説明

ロータリーポンプ

【課題】小型軽量で低速回転から高速回転域まで実用可能でエネルギー効率の良い流体ポンプを得ること。
【解決手段】真円の内周面16を持つケーシング4内に真円の外周面17を持つ回転シリンダー2と両頭のピストン3と偏心軸を持つ駆動軸1を組合せ駆動軸歯車1bとシリンダー内歯歯車2aを噛み合わせ駆動軸を回転させることによりピストン3とシリンダー2とケーシング4の間にできる空間部27の体積が伸縮する。その体積の変化によってケーシング4の内周面16から外周に通じる吸入口22と排出口21を通して吸入と排出を行なうロータリーポンプである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体や液体等の流体の吸入、圧縮、吐出を回転によって行う流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
科学の発達に伴い、流体機械であるポンプも種々開発されて性能が向上しており、回転式小型ポンプとしては仕切弁を持つロータリーポンプ、スクロール式ポンプ等がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これ等の回転式流体ポンプは吸入、圧縮、吐出に消費するエネルギーの他に毎回転ごとにスプリングの反発抵抗をともない、それによるエネルギー損失が大きく省エネルギー時代に合わない。又回転機構にスプリングをともなっているため、回転式でありながら高速回転に不向きである等小型化にも限界がある。
これ等のことを解決して消エネルギー、高速回転、小型化にする必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、このような不都合を構造的に解消し効率の良い回転式流体ポンプを提供せんとするものである。
【作用】
【0005】
駆動軸が2回転すると駆動軸歯車に噛み合っているシリンダーの内歯歯車が1回転するその時駆動軸の偏心軸部に嵌め合っている両頭のピストンがシリンダーに対し相対的に1往復するそのピストンの往復動によりシリンダーとピストンとケーシング内周面との間の空間が伸縮する。その空間の伸縮によりケーシングの外側から吸入口と排出口を通してシリンダーが1回転する時2回の吸入と排出を行なうものであり、この時ピストンは駆動軸の偏心軸部を中心に自転をしながら公転をし、駆動軸とシリンダーはそれぞれの軸受けを中心に回転する。
よってこのロータリーポンプは往復運動部分は全くなく又スプリングの必要な部分もないためそれらによるエネルギー損失がなく、また高速回転が可能であるため小型化できるものである。
【発明の効果】
【0006】
上述の構造である此のロータリーポンプの駆動軸を動力装置によって1回転駆動する時シリンダーは180度回転しそれに伴いピストンも180度自転して吸入と排出をそれぞれ1回行うが構造上ピストンとシリンダーの間にできる空間が大きいため吐出量が多く、構造上全ての部分が円運動でありスプリングもないため往復運動とスプリングの反発抵抗によるエネルギーの損失が全くない。
又、全てが円運動であり高速回転が可能であるため小型化ができる等経済的な多くの特徴があり産業利用上優れた発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
真円の外周面を持つ円柱形のシリンダー内にピストンが往復滑動するための穴を外周方向から貫通し両側面の中央部に軸受けを設けその内側に内歯歯車を軸受けと同一中心に設けたシリンダー内に、中央部に駆動軸の偏心軸部と嵌め合い回転可能な穴を設けた両頭のピストンと、そのピストン穴に嵌め合う偏心軸部を設けその偏心量はシリンダー内歯歯車のピッチ円直径の1/4とし、その偏心軸部の外側にシリンダーの内歯歯車と噛み合う歯車を設けその歯数は内歯歯車の1/2とする駆動軸と組合わせた回転体を、内周面が真円で円筒形のシリンダー内に組入れ駆動軸の回転中心とシリンダーの回転中心巨りが内歯歯車のピッチ円直径の1/4に設定しシリンダー回転軸受け中心より外側に駆動軸軸受けを持ちシリンダー回転中心とケーシング内周円の中心と同心になるよう加工した両側板でケーシング内に組み込み駆動軸を回転させることにより吸入、排出を行うものである。
【実施例1】
【0008】
以下本発明の実施例を図面について説明する。
図1はロータリーポンプ全体を示す1部破断した正面図であり、図2は図1のKーK断面図であり、図3は図1のGーG断面図である。
図4は図1のピストン3の円筒形を長方形の断面形にした実施例であり、構造的には図1と同じでありシール9、10,11の代わりに気密溝を9a、10a、11aを設けており、吸入口22,排出口21を各々3個所にした1部破断の正面図である。
図5は図4のKーK断面図であり、図6は図4のGーG断面図である。
図7はシリンダー2の回転とピストン3の回転と往復動を示す説明図である。
【0009】
シリンダー2の回転と、駆動軸1の回転と、ピストン3の回転及往復運動のメカニズムを図によって説明すると、
図7において円Lはシリンダーの内歯歯車2aのピッチ円とし、円Sは駆動軸1の歯車1bのピッチ円及偏心軸部1aの中心点の回転円であり、その直径は円Lの1/2である。点Oは基点であり、点Cは駆動軸の歯車1bと偏心軸部1aの回転中心点であり線ACは各々の半径である。
点Dはシリンダー2の内歯歯車2aの回転中心であり、線BDEはその内歯歯車2aの中心線及びピストン3の中心線とする。まず駆動軸の回転によって円Sがある角度回転するとき、それに噛み合っている円Lは円Sの回転角度の1/2の角度を点Dを中心に回転する。
点Aが円S上を基点Oから点Dまで180度回転する時その半分の回転角度で回転する直線BDEは常に点Aを通り90度回転する。同様に点Aが点Dから円S上を基点Oまで180度回転して戻る時直線BADEの点Eは基点Oまで90度回転する。
【0010】
この様にして直線BADEが回転する時、直線BAの長さは変化して点Aが点Dに達した時円Lの半径と等しくなり次に点Aが点Oまで回転すると直線BADEの点Eは点Oに達して直線BA間の長さは最大となり円Lの直径となる。
このBA間の長さの変化がシリンダー2に対して往復運動するピストン3のストロークの変化であり、ストロークの最大値は円Lの直径に等しい。
【実施例の作用】
【0011】
真円の外周面17を持つ円柱形のシリンダー2の両側面の中心にシリンダー軸25,26を設け、その軸の内側にシリンダー2と一体化の内歯歯車2aを設け外周方向からピストン3が滑動する穴2bをシリンダー回転中心Dを通って貫通したシリンダー2と、中心に偏心軸部1aと回転可能に嵌め合う穴を設けた両頭のピストン3と、そのピストン穴に嵌め合う偏心量がシリンダー内歯歯車2aのピッチ円直径の1/4である偏心軸部1aとその外側に内歯歯車2aと噛み合い歯数が内歯歯車2aの半分である駆動軸歯車1bを設けた駆動軸とからなる組立回転体を、吸入口22と排出口21を外周に持ち内周面16が真円をなす円筒形のケーンシング4内に、シリンダー2の回転中心Dと駆動軸1の回転中心Cとの軸間巨りがシリンダーの内歯歯車2aのピッチ円直径の1/4即ち駆動軸歯車1bのピッチ円直径の1/2となる駆動軸軸受け14、15とシリンダー軸受け部12、13とを持つ軸受け7、8と、側板5、6により組み込みロータリーポンプの形体をなす。
【0012】
実施例1.2.3図において円筒形ピストン2bには圧力漏れを防止するピストンシール9を設けており、シリンダー2の外周面17にはシリンダーシール10、11を設け圧力漏れを防いでいる。
又、ケーシング4には内周面16に流入溝24と流出溝23を外周部には吸入口22と排出口21を持ち、側板締結ネジ穴を設けている。
両側板5、6は外周部にケーシングに締結するネジ18の通る穴を設け、中心部に軸受け7、8を組込む穴を持ち、その周りの軸受締結ネジ19、20によって軸受け7、8を組付けている。
軸受け7、8は駆動軸1の貫通する軸受部14、15とシリンダー軸受部12、13を持ちそれ等の中心巨りは駆動軸歯車1bのピッチ円直径の1/2となっている。
又駆動軸1が回転する時、駆動軸の偏心軸部1aとピストンの公転によって発生するアンバランスを解消するために軸受け8の外側にバランスウエイト27を設けるか又はこのロータリーポンプを2連式の構造にすることによりバランスをとるようにしても良い。
【0013】
図4、5、6の実施例はピストン3の断面形を円筒形から長方形に変更し側面に気密を保つための気密溝9aを設けシリンダー2のピストン滑動穴2bも長方形にしシリンダー外周面に気密を保つための気密溝10a、11aを設け、ケーシング内周面の流入及び流出溝はなく排出口21と吸入口22を複数個設けている。
【産業上の利用可能性】
【0014】
産業用の流体機械
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明実施例の1部を破断した正面図
【図2】 図1に示す本発明のKーK断面図
【図3】 図1に示す本発明のGーG断面図
【図4】 本発明のピストンと吸排出口シール等を変更した実施例の1部を破断した正面図
【図5】 図4に示す本発明のKーK断面図
【図6】 図4に示す本発明のGーG断面図
【図7】 本発明実施例の駆動軸、ピストン、シリンダーの関連した動きを示す説明図
【符号の説明】
【0016】
1 駆動軸
1a 偏心軸部
1b 駆動軸歯車
2 シリンダー
2a シリンダー内歯歯車
2b ピストン滑動穴
3 ピストン
4 ケーシング
5 側板
6 側板
7 軸受け
8 軸受け
9 ピストンシール
9a ピストン気密溝
10 シリンダーシール
10a シリンダー気密溝
11 シリンダーシール
11a シリンダー気密溝
12 シリンダー軸受部
13 シリンダー軸受部
14 駆動軸軸受部
15 駆動軸軸受部
16 ケーシング内周面
17 シリンダー外周面
18 側板締結ネジ
19 軸受締結ネジ
20 軸受締結ネジ
21 排出口
22 吸入口
23 流出溝
24 流入溝
25 シリンダー軸
26 シリンダー軸
27 空間部
28 バランスウェイト
C 駆動軸回転中心
D シリンダー回転中心
円S 偏心軸部中心の回転円及び駆動軸歯車のピッチ円
円L シリンダー内歯歯車のピッチ円
O点 基点
A点 偏心軸部中心点
B点 内歯歯車ピッチ円の基点
C点 円Sの中心点
D点 円Lの中心点
E点 内歯歯車ピッチ円の基点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真円の外周面を持つ円柱形のシリンダー両側面の中心に軸受けを設け回転可能とし、その軸受け部内側に軸受けと同一中心を持つ内歯歯車を設け、外周方向からピストンが滑動する穴を貫通したシリンダーと、中心に偏心軸部と回転可能に嵌め合う穴を設けた両頭のピストンと、そのピストン穴に嵌め合う偏心軸を持ちその偏心量がシリンダー内歯歯車のピッチ円直径の1/4であり、その偏心軸部の外側にシリンダーの内歯歯車と噛み合い,歯数がシリンダー内歯歯車の1/2とする歯車を設けた駆動軸との組立回転体を、内周面から外周部に通じる吸入口と排出口を持ち内周面が真円をなす円筒形のケーシング内に、シリンダー内歯歯車と駆動軸歯車を噛み合わせ、駆動軸の回転中心がシリンダーの回転中心より外側へ偏心して、その軸間巨りがシリンダー内歯歯車のピッチ円直径の1/4になるように、シリンダー軸受け及駆動軸軸受けを両側板に設け、ケーシング内周円とシリンダー軸受け中心が同心になるよう両側板にてケーシング内に蓋してなるロータリーポンプ。
【請求項2】
シリンダー外周面においてケーシング内周面に密接して滑動するシールを円周方向に対して平行及直角に一列ないし複数列設けてなる請求項1記載のロータリーポンプ。
【請求項3】
シリンダー外周面において円周方向に対して平行及直角に一列ないし複数列の気密溝を設け、四辺形の断面形を持つピストンの滑動面に気密溝を一列ないし複数列設けてなる請求項1記載のロータリーポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−170175(P2006−170175A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382461(P2004−382461)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(591205341)
【Fターム(参考)】