説明

レーダ装置の校正方法、レーダ装置、監視システム、プログラム

【課題】 監視対象の交通路における列車の運行規制や道路の通行規制を行うことなく、簡便かつ低コストかつ短期間に校正作業を行う。
【解決手段】 鉄道50と道路60が交差する踏切51を監視する複数のレーダ装置10を設置する際に、鉄道50を走行する列車52の移動軌跡を個々のレーダ装置10にて実測することで鉄道50の位置を認識し、レーダ装置10のローカル座標系10aにて測定された障害物の測定データを、鉄道50の側の交通路座標系50aに変換するための変換マトリックス71を生成する校正処理を個々のレーダ装置10の内部で自律的に行う。校正用のリフレクタ等の標的を踏切51内に置くために鉄道50を運行規制する必要がなく、また、レーダ装置10の設置数が増えても校正作業の工数や期間が増加することもなく、簡便かつ低コストかつ短期間に校正作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置の校正方法、レーダ装置、監視システム、プログラムに関し、特に、鉄道や道路等の交通路に設置され、対象物までの距離を測定することで障害物等の監視を行うレーダ装置の校正技術等に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、鉄道の踏切や道路などの交通路における障害物の監視は、事故防止の観点から重要である。このため、従来から、たとえば特許文献1のように、交通路の近傍にレーダを設置し、このレーダで交通路上の障害物などを検知して、その情報を列車・車両・管理者に提供することにより、事故軽減を図ることが行われている。
【0003】
このような、交通路で障害物などを検知するレーダ装置では、障害物の有無や位置を正確に検出するためには、監視対象の交通路に対する設置方向や設置位置等を校正することが必要である。
【0004】
すなわち、障害物を検知するためには、レーダ装置内のローカル座標を、監視対象の踏切や道路等の交通路の地図座標に変換するために、両座標間の座標変換を行うための変換マトリックスを求める校正作業を行う必要がある。レーダ装置の設置位置については、レーダ装置自体のセンサ(障害物検出機能)を起動せずとも、測量などで得られる。しかし、設置方向は、センサを起動しないと得にくい。また、画像監視装置と異なり、レーダ装置では反射物がないと校正できない。
【0005】
これまでは、レーダ装置を設置する作業時に、リフレクタなどの標的物体を監視対象の踏切内や道路内の特定位置に置いて検出することで校正する必要があった。この校正作業は、レーダ装置を設置後、踏切や道路内に作業者が立ち入ってリフレクタを設置する作業を行うため、列車の運行規制や道路の通行規制を行う必要があり、準備作業等に時間やコストが掛かる、という問題があった。さらにレーダ装置の設置台数が増えると、その台数分だけ、上述の校正作業を繰り返し行う必要があり、作業者の工数等で多大なコストを要していた。
【0006】
なお、特許文献2には、ミリ波センサにおける雨、霧、気温や背景等のノイズ対策は開示されているが、設置作業における上述の課題については全く認識されていない。
【特許文献1】特開2002−99986号公報
【特許文献2】特開2002−257927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、監視対象の交通路における列車の運行規制や道路の通行規制を行うことなく、簡便かつ低コストかつ短期間に校正作業を行うことが可能なレーダ装置の校正技術を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、校正のための特別な標的物体を交通路に配置する等の煩雑な作業を必要とすることなく、低工数、低コストにて、校正作業を行うことが可能なレーダ装置の校正技術を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、レーダ装置の設置台数の増加に関係なく、低工数、低コストにて、校正作業を行うことが可能なレーダ装置の校正技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、交通路を監視するレーダ装置の校正方法であって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正するレーダ装置の校正方法を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、交通路を監視するレーダ装置であって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含むレーダ装置を提供する。
【0012】
本発明の第3の観点は、交通路を監視する複数のレーダ装置と、情報ネットワークを介して前記レーダ装置を統合して管理する統合管理装置とを含む監視システムであって、個々の前記レーダ装置は、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含む監視システムを提供する。
【0013】
本発明の第4の観点は、交通路を監視する複数のレーダ装置と、情報ネットワークを介して前記レーダ装置を統合して管理する統合管理装置とを含む監視システムであって、前記統合管理装置は、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含む監視システムを提供する。
【0014】
本発明の第5の観点は、交通路を監視するレーダ装置に備えられたコンピュータを制御するプログラムであって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する機能を前記コンピュータに実現させるプログラムを提供する。
【0015】
列車や車両等の移動体は、線路や道路等の交通路に沿って移動する。本発明では、列車や車両の位置や軌跡をレーダ装置で検知して交通路の位置情報を把握し、この情報でレーダ装置のローカル座標と、監視対象である踏切や道路等の交通路の座標との間の変換マトリックスを求める校正作業を行う。
【0016】
これにより、レーダ装置の設置時の校正作業のために、列車の運行規制や道路の通行規制を行う必要がなくなり、コストや、所要時間、所要工数等削減できる。また、標的物体を配置するための煩雑な作業や、作業員等も全く不要となる。また、レーダ装置の設置台数が多い場合でも、個々のレーダ装置が自律的に校正作業を行うので、校正作業に伴う工数やコストの増加が発生することもない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、監視対象の交通路における列車の運行規制や道路の通行規制を行うことなく、簡便かつ低コストかつ短期間に校正作業を行うことが可能なレーダ装置の校正技術を提供することができる。
【0018】
また、校正のための特別な標的物体を交通路に配置する等の煩雑な作業を必要とすることなく、低工数、低コストにて、校正作業を行うことが可能なレーダ装置の校正技術を提供することができる。
【0019】
また、レーダ装置の設置台数の増加に関係なく、低工数、低コストにて、校正作業を行うことが可能なレーダ装置の校正技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施の形態であるレーダ装置を含む監視システムの設置例を示す概念図、図3は、本発明の一実施の形態である監視システムの全体構成の一例を示す図、図4は本実施の形態のレーダ装置の構成の一例を示す概念図、図5は、本実施の形態の統合管理装置の構成の一例を示す概念図である。
【0021】
図3に例示されるように、本実施の形態の監視システムは、監視対象に設置される複数のレーダ装置10と、これらを統合して管理する複数の統合管理装置20と、これらを接続する情報ネットワーク30を含んでいる。
【0022】
複数のレーダ装置10は、たとえば、図1に例示されるように、鉄道50が道路60に交差する踏切51を監視すべく、踏切51の近傍に、レーダ計測範囲10bが踏切51をカバーするように設置され、たとえば、踏切51を通過する車両61や歩行者63等が、鉄道50を走行する列車52の障害にならないように監視する。
【0023】
すなわち、この図1の例では、レーダ装置10設置することにより、自律的に踏切51内の障害物(たとえば、踏切51内に倒れこんだ歩行者63、立ち往生した車両61など)や道路60の障害物を検知する。
【0024】
なお、この図1では、個々のレーダ装置10はレーダ計測範囲10bに広角にビームを発し、距離のみ測り、複数のレーダ装置10から得られる距離情報により、三角測量で踏切51内の障害物等の位置を測定する場合が例示されている。この場合、レーダ装置10の設置方向は、広角に発射されるビームの中心方向である。
【0025】
一方、図2は、道路60の近傍に一台のレーダ装置10を設置し、レーダ計測範囲10bの範囲に狭角ビームを発し、この狭角ビームを道路60の幅、すなわち複数の車線62の配列方向にスキャンすることにより、道路60上の車両61や障害物等の位置を測定する場合が示されている。この場合、レーダ装置10の設置方向は、おおよそスキャン範囲の中心方向である。
【0026】
ところで、図1または図2のようにレーダ装置10を現場に設置した場合、レーダ装置10に固有のローカル座標系10aを、鉄道50を含む設置環境に固有の交通路座標系50aに変換する変換マトリックス71を求めるための校正作業が必要であるが、本実施の形態では、後述のように、レーダ装置10、または、レーダ装置10を統合して管理する統合管理装置20のいずれかで、鉄道50を走行する列車52や、道路60を走行する車両61の位置を検出して自律的にこの校正処理が行われる。
【0027】
このため、従来のように、鉄道50における列車52の運行規制や、道路60における車両61の通行規制を行って、作業員がリフレクタ等の標的物体を踏切51内等に配置して行われていた煩雑な校正作業は全く不要となる。
【0028】
図4に例示されるように、本実施の形態のレーダ装置10は、全体の動作を制御するMPU15、ミリ波等のレーダ波の送受信を行うための、アンテナ11、RFユニット12、送受信回路13およびディジタル信号処理プロセッサ(DSP)14を備えている。
【0029】
MPU15には、バス15aを介してRAM16、ROM17、およびネットワークインターフェイス18、校正スイッチ19等が接続されている。
ROM17には、レーダ装置10の全体を管理する制御プログラムや、MPU15にて自律的に設置環境に対する自装置の校正作業を行うための校正プログラム17aが格納されており、これらのプログラムをMPU15が実行することで、レーダ装置10の内部における後述のような自律的な校正処理を行うことが可能になっている。
【0030】
RAM16は、MPU15の動作において、処理データや送受信データの一時的な格納等を行うための作業領域として用いられる。ネットワークインターフェイス18は情報ネットワーク30に接続され、統合管理装置20との間におけるコマンドやデータの授受を制御する。
【0031】
そして、アンテナ11、RFユニット12、送受信回路13およびDSP14、MPU15により、たとえば、本件の出願人の出願になる、特開2002−257927号公報、および特開2003−177178号公報の技術を用いて、アンテナ11にて送受信されるミリ波の送受信信号を処理することで、障害物等の各物体との距離、相対速度や位置、さらには受信電力等の情報が算出されて計測される。
【0032】
すなわち、レーダ装置10により、ミリ波を列車52や車両61等の計測対象物に対して発信し、この場合、三角波変調を施した送信信号を用い、その受信信号からビート信号(周波数)の生成を行い、送信信号の上昇区間と下降区間のそれぞれについてフーリエ変換で周波数領域に変換し、計測対象物の速度Vと距離Dを同時に検出する。
【0033】
ここでの検出処理方法としては、上昇区間と下降区間との受信電力ピークの対応を調整するペアリングにより行われる。また、ノイズ対策として、このペアリングの信号処理においては、長時間背景データと短時間背景データとを観測し、これら長時間・短時間背景データから周波数と電力の増幅率を求め、この増幅率を用いて新たに入力されたデータを増幅することにより補正を行い、長期背景データを用いて多値しきい値を生成し、この多値しきい値を用いて、しきい値処理を行うとともにピーク検出を行い、検出されたピークを用いて周波数に応じたラベリングを行い、このラベリングにより求めたラベルの重心周波数、重心方向または平均周波数、平均方向などの属性を求め、ラベルの重心方向を用いて、その方向に沿って対応するラベルの探索によりペアリングを行う。これにより、列車52や車両61等の位置や速度等の検出を精度よく行うことができる。
【0034】
このようにしてレーダ装置10で計測される物体の位置等の情報は、個々のレーダ装置10に固有のローカル座標系10aに基づくものであり、障害物等の物体の位置情報を、鉄道50や道路60の、交通路座標系50a、交通路座標系60a(たとえば、地図上の座標系)に変換するための変換マトリックス71を、校正プログラム17aにより得る。
【0035】
なお、障害物を検知するレーダ装置10の検知距離は、せいぜい200m程度であり、鉄道50の線路、幹線道路、ハイウェイなどの道路60は、ほぼ直線に近似できる。車両61や列車52は、道路60や鉄道50の線路に沿って走行するので、走行軌跡を求め、その軌跡の方向でアンテナ11(レーダ装置10)の方向を求め、レーダ装置10のローカル座標系10aから線路・道路の交通路座標系50a、交通路座標系60aの座標の校正を行う。
【0036】
なお、レーダ装置10における校正プログラム17aによる校正処理の開始は、設置時に、作業者が随時、校正スイッチ19を操作して指示することができる。また、後述の図7のフローチャートのように、制御プログラムや校正プログラム17aの処理中に、ソフトウェア的に、定期的/不定期的に起動することもできる。また、情報ネットワーク30を経由して、上位の統合管理装置20の側からレーダ装置10にコマンドを発行して起動指示することもできる。
【0037】
図5に例示されるように、本実施の形態の統合管理装置20はコンピュータで構成され、全体を制御するMPU21、MPU21に実行させるプログラムやデータが格納される主記憶22、レーダ装置10から収集したデータ等が格納される外部記憶装置23、ディスプレイ24、キーボード等の入力装置25、情報ネットワーク30に接続されるネットワークインターフェイス26、可搬媒体ドライブ27、これらを相互に接続するバス28、等で構成されている。
【0038】
主記憶22には、オペレーティングシステム41、このオペレーティングシステム41の上で動作するレーダ装置制御プログラム42および統合監視プログラム43が格納されている。
【0039】
レーダ装置制御プログラム42や統合監視プログラム43は、可搬媒体29に格納されて流通し、必要に応じて可搬媒体29を可搬媒体ドライブ27に装填することで、読み出され、外部記憶装置23を経由して、あるいは直接に主記憶22に実装されて実行される。
【0040】
レーダ装置制御プログラム42は、配下の複数のレーダ装置10を情報ネットワーク30を介して制御し、個々のレーダ装置10から、図6に例示されるような観測情報31の収集を行う。なお、統合管理装置20にて後述の個々のレーダ装置10に関する校正処理を行う場合には、このレーダ装置制御プログラム42にて、個々のレーダ装置10毎の変換マトリックス71の生成が行われる。
【0041】
統合監視プログラム43は、レーダ装置制御プログラム42にて複数のレーダ装置10から収集された情報に基づいて、監視対象の踏切51等の状況を監視/判断し、結果を、監視システムの管理者、列車52や車両61の運転手等に通報する動作を行う。
【0042】
レーダ装置10から統合管理装置20に送出される観測情報31は、一例として図6に例示されるフォーマットが用いられる。観測情報31は、当該観測情報31の開始位置を示すスタート信号32、どのレーダ装置10から送信されたかを識別するための識別子33、観測時刻を示すタイムスタンプ34、観測情報31に含まれるデータの個数を示すデータ数35、実際に観測された複数の測定データ36、および観測情報31の終わりを示す終了信号37からなる。
【0043】
個々の測定データ36は、検出された障害物等の物体に関する位置情報36a、速度情報36b、および受信電力36c等の情報を含んでいる。これらの測定データ36は、校正処理をレーダ装置10で行う場合には、交通路座標系50aや交通路座標系60aに基づく値に変換済となっている。また、統合管理装置20の側で校正処理を行う場合には、レーダ装置10から出力される、これらの測定データ36は、ローカル座標系10aに基づく値のままとなっている。
【0044】
以下、図7および図8等のフローチャートを参照して、本実施の形態におけるレーダ装置10の校正処理の一例について説明する。
監視対象の鉄道50や道路60の近傍に設置されたレーダ装置10では、電源投入等にて起動されると(ステップ101)、ROM17に格納された制御プログラムにて、レーダ装置10の各部の動作チェックが行われ(ステップ102)、さらに、校正プログラム17aにて、後述の図8のフローチャート等に例示されるレーダ装置10の設置位置/設置方向の校正処理が実行される(ステップ103)。
【0045】
その後、温度補償等の他の校正処理が行われた後(ステップ104)、アンテナ11からのレーダ計測範囲10bへのミリ波の送受信による監視対象領域の測定処理(ステップ105)、および検知処理(ステップ106)が行われ、検知結果を観測情報31として、上位の統合管理装置20に出力する処理(ステップ107)が行われ、このステップ105〜ステップ107が反復される(ステップ108)。
【0046】
そして、稼働中に、ステップ108にて、予め設定された周期、あるいは随時の校正スイッチ19の押下、または統合管理装置20からのコマンドによる校正処理の開始指示が検出されると、ステップ102に戻って、ステップ103の校正処理を含む初期化処理が実行される。
【0047】
ステップ103の処理をさらに詳細に例示したものが図8のフローチャートである。すなわち、レーダ装置10における自律的な校正処理では、まず、第1の処理として、レーダ装置10自身による列車52や車両61の検出(ステップ201)を行う。
【0048】
上述のようにして収集された車両61の離散的な車両位置61aを一つのグラフにプロットしたイメージを図9に示す。車両61は道路60沿いに走行するので、軌跡の方向と道路の方向は平行になる。この図2は、道路60を監視する場合を想定しているので、車線62の中央に車両61の車両位置61aの検出結果が多いが、車線変更中の車両61もいるので、車線62の境界の白線上に車両61がいる(車両位置61aが検出される)こともある。列車52の場合は線路上なので、正確に直線上に並ぶ。
【0049】
第2の処理として、軌跡を抽出する(ステップ202)。鉄道50を走行する列車52の場合は、線路に沿って一直線上に並ぶので得られた車両検出位置で最小二乗法などを用い、直線を近似すればよい。
【0050】
一方、道路60が監視対象の場合は、車線62の境界の白線上の車両検出結果(車両位置61a)、つまり直線上にのっていないデータを排除する必要がある。これらにはハフ変換を用いる。
【0051】
直線の式は、たとえば以下の2式とする。
【0052】
【数1】

【0053】
【数2】

【0054】
(1)式を用いたハフ変換のイメージを図10に示す。離散的に得られた複数の車両位置(x0,y0)〜(xn,yn)を用いて、係数領域で、(3)式で示される複数の直線の作図を行う。
【0055】
【数3】

【0056】
それらの線の係数領域での集積点は(a0,b0)である。
(2)式を用いたハフ変換のイメージを図11に示す。得られた車両位置(x0,y0)〜(xn,yn)を用いて、係数領域で(4)式で示される複数の曲線に関する作図を行う。
【0057】
【数4】

【0058】
それらの線の係数領域での集積点は(θ0,ρ0)である。
最後に、校正パラメータを抽出する(ステップ203)。交通路座標系50a(交通路座標系60a)とローカル座標系10aとの間における位置の変換係数は、レーダ装置10の設置位置から求める。すなわち、交通路座標系50a(交通路座標系60a)の原点と、レーダ装置10の設置位置(ローカル座標系10aの原点)の差分(Δx,Δy)が変換係数となる。
【0059】
交通路座標系50a(交通路座標系60a)とローカル座標系10aとの間におけるレーダ装置10の設置方向(アンテナ11の向き)の変換係数は、上記の図11の係数領域の集積点でのθ0から求める。すなわち、このθ0が、交通路座標系50a(交通路座標系60a)に対するローカル座標系10aの傾きを表す。
【0060】
ただし、道路60が高速道の場合では車線62が複数であり、図12のように、係数領域で複数の集積点が出力される。そこで、集積点をθ方向に投影して、θ1を求める。この場合は、θ1が交通路座標系50a(交通路座標系60a)に対するローカル座標系10aの傾きを表す。
【0061】
従って、上述の差分(Δx,Δy)と、θ0またはθ1に基づいて、変換マトリックス71を構成すれば、ローカル座標系10aで得られるレーダ装置10の測定値を、交通路座標系50a(交通路座標系60a)に正確に換算する校正処理が可能となる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態によれば、レーダ装置10による監視対象の鉄道50や道路60等の交通路における列車52や車両61の移動軌跡を当該レーダ装置10にて実測することで、ローカル座標系10aで得られるレーダ装置10の測定値を、交通路座標系50a(交通路座標系60a)に正確に換算するための変換マトリックス71を得る校正作業が、レーダ装置10の内部で自律的に行われる。
【0063】
このため、たとえば、校正作業のためのリフレクタ等の設置や測定のために、監視対象の鉄道50における列車52の運行規制や、道路60における車両61の通行規制を行う必要が全くなくなり、簡便かつ低コストかつ短期間にレーダ装置10の校正作業を行うことが可能となる。このように、本実施の形態では、従来方式に比べ、自律的に変換マトリックスが求まり、レーダ装置10の設置や保守管理作業等におけるコスト節減に寄与できる。
【0064】
また、校正のための特別な標的物体を鉄道50や道路60等の交通路に配置する等の煩雑な作業を必要としないため、低工数、低コストにて、校正作業を行うことが可能となる。
【0065】
また、個々のレーダ装置10で自律的に校正作業が行われるため、レーダ装置10の設置台数が増加しても校正作業の工数や所要時間が増加することがなく、低工数、低コストにて、校正作業を行うことが可能となる。
【0066】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、レーダ装置10や統合管理装置20の構成は一例であり、上述の実施の形態に限定されるものではない。
【0067】
また、交通路としては、鉄道50、道路60等に限らず、物流工程における物品の運搬軌道等、一般の交通路の障害物検出に広く適用できる。また、校正に用いる移動体としては、道路60を移動する歩行者63でもよく、運搬軌道を移動する物品でもよい。
【0068】
(付記1)
交通路を監視するレーダ装置の校正方法であって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正することを特徴とするレーダ装置の校正方法。
【0069】
(付記2)
付記1記載のレーダ装置の校正方法において、前記交通路を通過する前記移動体の離散的な位置を直線に近似して、当該直線を検出することにより前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正することを特徴とするレーダ装置の校正方法。
【0070】
(付記3)
付記1記載のレーダ装置の校正方法において、前記交通路を通過する前記移動体の離散的な位置を用いて、一般的な直線の式の係数でハフ変換を行うことで、前記移動体の軌跡を示す直線を検出することにより、前記レーダ装置の設置方向および/または位置を校正することを特徴とするレーダ装置の校正方法。
【0071】
(付記4)
付記1記載のレーダ装置の校正方法において、前記交通路を通過する前記移動体の離散的な位置を用いて、三角関数表示による直線の正規方程式の係数でハフ変換を行うことで、前記移動体の軌跡を示す直線を検出することにより、前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正することを特徴とするレーダ装置の校正方法。
【0072】
(付記5)
交通路を監視するレーダ装置であって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含むことを特徴とするレーダ装置。
【0073】
(付記6)
交通路を監視する複数のレーダ装置と、情報ネットワークを介して前記レーダ装置を統合して管理する統合管理装置とを含む監視システムであって、
個々の前記レーダ装置は、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含むことを特徴とする監視システム。
【0074】
(付記7)
交通路を監視する複数のレーダ装置と、情報ネットワークを介して前記レーダ装置を統合して管理する統合管理装置とを含む監視システムであって、
前記統合管理装置は、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含むことを特徴とする監視システム。
【0075】
(付記8)
交通路を監視するレーダ装置に備えられたコンピュータを制御するプログラムであって、
前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する機能を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【0076】
(付記9)
交通路を監視する複数のレーダ装置と、情報ネットワークを介して前記レーダ装置を統合して管理する統合管理装置とを含む監視システムにおいて、前記統合管理装置を構成するコンピュータを制御するプログラムであって、
前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する機能を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態であるレーダ装置を含む監視システムの設置例を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるレーダ装置を含む監視システムの設置例を示す概念図である。
【図3】本発明の一実施の形態である監視システムの全体構成の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の一実施の形態であるレーダ装置の構成の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の一実施の形態である統合管理装置の構成の一例を示す概念図である。
【図6】本発明の一実施の形態であるレーダ装置から出力される観測情報のフォーマット例を示す概念図である。
【図7】本発明の一実施の形態であるレーダ装置の作用の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施の形態であるレーダ装置の校正処理の作用の一例を示す概念図である。
【図9】本発明の一実施の形態であるレーダ装置の校正処理の作用の一例を示す概念図である。
【図10】本発明の一実施の形態であるレーダ装置の校正処理の作用の一例を示す線図である。
【図11】本発明の一実施の形態であるレーダ装置の校正処理の作用の一例を示す線図である。
【図12】本発明の一実施の形態であるレーダ装置の校正処理の作用の一例を示す線図である。
【符号の説明】
【0078】
10 レーダ装置
10a ローカル座標系
10b レーダ計測範囲
11 アンテナ
12 RFユニット
13 送受信回路
14 DSP
15 MPU
15a バス
16 RAM
17 ROM
17a 校正プログラム
18 ネットワークインターフェイス
19 校正スイッチ
20 統合管理装置
21 MPU
22 主記憶
23 外部記憶装置
24 ディスプレイ
25 入力装置
26 ネットワークインターフェイス
27 可搬媒体ドライブ
28 バス
30 情報ネットワーク
31 観測情報
32 スタート信号
33 識別子
34 タイムスタンプ
35 データ数
36 測定データ
36a 位置情報
36b 速度情報
36c 受信電力
37 終了信号
41 オペレーティングシステム
42 レーダ装置制御プログラム
43 統合監視プログラム
50 鉄道
50a 交通路座標系
51 踏切
52 列車
60 道路
60a 交通路座標系
61 車両
61a 車両位置
62 車線
63 歩行者
71 変換マトリックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通路を監視するレーダ装置の校正方法であって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正することを特徴とするレーダ装置の校正方法。
【請求項2】
交通路を監視するレーダ装置であって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含むことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
交通路を監視する複数のレーダ装置と、情報ネットワークを介して前記レーダ装置を統合して管理する統合管理装置とを含む監視システムであって、個々の前記レーダ装置は、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含むことを特徴とする監視システム。
【請求項4】
交通路を監視する複数のレーダ装置と、情報ネットワークを介して前記レーダ装置を統合して管理する統合管理装置とを含む監視システムであって、前記統合管理装置は、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、当該レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する校正機能を含むことを特徴とする監視システム。
【請求項5】
交通路を監視するレーダ装置に備えられたコンピュータを制御するプログラムであって、前記交通路を通過する移動体の位置および/または軌跡の前記レーダ装置による観測結果に基づいて、前記レーダ装置の設置方向および/または設置位置を校正する機能を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−7940(P2006−7940A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187016(P2004−187016)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】