ワーク貼り合わせ方法
【課題】円形板状基台に滴下する液体樹脂の外周側に反りが発生することを防止して、液体樹脂の表面にワークを載置して樹脂硬化しても、ワークの外周に反りが発生しないようにすることを目的とする。
【解決手段】円形板状基台2は、外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部20が形成されており、保持テーブル4に保持された円形板状基台2の上方から樹脂供給ノズル5によって円形板状基台2の中心に液体樹脂6を滴下する。保持テーブル4の回転による遠心力で液体樹脂6を均一の厚さに引き伸ばし、円形板状基台2の中心から外周方向に移動する液体樹脂6をスカート部20に溜めるとともに、液体樹脂6の外周部60に発生する表面張力による外周部60の盛り上がりを防止することができる。そのため、樹脂硬化によって円形板状基台2とワークWとを貼り合わせた際に、ワークWの外周部Wsに反りが発生することを防止することができる。
【解決手段】円形板状基台2は、外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部20が形成されており、保持テーブル4に保持された円形板状基台2の上方から樹脂供給ノズル5によって円形板状基台2の中心に液体樹脂6を滴下する。保持テーブル4の回転による遠心力で液体樹脂6を均一の厚さに引き伸ばし、円形板状基台2の中心から外周方向に移動する液体樹脂6をスカート部20に溜めるとともに、液体樹脂6の外周部60に発生する表面張力による外周部60の盛り上がりを防止することができる。そのため、樹脂硬化によって円形板状基台2とワークWとを貼り合わせた際に、ワークWの外周部Wsに反りが発生することを防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの研削にあたり、樹脂を介してワークと円形板状基台とを貼り合わせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、円形板状のワークを薄化するために、ワークの裏面に対して研削及びエッチングを施す。そして、ワークが所定の厚みに加工された後に、ワークを個々のデバイスに分割する。
【0003】
円形板状のワークとしては、例えば、複数のワークを貫通電極(TSV:Through Silicon Via)を介して接合するTSVワークがある。TSVワークは、きわめて薄く形成されているため、TSVワークの裏面を研削及びエッチングする場合には、TSVワークを安定的に支持するために、円形板状基台が用いられる。具体的には、配線パターンが形成されたTSVワークの表面側を、樹脂を介して円形板状基台に接着してTSVワークの裏面を露出させ、TSVワークの裏面に研削及びエッチングを施す。
【0004】
円形板状基台とTSVワークとを貼り合わせるための樹脂を円形板状基台に塗布する方法としては、スピン塗布法がある。具体的には、円形板状基台を回転可能な保持テーブルに吸引保持させ、円形板状基台の中心に熱硬化性樹脂等の液体樹脂を滴下して所定の回転速度で保持テーブルを回転させる。この回転によって発生する遠心力を利用して液体樹脂を円形板状基台の上面に伸ばし、その液体樹脂の表面にワークの表面側を載置する。そして、液体樹脂に対して加熱もしくは紫外線照射等を施すことにより、液体樹脂を硬化させ、ワークと円形板状基台とを貼り合わせる。なお、スピン塗布法に関しては、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の貼り合わせ方法によって、保持テーブルの回転による遠心力を利用して液体樹脂を円形板状基台の上面の中心から外周方向に引き伸ばすと、図11(a)に示すように、円形板状基台32の外周側に移動してきた液体樹脂30の外周側に表面張力が発生し、円形板状基台32の外周側に液体樹脂30が溜まって盛り上がり、球状の反り31が形成されることがある。
【0007】
また、図11(b)に示すように、反り31が形成された液体樹脂30の表面30aにワーク33を載置すると、反り31にならってワーク33の下面33aが接触してしまう。そして、樹脂硬化によりワーク33と円形板状基台32とを貼り合わせると、図11(c)に示すように、ワーク33の外周部33bにも反り34が発生してしまう。したがって、この状態のまま、ワーク33を研削すると、図11(d)に示すように、ワーク33の外周部33bが薄く研削されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、円形板状基台に滴下する液体樹脂の外周側に反りが発生することを防止して、液体樹脂の表面にワークを接着して樹脂硬化させても、ワークの外周にも反りが発生しないようにすることに発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円形板状基台を保持して回転可能な保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から液体樹脂を滴下する樹脂供給ノズルと、該円形板状基台および該円形板状基台と略同径の円形のワークを該保持テーブルに搬入する搬入手段と、該液体樹脂を硬化させる樹脂硬化手段と、を少なくとも備えるワーク貼り合わせ装置を用いたワーク貼り合わせ方法であって、該円形板状基台は、外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部が形成されており、該搬入手段によって該円形板状基台を該保持テーブルに保持する保持工程と、該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から該樹脂供給ノズルによって該円形板状基台の中心に向けて液体樹脂を滴下する樹脂滴下工程と、該保持テーブルの回転による遠心力で該液体樹脂を均一な厚さに引き伸ばし、該円形板状基台の中心から外周方向に移動する該液体樹脂を該スカート部に溜めるとともに、該円形板状基台の外周に移動した該液体樹脂の表面張力による盛り上がりを防止する樹脂塗布工程と、引き伸ばされた液体樹脂の表面に該搬入手段が該ワークを載置した後、該樹脂硬化手段によって該液体樹脂を硬化させて該円形板状基台と該ワークとを貼り合わせるワーク貼り合わせ工程と、を備え、円形板状基台とワークとを貼り合わせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、円形板状基台の外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部が形成され、円形板状基台を搬入手段によって回転可能な保持テーブルに保持する保持工程と、円形板状基台に液体樹脂を適下する樹脂適下工程と、円形板状基台の上面に液体樹脂を引き伸ばす樹脂塗布工程とを備えていることから、保持テーブルの回転による遠心力で円形板状基台に滴下された該液体樹脂を均一の厚さに引き伸ばしてスカート部に溜めることができるとともに、該円形板状基台の外周に移動した該液体樹脂の表面張力による盛り上がりを防止することができる。そのため、樹脂の表面にワークを載置して、樹脂硬化によって円形板状基台とワークとを貼り合わせた際に、ワークの外周部に反りが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ワーク貼り合わせ装置の断面図である。
【図2】円形板状基台の構成を示す正面図である。
【図3】ワークの表面及び裏面を示す斜視図である。
【図4】円形板状基台を保持テーブルに搬入する保持工程を示す断面図である。
【図5】液体樹脂を円形板状基台に滴下する樹脂滴下工程を示す断面図である。
【図6】保持テーブルの回転による樹脂塗布工程を示す断面図である。
【図7】円形板状基台の上面にある樹脂表面にワークを載置する工程を示す断面図である。
【図8】樹脂硬化手段による樹脂硬化工程を示す断面図である。
【図9】ワークの研削工程を示す断面図である。
【図10】ワークが所定の厚みに研削された状態を示す断面図である。
【図11】従来のワーク貼り合わせ方法の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すワーク貼り合わせ装置1は、図2に示す円形板状基台2と図3に示す被加工物であるワークWとを貼り合わせる方法に利用できる装置の一例である。ワーク貼り合わせ装置1は、回転可能な保持テーブル4と、液体の樹脂を滴下する樹脂供給ノズル5と、円形板状基台2及びワークWを保持テーブル4に搬入する搬入手段3と、液体樹脂を硬化させる樹脂硬化手段7と、を少なくとも備えている。
【0013】
図1に示す保持テーブル4は、円形板状基台2を保持する保持面40と、多孔質部材より形成される保持部41と、保持部41に連通する吸引口42と、吸引口42に接続される吸引源43とを備えている。保持テーブル4は、吸引源43からの吸引力によって、保持面40に円形板状基台2を吸引保持できるようになっている。そして、保持テーブル4は、中心軸Aの周りを回転可能な構成としている。
【0014】
図1に示す搬入手段3は、吸着パッド3aを備えており、Z軸方向に昇降可能となっている。そして、搬入手段3は、円形板状基台2及び円形板状基台2と略同径のワークWを吸着パッド3aに吸着させ、保持テーブル4に搬入することができる。
【0015】
樹脂供給ノズル5は、X軸方向に往復または旋回移動することができ、保持テーブル4の上方から液体樹脂を滴下することができる。樹脂硬化手段7は、液体樹脂を硬化させるために、例えば、加熱による熱硬化もしくは紫外線の照射によるUV硬化を施すことができる。そして、樹脂硬化手段7についても、X軸方向に往復または旋回移動することができる。以下では、樹脂硬化手段7が加熱により液体樹脂に対して熱硬化を施す機能を有する場合について説明する。
【0016】
図2に示す円形板状基台2は、被加工物を下方から支持する支持基板であり、円形板状基台2の上面2aは、液体樹脂を介してワークWを載置できる面となっている。円形板状基台2には、液体樹脂が滴下される上面2aにおいて、外周部に所定の角度で切り欠いて傾斜を設けたスカート部20が形成されている。スカート部20は、上面2aから下面2bに向けて拡径する斜面によって構成されており、その傾斜角度は、円形板状基台2の上面2aの外周方向に移動してきた液体樹脂を下方に移動させ、溜めることができるほどの角度である。
【0017】
図3に示すワークWは、円形の被加工物の一例である。図3(a)に示すワークWの表面Waには、複数のデバイスDが格子状のストリートSによって区画されて形成されている。一方、図3(b)に示すワークWの裏面Wbは、研削が施される被研削面となっている。また、ワークWの側面である外周部Wsには、面取りが施されている。
【0018】
以下では、上記の如く構成されるワーク貼り合わせ装置1によってワークWと円形板状基台2とを貼り合わせる方法について説明する。
【0019】
(1)保持工程
図4に示すように、搬入手段3を作動させ、円形板状基台2の上面2aを吸着パッド3aに吸着させる。そして、円形板状基台2の下面2bを保持テーブル4の保持面40に対面させ、吸着パッド3aを下降させて円形板状基台2を保持面40に載置する。
【0020】
円形板状基台2が保持面40に載置されたら、吸引源43から発生する吸引力が吸引口42を通じて保持部41に伝達され、円形板状基台2の下面2bが保持面40において吸着保持される。
【0021】
(2)樹脂滴下工程
保持工程を経た後、保持テーブル4は回転を開始する。樹脂供給ノズル5は、図5に示すように、液体樹脂6を円形板状基台2の上面2aの中心に滴下する。ここで、液体樹脂6としては、例えば熱硬化性樹脂を用いる。なお、樹脂硬化手段7が紫外線照射によるUV硬化手段である場合には、液体樹脂6は、UV硬化性樹脂を用いる。
【0022】
(3)樹脂塗布工程
回転中の保持テーブル4に保持された円形板状基台2の中心に液体樹脂6が滴下されたら、保持テーブル4は、回転によって発生する遠心力を利用して、液体樹脂6を円形板状基台2の上面2aにおいて中心から外周側に移動させ、均一の厚さに引き伸ばす。
【0023】
保持テーブル4が回転し続けると、図6に示すように、引き伸ばされた液体樹脂6の外周部60は、円板板状基台2のスカート部20に流れ落ちて溜まる。スカート部20は、円板板状基台2の上面2aから下面2bに向けて拡径する方向に傾斜しているため、液体樹脂6の外周部60に表面張力が発生しても、液体樹脂6の外周部60が盛り上がって上方に突出し、球状の反りが発生することはない。
【0024】
液体樹脂6が、円形板状基台2の上面2aにおいて所定の厚さに引き伸ばされたら、保持テーブル4の回転を停止する。これにより、液体樹脂6は、円形板状基台2の上面2aにおいて、外周部60に反りを発生させることなく均一な厚さを保つことができる。
【0025】
(4)ワーク貼り合わせ工程
樹脂塗布工程を経た後、図7に示すように、ワークWを、円形板状基台2の上面2aに引き伸ばされた液体樹脂6の表面6aに載置する。具体的には、搬入手段3を作動させ、搬送パッド3aにワークWの裏面Wbを吸着し、液体樹脂6の表面6aに向けて下降させて、液体樹脂6の表面6aにワークWの表面Waを対面させて載置する。
【0026】
図8に示すように、ワークWが液体樹脂6の表面6aに載置されたら、樹脂硬化手段7をワークWの上方に位置づける。そして、樹脂硬化手段7をワークWに接近させ、液体樹脂6を加熱する。加熱された液体樹脂6は、硬化して円形板状基台2及びワークWに固着され、円形板状基台2とワークWとが液体樹脂6を介して貼り合わされる。このとき、液体樹脂6の外周部60には、反りが発生していないため、ワークWの外周Wsにも反りが発生することはない。
【0027】
(5)研削工程
円形板状基台2とワークWとを貼り合わせた後、ワークWを所定の厚さに薄化するために、図9に示す研削手段8を作動させてワークWの裏面Wbを研削する。研削手段8は、スピンドル80と、スピンドル80の下端に装着された研削ホイール81と、研削ホイール81の下部に固着されたダイヤモンド砥粒等から構成された研削砥石82とを備えている。そして、研削手段8は、研削ホイール81を矢印B方向に回転させることができる。
【0028】
図7に示した搬入手段3は、液体樹脂6を介して円形板状基台2と一体となっているワークWを図9に示す保持テーブル9に裏面Wbを上に向けて搬入する。なお、保持テーブル9の構成は、図1に示した保持テーブル4の構成と同様であり、保持面90と、多孔質部材より形成される保持部91と、保持部91に連通する吸引口92と、吸引口92に接続される吸引源93とを備えている。
【0029】
保持テーブル9の保持面90に円形板状基台2が載置されたら、保持テーブル9は、吸引を開始する。吸引源93から発生する吸引力が吸引口92を通じて保持部91に伝達され、円形板状基台2の下面2bを保持面90に吸着保持する。
【0030】
円形板状基台2の下面2bが保持面90に保持された後、保持テーブル9を矢印A方向に所定の回転速度で回転させながら研削手段8の下方に送り込む。スピンドル80を矢印B方向に回転させて研削砥石82をワークWの裏面Wbに接触させ、裏面Wbを研削する。そして、ワークWの裏面Wbが所定の厚みに研削された時点で研削手段8を上昇させて、研削ホイール81の回転を停止し、研削工程が終了する。
【0031】
研削工程が終了すると、図10に示すように、ワークWは所定の厚みに薄化される。このように、ワークWの外周部Wsには反りが形成されないため、外周部Wsだけが薄く研削されることはない。研削終了後は、ワークWと円形板状基台2とを剥がし、ワークWをダインシングして個々のデバイスDに分割する。
【符号の説明】
【0032】
1:ワーク貼り合わせ装置
2:円形板状基台 2a:上面 2b:下面 20:スカート部
3:搬入手段 3a:搬送パッド
4:保持テーブル 40:保持面 41:保持部 42:吸引口 43:吸引源
5:樹脂供給ノズル
6:液体樹脂 6a:表面 60:外周部
7:樹脂硬化手段
8:研削手段 80:スピンドル 81:研削ホイール 82:研削砥石
9::保持テーブル 90:保持面 91:保持部 92:吸引口 93:吸引源
30:液体樹脂 30a:表面 31:反り 32:円板状基台 33:ワーク 33a:下面 33b:外周部 34:反り
W:ワーク Wa:表面 Wb:裏面 Ws:外周部 D:デバイス S:ストリート
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの研削にあたり、樹脂を介してワークと円形板状基台とを貼り合わせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、円形板状のワークを薄化するために、ワークの裏面に対して研削及びエッチングを施す。そして、ワークが所定の厚みに加工された後に、ワークを個々のデバイスに分割する。
【0003】
円形板状のワークとしては、例えば、複数のワークを貫通電極(TSV:Through Silicon Via)を介して接合するTSVワークがある。TSVワークは、きわめて薄く形成されているため、TSVワークの裏面を研削及びエッチングする場合には、TSVワークを安定的に支持するために、円形板状基台が用いられる。具体的には、配線パターンが形成されたTSVワークの表面側を、樹脂を介して円形板状基台に接着してTSVワークの裏面を露出させ、TSVワークの裏面に研削及びエッチングを施す。
【0004】
円形板状基台とTSVワークとを貼り合わせるための樹脂を円形板状基台に塗布する方法としては、スピン塗布法がある。具体的には、円形板状基台を回転可能な保持テーブルに吸引保持させ、円形板状基台の中心に熱硬化性樹脂等の液体樹脂を滴下して所定の回転速度で保持テーブルを回転させる。この回転によって発生する遠心力を利用して液体樹脂を円形板状基台の上面に伸ばし、その液体樹脂の表面にワークの表面側を載置する。そして、液体樹脂に対して加熱もしくは紫外線照射等を施すことにより、液体樹脂を硬化させ、ワークと円形板状基台とを貼り合わせる。なお、スピン塗布法に関しては、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の貼り合わせ方法によって、保持テーブルの回転による遠心力を利用して液体樹脂を円形板状基台の上面の中心から外周方向に引き伸ばすと、図11(a)に示すように、円形板状基台32の外周側に移動してきた液体樹脂30の外周側に表面張力が発生し、円形板状基台32の外周側に液体樹脂30が溜まって盛り上がり、球状の反り31が形成されることがある。
【0007】
また、図11(b)に示すように、反り31が形成された液体樹脂30の表面30aにワーク33を載置すると、反り31にならってワーク33の下面33aが接触してしまう。そして、樹脂硬化によりワーク33と円形板状基台32とを貼り合わせると、図11(c)に示すように、ワーク33の外周部33bにも反り34が発生してしまう。したがって、この状態のまま、ワーク33を研削すると、図11(d)に示すように、ワーク33の外周部33bが薄く研削されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、円形板状基台に滴下する液体樹脂の外周側に反りが発生することを防止して、液体樹脂の表面にワークを接着して樹脂硬化させても、ワークの外周にも反りが発生しないようにすることに発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円形板状基台を保持して回転可能な保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から液体樹脂を滴下する樹脂供給ノズルと、該円形板状基台および該円形板状基台と略同径の円形のワークを該保持テーブルに搬入する搬入手段と、該液体樹脂を硬化させる樹脂硬化手段と、を少なくとも備えるワーク貼り合わせ装置を用いたワーク貼り合わせ方法であって、該円形板状基台は、外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部が形成されており、該搬入手段によって該円形板状基台を該保持テーブルに保持する保持工程と、該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から該樹脂供給ノズルによって該円形板状基台の中心に向けて液体樹脂を滴下する樹脂滴下工程と、該保持テーブルの回転による遠心力で該液体樹脂を均一な厚さに引き伸ばし、該円形板状基台の中心から外周方向に移動する該液体樹脂を該スカート部に溜めるとともに、該円形板状基台の外周に移動した該液体樹脂の表面張力による盛り上がりを防止する樹脂塗布工程と、引き伸ばされた液体樹脂の表面に該搬入手段が該ワークを載置した後、該樹脂硬化手段によって該液体樹脂を硬化させて該円形板状基台と該ワークとを貼り合わせるワーク貼り合わせ工程と、を備え、円形板状基台とワークとを貼り合わせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、円形板状基台の外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部が形成され、円形板状基台を搬入手段によって回転可能な保持テーブルに保持する保持工程と、円形板状基台に液体樹脂を適下する樹脂適下工程と、円形板状基台の上面に液体樹脂を引き伸ばす樹脂塗布工程とを備えていることから、保持テーブルの回転による遠心力で円形板状基台に滴下された該液体樹脂を均一の厚さに引き伸ばしてスカート部に溜めることができるとともに、該円形板状基台の外周に移動した該液体樹脂の表面張力による盛り上がりを防止することができる。そのため、樹脂の表面にワークを載置して、樹脂硬化によって円形板状基台とワークとを貼り合わせた際に、ワークの外周部に反りが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ワーク貼り合わせ装置の断面図である。
【図2】円形板状基台の構成を示す正面図である。
【図3】ワークの表面及び裏面を示す斜視図である。
【図4】円形板状基台を保持テーブルに搬入する保持工程を示す断面図である。
【図5】液体樹脂を円形板状基台に滴下する樹脂滴下工程を示す断面図である。
【図6】保持テーブルの回転による樹脂塗布工程を示す断面図である。
【図7】円形板状基台の上面にある樹脂表面にワークを載置する工程を示す断面図である。
【図8】樹脂硬化手段による樹脂硬化工程を示す断面図である。
【図9】ワークの研削工程を示す断面図である。
【図10】ワークが所定の厚みに研削された状態を示す断面図である。
【図11】従来のワーク貼り合わせ方法の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すワーク貼り合わせ装置1は、図2に示す円形板状基台2と図3に示す被加工物であるワークWとを貼り合わせる方法に利用できる装置の一例である。ワーク貼り合わせ装置1は、回転可能な保持テーブル4と、液体の樹脂を滴下する樹脂供給ノズル5と、円形板状基台2及びワークWを保持テーブル4に搬入する搬入手段3と、液体樹脂を硬化させる樹脂硬化手段7と、を少なくとも備えている。
【0013】
図1に示す保持テーブル4は、円形板状基台2を保持する保持面40と、多孔質部材より形成される保持部41と、保持部41に連通する吸引口42と、吸引口42に接続される吸引源43とを備えている。保持テーブル4は、吸引源43からの吸引力によって、保持面40に円形板状基台2を吸引保持できるようになっている。そして、保持テーブル4は、中心軸Aの周りを回転可能な構成としている。
【0014】
図1に示す搬入手段3は、吸着パッド3aを備えており、Z軸方向に昇降可能となっている。そして、搬入手段3は、円形板状基台2及び円形板状基台2と略同径のワークWを吸着パッド3aに吸着させ、保持テーブル4に搬入することができる。
【0015】
樹脂供給ノズル5は、X軸方向に往復または旋回移動することができ、保持テーブル4の上方から液体樹脂を滴下することができる。樹脂硬化手段7は、液体樹脂を硬化させるために、例えば、加熱による熱硬化もしくは紫外線の照射によるUV硬化を施すことができる。そして、樹脂硬化手段7についても、X軸方向に往復または旋回移動することができる。以下では、樹脂硬化手段7が加熱により液体樹脂に対して熱硬化を施す機能を有する場合について説明する。
【0016】
図2に示す円形板状基台2は、被加工物を下方から支持する支持基板であり、円形板状基台2の上面2aは、液体樹脂を介してワークWを載置できる面となっている。円形板状基台2には、液体樹脂が滴下される上面2aにおいて、外周部に所定の角度で切り欠いて傾斜を設けたスカート部20が形成されている。スカート部20は、上面2aから下面2bに向けて拡径する斜面によって構成されており、その傾斜角度は、円形板状基台2の上面2aの外周方向に移動してきた液体樹脂を下方に移動させ、溜めることができるほどの角度である。
【0017】
図3に示すワークWは、円形の被加工物の一例である。図3(a)に示すワークWの表面Waには、複数のデバイスDが格子状のストリートSによって区画されて形成されている。一方、図3(b)に示すワークWの裏面Wbは、研削が施される被研削面となっている。また、ワークWの側面である外周部Wsには、面取りが施されている。
【0018】
以下では、上記の如く構成されるワーク貼り合わせ装置1によってワークWと円形板状基台2とを貼り合わせる方法について説明する。
【0019】
(1)保持工程
図4に示すように、搬入手段3を作動させ、円形板状基台2の上面2aを吸着パッド3aに吸着させる。そして、円形板状基台2の下面2bを保持テーブル4の保持面40に対面させ、吸着パッド3aを下降させて円形板状基台2を保持面40に載置する。
【0020】
円形板状基台2が保持面40に載置されたら、吸引源43から発生する吸引力が吸引口42を通じて保持部41に伝達され、円形板状基台2の下面2bが保持面40において吸着保持される。
【0021】
(2)樹脂滴下工程
保持工程を経た後、保持テーブル4は回転を開始する。樹脂供給ノズル5は、図5に示すように、液体樹脂6を円形板状基台2の上面2aの中心に滴下する。ここで、液体樹脂6としては、例えば熱硬化性樹脂を用いる。なお、樹脂硬化手段7が紫外線照射によるUV硬化手段である場合には、液体樹脂6は、UV硬化性樹脂を用いる。
【0022】
(3)樹脂塗布工程
回転中の保持テーブル4に保持された円形板状基台2の中心に液体樹脂6が滴下されたら、保持テーブル4は、回転によって発生する遠心力を利用して、液体樹脂6を円形板状基台2の上面2aにおいて中心から外周側に移動させ、均一の厚さに引き伸ばす。
【0023】
保持テーブル4が回転し続けると、図6に示すように、引き伸ばされた液体樹脂6の外周部60は、円板板状基台2のスカート部20に流れ落ちて溜まる。スカート部20は、円板板状基台2の上面2aから下面2bに向けて拡径する方向に傾斜しているため、液体樹脂6の外周部60に表面張力が発生しても、液体樹脂6の外周部60が盛り上がって上方に突出し、球状の反りが発生することはない。
【0024】
液体樹脂6が、円形板状基台2の上面2aにおいて所定の厚さに引き伸ばされたら、保持テーブル4の回転を停止する。これにより、液体樹脂6は、円形板状基台2の上面2aにおいて、外周部60に反りを発生させることなく均一な厚さを保つことができる。
【0025】
(4)ワーク貼り合わせ工程
樹脂塗布工程を経た後、図7に示すように、ワークWを、円形板状基台2の上面2aに引き伸ばされた液体樹脂6の表面6aに載置する。具体的には、搬入手段3を作動させ、搬送パッド3aにワークWの裏面Wbを吸着し、液体樹脂6の表面6aに向けて下降させて、液体樹脂6の表面6aにワークWの表面Waを対面させて載置する。
【0026】
図8に示すように、ワークWが液体樹脂6の表面6aに載置されたら、樹脂硬化手段7をワークWの上方に位置づける。そして、樹脂硬化手段7をワークWに接近させ、液体樹脂6を加熱する。加熱された液体樹脂6は、硬化して円形板状基台2及びワークWに固着され、円形板状基台2とワークWとが液体樹脂6を介して貼り合わされる。このとき、液体樹脂6の外周部60には、反りが発生していないため、ワークWの外周Wsにも反りが発生することはない。
【0027】
(5)研削工程
円形板状基台2とワークWとを貼り合わせた後、ワークWを所定の厚さに薄化するために、図9に示す研削手段8を作動させてワークWの裏面Wbを研削する。研削手段8は、スピンドル80と、スピンドル80の下端に装着された研削ホイール81と、研削ホイール81の下部に固着されたダイヤモンド砥粒等から構成された研削砥石82とを備えている。そして、研削手段8は、研削ホイール81を矢印B方向に回転させることができる。
【0028】
図7に示した搬入手段3は、液体樹脂6を介して円形板状基台2と一体となっているワークWを図9に示す保持テーブル9に裏面Wbを上に向けて搬入する。なお、保持テーブル9の構成は、図1に示した保持テーブル4の構成と同様であり、保持面90と、多孔質部材より形成される保持部91と、保持部91に連通する吸引口92と、吸引口92に接続される吸引源93とを備えている。
【0029】
保持テーブル9の保持面90に円形板状基台2が載置されたら、保持テーブル9は、吸引を開始する。吸引源93から発生する吸引力が吸引口92を通じて保持部91に伝達され、円形板状基台2の下面2bを保持面90に吸着保持する。
【0030】
円形板状基台2の下面2bが保持面90に保持された後、保持テーブル9を矢印A方向に所定の回転速度で回転させながら研削手段8の下方に送り込む。スピンドル80を矢印B方向に回転させて研削砥石82をワークWの裏面Wbに接触させ、裏面Wbを研削する。そして、ワークWの裏面Wbが所定の厚みに研削された時点で研削手段8を上昇させて、研削ホイール81の回転を停止し、研削工程が終了する。
【0031】
研削工程が終了すると、図10に示すように、ワークWは所定の厚みに薄化される。このように、ワークWの外周部Wsには反りが形成されないため、外周部Wsだけが薄く研削されることはない。研削終了後は、ワークWと円形板状基台2とを剥がし、ワークWをダインシングして個々のデバイスDに分割する。
【符号の説明】
【0032】
1:ワーク貼り合わせ装置
2:円形板状基台 2a:上面 2b:下面 20:スカート部
3:搬入手段 3a:搬送パッド
4:保持テーブル 40:保持面 41:保持部 42:吸引口 43:吸引源
5:樹脂供給ノズル
6:液体樹脂 6a:表面 60:外周部
7:樹脂硬化手段
8:研削手段 80:スピンドル 81:研削ホイール 82:研削砥石
9::保持テーブル 90:保持面 91:保持部 92:吸引口 93:吸引源
30:液体樹脂 30a:表面 31:反り 32:円板状基台 33:ワーク 33a:下面 33b:外周部 34:反り
W:ワーク Wa:表面 Wb:裏面 Ws:外周部 D:デバイス S:ストリート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形板状基台を保持して回転可能な保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から液体樹脂を滴下する樹脂供給ノズルと、該円形板状基台および該円形板状基台と略同径の円形のワークを該保持テーブルに搬入する搬入手段と、該液体樹脂を硬化させる樹脂硬化手段と、を少なくとも備えるワーク貼り合わせ装置を用いたワーク貼り合わせ方法であって、
該円形板状基台は、外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部が形成されており、
該搬入手段によって該円形板状基台を該保持テーブルに搬入し、該保持テーブルに保持する保持工程と、
該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から該樹脂供給ノズルによって該円形板状基台の中心に向けて液体樹脂を滴下する樹脂滴下工程と、
該保持テーブルの回転による遠心力で該液体樹脂を均一な厚さに引き伸ばし、該円形板状基台の中心から外周方向に移動する該液体樹脂を該スカート部に溜めるとともに、該円形板状基台の外周に移動した該液体樹脂の表面張力による盛り上がりを防止する樹脂塗布工程と、
引き伸ばされた液体樹脂の表面に該搬入手段が該ワークを載置した後、該樹脂硬化手段によって該液体樹脂を硬化させて該円形板状基台と該ワークとを貼り合わせるワーク貼り合わせ工程と、を備えるワーク貼り合わせ方法。
【請求項1】
円形板状基台を保持して回転可能な保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から液体樹脂を滴下する樹脂供給ノズルと、該円形板状基台および該円形板状基台と略同径の円形のワークを該保持テーブルに搬入する搬入手段と、該液体樹脂を硬化させる樹脂硬化手段と、を少なくとも備えるワーク貼り合わせ装置を用いたワーク貼り合わせ方法であって、
該円形板状基台は、外周部に所定の角度で切り欠いたスカート部が形成されており、
該搬入手段によって該円形板状基台を該保持テーブルに搬入し、該保持テーブルに保持する保持工程と、
該保持テーブルに保持された該円形板状基台の上方から該樹脂供給ノズルによって該円形板状基台の中心に向けて液体樹脂を滴下する樹脂滴下工程と、
該保持テーブルの回転による遠心力で該液体樹脂を均一な厚さに引き伸ばし、該円形板状基台の中心から外周方向に移動する該液体樹脂を該スカート部に溜めるとともに、該円形板状基台の外周に移動した該液体樹脂の表面張力による盛り上がりを防止する樹脂塗布工程と、
引き伸ばされた液体樹脂の表面に該搬入手段が該ワークを載置した後、該樹脂硬化手段によって該液体樹脂を硬化させて該円形板状基台と該ワークとを貼り合わせるワーク貼り合わせ工程と、を備えるワーク貼り合わせ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−110202(P2013−110202A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252624(P2011−252624)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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