説明

ロボットシステム

【課題】ウエハを多段に収納するカセット内のウエハを安全に取り出すこと。
【解決手段】進入可否判定部が、移載対象となるウエハの直下および直上のクリアランスに基づいてハンドが進入可能であるか否かを判定する。そして、進入可否判定部によって進入可能であると判定されたならば、位置補正部は、ハンドの最終的な進入位置を、マッピングされた収納位置に基づいて算出し、算出した進入位置に基づいてロボットを制御するようにロボットシステムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを移載するロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カセットに収納された半導体ウエハやガラス基板といった基板(以下、「ウエハ」と記載する)を所定の場所に移載するロボットシステムが知られている。
【0003】
かかるロボットシステムに関し、ウエハを多段に収納するカセット内の各ウエハの位置をセンサによって検知し、飛び出したウエハや斜めに収納されたウエハを検知する技術が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−219209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術は、収納されたウエハの取り出しを必ずしも安全に行うことができないという問題があった。
【0006】
たとえば、従来の技術では、収納状態が正常であると判定されたウエハをカセットから取り出す。ところが、かかるウエハをカセットから取り出す際に、取り出すウエハ近傍のウエハと取り出し部とが接触する等の理由によって、ウエハの破損が生じる可能性がある。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、ウエハを多段に収納するカセット内のウエハを安全に取り出すことができるロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示するロボットシステムは、複数の基板を鉛直方向に多段に収納する収納部と、前記収納部に収納された前記基板を移載するロボットハンドと、前記収納部に収納された前記基板の収納位置を検知する位置検知部と、前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置に基づいて前記基板間のクリアランスを算出するクリアランス算出部と、前記クリアランス算出部によって算出された前記クリアランスに基づいて前記基板を移載する前記ロボットハンドを前記基板間の空隙に進入させることが可能であるか否かを判定する進入可否判定部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示するロボットシステムの一つの態様によれば、ウエハを多段に収納するカセット内のウエハを安全に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例に係るロボットシステムの説明図である。
【図2】図2は、本実施例に係るロボットシステムのブロック図である。
【図3】図3は、本実施例に係るハンドおよびセンサの上視図である。
【図4A】図4Aは、進入可否判定処理の説明図その1である。
【図4B】図4Bは、進入可否判定処理の説明図その2である。
【図5】図5は、基準位置の補正処理の説明図である。
【図6】図6は、状態判定処理の説明図である。
【図7】図7は、マッピング処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、状態判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、進入可否判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットシステムの実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
まず、本実施例に係るロボットシステム1について、図1を用いて説明する。図1は、本実施例に係るロボットシステム1の説明図である。なお、図1では、説明を容易にするために一部の形状を単純化して示す。
【0013】
図1に示すように、本実施例に係るロボットシステム1は、ロボット10と、コントローラ(図示せず)を備えている。ここで、ロボット10は、複数のアーム11を有しており、ロボット10から最も遠いアーム11の先端にはハンド12が設けられる。さらに、ハンド12の先端にはセンサ13が設けられる。
【0014】
各アーム11は、図示しないモータを備えた関節部14a、14b、14cを介して他のアーム11またはハンド12と接続される。関節部14a、14b、14cは、たとえばサーボモータによって図1に示すZ方向を回転軸として回転し、各アーム11を回動させる。
【0015】
また、関節部14aは、図示しないモータで図1に示すZ軸に沿って昇降する。これにより、ロボットシステム1は、センサ13をZ軸の正方向および負方向へ走査させることができる。
【0016】
なお、ロボット10は、図示しないコントローラと通信が可能であり、コントローラからの動作指示を受け付け、受け付けた指示に従って動作する。また、ハンド12の近傍には、図1に示すように、Z軸に沿って等間隔かつ多段にウエハ100を収納するカセット30が設置される。
【0017】
なお、以下では、図1に示すY軸の正方向および負方向から見た面をカセット30の側面とし、X軸の負方向から見た面を正面とする。ここで、カセット30は、かかる正面側にウエハ100を収納または移載するための開口部を備える。
【0018】
ロボットシステム1は、カセット30に収納されるウエハ、たとえば100bを移載する際、移載対象となるウエハ100bと、かかるウエハ100bの直下に収納されるウエハ100cとの空隙へ、ハンド12を開口部からX軸の正方向へ進入させる。
【0019】
そして、ロボットシステム1は、進入させたハンド12をZ軸の正方向へ移動させることによって、ハンド12の上面へ移載対象となるウエハ100bを載置させる。その後、ロボットシステム1は、ハンド12をX軸の負方向へ移動させ、カセット30の開口部からウエハ100bを取り出す。
【0020】
ところで、ウエハ100は非常に薄く脆いため、微弱な衝撃、たとえば、他のウエハ100やハンド12に接触すると、破損する恐れがある。したがって、ロボットシステム1は、カセット30に収納されたウエハ100を移載する際、他のウエハ100に接触しないようにハンド12を進入させ、ウエハ100を移載しなくてはならない。
【0021】
このため、ロボットシステム1では、ハンド12を進入させる際、安全で、かつ、正確な進入位置を算出する必要がある。そこで、本実施例に係るロボットシステム1は、以下に示す処理を行うこととした。
【0022】
まず、ロボットシステム1は、アーム11を図1に示すZ軸に沿って移動させることによってセンサ13による走査を行う。これにより、センサ13は、カセット30に収納されるすべてのウエハ100の実際の収納位置を検知(以下、「マッピング」と記載する)する。
【0023】
そして、ロボットシステム1は、マッピングされた収納位置に基づいてウエハ100間の空隙幅(以下、「クリアランス」と記載する)を算出し、算出されたクリアランスに基づいてハンド12が進入可能であるか否かを判定する。
【0024】
具体的には、ロボットシステム1は、移載対象となるウエハ、たとえば、ウエハ100bと直下のウエハ100cとのクリアランスが所定の閾値以上であれば、ハンド12が進入可能であると判定する。
【0025】
なお、最下段に収納されるウエハ100の場合には、ウエハ100と直上のウエハとのクリアランスが所定の閾値以下であれば、ウエハ100の下方側にハンド12が進入可能であると判定する。
【0026】
そして、ロボットシステム1は、進入可能であると判定されたウエハ100に対して、マッピングされた収納位置に基づいてハンド12の最終的な進入位置(以下、「ティーチング位置」と記載する)を算出し、算出した進入位置に基づいてロボット10を制御することとした。これにより、ロボットシステム1は、カセット30内のウエハ100を安全に取り出すことができる。
【0027】
なお、ロボットシステム1は、ウエハ100の収納位置の基準値(以下、「基準位置」と記載する)をティーチング位置として予め算出しておき、算出したティーチング位置をマッピングされた収納位置に基づいて補正することで最終的な進入位置を算出する。なお、かかる基準位置の補正処理の詳細については、図5を用いて後述する。
【0028】
なお、ロボットシステム1は、マッピングされた収納位置に基づいてウエハ100の厚みを算出し、ウエハ100の厚みによって収納状態を判定する。
【0029】
具体的には、ロボットシステム1では、カセット30にウエハ100が水平方向に対して斜めに収納されているか、複数のウエハ100が重畳されて収納されているか等をウエハ100の収納状態として判定する。
【0030】
そして、ロボットシステム1は、正常に収納されていないウエハ100の収納状態を報知する。これにより、作業者がウエハ100の収納状態を是正することができるので、ロボットシステム1は、カセット30内のウエハ100を安全に取り出すことが可能となる。
【0031】
このように、本実施例に係るロボットシステム1は、移載対象となるウエハ100の直下および直上のクリアランスに基づいてハンド12が進入可能であるか否かを判定する。そして、本実施例に係るロボットシステム1は、進入可能であると判定したならば、マッピングされた収納位置に基づいてハンド12の進入位置を算出する。
【0032】
このように、本実施例1に係るロボットシステム1は、実測したクリアランスに基づいて進入の可否や、進入位置の算出を行うこととしたので、カセット30内のウエハ100を安全に取り出すことができる。
【0033】
つぎに、本実施例に係るロボットシステム1の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施例に係るロボットシステム1のブロック図である。図2に示すように、ロボットシステム1は、ロボット10と、コントローラ20とを備える。
【0034】
また、ロボット10は、アーム11と、ハンド12と、センサ13とを備え、コントローラ20は、サーボ基板21と、制御部22と、記憶部23を備える。また、制御部22は、位置検知部22aと、クリアランス算出部22bと、進入可否判定部22dと、位置補正部22eと、状態判定部22cとをさらに備え、記憶部23は、閾値情報23aと、基準位置23bとを記憶する。
【0035】
ロボット10は、コントローラ20と通信可能に接続されており、コントローラ20から動作指示を受け付け、受け付けた指示に従って動作する。アーム11は、図示しないモータを備えた関節部14a〜14cを介して他のアーム11またはハンド12と接続される。
【0036】
ハンド12は、水平方向にウエハ100面を載置することによってウエハ100を移載する。センサ13は、カセット30に収納されるウエハ100の周縁を検知する機器である。
【0037】
ここで、センサ13によって行われるウエハ100の検知手法の詳細について図3を用いて説明しておく。図3は、本実施例に係るハンド12およびセンサ13の上視図である。
【0038】
図3に示したように、先端がY字状に開いたハンド12の各先端には、照射部13aと受光部13bとの組み合わせによって構成されたセンサ13が設けられる。そして、照射部13aから照射された可視光、たとえば、赤色レーザは、受光部13bによって受光される。
【0039】
ここで、センサ13がウエハ100の周縁を走査した際、受光部13bは、照射部13aによって照射された可視光が遮光されたことを検知する。なお、図3に示すように、センサ13は、ウエハ100の周縁部分を検知する。そして、ロボットシステム1は、遮光時のZ方向の位置に基づいてウエハ100の収納位置を算出する。
【0040】
また、ロボットシステム1は、照射部13aによって照射された可視光がウエハ100によって遮光された時点のZ方向の位置から、受光部13bによって再度可視光が受光された時点のZ方向の位置までを、ウエハ100の厚みとする。
【0041】
さらに、ロボットシステム1は、照射部13aによって照射された可視光を受光した時点のZ方向の位置から、可視光がウエハ100によって遮光された時点のZ方向の位置までを、ウエハ100間のクリアランスとする。このように、ロボットシステム1は、センサ13の検知位置に基づいてウエハ100の厚みおよびクリアランスをそれぞれ算出する。
【0042】
なお、図3では、ハンド12の各先端に照射部13aと受光部13bとをそれぞれ設けた場合を例示したが、いずれか一方の先端に照射部13aおよび受光部13bを設けることとしてもよい。この場合、受光部13bは、照射部13aから照射された可視光がウエハ100によって反射された反射光を受光することになる。
【0043】
図2に戻り、ロボットシステム1の構成についての説明を続ける。コントローラ20は、ロボット10の動作制御を行う。たとえば、このコントローラ20は、ティーチング位置に従ってロボット10のアーム11を移動させる制御や、ハンド12を進入させたり退避させたりする制御を行う。
【0044】
サーボ基板21は、センサ13からの受光または遮光の情報や、各モータからの位置情報を受け付け、制御部22の位置検知部22aへ出力する。また、制御部22からの位置情報や動作指示等を受け付け、ロボット10へ出力する。
【0045】
位置検知部22aは、サーボ基板21経由でセンサ13からの受光または遮光の情報や、Z軸モータからのZ方向の位置情報に基づいてカセット30に収納されるウエハ100をマッピングする処理を行う処理部である。また、位置検知部22aは、検知されたウエハ100の収納位置をクリアランス算出部22bへ渡す処理を併せて行う。
【0046】
クリアランス算出部22bは、まず、位置検知部22aから受け付けたウエハ100の収納位置に基づいて各ウエハ100の厚みを算出し、状態判定部22cへ渡す処理を行う処理部である。
【0047】
また、クリアランス算出部22bは、状態判定部22cが実行するウエハ100の収納状態の判定処理が終了したならば、ウエハ100の収納位置に基づいて各ウエハ100間のクリアランスを算出し、進入可否判定部22dへ渡す処理を併せて行う。
【0048】
状態判定部22cは、クリアランス算出部22bから受け付けた各ウエハ100の厚みに基づいてウエハ100の収納状態を判定する処理を行う処理部である。
【0049】
また、状態判定部22cは、ウエハ100の収納状態が正常ではなかった場合に、収納状態を図示しないディスプレイ等へ報知する処理を併せて行う。これにより、作業者がウエハ100の収納状態を是正することができる。さらに、状態判定部22cは、ウエハ100の厚みに基づいてウエハ100がスロットへ収納されているか否かも判定する。
【0050】
進入可否判定部22dは、クリアランス算出部22bから受け付けた各ウエハ100間のクリアランスおよび閾値情報23aに基づいてハンド12が進入可能であるか否かを判定する。また、進入可否判定部22dは、判定結果を位置補正部22eへ渡す処理を併せて行う。
【0051】
ここで、進入可否判定部22dが実行する進入可否判定処理の詳細について図4Aおよび図4Bを用いて説明しておく。なお、図4Aには、進入可能であると判定する場合の進入可否判定処理について、図4Bには、進入不可であると判定する場合の進入可否判定処理について、それぞれ示している。
【0052】
図4Aは、カセット30の正面側(開口部側)から見た図であり、Z軸の負方向から正方向へ(n−1)、n枚目(以下、「スロット」と記載する)のウエハ100が収納されているとする。
【0053】
進入可否判定部22dは、移載対象のウエハ100の直下にウエハがある場合、たとえば、nスロット目のウエハ100を移載する際、ハンド12がnスロット目のウエハ100と(n−1)スロット目のウエハ100との間に進入可能であるか否かを以下のように判定する。
【0054】
図4Aに示したように、進入可否判定部22dは、移載対象のウエハ100と直下のウエハ100とのクリアランス200Lに基づいて進入可能であるか否かを判定する。
【0055】
具体的には、図4Aに示したように、進入可否判定部22dは、直下のクリアランス200Lが所定の閾値(閾値1)以上であった場合に、ハンド12が進入可能であると判定する。なお、クリアランス200Lは、移載対象のウエハ100の下面部から直下のウエハ100の上面部までの空隙幅とする。
【0056】
つづいて、移載対象のウエハ100の直下にウエハがない場合、すなわち、最下段のスロット(1スロット)が移載対象のウエハ100である場合について説明する。以下では、図4Bに示したように、1スロット目のウエハ100が撓んでいる場合について説明する。なお、図4Bもまた、カセット30の正面側(開口部側)から見た図である。
【0057】
図4Bに示したように、移載対象である1スロット目のウエハ100が撓むことによって、1スロット目のウエハ100とカセット30の底面部30aとの間は、破線で示した正常なウエハが収納される場合と比較して狭くなる。したがって、1スロット目のウエハ100と直上のウエハ100である2スロット目のウエハ100とのクリアランス200Uは、所定の閾値(閾値2)より大きくなる。
【0058】
そこで、進入可否判定部22dは、1スロット目のウエハ100の場合には、かかるウエハ100の上方のクリアランス200Uが所定の閾値(閾値2)より大きい場合に、ハンド12が進入不可であると判定する。
【0059】
このように、進入可否判定部22dは、移載対象のウエハ100と直下のウエハ100および移載対象のウエハ100と直上のウエハ100との両クリアランスおよび閾値情報23aに基づいてハンド12が進入可能であるか否かを判定する。
【0060】
図2に戻りロボットシステム1の構成についての説明を続ける。位置補正部22eは、進入可否判定部22dから受け付けた判定結果が進入可能である場合、マッピングされた収納位置に基づいて予め算出された基準位置23bを補正する処理を行う処理部である。
【0061】
また、位置補正部22eは、補正されたティーチング位置をロボット10へ通知する処理を併せて行う。なお、基準位置23bの補正処理の詳細については、図5を用いて後述する。
【0062】
記憶部23は、不揮発性メモリや、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される。閾値情報23aは、進入可否判定部22dまたは状態判定部22cで判定する際に比較される各閾値である。
【0063】
基準位置23bは、所定のタイミングで、予め算出された基準となるハンド12の進入位置の情報である。たとえば、センサ13によって最下段のウエハ100の収納位置と最上段のウエハ100の収納位置を検知し、二ケ所の収納位置間を収納可能枚数で等分にした位置を、各ウエハ100の基準位置23bとする。また、センサ13によって検知された複数ケ所のウエハ100の収納位置に基づいて基準位置23bを決定することとしてもよい。
【0064】
なお、所定のタイミングとは、カセット30ごとにウエハ100の収納位置は異なるため、たとえば、異なる形状のカセット30が設置された際であってもよく、また、カセット30に、異なる形状または厚さのウエハ100が収納された際であってもよい。また、基準位置23bを予め算出された値に基づいて固定値として記憶してもよい。
【0065】
つぎに、図2に示した位置補正部22eによって行われる基準位置23bの補正処理の具体例について図5を用いて説明する。図5は、基準位置23bの補正処理の説明図である。
【0066】
図5は、カセット30の正面側(開口部側)から見た図であり、移載しようとするnスロット目のウエハ100と、直下の(n−1)スロット目のウエハ100との間にハンド12が進入する場合について示す。
【0067】
ハンド12の上面には、パッド12aを備えておりパッド12aの上面に移載するウエハ100が載置されることによって移載される。位置補正部22eは、各ウエハ100に対して以下の補正処理を行い、ロボット10へ通知するティーチング位置を決定する。
【0068】
まず、基準位置23bがウエハ100の上面部の図5に示すZ方向の位置である場合、センサ13によって検知されたnスロット目のウエハ100の上面部の位置(b)と基準位置23bとの差分を補正量とし、以下に示す式(1)で算出される。
補正量=基準位置23b−ウエハ100の位置 ・・・(1)
【0069】
なお、基準位置23bは、ウエハ100の上面部と下面部との中心位置(Z方向)としてもよいし、また、ウエハ100の上面部(Z方向)としてもよい。
【0070】
また、nスロット目のウエハ100の下面部中心のZ方向の位置(c)を登録位置とし、移載しようとするウエハ100の下方側のハンド12の移動距離を下方オフセット201L、下方側のハンド12の移動距離を上方オフセット201Uとする。
【0071】
この場合、ハンド12の進入位置(d)および退避位置(a)は、以下に示す式(2)と式(3)とでそれぞれあらわされる。
進入位置(d)=(登録位置−201L)+補正量 ・・・(2)
退避位置(a)=(登録位置+201U)+補正量 ・・・(3)
【0072】
このように、位置補正部22eは、基準位置23bとマッピングされた実測値に基づいて補正量を算出し、補正量に基づいて進入位置および退避位置を算出する。そして、位置補正部22eは、算出された進入位置および退避位置をティーチング位置としてロボット10へ通知する。
【0073】
これによって、ロボット10は、ウエハ100を多段に収納するカセット30内のウエハ100を安全に取り出すことができる。なお、ここでは、位置補正部22eによって行われるZ方向についての進入位置および退避位置の補正処理について説明したが、X方向およびY方向についてもマッピングされた収納位置に基づいて同様に補正処理が行われることとしてもよい。
【0074】
また、式(1)に示した補正量をCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)化させておいてもよく、これによって、コントローラ20の電源がOFFとなった場合であっても再度マッピングをすることなく補正処理を行うことができる。
【0075】
つぎに、状態判定部22cによって行われるウエハ100の収納状態の判定処理の詳細について図6を用いて説明する。図6は、状態判定処理の説明図である。
【0076】
図6は、カセット30の正面側(開口部側)から見た図であり、カセット30の側面の内壁には、ウエハ100の左右の周縁部を載置するための部材が、図6に示すZ軸に沿って等間隔に収納可能な枚数組分設けられている。
【0077】
また、図6には、正常に収納されているウエハ101、カセット30に斜めに収納されているウエハ102、および、複数枚が重畳されて収納されているウエハ103を、それぞれ示す。
【0078】
正常に収納されているウエハ101の厚さは、図6に示したように薄いが、水平方向に対して斜めに収納されているウエハ102の場合、厚さはtとなる。したがって、状態判定部22cは、クリアランス算出部22bから受け付けたウエハ100の厚さが所定の閾値以上の場合に、収納状態が斜めであると判定する。ここでは、ウエハ102の厚さtが所定の閾値以上であることから、状態判定部22cは、ウエハ102の収納状態が斜めであると判定する。
【0079】
また、状態判定部22cでは、マッピングされたウエハ100の収納位置と基準位置23bとの差が所定の閾値以上の場合に、収納状態が斜めであると判定してもよい。
【0080】
つづいて、複数のウエハが重畳されて収納されている場合(ここでは103)、ウエハ103の厚みは複数枚分となる。したがって、状態判定部22cは、クリアランス算出部22bから受け付けたウエハ103の厚みが所定の閾値以上の場合に、重畳されて収納されていると判定する。
【0081】
なお、斜めであるか否かの判定時に使用する閾値と、重畳されているか否かの判定時に使用する閾値とは、異なる閾値であり、ウエハ100の厚みに基づいて各閾値を設定することとしてもよい。
【0082】
なお、ここでは、ウエハ100の厚みに基づいてウエハ100の収納状態を判定することとしたが、これに限定されるものではない。たとえば、ウエハ100間のクリアランスに基づいて収納状態を判定してもよい。
【0083】
具体的には、ウエハ100が正常に収納されている場合、ウエハ100間のクリアランスは、図6に示す200aとなるが、同図に示したように、ウエハ102が斜めに収納されている場合、クリアランスは200bとなり、所定の間隔を超えてしまう。
【0084】
したがって、状態判定部22cは、クリアランス算出部22bから受け付けたウエハ100のクリアランスが所定の閾値以上の場合に、収納状態が斜めであると判定する。
【0085】
なお、図6に示したように、カセット30の側面の内壁には、ウエハ100の左右の周縁部を載置するための部材を備えることとしたが、カセット30の側面の内壁面に溝を設け、かかる溝の凹みへウエハ100の周縁部を載置してもよい。
【0086】
つぎに、図2に示したコントローラ20によって実行される処理手順について図7〜図9を用いて説明する。図7は、マッピング処理の処理手順を示すフローチャートであり、図8は、状態判定処理の処理手順を示すフローチャートであり、図9は、進入可否判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0087】
まず、図7に示すように、位置検知部22aは、マッピングによってウエハ100の収納位置を検知し(ステップS101)、クリアランス算出部22bは、位置検知部22aから受け付けたウエハ100の収納位置に基づいてウエハ100の厚みを算出する(ステップS102)。
【0088】
そして、状態判定部22cは、ウエハ100の収納状態の判定処理を行い(ステップS103)、クリアランス算出部22bは、位置検知部22aから受け付けたウエハ100の収納位置に基づいてクリアランスを算出する(ステップS104)。
【0089】
つづいて、進入可否判定部22dは、ハンド12の進入可否の判定処理を行い(ステップS105)、進入可否判定部22dによってハンド12が進入可能であると判定されたならば(ステップS106,Yes)、位置補正部22eは、基準位置23bの補正を行う(ステップS107)。
【0090】
また、位置補正部22eは、ステップS107において補正された補正量に基づいてティーチング位置を算出し、サーボ基板21を介してロボット10へティーチング位置を通知する(ステップS108)。
【0091】
その後、制御部22は、つぎのウエハ100があるか否かを判定し(ステップS110)、つぎのウエハ100がある場合に(ステップS110,Yes)、ステップS101へ移行して、ステップS101〜ステップS108の処理を繰り返す。一方、つぎのウエハ100がない場合(ステップS110,No)、一連の処理を終了する。
【0092】
また、ステップS106において進入可否判定部22dによってハンド12が進入不可であると判定されたならば(ステップS106,No)、進入可否判定部22dは、その旨を報知し(ステップS109)、ステップS110へ処理を移行する。
【0093】
つづいて、状態判定部22cが実行する状態判定処理手順について図8を用いて説明する。図8に示すように、状態判定部22cは、ウエハ100の厚みが所定の閾値(閾値3)以上か否かを判定する(ステップS201)。
【0094】
そして、状態判定部22cは、ウエハ100の厚みが閾値3以上の場合に(ステップS201,Yes)、カセット30にウエハ100が水平方向に対して斜めに収納されていると判定する(ステップS205)。
【0095】
一方、状態判定部22cは、ウエハ100の厚みが閾値3より小さい場合に(ステップS201,No)、ステップS202へ処理を移行し、ウエハ100の収納位置と基準位置23bとの差が所定の閾値(閾値4)以上か否かを判定する(ステップS202)。
【0096】
そして、状態判定部22cは、ウエハ100の収納位置と基準位置23bとの差が閾値4以上の場合に(ステップS202,Yes)、カセット30にウエハ100が水平方向に対して斜めに収納されていると判定する(ステップS205)。
【0097】
一方、状態判定部22cは、ウエハ100の収納位置と基準位置23bとの差が閾値4より小さい場合に(ステップS202,No)、ステップS203へ処理を移行し、ウエハ100の厚みが所定の閾値(閾値5)以上か否かを判定する(ステップS203)。
【0098】
そして、状態判定部22cは、ウエハ100の厚みが閾値5以上の場合に(ステップS203,Yes)、カセット30内のスロットに複数のウエハ100が重畳されて収納されていると判定する(ステップS206)。
【0099】
一方、状態判定部22cは、ウエハ100の厚みが閾値5より小さい場合に(ステップS203,No)、かかるウエハ100がカセット30に正常に収納されていると判定し(ステップS204)、一連の処理を終了する。
【0100】
また、状態判定部22cは、ウエハ100が斜めに収納されていると判定した場合(ステップS205)、および、重畳されて収納されていると判定した場合に(ステップS206)、収納状態を報知して(ステップS207)、一連の処理を終了する。
【0101】
つづいて、進入可否判定部22dが実行する進入可否判定処理手順について図9を用いて説明する。図9に示すように、進入可否判定部22dは、判定対象のウエハ100の直下のスロットがあるか否かを判定する(ステップS301)。
【0102】
そして、進入可否判定部22dは、判定対象のウエハ100の直下のスロットがある場合に(ステップS301,Yes)、判定対象のウエハ100の直下のクリアランスが所定の閾値(閾値6)以上であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0103】
進入可否判定部22dは、直下のクリアランスが閾値6以上の場合(ステップS302,Yes)、判定対象のウエハ100を移載する際にハンド12が進入可能であると判定し(ステップS303)、一連の処理を終了する。
【0104】
一方、進入可否判定部22dは、直下のクリアランスが閾値6より小さい場合(ステップS302,No)、ハンド12が進入不可であると判定し(ステップS304)、一連の処理を終了する。
【0105】
また、進入可否判定部22dは、判定対象のウエハ100の直下のスロットがない場合に(ステップS301,No)、判定対象のウエハ100の直上のクリアランスが所定の閾値(閾値7)以下であるか否かを判定する(ステップS305)。
【0106】
進入可否判定部22dは、直上のクリアランスが閾値7以下の場合(ステップS305,Yes)、判定対象のウエハ100を移載する際にハンド12が進入可能であると判定し(ステップS306)、一連の処理を終了する。
【0107】
一方、進入可否判定部22dは、直上のクリアランスが閾値7より大きい場合(ステップS305,No)、ハンド12が進入不可であると判定し(ステップS307)、一連の処理を終了する。
【0108】
なお、状態判定部22cは、ウエハ100の収納状態が正常ではない場合に、収納状態を報知することとした。しかし、進入可否判定部22dによってハンド12の進入可否判定処理が行われる際に、収納状態に応じて、ハンド12の進入可否判定を行うこととしてもよい。
【0109】
たとえば、進入可否判定部22dは、ステップS301の前段において判定対象のウエハ100の収納状態が重畳であると判定されていた場合に、ステップS307に処理を移行し、ハンド12が進入不可であると判定することとしてもよい。これによって、重畳されて収納されているウエハ100が誤って移載されるのを防止することができる。
【0110】
上述したように、本実施例では、進入可否判定部22dが、移載対象となるウエハ100の直下および直上のクリアランスに基づいてハンド12が進入可能であるか否かを判定する。そして、進入可否判定部22dによって進入可能であると判定されたならば、位置補正部22eは、ハンド12の最終的な進入位置をマッピングされた収納位置に基づいて算出し、算出した進入位置に基づいてロボット10を制御することとした。
【0111】
これにより、本実施例に係るロボットシステム1では、ウエハ100を多段に収納するカセット30内のウエハ100を安全に取り出すことができる。
【0112】
なお、上述した実施例では、ハンド12の先端にはウエハ100の周縁を検知するセンサ13を備えることとしたが、ウエハ100を移載するためのハンドと、ウエハ100の周縁を検知するセンサ13を備えるハンド12とは別体であってもよい。
【0113】
また、1つのアーム11に複数種類のハンド12を備えることとしてもよい。たとえば、1つのアーム11に移載用のハンドとセンサ13を備えるハンド12とが接続されていてもよい。また、ロボットシステム1は、複数のアーム11を備えることとして、アーム11ごとに移載用のハンドとセンサ13を備えるハンド12とをそれぞれ備えるような構成としてもよい。
【0114】
また、本実施例では、Z方向のウエハ100の収納状態を検知することによってハンド12が進入出来るか否かを判定する場合について説明したが、X方向およびY方向についても同様にウエハ100の収納状態を検知することによってハンド12の進入可否判定を行うこととしてもよい。
【0115】
また、本実施例では、コントローラ20が実行するクリアランス算出処理、進入可否判定処理、位置補正処理、状態判定処理等の各処理を、コントローラ20と接続される図示しない上位装置で行うこととしてもよい。
【0116】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 ロボットシステム
10 ロボット
11 アーム
12 ハンド
13 センサ
20 コントローラ
21 サーボ基板
22 制御部
22a 位置検知部
22b クリアランス算出部
22c 状態判定部
22d 進入可否判定部
22e 位置補正部
23 記憶部
23a 閾値情報
23b 基準位置
30 カセット
100 ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を鉛直方向に多段に収納する収納部と、
前記収納部に収納された前記基板を移載するロボットハンドと、
前記収納部に収納された前記基板の収納位置を検知する位置検知部と、
前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置に基づいて前記基板間のクリアランスを算出するクリアランス算出部と、
前記クリアランス算出部によって算出された前記クリアランスに基づいて前記基板を移載する前記ロボットハンドを前記基板間の空隙に進入させることが可能であるか否かを判定する進入可否判定部と
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記進入可否判定部は、
移載対象の基板と当該基板の直下に収納された基板のクリアランスと、当該基板と当該基板の直上に収納された基板のクリアランスとに基づいて前記ロボットハンドを進入させることが可能な前記空隙であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置に基づいて前記ロボットハンドを進入させる基準位置を算出する基準位置算出部と、
前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置に基づいて前記基準位置算出部によって算出された前記基準位置を補正する補正部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置に基づいて前記収納部に収納される前記基板の収納状態を判定する状態判定部
をさらに備え、
前記進入可否判定部は、
前記状態判定部によって判定された前記基板の収納状態に基づいて前記ロボットハンドを前記基板間の空隙に進入させることが可能であるか否かを判定することを特徴とする請求項1、2または3のいずれか一つに記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記状態判定部は、
前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置に基づいて算出される前記基板の厚さによって前記基板が水平方向に対して斜めに収納されているか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記状態判定部は、
前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置と前記基準位置算出部によって算出された前記基準位置とに基づいて前記基板が水平方向に対して斜めに収納されているか否かを判定することを特徴とする請求項4または5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記状態判定部は、
前記位置検知部によって検知された前記基板の前記収納位置に基づいて算出される前記基板の厚さによって複数の前記基板が重畳されて収納されているか否かを判定することを特徴とする請求項4、5または6に記載のロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−235058(P2012−235058A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104399(P2011−104399)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】