説明

レーザ加工装置

【課題】用途に応じてレーザパワーの使用範囲を変更しても、その設定範囲毎に調整分解能が変わらないようにしたレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】第2の入力装置8bは1/2波長板3の回動角度(第2設定値)を指定する。制御装置9は、回動装置6を介して1/2波長板3を回動させて、レーザ発振器2から出力されたレーザ光のパワーを、段階的に調整する。第1の入力装置8aは、レーザ発振器2から出力するレーザ光のパワーのパワー上限値(第1設定値)を指定する。制御装置9は、レーザ駆動装置7を介してレーザ発振器2を駆動制御し、レーザ発振器2から出力するレーザ光のパワーを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を加工対象物に照射して加工を行うレーザ加工装置がある。そのレーザ加工装置の1つとして、レーザマーキング装置がある。レーザマーキング装置は、金属、樹脂、セラミック、半導体装置、紙、図形等の多種多様の加工対象物の表面に、レーザを照射して多種多様な文字・記号・図形等のマーキングを行う。
【0003】
レーザマーキング装置は、加工対象物の素材に応じて、または、マーキング濃度に応じて、照射するレーザ光のパワーを調整する必要がある。そこで、レーザ光のパワーの調整として、1/2反射板の回動角度を変えることにより、その回動角度に応じて出力レーザとして取り出せるレーザ光のレーザパワーを調整することができるレーザ加工装置(レーザマーキング装置)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この種の1/2波長板は、0度から45度の回動角の範囲で回動することで、レーザ発振器から出力されたレーザ光のパワーを0%から100%の範囲で光学的に調整することができる。1/2波長板の回動は、ステッピングモータにて行われる。従って、ステッピングモータのステップ量によって、1/2波長板の回動角度は、段階的に変更される。その結果、レーザ光のパワーは、段階的に調整される。
【0005】
例えば、レーザ発振器から出力されるレーザ光のパワーが18[W]であって、ステッピングモータの18ステップで、1/2波長板が0度〜45度を回動すると、図6に示すように、1ステップ回動させる毎に1[W]ずつ、レーザ光のパワーが段階的に増減して行く。
【特許文献1】特開2007−268581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したレーザ加工装置(レーザマーキング装置)において、レーザ光のパワーを0[W]〜18[W]の全範囲をフルに使用されてレーザ加工を行う場合には、レーザパワーは1[W]単位で18段階に制御される。しかしながら、加工対象物の素材によって、レーザ加工装置(レーザマーキング装置)を使用する際、レーザ光のパワーを0[W]〜18[W]の範囲から、0[W]〜9[W]の範囲で使用する場合がある。
【0007】
このとき、0[W]〜9[W]の範囲で使用する場合、レーザパワーは1[W]単位で9段階に制御される。従って、レーザ加工装置(レーザマーキング装置)は0[W]〜9[W]の範囲を高分解能(0.5[W]単位で18段階)でパワー調整することができなかった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、用途に応じてレーザパワーの使用範囲を変更しても、その設定範囲毎に調整分解能が変わらないようにしたレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のレーザ加工装置は、レーザ光を出射するレーザ発生手段と、前記レーザ発生手段から出射されるレーザ光のパワーを外部からの操作で変更可能に設定する第1のパワー調整手段と、前記レーザ発生手段から入射したレーザ光のうち、予め定めた偏光方向のレーザ光のみを出射させる光通過手段と、前記レーザ発生手段及び前記光通過手段のうちの少なくとも1つをレーザ光の光軸を回動中心として回動させ、前記レーザ発生手段と前記光通過手段との相対的な回動角度を変更するための回動手段と、前記回動手段によって前記レーザ発生手段及び前記光通過手段のうちの少なくとも1つを回動させることで、前記光通過手段を通過し加工対象物に照射するためのレーザ光のパワーを光学的に調整可能とする外部から操作可能な第2のパワー調整手段とを備えた。
【0010】
請求項2に記載のレーザ加工装置は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記回動手段は、前記光通過手段を前記レーザ発生手段に対してレーザ光の光軸を回動中心として回動させるようにした。
【0011】
請求項3に記載のレーザ加工装置は、請求項2に記載のレーザ加工装置において、前記第2のパワー調整手段における前記光通過手段には、前記レーザ発生手段から出射された前記レーザ光の光軸を回動中心として回動される波長板と、前記波長板を通過したレーザ光のうち、予め定めた偏光方向のレーザ光のみを通過させる第1偏光部材とが設けられ、前記回動手段を駆動させて、前記波長板を、前記光軸を回動中心に回動させることで、前記波長板と前記第1偏光部材との相対的な回動角度に応じて、前記加工対象物に照射するためのレーザ光のパワーを光学的に調整する。
【0012】
請求項4に記載のレーザ加工装置は、請求項1または2に記載のレーザ加工装置において、 前記レーザ発生手段には、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光のうち、予め定めた偏光方向のみを通過させる第2偏光部材とが設けられ、前記第1のパワー調整手段は、前記第2偏光部材及び前記レーザ光源の少なくとも一方を、前記光軸を回動中心に回動させて光軸周りの相対回動角度を変更することにより、前記レーザ光源から出射されるレーザ光のパワーを変更可能とする。
【0013】
請求項5に記載のレーザ加工装置は、請求項4に記載のレーザ加工装置において、前記第2偏光部材と前記レーザ光源はそれぞれ所定の1ステップ回動角度で回動し、前記第2偏光部材の1ステップ回動角度と、前記レーザ光源の1ステップ回動角度が同一ステップ角度で設定されているとともに、前記第2偏光部材と前記レーザ光源とが、前記1ステップ回動角度の1/2の回動角度ずらして配置されている。
【0014】
請求項6に記載のレーザ加工装置は、請求項1または2に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ発生手段には、レーザ光源と、前記レーザ光源を駆動するレーザ駆動手段とが設けられ、前記第1のパワー調整手段は、前記レーザ駆動手段の駆動信号を変更させることにより、前記レーザ光源から出射されるレーザ光のパワーを変更可能とする。
【0015】
請求項7に記載のレーザ加工装置は、請求項1〜5のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、複数の材質毎に、その材質に照射するためのレーザ光の最適パワーのデータを記憶する記憶手段と、前記複数の材質を選択する材質選択手段とを備え、前記第1及び第2のパワー調整手段の少なくとも一方が、前記材質選択手段で選択された材質に対する前記記憶手段に記憶される最適パワーのデータを読み出し、その読み出した最適パワーのデータに基づいて前記レーザ発生手段から出射されるレーザ光のパワー、又は、前記光通過手段を通過し加工対象物に照射するためのレーザ光のパワーを設定する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載したレーザ加工装置によれば、第1のパワー調整手段によって、レーザ発生手段から出射されるレーザ光のパワーを、例えば、用途に応じて変更することがきる。そして、用途によって種々変更されたレーザ光のパワーは、回動手段を介してレーザ発生手段及び光通過手段を第2のパワー調整手段が回動調整させると、それぞれ光学的に調整される。従って、ユーザが用途に応じてレーザパワーの使用範囲を変更しても、その設定範囲毎に調整分解能が変わらない。
【0017】
請求項2に記載したレーザ加工装置よれば、前記回動手段が、前記光通過手段を前記レーザ発生手段に対してレーザ光の光軸を回動中心として回動させることにより、レーザ光のパワーは光学的に調整される。
【0018】
請求項3に記載したレーザ加工装置によれば、第2のパワー調整手段は、回動手段を介して波長板を回動させると、レーザ発生手と第1偏光部材との相対的な回動角度に応じて、レーザ発生手段から出射されたレーザ光のパワーが光学的に調整される。
【0019】
請求項4に記載したレーザ加工装置によれば、レーザ光源から出射したレーザ光を、光通過手段を通過する前に、第2偏光部材を通過させる。そして、第2のパワー調整手段により第2偏光部材及びレーザ光源のいずれか一方についてその光軸周りの回動角度を変更することによって、レーザ光のパワーが第2調整手段により光学的に調整されるのとは別に、レーザ光源から出射されるレーザ光のパワーは変更することができる。
【0020】
請求項5に記載したレーザ加工装置によれば、第2偏光部材とレーザ光源との相対配置を、1ステップ回動角度の1/2の回動角度分ずらして配置したので、第2偏光部材と前記レーザ光源の相対回動角度を、1ステップ回動角度の1/2の回動角度毎に増減させることができる。その結果、レーザ光源から出射されるレーザ光のパワーの増減を、その分だけ細かく変更することができる。
【0021】
請求項6に記載したレーザ加工装置によれば、レーザ駆動手段は、レーザ光源を駆動するレーザ駆動手段は、第1のパワー調整手段によって、レーザ光源を駆動する駆動信号が変更される。その結果、レーザ発振器から出射されるレーザ光のパワーは、レーザ光源を駆動するレーザ駆動手段を介して電気的に調整制御されることから、その調整制御は非常に容易となる。
【0022】
請求項7に記載したレーザ加工装置によれば、材質選択手段にて材質を選択すると、記憶手段に記憶したその選択した材質に対するレーザ発生手段が出射するレーザ光の最適パワーのデータが読み出される。第1又は第2のパワー調整手段は、その読み出された最適パワーデータに基づいて最適パワーのレーザ光を出射させる。
【0023】
従って、ユーザは、材質を選択入力するだけで、材質毎に最適なパワーのレーザ光を出射させることができ、高度で熟練を必要とするレーサ加工作業の前工程を短時間にしかも高い精度で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のレーザ加工装置をレーザマーキング装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、レーザマーキング装置1は、レーザ発生手段又はレーザ光源としてのレーザ発振器2、光通過手段を構成する1/2波長板3、光通過手段又は第1偏光部材を構成する偏光ビームスプリッター4、ダンパ5、回動手段としての回動装置6、レーザ駆動手段としてのレーザ駆動装置7、第1のパワー調整手段又は第2のパワー調整手段を構成する制御装置9、第1のパワー調整手段を構成する第1の入力装置8a、第2のパワー調整手段を構成する第2の入力装置8b及び記憶手段としての記憶装置10を備えている。
【0025】
レーザ発振器2は、励起光を出射する半導体レーザを備え、半導体レーザから出射された励起光を入射し該励起光に基づいて共振してレーザ光を出射する。レーザ発振器2は、この励起光のパワーを調整することによってレーザ発振器2から出射するレーザ光のパワーが制御される。励起光のパワーは、励起光を出射する半導体レーザに供給する電気的駆動量としての駆動電流(パルス幅、波高値等)によって制御される。本実施形態では、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワーが、0〜18[W]の範囲で調整できるようになっている。
【0026】
1/2波長板3は、レーザ発振器2から出射されたレーザ光の光軸に対して垂直かつ該光軸を回動中心に回動可能に設けられていて、その回動角度(レーザ発振器2との相対的な回動角度)に応じて該レーザ光の偏光方向(向き)を変更するようになっている。例えば、1/2波長板3は、0°〜45°で回動されることにより、直線偏光(レーザ発振器2から出射されたレーザ光)の偏光面の角度を0°〜90°に偏光させ、水平な直線偏光を垂直な直線偏光に変える。
【0027】
偏光ビームスプリッター4は、1/2波長板3を通過したレーザ光の光軸に対して垂直に設けられ、1/2波長板3を通過したレーザ光を入射する。偏光ビームスプリッター4は、1/2波長板3との相対回動角度(1/2波長板3との偏光面の相対回動角度)に応じて該レーザ光の偏光方向(向き)を変更させ且つ該レーザ光のうち、所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させるようになっている。つまり、偏光ビームスプリッター4は、所定の偏光方向以外のレーザ光を通過させずに該レーザ光を予め設定した反射方向に反射させる。なお、偏光ビームスプリッター4は、本実施形態では針状結晶を透明のベースで支持(挟持)したものであって、そのベースがガラス製で構成されている。
【0028】
ダンパ5は、レーザ光が偏光ビームスプリッター4にて反射される反射方向に配置され、偏光ビームスプリッター4にて反射されたレーザ光を吸収する。ダンパ5は、レーザ光を良好に吸収するために、例えばつや消し黒色系金属から構成されている。
【0029】
回動装置6は、ステッピングモータを備え、光軸に沿った軸中心で回動可能に支持された1/2波長板3を回動制御する。回動装置6は、駆動電流が供給されることで、本実施形態では1/2波長板3を、0°〜45°の範囲において1ステップの単位で回動させて所定の回動角度に回動させるようになっている。なお、本実施形態では、回動装置6(ステッピングモータ)による1ステップは、2.5度としている。従って、0°〜45°の範囲を、2.5度の単位で18段階に回動位置を設定することができる。
【0030】
レーザ駆動装置7は、レーザ発振器2を発振駆動させる。レーザ駆動装置7は、レーザ発振器2に備えた励起光を出射する半導体レーザに対して、制御装置9からの励起光のパワーを決定するパルス幅、波高値を指定する制御信号に基づいて生成される駆動信号を供給する。そして、レーザ駆動装置7から半導体レーザに供給される駆動電流に基づいて、励起光のパワーが制御され、レーザ発振器2から出射されるレーザ光のパワーが変更される。
【0031】
第1の入力装置8aは、ユーザがレーザ発振器2から出射するレーザ光のパワーの上限値を設定(本実施形態では0[W]〜18[W]の範囲)するため操作スイッチを備え、操作スイッチを操作して設定した第1設定値(パワー上限値)を制御装置9に出力する。第2の入力装置8bは、ユーザが1/2波長板3の回動角度を設定(本実施形態では0度〜45度の範囲)するため操作スイッチを備え、操作スイッチを操作して設定した第2設定値(回動角度値)を制御装置9に出力する。
【0032】
制御装置9は、中央処理装置(CPU)を備え、第1の入力装置8aから出力された第1設定値、及び、第2の入力装置8bから出力された第2設定値を入力する。制御装置(CPU)9は記憶装置10に記憶した制御プログラム及びアプリケーションプログラムに従って、回動装置6及びレーザ駆動装置7を介して、1/2波長板3の回動制御やレーザ発振器2の駆動制御等、各種の処理動作を実行するようになっている。
【0033】
詳述すると、制御装置(CPU)9は、第2の入力装置8bから入力した第2設定値(回動角度値)に基づいて、回動装置6(ステッピングモータ)を駆動して、1/2波長板3を第2の入力装置8bで指定した第2設定値(回動角度値)に回動させる。つまり、1/2波長板3を回動させて、偏光ビームスプリッター4に対する1/2波長板3の相対回動角度を、第2設定値(回動角度値)で指定した回動角度にする。
【0034】
従って、例えば、図2に示すように、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワーが最大の18[W]とのとき、1ステップ2.5度の単位で回動角度を増減させると、レーザ発振器2から出射したレーザ光のパワーが1[W]の単位で増減する。その結果、0[W]〜18[W]の範囲において、1[W]単位の18段階で所望のパワーに段階的に調整される。
【0035】
一方、制御装置(CPU)9は、第1の入力装置8aから入力した第1設定値(パワー上限値)に基づいて、レーザ駆動装置7からレーザ発振器2の励起光を出射する半導体レーザに、第1の入力装置8aで指定した第1設定値(パワー上限値)に相応する駆動電流を供給させて、レーザ発振器2から第1の入力装置8aで指定した第1設定値(パワー上限値)のパワーのレーザ光を出射せる。
【0036】
従って、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワー上限値を、0[W]〜18[W]の範囲で調整することができる。その結果、例えば、図3に示すように、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワー上限値を、最大の18[W]からその半分の9[W]にすることができる。
【0037】
このとき、1/2波長板3は、パワー上限値が9[W]のときも18[W]のときと同様に、0°〜45°の範囲を、2.5度の単位で18段階に回動角度が段階的に設定される。従って、レーザ発振器2から出射したレーザ光のパワーは、0.5[W]の単位で増減することになる。その結果、0[W]〜9[W]の範囲において、0.5[W]単位の18段階で所望のパワーに段階的に調整される。
【0038】
ガルバノミラー11は、偏光ビームスプリッター4と加工対象物12との間に配置される。ガルバノミラー11は、図示しないモータ等からなる駆動源にて駆動される。その駆動速度は、駆動を開始してから予め設定されている一定の駆動速度に到達するまで、つまり、マーキングする際の書き出し部分で加速するように構成されている。
【0039】
上記した回動装置6は、ガルバノミラー11の駆動速度が一定の駆動速度に到達するまでの加速途中であるときには、レーザ光のパワーがユーザにより設定された設定値まで徐々に大きくなるように、1/2波長板3を回動させる。
【0040】
つまり、回動装置6はガルバノミラー11の駆動速度が一定の駆動速度に到達するまでの加速途中であるときは、加工対象物12上でのマーキング濃度が全ての箇所で均一となるように、1/2波長板3を回動させる。これにより、偏光ビームスプリッター4を通過したレーザ出力がガルバノミラー11を介して加工対象物12に照射され、多種多様な文字、記号、図形等がマーキングされる。
【0041】
次に、上記のように構成した実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、1/2波長板3の回動角度(第2設定値)を指定して、レーザ発振器2から出力されたレーザ光のパワーを、段階的に調整する第1の入力装置8aとともに、レーザ発振器2から出力するレーザ光のパワーのパワー上限値(第1設定値)を指定する第1の入力装置8aを設けた。
【0042】
そして、第1の入力装置8aで設定したパワー上限値に基づいて、制御装置9は、レーザ駆動装置7を介してレーザ発振器2を駆動制御し、レーザ発振器2から第1の入力装置8aで設定したパワー上限値のレーザ光を出射させるようにした。
【0043】
従って、加工対象物12の材質に応じて、第1の入力装置8aにてレーザ発振器2から出射するレーザ光のパワー上限値を変更することができる。例えば、加工対象物12が金属に場合には、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワー上限値を18[W]とし、加工対象物12が樹脂に場合には、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワー上限値を9[W]とすることができる。
【0044】
このとき、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワーが、それぞれ18[W]又は9[W]であっても、レーザ発振器2から出射されたレーザ光のパワーを、共に第2の入力装置8bにてそれぞれ18段階で段階的に光学的に調整できる。
【0045】
しかも、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワーが、0[W]〜18[W]と大きな範囲の場合には、1[W]に単位で段階的に、0[W]〜9[W]と小さな範囲の場合には、0.5[W]に単位で段階的に調整できようにした。従って、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワーに応じて、段階的に調整できる単位が変更されるので、加工対象物12の材質が変わっても、精度の高い加工を行うことができる。
【0046】
(2)上記実施形態によれば、レーザ発振器2に備えた励起光を出射する半導体レーザに対して、レーザ駆動装置7から駆動電流を出力し、半導体レーザが出射する励起光のパワーを調整して、指定された上限値パワーのレーザ光をレーザ発振器2から出射させるようにした。従って、レーザ発振器2から種々のパワーのレーザ光を、電気的制御にて出射させることができことから、そのパワーの調整制御が非常に容易に行える。
【0047】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、レーザ発振器2から出射したレーザ光を、光学的にパワー調整するため、偏光ビームスプリッター4に対して1/2波長板3を回動装置6にて回動させた。これを、1/2波長板3に対して偏光ビームスプリッター4を例えば回動装置6にて回動させて実施してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、レーザ発振器2から出射するレーザ光の最大パワーを、18[W]としたが、これに限定されるのではなく、レーザ光の最大パワーを18[W]を超えるパワーにて実施したり、又は、レーザ光の最大パワーを18[W]未満のパワーで実施してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、レーザ発振器2に備えた励起光を出射する半導体レーザに対して、レーザ駆動装置7から駆動電流を出力して、レーザ発振器2から出射するレーザ光のパワー上限値を調整するようにした。これを、レーザ発振器2から出射されたレーザ光のパワー上限値を、1つの偏光板を使って変更してもよい。
【0050】
例えば、図4に示すように、レーザ発振器2と1/2波長板3(図4に図示せず)との間に、第2偏光部材としての偏光板31を配置する。偏光板31は、レーザ発振器2から出射されたレーザ光の光軸Cに対して垂直かつ該光軸Cを回動中心に回動可能に設けられている。
【0051】
そして、レーザ発振器2と偏光板31は、それぞれの図示しないステッピングモータにて、光軸Cを回動中心に回動されるようになっている。各ステッピングモータは、モータ駆動回路を介して制御装置9に駆動制御されるようになっている。制御装置9は、第1の入力装置8aで指定したパワー上限値に基づく制御信号を各モータ駆動回路に出力し、各モータ駆動回路を介して各ステッピングモータを駆動しレーザ発振器2と偏光板31を目的の回動角度にするようになっている。
【0052】
このとき、偏光板31のステッピングモータによる1ステップによる該偏光板31の1ステップ回動角度θ1は、レーザ発振器2のステッピングモータによる1ステップによる該レーザ発振器2の1ステップ回動角度θ2と、同一になるように設定されている。
【0053】
しかも、レーザ発振器2と偏光板31の回動方向の相対位置が、その1ステップ回動角度θ1(=θ2)の1/2の角度(=θ1/2)だけ位相をずらして配置されている。
そして、レーザ発振器2と偏光板31の相対回動位置を、0度から90度の範囲で変更すると、レーザ発振器2から1/2波長板3に出射するレーザ光のパワー上限値を変更することができる。
【0054】
しかも、レーザ発振器2と偏光板31との回動方向の相対位置が、その1ステップ回動角度θ1(=θ2)の1/2の角度(=θ1/2)だけ位相をずらして回動させることができるので、ずらさないで段階的にパワー調整する場合と比べて、2倍の分解能でもって段階的にパワー調整することができる。
【0055】
また、図5に示すように、偏光板31と1/2波長板3(図5に図示せず)との間に、新たな偏光部材32を設ける。そして、偏光板31と偏光板32を、レーザ発振器2から出射されたレーザ光の光軸Cに対して垂直かつ該光軸Cを回動中心に回動可能に設ける。
【0056】
そして、各偏光板31,32は、前記と同様に、それぞれの図示しないステッピングモータにて、光軸Cを回動中心に回動させるようにすれば、レーザ発振器2から1/2波長板3に出射するレーザ光のパワー上限値を変更することができる。
【0057】
さらに、偏光板32を省略し、偏光板32に替えて偏光ビームスプリッター4にして、偏光ビームスプリッター4を偏光板31と協働して、レーザ発振器2から出射されたレーザ光のパワー上限値を変更してもよい。この場合、まず、偏光板31と偏光ビームスプリッター4との間の相対回動位置を設定して、レーザ光のパワー上限値を設定した後に、1/2波長板3を回動させて偏光ビームスプリッター4に対して相対回動位置を調整すれば、部品点数を減らして、光学的にレーザ光のパワーを調整することができる。
【0058】
・上記実施形態では、ユーザが、第1の入力装置8aの操作スイッチを操作してレーザ光のパワー上限値を変更するようにした。
これを、記憶装置10に、複数の加工対象物の材質12毎に、レーザ発振器2から出射されるレーザ光の最適パワーのデータ(パワー上限値のデータ)を予め記憶する。第1の入力装置8aは、材質選択手段として加工対象物12の材質を適宜選択して入力できるようにする。
【0059】
例えば、ステンレス(SUS)、アルマイト、ポリカーボネイト等毎に最適なパワー上限値のデータを予め記憶装置10に記憶する。一方、第1の入力装置8aには、ステンレス(SUS)、アルマイト、ポリカーボネイト等の加工対象物12の材質名が指標されたスイッチを設ける。
【0060】
そして、第1の入力装置8aにて、加工対象物12の材質名を入力すると、制御装置9は、第1の入力装置8aにて入力した材質に対するパワー上限値のデータを読み出す。制御装置9は、その記憶装置10から読み出した最適パワー上限値のデータに基づいて、第1の入力装置8aで入力した加工対象物の最適なパワー上限値となるレーザ光がレーザ発振器2から出射するための制御信号をレーザ駆動装置7に出力する。レーザ駆動装置7は、この制御信号に基づいて、第1の入力装置8aにて入力した材質名に対するパワー上限値をレーザ発振器2から出射させるための駆動電流をレーザ発振器2に供給する。
【0061】
従って、ユーザは、加工対象物の材質を選択入力するだけで、加工対象物の材質毎に最適なパワー上限値となるレーザ光をレーザ発振器2から出射させることができ、高度で熟練を必要とするレーサ加工作業の前工程を短時間にしかも高い精度で行うことができる。
【0062】
また、材質の選択は、第2の入力装置8bで行っても良い。この場合、回動装置6を駆動制御して、光学的にパワー調整が行われる。さらに、回動装置6及びレーザ駆動装置7の両方を適宜制御して、レーザのパワーを調整してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、1/2波長板3を1ステップを2.5度としたが、これに限定されるものではなく、適宜変更して実施してもよい。
・上記実施形態では、波長板として1/2波長板3を用いたが、他の波長板、例えば1/4波長板等を用いて実施してもよい。この場合、1/4波長板を0度〜90度の範囲で回転させることで、レーザ発振器2から出射されるレーザ光のパワーを0%〜100%の間で変更される。
【0064】
・上記実施形態では、1/2波長板3を偏光ビームスプリッター4に対して回動させるようにしたが、偏光ビームスプリッター4を1/2波長板3に対して回動させるように実施してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、本発明のレーザ加工装置をレーザマーキング装置に具体化したが、例えば、加工対象物の表面に溝を形成するレーザ加工装置等に応用してもよい。この場合、精度の高い深さの溝を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態のレーザマーキング装置の概略構成図。
【図2】レーザ発振器から出射するレーザ光のパワーが18[W]のときの、1/2波長板の回動角度に対するレーザ発振器から出射されたレーザ光のパワーを説明する図。
【図3】レーザ発振器から出射するレーザ光のパワーが9[W]のときの、1/2波長板の回動角度に対するレーザ発振器から出射されたレーザ光のパワーを説明する図。
【図4】本発明の別例を説明するためのレーザマーキング装置の要部概略構成図。
【図5】本発明の別例を説明するためのレーザマーキング装置の要部概略構成図。
【図6】従来を説明するための、1/2波長板の回動角度に対するレーザ発振器から出射されたレーザ光のパワーの説明図。
【符号の説明】
【0067】
1…レーザマーキング装置、2…レーザ発振器、3…1/2波長板、4…偏光ビームスプリッター、5…レーザ駆動装置、6…回動装置、8a…第1の入力装置、8b…第2の入力装置、9…制御装置、10…記憶装置、11…ガルバノミラー、12…加工対象物、31,32…偏光板、C…光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ発生手段と、
前記レーザ発生手段から出射されるレーザ光のパワーを外部からの操作で変更可能に設定する第1のパワー調整手段と、
前記レーザ発生手段から入射したレーザ光のうち、予め定めた偏光方向のレーザ光のみを出射させる光通過手段と、
前記レーザ発生手段及び前記光通過手段のうちの少なくとも1つをレーザ光の光軸を回動中心として回動させ、前記レーザ発生手段と前記光通過手段との相対的な回動角度を変更するための回動手段と、
前記回動手段によって前記レーザ発生手段及び前記光通過手段のうちの少なくとも1つを回動させることで、前記光通過手段を通過し加工対象物に照射するためのレーザ光のパワーを光学的に調整可能とする外部から操作可能な第2のパワー調整手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記回動手段は、前記光通過手段を前記レーザ発生手段に対してレーザ光の光軸を回動中心として回動させるようにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工装置において、
前記第2のパワー調整手段における前記光通過手段には、
前記レーザ発生手段から出射された前記レーザ光の光軸を回動中心として回動される波長板と、
前記波長板を通過したレーザ光のうち、予め定めた偏光方向のレーザ光のみを通過させる第1偏光部材と
が設けられ、
前記回動手段を駆動させて、前記波長板を、前記光軸を回動中心に回動させることで、前記波長板と前記第1偏光部材との相対的な回動角度に応じて、前記加工対象物に照射するためのレーザ光のパワーを光学的に調整することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ発生手段には、
レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光のうち、予め定めた偏光方向のみを通過させる第2偏光部材と
が設けられ、
前記第1のパワー調整手段は、前記第2偏光部材及び前記レーザ光源の少なくとも一方を、前記光軸を回動中心に回動させて光軸周りの相対回動角度を変更することにより、前記レーザ光源から出射されるレーザ光のパワーを変更可能とすることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工装置において、
前記第2偏光部材と前記レーザ光源はそれぞれ所定の1ステップ回動角度で回動し、
前記第2偏光部材の1ステップ回動角度と、前記レーザ光源の1ステップ回動角度が同一ステップ角度で設定されているとともに、
前記第2偏光部材と前記レーザ光源とが、前記1ステップ回動角度の1/2の回動角度ずらして配置されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ発生手段には、
レーザ光源と、
前記レーザ光源を駆動するレーザ駆動手段と
が設けられ、
前記第1のパワー調整手段は、前記レーザ駆動手段の駆動信号を変更させることにより、前記レーザ光源から出射されるレーザ光のパワーを変更可能とすることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、
複数の材質毎に、その材質に照射するためのレーザ光の最適パワーのデータを記憶する記憶手段と、
前記複数の材質を選択する材質選択手段と
を備え、
前記第1及び第2のパワー調整手段の少なくとも一方が、前記材質選択手段で選択された材質に対する前記記憶手段に記憶される最適パワーのデータを読み出し、その読み出した最適パワーのデータに基づいて前記レーザ発生手段から出射されるレーザ光のパワー、又は、前記光通過手段を通過し加工対象物に照射するためのレーザ光のパワーを設定することを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−262223(P2009−262223A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118283(P2008−118283)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】