)を開示している。Xiangらが記載しているプロドラッグは、患者への経口投与時にレボドパへの持続的な全身曝露を提供するため、浸透性送達デバイスを含む持続放出製剤に、有効に組み込まれ得る。
【0013】
概して、薬物の結晶形態は、1つにはそれらの優れた安定性により、薬物の非晶質形態よりも好ましい。例えば、多くの場合、非晶質薬物は保管時に結晶性薬物形態に変わる。薬物の非晶質形態と結晶形態は一般に異なる物理的特性、化学的特性、効能、および/またはバイオアベイラビリティを有するため、そのような相互変換は製剤使用における安全上の理由で望ましくない。あらゆる結晶性薬物の主要な特徴は、そのような材料の多形挙動である。多形体は、結晶格子が分子の異なる配列を含有することにより異なる物理的特性を有する、同じ分子の結晶である。多形体が呈する、異なる物理的特性は、保管、安定性、圧縮性、密度(製剤および製品製造において重要)、および溶解速度(バイオアベイラビリティを測定する上で重要)等、重要な製剤パラメータに影響を及ぼし得る。安定性の差異は、化学反応性における変化(例えば、ある多形体を含む剤形は、異なる多形体を含む剤形よりもより迅速に変色し得るような、示差加水分解または酸化)、機械的変化(例えば、錠剤は、動力学的に好ましい結晶形態が熱力学的により安定な結晶形態に変わるため、保管時に砕けることができる)、または両方(例えば、1つの多形体の錠剤は、高湿度において崩壊をより起こしやすい場合がある)によって生じ得る。多形体間の溶解度の差異は、極端な場合、効能を欠く、および/または有毒である結晶形態への遷移をもたらす場合がある。また、結晶形態の物理的特性も、製剤処理において重要となり得る。例えば、特定の結晶形態は、より簡単に溶媒和物を形成する場合もあるし、ろ過および洗浄して不純物をなくすことがその他の結晶形態より困難である場合もある(すなわち、粒子の形およびサイズ分布が、1つの結晶形態とその他の形態との間で異なる場合がある)。
【0014】
米国連邦食品医薬品局等の機関は、薬物の最も熱力学的に安定な多形相が使用されていない場合、ならびに/または薬物の異なる多形相が薬物製品の品質、安全性、および/もしくは有効性に影響を及ぼし得る場合、薬物製品の多形含有量を監視および制御することを要求する場合がある。そこで、医学的および商業的理由により、動力学的に好ましい多形体を実質的に含まない熱力学的に安定な多形体として固体薬物を合成および販売することが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、製剤処理および医薬組成物において有利に使用されることができ、また、特にレボドパプロドラッグが経口投与される場合、治療有効血漿中濃度のレボドパを提供するために、生理的条件下で十分に不安定である物理化学的性質を呈する、レボドパプロドラッグおよびその結晶形態の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、化合物(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを提供する。
【0017】
第2の態様において、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを提供する。
【0018】
第3の態様において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートと、2-フェニルカルボニルオキシプロピル-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの少なくとも1つのその他のジアステレオマーとを含み、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのジアステレオマー純度が少なくとも約97%である、組成物を提供する。
【0019】
第4の態様において、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤と、治療有効量の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態とを含む医薬組成物を提供する。
【0020】
第5の態様において、治療有効量の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態を、そのような治療を必要とする患者に投与するステップを含む、患者における疾患を治療する方法を提供する。
【0021】
第6の態様において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態の経口用持続放出製剤を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
第7の態様において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製する方法であって、溶媒中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの溶液を提供するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩に変換するために酸を添加するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩を(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに変換するためにメタンスルホン酸を添加するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを溶媒から単離するステップと、を含む方法を提供する。
【0023】
第8の態様において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製する方法であって、溶媒中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの溶液を提供するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに変換するためにメタンスルホン酸を添加するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを溶媒から単離するステップと、を含む方法を提供する。
【0024】
第9の態様において、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製する方法であって、第1の溶媒中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの溶液を提供するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩を提供するために、tert-ブトキシカルボニル基を酸で脱保護するステップと、第1の溶媒を除去し、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩に水を添加するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを提供するために、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩を塩基で中和するステップと、第2の溶媒で、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを抽出するステップと、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに変換するために、抽出された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートにメタンスルホン酸を添加するステップと、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを第2の溶媒から単離するステップと、を含む方法を提供する。
【0025】
本開示によって提供されるこれらおよびその他の特徴を、本願において説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
当業者であれば、本願に記載されている図面は例示のみを目的としていることを理解するであろう。図面は、本開示によって提供される範囲を限定することを意図するものではない。
【0027】
定義
「AUC」は、化合物を患者に投与した後の時間の関数として、患者体内の生体液中における化合物またはその代謝産物の濃度を表す曲線下の面積(Area Under a Curve)である。いくつかの実施形態において、化合物はプロドラッグであってもよく、代謝産物は薬物であってもよい。生体液の例としては、血液および血漿を含む。AUCは、液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析法(Liquid Chromatography-tandem Mass Spectrometry;LC/MS/MS)等の方法を使用し、種々の時間間隔で、血漿または血液等の生体液中における化合物またはその代謝産物の濃度を計測し、血漿中濃度-時間曲線下面積を算出することによって測定され得る。薬物濃度-時間曲線からAUCを算出するための適切な方法は、当該技術分野において既知である。本願の開示に関する場合、レボドパのAUCは、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態を含む剤形の経口投与後、患者の血漿または血液中におけるレボドパの濃度を計測することによって測定され得る。
【0028】
「バイオアベイラビリティ」は、薬物またはそのプロドラッグを患者に投与した後に患者の全身循環に達する薬物の量を指し、例えば薬物の血漿または血液中濃度-時間プロファイルを評価することによって測定され得る。血漿または血液中濃度-時間曲線を特徴付ける上で有用なパラメータは、曲線下面積(AUC)、ピーク濃度までの時間(Tmax)、および最高薬物濃度(Cmax)を含み、ここでCmaxは、1回分の薬物またはそのプロドラッグを患者に投与した後の、当該患者の血漿または血液中における薬物の最高濃度であり、Tmaxは、1回分の薬物またはそのプロドラッグを患者に投与した後の、当該患者の血漿または血液中における薬物の最高濃度(Cmax)までの時間である。
【0029】
「ジアステレオマー純度」は、化合物の一以上のジアステレオマーを含有する組成物中における、化合物のその他すべてのジアステレオマーに対する、化合物の1つのジアステレオマーのパーセントを指す。例えば、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの97%のジアステレオマー純度を有する組成物とは、当該組成物中の2-フェニルカルボニルオキシプロピル-2-アミノ-3(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの約97%が(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートジアステレオマーであり、当該組成物中の2-フェニルカルボニルオキシプロピル-2-アミノ-3(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの約3%が、(2R)−(2R)−、(2S)−(2R)−、および/または(2S)−(2S)−異性体等、その他の異性体のうち1つ以上を含む場合である。一部の実施形態において、ジアステレオマー純度は、例えば、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%以上である。
【0030】
「レボドパプロドラッグメシラート」は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよびその結晶形態を指す。
【0031】
「パーキンソン病」は、動作緩慢(動きの遅さおよび欠如)、筋固縮、休止時振戦(通常は随意運動中に緩和される)、ならびに歩行の妨害および転倒につながる姿勢平衡の機能障害を含む、臨床的症候群である。その他の症状としては、引きずり歩行、腕振りの減少、「全体的に」前傾前屈姿勢になること、加速歩行、すくみ足、およびジストニア等の歩行および姿勢の妨害、発声不全、早口、流涎、表出言語および受容言語の両方における非運動性要因の発話/言語障害、および嚥下障害等の発話障害および嚥下障害、さらには、疲労、仮面様顔貌、小字症、巧緻運動機能および協調性の障害、全体的な運動協調性障害、ならびに動きの欠如を含む。パーキンソン病に関連する非運動気分障害は、うつ病等の気分障害、緩慢な反応時間、実行機能不全、認知症、記憶喪失、および投薬の影響等の認知障害、日中の過度の傾眠、不眠症、およびレム睡眠障害等の睡眠障害、視覚認知障害、めまいと失神、自己受容障害、嗅覚の減退または喪失、および痛覚等の感覚障害、ならびに、脂性肌と脂漏性皮膚炎、尿失禁、便秘と胃運動不全、性機能異常、および体重減少等の自律神経障害を含む。
【0032】
統合パーキンソン病評価尺度(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale;UPDRS)は、パーキンソン病の診断に使用される主要な臨床ツールである(例えば、Gelbら、Arch Neurol 1999年、56(1)、33−9、およびGoetz、Mov Disord 2003年、18(7)、738−50を参照)。
【0033】
「患者」は、動物および哺乳類、例えばヒトを含む。
【0034】
「医薬組成物」は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態と、当該化合物を患者に投与するのに用いられる少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む組成物を指す。
【0035】
「医薬的に許容される」は、米国薬局方に列挙された、または、ヒトを含む哺乳類において使用するための、その他の一般に認識されている薬局方に列挙された、連邦または州政府の管理機関によって認可されている、または認可され得ることを指す。
【0036】
「医薬的に許容される賦形剤」は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態を患者に投与する際に用いる希釈剤、アジュバント、補形薬、または担体を指す。
【0037】
「プロドラッグ」は、実薬を放出するために体内での変換を必要とする薬物分子の誘導体を指す。プロドラッグは、必ずではないが多くの場合、親薬物に変換されるまで薬理学的に不活性である。カルボキシル含有薬物は、例えば、単一アルキルまたはアシルオキシアルキルプロドラッグのエステルに変換されることができ、これをin vivoで加水分解してカルボキシル含有薬物を提供することができる。上記で列挙したものと異なる官能基を有する薬物のプロドラッグは、当業者に既知である。
【0038】
「プロモエティー」は、薬物内の官能基をマスクするために使用される際に薬物をプロドラッグに変換する保護基の形態を指す。一般に、プロモエティーは、酵素的または非酵素的手段によってin vivoで開裂される結合剤を介して薬物に付着することになる。
【0039】
「保護基」は、分子マスク中の反応性官能基に付着すると、官能基の反応性を削減または防止する、原子の群を指す。保護基の例は、Greenら、「Protective Groups in Organic Chemistry」(Wiley、第2版、1991年)、およびHarrisonら、「Compendium of Synthetic Organic Methods」、第1〜8巻(John Wiley and Sons、1971〜1996年)において見ることができる。アミノ保護基の例としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2-(トリメチルシリル)エタンスルホニル(SES)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)、6-ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)等を含むがこれらに限定されない。ヒドロキシ保護基の例としては、アルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、およびアリルエーテルのみならず、ベンジルおよびトリチルエーテル等のヒドロキシ基がアシル化またはアルキル化されたものを含むがこれらに限定されない。
【0040】
「持続放出」は、薬物の従来の製剤のものよりも長期間にわたる、治療的または予防的量の薬物またはその活性代謝産物の放出を指す。経口製剤の場合、「持続放出」という用語は一般に、約2〜約30時間の範囲の期間、いくつかの実施形態においては、約4〜約24時間の範囲の期間にわたる、胃腸管内腔における薬物の放出を意味する。持続放出製剤は、薬物の従来の製剤の経口投与によって実現されるものと比較して長時間にわたる、全身循環における治療有効濃度の薬物を実現する。「遅延放出」は、例えば約1時間〜約12時間の遅延等、薬物の従来の製剤の経口投与によって実現されるものと比較して遅延した期間の後の、薬物またはその活性代謝産物の胃腸内腔への放出を指す。
【0041】
疾患の「治療すること」または「治療」は、疾患、障害、または疾患もしくは障害の臨床症状のうち少なくとも1つを停止または改善することを指す。いくつかの実施形態において、「治療すること」または「治療」は、疾患または障害の少なくとも1つの物理的パラメータを停止または改善することを指し、当該パラメータは患者によって認識できるものであってもよいし、そうでなくてもよい。いくつかの実施形態において、「治療すること」または「治療」は、物理的に(例えば、認識できる症状の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、または両方で、疾患または障害を阻害または制御することを指す。いくつかの実施形態において、「治療すること」または「治療」は、疾患または障害の発現を、場合によっては無期限に遅延させることを指す。
【0042】
「治療有効量」は、患者における疾患を治療するために当該患者に投与する場合の、当該疾患のそのような治療をもたらすために十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに治療されるべき疾患を有する患者の年齢、体重等に応じて変動することになる。
【0043】
ここで、化合物、組成物、および方法のいくつかの実施形態を詳細に参照する。開示される実施形態は、特許請求の範囲の限定を意図するものではない。逆に、特許請求の範囲は、開示される実施形態の代替物、修正形態、および均等物をすべて網羅することを意図するものである。
【0044】
化合物
レボドパプロドラッグ、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート1:
【化1】

【0045】
およびその結晶形態が開示されている。
【0046】
当業者であれば、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートが開示されているが、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの試料は種々の組成純度およびジアステレオマー純度を有し得ることを十分に理解するであろう。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の、また、いくつかの実施形態においては、少なくとも約99%を超過する、組成純度を呈し得る。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の、また、いくつかの実施形態においては、少なくとも約99%を超過する、ジアステレオマー純度を呈し得る。
【0047】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、いくつかの互変異性型で存在し得る。したがって、特に定めのない限り、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの考えられるすべての互変異性型が包含される。特に定めのない限り、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの同位体標識された形態もすべて包含される。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに組み込まれ得る同位体の例としては、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、および17Oを含むがこれらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、結晶形態である。いくつかの実施形態において、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのX線粉末回折パターンは、4.7±0.2、5.0±0.2、8.5±0.2、9.6±0.2、13.6±0.2、15.0±0.2、17.0±0.2、17.4±0.2、17.7±0.2、19.1±0.2、19.5±0.2、20.0±0.2、20.4±0.2、21.1±0.2、22.3±0.2、22.9±0.2、23.1±0.2、23.3±0.2、24.3±0.2、25.0±0.2、25.3±0.2、25.7±0.2、25.8±0.2、26.9±0.2、27.3±0.2、28.2±0.2、30.1±0.2、30.5±0.2、32.0±0.2、33.8±0.2、34.3±0.2、37.6±0.2、および38.4±0.2で特徴的回折ピーク(°2θ)を呈する。いくつかの実施形態において、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは実質的に、図2〜6のいずれか1つに示すようなX線粉末回折パターンを呈する。
【0049】
当業者であれば、観測される°2θ回折角が、例えば用いられる特定の回折計、分析者、および試料調製技術に基づいて予測され得ることを認識するであろう。相対ピーク強度には、より大きな変動が予測され得る。回折パターンの比較は、主として、相対ピーク強度に起因する重要性が低い、観測される°2θ回折角に基づくものであってよい。異なる溶媒から結晶化された結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの、観測された°2θ回折角における変動およびピーク強度を実証する回折パターンを、図2〜6に示す。図2〜6に示すX線粉末回折パターンにおいて、概して最大強度を呈するピークは、5.0±0.2、8.5±0.2、13.6±0.2、15.0±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、20.4±0.2、21.1±0.2、25.0±0.2、25.8±0.2、28.2±0.2、30.1±0.2、および37.6±0.2の°2θ回折角に位置する。5.0±0.2、8.5±0.2、13.6±0.2、15.0±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、20.4±0.2、21.1±0.2、25.0±0.2、25.8±0.2、28.2±0.2、30.1±0.2、および37.6±0.2で特徴的回折ピーク(°2θ)を呈するX線粉末回折パターンは、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのX線粉末回折パターンと実質的に同じになるであろう。
【0050】
いくつかの実施形態において、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、約157℃〜約162℃の融点を呈する。
【0051】
いくつかの実施形態において、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、約164.5℃、また、いくつかの実施形態においては約164.5±2.5℃で吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry;DSC)サーモグラムを特徴とする。結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのDSCサーモグラムの一例を図1に示す。
【0052】
いくつかの実施形態において、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは安定であり、例えば、水分を吸収しない、および/または一般的な製剤処理および/または保管条件下で別の同形体形態に変わらない。
【0053】
本開示が提示する方法によって調製された結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの物理的特性および特徴は、単一の同形体のものと一致する。対照的に、同様の方法によって調製された結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート塩酸塩は、3つの同形体形態を呈し得る。結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの単一同形体形態の環境安定性は、医薬組成物におけるその使用を推奨する。
【0054】
合成
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート1は、スキーム1に示す合成方法によって調製され得る。
【化2】

【0055】
これらの化合物およびその中間体を調製するのに有用な出発原料は、市販されている、または、既知の合成方法によって調製され得る(Harrisonら、「Compendium of Synthetic Organic Methods」第1〜8巻、John Wiley and Sons、1971−1996年、「Beilstein Handbook of Organic Chemistry」Beilstein Institute of Organic Chemistry、ドイツ、フランクフルト、Feiserら、「Reagents for Organic Synthesis」第1〜17巻、Wiley Interscience、Trostら、「Comprehensive Organic Synthesis」Pergamon Press、1991年、「Theilheimer’s Synthetic Methods of Organic Chemistry」第1〜45巻、Karger、1991年、March「Advanced Organic Chemistry」Wiley Interscience、1991年、Larock「Comprehensive Organic Transformations」VCH Publishers、1989年、および、Paquette「Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis」John Wiley&Sons、1995年)。カルボキシルエステルレボドパプロドラッグを合成する方法は、Xiangら、米国出願公開第2005/0282891号および第2006/0020028号に記載されており、これらはそれぞれ参照することによりその全体が本願に組み込まれる。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを合成するためのその他の方法は、当業者には容易に明らかとなるであろう。したがって、スキーム1において提示する方法は、包括的というよりは例示的なものである。
【0056】
例えば、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート1は、スキーム1に示す直接または間接経路を介し、対応する適切に保護された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート前駆体2から調製され得る。
【0057】
PgがBoc(tert-ブトキシカルボニル)である場合、室温で、例えばジオキサン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、または前述のもののいずれかの組み合わせ等、前駆体2が溶解できる有機溶媒中において、塩酸等の適切な酸で前駆体2を処理し、その後、アセトニトリル等の適切な溶媒を使用した、結果として生じた残留物の溶媒除去および結晶化により、塩酸塩3を提供することができる。その他の適切な酸としては、トリフルオロ酢酸および臭化水素等の揮発性酸が挙げられる。塩酸塩3から対応するメシラート塩1への変換は、水/ジクロロメタン(DCM)等の適切な溶媒中で、重炭酸ナトリウム(NaHCO)または重炭酸カリウム(KHCO)等の適切な塩基によって塩酸塩を中和し、DCMを水から分離し、DCM溶液にメタンスルホン酸を添加することによって達成される。メシラート塩1は、DCMから沈殿することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、前駆体2は、約20℃〜約100℃の温度で、ジオキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、または前述のもののいずれかの混合物等、前駆体2が溶解できる有機溶媒中において、過度の、例えば1.1〜100当量のメタンスルホン酸で前駆体2を処理することにより、直接メシラート塩1に変換され得る。その後メシラート塩1は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン、または前述のものの混合物等、非極性溶媒中で沈殿し得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、前駆体2は、ジオキサン中、過度の塩化水素で前駆体2を処理して脱保護された塩酸塩3を産出し、続いて、塩酸塩3をメシラート塩1に変換するためにメタンスルホン酸を添加することにより、ワンポット手順を使用してメシラート塩1に変換され得る。
【0060】
メシラート塩1は、結晶性メシラート塩1を提供するために、メシラート塩1が溶解でき、メシラート塩1の溶解度が温度依存性である、イソプロパノール、メタノール/MTBE、イソプロパノール中1%の水、アセトニトリル中1%の水、または酢酸エチル中3%の水等の溶媒から結晶化され得る。いくつかの実施形態において、メシラート塩1を結晶化するために使用される溶媒は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、MTBE、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、ギ酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、および前述のもののいずれかの混合物から選択され得る。2つの溶媒を含むいくつかの溶媒混合物において、2つの溶媒の比率は、約1:10〜約10:1の範囲を取り得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、約10容量%未満の水、また、いくつかの実施形態においては、約5容量%未満の水をさらに含んでよい。いくつかの実施形態において、メシラート塩1を結晶化するために使用される溶媒は、メタノールとMTBEの比率(v/v)が約1:5〜約1:7である、メタノールとMTBEの混合物を含んでよい。いくつかの実施形態において、メシラート塩1を結晶化するために使用される溶媒は、イソプロパノール中約1〜約4容量%の水を含んでよい。メシラート塩1を結晶化するために有用な溶媒の例を、表1において開示する。
【0061】
結晶性メシラート塩1を調製するために、メシラート塩1の溶解度が温度依存性である溶媒およびメシラート塩1を加熱して溶液を提供することができる。いくつかの実施形態において、溶媒は、最大還流温度まで、また、いくつかの実施形態においては、最大75℃未満の温度まで加熱され得る。いくつかの実施形態において、溶液中におけるメシラート塩1の濃度は約500mg/mL未満であり、また、いくつかの実施形態においては、約50mg/mL〜約200mg/mLである。続いて、溶媒中のメシラート塩1の溶解度を減少させるために、溶液の温度を変化させることができる。例えば、溶液の温度は、室温(例えば、約25℃)まで、また、いくつかの実施形態においては0℃まで、低下され得る。溶液を冷却する時間は、結晶性メシラート塩1の、収率、組成純度、および/または光学純度を最適化するようなものが選択される。一部の実施形態において、溶液を第1の温度まで冷却して結晶性メシラート塩1を単離し、溶液を第2の結晶化でさらに冷却してさらなる結晶性メシラート塩1を単離することができる。結晶性メシラート塩1は、ろ過によって溶媒から単離され得る。ろ過ケーキは、例えば、結晶性メシラート塩1中に残る残留物の量を最小化する低沸点溶媒等の、適切な溶媒中で洗浄され得る。適切な洗浄溶媒の例としては、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、MTBE、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、ギ酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、および前述のもののいずれかの混合物を含む。当業者であれば、例えば攪拌するステップおよび/または接種するステップを含む方法を含む、その他の方法を使用してメシラート塩1を結晶化し得ることを十分に理解できる。
【0062】
いくつかの実施形態において、前述の方法のいずれかによって得られた結晶性メシラート塩1は、4.7±0.2、5.0±0.2、8.5±0.2、9.6±0.2、13.6±0.2、15.0±0.2、17.0±0.2、17.4±0.2、17.7±0.2、19.1±0.2、19.5±0.2、20.0±0.2、20.4±0.2、21.1±0.2、22.3±0.2、22.9±0.2、23.1±0.2、23.3±0.2、24.3±0.2、25.0±0.2、25.3±0.2、25.7±0.2、25.8±0.2、26.9±0.2、27.3±0.2、28.2±0.2、30.1±0.2、30.5±0.2、32.0±0.2、33.8±0.2、34.3±0.2、37.6±0.2、および38.4±0.2でピーク(°2θ)を有するX線粉末回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、前述の方法のいずれかによって得られた結晶性メシラート塩1は、5.0±0.2、8.5±0.2、13.6±0.2、15.0±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、20.4±0.2、21.1±0.2、25.0±0.2、25.8±0.2、28.2±0.2、30.1±0.2、および37.6±0.2でメジャーピーク(°2θ)を有するX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0063】
いくつかの実施形態において、メシラート塩1の形成および結晶化は、ほぼ室温、例えば25℃におけるワンポット手順で実行され得る。例えば、脱保護および中和後、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを、酢酸エチル、イソプロパノール/ジクロロメタン、またはイソプロパノール/酢酸エチル等の溶媒中に溶解し、常温で、0.9〜1.2当量のメタンスルホン酸により処理することができる。メシラート塩1は、攪拌または接種の有無にかかわらず、溶液から結晶化することができる。
【0064】
結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製するためのワンポット手順の一例として、それが溶解できる溶媒中で、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの溶液が調製される。適切な溶媒の例としては、ジクロロメタンおよびジオキサンを含む。tert-ブトキシカルボニル基は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩を提供するために酸を添加することによって脱保護される。適切な酸は、揮発性酸に限定されない。tert-ブトキシカルボニル基を脱保護するために適切な酸の例としては、塩酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、および臭化水素を含む。脱保護後、第1の溶媒を除去し、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩に水を添加してよい。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩は、NaHCOまたはKHCO等の塩基で中和されて、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを提供することができる。続いて、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、または酢酸エチルとイソプロパノールとの混合物等の第2の溶媒により、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートが抽出され得る。続いて、抽出された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートにメタンスルホン酸を添加して、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに変換することができる。続いて、ろ過によって結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートが第2の溶媒から単離され得る。
【0065】
当業者であれば、本開示によって提供される方法を使用して、高い組成純度およびジアステレオマー純度を有する(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート1またはその結晶形態を調製し得ることを十分に理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態において、メシラート塩1の組成純度は、少なくとも約95%、いくつかの実施形態においては、少なくとも約97%、いくつかの実施形態においては、少なくとも約98%、いくつかの実施形態においては、少なくとも約99%であってもよく、また、いくつかの実施形態において、ジアステレオマー純度は、少なくとも約95%、いくつかの実施形態においては、少なくとも約97%、いくつかの実施形態においては、少なくとも約98%、いくつかの実施形態においては、少なくとも約99%であってもよい。
【0066】
使用法
レボドパプロドラッグは、ドーパミンの前駆体である。したがって、本開示によって提供されるレボドパプロドラッグメシラートは、親薬物であるレボドパが治療効果を有すると分かっている、または今後見出される、あらゆる疾患または障害を患っている患者に投与され得る。レボドパプロドラッグメシラートは、パーキンソン病等の疾患または障害を治療するために、ヒト等の患者に投与され得る。当該方法は、治療有効量のレボドパプロドラッグメシラートを、そのような治療を必要とする患者に投与するステップを含む。本開示によって提供される治療方法において、治療有効量のレボドパプロドラッグメシラートは、パーキンソン病、うつ病、注意力欠如障害、統合失調症、躁うつ病、認知機能障害、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、遅発性ジスキネジー、ハンチントン病、トゥレット症候群、高血圧症、嗜癖障害、うっ血性心不全、または日中の過度の眠気等の疾患を患っている患者に投与され得る。本開示によって提供される予防方法において、治療有効量のレボドパプロドラッグメシラートは、パーキンソン病、うつ病、注意力欠如障害、統合失調症、躁うつ病、認知機能障害、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、遅発性ジスキネジー、ハンチントン病、トゥレット症候群、高血圧症、嗜癖障害、うっ血性心不全、または日中の過度の眠気等の疾患を発症するリスクが高い患者に投与され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、レボドパプロドラッグメシラートまたはその医薬組成物は、デカルボキシラーゼ阻害剤またはそのプロドラッグ等、レボドパプロドラッグメシラートおよび/またはレボドパ代謝産物の早期脱炭酸化を阻害または防止するための保護剤として作用し得る別の治療剤または薬物と同時投与され得る。
【0068】
レボドパプロドラッグメシラートは、L-芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤と同じ剤形から送達されてもよいし、異なる剤形から送達されてもよい。レボドパプロドラッグメシラートは、デカルボキシラーゼ阻害剤の投与と同時に、その前に、またはその後に、投与され得る。レボドパプロドラッグメシラートは、パーキンソンン病等の疾患または障害を治療するために、デカルボキシラーゼ阻害剤またはデカルボキシラーゼ阻害剤プロドラッグもしくは誘導体と共に、ヒト等の患者に投与され得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、レボドパプロドラッグメシラートまたはその医薬組成物は、少なくとも1つのデカルボキシラーゼ阻害剤または少なくとも1つのデカルボキシラーゼ阻害剤プロドラッグもしくは誘導体と共に、ヒト医学において有利に使用され得る。いくつかの実施形態において、レボドパプロドラッグメシラートまたはその医薬組成物は、パーキンソン病の治療に有用となり得る。パーキンソン病を治療するために使用する場合、レボドパプロドラッグメシラートまたはその医薬組成物は、カルビドパ、カルビドパプロドラッグ、ベンセラジド、および/またはベンセラジドプロドラッグ等のデカルボキシラーゼ阻害剤と組み合わせて投与または適用され得る。また、上記の組み合わせの治療有効性は、エンタカポン、エンタカポンプロドラッグ、トルカポン、および/またはトルカポンプロドラッグ等のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(Catechol-O-Methyltransferase;COMT)阻害剤等、別の医薬的に活性な剤の同時投与によって強化され得る。さらに、いくつかの実施形態において、レボドパプロドラッグメシラートまたはその医薬組成物は、パーキンソン病等の疾患または障害を治療するために、(i)カルビドパ、カルビドパプロドラッグ、ベンセラジド、またはベンセラジドプロドラッグ等のデカルボキシラーゼ阻害剤、および(ii)COMT阻害剤またはそのプロドラッグ等の医薬的に活性な剤と共に、ヒト等の患者に投与され得る。
【0070】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、経口投与用に適合された医薬組成物および/または剤形に含まれ得るが、例えば、注射、注入、吸入、経皮、または上皮もしくは粘膜(例えば、口腔、直腸、および/または腸粘膜)を通る吸収等、その他任意の好都合な経路によって(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを投与してもよい。
【0071】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその医薬組成物は、患者への経口投与後、治療的または予防的な血漿および/または血液中濃度のレボドパを提供することができる。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのカルボキシルエステルプロモエティーは、親薬物であるレボドパを放出するために、化学的および/または酵素的にin vivoで開裂され得る。胃、腸管腔、腸組織、血液、肝臓、脳、または患者のその他任意の適切な組織に存在する1つ以上の酵素は、投与された化合物のプロモエティーを酵素的に開裂することができる。例えば、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのカルボキシルエステルプロモエティーは、胃腸管(例えば、胃または腸管腔の内部)からの吸収前、および/または胃腸管(例えば、腸組織、血液、肝臓、または哺乳類のその他適切な組織内)からの吸収後に開裂され得る。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、小腸および結腸を含む胃腸管全体において発現する有機カチオン輸送体により、腸内皮を越えて、能動的に輸送され得る。レボドパは、腸粘膜関門を越えて遷移する間、体外代謝を防止または最小化するために、カルボキシルエステルプロモエティーと接合されたままであることができる。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、本質的に胃腸管の細胞内でレボドパに代謝されることはないが、全身循環内、例えば血漿中ではレボドパに代謝される。そのような実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、能動輸送もしくは受動拡散によって、または能動的および受動的プロセスの両方によって、小腸および大腸から全身循環に吸収され得る。胃腸管からの吸収後に(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートからプロモエティーを開裂することで、能動輸送もしくは受動拡散によって、または能動的および受動的プロセスの両方によって、レボドパプロドラッグメシラートを全身循環に吸収させることができる。開裂の機序は、本実施形態には重要でない。例えば、カルボキシルエステルプロモエティーは、胃腸管からの、例えば、腸組織、血液、肝臓、または哺乳類のその他適切な組織内における吸収後に開裂され得る。
【0072】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、レボドパについて当該技術分野で記載されているのと同様の量で、且つ同様のスケジュールを使用して、投与され得る。例えば、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートをカルビドパまたはカルビドパのプロドラッグ等のデカルボキシラーゼ阻害剤と共に、いくつかの実施形態においては経口経路で、当該治療を必要としている哺乳類被検体に投与することによって、パーキンソン病を治療する上で有用となり得る。体重約70kgのヒト被検体において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、1日あたり約10mg〜10gのレボドパ当量、また、いくつかの実施形態においては、1日あたり約100mg〜約3gのレボドパ当量を有する用量で、長期間にわたり投与され得る。任意の時点で服用される1回分の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、約10mg〜約3gのレボドパ当量を有し得る。用量は、例えば、治療される被検体の体重および/または状態、投与されているカルボキシラーゼ阻害剤またはカルボキシラーゼ阻害剤のプロドラッグの用量、治療されている疾患の重症度、副作用の発生率、投与の様式、および処方医師の判断を含むいくつかの要因に基づき、当業者によって調節され得る。用量域は、当業者に既知の方法によって決定され得る。
【0073】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、ヒトにおいて使用する前に、所望の治療活性または予防活性についてin vitroおよびin vivoでアッセイされ得る。例えば、in vitroアッセイを使用して、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの投与が、OCTN1およびOCTN2等の有機カチオン輸送体を含む輸送タンパク質の基質であるか否かを判定することができる。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの、輸送タンパク質用の基質として作用する能力を分析するために利用できるいくつかのアッセイ方法の例が、Zerangueら、米国出願公開第2003/0158254号において開示されており、当該出願は参照することによりその全体が本願に組み込まれる。in vivoアッセイを使用して、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの投与が治療効果のあるものか否かを判定することもできる。動物モデルシステムを使用して、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートが有効且つ安全であることも実証され得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、治療有効用量の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療的利益を提供することができる。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの毒性は、標準的な医薬的手順を使用して測定でき、当業者によって確認され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数である。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの用量は、毒性を殆どまたは全く呈さない、治療効果のある循環血漿および/または血液中濃度のレボドパを確立および維持することができる範囲内であってもよい。
【0075】
パーキンソン病を治療するための、本開示によって提供される(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよび(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含む組成物の使用に加えて、レボドパプロドラッグメシラートおよびその組成物は、その他のドーパミン関連疾患を治療する上でも有用となり得る。ドーパミン関連疾患は、中枢神経系における不十分なまたは過度の機能的ドーパミン作用で特徴づけられる。ドーパミン関連疾患の例としては、うつ病および注意力欠如障害等の情動障害、統合失調症および躁うつ病等の精神異常、軽度認識障害等の認知機能障害、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、遅発性ジスキネジー、高血圧症、ハンチントン病、およびトゥレット症候群等の運動障害、アルコール依存症または乱用、ニコチン依存症または乱用、および薬物依存症または乱用等の嗜癖障害、うっ血性心不全、ならびに日中の過度の眠気を含むがこれらに限定されない。これらおよびその他のドーパミン関連疾患の治療には、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、例えばデカルボキシラーゼ阻害剤および/またはCOMT阻害剤等のさらなる活性剤と同時投与され得る。ドーパミン関連疾患を治療するための治療有効用量は、本願において開示するパーキンソン病の治療のための方法によって、および/または当該技術分野において既知の方法によって、決定され得る。
【0076】
医薬組成物
本開示によって提供される医薬組成物は、治療有効量の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを、患者への適正投与のための組成物を提供するように、いくつかの実施形態においては精製形態で、適切な量の1つ以上の医薬的に許容される賦形剤と共に含み得る。適切な医薬賦形剤は、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等の補形薬も含む。本組成物は、湿潤剤、乳化剤、および/またはpH緩衝剤を含有してもよい。また、助剤、安定化剤、増粘剤、平滑剤、および/または着色剤を使用してもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、カプセルの形態であってもよい(例えば、Grosswaldら、米国特許第5,698,155号を参照)。適切な医薬賦形剤のその他の例が、当該技術分野において記載されている(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」Lippincott Williams&Wilkins、第21版、2005年を参照)。
【0077】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、エントラッピング、または凍結乾燥プロセスの手段によって製造され得る。医薬組成物は、レボドパプロドラッグメシラートまたはその結晶形態および1つ以上の医薬的に許容される賦形剤の、医薬的に使用され得る製剤への処理を容易にする、1つ以上の生理的に許容される担体、希釈剤、補形薬、または助剤を使用する従来の様式で製剤化され得る。適正な製剤は、選定された投与の経路に依存する。いくつかの実施形態において、レボドパプロドラッグメシラートまたはその結晶形態を含む医薬組成物は、経口投与用に、また、いくつかの実施形態においては、持続放出経口投与用に製剤化され得る。本開示によって提供される医薬組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、ペレット、カプセルの形態、液体を内包するカプセル、粉末、持続放出製剤、坐薬、乳濁液、エアロゾル、スプレー、懸濁液、または使用に適したその他任意の形態を取り得る。
【0078】
経口医薬組成物
いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、経口で投与される医薬組成物に組み込まれ得る。そのような医薬組成物の経口投与は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの腸を通じての摂取および全身循環への侵入をもたらし得る。そのような組成物は、医薬技術分野において既知の様式で調製されることができ、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよび少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含み得る。医薬組成物は、治療有効量の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを、患者への投与のための適切な形態を提供するように、一部の実施形態においては精製形態で、カルビドパ、カルビドパプロドラッグ、ベンセラジド、またはベンセラジドプロドラッグ等のデカルボキシラーゼ阻害剤、および適切な量の医薬的に許容される賦形剤と共に含み得る。
【0079】
経口送達用の医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、水性もしくは油性懸濁液、顆粒、粉末、乳濁液、カプセル、シロップ、またはエリキシル剤の形態であってもよい。経口投与される医薬組成物は、医薬的に味のよい製剤を提供するために、1つ以上の任意の剤、例えば、果糖、アスパルテームまたはサッカリン等の甘味剤、ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはサクランボ等の着香料、着色剤、ならびに保存料を含有し得る。さらに、錠剤または丸薬形態の医薬組成物は、胃腸管内での分解および吸収を遅延させるために被覆してもよく、それによって長期間にわたる持続作用を提供することができる。浸透活性駆動化合物を取り囲む選択性透過膜も、経口投与される化合物および医薬組成物に適している。これら後者のプラットフォームにおいて、カプセルを取り囲んでいる環境からの流体は、開口を通じて剤または剤組成物を移動させるために膨張する駆動化合物によって吸収される。これらの送達プラットフォームにより、速放性製剤の急上昇したプロファイルとは対照的に、本質的にゼロ次の送達プロファイルを提供することができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロール等の時間遅延物質を使用してもよい。経口医薬組成物は、マンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な賦形剤を含み得る。そのような賦形剤は、医薬品グレードのものであってもよい。
【0080】
懸濁液、エリキシル剤、および溶液等の経口液体製剤としては、水、生理食塩水、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)油、アルコール、約pH4〜約pH6の弱酸性緩衝液(例えば、約5mM〜約50mMの酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩)等を含む、適切な担体、補形薬、または希釈剤を含み得る。また、着香料、保存料、着色剤、胆汁塩、アシルカルニチン等を添加してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態は、活性成分として、補形薬、担体、希釈剤および/またはアジュバントを含む少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤と関連付けられた(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含む、組成物も含む。当該組成物を形成する際、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを、補形薬と混合、希釈剤で希釈、または担体内に封入することができ、当該担体は、カプセル、サシェ、紙、またはその他の容器の形態であってもよい。補形薬が希釈剤としての役割を果たす場合、当該補形薬は、固体、半固体、または液体物質であってよく、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの賦形剤、担体、または媒体として作用することができる。したがって組成物は、錠剤、丸薬、粉末、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、およびシロップの形態であってもよく、例えば軟および硬ゼラチンカプセルを使用して、最大約90重量%の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含有することができる。
【0082】
組成物を調製する際、適切な粒径を提供するため、その他の成分と組み合わせる前に、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを粉砕することが有用な場合がある。粉砕された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの粒径は、水溶解度に応じて調節され得るものであり、いくつかの実施形態においては約200メッシュ未満、また、いくつかの実施形態においては約40メッシュ未満であってもよい。適切な補形薬の例としては、乳糖、D形グルコース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースを含む。組成物は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱物油等の平滑剤、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、メチル-およびプロピルヒドロキシ-安息香酸塩等の保存料、甘味剤、pH調節および緩衝剤、毒性調節剤、着香料等をさらに含んでもよい。組成物は、当該技術分野において既知の手順を用いることにより、患者に投与した後、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの迅速、持続、または遅延放出を提供するように製剤化され得る。
【0083】
組成物は、各用量が約10mg〜約10g範囲のレボドパ当量を含む単位剤形で製剤化され得る。単位剤形は、各ユニットが、適切な医薬補形薬、希釈剤、担体、および/またはアジュバントと共同して意図する治療効果を提供するように算出された所定量の活物質を収納する、ヒトおよびその他の動物用の単位用量として適切な、物理的に不連続なユニットを指す。
【0084】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、治療有効量で患者に投与され得る。しかしながら、実際に投与される(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの量は、治療されている状態、選定された投与の経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、および反応性、治療されている疾患、患者の症状の重症度等を含む関連事情を考慮し、医師によって決定されることが理解されるであろう。
【0085】
錠剤等の固体組成物を調製するために、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを、医薬補形薬、希釈剤、担体、および/またはアジュバントと混合し、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含有する均一混合物を含有する固体前製剤組成物を形成することができる。これらの前製剤組成物を均一と称する場合、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートが、当該組成物が錠剤、丸薬、またはカプセル等、同等に有効な単位剤形に簡単に細分され得るように、組成物全体にわたって均一に分散されることを意味する。続いて、この固体前製剤組成物は、例えば、約10mg〜約10g範囲のレボドパ当量を含む、本願に記載する種類の単位剤形に細分され得る。
【0086】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含む錠剤または丸薬は、持続放出の利点を可能にする剤形を提供するために、被覆されてもよいし、他の方法で混ぜ合わされ、構成されてもよい。例えば、錠剤または丸薬は、内部の投薬成分および外部の投薬成分を含んでよく、後者が前者を覆うおよび/または封入する、エンベロープの形態である。2つの成分は、腸溶性の層によって分離され得る。腸溶性の層は、胃中における分解に抵抗し、内部の成分を無傷で十二指腸へ通過させるため、または、放出を遅延させるために役立ち得る。そのような腸溶性の層または被覆には、種々の材料を使用することができる。例えば、そのような材料は、多数のポリマー酸、およびポリマー酸とセラック、セチルアルコール、または酢酸セルロース等の材料との混合物を含む。
【0087】
組成物(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートが経口投与用にまたは注射のために組み込まれ得る液体剤形は、水溶液、適切に風味付けしたシロップ、水性または油性懸濁液、および風味付けした乳濁液を、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油等の食用油、ならびにエリキシル剤および同様の医薬賦形剤と共に含む。
【0088】
持続放出経口剤形
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、多数の異なる剤形で実践され得るものであり、当該剤形は、経口投与時に(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの持続放出を提供するように適合され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、持続放出経口剤形は、長時間にわたって、いくつかの実施形態においては少なくとも約4時間、一部の実施形態においては、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、少なくとも約20時間、少なくとも約24時間にわたって、また、いくつかの実施形態においては、約24時間超にわたって、プロドラッグを溶解または拡散放出するビーズを含み得る。プロドラッグ放出ビーズは、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよび少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む中心組成物またはコアを有してよく、任意で滑剤、酸化防止剤、および/または緩衝液を含み得る。適切な時限放出ビーズの例は、例えば、Lu、Int.J.Pharm.1994年、112、117−124、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第21版、Lippincott Williams&Wilcox(2005年)、Fincher,J.Pharm.Sci.1968年、57、1825−1835、および米国特許第4,083,949号において開示されている。適切な持続放出錠剤の例は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第21版、Lippincott Williams&Wilcox(2005年)において開示されている。いくつかの実施形態において、経口持続放出ポンプを使用してもよい(Langer、Science 1990年、249、1527−1533、Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.1987年、14、201、およびSaudekら、N.Engl.J.Med.1989年、321、574を参照)。
【0090】
いくつかの実施形態において、例えば、「Medical Applications of Controlled Release」LangerおよびWise(編)、CRC Press、フロリダ州ボーカラトーン(1974年)、「Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance」SmolenおよびBall(編)、Wiley、ニューヨーク(1984年)、RangerおよびPeppas、J Macromol.Sci.Rev.Macromol Chem 1983年、23、61、Levyら、Science 1985年、228、190、Duringら、Ann.Neurol 1989年、25、351、ならびにHowardら、J.Neurosurg 1989年、71、105において記載されているようなポリマー材料を、経口持続放出送達に使用してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、経口持続放出投与に腸溶性被覆製剤を使用してもよい。いくつかの実施形態において、被覆材料は、pH依存性溶解度を有する(すなわち、pH制御放出)ポリマー、緩徐性またはpH依存性膨張速度、溶解、または腐食を有する(すなわち、時間制御放出)ポリマー、酵素によって分解され得る(すなわち、酵素制御放出)ポリマー、ならびに、圧上昇によって破壊され得る硬い層を形成する(すなわち、圧力制御放出)ポリマーを含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、経口持続放出投与に、薬物放出脂質マトリックスまたはプロドラッグ放出ワックスを使用してもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはレボドパ代謝産物の標的に近接して制御放出システムを留置してもよく、それによってわずかな全身投与量で済む(Goodson、「Medical Applications of Controlled Release」第2巻、115−138(1984年)を参照)。Langer、Science 1990年、249、1527−1533において考察されている、その他の制御放出システムを使用してもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、剤形は、ポリマー基質上に被覆した(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含み得る。ポリマーは、腐食性または非腐食性ポリマーのいずれであってもよい。代表的な生分解性ポリマーは、例えば、Rosoff、「Controlled Release of Drugs」第2章、53−95(1989年)、ならびに米国特許第3,811,444号、第3,962,414号、第4,066,747号、第4,070,347号、第4,079,038号、および第4,093,709号において記載されている。
【0095】
いくつかの実施形態において、剤形は、例えば、Colemanら、Polymers 1990年、31、1187−1231、Roerdinkら、Drug Carrier Systems 1989年、9、57−100、Leongら、Adv.Drug Delivery Rev.1987年、1、199−233、Roffら、「Handbook of Common Polymers」1971年、CRC Press、および米国特許第3,992,518号において記載されているように、ポリマーを通る拡散によって、または細孔を通るフラックスによって、またはポリマーマトリックスの破裂によってプロドラッグを放出するポリマーに充填された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含み得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、経口持続放出投与に浸透性送達システムが使用される(Vermaら、Drug Dev.Ind.Pharm.2000年、26、695−708)。いくつかの実施形態において、経口持続放出送達デバイスにOROSTM浸透性デバイスが使用される(Theeuwesら、米国特許第3,845,770号、Theeuwesら、米国特許第3,916,899号)。
【0097】
使用される持続放出経口剤形の特定の形態にかかわらず、1日あたり1回または2回のみの剤形の投与を可能にする、長期間にわたり治療濃度のレボドパを患者の血液中において提供するために、十分な時間にわたって、経口投与される剤形等の剤形から(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートが放出され得る。経口投与後、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含む剤形は、患者の血漿および/または血液中における治療濃度または予防濃度のレボドパを、当該剤形の患者への経口投与後、少なくとも約4時間にわたって、いくつかの実施形態においては、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、少なくとも約20時間にわたって、また、いくつかの実施形態においては、少なくとも約24時間にわたって、提供することができる。患者の血漿および/または血液中におけるレボドパの治療有効濃度または予防有効濃度は、例えば、治療されている疾患、疾患の重症度、患者の体重、患者の健康等を含む多数の要因に依存し得る。
【0098】
本開示によって提供される医薬組成物は、治療的または予防的処置のために投与され得る。治療量は、病状もしくは症状を改善するため、または、疾患もしくはその他任意の望ましくない症状の進行を、多少なりとも予防する、妨げる、遅らせる、もしくは反転させるために十分な量である。予防的適用において、本開示の医薬組成物は、特定の疾患または感染症を起こしやすい、またはそのリスクが高い患者に投与され得る。よって、予防有効量は、病状またはその症状を予防する、妨げる、または遅らせるために十分な量である。
【0099】
医薬組成物の適切な用量は、いくつかの定評のあるプロトコルのうちいずれか1つにしたがって決定され得る。例えば、マウスまたはラットを使用する実験等の動物実験を使用して、医薬組成物の適切な用量を決定することができる。動物実験の結果から推定して、例えばヒト等のその他の種において使用するための用量を決定することができる。例えば、パーキンソン病を治療するための、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよびその組成物の有効性は、パーキンソン病の動物およびヒトモデルならびに臨床研究を使用して評定され得る。パーキンソン病の動物およびヒトモデルは既知である(例えば、O’Neilら、CNS Drug Rev.2005年、11(1)、77−96、Faulknerら、Ann.Pharmacother.2003年、37(2)、282−6、Olsonら、Am.J.Med.1997年、102(1)、60−6、Van Blercomら、Clin Neuropharmacol.2004年、27(3)、124−8、Choら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2006年、341、6−12、Emborg、J.Neuro.Meth.2004年、139、121−143、Tolwaniら、Lab Anim Sci 1999年、49(4)、363−71、Hirschら、J Neural Transm Suppl 2003年、65、89−100、OrthおよびTabrizi、Mov Disord 2003年、18(7)、729−37、ならびに、Betarbetら、Bioessays 2002年、24(4)、308−18を参照)。
【0100】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその医薬組成物は、持続放出システムとして、また、いくつかの実施形態においては、経口投与持続放出システムとして投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物は、経口持続放出投与によって送達され得る。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその医薬組成物は、1日あたり2回、いくつかの実施形態においては1日あたり1回、また、いくつかの実施形態においては1日あたり1回を超える間隔で、投与され得る。
【0101】
併用療法
いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態は、少なくとも1つのその他の治療剤との併用療法において使用され得る。本開示によって提供される医薬組成物は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに加えて、同じまたは異なる疾患、障害、または状態を治療するのに有効な、1つ以上の治療剤を含み得る。
【0102】
本開示によって提供される方法は、併用投与が(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートもしくはレボドパの治療有効性を阻害しない、且つ/または併用による有害な副作用を生み出さないという条件で、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその医薬組成物および1つ以上のその他の治療剤の投与を含む。
【0103】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよび別の治療剤は、付加的または相乗的に作用し得る。いくつかの実施形態において、本開示によって提供される医薬組成物は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを含有するものと同じ医薬組成物、またはそれとは異なる組成物中に含有され得る、別の治療剤の投与と同時に投与され得る。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートは、別の治療剤の投与前または後に投与され得る。併用療法のいくつかの実施形態において、併用療法は、例えば特定の薬物に関連する有害な副作用を最小化するために、本開示によって提供される組成物と別の治療剤を含む組成物との投与を交互に繰り返すことを含んでよい。(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態が、毒性を含むがこれに限定されない有害な副作用を潜在的に生み出し得る別の治療剤と同時に投与されると、当該治療剤は、有害な副作用が誘発される閾値を下回る用量で有利に投与され得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートはさらに、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートもしくはその結晶形態および/またはレボドパの、放出、バイオアベイラビリティ、治療有効性、治療効能、および/または安定性を強化、変調、および/または制御する、1つ以上の化合物と共に投与され得る。例えば、治療有効性を強化するために、レボドパプロドラッグメシラートを1つ以上の活性剤と同時投与して、胃腸管を通じた(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートもしくはその結晶形態および/またはレボドパの吸収または拡散を増大させる、または、全身循環における(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートもしくはその結晶形態および/またはレボドパの分解を緩和することができる。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート、またはその結晶形態から放出された後、レボドパの治療有効性を強化する薬理効果を有する活性剤と同時投与してもよい。いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを、レボドパから放出された後、ドーパミンの治療有効性を強化する薬理効果を有する活性剤と同時投与してもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートもしくはその結晶形態、または(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートもしくはその結晶形態を含む医薬組成物は、パーキンソン病、うつ病、注意力欠如障害、統合失調症、躁うつ病、認知機能障害、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、遅発性ジスキネジー、ハンチントン病、トゥレット症候群、高血圧症、嗜癖障害、うっ血性心不全、または日中の過度の眠気を治療するための、別の化合物と共に患者に投与され得る。
【0106】
パーキンソン病を治療するのに有用な薬物の例としては、アマンタジン、バクロフェン、ビペリデン、ベンズトロピン、オルフェナドリン、プロシクリジン、トリヘキシフェニジル、レボドパ、カルビドパ、アンドロピニロール、アポモルフィン、ベンセラジド、ブロモクリプチン、ブジピン、カベルゴリン、エリプロディル、エプタスチグミン、エルゴリン、ガランタミン、ラザベミド、リスリド、マジンドール、メマンチン、モフェギリン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、プロペントフィリン、ラサジリン、レマセミド、ロピニロール、セレギリン、スフェラミン、テルグリド、エンタカポン、およびトルカポンを含む。
【0107】
うつ病等の気分障害を治療するのに有用な薬物の例としては、アミトリプチリン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、ドクサピン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、およびトリミプラミン等の三環系抗うつ薬、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、およびセルトラリン等の選択的セロトニン再取り込み阻害薬、ベンラファクシン、デュロキセチン、シブトラミン、およびミルナシプラン等のセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、フェネルジンおよびトラニルシプロミン等のモノアミン酸化酵素阻害薬、ならびに、デキストロアンフェタミンおよびメチルフェニデート等の精神刺激薬を含む。その他の抗うつ薬は、ベンモキシン、ブトリブチリン、ドスレピン、イミプラミン、キタンセリン、ロフェプラミン、メジホキサミン、ミアンセリン、ミルタザピン、ヴィロキサジン、コチニン、ニソクセチン、レボキセチン、チアネプチン、アセトフェナジン、ビネダリン、ブロファロミン、セリクラミン、クロボキサミン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェニルヒドラジン、セレギリン、シブトラミン、アデメチオニン、アドラフィニル、アメセルジド、アミスルプリド、アンペロジド、ベナクチジン、ブプロピオン、カロキサゾン、ジェピロン、イダゾキサン、メトラリンドール、ミナプリン、ネファゾドン、ノミフェンシン、リタンセリン、ロキシンドール、S-アデノシルメチオニン、エスシタロプラム、トフェナシン、トラゾドン、トリプトファン、ザロスピロン、およびセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含む。うつ病等の気分障害を治療するために、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートまたはその結晶形態およびその医薬組成物を、心理療法または電気ショック療法と併せて使用してもよい。
【0108】
注意力欠如障害を治療するのに有用な薬物の例としては、アトモキセチン、ブプロピオン、デキサメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、およびペモリンを含む。
【0109】
統合失調症を治療するのに有用な薬物の例としては、アリピプラゾール、ロキサピン、メソリダジン、クエチアピン、レセルピン、チオリダジン、トリフルオペラジン、およびジプラシドンを含む。
【0110】
躁うつ病を治療するのに有用な薬物の例としては、カルバマゼピン、クロナゼパム、クロニジン、バルプロ酸、ベラパミル、ラモトリジン、ガバペンチン、トピラメート、リチウム、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、クロナゼパム、ロラゼパム、ゾルピデム、セントジョーンズワート、およびオメガ3脂肪酸を含む。
【0111】
認知障害または記憶障害を治療するのに有用な薬物の例としては、クロルプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、パーフェナジン、ピモジド、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドン等の抗精神病薬、ジアゼパムおよびロラゼパム等の鎮静薬、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ロラゼパム、およびオキサゼパム等のベンゾジアゼピン系薬、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アルミノプロフェン、アンフェナク、アミノプロピロン、アミキセトリン、アスピリン、ベノキサプロフェン、ブロムフェナク、ブフェキサマク、カルプロフェン、セレコキシブ、コリン、サリチル酸塩、シンコフェン、シンメタシン、クロピラク、クロメタシン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、マジプレドン、メクロフェナメート、ナブメトン、ナプロキセン、パレコキシブ、ピロキシカム、ピルプロフェン、ロフェコキシブ、スリンダク、トルフェナメート、トルメチン、およびバルデコキシブ等の非ステロイド系抗炎症薬、ドネペジル、ガランタミン、リバスティグミン、フィゾスチグミン、およびタクリン等のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ならびに、メマンチン等のN-メチル-D-アスパラギン酸(N-Methyl-D-Aspartate;NMDA)受容体遮断薬を含む。
【0112】
下肢静止不能症候群を治療するのに有用な薬物の例としては、レボドパ、メシル酸ペルゴリド、プラミペキソール、および塩酸ロピニロール等のドーパミン系薬、クロナゼパムおよびジアゼパム等のベンゾジアゼピン系薬、コデイン、プロポキシフェン、およびオキシコドン等のオピオイド系薬、ならびに、ガバペンチンおよびカルバマゼピン等の抗けいれん薬を含む。
【0113】
遅発性ジスキネジー等の運動障害を治療するのに有用な薬物の例としては、レセルピン、テトラベナジン、およびビタミンEを含む。
【0114】
ハンチントン病を治療するのに有用な薬物の例としては、ハロペリドール、クロルプロマジン、およびオランザピン等の抗精神病薬、フルオキセチン、塩酸セルトラリン、およびノルトリプチリン等の抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系薬、パロキセチン、ベンラファクシン、およびβ遮断薬等のトランキライザー、リチウム、バルプロエート、およびカルバマゼピン等の気分安定剤、ならびにボツリヌス毒素を含む。
【0115】
トゥレット症候群を治療するのに有用な薬物の例としては、ハロペリドール、ペルゴリド、およびピモジドを含む。
【0116】
高血圧症を治療するのに有用な薬物の例としては、アセブトロール、アミロリド、アムロジピン、アテノロール、ベナゼプリル、ベタキソロール、ビソプロロール、カンデサルタン、カプトプリル、カルテオロール、カルベジロール、クロロチアジド、クロルタリドン、クロニジン、ジルチアゼム、ドキサゾシン、エナラプリル、エプレレノン、エプロサルタン、フェロジピン、フォシノプリル、フロセミド、グアナベンズ、グアネチジン、グアンファシン、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、イルベサルタン、イスラジピン、ラベタロール、リシノプリル、ロサルタン、メチルドパ、メトラゾン、メトプロロール、ミノキシジル、モエキシプリル、ナドロール、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ニトログリセリン、オルメサルタン、ペリンドプリル、ピンドロール、プラゾシン、プロプラノロール、キナプリル、ラミプリル、レセルピン、スピロノラクトン、テルミサルタン、テラゾシン、チモロール、トルセミド、トランドラプリル、バルサルタン、およびベラパミルを含む。
【0117】
アルコール依存症または乱用を治療するのに有用な薬物の例としては、ジスルフィラム、ナルトレキソン、クロニジン、メタドン、1-α-アセチルメタドール、ブプレノルフィン、およびブプロピオンを含む。
【0118】
麻薬依存症または乱用を治療するのに有用な薬物の例としては、ブプレノルフィン、トラマドール、メタドン、およびナルトレキソンを含む。
【0119】
ニコチン依存症または乱用を治療するのに有用な薬物の例としては、ブプロピオン、クロニジン、およびニコチンを含む。
【0120】
うっ血性心不全を治療するのに有用な薬物の例としては、アロプリノール、アミロリド、アムロジピン、ベナゼプリル、ビソプロロール、カルベジロール、ジゴキシン、エナラプリル、エプレレノン、フォシノプリル、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、ヒドララジン、硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、リシノプリル、メトプロロール、モエキシプリル、ネシリチド、ニカルジピン、ニフェジピン、ニトログリセリン、ペリンドプリル、プラゾシン、キナプリル、ラミプリル、スピロノラクトン、トルセミド、トランドラプリル、トリアムシノロン、およびバルサルタンを含む。
【0121】
日中の過度の眠気を治療するのに有用な薬物の例としては、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル、およびナトリウムオキシベートを含む。
【実施例】
【0122】
実施例
以下の実施例は、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートおよびその結晶形態の調製、その医薬組成物、ならびにその使用法を詳細に説明するものである。当業者には、本開示の範囲を逸脱することなく、材料および方法の両方について多くの修正形態が実践され得ることが十分に理解されるであろう。実施例7は予言的なものである。
【0123】
実施例中、以下の略称は以下の意味を有する。略称が定義されていない場合には、その一般に認められている意味を有する。
【0124】
ACN=アセトニトリル
DCM=ジクロロメタン
EtOAc=酢酸エチル
eq=当量
g=グラム
h=時間
J=ジュール
kg=キログラム
kV=キロボルト
LC/MS=液体クロマトグラフィ/質量分析法
MeOH=メタノール
min=分
mA=ミリアンペア
mg=ミリグラム
mL=ミリリットル
mm=ミリメートル
mmol=ミリモル
MTBE=メチルtert-ブチルエーテル
μg=マイクログラム
μL=マイクロリットル
【0125】
(実施例1)
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート(2)
【0126】
ステップA:(2S)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]プロパン酸、テトラブチルアンモニウム塩
メタノール(1L)中のN-Boc-(L)-Dopa(175g、0.59mol)の溶液を、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1.0M、0.55L)のメタノール溶液と0℃で30分間、注意深く混合した。続いて、混合物を減圧下で濃縮し、トルエンと2回共沸させることにより乾燥させた。4℃で16時間冷却した後、残留物を結晶化させた。結果として生じた結晶性固体をアセトン(400mL×3)で洗浄し、ブフナー漏斗上に収集し、その後、高真空下で乾燥させて245g(83%収率)の表題化合物を得た。H NMR(400MHz,DMSO−d):δ0.94(t,J=7.6Hz,12H),1.30(m,17H),1.60(m,8H),3.18(m,8H),4.58(m,1H),5.68(d,J=5.6Hz,1H),6.30(d,J=7.6Hz,1H),6.46(d,J=8.0Hz、1H),6.51(s,1H),8.85(s,1H);8.94(s,1H)。
【0127】
ステップB:(1R)-2-ブロモ-1-メチルエチル安息香酸塩
ベンゼン(200mL)中の、(2R)-プロピレングリコール(20.0g、262.8mmol)、ベンズアルデヒド(33.4mL、328.6mmol、1.25eq)、およびp-トルエンスルホン酸(2.5g、0.05eq)の溶液を、ディーンスターク装置によって脱水し、8時間還流させた。冷却した溶液をジエチルエーテル(100mL)で希釈し、NaOH水溶液(15%、100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。ろ過後、減圧下で溶媒を除去し、44gの粗ベンズアルデヒド(2R)-プロピレングリコールアセタールを油として得た。
【0128】
ヘキサン(100mL)中の、上記の粗ベンズアルデヒド(2R)-プロピレングリコールアセタール(10.0g、60.9mmol)の溶液に、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)(11.9g、67mmol、1.1eq)を添加した。結果として生じた混合物を、室温で一晩攪拌した。懸濁液をセライトでろ過し、ろ液をヘキサン(300mL)で希釈し、飽和NaHCO(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。ろ過後、減圧下で溶媒を除去し、表題化合物(定量的収率)を油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ1.48(d,J=6.4Hz,3H),3.58(m,2H),5.31(m,1H),7.43(t,J=7.6Hz,2H),7.53(t,J=7.6Hz,1H),8.05(d,J=7.2Hz,2H)。
【0129】
ステップC:(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート(2)
N,N-ジメチルアセトアミド(100mL)中の、(1R)-2-ブロモ-1-メチルエチル安息香酸塩(4.98g、20.6mmol)、N-Boc-L-DOPA-COOH(7.3g、25mmol)、および重炭酸セシウム(4.85g、25mmol)の懸濁液を、55℃で16時間攪拌した。真空下で溶媒を蒸発させた。残留物に酢酸エチルを添加し、結果として生じた溶液を、水、続いて5%NaHCO、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去した後、残留物のクロマトグラフィ(シリカゲル、ヘキサン中30%酢酸エチル)により、6.3g(68%収率)の表題化合物2を白色固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ1.25(s,9H),1.40(d,J=6.4Hz,3H),2.99(dd,J=7.6,14.4Hz,1H),3.10(dd,J=5.6,14.4Hz,1H),4.24(dd,J=5.6,7.4Hz,1H),4.38(dd,J=6.8,11.6Hz,1H),4.52(dd,J=3.2,11.6Hz,1H),5.40(m,1H),6.53(dd,J=2.2,8.4Hz,1H),6.66(d,J=2.2Hz,IH),6.69(d,J=8.4Hz,1H),7.47(t,J=7.6Hz,2H),7.60(t,J=7.6Hz,1H),8.02(d,J=7.6Hz,2H)。MS(ESI)m/z360.15(M+H)および358.09(M−H)
【0130】
(実施例2)
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート(1)
【0131】
方法1:
ステップA:(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート塩酸塩(3)
ジオキサン中、50mLの4N HCl中の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート2(6.3g、13.7mmol)の溶液を、室温で30分間攪拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。結果として生じた残留物を、約20mLの無水アセトニトリルおよび4mLのエーテルに溶解した。溶液を冷蔵庫に入れ、結果として生じた白降汞をろ過し、エーテルで洗浄し、真空下で乾燥させて、4.7g(87%収率)の塩酸塩3を白色固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ1.40(d,J=6.4Hz,3H),2.99(dd,J=7.6,14.4Hz,1H),3.10(dd,J=5.6,14.4Hz,1H),4.24(dd,J=6,8Hz,1H),4.38(dd,J=6.8,11.6Hz,1H),4.52(dd,J=3.2,11.6Hz,1H),5.40(m,1H),6.52(dd,J=2.2,8.4Hz,1H),6.66(d,J=2.2Hz,1H),6.69(d,J=8.2Hz,1H),7.47(t,J=7.6Hz,2H),7.60(t,J=7.6Hz,1H),8.02(d,J=7.6Hz,2H)。MS(ESI)m/z360.15(M+H)および358.09(M−H)
【0132】
ステップB:(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート(1)
水(80mL)中のNaHCO(9.87g、117.5mmol)の溶液を、水(300mL)の塩酸塩3(31.0g、78.3mmol)の溶液にゆっくりと添加した。結果として生じた水性懸濁液を、EtOAc(2×400mL)で抽出した。一緒にしたEtOAc抽出物を、水、続いてブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。メタンスルホン酸(6.04mL、93.12mmol)を、攪拌しながらEtOAc溶液にゆっくりと添加した。メタンスルホン酸の添加が完了すると直ちに、白降汞が形成された。懸濁液をさらに30分間攪拌した後、ろ過した。ろ過ケーキをEtOAcで3回洗浄し、一晩真空乾燥させて、35.4g(当量)のメシラート塩1を白色固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ1.40(d,J=6.4Hz,3H),2.70(s,3H)、2.98(dd,J=7.8,14.6Hz,1H),3.10(dd,J=5.6,14.4Hz,1H),4.24(dd,J=5.8,7.8Hz,1H),4.38(dd,J=6.8,12.0Hz,1H),4.52(dd,J=3.4,11.8Hz,1H),5.40(dp,J=3.2,6.4Hz,1H),6.52(dd,J=2.2,8.2Hz,1H),6.67(d,J=2.2Hz,1H),6.69(d,J=8.0Hz,1H),7.47(t,J=7.6Hz,2H),7.60(brt,J=7.4Hz,1H),8.01(d,J=7.6Hz,2H)。MS(ESI)m/z360.07(M+H)および358.01(M−H)
【0133】
方法2:
メタンスルホン酸(3.9mL、60.1mmol)を、1,4-ジオキサン(30mL)中の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート2(11.0g、22.1mmol)の溶液に、室温で攪拌しながらゆっくりと添加した。反応混合物を2時間攪拌した。当該溶液を、強く攪拌しながら、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)(600mL)にゆっくりと添加した。結果として生じた懸濁液をろ過した。ろ過ケーキをメチルtert-ブチルエーテルで3回洗浄し、自然乾燥させて、5.48g(54%収率)のメシラート塩1をオフホワイトの固体として得た。
【0134】
方法3:
34mL(6.0eq)の4.0N HCl/1,4-ジオキサン中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート2(10.5g、21.1mmol)の溶液を、室温で1時間攪拌した。反抗混合物に、室温で攪拌しながら、メタンスルホン酸(1.48mL、22.8mmol)をゆっくりと添加した。溶液を真空下で濃縮し、メシラート塩1を褐色固体として得た。
【0135】
(実施例3)
結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート(1)の調製
70℃の200mLのイソプロパノール中に、メシラート塩1(10.0g,22.0mmol)を溶解し、結果として生じた溶液を室温まで冷却した。ろ過して、5.8g(58%収率)の結晶性メシラート塩1を白色結晶性固体(融点160.5〜161.3℃)として得た。
【0136】
メシラート塩1の結晶化を、表1に列挙するものを含む種々の単一成分または成分混合溶媒中において行った。示差走査熱量測定(DSC)を使用し、種々の溶媒によって産出されたメシラート塩1の結晶形態の数を評価した。イソプロパノール中における結晶化によって得られた結晶性メシラート塩1のDSCサーモグラムを、図1に示す。
【0137】
表1に列挙する各溶媒から結晶化された結晶性メシラート塩1のDSC分析は、165.8±1.1℃(走査速度10℃/分または15℃/分)における単一の急激なピークによって表される吸熱事象を示した。表1は、メシラート塩1の結晶化に使用した溶媒の例、ならびに対応するDSCパラメータ、吸熱温度(℃)、およびΔH(J/g)を示すものである。
【表1】

【0138】
(実施例4)
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート(1)の合成および結晶化
塩酸塩3(65.0g、164mmol、200mL)の水溶液に、NaHCO水溶液(20.7g、246mmol、200mL)を添加し、その後、EtOAc(2×400mL)で抽出した。溜まった有機抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させた。ろ過後、室温で攪拌しながら、ろ液にメタンスルホン酸(12.8mL、197mmol)をゆっくりと添加した。結果として生じた白色結晶をガラス漏斗でろ過し、EtOAc(3×1000mL)で洗浄し、50℃の高真空下で乾燥させて、73.6g(98.4%収率)のメシラート塩1を得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ1.40(d,J=6.4Hz,3H),2.70(s,3H),2.98(dd,J=7.8,14.6Hz,1H),3.10(dd,J=5.6,14.4Hz,1H),4.24(dd,J=5.8,7.8Hz,1H),4.38(dd,J=6.8,12.0Hz,1H),4.52(dd,J=3.4,11.8Hz,1H),5.40(dp,J=3.2,6.4Hz,1H),6.52(dd,J=2.2,8.2Hz,1H),6.67(d,J=2.2Hz,1H),6.69(d,J=8.0Hz,1H),7.47(t,J=7.6Hz,2H),7.60(brt,J=7.4Hz,1H),8.01(d,J=7.6Hz,2H)。MS(ESI)m/z360.07(M+H)および358.01(M−H)
【0139】
(実施例5)
結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート(1)のX線粉末回折(XRPD)分析
XRPD分析は、CuKα放射線を用いる島津製作所XRD-6000X線粉末回折装置を使用して実行した。当該機器は、高精度焦点X線管を搭載するものであった。管電圧および管電流はそれぞれ40kVおよび40mAに設定した。発散および散乱スリットは1°に設定し、受光スリットは0.15mmに設定した。NaIシンチレーション検出器を使用して、回折される電磁波を検出した。3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)で、2.5〜40°2θのθ-2θ連続走査を使用した。シリコン標準を分析することにより、機器のアライメントを確認した。XRD-6000バージョン4.1のソフトウェアを使用して、データを回収および分析した。イソプロパノール中1%のHO、イソプロパノール、MeOH/MTBE(1:7)、MeOH/MTBE(1:5)中0.5%のHO、およびアセトニトリル中1%のHOから結晶化された結晶性メシラート塩1の、5つの代表的な回折パターンを、それぞれ図2〜6に示す。同様の回折角における明らかに分解されたピークの存在は、これらの溶媒からの結晶化時に、メシラート塩1の同じ結晶形態が産出されたことを裏付けるものである。
【0140】
(実施例6)
ラットにおける、レボドパプロドラッグおよびカルビドパの投与後の、レボドパプロドラッグの摂取
約6時間〜約24時間の期間にわたってゆっくりと薬物を放出する持続放出経口剤形は一般に、かなりの割合の薬物を結腸内で放出する。したがって、そのような剤形に使用するのに適した薬物は、結腸吸収されるべきである。この実験は、カルビドパ(結腸内、腹腔内、または経口)との同時投与でレボドパプロドラッグメシラートを結腸内投与した後の、レボドパの摂取および結果として生じた血漿/血液中濃度を評定し、それによって、経口持続放出剤形においてレボドパプロドラッグメシラートを使用することの適切性を判断するために行ったものである。レボドパプロドラッグメシラートとカルビドパを同時投与した後の、レボドパのバイオアベイラビリティを、レボドパとカルビドパの経口同時投与と比較して算出した。
【0141】
ステップA:投与プロトコル
ラットを購入し、上行結腸および頸静脈の両方に予めカニューレを挿入した。実験時、動物は意識がある状態であった。すべての動物を、一晩およびレボドパプロドラッグ投薬の4時間後まで断食させた。水またはクエン酸緩衝液中の溶液として、経口、腹腔内、または結腸内で、カルビドパ25mg/kgに相当する用量のカルビドパを投与した。カルビドパ投薬と同時に、またはその1時間後、レボドパHCl塩または(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート1を、カニューレを介し、レボドパ75mg/kgに相当する用量で、溶液として(水中に入れて)直接結腸に投与した。頸静脈カニューレから8時間間隔で血液試料(0.3mL)を得て、レボドパおよびレボドパプロドラッグの酸化を防止するために、メタ重亜硫酸ナトリウムを用いて直ちにクエンチした。レボドパプロドラッグの加水分解を防止するために、血液をメタノール/過塩素酸でさらにクエンチした。血液試料を、以下で説明するように分析した。
【0142】
ステップB:結腸吸収される薬物のための試料調製
メタノール/過塩素酸(300μL)を、ブランクの1.5mLエッペンドルフ管に添加した。ラットの血液(300μL)を、75μLのメタ重亜硫酸ナトリウムを収納するEDTA管内に異なる時刻に収集し、ボルテックスして混合した。固定容量の血液(100μL)を直ちにエッペンドルフ管に添加し、ボルテックスして混合した。10マイクロリットルのレボドパの標準原液(0.04、0.2、1、5、25、および100μg/mL)および10μLの10%メタ重亜硫酸ナトリウム溶液を80μLのブランクラットの血液に添加し、最終較正基準(0.004、0.02、0.1、0.5、2.5、および10μg/mL)を作成した。その後、20μLのp-クロロフェニルアラニンの添加に続いて、メタノール/過塩素酸(300μL、50/50)を各管に添加した。試料をボルテックスし、14,000rpmで10分間、遠心分離した。上清をLC/MS/MSで分析した。
【0143】
ステップC:LC/MS/MS分析
分析においては、Agilent 1100バイナリポンプおよびCTC HTS-PALオートサンプラを搭載するAPI4000 LC/MS/MSスペクトロメータを使用した。分析中は、Zorbax XDB-C8 4.6×150mmカラムを使用した。移動相は、(A)0.1%ギ酸、および(B)0.1%ギ酸を有するアセトニトリルであった。勾配条件は、0.5分間5%B、続いて3分間で98%Bとし、その後、2.5分間98%Bで維持した。続いて、移動相を2分間、2%に戻した。TurboIonSprayソースをAPI4000に使用した。正イオンモードで分析を行い、標準液を使用して、各検体のMRM遷移を最適化した。各試料を5μL、注射した。WinNonlinソフトウェア(プロフェッショナルバージョン3.1、Pharsight Corporation、カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用して、個々の動物プロファイルのノンコンパートメント解析を実行した。Cmax(投薬後のピーク観測濃度)、Tmax(最高濃度までの時間は、ピーク濃度が観測された時刻である)、AUC(0−t)(対数-線形台形法を使用して概算された、時刻ゼロから最終収集時刻までの血清中濃度-時間曲線下の面積)、AUC(0−∞)(無限大に外挿する最終収集時刻までの対数-線形台形法を使用して概算された、時刻ゼロから無限大までの血中濃度時間曲線下の面積)、および、t1/2,z(終末半減期)について、主なパラメータ推計の要約統計を実行した。
【0144】
血中におけるレボドパの最高濃度(Cmax値)および(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート1をカルビドパと共に結腸内投薬した後の血中濃度-時間曲線下の面積(AUC)の値は、カルビドパを伴うレボドパの結腸投与について実現された値よりも有意に高い(>2倍)ものであった。
【0145】
レボドパとカルビドパの結腸内同時投与は、レボドパの極めて低い相対的バイオアベイラビリティ(すなわち、レボドパとカルビドパを経口同時投与した場合の3%のみ)をもたらす。対照的に、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート1とカルビドパの同時投与は、少なくとも2倍改良されたレボドパの相対的バイオアベイラビリティを呈した。データは、いくつかのレボドパプロドラッグが、有効な持続経口放出、ならびに、レボドパプロドラッグメシラートおよび/またはレボドパの、結腸からの摂取に適した組成物として製剤化され得ることを実証するものである。
【0146】
(実施例7)
パーキンソン病を治療するための、結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート(1)の使用
以下の臨床研究を使用して、パーキンソン病を治療する上での、結晶性メシラート塩1の有効性を評定することができる。
【0147】
運動変動および規定の短期間のレボドパ反応性(1.5〜4時間)によってQueen Square Brain Bankの基準(Gibbら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 1988年、51、745−752)を満たす特発性パーキンソン病を患っている患者が適格である。現在の薬剤の毎朝の投薬後の、臨床的に重要な最高用量のジスキネジーは、さらなる必須条件である。患者は、研究を開始する前、少なくとも1ヶ月の間、固定用量の治療で安定していることも要求される。現在の投薬計画に、レボドパ、COMT阻害薬、セレギリン、抗コリン薬、または消化管吸収を潜在的に妨げ得るその他の薬物(例えば、制酸剤)の徐放製剤が含まれている場合、その患者は除外される。その他の除外基準としては、精神病の症状を有する患者、または抗精神病薬投与を受けている患者、MMS(Mini Mental State;ミニメンタルステート)スコアが24未満(Folsteinら、J Psychiatr Res、1975年、12、189−198)として定義される、臨床的に重要な認識機能障害、妊娠の可能性、オフ状態におけるHoehn-Yahr重症度分類5度、重度の不安定型糖尿病、ならびに、不安定型循環器疾患または中度から重度の腎臓もしくは肝障害等の医学的症状を有する患者を含む。ベースライン時および研究の完了後に、総赤血球カウント、肝臓および腎臓の機能血液検査を行う。
【0148】
無作為化二重盲式クロスオーバー研究デザインを使用する。LD/DC、または試験化合物の2回分用量のうち一方が、3つの連続するセッションにおいて、ダブルダミー方式で単回投与チャレンジにより投与される順序で、各患者を無作為に選ぶ。無作為化は、研究へのエントリの順序にしたがって各患者に割り当てられた、コンピュータ生成の治療番号によって為される。
【0149】
患者は、週に一度の間隔で、3つの異なる機会に、入院して一晩滞在し、翌朝、結晶性メシラート塩1の投与を受ける。前日の深夜からすべての抗パーキンソン病薬剤を離脱しておき、朝、絶食条件下で各患者に対し全く同時に結晶性メシラート塩1を投与する。
【0150】
プラシーボまたは結晶性メシラート塩1を受ける順序で、患者を無作為で選ぶ。結晶性メシラート塩1の薬物動態は、血漿中レボドパ濃度を経時的に監視することによって評定することができる。投与前に、22G静脈内カテーテルを患者の前腕に挿入する。ベースライン時、ならびに、結晶性メシラート塩1を投与してから15、30、45、60、75、90、105、120、140、160、180、210、および240分後、または薬物摂取240分後よりも早く完全オフ状態が生じた場合には、そうなるまで、5mlずつの血液試料を採取する。各評定の終了時、直ちに試料を遠心分離し、アッセイ時まで冷凍保存する。血漿中レボドパおよび3-O-メチル-ドパ濃度を、高圧液体クロマトグラフィ(High-Pressure Liquid Chromatography;HPLC)によって評定する。ルーチンの血液学、血糖、肝臓および腎臓機能の最終評定時に、さらなる血液を引き込んでもよい。
【0151】
臨床的評価のために、UPDRS(United Parkinson’s Disease Rating Scale;米国パーキンソン病評価尺度)運動スコア、および、患者のより影響が出ているほうの手をラップトップコンピュータのキーボード上に乗せて実行される叩き試験であるBrainTest(Giovanniら、J Neurol Neurosurg Psychiatiy 1999年、67、624−629)を使用して運動機能を評定する。これらの試験は、ベースライン時、続いて各血液試料の直後、患者が完全オン段階になるまで、その後、患者がベースラインオフ状態になるまで、20分および30分間隔で3回行われる。患者が完全オン状態になると、ビデオ録画が20分間隔で3回実行される。ジスキネジーを増大させる(Duriffら、Mov Disord 1999年、14、242−245)ことが分かっている以下の精神作業および運動作業を、各ビデオセッション中に監視する。(1)1分間じっと座っていること、(2)暗算を実行すること、(3)上着を着てボタンを掛けること、(4)コップを持ち上げて水を飲むこと、および(5)歩くこと。試験化合物によって誘発されたジスキネジーにおける増大の可能性を文書化するために、例えばGoetzの評価尺度および異常不随意運動尺度のバージョンを使用して、ビデオテープを採点する。
【0152】
ジスキネジーの実際の発生および重症度は、ジスキネジーモニタを用いて計測される(Mansonら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 2000年、68、196−201)。当該デバイスは、患者の肩のより影響が出ている側にテープで留められる。モニタは、チャレンジ中のセッションの全時間を録画し、発生中のジスキネジーの頻度および重症度の計測結果を提供する。
【0153】
適切な統計的方法を使用して、結果を分析することができる。
【0154】
最後に、本願において開示した実施形態を実装する代替的手法があることに留意すべきである。したがって、本実施形態は、制限的なものではなく例示的なものとしてみなされるべきものである。さらに、特許請求の範囲は本願に記載の詳細に限定されるものではなく、それらの全範囲およびその均等物の権利を有する。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】イソプロパノールから結晶化された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【図2】イソプロパノール中1%の水から結晶化された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのX線粉末回折パターンを示す。
【図3】イソプロパノールから結晶化された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのX線粉末回折パターンを示す。
【図4】メタノール/メチル-tert-ブチルエーテル(1:7)から結晶化された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのX線粉末回折パターンを示す。
【図5】メタノール/メチル-tert-ブチルエーテル(1:5)中0.5%の水から結晶化された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのX線粉末回折パターンを示す。
【図6】アセトニトリル中1%の水から結晶化された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのX線粉末回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラート。
【請求項2】
結晶形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、5.0±0.2、8.5±0.2、13.6±0.2、15.0±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、20.4±0.2、21.1±0.2、25.0±0.2、25.8±0.2、28.2±0.2、30.1±0.2、および37.6±0.2で特性ピーク(°2θ)を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記結晶形態は、約164.5±2.5℃で吸熱ピークを有する示差走査熱量測定サーモグラムを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
医薬的に許容される賦形剤と、治療有効量の、請求項1および2のいずれか一項に記載の化合物とを含む、医薬組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の医薬組成物と、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートのジアステレオマー純度が少なくとも約90%である、2-フェニルカルボニルオキシプロピル-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの少なくとも1つのその他のジアステレオマー。
【請求項7】
L-芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤をさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害剤をさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
持続放出経口投与用に製剤化された、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
治療有効量の、請求項1および2のいずれか一項に記載の化合物を、そのような治療を必要とする患者に投与するステップを含む、患者における疾患を治療する方法。
【請求項11】
前記疾患はパーキンソン病である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患は、うつ病、注意力欠如障害、統合失調症、躁うつ病、認知機能障害、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、遅発性ジスキネジー、ハンチントン病、トゥレット症候群、高血圧症、嗜癖障害、うっ血性心不全、および日中の過度の眠気から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製する方法であって、
溶媒中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの溶液を提供するステップと、
前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩に変換するために酸を添加するステップと、
前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩を(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに変換するためにメタンスルホン酸を添加するステップと、
前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを前記溶媒から単離するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記溶媒は、ジクロロメタンおよびジオキサンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製する方法であって、
溶媒中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの溶液を提供するステップと、
前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに変換するためにメタンスルホン酸を添加するステップと、
前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを前記溶媒から単離するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、およびジオキサンから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製する方法であって、
溶媒中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの溶液を提供するステップであって、前記溶媒中の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの溶解度は温度依存性である、ステップと、
前記溶媒中の(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートの前記溶解度を低下させるために、前記溶液の温度を変化させるステップと、
結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを前記溶媒から単離するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記溶媒は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチル-tert-ブチルエーテル、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、ギ酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、および前述のもののいずれかの混合物から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを調製する方法であって、
第1の溶媒中の、(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの溶液を提供するステップと、
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩を提供するために、前記tert-ブトキシカルボニル基を酸で脱保護するステップと、
前記第1の溶媒を除去し、前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩に水を添加するステップと、
(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを提供するために、前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアート酸塩を塩基で中和するステップと、
第2の溶媒で、前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを抽出するステップと、
前記(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートを結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートに変換するために、前記抽出された(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートにメタンスルホン酸を添加するステップと、
前記結晶性(2R)-2-フェニルカルボニルオキシプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートメシラートを前記第2の溶媒から単離するステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記第1の溶媒は、ジクロロメタンおよびジオキサンから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル、および酢酸エチルとイソプロパノールの混合物から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
各ステップにおける前記溶液の温度は、約25℃である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
脱保護するステップは、塩酸、トリフルオロ酢酸、およびメタンスルホン酸から選択される酸を前記溶液に添加するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
中和するステップは、NaHCOおよびKHCOから選択される塩基を前記溶液に添加するステップを含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−520690(P2009−520690A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543539(P2008−543539)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/046273
【国際公開番号】WO2007/067495
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506400373)ゼノポート,インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】