説明

レーザ加工方法、及び該レーザ加工方法を用いた多層フレキシブルプリント配線板の製造方法

【課題】ビアホール内の樹脂残り及びビアホール内に露出する内層回路パターンの変形・貫通を起こさずに、可及的に少ないショット数でビアホールを形成する。
【解決手段】表面にコンフォーマルマスク7,8aが設けられた可撓性の絶縁ベース1と、この下に設けられた、加工用レーザの波長域において絶縁ベース材1よりも高い吸光度、及び絶縁ベース材1よりも低い分解温度を有する接着剤層12とを含む被加工層を除去することにより、ビアホール23,24を形成するレーザ加工方法であって、導電膜2Aの変形及び貫通を引き起こさず、かつ絶縁ベース材1を1ショットで除去可能な第1のエネルギー密度を有するパルス光を1ショット照射した後、第1のエネルギー密度より小さく、導電膜2Aの変形および貫通を引き起こさずに残りの被加工層を所定のショット数で除去可能な第2のエネルギー密度を有するパルス光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法、特に、加工性の異なる複数の材料を除去することによりビアホールを形成するレーザ加工方法、及び該レーザ加工方法を用いた多層フレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化および高機能化がますます進展しており、それに伴い、プリント配線板に対して高密度化の要求が高まっている。高密度実装が可能なプリント配線板を実現するために、ビルドアップ型プリント配線板が用いられる。このビルドアップ型多層フレキシブルプリント配線板は、一般的に、両面プリント配線板若しくは多層プリント配線板をコア基板とし、このコア基板の両面若しくは片面に1〜2層程度のビルドアップ層を設けたものである。
【0003】
さらにプリント配線板の実装密度を向上させるために、ビルドアップ型プリント配線板に、層間接続を行うビアが設けられる。ビアは、ビアホールの内壁に形成されためっき層からなる層間導電路である。
【0004】
ビアの種別として、隣接する2層の配線パターンを接続する通常のビア(以下、単純ビアという。)の他に、スキップビア、ステップビアなどがある。スキップビアは、スキップビアホールの内壁にめっき処理を施すことにより形成される。ステップビアは、プリント配線板の内層に行くに従い縮径するステップビアホール(段状のビアホール)の内壁にめっき処理を施すことにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
多層フレキシブルプリント配線板の厚さ方向に、絶縁膜を隔てて第1、第2及び第3の配線パターンがこの順に形成されているとき、スキップビアは、第2の配線パターンをスキップして、第1の配線パターンと第3の配線パターンを電気的に接続するものである。一方、ステップビアは、第1、第2及び第3の配線パターンの層間接続を一括して行い、高密度な層間接続を可能とする。
【0006】
ビアホールは、被加工層上の導電膜に設けられたマスク孔(コンフォーマルマスク)を用い、このマスク孔に露出した被加工層をレーザ光で除去するコンフォーマルレーザ加工法により形成することができる。
【0007】
しかし、従来、被加工層が加工性の異なる複数の材料からなる場合、ビアホール内に樹脂残りが発生する等のため、信頼性の高いビアを形成することが困難であった。この問題について図面を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0008】
図3Aおよび図3Bは、従来技術による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【0009】
(1)まず、ポリイミドフィルムからなる可撓性絶縁ベース材151の両面に銅箔152及び153を有する両面銅張積層板を用意する。この両面銅張積層板の両面の銅箔を、フォトファブリケーション手法により所定のパターンに加工することで、図3A(1)に示す回路基材156を得る。
【0010】
この回路基材156の表面の銅箔152には、マスク孔154a,154b,154cが形成されている。また、回路基材156の裏面の銅箔153は、マスク孔154dを含む内層回路パターン155を構成している。
【0011】
(2)次に、12μm厚のポリイミドフィルム157上に、アクリル系またはエポキシ系の接着剤からなる接着材層158(15μm厚)が形成されたカバーレイ159を用意する。そして、真空プレス又は真空ラミネーター等を用いて、回路基材156の裏面にカバーレイ159を貼り付ける。
【0012】
ここまでの工程で、図3A(2)に示すカバーレイ付き回路基材160を得る。
【0013】
(3)次に、可撓性絶縁ベース材161の両面に銅箔162及び163を有する別の両面銅張積層板を用いて、前述の(1)と同様の工程を行うことで、回路基材166を得る。図3A(3)に示すように、回路基材166の表面の銅箔162は内層回路パターン164を構成しており、裏面の銅箔163にはマスク孔165が形成されている。
【0014】
(4)次に、接着材フィルムを回路基材166の形状に合わせて型抜きして得られた接着剤層167と、回路基材166との位置合わせを行う。
【0015】
(5)次に、図3A(4)に示すように、真空プレス等を用いて、接着材層167を介して回路基材166とカバーレイ付き回路基材160を積層接着する。
【0016】
ここまでの工程を経て図3A(4)に示す多層回路基材168を得る。
【0017】
(6)次に、図3B(5)に示すように、炭酸ガスレーザ(波長:約9.8μm)を用いてコンフォーマルレーザ加工を行う。これにより、単純ビアホール169,170と、スキップビアホール171と、ステップビアホール172とを形成する。このレーザ加工の際、マスク孔154a,154b,154c,154d,165はコンフォーマルマスクとして機能する。
【0018】
ここまでの工程で、図3B(5)に示す多層回路基材173を得る。
【0019】
(7)次に、図3B(6)に示すように、多層回路基材173の全面に電解めっき処理を施すことで20μm程度のめっき層を形成し、その後、フォトファブリケーション手法により、ビルドアップ層の導電膜を加工し、外層回路パターン178A,178Bを形成する。
【0020】
単純ビアホール169及び170の内壁にめっき層が形成されることにより、それぞれ単純ビア174及び175が形成される。スキップビアホール171の内壁にめっき層が形成されることにより、スキップビア176が形成される。ステップビアホール172の内壁にめっき層が形成されることにより、ステップビア177が形成される。
【0021】
この後、図示しないが、必要に応じて、ランド部等の表面には半田めっき、ニッケルめっき、金めっき等の表面処理を施すとともに、はんだ付けが不要な部分には保護用のフォトソルダーレジスト層を形成する。その後、金型による抜き打ち等により外形加工を行う。
【0022】
以上の工程を経て、図3B(6)に示す多層フレキシブルプリント配線板179を得る。
【0023】
次に、スキップビアホール171、ステップビアホール172をレーザ加工で形成する際に生じる問題について説明する。
【0024】
スキップビアホール171及びステップビアホール172を形成する際における被加工層は、レーザ照射面側から順に、可撓性絶縁ベース材151、接着材層158、ポリイミドフィルム157及び接着材層167である。
【0025】
可撓性絶縁ベース材151と接着剤層158は、分解温度、および炭酸ガスレーザの波長帯である波長10μm前後における吸光度が異なる。即ち、分解温度は、接着剤層158よりも可撓性絶縁ベース材151の方が高く、一方、炭酸ガスレーザの波長帯における吸光度は、可撓性絶縁ベース材151よりも接着剤層158の方が高い。
【0026】
換言すれば、可撓性絶縁ベース材151の下に配置された接着剤層158は、可撓性絶縁ベース材151に比べて分解温度が低く、かつ炭酸ガスレーザの波長帯における吸光度が高い。
【0027】
このため、可撓性絶縁ベース材151を透過したレーザ光により、接着材層158が可撓性絶縁ベース材151より先にアブレーションを起こす。それにより、図4(a)に示すように、接着剤層158のアブレーションにより発生したガスが、可撓性絶縁ベース材151を変形させ、膨れ部180が発生する。その後レーザパルス光をさらに照射すると、図4(b)に示すように、膨れ部180が破裂し、捲れ部181が発生してしまう。
【0028】
捲れ部181が発生すると、その下の被加工層(可撓性絶縁ベース材151、接着材層158等)のレーザ加工が阻害されてしまう。このため、スキップビアホール171及びステップビアホール172内に露出した内層回路パターン155,164上に樹脂残りが発生しやすくなる。
【0029】
特にステップビアホールを形成する場合、図4(b)からわかるように、ステップ構造に起因して、捲れ部181の一部が外層の銅箔の上に乗り上げやすい。そのような場合には、以降のレーザ加工が大きく阻害されてしまう。
【0030】
このような樹脂残りは、レーザ加工工程の後に行われるデスミア工程でも除去されない。その結果、ステップビアホール及びスキップビアホール内壁へのめっきの付き回りが悪化し、層間導電路の信頼性が低下する要因となる。
【0031】
なお、同様のことがポリイミドフィルム157と接着剤層167についてもいえる。即ち、ポリイミドフィルム157を透過したパルス光により、ポリイミドフィルム157よりも分解温度が低く、かつ吸光度の高い接着材層167が先にアブレーションを起こす。
【0032】
上述の樹脂残りを除去するためには、レーザパルス光を更に照射する必要がある。しかし、パルス光のショット数を増加させると、生産性が低下するという問題がある。
【0033】
また、ショット数を増やしすぎると、接着剤層158,167に熱が蓄積される結果、図3B(5)からわかるように、スキップビアホール171及びステップビアホール172の側壁において接着材層158,167が大きく後退し、側壁の凹凸が大きくなる。その結果、図3B(6)からわかるように、側壁に形成されるめっき層に不連続部分が発生し、ビアの信頼性を低下させる要因となる。
【0034】
このように、樹脂残りを除去する必要がある一方、生産性の向上およびビアの信頼性を確保するために、可及的に少ないショット数でビアホールを形成することが求められる。
【0035】
そこで、加工に必要なショット数を減らすために、レーザパルス光の1ショットあたりのエネルギー密度を大きくすることが考えられる。しかし、内層回路パターン164を構成する銅箔162が薄い場合(例えば12μm以下)、パルス光が銅箔を貫通してしまい、ショート不良が発生する要因となる。近年、微細な配線パターンを形成するために、銅箔を薄くせざるを得ない場合が多い。
【0036】
また、ステップビアホール172を形成する場合、可撓性絶縁ベース材151が除去され内層回路パターン155が露出した後も、接着剤層158,167及びポリイミドフィルム157を除去するために、エネルギー密度の大きいパルス光が照射されることになる。そのため、内層回路パターン155を構成する銅箔153の厚みが比較的薄い場合(例えば12μm以下)、内層回路パターン155(銅箔153)が変形し、内層回路パターン155と接着材層158の間に空隙部分が発生する。この空隙部分は、ステップビアホールの側壁に形成されるめっき層に不連続部分を発生させ、ステップビアの信頼性を低下させる要因となる。
【0037】
また、1ショットあたりのエネルギー密度が大きいパルス光を照射する場合、ショット数を増やす場合と同様に接着剤層158,167の熱の蓄積が大きくなることにより、接着材層158,167の後退量が増大し、ビアホールの側壁の凹凸が大きくなってしまう。
【0038】
ところで、レーザ加工方法には2つの方法、即ち、加工エリア内に設けられた複数のマスク孔に対して、1ショットずつ順番にパルス光を照射するサイクル加工方法と、1つのマスク孔にパルス光を連続して照射するバースト加工方法が知られている。
【0039】
バースト加工方法の場合、1ショット目のパルス光によって可撓性絶縁ベース材151が膨れて捲れてしまう前に、2ショット目のレーザパルスを照射し、可撓性絶縁ベース材151を除去することで、樹脂残りの発生を抑制できる可能性がある。しかし、パルス光を連続して同じ部位に照射するため、被照射部位に蓄積される熱が大きくなる。その結果、1ショットあたりのエネルギー密度が大きくする場合や、エネルギー密度の小さいパルス光のショット数を増やす場合と同様に、ビアホール側壁の凹凸の拡大等を招いてしまう。
【0040】
従来、ビアホール内部に残存した樹脂を除去するため、ビアホールをレーザ加工する途中でパルス光のエネルギー密度を大きくするレーザ加工方法が知られている(特許文献2)。この方法では、被加工層は1層(樹脂層12)のみであり、前述の可撓性絶縁ベース材の膨れや捲れという現象はそもそも発生しない。また、金属層(銅ランド11)が薄い場合、エネルギー密度の大きいパルス光によって、ビアホールの底面に露出した銅ランド11の貫通・変形を引き起こす虞がある。
【0041】
その他、上記の問題を解決するために、接着材層158及び167の材料として、エポキシ系・アクリル系の接着剤に比べてレーザ光の吸収が低く、且つ分解温度の高いポリアミド系の接着材を使用することが考えられる。しかし、ポリアミド系の接着材は、一般的に多層フレキシブルプリント配線板に使用されるエポキシ系・アクリル系接着剤に比べて高価である。そのため、製造コストが増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特許第2562373号公報
【特許文献2】特開2005−28369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
本発明は、ビアホール内の樹脂残り及びビアホール内に露出する内層回路パターンの変形・貫通を起こさずに、可及的に少ないショット数でビアホールを形成する。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明の一態様によれば、表面にコンフォーマルマスクが設けられた、加工用レーザの波長域における第1の吸光度、及び第1の分解温度を有する第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の下に設けられた、前記波長域における前記第1の吸光度よりも高い第2の吸光度、及び前記第1の分解温度よりも低い第2の分解温度を有する第2の絶縁層とを含み、内層回路パターンを構成する導電膜の上に形成された被加工層をレーザで除去することにより、底面に前記導電膜が露出したビアホールを形成するレーザ加工方法であって、前記導電膜の変形および貫通を引き起こさず、かつ前記被加工層の前記第1の絶縁層を1ショットで除去可能な第1のエネルギー密度を有するパルス光を1ショット照射し、その後、前記第1のエネルギー密度より小さく、前記導電膜の変形および貫通を引き起こさずに残りの前記被加工層を所定のショット数で除去可能な第2のエネルギー密度を有するパルス光を照射することを特徴とするレーザ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0045】
これらの特徴により、本発明は次のような効果を奏する。
【0046】
被加工層の第1の絶縁層は最初のショットで完全に除去されるため、第1の絶縁層に捲れ部は発生しない。よって、捲れ部に起因する樹脂残りの発生を防ぐことができる。また、捲れ部が発生しないことから、ビアホールの形成に必要な総ショット数を可及的に低減できる。
【0047】
さらに、第1及び第2のエネルギー密度は、内層回路パターンを構成する導電膜の変形および貫通を引き起こさない値であるため、最終的に形成されるビアホール内に露出する内層回路パターンに変形および貫通は発生しない。
【0048】
さらに、樹脂残りおよびビアホール側壁の凹凸の拡大が抑制される結果、ビアホール内壁へのめっきの付き回りが良好となり、信頼性の高いビアを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】本発明の第1の実施形態による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図1B】図1Aに続く、本発明の第1の実施形態による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図1C】図1Bに続く、本発明の第1の実施形態による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図1D】図1Cに続く、本発明の第1の実施形態による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図1E】6層の被加工層を有する多層回路基材の断面図である。
【図2A】本発明の第2の実施形態による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図2B】図2Aに続く、本発明の第2の実施形態による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図3A】従来技術による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図3B】図3Aに続く、従来技術による多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図4】従来技術においてビアホールを形成する際に発生する問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照しながら、本発明の2つの実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板の製造方法について説明する。被加工層の数は、第1の実施形態では4つであり、第2の実施形態では2つである。
【0051】
(第1の実施形態)
図1A〜図1Dは、第1の実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【0052】
(1)まず、可撓性の両面銅張積層板4を用意する。この両面銅張積層板4は、図1A(1)に示すように、可撓性絶縁ベース材1(例えば25μm厚のポリイミドフィルム)の両面に銅箔2及び銅箔3(各々例えば12μm厚)を有するものである。なお、可撓性絶縁ベース材1は、ポリイミからなるドフィルムに限らず、液晶ポリマーからなるフィルムを用いることもできる。
【0053】
また、可撓性絶縁ベース材1、銅箔2、銅箔3の厚みは上記の値に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、高屈曲性が要求される場合には、可撓性絶縁ベース材1として、膜厚の薄い(例えば12.5μm)ものを選択することが好ましい。微細な配線パターンが要求される場合には、銅箔2,3として、膜厚の薄い(例えば9μm)ものを選択することが好ましい。
【0054】
(2)次に、図1A(2)に示すように、両面銅張積層板4の銅箔2及び銅箔3上に、それぞれレジスト層5A及びレジスト層5Bを形成する。
【0055】
このレジスト層5A及び5Bは、それぞれ、フォトファブリケーション手法により、後述のマスク孔6,7,8a、及びマスク孔8bを有する内層回路パターン9を形成するためのものである。
【0056】
(3)次に、図1A(3)に示すように、レジスト層5A及び5Bを用いて、銅箔2及び銅箔3をエッチングし、その後、レジスト層5A及び5Bを剥離する。なお、エッチング工程では、例えば、塩化第二銅又は塩化第二鉄などを含むエッチャントを用いることができる。
【0057】
これにより、銅箔2にはマスク孔6、マスク孔7(例えばφ150μm)、及びマスク孔8a(例えばφ200μm)が形成され、銅箔3はマスク孔8b(例えばφ150μm)を含む内層回路パターン9に加工される。マスク孔8a及び8bは、それぞれステップビアホールの上穴および下穴用のコンフォーマルマスクとして機能する。
【0058】
なお、レジスト層5A,5Bを剥離した後、必要に応じて粗化処理を行ってもよい。これにより、銅箔3と、後述のカバーレイ13の接着材層12との間の耐熱密着性を向上させることができる。
【0059】
ここまでの工程を経て、図1A(3)に示す回路基材10を得る。
【0060】
(4)次に、可撓性絶縁フィルム11(例えば12μm厚のポリイミドフィルム)上に、アクリル系又はエポキシ系等の接着剤からなる接着材層12(例えば15μm厚)を有するカバーレイ13を用意する。そして、図1A(4)に示すように、このカバーレイ13を、回路基材10の内層側(図中下側)に真空プレス又は真空ラミネーター等を用いて貼り付ける。この際、内層回路パターン9は接着剤層12により充填される。
【0061】
ここまでの工程を経て、図1A(4)に示すカバーレイ付き回路基材14を得る。
【0062】
なお、図1A(1)〜(4)までの工程をロールトゥロール工法で行うことにより、生産性のさらなる向上を図ることができる。
【0063】
(5)次に、可撓性ベース材1A(例えば25μm厚のポリイミドフィルム)の両面にそれぞれ銅箔2A及び銅箔3A(各々例えば12μm厚)を有する、可撓性の両面銅張積層板を用意する。そして、この両面銅張積層板を、図1A(1)〜(3)までの工程で説明した方法と同様にして加工し、図1B(5)に示す回路基材17を得る。この回路基材17表面の銅箔2Aは内層回路パターン16を構成し、裏面の銅箔はマスク孔15を有する。この内層回路パターン16の一部は、レーザ加工によりビアホールを形成する際に受けランドとなる。
【0064】
(6)次に、図1B(6)に示すように、回路基材17の形状に合わせて接着材フィルム(例えば15〜20μm厚)を型抜きし、それにより得られた接着剤層18と、回路基材17との位置合わせを行う。なお、この接着剤層18を構成する接着材としては、ローフロータイプのプリプレグやボンディングシート等の流れ出しの少ないものが好ましい。
【0065】
(7)次に、図1C(7)に示すように、接着材層18を介し、カバーレイ付き回路基材14と回路基材17を真空プレス等で積層接着する。これにより、銅箔2Aからなる内層回路パターン16は、接着剤層18により充填される。
【0066】
ここまでの工程を経て、図1C(7)に示す多層回路基材19を得る。
【0067】
(8)次に、マスク孔6、7、8a、8b及び15を用いてコンフォーマルレーザ加工を行い、ビアホールを形成する。加工用レーザには、赤外レーザを用いる。例えば、生産性の高い炭酸ガスレーザを用いることが好ましい。
【0068】
本工程のレーザ加工条件について詳しく説明する前に、可撓性絶縁ベース材1と接着材層12の分解温度および吸光度について具体的に説明する。
【0069】
表1は、可撓性絶縁ベース材1と接着材層12(エポキシ系接着剤)のそれぞれについて、5%重量分解温度と、波数1000cm−1(波長10μm)における吸光度の比とを示している。
【0070】
表1からわかるように、分解温度については、接着材層12は可撓性絶縁ベース材1に比べて約200℃低い。一方、吸光度については、接着材層12は、可撓性絶縁ベース材1に比べて2.5倍大きい。
【0071】
よって、可撓性絶縁ベース材1が完全に除去される前に接着材層12がアブレーションを起こし、その結果、可撓性絶縁ベース材1に樹脂残りの原因となる捲れ部が発生する。
【表1】

【0072】
次に、本実施形態によるレーザ加工方法の詳細について説明する。
【0073】
まず、比較的高い第1のエネルギー密度を有するパルス光を、各マスク孔6,7,8a,15(コンフォーマルマスク)に1ショットずつ照射する。この第1のエネルギー密度は、マスク孔に露出した可撓性絶縁ベース材1を1ショットで完全に除去し、かつ、内層回路パターン9,16の変形および貫通を引き起こさないという条件を満たす値が選択される。
【0074】
図1C(8)に示すように、第1のエネルギー密度を有するパルス光の照射により、マスク孔7に対応する部分に形成途中のビアホール20が形成され、マスク孔8a及び8bに対応する部分に形成途中のビアホール21が形成される。また、マスク孔6及び15に対応する部分に単純ビアホール22A及び22Bが形成される。この単純ビアホール22A(22B)は、被加工層が可撓性絶縁ベース材1(1A)のみであるため、最初のショットにより完全に形成される。
【0075】
その後、2番目以降のショットとして第2のエネルギー密度を有するパルス光を形成途中のビアホール20,21に照射して、コンフォーマルレーザ加工を続行する。この第2のエネルギー密度は、第1のエネルギー密度より小さく、内層回路パターン9及び16(銅箔3及び2A)の変形および貫通を引き起こさずに所定のショット数で残りの被加工層(接着剤層12、可撓性絶縁フィルム11及び接着剤層18)を除去し、ビアホールの形成を完了させることのできる値が選択される。
【0076】
ここまでの工程を経て、図1C(9)に示す多層回路基材25を得る。
【0077】
(9)次に、多層回路基材25に対して、層間接続をとるためのデスミア処理及び導電化処理を行う。
【0078】
(10)次に、図1D(10)に示すように、多層回路基材25の表面及び裏面の全面にわたって電解めっき処理を施し、電解めっき層26A及び26B(各々15〜20μm厚)を形成する。このめっき処理により、層間導通路として機能する単純ビア27A、27B、スキップビア28及びステップビア29が一括して形成される。
【0079】
ここまでの工程を経て、層間導通路を有する多層回路基材30を得る。
【0080】
なお、多層フレキシブルプリント配線板に挿入実装する部品(IMT部品)等のために、めっきスルーホールが必要な場合には、本工程のめっき処理を行う前に、NCドリル等で所定の部分に貫通孔を形成しておいてもよい。このようにすることで、本工程でめっきスルーホールを形成することができる。
【0081】
(11)次に、図1D(11)に示すように、フォトファブリケーション手法により、外層の導体層(銅箔2+電解めっき層26A,銅箔3A+電解めっき層26B)を所定のパターンに加工する。これにより、多層回路基材30の表面及び裏面に、外層回路パターン31A及び31Bをそれぞれ形成する。
【0082】
この後、図示しないが、必要に応じて、半田付けが不要な部分には保護用のフォトソルダーレジスト層を形成し、ランド部等の表面には半田めっき、ニッケルめっき、金めっき等の表面処理を施す。その後、金型による抜き打ち等により外形加工を行う。
【0083】
以上の工程を経て、図1D(11)に示す本実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板32を得る。
【0084】
単純ビア27Aは外層回路パターン31Aと内層回路パターン9の層間接続を行い、単純ビア27Bは外層回路パターン31Bと内層回路パターン16の層間接続を行う。スキップビア28は、内層回路パターン9をとばして、外層回路パターン31Aと内層回路パターン16の層間接続を行う。ステップビア29は、外層回路パターン31A、内層回路パターン9及び内層回路パターン16の層間接続を行う。
【実施例】
【0085】
次に、加工用レーザのパルス光のエネルギー密度と、ビアホール(ステップビアホール24)の加工状態との関係を実際に調査した結果について説明する。
【0086】
本実施例において用いた上記の多層回路基材19(図1C(7)参照)の構成は次の通りである。
【0087】
可撓性絶縁ベース材1 :25μm厚のポリイミドフィルム
銅箔2,3,2A,3Aの膜厚 :12μm
可撓性絶縁フィルム11 :12μm厚のポリイミドフィルム
接着剤層12,18 :15μm厚のエポキシ系接着剤
マスク孔8aの直径 :200μm
マスク孔8bの直径 :150μm
【0088】
レーザ加工機として、三菱電機(株)製のML605GTX(炭酸ガスレーザ)を使用した。レーザのパルス幅は10μsec、レーザビーム径はφ300μmにそれぞれ固定した。第1のエネルギー密度及び第2のエネルギー密度の値の組み合わせ(ID:1〜18)、及び評価結果を表2に示す。なお、表2においてエネルギー密度の値は便宜上、エネルギー値に換算して表記している。パルス光のエネルギー密度の値は、エネルギー値をレーザビームの面積で割ることで求められる。
【表2】

【0089】
ビアホールの加工は、第1のエネルギー密度を有するパルス光を1ショット照射した後、第2のエネルギー密度を有するパルス光を3〜5ショット照射して行った。表2に示す18種類(ID=1〜18)のエネルギー密度条件について、第2のエネルギー密度のパルス光のショット数が3ショット、4ショット及び5ショットの3通りをそれぞれ実施した。これは、製品を製造する際の加工条件として4ショットを使用した場合に、±1ショットの加工マージンを有するか否かについても判定するためである。
【0090】
ビアホールの加工状態は、3つの水準(“○”、“△”、“×”)を用いて評価した。“○”は、第2のエネルギー密度のパルス光のショット数が3、4及び5ショットのいずれにおいても、樹脂残り及び銅箔の変形・貫通が見られず、適切な加工が可能と判断したものを示す。“△”は、少なくともいずれかのショット数の場合において樹脂残りが発生したものを示す。“×”は、少なくともいずれかのショット数の場合において銅箔(内層回路パターン)の変形または貫通が発生したものを示す。
【0091】
ここで、適切な第1のエネルギー密度及び第2のエネルギー密度の範囲を導出した経緯について説明する。
【0092】
まず、第1のエネルギーが10mJ(エネルギー密度:141mJ/mm)のパルス光を1ショット照射した後の加工状態を調べたところ、可撓性絶縁ベース材1は完全に除去されておらず、可撓性絶縁ベース材1の捲れを確認した。その後、第2のエネルギーが8mJ(エネルギー密度:113mJ/mm)のパルス光を照射したところ、樹脂残りを確認した(ID1)。第2のエネルギーとして比較的大きい値を選択したにも拘わらず樹脂残りが発生した理由は、可撓性絶縁ベース材1の捲れによりレーザ加工が阻害されたためと考えられる。
【0093】
次に、樹脂残りを除去するため、第2のエネルギーとしてさらに値を選択してレーザ加工を行った。即ち、第1のエネルギーが10mJのパルス光を1ショット照射した後、第2のエネルギーが10mJのパルス光を照射したところ、銅箔の変形が見られた(ID2)。
【0094】
上記の結果から、10mJ以下の第1のエネルギーは、1ショットで可撓性絶縁ベース材1を除去できず、不適当であると判断した。
【0095】
次に、第1のエネルギーが18mJ(エネルギー密度:255mJ/mm)のパルス光を1ショット照射したところ、銅箔の変形を確認した(ID18)。
【0096】
したがって、第1のエネルギーは、10mJより大きく、18mJ未満の値を選択する必要があることが判明した。
【0097】
そこで、第1のエネルギーとして12,14,16mJ(エネルギー密度:170,198,226mJ/mm)を有するパルス光を照射してビアホールの加工状態を調べた。
【0098】
その結果、可撓性絶縁ベース材1の膨れおよび捲れは見られなかったものの、選択した第2のエネルギーの値によって最終的なビアホールの加工状態に差異が見られた。
【0099】
まず、第2のエネルギーが2mJ(エネルギー密度:28mJ/mm)のパルス光を照射したところ、いずれの第1のエネルギーの場合についても樹脂残りを確認した(ID3、8、13)。
【0100】
次に、第2のエネルギーが10mJのパルス光を照射した場合、いずれの第1のエネルギーの場合についても銅箔の変形を確認した(ID7、12、17)。
【0101】
そこで、第2のエネルギーとして4,6,8mJ(エネルギー密度:57,85,113mJ/mm)を有するパルス光を照射したところ、樹脂残りおよび銅箔の変形・貫通がなく、適切な加工が可能であることを確認した(ID4〜6、9〜11、14〜16)。
【0102】
以上の結果から、第1のエネルギーとして12mJ〜16mJ(エネルギー密度:170〜226mJ/mm)を選択し、第2のエネルギーとして4mJ〜8mJ(エネルギー密度:57〜113mJ/mm)を選択することで、4〜6の総ショット数で適切なレーザ加工が可能であることが判明した。
【0103】
第1のエネルギーに対する第2のエネルギーの比(エネルギー比)を表2に示している。上記の結果から、第1のエネルギー密度に対する第2のエネルギー密度(エネルギー比)としては、第1のエネルギー密度に応じて1/4〜2/3とすることが適切である。
【0104】
ところで、本実施例において、第1のエネルギー密度を有するパルス光が比較的小さい場合には、最初のショットの後、可撓性絶縁ベース材1は完全に除去されるものの、可撓性絶縁フィルム11には貫通孔が形成されないことがあった。しかし、可撓性絶縁フィルム11の捲れに起因する樹脂残りは起こらなかった。これは、可撓性絶縁フィルム11が可撓性絶縁ベース材1に比べてビアホールの内側に位置することによるものと考えられる。即ち、可撓性絶縁フィルム11直下の接着材層18が先にアブレーションを起こした場合であっても、可撓性絶縁フィルム11の周囲にビアホールの側壁が存在するため、可撓性絶縁フィルム11に捲れ部が発生しにくいことによると考えられる。
【0105】
このことから、4層より多い被加工層を除去することで形成されるビアホールの場合についても、第2のエネルギー密度のパルス光のショット数を増加させれば、表2の加工条件を適用することが可能である。
【0106】
そのような例として、図1Eに、6層の被加工層(加工性の異なる2種類の絶縁層が3対)を有する多層回路基材36を示す。この多層回路基材36は、カバーレイ33を有するカバーレイ付き回路基材34と、カバーレイ13を有するカバーレイ付き回路基材14とを、カバーレイ13,33同士が向かい合うように接着剤層35を介して貼り合わせたものである。
【0107】
なお、カバーレイ付き回路基材34は、前述の回路基材17に対して、可撓性絶縁フィルム33aと接着剤層33bからなる接着剤層カバーレイ33を貼付けて得られたものである。
【0108】
この多層回路基材36に対しコンフォーマルレーザ加工を行い、ビアホールを形成する場合、カバーレイ33の可撓性絶縁フィルム33aに捲れ部が発生する可能性は低い。よって、第1のエネルギー密度のパルス光の照射によって、可撓性絶縁フィルム11及び可撓性絶縁フィルム33aに貫通孔を形成する必要はなく、表2のエネルギー密度条件を用いることができる。
【0109】
以上、第1の実施形態および実施例について説明した。
【0110】
上述のように、本実施形態では、加工性の異なる4つの絶縁層を除去してビアホールを形成するために、まず、第1のエネルギー密度を有するパルス光を1ショット照射し、ビアホール(20,21)を途中まで形成する。この第1のエネルギー密度は、内層回路パターン9,16を構成する銅箔3,2Aを貫通および変形させず、かつマスク孔7,8aに露出した可撓性絶縁ベース材1を1ショットで完全に除去可能な値が選択される。これにより、可撓性絶縁ベース材1に捲れ部が発生することを防止し、捲れ部に起因する樹脂残りの発生を防止することができる。
【0111】
2ショット目以降については、第2のエネルギー密度を有するパルス光を照射し、ビアホール(20,21)を完成させる。この第2のエネルギー密度は、第1のエネルギー密度より小さく、かつ内層回路パターン9,16を構成する銅箔3,2Aを貫通および変形させずに所定のショット数(例えば4ショット)で残りの被加工層を除去し、ビアホールを完成させることのできる値が選択される。
【0112】
本実施形態に係る方法によれば、可撓性絶縁ベース材1の捲れに起因する樹脂残り、及び内層回路パターンを構成する銅箔3,2Aの変形・貫通を発生させずに、ビアホール(23,24)を形成することができる。
【0113】
さらに、このようにして形成されたビアホール(23,24)の側壁の凹凸の拡大は可及的に抑制される。これは、レーザ加工を阻害する捲れ部の発生がないため、ビアホールの形成に必要な総ショット数を可及的に低減でき、従ってレーザ照射部位における熱の蓄積が小さくなるためである。
【0114】
樹脂残り及び側壁の凹凸が抑制される結果、ビアホール内壁へのめっきの付き回りが良好となり、層間接続路として機能するスキップビア28及びステップビア29の信頼性を向上させることができる。
【0115】
さらに、本実施形態によれば、被加工層は一般的で比較的安価な材料を用いるため、安価に多層フレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0116】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板の製造方法について説明する。本実施形態と第1の実施形態の相違点の一つは、ビアホールを形成する際の被加工層の数である。第1の実施形態では、被加工層は4層(可撓性絶縁ベース材1、接着剤層12、可撓性絶縁フィルム11、接着剤層18)であるのに対し、本実施形態では被加工層は2層である。
【0117】
図2Aおよび図2Bは、第2の実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【0118】
(1)まず、可撓性絶縁ベース材41(例えば25μm厚のポリイミドフィルム)の片面に銅箔42(例えば12μm厚)を有する可撓性の片面銅張積層板を用意する。可撓性絶縁ベース材41は、ポリイミドフィルムに限らず、液晶ポリマーフィルムを用いることもできる。
【0119】
(2)そして、第1の実施形態で説明した方法と同様にして、銅箔42を所定のパターンに加工し、図2A(1)に示す回路基材44を得る。この回路基材44の銅箔42にはレーザ加工時にコンフォーマルマスクとして機能するマスク孔43a及び43bが形成されている。
【0120】
(3)次に、可撓性絶縁ベース材45(例えば25μm厚のポリイミド)の両面に銅箔46及び銅箔47(各々例えば12μm厚)を有する可撓性の両面銅張積層板を用意する。
【0121】
そして、第1の実施形態で説明した方法と同様にして、銅箔46及び47を所定のパターンに加工し、図2A(2)に示す回路基材50を得る。この回路基材50の表面の銅箔46は内層回路パターン48に加工される。一方、裏面の銅箔47には、レーザ加工時にコンフォーマルマスクとして機能するマスク孔49が形成される。
【0122】
(4)次に、接着材層51を介して回路基材44と回路基材50を真空プレス等で積層接着し、図2A(3)に示す多層回路基材52を得る。これにより、銅箔46からなる内層回路パターン48は接着剤層51により充填される。
【0123】
(5)次に、銅箔に形成されたマスク孔43a、43b及び49を用いてコンフォーマルレーザ加工を行い、ビアホールを形成する。本工程のレーザ加工には、赤外レーザ用いる。例えば、生産性の高い炭酸ガスレーザを用いることが好ましい。本工程のレーザ加工は次の2つの工程((5−1)及び(5−2))から構成される。
【0124】
(5−1)まず、第1のエネルギー密度を有するパルス光を、各マスク孔43a、43b及び49に1ショットずつ照射し、マスク孔に露出した可撓性絶縁ベース材41,45を完全に除去する。これにより、図2B(4)に示すように、マスク孔43a及び43bに対応する形成途中のビアホール53a及び53bと、マスク孔49に対応する単純ビアホール54とを形成する。この最初のショットにより、ビアホール54は完全に形成される。
【0125】
第1のエネルギー密度は、マスク孔に露出した可撓性絶縁ベース材41,45を1ショットで完全に除去し、かつ、銅箔46(内層回路パターン48)を変形および貫通しない条件を満たす値が選択される。
【0126】
(5−2)次に、2番目以降のショットとして第2のエネルギー密度を有するパルス光を形成途中のビアホール53a,53bに照射して、コンフォーマルレーザ加工を続ける。この第2のエネルギー密度は、第1のエネルギー密度より小さく、内層回路パターン48(銅箔46)の変形および貫通を起こさずに所定のショット数でビアホールの形成を完了させることのできる値が選択される。
【0127】
ここまでの工程を経て図2B(5)に示す多層回路基材56を得る。これ以降の工程(ビアホール内壁へのめっき層の形成、および外層回路パターンの形成)は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0128】
上記のレーザ加工により、図2B(5)に示すように、内部に露出した内層回路パターン48(銅箔46)の変形および貫通が無く、かつ内部に樹脂残りの無いビアホール55a及び55bを形成することができる。さらに、第1の実施形態と同様、ビアホール側壁の凹凸を可及的に抑制することができる。
【0129】
このように、被加工層が2層(可撓性絶縁ベース材41と接着剤層51)の場合でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0130】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1,1A,41,45,151,161 可撓性絶縁ベース材
2,2A,3,3A,42,46,47,152,153,162,163 銅箔
4 両面銅張積層板
5A,5B レジスト層
6,7,8a,8b,15,43a,43b,49,154a,154b,154c,154d,165 マスク孔
9,16,48,155,164 内層回路パターン
10,17,44,50,156,166 回路基材
11,33a 可撓性絶縁フィルム
12,18,33b,35,51,158,167 接着材層
13,33,159 カバーレイ
14,34,160 カバーレイ付き回路基材
19,25,30,36,52,56,168,173 多層回路基材
20,21,53a,53b 形成途中のビアホール
22A,22B,54,55,169,170 単純ビアホール
23,161 スキップビアホール
24,172 ステップビアホール
26A,26B 電解めっき層
27A,27B,174,175 単純ビア
28,176 スキップビア
29,177 ステップビア
31A,31B,178A,178B 外層回路パターン
32,179 多層フレキシブルプリント配線板
157 ポリイミドフィルム
180 膨れ部
181 捲れ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にコンフォーマルマスクが設けられた、加工用レーザの波長域における第1の吸光度、及び第1の分解温度を有する第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の下に設けられた、前記波長域における前記第1の吸光度よりも高い第2の吸光度、及び前記第1の分解温度よりも低い第2の分解温度を有する第2の絶縁層とを含み、内層回路パターンを構成する導電膜の上に形成された被加工層をレーザで除去することにより、底面に前記導電膜が露出したビアホールを形成するレーザ加工方法であって、
前記導電膜の変形および貫通を引き起こさず、かつ前記被加工層の前記第1の絶縁層を1ショットで除去可能な第1のエネルギー密度を有するパルス光を1ショット照射し、
その後、前記第1のエネルギー密度より小さく、前記導電膜の変形および貫通を引き起こさずに残りの前記被加工層を所定のショット数で除去可能な第2のエネルギー密度を有するパルス光を照射する、
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法であって、
前記被加工層は、前記第2の絶縁層の下に設けられた、前記波長域における第3の吸光度、及び第3の分解温度を有する第3の絶縁層と、前記第3の絶縁層の下に且つ前記導電膜の上に設けられた、前記波長域における前記第3の吸光度よりも高い第4の吸光度、及び前記第3の分解温度よりも低い第4の分解温度を有する第4の絶縁層とを含み、
前記第2のエネルギー密度を有するパルス光の照射により、前記第3の絶縁層及び第4の絶縁層を除去することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工方法であって、
前記第1の絶縁層の裏面には、ステップビアホールの下穴用のコンフォーマルマスクを有する導電膜が設けられており、
前記第1及び第2のエネルギー密度として、前記下穴用のコンフォーマルマスクを有する導電膜の変形および貫通を引き起こさない値を選択することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工方法であって、
前記第1のエネルギー密度に対する前記第2のエネルギー密度の比は、前記第1のエネルギー密度に応じて1/4〜2/3とすることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のレーザ加工方法であって、
前記第1の絶縁層はポリイミド又は液晶ポリマーからなり、前記第2の絶縁層はエポキシ系又はアクリル系の接着剤からなり、
前記加工用レーザとして炭酸ガスレーザを用いることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のレーザ加工方法により形成されたビアホールの内壁にめっき処理を施すことで、層間接続を行うビアを形成することを特徴とする多層フレキシブルプリント配線板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−255407(P2011−255407A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132922(P2010−132922)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】