説明

三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法

【課題】ラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法において、高品質な単層及び積層成形品を得ることができる三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法を提供する。
【解決手段】固定金型12と、可動金型14と、回転金型16と、ラックアンドピニオン機構20とを備える三枚構造の射出成形金型であって、ラックアンドピニオン機構20は、ピニオン22を回転金型16に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、ピニオン22を固定金型12及び可動金型14の少なくとも一方側に押圧し、ピニオン22をラック24、26の歯25、27に押し付け可能なピニオン移動機構30を更に備え、ピニオン移動機構30によりピニオン22をラック24、26の歯25、27に押し付けた状態において、ラックアンドピニオン機構20により回転金型16を型開閉方向に移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックアンドピニオン機構により回転金型の型開閉方向の移動を行なう三枚構造の射出成形金型及び射出成形装置並びにそれを用いて行なう射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定盤に取付けられる固定側金型(固定金型)と、可動盤に取付けられる可動側金型(可動金型)と、固定側金型及び可動側金型の間に設けられる回転側金型(回転金型)とを備える多色成形用金型(三枚構造の射出成形金型)が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の多色成形用金型には、その側面に一対のラック及びピニオンからなるラックアンドピニオン機構が取付けられ、このラックアンドピニオン機構により、可動側金型の型開閉方向の移動に対応して回転側金型が型開閉方向に移動するように構成されている。なお、特許文献1に関する記載中の括弧内の構成は、説明の便宜上、括弧直前の先行技術の構成に対応すると考えられる本発明の構成を示したものであり、括弧直前の構成と括弧内の構成とが同一又は類似であることを示唆するものではない。
【0003】
特許文献1の多色成形用金型に用いられているような従来のラックアンドピニオン機構は、ラックとピニオンを円滑に噛み合わせ、ピニオンを支障なく回転させるために、図17(a)に示すように、一対のラック110、112の歯111、113とピニオン114の歯115a、115bとの間にバックラッシα、βをそれぞれ設け、ラック110、112の歯111、113に対するピニオン114の歯115a、115bの食い込みを回避するように形成されている。
【0004】
一方、従来から、製品の軽量化及び変形抑制、断熱特性及び吸音特性等の機能化付与並びに材料消費量削減によるコストダウン等を目的として、発泡性溶融樹脂から発泡成形品を成形する発泡成形が行なわれている。このような発泡成形としては、金型キャビティ内へ発泡性溶融樹脂を射出充填させた後に、金型を微小型開きさせて金型キャビティの容積を拡張させ、金型キャビティ内において発泡性溶融樹脂を発泡膨張させることにより、未発泡のスキン層で覆われた内部に発泡セルを有する発泡成形品を成形する拡張発泡成形方法が、発泡制御性及び発泡品質の安定化等の発泡効率が高い成形法として知られている(特許文献2参照)。
【0005】
また、従来から、例えばガラス樹脂化成形品等を成形する射出成形方法として、予めその容積を所定量拡張させた金型キャビティ内に溶融樹脂を射出充填した後、金型キャビティの容積を縮小させて金型キャビティ内の溶融樹脂に型締めプレス力を付与させることにより、成形品の変形を抑制する射出プレス成形方法や、同様の目的で、射出充填させた金型キャビティ内の溶融樹脂圧力により金型キャビティ容積を所定量拡張させた後、金型キャビティの容積を縮小させて金型キャビティ内の溶融樹脂に型締め圧縮力を付与させる射出圧縮成形方法等の成形方法が知られている。これら射出プレス成形方法及び射出圧縮成形方法は、圧縮成形方法と呼称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−064278号公報
【特許文献2】特開2000−351142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の多色成形用金型のようなラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型で拡張発泡成形方法や射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法を行なうと、バックラッシの影響により高精度の型開き及び型閉じ動作を行なうことができず、高品質な発泡成形品や射出プレス成形品や射出圧縮成形品を得ることができないという問題がある。
【0008】
すなわち、特許文献1の多色成形用金型(三枚構造の射出成形金型)では、型開き状態から可動側金型(可動金型)及び回転側金型(回転金型)が型閉じ方向に移動し、型締めされる過程において、ラックアンドピニオン機構のラック及びピニオンが図17(a)に示す状態になっていると考えられる。これを前提とすると、可動側金型及び回転側金型の型開き方向への移動において、可動側金型が型開き方向に移動し始めてから回転側金型が型開き方向に移動し始めるまでは、まず、図17(a)の状態から、図17(b)に示すように、可動側の下側のラック110の歯111がピニオン114の下方側の歯115aと接触するまで(すなわち、図17(a)のバックラッシα分だけ)、下側のラック110が型開き方向に移動する(図17(b)中、白矢印は、下側のラック110の移動方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。その後、図17(c)に示すように、可動側の下側のラック110の歯111がピニオン114の下方側の歯115aを型開き方向に押すことにより、ピニオン114の上方側の歯115bが固定側の上側のラック112の歯113と接触するまで(すなわち、図17(b)のバックラッシβ分だけ)ピニオン114が時計回りに回転すると共に、下側のラック110が型開き方向に移動する。そして、このような動作の後に、ピニオン114の上方側の歯115bが、固定され移動しない固定側の上側のラック112の歯113を固定側金型の方向に押すことにより、ピニオン114の時計回りの回転が継続され、ピニオン114が回転可能に配置されている回転側金型が可動側金型の方向(型開き方向)に移動し始める(図17(c)中、白矢印は、下側のラック110の移動方向及びピニオン114の回転・移動方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。このように、特許文献1の多色成形用金型は、ラックアンドピニオン機構のバックラッシにより、両金型キャビティの型開き量に最大α+β分だけ差異が生じてしまうものであり(図17(c)参照)、また、型閉じ状態から型開きする間、或いは型開き状態から型閉じする間、両金型キャビティ内圧力(例えば、射出充填させた溶融樹脂圧力や拡張発泡成形方法における発泡性溶融樹脂の発泡圧力等)に差異が生じた場合、回転側金型にその差異に相当する型開閉方向の力が作用し、ラック及びピニオンの噛合以外に型開閉方向の拘束のない回転側金型が、ラック及びピニオン間のバックラッシ分だけ型開閉方向に突発的に移動し、両金型キャビティの型開き量に差異が生じたり、型開き速度や型閉じ速度が不安定になったりする等、高精度の型開き動作及び型閉じ動作を行なうことができないという問題がある。そして、このようなラックアンドピニオン機構のバックラッシの問題は、特に、正確な微小型開き量や微少型開き位置の位置保持、また、安定した型開き速度や型閉じ速度の制御が要求される拡張発泡成形、射出プレス成形及び射出圧縮成形において問題となるものである。
【0009】
そこで、本発明は、ラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法において、高品質な単層及び積層成形品を得ることができる三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係る三枚構造の射出成形金型は、固定金型と、前記固定金型と対向し、型開閉方向に移動可能に設けられた可動金型と、前記固定金型及び前記可動金型の間において型開閉方向に移動可能でかつ型開閉方向と直交する回転軸を中心として回転可能に設けられ、一の回転位置において前記固定金型と対向し、該固定金型との間において金型キャビティを形成可能で、前記一の回転位置から前記回転軸を中心として回転した他の回転位置において前記可動金型と対向し、該可動金型との間において金型キャビティを形成可能な金型分割面を少なくとも2つ有する回転金型と、前記回転金型に設けられたピニオン、並びに、前記固定金型及び前記可動金型にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動金型の型開閉方向の移動に対応して前記回転金型を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、を備える三枚構造の射出成形金型であって、前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記回転金型に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定金型及び前記可動金型の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記回転金型を型開閉方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る三枚構造の射出成形金型において、前記ピニオン移動機構は、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型の型開き時に、前記ピニオンを前記固定金型側又は前記可動金型側に押圧し、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型の型閉じ時に、前記ピニオンを前記可動金型側に押圧するように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る三枚構造の射出成形金型において、前記回転金型は、前記ピニオンが取り付けられ、前記ラックアンドピニオン機構により型開閉方向に移動可能に設けられた回転金型支持部と、前記回転金型支持部に、型開閉方向と直交する回転軸を中心として回転可能に支持され、一の回転位置において前記固定金型と対向し、該固定金型との間において金型キャビティを形成可能で、前記一の回転位置から前記回転軸を中心として回転した他の回転位置において前記可動金型と対向し、該可動金型との間において金型キャビティを形成可能な金型分割面を少なくとも2つ有する回転金型部と、前記回転金型部を前記回転軸を中心として回転させる回転機構とを備えるとしても良い。
【0013】
本発明の第一の例に係る射出成形装置は、上記三枚構造の射出成形金型を備える射出成形装置であって、前記固定金型を取り付け可能な固定盤と、前記固定盤と対向して設けられ、前記固定盤に対して型開閉方向に移動可能で、前記可動金型を取り付け可能な可動盤と、前記可動盤を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第二の例に係る射出成形装置は、固定金型を含む固定部と、前記固定金型と対向する可動金型を含み、前記固定部に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動部と、型開閉方向と直交する回転軸を中心として回転可能に設けられ、一の回転位置において前記固定金型と対向し、該固定金型との間において金型キャビティを形成可能で、前記一の回転位置から前記回転軸を中心として回転した他の回転位置において前記可動金型と対向し、該可動金型との間において金型キャビティを形成可能な金型分割面を少なくとも2つ有する回転金型を含み、前記固定部及び前記可動部の間において型開閉方向に移動可能に設けられた回転部と、前記可動部を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、前記回転部に設けられたピニオン、並びに、前記固定部及び前記可動部にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動部の型開閉方向の移動に対応して前記回転部を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、を備える射出成形装置であって、前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記回転部に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定部及び前記可動部の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記回転部を型開閉方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。本発明の第二の例に係る射出成形装置において、前記固定部は、前記固定金型と、前記固定金型を取り付け可能な固定盤とを備え、前記可動部は、前記可動金型と、前記可動金型を取り付け可能な可動盤とを備えるとしても良く、また、前記ラックは、前記固定盤及び前記可動盤にそれぞれ設けられるとしても良い。
【0015】
本発明の第一の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記固定金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記回転金型の他の金型分割面を前記固定金型と対向させる回転工程と、前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第3金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、発泡性溶融樹脂から発泡成形体を成形する工程であり、発泡性溶融樹脂の射出充填後に型締め状態を解除する型締め解除工程と、前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせ、射出充填された前記発泡性樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第二の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記回転金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記一次成形体を保持させた前記回転金型の金型分割面を前記可動金型と対向させる回転工程と、前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記可動金型と前記回転金型との間に形成される第4金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、発泡性溶融樹脂から発泡成形体を成形する工程であり、発泡性溶融樹脂の射出充填後に型締め状態を解除する型締め解除工程と、前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせ、射出充填された前記発泡性樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第三の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、前記固定金型と前記回転金型の一の金型分割面とを型締めして第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型と前記回転金型の他の金型分割面とを型締めして第2金型キャビティを形成する型締め工程と、前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に発泡性溶融樹脂を射出充填する発泡性樹脂射出充填工程と、前記発泡性樹脂射出充填工程後に、型締め状態を解除する型締め解除工程と、前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせ、前記発泡性樹脂射出充填工程において射出充填された発泡性溶融樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備えることを特徴とする。本発明の第三の例に係る射出成形方法において、前記発泡性樹脂射出充填工程は、前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に発泡性溶融樹脂を射出充填する工程であることが好ましい。
【0018】
本発明の第四の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記固定金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記回転金型の他の金型分割面を前記固定金型と対向させる回転工程と、前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第3金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出プレス成形体を成形する工程であり、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記回転金型の間が所定量だけ微小型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程後に、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の第五の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記回転金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記一次成形体を保持させた前記回転金型の金型分割面を前記可動金型と対向させる回転工程と、前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記可動金型と前記回転金型との間に形成される第4金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出プレス成形体を成形する工程であり、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記回転金型の間が所定量だけ微小型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程後に、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の第六の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記回転金型の間並びに前記可動金型及び前記回転金型の間が所定量だけ微小型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記回転金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記回転金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備えることを特徴とする。本発明の第六の例に係る射出成形方法において、前記射出充填工程は、前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に溶融樹脂を射出充填する工程であることが好ましい。
【0021】
本発明の第七の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記固定金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記回転金型の他の金型分割面を前記固定金型と対向させる回転工程と、前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第3金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出圧縮成形体を成形する工程であり、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせる微小型開き工程と、前記微小型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の第八の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記回転金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記一次成形体が付着した前記回転金型の金型分割面を前記可動金型と対向させる回転工程と、前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記可動金型と前記回転金型との間に形成される第4金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出圧縮成形体を成形する工程であり、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせる微小型開き工程と、前記微小型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の第九の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記回転金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記回転金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程及び前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程のいずれか一方の補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程及び前記型開き補正押圧工程のいずれか一方の継続中に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせる微小型開き工程と、前記微小型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備えることを特徴とする。本発明の第九の例に係る射出成形方法において、前記射出充填工程は、前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に溶融樹脂を射出充填する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法において、高品質な単層及び積層成形品を得ることができる三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のA−A´線に沿った概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る射出成形装置のピニオン移動機構の概略構成を示す正面図である。
【図4】図3のB−B´線に沿った概略断面図である。
【図5】図3のC−C´線に沿った概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の代替例の概略構成を示す正面図である。
【図7】本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例の工程を説明するための説明図である。
【図8】本実施形態に係る射出成形装置における型開き時のラック及びピニオンの動作を説明するための説明図である。
【図9】本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第2成形例の工程を説明するための説明図である。
【図10】本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例の工程を説明するための説明図である。
【図11】本実施形態に係る射出プレス成形方法の第1成形例の工程を説明するための説明図である。
【図12】本実施形態に係る射出プレス成形方法の第2成形例の工程を説明するための説明図である。
【図13】本実施形態に係る射出プレス成形方法の第3成形例の工程を説明するための説明図である。
【図14】本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例の工程を説明するための説明図である。
【図15】本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第2成形例の工程を説明するための説明図である。
【図16】本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第3成形例の工程を説明するための説明図である。
【図17】従来のラックアンドピニオン機構における型開き時のラック及びピニオンの動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る射出成形装置の概略構成を示す正面図及び断面図である。図3乃至図5は、本実施形態におけるピニオン移動機構の概略構成を示す正面図及び断面図である。図6は、本発明の一実施形態に係る射出成形装置の代替例の概略構成を示す正面図である。本実施形態に係る射出成形装置1は、概略的には、ベース2に固定された固定盤3及び固定金型12を備える固定部100と、固定部100に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動盤4及び可動金型14を備える可動部102と、固定部100及び可動部102の間において型開閉方向に移動可能に設けられた回転金型16を備える回転部104と、可動部102を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置6と、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27との間に生じるバックラッシをゼロにした状態において、可動部102の型開閉方向の移動に対応して(連動して)回転部104を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構20とを備えるものである。以下、本実施形態に係る射出成形装置1の具体的な構成について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0027】
本実施形態に係る射出成形装置1は、図1に示すように、ベース2に固定された固定盤3と、固定盤3と対向して設けられ、固定盤3に対して型開閉方向に移動可能に構成された可動盤4と、可動盤4の四隅を貫通するように固定盤3の四隅から突出して設けられ、可動盤4の型開閉方向の移動をガイドするタイバー5と、可動盤4をタイバー5に沿って型開閉方向に移動させ、かつ型締めも可能な型締装置6と、固定盤3及び可動盤4の間に設けられた三枚構造の射出成形金型10と、固定盤3の背面側に設けられ、三枚構造の射出成形金型10により形成される金型キャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニット7(以下、「第1射出ユニット7」ということもある)とを備えている。本実施形態に係る射出成形装置1において、型開閉方向とは、三枚構造の射出成形金型10を型開き及び型閉じする方向、すなわち、後述する固定金型12、可動金型14及び回転金型16が互いに対向する方向をいう。
【0028】
固定盤3は、その背面側(可動盤4と対向する面の反対側)から正面側(可動盤4と対向する面)に亘って射出ユニット7の図示しないノズルが挿入可能な貫通孔(図示せず)が形成されている。射出ユニット7は、固定盤3の背面側において脱着可能に設けられ、溶融樹脂を射出するノズルが固定盤3の貫通孔を介して後述する固定金型12の背面(金型分割面の反対側の面)と接続し、三枚構造の射出成形金型10の樹脂流路を介して三枚構造の射出成形金型10の金型キャビティ内に溶融樹脂を射出充填するように構成されている。
【0029】
三枚構造の射出成形金型10は、図1及び図2に示すように、固定金型12と、固定金型12と対向し、型開閉方向に移動可能に設けられた可動金型14と、固定金型12及び可動金型14の間に設けられ、型開閉方向に移動可能でかつ型開閉方向と直交する回転軸16cを中心として回転可能な回転金型16と、可動金型14の型開閉方向の移動に対応して(連動して)回転金型16を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構20とを備えている。この三枚構造の射出成形金型10は、固定金型12及び可動金型14が固定盤3及び可動盤4に対してそれぞれ取り外し可能な状態で取付けられることにより、固定盤3及び可動盤4間に着脱(交換)可能に取付けられている。本実施形態に係るラックアンドピニオン機構20において、可動金型14の型開閉方向の移動に対応して回転金型16を型開閉方向に移動させるとは、可動金型14に設けられた後述するラック26の型開閉方向の移動によって、回転金型16に設けられた後述するピニオン22が回転し、該ピニオン22が回転しながら固定金型12に設けられた後述するラック24の歯25と噛合しながら直線的に型開閉方向に移動することにより、回転金型16を型開閉方向に移動させることをいう。
【0030】
回転金型16は、後述するピニオン22が設けられ、ラックアンドピニオン機構20により型開閉方向に移動可能な枠形状の回転金型支持部16aと、型開閉方向と直交する回転軸16cを中心として回転金型支持部16aに回転可能に支持された回転金型部16bと、回転金型部16bを回転軸16cを中心として垂直軸線回りに回転させる回転機構16dとを備えている。なお、回転金型部16bの回転は、垂直軸線回りに回転する形態の他に、水平軸線回りに回転される形態であっても良い。回転金型部16bは、異なる回転位置でそれぞれ固定金型12及び可動金型14の少なくとも一方と対向する少なくとも2つの金型取付面を有する回転盤17aと、回転盤17aの少なくとも2つの金型取付面にそれぞれ取り付けられ、固定金型12及び可動金型14とそれぞれ型合わせされることによりそれぞれ金型キャビティを形成可能な1つの金型分割面を有する第1金型17b及び第2金型17cとを備えている。ここで、異なる回転位置でそれぞれ固定金型12及び可動金型14の少なくとも一方と対向する少なくとも2つの金型取付面を有する回転盤とは、第1の回転位置において一の面が固定金型12に、他の面が可動金型14に対向し、第2の回転位置において他の面が固定金型12に、一の面が可動金型14に対向する回転盤であることを意味し、2つの金型取付面を有する平板形状のみならず、4つ以上の偶数個の金型取付面を有する多面体形状からなる回転盤をも含むことを意味するものである。回転盤17aは、回転金型支持部16aと略同じ厚さを有し、型開閉方向と直交する回転軸16cを中心として回転金型支持部16aに回転可能に支持され、同じく回転金型支持部16aに設けられた回転機構16dにより、第1金型17b及び第2金型17cがそれぞれ固定金型12及び可動金型14と対向する回転位置に回転乃至反転されるように構成されている。
【0031】
回転盤17aを、回転軸16cを介して回転金型支持部16aに回転可能に支持する部材(図示せず)は、スラストベアリングや無給油ブッシング等、回転盤17aと、第1金型17b及び第2金型17cとのサイズ、荷重及び支持構造等により、適宜好適なものを用いることができる。また、回転盤17aを回転させる回転機構16dは、電動又は油圧モータ等の回転駆動手段と回転軸16cとを、ジョイントを介して直結させた構造や、ギア、ギア及びチェーン、ベルト及びプーリ等の動力伝達機構を介して結合させた構造等、回転盤17aと、第1金型17b及び第2金型17cとのサイズ、荷重及び支持構造等により、適宜好適なものを用いることができる。第1及び第2の回転位置それぞれにおいて、型合わせされる第1金型17b及び第2金型17cと、固定金型12及び可動金型14とは、一般的な金型分割面の位置決めと同様に、それぞれの金型分割面の一方に設けられた位置決めピン及び他方に設けられた位置決めピン孔のインロー構造(図示せず)等、適宜好適なもので位置決めされる。ここで、型合わせ時や型締め時に、回転軸16cやその支持構造に掛かる負荷を低減しこれら部位を保護するために、回転機構16dにより位置決めされた、回転金型支持部16aに対する回転盤17aの回転位置を機械的に保持する回転位置決め手段17dが適宜設けられることが好ましい。具体的には、油圧シリンダ等のアクチュエータの摺動部の先端形状を、回転金型支持部16a及び回転盤17aのいずれか一方に設けられた位置決め孔の形状に適合させたアクチュエータを回転金型支持部16a及び回転盤17aの他方に配置し、回転機構16dによる位置決め後に、該摺動部を前進させて、その先端を対向する位置に配置された位置決め孔に挿入することにより、位置決めされた、回転金型支持部16aに対する回転盤17aの回転位置を機械的に保持する構成としても良い。或いは、この回転位置決め手段17dにより、回転金型支持部16aに対する回転盤17aの回転位置が位置決めされる構成としても良い。この回転位置決め手段17dの構造、配置する位置及び数量等の仕様については、型合わせ時や型締め時に、回転軸16cやその支持構造に掛かる負荷等に応じて適宜好適なものを用いることができる。
【0032】
三枚構造の射出成形金型10は、固定金型12及び回転金型部16b(第1金型17b及び第2金型17cのいずれか一方)の間並びに可動金型14及び回転金型部16b(第1金型17b及び第2金型17cのいずれか他方)の間それぞれに金型分割面を有している。この三枚構造の射出成形金型10は、回転金型16の第1の回転位置においてそれぞれ型合わせされた際に、固定金型12及び第1金型17bの間において第1金型キャビティC1を形成すると共に、可動金型14及び第2金型17cの間において第2金型キャビティC2を形成するように構成されている。また、三枚構造の射出成形金型10は、回転盤17aが反転した、回転金型16の第2の回転位置においてそれぞれ型合わせされた際に、固定金型12及び第2金型17cの間において第3金型キャビティC3を形成すると共に、可動金型14及び第1金型17bの間において第4金型キャビティC4を形成するように構成されている。また、これらの金型分割面は、それぞれが微小型開きされた際に、第1金型キャビティC1乃至第4金型キャビティC4に射出充填された樹脂が漏れ出すことがないシェアエッジ構造となっている。このシェアエッジ構造とは、くいきり構造、或いはインロー構造等と呼称され、金型分割面を形成する嵌合部の構造として一般的に知られた構造である。このシェアエッジ構造は、型開閉方向に伸びて、互いに摺動しながら挿脱することのできる嵌合部を、金型の金型分割面間に形成することによって金型キャビティ内に射出充填した樹脂が、所定量、金型を型開きさせても金型外に漏れ出すのを防止することができる構造である。なお、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、各金型分割面は、シェアエッジ構造であるとしたが、これに限定されるものではない。また、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、各金型12、14、16は、図1等においてそれぞれ単体の金型として図示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、各金型12、14、16は、それぞれ、製品キャビティ部を含む製品キャビティ金型部と、製品キャビティ金型部が取り付けられる金型ベース部とに分けられるとしても良いし、回転盤17aと第1金型17bと第2金型17cとで構成される回転金型部16bが、2つの金型分割面を有する1つの金型として構成され、回転金型支持部16aに回転可能に支持されるとしても良い。
【0033】
固定金型12及び回転金型16間並びに可動金型14及び回転金型16間には、回転金型16の型開閉方向の移動をガイドするガイドピン18a乃至18d(図1中、奥側のガイドピン18c、18dは、図示せず)が設けられている。すなわち、固定金型12の四隅のうち対角線上の二箇所には、可動金型14及び回転金型16に向けて突出し、回転金型16の回転金型支持部16aを貫通する一対のガイドピン18a、18dが設けられている。また、固定金型12の四隅のうち、一対のガイドピン18a、18dが設けられた方と逆の対角線上の二箇所には、可動金型14から突出する一対のガイドピン18b、18cを収納可能な収納孔19a(図1中、奥側の収納孔19aは、図示せず)がそれぞれ形成されている。可動金型14の四隅のうち、固定金型12から突出するガイドピン18a、18dと対向しない対角線上の二箇所には、固定金型12及び回転金型16に向けて突出し、回転金型16の回転金型支持部16aを貫通する一対のガイドピン18b、18cが設けられている。また、可動金型14の四隅のうち、一対のガイドピン18b、18cが設けられた方と逆の対角線上の二箇所には、固定金型12から突出する一対のガイドピン18a、18dを収納可能な収納孔19b(図1中、奥側の収納孔19bは、図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0034】
ガイドピン18a乃至18dは、三枚構造の射出成形金型10の型開き限位置、すなわち、三枚構造の射出成形金型10を構成する各金型12、14、16間の型開き量が最大となる位置まで回転金型16の回転金型支持部16aを支持及びガイド可能で、かつ三枚構造の射出成形金型10の型締め時に、その先端部が固定金型12及び可動金型14の収納孔19a、19bに収納され、固定金型12及び可動金型14の背面側に突出しない程度の長さを有している。回転金型16の脱落防止のために、ガイドピン18a乃至18dには、それぞれ、射出成形装置から取り外して、金型のメンテナンスを行う際等の各金型の分割時には解除され、それぞれの金型を組み合わせた状態で射出成形装置に取り付けて射出成形を行う結合時においては、型開き限位置以上の型開きを防止する図示しない機械的或いは電気的ストッパーが装備されている。ここで、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、ガイドピン18a乃至18dは、固定金型12及び可動金型14の対角線上の二箇所にそれぞれ設けられるとしたが、これに限定されず、例えば固定金型12及び可動金型14のいずれか一方の四隅にガイドピンを設け、他方の四隅にガイドピンを収納可能な収納孔を設ける態様等、種々の態様を採用することができる。
【0035】
固定金型12には、射出ユニット7から射出された溶融樹脂を流動させ、固定金型12側から金型キャビティにそれぞれ溶融樹脂を流入させる図示しないホットランナーが形成されている。ここで、ホットランナーとは、金型内の樹脂流路(ランナー)に保温機構や加熱機構を配置させ、常時溶融状態で樹脂を滞留・流動させるものをいう。本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10のように、金型内の樹脂流路そのものをホットランナーとして形成する場合には、ホットランナーとして別部材となるスプルーバーやオフセットスプルーバーを採用する場合と比較して、樹脂流路の配置自由度が高く、金型のキャビティとして使用できる有効体積を大きく確保できるため、例えばドアトリム等の投影面積が大きな部品であっても制約なく成形を行なうことができる。本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、溶融樹脂を流動させる各金型の構成は、固定金型12にホットランナーを形成するほかに、例えばスプルーバーやオフセットスプルーバーを採用する等、周知の構成を採用することができる。また、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、金型内の樹脂流路は、射出ユニット7から射出された溶融樹脂を固定金型12側から金型キャビティにそれぞれ流入させるとしたが、これに限定されず、例えば図10に示すように、固定金型12及び回転金型16に樹脂流路(ホットランナー)を形成し、射出ユニット7から射出された溶融樹脂を回転金型16まで流動させ、回転金型16側から第1金型キャビティC1乃至第4金型キャビティC4の少なくとも1つにそれぞれ溶融樹脂を流入させる等、種々の態様を採用することができる。更に、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、金型内の樹脂流路には、該樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等が設けられるとしても良い。特に、樹脂流路が金型分割面を貫通する場合は、型開きにより分割される金型分割面の樹脂流路端それぞれに樹脂遮断開放切替弁等が設けられる必要がある。これら切替弁等は、電気的制御及び機械的制御のいずれであっても良いが、型開閉に自動的に連動して溶融樹脂の遮断或いは開放が切換えられるものが好ましい。本実施形態に係る射出成形装置1においては、射出ユニット7から射出された溶融樹脂を金型キャビティに流動させるとしたが、これに限定されず、例えば図9や図12及び図13等に示すように、可動金型14側に射出ユニット(第2射出ユニット8)をもう一台設けると共に、可動金型14に樹脂流路を形成し、第1射出ユニット7から第1金型キャビティC1及び第3金型キャビティC3の少なくとも一方にそれぞれ溶融樹脂を射出させ、第2射出ユニット8から第2金型キャビティC2及び第4金型キャビティC4の少なくとも一方にそれぞれ溶融樹脂を射出させるようにしても良い。
【0036】
ラックアンドピニオン機構20は、図1乃至図3に示すように、回転金型支持部16aの側面に設けられたピニオン22と、固定金型12の側面に設けられた上側のラック24と、可動金型14の側面に設けられた下側のラック26と、ピニオン22を型開閉方向に移動可能に支持すると共に、ピニオン22を型開閉方向に押圧可能なピニオン移動機構30とを備えている。このラックアンドピニオン機構20は、固定金型12、可動金型14及び回転金型支持部16aの両側面に取付けられている。
【0037】
上側のラック24は、型開閉方向を長手方向とする長尺な角柱に形成されており、その下面には、ピニオン22と噛合可能な歯25が型開閉方向に連続して形成されている。この上側のラック24は、歯25がピニオン22の上方側と噛合するように、型開閉方向と平行な状態で基端が固定金型12の側面に固定されている。下側のラック26は、型開閉方向を長手方向とする長尺な角柱に形成されており、その上面には、ピニオン22と噛合可能な歯27が型開閉方向に連続して形成されている。この下側のラック26は、歯27がピニオン22の下方側と噛合するように、型開閉方向と平行な状態で基端が可動金型14の側面に固定されている。上側のラック24及び下側のラック26は、各歯25、27の反対側がそれぞれ、ピニオン移動機構30の後述するベース部32上に垂直に立設されたラックホルダ28、29によりガイドされ、上下左右のぶれが防止されている。上側のラック24をガイドするラックホルダ28は、型開閉方向に延び、かつ下方に開口する断面略コ字状に形成されており、該断面略コ字状の内部において上側のラック24をガイドするように形成されている(図5参照)。下側のラック26をガイドするラックホルダ29は、型開閉方向に延び、かつ上方に開口する断面略コ字状に形成されており、該断面略コ字状の内部において下側のラック26をガイドするように形成されている(図5参照)。ピニオン22、上側のラック24及び下側のラック26は、同一の歯先形状を有しており、移動させる回転金型16のサイズ、荷重、移動ストローク等により、適宜好適なものを用いることができる。
【0038】
ピニオン移動機構30は、図3乃至図5に示すように、回転金型支持部16aの側面に取付けられる平板状のベース部32と、ピニオン22を保持するピニオンホルダ34と、ピニオンホルダ34をベース部32に対して型開閉方向に移動可能に支持する直動ガイド36と、ピニオンホルダ34をベース部32に対して型開閉方向に押圧するアクチュエータ38とを備えている。
【0039】
ベース部32は、型開閉方向を長手方向とするやや横長の矩形板状に形成されており、一方の面が回転金型支持部16aの側面と面接触するように、回転金型支持部16aの側面上に取付けられている。以下、回転金型支持部16aの側面と面接触するベース部32の一方の面を取付け面といい、他方の面を搭載面という。
【0040】
ピニオンホルダ34は、上面及び下面が開放されたやや型開閉方向に延びる四角筒状に形成されており、その内部にピニオン22を配置した際に、開放された上面及び下面からピニオン22の上方側及び下方側が露出するような形状を有している。ピニオンホルダ34の内部には、ベアリング35、35を介してピニオン22が回転可能に取付けられている。
【0041】
直動ガイド36は、ベース部32の搭載面に取付けられた直動ガイドレール36aと、ピニオンホルダ34に取付けられ、直動ガイドレール36a上をスライド可能な一対の直動ガイドブロック36b、36bとから構成されている。直動ガイドレール36aは、断面I字状に形成されており、型開閉方向に延び、かつベース部32の搭載面に対して垂直に立設されている。一対の直動ガイドブロック36b、36bは、それぞれ、直動ガイドレール36aに向けて開口する断面略コ字状に形成されており、開口側において直動ガイドレール36aにスライド可能に係合すると共に、開口と反対側の面がピニオンホルダ34の背面に固定されている。
【0042】
アクチュエータ38は、油圧で駆動する往復動シリンダ(すわなち、油圧シリンダ)であり、ベース部32の搭載面に固定されたアクチュエータサポート40を介して、ベース部32の搭載面上に取付けられている。このアクチュエータ38は、図示しない圧源より供給される圧力流体によりロッド42を型開閉方向に往復動させ、これによりピニオンホルダ34を型開閉方向に押圧し、ピニオンホルダ34に取付けられたピニオン22を回転金型16に対して型開閉方向に移動させるように構成されている。ロッド42の先端とピニオンホルダ34とは、ある程度の偏心や傾きを許容する(吸収する)ジョイント44により連結されている。このようにロッド42の先端とピニオンホルダ34とをジョイント44により連結することにより、関連する構成部品の製作及び組立許容誤差に起因するピニオンホルダ34の移動抵抗の増大やかじり等を抑制することができ、ピニオンホルダ34をスムーズに移動させることができる。ここで、アクチュエータ38は、油圧シリンダに限定されず、空圧で駆動する往復動シリンダ、電動駆動の往復動ボールネジ機構、スプリング、空圧ダンパ、又は油圧ダンパ等、種々のものを採用することができる。
【0043】
本実施形態に係る射出成形装置1において、ラックアンドピニオン機構20は、可動金型14の型開閉方向の移動に対応して回転金型16を型開閉方向に移動させるものであれば、いかなる態様であっても良い。すなわち、本実施形態に係る射出成形装置1において、ラックアンドピニオン機構20は、固定金型12、可動金型14及び回転金型支持部16aの両側面に取付けられているとしたが、これに限定されるものではない。例えば固定金型12、可動金型14及び回転金型支持部16aの片側面のみに取付けられる態様や、固定金型12、可動金型14及び回転金型支持部16aの上面及び/又は下面に取付けられる態様等、種々の態様を採用することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る射出成形装置1において、上側のラック24が固定金型12の両側面に取付けられ、下側のラック26が可動金型14の両側面に取付けられるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ラック24、26の上下配置が逆の態様(すなわち、下側のラック26が固定金型12の両側面に取付けられ、上側のラック24が可動金型14の両側面に取付けられる態様)や、金型12、14の一の側面と他の側面とでラック24、26の上下配置が逆の態様(すなわち、例えば固定金型12の一の側面に上側のラック24、他の側面に下側のラック26が取付けられ、可動金型14の一の側面に下側のラック26、他の側面に上側のラック24が取付けられる態様)等、種々の態様を採用することができる。この場合において、ラック24、26は、ガイドピン18a乃至18dと上下位置を整合させて設けられることが好ましく、これにより、型開き時の金型側面の開放面積を多く確保することができ、成形品の取り出しを容易にすることができる。
【0045】
更に、本実施形態に係る射出成形装置1において、ラック24、26は、固定金型12及び可動金型14に設けられるとしたが、これに限定されず、図6に示すように、ラック24、26は、固定盤3及び可動盤4に設けられるとしても良い。この場合、本実施形態に係る射出成形装置1の回転金型支持部16aは、固定盤3及び可動盤4の型開閉方向と直交する方向の寸法と略同一の寸法を有することが好ましく、また、ガイドピン18a乃至18dを排除し、回転金型支持部16aと固定盤3及び可動盤4とがタイバー5によって直接連結されるとしても良い。
【0046】
また更に、本実施形態に係る射出成形装置1において、ピニオン移動機構30は、ピニオン22を固定金型12側及び可動金型14側の双方に押圧可能であるとしたが、これに限定されず、ピニオン22を少なくとも固定金型12側に押圧可能(型開き補正押圧工程)、或いは、ピニオン22を少なくとも可動金型14側に押圧可能(型閉じ補正押圧工程)であれば良い。具体的には、前者は、拡張発泡成形方法のように、型締装置6により、可動金型14及び回転金型16を型閉じ状態から微小型開きさせる微小型開き量の精度を要する成形方法に好適であり、後者は、射出プレス成形方法のように、型開き状態から微小型開き状態まで型閉じさせる微小型開き量の精度を要する成形方法に好適である。また、ピニオン22を固定金型12側及び可動金型14側の双方に押圧可能であれば、これらいずれの成形方法はもちろん、成形工程中に型開閉動作の切換えが必要となる射出圧縮成形方法等に好適である。
【0047】
本実施形態に係る射出成形装置1は、汎用の射出成形装置に用いられている単層成形用の金型又は多層成形用の金型と、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10との交換及びそれに関連する軽微な改造によって得ることができる。
【0048】
次に、図7乃至図16を参照しながら、本実施形態に係る射出成形装置1を用いて行う拡張発泡成形方法、射出プレス成形方法及び射出圧縮成形方法について説明する。図7、図9及び図10は、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例乃至第3成形例の工程を説明するための説明図であり、図8は、型開き時のラック及びピニオンの動作を説明するための説明図であり、図11、図12及び図13は、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第1成形例乃至第3成形例の工程を説明するための説明図であり、図14、図15及び図16は、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例乃至第3成形例の工程を説明するための説明図である。図7乃至図16において、各構成要素は、概略的に示されており、また、図7及び図9乃至図16において、例えばラックアンドピニオン機構20やガイドピン18a乃至18d、回転金型16の回転金型支持部16a等は、省略されている。また、各金型12、14、16の形状、樹脂流路の態様等は、あくまでも一例であり、図示された形状等に限定されるものではない。
【0049】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法、射出プレス成形方法及び射出圧縮成形方法において使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の汎用樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエンジニアリング樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のスーパーエンジニアリング樹脂、熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)等のエラストマー系樹脂、及びこれらのリサイクル樹脂等を使用することができる。これらの熱可塑性樹脂は単体で使用されるだけではなく、2種以上を混合した状態で使用することもでき、必要に応じて、可塑剤、熱安定助剤、酸化防止剤、潤滑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、増量剤等の各種添加剤を添加した状態で使用することもできる。また、成形品の強度や剛性向上のためにガラス繊維、炭素繊維、天然繊維等の強化剤を添加した状態で使用することもできる。これらの熱可塑性樹脂に例えば、重炭酸ナトリウムを主成分とする無機系化学発泡剤やアゾ化合物を主成分とする有機系化学発泡剤を混合(化学発泡成形法)したり、空気、炭酸ガス、窒素ガス等を注入(物理発泡成形法)したりする、周知の方法により得られる発泡性溶融樹脂も拡張発泡成形方法だけではなく、射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法においても使用することができる。
【0050】
[拡張発泡成形の第1成形例]
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例について、図7及び図8を用いて説明する。本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、成形工程中に金型キャビティ容積を変化させない一般的な射出成形方法(以下、「一般的な射出成形方法」という)により未発泡一次成形体を成形し、該未発泡一次成形体を保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3において、拡張発泡成形方法により成形された発泡二次成形体を該未発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する方法である。すなわち、固定金型及び回転金型間で成形された一次成形体を固定金型側から移動させず、型開き時に回転金型を回転させて、2回の型開閉動作毎に積層成形品を成形することを特徴とする。以下、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例について、順を追って具体的に説明する。
【0051】
まず、図7(a)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(一次型締め工程)。具体的には、型締装置6によって可動盤4及びこれに取付けられた可動金型14を型閉じ位置まで移動させると共に、ラックアンドピニオン機構20によって、この可動金型14の型閉じ方向の移動に対応して回転金型16を型閉じ位置まで移動させ、すべての金型を型合わせさせる。そして、すべての型合わせが完了した後、型締装置6によって固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる。これにより、固定金型12及び第1金型17b間に第1金型キャビティC1が形成され、可動金型14及び第2金型17c間に第2金型キャビティC2が形成される。なお、第2金型キャビティC2は成形には使用されない。また、先に説明したように、型締め時において、回転金型16(回転金型部16b)は、回転金型支持部16aに対して回転位置決め手段17dにより機械的にその回転位置が保持されており、回転軸16cやその支持構造に掛かる型締め力を低減しこれら部位を保護しているが、これらの図示は省略している。
【0052】
一次型締め工程後、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1に、固定金型12に形成された樹脂流路50aを介して射出ユニット7から一次材料である溶融樹脂を射出充填させて(一次射出充填工程)、未発泡一次成形体52aを成形する(一次成形工程)。なお、本第1成形例は、1台の射出ユニット7を使用する態様のため、一次射出充填工程における一次材料は、後述する二次射出充填工程における二次材料と同じ発泡性溶融樹脂であり、一次成形工程において一般的な射出成形方法により、未発泡一次成形体52aを成形するものとする。
【0053】
所定の冷却固化時間経過後、図7(b)に示すように、未発泡一次成形体52aを固定金型12に保持させた状態で、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって、回転金型16の回転金型部16bが回転可能な位置まで、可動金型14及び回転金型16を型開き方向に移動させる(一次型開き工程)。
【0054】
一次型開き工程後、図7(c)に示すように、回転金型16の回転金型部16bを回転機構16dにより180度回転させ、回転金型16の第2金型17cを固定金型12と対向する位置に切換える(回転工程)。
【0055】
回転工程後、図7(d)に示すように、再び、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(二次型締め工程)。これにより、未発泡一次成形体52aを保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に第3金型キャビティC3が形成され、可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間に第4金型キャビティC4が形成される。なお、第4金型キャビティC4は成形には使用されない。
【0056】
また、この二次型締め工程において、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側に所定圧1で押圧し、ラック24、26の複数の歯25、27のうち、ピニオン22の歯と可動金型14側で対向する歯25、27の面A、B(以下、それぞれ「可動金型14側の面A」及び「可動金型14側の面B」という)に、ピニオン22を押し付ける(型閉じ補正押圧工程)。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(a)に示す(図8(a)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この型閉じ補正押圧工程は、後述する本来の目的(バックラッシをゼロにする)ではなく、型締め状態における、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために行なわれるものである。その理由は、ピニオン22が型開閉方向に移動可能なので、回転金型16の両側面に取り付けられているピニオン22の、型開閉方向に直交する軸位置が一致していない場合、すなわち、ピニオン22それぞれの回転軸が、型開閉方向に直交する同軸上になく偏心している場合、その偏心の程度によっては、可動側のラック26の型開閉方向の移動により、回転金型16の両側面のピニオン22それぞれの回転軸を介して回転金型16に作用する型開閉方向の力のバランスが崩れ、ラックアンドピニオン機構20に不要な負荷がかかるおそれがあるからである。この型閉じ補正押圧工程により、ピニオン22と、ラック24、26の複数の歯25、27のうち、ピニオン22の歯と固定金型12側で対向する歯25、27の面C、D(以下、それぞれ「固定金型12側の面C」及び「固定金型12側の面D」という)との間に生じるバックラッシα、βは最大となる。この二次型締め工程において、既に行われた一次型開き工程等により、ピニオン22の、型開閉方向に直交する軸位置が略一致している場合、或いは、偏心の程度が小さい場合は、この型閉じ補正押圧工程は、必ずしも行なう必要はない。また、この型閉じ補正押圧工程におけるピニオン移動機構30の所定圧1は、ピニオン22を型開閉方向に移動可能な程度であれば良く、後述する型開き補正押圧工程における所定圧2と同一であっても良い。
【0057】
二次型締め工程後、型閉じ補正押圧工程が行なわれる場合は型閉じ補正押圧工程の継続中に、型閉じ補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、未発泡一次成形体52aを保持させた固定金型12及び第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3に、固定金型12に形成された樹脂流路50bを介して射出ユニット7から二次材料である発泡性溶融樹脂を射出充填させる(二次射出充填工程)。この二次射出充填工程における、一次射出充填工程からの樹脂流路の切替え(樹脂流路50aから樹脂流路50bへの切替え)は、例えば樹脂流路に樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等を設けることにより行うことができる。このように、二次射出充填工程において、発泡性溶融樹脂を射出充填する場合、二次射出充填工程が完了するまで、型締め状態を維持させて、第3金型キャビティC3及び第4金型キャビティC4の容積を一定に保持させて拡張させないか、二次樹脂射出充填工程が完了する前に、後述する型締め解除工程及び型開き補正押圧工程を経て発泡型開き工程を開始させて、これら金型キャビティの容積を拡張させるかは、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質等に応じて適宜選択されれば良い。
【0058】
二次射出充填工程後、型締装置6による型締め力を減少させ、型締め状態を解除する(型締め解除工程)。この型締め解除工程により、第3金型キャビティC3内の発泡性溶融樹脂の樹脂圧力を低下させ、発泡セル空隙の基点となる発泡核形成を行わせる。この発泡核形成において、型締め力を単位時間当りどの程度低下させるか(型締め力の低下速度)は、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質等に応じて適宜選択されれば良い。また、この型締め解除工程と並行して、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側から固定金型12側に切換え、ピニオン22を固定金型12側に、型締め力よりも弱い所定圧2で押圧する(型開き補正押圧工程)。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(b)に示す(図8(b)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この段階では、ピニオン22への押圧力(所定圧2)が型締め力よりも小さいため、ピニオン22は、固定金型12側に移動しない。その後、型締装置6による型締め力が徐々に減少し、この型締め力よりもピニオン移動機構30による所定圧2が大きくなった段階で、ピニオン22が固定金型12側にバックラッシα、β分だけ移動し、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dに所定圧2で押し付けられ、型閉じ補正押圧工程から型開き補正押圧工程への切換えが完了する。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(c)に示す(図8(c)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向及び下側のラック26の移動方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この型開き補正押圧工程は、本来の目的である、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにするために行なわれるものである。図8(d)に示すように、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型開き補正押圧工程)で、下側のラック26を型開き方向に移動させれば、同ラックの歯27の固定金型12側の面Dにおいて、同歯27がピニオン22の下側の歯に型開き方向の力を作用させ、ピニオン22が時計周りに回転する。このピニオン22の時計周りの回転により、ピニオン22の上側の歯が、固定され移動しない上側のラック24の歯25の固定金型12側の面Cにおいて、同ラックの歯25から型開き方向の反力を受ける。この反力によりピニオン22に型開き方向の力が作用し、その側面にピニオン移動機構30を介してピニオン22が取り付けられた回転金型16を型開き方向に移動させる。これらの動作が同時に行われるため、下側のラック26の型開き方向への移動動作に遅れることなく、回転金型16を型開き方向に移動させることができる。また、先に説明したように、この型開き補正押圧工程は、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるためのものであることも言うまでもない。なお、後述する型閉じ補正押圧工程は、ピニオン22を可動金型14側に押圧し、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態で、下側のラック26を型閉じ方向に移動させ、回転金型16を型閉じ方向に移動させるものである。この型閉じ補正押圧工程の継続中における回転金型16の型閉じ方向への移動動作については、先に説明した型開き補正押圧工程の継続中における回転金型16の型開き動作が逆になるだけなので説明は省略する。また、この型開き補正押圧工程は、型締め解除工程が完了した後に行なうとしても良く、この場合、図8(b)に示す段階が省略されることとなる。
【0059】
次に、この型開き補正押圧工程の継続中に、図7(e)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型開き方向に所定量aだけ微小型開きさせる(発泡型開き工程)。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(d)に示す(図8(d)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向、下側のラック26の移動方向及びピニオン22の回転方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この発泡型開き工程により、第3金型キャビティC3及び第4金型キャビティC4の容積が拡張されるため、先に、型締め解除工程で、第3金型キャビティC3内に射出充填されている発泡性溶融樹脂に形成させた発泡核が発泡セル空隙へと拡張(成長)され、発泡性溶融樹脂が発泡膨張し、発泡二次成形体52bが成形される。このようにして、第3金型キャビティC3を形成する固定金型12に保持させた未発泡一次成形体52aの少なくとも一部に、未発泡のスキン層で覆われた内部に発泡セルを有する発泡二次成形体52bを積層成形する(積層成形工程)。この発泡核の発泡セル空隙への拡張(成長)において、発泡型開き工程の微小型開き動作をどのように行うか(型開き速度、複数回に分割させた型開き動作等)は、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質(発泡セル空隙の分散性)等に応じて適宜選択されれば良い。また、後述する射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法のように、この発泡型開き工程後、微少型開きにより拡張させたこれら金型キャビティの容積を所定量だけ縮小させ、発泡二次成形体への意匠の最終的な転写性及び成形精度等の確保を図る場合もある。
【0060】
この発泡型開き工程の継続中及び完了後においても、型開き補正押圧工程を継続することが好ましい。型開き補正押圧工程の継続中、この発泡型開き工程時に、第3金型キャビティC3において、発泡性溶融樹脂の発泡圧力によって、回転金型16には型開き方向(可動金型14側)の力が作用する。この型開き方向の力は、継続している型開き補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を固定金型12側(型閉じ方向)に押圧する所定圧2と逆方向に作用するため、例えば、この型開き方向の力が所定圧2よりも大きい場合、ピニオン移動機構30は、回転金型16の側面に固定されているため、回転金型16は、ピニオン22とラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間のバックラッシα及びβに相当する分、型開き方向(可動金型14側)に移動してしまう(図8(c)参照)。そこで、この回転金型16に作用する型開き方向の力、すなわち、金型キャビティ内の発泡性溶融樹脂の発泡圧力に対抗して、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上(好ましくは、最大発泡圧力より大)にすれば、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に位置保持され、発泡型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型開き方向への移動量以上に、また、発泡型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。
【0061】
所定の冷却固化時間経過後、図7(f)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を製品取出し位置まで型開き方向に移動させる(二次型開き工程)。その後、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間(第3金型キャビティC3)において成形された積層成形品52が、図示しない製品取出装置により取り出される(製品取り出し工程)。このようにして、以後、図7(a)の状態から図7(f)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、未発泡一次成形体52aと発泡二次成形体52bとからなる積層成形品52が連続的に成形される。これら二次型開き工程及び製品取り出し工程においては、型開きの精度が要求されないため、ピニオン移動機構30による固定金型12側へのピニオン22の押圧(型開き補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、次サイクルのための型閉じ動作まで、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧を行なうことが好ましい。ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向は、型開き時においては、固定金型12側(型開き補正押圧工程)であることが好ましいが、型開き状態においては、可動金型14側及び固定金型12側のいずれであっても良い。
【0062】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例において、溶融樹脂が例えばエラストマー等の軟らかい樹脂である場合には、発泡型開き工程又は二次型開き工程に続いて、再型締め工程を行なうことが好ましい。この再型締め工程は、発泡層が形成された後、再度所定の型締め力を付与させて、意匠の最終的な転写性及び成形精度等を確保するためのものである。再型締め工程は、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側(型閉じ補正押圧工程)に切換えて、ピニオン22をラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けた状態で行なわれることが好ましい。このようにピニオン22をラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けた状態(型閉じ補正押圧工程)で再型締めを行なうことにより、型閉め動作におけるバックラッシの影響を完全に排除することができ、これにより、型締め動作の型締め量及び型締め速度の精度を向上させ、再型締め力を第3金型キャビティC3内の発泡成形体に素早くかつ均等に付与させることができる。また、再型締めの継続中においても、ピニオン22をラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けた状態(型閉じ補正押圧工程)を維持することが好ましい。再型締め工程後に行われる型開き工程及び製品取り出し工程においても、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧を行なうことが好ましいが、これら型開き工程及び製品取り出し工程においては、型開きの精度が要求されないため、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向は、可動金型14側及び固定金型12側のいずれであっても良い。
【0063】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未発泡一次成形体を成形し、該未発泡一次成形体を保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3において、拡張発泡成形方法により成形された発泡二次成形体を該未発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(未発泡成形−拡張発泡成形の態様)であるとしたが、これに限定されず、第1金型キャビティC1及び第3金型キャビティC3の少なくとも一方において拡張発泡成形方法により発泡成形体を成形するものであれば良い。すなわち、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例は、例えば、第1金型キャビティC1においても、拡張発泡成形方法により発泡一次成形体を成形し、第3金型キャビティC3において、拡張発泡成形方法により成形された発泡二次成形体を該発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(拡張発泡成形−拡張発泡成形の態様)であるとしても良いし、また、第1金型キャビティC1において、拡張発泡成形方法により発泡一次成形体を成形し、第3金型キャビティC3において、一般的な射出成形方法により成形された未発泡二次成形体を該発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(拡張発泡成形−未発泡成形の態様)であるとしても良い。更に、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例は、第1金型キャビティC1及び第3金型キャビティC3において、一次成形体及び二次成形体の少なくとも一方の成形体が発泡成形体からなる積層成形品を成形する態様、すなわち、固定金型12と回転金型16との間で積層成形品を成形する態様であるとしたが、別の態様として、第2金型キャビティC2及び第4金型キャビティC4において、すなわち、可動金型14と回転金型16との間で積層成形品を成形する態様であっても良い。
【0064】
また、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例は、一次射出充填工程及び二次射出充填工程のいずれも、一台の射出ユニット7から発泡性溶融樹脂を射出充填させるとしたが、これに限定されず、射出ユニット(第1射出ユニット)7の他に可動金型14や回転金型16、或いは、固定金型12に接続する射出ユニット(第2射出ユニット)をもう一台設け、一次射出充填工程と二次射出充填工程とで、異なる射出ユニットから、一般的な射出成形方法を行う射出充填工程において非発泡性溶融樹脂を、拡張発泡成形方法を行う射出充填工程において発泡性溶融樹脂をそれぞれ射出充填させるようにしても良い。この第2射出ユニットは、型開閉方向に移動する可動金型や回転金型ではなく、移動しない固定金型12に接続可能な状態で固定盤3側に設けられ、固定金型12と回転金型16の第1金型17b又は第2金型17cとが型締めされて形成される金型キャビティに溶融樹脂を射出充填するものであることが好ましい。また、第2射出ユニットは、溶融樹脂を射出するノズルが固定金型12の側面に接続するように固定盤3の正面側に脱着可能に設けられても良いし、溶融樹脂を射出するノズルが固定金型12の背面に接続するように第1射出ユニット7と横並びに設けられても良い。
【0065】
更に、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例においては、二次型締め工程において型閉じ補正押圧工程を行い、発泡型開き工程において型開き補正押圧工程を行うとしたが、これに限定されるものではない。例えば、一次型締め工程において型閉じ補正押圧工程を行い、この型閉じ補正押圧工程の継続中に、一次射出充填工程及び一次成形工程を行うとしても良い。また、一次型開き工程において型開き補正押圧工程を行い、この型開き補正押圧工程の継続中に、回転工程を行うとしても良い。更に、二次型開き工程において型開き補正押圧工程を行い、この型開き補正押圧工程の継続中に、製品取り出し工程を行うとしても良い。これら一次型締め工程及び二次型締め工程における型閉じ補正押圧工程並びに一次型開き工程及び二次型開き工程における型開き補正押圧工程は、発泡型開き工程における型開き補正押圧工程の本来の目的(型開閉動作時のバックラッシをゼロにする)のためではなく、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために行なわれるものであるため、必ずしも行なう必要がないことは先に説明したとおりである。しかしながら、ラックアンドピニオン機構20に不要な負荷がかからないように、このような型開閉動作の精度が要求されない工程であっても、適宜、型閉じ補正押圧工程、又は、型開き補正押圧工程を行なうことが好ましい。
【0066】
[拡張発泡成形の第2成形例]
次に、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第2成形例について、図9を用いて説明する。本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第2成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未発泡一次成形体を成形し、該未発泡一次成形体を保持させた回転金型16の第1金型17b及び可動金型14間に形成される第4金型キャビティC4において、拡張発泡成形方法により成形された発泡二次成形体を該未発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する方法である。すなわち、固定金型及び回転金型間で成形された一次成形体を回転金型側に保持させて、型開き時に回転金型を回転させて、その回転により該一次成形体を可動金型側に移動させ、1回目の型開閉動作を除き、2回目以降、1回の型開閉動作毎に積層成形品と一次成形体とを成形することを特徴とする。本第2成形例においては、固定金型12側に設けられた第1射出ユニット7の他に、可動盤4の背面側において脱着可能に設けられ、溶融樹脂を射出するノズルが可動盤4の貫通孔(図示せず)を介して可動金型14の背面(金型分割面の反対側の面)と接続可能な第2射出ユニット8を用いて説明するが、これに限定されるものではない。以下、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の工程及び成形条件については、その説明を省略する。
【0067】
まず、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の工程により、回転金型16の第1金型17b及び固定金型12間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未発泡一次成形体53aを成形する(型締め工程乃至一次成形工程)。これら型締め工程、一次射出充填工程及び一次成形工程において、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。なお、本第2成形例では、2つの射出ユニットを使用するため、一次射出充填工程における一次材料は、未発泡性溶融樹脂及び発泡性溶融樹脂のいずれであっても、一次成形工程において、一般的な射出成形方法により、未発一次成形体53aを成形するものであれば良い。
【0068】
所定の冷却固化時間経過後、図9(a)に示すように、未発泡一次成形体53aを回転金型16の第1金型17bに保持させた状態で、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって、回転金型16の回転金型部16bが回転可能な位置まで、可動金型14及び回転金型16を型開き方向に移動させる(型開き工程)。この型開き工程において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側から固定金型12側に切換え、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型開き補正押圧工程を行うことが好ましい。また、この所定の冷却固化時間経過後、型開き工程が行われる前に、可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第2金型キャビティC2において、後述するような二次射出充填工程乃至積層成形工程が行われるが、ここでの説明は省略する。
【0069】
型開き工程後、型開き補正押圧工程が行なわれる場合は型開き補正押圧工程の継続中に、型開き補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、図9(b)に示すように、未発泡一次成形体53aを回転金型16の第1金型17bに保持させた状態で、回転金型16の第1金型17bが可動金型14と対向し、回転金型16の第2金型17cが固定金型12と対向する位置に、回転金型16の回転金型部16bを回転機構16dにより180度回転させる(回転工程)。なお、後述するように、前の成形サイクルで可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間(第3金型キャビティC3)で成形された積層成形品は、この型開き工程後、回転工程の開始される前に、製品取り出し工程において、これら金型間から既に取り出されているため、未発泡一次成形体53aを保持させた回転金型16の第1金型17b以外、可動金型14、回転金型16の第2金型17c及び固定金型12には何も保持されていない。
【0070】
回転工程後、図9(c)に示すように、再び、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(型締め工程)。これにより、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に第3金型キャビティC3が形成され、可動金型14及び未発泡一次成形体53aを保持させた回転金型16の第1金型17b間に第4金型キャビティC4が形成される。この型締め工程において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側に切換え、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。
【0071】
型締め工程後、型閉じ補正押圧工程が行なわれる場合は型閉じ補正押圧工程の継続中に、型閉じ補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3に、固定金型12に形成された樹脂流路50cを介して第1射出ユニット7から一次材料である溶融樹脂を射出充填させて(一次射出充填工程)、新たな未発泡一次成形体53aを成形する(一次成形工程)。これら工程が行われる間、第4金型キャビティC4に射出充填等は行われない。
【0072】
所定の冷却固化時間経過後、型閉じ補正押圧工程が行なわれる場合は型閉じ補正押圧工程の継続中に、型閉じ補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、図9(d)に示すように、可動金型14及び未発泡一次成形体53aを保持させた回転金型16の第1金型17b間に形成される第4金型キャビティC4に、可動金型14に形成された樹脂流路50dを介して第2射出ユニット8から二次材料である発泡性溶融樹脂を射出充填させる(二次射出充填工程)。このように、二次射出充填工程において、発泡性溶融樹脂を射出充填する場合、二次射出充填工程が完了するまで、型締め状態を維持させて、第3金型キャビティC3及び第4金型キャビティC4の容積を一定に保持させて拡張させないか、二次樹脂射出充填工程が完了する前に、後述する型締め解除工程及び型開き補正押圧工程を経て発泡型開き工程を開始させて、これら金型キャビティの容積を拡張させるかは、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質等に応じて適宜選択されれば良い。
【0073】
二次射出充填工程後、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様に、型締装置6による型締め力を減少させ、型締め状態を解除すると共に(型締め解除工程)、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側から固定金型12側に切換え、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型開き補正押圧工程を行う。次に、型開き補正押圧工程の継続中に、図9(e)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型開き方向に所定量aだけ微小型開きさせる(発泡型開き工程)。この発泡型開き工程により、第4金型キャビティC4内に射出充填させている発泡性溶融樹脂が発泡膨張し、発泡二次成形体53bが成形される。このようにして、第4金型キャビティC4を形成する回転金型16の第1金型17bに保持させた未発泡一次成形体53aの少なくとも一部に、未発泡のスキン層で覆われた内部に発泡セルを有する発泡二次成形体53bを積層成形する(積層成形工程)。この発泡型開き工程の継続中及び完了後においても、型開き補正押圧工程を継続することが好ましい。型開き補正押圧工程の継続中、この発泡型開き工程時に、第4金型キャビティC4において、発泡性溶融樹脂の発泡圧力によって、回転金型16には型閉じ方向(固定金型12側)の力が作用する。この型閉じ方向の力は、継続している型開き補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を固定金型12側(型閉じ方向)に押圧する所定圧2と同じ方向に作用するため、例えば、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも大きい場合、ピニオン22はこの型閉じ方向の力で固定金型12側に押圧され、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧2で固定金型12側に押圧され、いずれの場合においても型開き補正押圧工程は維持される。拡張発泡成形方法の第1成形例のように、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上にする必要はないが、発泡膨張中の発泡性溶融樹脂の発泡圧力は一定ではなく変動することから、型開き補正押圧工程を装置制御の下に確実に継続するために、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上にすることが好ましい。このように、この型開き補正押圧工程により、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に位置保持され、発泡型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型開き方向への移動量以上に、発泡型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に、型開き方向に移動することはない。
【0074】
所定の冷却固化時間経過後、型開き補正押圧工程が行なわれる場合は型開き補正押圧工程の継続中に、型開き補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、図9(f)に示すように、新たな未発泡一次成形体53aを回転金型16の第2金型17cに保持させた状態で、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を製品取出し位置まで型開き方向に移動させる(型開き工程)。その後、可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間(第4金型キャビティC4)において成形された積層成形品53が、図示しない製品取出装置により取り出される(製品取り出し工程)。また、回転金型16の第2金型17cには、先の一次成形工程で成形された、新たな未発泡一次成形体53aを保持させている。このようにして、以後、図9(a)の状態から図9(f)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、未発泡一次成形体53aと発泡二次成形体53bとから成る積層成形品53が連続的に成形される。
【0075】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第2成形例において、溶融樹脂が例えばエラストマー等の軟らかい樹脂である場合には、第1成形例と同様に、再型締め工程を行なうことが好ましい。
【0076】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第2成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1(或いは第3金型キャビティC3)において、一般的な射出成形方法により未発泡一次成形体を成形し、可動金型14及び該未発泡一次成形体を保持させた回転金型16の第1金型17b間に形成される第4金型キャビティC4(或いは第2金型キャビティC2)において、拡張発泡成形方法により成形された発泡二次成形体を該未発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(未発泡成形−拡張発泡成形の態様)であるとしたが、これに限定されず、第1金型キャビティC1及び第4金型キャビティC4(或いは第3金型キャビティC3及び第2金型キャビティC2)の少なくとも一方において拡張発泡成形方法により発泡成形体を成形するものであれば良い。すなわち、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第2成形例は、例えば、第1金型キャビティC1においても、拡張発泡成形方法により発泡一次成形体を成形し、第4金型キャビティC4において、拡張発泡成形方法により成形された発泡二次成形体を該発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(拡張発泡成形−拡張発泡成形の態様)であるとしても良いし、また、第1金型キャビティC1において、拡張発泡成形方法により発泡一次成形体を成形し、第4金型キャビティC4において、一般的な射出成形方法により成形された未発泡二次成形体を該発泡一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(拡張発泡成形−未発泡成形の態様)であるとしても良い。更に、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第2成形例は、第1金型キャビティにおいて一次成形体を、第4金型キャビティにおいて2次成形体を含む積層成形品を成形する態様としたが、別の態様として、第4金型キャビティにおいて一次成形体を、第1金型キャビティにおいて2次成形体を含む積層成形品を成形する態様であっても良い。
【0077】
[拡張発泡成形の第3成形例]
次に、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例について、図10を用いて説明する。本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1並びに可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第2金型キャビティC2において、同時に、拡張発泡成形方法により単層の発泡成形品を成形する方法である。すなわち、拡張発泡成形方法の第1成形例及び第2成形例と異なり、回転金型を回転させず、1回の型開閉動作毎に、積層成形品ではなく単層成形品を成形することを特徴とする。本第3成形例においては、射出ユニット7から射出された発泡性溶融樹脂を回転金型16まで流動させ、回転金型16側から第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ発泡性溶融樹脂を流入させる樹脂流路の態様について説明するが、これに限定されるものではない。以下、拡張発泡成形方法の第1成形例及び第2成形例と同様の工程及び成形条件については、その説明を省略する。
【0078】
まず、図10(a)に示すように、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の工程により、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(型締め工程)。これにより、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に第1金型キャビティC1が形成され、可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に第2金型キャビティC2が形成される。この型締め工程において、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。
【0079】
型締め工程後、型閉じ補正押圧工程が行なわれる場合は型閉じ補正押圧工程の継続中に、型閉じ補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、図10(b)に示すように、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に、固定金型12及び回転金型16に形成された樹脂流路50eを介して射出ユニット7から発泡性溶融樹脂を射出充填させる(発泡性樹脂射出充填工程)。この発泡性樹脂射出充填工程において、発泡性樹脂射出充填工程が完了するまで、型締め状態を維持させて、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の容積を一定に保持させて拡張させないか、発泡性樹脂射出充填工程が完了する前に、後述する型締め解除工程及び型開き補正押圧工程を経て発泡型開き工程を開始させて、これら金型キャビティの容積を拡張させるかは、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質等に応じて適宜選択されれば良い。
【0080】
発泡性樹脂射出充填工程後、拡張発泡成形方法の第1成形例及び第2成形例と同様に、型締装置6による型締め力を減少させ、型締め状態を解除すると共に(型締め解除工程)、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側から固定金型12側に切換え、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型開き補正押圧工程を行う。次に、型開き補正押圧工程の継続中に、図10(c)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型開き方向に所定量aだけ微小型開きさせる(発泡型開き工程)。この発泡型開き工程により、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填されている発泡性溶融樹脂が発泡膨張し、単層の発泡成形品54が成形される。この発泡型開き工程の継続中及び完了後においても、型開き補正押圧工程を継続することが好ましい。例えば、型開き補正押圧工程の継続中、この発泡型開き工程時に、第1金型キャビティC1或いは第2金型キャビティC2において、不適切な樹脂流路の配置や、不適切な成形条件の設定等に起因する発泡性溶融樹脂の発泡圧力の突発的な上昇や低下により、両金型キャビティの発泡圧力に差異が生じる可能性がある。そのため、第2金型キャビティC2の発泡圧力よりも第1金型キャビティC1の発泡圧力の方が高い場合、その差異分だけ回転金型16には型開き方向の力(可動金型14側)が作用する。これは、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の状態なので、発泡型開き工程の継続中及び完了後において、型開き補正押圧工程(図8(c)参照)を継続し、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上(好ましくは最大発泡圧力よりも大)にすれば良い。逆に、第1金型キャビティC1の発泡圧力よりも第2金型キャビティC2の発泡圧力の方が高い場合、その差異分だけ回転金型16には型閉じ方向の力(固定金型12側)が作用する。これは、拡張発泡成形方法の第2成形例と同様の状態なので、発泡型開き工程の継続中及び完了後において、型開き補正押圧工程を継続しさえすれば良く、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上にする必要はない。すなわち、両金型キャビティの発泡圧力に差異が生じた場合でも、所定圧2を、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様に、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上(好ましくは最大発泡圧力より大)にすることにより、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に位置保持され、発泡型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型開き方向への移動量以上に、また、発泡型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。
【0081】
所定の冷却固化時間経過後、型開き補正押圧工程が行なわれる場合は型開き補正押圧工程の継続中に、型開き補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、図10(d)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を製品取出し位置まで型開き方向に移動させる(型開き工程)。その後、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間並びに可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間においてそれぞれ成形された発泡成形品54、54が、図示しない製品取出装置により取り出される(製品取り出し工程)。本第3成形例においては、回転金型16を回転させず、積層成形品ではなく単層成形品を成形するため、この型開き工程時に、発泡成形品54を固定金型12、回転金型16及び可動金型14のいずれの金型に保持させても良い。このようにして、以後、図10(a)の状態から図10(d)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、単層の発泡成形品54、54が同時に、連続的に成形される。
【0082】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例において、溶融樹脂が例えばエラストマー等の軟らかい樹脂である場合には、第1成形例及び第2成形例と同様に、再型締め工程を行なうことが好ましい。
【0083】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例においては、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の双方において、同一の成形条件で、同時に、拡張発泡成形方法により同一種類の単層の発泡成形品54、54を成形するとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例は、例えば、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のそれぞれにおいて、異なる溶融樹脂から異なる種類の発泡成形品を成形するとしても良い。具体的には、第1金型キャビティC1と第2金型キャビティC2とでキャビティ形状が異なる三枚構造の射出成形金型10を用いると共に、第1射出ユニット7の他に可動金型14側の第2金型キャビティC2に射出充填可能な第2射出ユニットを設け、2つの射出ユニットから第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ発泡性溶融樹脂を射出充填させるようにすることができる。このように第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2において異なる発泡成形品を成形する場合には、両成形品の投影面積が異なり、発泡圧力及び発泡状態の差異が顕著となるが、本第3成形例によれば、回転金型16の両側の金型キャビティの発泡圧力に差異が生じた場合でも、微小型開き時における回転金型16が、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に確実に位置保持されるため、問題なく高品質な発泡成形品を成形することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例は、第1及び第2金型キャビティC1、C2の双方において同時に、拡張発泡成形方法により単層の発泡成形品を成形する態様(拡張発泡成形−拡張発泡成形の態様)としたが、これに限定されず、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の少なくとも一方において拡張発泡成形方法により単層の発泡成形品を成形するものであれば良い。すなわち、例えば、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側のみにおいて拡張発泡成形方法により発泡成形品を成形し、他方側の金型キャビティにおいては一般的な射出成形方法により未発泡成形品を成形する態様(拡張発泡成形−未発泡成形の態様)や、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側のみにおいて拡張発泡成形方法により発泡成形品を成形し、他方側の金型キャビティにおいては何も成形しない態様(拡張発泡成形−成形無しの態様)であっても良い。前者の拡張発泡−未発泡の態様においては、具体的には、まず、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側、例えば第1金型キャビティC1のみに発泡性溶融樹脂を射出充填させ、冷却固化させる。後述するように、固定金型12に接続する第2射出ユニットを設ける場合は、第1金型キャビティC1のみに非発泡性溶融樹脂を射出充填させても良い。その後、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の他方側、すなわち第2金型キャビティC2に発泡性溶融樹脂を射出充填させ、冷却固化させる前に第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2を拡張させ、第2金型キャビティC2の発泡性溶融樹脂のみを拡張発泡成形させる。このように、最初に第1金型キャビティC1内に射出充填させた発泡性溶融樹脂或いは非発泡性溶融樹脂を冷却固化させた後に、両方の金型キャビティの容積を拡張させるため、第1金型キャビティC1においては、非発泡性溶融樹脂はもちろん、発泡性溶融樹脂も発泡膨張せず、未発泡成形品を成形することができる。第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に対してそれぞれ別々に溶融樹脂を射出充填させるためには、第1射出ユニット7の他に可動金型14や回転金型16、或いは、固定金型12に接続する第2射出ユニットを設けるか、若しくは樹脂流路に、樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等を設けることが好ましいが、これらに限定されるものではない。なお、後者の拡張発泡成形−成形無しの態様については、これまでの拡張発泡成形方法の第1成形例乃至第3成形例から容易に理解できるため、説明を省略する。
【0085】
このように、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例、第2成形例及び第3成形例によれば、ピニオン22をラック24、26の歯25、27に押し付けた状態、すなわち、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型開き補正押圧工程)において、発泡型開き工程(型締め状態からの微小型開き動作)を行なうため、バックラッシの影響を完全に排除し、発泡型開き工程の継続中及び完了後において、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の微小型開き量並びに第3金型キャビティC3及び第4金型キャビティC4の微小型開き量を均一にすることができると共に、発泡圧力等の外乱要因があっても、バックラッシをゼロにした状態を維持させることができるため、微少型開き位置の位置保持や発泡型開き工程における微少型開き速度を安定させ、高品質な単層及び積層の発泡成形品を得ることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例及び第2成形例によれば、一次成形体を未発泡性溶融樹脂で成形することにより、積層成形品の剛性を確保することができ、発泡性溶融樹脂で成形することにより、積層成形品の軽量化が期待できる。また、二次成形体を発泡性溶融樹脂により成形することにより、製品の意匠面にソフト感を与えると共に、積層成形品の軽量化及び断熱性・遮音性の向上を図ることができる。また、第1成形例及び第2成形例によれば、例えば、インパネ、ドアトリム、グローブボックスカバーなどの自動車内装部品や、床材などの住宅設備や、雑貨及び玩具類など、クッション性及び高級感の演出を必要とする積層成形品を成形することができる。一方、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第3成形例は、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2における成形条件が同一である必要がある発泡成形品、例えば左右対称のドアトリム等の成形に特に適している。すなわち、ドアトリム等は、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2において同一の成形条件で成形する必要があり、また、製品の投影面積が大きいため、成形サイクルを短縮するためには、左右ドアトリム両方を成形できる大きな金型を使用して、大きな成形装置で拡張発泡成形する必要がある。しかしながら、第3成形例によれば、三枚構造の射出成形金型10を用いているため、大きな成形装置や大きな型締め力が必要なく、また、ラックアンドピニオン機構20にバックラッシを排除可能なピニオン移動機構30が設けられているため、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の微少型開き量及び微少型開き速度を含めた成形条件を全く同じにすることができる。
【0087】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法の第1成形例、第2成形例及び第3成形例は、シェアエッジ構造ではない、型開閉方向に直交する平面のみで構成される金型分割面を有する一般的な構造の金型であっても実施することができる。具体的には、金型内部に配置された可動中子等の可動部分を可動させて金型キャビティの容積を拡張させたり、発泡型開き工程における微小型開き量を溶融樹脂が漏れ出さない程度の微小量としたり、金型キャビティ内に射出充填された溶融樹脂と金型キャビティ内面との接触部において、溶融樹脂が冷却固化されて形成されるスキン層を、金型の温度調節等により金型を微小型開きさせても溶融樹脂が漏れ出さない程度に厚く形成させたりする等の公知の方法で発泡成形体を成形するとしても良い。
【0088】
[射出プレス成形の第1成形例]
次に、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第1成形例について、図11を用いて説明する。本実施形態に係る射出プレス成形方法の第1成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未プレス一次成形体を成形し、該未プレス一次成形体を保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3において、射出プレス成形方法により成形されたプレス二次成形体を該未プレス一次成形体の少なくとも一部に積層成形する方法である。すなわち、固定金型及び回転金型間で成形された一次成形体を固定金型側から移動させず、型開き時に回転金型を回転させて、2回の型開閉動作毎に積層成形品を成形することを特徴とする。ここで、射出プレス成形方法とは、簡単には、予め、金型キャビティに射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き力よりも強い型締め力で可動金型14を微小型開き状態で位置保持させ、その微少型開きにより、型締め時よりその容積を拡張させた金型キャビティに溶融樹脂を射出充填させ、射出充填途中或いは射出充填完了後に可動金型14を所定の型締めプレス力で型締めさせ、金型キャビティ容積を型締め時まで縮小させる(射出プレス工程)ことにより、金型キャビティ内の溶融樹脂に所定の型締めプレス力を作用させた状態で冷却固化させる方法である。この射出プレス成形方法は、歪みや変形を特に抑える必要がある成形品、例えばCD、DVD等の光学ディスクや、ガラス代替品としての自動車等の樹脂ガラス製品等の成形に特に適している。なお、本実施形態に係る射出プレス成形方法において、ラック24、26及びピニオン22の動作は、上記拡張発泡成形方法におけるラック24、26及びピニオン22の動作を示す図8から容易に理解できるため、その説明図面を省略する。
【0089】
まず、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の工程により、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未プレス一次成形体55aを成形する(一次型締め工程乃至一次成形工程)。なお、第2金型キャビティC2は成形には使用されない。次に、未プレス一次成形体55aを固定金型12に保持させた状態で、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって、回転金型16の回転金型部16bが回転可能な位置まで可動金型14及び回転金型16を型開き方向に移動させると共に(一次型開き工程)、回転金型16の回転金型部16bを180度回転させて、回転金型16の第2金型17cを固定金型12と対向する位置に切換える(回転工程)。この回転工程が完了した状態を図11(a)に示す。これら一次型締め工程乃至回転工程においても、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様に、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型開き補正押圧工程及び型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。
【0090】
回転工程後、固定金型12、可動金型14及び回転金型16の型開き状態において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を固定金型12側から可動金型14側に切換え、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型閉じ補正押圧工程を行う。この型閉じ補正押圧工程において、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側に押圧する所定圧1は、ピニオン22を型開閉方向に移動可能な程度であれば良い。
【0091】
次に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図11(b)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間並びに可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間がそれぞれ所定量bだけ微小型開きされる位置まで(すなわち、完全に型合わせされない位置まで)、可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、可動金型14及び回転金型16を微少型開き状態で位置保持させる(二次型締め工程)。これにより、未プレス一次成形体55aを保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第3金型キャビティC3が形成され、可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第4金型キャビティC4が形成される。なお、第4金型キャビティC4は成形には使用されない。
【0092】
二次型締め工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図11(c)に示すように、未プレス一次成形体55aを保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成され、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第3金型キャビティC3に、固定金型12に形成された樹脂流路50fを介して射出ユニット7から溶融樹脂を射出充填させる(二次射出充填工程)。この二次射出充填工程の継続中及び完了後においても、型閉じ補正押圧工程を継続することが好ましい。例えば、型閉じ補正押圧工程の継続中、この二次射出充填工程時に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第3金型キャビティC3に射出充填させた溶融樹脂圧力により、回転金型16には型開き方向(可動金型14側)の力が作用する。この型開き方向の力は、継続している型閉じ補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側(型開き方向)に押圧する所定圧1と同じ方向に作用するため、この型開き方向の力が所定圧1よりも大きい場合、ピニオン22はこの型開き方向の力で可動金型14側に押圧され、この型開き方向の力が所定圧1よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧1で可動金型14側に押圧され、いずれの場合においても型閉じ補正押圧工程は維持される。後述する、射出プレス成形方法の第2成形例のように、所定圧1を、第3金型キャビティC3に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にする必要はないが、射出充填中の溶融樹脂圧力は一定ではなく変動することから、型閉じ補正押圧工程を装置制御の下に確実に継続するために、所定圧1を、第3金型キャビティC3に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にすることが好ましい。このように、この型閉じ補正押圧工程により、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、B側に位置保持され、微少型開き状態の型締め工程の完了後においては、設定された微少型開き量以下に、また、後述する射出プレス工程(型閉じ方向への移動動作)の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型閉じ方向への移動量以上に型閉じ方向に移動することはない。
【0093】
また、この二次射出充填工程と連動させて、又は二次射出充填工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図11(d)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を所定の型締めプレス力で型締めさせる(射出プレス工程)。この射出プレス工程により、第3金型キャビティC3内の溶融樹脂に型締めプレス力を作用させ、プレス二次成形体55bが成形される。このようにして、第3金型キャビティC3を形成する固定金型12に保持させた未プレス一次成形体55aの少なくとも一部に、所定の型締めプレス力を作用させて成形されたプレス二次成形体55bを積層成形する(積層成形工程)。なお、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第4金型キャビティC4も、この射出プレス工程により金型キャビティ容積を型締め時まで縮小されるが、先に説明したように成形には使用されない。また、型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、押圧を継続することが好ましい。
【0094】
所定の冷却固化時間経過後、図11(e)に示すように、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様に、二次型開き工程及び製品取り出し工程により、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間(第3金型キャビティC3)において成形された積層成形品55が、図示しない製品取出装置により取り出される。このようにして、以後、図11(a)の状態から図11(e)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、未プレス一次成形体55aとプレス二次成形体55bとからなる積層成形品55が連続的に成形される。
【0095】
本実施形態に係る射出プレス成形方法の第1成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において一般的な射出成形方法により未プレス一次成形体を成形し、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3において射出プレス成形方法により成形されたプレス二次成形体を該未プレス一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(未射出プレス成形−射出プレス成形の態様)であるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第1実施例と同様に、射出プレス成形−射出プレス成形の態様や、射出プレス成形−未射出プレス成形の態様であるとしても良い。
【0096】
また、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第1成形例は、一次射出充填工程及び二次射出充填工程のいずれも、一台の射出ユニット7から溶融樹脂を射出充填させるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第2成形例と同様に、第2射出ユニットを設け、一次射出充填工程と二次射出充填工程とで、異なる射出ユニットから溶融樹脂を射出充填させるようにしても良い。
【0097】
[射出プレス成形の第2成形例]
次に、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第2成形例について、図12を用いて説明する。本実施形態に係る射出プレス成形方法の第2成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未プレス一次成形体を成形し、該未プレス一次成形体保持させた回転金型16の第1金型17b及び可動金型14間に形成される第4金型キャビティC4において、射出プレス成形方法により成形されたプレス二次成形体を該未プレス一次成形体の少なくとも一部に積層成形する方法である。すなわち、固定金型及び回転金型間で成形された一次成形体を回転金型側に保持させて、型開き時に回転金型を回転させて、その回転により該一次成形体を可動金型側に移動させ、1回目の型開閉動作を除き、2回目以降、1回の型開閉動作毎に積層成形品と一次成形体とを成形することを特徴とする。本実施形態に係る射出プレス成形方法の第2成形例においては、固定金型12側に設けられた第1射出ユニット7の他に、可動金型14側において型開閉方向と平行に設けられた第2射出ユニット8を用いて説明するが、これに限定されるものではない。以下、射出プレス成形方法の第1成形例と同様の工程及び成形条件については、その説明を省略する。
【0098】
まず、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の工程により、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未プレス一次成形体56aを成形する(一次型締め工程乃至一次成形工程)。所定の冷却固化時間経過後、図12(a)に示すように、未プレス一次成形体56aを回転金型16の第1金型17bに保持させた状態で、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって、回転金型16の回転金型部16bが回転可能な位置まで、可動金型14及び回転金型16を型開き方向に移動させる(型開き工程)。この所定の冷却固化時間経過後、型開き工程が行われる前に、可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第2金型キャビティC2において、後述するような二次射出充填工程乃至積層成形工程が行われるが、ここでの説明は省略する。
【0099】
型開き工程後、図12(b)に示すように、未プレス一次成形体56aを回転金型16の第1金型17bに保持させた状態で、回転金型16の第1金型17bが可動金型14と対向し、回転金型16の第2金型17cが固定金型12と対向する位置に、回転金型16の回転金型部16bを回転機構16dにより180度回転させる(回転工程)。これら型締め工程乃至回転工程においても、射出プレス成形方法の第1成形例と同様に、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型開き補正押圧工程及び型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。なお、後述するように、前の成形サイクルで可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間(第3金型キャビティC3)で成形された積層成形品は、この型開き工程後、回転工程が開始される前に、製品取り出し工程において、これら金型間から既に取り出されているため、未プレス一次成形体56aを保持させた回転金型16の第1金型17b以外、可動金型14、回転金型16の第2金型17c及び固定金型12には何も保持されていない。
【0100】
回転工程後、固定金型12、可動金型14及び回転金型16の型開き状態において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を固定金型12側から可動金型14側に切換え、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型閉じ補正押圧工程を行う。次に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図12(c)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間並びに可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間がそれぞれ所定量bだけ微少型開きされる位置まで(すなわち、完全に型合わせされない位置まで)、可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、可動金型14及び回転金型16を微少型開き位置で位置保持させる(型締め工程)。これにより、可動金型14及び未プレス一次成形体56aを保持させた回転金型16の第1金型17b間に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第4金型キャビティC4が形成される。
【0101】
型締め工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図12(d)に示すように、未プレス一次成形体56aを保持させた回転金型16の第1金型17b及び可動金型14間に形成される、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第4金型キャビティC4に、可動金型14に形成された樹脂流路50gを介して第2射出ユニット8から溶融樹脂を射出充填させる(二次射出充填工程)。この二次射出充填工程の継続中及び完了後においても、型閉じ補正押圧補正工程を継続することが好ましい。例えば、型閉じ補正押圧補正工程の継続中、この二次射出充填工程時に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第4金型キャビティC4に射出充填させた溶融樹脂圧力により、回転金型16には型閉じ方向(固定金型12側)の力が作用する。この型閉じ方向の力は、継続している型閉じ補正工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側(型開き方向)に押圧する所定圧1と逆方向に作用するため、この型閉じ方向の力が所定圧1よりも大きい場合、ピニオン移動機構30は、回転金型16の側面に固定されているため、回転金型16はピニオン22とラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間のバックラッシα及びβに相当する分、型閉じ方向(固定金型12側)に移動してしまう(図8(a)参照)。そこで、この回転金型16に作用する型閉じ方向の力、すなわち、第4金型キャビティC4に射出充填させる溶融樹脂圧力に対抗して、所定圧1を、この型閉じ補正押圧工程の最初から、或いは、二次射出充填工程の前に、この溶融樹脂圧力以上(好ましくは、溶融樹脂圧力より大)とすれば、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、B側に位置保持され、微少型開き状態の型締め工程の完了後においては、設定された微少型開き量以下に、また、後述する射出プレス工程(型閉じ方向への移動動作)の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型閉じ方向への移動量以上に型閉じ方向に移動することはない。
【0102】
また、この二次射出充填工程と連動させて、又は二次射出充填工程後、射出プレス成形方法の第1成形例と同様に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図12(e)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を所定の型締めプレス力で型締めさせる(射出プレス工程)。この射出プレス工程により、第4金型キャビティC4内の溶融樹脂に型締めプレス力を作用させ、プレス二次成形体56bが成形される。このようにして、第4金型キャビティC4を形成する回転金型16の第1金型17bに保持させた未プレス一次成形体56aの少なくとも一部に、所定の型締めプレス力を作用させて成形されたプレス二次成形体56bを積層成形する(積層成形工程)。なお、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第3金型キャビティC3も、この射出プレス工程により金型キャビティ容積を型締め時まで縮小されるが、これら工程が行われる間、第3金型キャビティC3に射出充填等は行われない。また、型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、押圧を継続することが好ましい。
【0103】
また、射出プレス工程と連動させて、又は射出プレス工程後、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3に、樹脂流路50hを介して第1射出ユニット7から溶融樹脂を射出充填させて(一次射出充填工程)、一般的な射出成形方法により新たな未プレス一次成形体56aを成形する(一次成形工程)。
【0104】
所定の冷却固化時間経過後、図12(f)に示すように、拡張発泡成形方法の第2成形例と同様に、型開き工程及び製品取り出し工程により、可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間(第4金型キャビティC4)において成形された積層成形品56が、図示しない製品取出装置により取り出される。また、回転金型16の第2金型17cには、先の一次成形工程で成形された、新たな未プレス一次成形体56aを保持させている。このようにして、以後、図12(a)の状態から図12(f)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、未プレス一次成形体56aとプレス二次成形体56bとからなる積層成形品56及び新たな未プレス一次成形体56aが連続的に成形される。
【0105】
本実施形態に係る射出プレス成形方法の第2成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1(或いは第3金型キャビティC3)において一般的な射出成形方法により未プレス一次成形体を成形し、可動金型14及び該未プレス一次成形体を保持させた回転金型16の第1金型17b間に形成される第4金型キャビティC4(或いは第2金型キャビティC2)において、射出プレス成形方法により成形されたプレス二次成形体を該未プレス一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(未射出プレス成形−射出プレス成形の態様)であるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第2成形例と同様に、射出プレス成形−射出プレス成形の態様や、射出プレス成形−未射出プレス成形の態様であるとしても良い。
【0106】
[射出プレス成形の第3成形例]
次に、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第3成形例について、図13を用いて説明する。本実施形態に係る射出プレス成形方法の第3成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1並びに可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第2金型キャビティC2において、同時に、射出プレス成形方法により単層の射出プレス成形品を成形する方法である。すなわち、射出プレス成形方法の第1成形例及び第2成形例と異なり、回転金型を回転させず、1回の型開閉動作毎に、積層成形品ではなく単層成形品を成形することを特徴とする。本第3成形例においては、固定金型12側に設けられた第1射出ユニット7の他に、可動金型14側に設けられた第2射出ユニット8を用いて説明するが、これに限定されるものではない。以下、射出プレス成形方法の第1成形例及び第2成形例と同様の工程及び成形条件については、その説明を省略する。
【0107】
まず、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けられている状態(型閉じ補正押圧工程)において、図13(a)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を完全に型合わせされない位置まで型閉じ方向に移動させ、可動金型14及び回転金型16を微少型開き状態で位置保持させる(型締め工程)。これにより、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第1金型キャビティC1が形成され、可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第2金型キャビティC2が形成される。
【0108】
型閉じ工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図13(b)に示すように、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に、固定金型12及び可動金型14に形成された樹脂流路50i、50jを介して第1射出ユニット7及び第2射出ユニット8からそれぞれ溶融樹脂を射出充填させる(射出充填工程)。この射出充填工程の継続中及び完了後においても、型閉じ補正押圧工程を継続することが好ましい。例えば、型閉じ補正押圧工程の継続中、この射出充填工程時に、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2において、不適切な樹脂流路の配置や、不適切な射出条件等により、両金型キャビティの溶融樹脂圧力に差異が生じる可能性がある。そのため、第2金型キャビティC2の溶融樹脂圧力よりも第1金型キャビティC1の溶融樹脂圧力の方が高い場合、その差異分だけ回転金型16には型開き方向(可動金型14側)の力が作用する。これは、射出プレス成形方法の第1実施例と同様の状態なので、射出充填工程の継続中及び完了後において、型閉じ補正押圧工程(図8(a)参照)を継続しさえすれば良く、所定圧1を、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にする必要はない。逆に、第1金型キャビティC1の溶融樹脂圧力よりも第2金型キャビティC2の溶融樹脂圧力の方が高い場合、その差異分だけ回転金型16には型閉じ方向(固定金型12側)の力が作用する。これは、射出プレス成形方法の第2実施例と同様の状態なので、射出充填工程の継続中及び完了後において、型閉じ補正押圧工程を継続し、所定圧1を、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填させる溶融樹脂圧力以上(好ましくは、溶融樹脂圧力より大)にすれば良い。すなわち、両金型キャビティの溶融樹脂圧力に差異が生じた場合でも、所定圧1を、射出プレス成形方法の第1実施例と同様に、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填させる溶融樹脂圧力以上(好ましくは、溶融樹脂圧力より大)にすることにより、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、B側に位置保持され、微少型開き状態の型締め工程の完了後においては、設定された微少型開き量以下に、また、射出プレス工程(型閉じ方向への移動動作)の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型閉じ方向への移動量以上に型閉じ方向に移動することはない。
【0109】
また、この射出充填工程と連動させて、又は射出充填工程後、射出プレス成形方法の第1成形例及び第2成形例と同様に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図13(c)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させて、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を所定の型締めプレス力で型締めさせる(射出プレス工程)。この射出プレス工程により、第1金型キャビティC1内及び第2金型キャビティC2内の溶融樹脂に所定の型締めプレス力を作用させ、単層の射出プレス成形品57が成形される。型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、押圧を継続することが好ましい。
【0110】
所定の冷却固化時間経過後、図13(d)に示すように、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、型開き工程及び製品取り出し工程を行うことにより、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間並びに可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間においてそれぞれ成形された射出プレス成形品57、57が、図示しない製品取出装置により取り出される。本第3成形例においては、回転金型16を回転させず、積層成形品ではなく単層成形品を成形するため、この型開き工程時に、射出プレス成形品57を固定金型12、回転金型16及び可動金型14のいずれの金型に保持させても良い。このようにして、以後、図13(a)の状態から図13(d)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、単層の射出プレス成形品57、57が同時に、連続的に成形される。
【0111】
本実施形態に係る射出プレス成形方法の第3成形例においては、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の双方において、同一の成形条件で、同時に、射出プレス成形方法により同一種類の単層の射出プレス成形品57、57を成形するとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第3成形例は、例えば、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のそれぞれにおいて、異なる溶融樹脂から異なる種類の射出プレス成形品を成形するとしても良い。
【0112】
また、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第3成形例は、第1及び第2金型キャビティC1、C2の双方において同時に射出プレス成形方法により単層の射出プレス成形品を成形を成形する態様(射出プレス成形−射出プレス成形の態様)としたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、射出プレス成形−未射出プレス成形の態様や、射出プレス成形−成形無しの態様であっても良い。前者の射出プレス成形−未射出プレス成形の態様においては、具体的には、まず、微小型開き状態の第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側のみに溶融樹脂を射出充填させ、その後、上述した方法で射出プレス工程を行う。その後、型締め状態の第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の他方側に溶融樹脂を射出充填させ、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の双方の溶融樹脂を冷却固化させる。これにより、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側においては、射出プレス成形品を、他方側においては、未射出プレス成形品を成形することができる。なお、後者の射出プレス成形−成形無しの態様については、これまでの射出プレス成形方法の第1成形例乃至第3成形例から容易に理解できるため、説明を省略する。
【0113】
更に、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第3成形例においては、固定金型12の背面側に設けられた第1射出ユニット7により第1金型キャビティC1に溶融樹脂を射出充填させ、可動金型14側に設けられた第2射出ユニット8により第2金型キャビティC2に溶融樹脂を射出充填させるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、本第3成形例は、例えば、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、可動金型14側の第2射出ユニット8を設けず、第1射出ユニット7のみから射出させた溶融樹脂を回転金型16まで流動させ、回転金型16側から第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ溶融樹脂を流入させる構成としても良い。また、この場合、樹脂流路には、樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等を設けるとしても良い。
【0114】
このように、本実施形態に係る射出プレス成形方法の第1成形例、第2成形例及び第3成形例によれば、ピニオン22をラック24、26の歯に押し付けた状態、すなわち、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型閉じ補正押圧工程)において、二次射出充填工程或いは射出充填工程、及び、射出プレス工程(微少型開き状態からの型閉じ・型締め動作)を行なうため、バックラッシの影響を完全に排除し、二次射出充填工程或いは射出充填工程の継続中及び完了後において、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の微小型開き量並びに第3金型キャビティC3及び第4金型キャビティC4の微小型開き量を均一にすることができると共に、溶融樹脂圧力等の外乱要因があっても、バックラッシをゼロにした状態を維持させることができるため、微少型開き位置の位置保持や射出プレス工程における型締め速度を安定させ、高品質な単層及び積層の射出プレス成形品を得ることができる。
【0115】
[射出圧縮成形の第1成形例]
次に、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例について、図14を用いて説明する。本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未圧縮一次成形体を成形し、該未圧縮一次成形体を保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3において、射出圧縮成形方法により成形された圧縮二次成形体を該未圧縮一次成形体の少なくとも一部に積層成形する方法である。すなわち、固定金型及び回転金型間で成形された一次性形態を固定金型側から移動させず、型開き時に回転金型を回転させて、2回の型開閉動作毎に積層成形品を成形することを特徴とする。ここで、射出圧縮成形方法とは、簡単には、予め、金型キャビティに射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き力よりも弱い型締め力で可動金型14を型締めさせ、次に、金型キャビティに射出充填させた溶融樹脂圧力により可動金型14を微小型開きさせ、その微少型開きにより、型締め時よりその容積を拡張させた金型キャビティに溶融樹脂を射出充填させ、射出充填途中或いは射出充填完了後に可動金型14を所定の型締め圧縮力で型締めさせ、金型キャビティ容積を型締め時まで縮小させる(射出圧縮工程)ことにより、金型キャビティ内の溶融樹脂に所定の型締め圧縮力を作用させた状態で冷却固化させる方法である。この射出圧縮成形方法は、射出プレス成形方法と同様に、歪みや変形を特に抑える必要がある成形品、例えばCD、DVD等の光学ディスクや、ガラス代替品としての自動車等の樹脂ガラス製品等の成形に特に適している。なお、本実施形態に係る射出圧縮成形方法において、ラック24、26及びピニオン22の動作は、上記拡張発泡成形方法におけるラック24、26及びピニオン22の動作を示す図8から容易に理解できるため、その説明図面を省略する。
【0116】
まず、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の工程により、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未圧縮一次成形体58aを成形する(一次型締め工程乃至一次成形工程)。なお、第2金型キャビティC2は成形には使用されない。次に、未圧縮一次成形体58aを固定金型12に保持させた状態で、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって、回転金型16の回転金型部16bが回転可能な位置まで可動金型14及び回転金型16を型開き方向に移動させると共に(一次型開き工程)、回転金型16の回転金型部16bを180度回転させて、回転金型16の第2金型17cを固定金型12と対向する位置に切換える(回転工程)。この回転工程が完了した状態を図14(a)に示す。これら一次型締め工程乃至回転工程においても、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様に、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型開き補正押圧工程及び型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。
【0117】
回転工程後、固定金型12、可動金型14及び回転金型16の型開き状態において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を固定金型12側から可動金型14側に切換え、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型閉じ補正押圧工程を行う。なお、この型閉じ補正押圧工程は、必ずしもこの段階で行なう必要はなく、後述する二次型締め工程から二次射出充填工程の開始前までに行えば良い。次に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図14(b)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(二次型締め工程)。これにより、未圧縮一次成形体58aを保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に第3金型キャビティC3が形成され、可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間に第4金型キャビティC4が形成される。ここで、二次型締め工程における型締装置6の型締め力は、第3金型キャビティC3に射出充填される溶融樹脂圧力よりも小さくなるように設定されている。なお、第4金型キャビティC4は成形には使用されない。
【0118】
二次型締め工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図14(c)に示すように、未圧縮一次成形体58aを保持させた固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3に、固定金型12に形成された樹脂流路50kを介して射出ユニット7から溶融樹脂を射出充填させる(二次射出充填工程)。
【0119】
この二次射出充填工程において、第3金型キャビティC3に射出充填させた溶融樹脂圧力により、図14(d)に示すように、可動金型14及び回転金型16が固定金型12に対して型開き方向に所定量cだけ微小型開きされる(微小型開き工程)。具体的には、二次型締め工程における型締装置6の型締め力は、先に説明したように、第3金型キャビティC3に射出充填させる溶融樹脂圧力よりも小さくなるように設定されているため、型締装置6の型締め力と射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き方向の力との差異分だけ回転金型16には型開き方向の力が作用し、回転金型16を固定金型12から微少型開きさせる。微少型開き工程の初期段階においては、可動金型14及び回転金型16が型合わせ状態のため、この型開き方向の力は回転金型16を介して可動金型14にも作用し、可動金型14が回転金型16から微少型開きされるきっかけとなる。可動金型14が回転金型16から型開き方向に離間した後は、回転金型16に作用する型開き方向の力がラックアンドピニオン機構20を介して可動金型14にも作用し、回転金型16の微少型開き動作に連動して、可動金型14を微少型開きさせる。すなわち、拡張発泡成形方法の発泡型開き工程の際行われる型開き補正押圧工程ではなく、逆の、型閉じ補正押圧工程、すなわち、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けられている状態において、回転金型16の型開き方向への移動に伴いピニオン22も型開き方向に移動し、下側のラック26の歯27の可動金型14側の面Bにおいて、ピニオン22の下側の歯により、同ラックの歯27に型開き方向の力を作用させる。このとき、ピニオン22はその下側の歯を介して反時計周り(型閉じ方向)の反力を受けるが、同時にピニオン22の上側の歯が、固定され移動しない上側のラック24の歯25の可動金型14側の面Aにおいて、時計回り(型開き方向)の反力を受けるため、ピニオン22は反時計周りには回転せず、回転金型16の型開き方向への移動に伴い、時計回りに回転しながら下側のラック26を型開き方向に移動させ、可動金型14を型開き方向に移動させる(図8(a)参照)。このとき、型締装置6は、ラックアンドピニオン機構20を介して回転金型16から可動金型14に作用する溶融樹脂圧力による型開き方向の力に対抗して、可動金型14の微少型開き量及び微少型開き速度を制御するように型締め力を作用させるが、可動金型14に型開き方向の力を作用させることはない。ここで、型閉じ補正押圧工程ではなく、型開き補正押圧工程、すなわち、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dに押し付けられている状態(図8(c)参照)において、この微少型開き工程を行わせた場合、先に説明したように、可動金型14及び回転金型16が型合わせ状態の微少型開き工程の初期段階においては、可動金型14は回転金型と共に型開き方向に移動されるが、可動金型14が回転金型16から型開き方向に離間した後は、回転金型16のみが、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、B側にバックラッシα、β分だけ移動し、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の微少型開き量に差異が生じてしまう。
【0120】
この二次射出充填工程の継続中及び完了後においても、型閉じ補正押圧工程を継続することが好ましい。例えば、型閉じ補正押圧工程の継続中、この二次射出充填工程時に、第3金型キャビティC3に射出充填させた溶融樹脂圧力により、回転金型16には型開き方向(可動金型14側)の力が作用する。この型開き方向の力は、継続している型閉じ補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側(型開き方向)に押圧する所定圧1と同じ方向に作用するため、この型開き方向の力が所定圧1よりも大きい場合、ピニオン22はこの型開き方向の力で可動金型14側に押圧され、この型開き方向の力が所定圧1よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧1で可動金型14側に押圧され、いずれの場合においても型閉じ補正押圧工程は維持される。先に説明した、射出プレス成形方法の第2成形例のように、所定圧1を、第3金型キャビティC3に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にする必要はないが、射出充填中の溶融樹脂圧力は一定ではなく変動することから、型閉じ補正押圧工程を装置制御の下に確実に継続するために、所定圧1を、第3金型キャビティC3に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にすることが好ましい。このように、この型閉じ補正押圧工程により、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の可動金型側の面A、B側に位置保持され、微少型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型開き方向への移動量以上に、また、微少型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。更に、後述する射出圧縮工程においても、このまま型閉じ補正押圧工程を継続すれば、設定された微少型開き位置からの型閉じ方向の移動動作の継続中のバックラッシをゼロにすることできる。
【0121】
本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例において、微小型開き量及び微少型開き速度を高精度に制御するために、二次射出充填工程と連動して、可動金型14及び回転金型16の微小型開き量をモニタして型締装置6による型締め力をフィードバック制御するフィードバック工程を更に備えることが好ましい。このフィードバック工程は、具体的には、第3金型キャビティC3へ溶融樹脂が射出充填されている状態において、可動金型14及び回転金型16の微小型開き量をモニタし、可動金型14及び回転金型16の微小型開き量が所定量cに到達したときに、その可動金型14及び回転金型16の位置が保持されるように型締装置6の型締め力を増大させる型締制御により行うことができる。なお、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例において、このフィードバック工程は、必ずしも行なう必要はなく、フィードバック工程に変えて、例えば、可動金型14及び回転金型16の微小型開き量が所定量cに到達した時又はその後(微小型開き工程後)に、後述する射出圧縮工程に移行するとしても良い。
【0122】
微小型開き工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図14(e)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させて、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を所定の型締め圧縮力で型締めさせる(射出圧縮工程)。この射出圧縮工程により、第3金型キャビティC3内の溶融樹脂に型締め圧縮力を作用させ、圧縮二次成形体58bが成形される。このようにして、第3金型キャビティC3を形成する固定金型12に保持させた未圧縮一次成形体58aの少なくとも一部に、所定の型締め圧縮力を作用させて成形された圧縮二次成形体58bを積層成形する(積層成形工程)。なお、第4金型キャビティC4も、二次射出充填工程において、型開き方向に所定量cだけ微小型開きされ(微小型開き工程)、この射出圧縮工程により金型キャビティ容積を型締め時まで縮小されるが、先に説明したように成形には使用されない。また、この射出圧縮工程は、二次射出充填工程と連動して行われるとしても良いし、二次射出充填工程後に行われるとしても良い。型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、押圧を継続することが好ましい。
【0123】
所定の冷却固化時間経過後、図14(f)に示すように、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様に、二次型開き工程及び製品取り出し工程により、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間(第3金型キャビティC3)において成形された積層成形品58が、図示しない製品取出装置により取り出される。このようにして、以後、図14(a)の状態から図14(f)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、未圧縮一次成形体58aと圧縮二次成形体58bとからなる積層成形品58が連続的に成形される。
【0124】
本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未圧縮一次成形体を成形し、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3において射出圧縮成形方法により成形された圧縮二次成形体を該未圧縮一次成形体の少なくとも一部に積層成形する態様(未射出圧縮成形−射出圧縮成形の態様)であるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様に、射出圧縮成形−射出圧縮成形の態様や、射出圧縮成形−未射出圧縮成形の態様であるとしても良い。
【0125】
また、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例は、一次射出充填工程及び二次射出充填工程のいずれも、一台の射出ユニット7から溶融樹脂を射出充填させるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第2成形例等と同様に、第2射出ユニットを設け、一次射出充填工程と二次射出充填工程とで、異なる射出ユニットから溶融樹脂を射出充填させるようにしても良い。
【0126】
[射出圧縮成形の第2成形例]
次に、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第2成形例について、図15を用いて説明する。本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第2成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未圧縮一次成形体を成形し、該未圧縮一次成形体保持させた回転金型16の第1金型17b及び可動金型14間に形成される第4金型キャビティC4において、射出圧縮成形方法により成形された圧縮二次成形体を該未圧縮一次成形体の少なくとも一部に積層成形する方法である。すなわち、固定金型及び回転金型間で成形された一次成形体を回転金型側に保持させて、型開き時に回転金型を回転させて、その回転により該一次成形体を可動金型側に移動させ、1回目の型開閉動作を除き、2回目以降、1回の型開閉動作毎に積層成形品と一次成形体とを成形することを特徴とする。本第2成形例においては、固定金型12側に設けられた第1射出ユニット7の他に、可動金型14側において型開閉方向と平行に設けられた第2射出ユニット8を用いて説明するが、これに限定されるものではない。以下、射出圧縮成形方法の第1成形例と同様の工程及び成形条件については、その説明を省略する。
【0127】
まず、拡張発泡成形方法の第1成形例と同様の工程により、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1において、一般的な射出成形方法により未圧縮一次成形体59aを成形する(一次型締め工程乃至一次成形工程)。所定の冷却固化時間経過後、未圧縮一次成形体59aを回転金型16の第1金型17bに保持させた状態で、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって、回転金型16の回転金型部16bが回転可能な位置まで、可動金型14及び回転金型16を型開き方向に移動させる(型開き工程)。この所定の冷却固化時間経過後、型開き工程が行われる前に、可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第2金型キャビティC2において、後述するような二次射出充填工程乃至積層成形工程が行われるが、ここでの説明は省略する。
【0128】
型開き工程後、図15(a)に示すように、未圧縮一次成形体59aを回転金型16の第1金型17bに保持させた状態で、回転金型16の第1金型17bが可動金型14と対向し、回転金型16の第2金型17cが固定金型12と対向する位置に、回転金型16の回転金型部16bを回転機構16dにより180度回転させる(回転工程)。これら型締め工程乃至回転工程においても、射出圧縮成形方法の第1成形例と同様に、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために型開き補正押圧工程及び型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。なお、後述するように、前の成形サイクルで成形された積層成形品は、この型開き工程後、回転工程が開始される前に、製品取り出し工程において、これら金型間から既に取り出されているため、未圧縮一次成形体59aを保持させた回転金型16の第1金型17b以外、可動金型14、回転金型16の第2金型17c及び固定金型12には何も保持されていない。
【0129】
回転工程後、固定金型12、可動金型14及び回転金型16の型開き状態において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を固定金型12側から可動金型14側に切換え、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型閉じ補正押圧工程を行う。次に、型閉じ補正押圧工程の継続中において、図15(b)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(型締め工程)。これにより、可動金型14及び未圧縮一次成形体59aを保持させた回転金型16の第1金型17b間に第4金型キャビティC4が形成される。この型締め工程における型締装置6の型締め力は、第4金型キャビティC4に射出充填される溶融樹脂圧力よりも小さくなるように設定されている。
【0130】
型締め工程と並行して又はその後、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにするために、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を切換えて、型開き補正押圧工程を行う。この型開き補正押圧工程の継続中に、図15(c)に示すように、未圧縮一次成形体59aを保持させた回転金型16の第1金型17b及び可動金型14間に形成される第4金型キャビティC4に、可動金型14に形成された樹脂流路50lを介して第1射出ユニット7から溶融樹脂を射出充填させる(二次射出充填工程)。
【0131】
この二次射出充填工程において、第4金型キャビティC4に射出充填させた溶融樹脂圧力により、図15(d)に示すように、可動金型14及び回転金型16が固定金型12に対して型開き方向に所定量cだけ微小型開きされる(微小型開き工程)。ここで、本第2成形例の微少型開き工程は射出圧縮成形方法の第1成形例の微少型開き工程とその型開き方向への移動のメカニズムが若干相違する。先に説明したように、射出圧縮成形方法の第1成形例においては、型閉じ補正押圧工程の継続中に、第3金型キャビティC3に射出充填させた溶融樹脂圧力により、回転金型16に直接型開き方向の力が作用し、回転金型16を固定金型12から微少型開きさせると共に、この型開き方向の力がラックアンドピニオン機構20を介して可動金型14にも作用し、回転金型16の微少型開き動作に連動して、可動金型14を微少型開きさせる。そのため、型開き補正押圧工程ではなく、ピニオン22をラック24、16の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押付ける型閉じ補正押圧工程を行っている。これに対して、本第2成形例においては、第4金型キャビティC4に射出充填させた溶融樹脂圧力により、回転金型16に型閉じ方向の力が作用すると共に、可動金型14に型開き方向の力が作用する。すなわち、回転金型16を固定金型12に対して型開き方向に移動させるのは、回転金方16に作用する型閉じ方向の力ではなく、可動金型14に作用する型開き方向の力である。これは、型締装置6により可動盤4及び可動金型14を型開き方向へ移動させ、ラックアンドピニオン機構20により回転金型16を型開き方向に移動させる拡張発泡成形方法の発泡型開き工程と同じ状態である。そのため、本第2成形例の二次射出充填工程においては、射出圧縮成形方法の第1成形例と異なり、型開き補正押圧工程を継続することが好ましい。具体的には、この二次射出充填工程時に、第4金型キャビティC4に射出充填させた溶融樹脂圧力により、回転金型16には型閉じ方向の力が作用する。この型閉じ方向の力は、継続している型開き補正工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を固定金型12側(型閉じ方向)に押圧する所定圧2と同じ方向に作用するため、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも大きい場合、ピニオン22はこの型閉じ方向の力で固定金型12側に押圧され、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧2で固定金型12側に押圧され、いずれの場合においても型開き補正押圧工程は維持される。先に説明した、射出プレス成形方法の第2成形例のように、所定圧2を第4金型キャビティC4に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にする必要はないが、射出充填中の溶融樹脂圧力は一定ではなく変動することから、型開き補正押圧工程を装置制御の下に確実に継続するために、所定圧2を、第4金型キャビティC4に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にすることが好ましい。このように、型開き補正押圧工程により、回転金型16は、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に位置保持され、微少型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型開き方向への移動量以上に、また、微少型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。また、射出圧縮成形方法の第1成形例と同様に、微小型開き量及び微小型開き速度を高精度に制御するためのフィードバック工程等を行うとしても良い。
【0132】
微小型開き工程後、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を固定金型12側から可動金型14側に切換えて、型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。次に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図15(e)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させて、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を所定の型締め圧縮力で型締めさせる(射出圧縮工程)。この射出圧縮工程により、第4金型キャビティC4内の溶融樹脂に型締め圧縮力を作用させ、圧縮二次成形体59bが成形される。このようにして、第4金型キャビティC4を形成する回転金型16の第2金型17bに保持させた未圧縮一次成形体59aの少なくとも一部に、所定の型締め圧縮力を作用させて成形された圧縮二次成形体59bを積層成形する(積層成形工程)。なお、型締め時よりも所定量cだけ型開閉方向に拡張された第3金型キャビティC3も、この射出圧縮工程により金型キャビティ容積を型締め時まで縮小されるが、これら工程が行われる間、第3金型キャビティC3に射出充填等は行われない。また、この射出圧縮工程は、二次射出充填工程と連動して行われるとしても良いし、二次射出充填工程後に行われるとしても良い。型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、押圧を継続することが好ましい。
【0133】
また、射出圧縮工程と連動させて、又は射出圧縮工程後、固定金型12及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第3金型キャビティC3に、固定金型12に形成された樹脂流路50mを介して第1射出ユニット7から溶融樹脂を射出充填させて(一次射出充填工程)、新たな未圧縮一次成形体59aを成形する(一次成形工程)。
【0134】
所定の冷却固化時間経過後、図15(f)に示すように、拡張発泡成形方法の第2成形例と同様に、型開き工程及び製品取り出し工程により、可動金型14及び回転金型16の第1金型17b間(第4金型キャビティC4)において成形された積層成形品59を取り出す。このようにして、以後、図15(a)の状態から図15(f)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、未圧縮一次成形体59aと圧縮二次成形体59bとからなる積層成形品59が連続的に成形される。
【0135】
本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第2成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1(或いは第3金型キャビティC3)において、一般的な射出成形方法により未圧縮一次成形体を成形し、可動金型14及び該未圧縮一次成形体を保持させた回転金型の第1金型17b間に形成される第4金型キャビティC4(或いは第2金型キャビティC2)において射出圧縮成形方法により成形された圧縮二次成形体を該未圧縮一次成形体上に積層成形する態様(未射出圧縮成形−射出圧縮成形の態様)であるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第2成形例と同様に、射出圧縮成形−射出圧縮成形の態様や、射出圧縮成形−未射出圧縮成形の態様であるとしても良い。
【0136】
[射出圧縮成形の第3成形例]
次に、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第3成形例について、図16を用いて説明する。本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第3成形例は、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に形成される第1金型キャビティC1並びに可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に形成される第2金型キャビティC2において、同時に、射出圧縮成形方法により単層の射出圧縮成形品を成形する方法である。すなわち、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例及び第2成形例と異なり、回転金型を回転させず、1回の型開閉動作毎に、積層成形品ではなく単層成形品を成形することを特徴とする。本第3成形例においては、固定金型12側に設けられた第1射出ユニット7の他に、可動金型14側に設けられた第2射出ユニット8を用いて説明するが、これに限定されるものではない。以下、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例及び第2成形例と同様の工程及び成形条件については、その説明を省略する。
【0137】
まず、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けられている状態(型閉じ補正押圧工程)において、図16(a)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(型締め工程)。これにより、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間に第1金型キャビティC1が形成され、可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間に第2金型キャビティC2が形成される。本第3成形例において、型閉じ工程における型締装置6の型締め力は、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填される溶融樹脂圧力よりも小さくなるように設定されている。
【0138】
型閉じ工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図16(b)に示すように、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に、固定金型12及び可動金型14に形成された樹脂流路50n、50oを介して第1射出ユニット7及び第2射出ユニット8からそれぞれ溶融樹脂を射出充填させる(射出充填工程)。
【0139】
この射出充填工程における第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2への溶融樹脂の射出充填により、射出圧縮成形方法の第1成形例及び第2成形例と同様に、図16(c)に示すように、可動金型14及び回転金型16が固定金型12に対して型開き方向に所定量cだけ微小型開きされる(微小型開き工程)。ここで、射出プレス成形方法の第3成形例と同様に、この射出充填工程時に、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填させた溶融樹脂圧力に差異が生じた場合を想定する。まず、第2金型キャビティC2の溶融樹脂圧力よりも第1金型キャビティC1の溶融樹脂圧力の方が高い場合、その差異分だけ回転金型16に型開き方向(可動金型14側)の力が作用する。また、可動金型14にも、型締装置6の型締め力と第2金型キャビティC2に射出充填させた溶融樹脂圧力による型開き方向との差異分だけ型開き方向の力が作用するが、この型開き方向の力は回転金型16に作用する型開き方向の力よりも小さい。すなわち、この場合、可動金型14は回転金型16に作用する型開き方向の力によりラックアンドピニオン機構20を介して微少型開きされる。これは、射出圧縮成形方法の第1成形例と同様の状態なので、ピニオン22をラック24、26の歯25、17の可動金型14側の面A、Bに押し付ける型閉じ補正押圧工程(図8(a)参照)を継続し、この型閉じ補正押圧工程を射出充填工程(微少型開き工程)に引き続き行われる射出圧縮工程でも継続することが好ましい。次に、第1金型キャビティC1の溶融樹脂圧力よりも第2金型キャビティC2の溶融樹脂圧力の方が高い場合、その差異分だけ回転金型16に型閉じ方向(固定金型12側)の力が作用する。また、可動金型14には、型締装置6の型締め力と第2金型キャビティC2に射出充填させた溶融樹脂圧力による型開き方向との差異分だけ型開き方向の力が作用し、この型開き方向の力は回転金型16に作用する型閉じ方向の力よりも大きい。すなわち、この場合、回転金型16は可動金型14に作用する型開き方向の力によりラックアンドピニオン機構20を介して微少型開きされる。これは、射出圧縮成形方法の第2成形例と同様の状態なので、型閉じ補正押圧工程の継続中であれば、これをピニオン22をラック24、26の歯25、17の固定金型12側の面C、Dに押し付ける型開き補正押圧工程(図8(c)参照)に切換え、射出充填工程(微少型開き工程)の完了後、この型開き補正押圧工程を、再び、適切なタイミングで型閉じ補正押圧工程に切換え、この型閉じ補正押圧工程の継続中に射出圧縮工程が行われることが好ましい。このように、本第3成形例においては、射出充填工程時に、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填させた溶融樹脂圧力の差異により、必要に応じて、ピニオン移動機構30によるピニオン22の押圧方向を切換えて、適切な型開き/型閉じ補正押圧工程を行うことにより、回転金型16は、ラック24、26の歯25、17の可動金型14の面A、B側、あるいは、固定金型12の面C、D側のいずれか適切な側に位置保持され、微少型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型開き方向への移動量以上に、また、微少型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。また、本第3成形例においても、射出圧縮成形方法の第1成形例及び第2成形例と同様に、微小型開き量を高精度に制御するためのフィードバック工程等を行うとしても良い。
【0140】
微小型開き工程後、射出圧縮成形方法の第2成形例と同様に、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を切換えて、型閉じ補正押圧工程を行うことが好ましい。また、射出圧縮成形方法の第1成形例と同様に、この時点で既に型閉じ補正押圧工程に切換えられていれば、そのまま型閉じ補正押圧工程を継続すれば良い。次に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図16(d)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び回転金型16を型閉じ方向に移動させて、固定金型12、可動金型14及び回転金型16を型締めさせる(射出圧縮工程)。この射出圧縮工程により、第1金型キャビティC1内及び第2金型キャビティC2内の溶融樹脂に型締め圧縮力を作用させ、単層の射出圧縮成形品60が成形される。この射出圧縮工程は、射出充填工程と連動して行われるとしても良いし、射出充填工程後に行われるとしても良い。型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、ピニオン22の軸位置を一定にするために、押圧を継続することが好ましい。
【0141】
所定の冷却固化時間経過後、図16(e)に示すように、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、型開き工程及び製品取り出し工程により、固定金型12及び回転金型16の第1金型17b間並びに可動金型14及び回転金型16の第2金型17c間においてそれぞれ成形された射出圧縮成形品60、60が、図示しない製品取出装置により取り出される。このようにして、以後、図16(a)の状態から図16(e)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、単層の射出圧縮成形品60、60が同時に、連続的に成形される。
【0142】
本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第3成形例においては、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の双方において、同一の成形条件で、同時に、射出圧縮成形方法により同一種類の単層の射出圧縮成形品60、60を成形するとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、例えば、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のそれぞれにおいて、異なる溶融樹脂から異なる種類の射出圧縮成形品を成形するとしても良い。
【0143】
また、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第3成形例は、第1及び第2金型キャビティC1、C2の双方において同時に射出圧縮成形方法により単層の射出圧縮成形品を成形する態様(射出圧縮成形−射出圧縮成形の態様)としたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、射出圧縮成形−未射出圧縮成形の態様や、射出圧縮成形−成形無しの態様であっても良い。
【0144】
更に、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第3成形例においては、固定金型12の背面側に設けられた第1射出ユニット7により第1金型キャビティC1に溶融樹脂を射出充填させ、可動金型14の側面側に設けられた第2射出ユニット8により第2金型キャビティC2に溶融樹脂を射出充填させるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法の第3成形例と同様に、可動金型14側の第2射出ユニット8を設けず、第1射出ユニット7のみから射出された溶融樹脂を回転金型16まで流動させ、回転金型16側から第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ溶融樹脂を流入させる構成としても良い。また、この場合、樹脂流路には、樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等を設けるとしても良い。
【0145】
このように、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の第1成形例、第2成形例及び第3成形例によれば、ピニオン22をラック24、26の歯に押し付けた状態、すなわち、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型閉じ補正押圧工程)或いは、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型開き補正押圧工程)において、二次射出充填工程或いは射出充填工程を行い、金型キャビティに射出充填させた溶融樹脂圧力により、可動金型14及び回転金型16を微小型開きさせ、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型閉じ補正押圧工程)において、射出圧縮工程(微少型開き状態からの型閉じ・型締め動作)を行なうため、バックラッシの影響を完全に排除し、二次射出充填工程或いは射出充填工程の継続中及び完了後において、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の微小型開き量及び型閉じ量を均一にすることができると共に、溶融樹脂圧力等の外乱要因があっても、バックラッシをゼロにした状態を維持させることができるため、微少型開き位置の位置保持や微少型開き工程における型開き速度及び射出圧縮工程における型締め速度を安定させ、高品質な単層及び積層の射出圧縮成形品を得ることができる。
【0146】
従来の多色成形用金型では、ラックアンドピニオン機構の機械的公差により、可動金型と回転金型とにより形成される金型キャビティの型開き量が、回転金型と固定金型とにより形成される金型キャビティの型開き量よりもバックラッシα+β分だけ大きくなり、拡張発泡成形方法により両金型キャビティで成形される発泡成形品の厚み、発泡倍率及び気泡径等に差異が生じてしまうという問題がある。また、このような両金型キャビティの型開き量の差異は、型締め状態からの型開き動作時のみならず、型開き状態からの型閉じ・型締め動作時にも生じるため、射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法においても同様に、両金型キャビティにより成形される成形品の品質に差異が生じてしまうという問題がある。更に、これらの成形方法において、想定することが困難な、両金型キャビティ内の発泡性溶融樹脂の発泡圧力や、射出充填時の溶融樹脂圧力の差異により、回転金型には型開閉方向の力が作用する。この型開閉方向の力は、ラック及びピニオンの噛合以外に型開閉方向の拘束手段を有しない回転金型を、このようなバックラッシ分だけ、ラックアンドピニオン機構による型開閉方向への移動量以上、あるいは移動量以下に型開閉方向に移動させる。このラックアンドピニオン機構により制御することができない回転金型の型開閉方向への移動により、両金型キャビティの型開き量の差異だけでなく、両金型キャビティの型開き速度や型閉じ・型締め速度を不安定にさせ、両金型キャビティにより成形される成形品の品質に差異が生じてしまうという問題がある。これに対し、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法は、ピニオン移動機構30によって、ピニオン22を型開閉動作と逆方向、すなわち、可動盤(型締装置)による型開き時においては、ピニオン22を固定金型12側(型開き補正押圧工程)に所定圧2で押圧し、可動盤(型締装置)による型閉じ時においては、ピニオン22を可動金型14側(型閉じ補正押圧工程)に所定圧1で押圧し、射出圧縮成形方法等、金型キャビティ内に射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き時においては、射出充填させる溶融樹脂圧力の差異により、必要に応じて、ピニオン移動機構30によるピニオン22の押圧方向を切換えて、適切な型開き/型閉じ補正押圧工程を行うことにより、可動金型14の型開閉動作及び金型キャビティに射出充填させる溶融樹脂圧力により回転金型16の型開閉動作を行わせるラックアンドピニオン機構20におけるバックラッシα、βの影響を完全に排除することができるため、高品質な単層及び積層の発泡成形品、射出プレス成形品及び射出圧縮成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0147】
1 射出成形装置、3 固定盤、4 可動盤、6 型締装置、10 三枚構造の射出成形金型、12 固定金型、14 可動金型、16 回転金型、16a 回転金型支持部、16b 回転金型部、16c 回転軸、16d 回転機構、17a 回転盤、17b 第1金型、17c 第2金型、20 ラックアンドピニオン機構、22 ピニオン、24、26 ラック、25、27 ラックの歯、30 ピニオン移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と、
前記固定金型と対向し、型開閉方向に移動可能に設けられた可動金型と、
前記固定金型及び前記可動金型の間において型開閉方向に移動可能でかつ型開閉方向と直交する回転軸を中心として回転可能に設けられ、一の回転位置において前記固定金型と対向し、該固定金型との間において金型キャビティを形成可能で、前記一の回転位置から前記回転軸を中心として回転した他の回転位置において前記可動金型と対向し、該可動金型との間において金型キャビティを形成可能な金型分割面を少なくとも2つ有する回転金型と、
前記回転金型に設けられたピニオン、並びに、前記固定金型及び前記可動金型にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動金型の型開閉方向の移動に対応して前記回転金型を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、
を備える三枚構造の射出成形金型であって、
前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記回転金型に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定金型及び前記可動金型の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、
前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記回転金型を型開閉方向に移動可能に構成されている
ことを特徴とする三枚構造の射出成形金型。
【請求項2】
前記ピニオン移動機構は、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型の型開き時に、前記ピニオンを前記固定金型側又は前記可動金型側に押圧し、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型の型閉じ時に、前記ピニオンを前記可動金型側に押圧するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の三枚構造の射出成形金型。
【請求項3】
前記回転金型は、
前記ピニオンが取り付けられ、前記ラックアンドピニオン機構により型開閉方向に移動可能に設けられた回転金型支持部と、
前記回転金型支持部に、型開閉方向と直交する回転軸を中心として回転可能に支持され、一の回転位置において前記固定金型と対向し、該固定金型との間において金型キャビティを形成可能で、前記一の回転位置から前記回転軸を中心として回転した他の回転位置において前記可動金型と対向し、該可動金型との間において金型キャビティを形成可能な金型分割面を少なくとも2つ有する回転金型部と、
前記回転金型部を前記回転軸を中心として回転させる回転機構と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の三枚構造の射出成形金型。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか1項に記載の三枚構造の射出成形金型を備える射出成形装置であって、
前記固定金型を取り付け可能な固定盤と、
前記固定盤と対向して設けられ、前記固定盤に対して型開閉方向に移動可能で、前記可動金型を取り付け可能な可動盤と、
前記可動盤を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、
を備えることを特徴とする射出成形装置。
【請求項5】
固定金型を含む固定部と、
前記固定金型と対向する可動金型を含み、前記固定部に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動部と、
型開閉方向と直交する回転軸を中心として回転可能に設けられ、一の回転位置において前記固定金型と対向し、該固定金型との間において金型キャビティを形成可能で、前記一の回転位置から前記回転軸を中心として回転した他の回転位置において前記可動金型と対向し、該可動金型との間において金型キャビティを形成可能な金型分割面を少なくとも2つ有する回転金型を含み、前記固定部及び前記可動部の間において型開閉方向に移動可能に設けられた回転部と、
前記可動部を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、
前記回転部に設けられたピニオン、並びに、前記固定部及び前記可動部にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動部の型開閉方向の移動に対応して前記回転部を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、
を備える射出成形装置であって、
前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記回転部に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定部及び前記可動部の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、
前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記回転部を型開閉方向に移動可能に構成されている
ことを特徴とする射出成形装置。
【請求項6】
前記固定部は、前記固定金型と、前記固定金型を取り付け可能な固定盤とを備え、
前記可動部は、前記可動金型と、前記可動金型を取り付け可能な可動盤とを備え、
前記ラックは、前記固定盤及び前記可動盤にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の射出成形装置。
【請求項7】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、
前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記固定金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記回転金型の他の金型分割面を前記固定金型と対向させる回転工程と、
前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第3金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、
前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、発泡性溶融樹脂から発泡成形体を成形する工程であり、発泡性溶融樹脂の射出充填後に型締め状態を解除する型締め解除工程と、前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせ、射出充填された前記発泡性樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項8】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、
前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記回転金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記一次成形体を保持させた前記回転金型の金型分割面を前記可動金型と対向させる回転工程と、
前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記可動金型と前記回転金型との間に形成される第4金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、
前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、発泡性溶融樹脂から発泡成形体を成形する工程であり、発泡性溶融樹脂の射出充填後に型締め状態を解除する型締め解除工程と、前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせ、射出充填された前記発泡性樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項9】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、
前記固定金型と前記回転金型の一の金型分割面とを型締めして第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型と前記回転金型の他の金型分割面とを型締めして第2金型キャビティを形成する型締め工程と、
前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に発泡性溶融樹脂を射出充填する発泡性樹脂射出充填工程と、
前記発泡性樹脂射出充填工程後に、型締め状態を解除する型締め解除工程と、
前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、
前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせ、前記発泡性樹脂射出充填工程において射出充填された発泡性溶融樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項10】
前記発泡性樹脂射出充填工程は、前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に発泡性溶融樹脂を射出充填する工程である
ことを特徴とする請求項9記載の射出成形方法。
【請求項11】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、
前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記固定金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記回転金型の他の金型分割面を前記固定金型と対向させる回転工程と、
前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第3金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、
前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出プレス成形体を成形する工程であり、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記回転金型の間が所定量だけ微小型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程後に、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項12】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、
前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記回転金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記一次成形体を保持させた前記回転金型の金型分割面を前記可動金型と対向させる回転工程と、
前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記可動金型と前記回転金型との間に形成される第4金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、
前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出プレス成形体を成形する工程であり、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記回転金型の間が所定量だけ微小型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程後に、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項13】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、
前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、
前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記回転金型の間並びに前記可動金型及び前記回転金型の間が所定量だけ微小型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記回転金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記回転金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、
前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、
前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項14】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、
前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記固定金型に保持させた状態において前記可動金型及び前記回転金型を型開きさせ、前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記回転金型の他の金型分割面を前記固定金型と対向させる回転工程と、
前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第3金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、
前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出圧縮成形体を成形する工程であり、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせる微小型開き工程と、前記微小型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項15】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、
前記回転金型の第1の回転位置において、型締め後に前記固定金型と前記回転金型との間に形成される第1金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形工程後に、前記一次成形体を前記回転金型に保持させた状態において前記回転金型を第2の回転位置まで回転させて、前記一次成形体を保持させた前記回転金型の金型分割面を前記可動金型と対向させる回転工程と、
前記回転金型の第2の回転位置において、型締め後に前記可動金型と前記回転金型との間に形成される第4金型キャビティに溶融樹脂を射出充填して前記一次成形体の少なくとも一部に二次成形体を積層成形する積層成形工程とを備え、
前記一次成形工程及び前記二次成形工程の少なくとも一方は、射出圧縮成形体を成形する工程であり、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせる微小型開き工程と、前記微小型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記金型キャビティ内の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項16】
請求項4乃至6いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、
前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記回転金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記回転金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、
前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程及び前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程のいずれか一方の補正押圧工程と、
前記型閉じ補正押圧工程及び前記型開き補正押圧工程のいずれか一方の継続中に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、
前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記回転金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微小型開きさせる微小型開き工程と、
前記微小型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記回転金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項17】
前記射出充填工程は、前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に溶融樹脂を射出充填する工程である
ことを特徴とする請求項13又は16に記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−95070(P2013−95070A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240563(P2011−240563)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】