説明

三次元形状計測装置および三次元形状計測方法

【課題】
格子パターンの繰り返しピッチを自在に変更することで多種の被測定対象に対応でき、、また、繰り返しピッチが異なる複数の格子パターンによるコントラストの検出結果を利用して、精度が高い距離検出が可能な三次元形状計測装置および三次元形状計測方法を提供する。
【解決手段】
液晶ストライプ格子の開口を制御して空間上での繰り返しパターンを形成でき、かつ繰り返しパターンの繰り返しピッチを変更できる制御部を備えた液晶装置11と、液晶ストライプ格子を介して被測定対象に前記繰り返しパターンを投影する光源装置12と、被測定対象上に投影された前記繰り返しパターンにかかる画像を取得する撮影装置13と、撮影装置により撮影された画像のコントラスト値を検出し、基準位置から前記被測定対象までの距離を測定する距離測定装置13と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ストライプ格子により形成される繰り返しパターンを被測定対象に投影しこれを撮影して撮影画像のコントラストを検出することで、多種の被測定対象に対応でき、また繰り返しピッチが異なる複数の繰り返しパターンについて上記コントラストを検出することで基準位置から被測定対象までの距離を高精度で計測することができる三次元形状計測装置および三次元形状計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の製造工程において、製品の外観検査のための三次元形状計測を行うことが要求されることがある。三次元形状計測では、電子機器の多様化に伴う多種の部品を計測する必要がある。
この種の技術として、たとえば、特許文献1(特開平11−83454号)に示される技術が知られている。この技術では、液晶により正弦波強度分布を有するストライプ状格子パターンを作成し、この液晶ストライプ格子の背面に配置したランプにより格子パターンを被測定対象に投影する。そして、格子パターンが投影される光軸とは異なる方向から、CCDカメラ等により被測定対象を撮影し、格子パターンの歪みを検出する。特許文献1の技術は光軸を2つ必要とすることからシステムのコストが高くなる。
【0003】
また、特許文献2および特許文献3に参照されるような、格子パターンを被測定対象に投影し、投影レンズの焦点位置からのずれをコントラストで評価する技術(フォーカス法)が知られている。この方法では、通常、コントラストと距離との関係を事前に取得しておき、被測定対象のコントラストとの比較を行い、被測定対象の三次元形状をリアルタイムで取得することができる。また、光学系を一軸で構成できることから安価にシステムを構築することができる。
【0004】
このフォーカス法は、基本的には図9に示すように、投影系91と観察系92と計測系93とから構成されている。投影系91では光源911からの光を格子912を介して被測定対象94に格子パターンとして投影する。この格子パターンは、たとえば空間上に正弦波の強度分布をもつ縞状パターンである。
観察系92では、被測定対象94に投影された格子パターンを撮影する。計測系93では、観察系92において撮影した画像からコントラストを計測して、被測定対象94の基準位置からの距離を、コントラスト−距離テーブル95を参照して検出する。
【特許文献1】特開平11−83454号
【非特許文献1】“Method of obtaining optical sectioning by using structured light in a conventional microscope”(Opt.Lett.,)22(1997)1905
【非特許文献2】“Absolute three−dimensional shape measurements using coaxial and coimage plane optical systems and Fourier fringe analysis for focus detection”(Opt.Eng.,)39(2000)61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォーカス法では、被測定対象94の凹凸形状の状態が変わるとそれにあわせて、格子パターンの繰り返しピッチを変更する必要が生じることがある。図9の装置では、格子パターンの繰り返しピッチを変更するためには、格子912を交換しなくてはならず、交換により再度の光学調整が必要になるという問題がある。
【0006】
また、コントラストは、被測定対象に投影画像の結像点が合致しているときが最も高く、基準位置から外れるにしたがって低下する。低下度合いは、格子パターンの繰り返しピッチが大きくなると緩やかとなり、格子パターンの繰り返しピッチが小さくなると急峻となる。これは、仮に、格子パターンの繰り返しピッチを変化させた場合、コントラストの解像度が異なってしまうことを意味する。
【0007】
本発明の目的は、格子パターンの繰り返しピッチを自在に変更することで多種の被測定対象に対応できる三次元形状計測装置および三次元形状計測方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、繰り返しピッチが異なる複数の格子パターンによるコントラストの検出結果を利用して、精度が高い距離検出が可能な三次元形状計測装置および三次元形状計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の三次元形状計測装置は、(1)から(8)を要旨とする。
(1)液晶ストライプ格子の開口を制御して空間上での繰り返しパターンを形成でき、かつ前記繰り返しパターンの繰り返しピッチを変更できる制御部を備えた液晶装置と、
前記液晶ストライプ格子を介して被測定対象に前記繰り返しパターンを投影する光源装置と、
前記被測定対象上に投影された前記繰り返しパターンにかかる画像を取得する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された画像のコントラスト値を検出し、基準位置から前記被測定対象までの距離を測定する距離測定装置と、
を有することを特徴とする三次元形状計測装置。
【0009】
(2)前記液晶ストライプ格子の繰り返しパターンの開口は、正弦波強度分布で空間遷移していることを特徴とする(1)に記載の三次元形状計測装置。
【0010】
(3)前記距離測定装置は、
前記被測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値を算出し、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする(2)に記載の三次元形状計測装置。
【0011】
(4)前記距離測定装置は、
標準測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値と、前記基準位置から前記被測定対象までの距離との関係が記載されたテーブルを備え、
前記被測定対象についての前記関数の値を前記テーブルで参照することで、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする(3)に記載の三次元形状計測装置。
【0012】
(5)前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする(4)に記載の三次元形状計測装置。
【0013】
(6)前記距離測定装置は、
標準測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とし、出力値が前記基準位置から前記被測定対象までの距離である関数を備え、
前記関数の演算値により、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする(3)に記載の三次元形状計測装置。
【0014】
(7)前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする(6)に記載の三次元形状計測装置。
【0015】
(8)前記光源装置と前記液晶装置との間にコリメートレンズ系を備え、
前記液晶装置と前記被測定対象との間に前記被測定対象の投影光を前記撮像装置に分岐させるビームスプリッタを備え、
前記ビームスプリッタと前記撮像装置との間に被測定対象観察用レンズ系を備えている、
ことを特徴とする(1)から(7)の何れかに記載の三次元形状計測装置。
【0016】
本発明の三次元形状計測方法は、(9)から(15)を要旨とする。
(9)液晶ストライプ格子の開口を制御して空間上での繰り返しパターンを形成する繰り返しパターン形成ステップと、
前記液晶ストライプ格子を介して被測定対象に前記繰り返しパターンを投影光として照射する透過光照射ステップと、
前記繰り返しパターンを透過する前記投影光が照射された前記被測定対象の画像を取得する撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて撮影した画像のコントラスト値を検出し、基準位置から前記被測定対象までの距離を測定する距離測定ステップと、
を含むことを特徴とする三次元形状計測方法。
【0017】
(10)前記液晶ストライプ格子の繰り返しパターンの開口は、正弦波強度分布で空間遷移していることを特徴とする(9)に記載の三次元形状計測方法。
【0018】
(11)前記距離測定ステップでは、
前記被測定対象についての、
前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値を算出し、当該関数の値に基づき前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする(9)または(10)に記載の三次元形状計測方法。
【0019】
(12)前記距離測定ステップでは、
標準測定対象についての、
前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値と、前記基準位置から前記被測定対象までの距離との関係が記載されたテーブルを参照することで、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする(11)に記載の三次元形状計測方法。
【0020】
(13)前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする(12)に記載の三次元形状計測方法。
【0021】
(14)前記距離測定ステップでは、
標準測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とし、出力値が前記基準位置から前記被測定対象までの距離である関数による演算を行い、
前記関数の演算値により、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする(11)に記載の三次元形状計測方法。
【0022】
(15)前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする(14)に記載の三次元形状計測方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、格子パターンの繰り返しピッチを自在に変更することで多種の被測定対象に対応できる三次元形状計測技術を提供することができる。また、本発明によれば、繰り返しピッチが異なる複数の格子パターンによるコントラストの検出結果を利用して、精度が高い距離検出が可能な三次元形状計測技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明では、被測定対象の大きさは、花粉等のミロンオーダの大きさのものから、運送荷物等の数メートルオーダの大きさのものまで測定が可能である。以下の実施形態では、数十mmから数百mm程度の大きさの三次元形状を測定する場合を説明する。
【0025】
図1はフォーカス法を用いた三次元形状計測装置1Aを示す図である。図1において、三次元形状計測装置1Aは、投影系を構成する液晶装置11、光源装置12および投影レンズ13と、観察系を構成する撮影装置14と、計測系を構成する距離測定装置15とを備えている。
【0026】
液晶装置11は、液晶ストライプ格子111と制御部112とからなる。制御部112は、液晶ストライプ格子111の開口を制御して空間上での繰り返しパターンRPを形成でき、かつ繰り返しパターンRPの繰り返しピッチPT1を変更できる。液晶ストライプ格子111は、透明電極自体がストライプ状をなすものであってもよいし、透明電極がマトリクス状に形成されてものであってもよい。液晶プレートに形成されたストライプ状の透明電極に所定の電圧を印加することにより駆動される。
【0027】
本実施形態では、液晶ストライプ格子111には図2に示すように、幅42μmの開口が8μmピッチで形成されている。このときの開口率は84%である。液晶ストライプ格子111は、動作領域が縦48mm、横38mmのものを使用している。
【0028】
また、液晶ストライプ格子111の繰り返しパターンRPの開口は、正弦波強度分布、矩形波強度分布、三角波強度分布で空間遷移するように図示しない透明電極に所定電圧を印加することにより形成できる。本実施形態では、図3(A),(B)に示すように、繰り返しパターンRPを、正弦波強度分布で空間遷移させている。図3(A)は、横軸が液晶ストライプ格子111のセルLCの位置を示し、縦軸が強度Iを示している。また、図3(B)は液晶ストライプ格子111の透過光を視覚的に示している。
【0029】
光源装置12は、ハロゲンランプ等の光源121と、コリメートレンズ122,123,124と備えている。レンズ122は光源121からの光を集光するコンデンサレンズである。レンズ123は、レンズ122により集光された光から赤外波長成分をカットする赤外カット用レンズである。レンズ124は、レンズ123を透過する光を平行光にするための凸レンズである。
レンズ124を通過した光は、液晶ストライプ格子111を介して投影レンズ13に入射され、投影レンズ13から出射される光が、被測定対象2に図3(B)に示した繰り返しパターンPRを投影する。
【0030】
撮影装置14は、ビームスプリッタ141と、レンズ142と、撮像装置(CCDカメラからなる)143とを備え、被測定対象2上に投影された繰り返しパターンRPにかかる画像を取得する。投影レンズ13,液晶ストライプ格子111間の光学距離、レンズ142,液晶ストライプ格子111間の光学距離は、本実施形態では同じに設定してある。
【0031】
距離測定装置15は、コントラスト検出手段151と距離測定手段152とテーブル153を備えている。コントラスト検出手段151は、撮像装置143により撮影された画像のコントラストを位相シフト法,フーリエ変換法等により検出するもので、ソフトウェア(実質上、CPUとROMやRAMに格納されたプログラム)により構成することもできるし、コントラスト検出用のDSPにより構成することもできる。距離測定手段152は、コントラスト検出手段151の検出結果に基づき、基準位置(Zbから被測定対象2までの距離Zを測定する。なお、基準位置Zbは、ビームスプリッタ141の中心からストライプの結像点までの距離である。
【0032】
距離測定手段152も、ソフトウェア(実質上、CPUとROMやRAMに格納されたプログラム)により構成することもできるし、距離測定用のDSP(コントラスト検出用のDSPと一体に構成してもよい)により構成することもできる。
【0033】
図4に、5パターン/1mmでの繰り返しピッチPT1、1パターン/1mmでの繰り返しピッチPT2、2パターン/1mmでの繰り返しピッチPT3について、コントラストと基準位置からの被測定対象までの距離との関係を示す。本実施形態では、図4の負の値を持つ領域が測定領域であり、ゼロ点が基準位置Zbである。したがって、正の値を持つ領域のデータは本実施形態では使用されない(すなわち、テーブル153に記憶されていない)。
【0034】
図4からわかるように、繰り返しパターンRPの繰り返しピッチPTが小さ過ぎると、サイズが大きい非測定対象2の測定が不能となる。そこで、距離測定手段152は、被測定対象2の大きさに応じて、繰り返しパターンRPの繰り返しピッチPTを変更して、最適化を図ることができる。
【0035】
すなわち、図5(A)に示すように、被測定対象2の凹凸部分が大きいときは、繰り返しピッチPTが大きい繰り返しパターンRPを被測定対象2に投影し、被測定対象2の凹凸部分が小さいときは、繰り返しピッチPTが小さい繰り返しパターンRPを被測定対象2に投影する。なお、図5(A)では、前述したように基準位置Zbをゼロ点で示してある。
【0036】
このように、測定の精度を高めるためには、単に繰り返しパターンRPの繰り返しピッチPTを変更するようにしてもよいし次に述べるように、異なる繰り返しピッチPT1,PT2について第1のコントラストC1と第2のコントラスト値C2を取得し、これらを変数とする関数F(C1,C2)の値に基づき、基準位置Zbに対する被測定対象2の位置を測定してもよい。
【0037】
距離測定手段152は、被測定対象2についての、第1のコントラスト値C1と、第2のコントラスト値C2とを変数とする関数F(C1,C2)値に基づき、テーブル153を参照して、基準位置Zbから被測定対象2までの距離Zを測定する。図1では、被測定対象2が、基準位置Zbに位置している場合、基準位置Zbから液晶ストライプ格子111に近い側に位置している場合(図1のZ1参照)、基準位置Zbから液晶ストライプ格子111に遠い側に位置している場合(図1のZ2参照)を示してある。
【0038】
このテーブル153には、関数F(C1,C2)の値に応じた、基準位置Zbから標準測定対象までの距離Zが書き込まれている(標準測定対象についての距離検出は予め行ってある)。
第1のコントラスト値C1は、液晶装置11により形成された繰り返しパターンRPの第1の繰り返しピッチPT1についてコントラスト検出手段151が検出した値である。また、第2のコントラスト値C2は、第1の繰り返しピッチPT1よりも大きい、液晶装置11により形成された繰り返しパターンRPの第2の繰り返しピッチPT2(PT2>PT1)についてコントラスト検出手段151が検出した値である。
【0039】
本実施形態では、第1の繰り返しピッチPT1は5パターン/1mm(高周波パターン)であり、第2の繰り返しピッチPT2は1パターン/1mm(低周波パターン)である(図4参照)。
本実施形態においては、上述したように関数F(C1,C2)の値に対応する、基準位置Zbから標準測定対象までの距離Zがテーブル153に書き込まれている。
なお、F(C1,C2)は、C1−C2とすることができるし、(C1+C2)、あるいは(C1+C2)÷2とすることもできる。さらに、異なる繰り返しピッチPT1,PT2,PT3(PT2>PT3>PT1)についてコントラスト値C1,C2,C2を取得し、たとえば、F(C1,C2,C2)を(C1+C2+C3)÷3あるいは{(C1×C2+C2×C3+C3×C1}÷(C1+C2+C3)とすることもできる。これらの関数Fを採用する場合、それぞれに対応して、テーブル153は個々に用意しておく必要がある。
【0040】
図5(B)に、F(C1,C2)=(C2+C1)÷2としたときの値と、基準位置Zbから被測定対象2までの距離Zを示す。また、図6に、投影レンズ13からの距離Z(横軸)に対するコントラスト(縦軸)の実測値を示す。また、図7に投影レンズ13からの距離Z(横軸)に対する測定値(縦軸)を示す。
【0041】
図8のフローチャートにより、図1に示した三次元計測装置1を用いた本発明の三次元計測方法の実施形態を説明する。
三次元計測方法は、パターン形成ステップS110と、透過光照射ステップS120と、撮影ステップS130と、コントラスト検出ステップS140と、繰り返し処理ステップS150と、距離測定ステップS160とを含む。
【0042】
液晶ストライプ格子111の開口を制御して空間上での繰り返しパターンを形成する。すでに述べたように、液晶ストライプ格子の繰り返しパターンの開口は、正弦波強度分布で空間遷移している。ここでは、まず、繰り返しパターンRPを液晶により形成する(繰り返しパターン形成ステップ:S110)。
【0043】
次に、液晶ストライプ格子111を介して被測定対象2に繰り返しパターンRPを投影光として照射する(透過光照射ステップ:S120)。
次いで、繰り返しパターンRPを透過する投影光が照射された被測定対象2の画像を取得する(撮影ステップ:S130)。
そして、撮影ステップS130において撮影した画像の第1のコントラスト値C1を検出し、所定のメモリに記憶しておく(コントラスト検出ステップ:S140)。
【0044】
繰り返しパターンRPについての処理が終了すると、同様の処理(S110,S120,S130,S140)を繰り返しパターンRPについて行い第2のコンストラスト値C2を求める(繰り返し処理ステップ:S150)。
【0045】
たとえば第1のコンストラスト値C1と、基準位置Zbと被測定対象2との距離Z1との関係が書き込まれたテーブルT1、第2のコンストラスト値C2と基準位置Zbと被測定対象2との距離Zとの関係が書き込まれたテーブルT2を用意しておき、第1のコンストラスト値C1に基づき求めた距離Z1と、第2のコンストラスト値C2に基づき求めた距離Z2との平均値を基準位置Zbと被測定対象2との距離Zとすることができる。
【0046】
被測定対象2についての第1のコントラスト値C1と、第2のコントラスト値C2とを変数とする関数F(C1,C2)の値を算出し、関数F(C1,C2)の値に基づき基準位置Zbから被測定対象2までの距離を測定する(距離測定ステップ:S160)。
【0047】
第1のコントラスト値C1は、繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した値であり、第2のコントラスト値C2は、第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した値である。本実施形態では、第2の繰り返しピッチは第1の繰り返しピッチの5倍としてある。また、距離測定ステップS160では、標準測定対象2についての、第1のコントラスト値C1と、第2のコントラスト値C2とを変数とする関数F(C1,C2)の値と、基準位置Zbから標準測定対象までの距離との関係が記載されたテーブルを参照することで、基準位置Zbから被測定対象2までの距離を測定する。
ここで関数F(C1,C2)の値は、(コントラストの単位)n(n=±1,±2)の次元を持ち、具体的には第2のコントラスト値C2と第1のコントラスト値との平均値(C1+C2)/2である。
【0048】
被測定対象2が、基準位置Zbにあるときは、被測定対象2には鮮明なストライプ画像が投影される。一方、被測定対象2が基準位置Zbにないときは、被測定対象2には投影されるストライプ画像は不鮮明となる。すなわちコントラストが低くなり、いわゆるボケが生じる。
コントラスト値C1,C2自体からは、被測定対象2が、基準位置Zbから液晶ストライプ格子111に近い側に位置しているのか、基準位置Zbから液晶ストライプ格子111に遠い側に位置しているのかを判定することはできない。このため、被測定対象2の凹凸の最も基準位置から液晶ストライプ格子111に遠い側の凹となる部位を基準位置Zbに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の三次元形状計測装置を示す図である。
【図2】図1の三次元形状計測装置に使用される液晶ストライプ格子の構成を示す図である。
【図3】繰り返しパターンを、正弦波強度分布で空間遷移させた場合の説明図であり、(A)は横軸を液晶ストライプ格子のセルとし、縦軸を強度したグラフ、(B)は液晶ストライプ格子の透過光を視覚的に示す図である。
【図4】複数種の繰り返しピッチについてのコントラストと基準位置からの被測定対象までの距離との関係を示すグラフである。
【図5】(A)は被測定対象の凹凸部分が大きいときに繰り返しピッチPTが大きい繰り返しパターンを被測定対象に投影し、被測定対象の凹凸部分が小さいときは、繰り返しピッチが小さい繰り返しパターンを被測定対象に投影する様子を示す図、(B)は、F(C1,C2)=(C2+C1)÷2としたときの値と基準位置から被測定対象までの距離を示す図である。
【図6】関数Fを(C2+C1)÷2としたときのFの値と基準位置から被測定対象までの距離を示す説明図である。
【図7】投影レンズから被測定対象までの距離に対するコントラストの実測結果を示すグラフである。
【図8】図1に示した三次元計測装置を用いた本発明の三次元計測方法を示すフローチャートである。
【図9】従来の三次元計測装置を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 三次元形状計測装置
2 被測定対象
11 液晶装置
12 光源装置
13 投影レンズ
14 撮影装置
15 距離測定装置
111 液晶ストライプ格子
112 制御部
121 光源
122,123,124 コリメートレンズ
141 ビームスプリッタ
142 レンズ
151 コントラスト検出手段
152 距離測定手段
153 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ストライプ格子の開口を制御して空間上での繰り返しパターンを形成でき、かつ前記繰り返しパターンの繰り返しピッチを変更できる制御部を備えた液晶装置と、
前記液晶ストライプ格子を介して被測定対象に前記繰り返しパターンを投影する光源装置と、
前記被測定対象上に投影された前記繰り返しパターンにかかる画像を取得する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された画像のコントラスト値を検出し、基準位置から前記被測定対象までの距離を測定する距離測定装置と、
を有することを特徴とする三次元形状計測装置。
【請求項2】
前記液晶ストライプ格子の繰り返しパターンの開口は、正弦波強度分布で空間遷移していることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項3】
前記距離測定装置は、
前記被測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値を算出し、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の三次元形状計測装置。
【請求項4】
前記距離測定装置は、
標準測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値と、前記基準位置から前記被測定対象までの距離との関係が記載されたテーブルを備え、
前記被測定対象についての前記関数の値を前記テーブルで参照することで、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする請求項3に記載の三次元形状計測装置。
【請求項5】
前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする請求項4に記載の三次元形状計測装置。
【請求項6】
前記距離測定装置は、
標準測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とし、出力値が前記基準位置から前記被測定対象までの距離である関数を備え、
前記関数の演算値により、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする請求項3に記載の三次元形状計測装置。
【請求項7】
前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする請求項6に記載の三次元形状計測装置。
【請求項8】
前記光源装置と前記液晶装置との間にコリメートレンズ系を備え、
前記液晶装置と前記被測定対象との間に前記被測定対象の投影光を前記撮像装置に分岐させるビームスプリッタを備え、
前記ビームスプリッタと前記撮像装置との間に被測定対象観察用レンズ系を備えている、
ことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の三次元形状計測装置。
【請求項9】
液晶ストライプ格子の開口を制御して空間上での繰り返しパターンを形成する繰り返しパターン形成ステップと、
前記液晶ストライプ格子を介して被測定対象に前記繰り返しパターンを投影光として照射する透過光照射ステップと、
前記繰り返しパターンを透過する前記投影光が照射された前記被測定対象の画像を取得する撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて撮影した画像のコントラスト値を検出し、基準位置から前記被測定対象までの距離を測定する距離測定ステップと、
を含むことを特徴とする三次元形状計測方法。
【請求項10】
前記液晶ストライプ格子の繰り返しパターンの開口は、正弦波強度分布で空間遷移していることを特徴とする請求項9に記載の三次元形状計測方法。
【請求項11】
前記距離測定ステップでは、
前記被測定対象についての、
前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値を算出し、当該関数の値に基づき前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする請求項9または10に記載の三次元形状計測方法。
【請求項12】
前記距離測定ステップでは、
標準測定対象についての、
前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とする関数の値と、前記基準位置から前記被測定対象までの距離との関係が記載されたテーブルを参照することで、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする請求項11に記載の三次元形状計測方法。
【請求項13】
前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする請求項12に記載の三次元形状計測方法。
【請求項14】
前記距離測定ステップでは、
標準測定対象についての、
前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第1の繰り返しピッチに基づき検出した第1のコントラスト値と、
第1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第2の繰り返しピッチに基づき検出した第2のコントラスト値と、
・・・
第n−1の繰り返しピッチよりも大きい、前記液晶装置により形成された前記繰り返しパターンの第nの繰り返しピッチに基づき検出した第nのコントラスト値と、
を変数とし、出力値が前記基準位置から前記被測定対象までの距離である関数による演算を行い、
前記関数の演算値により、前記基準位置から前記被測定対象までの距離を測定することを特徴とする請求項11に記載の三次元形状計測方法。
【請求項15】
前記関数の値が(コントラストの単位)n(n=±1,±2)であることを特徴とする請求項14に記載の三次元形状計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−155379(P2007−155379A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347575(P2005−347575)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(505444835)有限会社 フジ・オプトテック (1)
【Fターム(参考)】