説明

ロボット装置及びロボット装置の制御方法

【課題】教示動作のための専用のキャリブレーションツールが不要であり、また、マニピュレータの手先にキャリブレーションツールを取り付けることが不要であって、教示動作のたびに微小な位置及び姿勢のずれが生ずることがなく、かつ、迅速な教示動作が可能となされたロボット装置及びロボット装置の制御方法を提供する。
【解決手段】マニピュレータ1と、このマニピュレータ1の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、閉じたときに錘形状となる把持ツメを手先に有するマニピュレータ1の手先を作業台上に設けられた位置基準部7に当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータを備えたロボット装置及びそのようなロボット装置の制御方法であって、位置合わせのための教示動作を容易化したロボット装置及びロボット装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マニピュレータを備えたロボット装置が提案されている。このようなロボット装置においては、対象ワークとの位置関係は、このロボット装置を移動し移設させるたびに変化してしまう。したがって、ロボット装置を移動し移設した後は、対象ワークとの位置合わせを毎回行わなければならず、煩雑である。特に、ロボット装置やロボット装置の周辺装置が可搬式であるような場合、対象ワークとロボット装置との位置関係が変化することが頻繁に起こる。
【0003】
ロボット装置においては、対象ワークとロボット装置との位置関係が変化する度に、位置合わせのための教示動作を行わなければならない。この教示動作は、従来のロボット装置において煩雑であった。そのため、このような教示動作を省力化することが望まれている。
【0004】
特許文献1には、倣い機構と3本以上の把持爪とを有し、部品を挿入する孔に、部品の位置を合わせて嵌め合わせる被挿入部品の把持・挿入装置が記載されている。この把持・挿入装置においては、把持爪は、内側面において円筒状の部品を把持する。把持爪の外側面は、先端側ほど細くなされたテーパ状となっており、倣い機構を構成する。この把持・挿入装置においては、視覚による位置合わせや力覚制御を行うことなく、倣い機構により部品を把持した把持爪の位置が修正されることにより、部品を挿入する孔に部品を挿入することができる。すなわち、この把持・挿入装置においては、対象ワーク(部品を挿入する孔)と把持・挿入装置との位置関係に微小変化が生じても、挟持動作をやり直すことなく、組立(挿入)作業を行うことができる。
【0005】
一方、特許文献2には、以下のような手順により教示動作を行うことにより省力化を図ったロボット装置が記載されている。すなわち、まず、対象ワークとの位置関係が既知であるキャリブレーション治具を、対象ワークのある環境側(作業台上など)に設置する。次に、マニピュレータの手先にキャリブレーションツールを取り付け、このキャリブレーションツールの先端形状と、環境側に設置したキャリブレーション治具の凹部形状とを、マニピュレータにかかる力に応じて位置を補正する機能(力制御機能など)を用いて合致させる。これらが合致したマニピュレータの位置を、動作プログラムに登録する。そして、ロボット装置は、環境側のキャリブレーション治具と対象ワークとの位置関係に基づいて、対象ワークの位置及び姿勢のデータを得て、このデータに応じてマニピュレータを動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−328035号公報
【特許文献2】特開2006−297559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載された被挿入部品の把持・挿入装置においては、倣い機構の倣い可能量を、対象ワークと把持・挿入装置との位置関係の変化量よりも大きくしておく必要がある。そのため、対象ワークと把持・挿入装置との位置関係の変化量が大きい場合には、倣い機構の倣い可能量を大きくするために、把持・挿入装置を大型化しなければならず、装置の重量が増大し、また、他の装置との干渉の可能性が高くなってしまう。
【0008】
また、この把持・挿入装置においては、位置合わせを行うことはできるが、挿入軸の方向(挿入方向)を補正することはできないため、部品と挿入口との間に傾きが生じた場合には、組立(挿入)作業ができなくなる虞がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載されたロボット装置においては、教示動作のための専用のキャリブレーションツールが必要であり、また、マニピュレータの手先にキャリブレーションツールを取り付ける必要がある。このとき、キャリブレーションツールの取り付け精度の分だけ、教示動作のたびに微小な位置及び姿勢のずれが生じる。また、キャリブレーションツールとキャリブレーション治具との合致動作を正確に行わなければならず、位置合わせのために複数回の合致動作を繰り返す必要があり、迅速な教示動作ができない。
【0010】
そこで、本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、教示動作のための専用のキャリブレーションツールが不要であり、また、マニピュレータの手先にキャリブレーションツールを取り付けることが不要であって、教示動作のたびに微小な位置及び姿勢のずれが生ずることがなく、かつ、迅速な教示動作が可能となされたロボット装置及びロボット装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係るロボット装置は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0012】
〔構成1〕
はめあいに倣って位置を補正する手段として力制御による位置補正機能を有するマニピュレータと、マニピュレータの動作を制御する制御手段とを備え、マニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、制御手段は、マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行い、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、複数の把持爪が嵌合される凹部を用いることを特徴とするものである。
【0013】
〔構成2〕
はめあいに倣って位置を補正する手段として手先位置を計測追従可能でコンプライアンスメカニズムを有するマニピュレータと、マニピュレータの動作を制御する制御手段とを備え、マニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、制御手段は、マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行い、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、複数の把持爪が嵌合される凹部を用いることを特徴とするものである。
【0014】
〔構成3〕
制御手段を介して手動制御が可能なマニピュレータを備え、マニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えておりこれら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し複数の把持爪が嵌合される凹部を位置基準部として用いて、制御手段により、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作が可能であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係るロボット装置の制御方法は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0016】
〔構成4〕
はめあいに倣って位置を補正する手段として力制御による位置補正機能を有するマニピュレータを備え、マニピュレータの手先が、複数の把持爪を備えこれら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となるロボット装置の制御方法であって、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、複数の把持爪が嵌合される凹部を用いて、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に倣わせて当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うことを特徴とするものである。
【0017】
〔構成5〕
はめあいに倣って位置を補正する手段として手先位置を計測追従可能でコンプライアンスメカニズムを有するマニピュレータを備え、マニピュレータの手先が、複数の把持爪を備えこれら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となるロボット装置の制御方法であって、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、複数の把持爪が嵌合される凹部を用いて、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に倣わせて当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うことを特徴とするものである。
【0018】
〔構成6〕
制御手段を介して手動制御が可能なマニピュレータを備え、マニピュレータの手先が複数の把持爪を備えこれら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となるロボット装置の制御方法であって、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、複数の把持爪が嵌合される凹部を用いて、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に制御手段により当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るロボット装置においては、構成1を有することにより、力制御による位置補正機能を有するマニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し複数の把持爪が嵌合される凹部を用いるので、把持爪と位置基準部とを当接させることにより、それぞれが有する角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状によって6軸方向の拘束ができ、マニピュレータの回転方向を含めた6軸方向の位置及び姿勢データを1回の合致動作により取得することができ、制御手段は、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うので、教示動作のために専用のキャリブレーションツールをマニピュレータに取り付ける必要が無く、位置合わせのための教示動作が容易となる。
【0020】
また、本発明に係るロボット装置においては、構成2を有することにより、手先位置を計測追従可能でコンプライアンスメカニズムを有するマニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し複数の把持爪が嵌合される凹部を用いるので、把持爪と位置基準部とを当接させることにより、それぞれが有する角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状によって6軸方向の拘束ができ、マニピュレータの回転方向を含めた6軸方向の位置及び姿勢データを1回の合致動作により取得することができ、制御手段は、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うので、教示動作のために専用のキャリブレーションツールをマニピュレータに取り付ける必要が無く、位置合わせのための教示動作が容易となる。
【0021】
本発明に係るロボット装置においては、構成3を有することにより、制御手段を介して手動制御が可能なマニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し複数の把持爪が嵌合される凹部を用いるので、把持爪と位置基準部とを当接させることにより、それぞれが有する角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状によって6軸方向の拘束ができ、マニピュレータの回転方向を含めた6軸方向の位置及び姿勢データを1回の合致動作により取得することができ、制御手段により、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作が可能であるので、教示動作のために専用のキャリブレーションツールをマニピュレータに取り付ける必要が無く、位置合わせのための教示動作が容易となる。
【0022】
本発明に係るロボット装置の制御方法においては、構成4を有することにより、力制御による位置補正機能を有するマニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し複数の把持爪が嵌合される凹部を用いるので、把持爪と位置基準部とを当接させることにより、それぞれが有する角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状によって6軸方向の拘束ができ、マニピュレータの回転方向を含めた6軸方向の位置及び姿勢データを1回の合致動作により取得することができ、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に倣わせて当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うので、教示動作のために専用のキャリブレーションツールをマニピュレータに取り付ける必要が無く、位置合わせのための教示動作が容易となる。
【0023】
本発明に係るロボット装置の制御方法においては、構成5を有することにより、手先位置を計測追従可能でコンプライアンスメカニズムを有するマニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し複数の把持爪が嵌合される凹部を用いるので、把持爪と位置基準部とを当接させることにより、それぞれが有する角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状によって6軸方向の拘束ができ、マニピュレータの回転方向を含めた6軸方向の位置及び姿勢データを1回の合致動作により取得することができ、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に倣わせて当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うので、教示動作のために専用のキャリブレーションツールをマニピュレータに取り付ける必要が無く、位置合わせのための教示動作が容易となる。
【0024】
本発明に係るロボット装置の制御方法においては、構成6を有することにより、制御手段を介して手動制御が可能なマニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、位置基準部として、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し複数の把持爪が嵌合される凹部を用いるので、把持爪と位置基準部とを当接させることにより、それぞれが有する角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状によって6軸方向の拘束ができ、マニピュレータの回転方向を含めた6軸方向の位置及び姿勢データを1回の合致動作により取得することができ、マニピュレータの手先を作業台上に設けられた位置基準部に制御手段により当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行うので、教示動作のために専用のキャリブレーションツールをマニピュレータに取り付ける必要が無く、位置合わせのための教示動作が容易となる。
【0025】
すなわち、本発明は、教示動作のための専用のキャリブレーションツールが不要であり、また、マニピュレータの手先にキャリブレーションツールを取り付けることが不要であって、教示動作のたびに微小な位置及び姿勢のずれが生ずることがなく、かつ、迅速な教示動作が可能となされ、また、教示作業のときと同じそのままの手先の構成で、ワークを把持するなどの作業ができるロボット装置及びロボット装置の制御方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るロボット装置の構成を示す模式的な側面図である。
【図2】本発明に係るロボット装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るロボット装置の使用状況を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0028】
〔本発明に係るロボット装置の構成〕
図1は、本発明に係るロボット装置の構成を示す模式的な側面図である。
【0029】
本発明に係るロボット装置は、図1に示すように、マニピュレータ1を有し、このマニピュレータ1により、対象ワーク101の把持、運搬及び他の部材への組立が可能となされているものである。対象ワーク101は、作業台102上の所定の位置に載置されている。
【0030】
マニピュレータ1は、複数のアクチュエータ(駆動装置)とリンク(剛体の構造物)1a,1b,1c,1dとによって構成され、ロボットベース4上に設置されている。すなわち、各リンク1a,1b,1c,1d間は、回動(屈曲)、または、旋回可能な関節2a,2b,2c,2d,2eを介して接続されており、それぞれアクチュエータによって相対駆動されるようになっている。各アクチュエータは、図示しないコンピュータなどの制御手段によって制御される。
【0031】
最も先端側のリンク1dの先端側(以下、「手先」という。)には、最も先端側の関節2e及び力センサ3を介して、先端ツール機構となる把持機構5が接続されている。最も先端側の関節2eは、最も先端側のリンク1dの軸回りに把持機構5を旋回可能とする関節である。力センサ3は、力制御などの位置補正機能を実現するためのものである。
【0032】
このマニピュレータ1は、力制御による位置補正機能を有しているもの、または、手先位置が計測追従可能でコンプライアンスメカニズムを有しているもの、あるいは、制御手段を介して手動制御が可能となっているもののいずれであってもよい。
【0033】
把持機構5は、制御手段によって制御される。把持機構5は、複数の把持爪6を備えており、把持爪6を開閉可能としている。把持機構5は、これら把持爪6によって対象ワーク101を把持、搬送、または、組立てる機能を有している。この把持機構5において、各把持爪6は、閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となる。この実施の形態においては、把持爪6は、閉じた状態において、四角錘形状となるようになっている。
【0034】
このマニピュレータ1においては、順次先端側のリンクの位置が制御されることにより、手先の位置が制御され、この手先において把持機構5によって、対象ワーク101を把持し、所定の位置に搬送し、または、組立てることができる。
【0035】
そして、このロボット装置においては、作業台102上には、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪6の形状に対応した形状を有し、複数の把持爪6が嵌合される凹部である位置基準部7が形成されている。この位置基準部7は、作業台102上における対象ワーク101の載置位置の基準となるものである。すなわち、作業台102上における対象ワーク101の載置位置は、位置基準部7に対して、所定の方向及び距離となされている。
【0036】
図2は、本発明に係るロボット装置の要部の構成を示す斜視図である。
【0037】
この実施の形態においては、図2に示すように、把持爪6は閉じた状態において四角錘形状となるようになっているので、位置基準部7は、作業台102上に形成された凹部であって、四角錘形状を有し、複数の把持爪6が嵌合されるように形成されている。
【0038】
〔本発明に係るロボット装置の制御方法(ロボット装置の動作)〕
このロボット装置においては、制御手段は、マニピュレータ1の手先の把持爪6を閉じた状態として、作業台101上の位置基準部7に当接させることにより、位置合わせのための教示動作を行う。すなわち、制御手段は、把持爪6を閉じて外形を四角錘形状とし、力制御などを用いて、位置基準部7に嵌合させて合致させる。そして、制御手段は、このときのマニピュレータ1の位置及び姿勢データから、教示データを取得することができる。
【0039】
把持爪6を位置基準部7に嵌合させて合致させる動作は、力制御による位置補正機能を用いて位置基準部7に倣わせて行ってもよいし、手先位置が計測追従可能でコンプライアンスメカニズムを用いて位置基準部7に倣わせて行ってもよいし、または、制御手段を介して手動制御により行ってもよい。
【0040】
図3は、本発明に係るロボット装置の使用状況を示す平面図である。
【0041】
したがって、このロボット装置においては、図3に示すように、複数の作業台102,103,104において作業を行う場合に、各作業台102,103,104ごとに設けられた位置基準部7によって、各作業台102,103,104ごとの教示データを取得し、各作業台102,103,104ごとに教示動作を行って、対象ワーク101に対する作業を迅速に行うことができる。
【0042】
すなわち、このロボット装置においては、このロボット装置と各作業台102,103,104との位置関係や、各作業台102,103,104間の位置関係が正確に規定されていなくとも、各作業台102,103,104ごとの教示動作を行うので、各作業台102,103,104における対象ワーク101に対する作業を正確に行うことができる。
【0043】
なお、本発明に係るロボット装置においては、把持爪6の閉じた状態の形状は、前述の実施の形態に示したような四角錘形状ではなく、その他の多角錘形状や、楕円錘形状であってもよい。
【0044】
また、把持爪6の閉じた状態の形状は、図2中に一点鎖線で示すように、先端が尖っている必要はなく、多角錘形状、または、楕円錘形状の周面の一部であって全周に亘る面を有する形状であればよい。把持爪6を閉じた状態の先端が尖っているほど、この先端部の大きさと位置基準部7の開口部の大きさとの差が大きくなるため、より大まかな位置を合わせるだけで、教示動作を行なうことができる。把持爪6を閉じた状態の先端形状は、教示動作前の位置合わせの精度と、把持爪6の作業性とに応じて設定することができる。
【0045】
さらに、このロボット装置において、教示動作は、マニピュレータ1の手先を作業台102上に設けられた位置基準部7に当接させることによって行えればよく、その手先が把持爪6でなくともよい。すなわち、このロボット装置においては、把持機構5の側面部や把持爪6の近傍に設けた位置基準用の突起などを、作業台102上に設けられた位置基準部7に当接させることによって、教示動作を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、マニピュレータを備えたロボット装置及びそのようなロボット装置の制御方法であって、位置合わせのための教示動作を容易化したロボット装置及びロボット装置の制御方法に適用される。
【符号の説明】
【0047】
1 マニピュレータ
1a,1b,1c,1d リンク
2a,2b,2c,2d,2e 関節
5 把持機構
4 ロボットベース
6 把持爪
7 位置基準部
101 対象ワーク
102,103,104 作業台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はめあいに倣って位置を補正する手段として、力制御による位置補正機能を有するマニピュレータと、
前記マニピュレータの動作を制御する制御手段と
を備え、
前記マニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、
前記制御手段は、前記マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行い、
前記位置基準部として、前記角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、前記複数の把持爪が嵌合される凹部を用いる
ことを特徴とするロボット装置。
【請求項2】
はめあいに倣って位置を補正する手段として、手先位置を計測追従可能で、コンプライアンスメカニズムを有するマニピュレータと、
前記マニピュレータの動作を制御する制御手段と
を備え、
前記マニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、
前記制御手段は、前記マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行い、
前記位置基準部として、前記角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、前記複数の把持爪が嵌合される凹部を用いる
ことを特徴とするロボット装置。
【請求項3】
制御手段を介して手動制御が可能なマニピュレータを備え、
前記マニピュレータの手先は、複数の把持爪を備えており、これら把持爪を閉じた状態においては、角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となり、
前記角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し前記複数の把持爪が嵌合される凹部を位置基準部として用いて、前記制御手段により、前記マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた前記位置基準部に当接させることによって、位置合わせのための教示動作が可能である
ことを特徴とするロボット装置。
【請求項4】
はめあいに倣って位置を補正する手段として力制御による位置補正機能を有するマニピュレータを備え、前記マニピュレータの手先が、複数の把持爪を備えこれら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となるロボット装置の制御方法であって、
位置基準部として、前記角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、前記複数の把持爪が嵌合される凹部を用いて、
前記マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた前記位置基準部に倣わせて当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行う
ことを特徴とするロボット装置の制御方法。
【請求項5】
はめあいに倣って位置を補正する手段として手先位置を計測追従可能でコンプライアンスメカニズムを有するマニピュレータを備え、前記マニピュレータの手先が、複数の把持爪を備えこれら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となるロボット装置の制御方法であって、
位置基準部として、前記角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、前記複数の把持爪が嵌合される凹部を用いて、
前記マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた前記位置基準部に倣わせて当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行う
ことを特徴とするロボット装置の制御方法。
【請求項6】
制御手段を介して手動制御が可能なマニピュレータを備え、前記マニピュレータの手先が、複数の把持爪を備えこれら把持爪を閉じた状態においては角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状となるロボット装置の制御方法であって、
位置基準部として、前記角錘形状、楕円錘形状、または、これらの周面の一部であって全周に亘る面を有する形状を構成している複数の把持爪の形状に対応し、前記複数の把持爪が嵌合される凹部を用いて、
前記マニピュレータの手先を、作業台上に設けられた前記位置基準部に前記制御手段により当接させることによって、位置合わせのための教示動作を行う
ことを特徴とするロボット装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−173200(P2011−173200A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38359(P2010−38359)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】