説明

ロボットの直接教示装置

【課題】御点位置を誘導操作中に容易に変更することを可能とし、教示作業の操作性を各段に向上させるとともに、教示作業に要する時間を短縮できる実用的な直接教示装置を提供する。
【解決手段】多関節ロボット1の先端部に力センサ3を介して設けられた操作ハンドル4と、操作ハンドル4に加わる教示作業者の操作力を力センサ3によって検出し、操作力に応じて力制御によりロボット1を移動させる指令を出力する力制御部61を備えた制御装置60からなるロボットの直接教示装置であって、操作ハンドル4は、教示中に教示作業者がロボット1の制御点の変更量および方向を入力する制御点入力手段5を備え、制御装置60は、制御点入力手段5にて入力された変更量および方向に応じてロボット1の制御点設定を更新し力制御部61へ出力する制御点演算部64を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業用ロボットの教示装置に関し、特に作業者が直接ロボットに力を加えロボットを動作させて教示を行う直接教示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、力制御に基づくロボットの直接教示方法が提案されている。この直接教示方法は、教示作業者がロボットのアームの先端部に設けられた手先効果器に力を加え、この加えられた力をリスト部に備えた力センサで検出し、力センサが出力する力信号に基づき予め定められた演算式により力制御を行う制御手段によって、加えられた力に応じて動作するようにロボットのアームを制御し、手先効果器の移動速度と移動方向を決定し、手先効果器を目標位置に誘導して教示データを記憶するものである。
この力制御によるロボットの制御では、前記の演算式の上において手先効果器に仮想質量を設定し、教示作業者が力センサに加えた力に比例した速度又は加速度、又はその代数和で手先効果器を移動させるように構成されている。このように構成される従来のロボットの直接教示装置又は直接教示方法としては、特許文献1や特許文献2等に開示されるものがある。
また、多関節ロボット先端部の制御点の位置を変えずに方向(姿勢)のみを変えたり、ロボット先端部の方向(姿勢)を変えずに3次元位置のみを変えたりする等の操作性の向上に有効なロボットの直接教示装置としては、特許文献3に開示されたものがある。
【特許文献1】特開昭59−14484号公報
【特許文献2】特開昭59−157715号公報
【特許文献3】特開平5−285870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上述べたように、従来の直接教示装置では、予め設定した制御点位置を一定にしたままロボット先端の方向(姿勢)を変えたり、あるいは逆に方向(姿勢)一定のまま位置を変えたりして操作性を向上させていた。
しかし、実際の組み立てラインにおいてロボットの教示を行う場合、ロボット先端の制御点位置を作業途中で変化させなければ作業性が悪くなる場合がある。
例えば、2つ以上のキー溝を合わせて組み立てなければならない部品の組み付け動作を教示する場合、まず、ロボットが把持した部品について1つ目のキー溝に挿入される部分に制御点を設定して対象物側のキー溝に合うよう制御点の位置と姿勢を調整し、1つ目のキー溝に関する調整が完了したら次は2つ目のキー溝に挿入される部分の位置と姿勢を調整しなければならないといった場合が発生しうる。
従来の制御点が固定された状態で教示作業者による直接誘導操作だけで教示する手法では、上記のような動作の教示が非常に困難であり、著しく操作性が低下するといった問題があった。
また、ロボットが把持する部品の寸法に基づいて決定した制御点位置は、組み立て誤差や加工誤差、ハンドによる把持点のズレなどから、教示作業中に変更することが必要となる場合も度々発生した。こうした制御点位置の変更のために教示作業が一時中断され、教示作業に時間がかかるという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、制御点位置を誘導操作中に容易に変更することを可能とし、教示作業の操作性を各段に向上させるとともに、教示作業に要する時間を短縮できる実用的な直接教示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1記載のロボットの直接教示装置は、多関節ロボットの先端部に力センサを介して設けられた操作ハンドルと、前記操作ハンドルに加わる教示作業者の操作力を前記力センサによって検出し、前記操作力に応じて力制御により前記ロボットを移動させる指令を出力する力制御部を備えた制御装置からなるロボットの直接教示装置であって、前記操作ハンドルは、教示中に教示作業者が前記ロボットの制御点の変更量および方向を入力する制御点入力手段を備え、前記制御装置は、前記制御点入力手段にて入力された前記変更量および方向に応じて前記ロボットの制御点設定を更新し前記力制御部へ出力する制御点演算部を備えることを特徴とする。
請求項2記載のロボットの直接教示装置は、前記制御点設定は、前記ロボットのエンドエフェクタによって把持した物体に設定された被把持物体座標系に基づいて表現されることを特徴とする。
請求項3記載のロボットの直接教示装置は、前記制御点入力手段は、前記制御点位置の変更量および方向に加え、前記被把持物体座標系の姿勢の変更量および方向を入力することを特徴とする。
請求項4記載のロボットの直接教示装置は、前記制御点演算部は、前記制御点入力手段にて入力された前記変更量を予め設定された値と比較する制御点範囲監視部を備えることを特徴とする。
請求項5記載のロボットの直接教示装置は、前記制御点範囲監視部は、前記制御点入力手段にて入力された前記変更量が前記予め設定された値より大きい場合には、前記変更量を前記前記予め設定された値に制限し、前記教示操作者にアラーム表示することを特徴とする。
請求項6記載のロボットの直接教示装置は、前記制御装置は、前記教示作業者の操作によって前記ロボットの各関節の位置を教示点として記録するとともに、前記記録時における制御点設定を記録する記録部を備えることを特徴とする。
請求項7記載のロボットの直接教示装置は、前記制御装置は、前記教示作業者の操作によって前記記録部から直前の前記教示点と直前の前記制御点設定を読み出し、前記ロボットを前記直前の教示点へ移動させる指令を出力するとともに、前記力制御部へ前記直前の制御点設定を出力する復帰位置指令生成部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によると、教示作業者がロボットの誘導操作をしながら操作ハンドルから手を離すことなく制御点の設定変更を行えるため教示作業の操作性が向上するとともに教示作業を効率よく行うことができる。
請求項2に記載の発明によると、教示作業中にエンドエフェクタによって把持した物体の形状に合わせて制御点設定を行うことが容易となり教示作業の操作性を向上することができる。
請求項3に記載の発明によると、教示作業中に制御点の位置のみならず姿勢についても変更を行うことができるため、複雑な形状の物体の組み立て作業の教示も効率的に行うことができる。
請求項4、5に記載の発明によると、制御点について予期しない位置や姿勢を設定することがないため教示作業の効率低下を防止でき、安全性も確保できる。
請求項6、7に記載の発明によると、制御点設定を変更した後にロボットを誘導して移動させた場合であっても、ロボットの位置に加えて制御点設定についても直前の状態に戻せるため、誤操作からの復帰が容易に行え、教示作業の効率低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の第1の実施例を示すロボットの直接教示装置システム全体の構成図である。図1において、1は多関節ロボットであり、その基準点から各可動軸を順次数えて、第1番目の軸をJ1軸とし、以降J6軸までが軸連節を成している。
ロボット1の先端には、エンドエフェクタ2が取り付けられている。ロボット1の先端とエンドエフェクタ2の間には力センサ3が配置され、さらに力センサ3には教示作業者が直接教示を行う際に把持する操作ハンドル4が固定されている。力センサ3は、操作ハンドル4に加わる力の方向および大きさを検出することができる。また、操作ハンドル4には制御点入力手段5が取り付けられている。
制御点入力手段5はロボット1の制御点の設定を変更するための入力手段であり、制御点入力手段5の一例とともに操作ハンドル4を図3に示す。図3(a)は操作ハンドル4の把持部分の正面図であり、図3(b)は教示作業者が操作ハンドル4を把持した状態を表す図である。本実施例では、制御点入力手段5は方向選択ボタン5Aと変更量入力ボタン5Bの2種類のスイッチによって構成される。
また、操作ハンドル4には非常停止スイッチも併せて設けられている。直接教示時にロボット1が予期しない動作をした場合や、ロボット1の動作範囲内に他の作業者が侵入してきた場合には教示作業者が非常停止スイッチを押下することによりロボット1は即座に緊急停止する。非常停止スイッチを操作ハンドル4上に設けているので教示作業者が危険と判断した際に直ちにロボット1を停止させることができ、直接教示時の安全性を確保している。
60は、ロボット1を制御するための制御装置で、力制御部61と、位置速度サーボ系62と、サーボアンプ63のほか、制御点演算部64と、記録部65と、復帰位置指令生成部66と、切り替え手段67、68で構成される。なお、制御装置60内の構成については本発明に関する部分のみを抜き出して描いており、前述の非常停止スイッチ操作による緊急停止のための構成などは省略されている。
【0008】
力制御部61の内部構成を図2に示す。
力制御部61ではまずセンサ座標変換部611において、力センサ3によって検出された操作力をロボット座標系に基づく操作力に変換し、インピーダンスモデル部612に出力する。本実施例ではロボット座標系の基準点はロボット1の基台に設けられているが、用途やロボットの設置方法に合わせて適宜変更可能である。
ここでインピーダンスモデル部612のインピーダンスモデルは次の式(1)のように表現される。
【0009】



【0010】
但し、F:ロボット座標系に基づく操作力
x:ロボット1の制御点位置の変位量
M:慣性係数
B:粘性係数
K:バネ係数
であって、いずれも実数とする。
式(1)の慣性係数Mと粘性係数B、バネ係数Kを調整し、求めたxを出力してロボット1への指令に加算することで、力センサ3にて検出した力に対するロボット1の直接操作時の動作特性を変更することが出来る。インピーダンス制御は公知技術であるので、詳細な説明は割愛する。
ロボット1の各駆動部又は各関節部に設けられた図示しない関節角度検出器によって検出された関節角度(フィードバック位置)を基に順変換614により算出した位置と、後述するロボット1の制御点位置とを加算し、さらに式(1)によって求めたインピーダンスモデル部612の出力を加算して直交座標系であるロボット座標系に基づく位置指令を算出する。この位置指令を逆変換613にてロボット1の関節座標系に逆変換し、J1〜J6の各関節の関節角度指令を求める。
【0011】
位置速度サーボ系62は、この関節角度指令と、ロボット1のフィードバック位置に基づいてJ1〜J6の駆動源である各サーボモータ(図示せず)の発生トルクを算出し、サーボアンプ63によりサーボモータが駆動される。
【0012】
次に、教示作業者が操作ハンドル4を把持してロボット1を誘導し直接教示を行う際の制御装置60での制御について図3〜図6に基づいて説明する。
図4に示す組み立て作業は、ロボット1の先端のエンドエフェクタ2によって第1部品100を把持し、ロボット1を適当に動作させて第1部品100の第1凸部100Aと第2凸部100Bを、それぞれ第2部品101の第1穴101Aと第2穴101Bに挿入するというものである。図4において、FTは第1部品100に関して設定された制御点C00の基準となる座標系(以後、被把持物体座標系と呼ぶ)で、制御点C00を被把持物体座標系に基づいて表現するとC00(0、0、Lz)となる。ここでLzは実数とする。
【0013】
このとき、教示作業者による挿入動作の教示手順を示したものが図5である。挿入動作は図5(a)から図5(b)、図5(c)の順で行われる。図5(a)は第1部品100の第1凸部100Aを第2部品101に挿入する前、図5(b)は第1部品100の第1凸部100Aを第2部品101の第1穴101Aに挿入した状態、図5(c)は第1凸部100Aに続き、第1部品100の第2凸部100Bを第2部品101の第2穴101Bに挿入した状態である。まず第1凸部100Aを挿入して、その後第2凸部100Bを挿入する。
【0014】
図5(a)の状態では第1部品100の制御点はC01に設定されている。
C01は前述のC00と同じ位置でも異なった位置でもよいが、説明を簡単にするためC01はC00と同じ位置であるとする。教示作業者はまずC01を制御点とした状態で図3(b)のように操作ハンドル4を把持して力を加え、挿入作業を行いやすいよう第2部品101に対して第1部品100を誘導し大まかな位置決めを行う。
第1部品100の大まかな位置決めが完了したら、教示作業者は操作ハンドル4上の記録スイッチ6を押下する。その信号は制御装置60内の記録部65へ送られる。記録部65にも力制御部61と同様にフィードバック位置が入力されており、記録スイッチ6が押下された信号を受けた記録部65はその時点でのロボット1のフィードバック位置を教示点として記録する。さらに記録部65は制御点演算部64にて生成された制御点位置C01を記録する。制御点演算部64については後述する。
以上の手順によって、挿入動作のうち図5(a)についての教示が完了する。
【0015】
続いて制御点位置をC01から図5(b)に示すC02に変更する。教示作業者は操作ハンドル4を図3(b)のように把持したまま、方向選択ボタン5Aを操作して制御点位置の移動方向としてX軸方向を選択する。選択された方向は図6に示す制御点演算部64内の制御点生成部642に入力される。
さらに教示作業者が変更量入力ボタン5Bのマイナス方向のボタンを押下すると、押下した時間に応じてX軸マイナス方向への制御点位置の移動量がアナログ信号として制御点演算部64内のA/D変換器641に入力され、変換されたデジタル信号が制御点生成部642に入力される。
制御点生成部642は、入力された移動方向および移動量から新しい制御点の位置を算出して制御点範囲監視部643へ出力する。具体例としてC01からX軸マイナス方向に移動量Lx(実数)だけ移動した点をC02とすると、その被把持物体座標系に基づく制御点位置は(−Lx、0、Lz)となる。
【0016】
制御点範囲監視部643には予め制御点移動量の各軸方向について最大値が設定されており、変更量入力ボタン5Bによって指定された移動量が最大値をオーバーしていないか監視する。
例えばX軸方向に関する制御点移動量の最大値をMx(正の実数)とし、制御点生成部642が算出した前述の制御点位置(−Lx、0、Lz)について、教示作業者が変更量入力ボタン5Bを長時間押しすぎてしまいMx<|Lx|となったとする。この場合、制御点範囲監視部643はアラーム提示手段として操作ハンドル4上に設けられたLED8を点滅させ教示作業者に移動量が大きすぎる旨を知らせるとともに、力制御部61および記録部65へは(−Mx、0、Lz)を出力する。LEDはアラーム提示手段の一例に過ぎず、スピーカーからブザー音を発することで教示作業者にアラームを提示するようにするなど、適宜変更可能である。
Lx≦Mxの場合には、制御点範囲監視部643は制御点生成部642の出力をそのまま力制御部61および記録部65へと出力する。
【0017】
このようにして制御点位置を第1凸部100Aの先端部のC02へ移動させる。これによって以後教示作業者のハンドル操作は新たな制御点C02に対して作用するため、第1凸部100Aの先端部の位置を調整しやすくなり、第1穴101Aに挿入するために適切な位置へ第1部品100を短時間で移動させることができる。すなわち効率的に教示作業を行うことができる。
【0018】
一方、力制御部61では、制御点更新監視部615にて制御点位置の更新を監視している。制御点位置が更新されると制御点更新監視部615はインピーダンスモデル部に更新を知らせる。制御点位置の更新を感知するとインピーダンスモデル部612は予め設定された時間だけインピーダンスモデル部612の出力を0にする。この時間は制御周期の数回分で、具体的には数ms程度である。
その後、新しい制御点C02(−Lx、0、Lz)に基づいて力制御を行う。
そして前述のようにJ1〜J6の各関節の関節角度指令を算出し、位置速度サーボ系62に出力する。この関節角度指令とロボット1の各駆動部分又は各関節部分に設けられた図示しない関節角度検出器により検出された関節角度(フィードバック位置)に基づいて位置速度サーボ系62内でモータの発生トルクを算出し、サーボアンプ63によりロボット1の各関節のサーボモータが駆動される。
【0019】
図5(b)では制御点位置をC02へ移動させた後、第1凸部100Aの先端部を下へ移動させて第1穴101Aへ一部挿入させた状態を示している。
制御点位置を第1凸部100Aの先端部に移動させた後、教示作業者が操作ハンドル4に力を加えることにより第1凸部100Aの先端部を下へ移動させ図5(b)のように第1穴101Aに挿入したら、操作ハンドル4上の記録スイッチ6を再度押下してその時点でのロボット1のフィードバック位置と制御点位置C02を記録部65に記録する。
その後さらに、制御点位置を一定に保ったまま操作ハンドル4の操作によって第1部品100の姿勢を変更し第2部品101に対向させるとともに第2凸部100Bを第2穴101Bへと接近させる。この様子を示したのが図5(c)である。
図5(c)のような状態となったら、操作ハンドル4上の記録スイッチ6を押下してその時点でのロボット1のフィードバック位置と制御点位置C02を記録部65に記録する。
このようにロボットの作業に合わせて直接教示中に制御点位置を適宜変更することによって操作性が向上し、教示作業者の負担を減らすことができる。さらに制御点位置の変更も操作ハンドルから行うことができるため教示作業の中断が発生せず、教示に要する時間を短縮することができる。
【0020】
なお、以上では制御点位置の変更についてのみ説明したが、図3のように位置/姿勢切り替えスイッチ9を操作ハンドル4に設けておくことにより、制御点の位置のみならず姿勢についても直接教示中に変更することが可能となる。
位置/姿勢切り替えスイッチ9によって姿勢について変更をするよう指定した場合には、方向選択ボタン5Aによって被把持物体座標系のXYZのどの軸回りに回転させて姿勢を変化させるかを指定し、変更量入力ボタン5Bによって回転量を指定する。
姿勢についても変更を行うことで、例えば図7のように第1部品100´の形状が湾曲している場合にも本発明を適用でき、直接教示の操作性を向上させることができる。図7では第1部品100´の先端の形状にあわせ、被把持物体座標系をそのY軸回りに回転させた座標系(図中のFT´)を設定している。図7の場合において第1部品100´の第1凸部100A´と第2凸部100B´を、それぞれ第2部品101の第1穴101Aと第2穴101Bに挿入するという組み立て作業の動作を教示する際には、第1部品100´をFT´のZ軸方向に沿って移動させることが可能となるため、直接教示時の操作性が向上し教示に要する時間を短縮することができる。
【0021】
また、図3に示した制御点入力手段5の構成は一例に過ぎず、図8のように方向選択ボタン5Aを廃し、代わって変更量入力ボタン5BをX、Y、Zの軸ごとに設けてもよい。
【0022】
次に、制御装置60内の復帰位置指令生成部66の機能について説明する。操作ハンドル4には記録スイッチ6が付設され、教示作業者が記録スイッチ6を押下すると、その時点でのロボット1のフィードバック位置と制御点位置が記録部65に記録されることは既に述べた。
ここで、教示作業者が制御点位置を変更した後、次の教示点へロボット1を移動させようとした際に、操作ミスによりロボット1が所望の位置から大きくずれてしまうことがある。このような場合、制御点位置を変更しているために教示作業者にとっての操作感覚も変わり、うまく元の位置に戻せなくなってしまうことがある。
このような場合に教示作業者が操作ハンドル4の復帰スイッチ7を押下すると、復帰位置指令生成部66は記録部65に記録された直前の教示位置と直前の制御点位置を読み込むとともに、切り替え手段67により力制御部61に代えて復帰位置指令生成部66からの位置指令を位置速度サーボ系62に出力する。さらに切り替え手段68により力制御部61に直前の制御点位置を出力する。
これによってロボット1の各関節のサーボモータが駆動され復帰位置である直前の教示位置に戻るとともに制御点についても直前の設定に戻る。こうして教示作業者は直前の教示位置から再度教示をやり直すことができるので直接教示の操作性を向上させ、効率的に教示作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、直接教示装置の他にも力制御により人手でロボットを直接誘導操作する際にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の全体構成を示す図
【図2】本発明の力制御部の構成を示す図
【図3】本発明の操作ハンドルを示す図
【図4】本発明による教示の実施例を示す図
【図5】本発明の実施例を説明する作業状態の遷移図
【図6】本発明の制御点演算部の構成を示す図
【図7】本発明による教示の別の実施例を示す図
【図8】本発明の操作ハンドルの別の例を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 ロボット
2 エンドエフェクタ
3 力センサ
4 操作ハンドル
5 制御点入力手段
5A 方向選択ボタン
5B 変更量入力ボタン
6 記録スイッチ
7 復帰スイッチ
8 LED
9 位置/姿勢切り替えスイッチ
60 制御装置
61 力制御部
62 位置速度サーボ系
63 サーボアンプ
64 制御点演算部
65 記録部
66 復帰位置指令生成部
67、68 切り替え手段
100、100´ 第1部品
100A、100A´ 第1凸部
100B、100B´ 第2凸部
101 第2部品
101A 第1穴
101B 第2穴
611 センサ座標変換部
612 インピーダンスモデル部
613 逆変換
614 順変換
615 制御点更新監視部
641 A/D変換器
642 制御点生成部
643 制御点範囲監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節ロボットの先端部に力センサを介して設けられた操作ハンドルと、
前記操作ハンドルに加わる教示作業者の操作力を前記力センサによって検出し、前記操作力に応じて力制御により前記ロボットを移動させる指令を出力する力制御部を備えた制御装置からなるロボットの直接教示装置であって、
前記操作ハンドルは、教示中に教示作業者が前記ロボットの制御点の変更量および方向を入力する制御点入力手段を備え、
前記制御装置は、前記制御点入力手段にて入力された前記変更量および方向に応じて前記ロボットの制御点設定を更新し前記力制御部へ出力する制御点演算部を備えることを特徴とするロボットの直接教示装置。
【請求項2】
前記制御点設定は、前記ロボットのエンドエフェクタによって把持した物体に設定された被把持物体座標系に基づいて表現されることを特徴とする請求項1記載のロボットの直接教示装置。
【請求項3】
前記制御点入力手段は、前記制御点位置の変更量および方向に加え、前記被把持物体座標系の姿勢の変更量および方向を入力することを特徴とする請求項2記載のロボットの直接教示装置。
【請求項4】
前記制御点演算部は、前記制御点入力手段にて入力された前記変更量を予め設定された値と比較する制御点範囲監視部を備えることを特徴とする請求項1記載のロボットの直接教示装置。
【請求項5】
前記制御点範囲監視部は、前記制御点入力手段にて入力された前記変更量が前記予め設定された値より大きい場合には、前記変更量を前記前記予め設定された値に制限し、前記教示操作者にアラーム表示することを特徴とする請求項4記載のロボットの直接教示装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記教示作業者の操作によって前記ロボットの各関節の位置を教示点として記録するとともに、前記記録時における制御点設定を記録する記録部を備えることを特徴とする請求項1記載のロボットの直接教示装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記教示作業者の操作によって前記記録部から直前の前記教示点と直前の前記制御点設定を読み出し、前記ロボットを前記直前の教示点へ移動させる指令を出力するとともに、前記力制御部へ前記直前の制御点設定を出力する復帰位置指令生成部を備えることを特徴とする請求項6記載のロボットの直接教示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−78308(P2009−78308A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247430(P2007−247430)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】