説明

レーザー治療装置

【課題】1台で組織透過型と組織吸収型のレーザービームを選択的に照射可能なレーザー治療装置を提供する。
【解決手段】1.06μm波長の第1のレーザービームを発振させる第1のレーザー媒質20と、2.9μm波長の第2のレーザービームを発振させる第2のレーザー媒質22と、第1レーザー媒質20に励起光を供給する第1の励起光源機構16と、第2レーザー媒質22に励起光を供給する第2の励起光源機構18と、レーザービームを患部48に照射するハンドピース34と、第1レーザー媒質20から出力されたレーザービームをハンドピース34に伝送するための第1の光ファイバ38と、第2レーザー媒質22から出力されたレーザービームをハンドピース34に伝送するための第2の光ファイバ40と、レーザービームの照射モードを切替るフットスイッチ36と、フットスイッチ36の選択に応じて第1の励起光源機構16及び第2の励起光源機構18の一方に電力を供給する制御基板24とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレーザー治療装置に係り、特に、患部に対して異なった波長のレーザービームを選択的に照射できるレーザー治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでもレーザービームを人体に向けて照射することで患部を治療するレーザー治療装置が種々考案されているが、レーザーは波長によって生体組織における吸収特性が異なるため、治療の目的や対象に応じて複数の装置を使い分ける必要があった。
例えば、歯科において歯周病の治療を行う場合、歯周ポケットの内部に対しては0.6〜1.4μm波長の組織透過型のレーザービーム(Nd:YAG等)を照射する必要があるが、歯周ポケットの外部に対しては1.5〜11μm波長の組織吸収型のレーザービーム(Er:YAG、Co2等)を照射する必要がある。
したがって、レーザーによる歯周病の治療を全うするためには、少なくとも2台のレーザー治療装置を別個に準備しなければならず、大きな導入コストと余計な設置スペースを要していた。
また、治療の途中で両装置を切り替える手間暇も大きな負担であり、治療の効率化を阻害していた。
【0003】
もちろん、1台で異なる波長のレーザービームを照射可能な治療装置はこれまでも提案されてはいる。
例えば、以下の特許文献1においては、波長の異なる複数のレーザービームを適宜な混合比率で組み合わせて照射可能なレーザー医療装置が開示されている。
このレーザー医療装置は、Nd:YAGレーザー発振器から出力された1.06μm波長のレーザー光を光パラメトリック発振器に導くことによって2μm帯のシグナル光と3μm帯のアイドラ光を発生させ、これらを混合比率調整器に通すことによって任意の混合比率を実現する構成を備えている。
【特許文献1】特開2002−125982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このレーザー医療装置の場合には波長の異なるレーザービームが同時に照射されることが前提であり(混合比率は可変)、何れか一方の波長を選択的に照射することができないという問題がある。
確かに、治療目的によっては両波長の同時照射が効果的な場合があるとしても、組織透過型のレーザービームと組織吸収型のレーザービームとでは人体に対する作用効果が全く異なるため、両者を明確に切り替えて使用する場面の方が多いのが実情である。
【0005】
この発明は、従来のレーザー治療装置が抱えていた上記の問題点を解決するために案出されたものであり、1台の装置でありながら波長の異なる複数のレーザービームを必要に応じて選択的に照射可能なレーザー治療装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載したレーザー治療装置は、所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質と、第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質と、第1のレーザー媒質に励起光を供給するための第1の励起光源と、第2のレーザー媒質に励起光を供給するための第2の励起光源と、レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、第1のレーザー媒質から出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、第2のレーザー媒質から出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、スイッチの選択状態に応じて、第1の励起光源及び第2の励起光源の少なくとも一方に電力を供給する給電手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載したレーザー治療装置は、所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質と、第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質と、各レーザー媒質に励起光を供給するための共通励起光源と、レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、第1のレーザー媒質から出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、第2のレーザー媒質から出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、スイッチの選択状態に応じて、共通励起光源から出力された励起光の照射位置を、第1のレーザー媒質及び第2のレーザー媒質の間で相対的に移動させる照射位置変更手段と、照射位置の変更後に共通励起光源に電力を供給する給電手段とを備えたことを特徴としている。
上記の照射位置変更手段は、共通光源側を移動させる方式のものに限定されず、レーザー媒質側を移動させる方式のもの、あるいは両者を移動させる方式のものであってもよい。
【0008】
請求項3に記載したレーザー治療装置は、所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質をコアとして備えた第1のレーザー発振用ファイバーと、第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質をコアとして備えた第2のレーザー発振用ファイバーと、第1のレーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための第1の励起光源と、第2のレーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための第2の励起光源と、レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、第1のレーザー発振用ファイバーから出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、第2のレーザー発振用ファイバーから出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、スイッチの選択状態に応じて、第1の励起光源及び第2の励起光源の少なくとも一方に電力を供給する給電手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載したレーザー治療装置は、所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質をコアとして備えた第1のレーザー発振用ファイバーと、第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質をコアとして備えた第2のレーザー発振用ファイバーと、各レーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための共通励起光源と、共通励起光源から出力された励起光を第1のレーザー発振用ファイバーに導くための第1の導光路と、共通励起光源から出力された励起光を第2のレーザー発振用ファイバーに導くための第2の導光路と、レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、第1のレーザー発振用ファイバーから出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、第2のレーザー発振用ファイバーから出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、スイッチの選択状態に応じて、共通励起光源から出力された励起光を第1の導光路及び第2の導光路の何れか一方に選択的に導く切替手段と、共通励起光源に電力を供給する給電手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載したレーザー治療装置は、所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質よりなる第1のコアと、第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質よりなる第2のコアを備えたダブルコア型のレーザー発振用ファイバーと、このレーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための共通励起光源と、レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、共通励起光源に電力を供給する給電手段と、スイッチの選択状態に応じて、レーザー発振用ファイバーから同時に出力された第1のレーザービーム及び第2のレーザービームの少なくとも一方を通過させるスイッチング手段と、スイッチング手段から出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路とを備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項6に記載したレーザー治療装置は、請求項5に記載のレーザー治療装置であって、さらに上記スイッチング手段が、第1のコアの出力側端面及び第2のコアの出力側端面の何れか一方を選択的に閉塞するレーザー吸収材を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項7に記載したレーザー治療装置は、請求項5に記載のレーザー治療装置であって、さらに上記スイッチング手段が、レーザー吸収材と、第1のコアの出力側端面から出射された第1のレーザービーム及び第2のコアの出力側端面から出射された第2のレーザービームの何れか一方を選択的に偏光させて上記レーザー吸収材に導く可動式反射ミラーを備えていることを特徴としている。
【0013】
請求項8に記載したレーザー治療装置は、請求項5に記載のレーザー治療装置であって、さらに上記スイッチング手段が、第1のコアの出力側端面及び第2のコアの出力側端面の何れか一方を選択的に遮蔽する液晶シャッターを備えていることを特徴としている。
【0014】
請求項9に記載したレーザー治療装置は、請求項1〜8に記載のレーザー治療装置であって、さらに上記第1のレーザー媒質が0.6μm〜1.4μm波長のレーザービームを発振するためのものであり、上記第2のレーザー媒質が1.5μm〜11μm波長のレーザービームを発振するためのものであることを特徴としている。
【0015】
請求項10に記載したレーザー治療装置は、請求項1〜9に記載のレーザー治療装置であって、さらに上記第1のレーザー媒質が1.06μm波長のレーザービームを発振するためのものであり、上記第2のレーザー媒質が2.9μm波長のレーザービームを発振するためのものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のレーザー治療装置にあっては、異なった波長のレーザービームを生成するための一対のレーザー媒質と、それぞれを励起するための光源を別個に備えており、スイッチの選択状態に応じて必要な励起光源に電力が供給される仕組みを備えているため、医師はスイッチの切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部に選択的または同時に照射することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載のレーザー治療装置にあっては、異なった波長のレーザービームを生成するための一対のレーザー媒質と、それぞれを選択的に励起するための共通光源と、スイッチの選択状態に応じて必要なレーザー媒質に励起光を導く仕組みを備えているため、医師はスイッチの切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部に選択的に照射することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載のレーザー治療装置にあっては、異なった波長のレーザービームを生成するための一対のレーザー発振用ファイバーと、それぞれを励起するための光源を別個に備えており、スイッチの選択状態に応じて必要な励起光源に電力が供給される仕組みを備えているため、医師はスイッチの切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部に選択的または同時に照射することが可能となる。
しかも、ファイバーレーザー発振方式であるため、高品質のレーザービームが得られる利点がある。
【0019】
請求項4に記載のレーザー治療装置にあっては、異なった波長のレーザービームを生成するための一対のレーザー発振用ファイバーと、それぞれを選択的に励起するための共通光源と、スイッチの選択状態に応じて必要なレーザー媒質に励起光を導く仕組みを備えているため、医師はスイッチの切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部に選択的に照射することが可能となる。
この場合も、ファイバーレーザー発振方式であるため、高品質のレーザービームが得られる利点がある。
【0020】
請求項5に記載のレーザー治療装置にあっては、異なった波長のレーザービームを生成するための一対のレーザー媒質をコアとして内装したダブルコア型レーザー発振用ファイバーと、これを励起するための共通光源と、スイッチにおける選択状態に応じてハンドピースに伝送されるレーザービームを制御するスイッチング機構を備えているため、医師はスイッチの切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部に選択的または同時に照射することが可能となる。
この場合も、ファイバーレーザー発振方式であるため、高品質のレーザービームが得られる利点がある。
また、一つの励起光源でありながら、異なる波長のレーザービームを同時照射できる利点も備える。
【0021】
請求項6に記載のレーザー治療装置にあっては、スイッチング手段が第1のコアの出力側端面及び第2のコアの出力側端面の何れか一方を選択的に閉塞するレーザー吸収材を備えているため、比較的簡素な構成でありながら必要な波長のレーザービームのみを患部に対して確実に照射することが可能となる。
【0022】
請求項7に記載のレーザー治療装置にあっては、スイッチング手段がレーザー吸収材及び第1のコアの出力側端面から出射された第1のレーザービーム及び第2のコアの出力側端面から出射された第2のレーザービームの何れか一方を選択的に偏光させてレーザー吸収材に導く可動式反射ミラーを備えているため、比較的簡素な構成でありながら必要な波長のレーザービームのみを患部に対して確実に照射することが可能となる。
【0023】
請求項8に記載のレーザー治療装置にあっては、スイッチング手段が第1のコアの出力側端面及び第2のコアの出力側端面の何れか一方を選択的に閉塞する液晶シャッターを備えているため、比較的簡素な構成でありながら必要な波長のレーザービームのみを患部に対して確実に照射することが可能となる。
【0024】
請求項9及び10に記載のレーザー治療装置によれば、組織透過型のレーザービームと組織吸収型のレーザービームを選択的に照射可能となるため、1台で歯科治療に必要なレーザービームを供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、この発明に係る第1のレーザー治療装置10の基本構成を示す模式図であり、LDアレイ12及び集光レンズ14を備えた第1の励起光源機構16と、同じくLDアレイ12及び集光レンズ14を備えた第2の励起光源機構18と、Nd:YAGレーザー(組織透過型レーザー)発振用の第1のレーザー媒質20と、Er:YAGレーザー(組織吸収型レーザー)発振用の第2のレーザー媒質22と、制御基板24と、選択モード表示用のモニター26と、第1の受光部28と、第2の受光部30と、可撓性を備えたチューブ32と、ハンドピース34と、フットスイッチ36と、第1の光ファイバー38と、第2の光ファイバー40とを備えている。
LDアレイ12は、複数のLD(半導体レーザーダイオード)を内蔵している。
また、第1のレーザー媒質20及び第2のレーザー媒質22の先端面側にはフロントミラー41が配置され、後端面側にはQスイッチ42及びリアミラー43が配置されている。
【0026】
上記制御基板24は図示しない電源に接続されており、フットスイッチ36による入力動作に応じて各励起光源機構のLDアレイ12に対し駆動用の電力を供給する給電手段としての機能を果たす。
例えば、歯科医師がフットスイッチ36によって組織透過型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24から第1の励起光源機構16のLDアレイ12に対して電力が供給され、各LDから励起用のレーザービームが出力される。
この励起用のレーザービームは、集光レンズ14によって集光された後、第1のレーザー媒質20に照射される。
この結果、第1のレーザー媒質20のフロントミラー41からは、Qスイッチ42によって所定のピークパルスに変換された1.06μmの組織透過型レーザービームが出力され、第1の受光部28に入射する。
この第1の受光部28から取り込まれたレーザービームは、可撓性チューブ32内に挿通された第1の光ファイバー38を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0027】
また、歯科医師がフットスイッチ36を切り替えて組織吸収型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24から第2の励起光源機構18のLDアレイ12に対して電力が供給され、各LDから励起用のレーザービームが出力される。
この励起用のレーザービームは、集光レンズ14によって集光された後、第2のレーザー媒質22に照射される。
この結果、第2のレーザー媒質22のフロントミラー41からは、Qスイッチ42によって所定のピークパルスに変換された2.9μmの組織吸収型レーザービームが出力され、第2の受光部30に入射する。
この第2の受光部30から取り込まれたレーザービームは、可撓性チューブ32内に挿通された第2の光ファイバー40を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0028】
さらに歯科医師は、フットスイッチ36を切り替えて組織透過型レーザー及び組織吸収型レーザーの同時照射を選択することもできる。
この場合、制御基板24から第1の励起光源機構16及び第2の励起光源機構18のLDアレイ12に対して電力が供給され、各LDアレイ12から励起用のレーザービームが出力される。
この結果、第1のレーザー媒質20から1.06μmの組織透過型レーザービームが出力されると同時に、第2のレーザー媒質22から2.9μmの組織吸収型レーザービームが出力され、第1の受光部28、第2の受光部30、第1の光ファイバー38及び第2の光ファイバー40を経由して伝送された各レーザービームは、ハンドピース34の先端部から患部48に対し同時照射される。
【0029】
この第1のレーザー治療装置10の場合、上記のように異なった波長のレーザービームを生成するためのレーザー媒質20,22を別個に備えると共に、それぞれを励起するための光源機構16,18を備えており、各レーザービームは独自の伝送路(受光部28,30及び光ファイバー38,40)を経由してハンドピース34の先端から照射される構造を備えているため、歯科医師はフットスイッチ36の切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部48に対し選択的または同時に照射することが可能となる。
しかも、LD励起の固体レーザー方式であるため、装置全体の小型・軽量化及び低コスト化が可能となる利点も備えている。
【0030】
図2は、この発明に係る第2のレーザー治療装置50の基本構成を示す模式図であり、LDアレイ12及び集光レンズ14を備えた共通励起光源機構52と、この共通励起光源機構52の配置を変更し、励起用レーザービームの照射位置を移動させるための照射位置変更機構54と、Nd:YAGレーザー(組織透過型レーザー)発振用の第1のレーザー媒質20と、Er:YAGレーザー(組織吸収型レーザー)発振用の第2のレーザー媒質22と、制御基板24と、選択モード表示用のモニター26と、第1の受光部28と、第2の受光部30と、可撓性を備えたチューブ32と、ハンドピース34と、フットスイッチ36と、第1の光ファイバー38と、第2の光ファイバー40とを備えている。
また、第1のレーザー媒質20及び第2のレーザー媒質22の先端面側にはフロントミラー41が配置され、後端面側にはQスイッチ42及びリアミラー43が配置されている。
すなわち、この第2のレーザー治療装置50は、第1のレーザー治療装置10から一方の励起光源機構を取り去ると共に、残りの励起光源機構の配置を変更してレーザービームの照射位置を移動させるための照射位置変更機構54を設けた点に特徴を備えている。
【0031】
上記の照射位置変更機構54は、各LDアレイ12及び集光レンズ14を固定するためのフレーム56と、このフレーム56を回転させるモーター58よりなり、制御基板24からの指令に基づいてモーター58が必要方向に回転することにより、集光レンズ14から出力される励起用のレーザービームの照射位置を第1のレーザー媒質20と第2のレーザー媒質22との間で移動できるように構成されている。
【0032】
このため、例えば歯科医師がフットスイッチ36によって組織透過型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24からの指令に基づいてモーター58が必要方向に必要量回転し、共通励起光源機構52が図2の実線で示す位置に移動された後、LDアレイ12から励起用のレーザービームが出力される。
この励起用のレーザービームは、集光レンズ14によって集光された後、第1のレーザー媒質20に照射される。
この結果、第1のレーザー媒質20のフロントミラー41からは、Qスイッチ42によって所定のピークパルスに変換された1.06μmの組織透過型レーザービームが出力され、第1の受光部28に入射する。
この第1の受光部28から取り込まれたレーザービームは、可撓性チューブ32内に挿通された第1の光ファイバー38を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0033】
また、歯科医師がフットスイッチ36を切り替えて組織吸収型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24からの指令に基づいてモーター58が反対方向に回転し、共通励起光源機構52が図2の点線で示す位置に移動された後、LDアレイ12から励起用のレーザービームが出力される。
この励起用のレーザービームは、集光レンズ14によって集光された後、第2のレーザー媒質22に照射される。
この結果、第2のレーザー媒質22のフロントミラー41からは、Qスイッチ42によって所定のピークパルスに変換された2.9μmの組織吸収型レーザービームが出力され、第2の受光部30に入射する。
この第2の受光部30から取り込まれたレーザービームは、可撓性チューブ32内に挿通された第2の光ファイバー40を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0034】
このように、第2のレーザー治療装置50の場合にも、歯科医師はフットスイッチ36の切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部に選択的に照射することが可能となる。
また、励起光源機構を一つしか有さないため、第1のレーザー治療装置10のように波長の異なるレーザービームを同時に照射することはできないが、その分、構成の簡素化、小型軽量化及びコストの低廉化を実現することが可能となる。
【0035】
図3は、この発明に係る第3のレーザー治療装置60の基本構成を示す模式図であり、複数のLDモジュール61を備えた第1の励起光源機構16と、同じく複数のLDモジュール61を備えた第2の励起光源機構18と、第1のレーザー発振用ファイバー62と、第2のレーザー発振用ファイバー64と、一対のファイバーレーザ用Qスイッチ65,65と、制御基板24と、選択モード表示用のモニター26と、第1の受光部28と、第2の受光部30と、可撓性を備えたチューブ32と、ハンドピース34と、フットスイッチ36と、第1の光ファイバー38と、第2の光ファイバー40とを備えている。
【0036】
第1のレーザー発振用ファイバー62は、図4(a)に示すように、クラッド66内にNd:YAGレーザーと同等の組織透過型レーザーを発振するためのレーザー媒質よりなるコア67を形成したものよりなる。
また、第2のレーザー発振用ファイバー64は、図4(b)に示すように、クラッド66内にEr:YAGレーザーと同等の組織吸収型レーザーを発振するためのレーザー媒質よりなるコア68を形成したものよりなる。
【0037】
ここで、歯科医師がフットスイッチ36によって組織透過型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24から第1の励起光源機構16のLDモジュール61に対して電力が供給され、各LDモジュール61から励起用のレーザービームが出力される。
この励起用のレーザービームは、光ファイバー69を経由して第1のレーザー発振用ファイバー62の端面に装着された第1の受光部28に入力する。
この結果、第1のレーザー発振用ファイバー62の他方の端面からは、Qスイッチ65の作用によって大出力パルス化された1.06μmの組織透過型レーザービームが出力され、可撓性チューブ32内に挿通された第1の光ファイバー38を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0038】
また、歯科医師がフットスイッチ36を切り替えて組織吸収型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24から第2の励起光源機構18のLDモジュール61に対して電力が供給され、各LDモジュール61から励起用のレーザービームが出力される。
この励起用のレーザービームは、光ファイバー69を経由して第2のレーザー発振用ファイバー64の端面に装着された第2の受光部30に入力する。
この結果、第2のレーザー発振用ファイバー64の他方の端面からは、Qスイッチ65の作用によって大出力パルス化された2.9μmの組織吸収型レーザービームが出力され、可撓性チューブ32内に挿通された第2の光ファイバー40を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0039】
さらに歯科医師は、フットスイッチ36を切り替え、組織透過型レーザー及び組織吸収型レーザーの同時照射を選択することもできる。
この場合、制御基板24から第1の励起光源機構16及び第2の励起光源機構18のLDモジュール61に対して電力が供給され、各LDモジュール61から励起用のレーザービームが出力される。
この結果、第1のレーザー発振用ファイバー62から1.06μmの組織透過型レーザービームが出力されると共に、第2のレーザー発振用ファイバー64から2.9μmの組織吸収型レーザービームが出力され、第1の光ファイバー38及び第2の光ファイバー40を経由して伝送された各レーザービームは、ハンドピース34の先端部から患部48に対し同時照射される。
【0040】
この第3のレーザー治療装置60の場合、上記のように異なった波長のレーザービームを生成するためのコアを内装したレーザー発振用ファイバー62,64を備えると共に、それぞれを励起するための光源機構16,18を備えており、各レーザービームは独自の伝送路(光ファイバー38,40)を経由してハンドピース34の先端から照射される構造を備えているため、歯科医師はフットスイッチ36の切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部48に選択的または同時に照射することが可能となる。
しかも、LD励起のファイバーレーザー方式であるため、装置全体の小型・軽量化及び低コスト化を実現できると共に、高い集光性及び直進性を備えた高品質・高効率のレーザービームが得られる利点を備えている。
【0041】
図5は、この発明に係る第4のレーザー治療装置70の基本構成を示す模式図であり、複数のLDモジュール71を備えた共通励起光源機構52と、組織透過型レーザーを生成するための第1のレーザー発振用ファイバー62と、組織吸収型レーザーを生成するための第2のレーザー発振用ファイバー64と、Qスイッチ65,65と、制御基板24と、選択モード表示用のモニター26と、第1の受光部28と、第2の受光部30と、可撓性を備えたチューブ32と、ハンドピース34と、フットスイッチ36と、第1の光ファイバー38と、第2の光ファイバー40とを備えている。
【0042】
上記の各LDモジュール71からは、第1のレーザ発振用ファイバー62の受光部28に接続される光ファイバ73と、第2のレーザ発振用ファイバー64の受光部30に接続される光ファイバ74がそれぞれ導出されている。
また、図示は省略したが、各LDモジュール71内にはLD素子から出力されたレーザービームを何れか一方の光ファイバに導入するための切替装置(例えば液晶シャッター等)が設けられている。
この切替装置のスイッチング動作は、制御基板24からの指令に従って実行される。
【0043】
このため、例えば歯科医師がフットスイッチ36によって組織透過型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24からの指令に基づいて各LDモジュール71内の切替装置が作動し、第1の受光部28に接続された光ファイバ73にのみ励起用のレーザービームが導入される状態となり、その直後に制御基板24からLDモジュール71のLD素子に対して駆動用の電力が供給される。
この結果、第1のレーザー発振用ファイバー62の先端面からQスイッチ65の作用によって大出力パルス化された1.06μmの組織透過型レーザービームが出力され、可撓性チューブ32内に挿通された第1の光ファイバー38を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0044】
また、歯科医師がフットスイッチ36を切り替えて組織吸収型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24からの指令に基づいて各LDモジュール71内の切替装置が作動し、第2の受光部30に接続された光ファイバ74にのみ励起用のレーザービームが導入される状態となり、その直後に制御基板24からLDモジュール71のLD素子に対して駆動用の電力が供給される。
この結果、第2のレーザー発振用ファイバー64の先端面からQスイッチ65の作用によって大出力パルス化された2.9μmの組織吸収型レーザービームが出力され、可撓性チューブ32内に挿通された第2の光ファイバー40を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0045】
この第4のレーザー治療装置70の場合にも、歯科医師はフットスイッチ36の切り替え操作一つで必要な波長のレーザービームを患部48に選択的に照射することが可能となる。
また、励起光源機構を一つしか有さないため、第3のレーザー治療装置60のように波長の異なるレーザービームを同時に照射することはできないが、その分、構成の簡素化、小型軽量化及びコストの低廉化を実現することが可能となる。
【0046】
図6は、この発明に係る第5のレーザー治療装置80の基本構成を示す模式図であり、複数のLDモジュール61を備えた共通励起光源機構52と、ダブルコア内装型のレーザー発振用ファイバー81と、ファイバーレーザ用Qスイッチ65と、制御基板24と、選択モード表示用のモニター26と、受光部82と、スイッチング機構83 と、可撓性を備えたチューブ32と、ハンドピース34と、フットスイッチ36と、第1の光ファイバー38と、第2の光ファイバー40とを備えている。
【0047】
ダブルコア型のレーザー発振用ファイバー81は、図7に示すように、クラッド66内にNd:YAGレーザーと同等の組織透過型レーザーを発振するための第1のコア67と、Er:YAGレーザーと同等の組織吸収型レーザーを発振するための第2のコア68を並列的に形成したものよりなる。
このレーザー発振用ファイバー81の一方の端面に励起用のレーザービームを導くと、第1のコア67及び第2のコア68において同時に波長の異なるレーザーが発振され、他方の端面から両方のレーザービームが同時にスイッチング機構83 に対して出力される。
そして、スイッチング機構83 における切換動作により、ハンドピース34の先端部から実際に出力されるレーザービームが選択される仕組みを備えている。
【0048】
図8は、スイッチング機構83 の内部構造を示す概念図であり、スイッチング機構83 の内部にはレーザービームの吸収特性を備えたマスク部材84が、図示しないモーターの駆動によってスライドするように配置されている。
このマスク部材84には、レーザー発振用ファイバー81の各コアに対応した二つの円形開口部85,86が設けられており、レーザー発振用ファイバー81に対してマスク部材84が(a)の位置にある場合には第1の開口部85が第2のコア68と連通するため第2のコア68から出力された組織吸収型レーザービームのみがハンドピース34の先端部から出射されるのに対し、第1のコア67はマスク部材84に閉塞されているため組織透過型レーザービームはこれに吸収されることとなる。
【0049】
これに対し、マスク部材が(b)の位置までスライドすると、第1の開口部85が第1のコア67と連通すると同時に第2の開口部86が第2のコア68と連通するため、第1のコア67から出力された組織透過型レーザービーム及び第2のコア68から出力された組織吸収型レーザービームが共にハンドピース34の先端部から出射されることとなる。
【0050】
さらに、マスク部材84が(c)の位置までスライドすると、今度は第2の開口部86が第1のコア67と連通するため第1のコア67から出力された組織透過型レーザービームのみがハンドピース34の先端部から出射されるのに対し、第2のコア68はマスク部材84に閉塞されているため組織吸収型レーザービームはこれに吸収されることとなる。
【0051】
ここで、歯科医師がフットスイッチ36によって組織透過型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24からスイッチング機構83 に対して制御信号が出力され、マスク部材84が図8(c)の位置に移動した後、制御基板24から共通励起光源機構52のLDモジュール61に対して電力が供給され、各LDモジュール61から励起用のレーザービームが出力される。
この結果、レーザー発振用ファイバー81の他方の端面から出力された両レーザービームの中、組織透過型レーザービームのみがスイッチング機構83 を通過し、可撓性チューブ32内に挿通された第1の光ファイバー38を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0052】
また、歯科医師がフットスイッチ36を切り替えて組織吸収型レーザーの照射を選択した場合、制御基板24からスイッチング機構83 に対して制御信号が出力され、マスク部材84が図8(a)の位置に移動した後、制御基板24から共通励起光源機構52のLDモジュール61に対して電力が供給され、各LDモジュール61から励起用のレーザービームが出力される。
この結果、レーザー発振用ファイバー81の他方の端面から出力された両レーザービームの中、組織吸収型レーザービームのみがスイッチング機構83 を通過し、可撓性チューブ32内に挿通された第2の光ファイバー40を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に照射される。
【0053】
さらに歯科医師は、フットスイッチ36を切り替え、組織透過型レーザー及び組織吸収型レーザーの同時照射を選択することもできる。
この場合、制御基板24からスイッチング機構83 に対して制御信号が出力され、マスク部材84が図8(b)の位置に移動した後、制御基板24から共通励起光源機構52のLDモジュール61に対して電力が供給され、各LDモジュール61から励起用のレーザービームが出力される。
この結果、レーザー発振用ファイバー81の他方の端面から出力された組織透過型レーザービーム及び組織吸収型レーザービームは共にスイッチング機構83 を通過し、可撓性チューブ32内に挿通された第1の光ファイバー38及び第2の光ファイバー40を介してハンドピース34に伝送された後、その先端部から患部48に対して同時に照射される。
【0054】
この第5のレーザー治療装置80の場合、上記のようにダブルコア型のレーザー発振用ファイバー81及びスイッチング機構83 を備えているため、単一の共通励起光源機構52のみを有するにもかかわらず、組織透過型レーザービーム及び組織吸収型レーザービームの選択的照射及び同時照射に対応できる利点を備えている。
【0055】
スイッチング機構83 の構造は上記のものに限定されるものではなく、何れか一方のレーザービームを選択的に出力させる機能を備えたものであれば如何なる構成のものでも採用できる。
図9はその一例を示すものであり、スイッチング機構83 の内部には、レーザー発振用ファイバー81の第1のコア67に対応した第1の小型集光レンズ87と、第2のコア68に対応した第2の小型集光レンズ88と、レーザー吸収体89と、可動式の反射ミラー90とが設けられている。
反射ミラー90は、同図(a)に示す第1のコア67の光軸と重なる第1の位置と、同図(b)に示す第2のコア68の光軸と重なる第2の位置と、同図(c)に示す何れのコアの光軸とも重ならない第3の位置との間を移動できるよう、図示しないモーターの駆動によってスライド自在に支持されている。
【0056】
ここで、歯科医師が組織透過型レーザービームの照射を選択した場合、制御基板24からの指令を受けて反射ミラー90は第2のコア68の光軸と重なる第2の位置に移動する(図9(b))。
この結果、第2のコア68から出力された組織吸収型のレーザービームは反射ミラー90で反射されてレーザー吸収体89に吸収され、第1のコア67から出力された組織透過型レーザービームのみが外部に出力されることとなる。
【0057】
これに対し、歯科医師が組織吸収型レーザービームの照射を選択した場合には、制御基板24からの指令を受けて反射ミラー90は第1のコア67の光軸と重なる第1の位置に移動する(図9(a))。
この結果、第1のコア67から出力された組織透過型のレーザービームは反射ミラー90で反射されてレーザー吸収体89に吸収され、第2のコア68から出力された組織吸収型レーザービームのみが外部に出力されることとなる。
【0058】
さらに、歯科医師が組織透過型レーザービーム及び組織吸収型レーザービームの同時照射を選択した場合には、制御基板24からの指令を受けて反射ミラー90は何れのコアの光軸とも重ならない第3の位置に移動する(図9(c))。
この結果、第1のコア67から出力された組織透過型レーザービーム及び第2のコア68から出力された組織吸収型レーザービームは、共に外部に出力されることとなる。
【0059】
図10はスイッチング機構83 の他の例を示すものであり、スイッチング機構83 の内部には、第1の液晶窓部91及び第2の液晶窓部92を備え、それぞれの明暗表示を切り替えることでレーザービームの遮蔽/透過を制御する液晶シャッター93が配置されている。
この液晶シャッター93は、図示は省略したが、一面に複数の透明電極及び配向膜を形成した一対の透明シート基板を所定の間隔で対向配置して周縁を封止し、両透明シート基板間に液晶物質を封入すると共に、両シート基板の表面にシート状の偏光子を貼着させた構造を備えている。
また、第1の液晶窓部91はレーザー発振用ファイバー81の第1のコア67に対応する位置に配置され、第2の液晶窓部92は第2のコア68に対応する位置に配置されている。両液晶窓部91,92は、各コア67,68の断面積よりも大きな面積を備えている。
この第1の液晶窓部91及び第2の液晶窓部92に係る透明電極に対し選択的に電圧を印加することにより、何れか一方をレーザービームを遮断する暗状態となし、何れか他方または双方をレーザービームの透過が可能な明状態となすことができる。
【0060】
例えば、歯科医師がフットスイッチ36を操作して組織透過型レーザービームの照射を選択した場合、制御基板24からの指令を受けて第1の液晶窓部91が明状態、第2の液晶窓部92が暗状態となる(図10(a))。
この結果、第2のコア68から出力された組織吸収型のレーザービームは第2の液晶窓部92に吸収され、第1のコア67から出力された組織透過型レーザービームのみが第1の液晶窓部91を透過して外部に出力される。
【0061】
これに対し、歯科医師が組織吸収型レーザービームの照射を選択した場合には、制御基板24からの指令を受けて第2の液晶窓部92が明状態、第1の液晶窓部91が暗状態となる(図10(b))。
この結果、第1のコア67から出力された組織透過型のレーザービームは第1の液晶窓部91に吸収され、第2のコア68から出力された組織吸収型レーザービームのみが第2の液晶窓部92を透過して外部に出力される。
【0062】
さらに、歯科医師が組織透過型レーザービーム及び組織吸収型レーザービームの同時照射を選択した場合には、制御基板24からの指令を受けて第1の液晶窓部91及び第2の液晶窓部92が共に明状態となる(図10(c))。
この結果、第1のコア67から出力された組織透過型のレーザービームが第1の液晶窓部91を透過して外部に出力されると共に、第2のコア68から出力された組織吸収型レーザービームも第2の液晶窓部92を透過して外部に出力されることとなる。
【0063】
なお、図示は省略したが、上記した各レーザー治療装置には、ハンドピース34の先端部からガイド用の可視レーザービームを治療用のレーザービームと同期して照射させる機構や、冷却用の空気や水を放出させるための機構を別途設けることもできる。
また、フットスイッチ36の代わりに、ハンドピース34に設けた選択スイッチの切替えによってレーザービームの照射モード(組織透過型のみ照射/組織吸収型のみ照射/同時照射)を変更するように構成することもできる。
【0064】
この発明に係るレーザー治療装置は、歯科治療に限定されるものではなく、複数の波長のレーザービームを切り替えて照射することが求められる他の様々な医療目的に適用可能である。
また、レーザービームの波長の組合せも上記に限定されるものではなく、その医療目的に応じて最適な波長の組合せを自由に選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明に係る第1のレーザー治療装置の基本構成を示す模式図である。
【図2】この発明に係る第2のレーザー治療装置の基本構成を示す模式図である。
【図3】この発明に係る第3のレーザー治療装置の基本構成を示す模式図である。
【図4】第1のレーザー発振用ファイバー及び第2のレーザー発振用ファイバーの構成を示す斜視図である。
【図5】この発明に係る第4のレーザー治療装置の基本構成を示す模式図である。
【図6】この発明に係る第5のレーザー治療装置の基本構成を示す模式図である。
【図7】ダブルコア型レーザー発振用ファイバーの構成を示す斜視図である。
【図8】スイッチング機構の構成例を示す概念図である。
【図9】スイッチング機構の他の構成例を示す概念図である。
【図10】スイッチング機構の他の構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0066】
10 レーザー治療装置
12 LDアレイ
14 集光レンズ
16 第1の励起光源機構
18 第2の励起光源機構
20 第1のレーザー媒質
22 第2のレーザー媒質
24 制御基板
26 モニター
28 第1の受光部
30 第2の受光部
32 可撓性チューブ
34 ハンドピース
36 フットスイッチ
38 光ファイバー
40 光ファイバー
41 フロントミラー
42 Qスイッチ
43 リアミラー
48 患部
50 第2のレーザー治療装置
52 共通励起光源機構
54 照射位置変更機構
56 フレーム
58 モーター
60 第3のレーザー治療装置
61 モジュール
62 第1のレーザー発振用ファイバー
64 第2のレーザー発振用ファイバー
65 ファイバーレーザ用Qスイッチ
66 クラッド
67 第1のコア
68 第2のコア
69 光ファイバー
70 第4のレーザー治療装置
71 LDモジュール
73 光ファイバ
74 光ファイバ
80 第5のレーザー治療装置
81 ダブルコア型レーザー発振用ファイバー
82 受光部
83 スイッチング機構
84 マスク部材
85 円形開口部
86 円形開口部
87 第1の小型集光レンズ
88 第2の小型集光レンズ
89 レーザー吸収体
90 反射ミラー
91 第1の液晶窓部
92 第2の液晶窓部
93 液晶シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質と、
第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質と、
第1のレーザー媒質に励起光を供給するための第1の励起光源と、
第2のレーザー媒質に励起光を供給するための第2の励起光源と、
レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、
第1のレーザー媒質から出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、
第2のレーザー媒質から出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、
レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、
スイッチの選択状態に応じて、第1の励起光源及び第2の励起光源の少なくとも一方に電力を供給する給電手段と、
を備えたことを特徴とするレーザー治療装置。
【請求項2】
所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質と、
第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質と、
各レーザー媒質に励起光を供給するための共通励起光源と、
レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、
第1のレーザー媒質から出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、
第2のレーザー媒質から出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、
レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、
スイッチの選択状態に応じて、共通励起光源から出力された励起光の照射位置を、第1のレーザー媒質及び第2のレーザー媒質の間で相対的に移動させる照射位置変更手段と、
共通励起光源に電力を供給する給電手段と、
を備えたことを特徴とするレーザー治療装置。
【請求項3】
所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質をコアとして備えた第1のレーザー発振用ファイバーと、
第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質をコアとして備えた第2のレーザー発振用ファイバーと、
第1のレーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための第1の励起光源と、
第2のレーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための第2の励起光源と、
レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、
第1のレーザー発振用ファイバーから出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、
第2のレーザー発振用ファイバーから出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、
レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、
スイッチの選択状態に応じて、第1の励起光源及び第2の励起光源の少なくとも一方に電力を供給する給電手段と、
を備えたことを特徴とするレーザー治療装置。
【請求項4】
所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質をコアとして備えた第1のレーザー発振用ファイバーと、
第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質をコアとして備えた第2のレーザー発振用ファイバーと、
各レーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための共通励起光源と、
共通励起光源から出力された励起光を第1のレーザー発振用ファイバーに導くための第1の導光路と、
共通励起光源から出力された励起光を第2のレーザー発振用ファイバーに導くための第2の導光路と、
レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、
第1のレーザー発振用ファイバーから出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、
第2のレーザー発振用ファイバーから出力された第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、
レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、
スイッチの選択状態に応じて、共通励起光源から出力された励起光を第1の導光路及び第2の導光路の何れか一方に選択的に導く切替手段と、
共通励起光源に電力を供給する給電手段と、
を備えたことを特徴とするレーザー治療装置。
【請求項5】
所定の波長を有する第1のレーザービームを発振させるための第1のレーザー媒質よりなる第1のコアと、第1のレーザービームと異なる波長を有する第2のレーザービームを発振させるための第2のレーザー媒質よりなる第2のコアを備えたダブルコア型のレーザー発振用ファイバーと、
このレーザー発振用ファイバーに励起光を供給するための共通励起光源と、
レーザービームを患部に照射するためのハンドピースと、
レーザービームの照射モードを切り替えるためのスイッチと、
共通励起光源に電力を供給する給電手段と、
スイッチの選択状態に応じて、レーザー発振用ファイバーから同時に出力された第1のレーザービーム及び第2のレーザービームの少なくとも一方を通過させるスイッチング手段と、
スイッチング手段から出力された第1のレーザービームをハンドピースに伝送するための第1の伝送路と、第2のレーザービームをハンドピースに伝送するための第2の伝送路と、
を備えたことを特徴とするレーザー治療装置。
【請求項6】
上記スイッチング手段が、第1のコアの出力側端面及び第2のコアの出力側端面の何れか一方を選択的に閉塞するレーザー吸収材を備えていることを特徴とする請求項5に記載のレーザー治療装置。
【請求項7】
上記スイッチング手段が、レーザー吸収材と、第1のコアの出力側端面から出射された第1のレーザービーム及び第2のコアの出力側端面から出射された第2のレーザービームの何れか一方を選択的に偏光させて上記レーザー吸収材に導く可動式反射ミラーを備えていることを特徴とする請求項5に記載のレーザー治療装置。
【請求項8】
上記スイッチング手段が、第1のコアの出力側端面及び第2のコアの出力側端面の何れか一方を選択的に遮蔽する液晶シャッターを備えていることを特徴とする請求項5に記載のレーザー治療装置。
【請求項9】
上記第1のレーザー媒質が、0.6μm〜1.4μm波長のレーザービームを発振するためのものであり、上記第2のレーザー媒質が、1.5μm〜11μm波長のレーザービームを発振するためのものであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のレーザー治療装置。
【請求項10】
上記第1のレーザー媒質が、1.06μm波長のレーザービームを発振するためのものであり、上記第2のレーザー媒質が、2.9μm波長のレーザービームを発振するためのものであることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のレーザー治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−204609(P2006−204609A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21718(P2005−21718)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000187220)昭和薬品化工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】