説明

ローラーモールド作製方法

【目的】本発明は、ローラーモールド作製方法に関し、スリット状の並列したパターンを有する大面積のローラモールドを精度良好かつ短時間に作製してスループットを向上させると共に継ぎ目のないローラーモールドを作製することを目的とする。
【構成】最終仕上がりパターン中の回転方向に長いスリット状のパターンの長さを短縮した電子線が透過するパターンを有するマスクを、レジストを塗布したローラーモールドの所定位置に近接して位置づけるステップと、電子線をマスクに照射しつつマスク上のパターンを透過した電子線をローラーモールド上のレジストに露光しつつ回転させるステップと、露光しつつ回転させて一周あるいは露光に必要な部分を回転して露光するステップと、回転して露光した後、ローラーモールド上の露光されたレジストを現像するステップと、現像した後のローラーモールドをエッチングするステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンを転写するローラー状の押し型を作製するローラーモールド作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDやLDなどの光学デバイスの表面、あるいは内部に光の波長程度の周期構造をつくることによって光学デバイスの特性を制御する、あるいは改良することが行われている。このような目的の周期構造はいろいろな微細加工によって作製するが、その中でも現在もっとも有力視されている技術の1つにナノインプリント技術がある。
【0003】
ナノインプリント等の押し型転写に使えわれるモールド(押し型)は光学的な露光装置によって製作していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したモールド上に作製するパターンのサイズが300nm位を下回る場合には光学的な方法では波長の限界のために解像力が不足する。このような場合には、電子線露光装置を使用して微細なパターンをモールド上に作製するが、電子線露光装置を用いた描画では描画に非常に多くの時間がかかり、特に、大面積のモールドではスループットが極めて低くなり、ひいてはコストが非常に高いものとなってしまうという問題があった。
【0005】
特に、大面積化の方法のひとつとしてローラー型モールドが提案されている。従来のローラー型モールドの製作法は大面積モールドを金属薄膜などの可擁性の材料で作製し、ローラーに貼り付けるものであった。このため、上述したコストの問題に加えて、更に、貼り付けるモールドに切れ目があるためローラーの1回転でパターンに継ぎ目が残る欠点があるという問題があった。
【0006】
また、電子線描画装置でステンシルマスクを作成し、これをローラー型モールドに転写することが考えられる。この際、当該ステンシルマスクの開口部のパターンがローラー型モールドの回転方向に長い場合、例えば幅に比して100倍以上長いスリット状を複数並列に並べる開口パターンの場合にはスリット状の開口パターンと隣接する開口パターンとの間のスリット状の部分が変形してしまい、特に幅に比して更に1000倍ものスリット状の開口パターンが並列するステンシルマスクの作製が困難となってしまう事態が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は最終仕上がりパターンのうち回転方向にスリット状のパターンについて短縮したパターンのマスクを電子線描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でローラモールド上に回転しつつマスク露光した後に現像し、スリット状の並列したパターンを有する大面積のローラモールドを精度良好かつ短時間に作製してスループットを向上させると共に継ぎ目のないローラーモールドを作製することを目的としている。
【0008】
そのために、本発明は、パターンを転写するローラー状の押し型を作製するローラーモールド作製方法において、ローラーモールドにレジストを塗布するステップと、最終仕上がりパターン中の回転方向に長いスリット状のパターンの長さを短縮した電子線が透過するパターンを有するマスクを、レジストを塗布したローラーモールドの所定位置に近接して位置づけるステップと、近接して位置づけた状態で、電子線をマスクに照射しつつマスク上のパターンを透過した電子線をローラーモールド上のレジストに露光しつつ回転させるステップと、ローラーモールド上に塗布したレジストに露光しつつ回転させて一周あるいは露光に必要な部分を回転して露光するステップと、回転して露光した後、ローラーモールド上の露光されたレジストを現像するステップと、現像した後のローラーモールドをエッチングし、マスク上のパターンに対応するスリット状のパターンをローラーモールド上に形成するステップとを有する。
【0009】
この際、マスクでローラーモールドの回転方向に露光を行なった後、回転方向と直角方向の隣接する位置にマスクを移動させて位置づけた後、マスクでローラーモールドを回転しつつ露光することを繰り返すようにしている。
【0010】
また、マスクでローラーモールド上に塗布したレジストに露光する際に、露光開始位置および露光終了位置で所定時間だけ回転を停止し、パターンの始点および終点の露光を行うようにしている。
【0011】
また、最終仕上がりパターン中の回転方向に長いスリット状のパターンの長さを短縮したパターンを作製し、作製したパターンをマスクにレジストを塗布して電子線描画した後に現像し、更に、エッチングして電子線が透過するパターンをマスクに作製するようにしている。
【0012】
また、長さを短縮したパターンとして、ほぼ矩形のパターンあるいは回転方向の長さを小さくした矩形のパターンとするようにしている。
【0013】
また、マスク上に形成する長さを短縮したパターンが複数並列にある場合には、複数並列を複数に分割して各分割群のパターン毎に回転方向にそれぞれ所定距離ずらし、複数並列のパターン間の回転方向と直角方向のピッチを複数倍に大きくするようにしている。
【0014】
また、マスクを電子線で全面照射し、マスク上に形成したパターンを透過した電子線を電磁型あるいは静電型の縮小レンズを用いてローラーモールドに塗布したレジスト上に縮小したパターンを形成し、回転しつつ露光するようにしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、最終仕上がりパターンのうち回転方向にスリット状のパターンについて短縮したパターンのマスクを電子描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でローラモールド上に回転しつつマスク露光した後に現像することにより、スリット状の並列したパターンを有する大面積のローラモールドを精度良好かつ短時間に作製してスループットを向上させると共に継ぎ目のないローラーモールドを作製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、最終仕上がりパターンのうち回転方向にスリット状のパターンについて短縮したパターンのマスクを電子描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でローラモールド上に回転しつつマスク露光した後に現像し、スリット状の並列したパターンを有する大面積のローラモールドを精度良好かつ短時間に作製してスループットを向上させると共に継ぎ目のないローラーモールドを作製することを実現した。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の動作説明フローチャートを示す。
【0018】
図1において、S1は、レジストをローラーモールドに塗布する。これは、後述する図5のローラーモールド2にレジストを塗布する。
【0019】
S2は、ステンシルマスクをセットする。これは、S1でレジストを塗布したローラーモールド2に近接して、図5に示すように、ステンシルマスク1をセットする。ステンシルマスク1は、後述する図2のフローチャートに従い、後述する図3の(a)の最終仕上がりパターンの場合には、図3の(b)のマスク(ステンシルマスク1)に示すように、回転方向にスリット状の長いパターンを短縮してほぼ矩形のパターンが当該ステンシルマスク1上の開口パターンとして形成されている。
【0020】
S3は、モールドの回転初期位置の検出を行う。これは、S2でステンシルマスクをセットした、例えば図5のローラーモールド2上に予め設けたアライメントマーク13を基準に当該ローラーモールド2の回転初期位置の検出を行い、記憶する。
【0021】
S4は、電子線を照射して所定時間待つ。これは、S2、S3で後述する図5に示すようにステンシルマスク1をローラーモールド2に近接してセットした状態で、電子線をステンシルマスク1の全面に照射し、当該ステンシルマスク1上に形成された図3の(b)の矩形の開口パターンを通過した電子線をローラーモールド2上に塗布したレジストに露光し、始点の部分を露光するに充分なだけの所定時間待つ。
【0022】
S5は、ローラーモールドを一定速度で、一定方向に回転させる。これにより、S4で始点の部分に露光した後、ローラーモールドを回転させ、ステンシルマスク1の開口パターンを透過した電子線でスリット状に露光を連続して行いつつ回転させる。
【0023】
S6は、終端でローラーモールドを停止させ、所定時間を経過させた後に、電子線照射を停止させる。これは、S5でローラーモールドを回転させつつステンシルマスク1の開口パターンを透過した電子線でスリット状に当該ローラーモールド上に露光した後、終点に到着したときに当該終点に露光するために充分な時間がだけ回転を停止させた後、電子線の照射を停止する。尚、S4からS6は、次のS7で1回転が検出されるまで、必要に応じて、ローラーモールド2上にステンシルマスク1で長いスリット状のパターンを繰り返し露光する。
【0024】
S7は、1回転の検出か判別する。これは、S3で回転初期位置を基準に、1回転が検出されたか判別する。そして、更に、露光を継続すると判明した場合には、図5でステンシルマスク1を図示のステップ・アンド・リピートと記載したように、ローラーモールド2の回転方向と直角方向に所定距離だけ当該ステンシルマスク1(あるいはローラーモールド2)を移動させた後、S3に戻り、S3からS7をくり返す(ステップ・アンド・リピート)。これにより、図5のローラーモールド2に塗布されたレジストに、ステンシルマスク1のパターン(例えば図3の(b))のパターン)をもとに回転方向に長いスリット状のパターンを正確かつ迅速にステップ・アンド・リピートして露光することが可能となる。一方、S7で継続しないと判明した場合には、ローラーモールド2への露光が全て終了したので、S8に進む。
【0025】
S8は、ローラーモールドを現像、エッチングする。これにより、ローラーモールド2にステンシルマスク1上のパターンが回転方向にスリット状に形成されることとなる。
【0026】
以上のように、最終仕上がりパターン(例えば図3の(a))の回転方向に長いスリット状のパターンについて長さを短縮したパターンをステンシルマスク1上に形成しておき(図3の(b))、ローラーモールド2に近接して当該ステンシルマスク1を配置し、電子線3によりステンシルマスク1のパターンをローラーモールド2上に塗布したレジストに露光しつつ回転させて長いスリット状のパターンを露光した後、現像、エッチングすることにより、ローラーモールド2上にスリット状の長いパターンを正確かつ迅速に作製することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0027】
図2は、本発明のマスク作製フローチャートを示す。
【0028】
図2において、S11は、最終仕上がりパターンからステンシルマスクのパターンを作成する。例えば後述する図3の(a)の回転方向にスリット状に長い最終仕上がりパターンについて、回転方向を短縮してほぼ矩形のパターンした図3の(b)のマスクに示すパターン(マスクパターン)を作成する。マスクパターンの幅L’は最終仕上がりパターンの幅Lと同じとし、マスクパターンの長さ(回転方向の長さ)H’は当該マスクパターンの幅L’とほぼ同じ(正方形)、あるいは小さくする(矩形)(ここでは、説明を簡単にするために同じ(正方形)、即ちL’=H’=Lとする)。
【0029】
S12は、強度計算等を行い、必要に応じてパターンの分割・変形を行う。これは、S11で作製した例えば図3の(b)のパターンについて、強度計算や近接効果などの当該パターンが適切にステンシルマスク1上に作製できるかチェックし、例えばパターンとパターンとの間が狭くて強度的に不足すると判明した場合、あるいは両者のパターンが近づすぎていわゆる近接効果により当該パターンを精度良好に製作できないと判明した場合などに、当該パターンの分割・変形を行う。パターンの分割・変形は、例えば図3の(b)のパターンを、後述する図4の(a)のパターンのように、1群と2群とに分割して両者をピッチ分だけ回転方向にずらし、パターンとパターンとの間の距離を大きくして強度が充分あるいは近接効果があっても正確なパターンを作製できるようにする。
【0030】
S13は、ステンシルマスクパターンの描画データ(又は、CADデータ)を作成する。これは、S11(あるいはS12)で作成した例えば図3の(b)のパターン(あるいは図4の(a)のパターン)について、電子線描画装置で描画するためのデータ(描画データ)、又は、CADデータを作成する。
【0031】
S14は、レジストを塗布したステンシルマスク基板にEB描画を行う。これは、ステンシルマスク基板(通常は、シリコンウェハ)にレジストを均一に塗布し、図示外の電子線描画装置により、S13で作成した描画データ(又はCADデータ)をもとに、例えば図3の(b)のパターン(あるいは図4の(a)のパターン)をレジストに電子線描画して露光する。
【0032】
S15は、現像、エッチングする。これは、S14でステンシルマスク基板上に塗布したレジストに図3の(b)のパターン(あるいは図4の(a)のパターン)を電子線描画して露光した後、現像、エッチングし、パターンの部分を開口パターンにする。
【0033】
S16は、ステンシルマスクが完成する。これはS14で現像、エッチング、更に余分はレジストを除去、洗浄、乾燥などし、図3の(b)のパターン(あるいは図4の(a)のパターン)を開口パターンとして持つステンシルマスク1が完成する。
【0034】
以上によって、例えば図3の(a)の最終仕上がりパターンがある場合に、当該パターン中の回転方向に長いスリット状のパターンについて、長さ方向を短縮してほぼ矩形パターンとした図3の(b)のパターン(マスクパターン)(あるいは図4の(a)のパターン)を作成し、当該マスクパターンをステンシルマスク基板に塗布したレジストに電子線描画して露光、現像、エッチング、レジスト除去、洗浄などして図3の(b)のパターン(開口パターン)(あるいは図4の(a)のパターン)を有するステンシルマスク1を作製することが可能となる。そして、既述した図1のフローチャートに従い、ローラーモールド2上に塗布したレジストに回転転写し、現像、エッチング、レジスト除去、洗浄などして図3の(c)のローラーモールド(あるいは図4の(b)のローラーモールド)を作製することが可能となる。
【0035】
図3は、本発明の説明図を示す。
【0036】
図3の(a)は、最終仕上がりパターンの例を示す。これは、ローラーモールド2を用いて形成する最終仕上がりのパターン(ICウェハ上に形成するパターン)を模式的に表したものであって、ここでは、回転方向(ローラーモールド2の回転方向)にスリット状の長いパターンが複数並列に存在する例を示す。スリット状の長いパターンの幅をL,長さをH、パターンとパターンとの間の距離をSとする。H/Sが100位になると、当該パターンをそのままステンシルマスク1上の開口パターンとして作製すると、開口パターンと開口パターンとの間の部分が変形する現状が観察された。更にH/Sが1000位になると、開口パターンと開口パターンとの間の部分が変形してしまい作製できなかった。尚、ステンシルマスク上の開口パターンは、通常、シリコンウェハの開口パターンを作製する部分の近傍を0.001mm程度の薄膜にした後に開口パターンを作製する。
【0037】
図3の(b)は、マスク(ステンシルマスク)の例を示す。図示のステンシルマスク1は、図3の(a)の最終仕上がりパターン中の回転方向に長いスリット状のパターンについて、長さを短縮してほぼ矩形にしたパターンを作製した例を模式的に示す。図示のステンシルマスク1上のパターン(マスクパターン)の幅L’、長さH’、パターンとパターンとの間の距離をS’とすると、
・L’=L
・S’=S
・H’=L’=L
とした例を示す。
【0038】
尚、マスクパターンの長さH’は、矩形とした大きさである必要はなく、更に幅S’よりも小さくしてもよい。
【0039】
図3の(c)は、ローラーモールドの例を示す。図示のローラーモールド2は、図3の(b)のマスク1で回転転写して作製したパターン(図3の(a)の最終仕上がりパターンに相当するパターン)を模式的に示したものであって、ローラーモールド2上に凹凸として形成されたパターンの例を示す。図示のローラーモールド2上のパターンの幅L’’、長さH’’、パターンとパターンとの間の距離をS’’とすると、
・L’’=L’
・S’’=S’
・H’’=(図1のS3からS5でローラーモールド2を回転させて露光した角度に相当する長さ)
となる。
【0040】
図4は、本発明の他の説明図を示す。これは、図3の(b)のステンシルマスク1上の並列の矩形パターンを2分割し、第1群と、第2群とをピッチに相当する距離だけ回転方向にずらした例を示す。これにより、第1群のパターンとパターンとの間の距離が3倍となり、ステンシルマスク1の開口パターンと開口パターンとの間の距離を、ここでは、3倍にでき、回転方向に長いスリット状のパターンとして極めて長いものでも、ステンシルマスク1を作製することを可能にした工夫である。
【0041】
図4の(a)は、マスクの例を示す。これは、既述した図3の(a)の最終仕上がりパターンをもとに作製したステンシルマスク1上のパターンの例を示す。図3の(a)の最終仕上がりパターン中の並列パターンについて、2分割し、第1群と第2群とのパターンを回転方向にピッチ分(ここでは、第1群のパターンのピッチ分)だけずらした例を示す。図示の状態では、図3の(b)のステンシルマスク1上のパターンとパターンとの間距離S’に比し、3倍となり、極めて回転方向に長いスリット状のパターンについて図4の(a)のマスクを作製することを可能にした工夫の例を示す。
【0042】
図4の(b)は、ローラーモールドの例を示す。これは、図4の(a)のマスクをもとに回転転写、現像、エッチングして作製したローラーモールド2上に形成したパターンの例であって、始点と終点の部分が図4の(a)のステンシルマスク1上の第1群と第2群のパターンでピッチ分だけずれているのでその分だけ異なる様子を示す。しかし、通常、幅L’’に対して長さH’’が極めて大きく(例えばH/S=100で100倍)、実用上問題とならない。この図4では、特に、S’’が小さい場合に、ステンシルマスク1上にパターンを作製する場合に有効である。
【0043】
図5は、本発明の構成説明図を示す。これは、近接マスク転写の様子を模式的に示したものである。
【0044】
図5において、ステンシルマスク1は、電子線の透過する開口パターンを設けたマスクであって、電子線で回転転写するためのマスクである。
【0045】
ローラーモールド2は、回転軸に取り付けた円筒上に形成したモールドである。ここでは、ローラーモールド2の表面には均一にレジストが塗布されている。
【0046】
電子線3は、ローラーモールド2に近接して配置したステンシルマスク1の、ここでは、上から下に向けて全面照射する電子線である。尚、ステンシルマスク1上に形成されたパターンの部分について電子線で全面照射あるいは電子線で全面に渡って高速走査するようにしてもよい。
【0047】
連続回転11は、ローラーモールド2を所定速度で連続的に回転させる様子を示す。連続回転の際の回転角度の精度(ピッチ)は、回転軸を回転させるモータに設けられているエンコーダにより検出して精密に制御する。また、基準位置はローラーモールド2の所定位置に予め設定したアライメントマーク13を図示外の光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡で検出して基準位置を決定する。同様に、ステンシルマスク1についても、予め設定したアライメントマーク13を顕微鏡で検出して基準位置を決定し、両者の基準位置をもとに所定回転角度位置やピッチを制御する。更に、ローラーモールド2を回転させる回転機構部分にもアライメントマーク13を予め設定しておき、回転初期値などのときに当該アライメントマーク13をもとに設定する。
【0048】
ステップ・アンド・リピート12は、回転方向と直角方向にステンシルマスク1(あるいはローラーモールド2を含む回転機構)を移動させた状態で、連続回転11を行いつつステンシルマスク1上のパターンを電子線でローラーモールド2上のレジストに露光することを繰り返すように制御するものである。
【0049】
図6は、本発明の具体的装置例を示す。
【0050】
図6において、電子光学系21は、電子線をステンシルマスク1に照射して当該ステンシルマルク1上に形成された開口パターンを透過した電子線を、円筒状のローラーモールド2に塗布されたレジストに照射して露光するためのものであって、電子線を発生する電子銃、発生された電子線を集束および集束された電子線をステンシルマスク1上にほぼ平行に照射する照射系などから構成されるものである。
【0051】
回転モータ(エンコーダ付)22は、ローラーモールド2を所定回転角度のピッチで回転させるものである。所定回転角度のピッチは、当該回転モータ22に接続されたエンコーダで精密に検出しつつ回転させる。
【0052】
軸移動モータ23は、ステージ24をローラーモールド2の軸方向に正確に移動させるものであって、図示外のレーザ干渉計で移動量を計測しつつ精密に移動させるためのものである。
【0053】
ステージ24は、ローラーモールド2を回転可能な状態で搭載し、当該ローラーモールド2の回転方向に直角方向に精密に移動させるステージである。
【0054】
ステンシルマスク1は、電子線を透過しない厚さを持ち、一様な膜に部分的に電子線を透過する開口のパターンを加工したものである。
【0055】
試料室20は、内部を真空に保持する部屋であって、ここでは、ローラーモールド2を搭載したステージ24などを真空中に設置するためのものである。
【0056】
次に、図5および図6の構成のもとで連続転写について詳細に説明および要点を説明する。
【0057】
(1)パターンを形成するべき表面に電子線に感光する樹脂(レジスト)を塗布したローラーモールド2を回転軸で支持する。また、ローラーモールド2は回転軸に沿って1次元移動可能となっている。
【0058】
(2)このローラーモールド2の表面に近接して(100μm位)、開口パターンを有するステンシルマスク1を配置し、その上から電子線を照射する。この際、ステンシルマスク1およびローラーモールド2の任意の場所に予め設けたアライメントマーク13をもとに、両者の位置合わせを行うと共に、データ開始の基点(例えば回転角度0°)を設定する。
【0059】
(2−1)照射は必要な面積を同時に照射できる断面をもつ電子線でもよいし、細い電子線(電子線ビーム)を高速に走査して必要な面積を照射してもよい。
【0060】
(2−2)また、照射する電子線の走行は出来るだけ相互に平行となるようにし、ステンシルマスク1の開口を出てからローラーモールド2の表面に到達するまでの電子線ビームの広がりを小さくする(電子線ビームの開き角αを小さくする)。ステンシルマスク1とローラーモールド2との間の間隙をd、形成すべき最小パターン幅をsとすると、電子線ビームの広がり角αは少なくとも s/d(rad)より十分小さい必要がある。
【0061】
例えばd=50μm、s=100nmとすると、a<<2mradとなる。
【0062】
(3)ステージ24を停止した状態でステンシルマスク1のパターン面に電子線照射を開始する。これによりローラーモールド2に塗布したレジスト上の電子線によって照射された領域が露光する。そして、ステンシルマスク1のパターンを全面照射した状態で、ローラーモールド2を一定速度で連続して回転させる。1回転したら(あるいは必要な回転方向の部分を露光したら)、軸方向に1ピッチ移動してから回転露光を繰り返す。尚、回転露光の始点と終点で所定時間だけ、停止させ、当該始点と終点の部分に必要な露光を行うようにする。
【0063】
以上の操作を繰り返すことにより、ローラーモールド2上の必要領域の全てにステンシルマスク1上のパターンを回転露光できたこととなる。
【0064】
(4)露光を終了したローラーモールド2を現像し、さらにエッチンクすることによりパターンがローラーモールド2上に回転転写されて形成される(図3の(c)、図4の(b)参照)。
【0065】
図7は、本発明の縮小投影例を示す。
【0066】
図7において、電子源32は、電子線を発生する電子銃を構成する電子源である。
【0067】
コンデンサレンズ33は、電子源32で発生された電子線を集束すると共にほぼ平行な電子線をステンシルマスク1に照射するものである。
【0068】
ステンシルマスク1は、既述した電子線の通過する開口パターンを持つマスクである。
【0069】
縮小レンズ系34は、ステンシルマスク1の開口パターンを通過した電子線(電子線像)を縮小するレンズ系であって、電磁あるいは静電のレンズを用いて形成したものである。縮小レンズ系34により、ステンシルマスク1上の開口パターンの像が、ローラーモールド2上で縮小されて投影されるので、ステンシルマスク1上の開口パターンのサイズを実際にローラーモールド2上に形成するパターンのサイズよりも大きく形成でき、ステンシルマスクの作製が容易となる。
【0070】
以上の図7の縮小レンズ系34によりローラーモールド2上に塗布したレジストにステンシルマスク1の開口パターンの縮小したパターンを露光することが可能となる。この縮小投影系を、図1から図6で説明したステンシルマスク1の開口パターンを直接にローラーモールド2に電子線で回転転写する構成と置き換えることにより、縮小倍率に相当した分だけステンシルマスク1上の開口パターンの寸法を大きくでき、ステンシルマスク1を容易に作製できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、最終仕上がりパターンのうち回転方向にスリット状のパターンについて短縮したパターンのマスクを電子描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でローラモールド上に回転しつつマスク露光した後に現像し、スリット状の並列したパターンを有する大面積のローラモールドを精度良好かつ短時間に作製してスループットを向上させると共に継ぎ目のないローラーモールドを作製するローラーモールド作製方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の動作説明フローチャートである。
【図2】本発明のマスク作製フローチャートである。
【図3】本発明の説明図である。
【図4】本発明の他の説明図である。
【図5】本発明の構成説明図である。
【図6】本発明の具体的装置例である。
【図7】本発明の縮小投影例である。
【符号の説明】
【0073】
1:ステンシルマスク
2:ローラーモールド
3:電子線
11:連続回転
12:ステップ・アンド・リピート
13:アライメントマーク
21:電子光学系
22:回転モータ
23:軸移動モータ
24:ステージ
32:電子源
33:コンデンサレンズ
34:縮小レンズ系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを転写するローラー状の押し型(以下「ローラーモールド」という)を作製するローラーモールド作製方法において、
前記ローラーモールドにレジストを塗布するステップと、
最終仕上がりパターン中の回転方向に長いスリット状のパターンの長さを短縮した電子線が透過するパターンを有するマスクを、前記レジストを塗布したローラーモールドの所定位置に近接して位置づけるステップと、
前記近接して位置づけた状態で、電子線を前記マスクに照射しつつ当該マスク上のパターンを透過した電子線を前記ローラーモールド上のレジストに露光しつつ回転させるステップと、
前記ローラーモールド上に塗布したレジストに露光しつつ回転させて一周あるいは露光に必要な部分を回転して露光するステップと、
前記回転して露光した後、前記ローラーモールド上の露光されたレジストを現像するステップと、
前記現像した後のローラーモールドをエッチングし、前記マスク上のパターンに対応するスリット状のパターンを当該ローラーモールド上に形成するステップと、
を有するローラーモールド作製方法。
【請求項2】
前記マスクでローラーモールドの回転方向に露光を行なった後、回転方向と直角方向の隣接する位置に前記マスクを移動させて位置づけた後、当該マスクでローラーモールドを回転しつつ露光することを繰り返すことを特徴とする請求項1記載のローラーモールド作製方法。
【請求項3】
前記マスクでローラーモールド上に塗布したレジストに露光する際に、露光開始位置および露光終了位置で所定時間だけ回転を停止し、パターンの始点および終点の露光を行うことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のローラーモールド作製方法。
【請求項4】
前記最終仕上がりパターン中の回転方向に長いスリット状のパターンの長さを短縮したパターンを作製し、当該作製したパターンを前記マスクにレジストを塗布して電子線描画した後に現像し、更に、エッチングして電子線が透過するパターンを当該マスクに作製したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のローラーモールド作製方法。
【請求項5】
前記長さを短縮したパターンとして、ほぼ矩形のパターンあるいは回転方向の長さを小さくした矩形のパターンとしたことを特徴とする請求項4記載のローラーモールド作製方法。
【請求項6】
前記マスク上に形成する長さを短縮したパターンが複数並列にある場合には、当該複数並列を複数に分割して各分割群のパターン毎に回転方向にそれぞれ所定距離ずらし、複数並列のパターン間の回転方向と直角方向のピッチを大きくしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のローラーモールド作製方法。
【請求項7】
前記マスクを電子線で全面照射し、当該マスク上に形成したパターンを透過した電子線を電磁型あるいは静電型の縮小レンズを用いて前記ローラーモールドに塗布したレジスト上に縮小したパターンを形成し、回転しつつ露光することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のローラーモールド作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−288340(P2009−288340A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138489(P2008−138489)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(591012668)株式会社ホロン (63)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】