説明

レーザー加工方法及びレーザー加工品

【課題】 レーザー光により被加工物を加工する場合に、分解物による被加工物表面の汚染を効果的に低減して、生産効率よくかつ容易にレーザー加工を行うことが可能なレーザー加工方法を提供する。
【解決手段】 本発明のレーザー加工方法は、被加工物に対しレーザー光を照射して加工するレーザー加工方法であって、前記レーザー光の照射の際に発生する分解物を、照射部分の近傍で吸引除去しながら、前記レーザー加工することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種シート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザー等の発光あるいは受光素子基板、MEMS基板、半導体パッケージ、布、皮、紙、フィルム材料などの被加工物を、レーザーを用いて例えば切断、孔あけなどの加工を行うレーザー加工方法及びレーザー加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電気・電子機器の小型化等に伴い、部品の小型化・高精細化が進み、各種材料の外形加工も、加工精度が±50μmあるいはそれ以下の高精細・高精度化が求められてきている。レーザー光を用いた被加工物の切断、穴あけ等の加工は、高速性、微細性、切断面品質、加工形状自由度などの利点を有しており、この様な観点から金属、ガラス、樹脂、半導体、セラミックなど材料を問わず一般に広く活用されている。
【0003】
ところが、レーザーを用いた材料加工は、被加工物の光吸収による溶融や分解反応により実施されるため、被加工物の加工面側(レーザー光の照射面側)に於けるレーザー加工部分周辺にカーボン等の分解物が付着するという問題がある。従って、この分解物を除去する為、アルコール拭き取り、洗浄やデスミアと呼ばれる後工程が必須となっている。
【0004】
特に、被加工物の加工面側に於ける切断端面周辺部では、分解物が上方へ飛散することから、その堆積量も多い。この照射側の分解物残渣はレーザー光のパワーに比例して堆積量が増える。従って、高速で切断するために高いパワーでレーザー光を被加工物に照射すると、分解物残渣の堆積が増し、後工程での分解物残渣除去が困難になってくる。強固に付着した分解物残渣の場合は、過マンガン酸カリウム水溶液等によるウェットデスミアが一般に行われるが、この場合、廃液処理による環境負荷の増大という問題も生じる。こうした問題を回避する方法として、YAG基本波とウォータージェットとを併用する方法も提案されているが、この方法によるとエッジ部分の分解物の堆積は、ウォータージェットの冷却効果により低減されるものの、吸湿性の材料に対しては適応できないなど、材料選択性において問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−343747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、レーザー光により被加工物を加工する場合に、分解物による被加工物表面の汚染を効果的に低減して、生産効率よくかつ容易にレーザー加工を行うことが可能なレーザー加工方法を提供することにある。また、前記レーザー加工方法により得られるレーザー加工品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、レーザー加工方法、およびレーザー加工品について検討した。その結果、以下の構成を採用することにより前記の目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明に係るレーザー加工品の製造方法は、前記の課題を解決する為に、被加工物に対しレーザー光を照射して加工するレーザー加工方法であって、前記レーザー光の照射の際に発生する分解物を、照射部分の近傍で吸引除去しながら、前記レーザー加工することを特徴とする。
【0009】
レーザー光を被加工物に照射すると、その照射部分での被加工物の溶融や分解反応により分解物が発生し周囲に飛散する。前記方法では、その照射部分近傍に於いて分解物を吸引除去しながらレーザー加工を行うので、被加工物の加工面側に於ける分解物の付着を抑制し、表面汚染を低減することができる。
【0010】
前記吸引除去を前記レーザー光の照射方向と同軸の方向、又はレーザー光による加工の進行方向に対し後方から行うことが好ましい。例えば、被加工物をステージ上に固定してレーザー光を走査させ、又はレーザー光を固定してステージを走査させることにより、被加工物の切断加工を行う場合、分解物は加工の進行方向(走査方向)の後方に飛散する。従って、前記方法の様に、レーザー光の照射方向と同軸の方向、又はレーザー光による加工の進行方向に対し後方から吸引除去を行うことにより、分解物の除去を一層効果的に行うことができる。
【0011】
前記照射部分又はその近傍にガスを吹き付けて、前記分解物を吸引除去する方向に拡散させることが好ましい。これにより、分解物の吸引除去の効率を向上させ、被加工物の加工面側に於ける汚染を一層低減することができる。
【0012】
前記ガスとして圧縮エアーを使用することが好ましい。
【0013】
前記被加工物として、シート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザーの発光若しくは受光素子基板、MEMS基板、半導体パッケージ、布、皮、紙、又は単層若しくは多層のフィルム材料を使用することができる。前記に示す各種の被加工物に於いても、レーザー加工の際にその加工面側に分解物が付着して表面汚染が生じる。しかし、分解物の吸引除去を伴う本発明のレーザー加工方法であると当該表面汚染を低減できるので、これらの各種の被加工物に対しても本発明は好適に適用することができる。
【0014】
前記レーザー光として、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、YAGレーザーの第3高調波若しくは第4高調波、YLF若しくはYVOの固体レーザーの第3高調波若しくは第4高調波、Ti:Sレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー又は炭酸ガスレーザーを使用することができる。
【0015】
本発明のレーザー加工品は、前記の課題を解決する為に、前記に記載のレーザー加工方法により得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るレーザー加方法は、レーザー光の照射の際に発生する分解物を、照射部分の近傍で吸引除去しながら行うので、被加工物の加工面側に分解物が付着せず、これにより、加工面が汚染されるのを低減することができる。その結果、生産効率よくかつ容易にレーザー加工を行うことが可能なレーザー加工方法を提供することができる。
【0017】
更に、分解物の除去の為、例えばウェットデスミアなどの後工程も省略できる。加えて、後工程で必要な廃液処理も不要となり、環境負荷の低減にも寄与できる。また、分解物の付着を低減できることからレーザー光の高パワー化が可能となり、スループットの向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る被加工物のレーザー加工について説明するための概略図である。
【図2】前記被加工物としての偏光フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係るレーザー加工方法について、図を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係るレーザー加工方法の様子を概略的に示す模式図である。
【0020】
本実施の形態に係るレーザー加工方法は、図1に示すように、被加工物3に対しレーザー光1を照射する際に発生する分解物4を、吸引ノズル5を用いて吸引除去しながら行う。吸引除去は、レーザー光1の照射方向と同軸の方向、又はレーザー光1による加工の進行方向(走査方向)に対し後方から行うのが好ましい。分解物4の飛散は走査方向の後方に向かう傾向がある為であり、前記の方向から吸引除去を行うことにより、除去効率の向上が図れる。また、吸引ノズル5は、レーザー光1の走査速度に合わせて同様の速度で移動させるのが好ましい。
【0021】
前記吸引ノズル5は、例えば真空ポンプ等に連結されている。但し、本発明では分解物4の吸引が可能なものであれば特に限定されず、従来公知の種々のものを用いることができる。吸引能力としては、100L/min以上のものが好ましく、300L/min以上のものがより好ましい。吸引能力が100L/min未満であると分解物4の除去が不十分となり、被加工物3の加工面側に於ける表面汚染の抑制が図れない場合がある。尚、吸引能力が高いほど分解物4の除去率が向上するが、吸引能力の上限値は一般的には1000L/min以下であることが好ましい。
【0022】
また、前記照射部分又はその近傍にガス14を吹き付けて、前記分解物4を吸引除去する方向に拡散させるのが好ましい。より具体的には、図1に示すようにレーザー加工を行う場合には、ガス14を加工の進行方向の後方であって、吸引ノズル5の後方から被加工物3の加工面に向かって、吹き付けノズル6より吹き付ける。分解物4は、加工の進行方向に対しその後方に向かって、被加工物の加工面を沿うように拡散するので、前記方向からガス14を吹き付けることにより、分解物4を吸引ノズル5の方向に拡散させる。これにより、分解物4の除去効率を向上させることができる。ガス14としては特に限定されず、例えば、圧縮エアーやヘリウム、窒素、酸素等が例示できる。
【0023】
尚、本発明に於いては、レーザー光1と同軸上にアシストガスをレーザー加工部分に吹き付けることは好ましくない。従来のレーザー加工方法では、例えば炭酸ガスレーザーで加工する際に、反応促進の為にレーザー照射方向と同軸上より酸素などのアシストガスを吹き付けていた。しかし、アシストガスを吹き付けると、発生した分解物の拡散がそのガス圧力によって押さえ込まれ、加工部分に滞留する。その結果、被加工物の表面汚染を助長し、悪影響をもたらす場合がある。
【0024】
本発明のレーザー加工方法は、例えば切断加工、マーキング、穴空け加工、溝加工、スクライビング加工、又はトリミング加工など分解物が飛散する全ての形状加工に対し適用可能である。本発明はこれらの加工のうち切断加工に適用するのが好ましい。また、切断加工としては、ハーフカット、フルカットの何れにも適用可能である。
【0025】
レーザー光1は、レーザー発振機により発振され、伝送路内の反射鏡で反射し、集光レンズによりその焦点位置に極小に集光され、加工に必要な高エネルギーを備えて加工ノズル2より照射される。レーザー光1は、X−Yステージ7上の被加工物3に対し垂直方向から照射される。このとき切断加工を行う際には、レーザー照射位置を所定の加工ライン上に沿って移動させることにより行う。レーザー光1の移動手段としては、X−Yステージスキャンの他に、ガルバノスキャン、マスクイメージング加工といった公知の方法が例示できる。
【0026】
前記レーザー光1としては特に限定されず、加工方法に応じて適宜選択される。また、反応過程は用いるレーザー光源によって異なり、例えば発振波長193nmのArFエキシマレーザーや248nmのKrFエキシマレーザーや308nmのXeClエキシマレーザー、355nmのYAGレーザーの第3高調波、同じく266nmの第4高調波、同様に、YLF、YVO等の固体レーザーの第3、4高調波、あるいは400nm以上の波長を持つレーザーであっても多光子吸収過程を経由した紫外線領域の光吸収が可能なTi:Sレーザーなどはアブレーションによるエッチングにより加工が行われ、発振波長9.3mmや10.6mmの炭酸ガスレーザーは赤外吸収を利用した発熱現象によるエッチングが行われる。紫外吸収によるアブレーションと赤外吸収による熱加工では反応過程は異なるものの、両者において分解物の発生は起こる為、いずれの加工プロセスにおいても表面への分解物の付着は問題となる。
【0027】
本発明で加工する被加工物3としては、例えば、図2に示す偏光フィルム15が挙げられる。偏光フィルム15は、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム11の両面に一対のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム10が貼り合わされている。更に、一方のTACフィルム10側には、アクリル系粘着剤層9を介してPETフィルムからなるセパレータ13が設けられている。他方のTACフィルム10側には、表面保護フィルム12が設けられている。この表面保護フィルム12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム8にアクリル系粘着剤層9が設けられた構成であり、アクリル系粘着剤層9が他方のTACフィルム10との貼合せ面となっている。
【0028】
また、被加工物3としては、前記偏光フィルム15の他に、レーザー光により加工できるものであれば特に限定なく適用することができる。具体的には、例えば各種シート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザー等の発光あるいは受光素子基板、MEMS(Micro Electro Mechanical System)基板、半導体パッケージ、布、皮、紙、単層若しくは多層のフィルム材料などが挙げられる。
【0029】
各種シート材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂や、充填剤を含むポリエチレン系、ポリプロピレン樹脂等での高分子フィルムや不織布、それらの樹脂を延伸加工、含浸加工等により物理的あるいは光学的な機能を付与したもの、銅、アルミ、ステンレス等の金属シートあるいは、上記ポリマーシートおよび/または金属シートを直接または接着剤等を介して積層したものなどが挙げられる。
【0030】
また回路基板としては、片面、両面あるいは多層フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシやセラミック、金属コア基板等からなるリジッド基板、ガラスあるいはポリマー上に形成された光回路あるいは光−電気混成回路基板などが挙げられる。
【0031】
また、単層若しくは多層のフィルム材料としては、各種の粘着フィルム、光学フィルム等が挙げられる。
【0032】
レーザーの加工条件は、被加工物3の種類等に応じて適宜設定され得る。例えば、本発明のレーザー加工方法を切断加工に適用する場合、その切断速度(加工の進行速度)は被加工物3の物性に応じて適宜設定され得る。本発明はレーザー光1を用いた加工である為、従来の刃物や金型による切断加工と比べて切断速度を速くすることができる。被加工物3として、前記偏光フィルム15を用いる場合、切断速度は10〜300m/minが好ましく、50〜150m/minがより好ましい。切断速度が10m/min未満であると、生産性が低下させるという不都合がある。その一方、300m/minを超えると、単位時間当たりの分解物発生量に対してポンプの吸引能力が追いつかないという不都合がある。
【0033】
レーザー光1の集光径は、被加工物3に施す加工の種類に応じて適宜設定され得る。切断加工の場合、切断幅がレーザー光1の集光径とほぼ一致する。従って、集光径を調節することにより、切断幅の制御が可能になる。集光径(切断幅)は、通常50〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。集光径が50μm未満であると、切断速度が小さくなる場合がある。その一方、500μmを超えると、被加工物からの製品取り出し効率が低下する場合がある。
【0034】
レーザー光1のパワー密度は、被加工物3の物性、切断加工の場合にはその切断速度に応じて適宜設定され得る。被加工物3の光吸収率はレーザー光1の波長に左右される。レーザー光1は発振媒体や結晶を選択することで紫外線から近赤外線まで波長を発振できる。従って、被加工物3の光吸収波長に合わせたレーザー光1を使用することにより、低いパワー密度で効率よく加工できる。例えば、被加工物3が前記偏光フィルム15の場合、50〜700Wが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
[被加工物]
本実施例では、被加工物として前記図2に示す構成の偏光フィルムを用いた。即ち、PVAフィルムの一方の面に表面保護フィルムが設けられており、他方の面にアクリル系粘着剤層(厚さ24μm)を介してセパレータが積層された構造である。表面保護フィルムは厚さ38μmのPET基材上に粘着剤層を塗布して設けたフィルムからなる。粘着剤層としては、厚さ24μmのアクリル系粘着剤を用いた。セパレータは、厚さ38μmのPETフィルムからなる。尚、PVAフィルムの厚さは約22μmである。
【0037】
[レーザー光照射装置]
使用したレーザー光照射装置は以下の通りである。
レーザー光源:炭酸ガスレーザー
レーザー波長:10.6mm
最高出力:250W
【0038】
[レーザー光の照射条件]
下記条件下で、偏光フィルムのハーフカット加工を実施した。尚、吸引ノズルは、レーザー光の走査方向に対し反対側の方向に配置して行った。また、吸引ノズルは、レーザー光の走査速度と同じ速度で移動させて行った。
パワー:40W
スポット径:120mm
パルス幅:9ms
繰り返し周波数:20kHz
走査速度:400mm/s
吸引ノズル径:4.5mmφ
真空ポンプ排気能力:500L/min
吸引ノズル−照射部間距離:5mm
切断深さ:325μm
【0039】
ハーフカット加工の結果、レーザー加工時に発生した分解物は吸引ノズルの方へ引き寄せられ、被加工物表面を這うことなく吸引除去された。偏光フィルムのハーフカット部周辺に於ける分解物残渣は、ハーフカット部分を中心にして500mm幅以下の範囲での付着に留まった。
【0040】
(実施例2)
本実施例に於いては、下記の加工条件下で切断(フルカット)加工を行ったこと以外は、前記実施例1と同様にしてレーザー加工を行った。
【0041】
[レーザー光の照射条件]
パワー:100W
スポット径:120mm
パルス幅:20ms
繰り返し周波数:20kHz
走査速度:400mm/s
吸引ノズル径:8mmφ
真空ポンプ排気能力:500L/min
吸引ノズル−照射部間距離:5mm
【0042】
切断加工の結果、レーザー加工時に発生した分解物は吸引ノズルの方へ引き寄せられ、被加工物表面を這うことなく吸引除去された。偏光フィルムの切断部周辺に於ける分解物残渣は、切断部分を中心にして100mm幅以下の範囲での付着に留まった。
【0043】
(実施例3)
[被加工物]
本実施例では、被加工物としてポリイミドフィルム(商品名;カプトン、125mm厚、デュポン社製)を用いた。
【0044】
[レーザー光照射装置]
使用したレーザー光照射装置は、前記実施例1と同様のものを用いた。
【0045】
[レーザー光の照射条件]
下記条件下で、ポリイミドフィルムの切断(フルカット)加工を実施した。尚、吸引ノズルは、レーザー光の走査方向に対し反対側の方向に配置して行った。また、吸引ノズルは、レーザー光の走査速度と同じ速度で移動させて行った。
【0046】
パワー:40W
スポット径:120mm
パルス幅:9 ms
繰り返し周波数:20kHz
走査速度:400mm/s
吸引ノズル径:8mmφ
真空ポンプ排気能力:500L/min
吸引ノズル−照射部間距離:5mm
【0047】
切断加工の結果、レーザー加工時に発生した分解物は吸引ノズルの方へ引き寄せられ、被加工物表面を這うことなく吸引除去された。ポリイミドフィルムの切断部周辺に於ける分解物残渣は、光学顕微鏡では確認されなかった。
【0048】
(比較例1)
本比較例に於いては、分解物の吸引除去を行わなかったこと以外は、前記実施例1と同様にして偏光フィルムのハーフカット加工を行った。その結果、偏光フィルムの切断部周辺に於ける分解物残渣は、ハーフカット部分を中心にして5mm以上の範囲にわたって多量に付着していることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1 レーザー光
2 加工ノズル
3 被加工物
4 分解物
5 吸引ノズル
6 吹き付けノズル
7 X−Yステージ
8 フィルム
9 アクリル系粘着剤層
10 TACフィルム
11 ポリビニルフィルム
12 表面保護フィルム
13 セパレータ
14 ガス
15 偏光フィルム(被加工物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対しレーザー光を照射して加工するレーザー加工方法であって、
前記レーザー光の照射の際に発生する分解物を、照射部分の近傍で吸引除去しながら、前記レーザー加工することを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項2】
前記吸引除去を前記レーザー光の照射方向と同軸の方向、又はレーザー光による加工の進行方向に対し後方から行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記照射部分又はその近傍にガスを吹き付けて、前記分解物を吸引除去する方向に拡散させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー加工方法。
【請求項4】
前記ガスとして圧縮エアーを使用することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項5】
前記被加工物として、シート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザーの発光若しくは受光素子基板、MEMS基板、半導体パッケージ、布、皮、紙、又は単層若しくは多層のフィルム材料を使用することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項6】
前記レーザー光として、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、YAGレーザーの第3高調波若しくは第4高調波、YLF若しくはYVOの固体レーザーの第3高調波若しくは第4高調波、Ti:Sレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー又は炭酸ガスレーザーを使用することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のレーザー加工方法により得られるレーザー加工品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−143814(P2012−143814A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73899(P2012−73899)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2007−130532(P2007−130532)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】