説明

レーザー加工装置

【課題】保護膜を形成するために塗布される液状樹脂の飛散等に起因する装置本体の不具合を防止すること。
【解決手段】半導体ウェーハWの被加工面に液状樹脂からなる保護膜を形成する保護膜形成機構6と、保護膜形成機構6に半導体ウェーハWを搬入搬出するプッシュプル機構8とを備えるレーザー加工装置1において、保護膜形成機構6は、被加工面を露出した状態で半導体ウェーハWを保持するワーク保持部622と、半導体ウェーハWを保持したワーク保持部622を鉛直方向に回転軸として回転させるテーブル支持部621と、ワーク保持部622及び保持された半導体ウェーハWを囲んで密閉する筐体とを有し、この筐体に、半導体ウェーハWの搬入搬出の際にプッシュプル機構8の通過を許容する開位置に配置される一方、保護膜を形成する際に液状樹脂の筐体外への飛散を防止する閉位置に配置されるシャッター部65を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関し、特に、半導体ウェーハなどの被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、略円板形状を有する半導体ウェーハの表面に格子状に配列されたストリート(切断ライン)によって複数の領域が区画される。そして、この区画された領域にIC、LSI等の回路が形成された半導体ウェーハをストリートに沿って切断することによって回路毎に分割して個々の半導体チップが製造される。このような半導体ウェーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと称される切削装置により行われる。
【0003】
半導体ウェーハをストリートに沿って切断する加工方法として、本出願人においては、半導体ウェーハにレーザー光線を照射して切断する加工方法を試みている(例えば、特許文献1参照)。また、本出願人においては、半導体ウェーハのストリートに沿ってレーザー光線を照射する場合、照射された領域に熱エネルギーが集中してデブリが発生するため、半導体ウェーハの表面にデブリが付着するのを防ぐために半導体ウェーハの表面に保護膜を形成する加工方法も提案している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2004−188475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような半導体ウェーハの表面に保護膜を形成する加工方法においては、保護膜を形成する液状樹脂を塗布する過程で液状樹脂が装置内に飛散したり、舞ったりすることで装置内に液状樹脂が付着、固化し、例えば、装置内の可動部分の可動を阻害するなどの不具合が発生し得るという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、保護膜を形成するために塗布される液状樹脂の飛散等に起因する装置本体の不具合を防止することができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、前記被加工物の被加工面に液状樹脂からなる保護膜を形成する保護膜形成機構と、前記保持テーブルに保持された前記被加工物の被加工面にレーザービームを照射して加工を施すレーザー加工機構と、前記保護膜形成機構に前記被加工物を搬入搬出する搬送機構とを備え、前記保護膜形成機構は、被加工面を露出した状態で前記被加工物を保持する保持部と、前記被加工物を保持した前記保持部を鉛直方向に回転軸として回転させ、被加工面に供給された前記液状樹脂を当該被加工面全体に広げる回転駆動部と、前記保持部及び当該保持部に保持された前記被加工物を囲んで密閉する筐体とを有し、前記筐体に、前記被加工物の搬入搬出の際に前記搬送機構の通過を許容する開位置に配置される一方、前記保護膜を形成する際に前記液状樹脂の前記筐体外への飛散を防止する閉位置に配置されるシャッター部を設けたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、保護膜形成機構の筐体に、被加工物の搬入搬出の際に搬送機構の通過を許容する一方、保護膜を形成する際に閉じて液状樹脂の筐体外への飛散を防止するシャッター部を設けたことから、保護膜を形成する過程で液状樹脂の筐体外への飛散を確実に防止することができるので、保護膜を形成するために塗布される液状樹脂の飛散等に起因する装置本体の不具合を防止することが可能となる。
【0009】
本発明のレーザー加工装置においては、前記筐体の側壁面を開閉可能に前記シャッター部を配置し、前記筐体の上壁面を常に前記保持部に保持された前記被加工物の被加工面と対向配置させることが好ましい。
【0010】
例えば、本発明のレーザー加工装置においては、前記筐体の上壁面に、前記保持部に保持された前記被加工物の被加工面に形成された前記保護膜の状態を検出する検出部、或いは、筐体内にクリーンエアを送り込むクリーンエア送入機構が配設される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保護膜形成機構の筐体に、被加工物の搬入搬出の際に搬送機構の通過を許容する一方、保護膜を形成する際に閉じて液状樹脂の筐体外への飛散を防止するシャッター部を設けたことから、保護膜を形成する過程で液状樹脂の筐体外への飛散を確実に防止することができるので、保護膜を形成するために塗布される液状樹脂の飛散等に起因する装置本体の不具合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るレーザー加工装置が備えるチャックテーブルの周辺の斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るレーザー加工装置が備える保護膜形成機構の周辺の斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係るレーザー加工装置が備える保護膜形成機構の保護膜形成時の動作の一例を示す説明図である。
【図5】上記実施の形態に係るレーザー加工装置が備える保護膜形成機構の保護膜形成時の動作の一例を示す説明図である。
【図6】上記実施の形態に係るレーザー加工装置で加工対象とされる半導体ウェーハの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。最初に、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置について説明する前に、加工対象となる半導体ウェーハについて簡単に説明する。図6は、環状フレームに支持された半導体ウェーハの斜視図である。
【0014】
図6に示すように、半導体ウェーハWは、略円盤状に形成されており、表面に格子状に配列されたストリート101によって複数の領域に区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。また、半導体ウェーハWは、貼着テープ103を介して環状フレーム104に支持され、カセット3(図1参照)内に収容された状態でレーザー加工装置1に搬入および搬出される。
【0015】
なお、本実施の形態においては、被加工物(ワーク)としてシリコンウェーハ等の半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではなく、チップ実装用として半導体ウェーハの裏面に貼着されるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイヤ(Al2O3)系の無機材料基板、LCDドライバー等の各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料をワークとしてもよい。
【0016】
次に、図1を参照して、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置について説明する。図1は、本実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。図2は、本実施の形態に係るレーザー加工装置が備えるチャックテーブルの周辺の斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す左下方側を前方側と呼び、同図に示す右上方側を後方側と呼ぶものとする。
【0017】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、半導体ウェーハWにデブリの付着を防止する保護膜を成膜すると共に、成膜後の半導体ウェーハWをレーザー加工するように構成されている。レーザー加工装置1は、一部が前方に突き出た略直方体状の基台2を有し、基台2の突き出た部分にはカセット3が載置される搬入搬出機構4が設けられている。搬入搬出機構4の後方には、搬入搬出機構4に隣接し、加工済みの半導体ウェーハWを洗浄する洗浄機構5と、洗浄機構5を挟んで搬入搬出機構4に対向し、半導体ウェーハWに保護膜を形成する保護膜形成機構6とが設けられている。
【0018】
洗浄機構5および保護膜形成機構6の側方には、保持テーブルとしてのチャックテーブル71と、チャックテーブル71上の半導体ウェーハWにレーザー光線を照射するレーザー加工ヘッド72とを有するレーザー加工機構7が設けられている。また、基台2の一側面2aには、搬入搬出機構4に載置されたカセット3と保護膜形成機構6との間で、半導体ウェーハWを搬送する搬送機構としてのプッシュプル機構8が設けられている。
【0019】
洗浄機構5の後述する洗浄用テーブル52および保護膜形成機構6の後述する成膜用テーブル62のそれぞれの上方には、半導体ウェーハWをスライド可能にガイドする一対のガイドレール9、10が設けられている。また、基台2の上方には、一対のガイドレール9とチャックテーブル71との間で半導体ウェーハWの受け渡しを行う第1、第2のアッパーアーム11、12が設けられている。
【0020】
搬入搬出機構4は、カセット3を載置する載置板41を有し、載置板41は昇降可能に構成されている。搬入搬出機構4は、カセット3を載置した状態で載置板41を昇降させることにより、高さ方向における半導体ウェーハWの出し入れ位置を調整している。
【0021】
洗浄機構5は、上面に円形の開口部51が形成され、開口部51の中央に加工済みの半導体ウェーハWが保持される洗浄用テーブル52を有している。洗浄用テーブル52は、半導体ウェーハWを吸着保持する真空チャック式であり、周囲に環状フレーム104を保持する4つのクランプ部53が設けられている。このクランプ部53は、洗浄用テーブル52の四方から延びる支持板54に振り子状に支持されており、洗浄用テーブル52の回転によって作用する遠心力により跳ね上げられてクランプする。また、洗浄用テーブル52は、開口部51と基台2内部との間で昇降可能に構成され、基台2内において高速回転されつつ、洗浄水が噴射されることで半導体ウェーハWを洗浄する。
【0022】
保護膜形成機構6は、上面に矩形状の開口部61が形成され、開口部61の中央に加工前の半導体ウェーハWが保持される成膜用テーブル62を有している。成膜用テーブル62は、半導体ウェーハWを吸着保持する真空チャック式であり、周囲に洗浄用テーブル52と同様な4つのクランプ部63が設けられている。また、成膜用テーブル62の近傍には、後述する液状樹脂供給部67が設けられており、この液状樹脂供給部67により半導体ウェーハWの被加工面である上面に液状樹脂が供給される。
【0023】
開口部61の上方には、開口部61の後方の一辺部から上方に立ちあがり、開口部61を覆うように延在する屋根部64が設けられている。開口部61の後方の一辺部を除く三辺部には、屋根部64によって開放される3方を覆うシャッター部65が設けられている。シャッター部65は、基台2内に上下動可能に収容されており、半導体ウェーハWの搬送時に下動して基台2内に収納される一方、成膜時に上動して保護膜形成機構6内を密閉する。より具体的には、半導体ウェーハWの搬入搬出の際にプッシュプルアーム81の通過を許容する開位置(図1に示す位置)と、保護膜を形成する際に液状樹脂の筐体外への飛散を防止する閉位置(図5参照)との間で上下動するものとなっている。
【0024】
保護膜形成機構6においては、これらの屋根部64とシャッター部65とでその筐体の一部が構成される。シャッター部65は、筐体の側壁面を開閉可能に配置されている。屋根部64は、筐体の上壁面を構成するものであり、常に成膜用テーブル62に保持された半導体ウェーハWの上面と対向配置されている。このように筐体の上壁面を常に成膜用テーブル62に保持された半導体ウェーハWの上面と対向配置させていることから、屋根部64の上面を、半導体ウェーハWとの関係で位置精度が要求されるデバイスや、複雑な配線が必要なデバイス等を配設する部分として活用することができるものとなっている。
【0025】
保護膜形成機構6は、半導体ウェーハWの成膜時にシャッター部65により密閉され、液状樹脂供給部67により成膜用テーブル62に保持された半導体ウェーハWの上面に液状樹脂が塗布される。そして、成膜用テーブル62が高速回転され、液状樹脂が半導体ウェーハWの上面全体に広げられることにより保護膜が形成される。このとき、半導体ウェーハWから飛散した液状樹脂の液滴は、シャッター部65により筐体外への飛散が防止されるものとなっている。なお、保護膜形成機構6の詳細構成については、後述する。
【0026】
屋根部64の上面には、保護膜形成機構6内にクリーンエアを送り込むクリーンエア送入機構13および半導体ウェーハWに成膜された保護膜の状態を検出する検出機構14が配設されている。クリーンエア送入機構13は、例えば、送風機とこの送風機の送風先に配設されたヘパフィルタとを備え、外部の空気を保護膜形成機構6内に導入する。このように屋根部64の上面にクリーンエア送入機構13を配設することにより、半導体ウェーハWの上面にクリーンエアを送り込むことができ、塗布された液状樹脂の固化を早めると共に、保護膜形成機構6の筐体内に存在する埃や粉塵が半導体ウェーハWの上面に付着するの防止することができる。検出機構14は、半導体ウェーハWに成膜された保護膜の膜厚を測定する膜厚測定器で構成されるが、これに限定されるものではない。このように屋根部64の上面に膜厚測定器を配設することにより、半導体ウェーハWの上面に形成された保護膜を精度良く測定することができ、不適当な膜厚の保護膜が形成される半導体ウェーハWの発生頻度を低減することができる。なお、これらのクリーンエア送入機構13、検出機構14は、保護膜形成機構6の筐体内の密閉性を維持した状態で屋根部64に形成された所定の開口部に固定されている。
【0027】
プッシュプル機構8は、カセット3と保護膜形成機構6との間で半導体ウェーハWを搬送させるプッシュプルアーム81と、プッシュプルアーム81をY軸方向およびZ軸方向に移動させる移動機構82とを有し、プッシュプルアーム81によりカセット3に半導体ウェーハWを出し入れする他、保護膜形成機構6に半導体ウェーハWを出し入れするように構成されている。また、プッシュプル機構8は、半導体ウェーハWを、一対のガイドレール9上で洗浄用テーブル52に対してY軸方向に位置決めする他、一対のガイドレール10上で成膜用テーブル62に対してY軸方向に位置決めする。
【0028】
移動機構82は、基台2の一側面2aにおいてY軸方向に延在するガイド部83と、ガイド部83にスライド可能に係合されたロッド84とを有している。ロッド84は、上下方向に延在し、延在方向の中間部に形成されたナット部に、Y軸方向に延在するボールネジ85が螺合されている。ボールネジ85は、その一端に連結された駆動モータ86により回転駆動され、これに伴ってロッド84がY軸方向に移動される。ロッド84の先端は、図示しないアクチュエータにより上下方向に伸縮可能に構成されており、プッシュプルアーム81を片持支持している。このように、ロッド84の先端が伸長可能なため、半導体ウェーハWの先端側(後端側)に位置するプッシュプルアーム81を半導体ウェーハWの後端側(先端側)に、半導体ウェーハWの上方を通って回り込ませることが可能となっている。
【0029】
プッシュプルアーム81の先端には、半導体ウェーハWを搬送可能に操作する操作部87が設けられている。操作部87のカセット3に対向する前面側には、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム104を挟持する第1の挟持部88aが設けられている。また、操作部87の保護膜形成機構6に対向する背面側には、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム104を挟持する第2の挟持部88bが設けられている。第1、第2の挟持部88a、88bは、それぞれ操作部87から突出した一対の平行板で構成され、その一方が上下方向に離間接近可能に構成されている。一方の平行板が他方の平行板に接近することで環状フレーム104を挟持する一方、他方の平行板から離間することで環状フレーム104を開放する。
【0030】
操作部87の前面は、Y軸方向に対して垂直な平面であり、環状フレーム104の外周面に当接する第1の当接部89aを形成している。第1の当接部89aは、第1の挟持部88aの非挟持状態で環状フレーム104の外周面に当接可能となっている。また、操作部87の背面は、第1の当接部89aと同様に、環状フレーム104の外周面に当接する第2の当接部89bを形成している。
【0031】
このように構成されたプッシュプル機構8においては、第1、第2の挟持部88a、88bに環状フレーム104を挟持させた状態でプッシュプルアーム81を移動させることで、半導体ウェーハWを引き出し、第1、第2の当接部89a、89bを環状フレーム104の外周面に当接させた状態でプッシュプルアーム81を移動させることで、半導体ウェーハWを押し込むように動作する。
【0032】
一対のガイドレール9は、半導体ウェーハWの搬送時には相互に接近して半導体ウェーハWをガイドすると共に、洗浄用テーブル52に対してX軸方向の位置決めを行う。また、一対のガイドレール9は、半導体ウェーハWの非搬送時には洗浄用テーブル52の載置面を空けるように相互に離間する。また、一対のガイドレール9は、上下動可能に構成されており、相互に接近した状態で上下動することにより、洗浄用テーブル52との間で半導体ウェーハWの受け渡しを行う。この場合、一対のガイドレール9の延在方向の中間部分には、逃げ部9aが形成されており、この逃げ部9aにより洗浄用テーブル52のクランプ部53との衝突が防止される。
【0033】
一対のガイドレール10は、保護膜形成機構6への半導体ウェーハWの出し入れ時には相互に接近して半導体ウェーハWをガイドすると共に、成膜用テーブル62に対してX軸方向の位置決めを行う。また、一対のガイドレール10は、半導体ウェーハWの非出し入れ時には成膜用テーブル62の載置面を空けるように相互に離間する。また、一対のガイドレール10は、上下動可能に構成されており、相互に接近した状態で上下動することにより、成膜用テーブル62との間で半導体ウェーハWの受け渡しを行う。この場合、一対のガイドレール10の延在方向の中間部分には、逃げ部10aが形成されており、この逃げ部10aにより成膜用テーブル62のクランプ部63との衝突が防止される。
【0034】
第1、第2のアッパーアーム11、12は、一対のガイドレール9上の半導体ウェーハWをピックアップして、チャックテーブル71に載置する他、加工済みの半導体ウェーハWをチャックテーブル71からピックアップして、一対のガイドレール9上に載置する。
【0035】
レーザー加工機構7側の基台2の上面は、矩形状に開放されており、Y軸方向に移動可能な枠体15と、枠体15の移動に伴って伸縮可能な防塵カバー16とが設けられている。枠体15の内側には、チャックテーブル71と共にX軸方向に移動可能な移動板17と、移動板17の移動に伴って伸縮可能な防塵カバー18とが設けられている。このように、レーザー加工機構7側の基台2の上面は、枠体15、移動板17、防塵カバー16、18により被覆されている。また、移動板17の中央には、円形の開口部が形成され、この円形の開口部を介してチャックテーブル71の上部が外部に露出される。
【0036】
図2に示すように、基台2内には、チャックテーブル71をX軸方向およびY軸方向に移動させるチャックテーブル移動機構20が設けられている。チャックテーブル移動機構20は、支持台21上においてY軸方向に延在し、互いに平行な一対のガイドレール22と、一対のガイドレール22にスライド可能に設置されたモータ駆動のY軸テーブル23とを有している。また、チャックテーブル移動機構20は、Y軸テーブル23上においてX軸方向に延在し、互いに平行な一対のガイドレール24と、一対のガイドレール24にスライド可能に設置されたモータ駆動のX軸テーブル25とを有している。X軸テーブル25の上部には、チャックテーブル71が設けられている。
【0037】
なお、X軸テーブル25およびY軸テーブル23の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ26、27が螺合されている。そして、ボールネジ26、27の一端部には、それぞれ駆動モータ28、29が連結され、これら駆動モータ28、29によりボールネジ26、27が回転駆動される。
【0038】
チャックテーブル71は、X軸テーブル25の上面においてZ軸回りに回転可能なテーブル支持部711と、テーブル支持部711の上部に設けられ、半導体ウェーハWを吸着保持するワーク保持部712とを有している。ワーク保持部712は、半導体ウェーハWを吸着保持する真空チャック式であり、所定の厚みを有する円盤状に形成されている。ワーク保持部712の周囲には、テーブル支持部711の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部713が設けられている。この4つのクランプ部713は、エアーアクチュエータにより駆動し、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム104を挟持固定する。
【0039】
図1に戻り、レーザー加工機構7は、チャックテーブル71の後方側において基台2上に立設した支柱部73と、支柱部73の上部から前方に延びる支持部74とを有している。支持部74内には、パルスレーザー光線を発振する図示しない発振部およびレーザー光学系が設けられている。また、支持部74の先端には、レーザー光学系からのレーザー光線を集光し、半導体ウェーハWに照射するレーザー加工ヘッド72が設けられている。
【0040】
この場合、X軸テーブル25の移動によりレーザー加工ヘッド72のノズルが半導体ウェーハWのストリート101に位置合わせされ、レーザー加工ヘッド72により半導体ウェーハWのストリート101にレーザー光線が照射される。半導体ウェーハWにレーザー光線が照射されると、チャックテーブル71がY軸方向に加工送りされ、半導体ウェーハWのストリート101が加工される。
【0041】
ここで、図3を参照して、保護膜形成機構6について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係るレーザー加工装置が備える保護膜形成機構6の周辺の斜視図である。なお、図3においては、説明の便宜上、屋根部64の一部を省略している。
【0042】
図3に示すように、保護膜形成機構6は、開口部61に連設される矩形状の凹部66に組み込まれている。この凹部66の底面は、屋根部64およびシャッター部65と共に保護膜形成機構6の筐体を構成する。凹部66の底面の中央には、成膜用テーブル62が設けられている。成膜用テーブル62は、鉛直方向の回転軸、すなわち、Z軸回りに回転可能な回転駆動部としてのテーブル支持部621と、テーブル支持部621の上部に設けられ、半導体ウェーハWを吸着保持する保持部としてのワーク保持部622とを有している。ワーク保持部622は、テーブル支持部621に一体的に設けられており、テーブル支持部621の回転に伴ってZ軸回りに回転する。
【0043】
テーブル支持部621の上端部近傍の周面には、等間隔に複数の洗浄液噴出口621aが設けられている。これらの洗浄液噴出口621aは、テーブル支持部621に内蔵される自動洗浄機構に接続されたものであり、シャッター65の内壁に洗浄液を噴出する。洗浄液噴出口621aからの洗浄液の噴出は、例えば、半導体ウェーハWに対する保護膜の形成動作に並行して行われる。これにより、シャッター65の内壁に付着した液状樹脂が固着する前に洗い流すことができるものとなっている。
【0044】
なお、ここでは、テーブル支持部621が回転可能に設けられ、その回転に伴ってワーク保持部622がZ軸回りに回転する場合について説明しているが、成膜用テーブル62の構成についてはこれに限定されるものではない。例えば、テーブル支持部621にワーク保持部622を回転駆動させる構造とし、ワーク保持部622のみを回転させるようにしても良い。
【0045】
成膜用テーブル62の近傍には、半導体ウェーハWの上面に液状樹脂を塗布する液状樹脂供給部67が設けられている。液状樹脂供給部67は、凹部66の底面から上方側に向けて延出する支柱部671と、この支柱部671の上端部近傍から側方側に延出するノズル部672とを有し、ノズル部672の先端から半導体ウェーハWの中央に液状樹脂を塗布する。また、支柱部671の上側の一部は、回動可能に構成されており、ノズル部672は、液状樹脂の塗布前又は塗布後に半導体ウェーハWの上面から退避可能に構成されている。
【0046】
成膜用テーブル62の周囲には、保護膜形成機構6の筐体内の空気を筐体外へ排出する複数の排気口68が設けられている。これらの排気口68は、凹部66の底面に開口しており、基台2の内部に配設される吸引機構に接続され、筐体内の空気を凹部66の底面から排出するように構成されている。このように凹部66の底面に排気口68を設けていることから、保護膜形成過程において、筐体内に飛散等した液状樹脂を筐体の底面から排出することができるので、筐体内で飛散等した液状樹脂が半導体ウェーハWの上面側に回って再付着するのを防止することができるものとなっている。
【0047】
特に、これらの排気口68を成膜用テーブル62の周囲に設けていることから、保護膜形成過程で半導体ウェーハWの側方に飛散した液状樹脂を下方側に導く気流を筐体内に形成することができ、効果的にこれらの液状樹脂を排出することができるものとなっている。仮に、排気口68を筐体の側面に設ける場合には、筐体内に飛散等した液状樹脂を下方側に導くだけでなく、側方側に導く気流が形成され、これらの液状樹脂が半導体ウェーハWの上面側に回って再付着する原因となり得る。本実施の形態に係る保護膜形成機構6においては、成膜用テーブル62の周囲の底面に排気口68を設けることにより、このような液状樹脂の再付着を防止している。さらに、屋根部64の上壁にはクリーンエア送入機構13が配設されていることから、クリーンエア送入機構13から送り込まれる空気は、上方側から下方側に進む排気経路を流れ、凹部66の底面の排気口68から排出される。クリーンエア送入機構13は、このような排気経路を形成する役割を果たすため、屋根部64の中央近傍に配置されることが好ましい。なお、図示していないが、排気口68の周縁部には凹部66の底面に溜まった洗浄液等の流入を防止するための壁部が設けられている。ここでは、凹部66の底面の四隅部に排気口68が配置される場合について説明しているが、排気口68の配置についてはこれに限定されるものではない。
【0048】
これらの排気口68の間には、凹部66の底面に溜まった洗浄液や液状樹脂を筐体外へ排出する複数の排水口69が設けられている。これらの排水口69は、排気口68と同様に、凹部66の底面に開口しており、凹部66の底面に溜まった洗浄液等が流入可能に構成されている。凹部66の底面に溜まった洗浄液等が排水口69から筐体外に排出されるので、凹部66の底面に溜まった洗浄液等に起因する成膜用テーブル62の回転動作等の不具合を回避できるものとなっている。なお、ここでは、排気口68と排水口69とを個別に備えているが、例えば、排気口68に排水口69の機能を兼ねさせても良い。また、ここでは、排気口68の間に排水口69が配置される場合について説明しているが、排水口69の配置についてはこれに限定されるものではない。
【0049】
このように構成された保護膜形成機構6においては、半導体ウェーハWが搬送される際、シャッター部65を開いてプッシュプルアーム81の通過を許容し、ガイドレール10を介して半導体ウェーハWを受け取った後、シャッター部65を閉じて液状樹脂の筐体外への飛散を防止した状態で半導体ウェーハWの上面に保護膜を形成する。保護膜を形成する際には、洗浄液を噴出して筐体(特に、シャッター65)の内壁を洗浄すると共に、筐体内の空気(空気内に舞う液状樹脂を含む)を排気口68から排出する。
【0050】
以下、図4および図5を参照して、保護膜形成機構6における保護膜形成時の動作について説明する。図4および図5は、本実施の形態に係るレーザー加工装置1が備える保護膜形成機構6の保護膜形成時の動作の一例を示す説明図である。なお、図4および図5においては、保護膜形成機構6をレーザー加工装置1の前方側から示している。また、図4および図5においては、説明の便宜上、洗浄機構5に対向して配置されるシャッター部65の一部を省略している。この省略されたシャッター部65の一部は、他の部分と同様に上下動する。
【0051】
半導体ウェーハWの上面(被加工面)に保護膜を形成する際、まず、プッシュプルアーム81により半導体ウェーハWが保護膜形成機構6に搬入され、一対のガイドレール10上に載置される。そして、図4(a)に示すように、一対のガイドレール10によって成膜用テーブル62のワーク保持部622に対応する位置に位置決めされる。このとき、シャッター部65は、プッシュプルアーム81の通過を許容する開位置に配置されており、プッシュプルアーム81の通過を阻害することはない。
【0052】
半導体ウェーハWの位置決めが行われると、図4(b)の矢印Aに示すように、一対のガイドレール10が下降し、半導体ウェーハWがワーク保持部622上に載置される。この場合、半導体ウェーハWは、ワーク保持部622により吸着保持される。なお、一対のガイドレール10の下降動作時においては、成膜用テーブル62に設けられたクランプ部63がガイドレール10の逃げ部10aに収容される。その後、一対のガイドレール10は、図4(c)に示すように、成膜用テーブル62の載置面を空けるように互いに離間するように移動し、保護膜形成機構6の筐体の外側に退避する。
【0053】
一対のガイドレール10が筐体外に退避すると、シャッター部65が閉位置まで移動し、保護膜形成機構6内が密閉された状態となる(図5(a)参照)。そして、図5(a)に示すように、液状樹脂供給部67のノズル部672が半導体ウェーハWの中央部まで回動された後、液状樹脂が半導体ウェーハWの上面に塗布される。そして、所定量の液状樹脂を塗布した後、ノズル部672は、半導体ウェーハW上から退避した位置に回動する。
【0054】
その後、図5(b)の矢印Bに示すように、テーブル支持部621が回転駆動され、これに伴ってワーク保持部622が回転する。成膜用テーブル62のクランプ部63は、ワーク保持部622の回転による遠心力で跳ね上げられ、環状フレーム104をクランプし、半導体ウェーハWの移動を規制した状態となっている。このとき、ワーク保持部622の回転に伴って、半導体ウェーハWの上面に塗布された液状樹脂が半導体ウェーハWの上面全体に広げられる。これにより、半導体ウェーハWの上面全体に液状樹脂からなる保護膜が形成される。なお、半導体ウェーハWに保護膜として付着しなかった液状樹脂の液滴は、ワーク保持部622の回転による遠心力により半導体ウェーハWの側方に飛散するが、シャッター部65が閉位置に配置されていることから筐体外に飛散することはない。これらの液状樹脂の一部は、シャッター部65の内壁に付着する。
【0055】
このように液状樹脂を半導体ウェーハWの上面全体に広げる際、図5(c)の矢印Cに示すように、排気口68を介して下向きに筐体内の空気が排気される。これにより、半導体ウェーハWに保護膜として付着しなかった液状樹脂の一部(筐体内の空気中を舞っている液状樹脂)が筐体外に排出される。また、この排気動作と並行して洗浄液噴出口621aから洗浄液が図5(c)の矢印Dに示すように噴出され、シャッター部65の内壁が洗浄される。これにより、シャッター部65の内壁に付着した液状樹脂が除去され、筐体内の空気と共に筐体外に排出される。
【0056】
テーブル支持部621の回転駆動が停止され、一定時間シャッター部65の内壁が洗浄されると共に筐体内の空気が排気された後、洗浄動作および排気動作が停止される。これらの動作が停止されると、シャッター部65が開位置まで移動し、プッシュプルアーム81の通過が許容された状態となる。保護膜が形成された半導体ウェーハWは、一対のガイドレール10によってワーク保持部622から受け取られた後、プッシュプルアーム81により保護膜形成機構6から搬出され、洗浄用テーブル52に搬送される。このようにして保護膜形成機構6における保護膜形成時の動作が終了する。
【0057】
ここで、本実施の形態に係るレーザー加工装置1による加工動作の一例について説明する。なお、保護膜形成機構6による保護膜形成動作については上述しているため、保護膜形成動作の詳細については省略して説明する。
【0058】
レーザー加工装置1による加工動作は、まず、カセット3に収容された半導体ウェーハWをプッシュプルアーム81により引き出すことから開始される。プッシュプルアーム81の搬送が開始されると、載置板41が上下動して、高さ方向における半導体ウェーハWの出し入れ位置が調整される。また、洗浄用テーブル52の上方においては、一対のガイドレール9が半導体ウェーハWをガイド可能に相互に接近され、成膜用テーブル62の上方においては、一対のガイドレール10が半導体ウェーハWをガイド可能に相互に接近される。このとき、一対のガイドレール9、10が、同一の高さ位置に調整されると共に、カセット3に収容された1つの半導体ウェーハWの高さ位置が、一対のガイドレール9、10によりガイド可能な位置に調整される。
【0059】
次に、プッシュプルアーム81がカセット3の出入口に移動され、環状フレーム104の後端側が第1の挟持部88aに挟持される。第1の挟持部88aにより環状フレーム104の後端側が挟持された状態で、プッシュプルアーム81が後方側に移動される。そして、プッシュプルアーム81が一対のガイドレール9の後端側まで後方側に移動され、第1の挟持部88aの環状フレーム104に対する挟持状態が解除される。このようにして、カセット3から半導体ウェーハWが引き出され、一対のガイドレール9上に半導体ウェーハWが仮置きされる。
【0060】
続けて、半導体ウェーハWを保護膜形成機構6に搬送する場合には、一対のガイドレール9上でプッシュプルアーム81が半導体ウェーハWの後端側から前端側に回り込むように移動される。この場合、プッシュプルアーム81は、ロッド84の伸縮により、半導体ウェーハWの上方を通って回り込むように動作される。次に、環状フレーム104の前方側にプッシュプルアーム81の第2の当接部89bが当接され、プッシュプルアーム81が保護膜形成機構6の出入口まで後方側に移動される。このようにして、一対のガイドレール9上から半導体ウェーハWが押し出され、一対のガイドレール10に半導体ウェーハWが押し込まれる。
【0061】
このとき、保護膜形成機構6のシャッター部65は、開位置に配置されており、プッシュプルアーム81の通過が許容されている。そして、半導体ウェーハWが搬入された後、シャッター部65が閉位置に移動され、保護膜形成機構6内が密閉された状態で半導体ウェーハWの上面に液状樹脂からなる保護膜が形成される。保護膜が形成された後、一対のガイドレール10が成膜用テーブル62から半導体ウェーハWを受け取りつつ上動され、一対のガイドレール9と同一の高さ位置に調整される。
【0062】
次に、プッシュプルアーム81が保護膜形成機構6の出入口に移動され、環状フレーム104の前端側が第2の挟持部88bに挟持される。第2の挟持部88bにより環状フレーム104の前端側が挟持された状態で、プッシュプルアーム81が前方側に移動される。そして、プッシュプルアーム81が一対のガイドレール9の前端側まで前方側に移動され、第2の挟持部88bの環状フレーム104に対する挟持状態が解除される。このようにして、一対のガイドレール10から半導体ウェーハWが引き出され、一対のガイドレール9上に半導体ウェーハWが仮置きされる。
【0063】
ガイドレール9上に引き出された半導体ウェーハWは、第1、第2のアッパーアーム11、12に搬送されてチャックテーブル71に載置される。チャックテーブル71に載置された半導体ウェーハWは、レーザー加工機構7によりレーザー加工される。この場合、X軸テーブル25の移動によりレーザー加工ヘッド72のノズルが半導体ウェーハWのストリート101に位置合わせされ、レーザー加工ヘッド72により半導体ウェーハWのストリート101にレーザー光線が照射される。半導体ウェーハWにレーザー光線が照射されると、チャックテーブル71がY軸方向に加工送りされ、半導体ウェーハWの1本のストリート101が加工される。続いて、チャックテーブル71がX軸方向に数ピッチ分だけ移動され、レーザー加工ヘッド72のノズルが隣接するストリート101に位置合わせされる。そして、チャックテーブル71がY軸方向に加工送りされ、半導体ウェーハWの1本のストリート101が加工される。この動作が繰り返されて半導体ウェーハWの一方向の全てのストリート101が加工される。
【0064】
チャックテーブル71上の半導体ウェーハWの前後方向の全てのストリート101が加工されると、チャックテーブル71が90度回転され、半導体ウェーハWの加工済みのストリート101に直交するストリート101の加工が開始される。そして、半導体ウェーハWの全てのストリート101が加工されると、第1、第2のアッパーアーム11、12によりチャックテーブル71から加工後の半導体ウェーハWがピックアップされ、一対のガイドレール9上に載置される。
【0065】
続けて、半導体ウェーハWをカセット3に収容させる場合には、一対のガイドレール9上でプッシュプルアーム81が半導体ウェーハWの前端側から後端側に回り込むように移動される。なお、このプッシュプルアーム81の移動は、半導体ウェーハWに対するレーザー加工工程の間に行うようにしても良い。次に、環状フレーム104の後端側にプッシュプルアーム81の第1の当接部89aが当接され、プッシュプルアーム81が一対のガイドレール11のカセット3の出入口まで移動される。このようにして、一対のガイドレール9上から半導体ウェーハWが押し出され、カセット3に半導体ウェーハWが押し込まれる。このようにしてレーザー加工装置1による一連の加工動作が終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係るレーザー加工装置1によれば、保護膜形成機構6の筐体に、半導体ウェーハWの搬入搬出の際にプッシュプルアーム81の通過を許容する開位置に配置される一方、保護膜を形成する際に液状樹脂の筐体外への飛散を防止する閉位置に配置されるシャッター部65を設けたことから、保護膜を形成する際に液状樹脂の筐体外への飛散を確実に防止することができるので、保護膜を形成するために塗布される液状樹脂の飛散等に起因する装置本体の不具合を防止することが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態に係るレーザー加工装置1においては、ワーク保持部622で保持した状態の半導体ウェーハWに液状樹脂を供給し、テーブル支持部621でワーク保持部622を高速回転させることで半導体ウェーハWの上面全体に液状樹脂を広げている(スピンコート)。このようにワーク保持部622を回転駆動する際、保護膜を構成しなかった液状樹脂の液滴が飛散することになるが、本実施の形態に係るレーザー加工装置1においては、シャッター部65を閉状態とし、保護膜形成機構6内を密閉状態としていることから、確実に液状樹脂の筐体外への飛散を防止することができるものとなっている。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0069】
例えば、上記実施の形態においては、上面に液状樹脂が供給された半導体ウェーハWを高速回転させることで半導体ウェーハWの上面全体に液状樹脂を広げる、所謂、スピンコートにより保護膜を形成する場合について説明しているが、保護膜の形成方法については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。保護膜形成機構6内で液状樹脂により保護膜を形成することができれば、いかなる形成方法を適用しても良い。
【0070】
また、上記実施の形態においては、保護膜形成機構6の屋根部64にクリーンエア送入機構13および検出機構14を配設する場合について説明しているが、屋根部64に配設されるデバイスについては、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。保護膜形成機構6内に収容された半導体ウェーハWとの関係で位置精度が要求される任意のデバイスや、複雑な配線が必要なデバイス等を配設することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、保護膜を形成するために塗布される液状樹脂の飛散等に起因する装置本体の不具合を防止することができるという効果を有し、特に、半導体ウェーハの表面にデブリが付着するのを防ぐために半導体ウェーハの表面に保護膜を形成するレーザー加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 レーザー加工装置
2 基台
3 カセット
4 搬入搬出機構
5 洗浄機構
6 保護膜形成機構
61 開口部
62 成膜用テーブル
621 テーブル支持部(回転駆動部)
621a 洗浄液噴出口
622 ワーク保持部(保持部)
64 屋根部(筐体の一部)
65 シャッター部(筐体の一部)
66 凹部(筐体の一部)
67 液状樹脂供給部
68 排気口
69 排水口
7 レーザー加工機構
71 チャックテーブル(保持テーブル)
72 レーザー加工ヘッド
8 プッシュプル機構(搬送機構)
81 プッシュプルアーム
9、10 ガイドレール
11、12 第1、第2アッパーアーム
13 クリーンエア送入機構
14 検出機構
W 半導体ウェーハ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルと、前記被加工物の被加工面に液状樹脂からなる保護膜を形成する保護膜形成機構と、前記保持テーブルに保持された前記被加工物の被加工面にレーザービームを照射して加工を施すレーザー加工機構と、前記保護膜形成機構に前記被加工物を搬入搬出する搬送機構とを備え、
前記保護膜形成機構は、被加工面を露出した状態で前記被加工物を保持する保持部と、前記被加工物を保持した前記保持部を鉛直方向に回転軸として回転させ、被加工面に供給された前記液状樹脂を当該被加工面全体に広げる回転駆動部と、前記保持部及び当該保持部に保持された前記被加工物を囲んで密閉する筐体とを有し、前記筐体に、前記被加工物の搬入搬出の際に前記搬送機構の通過を許容する開位置に配置される一方、前記保護膜を形成する際に前記液状樹脂の前記筐体外への飛散を防止する閉位置に配置されるシャッター部を設けたことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記筐体の側壁面を開閉可能に前記シャッター部を配置し、前記筐体の上壁面を常に前記保持部に保持された前記被加工物の被加工面と対向配置させたことを特徴とする請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記筐体の上壁面に、前記保持部に保持された前記被加工物の被加工面に形成された前記保護膜の状態を検出する検出部を配設したことを特徴とする請求項2記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記筐体の上壁面に、当該筐体内にクリーンエアを送り込むクリーンエア送入機構を配設したことを特徴とする請求項2記載のレーザー加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62739(P2011−62739A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216930(P2009−216930)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】