ロボットハンド及びロボット装置
【課題】対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボットハンド及びロボット装置を提供する。
【解決手段】対象物を把持する2つの指部101,102を備え、2つの指部101,102の各々には、対象物を把持する部分に回転部材110が設けられ、2つの指部101,102で対象物を把持した状態で、2つの指部101,102の回転部材110が回転可能にされており、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を変更する第1指部移動機構150を備え、第1指部移動機構150により、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸が互いに近づく方向または遠ざかる方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられる。
【解決手段】対象物を把持する2つの指部101,102を備え、2つの指部101,102の各々には、対象物を把持する部分に回転部材110が設けられ、2つの指部101,102で対象物を把持した状態で、2つの指部101,102の回転部材110が回転可能にされており、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を変更する第1指部移動機構150を備え、第1指部移動機構150により、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸が互いに近づく方向または遠ざかる方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド及びロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置に取り付けて、対象物を把持又は解放することで所定の作業を行うロボットハンドが知られている。近年では、例えば工具を把持して部品の組み付け等の作業を行うと共に、微小な部品を把持して精度良く配置する多機能なロボットハンドが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1のロボットハンドでは、2つの指部の対象物を把持する部分に複数の突起を有する弾性部材が設けられており、弾性部材の中心部には1つの突起が配置され、その周辺部には中心部の突起よりも高さの低い突起が複数配置されている。そして、2つの指部の開閉を適切に制御することにより、対象物に2つの指部の弾性部材の中心部の突起の先端のみを接触させることで対象物を回転可能に把持するとともに、指部の開閉の制御を変えることで弾性部材を変形させて対象物に複数の突起を接触させ、対象物を拘束して把持することを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術にあっては、2つの指部で対象物を回転可能に支持する際に、弾性部材の1つの突起の先端が接触する(対象物を2点で把持する)。しかし、対象物を2点で把持するだけでは、対象物の把持が不安定となり、対象物の姿勢を変更させる際に(対象物を回転させる際に)対象物が落下してしまうおそれがある。例えば、対象物を回転させたり回転させなかったりする制御を把持力の強弱で行っているので、強く持つ必要があるもの(重いものや滑りやすいもの)を回転させる場合に落とす可能性がある。逆に、やさしく持つ必要があるもの(変形しやすいものや壊れやすいもの)を回転させないように把持したい場合に把持力が強すぎて対象物が壊れてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のロボットハンドは、対象物を把持する2つの指部を備え、前記2つの指部の各々には、前記対象物を把持する部分に回転部材が設けられ、前記2つの指部で前記対象物を把持した状態で、前記2つの指部の回転部材が回転可能にされており、前記2つの指部の回転部材の相対位置を変更する第1指部移動機構を備え、前記第1指部移動機構により、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向または遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられることを特徴とする。
【0007】
このロボットハンドによれば、2つの指部の回転部材の相対位置を変更することにより、対象物の姿勢を変更したり対象物を拘束して把持したりすることができる。例えば、対象物が作業面に水平(横)に置かれた棒状部材の場合において、2つの指部の回転部材の回転軸を互いに近づけた状態を考える。この状態において、2つの指部の回転部材で対象物の一端を把持して持上げると、対象物の他端は自重により把持点を基準に回転して垂れ下がり、この動作の過程で対象物の姿勢が横から縦に変更されることとなる。つまり、2つの指部の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を変更させることができる。一方、2つの指部の回転部材の回転軸を互いに遠ざけた状態においては、2つの指部のうち一方の指部と他方の指部とで対象物を支持する際に摩擦力が生じるため、2つの指部の回転部材で対象物の一端を把持して持上げても、対象物の回転が抑制され、この動作の過程で対象物の姿勢はほとんど変化しない。つまり、2つの指部の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を維持することができる。また、対象物を2つの指部の回転部材で把持する構成を採用しており、2つの指部に複数の突起を有する弾性部材を設け弾性部材の中心の1つの突起の先端で対象物を回転可能に把持する構成を必要としないので、対象物を安定して把持することができる。よって、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を変更することが可能なロボットハンドを提供することができる。
【0008】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において、前記2つの指部の回転部材の回転軸は互いに一致していることが望ましい。
【0009】
このロボットハンドによれば、回転部材の回転が最もスムーズになるので、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0010】
前記ロボットハンドにおいて、前記第1指部移動機構は、ラックアンドピニオンギアと、前記ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーターと、を備え、前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部には、前記ラックアンドピニオンギアのピニオンギアと噛み合うラックが形成されており、前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部を案内するガイド部が設けられており、前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部は、前記モーターが回転して前記ピニオンギアと前記ラックとが噛み合うことにより前記ガイド部に沿って移動してもよい。
【0011】
このロボットハンドによれば、2つの指部の回転部材の相対位置を細かく制御することが可能となる。
【0012】
前記ロボットハンドにおいて、前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、前記対象物が平滑面を有する場合でも前記対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていてもよい。
【0013】
前記ロボットハンドによれば、対象物を常に安定して把持することができる。
【0014】
前記ロボットハンドにおいて、前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、平滑面となっていてもよい。
【0015】
このロボットハンドによれば、対象物を安定して把持することができる。例えば、対象物の表面が平滑面の場合、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが面で接触するため、対象物をしっかりと把持できる。これに対して、回転部材の対象物と接触する部分が凹凸形状であると、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが点で接触することとなり、対象物の把持が不安定となる場合もある。
【0016】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の他に1以上の指部が設けられており、前記2つの指部と前記1以上の指部とによって前記対象物が3点以上の接触点で把持されていてもよい。
【0017】
このロボットハンドによれば、対象物が2点で把持される場合に比べて、対象物を確実に把持することができる。
【0018】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触しない位置まで退避させ、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触する位置まで移動させる第2指部移動機構を備えていてもよい。
【0019】
このロボットハンドによれば、対象物の姿勢を変更する場合は、2つの指部のみで対象物を把持することで対象物の姿勢変更がスムーズにでき、一方、対象物を拘束して把持する場合は、3以上の指部で対象物を把持することで対象物をしっかりと把持することができる。
【0020】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物との接触を検出する第1センサーが設けられていてもよい。
【0021】
このロボットハンドによれば、第1センサーによって2つの指部の回転部材と対象物との接触判定を行うことができる。つまり、第1センサーの接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していないことが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0022】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部のうち一方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分と他方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分との相対位置を検出する第2センサーを備えていてもよい。
【0023】
このロボットハンドによれば、第2センサーによって2つの指部の回転部材どうしの間隔を検出することができる。例えば、対象物の大きさが正確に認識できている場合に有効である。つまり、第2センサーの検出結果が「対象物の幅(2つの指部で対象物を挟み込む方向における対象物の長さ)よりも大きい」場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していないことが分かり、一方「対象物の幅と等しい」場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0024】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物を把持する力を検出する第3センサーが設けられていてもよい。
【0025】
このロボットハンドによれば、第3センサーによって2つの指部が対象物を把持するときの把持力を検出することができる。例えば、第3センサーの検出結果によって2つの指部の回転部材が対象物をしっかりと把持しているか否かが分かる。よって、対象物を確実に把持することができる。
【0026】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部が同期して前記対象物に近づくまたは遠ざかるように、前記2つの指部を開閉動作させる駆動部を備えていてもよい。
【0027】
このロボットハンドによれば、2つの指部で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を安定して把持しやすくなる。また、簡素な構成で2つの指部の開閉動作を実現することができる。
【0028】
本発明に係るロボット装置は、上記のロボットハンドを備えたことを特徴とする。
【0029】
このロボット装置によれば、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロボットハンドの全体構成を示す斜視図である。
【図2】同、ロボットハンドの全体構成を示す正面図である。
【図3】同、ロボットハンドの第1指部移動機構を示す斜視図である。
【図4】同、ロボットハンドの第1指部移動機構を示す平面図である。
【図5】同、ロボットハンドが対象物を把持した状態を示す図である。
【図6】同、ロボットハンドの回転部材の回転軸の切り換え動作を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るロボット装置の全体構成を示す図である。
【図8】同、ロボット装置の動作時の状態を示す図である。
【図9】同、ロボット装置の動作時の状態を示す図である。
【図10】ロボットハンドの第1変形例を示す図である。
【図11】同、ロボットハンドの第2指部移動機構を示す平面図である。
【図12】同、ロボットハンドの回転部材の回転軸の切り換え動作を示す図である。
【図13】ロボットハンドの第2変形例を示す図である。
【図14】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図15】ロボットハンドの第3変形例を示す図である。
【図16】ロボットハンドの第4変形例を示す図である。
【図17】同、ロボットハンドの第1指部移動機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットハンドRHの全体構成を示す斜視図である。図2は、ロボットハンドRHの全体構成を示す正面図である。図3は、ロボットハンドRHの第1指部移動機構150を示す斜視図である。図4は、ロボットハンドRHの第1指部移動機構150を示す平面図である。
図1に示すように、ロボットハンドRHは、2つの指部101,102と、第1センサー141と、2つの指部101,102を開閉動作させる駆動部130と、第1指部移動機構150と、を備えている。
【0033】
このロボットハンドRHは、例えば工具や部品などの対象物を把持する産業用ロボットの把持装置として用いられる。なお、ロボットハンドRHとしては、産業ロボットに限られず、他の用途(宇宙関連、遊具など)に用いても構わない。
【0034】
指部101,102は、対象物を把持する部分である。各指部101,102には、対象物を把持する部分に回転部材110が設けられている。ロボットハンドRHは、2つの指部101,102で対象物を把持した状態で、2つの指部101,102の回転部材110が回転することにより、対象物の姿勢が変更可能となっている。
【0035】
各指部101,102は、回転部材110と、回転部材110を回転可能に支持する支持部材120と、を備えている。
【0036】
図2に示すように、回転部材110の対象物と接触する部分(以下、接触面110fと称することがある)は、平滑面となっている。回転部材110は例えば円盤状に形成された剛性部材である。
【0037】
支持部材120は、回転部材110を回転可能に支持する第1支持部121と、関節部120aと、第1支持部121を開閉可能に支持する第2支持部122と、を備えている。例えば、各指部101,102の第1支持部121には、回転部材110の回転軸を回転可能に支持する転がり軸受け(ボールベアリングなど)が設けられている。これにより、回転部材110は円滑に回転するようになっている。
【0038】
第1支持部121及び第2支持部122は例えば棒状に形成された剛性部材である。例えば、第1支持部121の基端部(第2支持部122と接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に中央部が第2支持部122の先端部(第1支持部121と接する部分)に固定された軸状の関節部120aの両端部が挿通された構成となっている。そして、第1支持部121は、駆動部130からの駆動信号により、関節部120aを中心に回転可能になっている。
【0039】
なお、これに限らず、第2支持部122の先端部(第1支持部121と接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が第1支持部121の基端部(第2支持部122と接する部分)に固定された軸状の関節部120aが挿通された構成であっても、第1支持部121は、駆動部130からの駆動信号により、関節部120aを中心に回転可能となる。
【0040】
第1センサー141は、2つの指部101,102の回転部材110が対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられている。第1センサー141は、対象物との接触を検出するセンサーである。
【0041】
駆動部130は、2つの指部101,102の一端部に取り付けられている。駆動部130は、2つの指部101,102が同期して対象物に近づくまたは遠ざかるように移動するように、2つの指部101,102を開閉動作させる。例えば、駆動部130からの駆動信号が各指部101,102の第2支持部122に伝達されると、各指部101,102の第1支持部121は、第2支持部122との接続部(以下、関節部と称することがある)を基準に、同期して対象物に近づくまたは遠ざかるように移動するように、開閉動作を行うようになっている。
【0042】
図3及び図4に示すように、第1指部移動機構150は、ラックアンドピニオンギア151と、ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーター154と、を備えている。ラックアンドピニオンギア151は、ピニオンギア152とラック153とから構成されている。2つの指部101,102のうち一方の指部102には、ラックアンドピニオンギア151のピニオンギア152と噛み合うラック153が形成されている。第1指部移動機構150は、ピニオンギア152の一部(ラック153と噛み合う部分)が露出した状態で、カバー155に収容されている。駆動部130のピニオンギア152と隣り合う位置には、指部102を案内するガイド部(ガイドレールなど)124が設けられている。指部102は、モーター154が回転してピニオンギア152とラック153とが噛み合うことによりガイド部124に沿って移動する。これにより、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更される。
【0043】
なお、ピニオンギア152は、ステッピングモーターにより直接駆動されてもよいし、ギアボックスやウオームギア等の減速装置によって動力が伝達されてもよい。
【0044】
2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更されることにより、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸が互いに近づく状態と、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸が互いに遠ざかる状態と、が切り換えられる。これにより、対象物の回転が許容される状態と、対象物の回転が許容されない状態と、が切り換えられる。
【0045】
図5は、ロボットハンドRHが対象物Wを把持した状態を示す図である。
図5に示すように、駆動部130からの駆動信号(閉動作の信号)が各指部101,102の第2支持部122に伝達されると、各指部101,102の第1支持部121は、関節部を基準に同期して対象物に近づくように移動し、閉動作を行う。閉動作の過程において、第1センサー141により、2つの指部101,102の回転部材110と対象物との接触判定が行われる。つまり、第1センサー141の接触判定が「接触あり」の場合は、2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。
【0046】
図6は、ロボットハンドRHの回転部材110の回転軸の切り換え動作を示す図である。なお、図6においては、便宜上、ロボットハンドRHの構成部品のうち2つの指部101,102の回転部材110のみを図示している。また、図6において、符号RC1は指部101の回転部材110の回転軸、符号RC2は指部102の回転部材110の回転軸である。
【0047】
図6(a)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致する状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容される状態に切り換えられる。
【0048】
図6(b)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致しない状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容されない状態に切り換えられる。なお、この状態においては、指部101の回転部材110と指部102の回転部材110とが対象物を把持する方向から視て大部分で重なっている。これにより、対象物Wが安定して把持されるようになっている。
【0049】
本実施形態のロボットハンドRHによれば、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を変更することにより、対象物の姿勢を変更したり対象物を拘束して把持したりすることができる。例えば、対象物が作業面に水平(横)に置かれた棒状部材の場合において、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2を互いに近づけた状態を考える。この状態において、2つの指部101,102の回転部材110で対象物の一端を把持して持上げると、対象物の他端は自重により把持点を基準に回転して垂れ下がり、この動作の過程で対象物の姿勢が横から縦に変更されることとなる。つまり、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を変更させることができる。一方、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2を互いに遠ざけた状態においては、指部101と指部102とで対象物を支持する際に摩擦力が生じるため、2つの指部101,102の回転部材110で対象物の一端を把持して持上げても、対象物の回転が抑制され、この動作の過程で対象物の姿勢はほとんど変化しない。つまり、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を維持することができる。また、対象物を2つの指部101,102の回転部材110で把持する構成を採用しており、2つの指部に複数の突起を有する弾性部材を設け弾性部材の中心の1つの突起の先端で対象物を回転可能に把持する構成を必要としないので、対象物を安定して把持することができる。よって、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を変更することが可能なロボットハンドRHを提供することができる。
【0050】
この構成によれば、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに近づく方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられた状態において、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに一致しているので、回転部材110の回転が最もスムーズになる。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0051】
この構成によれば、第1指部移動機構150としてラックアンドピニオンギア機構を採用しているので、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を細かく制御することが可能となる。
【0052】
この構成によれば、回転部材110の対象物と接触する部分が平滑面となっているので、対象物を安定して把持することができる。例えば、対象物の表面が平滑面の場合、回転部材110の対象物と接触する部分と対象物とが面で接触するため、対象物をしっかりと把持できる。これに対して、回転部材の対象物と接触する部分が凹凸形状であると、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが点で接触することとなり、対象物の把持が不安定となる場合がある。
【0053】
ただし、回転部材110の対象物と接触する部分が凹凸形状であっても、やわらかく変形しやすく摩擦が大きい素材の場合は、より安定性が増す場合もある。いずれにせよ、回転部材110の対象物と接触する部分は、対象物が平滑面を有する場合でも対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていることが好ましい。
【0054】
この構成によれば、第1センサー141によって2つの指部101,102の回転部材110と対象物との接触判定を行うことができる。つまり、第1センサー141の接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していないことが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0055】
この構成によれば、2つの指部101,102を開閉動作させる駆動部130を備えているので、2つの指部101,102で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を安定して把持しやすくなる。また、簡素な構成で2つの指部101,102の開閉動作を実現することができる。
【0056】
(第2実施形態)
図7は、本実施形態に係るロボット装置RAの構成を示す斜視図である。
図7に示すように、ロボット装置RAは、例えば産業用ロボットアームとして用いられる。ロボット装置RAは、取付部ATC、第一関節10、第二関節20、第三関節30、第四関節40、第五関節50及び第六関節60を有している。
【0057】
取付部ATCは、例えば床部や壁部、天井部などに取り付けられる部分である。第一関節10〜第六関節60は、例えば取付部ATCから順に直列に接続されている。第一関節10〜第六関節60は、例えば隣接する関節との間で回転軸を介して接続されており、互いにその回転軸を中心に回転可能に設けられている。第一関節10〜第六関節60のそれぞれが回転可能に設けられているため、それぞれの関節を適宜回転させることで、ロボットアームRA全体としての複合的な動作が可能になっている。
【0058】
第六関節60は、ロボット装置RAの先端部分である。この第六関節60の先端部に、上記実施形態に記載のロボットハンドRHが取り付けられている。
【0059】
本実施形態のロボット装置RAによれば、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボット装置RAを提供することができる。
【0060】
図8は、ロボット装置RAの動作時の状態(指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致する場合の対象物Wの動き)を示す図である。図8(a)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げる前の状態を示す図であり、図8(b)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げた後の状態を示す図である。なお、図8においては、便宜上、ロボット装置RAを構成するロボットハンドRH及び第六関節60のみを図示し、その他の図示を省略している。
【0061】
図8(a)に示すように、例えば、対象物Wが棒状部材であり、対象物Wが作業面(図示略)に横に置かれているとする。先ず、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wの一端部(対象物Wの重心とは異なる部分)を把持する。なお、2つの指部101,102で対象物Wを把持する前に、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更されることにより、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに「一致する」状態に切り換えられている。
【0062】
次に、図8(b)に示すように、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wを持上げる(ロボット装置RAの第六関節を上方に移動させる)。すると、対象物Wの他端は自重により一端部を基準に回転して垂れ下がる。つまり、この動作の過程で対象物Wの姿勢が横から縦に変更されることとなる。この動作の過程でロボット装置RAの第六関節60は上方に移動するものの、その姿勢はほとんど変化していない。よって、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物Wの姿勢を変更できることが分かる。
【0063】
図9は、ロボット装置RAの動作時の状態(指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致しない場合の対象物Wの動き)を示す図である。図9(a)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げる前の状態を示す図であり、図9(b)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げた後の状態を示す図である。なお、図9においては、便宜上、ロボット装置RAを構成するロボットハンドRH及び第六関節60のみを図示し、その他の図示を省略している。
【0064】
図9(a)に示すように、例えば、対象物Wが棒状部材であり、対象物Wが作業面(図示略)に横に置かれているとする。先ず、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wの一端部(対象物Wの重心とは異なる部分)を把持する。なお、2つの指部101,102で対象物Wを把持する前に、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更されることにより、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに「一致しない」状態に切り換えられている。
【0065】
次に、図9(b)に示すように、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wを持上げる(ロボット装置RAの第六関節を上方に移動させる)。2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wを持上げても、指部101と指部102とで対象物Wを支持する際に摩擦力が生じるため、対象物Wの回転が抑制され、この動作の過程で対象物Wの姿勢はほとんど変化していない。よって、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物Wの姿勢を維持できることが分かる。
【0066】
(変形例1)
図10は、本発明に係るロボットハンドの第1変形例を示す図である。図11は、ロボットハンドRH1の第2指部移動機構160を示す平面図である。
本変形例のロボットハンドRH1は、2つの指部101,102の他に1つの指部103が設けられている点、第2指部移動機構160を備えている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、ロボットハンドRH1は、2つの指部101,102と、指部103と、第1センサー141と、駆動部130と、第1指部移動機構150と、第2指部移動機構160と、を備えている。
【0068】
指部103は、接触部材110Aと、接触部材110Aを固定支持する支持部材120Aと、を備えている。
【0069】
接触部材110Aの対象物と接触する部分は、平滑面となっている。接触部材110Aは例えば円盤状に形成された剛性部材である。
【0070】
支持部材120Aは、接触部材110Aを固定支持する第1支持部121Aと、関節部120Aaと、第1支持部121Aを開閉可能に支持する第2支持部122Aと、を備えている。
【0071】
第1支持部121A及び第2支持部122Aは例えば棒状に形成された剛性部材である。例えば、第1支持部121Aの基端部(第2支持部122Aと接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に中央部が第2支持部122Aの先端部(第1支持部121Aと接する部分)に固定された軸状の関節部120Aaの両端部が挿通された構成となっている。そして、第1支持部121Aは、駆動部130からの駆動信号により、関節部120Aaを中心に回転可能になっている。
【0072】
なお、これに限らず、第2支持部122Aの先端部(第1支持部121Aと接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が第1支持部121Aの基端部(第2支持部122Aと接する部分)に固定された軸状の関節部120Aaが挿通された構成であっても、第1支持部121Aは、駆動部130からの駆動信号により、関節部120Aaを中心に回転可能となる。
【0073】
第1センサー141は、指部103の接触部材110Aが対象物と接触する部分に設けられている。
【0074】
図11に示すように、第2指部移動機構160は、ラックアンドピニオンギア161と、ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーター164と、を備えている。ラックアンドピニオンギア161は、ピニオンギア162とラック163とから構成されている。指部103には、ラックアンドピニオンギア161のピニオンギア162と噛み合うラック163が形成されている。駆動部130のピニオンギア162と隣り合う位置には、指部103を案内するガイド部(ガイドレールなど)124Aが設けられている。指部103は、モーター164が回転してピニオンギア162とラック163とが噛み合うことによりガイド部124Aに沿って移動する。これにより、指部103の接触部材110Aの位置が変更される。第2指部移動機構160は、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに近づく方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられた状態(対象物の回転が許容される状態)において指部103を対象物と接触しない位置まで退避させ、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに遠ざかる方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられた状態(対象物の回転が許容されない状態)において指部103を対象物と接触させる位置まで移動させる機能を有する。
【0075】
指部103の接触部材110Aの位置が変更されることにより、指部103の接触部材110Aが対象物と接触しない状態と、指部103の接触部材110Aが対象物と接触する状態と、が切り換えられる。これにより、対象物が2点の接触点で把持される状態と、対象物が3点の接触点で把持される状態と、が切り換えられる。
【0076】
図12は、ロボットハンドRHの回転部材110の回転軸の切り換え動作を示す図である。なお、図12においては、便宜上、ロボットハンドRH1の構成部品のうち2つの指部101,102の回転部材110、指部103の接触部材110Aのみを図示している。また、図12において、符号RC1は指部101の回転部材110の回転軸、符号RC2は指部102の回転部材110の回転軸である。
【0077】
図12(a)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致する状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容される状態に切り換えられる。このとき、第2指部移動機構160(図11参照)により、指部103の接触部材110Aが対象物Wと接触しない状態に切り換えられる。これにより、対象物Wが2点の接触点で把持される。
【0078】
図12(b)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致しない状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容されない状態に切り換えられる。このとき、第2指部移動機構160(図11参照)により、指部103の接触部材110Aが対象物Wと接触する状態に切り換えられる。これにより、対象物Wが3点の接触点で把持される。
【0079】
本変形例のロボットハンドRH1によれば、対象物が2点で把持される場合に比べて、対象物を確実に把持することができる。
【0080】
この構成によれば、対象物の姿勢を変更する場合は、2つの指部101,102のみで対象物を把持することで対象物の姿勢変更がスムーズにでき、一方、対象物を拘束して把持する場合は、3つの指部101,102,103で対象物を把持することで対象物をしっかりと把持することができる。
【0081】
なお、本変形例では、2つの指部101,102の他に1つの指部103が設けられているが、これに限らない。例えば、2つの指部101,102の他に2以上の指部が設けられた構成であってもよい。これにより、対象物をより安定して把持することができる。
【0082】
(変形例2)
図13は、本発明に係るロボットハンドの第2変形例を示す図である。
本変形例のロボットハンドRH2は、2つの指部101,102に設けられた第1センサー141に替えて第2センサー142が設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0083】
図13に示すように、第2センサー142は、2つの指部101,102の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられている。第2センサー142は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110が対象物を把持する部分(接触面110f)と他方の指部102の回転部材110が対象物を把持する部分(接触面110f)との相対位置を検出するセンサーである。
【0084】
図14は、ロボットハンドRH2の動作時の状態を示す図である。図14(a)は対象物Wが把持される前の状態を示す図、図14(b)は対象物Wが把持された状態を示す図である。
【0085】
図14(a)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第2センサー142の検出結果により、一方の指部101の接触面110fと他方の指部102の接触面110fとの間の間隔110Lが対象物の幅WL(2つの指部101,102で対象物Wを挟み込む方向における対象物Wの長さ)よりも大きい場合を考える(110L>WL)。この場合、2つの指部101,102の回転部材110が対象物Wを把持していないことが分かる。
【0086】
図14(b)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第2センサー142の検出結果により、一方の指部101の接触面110fと他方の指部102の接触面110fとの間の間隔110Lが対象物の幅WLと等しい場合を考える(110L=WL)。この場合、2つの指部101,102の回転部材110が対象物Wを把持していることが分かる。
【0087】
本変形例のロボットハンドRH2によれば、第2センサー142によって2つの指部101,102の回転部材110どうしの間隔を検出することができる。例えば、対象物の大きさが正確に認識できている場合に有効である。つまり、第2センサー142の検出結果が「対象物の幅WLよりも大きい」場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していないことが分かり、一方「対象物の幅WLと等しい」場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0088】
(変形例3)
図15は、本発明に係るロボットハンドの第3変形例を示す図である。
本変形例のロボットハンドRH3は、2つの指部101,102に設けられた第1センサー141に替えて第3センサー143が設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0089】
図15に示すように、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられている。第3センサー143は、対象物を把持する力を検出するセンサーである。第3センサー143としては、例えば、圧力センサーを用いたり、モーターのトルクの変化(モーターを流れる電流の変化)を検出するセンサーを用いたりすることができる。例えば、回転部材110が押し込まれる力(回転部材110及び支持部材120のヤング率)が予め分かっている場合に有効である。
【0090】
本変形例のロボットハンドRH3によれば、第3センサー143によって2つの指部101,102が対象物を把持するときの把持力を検出することができる。例えば、第3センサー143の検出結果によって2つの指部101,102の回転部材110が対象物をしっかりと把持しているか否かが分かる。よって、対象物を確実に把持することができる。
【0091】
なお、本変形例では、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられているが、これに限らない。例えば、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち他方の指部102の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられていてもよい。すなわち、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち少なくとも一方の指部の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられていればよい。
【0092】
また、本変形例では、第3センサー143のみが設けられているが、これに限らない。例えば、第3センサー143に加えて、さらに第1センサー141が設けられていてもよいし、第2センサー142が設けられていてもよい。
【0093】
(変形例4)
図16は、本発明に係るロボットハンドの第4変形例を示す図である。図17は、ロボットハンドRHの第1指部移動機構170を示す平面図である。
本変形例のロボットハンドRH4は、ラックアンドピニオンギア機構を有する第1指部移動機構150に替えてプーリーベルト機構を有する第1指部移動機構170が設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0094】
図16及び図17に示すように、第1指部移動機構170は、プーリーベルト171と、プーリーベルト171を駆動させるモーター174と、を備えている。プーリーベルト171は、一対のプーリー172と、プーリー172の回転に連動して回転するベルト173と、を備えている。2つの指部101,102のうち一方の指部102には、ベルト173と当接する接触部123Bが形成されている。第1指部移動機構170は、ベルト173の一部(接触部123Bと当接する部分)が露出した状態で、カバー175に収容されている。駆動部130のベルト173と隣り合う位置には、指部102を案内するガイド部(ガイドレールなど)124が形成されている。指部102は、モーター174が回転してベルト173と接触部123Bとが接触することによりガイド部124に沿って移動する。これにより、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更される。
【0095】
本変形例のロボットハンドRH4によれば、第1指部移動機構170としてプーリーベルト機構を採用しているので、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を細かく制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0096】
101,102,103…指部、110…回転部材、110f…接触面(回転部材の対象物と接触する部分)、120…支持部材、124…ガイド部、130…駆動部、141…第1センサー、142…第2センサー、143…第3センサー、150…第1指部移動機構、151…ラックアンドピニオンギア、152…ピニオンギア、153…ラック、154…モーター、160…第2指部移動機構、W…対象物、RC1,RC2…回転軸、RA…ロボット装置、RH,RH1,RH2,RH3,RH4…ロボットハンド
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド及びロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置に取り付けて、対象物を把持又は解放することで所定の作業を行うロボットハンドが知られている。近年では、例えば工具を把持して部品の組み付け等の作業を行うと共に、微小な部品を把持して精度良く配置する多機能なロボットハンドが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1のロボットハンドでは、2つの指部の対象物を把持する部分に複数の突起を有する弾性部材が設けられており、弾性部材の中心部には1つの突起が配置され、その周辺部には中心部の突起よりも高さの低い突起が複数配置されている。そして、2つの指部の開閉を適切に制御することにより、対象物に2つの指部の弾性部材の中心部の突起の先端のみを接触させることで対象物を回転可能に把持するとともに、指部の開閉の制御を変えることで弾性部材を変形させて対象物に複数の突起を接触させ、対象物を拘束して把持することを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術にあっては、2つの指部で対象物を回転可能に支持する際に、弾性部材の1つの突起の先端が接触する(対象物を2点で把持する)。しかし、対象物を2点で把持するだけでは、対象物の把持が不安定となり、対象物の姿勢を変更させる際に(対象物を回転させる際に)対象物が落下してしまうおそれがある。例えば、対象物を回転させたり回転させなかったりする制御を把持力の強弱で行っているので、強く持つ必要があるもの(重いものや滑りやすいもの)を回転させる場合に落とす可能性がある。逆に、やさしく持つ必要があるもの(変形しやすいものや壊れやすいもの)を回転させないように把持したい場合に把持力が強すぎて対象物が壊れてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のロボットハンドは、対象物を把持する2つの指部を備え、前記2つの指部の各々には、前記対象物を把持する部分に回転部材が設けられ、前記2つの指部で前記対象物を把持した状態で、前記2つの指部の回転部材が回転可能にされており、前記2つの指部の回転部材の相対位置を変更する第1指部移動機構を備え、前記第1指部移動機構により、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向または遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられることを特徴とする。
【0007】
このロボットハンドによれば、2つの指部の回転部材の相対位置を変更することにより、対象物の姿勢を変更したり対象物を拘束して把持したりすることができる。例えば、対象物が作業面に水平(横)に置かれた棒状部材の場合において、2つの指部の回転部材の回転軸を互いに近づけた状態を考える。この状態において、2つの指部の回転部材で対象物の一端を把持して持上げると、対象物の他端は自重により把持点を基準に回転して垂れ下がり、この動作の過程で対象物の姿勢が横から縦に変更されることとなる。つまり、2つの指部の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を変更させることができる。一方、2つの指部の回転部材の回転軸を互いに遠ざけた状態においては、2つの指部のうち一方の指部と他方の指部とで対象物を支持する際に摩擦力が生じるため、2つの指部の回転部材で対象物の一端を把持して持上げても、対象物の回転が抑制され、この動作の過程で対象物の姿勢はほとんど変化しない。つまり、2つの指部の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を維持することができる。また、対象物を2つの指部の回転部材で把持する構成を採用しており、2つの指部に複数の突起を有する弾性部材を設け弾性部材の中心の1つの突起の先端で対象物を回転可能に把持する構成を必要としないので、対象物を安定して把持することができる。よって、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を変更することが可能なロボットハンドを提供することができる。
【0008】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において、前記2つの指部の回転部材の回転軸は互いに一致していることが望ましい。
【0009】
このロボットハンドによれば、回転部材の回転が最もスムーズになるので、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0010】
前記ロボットハンドにおいて、前記第1指部移動機構は、ラックアンドピニオンギアと、前記ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーターと、を備え、前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部には、前記ラックアンドピニオンギアのピニオンギアと噛み合うラックが形成されており、前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部を案内するガイド部が設けられており、前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部は、前記モーターが回転して前記ピニオンギアと前記ラックとが噛み合うことにより前記ガイド部に沿って移動してもよい。
【0011】
このロボットハンドによれば、2つの指部の回転部材の相対位置を細かく制御することが可能となる。
【0012】
前記ロボットハンドにおいて、前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、前記対象物が平滑面を有する場合でも前記対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていてもよい。
【0013】
前記ロボットハンドによれば、対象物を常に安定して把持することができる。
【0014】
前記ロボットハンドにおいて、前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、平滑面となっていてもよい。
【0015】
このロボットハンドによれば、対象物を安定して把持することができる。例えば、対象物の表面が平滑面の場合、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが面で接触するため、対象物をしっかりと把持できる。これに対して、回転部材の対象物と接触する部分が凹凸形状であると、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが点で接触することとなり、対象物の把持が不安定となる場合もある。
【0016】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の他に1以上の指部が設けられており、前記2つの指部と前記1以上の指部とによって前記対象物が3点以上の接触点で把持されていてもよい。
【0017】
このロボットハンドによれば、対象物が2点で把持される場合に比べて、対象物を確実に把持することができる。
【0018】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触しない位置まで退避させ、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触する位置まで移動させる第2指部移動機構を備えていてもよい。
【0019】
このロボットハンドによれば、対象物の姿勢を変更する場合は、2つの指部のみで対象物を把持することで対象物の姿勢変更がスムーズにでき、一方、対象物を拘束して把持する場合は、3以上の指部で対象物を把持することで対象物をしっかりと把持することができる。
【0020】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物との接触を検出する第1センサーが設けられていてもよい。
【0021】
このロボットハンドによれば、第1センサーによって2つの指部の回転部材と対象物との接触判定を行うことができる。つまり、第1センサーの接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していないことが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0022】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部のうち一方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分と他方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分との相対位置を検出する第2センサーを備えていてもよい。
【0023】
このロボットハンドによれば、第2センサーによって2つの指部の回転部材どうしの間隔を検出することができる。例えば、対象物の大きさが正確に認識できている場合に有効である。つまり、第2センサーの検出結果が「対象物の幅(2つの指部で対象物を挟み込む方向における対象物の長さ)よりも大きい」場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していないことが分かり、一方「対象物の幅と等しい」場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0024】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物を把持する力を検出する第3センサーが設けられていてもよい。
【0025】
このロボットハンドによれば、第3センサーによって2つの指部が対象物を把持するときの把持力を検出することができる。例えば、第3センサーの検出結果によって2つの指部の回転部材が対象物をしっかりと把持しているか否かが分かる。よって、対象物を確実に把持することができる。
【0026】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部が同期して前記対象物に近づくまたは遠ざかるように、前記2つの指部を開閉動作させる駆動部を備えていてもよい。
【0027】
このロボットハンドによれば、2つの指部で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を安定して把持しやすくなる。また、簡素な構成で2つの指部の開閉動作を実現することができる。
【0028】
本発明に係るロボット装置は、上記のロボットハンドを備えたことを特徴とする。
【0029】
このロボット装置によれば、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロボットハンドの全体構成を示す斜視図である。
【図2】同、ロボットハンドの全体構成を示す正面図である。
【図3】同、ロボットハンドの第1指部移動機構を示す斜視図である。
【図4】同、ロボットハンドの第1指部移動機構を示す平面図である。
【図5】同、ロボットハンドが対象物を把持した状態を示す図である。
【図6】同、ロボットハンドの回転部材の回転軸の切り換え動作を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るロボット装置の全体構成を示す図である。
【図8】同、ロボット装置の動作時の状態を示す図である。
【図9】同、ロボット装置の動作時の状態を示す図である。
【図10】ロボットハンドの第1変形例を示す図である。
【図11】同、ロボットハンドの第2指部移動機構を示す平面図である。
【図12】同、ロボットハンドの回転部材の回転軸の切り換え動作を示す図である。
【図13】ロボットハンドの第2変形例を示す図である。
【図14】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図15】ロボットハンドの第3変形例を示す図である。
【図16】ロボットハンドの第4変形例を示す図である。
【図17】同、ロボットハンドの第1指部移動機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットハンドRHの全体構成を示す斜視図である。図2は、ロボットハンドRHの全体構成を示す正面図である。図3は、ロボットハンドRHの第1指部移動機構150を示す斜視図である。図4は、ロボットハンドRHの第1指部移動機構150を示す平面図である。
図1に示すように、ロボットハンドRHは、2つの指部101,102と、第1センサー141と、2つの指部101,102を開閉動作させる駆動部130と、第1指部移動機構150と、を備えている。
【0033】
このロボットハンドRHは、例えば工具や部品などの対象物を把持する産業用ロボットの把持装置として用いられる。なお、ロボットハンドRHとしては、産業ロボットに限られず、他の用途(宇宙関連、遊具など)に用いても構わない。
【0034】
指部101,102は、対象物を把持する部分である。各指部101,102には、対象物を把持する部分に回転部材110が設けられている。ロボットハンドRHは、2つの指部101,102で対象物を把持した状態で、2つの指部101,102の回転部材110が回転することにより、対象物の姿勢が変更可能となっている。
【0035】
各指部101,102は、回転部材110と、回転部材110を回転可能に支持する支持部材120と、を備えている。
【0036】
図2に示すように、回転部材110の対象物と接触する部分(以下、接触面110fと称することがある)は、平滑面となっている。回転部材110は例えば円盤状に形成された剛性部材である。
【0037】
支持部材120は、回転部材110を回転可能に支持する第1支持部121と、関節部120aと、第1支持部121を開閉可能に支持する第2支持部122と、を備えている。例えば、各指部101,102の第1支持部121には、回転部材110の回転軸を回転可能に支持する転がり軸受け(ボールベアリングなど)が設けられている。これにより、回転部材110は円滑に回転するようになっている。
【0038】
第1支持部121及び第2支持部122は例えば棒状に形成された剛性部材である。例えば、第1支持部121の基端部(第2支持部122と接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に中央部が第2支持部122の先端部(第1支持部121と接する部分)に固定された軸状の関節部120aの両端部が挿通された構成となっている。そして、第1支持部121は、駆動部130からの駆動信号により、関節部120aを中心に回転可能になっている。
【0039】
なお、これに限らず、第2支持部122の先端部(第1支持部121と接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が第1支持部121の基端部(第2支持部122と接する部分)に固定された軸状の関節部120aが挿通された構成であっても、第1支持部121は、駆動部130からの駆動信号により、関節部120aを中心に回転可能となる。
【0040】
第1センサー141は、2つの指部101,102の回転部材110が対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられている。第1センサー141は、対象物との接触を検出するセンサーである。
【0041】
駆動部130は、2つの指部101,102の一端部に取り付けられている。駆動部130は、2つの指部101,102が同期して対象物に近づくまたは遠ざかるように移動するように、2つの指部101,102を開閉動作させる。例えば、駆動部130からの駆動信号が各指部101,102の第2支持部122に伝達されると、各指部101,102の第1支持部121は、第2支持部122との接続部(以下、関節部と称することがある)を基準に、同期して対象物に近づくまたは遠ざかるように移動するように、開閉動作を行うようになっている。
【0042】
図3及び図4に示すように、第1指部移動機構150は、ラックアンドピニオンギア151と、ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーター154と、を備えている。ラックアンドピニオンギア151は、ピニオンギア152とラック153とから構成されている。2つの指部101,102のうち一方の指部102には、ラックアンドピニオンギア151のピニオンギア152と噛み合うラック153が形成されている。第1指部移動機構150は、ピニオンギア152の一部(ラック153と噛み合う部分)が露出した状態で、カバー155に収容されている。駆動部130のピニオンギア152と隣り合う位置には、指部102を案内するガイド部(ガイドレールなど)124が設けられている。指部102は、モーター154が回転してピニオンギア152とラック153とが噛み合うことによりガイド部124に沿って移動する。これにより、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更される。
【0043】
なお、ピニオンギア152は、ステッピングモーターにより直接駆動されてもよいし、ギアボックスやウオームギア等の減速装置によって動力が伝達されてもよい。
【0044】
2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更されることにより、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸が互いに近づく状態と、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸が互いに遠ざかる状態と、が切り換えられる。これにより、対象物の回転が許容される状態と、対象物の回転が許容されない状態と、が切り換えられる。
【0045】
図5は、ロボットハンドRHが対象物Wを把持した状態を示す図である。
図5に示すように、駆動部130からの駆動信号(閉動作の信号)が各指部101,102の第2支持部122に伝達されると、各指部101,102の第1支持部121は、関節部を基準に同期して対象物に近づくように移動し、閉動作を行う。閉動作の過程において、第1センサー141により、2つの指部101,102の回転部材110と対象物との接触判定が行われる。つまり、第1センサー141の接触判定が「接触あり」の場合は、2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。
【0046】
図6は、ロボットハンドRHの回転部材110の回転軸の切り換え動作を示す図である。なお、図6においては、便宜上、ロボットハンドRHの構成部品のうち2つの指部101,102の回転部材110のみを図示している。また、図6において、符号RC1は指部101の回転部材110の回転軸、符号RC2は指部102の回転部材110の回転軸である。
【0047】
図6(a)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致する状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容される状態に切り換えられる。
【0048】
図6(b)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致しない状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容されない状態に切り換えられる。なお、この状態においては、指部101の回転部材110と指部102の回転部材110とが対象物を把持する方向から視て大部分で重なっている。これにより、対象物Wが安定して把持されるようになっている。
【0049】
本実施形態のロボットハンドRHによれば、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を変更することにより、対象物の姿勢を変更したり対象物を拘束して把持したりすることができる。例えば、対象物が作業面に水平(横)に置かれた棒状部材の場合において、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2を互いに近づけた状態を考える。この状態において、2つの指部101,102の回転部材110で対象物の一端を把持して持上げると、対象物の他端は自重により把持点を基準に回転して垂れ下がり、この動作の過程で対象物の姿勢が横から縦に変更されることとなる。つまり、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を変更させることができる。一方、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2を互いに遠ざけた状態においては、指部101と指部102とで対象物を支持する際に摩擦力が生じるため、2つの指部101,102の回転部材110で対象物の一端を把持して持上げても、対象物の回転が抑制され、この動作の過程で対象物の姿勢はほとんど変化しない。つまり、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を維持することができる。また、対象物を2つの指部101,102の回転部材110で把持する構成を採用しており、2つの指部に複数の突起を有する弾性部材を設け弾性部材の中心の1つの突起の先端で対象物を回転可能に把持する構成を必要としないので、対象物を安定して把持することができる。よって、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を変更することが可能なロボットハンドRHを提供することができる。
【0050】
この構成によれば、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに近づく方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられた状態において、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに一致しているので、回転部材110の回転が最もスムーズになる。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0051】
この構成によれば、第1指部移動機構150としてラックアンドピニオンギア機構を採用しているので、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を細かく制御することが可能となる。
【0052】
この構成によれば、回転部材110の対象物と接触する部分が平滑面となっているので、対象物を安定して把持することができる。例えば、対象物の表面が平滑面の場合、回転部材110の対象物と接触する部分と対象物とが面で接触するため、対象物をしっかりと把持できる。これに対して、回転部材の対象物と接触する部分が凹凸形状であると、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが点で接触することとなり、対象物の把持が不安定となる場合がある。
【0053】
ただし、回転部材110の対象物と接触する部分が凹凸形状であっても、やわらかく変形しやすく摩擦が大きい素材の場合は、より安定性が増す場合もある。いずれにせよ、回転部材110の対象物と接触する部分は、対象物が平滑面を有する場合でも対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていることが好ましい。
【0054】
この構成によれば、第1センサー141によって2つの指部101,102の回転部材110と対象物との接触判定を行うことができる。つまり、第1センサー141の接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していないことが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0055】
この構成によれば、2つの指部101,102を開閉動作させる駆動部130を備えているので、2つの指部101,102で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を安定して把持しやすくなる。また、簡素な構成で2つの指部101,102の開閉動作を実現することができる。
【0056】
(第2実施形態)
図7は、本実施形態に係るロボット装置RAの構成を示す斜視図である。
図7に示すように、ロボット装置RAは、例えば産業用ロボットアームとして用いられる。ロボット装置RAは、取付部ATC、第一関節10、第二関節20、第三関節30、第四関節40、第五関節50及び第六関節60を有している。
【0057】
取付部ATCは、例えば床部や壁部、天井部などに取り付けられる部分である。第一関節10〜第六関節60は、例えば取付部ATCから順に直列に接続されている。第一関節10〜第六関節60は、例えば隣接する関節との間で回転軸を介して接続されており、互いにその回転軸を中心に回転可能に設けられている。第一関節10〜第六関節60のそれぞれが回転可能に設けられているため、それぞれの関節を適宜回転させることで、ロボットアームRA全体としての複合的な動作が可能になっている。
【0058】
第六関節60は、ロボット装置RAの先端部分である。この第六関節60の先端部に、上記実施形態に記載のロボットハンドRHが取り付けられている。
【0059】
本実施形態のロボット装置RAによれば、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボット装置RAを提供することができる。
【0060】
図8は、ロボット装置RAの動作時の状態(指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致する場合の対象物Wの動き)を示す図である。図8(a)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げる前の状態を示す図であり、図8(b)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げた後の状態を示す図である。なお、図8においては、便宜上、ロボット装置RAを構成するロボットハンドRH及び第六関節60のみを図示し、その他の図示を省略している。
【0061】
図8(a)に示すように、例えば、対象物Wが棒状部材であり、対象物Wが作業面(図示略)に横に置かれているとする。先ず、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wの一端部(対象物Wの重心とは異なる部分)を把持する。なお、2つの指部101,102で対象物Wを把持する前に、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更されることにより、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに「一致する」状態に切り換えられている。
【0062】
次に、図8(b)に示すように、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wを持上げる(ロボット装置RAの第六関節を上方に移動させる)。すると、対象物Wの他端は自重により一端部を基準に回転して垂れ下がる。つまり、この動作の過程で対象物Wの姿勢が横から縦に変更されることとなる。この動作の過程でロボット装置RAの第六関節60は上方に移動するものの、その姿勢はほとんど変化していない。よって、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物Wの姿勢を変更できることが分かる。
【0063】
図9は、ロボット装置RAの動作時の状態(指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致しない場合の対象物Wの動き)を示す図である。図9(a)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げる前の状態を示す図であり、図9(b)はロボットハンドRHで対象物Wを持上げた後の状態を示す図である。なお、図9においては、便宜上、ロボット装置RAを構成するロボットハンドRH及び第六関節60のみを図示し、その他の図示を省略している。
【0064】
図9(a)に示すように、例えば、対象物Wが棒状部材であり、対象物Wが作業面(図示略)に横に置かれているとする。先ず、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wの一端部(対象物Wの重心とは異なる部分)を把持する。なお、2つの指部101,102で対象物Wを把持する前に、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更されることにより、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに「一致しない」状態に切り換えられている。
【0065】
次に、図9(b)に示すように、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wを持上げる(ロボット装置RAの第六関節を上方に移動させる)。2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wを持上げても、指部101と指部102とで対象物Wを支持する際に摩擦力が生じるため、対象物Wの回転が抑制され、この動作の過程で対象物Wの姿勢はほとんど変化していない。よって、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物Wの姿勢を維持できることが分かる。
【0066】
(変形例1)
図10は、本発明に係るロボットハンドの第1変形例を示す図である。図11は、ロボットハンドRH1の第2指部移動機構160を示す平面図である。
本変形例のロボットハンドRH1は、2つの指部101,102の他に1つの指部103が設けられている点、第2指部移動機構160を備えている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、ロボットハンドRH1は、2つの指部101,102と、指部103と、第1センサー141と、駆動部130と、第1指部移動機構150と、第2指部移動機構160と、を備えている。
【0068】
指部103は、接触部材110Aと、接触部材110Aを固定支持する支持部材120Aと、を備えている。
【0069】
接触部材110Aの対象物と接触する部分は、平滑面となっている。接触部材110Aは例えば円盤状に形成された剛性部材である。
【0070】
支持部材120Aは、接触部材110Aを固定支持する第1支持部121Aと、関節部120Aaと、第1支持部121Aを開閉可能に支持する第2支持部122Aと、を備えている。
【0071】
第1支持部121A及び第2支持部122Aは例えば棒状に形成された剛性部材である。例えば、第1支持部121Aの基端部(第2支持部122Aと接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に中央部が第2支持部122Aの先端部(第1支持部121Aと接する部分)に固定された軸状の関節部120Aaの両端部が挿通された構成となっている。そして、第1支持部121Aは、駆動部130からの駆動信号により、関節部120Aaを中心に回転可能になっている。
【0072】
なお、これに限らず、第2支持部122Aの先端部(第1支持部121Aと接する部分)には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が第1支持部121Aの基端部(第2支持部122Aと接する部分)に固定された軸状の関節部120Aaが挿通された構成であっても、第1支持部121Aは、駆動部130からの駆動信号により、関節部120Aaを中心に回転可能となる。
【0073】
第1センサー141は、指部103の接触部材110Aが対象物と接触する部分に設けられている。
【0074】
図11に示すように、第2指部移動機構160は、ラックアンドピニオンギア161と、ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーター164と、を備えている。ラックアンドピニオンギア161は、ピニオンギア162とラック163とから構成されている。指部103には、ラックアンドピニオンギア161のピニオンギア162と噛み合うラック163が形成されている。駆動部130のピニオンギア162と隣り合う位置には、指部103を案内するガイド部(ガイドレールなど)124Aが設けられている。指部103は、モーター164が回転してピニオンギア162とラック163とが噛み合うことによりガイド部124Aに沿って移動する。これにより、指部103の接触部材110Aの位置が変更される。第2指部移動機構160は、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに近づく方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられた状態(対象物の回転が許容される状態)において指部103を対象物と接触しない位置まで退避させ、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸RC1,RC2が互いに遠ざかる方向に2つの指部101,102の相対位置が切り換えられた状態(対象物の回転が許容されない状態)において指部103を対象物と接触させる位置まで移動させる機能を有する。
【0075】
指部103の接触部材110Aの位置が変更されることにより、指部103の接触部材110Aが対象物と接触しない状態と、指部103の接触部材110Aが対象物と接触する状態と、が切り換えられる。これにより、対象物が2点の接触点で把持される状態と、対象物が3点の接触点で把持される状態と、が切り換えられる。
【0076】
図12は、ロボットハンドRHの回転部材110の回転軸の切り換え動作を示す図である。なお、図12においては、便宜上、ロボットハンドRH1の構成部品のうち2つの指部101,102の回転部材110、指部103の接触部材110Aのみを図示している。また、図12において、符号RC1は指部101の回転部材110の回転軸、符号RC2は指部102の回転部材110の回転軸である。
【0077】
図12(a)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致する状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容される状態に切り換えられる。このとき、第2指部移動機構160(図11参照)により、指部103の接触部材110Aが対象物Wと接触しない状態に切り換えられる。これにより、対象物Wが2点の接触点で把持される。
【0078】
図12(b)に示すように、第1指部移動機構150(図3参照)により、指部101の回転部材110の回転軸RC1と指部102の回転部材110の回転軸RC2とが互いに一致しない状態に切り換えられると、対象物Wの回転が許容されない状態に切り換えられる。このとき、第2指部移動機構160(図11参照)により、指部103の接触部材110Aが対象物Wと接触する状態に切り換えられる。これにより、対象物Wが3点の接触点で把持される。
【0079】
本変形例のロボットハンドRH1によれば、対象物が2点で把持される場合に比べて、対象物を確実に把持することができる。
【0080】
この構成によれば、対象物の姿勢を変更する場合は、2つの指部101,102のみで対象物を把持することで対象物の姿勢変更がスムーズにでき、一方、対象物を拘束して把持する場合は、3つの指部101,102,103で対象物を把持することで対象物をしっかりと把持することができる。
【0081】
なお、本変形例では、2つの指部101,102の他に1つの指部103が設けられているが、これに限らない。例えば、2つの指部101,102の他に2以上の指部が設けられた構成であってもよい。これにより、対象物をより安定して把持することができる。
【0082】
(変形例2)
図13は、本発明に係るロボットハンドの第2変形例を示す図である。
本変形例のロボットハンドRH2は、2つの指部101,102に設けられた第1センサー141に替えて第2センサー142が設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0083】
図13に示すように、第2センサー142は、2つの指部101,102の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられている。第2センサー142は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110が対象物を把持する部分(接触面110f)と他方の指部102の回転部材110が対象物を把持する部分(接触面110f)との相対位置を検出するセンサーである。
【0084】
図14は、ロボットハンドRH2の動作時の状態を示す図である。図14(a)は対象物Wが把持される前の状態を示す図、図14(b)は対象物Wが把持された状態を示す図である。
【0085】
図14(a)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第2センサー142の検出結果により、一方の指部101の接触面110fと他方の指部102の接触面110fとの間の間隔110Lが対象物の幅WL(2つの指部101,102で対象物Wを挟み込む方向における対象物Wの長さ)よりも大きい場合を考える(110L>WL)。この場合、2つの指部101,102の回転部材110が対象物Wを把持していないことが分かる。
【0086】
図14(b)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第2センサー142の検出結果により、一方の指部101の接触面110fと他方の指部102の接触面110fとの間の間隔110Lが対象物の幅WLと等しい場合を考える(110L=WL)。この場合、2つの指部101,102の回転部材110が対象物Wを把持していることが分かる。
【0087】
本変形例のロボットハンドRH2によれば、第2センサー142によって2つの指部101,102の回転部材110どうしの間隔を検出することができる。例えば、対象物の大きさが正確に認識できている場合に有効である。つまり、第2センサー142の検出結果が「対象物の幅WLよりも大きい」場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していないことが分かり、一方「対象物の幅WLと等しい」場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。よって、対象物の把持状態を確認することが容易となる。
【0088】
(変形例3)
図15は、本発明に係るロボットハンドの第3変形例を示す図である。
本変形例のロボットハンドRH3は、2つの指部101,102に設けられた第1センサー141に替えて第3センサー143が設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0089】
図15に示すように、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられている。第3センサー143は、対象物を把持する力を検出するセンサーである。第3センサー143としては、例えば、圧力センサーを用いたり、モーターのトルクの変化(モーターを流れる電流の変化)を検出するセンサーを用いたりすることができる。例えば、回転部材110が押し込まれる力(回転部材110及び支持部材120のヤング率)が予め分かっている場合に有効である。
【0090】
本変形例のロボットハンドRH3によれば、第3センサー143によって2つの指部101,102が対象物を把持するときの把持力を検出することができる。例えば、第3センサー143の検出結果によって2つの指部101,102の回転部材110が対象物をしっかりと把持しているか否かが分かる。よって、対象物を確実に把持することができる。
【0091】
なお、本変形例では、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられているが、これに限らない。例えば、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち他方の指部102の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられていてもよい。すなわち、第3センサー143は、2つの指部101,102のうち少なくとも一方の指部の回転部材110の対象物と接触する部分(接触面110f)に設けられていればよい。
【0092】
また、本変形例では、第3センサー143のみが設けられているが、これに限らない。例えば、第3センサー143に加えて、さらに第1センサー141が設けられていてもよいし、第2センサー142が設けられていてもよい。
【0093】
(変形例4)
図16は、本発明に係るロボットハンドの第4変形例を示す図である。図17は、ロボットハンドRHの第1指部移動機構170を示す平面図である。
本変形例のロボットハンドRH4は、ラックアンドピニオンギア機構を有する第1指部移動機構150に替えてプーリーベルト機構を有する第1指部移動機構170が設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0094】
図16及び図17に示すように、第1指部移動機構170は、プーリーベルト171と、プーリーベルト171を駆動させるモーター174と、を備えている。プーリーベルト171は、一対のプーリー172と、プーリー172の回転に連動して回転するベルト173と、を備えている。2つの指部101,102のうち一方の指部102には、ベルト173と当接する接触部123Bが形成されている。第1指部移動機構170は、ベルト173の一部(接触部123Bと当接する部分)が露出した状態で、カバー175に収容されている。駆動部130のベルト173と隣り合う位置には、指部102を案内するガイド部(ガイドレールなど)124が形成されている。指部102は、モーター174が回転してベルト173と接触部123Bとが接触することによりガイド部124に沿って移動する。これにより、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置が変更される。
【0095】
本変形例のロボットハンドRH4によれば、第1指部移動機構170としてプーリーベルト機構を採用しているので、2つの指部101,102の回転部材110の相対位置を細かく制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0096】
101,102,103…指部、110…回転部材、110f…接触面(回転部材の対象物と接触する部分)、120…支持部材、124…ガイド部、130…駆動部、141…第1センサー、142…第2センサー、143…第3センサー、150…第1指部移動機構、151…ラックアンドピニオンギア、152…ピニオンギア、153…ラック、154…モーター、160…第2指部移動機構、W…対象物、RC1,RC2…回転軸、RA…ロボット装置、RH,RH1,RH2,RH3,RH4…ロボットハンド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する2つの指部を備え、
前記2つの指部の各々には、前記対象物を把持する部分に回転部材が設けられ、
前記2つの指部で前記対象物を把持した状態で、前記2つの指部の回転部材が回転可能にされており、
前記2つの指部の回転部材の相対位置を変更する第1指部移動機構を備え、
前記第1指部移動機構により、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向または遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において、前記2つの指部の回転部材の回転軸は互いに一致することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第1指部移動機構は、
ラックアンドピニオンギアと、
前記ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーターと、を備え、
前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部には、前記ラックアンドピニオンギアのピニオンギアと噛み合うラックが形成されており、
前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部を案内するガイド部が設けられており、
前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部は、前記モーターが回転して前記ピニオンギアと前記ラックとが噛み合うことにより前記ガイド部に沿って移動することを特徴とする請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、前記対象物が平滑面を有する場合でも前記対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、平滑面となっていることを特徴とする請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記2つの指部の他に1以上の指部が設けられており、
前記2つの指部と前記1以上の指部とによって前記対象物が3点以上の接触点で把持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触しない位置まで退避させ、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触する位置まで移動させる第2指部移動機構を備えていることを特徴とする請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記2つの指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物との接触を検出する第1センサーが設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記2つの指部のうち一方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分と他方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分との相対位置を検出する第2センサー
を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物を把持する力を検出する第3センサーが設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項11】
前記2つの指部が同期して前記対象物に近づくまたは遠ざかるように移動するように、前記2つの指部を開閉動作させる駆動部を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のロボットハンドを備えたロボット装置。
【請求項1】
対象物を把持する2つの指部を備え、
前記2つの指部の各々には、前記対象物を把持する部分に回転部材が設けられ、
前記2つの指部で前記対象物を把持した状態で、前記2つの指部の回転部材が回転可能にされており、
前記2つの指部の回転部材の相対位置を変更する第1指部移動機構を備え、
前記第1指部移動機構により、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向または遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において、前記2つの指部の回転部材の回転軸は互いに一致することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第1指部移動機構は、
ラックアンドピニオンギアと、
前記ラックアンドピニオンギアを駆動させるモーターと、を備え、
前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部には、前記ラックアンドピニオンギアのピニオンギアと噛み合うラックが形成されており、
前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部を案内するガイド部が設けられており、
前記2つの指部のうち前記ラックが形成された指部は、前記モーターが回転して前記ピニオンギアと前記ラックとが噛み合うことにより前記ガイド部に沿って移動することを特徴とする請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、前記対象物が平滑面を有する場合でも前記対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、平滑面となっていることを特徴とする請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記2つの指部の他に1以上の指部が設けられており、
前記2つの指部と前記1以上の指部とによって前記対象物が3点以上の接触点で把持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに近づく方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触しない位置まで退避させ、前記2つの指部の回転部材の回転軸が互いに遠ざかる方向に前記2つの指部の相対位置が切り換えられた状態において前記1以上の指部を前記対象物と接触する位置まで移動させる第2指部移動機構を備えていることを特徴とする請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記2つの指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物との接触を検出する第1センサーが設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記2つの指部のうち一方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分と他方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分との相対位置を検出する第2センサー
を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物を把持する力を検出する第3センサーが設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項11】
前記2つの指部が同期して前記対象物に近づくまたは遠ざかるように移動するように、前記2つの指部を開閉動作させる駆動部を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のロボットハンドを備えたロボット装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−171019(P2012−171019A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31725(P2011−31725)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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