説明

レーザシステムおよびレーザ生成方法

【課題】安定したレーザ光を得る。
【解決手段】レーザシステムは、パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、前記マスタオシレータから出力されたパルスレーザ光を増幅する増幅装置と、前記マスタオシレータから出力されるパルスレーザ光のタイミングを検出する第1のタイミング検出器と、前記増幅装置の放電タイミングを検出する第2のタイミング検出器と、前記第1のタイミング検出器と前記第2のタイミング検出器との検出結果に基づいて、前記パルスレーザ光が前記増幅装置の放電空間内を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記マスタオシレータが前記パルスレーザ光を出力するタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御するコントローラと、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザシステムおよびレーザ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィプロセスに使用される典型的な紫外線光源エキシマレーザは、波長がおよそ248nmのKrFエキシマレーザと波長がおよそ193nmのArFエキシマレーザである。
【0003】
そうしたArFエキシマレーザの殆どは発振段レーザと増幅段を含む2ステージレーザシステムとして市場に供給されている。2ステージのArFエキシマレーザシステムの発振段レーザと増幅段の共通する主要な構成を説明する。発振段レーザは第1チャンバを有し、増幅段は第2チャンバを有する。それらの第1、第2チャンバ内にレーザガス(F、Ar、Ne、Xeの混合ガス)が封入されている。発振段レーザと増幅段はまた、前記レーザガスを励起するために電気エネルギーを供給する電源を有する。発振段レーザと増幅段とはそれぞれ電源を有することができるが、1台の電源を共有することもできる。前記第1チャンバ内には、それぞれが前記電源に接続された第1アノードと第1カソードとを含む第1放電電極が設置され、前記第2チャンバ内にも同様にそれぞれが前記電源に接続された第2アノードと第2カソードとを含む第2放電電極が設置されている。
【0004】
発振段レーザ特有の構成は、例えば狭帯域モジュールである。狭帯域モジュールは典型的にはひとつのグレーティングと少なくともひとつのプリズムビームエキスパンダとを含む。半透過ミラーと前記グレーティングとが光共振器を構成し、これらの半透過ミラーとグレーティングとの間に発振段レーザの前記第1チャンバが設置されている。
【0005】
前記第1放電電極の第1アノードと第1カソードとの間に放電が発生されると前記レーザガスが励起されて、その励起エネルギーを放出する際に光が発生する。その光が前記狭帯域モジュールによって波長選択されたレーザ光となって発振段レーザから出力される。
【0006】
増幅段が共振器構造を含むレーザである場合の2ステージレーザシステムをMOPOと言い、増幅段が共振器構造を含まずレーザではない場合の2ステージレーザシステムをMOPAと言う。前記発振段レーザからのレーザ光が前記増幅段の第2チャンバ内に存在するときに、前記第2放電電極の第2アノードと第2カソードとの間に放電を発生させる制御が行なわれる。これにより前記第2チャンバ内のレーザガスが励起されて、前記レーザ光が増幅されて増幅段から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009−67468号明細書
【概要】
【0008】
本開示の一態様によるレーザシステムは、パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、前記マスタオシレータから出力されたパルスレーザ光を増幅する増幅装置と、前記マスタオシレータから出力されるパルスレーザ光のタイミングを検出する第1のタイミング検出器と、前記増幅装置の放電タイミングを検出する第2のタイミング検出器と、前記第1のタイミング検出器と前記第2のタイミング検出器との検出結果に基づいて、前記パルスレーザ光が前記増幅装置の放電空間内を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記マスタオシレータが前記パルスレーザ光を出力するタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御するコントローラと、を備えてもよい。
【0009】
本開示の他の態様によるレーザ生成方法は、パルスレーザ光を出力するマスタオシレータ、前記マスタオシレータから出力されたパルスレーザ光を増幅する増幅装置と、前記マスタオシレータから出力されるパルスレーザ光のタイミングを検出する第1のタイミング検出器と、前記増幅装置の放電タイミングを検出する第2のタイミング検出器と、を備える装置のレーザ生成方法であって、前記第1のタイミング検出器と前記第2のタイミング検出器との検出結果に基づいて、前記パルスレーザ光が前記増幅装置の放電空間内を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記マスタオシレータが前記パルスレーザ光を出力するタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、本開示の実施の形態1による波長変換素子を有する固体レーザ装置およびそれを用いた2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。
【図2】図2は、本開示の実施の形態2によるレーザシステムの概略構成を示す。
【図3】図3は、実施の形態2における発振タイミングの検出位置の例を示す。
【図4】図4は、実施の形態2における放電用の電力を供給するタイミングを計測する構成例を示す。
【図5】図5に示すセンサの具体例を示す。
【図6】図6に示すセンサの他の具体例を示す。
【図7】図7は、実施の形態2において放電空間に実際に放電が発生したことを光センサを用いて検出する場合を示す。
【図8】図8は、本開示の実施の形態2によるレーザシステムの概略動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施の形態2における図8のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施の形態2において図8のステップS103によってコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施の形態2において図8のステップS104によってレーザコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、実施の形態2における図8のステップS108の詳細を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本開示の実施の形態3によるレーザシステムの概略構成を示す。
【図14】図14は、本実施の形態3による光シャッタの一例を示す。
【図15】図15は、本実施の形態2におけるポッケルスセルに印加する高電圧パルスの一例を示す。
【図16】図16は、本実施の形態2におけるロングパルスマスタオシレータから出力されるパルスレーザ光の一例を示す。
【図17】図17は、本実施の形態2における光シャッタを通過したパルスレーザ光の一例を示す。
【図18】図18は、実施の形態3における図8のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。
【図19】図19は、実施の形態3において図8のステップS103によってコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図20】図20は、実施の形態3において図8のステップS104によってレーザコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図21】図21は、実施の形態3における図8のステップS108の詳細を示すフローチャートである。
【図22】図22は、実施の形態1〜3にかかるTi:サファイアレーザの一例を示す。
【図23】図23は、実施の形態1〜3にかかる増幅器の一例を示す。
【図24】図24は、実施の形態1〜3にかかるファブリーペロー型の増幅器の概略構成を示す。
【実施の形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0012】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.マスタオシレータと増幅装置とを備えたレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
3.2 動作
4.マスタオシレータと増幅装置との同期をフィードバック制御するレーザシステム(実施の形態2)
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
4.4 発振タイミング計測用のセンサ配置例
4.5 放電タイミング計測用のセンサ例
4.5.1 レーザ電源内部のセンサによって放電タイミングを計測する例
4.5.1.1 センサの第1構成例
4.5.1.2 センサの第2構成例
4.5.2 光センサによって放電タイミングを計測する例
4.6 フローチャート
5.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置との同期をフィードバック制御するレーザシステム(実施の形態3)
5.1 構成
5.1.1 光シャッタ
5.2 動作
5.3 作用
5.4 フローチャート
6.補足説明
6.1 Ti:サファイアレーザ
6.2 増幅器(PA)
6.3 光共振器を含む増幅器(PO)
【0013】
1.概要
以下で例示する実施の形態では、マスタオシレータから出力されるパルスレーザ光と、レーザガスを含む増幅装置の動作(放電)タイミングとを同期させてもよい。
【0014】
2.用語の説明
KBBF結晶とは、化学式KBeBOで表される非線形光学結晶であり、波長変換素子である。バースト発振とは、所定の期間に、所定の繰返し周波数で、パルスレーザ光を出力することである。光路とは、レーザ光が伝搬する経路のことである。
【0015】
3.マスタオシレータと増幅装置とを備えたレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
図1に本開示の実施の形態1による2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。
2ステージレーザ装置(以下、レーザシステムという)1は、マスタオシレータ2と、増幅装置3とを含んでもよい。マスタオシレータ2は、たとえば波長変換素子を有してもよい。増幅装置3は、たとえば放電励起式ArFエキシマ増幅器であってよい。前記マスタオシレータ2と前記増幅装置3との間には、低コヒーレンス化光学システム4が設置されてもよい。低コヒーレンス化光学システム4としては、光学パルスストレッチャーやランダム位相板等のシステムを使用してよい。
【0016】
次に、マスタオシレータ2について説明する。マスタオシレータ2は、ポンピングレーザ5と、Ti:サファイアレーザ6と、増幅器7と、ビームスプリッタ81と、高反射ミラー82と、LBO結晶9と、KBBF結晶10と、高反射ミラー11とを含んでもよい。
【0017】
ポンピングレーザ5は、たとえば半導体レーザ励起Nd:YAGレーザの第2高調波光を発振するレーザであってもよい。Ti:サファイアレーザ6は、Ti:サファイア結晶と光共振器を含んでもよい。増幅器7は、Ti:サファイア結晶を含む増幅器であってよい。
【0018】
次いで、増幅装置3について説明する。増幅装置3は、チャンバ20と、一対の放電電極(アノード21およびカソード22)と、出力結合ミラー14と、高反射ミラー15、16、および17とを含んでもよい。チャンバ20内には、レーザガスが封入されていてもよい。このレーザガスは、Ar、Ne、F、およびXeの混合ガスでもよい。アノード21およびカソード22は、チャンバ20内に設置されてもよい。アノード21およびカソード22は、図1の紙面に沿った方向に間隔を開けて配置してもよい。アノード21およびカソード22は、図1の紙面に対して垂直方向に配列していてもよい。アノード21およびカソード22の間は、放電空間23であってよい。チャンバ20には、パルスレーザ光32を透過するウィンドウ18および19が取り付けてあってもよい。また、図示を省略した電源がチャンバ20の外に設置されていてもよい。
【0019】
前記出力結合ミラー14と高反射ミラー15、16、および17とは、リング光共振器を構成していてもよい。出力結合ミラー14は、一部の光を透過し、一部の光を反射する素子であってもよい。
【0020】
3.2 動作
マスタオシレータ2は、波長がおよそ193nmのパルスレーザ光31を出力してもよい。低コヒーレンス化光学システム4は、前記パルスレーザ光31のコヒーレンシーを低下させてもよい。増幅装置3は、コヒーレンシーの低下したパルスレーザ光32を増幅してパルスレーザ光33として出力してもよい。パルスレーザ光33は、例えば図示していない半導体露光機へ送られて、露光処理に使用されてもよい。
【0021】
ポンピングレーザ5からは、波長がおよそ532nmの励起光(ポンピング光ともいう)51が出力されてもよい。励起光51の一部は、ビームスプリッタ81を透過してもよい。励起光51の他の一部はビームスプリッタ81で反射してもよい。ビームスプリッタ81を透過した励起光51は、Ti:サファイアレーザ6を励起してもよい。励起されたレーザ6からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光が出力されてもよい。ここで、Ti:サファイアレーザ6は、図示しない波長選択素子を備える光共振器を含んでもよい。このTi:サファイアレーザ6からは、波長選択素子によって狭帯域化されたスペクトル幅のパルスレーザ光が出力されてもよい。
【0022】
ポンピングレーザ5から出力された励起光51のうち、ビームスプリッタ81で反射した励起光51は、さらに高反射ミラー82で反射されてもよい。この反射した励起光51は、Ti:サファイアの増幅器7に入射し、これが備えるTi:サファイア結晶を励起してもよい。増幅器7はその励起エネルギーによってTi:サファイアレーザ6から出力されたパルスレーザ光を増幅してもよい。この結果、増幅器7からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光が出力されてもよい。
【0023】
Ti:サファイアの増幅器7から出力されたパルスレーザ光は、波長変換素子であるLBO結晶9を透過することで、波長がおよそ386.8nm(前記773.6nmの1/2)のパルスレーザ光へ変換されてもよい。波長変換後のパルスレーザ光は、波長変換素子であるKBBF結晶10を透過することで、波長がおよそ193.4nm(前記386.8nmの1/2)のパルスレーザ光31へさらに変換されてもよい。
【0024】
KBBF結晶10を透過後のパルスレーザ光31は、高反射ミラー11によって進行方向を変えられて、低コヒーレンス化光学システム4に入射してもよい。パルスレーザ光31のコヒーレンスは、低コヒーレンス化光学システム4を透過することによって低下してもよい。そのコヒーレンスが低下したパルスレーザ光32は増幅装置3に入射してもよい。
【0025】
チャンバ20内のアノード2とカソード22に電気的に接続された電源は、アノード21およびカソード22間に電位差を加えてもよい。これにより、増幅装置3の放電空間23にパルスレーザ光32が通過するタイミングで、アノード21およびカソード22間で放電が発生してもよい。
【0026】
低コヒーレンス化光学システム4を出射したパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、高反射ミラー15を反射してもよい。このパルスレーザ光32は、ウィンドウ18を透過して、前記アノード21と前記カソード22との間の放電空間23へ進行してもよい。パルスレーザ光32が前記放電空間23内に存在するときに前記放電空間23に放電を生じさせる制御が行われることによって、そのパルスレーザ光32が増幅されてもよい。増幅されたパルスレーザ光32は、ウィンドウ19を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、高反射ミラー16および17を高反射して、再びウィンドウ19を介して、チャンバ20内の放電空間23へ進行してもよい。そして、このパルスレーザ光32は、今度はウィンドウ18を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、出力結合ミラー14に入射してもよい。このパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、パルスレーザ光33として増幅装置3から出射してもよい。パルスレーザ光32の他の一部は、出力結合ミラー14で反射することで、フィードバック光として、再びリング光共振器中に戻されてもよい。
【0027】
本説明では、増幅装置3がリング光共振器を含む場合を例示したが、この例に限定されるものではない。たとえば、増幅装置3は、増幅器に光共振器が配置されたファブリーペロー型共振器を含んでもよい。
【0028】
4.マスタオシレータと増幅装置との同期をフィードバック制御するレーザシステム(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2によるレーザシステム1Aを、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
4.1 構成
図2は、実施の形態2によるレーザシステム1Aの概略構成を示す。図2に示すように、レーザシステム1Aは、マスタオシレータ2Aと、高反射ミラー11と、低コヒーレンス化光学システム4と、増幅装置3Aと、レーザコントローラ220Aとを備えてもよい。レーザコントローラ220Aは、レーザシステム1Aの全体動作を制御してもよい。
【0030】
マスタオシレータ2Aは、固体レーザ装置200と、コントローラ210とを含んでもよい。固体レーザ装置200は、図1に示すマスタオシレータ2と同様に、ポンピングレーザ5、Ti:サファイアレーザ6(シードレーザ)、増幅器7、LBO結晶9およびKBBF結晶10を含む波長変換装置8、ビームスプリッタ81、および高反射ミラー82を備えてもよい。
【0031】
コントローラ210は、パルスレーザ光31を出力するタイミングを制御する同期制御装置であってもよい。そのようなコントローラ210は、内部トリガ発振器211を含んでもよい。内部トリガ発振器211は、たとえば所定繰返し周波数で内部トリガを発振してもよい。コントローラ210は、この内部トリガをポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。
【0032】
また、コントローラ210は、たとえば上位コントローラであるレーザコントローラ220Aなどから、略所定繰返し周波数でトリガ信号S1を受信してもよい。コントローラ210は、レーザコントローラ220Aから受信したトリガ信号S1をポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5に送信してもよい。これにより、ポンピングレーザ5が、略所定繰返し周波数で励起光51を継続的に出力し得る。
【0033】
マスタオシレータ2Aは、発振遅延回路311を備えてもよい。発振遅延回路311は、コントローラ210からポンピングレーザ5へ出力されたポンピングレーザ発振信号S11を、増幅装置3Aとのタイミング調整のために、所定遅延時間(発振遅延時間Ddp)分遅延させてもよい。
【0034】
また、マスタオシレータ2Aは、ビームスプリッタ420と、光センサ410とを備えてもよい。ビームスプリッタ420は、固体レーザ装置200中を伝播するパルスレーザ光L1の光路上に配置されてもよい。光センサ410は、ビームスプリッタ420で分岐されたパルスレーザ光L1を検出してもよい。光センサ410によるパルスレーザ光L1の検出結果は、コントローラ210を介してレーザコントローラ220Aに入力されてもよい。レーザコントローラ220Aは、入力された検出結果に基づいて、パルスレーザ光L1の発振タイミングTmoを特定してもよい。
【0035】
増幅装置3Aは、図1に示す増幅装置3と同様の構成に加え、レーザ電源24と、スイッチ遅延回路350とをさらに含んでもよい。レーザ電源24は、チャンバ20内のアノード21とカソード22とに電気的に接続されてもよい。遅延回路350は、レーザコントローラ220Aからレーザ電源24内のスイッチ25へ出力されたスイッチ信号S5を、所定遅延時間(スイッチ遅延時間Dpp)分遅延させてもよい。
【0036】
また、増幅装置3Aは、放電空間23に放電を発生させるタイミング、または、放電空間23に放電が発生したタイミングである放電タイミングTpoを検出するセンサ430を備えてもよい。
【0037】
4.2 動作
つづいて、レーザシステム1Aの概略動作を説明する。レーザコントローラ220Aは、露光装置600における露光コントローラ601からパルスレーザ光33のバースト出力を要求されてもよい。レーザコントローラ220Aは、バースト出力が要求されると、マスタオシレータ2Aのコントローラ210にバースト要求信号S2を出力してもよい。また、レーザコントローラ220Aは、コントローラ210に、略所定繰返し周波数でトリガ信号S1を出力してもよい。コントローラ210は、トリガ信号S1または内部トリガ発振器211が生成した内部トリガを、ポンピングレーザ発振信号S11として、ポンピングレーザ5に出力してもよい。ポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を介することで、トリガ信号S1の入力に対して所定遅延時間(発振遅延時間Ddp)分遅れて、ポンピングレーザ5に入力してもよい。ポンピングレーザ5は、ポンピングレーザ発振信号S11が入力されると、励起光51を出力してもよい。これにより、固体レーザ装置200内でパルスレーザ光L1が生成されてもよい。
【0038】
固体レーザ装置200内で生成されたパルスレーザ光L1は、固体レーザ装置200内の光路を伝播してもよい。光センサ410は、パルスレーザ光L1が光路上の所定の位置を通過するタイミングを検出してもよい。このタイミング検出結果は、光センサ410からコントローラ210を介してレーザコントローラ220Aへ出力されてもよい。レーザコントローラ220Aは、入力された検出結果に基づいて、パルスレーザ光L1の発振タイミングTmoを特定してもよい。
【0039】
レーザコントローラ220Aは、増幅装置3のレーザ電源24に、略所定繰返し周波数でスイッチ信号S5を出力してもよい。レーザコントローラ220Aは、継続的にスイッチ信号S5を出力してもよいし、露光コントローラ601からバースト出力が要求されている期間のみスイッチ信号S5を出力してもよい。スイッチ信号S5は、スイッチ遅延回路350を介することで、トリガ信号S1の入力に対して所定遅延時間(スイッチ遅延時間Dpp)分遅れて、レーザ電源24のスイッチ25に入力してもよい。スイッチ信号S5によってスイッチ25がオンされると、レーザ電源24は、アノード21およびカソード22間に放電用の電位差を与えてもよい。これにより、アノード21およびカソード22間の放電空間23で放電が生じ得る。
【0040】
放電空間23に放電を発生させるタイミングは、マスタオシレータ2Aから低コヒーレンス化光学システム4を経由して増幅装置3に入射したパルスレーザ光32がチャンバ20内を通過するタイミングに合わせられるとよい(同期)。その同期を達成するための発振遅延時間Ddpおよびスイッチ遅延時間Dppは、たとえば経験、実験またはシミュレーションなどで予め求めておいてもよい。また、発振遅延時間Ddpおよびスイッチ遅延時間Dppの少なくとも一方は、パルスレーザ光L1のタイミングと放電のタイミングとの差に基づいてフィードバック制御されてもよい。パルスレーザ光L1のタイミングは、たとえばポンピングレーザ5の発振タイミングTmoであってもよい。この発振タイミングTmoには、パルスレーザ光L1の所定位置通過タイミングを用いてもよい。また、放電のタイミングは、放電空間23に放電が発生した放電タイミングTpoであってもよい。この放電タイミングTpoには、アノード21およびカソード22間に放電用の電力を供給したタイミングを用いてもよい。
【0041】
4.3 作用
実施の形態2では、レーザコントローラ220Aは、パルスレーザ光L1のタイミング(たとえば発振タイミングTmo)と放電のタイミング(たとえば放電タイミングTpo)との差を検出してもよい。また、その差に応じて、レーザコントローラ220Aは、ポンピングレーザ5の発振タイミングTmoと増幅装置3Aの放電タイミングTpoとをフィードバック制御してもよい。それにより、パルスレーザ光32が増幅装置3A内の放電空間23を通過するタイミングに合わせて、放電空間23に放電を発生させることができる。その結果、発振タイミングTmoや放電タイミングTpoのドリフトの影響を低減でき、より安定してパルスレーザ光32を増幅できる。
【0042】
4.4 発振タイミング計測用のセンサ配置例
ここで、発振タイミングTmoの検出位置の例を、図3を用いて説明する。図3中のビームスプリッタ421、422および424と光センサ411、412および414とに示すように、発振タイミングTmoの検出位置は、Ti:サファイアレーザ6、増幅器7および波長変換装置8のうちの少なくとも1つの出力段であってよい。また、発振タイミングTmoの検出位置は、図3のビームスプリッタ423および光センサ413に示すように、波長変換装置8内のLBO結晶9とKBBF結晶10との間であってもよい。
【0043】
4.5 放電タイミング計測用のセンサ例
つづいて、放電タイミングTpoを検出するセンサの例を、以下に説明する。
【0044】
4.5.1 レーザ電源内部のセンサによって放電タイミングを計測する例
まず、アノード21とカソード22との間に放電用電圧を印加するタイミングを放電タイミングTpoとして検出する場合を例に挙げる。図4は、放電用電圧を印加するタイミングを計測する構成例を示す。図4に示す増幅装置3Aのように、放電用電圧を印加するタイミングを放電タイミングTpoとして検出する場合、センサ430は、レーザ電源24の内部に配置されてもよい。
【0045】
4.5.1.1 センサの第1構成例
センサ430を、より具体的に説明する。図5は、センサ430に磁気スイッチ動作センサ431を用いた場合の例を示す。図5に示すように、磁気スイッチ動作センサ431は、アノード21およびカソード22間に放電発生用の電圧を印加する磁気パルス圧縮回路26における可飽和リアクトルAL1に対して設けられてもよい。可飽和リアクトルAL1は、いわゆる磁気スイッチである。磁気スイッチ動作センサ431は、この可飽和リアクトルAL1の飽和時点を検出してもよい。磁気スイッチ動作センサ431は、検出した飽和時点をレーザコントローラ220Aへ出力してもよい。レーザコントローラ220Aは、入力された飽和時点を、放電タイミングTpoとして特定してもよい。
【0046】
4.5.1.2 センサの第2構成例
センサ430の他の構成例を説明する。図6は、センサ430に電流センサ432を用いた場合の例を示す。図6に示すように、電流センサ432は、磁気パルス圧縮回路26とアノード21との間に直列に接続されてもよい。電流センサ432は、アノード21に流れる電流の電流値を計測してもよい。電流センサ432は、検出した電流値をレーザコントローラ220Aへ出力してもよい。レーザコントローラ220Aは、入力された電流値に基づいて、アノード21に電流が流れたタイミングを、放電タイミングTpoとして特定してもよい。
【0047】
4.5.2 光センサによって放電タイミングを計測する例
つぎに、センサ430に光センサ433を用いた場合を例に挙げる。図7は、放電空間23に実際に放電が発生したことを光センサ433を用いて検出する場合を示す。図7に示す増幅装置3Bでは、放電空間23に発生した放電光を透過させるウィンドウ433bがチャンバ20に設けられてもよい。放電空間23からウィンドウ433bを介して出射した放電光は、転写レンズ433aによって光センサ433の受光面に結像されてもよい。光センサ433は、結像された放電光を検出することで、放電空間23に放電が発生したことを検出してもよい。また、光センサ433は、この検出結果をレーザコントローラ220Aに出力してもよい。レーザコントローラ220Aは、入力された検出結果に基づいて、放電タイミングTpoを特定してもよい。
【0048】
また、光センサ433でチャンバ20から出射したパルスレーザ光33を検出することで、放電タイミングTpoを検出してもよい。この場合、図7の破線で示すように、パルスレーザ光33の光路上にビームスプリッタ433cが配置されてもよい。ビームスプリッタ433cで分岐されたパルスレーザ光33の一部は、光センサ433に入射してもよい。光センサ433は、入射したパルスレーザ光33を検出することで、放電空間23に放電が発生したことを検出してもよい。また、光センサ433は、この検出結果をレーザコントローラ220Aに出力してもよい。レーザコントローラ220Aは、入力された検出結果に基づいて、放電タイミングTpoを特定してもよい。
【0049】
4.6 フローチャート
つぎに、図2に示すレーザシステム1Aの動作を、図面を用いて詳細に説明する。図8は、レーザシステム1Aの概略動作を示すフローチャートである。図9は、図8のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。図10は、図8のステップS103によってコントローラ210が開始する動作を示すフローチャートである。図11は、図8のステップS104によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を示すフローチャートである。図12は、図8のステップS108の詳細を示すフローチャートである。なお、図8、図9、図11および図12では、レーザコントローラ220Aの動作を示す。図10では、コントローラ210の動作を示す。
【0050】
図8に示すように、レーザコントローラ220Aは、起動後、各種パラメータを初期設定するパラメータ初期設定ルーチンを実行してもよい(ステップS101)。なお、設定する初期パラメータは、予め登録されていてもよいし、露光コントローラ601等の外部から入力または要求されてもよい。
【0051】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、露光コントローラ601等からパルスレーザ光33のバーストを要求するバースト要求信号を受信するまで待機してもよい(ステップS102;NO)。バースト要求信号を受信すると(ステップS102;YES)、レーザコントローラ220Aは、マスタオシレータ2Aにパルスレーザ光31のバーストを出力させる制御を実行してもよい(ステップS103)。これとともに、レーザコントローラ220Aは、増幅装置3Aに放電させる制御を実行してもよい(ステップS104)。
【0052】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、トリガ信号S1を、所定繰返し周波数となるように、コントローラ210へ出力してもよい(ステップS105)。つぎに、レーザコントローラ220Aは、コントローラ210から入力された光センサ410による検出結果から、発振タイミングTmoを検出してもよい(ステップS106)。また、レーザコントローラ220Aは、センサ430から入力された検出結果から、放電タイミングTpoを検出してもよい(ステップS107)。つぎに、レーザコントローラ220Aは、発振タイミングTmoと放電タイミングTpoとの時間差に応じて、スイッチ遅延回路350のスイッチ遅延時間Dpp(または、発振遅延回路311の発振遅延時間Ddp)を補正してもよい(ステップS108)。
【0053】
その後、レーザコントローラ220Aは、パルスレーザ光33の出力を停止するか否かを判定してもよい(ステップS109)。出力を停止する場合(ステップS109;YES)、レーザコントローラ220Aは、ステップS103で開始したマスタオシレータ2Aの制御を終了してもよい(ステップS110)。また、レーザコントローラ220Aは、ステップS104で開始した増幅装置3Aの制御を終了し(ステップS111)、その後、本動作を終了してもよい。一方、出力を停止しない場合(ステップS109;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS103へリターンし、以降の動作を実行してもよい。
【0054】
つぎに、図8のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を説明する。図9に示すように、パラメータ初期設定ルーチンでは、レーザコントローラ220Aは、発振遅延回路311に設定する発振遅延時間Ddpを取得してもよい(ステップS121)。取得される発振遅延時間Ddpは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得した発振遅延時間Ddpを、コントローラ210を介して発振遅延回路311に設定してもよい(ステップS122)。尚、レーザコントローラ220Aは、発振遅延時間Ddpを発振遅延回路311に設定する際には、図3に示すようにコントローラ210を介して設定してもよい。これにより、発振遅延回路311を通過するポンピングレーザ発振信号S11のタイミングが、発振遅延時間Ddp分遅延されてもよい。
【0055】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ遅延回路350に設定するスイッチ遅延時間Dppを取得してもよい(ステップS123)。取得されるスイッチ遅延時間Dppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得したスイッチ遅延時間Dppをスイッチ遅延回路350に設定してもよい(ステップS124)。これにより、スイッチ遅延回路350を通過するスイッチ信号S5のタイミングが、スイッチ遅延時間Dpp分遅延されてもよい。
【0056】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ25をオンとする時間、すなわちアノード21およびカソード22間に放電用電圧を印加する時間(スイッチオン時間ΔTpp)を取得してもよい(ステップS125)。取得されるスイッチオン時間ΔTppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、図8に示す動作へリターンしてもよい。
【0057】
また、図8のステップS103によってコントローラ210が開始する動作を説明する。図10に示すように、レーザコントローラ220Aの制御の下、コントローラ210は、たとえばレーザコントローラ220Aからトリガ信号S1を受信するまで待機してもよい(ステップS131;NO)。
【0058】
トリガ信号S1を受信すると(ステップS131;YES)、コントローラ210は、トリガ信号S1をポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい(ステップS132)。ポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を経由してポンピングレーザ5に入力してもよい。なお、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングは、Ti:サファイアレーザ6からパルスレーザ光L1が出力されるタイミングと直接的に関係してもよい。
【0059】
つぎに、コントローラ210は、光センサ410からパルスレーザ光L1の検出結果が入力されるまで待機してもよい(ステップS133;NO)。光センサ410から検出結果が入力されると(ステップS133;YES)、コントローラ210は、入力された検出結果をレーザコントローラ220Aへ送信してもよい(ステップS134)。その後、コントローラ210は、動作の終了がレーザコントローラ220A等から入力されたか否かを判定してもよい(ステップS135)。終了が入力されていた場合(ステップS135;YES)、コントローラ210は、本動作を終了してもよい。一方、終了が入力されていなかった場合(ステップS135;NO)、コントローラ210は、ステップS131へリターンしてもよい。
【0060】
また、図8のステップS104によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を説明する。図11に示すように、レーザコントローラ220Aは、トリガ信号S1をコントローラ210へ出力するまで待機してもよい(ステップS141;NO)。トリガ信号S1を出力すると(ステップS141;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5のスイッチ25への送信を開始してもよい(ステップS142)。スイッチ信号S5は、スイッチ遅延回路350を経由して、スイッチ25に入力してもよい。スイッチ遅延回路350には、パルスレーザ光32が放電空間23を通過するタイミングに合わせて、放電空間23で放電が発生するように、スイッチ遅延時間Dppが設定されていてもよい。
【0061】
その後、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。レーザコントローラ220Aは、この計測時間が予め設定しておいたスイッチオン時間ΔTpp以上となるまで待機してもよい(ステップS143;NO)。
【0062】
スイッチオン時間ΔTppが経過すると(ステップS143;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5の送信を終了してもよい(ステップS144)。これにより、放電空間23で放電が発生する期間が調整されてもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、動作を終了するか否かを判定してもよい(ステップS145)。終了する場合(ステップS145;YES)、レーザコントローラ220Aは、本動作を終了してもよい。一方、終了しない場合(ステップS145;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS141へリターンしてもよい。
【0063】
また、図8のステップS108の詳細を説明する。図12に示すように、レーザコントローラ220Aは、コントローラ210から入力された光センサ410の検出結果から発振タイミングTmoを特定してもよい(ステップS151)。また、レーザコントローラ220Aは、センサ430から入力された検出結果から放電タイミングTpoを特定してもよい(ステップS152)。
【0064】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、発振タイミングTmoに対する放電タイミングTpoの遅延時間Dを算出してもよい(ステップS153)。つぎに、レーザコントローラ220Aは、基準として設定しておいた遅延時間D0に対する遅延時間Dの誤差Δppを算出してもよい(ステップS154)。つぎに、レーザコントローラ220Aは、算出した誤差Δppを用いてスイッチ遅延時間Dpp(または、発振遅延時間Ddp)を補正してもよい(ステップS155)。その後、レーザコントローラ220Aは、図8のステップS109へ移行してもよい。
【0065】
5.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置との同期をフィードバック制御するレーザシステム(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3によるレーザシステム1Bを、図面を参照して詳細に説明する。
【0066】
5.1 構成
図13は、実施の形態3によるレーザシステム1Bの概略構成を示す。図13に示すように、レーザシステム1Bは、図2に示すレーザシステム1Aと同様の構成を備えてもよい。ただし、レーザシステム1Bでは、レーザシステム1Aのマスタオシレータ2Aがマスタオシレータ2Bに置き換えられている。
【0067】
マスタオシレータ2Bは、マスタオシレータ2Aと同様の構成に加え、光シャッタ41と、シャッタ遅延回路341とをさらに備えてもよい。また、固体レーザ装置200におけるポンピングレーザ5とTi:サファイアレーザ6とビームスプリッタ81とは、ロングパルスマスタオシレータ60を構成してもよい。
【0068】
光シャッタ41の開閉動作を制御するシャッタ動作信号S41は、コントローラ210からシャッタ遅延回路341を介して光シャッタ41に入力されてもよい。シャッタ遅延回路341には、レーザコントローラ220Aからコントローラ210を介してシャッタ遅延時間Dopが設定されてもよい。シャッタ動作信号S41は、シャッタ遅延回路341を介することで、シャッタ遅延時間Dop分遅延されて、光シャッタ41に入力してもよい。
【0069】
その他の構成は、図2に示すレーザシステム1Aと同様である。
【0070】
5.1.1 光シャッタ
ここで、図14に、実施の形態3による光シャッタの一例を示す。図14に示すように、光シャッタ41は、たとえば2つの偏光子141および143とポッケルスセル142と高圧電源144とを含んでもよい。偏光子141は、たとえば入射した光のうち、Y方向の偏光成分を透過させ、X方向の偏光成分を遮断してもよい。一方、偏光子143は、たとえば入射した光のうち、X方向の偏光成分を透過させ、Y方向の偏光成分を遮断してもよい。このように、偏光子141と偏光子143とでは、透過させる光の偏光成分が異なっていてもよい。たとえば、本例のように、偏光子141と偏光子143とでは、透過する光の偏光方向が略90°異なっていてもよい。
【0071】
光シャッタ動作信号S41は、光シャッタ41の高圧電源144に入力されてもよい。高圧電源144は、光シャッタ動作信号S41が入力されるとポッケルスセル142に、電圧S61を印加してもよい。電圧S61は、光シャッタ動作信号S41と実質的に同じパルス幅(時間長)を有してもよい。ポッケルスセル142は、たとえば電圧S61が印加されている期間、入射した光の偏光方向を変更し得る。本例では、入射光の偏光方向を略90°変更する電圧値の電圧S61が、高圧電源144からポッケルスセル142に印加されてもよい。
【0072】
ロングパルスマスタオシレータ60から光シャッタ41に入射したパルスレーザ光L0は、まず、偏光子141に入射してもよい。偏光子141は、入射したパルスレーザ光L0のうち、Y方向の直線偏光成分(以下、Y直線偏光パルスレーザ光という)を透過させる。偏光子141を透過したY直線偏光パルスレーザ光は、ポッケルスセル142に入射する。
【0073】
ポッケルスセル142に電圧S61が印加されていない場合、ポッケルスセル142に入射したY直線偏光パルスレーザ光は、Y方向の直線偏光のまま、ポッケルスセル142から出力され、偏光子143に入射し得る。このため、ポッケルスセル142を透過したY直線偏光パルスレーザ光は、偏光子143によって反射および吸収され得る。この結果、パルスレーザ光L0が、光シャッタ41によって遮断され得る。
【0074】
一方、ポッケルスセル142に電圧S61が印加されている場合、ポッケルスセル142に入射したY直線偏光パルスレーザ光の偏光方向は、略90°変更され得る。この結果、ポッケルスセル142からは、X方向の直線偏光のパルスレーザ光(以下、X直線偏光パルスレーザ光という)が出力され得る。このX直線偏光パルスレーザ光は、偏光子143を透過する。この結果、パルスレーザ光L1が、光シャッタ41から出力される。
【0075】
また、たとえばパルスレーザ光L1として必要なパルス幅(時間長)を20ns程度とすると、図15に示すように、たとえばポッケルスセル142には、パルス幅(時間長)が20ns程度の電圧S61が印加されるとよい。一方で、ロングパルスマスタオシレータ60からは、上述したように、たとえばパルス幅(時間長)が立ち上がりタイミングのジッタよりも十分に大きいパルスレーザ光が出力されてもよい。たとえば、立ち上がりタイミングのジッタが±10ns程度であって、パルスレーザ光L1として必要なパルス幅(時間長)が20ns程度であるとする。この場合、図16に示すように、ロングパルスマスタオシレータ60は、たとえば70ns程度のパルス幅(時間長)のパルスレーザ光L0を出力するとよい。これにより、図17に示すように、光シャッタ41からは、20ns程度のパルス幅を持つパルスレーザ光L1が、パルスレーザ光L0の立ち上がりタイミングのジッタに影響されないタイミングで出力されてもよい。なお、一般的なポッケルスセルは、数nsの応答性を有しているため、高速スイッチングが要求されるレーザシステムの光シャッタに適している。
【0076】
なお、本例は、偏光子141を透過したパルスレーザ光L0と偏光子143を透過したパルスレーザ光L1との偏光方向を略90°変えた構成である。このため、ポッケルスセル142に電圧S61を印加した期間、光シャッタ41が開状態となる。ただし、この例に限定されるものではない。たとえば偏光子141を透過したパルスレーザ光L0と偏光子143を透過したパルスレーザ光L1との偏光方向を同じ方向としてもよい。この場合、ポッケルスセル142に電圧を印加しない期間、光シャッタ41が開状態となる。なお、光シャッタを開状態にするとは、光シャッタがパルスレーザ光を通過可能な状態にすることを意味し、光シャッタを閉状態にするとは、光シャッタがパルスレーザ光を遮断する状態にすることを意味する。
【0077】
5.2 動作
つづいて、レーザシステム1Bの概略動作を説明する。レーザシステム1Bの概略動作は、図2に示すレーザシステム1Aと同様であってもよい。ただし、レーザシステム1Bでは、コントローラ210から光シャッタ41に、光シャッタ動作信号S41が入力されてもよい。光シャッタ動作信号S41は、シャッタ遅延回路341を介して光シャッタ41に入力されてもよい。これにより、ロングパルスマスタオシレータ60から出力されたパルスレーザ光L0の一部を切り出すように、光シャッタ41が開閉動作してもよい。
【0078】
その他の動作は、図2に示すレーザシステム1Aと同様である。
【0079】
5.3 作用
以上のような構成および動作とすることで、実施の形態3では、レーザコントローラ220Aは、光シャッタ41によって切り出されたパルスレーザ光L1のタイミング(たとえば発振タイミングTmo)と放電のタイミング(たとえば放電タイミングTpo)との差を検出してもよい。また、その差に応じて、レーザコントローラ220Aは、光シャッタ41の開閉タイミングTopと増幅装置3Aの放電タイミングTpoとをフィードバック制御してもよい。それにより、パルスレーザ光32が増幅装置3A内の放電空間23を通過するタイミングに合わせて、放電空間23に放電を発生させることができる。その結果、開閉タイミングTopや放電タイミングTpoのドリフトに影響されずに、より安定してパルスレーザ光32を増幅できる。
【0080】
また、実施の形態3では、光シャッタ41から出力されるパルスレーザ光L1が、光シャッタ41に与えた光シャッタ動作信号S41によってパルスレーザ光L0から切り出されたパルス形状を持ってもよい。そのように、パルスレーザ光L1は、光シャッタ41に与える光シャッタ動作信号S41で制御されてもよい。そのため、パルスレーザ光L1のジッタは、ポッケルスセル142に電圧S61を印加する高圧電源144の回路ジッタとなると考えられる。そのような回路ジッタは、ロングパルスマスタオシレータ60から出力されるパルスレーザ光L0のジッタに対して十分短いと考えられる。そのため、光シャッタ41を通過したパルスレーザ光L1のジッタは無視できる程度に小さいと考えられる。
【0081】
また、マスタオシレータ2Bは、光シャッタ41によってパルス幅を制御できる。そのため、パルス幅を変化させることも容易にできる。
【0082】
5.4 フローチャート
つぎに、図13に示すレーザシステム1Bの動作を、図面を用いて詳細に説明する。ただし、レーザシステム1B全体の概略動作は、図8に示す動作と同様であるため、ここではそれを引用する。
【0083】
図18は、図8のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を説明する。図18に示すように、実施の形態3におけるパラメータ初期設定ルーチンでは、レーザコントローラ220Aは、発振遅延回路311に設定する発振遅延時間Ddpを取得してもよい(ステップS221)。取得される発振遅延時間Ddpは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得した発振遅延時間Ddpを、コントローラ210を介して発振遅延回路311に設定してもよい(ステップS222)。これにより、発振遅延回路311を通過するポンピングレーザ発振信号S11のタイミングが、発振遅延時間Ddp分遅延されてもよい。
【0084】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、シャッタ遅延回路341に設定するシャッタ遅延時間Dopを取得してもよい(ステップS223)。取得されるシャッタ遅延時間Dopは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得したシャッタ遅延時間Dopを、コントローラ210を介してシャッタ遅延回路341に設定してもよい(ステップS224)。これにより、シャッタ遅延回路341を通過するシャッタ動作信号S41のタイミングが、シャッタ遅延時間Dop分遅延されてもよい。
【0085】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、光シャッタ41を開状態とする時間、すなわちパルスレーザ光L1の切り出し時間(光シャッタ開時間ΔTop)を取得してもよい(ステップS225)。取得される光シャッタ開時間ΔTopは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。
【0086】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ遅延回路350に設定するスイッチ遅延時間Dppを取得してもよい(ステップS226)。取得されるスイッチ遅延時間Dppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得したスイッチ遅延時間Dppをスイッチ遅延回路350に設定してもよい(ステップS227)。これにより、スイッチ遅延回路350を通過するスイッチ信号S5のタイミングが、スイッチ遅延時間Dpp分遅延されてもよい。
【0087】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ25をオンとする時間、すなわちアノード21およびカソード22間に放電用電圧を印加する時間(スイッチオン時間ΔTpp)を取得してもよい(ステップS228)。取得されるスイッチオン時間ΔTppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、図8に示す動作へリターンしてもよい。
【0088】
また、図8のステップS103によってコントローラ210が開始する動作を説明する。図19に示すように、レーザコントローラ220Aの制御の下、コントローラ210は、たとえばレーザコントローラ220Aからトリガ信号S1を受信するまで待機してもよい(ステップS231;NO)。なお、コントローラ210は、レーザコントローラ220Aからトリガ信号S1が略所定繰返し周波数で入力されない期間、内部トリガ発振器211が所定繰返し周波数で発振した内部トリガをポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。
【0089】
トリガ信号S1を受信すると(ステップS231;YES)、コントローラ210は、ポンピングレーザ発振信号S11をポンピングレーザ5へ送信してもよい(ステップS232)。これとともに、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41の光シャッタ41への送信を開始してもよい(ステップS233)。ポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を経由してポンピングレーザ5に入力してもよい。光シャッタ動作信号S41は、シャッタ遅延回路341を経由して、光シャッタ41に入力してもよい。発振遅延回路311は、ポンピングレーザ発振信号S11を発振遅延時間Ddp分遅延させるように設定されていてもよい。シャッタ遅延回路341には、パルスレーザ光が通過するタイミングに合わせて光シャッタ41が開閉動作するように、シャッタ遅延時間Dopが設定されていてもよい。これにより、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングと、光シャッタ41が開閉動作するタイミングとが調節されてもよい。なお、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングは、ロングパルスマスタオシレータ60からパルスレーザ光L0が出力されるタイミングと直接的に関係してもよい。
【0090】
その後、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。コントローラ210は、この計測時間が予め設定しておいた光シャッタ開時間ΔTop以上となるまで待機してもよい(ステップS234;NO)。
【0091】
光シャッタ開時間ΔTopが経過すると(ステップS234;YES)、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41の送信を終了してもよい(ステップS235)。これにより、光シャッタ41が閉状態となってもよい。なお、上述のように、ロングパルスマスタオシレータ60を用いることで、光シャッタ41の開閉動作を用いて、パルスレーザ光L1の波形を調節することが可能であってもよい。
【0092】
つぎに、コントローラ210は、光センサ410からパルスレーザ光L1の検出結果が入力されるまで待機してもよい(ステップS236;NO)。光センサ410から検出結果が入力されると(ステップS236;YES)、コントローラ210は、入力された検出結果をレーザコントローラ220Aへ送信してもよい(ステップS237)。その後、コントローラ210は、動作の終了がレーザコントローラ220A等から入力されたか否かを判定してもよい(ステップS238)。終了が入力されていた場合(ステップS238;YES)、コントローラ210は、本動作を終了してもよい。一方、終了が入力されていなかった場合(ステップS238;NO)、コントローラ210は、ステップS231へリターンしてもよい。
【0093】
また、図8のステップS104によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を説明する。図20に示すように、レーザコントローラ220Aは、略所定繰返し周波数でトリガ信号S1をコントローラ210へ出力するまで待機してもよい(ステップS241;NO)。トリガ信号S1を出力すると(ステップS241;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5のスイッチ25への送信を開始してもよい(ステップS242)。スイッチ信号S5は、スイッチ遅延回路350を経由して、スイッチ25に入力してもよい。スイッチ遅延回路350には、パルスレーザ光32が放電空間23を通過するタイミングに合わせて、放電空間23で放電が発生するように、スイッチ遅延時間Dppが設定されていてもよい。
【0094】
その後、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。レーザコントローラ220Aは、この計測時間が予め設定しておいたスイッチオン時間ΔTpp以上となるまで待機してもよい(ステップS243;NO)。
【0095】
スイッチオン時間ΔTppが経過すると(ステップS243;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5の送信を終了してもよい(ステップS244)。これにより、放電空間23で放電が発生する期間が調整されてもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、動作を終了するか否かを判定してもよい(ステップS245)。終了する場合(ステップS245;YES)、レーザコントローラ220Aは、本動作を終了してもよい。一方、終了しない場合(ステップS245;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS241へリターンしてもよい。
【0096】
また、図8のステップS108の詳細を説明する。図21に示すように、レーザコントローラ220Aは、コントローラ210から入力された光センサ410の検出結果から開閉タイミングTopを特定してもよい(ステップS251)。また、レーザコントローラ220Aは、センサ430から入力された検出結果から放電タイミングTpoを特定してもよい(ステップS252)。
【0097】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、開閉タイミングTopに対する放電タイミングTpoの遅延時間Dを算出してもよい(ステップS253)。つぎに、レーザコントローラ220Aは、基準として設定しておいた遅延時間D0に対する遅延時間Dの誤差Δppを算出してもよい(ステップS254)。つぎに、レーザコントローラ220Aは、算出した誤差Δppを用いてスイッチ遅延時間Dpp(または、発振遅延時間Ddpおよびシャッタ遅延時間Dop)を補正してもよい(ステップS255)。その後、レーザコントローラ220Aは、図8のステップS109へ移行してもよい。
【0098】
6.補足説明
つづいて、上述した各実施の形態における各部の補足説明を、以下に記す。
【0099】
6.1 Ti:サファイアレーザ
図22は、上述のTi:サファイアレーザ6の一例を示す。図22に示すように、Ti:サファイアレーザ6は、いわゆるリットマン型のレーザであってよい。このTi:サファイアレーザ6は、高反射ミラー61と、出力結合ミラー65と、Ti:サファイア結晶62と、グレーティング63と、高反射ミラー64と、を備える。高反射ミラー61および出力結合ミラー65は、光共振器を形成する。Ti:サファイア結晶62およびグレーティング63は、この光共振器内の光路上に配置される。高反射ミラー64は、グレーティング63で回折されたレーザ光を反射してグレーティング63に戻す。高反射ミラー61および64は、高反射ミラー61および出力結合ミラー65とは別の共振器を形成する。また、出力結合ミラー65は、パルスレーザ光L0を出力する光出力端としても機能する。
【0100】
高反射ミラー61は、ポンピングレーザ5からの励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶62からのパルスレーザ光を反射する。高反射ミラー61を介して入力された励起51は、Ti:サファイア結晶62に入射する。Ti:サファイア結晶62の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。これにより、この端面でのレーザ光の反射が抑えられる。励起光51が入射したTi:サファイア結晶62は、共振器内を往復する励起光51からエネルギーを得て発振することで、パルスレーザ光L0を出射する。Ti:サファイア結晶62から出射されたパルスレーザ光L0は、グレーティング63によって回折される。ここで、出力結合ミラー65は、グレーティング63に対してたとえば0次回折光の出射方向に配置される。また、高反射ミラー64は、グレーティング63に対して±m次回折光の出射方向に配置される。この構成では、グレーティング63に対する高反射ミラー64の角度を調節することで、Ti:サファイアレーザ6が出力するパルスレーザ光L0の波長を選択することができる。この結果、Ti:サファイアレーザ6が出力するパルスレーザ光L0のスペクトル線幅を、露光時の色収差が無視できる程度のスペクトル線幅に制御することが可能となる。
【0101】
6.2 増幅器(PA)
図23は、上述の増幅器7の一例を示す。なお、本例では、光共振器を含まないマルチパス増幅方式のパワー増幅器を例に挙げる。図23に示すように、増幅器7は、複数の高反射ミラー72〜78と、Ti:サファイア結晶71と、を備える。この複数の高反射ミラー72〜78は、Ti:サファイアレーザ6から光シャッタ41を介して入力したパルスレーザ光L1がTi:サファイア結晶71を複数回(本例では4回)通過するマルチパスを形成する。Ti:サファイア結晶71には、高反射ミラー72を介して、ポンピングレーザ5からの励起光51も入射する。Ti:サファイア結晶71の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。Ti:サファイア結晶71は、マルチパスを進行するパルスレーザ光L1に基づいて、励起光51からエネルギーを得つつ発振する。これにより、複数回通過する際に、パルスレーザ光L1がマルチパス増幅される。この結果、増幅器7から増幅されたパルスレーザ光L1aが出射する。なお、高反射ミラー72は、励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶71からのレーザ光を反射する。
【0102】
6.3 光共振器を含む増幅器(PO)
また、増幅器7は、内部に光共振器を備えたパワー発振器に置き換えることも可能である。図24は、ファブリーペロー型の増幅器7Aの概略構成を示す。図24に示すように、増幅器7Aは、高反射ミラー172と、出力結合ミラー173と、Ti:サファイア結晶174と、高反射ミラー171と、を備える。高反射ミラー172および出力結合ミラー173は、光共振器を形成する。Ti:サファイア結晶174は、この光共振器内の光路上に配置される。高反射ミラー171は、Ti:サファイアレーザ6から光シャッタ41を介して入射したパルスレーザ光L1およびポンピングレーザ5から入射した励起光51を光共振器内に導く。
【0103】
高反射ミラー171は、Ti:サファイアレーザ6からのパルスレーザ光L1を光共振器側へ反射するとともに、ポンピングレーザ5からの励起光51を光共振器側へ透過する。また、光共振器を形成する一方の高反射ミラー172は、パルスレーザ光L1および励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶174からのレーザ光を反射する。Ti:サファイア結晶174の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。これにより、この端面でのレーザ光の反射が抑えられる。Ti:サファイア結晶174は、光共振器内を往復するパルスレーザ光L1に基づいて、励起光51からエネルギーを得つつ発振することで、増幅されたパルスレーザ光L1aを出射する。増幅後のパルスレーザ光L1aは、出力結合ミラー173を介して出力される。
【0104】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0105】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0106】
上述の実施形態においては、増幅器7が1つである例を示したが、増幅器7を複数使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6と増幅器7は共通のポンピングレーザ5によってポンピングしているが、別々のポンピングレーザを使用してもよい。また、ポンピングレーザ5としてNd:YLFレーザあるいはNd:YVOレーザの第二高調波光を発振するレーザを使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6の代わりにエルビウムドープト光ファイバレーザの第二高調波光を発生するレーザを使用してもよい。このレーザは、半導体レーザによってポンピングしてもよい。また、波長変換装置8は、本開示の構成に限定されるものではなく、波長変換装置8に入射される光を増幅装置3の増幅波長帯域の波長、例えば略193nmの波長の光に変換するものであればよい。例えば、波長変換装置8に含まれる波長変換素子としては、LBO結晶9の代わりにCLBO結晶を使用してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1、1A、1B 2ステージレーザ装置(レーザシステム)
2、2A、2B マスタオシレータ
3、3A、3B 増幅装置
4 低コヒーレンス化光学システム
5 ポンピングレーザ
6 Ti:サファイアレーザ
60 ロングパルスマスタオシレータ
7 増幅器
8 波長変換装置
81 ビームスプリッタ
11、82 高反射ミラー
9 LBO結晶
10 KBBF結晶
14 出力結合ミラー
15〜17 高反射ミラー
18、19 ウィンドウ
20 チャンバ
21 アノード
22 カソード
23 放電空間
24 レーザ電源
25 スイッチ
26 磁気パルス圧縮回路
31 パルスレーザ光(出力パルスレーザ光)
32、33 パルスレーザ光
41 光シャッタ
141、143 偏光子
142 ポッケルスセル
144 高圧電源
200 固体レーザ装置
210 コントローラ(同期制御装置)
211 内部トリガ発振器
220 外部装置
220A レーザコントローラ
311 発振遅延回路
341 シャッタ遅延回路
350 スイッチ遅延回路
410、411〜414 光センサ
420、421〜424 ビームスプリッタ
430 センサ
431 磁気スイッチ動作センサ
432 電流センサ
433 光センサ
433a 転写レンズ
433b ウィンドウ
433c ビームスプリッタ
600 露光装置
601 露光コントローラ
AL1 可飽和リアクトル
L0 シードパルスレーザ光
L1 通過パルスレーザ光
L1a 増幅パルスレーザ光
S1 トリガ信号
S11 ポンピングレーザ発振信号
S41 光シャッタ動作信号
S5 スイッチ信号
S61 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、
前記マスタオシレータから出力されたパルスレーザ光を増幅する増幅装置と、
前記マスタオシレータから出力されるパルスレーザ光のタイミングを検出する第1のタイミング検出器と、
前記増幅装置の放電タイミングを検出する第2のタイミング検出器と、
前記第1のタイミング検出器と前記第2のタイミング検出器との検出結果に基づいて、前記パルスレーザ光が前記増幅装置の放電空間内を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記マスタオシレータが前記パルスレーザ光を出力するタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御するコントローラと、
を備えるレーザシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1のタイミング検出器で検出された前記パルスレーザ光のタイミングと、前記第2のタイミング検出器で検出された前記放電タイミングとの差を算出し、算出した前記差に基づいて、前記マスタオシレータが前記パルスレーザ光を出力するタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御する、請求項1記載のレーザシステム。
【請求項3】
前記マスタオシレータは、
励起光を出力するポンピングレーザと、
前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、
前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、
を含み
前記第1のタイミング検出器は、前記シードレーザから出力された前記パルスレーザ光が所定の位置を通過するタイミングを前記パルスレーザ光のタイミングとして検出し、
前記コントローラは、前記第1のタイミング検出器と前記第2のタイミング検出器との検出結果に基づいて、前記ポンピングレーザを発振させるタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御する、
請求項1記載のレーザシステム。
【請求項4】
前記マスタオシレータは、
励起光を出力するポンピングレーザと、
前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、
前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、
前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、
を含み
前記第1のタイミング検出器は、前記光シャッタを通過した前記パルスレーザ光が所定の位置を通過するタイミングを前記パルスレーザ光のタイミングとして検出し、
前記コントローラは、前記第1のタイミング検出器と前記第2のタイミング検出器との検出結果に基づいて、前記光シャッタを開状態とするタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御する、
請求項1記載のレーザシステム。
【請求項5】
前記第2のタイミング検出器は、前記増幅装置の放電空間に発生した放電による放電光を前記放電タイミングとして検出する、請求項1記載のレーザシステム。
【請求項6】
前記増幅装置は、磁気スイッチを含み、放電空間に放電を発生させる回路と、を含み、
前記第2のタイミング検出器は、前記磁気スイッチのオン/オフを前記放電タイミングとして検出する、
請求項1記載のレーザシステム。
【請求項7】
前記第2のタイミング検出器は、前記増幅装置の放電空間に発生した放電による放電項を前記放電タイミングとして検出する、請求項1記載のレーザシステム。
【請求項8】
前記シードレーザは、前記コントローラが前記光シャッタを開状態とする期間よりも長いパルス幅の前記パルスレーザ光を出力する、請求項4記載のレーザシステム。
【請求項9】
前記光シャッタは、
電気光学素子と、
前記電気光学素子の光入力端側に配置される第1の光フィルタと、
前記電気光学素子の光出力端側に配置される第2の光フィルタと、
前記電気光学素子に接続され、前記電気光学素子に電圧を印加する電源と、
を備える、請求項4記載のレーザシステム。
【請求項10】
前記電気光学素子は、ポッケルスセルである、請求項9記載のレーザシステム。
【請求項11】
前記第1および第2の光フィルタは、それぞれ少なくとも1つの偏光子を含む、請求項9記載のレーザシステム。
【請求項12】
パルスレーザ光を出力するマスタオシレータ、前記マスタオシレータから出力されたパルスレーザ光を増幅する増幅装置と、前記マスタオシレータから出力されるパルスレーザ光のタイミングを検出する第1のタイミング検出器と、前記増幅装置の放電タイミングを検出する第2のタイミング検出器と、を備える装置のレーザ生成方法であって、
前記第1のタイミング検出器と前記第2のタイミング検出器との検出結果に基づいて、前記パルスレーザ光が前記増幅装置の放電空間内を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記マスタオシレータが前記パルスレーザ光を出力するタイミングおよび前記増幅装置が放電するタイミングのうち少なくとも一方を制御する、
レーザ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−204820(P2012−204820A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71168(P2011−71168)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/リソグラフィ用ハイブリッドArFレーザシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】