説明

三次元地理情報提示システム

【課題】直感的に把握可能な形態で、河川氾濫発生時のようすを多面的に提示する。
【解決手段】対象とする地理的領域の三次元モデルを表す三次元モデルデータと、三次元の地形模型23とを設ける。そして、時間の経過と共に、仮想三次元世界中で水位を上昇させながら、当該仮想三次元世界中に配置した、前記三次元モデルデータが表す三次元モデルを、設定された視点から観察した景観を表示する(b2、b3)。また、これに同期して、仮想三次元世界中の三次元モデルの水没領域に整合するように、投影装置22によって水を表す色、模様を有する画像パターンを投影する地形模型23上の領域303を拡大する(a2、a3)。これにより、地形模型23と仮想景観の双方において、河川の氾濫によって水没する領域が広がっていくようすを表現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元地理情報を提示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元地理情報を提示する技術としては、ジオラマ等として各種展示等において用いられている三次元形状の地形模型を用いて地理情報を提示する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
また、三次元地理情報を提示する技術としては、三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示することにより、当該三次元地形の景観を仮想現実的に提示する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平11-085010号公報
【特許文献2】特開平11-120374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、地形模型は、現実の地形を縮小した模型であるために、三次元モデルを用いて景観を仮想現実的に表示する技術に比べ、各種地理情報を現実の位置や地形などとの関係を観察者が直感的に把握可能な形態で巨視的に提示することができる。しかしながら、地形模型は現実の存在物であるために、三次元モデルを用いて景観を仮想現実的に表示する技術のように高い自由度をもって多様な形態で各種地理情報を提示することは困難である。
【0004】
そこで、本発明は、直感的に把握可能な形態で、より多様な地理情報を提示することのできる三次元地理情報提示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、前記三次元地形を表す地形模型と、地形模型の環境を制御する地形模型環境制御手段と、環境変化模擬制御部とを備えた三次元地理情報提示システムを提供する。ここで、前記環境変化模擬制御部は、前記仮想的な三次元世界中における視点の設定を受け付ける視点設定受け付け手段と、前記仮想的な三次元世界中において所定の環境の変化をシミュレーションし、当該環境の変化が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させる環境変化シミュレーション手段と、前記環境の変化のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の環境の変化によって前記三次元モデルに発生した事象に相当する事象が、前記地形模型にも発生するように、前記地形模型環境制御手段に、前記地形模型の環境を変化させる地形模型上表現制御手段とを備えるものである。
【0006】
このような三次元地理情報提示システムによれば、地形模型を用いた巨視的な表現によって所定の環境の変化による影響を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて生成した所望の視点から見た当該環境の変化が生じているようすを表す仮想的な景観の表示を介して、多面的で多様な当該環境の変化の影響に関する地理情報の提示を行うことができるようになる。
【0007】
なお、このような三次元地理情報提示システムは、より具体的には、前記地形模型環境制御手段において、地形模型上で河川を模擬する液体である模擬河川の液面高さを制御し、前記環境変化シミュレーション手段において、前記仮想的な三次元世界中において河川の氾濫をシミュレーションし、当該氾濫が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させ、前記地形模型上表現制御手段において、前記氾濫のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の氾濫と同様の氾濫が前記地形模型上で発生するように、前記地形模型環境制御手段に、前記地形模型に対する模擬河川の液面高さを制御させるものとしても良い。
【0008】
このようにすることにより、地形模型を用いた巨視的な表現によって河川の氾濫の影響を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて行う当該氾濫が生じているようすを表す所望の視点から見た仮想的な景観の表示を介して、河川の氾濫の地理的な影響を、多面的かつ多様な形態で提示することができるようになる。
【0009】
または、このような三次元地理情報提示システムは、より具体的には、前記地形模型環境制御手段において、地形模型に対して太陽を模擬する照明光源の位置を制御し、前記環境変化シミュレーション手段において、前記仮想的な三次元世界中において特定の日時における太陽の位置をシミュレーションし、当該シミュレーションした位置に太陽がある状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させ、前記地形模型上表現制御手段において、前記太陽の位置のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の太陽と前記三次元モデルとの位置関係と、同様な位置関係に、前記照明光源と前記地形模型との位置関係がなるように、前記地形模型環境制御手段に、前記地形模型に対する前記照明光源の位置を制御させるようにしてもよい。
【0010】
このようにすることにより、地形模型を用いた巨視的な表現によって所望の日時における日陰の生成状況を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて行う当該日時の太陽光下のようすを表す所望の視点から見た仮想的な景観の表示を介して、当該日時における日陰の生成状況を、多面的かつ多様な形態で提示することができるようになる。
【0011】
また、前記課題達成のために、本発明は、三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、前記三次元地形を表す地形模型と、地形模型上に画像を投影する画像投影手段と、環境変化模擬制御部とを備えた三次元地理情報提示システムを提供する。ここで、前記環境変化模擬制御部は、前記仮想的な三次元世界中における視点の設定を受け付ける視点設定受け付け手段と、前記仮想的な三次元世界中において所定の環境の変化をシミュレーションし、当該環境の変化が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させる環境変化シミュレーション手段と、前記環境の変化のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の環境の変化によって前記三次元モデルに発生した事象に相当する事象を前記地形模型上で表す画像を、前記画像投影手段に投影させる地形模型上表現制御手段とを備えたものである。
【0012】
このような三次元地理情報提示システムによっても、地形模型を用いた巨視的な表現によって所定の環境の変化による影響を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて行う当該環境の変化が生じているようすを表す所望の視点から見た仮想的な景観の表示を介して、多面的で多様な当該環境の変化の影響に関する地理情報の提示を行うことができるようになる。
【0013】
なお、このような三次元地理情報提示システムは、より具体的には、前記環境変化シミュレーション手段において、前記仮想的な三次元世界中において河川の氾濫をシミュレーションし、当該氾濫が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させると共に、当該氾濫によって水没した前記三次元モデル上の領域を氾濫領域として算出し、前記地形模型上表現制御手段において、前記画像投影手段に、前記氾濫領域に対応する前記地形模型上の領域に、氾濫した河川を表す画像を投影させるようにしてもよい。
【0014】
このようにすることにより、地形模型を用いた巨視的な表現によって河川の氾濫の影響を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて行う当該氾濫が生じているようすを表す所望の視点から見た仮想的な景観の表示を介して、河川の氾濫の地理的な影響を、多面的かつ多様な形態で提示することができるようになる。また、河川を模擬する液体などを用いることなく、氾濫によって水没する領域を正確に地形模型上に提示することができるようになる。
【0015】
または、このような三次元地理情報提示システムは、より具体的には、前記環境変化シミュレーション手段において、前記仮想的な三次元世界中において特定の日時における太陽の位置をシミュレーションし、当該シミュレーションした位置に太陽がある状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させると共に、当該シミュレーションした位置に太陽がある状態において前記三次元モデル上に生じた日陰の領域を日陰領域として算出し、前記地形模型上表現制御手段において、前記画像投影手段に、前記日陰領域に対応する前記地形模型上の領域に、陰を投影させるようにしてもよい。
【0016】
このようにすることにより、地形模型を用いた巨視的な表現によって所望の日時における日陰の生成状況を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて行う当該日時の太陽光下のようすを表す所望の視点から見た仮想的な景観の表示を介して、当該日時における日陰の生成状況を、多面的かつ多様な形態で提示することができるようになる。また、太陽を模擬する照明光源などを用いることなく、日陰となる領域を正確に地形模型上に提示することができるようになる。
【0017】
また、前記課題達成のために、本発明は、三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、前記三次元地形を表す地形模型と、地形模型上に画像を投影する画像投影手段と、走行模擬制御部とを備えた三次元地理情報提示システムを提供する。ここで、前記走行模擬制御部は、経路の設定を受け付ける経路設定受付手段と、前記設定された経路に沿って視点を進めながら、当該視点から前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させる走行シミュレーション手段と、前記画像投影手段に、前記設定された経路を表す画像を前記地形模型上の対応する領域に投影させると共に、前記設定経路に沿って進む前記視点の位置を表すマークを、前記地形模型上の対応する位置に投影させる地形模型上表現制御手段とを備えたものである。
【0018】
このような三次元地理情報提示システムによれば、所望の経路を地形模型上で巨視的に表示しつつ、当該経路上を実際に進んでいったならば見えるであろう景観を仮想的に三次元モデルを用いて生成し、地形模型上へ当該景観観察の視点位置を表すマークを投影しつつ表示するので、当該経路に関する地理的情報を、多面的に提示することができるようになる。
【0019】
また、併せて本発明は、三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、前記三次元地形を表す地形模型と、地形模型上に画像を投影する画像投影手段と、各地点の地点情報を格納した地点情報データベースと、入力された条件に合致する地点を前記地点情報データベースより検索し、前記画像投影手段に、検索した地点に対応する前記地形模型上の位置に、所定のマークを投影させる検索地点位置提示手段とを備えた三次元地理情報提示システムを提供する。
【0020】
このような三次元地理情報提示システムによれば、地点情報データベースより検索した所望条件を満たす地点の位置をマークの投影によって地形模型上に提示するので、観察者は、当該位置やその周辺の地理的状況を直感的に把握することができるようになる。
また、併せて本発明は、三次元地形を表す地形模型と、前記地形模型上で指定された位置を識別し、識別した位置に対応する地点を入力地点として受け付ける地点入力受付手段と、前記地点入力受付手段を介して二つの入力地点を受け付け、受け付けた二つの入力地点間の標高の推移を、前記三次元地形を電子的に表す三次元モデルに基づいて算出し表示する標高推移情報表示手段とを有することを特徴とする三次元地理情報提示システムも提供する。
【0021】
このような三次元地理情報提示システムによれば、観察者は、地形模型上で二つの地点を指定するだけで、当該指定した二つの地点間の標高の推移の提示を、直接的に把握可能な形態で受けることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、直感的に把握可能な形態で、より多様な地理情報を提示することのできる三次元地理情報提示システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る三次元地理情報提示システムの構成を示す。
図示するように、三次元地理情報提示システムは、仮想景観表示装置1と、地形模型システム2とを含んで構成される。
また、仮想景観表示装置1は、当該三次元地理情報提示システムにおいて取り扱う所定の地理的領域である対象領域について、航空測量や衛星測量やその他の測量によって作成された地形を三次元的に表す三次元モデルデータ111と前記所定の地理的領域内の各種地理情報を格納した地理情報データベース112を格納した記憶装置11と、3DCG画像生成部12と、表示制御部13と、表示装置14と、入力装置15と、制御部16とを備えている。ただし、以上の仮想景観表示装置1は、CPUやメモリや外部記憶装置等の一般的な構成を備えた汎用コンピュータを用いて構成されるものであって良く、この場合、以上の仮想景観表示装置1の各部の構成は、CPUが予め用意されたプログラムを実行することにより、プロセスや記憶資源として汎用コンピュータ上に具現化される。
【0024】
また、地形模型システム2は、カメラ21、投影装置22、対象領域内の地形を三次元的に模擬した地形模型23、環境模擬装置24、レーザポインタ25とを備えている。ここで、このような地形模型システム2において、カメラ21は地形模型23の上面を撮影する。また、投影装置22は、地形模型23の上面に画像を投影する。
【0025】
以下、このような三次元地理情報提示システムにおける三次元地理情報の提示動作について説明する。
まず、三次元地理情報提示システムが行う氾濫シミュレーション動作について説明する。
この氾濫シミュレーション動作は、河川氾濫時のようすを観察者に提示する動作であり、仮想景観表示装置1の制御部16の氾濫シミュレーション処理によって、その動作が制御される。
図2に、この氾濫シミュレーション処理の処理手順を示す。
図示するように、この処理で、制御部16は、まず、入力装置15を介してオペレータより視点の設定を受け付ける(ステップ202)。次に、入力装置15を介してオペレータより氾濫の速度と氾濫による上昇水位とを環境変数設定として受け付ける(ステップ204)。
【0026】
次に、予め定めておいた前記所定の地理的領域内における標準の水位を設定水位に設定する(ステップ206)。
そして、3DCG画像生成部12に、記憶装置11に格納されている三次元モデルデータ111が表す三次元モデルを配置した仮想世界中で、設定された視点から、当該三次元モデルを観察した景観画像の生成と、表示制御部13を介した表示装置14への表示を行わせる(ステップ208)。ここで、3DCG画像生成部12は、仮想世界中の設定水位の高さに水面を模擬する面を設置して、三次元モデルデータ111が表す三次元モデルのレンダリングを行うことにより景観画像を生成する。
【0027】
また、設定水位と記憶装置11に格納されている三次元モデルデータ111とに基づいて、対象領域内の、設定水位下に水没する領域を算定する(ステップ210)。そして、地形模型システム2の投影装置22に、算出した水没領域に対応する地形模型23上の領域に、水を表す色、模様を有する画像パターンを投影させる(ステップ212)。
【0028】
そして、設定水位が、設定された上昇水位に到達しているかどうかを調べ(ステップ214)、到達していれば処理を終了し、到達していなければ、設定された氾濫速度に応じた高さ分、設定水位を現在の設定水位から上昇させた上で(ステップ216)、ステップ208からの処理に戻る。
【0029】
以上、氾濫シミュレーション処理について説明した。
このような氾濫シミュレーション処理によれば、たとえば、図3a1の地形模型23上の301で表されるビルの特定階の部屋の窓から外を観察する視点が設定された場合には、まず、図3b1に示すように、図3a1の地形模型23上の302で表される河川が氾濫していないときの、当該窓から外を観察したときの景観が表示装置14に表示される。
【0030】
そして、時間の経過と共に、図3a2、a3に示すように投影装置22による水を表す色、模様を有する画像パターンが投影される地形模型23上の領域303が拡大し、これによって、河川302の氾濫によって水没する領域が広がっていくようすが地形模型23上で表現される。
【0031】
一方で、これと同期して、図3b2、b3に示すように、前記窓から観察した、河川302の氾濫によって水没する領域が広がっていく景観が表示装置14に表示される。
以上、氾濫シミュレーション動作について説明した。
このように氾濫シミュレーション動作によれば、地形模型23を用いた巨視的な表現によって河川の氾濫の影響を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて行う当該氾濫が生じているようすを表す所望の視点から見た仮想的な景観の表示を介して、河川の氾濫の地理的な影響を、多面的かつ多様な形態で提示することができる。
【0032】
次に、三次元地理情報提示システムが行う日陰シミュレーション動作について説明する。
この、日陰シミュレーション動作は、太陽の移動に伴う日陰の生成具合を観察者に提示する動作であり、仮想景観表示装置1の制御部16の日陰シミュレーション処理によって、その動作が制御される。
図4に、この日陰シミュレーション処理に処理手順を示す。
図示するように、この処理では、制御部16は、まず、入力装置15を介してオペレータより視点の設定を受け付ける(ステップ402)。次に、入力装置15を介してオペレータよりシミュレーション月日とシミュレーション時刻範囲とを環境変数設定として受け付ける(ステップ404)。
【0033】
次に、設定されたシミュレーション月日のシミュレーション時刻範囲の開始時刻を設定月日時に設定する(ステップ406)。
そして、3DCG画像生成部12に、記憶装置11に格納されている三次元モデルデータ111が表す三次元モデルを配置した仮想世界中で、設定された視点から、当該三次元モデルを、設定月日時において観察した景観画像の生成と、表示制御部13を介した表示装置14への表示を行わせる(ステップ408)。ここで、3DCG画像生成部12は、設定月日時における太陽の方位、仰角を算出し、算出した方位、仰角方向に、太陽を仮想世界中で模擬する仮想的な無限遠光源を設置した上で、三次元モデルをレンダリングすることにより設定月日時における景観画像の生成を行う。
【0034】
また、算出した太陽の方位、仰角と記憶装置11に格納されている三次元モデルデータ111とに基づいて、対象領域内の、日陰となる領域を算定する(ステップ410)。そして、地形模型システム2の投影装置22に、算出した日陰となる領域に対応する地形模型23上の領域に陰を投影させる(ステップ412)。この陰の投影は、次のように行う。すなわち、通常時は、投影装置22によって一様な画像を投影することにより、地形模型23全体の一様な照明を行うようにする。そして、ステップ412では、算出した日陰となる領域に対応する地形模型23上の領域については光が照射されない画像パターンの画像に投影する画像を変化させることにより、当該領域に陰を投影する。
【0035】
さて、このようにして陰を投影したならば、設定月日時の時刻が、設定されたシミュレーション時刻範囲の終了時刻に到達しているかどうかを調べ(ステップ414)、到達していれば処理を終了し、到達していなければ、設定月日時を所定時間進めた上で(ステップ416)、ステップ408からの処理に戻る。
【0036】
以上、日陰シミュレーション処理について説明した。
このような投影シミュレーション処理によれば、たとえば、図5a1の地形模型23上の501で表されるビルの特定階の部屋の窓から外を観察する視点が設定された場合には、まず、図5b1に示すように、設定されたシミュレーション月日の設定されたシミュレーション時刻範囲の開始時刻に、当該窓から外を観察したときの景観が表示装置14に表示される。
【0037】
そして、時間の経過と共に、図5a2、a3に示すように投影装置22による陰の投影領域502が変化し、これによって、設定されたシミュレーション月日の設定されたシミュレーション時刻範囲における陰の移り変わりが地形模型23上で表現される。
一方で、これと同期して、図5b2、b3に示すように、表示装置14には、前記窓から観察した、当該陰の領域の移り変わっていく景観が表示される。
以上、日陰シミュレーション動作について説明した。
このように日陰シミュレーション動作によれば、地形模型23を用いた巨視的な表現によって所望の日時における日陰の生成状況を観察者に直感的に把握可能な形態で提示しつつ、三次元モデルを用いて行う当該日時の太陽光下のようすを表す所望の視点から見た仮想的な景観の表示を介して、当該日時における日陰の生成状況を、多面的かつ多様な形態で提示することができるようになる。
【0038】
次に、走行シミュレーション動作について説明する。
この走行シミュレーション動作は、所定の経路を走行する際のようすを観察者に提示する動作であり、仮想景観表示装置1の制御部16の走行シミュレーション処理によって、その動作が制御される。
図6に、この走行シミュレーション処理の処理手順を示す。
図示するように、この処理では、制御部16は、まず、入力装置15を介してオペレータより走行経路の設定と走行速度の設定とを受け付ける(ステップ602)。ここでの走行経路の設定は、あらかじめ地理情報データベース112に格納しておいた経路中から走行経路とする経路の選択を受け付けることにより行う。ここで、予め地理情報データベース112に格納しておく経路としては、バスや電車の路線の経路、避難路などの経路などを用いる。
【0039】
次に、設定した走行経路の開始点に、経路上の進行方向を向いた視点を設定する(ステップ604)。
そして、3DCG画像生成部12に、記憶装置11に格納されている三次元モデルデータ111が表す三次元モデルを配置した仮想世界中で、設定された視点から、当該三次元モデルを、設定された視点から観察した景観画像の生成と、表示制御部13を介した表示装置14への表示を行わせる(ステップ606)。
また、地形模型システム2の投影装置22に、設定されている走行経路に対応する地形模型23上の経路を、地形模型23上で示す図形を投影させる(ステップ608)。また、地形模型システム2の投影装置22に、設定されている視点に対応する地形模型23上の位置を示すマークを投影させる(ステップ610)。
【0040】
そして、視点が、設定された走行経路終点に到達しているかどうかを調べ(ステップ612)、到達していれば処理を終了し、到達していなければ、視点を現在の視点の位置より設定された走行速度に応じた距離だけ走行経路上を進んだ位置に変更し、(ステップ614)、ステップ606からの処理に戻る。
【0041】
以上、走行シミュレーション処理について説明した。
このような走行シミュレーション処理によれば、走行経路が設定されると、たとえば、図7a1に示すように、地形模型23上に、この走行経路を表す図形701が投影装置22によって投影される。また、時間の経過と共に、図7a1,a2に示すように、この走行経路上を、視点を表すマーク702が進んでいく。
【0042】
一方で、これと同期して、図7b1、b2に示すように、表示装置14には、走行経路上を実際に進んでいく場合に観察される各時点における景観を模擬する画像が表示装置14に表示される。
以上、走行シミュレーション動作について説明した。
このように、走行シミュレーション動作によれば、所望の経路を表す図形を投影することにより当該経路の地理的状況を地形模型23上で巨視的に表示しつつ、当該経路上を実際に進んでいったならば見えるであろう景観を仮想的に三次元モデルを用いて生成し、地形模型23上へ当該景観観察の視点位置を表すマークを投影しつつ表示することにより、当該経路に関する等身大の視点から見た地理的情報を提示することができるようになる。
【0043】
次に、三次元地理情報提示システムが行う経路断面表示動作について説明する。
この経路断面表示動作において制御部16は、カメラ21で撮影した地形模型23上面の画像より、オペレータがレーザポインタ25で指示した地形模型23上の2点の座標を、一方を出発点、他方を終着点として取得する。そして、その出発点から終着点に至る経路を、地理情報データベース112に予め格納しておいた道路地図に基づいて算出し、算出した経路に対応する地形模型23上の経路を、地形模型23上で示す図形を投影装置22に投影させる。また、経路に沿った出発点から終着点までの道のり距離を算出すると共に、三次元モデルデータ111が表す三次元モデルに基づいて、経路に沿った出発点から終着点までの標高の推移を求める。
【0044】
そして、求めた道のり距離や標高の推移を表示制御部13を介して表示装置14に表示する。
このような経路断面表示動作によれば、たとえば、図8aの地形模型23上の801が出発地点として、802が終着点としてレーザポインタ25によって指示されると、この二地点間の経路が探索され、図8bに示すように、探索された経路を表す図形811が投影装置22によって地形模型23上に表される。また、表示装置14には、経路に沿った出発点から終着点までの標高の推移と道のり距離が、たとえば、図8cに示すように、横軸を道のり距離、縦軸を標高とするグラフによって表示される。
【0045】
このように、経路断面表示動作によれば、地形模型23上の任意の二つの地点間の標高の推移を、より直接的に把握可能な形態で提示することができる。なお、以上の経路断面表示動作では、制御部16においてカメラ21とレーザポインタ25を用いて出発点と終着点とを取得するようにしたが、この出発点と終着点の取得は他の手法によって取得するようにしてもよい。すなわち、たとえば、地形模型23自体を接触検知式や光検知式の座標入力装置として構成し、地形模型23を用いて入力された2地点を出発点と終着点として取得するなどしてもよい。
【0046】
次に、三次元地理情報提示システムが行う検索地点表示動作について説明する。
この検索地点表示動作において制御部16は、図9aに示すような検索ウインドウを表示装置14に表示し、オペレータから検索する地点の各種条件の入力ボックス901への入力を受け付ける。そして、検索ウインドウに設けた検索ボタン902が操作されたならば、地理情報データベース112に予め登録しておいた各地点の地点情報に基づいて、入力された条件に合致する地点を探索する。
【0047】
そして、投影装置22に、図9bに示すように、探索した地点の地点情報によって示される、探索した地点の位置に対応する地形模型23上の位置にマーク911を投影させる。
以上、検索地点表示動作について説明した。
このように検索地点表示動作によれば、地理情報データベース112より検索した所望条件を満たす地点の位置をマーク911の投影によって地形模型23上に提示するので、観察者は、当該地点の地理的状況を直感的に把握することができるようになる。
【0048】
ところで、以上の実施形態では、氾濫シミュレーション動作において、投影装置22で水を表す画像パターンを地形模型23上に投影することにより、河川の氾濫のようすを地形模型23上で表示したが、これは、図10aに示すような注水口1001と排水口1002を備えたケース1000内に地形模型23を設置し、制御部16において、注水と排水を適宜制御して、当該ケース1000に設定水位に対応する高さまで水等の液体を注入することにより、本物の液体を用いて河川の氾濫のようすを地形模型23上で表示するようにしてもよい。
【0049】
また、以上の実施形態では、日陰シミュレーション動作において、投影装置22で陰を地形模型23上に投影することにより、日陰の移り変わりのようすを地形模型23上で表示したが、これは、図10bに示すような、地形模型23に対して、方位、仰角を変更可能な照明光源1101を備えた照明装置1100を設け、当該照明装置1100で地形模型23上に生成した本物の陰によって、日陰の移り変わりのようすを地形模型23上で表示するようにしてもよい。なお、この場合には、制御部16は、当該照明装置1100を、照明光源1101の地形模型23に対する方位、仰角が、設定月日時の太陽の方位、仰角と同じとなるように制御する。
【0050】
また、以上の実施形態では、氾濫シミュレーション動作や日陰シミュレーション動作と同様にして、氾濫や日陰以外の、任意の環境変化をシミュレーションする動作を行うようにしてもよい。すなわち、制御部16において、当該環境の変化を三次元モデルに対してシミュレーションしつつ、3DCG画像生成部12に、当該環境の変化が生じている状態において前記三次元モデルを、設定を受け付けた視点から観察した景観を表す画像を表示させると共に、環境の変化のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の環境の変化によって前記三次元モデルに発生した事象に相当する事象を、当該事象を表す画像を地形模型23に投影する投影装置22や、その他の当該事象の発生を地形模型上に表現する装置によって、模擬的に前記地形模型23にも発生させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る三次元地理情報提示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る氾濫シミュレーション処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る氾濫シミュレーション処理の処理例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る日陰シミュレーション処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る日陰シミュレーション処理の処理例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る走行シミュレーション処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る走行シミュレーション処理の処理例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る経路断面表示動作の処理例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る検索地点表示動作の処理例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る三次元地理情報提示システムの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1…仮想景観表示装置、2…地形模型システム、11…記憶装置、12…3DCG画像生成部、13…表示制御部、14…表示装置、15…入力装置、16…制御部、21…カメラ、22…投影装置、23…地形模型、24…環境模擬装置、25…レーザポインタ、111…三次元モデルデータ、112…地理情報データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、
前記三次元地形を表す地形模型と、
地形模型の環境を制御する地形模型環境制御手段と、
環境変化模擬制御部とを有し、
前記環境変化模擬制御部は、
前記仮想的な三次元世界中における視点の設定を受け付ける視点設定受け付け手段と、
前記仮想的な三次元世界中において所定の環境の変化をシミュレーションし、当該環境の変化が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させる環境変化シミュレーション手段と、
前記環境の変化のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の環境の変化によって前記三次元モデルに発生した事象に相当する事象が、前記地形模型にも発生するように、前記地形模型環境制御手段に、前記地形模型の環境を変化させる地形模型上表現制御手段とを有することを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項2】
請求項1記載の三次元地理情報提示システムであって、
前記地形模型環境制御手段は、地形模型上で河川を模擬する液体である模擬河川の液面高さを制御し、
前記環境変化シミュレーション手段は、前記仮想的な三次元世界中において河川の氾濫をシミュレーションし、当該氾濫が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させ、
前記地形模型上表現制御手段は、前記氾濫のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の氾濫と同様の氾濫が前記地形模型上で発生するように、前記地形模型環境制御手段に、前記地形模型に対する前記模擬河川の液面高さを制御させることを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項3】
請求項1記載の三次元地理情報提示システムであって、
前記地形模型環境制御手段は、地形模型に対して太陽を模擬する照明光源の位置を制御し、
前記環境変化シミュレーション手段は、前記仮想的な三次元世界中において特定の日時における太陽の位置をシミュレーションし、当該シミュレーションした位置に太陽がある状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させ、
前記地形模型上表現制御手段は、前記太陽の位置のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の太陽と前記三次元モデルとの位置関係と、同様な位置関係に、前記照明光源と前記地形模型との位置関係がなるように、前記地形模型環境制御手段に、前記地形模型に対する前記照明光源の位置を制御させることを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項4】
三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、
前記三次元地形を表す地形模型と、
地形模型上に画像を投影する画像投影手段と、
環境変化模擬制御部とを有し、
前記環境変化模擬制御部は、
前記仮想的な三次元世界中における視点の設定を受け付ける視点設定受け付け手段と、
前記仮想的な三次元世界中において所定の環境の変化をシミュレーションし、当該環境の変化が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させる環境変化シミュレーション手段と、
前記環境の変化のシミュレーションと同期して、シミュレーション中の環境の変化によって前記三次元モデルに発生した事象に相当する事象を前記地形模型上で表す画像を、前記画像投影手段に投影させる地形模型上表現制御手段とを有することを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項5】
請求項4記載の三次元地理情報提示システムであって、
前記環境変化シミュレーション手段は、前記仮想的な三次元世界中において河川の氾濫をシミュレーションし、当該氾濫が生じている状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させると共に、当該氾濫によって水没した前記三次元モデル上の領域を氾濫領域として算出し、
前記地形模型上表現制御手段は、前記画像投影手段に、前記氾濫領域に対応する前記地形模型上の領域に、氾濫した河川を表す画像を投影させることを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項6】
請求項4記載の三次元地理情報提示システムであって、
前記環境変化シミュレーション手段は、前記仮想的な三次元世界中において特定の日時における太陽の位置をシミュレーションし、当該シミュレーションした位置に太陽がある状態において前記三次元モデルを、前記設定された視点から観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させると共に、当該シミュレーションした位置に太陽がある状態において前記三次元モデル上に生じた日陰の領域を日陰領域として算出し、
前記地形模型上表現制御手段は、前記画像投影手段に、前記日陰領域に対応する前記地形模型上の領域に、陰を投影させることを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項7】
三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、
前記三次元地形を表す地形模型と、
地形模型上に画像を投影する画像投影手段と、
走行模擬制御部とを有し、
前記走行模擬制御部は、
経路の設定を受け付ける経路設定受付手段と、
前記設定された経路に沿って視点を進めながら、当該視点から前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を前記仮想景観表示手段に表示させる走行シミュレーション手段と、
前記画像投影手段に、前記設定された経路を表す画像を前記地形模型上の対応する領域に投影させると共に、前記設定経路に沿って進む前記視点の位置を表すマークを、前記地形模型上の対応する位置に投影させる地形模型上表現制御手段とを有することを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項8】
三次元地形を電子的に表す三次元モデルを用いて、仮想的な三次元世界中で前記三次元モデルを観察した景観を表す画像を表示する仮想景観表示手段と、
前記三次元地形を表す地形模型と、
地形模型上に画像を投影する画像投影手段と、
各地点の地点情報を格納した地点情報データベースと、
入力された条件に合致する地点を前記地点情報データベースより検索し、前記画像投影手段に、検索した地点に対応する前記地形模型上の位置に、所定のマークを投影させる検索地点位置提示手段とを有することを特徴とする三次元地理情報提示システム。
【請求項9】
三次元地形を表す地形模型と、
前記地形模型上で指定された位置を識別し、識別した位置に対応する地点を入力地点として受け付ける地点入力受付手段と、
前記地点入力受付手段を介して二つの入力地点を受け付け、受け付けた二つの入力地点間の標高の推移を、前記三次元地形を電子的に表す三次元モデルに基づいて算出し表示する標高推移情報表示手段とを有することを特徴とする三次元地理情報提示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−280158(P2007−280158A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107121(P2006−107121)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】