説明

レーザめっき装置およびめっき部材

【課題】被めっき材上の微小領域を高位置精度で部分めっきすることが可能なレーザめっき装置およびこのレーザめっき装置によりめっきされためっき部材を提供すること。
【解決手段】被めっき材80にめっき液を接触させるめっき槽12と、めっき液中を通過する被めっき材80にレーザ照射して被めっき材80上にめっき金属を析出させるレーザ発振器14と、被めっき材80を搬送してめっき槽12中のめっき液に通過させる搬送機器16と、搬送される被めっき材80の位置決め孔の位置を検出するための光電センサ18と、レーザ光の光路上に配置されレーザ光を走査可能なガルバノミラー22を有し光電センサ18による位置決め孔の位置検出によりレーザ光を走査開始位置に走査復帰させるガルバノスキャナ20とを備えたレーザめっき装置10とする。また、レーザめっき装置10により微細にスポットめっきされためっき部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザめっき装置およびめっき部材に関し、さらに詳しくは、コネクタ端子の接点部分などの微小領域へのめっき形成に好適に用いられるレーザめっき装置およびそのレーザめっき装置によりめっきされためっき部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、コネクタ、スイッチなどの接点部品や、リード材などの電気・電子部品は、電気的な接続信頼性や耐食性などを向上させるために、相手部材との接続箇所や端子部分に錫や貴金属などの金属めっきが施されている。
【0003】
特に、より高い接続信頼性が求められる箇所には、金、パラジウム、銀などの貴金属やその合金からなる金属めっきが施されることがある。この場合、貴金属は価格が高いため、めっきを必要とする部分以外の部分にもめっきをすると、これらの部品の製造コストを高くすることになる。そのため、このような部品には、めっきを必要とする部分に選択的にめっきを施す部分めっきが施されている。
【0004】
近年、電気・電子機器の小型化に伴い、電気・電子機器に用いられる接点部品や電気・電子部品なども小型化されてきており、これらの部品に施されるめっきの領域は微小領域になってきている。めっき領域が微小領域になると、めっきスポットの位置精度がより求められる。
【0005】
例えば、電気接点部を内部に有するコネクタめす端子を製造しようとする場合、薄帯板材に硬質金めっきを微小スポットに部分めっきした後、プレス加工してキャリアフレームに多数の端子が並んだ連結体を形成する。このとき、めっきスポットを小さくするには、めっき後工程のプレス加工との位置ずれが生じないように、めっきスポットの位置精度を高める必要がある。
【0006】
このような、被めっき材上の微小領域に位置精度良く部分めっきするめっき装置としては、例えば特許文献1に記載されるめっき装置がある。特許文献1には、被めっき材を通過させるホイール形ガイド手段と、被めっき材に所望の点状めっきを形成するための形状の流路を設けたエンドレスマスク手段とを有するめっき装置が開示されている。
【0007】
このエンドレスマスク手段は、相互に独立し長手方向に相互に運動可能に結合されたマスク・セグメントを有しており、各マスク・セグメントは、被めっき材に形成された位置決め孔に係合するパイロットピンを有している。このパイロットピンを被めっき材の位置決め孔に係合させることにより、被めっき材のめっきスポットにマスク・セグメントを位置調整して、被めっき材上の微小領域に位置精度良く部分めっきをする。
【0008】
【特許文献1】特許第2645201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されるめっき装置では、マスク手段を用いるため、微小化されるめっきスポットに対応したマスクの形成に限界があり、めっきスポットの微小化には限界があった。また、加圧されためっき液をマスク開口部に流し込んでめっきをするため、めっき液流の回り込みが不均一になりやすいなどの点においても、めっきスポットの微小化には限界があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、被めっき材上の微小領域を高位置精度で部分めっきすることが可能なレーザめっき装置およびこのレーザめっき装置によりめっきされためっき部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係るレーザめっき装置は、被めっき材のめっきする部分を位置決めする位置決め孔を有する被めっき材のめっきする部分にめっき液を接触させるめっき液接触手段と、前記めっき液に接触する前記被めっき材のめっきする部分に照射して前記被めっき材上にめっき金属を析出させるレーザ光を発生させるレーザ発振手段と、前記被めっき材を搬送して前記めっき液接触手段に通過させる被めっき材搬送手段と、前記被めっき材搬送手段により搬送される前記被めっき材の位置決め孔が予定位置にきたことを検出する位置検出手段と、前記レーザ光の光路上に配置され前記レーザ光を走査可能な可動ミラーを有し、前記めっき液中を搬送される被めっき材の同一のめっきする部分に前記レーザ光を追随走査させるとともに、前記位置検出手段による予定位置の検出により前記レーザ光を追随走査の開始した位置に走査復帰させるレーザ光走査手段と、を備えることを要旨とする。
【0012】
この場合、前記位置検出手段としては、光電センサや画像処理装置を好適に示すことができる。
【0013】
また、前記位置検出手段としては、前記被めっき材の位置決め孔に係合する係合部を有する回転手段と、前記回転手段に取付けたロータリーエンコーダとで構成されるものを好適に示すことができる。
【0014】
このとき、前記位置検出手段による予定位置の検出と、前記レーザ光走査手段による前記レーザ光の追随走査を開始した位置への走査復帰との同期を電子制御で行なうことが望ましい。
【0015】
また、本発明に係るレーザめっき装置は、被めっき材にめっき液を接触させるめっき液接触手段と、前記被めっき材の搬送と搬送停止とを繰り返す間欠搬送をして前記被めっき材を前記めっき液接触手段に通過させる被めっき材間欠搬送手段と、前記めっき液に接触する前記被めっき材に前記搬送停止しているときに照射して前記被めっき材上にめっき金属を析出させるレーザ光を発生させるレーザ発振手段と、前記レーザ発振手段のレーザ照射位置に対して一定の相対位置に軸を固定され昇降運動する昇降ピンを有し、前記昇降ピンを前記被めっき材に貫通させて前記レーザ発振手段による被めっき材へのレーザ照射位置を位置決めする位置決め手段と、を備えることを要旨とする。
【0016】
この場合、前記被めっき材間欠搬送手段による被めっき材の間欠搬送と、前記位置決め手段による昇降ピンの昇降運動とを、カムなどの機械的結合か、電子制御で連動させると良い。
【0017】
このとき、前記昇降ピンとしては、テーパ状の先端形状を有するパイロットピンを好適に示すことができる。そして、前記被めっき材には、めっきする部分を位置決めする位置決め孔があらかじめ形成されており、このパイロットピンは、前記被めっき材の前記位置決め孔に貫通されると良い。
【0018】
また、前記昇降ピンとしては、前記被めっき材を穿孔可能な先端形状を有するものを好適に示すことができる。そして、この昇降ピンは、被めっき材に穿孔して貫通されると良い。
【0019】
一方、本発明に係るめっき部材は、上記レーザめっき装置を用いて1以上の部分めっきが施されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るレーザめっき装置によれば、被めっき材搬送手段によりめっき液接触手段のめっき液中に被めっき材を搬送し、この被めっき材に追随してレーザ光走査手段によりレーザ光を走査し、被めっき材上の同一のめっきする部分を一定時間照射してめっきを形成する。このとき、レーザ光を照射した位置にめっきを形成するので、レーザ光の線束を微細に調整することにより、微小なめっきスポットを形成することができる。
【0021】
また、位置検出手段により位置決め孔が予定位置にきたことを検出して、レーザ光が走査開始位置に復帰され、被めっき材上の次のめっきする部分への照射を開始するので、微小なめっきスポットを形成する位置を、高精度で、位置決め孔の位置を基準とする一定の相対位置にすることができる。これにより、被めっき材上の微小領域を高位置精度で部分めっきすることができる。
【0022】
この場合、前記位置検出手段が光電センサまたは画像処理装置であれば、非接触で、高速かつ高精度に、位置決め孔の位置を検出することができる。このとき、被めっき材の搬送を連続的に行なうことが可能である。
【0023】
また、前記位置検出手段が、被めっき材の位置決め孔に係合する係合部を有する回転手段と、この回転手段に取付けたロータリーエンコーダとで構成されていれば、高速かつ高精度に、位置決め孔の位置を検出することができる。このとき、被めっき材の搬送を連続的に行なうことが可能である。
【0024】
そして、前記位置検出手段による予定位置の検出と、前記レーザ光走査手段による前記レーザ光の追随走査を開始した位置への走査復帰との同期を電子制御で行なうと、高速かつ高精度にこれらを同期させることができる。
【0025】
また、本発明に係る他のレーザめっき装置によれば、被めっき材間欠搬送手段によりめっき液接触手段のめっき液中に被めっき材を間欠搬送し、搬送停止しているときにレーザ発振手段によりレーザ照射して、被めっき材上の微小領域に部分めっきをすることができる。このとき、搬送停止している被めっき材に位置決め手段の昇降ピンを貫通させて、レーザ発振手段による被めっき材へのレーザ照射位置を位置決めする。この昇降ピンは、レーザ発振手段のレーザ照射位置に対して一定の相対位置に軸を固定されて昇降運動するので、被めっき材上の一定の位置に高精度で微小なめっきをすることができる。
【0026】
この場合、前記被めっき材間欠搬送手段による被めっき材の間欠搬送と、前記位置決め手段による昇降ピンの昇降運動とを、カムなどの機械的結合か、電子制御で連動させると、高速かつ高精度でレーザ照射位置を位置決めすることができる。
【0027】
このとき、前記被めっき材にはめっきする部分を位置決めする位置決め孔があらかじめ形成されて、前記昇降ピンがテーパ状の先端形状を有するパイロットピンであれば、パイロットピンを被めっき材の位置決め孔に貫通させることにより、被めっき材上のレーザ照射位置を、位置決め孔に対して一定の相対位置に高精度で調整することができる。
【0028】
また、前記昇降ピンが前記被めっき材を穿孔可能な先端形状を有していると、レーザ照射位置に対して一定の相対位置に位置決め孔を高精度で穿孔することができる。形成された位置決め孔は、めっき後に被めっき材をプレス加工などする際の位置決め孔に利用することができる。この場合、めっき工程前に位置決め孔を開ける工程が不要になり、工程短縮することができる。
【0029】
一方、本発明に係るめっき部材は、上記レーザめっき装置を用いて1以上の部分めっきが施されている。そのため、めっきスポットは、微小で位置精度に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るレーザめっき装置を表す模式図である。図2は、図1のめっき槽部分を拡大して示した平面図である。図3は、図1の光電センサと置き換え可能な、画像処理装置(a)、スプロケットとロータリーエンコーダとを組み合わせた装置(b)を表す模式図である。図4は、本発明の第二実施形態に係るレーザめっき装置を表す模式図である。図5〜図9は、本発明に係るめっき部材の実施形態を表す図である。
【0031】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るレーザめっき装置10は、被めっき材80にめっき液を接触させるためのめっき槽12と、めっき槽12のめっき液中を通過する被めっき材80に照射して被めっき材80上にめっき金属を析出させるためのレーザ光を発生させるレーザ発振器14と、被めっき材80に連続してレーザ照射するために被めっき材80を搬送してめっき槽12中のめっき液に通過させる搬送機器16と、搬送される被めっき材80の位置を検出するための光電センサ18と、レーザ光の光路上に配置されレーザ光を走査可能なガルバノミラー22を有するガルバノスキャナ20とを備えている。
【0032】
めっき槽12は、レーザめっき装置10の中央位置に配置されており、長尺の被めっき材80が搬送される方向と直交する方向にめっき液が流動する流路24が開口形成されている。めっき液の流路24内には、薄厚で外形が略長方形形状を有する陽極26が、被めっき材80が搬送される方向に沿って配置されている。この陽極26は、電解めっきを行なうための陽極であり、めっき液中に浸漬される。中心部分には、略長方形形状の開口窓が形成されており、開口窓の被めっき材80供給側の端が、レーザ光の走査開始位置となっている。レーザ光は、陽極26の開口窓内を走査される。
【0033】
めっき槽12の上面は、レーザ光が透過可能な石英ガラス板28で覆われており、被めっき材80表面を流れるめっき液の厚さを均一にして、めっき液表面の反射や屈折などによる照射スポットの乱れを抑えるようになっている。めっき槽12の外側には、流動するめっき液を回収して循環させるための回収槽30を備えている。回収槽30の底部には、めっき液吸引口32が突出しており、めっき液は、めっき槽12のめっき液出口34から流れ出た後、めっき液吸引口32から回収してポンプ等でめっき槽12のめっき液入口36に循環されるようになっている。
【0034】
レーザ発振器14は、多チャンネルのレーザダイオード制御回路38と接続される複数のレーザモジュール(レーザ光源)40を備え、これら複数のレーザモジュール40の出射先には、コリメータレンズ42を介してマルチモード光ファイバ44が配置されている。マルチモード光ファイバ44に入射するレーザ光は、ファイバ内で全反射を繰り返して導かれるので、マルチモード光ファイバ44から出射されるレーザ光は、ファイバの径方向全体に均一な強度分布となっている。
【0035】
複数のマルチモード光ファイバ44は、稠密に束ねられてファイバアレイ46を形成しており、レーザ光を多数集積することで、めっきするのに必要な加熱を与える出力が得られるようになっている。ファイバアレイ46の出射端には、出射端からのレーザ光をレーザ照射スポットとして結像する結像レンズ48を備えており、結像レンズ48は固定配置されている。すなわち、レーザ発振器14のレーザ光出射位置は、めっき液が流動するめっき槽12に対して固定されている。
【0036】
レーザ発振器14によりめっき液中を搬送される被めっき材80にレーザ照射されると、照射部分において被めっき材80が加熱され、被めっき材80上にめっきが形成される。出射端からのレーザ光の出射形状やビームパワープロファイルは、レーザモジュール40の個別のON/OFF調整や出力調整、ファイバアレイ46の束ね方で変更可能であり、めっきスポット形状の最適化が可能になっている。
【0037】
なお、複数のレーザモジュール40のそれぞれに複数のコリメータレンズ42を介して複数のマルチモード光ファイバ44が配置されているが、1つのレーザモジュール40を、ハーフミラーなどの光学分割器を用いてレーザ光を分割して、複数のマルチモード光ファイバ44に入射させるものであっても良い。
【0038】
被めっき材80の供給側上流には、搬送機器16が配置され、被めっき材80を連続的に搬送する。搬送機器16は、その内部に一対の搬送ロール50、50を備え、一対の搬送ロール50、50で被めっき材80を挟持しながら送り出すようになっている。送り出された被めっき材80は、搬送機器16からめっき槽12までの間に設けられている誘導ロール52によりめっき槽12に誘導される。誘導ロール52のいずれかは給電ロールになっており、図示しないめっき電源のマイナス側に接続されて陰極を構成している。
【0039】
搬送機器16からめっき槽12へと繋がる被めっき材80の搬送路には光電センサ18が配置され、搬送される被めっき材80の位置を検出する。すなわち、長尺の被めっき材80には、図2に示すようにめっきを形成する部分を位置決めするための位置決め孔82が形成されており、位置決め孔82が光電センサ18を通過するときに光電センサ18が位置決め孔82の位置を検出する。検出位置は、位置決め孔82に対して一定の相対位置にレーザ照射するための基準位置となり、被めっき材80上のめっきする部分を位置決めする。
【0040】
このとき、めっきを形成しようとする部分の直近の位置決め孔82を位置決めの基準とすることもできるし、直近の位置決め孔82以外の、例えばめっきを形成しようとする部分から離れた位置にある位置決め孔82を位置決めの基準とすることもできる。光電センサ18の配置位置などを考慮して適宜定めると良い。
【0041】
光電センサ18を用いて搬送される被めっき材80の位置を検出する場合には、被めっき材80に接触しないで非接触で検出が行えるため、被めっき材80の搬送が乱れにくい。また、非接触であることから、被めっき材80や光電センサ18自体が使用中に傷つきにくいため、長期使用に好適である。さらに、光電センサ18を用いることにより、応答速度が速く、高精度検出が可能となる。
【0042】
光電センサ18としては、可視光線や赤外線などの信号光を発射する投光器と、投光器に対向配置され検出物体の通過により投光器から発射された信号光の光量の変化を検出する受光器とを有する透過型の光電センサであっても良いし、信号光を発射する投光部と、投光部から発射された後反射板で反射された信号光を検出する受光部とを備える投受光器を有する反射型の光電センサであっても良い。
【0043】
光電センサが位置決め孔82を検出する方法としては、例えば、透過型の光電センサの場合には、対向する投光器・受光器間の光路を被めっき材80が遮ることで検出することができる。また、反射型の光電センサの場合には、投光部から発射された後反射板で反射される信号光を被めっき材80が遮ることで検出することができる。すなわち、光電センサの光路上に被めっき材80の位置決め孔82が到達し、通過するときに光路が遮られることにより位置検出することができる。
【0044】
なお、位置決め孔82は、被めっき材80を順送りするためにも使用される。被めっき材80は、銅合金などの長尺の板材よりなり、めっき工程の前または後で、プレス加工して所定の形状に打ち抜いた後、所定の形状に曲げ加工される。したがって、この位置決め孔82を加工工程(プレス工程や曲げ工程など)での位置決め孔82としても用いることができ、めっき工程と加工工程とで共用することにより、工程間での位置ずれを最小化することができる。
【0045】
レーザ発振器14から照射されるレーザ光の光路上には、レーザ光を反射させて被めっき材80上にレーザ光を誘導するガルバノミラー22が配置されている。ガルバノミラー22は、回動可能な可動ミラーであり、回動することによりレーザ光の反射角度をかえることができる。正逆方向に一定角度の回転を繰返し、ガルバノミラー22が一定周期で回動することにより、レーザ光の反射角度を一定範囲の反射角度にするとともに、レーザ光の走査開始位置と走査終了位置とをそれぞれ一定の位置にして一定周期でレーザ光を繰返し走査する。
【0046】
ガルバノミラー22は、このような動作をとり行なうガルバノスキャナ20の先端に取付けられており、ガルバノスキャナ20は、搬送速度と同じ速度にレーザ光が走査されるようにガルバノミラー22を一定速度で所定の角度だけ回転させて、ガルバノミラー22に反射されるレーザ光を被めっき材80に追随させるとともに、コントローラ54を介して光電センサ18からの信号を受けて、電子制御により、追随走査を開始した位置にレーザ光を走査復帰させるように、ガルバノミラー22の角度を調節する。
【0047】
このとき、位置決め孔82の位置と照射開始位置とは一定の相対位置になっているので、位置決め孔82の位置を基準として高位置精度でレーザ照射する。そして、光電センサ18による予定位置の検出と、ガルバノスキャナ20によるレーザ光の追随走査を開始した位置への走査復帰との同期を電子制御で行なうので、高速かつ高精度でこれらを同期させることができる。
【0048】
被めっき材80にレーザ走査する間、被めっき材80上の同一部分を照射しているので、レーザ走査している時間が、1箇所のめっきする部分に部分めっきを形成する時間となる。高エネルギーのレーザ光によるレーザ照射によりめっきを形成するので、従来のマスクを用いた湿式めっき方法と比較して、めっき時間は大幅に短縮され、例えば、1箇所あたり1/100秒〜数秒程度でめっきすることが可能である。
【0049】
上記光電センサ18は、搬送される被めっき材80の位置決め孔82が予定位置にきたことを検出する位置検出手段であるが、位置検出手段として、他の形態を示すことができる。
【0050】
例えば、上記光電センサ18に代えて、画像処理装置を用いることもできる。画像処理装置は、CCDカメラなどのカメラを有し、カメラでとらえた対象物の画像をデジタル信号に変換し、演算処理を行なうことで、対象物の位置などの特徴を抽出し、設定された基準を基に判定結果を出力することができるものである。
【0051】
画像処理装置を用いて被めっき材80上の位置決め孔82の位置検出を行なうには、図3(a)に示すように、搬送される被めっき材80上にCCDカメラ56を設置し、CCDカメラ56で被めっき材80上の位置決め孔82を撮像する。CCDカメラ56で撮像された映像はCCD上で画素に分割されて座標として認識され、撮像対象物である位置決め孔82の形状はグレー処理などによりパターン認識される。したがって、例えば、位置決め孔82の中心位置を計測し、位置決め孔中心が所定の位置にきたときに信号を出力することができる。コントローラ54を介して画像処理装置から出力された信号を受けて、電子制御により、追随走査の開始した位置にレーザ光を走査復帰させるように、ガルバノミラー22の角度を調節する。
【0052】
また、上記光電センサ18に代えて、図3(b)に示すように、被めっき材80の位置決め孔82に係合する係合部58aを有するスプロケット58と、このスプロケット58に取付けてスプロケット58の回転角を測量するロータリーエンコーダ60とで構成されるものを用いることもできる。これによれば、例えば、スプロケット58の係合部58aが所定位置にくるときの回転角をロータリーエンコーダ60で測量して所定位置にきたことを知らせる信号を出力することができる。このような構成によっても、高速かつ高精度に、位置決め孔82の位置を検出することができる。
【0053】
以上に示すレーザめっき装置10によれば、めっき液中を連続搬送される被めっき材80にレーザ光を追随走査して被めっき材80の同一部分を一定時間照射するとともに、連続搬送される被めっき材80にあらかじめ形成されている位置決め孔82が予定位置にきたことを検出したときにレーザ光を走査開始位置に走査復帰させ、被めっき材80上の次のめっきする部分への照射を開始する。
【0054】
すなわち、位置決め孔82の位置を基準とする被めっき材80上の一定の相対位置に、レーザ光が一定時間照射されることになる。このレーザ光の線束を微細に調整し、被めっき材80とめっき液との界面を局所的に加熱して、被めっき材80上の微小領域を高位置精度で部分めっきすることができる。
【0055】
また、被めっき材80をめっき液中に搬送する速度を確保しつつ、各々の被めっき材80のめっきする部分に照射するレーザ光量を十分に確保することができる。これにより、被めっき材80のめっき速度を速くすることができる。したがって、レーザ光を連続発振させたまま、被めっき材80のめっきする部分に連続して部分めっきすることができ、例えば、コネクタ端子金具などの量産めっきラインに適用可能である。
【0056】
次に、本発明の第二実施形態に係るレーザめっき装置を説明する。
【0057】
本発明の第二実施形態に係るレーザめっき装置70は、図4に示すように、被めっき材80にめっき液を接触させるためのめっき槽12と、被めっき材80を間欠搬送してめっき槽12中のめっき液に通過させる搬送機器72と、めっき槽12のめっき液中を通過する被めっき材80に照射して被めっき材80上にめっき金属を析出させるためのレーザ光を発生させるレーザ発振器14と、昇降運動可能なパイロットピン76を有し、搬送される被めっき材80にあらかじめ形成された位置決め孔82にこのパイロットピン76を貫通させてレーザ照射位置を位置決めするパイロットピン昇降機構74とを備えている。なお、めっき槽12およびレーザ発振器14の構成ならびに配置する位置は、上記第一実施形態に係るレーザめっき装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
搬送機器72は、被めっき材80の供給側上流に配置され、被めっき材80を一定周期で間欠搬送する。すなわち、一定周期で、被めっき材80を一定距離搬送した後、一定時間搬送停止し、再び一定距離搬送する動作を繰返し行なう。被めっき材80を間欠搬送する方式としては、例えば、一般的な、間欠回転方式や揺動回転方式などの動摩擦方式や、グリップ方式などの静摩擦方式などが挙げられる。
【0059】
間欠回転方式の搬送機器は、一対の搬送ロールを備えており、一対の搬送ロールで被めっき材80を挟持しながら送り出すようになっている。このとき、一対の搬送ロールが同時に間欠的に回転することにより、被めっき材80を間欠搬送することができる。
【0060】
揺動回転方式の搬送機器は、それぞれ固定された回転軸を有する扇状搬送部材一対を有しており、扇状搬送部材の曲面部分で被めっき材80を挟持しながら送り出すようになっている。一対の扇状搬送部材が同時に回転すると、それらの曲面部分が合わさっているときに被めっき材80を挟持して被めっき材80を送り出す状態となり、曲面部分が合わさっていないときには、被めっき材80の搬送が停止した状態となり、被めっき材80を間欠搬送することができる。
【0061】
グリップ方式の搬送機器は、被めっき材80との接触面がそれぞれ略平面であり被めっき材80を挟持する一対のグリップを有しており、一定距離の間を往復運動するようになっている。すなわち、被めっき材80を挟持した状態で一対のグリップが一定距離進んだ後、被めっき材80を離して、再び被めっき材80を挟持した位置まで復帰することにより、被めっき材80を間欠搬送することができる。
【0062】
送り出された被めっき材80は、搬送機器72からめっき槽12までの間に設けられている誘導ロール52によりめっき槽12に誘導される。搬送機器72からめっき槽12へと繋がる被めっき材80の搬送路には、昇降運動可能なパイロットピン76を有するパイロットピン昇降機構74が配置されている。このパイロットピン76の軸は、レーザ発振器14による固定されたレーザ照射位置に対して一定の相対位置に固定されている。長尺の被めっき材80には、めっきを形成する部分を位置決めするための位置決め孔82が形成されており、パイロットピン76は、その昇降運動により被めっき材80に形成された位置決め孔82に貫通され、レーザ照射位置を位置決めする。
【0063】
上述するように、被めっき材80は搬送機器72により間欠搬送される。すなわち、被めっき材80のめっきする部分がレーザ照射位置にきたときに一定時間停止し、レーザ照射されて部分めっきが形成された後、再び搬送される。
【0064】
このとき、被めっき材80に形成する位置決め孔82の間隔を一定にして、その間隔に合わせた間欠搬送をすれば、間欠搬送によりレーザ照射位置にめっきする部分を配置することができる。しかしながら、位置決め孔82の形成位置の誤差などによるずれや、間欠搬送の搬送時のずれなどに起因して、位置決め孔82の位置とレーザ照射位置との相対位置に若干のずれが生じることがある。
【0065】
このような場合において、本発明に係るレーザめっき装置70では、レーザ照射位置に対して一定の相対位置に軸を固定されたパイロットピン76を位置決め孔82に貫通させて位置決めするので、位置決め孔82の位置とレーザ照射位置との相対位置のわずかなずれを修正(微調整)してこれらの相対位置が常に高位置精度で一定に保たれるため、被めっき材80上に精度良く部分めっきを形成することができる。一定時間レーザ照射した後は、パイロットピン76が上昇して位置決め孔82から抜けて、次にめっきする部分を照射位置に搬送する送り動作が始まる。
【0066】
相対位置をより精度良く位置決めするには、パイロットピン76が位置決め孔82にちょうど収まることが好ましい。すなわち、パイロットピン76の外径が位置決め孔82の内径よりも若干小さいが、ほとんど等しいことが好ましい。このとき、パイロットピン76が位置決め孔82を貫通する際に、貫通しやすいように、パイロットピン76の先端形状はテーパ状であることが好ましい。
【0067】
パイロットピン昇降機構74は、可能であれば、レーザ照射位置のすぐ近くに配置され、その位置決めにおいて、めっきを形成しようとする部分の直近の位置決め孔82を位置決めの基準とすることもできるが、配置スペースの都合上、レーザ照射位置とは離れた位置に配置される。このような場合には、直近の位置決め孔82以外の、例えばめっきを形成しようとする部分から離れた位置にある位置決め孔82を位置決めの基準にすると良い。
【0068】
パイロットピン昇降機構74において、パイロットピン76を、ドリルやポンチなどの被めっき材80を穿孔可能な先端形状を有するものに替えれば、あらかじめ被めっき材80に位置決め孔82を開けておかなくても良くなる。ドリルやポンチなどはレーザ照射位置に対して一定の相対位置に軸を固定されるので、ドリルやポンチなどで被めっき材80に穿孔すれば、これが位置決め孔82となり、穿孔された孔の位置とレーザ照射位置とは一定の相対位置になって、常に、位置決め孔82に対して一定の相対位置に部分めっきを形成することができる。
【0069】
また、通常、プレス工程においては、金型内にパイロットピンを有しており、被めっき材80に設けられた位置決め孔82にパイロットピンを貫通させて位置決めした上でプレス加工する。すなわち、めっき後に被めっき材80をプレス加工により打ち抜きする場合には、プレス工程における位置決め孔82とすることができる。そして、めっき工程前に位置決め孔82を開ける必要がないので、工程を短縮することができる。
【0070】
搬送機器72による搬送と、パイロットピン昇降機構74によるパイロットピン76の昇降運動とは、2軸制御することができる。図4に示すように、ベルト78を介して機械的なカムによりパイロットピン76の昇降運動を搬送機器72の回転運動に連動させている。すなわち、カムにより、搬送機器72が被めっき材80を間欠搬送するときの搬送停止する周期に合わせて、パイロットピン昇降機構74のパイロットピン76を下降・上昇させるようにしている。なお、下降した後上昇するまでの時間は、レーザ照射時間に合わせている。
【0071】
このような、搬送機器72の回転運動とパイロットピン76の昇降運動とは、エンコーダとサーボモータとを組み合わせることにより、電子制御により同様の連動が可能となる。このように、カムなどの機械的結合か、電子制御で連動させると、高速かつ高精度でレーザ照射位置を位置決めすることができる。
【0072】
以上に示すレーザめっき装置70によれば、固定されたレーザ照射位置に対して一定の相対位置に軸を固定されたパイロットピン76を、めっき液中を間欠搬送される被めっき材80の位置決め孔82に貫通させて位置決めした状態で、被めっき材80の搬送停止中に、位置決め孔82と一定の相対位置となる被めっき材80の同一部分を一定時間照射して、部分めっきを高精度で形成することができる。これにより、レーザ光源を固定したままレーザ光を走査させなくとも、連続的にめっきすることができる。
【0073】
このとき、レーザ照射時に、被めっき材80とレーザ光の光軸ともに静止した状態にあるため、めっきスポットの位置精度に一層優れ、静止した状態で行なわれるプレス工程と同等以上の位置精度となる。
【0074】
そして、これらのレーザめっき装置10、70によれば、レーザ光を用いるため、レーザ光を用いない場合と比べて格段にめっき析出速度が速くなり、めっきする時間を短くできる。めっきする時間が短くなれば、例えば被めっき材80をめっき液に搬送してめっきする場合などにおいて、めっき時間と被めっき材80の移動速度の積で決まるめっき槽12の長さを短くすることができるので、めっきラインの設置面積を小さくすることができる。このように、めっき槽12が小さくなれば、めっき液の量を少なくできる。併せて、めっき液を高温に加熱する必要も無いので、めっき液の維持管理が容易となる。
【0075】
また、レーザ光を微小面積に収束して局所的にレーザ照射するので、被めっき材80のめっきスポットの微細化が可能となり、めっきに必要な金属の量を削減できる。
【0076】
さらに、被めっき材80表面のめっきしない部分をマスクするものではないので、マスクのような消耗品も必要ない。そして、めっき液を狭いマスク内に流す必要がないので気泡残留などによるスポット微細化の障害がない。さらに、ゴム製などのマスクを密着させる場合のような力が被めっき材80に加わらないため、端子材などが薄く微細な場合にも被めっき材80を変形させることがない。
【0077】
レーザ光の光源40としては、特に限定されるものではない。アルゴンイオンレーザでも適用可能であるし、半導体レーザでも適用可能である。例えば、コネクタ端子の接点部など耐摩耗性が要求される部分などに微細に硬質金めっきをするものに対しては、硬質金めっきを形成する金めっき液に吸収されにくく、被めっき材80に吸収されやすいレーザ光を発する半導体レーザを用いると良い。
【0078】
硬質金めっきを形成する金めっき液中にはコバルトイオンが含まれており、金めっき液の吸収波長は500nm前後である。この金めっき液の場合、吸収波長の範囲から外れる330nm以上450nm以下の範囲にある波長の半導体レーザなどを用いると良い。
【0079】
めっき金属としては、特に限定されるものではない。コネクタ端子などの電気接点部では、上述するように硬質金めっきに使用するコバルトイオンを含有させた金が特に好適であり、その他には、ニッケル添加金、金、銀、白金、パラジウムなどの貴金属や、ニッケル、錫など、一般的な金属めっきに使用されるめっき金属を用いることができる。
【0080】
被めっき材80は、上述するようにコネクタ端子の場合、銅合金が特に好適であるが、これに限定されるものではなく、上記のようなめっき金属によりめっきするものであれば良い。
【0081】
めっき方法は、めっき液を用いた湿式めっきであり、電解めっき、無電解めっきのいずれであっても良い。レーザ光を用いるので、いずれの方法においても、めっきするに際してめっき液を予め加熱しておく必要はなく、レーザ光によってめっき可能な温度までめっき液を局部的に加熱できるという利点がある。もちろん、レーザ光の加熱を補助するために、めっき液を予備加熱しても構わない。
【0082】
部分めっきする際には、レーザ光の照射による局部的な加熱でめっきを促進しているので、レーザ光の照射スポットが得られるならば、平面的な部分だけでなく、レーザ光の走査方向に対して傾きを持った面部分にもめっきすることができる。
【0083】
レーザ光源40またはレーザ光源40を含む光源光学系のレーザ光出射端は、1つに限定されるものではなく、複数あっても良い。レーザ光源40またはレーザ光源40を含む光源光学系のレーザ光出射端が複数ある場合、複数のレーザ光で同じ部分または異なる部分を同時に照射することができる。また、照射角度が異なる複数のレーザ光を同時に照射することができる。
【0084】
複数のレーザ光出射端からの複数のレーザ光で同一部分を照射する場合には、被めっき材80のめっきする部分に照射するレーザ光量が増えるので、めっきするのに必要な照射時間が短くなり、めっき速度を速くすることができる。複数のレーザ光で連続する複数の端子金具を同時に照射する場合にも、被めっき材80の搬送速度、すなわちめっきラインの生産性を、同時照射スポット数倍だけ向上できる。
【0085】
また、例えば、タブ状のオス型端子が挿入される筒状のメス型端子において、オス型端子のタブの一方の面(例えば上側の面)と接触する部分と、他方の面(例えば下側の面)と接触する部分とにめっきする場合、めっきする部分の形状または位置が異なる。このように、めっきする部分の形状または位置が異なる複数のめっきする部分を有するものに対して、複数のレーザ光で異なる部分を照射すれば、これらを同時にめっきすることができる。
【0086】
また、例えば、筒状の端子の周りへリング状にめっきするときには、照射角度を変えて筒状の端子の周りへ複数のレーザ光を照射することによりめっきが可能となり、板状の被めっき材80の表面と裏面に同時にめっきする場合には、照射角度を180°ずらした2つの対向するレーザ光源またはレーザ光源を含む光源光学系のレーザ光出射端によりめっきが可能となる。このように、照射角度を変えた複数のレーザ光を用いることで、平面的部分だけでなく立体的形状を有する部分へのめっきを一度に行なうことができる。
【0087】
部分めっきする際には、被めっき材80を搬送する方向およびレーザ光を照射する方向とは異なる方向にめっき液を流動させると良い。図2では、被めっき材80は右から左へと搬送され、レーザ光は紙面表から裏へと照射される。これに対し、めっき液は上から下へと流動するようになっている。つまり、めっき液は、被めっき材80を搬送する方向およびレーザ光を照射する方向の両方向に対して直交する方向に流動するようになっている。
【0088】
被めっき材80を搬送する方向およびレーザ光を照射する方向の両方向に対して完全に直交する方向でなくても良いが、両方向とは異なる方向にめっき液を流動させるようにすれば、被めっき材80上のめっき液の厚さを薄くしたり石英ガラス窓28を設けることが可能になる。
【0089】
そして、めっき液中に被めっき材80を搬送して連続的にめっきする場合と非連続的にめっきする場合とに拘らず、めっき液を流動させるようにすれば、被めっき材80のめっきする部分に常時金属イオン濃度の高い新鮮なめっき液が供給されるので、金属イオン濃度の低下によりめっき速度が低下するのを防止できる。
【0090】
被めっき材80にめっきする前には、被めっき材80を洗浄・表面活性化する前処理が施され、また、必要に応じて下地めっきする。一方、被めっき材80にめっきを施した後には、めっきされた被めっき材80を洗浄・乾燥等する。
【0091】
次に、本発明に係るめっき部材について説明する。
【0092】
本発明に係るめっき部材は、上述するレーザめっき装置を用いて1以上の部分めっきが施されている部材であり、レーザを用いているので、微細・微小でスポット状の部分めっき(スポットめっき)が施されている。
【0093】
本発明に係るめっき部材としては、1以上のスポットめっきが施されている長尺の薄帯板材、端子形状にプレス(打ち抜き)加工され1以上のスポットめっきが施されている展開形状の端子金具がキャリアフレームに多数連結された連結材、この連結材の展開形状の端子金具を曲げ加工したもの、この連結材より切断して得られた端子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。端子は、オス端子、メス端子のいずれにも適用可能である。本発明に係るめっき部材は、上記レーザめっき装置を用いて1以上の部分めっきが施されているため、めっきスポットは、微小・微細で位置精度に優れている。
【0094】
展開形状の端子金具を有する連結材を形成するには、長尺の薄帯板材にスポットめっきを施した後、プレス加工により長尺の薄帯板材を端子形状に打ち抜きしても良いし、長尺の薄帯板材をプレス加工した後、展開形状の端子金具にスポットめっきを施しても良い。
【0095】
長尺の薄帯板材にあらかじめ位置決め孔を形成する場合には、位置決め孔の形成と端子形状へ打ち抜きするためのプレス加工とを一括して行なうことができる観点から、プレス加工後にスポットめっきを施すことが好ましい。
【0096】
また、通常、被めっき材にスポットめっきをする前には、母材の腐食防止や母材とめっき間の拡散を防止するバリア層形成などのために被めっき材の母材をニッケルなどにより下地めっき処理する。下地めっき処理は、めっき工程でスポットめっきする前に行なわれる。そのため、プレス加工後にスポットめっきを施す場合には、下地めっき処理前に長尺の薄帯板材から端子形成に不要な部分を除去しており、端子形成に不要な部分を下地めっきしないので、下地めっき量を低減することができる。また、プレス加工後に露出する打ち抜き側面にも同時に下地めっきされるので、腐食防止効果にも優れる。
【0097】
さらに、長尺の薄帯板材から端子形成に不要な部分を除去しているので、例えば貴金属のスポットめっきを行なう場合には、貴金属めっき液を通過する被めっき材の接触面積が小さくなる。これにより、スポットめっき後に被めっき材に付着している貴金属めっき液の付着量が少なくなるので、高価な貴金属めっき液のロス量が少なくなる。
【0098】
図5は、1以上のスポットめっきが施されている長尺の薄帯板材84を示している。薄帯板材84は、幅方向の一端側に、複数の位置決め孔82が間隔をあけて形成されており、位置決め孔82に対応する一定の相対位置に、一の位置決め孔82に対して形状の異なる大小2つのスポットめっき86a、86bが施されている。薄帯板材84は端子金具を形成するプレス加工前のものであり、プレスによる打ち抜き加工、曲げ加工を経て、メス型端子となる。2つのスポットめっき86a、86bは、接続相手側のオス型端子を挟持してオス型端子と導通するための接点となる。このような形状の異なる2つのスポットめっき86a、86bをするには、例えば、2本のレーザ光を用いて2箇所を同時に照射すると良い。
【0099】
図6は、端子形状にプレス加工され1以上のスポットめっきが施されている展開形状の端子金具90がキャリアフレーム92に多数連結された連結材88であり、曲げ加工前のものである。図6に示すように、連結材88のキャリアフレーム92に連結された展開形状の各端子金具90は、キャリアフレーム92より遠方にある先端側に、接続相手側のオス型端子が挿入可能な角筒状の嵌合筒部94となる部分が形成されており、基端側には、この端子を取りつける電線端末を圧着するための一対の圧着片96a、96bを有する圧着部96が、中央部98を介して嵌合筒部94に延設形成されている。
【0100】
嵌合筒部94には、嵌合筒部94に挿入されるオス型端子と弾性接触するための弾性接触片100が延設形成されており、曲げ加工により嵌合筒部94が角筒状にされたときに嵌合筒部94内の天井面94aと対向配置され、弾性接触片100がその中央部分で天井面94aに向けて山折り状に折り曲げられて天井面94aとの間でオス型端子を弾性的に挟持するようになっている。そして、弾性接触片100の山折り状に折り曲げられた頂点部分と、嵌合筒部94内の天井面94aにおいてこの頂点部分に対応する部分とにスポットめっき86b、86aが形成されており、これらの部分が接続相手側のオス型端子を挟持してオス型端子と導通するための接点となる。
【0101】
図7は、図6に示す展開形状の端子金具90を曲げ加工したものである。このキャリアフレーム92より切断すると、図9(a)に示す端子金具90が得られる。図9(a)は、メス型端子を表す断面図である。連結材88のキャリアフレーム92より切断されたメス型の端子金具90は、図9(a)に示すように、接続相手側のオス型端子が挿入可能な角筒状の嵌合筒部94と、嵌合筒部94に延設形成され電線端末を圧着するための一対の圧着片96a、96bを有する圧着部96とを備えている。嵌合筒部94の内部には、嵌合筒部94の天井面94aに対向配置された山折り状の弾性接触片100を備えており、弾性接触片100と天井面94aとでオス型端子との接点を形成している。
【0102】
図8は、オス型の端子形状にプレス加工され1つのスポットめっきが施されている端子金具104がキャリアフレーム106に多数連結された連結材102である。キャリアフレーム106を挟んでメス型端子の嵌合筒部に挿入される先端側と、基端側とを備え、先端側のメス型端子の接点と接触する位置にスポットめっき108が形成されている。
【0103】
図9(b)に示すように、オス型の端子金具104がメス型の端子金具90の嵌合筒部94に挿入されると、オス型の端子金具104の接点とメス型の端子金具90の接点とが接触して、導通接続されるようになる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第一実施形態に係るレーザめっき装置を表す模式図である。
【図2】図1のめっき槽部分を拡大して示した平面図である。
【図3】図1の光電センサと置き換え可能な画像処理装置(a)、スプロケットとロータリーエンコーダとを組み合わせた装置(b)を表す模式図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るレーザめっき装置を表す模式図である。
【図5】本発明に係るめっき部材の実施形態を表す図である。
【図6】本発明に係るめっき部材の実施形態を表す図である。
【図7】本発明に係るめっき部材の実施形態を表す図である。
【図8】本発明に係るめっき部材の実施形態を表す図である。
【図9】本発明に係るめっき部材の実施形態を表す図である。
【符号の説明】
【0106】
10 レーザめっき装置
12 めっき槽
14 レーザ発振器
16 搬送機器
18 光電センサ
20 ガルバノスキャナ
22 ガルバノミラー
54 コントローラ
56 CCDカメラ
58 スプロケット
60 ロータリーエンコーダ
70 レーザめっき装置
72 搬送機器
74 パイロットピン昇降機構
76 パイロットピン
78 ベルト
80 被めっき材
82 位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき材のめっきする部分を位置決めする位置決め孔を有する被めっき材のめっきする部分にめっき液を接触させるめっき液接触手段と、
前記めっき液に接触する前記被めっき材のめっきする部分に照射して前記被めっき材上にめっき金属を析出させるレーザ光を発生させるレーザ発振手段と、
前記被めっき材を搬送して前記めっき液接触手段に通過させる被めっき材搬送手段と、
前記被めっき材搬送手段により搬送される前記被めっき材の位置決め孔が予定位置にきたことを検出する位置検出手段と、
前記レーザ光の光路上に配置され前記レーザ光を走査可能な可動ミラーを有し、前記めっき液中を搬送される被めっき材の同一のめっきする部分に前記レーザ光を追随走査させるとともに、前記位置検出手段による予定位置の検出により前記レーザ光を追随走査の開始した位置に走査復帰させるレーザ光走査手段と、を備えることを特徴とするレーザめっき装置。
【請求項2】
前記位置検出手段は、光電センサまたは画像処理装置であることを特徴とする請求項1に記載のレーザめっき装置。
【請求項3】
前記位置検出手段は、前記被めっき材の位置決め孔に係合する係合部を有する回転手段と、前記回転手段に取付けたロータリーエンコーダとで構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザめっき装置。
【請求項4】
前記位置検出手段による予定位置の検出と、前記レーザ光走査手段による前記レーザ光の追随走査を開始した位置への走査復帰との同期を電子制御で行なうことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザめっき装置。
【請求項5】
被めっき材にめっき液を接触させるめっき液接触手段と、
前記被めっき材の搬送と搬送停止とを繰り返す間欠搬送をして前記被めっき材を前記めっき液接触手段に通過させる被めっき材間欠搬送手段と、
前記めっき液に接触する前記被めっき材に前記搬送停止しているときに照射して前記被めっき材上にめっき金属を析出させるレーザ光を発生させるレーザ発振手段と、
前記レーザ発振手段のレーザ照射位置に対して一定の相対位置に軸を固定され昇降運動する昇降ピンを有し、前記昇降ピンを前記被めっき材に貫通させて前記レーザ発振手段による被めっき材へのレーザ照射位置を位置決めする位置決め手段と、を備えることを特徴とするレーザめっき装置。
【請求項6】
前記被めっき材間欠搬送手段による被めっき材の間欠搬送と、前記位置決め手段による昇降ピンの昇降運動とを、カムなどの機械的結合で連動させることを特徴とする請求項5に記載のレーザめっき装置。
【請求項7】
前記被めっき材間欠搬送手段による被めっき材の間欠搬送と、前記位置決め手段による昇降ピンの昇降運動とを、電子制御で連動させることを特徴とする請求項5に記載のレーザめっき装置。
【請求項8】
前記被めっき材には、めっきする部分を位置決めする位置決め孔があらかじめ形成されており、
前記昇降ピンは、テーパ状の先端形状を有するパイロットピンであり、
前記パイロットピンは、前記被めっき材の前記位置決め孔に貫通されることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のレーザめっき装置。
【請求項9】
前記昇降ピンは、前記被めっき材を穿孔可能な先端形状を有し、前記被めっき材に穿孔して貫通されることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のレーザめっき装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のレーザめっき装置を用いて1以上の部分めっきが施されていることを特徴とするめっき部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−285696(P2008−285696A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129119(P2007−129119)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】