説明

三次元計測装置

【課題】構造物の全体形状と亀裂の両方をリアルタイムに計測し、且つ同一画面上に合成して表示することが可能な三次元計測装置を提供する。
【解決手段】CCDカメラ7からの画像信号からレーザ輝線の座標をリアルタイムに演算するレーザ位置検出回路11と、トンネル1にレーザスリット光又はスポット光を照射するレーザ投光器20と、このレーザ投光器20により対象物1の表面に照射された光を撮像する撮像装置30と、所定のエリアに磁界ベクトルを形成するトランスミッタ40と、CCDカメラ7により撮像された画像データをPC12が処理し易いように変換するイメージプロセッサ17と、磁気センサ4、磁気センサ8の信号から三次元位置情報及び姿勢情報を検出するまたレーザ位置検出回路11と、データに基づいて、トンネル1の三次元画像を再生するパーソナルコンピュータ(PC)12を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元計測装置に関し、さらに詳しくは、大型構造物の形状と、その構造物に存在する亀裂の三次元計測をリアルタイムに行なう三次元計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からトンネルや大型下水管等の保守点検作業では、定期的にそれらの構造物を目視により観察して亀裂の有無や状態の現状把握を行なっていた。特に、トンネルなどの亀裂の状態を記録する場合、従来は構造物壁面に直接チョークでマス目を描き、目視により読み取った形状を方眼紙に記入する方法が採られていた。しかし、この方法では、作業員の個人差や測定誤差が大きく、形状も三次元であるために電子化が困難であるといった問題がある。
【0003】
また、現在、商品化されている三次元画像計測装置では、比較的小さな構造物の計測を対象としている装置が多く、大型構造物の形状を計測するためには、多くの時間と労力を要した。即ち、大型構造物を計測する場合は、CCDカメラを移動させながら計測し、計測されたデータを繋ぐ作業が必要であった。
【0004】
また、従来の三次元形状計測装置として特許文献1には、被測定物に対し、上方からこの被測定物を含む計測範囲内を縦横走査しながらレーザ光を照射し、このレーザ光及び上記被測定物上で反射されるレーザ光を外部に送出し、上記計測範囲内に複数の測定点を設定し、かつ、送出された上記被測定物に照射されるレーザ光と上記被測定物上で反射されるレーザ光との位相差を検出して上記複数の測定点各々に対する奥行き情報を求め、上記被測定物の平面形状を撮影するカメラと、このカメラによって撮影された画像情報から上記被測定物の二次元情報を求め、上記二次元情報と形状計算器から出力される上記奥行き情報とを組み合わせて上記被測定物の三次元形状情報を求める三次元形状計測装置について開示されている。
【特許文献1】特開平8−178633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、二次元情報と形状計算器から出力される奥行き情報とを組み合わせて被測定物の三次元形状情報を求めるため、二次元情報と奥行き情報を合成する処理が必要となり、多くの処理時間を要するばかりでなく、画像情報の画質が二次元情報に影響を与えるため、結果的に三次元形状の精度にも影響が及ぼされるといった問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑み、撮像カメラとレーザ投光器に三次元位置と方向を検出できる三次元磁気センサを取り付け、撮像カメラとレーザ投光器をそれぞれ独立して動作させながら被測定対象物全体を計測すると共に、レーザ投光器をスポット光に切り替えて、被測定対象物に存在する亀裂を計測ことにより、形状と亀裂の両方をリアルタイムに計測し、且つ同一画面上に合成して表示することが可能な三次元計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、物体の三次元情報に基づいて前記物体の三次元形状を計測する三次元計測装置において、前記物体に光を照射する投光手段と、該投光手段により前記物体表面に照射された光を撮像する撮像手段と、前記投光手段に備えられ該投光手段の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する第1のセンサと、前記撮像手段に備えられ該撮像手段の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する第2のセンサと、所定のエリアに磁界ベクトルを形成するトランスミッタと、前記物体に照射された光の平面方程式を算出する方程式算出手段と、前記投光手段のビーム形状を切り替えるビーム形状切替手段と、を備え、前記投光手段と撮像手段がそれぞれ独立に動作することにより前記第1のセンサ及び第2のセンサより得られる三次元位置情報及び姿勢情報に基づいて、前記方程式算出手段が前記物体に照射された光の平面方程式を算出する場合と、前記物体全体の平面方程式を算出する場合と、該物体に存在する亀裂の平面方程式を算出する場合とに応じて、前記ビーム形状切替手段により前記ビーム形状を切り替えるように構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明では、投光手段と撮像手段を独立に動作するようにして、それぞれに三次元位置情報及び姿勢情報を生成するセンサを備え、それぞれが独立に動作することにより得られた三次元位置情報及び姿勢情報を基に平面方程式を算出するものである。また、測定対象物に存在する亀裂を計測する場合は、ビーム形状を切り替えるようにして測定するものである。これにより、大型の測定対象物の形状を正確に測定できるばかりでなく、細かい亀裂を正確に測定することができる。
【0009】
請求項2は、前記第1のセンサ及び第2のセンサは、前記トランスミッタにより形成された磁界ベクトルを受信することにより、前記第1のセンサ及び第2のセンサの三次元位置情報及びロール角、ピッチ角、及びヨー角の姿勢情報を取得することを特徴とする。
投光手段と撮像手段の位置情報と姿勢情報を得るには、各種の方法が考えられるが、光の光路を邪魔せず、且つ視界を妨げない方法が必要条件である。その点では磁界による方法が最適である。本発明では半球状の磁界を発生するトランスミッタを備え、その磁界の磁力線に対するベクトルを計算することにより三次元位置情報及び姿勢情報を取得するものである。従って、物体と投光手段及び撮像手段の距離はこの磁界のエリア内に限定される。
【0010】
請求項3は、前記方程式算出手段は、前記第1及び第2のセンサから得られた位置を(xow,yow,zow)、姿勢を(φ,θ,ψ)とした場合、前記各センサのセンサ座標に原点を置いたセンサ座標上の点(xr,yr,zr)は、出力された前記各センサのデータを基に、

ここで

C:Cos、S:Sinとすると、前記センサ座標上で光平面上の任意の3点の座標(xr,yr,zr)を前記式(1)及び(2)により前記トランスミッタを原点としたワールド座標に変換し、前記ワールド座標(xrw,yrw,zrw)に変換することにより、




前記式(3)及び式(4)として光の平面方程式を取得し、前記撮像手段の焦点から受像面までの距離をfと置くと、前記受像面上の座標(u,v)は前記撮像手段の焦点を原点とした座標系において、

となり、Z=λとおき線形化すると、

と表わされ、該式(6)を前記センサ座標で表すために、回転・平行移動を考慮して、

式(7)として表し、(ここでk11〜k33のパラメータには前記撮像手段の位置や姿勢などをはじめとする計測対象と、前記撮像手段の位置を表すデータが全て含まれているものとする)該式(7)が前記センサ座標(x,y,z)と前記受像面上の座標(u,v)の関係式となり、前記式(7)を展開し、整理すると式(8)を得て、

前記式(8)の2平面の交線で表される直線は前記撮像手段の焦点から計測点に向かう直線として

式(9)のレシーバ座標を求め、前記式(1)と同様にワールド座標に変換して前記撮像手段の焦点から計測点に向かう直線である式(10)を求め、

(ここで、(wx,wy,wz)はトランスミッタを原点としたレシーバのワールド座標である)
前記式(10)とレーザ平面上の方程式である前記式(4)を連立させてワールド座標(X,Y,Z)を求めることを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記方程式算出手段は、前記平面方程式をリアルタイムに算出することにより前記投光手段の独立走査を可能としたことを特徴とする。
物体に照射された光の平面方程式は方程式算出手段により計算される。このとき計算の処理速度が遅い場合、一旦投光手段により照射された平面情報を記憶してその後バッチ処理により方程式の計算処理を行う。このように計算処理がリアルタイムに行われないと、投光手段を物体の任意の場所に操作することが不可能となり、撮像手段と独立にした意味がなくなってしまう。そこで本発明では、平面方程式をリアルタイムに計算できるようにするために、第1及び第2のセンサから得られた位置情報と姿勢情報を独立に取得することにより、演算速度高めることを可能とした。
【0012】
請求項5は、前記ビーム形状切替手段は、前記物体全体の平面方程式を算出する場合は、該ビーム形状をスリット光に切り替え、前記物体に存在する亀裂の平面方程式を算出する場合は、前記ビーム形状をスポット光に切り替えることを特徴とする。
物体全面の平面方程式を算出する場合は、投光手段のビーム形状をスリット状にして走査することにより、大型構造物の表面の情報を正確に且つ迅速に得ることができる。一方、亀裂のような細い複雑な形状を測定するには、投光手段のビーム形状をスポット状にしてその亀裂に沿って走査することが好ましい。
【0013】
請求項6は、前記投光手段の光源はレーザ光若しくはLEDであることを特徴とする。
光は光源から照射されてから物体に到達するまでできるだけ拡散しないことが好ましい。その点でレーザ光は優れている。しかし、光源と物体との距離が至近の場合は、光の拡散は少ないのでLEDの光でも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、物体に光を照射する投光手段と、この投光手段により物体表面に照射された光を撮像する撮像手段と、投光手段に備えられこの投光手段の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する第1のセンサと、撮像手段に備えられこの撮像手段の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する第2のセンサと、所定のエリアに磁界ベクトルを形成するトランスミッタと、物体に照射された光の平面方程式を算出する方程式算出手段と、投光手段のビーム形状を切り替えるビーム形状切替手段と、を備え、投光手段と撮像手段がそれぞれ独立に動作することにより第1のセンサ及び第2のセンサより得られる三次元位置情報及び姿勢情報に基づいて、方程式算出手段が物体に照射された光の平面方程式を算出する場合、物体全体の平面方程式を算出する場合と、物体に存在する亀裂の平面方程式を算出する場合とで、ビーム形状切替手段によりビーム形状を切り替えるようにしたので、測定対象物に存在する亀裂を精度良く計測することができ、且つ測定対象物内に亀裂の画像を自動的に合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る三次元計測装置を使用して対象物を計測している斜視図である。この三次元計測装置100は、対象物1にレーザスリット光またはレーザスポット光を照射するレーザ投光器(投光手段)20と、このレーザ投光器20により対象物1の表面に照射された光を撮像する撮像装置(撮像手段)30と、所定のエリアに磁界ベクトルを形成するトランスミッタ40と、図示しないパーソナルコンピュータ(PC)を備えて構成される。そして、レーザ投光器20はT字型の架台2と、スリット状のレーザ光またはレーザスポット光を出射するレーザ光源3と、レーザ投光器20の位置情報と姿勢情報を生成する磁気センサ4と、レーザ投光器20のビーム形状を切り替えるビーム形状切替器(ビーム形状切替手段)44と、を備えて構成され、レーザ光源3への電源と磁気センサ4の情報はケーブル5によりPCに伝えられる。また、撮像装置30はT字型の架台6と、対象物1に照射されたレーザ光を撮像するCCDカメラ7と、撮像装置30の位置情報と姿勢情報を生成する磁気センサ8とを備えて構成され、CCDカメラ7の信号と磁気センサ8の情報はケーブル9によりPCに伝えられる。尚、架台2、6は磁界の影響を磁気センサに与えないために、木製、プラスチック、ゴム等の材質により形成される。また、光源としてレーザ光を使用したが、LED或いは他の可視光を使用しても構わない。また、本実施形態ではレーザ投光器20と撮像装置30の位置情報と姿勢情報を生成する手段として、トランスミッタ40からの磁界ベクトルを受信するために磁気センサを使用したが、他の手段により生成しても構わない。ここで、投光手段は主としてレーザ投光器20により構成され、撮像手段は主として撮像装置30により構成され、第1のセンサは主として磁気センサ4により構成され、第2のセンサは主として磁気センサ8により構成され、方程式算出手段は主としてPCにより構成される。
【0017】
次に本実施形態の三次元計測装置100の概略動作について説明する。尚、対象物としてトンネルを例にして説明する。まず、トランスミッタ40をトンネル1の近傍に配置し、電源を投入してトランスミッタ40の磁界をレーザ投光器20及び撮像装置30が検出できるようにトンネル1との位置関係を設定する。これは図示しないPCの画面を見ながら調整を行う。次に、ビーム形状切替器44をスリット光側に切り替える。そしてレーザ投光器20と撮像装置30を手に持ち、PCの画面を見ながらCCDカメラ7がトンネル1の全体画像を捉えられるように配置する。そしてレーザ光源3の電源を投入して、スリット光がトンネル1の走査開始位置に来るようにしてPCに格納されたプログラムを開始する。そして、レーザ投光器20をトンネル1の走査開始位置から順次移動し、トンネル1の全体の走査が完了するまで行う。これらの走査の過程でCCDカメラ7から読み込まれたスリット光の平面方程式がリアルタイムに計算される。また、走査の過程でレーザ投光器20及び撮像装置30を移動しても、磁気センサ4、磁気センサ8から位置情報とロール角、ピッチ角、ヨー角の姿勢情報がPCに取り込まれリアルタイムに処理されてトンネル1の平面方程式に反映される。次にビーム形状切替器44をスポット光側に切り替え、そのスポット光を亀裂45に沿って走査する。
そしてトンネル1と亀裂45の走査が完了するとPCに取り込まれたデータに基づいて、トンネル1と亀裂45の三次元画像を再生する。この三次元画像はあらゆる角度からのデータにより構成されているので、対象物を回転して任意の角度から観察することも可能となる。
【0018】
図2は図1の斜視図に基づいて本実施形態の三次元計測装置100の全体構成を表す模式図である。同じ構成要素には同じ参照番号が付されているので、重複する説明は省略する。ここで、CCDカメラ7の信号はケーブル9によりイメージプロセッサ17に接続され、磁気センサ8の信号はケーブル9によりレーザ位置検出回路11に接続され、磁気センサ4はケーブル5によりレーザ位置検出回路11に接続され、トランスミッタ40はケーブル41によりレーザ位置検出回路11に接続されている。またレーザ位置検出回路11の出力及びイメージプロセッサ17の出力信号はPC12に入力され、PC12を制御するプログラムはROM(Read Only Memory)13に格納されている。またPC12からは処理された三次元画像を表示するモニタ18が接続されている。尚、イメージプロセッサ17はCCDカメラ7により撮像された画像データをPC12が処理し易いように変換する機能があり、CCDカメラ7からの画像信号からレーザ輝線の座標をリアルタイムに演算するために回路をFPGA(Field Programmable Gate Array)により構成している。またレーザ位置検出回路11は磁気センサ4、磁気センサ8の信号から三次元位置情報及び姿勢情報を検出回路である。
また説明の都合上CCDカメラ7の光軸15とレーザ光源3の光軸16のなす角度をαとすると、トンネル1の表面形状は滑らかであるので、角度αを大きくして一度に広い範囲の情報を取得して処理するものである。
【0019】
図3は本発明の磁気センサ4、磁気センサ8が位置情報と姿勢情報を生成する原理を説明する図である。図3(a)は磁界ベクトルと各磁気センサの位置関係を表す図であり、トランスミッタ40から放射された磁界ベクトル42が半球状に形成され、その磁界ベクトル42上に例えば磁気センサ4、磁気センサ8が存在し、対象物46が磁界ベクトル42の内側に含まれるものとする。図3(b)は磁界ベクトルを説明する模式図である。例えば磁気センサ4ではトランスミッタ40の位置における磁界の強さおよび方向をAとし、磁界の強さおよび方向AのX軸方向磁界の強さ、Y軸方向磁界の強さ、Z軸方向磁界の強さをそれぞれAx、Ay、Azとし、cosα、cosβ、cosγを磁界の強さおよび方向Aの方向余波とすれば、Ax=Acosα、Ay=Acosβ、Az=Acosγであり、磁気センサ4のX軸方向の磁界検出コイルからはAxの出力が、Y軸方向の磁界検出コイルからはAyの出力が、Z軸方向の磁界検出コイルからはAzの出力が送出される。そして磁界の強さおよび方向Aは、A=(Ax2+Ay2+Az21/2で与えられる。同じく磁気センサ8の磁界の強さおよび方向Bは、B=(Bx2+By2+Bz21/2で与えられる。
【0020】
次にレーザ平面方程式の算出方法について説明する。
図4は各座標系の位置関係を表す図である。カメラ座標(画像モニタ上の座標u,v)50、CCDカメラ7に取り付けられた磁気センサ8のレシーバ座標51、レーザ光源3に取り付けられた磁気センサ4のレシーバ座標54、トランスミッタ40の中心を基準とした実座標であるワールド座標53をそれぞれ設定する。レーザ平面52の位置や傾きを自由に設定することを可能にするために、レーザ光源3に取り付けられた磁気センサ4が検知した情報(投光器20の位置と姿勢)を用いて、随時、レーザ平面52の方程式を算出することを行う。また、図7のように受像面55上にある計測点の位置Pとカメラの焦点Fを結ぶ直線lが磁気センサ8が検知した情報、(撮像装置30の位置と姿勢)を基に決定される。また、直線lとレーザ平面52の方程式の交点を求めることで、計測点のワールド座標53(X,Y,Z)を算出する。
【0021】
図5はレシーバ座標とレーザ平面の関係を表す図である。
即ち、レーザ投光器20と撮像装置30取り付けられた磁気センサ4、8を用いてレーザ平面方程式をリアルタイムに算出することでレーザスリット平面の独立走査が可能となる。三次元磁気センサからはセンサ自体の位置(xow,yow,zow)と姿勢(φ,θ,ψ)のデータが得られる。三次元磁気センサのレシーバ座標に原点を置いたレシーバ座標上の点(xr,yr,zr)は、出力された三次元磁気センサのデータを基に(1)式によって、トランスミッタ40を原点としたワールド座標に変換される。

【0022】
ここで

C:Cos、S:Sinとする。
【0023】
レシーバ座標上でレーザ平面52上の任意の3点の座標(xrw,yrw,zrw)を式(1)に代入し、ワールド座標に変換することでレーザ平面52の方程式を得ることができる。つまり、



が得られるレーザ平面52の方程式である。
【0024】
図6はカメラ座標とレシーバ座標の関係を示す図である。また、図7に二次元化したカメラ焦点と受像面及び計測点の関係を示す。カメラの焦点20から受像面までの距離をfと置くと、受像面上の座標(カメラ座標50)はカメラの焦点20を原点とした座標系において、

となる。
z=λとおき、線形化すると、

と表される。
【0025】
ここで、式(6)を三次元磁気センサのレシーバを原点とした座標系(レシーバ座標54)で表すために、回転・平行移動を考慮して、以下のような行列で表すことができる。

ここでk11〜k33のパラメータにはCCDカメラ7の位置や姿勢などをはじめとする計測対象と、CCDカメラ7の位置を表すデータが全て含まれている。従って、式(7)がレシーバ座標(x,y,z)54とカメラ位置(u,v)の関係式になる。
【0026】
式(7)を展開し、整理すると次式のように表せる。

尚、11個の未知数k11〜k33は、既知のワールド座標の基凖点(x,y,z)と、それに対応するカメラ座標21の点(u,v)の組み合わせを式(8)に代入し、連立方程式を解くことで求めることができる。
【0027】
また式(8)の2平面の交線で表される直線はカメラの焦点から計測点に向かう直線で以下のような媒介変数で表せる。

【0028】
式(9)はレシーバ座標54であるので、式(1)と同様にワールド座標53に変換する。

ここで、(wx,wy,wz)はトランスミッタ40を原点とした磁気センサ8のワールド座標である。
カメラの焦点から計測点に向かう直線である式(10)とレーザ平面上の方程式である式(4)を連立させ計測点21のワールド座標(X,Y,Z)を求めることができる。
【0029】
図8はキャリブレーションの構成を示す図である。50mmおきに目盛りが書かれたキャリブレーションボード70、71をレシーバ72のXY平面と平行になるように設置し撮影する。そして、画面上での座標(u,v)をクリックし読み取る。また、対応するキャリブレーションボード上の座標(x,y,z)も読み取る。同じz軸方向距離で4点の座標を読み取り、それをz軸方向に50mm移動しながら複数回(6回以上)繰り返す。
式(8)に画面上での座標(u,v)と対応するキャリブレーションボード上の座標(x,y,z)の組み合わせを代入し、以下の連立方程式を組み立てる。

【0030】
ここで

【0031】


【0032】


【0033】
そこで11個の係数

は擬似逆行列

を用いて算出する。

この行列式を解き係数

が求まると、カメラ座標とレシーバ座標の関係式(7)が決定される。
【0034】
図9は本発明の本実施形態の三次元計測装置の動作を説明するフローチャートである。尚、対象物としてトンネルを例にして説明する。まず、トランスミッタ40をトンネル1の近傍に配置し(S1)、電源を投入してトランスミッタ40の磁界をレーザ投光器20及び撮像装置30が検出できるようにトンネル1との位置関係を設定する(S2)。これはPC12の画面を見ながら調整を行う。次に、ビーム形状切替器44をスリット光側に切り替える(S3)。そしてレーザ投光器20と撮像装置30を手に持ち、PC12の画面を見ながらCCDカメラ7がトンネル1の全体画像を捉えられるように配置する(S4)。そしてレーザ光源3の電源を投入して、スリット光がトンネル1の走査開始位置に来るようにしてPC12に格納されたプログラムを開始する(S5)。そして、レーザ投光器20をトンネル1の走査開始位置から順次移動する(S6)。これらの走査の過程でCCDカメラ7から読み込まれたスリット光の平面方程式がリアルタイムに計算される(S7)。そしてこの動作がトンネル1の全体の走査が完了するまで行う(S8)。また、走査の過程でレーザ投光器20及び撮像装置30を移動しても、磁気センサ4、磁気センサ8から位置情報とロール角、ピッチ角、ヨー角の姿勢情報がPCに取り込まれリアルタイムに処理されてトンネル1の平面方程式に反映される。
【0035】
次にビーム形状切替器44をスポット光側に切り替え(S9)、そしてレーザ投光器20と撮像装置30を手に持ち、PC12の画面を見ながらCCDカメラ7が亀裂45の画像を捉えられるように配置する(S10)。そしてスポット光を亀裂45の走査開始位置に来るようにセットする(S11)。そして、レーザ投光器20を亀裂45に沿って順次移動する(S12)。これらの走査の過程でCCDカメラ7から読み込まれたスポット光の平面方程式がリアルタイムに計算される(S13)。そしてこの動作が亀裂45の全体の走査が完了するまで行う(S14)。走査が完了するとトンネル1と亀裂45の三次元形状が計算されてモニタ18上に三次元画像として再生される(S15)。
【0036】
以上の通り本発明によれば、物体に光を照射するレーザ投光器20と、このレーザ投光器20により物体表面に照射された光を撮像する撮像装置30と、レーザ投光器20に備えられこのレーザ投光器20の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する磁気センサ4と、撮像装置30に備えられこの撮像装置30の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する磁気センサ8と、所定のエリアに磁界ベクトルを形成するトランスミッタ40と、物体に照射された光の平面方程式を算出する方程式算出手段と、レーザ投光器20のビーム形状を切り替えるビーム形状切替手段44と、を備え、レーザ投光器20と撮像装置30がそれぞれ独立に動作することにより磁気センサ4及び磁気センサ8より得られる三次元位置情報及び姿勢情報に基づいて、方程式算出手段が物体に照射された光の平面方程式を算出する場合、物体全体の平面方程式を算出する場合と、物体に存在する亀裂の平面方程式を算出する場合とで、ビーム形状切替手段44によりビーム形状を切り替えるようにしたので、トンネル1に存在する亀裂45を精度良く計測することができ、且つトンネル1内に亀裂45の画像を自動的に合成することができる。
【0037】
また、撮像装置30の焦点から計測点に向かう直線である式(10)とレーザ平面上の方程式である式(4)を連立させ、計測点のワールド座標(X,Y,Z)を求めるので、座標変換の考え方を取り入れて平面方程式をリアルタイムに計算できるようにし、処理速度の高速化を図りレーザ投光器20の独立走査を行うことができる。
また、磁気センサ4と8から得られた位置情報と姿勢情報を基に、光の平面方程式をリアルタイムに算出することが可能となり、レーザ投光器20の独立走査を行うことができる。
【0038】
また、レーザ投光器20の光源はレーザ光若しくはLEDを使用するので、光源と物体との距離及び装置のコストとのバランスにより何れかの光源を任意に選択することができる。
また、所定のエリアに磁界ベクトルを形成するトランスミッタ40を備えたので、各センサが磁界ベクトルを計算することにより、位置情報及び姿勢情報を正確に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る三次元計測装置を使用して対象物を計測している斜視図である。
【図2】本発明の図1の斜視図に基づいて本実施形態の三次元計測装置の全体構成を表す模式図である。
【図3】本発明のレシーバが位置情報と姿勢情報を生成する原理を説明する図である。
【図4】各座標系の位置関係を表す図である。
【図5】レシーバ座標とレーザ平面の関係を表す図である。
【図6】カメラ座標とレシーバ座標の関係を示す図である。
【図7】二次元化したカメラ焦点と受像面及び計測点の関係を示す図である。
【図8】キャリブレーションの構成を示す図である。
【図9】本発明の本実施形態の三次元計測装置の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 トンネル、2、6 架台、3 レーザ光源、4、8 磁気センサ、7 CCDカメラ、11 レーザ位置検出回路、12 PC、13 ROM、17 イメージプロッセサ、18 モニタ、20 レーザ投光器、30 撮像装置、40 トランスミッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の三次元情報に基づいて前記物体の三次元形状を計測する三次元計測装置において、
前記物体に光を照射する投光手段と、該投光手段により前記物体表面に照射された光を撮像する撮像手段と、前記投光手段に備えられ該投光手段の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する第1のセンサと、前記撮像手段に備えられ該撮像手段の三次元位置情報及び姿勢情報を生成する第2のセンサと、所定のエリアに磁界ベクトルを形成するトランスミッタと、前記物体に照射された光の平面方程式を算出する方程式算出手段と、前記投光手段のビーム形状を切り替えるビーム形状切替手段と、を備え、
前記投光手段と撮像手段がそれぞれ独立に動作することにより前記第1のセンサ及び第2のセンサより得られる三次元位置情報及び姿勢情報に基づいて、前記方程式算出手段が前記物体に照射された光の平面方程式を算出する場合と、前記物体全体の平面方程式を算出する場合と、該物体に存在する亀裂の平面方程式を算出する場合とに応じて、前記ビーム形状切替手段により前記ビーム形状を切り替えるように構成したことを特徴とする三次元計測装置。
【請求項2】
前記第1のセンサ及び第2のセンサは、前記トランスミッタにより形成された磁界ベクトルを受信することにより、前記第1のセンサ及び第2のセンサの三次元位置情報及びロール角、ピッチ角、及びヨー角の姿勢情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の三次元計測装置。
【請求項3】
前記方程式算出手段は、前記第1及び第2のセンサから得られた位置のデータを(xow,yow,zow)、姿勢のデータを(φ,θ,ψ)とした場合、前記各センサのセンサ座標に原点を置いたセンサ座標上の点(xr,yr,zr)は、出力された前記各センサのデータを基に、

ここで

C:Cos、S:Sinとすると、
前記センサ座標上で光平面上の任意の3点の座標(xr,yr,zr)を前記式(1)及び(2)により前記トランスミッタを原点としたワールド座標に変換し、前記ワールド座標(xrw,yrw,zrw)に変換することにより、



前記式(3)及び式(4)として光の平面方程式を取得し、前記撮像手段の焦点から受像面までの距離をfと置くと、前記受像面上の座標(u,v)は前記撮像手段の焦点を原点とした座標系において、

となり、Z=λとおき線形化すると、

と表わされ、該式(6)を前記センサ座標で表すために、回転・平行移動を考慮して、

式(7)として表し、(ここでk11〜k33のパラメータには前記撮像手段の位置や姿勢などをはじめとする計測対象と、前記撮像手段の位置を表すデータが全て含まれているものとする)該式(7)が前記センサ座標(x,y,z)と前記受像面上の座標(u,v)の関係式となり、前記式(7)を展開し、整理すると式(8)を得て、

前記式(8)の2平面の交線で表される直線は前記撮像手段の焦点から計測点に向かう直線として

式(9)のレシーバ座標を求め、前記式(1)と同様にワールド座標に変換して前記撮像手段の焦点から計測点に向かう直線である式(10)を求め、

(ここで、(wx,wy,wz)はトランスミッタを原点としたレシーバのワールド座標である)
前記式(10)とレーザ平面上の方程式である前記式(4)を連立させてワールド座標(X,Y,Z)を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元計測装置。
【請求項4】
前記方程式算出手段は、前記平面方程式をリアルタイムに算出することにより前記投光手段の独立走査を可能としたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の三次元計測装置。
【請求項5】
前記ビーム形状切替手段は、前記物体全体の平面方程式を算出する場合は、該ビーム形状をスリット光に切り替え、前記物体に存在する亀裂の平面方程式を算出する場合は、前記ビーム形状をスポット光に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の三次元計測装置。
【請求項6】
前記投光手段の光源はレーザ光若しくはLEDであることを特徴とする請求項1又は5に記載の三次元計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−14882(P2008−14882A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188705(P2006−188705)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】