説明

ワーク把持装置およびワーク把持方法

【課題】互いに隣接しつつこの隣接する方向に対して交差する方向にずれた位置にある複数のワークであっても容易に把持できるようにする。
【解決手段】ワーク把持装置1は、4つのワーク把持ユニット5,7,9,11により4つの部品13,15,17,19をそれぞれ個別に把持する。部品13,15の上に部品17,19が載せられる。部品13,15を把持するワーク把持ユニット5,7は、上下シリンダ27,27Aを備えており、下端のアーム37,37Aが把持フレーム3に対して上下動可能である。4つのワーク把持ユニット5,7,9,11で4つの部品13,15,17,19を把持した状態で、ワーク把持装置1全体を上昇させると、上下シリンダ27,27Aが伸長して部品13,15が部品17,19に対して下方に離間した位置関係となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに隣接して配置される複数のワークをそれぞれ個別に把持する複数のワーク把持部を備えるワーク把持装置およびワーク把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水平方向に所定間隔をおいて配置された複数のワークを、ロボットのアーム先端に設けた複数の保持手段で保持するワーク移載方法およびその装置が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−354688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のワーク移載方法およびその装置は、支持板の下面に取り付けた複数のワーク保持手段が、支持板に沿って互いに接近離反する水平方向に移動可能である。ところが、この複数のワーク保持手段は、支持板に対して接近離反する上下方向には相対移動しないことから、互いに上下方向にずれた位置にある複数のワークに対しては対応が困難となっている。
【0005】
そこで、本発明は、互いに隣接しつつこの隣接する方向に対して交差する方向にずれた位置にある複数のワークであっても容易に把持できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに隣接して配置される複数のワークをそれぞれ個別に把持する複数のワーク把持部のうち少なくとも一つを、複数のワークの隣接して配置される方向に対して交差する方向に、基部に対して相対移動可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のワーク把持部のうち少なくとも一つが、複数のワークの互いに隣接して配置される方向に対して交差する方向に、基部に対して相対移動することで、互いに隣接しつつこの隣接する方向に対して交差する方向にずれた位置にある複数のワークであっても容易に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係わるワーク把持装置の全体構成をワークとともに示す斜視図である。
【図2】図1のワーク把持装置におけるフロントピラーを把持するワーク把持ユニットの斜視図である。
【図3】図2のワーク把持ユニットの動作説明図である。
【図4】図1のワーク把持装置におけるセンタピラーを把持するワーク把持ユニットの斜視図である。
【図5】図4のワーク把持ユニットの動作説明図である。
【図6】図1のワーク把持装置におけるサイドシルを把持するワーク把持ユニットの斜視図である。
【図7】図6のワーク把持ユニットの動作説明図である。
【図8】図1のワーク把持装置におけるルーフレールを把持するワーク把持ユニットの斜視図である。
【図9】図8のワーク把持ユニットの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係わるワーク把持装置1は、基部としての把持フレーム3の下部に、ワーク把持部としての複数(ここでは4つ)のワーク把持ユニット5,7,9,11を取り付けてある。この複数のワーク把持ユニット5,7,9,11により、ワークとして、例えば自動車のボディサイドアウタを構成する4つの部品をそれぞれ把持する。
【0011】
4つの部品は、フロントピラー13、センタピラー15、サイドシル17、ルーフレール19であり、図1に示す配置関係で互いに溶接接合される。この際、フロントピラー13およびセンタピラー15のそれぞれの一部である各端部13a,13bおよび15a,15bの図1中で上部(車体組付時では車室側に相当)にサイドシル17およびルーフレール19が載せられた状態となる。すなわち、複数のワークは、それらの一部が、複数のワークの互いに隣接して配置される方向に対して交差する方向に互いに重ね合わせて配置されている。
【0012】
上記した把持フレーム3は、図示しない多関節ロボット(以下、単にロボットという)のアームの先端に、取付板21を介して取り付けてあるものとする。この把持フレーム3は、平面視(図1中でY方向)でほぼ台形をなす4本のフレーム材3a,3b,3c,3dと、同平面視で上記フレーム材3aにおけるフレーム材3c側の一部を一辺として三角形状をなすフレーム材3e,3fと、を主として備えている。
【0013】
なお、前記したロボットのアームが取り付く取付板21は、フレーム材3aと、フレーム材3dからフレーム材3aと平行に延びるフレーム材3gとの間に固定してある。
【0014】
ワーク把持ユニット5は、図2、図3にも示すように、フロントピラー13を把持するものであり、フレーム材3a,3c,3fの互いに交差した部位の下部に取付具23を介して取り付けてある。取付具23の下部には、フローティングユニット25を介して可動手段としての上下シリンダ27を設けている。
【0015】
フローティングユニット25は、取付具23に対してそれより下部の上下シリンダ27側が水平面内で移動可能であり、互いの中心位置でロック可能であるとともに、そのロック位置から水平方向に移動した任意の位置でロック可能である。すなわち、ワーク把持ユニット5は、把持フレーム3に対して複数のワークの前記隣接して配置される方向の移動を許容するフローティングユニットを備えていることになる。
【0016】
一方、上下シリンダ27は、ブレーキ付きLMガイドを備えたシリンダ装置であり、そのシリンダ本体27aから下方に向けて延びるピストンロッド27bが、その先端に設けてある後述するクランプシリンダ31やアーム37などの自重によって突出した状態となる。
【0017】
上記したピストンロッド27bの先端(下端)には、クランプアーム29およびクランプシリンダ31を取り付けてある。クランプアーム29は、ピストンロッド27bの先端に設けた取付片33の下面に、フロントピラー13の長手方向(Z方向)に沿って延びる長方形状の連結板35を固定してあり、この連結板35の両端にほぼC字形状をなす一対のアーム37の基端(上端)を連結している。
【0018】
この一対のアーム37の先端(下端)には、図3に示すように、フロントピラー13の下面(車体組付時では車外側に相当)に図3中で上面が当接する前部位置決片39と、フロントピラー13の車体後方側(センタピラー15側)の側面に、前部位置決片39側の図3中で左側面が当接する後部位置決め片41とを備えている。
【0019】
クランプシリンダ31は、上記した取付片33の連結板35から側方突出した部位の上面に、シリンダ本体31aを取り付け、シリンダ本体31aから下方に延びるピストンロッド31bの先端に固定片43を設けている。
【0020】
なお、取付片33は、連結板35の長手方向中央に取り付けてあり、したがって、この取付片33に取り付けてあるクランプシリンダ31は、一対のアーム37相互間の中央に位置していることになる。この一対のアーム37先端の前部、後部位置決片39,41と、クランプシリンダ31の固定片43との間で、フロントピラー13を図2中で上下から挟持固定することになる。
【0021】
このようなワーク把持ユニット5は、クランプアーム29とクランプシリンダ31とにより、フロントピラー13を挟持固定した状態で、図示しないロボットにより把持フレーム3を下方に押し付けることで、伸び状態のピストンロッド27bがシリンダ本体27a内に入り込む。なお、このときフロントピラー13は、図示しない汎用仮置台や治具などに載置された状態とする。
【0022】
これにより、ワーク把持ユニット5は、クランプアーム29が把持フレーム3に対して接近移動する方向に移動することになる。すわなち、このワーク把持ユニット5は、複数のワークの互いに隣接して配置される方向に対して交差する方向に、把持フレーム3に対して相対移動可能である。
【0023】
ワーク把持ユニット7は、図4、図5にも示すように、センタピラー15を把持するものであり、フレーム材3aのフレーム材3d近傍部位にスライド機構45を介して取り付けてある。スライド機構45は、ワーク把持ユニット7を図1中のX方向に移動させて異なる各種のワークに対応できるようにする機能を有する。
【0024】
スライド機構45は、フレーム材3aに沿って延びるガイドレール45aに対し、可動体45bがスライド移動する。この可動体45bの下部には、前記したワーク把持ユニット5と同様に、取付具23Aを介してフローティングユニット25A、上下シリンダ27A、C型のクランプアーム29Aおよびクランプシリンダ31Aを取り付けている。
【0025】
これらワーク把持ユニット7における各構成要素は、ワーク把持ユニット5の各構成要素とほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。また、図1、図4および図5において、ワーク把持ユニット7におけるワーク把持ユニット5と同様の構成要素には、ワーク把持ユニット5における各要素の符号の後に「A」を付している。
【0026】
ワーク把持ユニット9は、図6、図7にも示すように、サイドシル17を把持するものであり、フレーム材3e,3fの互いに交差した部位の下部に上部取付具47を介して取り付けてある。上部取付具47の下部には、下方に延びる支持アーム49の上端を取り付け、支持アーム49の下端には、下部取付具51を介して前記フローティングユニット25,25Aと同様なフローティングユニット53を設けている。
【0027】
そして、フローティングユニット53の下部にはチャック爪取付具55を設け、このチャック爪取付具55におけるサイドシル17の長手方向に沿った両端にチャック爪57をそれぞれ取り付けている。この二つのチャック爪57は、モータや動力伝達機構などを備える駆動機構部59と、この駆動機構部59によって作動してサイドシル17のルーフレール19側の縦壁部17aを両側から把持する一対のクランプ爪61とを備えている。この一対のクランプ爪61は、図7に示すように、駆動機構部59の駆動によって二点鎖線で示すアンクランプ位置と実線で示すクランプ位置との間を互いに接近離反するよう支持ピン63を介して回動変位する。
【0028】
なお、このワーク把持ユニット9においては、支持アーム49に代えて、前記図2に示した上下シリンダ27と同様な上下シリンダを取り付けることで、サイドシル17の他の部品に対する位置(図1中でY方向位置)が異なる車種(ワーク)にも対応することができる。
【0029】
ワーク把持ユニット11は、図8、図9にも示すように、ルーフレール19を把持するものであり、フレーム材3dのフレーム材3b近傍下部に取付ブラケット65を介して取り付けてあるスライド機構67に取り付けてある。スライド機構67は、ワーク把持ユニット11を図1中のZ方向に移動させて異なる各種のワークに対応できるようにする機能を有する。
【0030】
スライド機構67は、フレーム材3dに沿って延びるガイドレール67aに可動体67bがスライド移動する。可動体67bの下部には、上部取付具69を介して上下シリンダ71を取り付け、さらにその下部には下部取付具73を介してフローティングユニット75を取り付けている。これら上下シリンダ71およびフローティングユニット75は、前記図2に示したワーク把持ユニット5における上下シリンダ27およびフローティングユニット25と同様である。71aはシリンダ本体、71bはピストンロッドである。
【0031】
そして、フローティングユニット75の下部には、ルーフレール19の長手方向に沿って延びるチャック爪取付具77を設け、このチャック爪取付具77の長手方向両端に、前記図6に示したチャック爪57と同様なチャック爪57Aを取り付けている。
【0032】
このチャック爪57Aにおける各構成要素は、チャック爪57の各構成要素と同様であるので詳細な説明は省略する。また、図8および図9において、チャック爪57と同様の構成要素には、チャック爪57の各要素の符号の後に「A」を付している。
【0033】
次に、上記したワーク把持装置によるワーク把持方法について説明する。図1に示すワークの4つの部品、フロントピラー13、センタピラー15、サイドシル17、ルーフレール19は、車体組付時とほぼ同様な位置関係で、車外側が図1中で下部となるよう図示しない汎用仮置台に載置してセットする。なお、この汎用仮置台には、ワークを位置決めするロケートピンを備えておらず、したがって4つの部品相互間の位置にはばらつきがあり一定していない。
【0034】
このとき、フロントピラー13およびセンタピラー15のそれぞれの端部13a,13bおよび15a,15bの図1中で上部(車体組付時では車室側に相当)に、サイドシル17およびルーフレール19のそれぞれの一部が載せられた状態となる。すなわち、この状態では、サイドシル17およびルーフレール19が、フロントピラー13およびセンタピラー15の上に重ね合わされた状態である。
【0035】
そして、ロボットの教示動作により、ワーク把持装置1を上記汎用仮置台にセットした4つの部品に対し上方から下降させて接近させる。このとき、ワーク把持ユニット5,7の各上下シリンダ27,27Aは、ピストンロッド27b,27bAが下方に延びた進出限位置となっている。
【0036】
また、ルーフレール19を把持するワーク把持ユニット11の上下シリンダ71のピストンロッド71bについては、把持するワークに対応した位置に移動位置決めしておく。この位置決め作業は、ピストンロッド71bが伸び切った状態から、ワーク把持ユニット11の下端(クランプ爪61Aの先端)を作業台などの適宜な場所に押し付けることで位置調整した後ロックさせておく。
【0037】
ワーク把持ユニット5,7の上下シリンダ27,27Aのピストンロッド27b,27bAが下方に延びた状態となっていることで、アーム37,37Aによるワークに対する上下方向(Y方向)の把持位置が、ワーク把持ユニット9,11のチャック爪57,57Aによるワークに対する上下方向(Y方向)の把持位置よりも下方となる。
【0038】
また、ワーク把持ユニット7,11は、その各スライド機構45,67により、把持するワークに対応した位置に移動位置決めしておく。さらに、ワーク把持ユニット5,7,9,11のフローティングユニット25については、ロックを解除して開放状態としておく。
【0039】
上記した状態で、ワーク把持装置1を下降させて4つの部品に接近させるが、その際、フロントピラー13に対応するワーク把持ユニット5の一対のアーム37をフロントピラー13からセンタピラー15側に離間させ、センタピラー15に対応するワーク把持ユニット7の一対のアーム37Aをセンタピラー15からフロントピラー13と反対側に離間させておく。
【0040】
したがって、この状態でワーク把持装置1を下降させると、アーム37および37Aはフロントピラー13およびセンタピラー15にそれぞれ干渉することなく、各ピラー13,15の側方に位置させることができる。このとき、フロントピラー13およびセンタピラー15は、C型のアーム37および37Aの上下両端間に位置している。また、クランプシリンダ31,31Aのピストンロッド31b,31bAは、後退限位置として、先端の固定片43,43Aが、フロントピラー13およびセンタピラー15より上方の離間した位置となっている。
【0041】
この状態から、ロボットの教示動作により、ワーク把持装置1をセンタピラー15からフロントピラー13に向かう方向のX方向に移動させる。この移動の際には、図3、図5の二点鎖線で示すように、C型のアーム37,37A内に各ピラー13,15を位置させて、その前部位置決片39,39Aと固定片43,43Aとの間に各ピラー13,15の把持される部位を位置させる。
【0042】
そして、ロボットの教示動作によりワーク把持装置1をアーム37,37Aが図3、図5の二点鎖線の位置から実線位置となるように上方に移動させて、前部位置決片39,39Aおよび後部位置決め片41,41Aを各ピラー13および15の下面に当接させる。このとき、後部位置決め片41,41Aは、各ピラー13,15の下方に突出した凸部の側面13c,15cにも当接させる。
【0043】
その後、クランプシリンダ31,31Aを駆動させてピストンロッド31b,31bAを下方に向けて突出させ、その先端の固定片43,43Aを各ピラー13,15の上面に当接させて、前部位置決片39,39Aおよび後部位置決め片41,41Aとの間で各ピラー13,15を挟持固定する。
【0044】
このようにしてワーク把持ユニット5,7によりフロントピラー13およびセンタピラー15を把持したら、ワーク把持装置1を下方に移動させる方向にロボットの教示動作を行う。これにより、ワーク把持ユニット5,7における上下シリンダ27の伸び切った状態のピストンロッド27b,27bAが押し込まれて把持フレーム3全体がワークに近付くように下方に移動変位する。
【0045】
その結果、ワーク把持ユニット9,11全体もワークに近付くよう下方に移動してそのアンクランプ状態のチャック爪57,57Aが、図7、図9の二点鎖線で示すように、サイドシル17およびルーフレール19のそれぞれの縦壁部17a,19aを挟持可能な位置となる。
【0046】
このとき、図7、図9に示してあるチャック爪57,57Aにおける一方の例えば右側のチャック爪57,57Aを先に縦壁部17a,19aに当接させた後、他方の側のチャック爪57,57Aを後から縦壁部17a,19aに当接させるようにする。これにより、サイドシル17およびルーフレール19が互いに接近離反する方向に多少位置ずれしていても容易に把持することができる。
【0047】
また、ルーフレール19を把持するチャック爪57Aについては、図8中でルーフレール19の長手方向に沿って配置してある二つのうち一方を、基準側として他方を追従側とする。すなわち、基準側のチャック爪57Aを、スライド機構67によってルーフレール19に対して位置出してクランプ固定した後、追従側のチャック爪57Aを作動させてクランプ固定する。この場合、チャック爪57Aは線接触によるクランプ固定を行うことになり、ワークの位置ずれに容易に対応することができる。
【0048】
このようにして、ワーク把持ユニット5,7によりフロントピラー13およびセンタピラー15を把持し、かつワーク把持ユニット9,11によりサイドシル17およびルーフレール19を把持した状態では、上記4つの部品は、当初の汎用仮置台にセットした状態を維持している。
【0049】
その後、ワーク把持装置1を上方に移動させる方向にロボットの教示動作を行うと、引き込み状態にあるワーク把持ユニット5,7のピストンロッド27b,27bAが引き伸ばされて前進限となり、これらワーク把持ユニット5,7に把持されている各ピラー13,15は上昇せずにそのまま汎用仮置台上に残る。
【0050】
一方、ワーク把持ユニット9,11は、その全体が把持フレーム3の上昇に伴なって上昇し、チャック爪57,57Aに把持されているサイドシル17、ルーフレール19も一体となって上昇する。その状態が図1である。すなわち、この状態では、サイドシル17およびルーフレール19が、汎用仮置台上にあるフロントピラー13およびセンタピラー15に対して上方に離間した状態となっている。
【0051】
そして、このようなワーク把持状態で、ロボットの挟持動作によりワーク把持装置1の全体をワーク(4つの部品)とともに上昇させて、フロントピラー13およびセンタピラー15も汎用仮置台から離間させた後、把持しているワークを図示しない加工作業位置である溶接作業位置の治具上まで移動させる。
【0052】
その後、溶接作業位置の治具上からワーク把持装置1を下降させると、まず最初に下方に位置するフロントピラー13およびセンタピラー15が治具上のワークガイドにガイドされながら位置が補正され、同時に治具側のロケートピン先端の先細のガイド部がワークのロケート孔に覗く位置となる。さらに、ワーク把持装置1を下降させることで、フロントピラー13およびセンタピラー15が治具上の規定の位置に位置決めされた状態でセットされる。
【0053】
なお、ワーク把持ユニット5,7における上下シリンダ27,27Aのピストンロッド27b,27bAは、フロントピラー13およびセンタピラー15が治具上にセットされるとほぼ同時かその直前に、各ピラー13および15から離反するように後退して引き込んだ状態とする。また、上記したワークセット後に、アーム37,37Aの前部位置決片39,39Aおよび後部位置決め片41,41Aが各ピラー13,15の下面から離間するようにワーク把持装置1全体をさらに下降させておく。
【0054】
このようなワークセット時には、ワーク把持ユニット5,7のフローティングユニット25,25Aのロックを解除してあり、各ピラー13,15は水平面内でフローティングした状態となって位置決めが容易にできる。なお、ワーク搬送時には、フローティングユニット25,25Aをロックしておく。
【0055】
その後さらにワーク把持装置1を下方に押し込むようにしてロボットの挟持動作を行うと、上記した各ピラー13,15と同様に、サイドシル17およびルーフレール19が下降して対応する治具上のワークガイドにガイドされながら位置が補正され、同時に治具側のロケートピン先端の先細のガイド部がワークのロケート孔に覗く位置となる。
【0056】
上記のようにしてサイドシル17およびルーフレール19が治具に押し付けられつつ下降する際には、ワーク把持ユニット5,7側の伸ばされた状態のピストンロッド27b,27bAが後退移動して徐々に縮む。これにより、サイドシル17およびルーフレール19が、ワーク搬送時にはその下方に離間した状態であったフロントピラー13およびセンタピラー15上に載置されることになる。
【0057】
すなわち、このときサイドシル17およびルーフレール19は、その一部が各ピラー13,15の端部13a,13bおよび15a,15b上に載置されて、互いに車体組付時の位置関係となる。
【0058】
溶接治具上にワークをセットしたら、まずワーク把持ユニット9,11のチャック爪57,57Aを開放した後、チャック爪57,57Aがサイドシル17およびルーフレール19に対して僅かに上方となるようワーク把持装置1全体を上昇させる。その後、ワーク把持装置1全体を、ワーク把持ユニット5,7のアーム37,37Aが、各ピラー13,15に対して水平方向に離間する位置となるよう水平方向に移動させる。続いて、ワーク把持装置1全体を上方に移動させた後、汎用仮置台にセットしてある次のワークの把持位置まで移動して、上記の動作を繰り返す。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、ワーク把持ユニット5,7に上下シリンダ27,27Aを設けてそのアーム37,37Aを、他のワーク把持ユニット9,11(チャック爪57,57A)に対して上下方向に相対移動可能としている。このため、ワーク把持ユニット5,7が把持するフロントピラー13およびセンタピラー15と、ワーク把持ユニット9,11が把持するサイドシル17およびルーフレール19とが,互いに水平方向に隣接しつつ上下方向にずれた位置にあっても、容易に把持して搬送および治具などへのセット作業を行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、複数のワーク把持ユニット5,7,9,11は、複数のワークの互いに隣接して配置される方向の把持フレーム3に対する移動を許容するフローティングユニット25,25A,53,75を備えている。このため、ワークを治具にセットする際に、部品相互間で位置のばらつきがあっても、ワーク把持ユニット5,7,9,11が把持している各ワークが上記の方向に移動して位置決め作業が容易にできる。
【0061】
また、本実施形態では、複数のワークは、それらの一部が、複数のワークの互いに隣接して配置される方向に対して交差する方向に互いに重ね合わせて配置され、把持フレーム3に対して相対移動可能なワーク把持ユニット5,7は、互いに重ね合わせて配置される複数のワークのうち、把持フレーム3から遠い側に位置するフロントピラー13およびセンタピラー15を把持する。
【0062】
これにより、フロントピラー13およびセンタピラー15が汎用仮置台や治具に載置された状態で、その上に重ね合わされるサイドシル17およびルーフレール19を、上記各ピラー1,15から離間した状態で把持することができる。
【0063】
また、本実施形態では、把持フレーム3から遠い側に位置するフロントピラー13およびセンタピラー15を把持するワーク把持ユニット5,7は、ワークを把持した状態で、把持フレーム3をワークに近付く方向に押し付けることで把持フレーム3に対して相対移動する上下シリンダ27,27Aを備えている。
【0064】
これにより、ワークを治具上にセットする際に、特別な駆動源を使用することなく、フロントピラー13およびセンタピラー15上に、これら各ピラー13,15に対して離間した状態のサイドシル17およびルーフレール19を重ね合わせることができる。
【0065】
なお、上記した実施形態では、ワークとしてフロントピラー13およびセンタピラー15と、サイドシル17およびルーフレール19とからなる4部品を例にとって説明したが、4部品に限ることはなく、また他の部品であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 ワーク把持装置
3 把持フレーム(基部)
5,7 ワーク把持ユニット(基部に対して相対移動可能なワーク把持部)
9,11 ワーク把持ユニット(ワーク把持部)
13 フロントピラー(部品、基部から遠い側に位置するワーク)
15 センタピラー(部品、基部から遠い側に位置するワーク)
17 サイドシル(部品、ワーク)
19 ルーフレール(部品、ワーク)
25,25A,53,75 フローティングユニット
27,27A 上下シリンダ(可動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置される複数のワークをそれぞれ個別に把持する複数のワーク把持部を基部に取り付け、これら複数のワーク把持部のうち少なくとも一つは、前記複数のワークの前記隣接して配置される方向に対して交差する方向に、前記基部に対して相対移動可能であることを特徴とするワーク把持装置。
【請求項2】
前記複数のワーク把持部は、前記基部に対し、複数のワークの前記隣接して配置される方向の移動を許容するフローティングユニットを備えていることを特徴とする請求項1に記載のワーク把持装置。
【請求項3】
前記複数のワークは、それらの一部が、複数のワークの前記隣接して配置される方向に対して交差する方向に互いに重ね合わせて配置され、前記基部に対して相対移動可能なワーク把持部は、前記互いに重ね合わせて配置される複数のワークのうち、前記基部から遠い側に位置するワークを把持することを特徴とする請求項1または2に記載のワーク把持装置。
【請求項4】
前記基部から遠い側に位置するワークを把持するワーク把持部は、ワークを把持した状態で、前記基部をワークに近付く方向に押し付けることで基部に対して相対移動する可動手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載のワーク把持装置。
【請求項5】
互いに隣接して配置される複数のワークをそれぞれ個別に把持する複数のワーク把持部のうち少なくとも一つが、前記複数のワークの前記隣接して配置される方向に対して交差する方向に、前記複数のワークを支持する基部に対して相対移動して把持することを特徴とするワーク把持方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−20383(P2012−20383A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161271(P2010−161271)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】