不安障害の治療のための方法および組成物
本発明はNa+−K+−2Cl−(NKCC)共輸送体の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することにおいて有効である薬剤を投与することにより、神経障害性の疼痛及び神経精神学的な障害を治療するための方法及び組成物に関する。特定の実施形態においては、Na+−K+−2Cl−共輸送体はNKCC1である。本発明の組成物及び方法はニューロン興奮性を抑制することないため神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療の為に現在使用されている薬剤にしばしば伴っている望ましくない副作用を回避しつつ、神経障害性疼痛に関わるニューロン過剰同期及び/又は神経精神障害を低減するために使用し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、米国特許出願番号第11/251,724号(2005年10月17日出願);米国特許出願番号第11/130,945号(2005年5月17日出願);および米国特許出願番号第11/101,000号(2005年4月7日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は非シナプス機序を用いる中枢及び末梢神経系の選択された状態を治療するための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明はナトリウム−カリウム−クロリド共輸送体の発現及び/又は活性をモジュレートする薬剤を投与することにより神経精神学的障害を治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
神経障害性疼痛及び侵害受容性疼痛はその病因、病理生理学、診断及び治療において異なる。侵害受容性疼痛は末梢感覚ニューロンの特定のサブセット、即ち侵害受容器の活性化に応答して生じる。それは一般的に急性(関節痛を除く)で自己限定性であり、そして進行中の組織の損傷の警告として作用することにより保護的な生物学的機能を果たしている。それは典型的には明確に局在化し、頻繁には疼き又は脈動痛の性質を有する場合が多い。侵害受容性疼痛の例は術後痛、捻挫、骨折、熱傷、打撲、炎症(感染症又は関節障害由来)、閉塞及び筋膜痛を包含する。侵害受容性疼痛は通常はオピオイド及び非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)により治療することができる。
【0004】
神経障害性疼痛は慢性の非悪性の疼痛に共通の型であり、これは末梢又は中枢神経系における傷害又は機能不全の結果であり、そして保護的な生物学的機能は果たさない。これは合衆国人口のうち1.6百万人超が罹患していると推定されている。神経障害性疼痛は多くの異なる病因を有し、そして例えば外傷、糖尿病、ヘルペス・ゾスター(帯状疱疹)感染、HIV/AIDS末梢神経障害、末期癌、切断(乳房切除を包含する)、手根管症候群、慢性アルコール摂取、放射線への曝露及び特定の抗HIV及び化学療法剤のような神経毒性治療薬の意図しない副作用により生じる場合がある。
【0005】
侵害受容正当痛とは対照的に、神経障害正当痛は「焼けるような」、「電気的な」、「ちくちくする」又は「刺すような」などと表現される場合が多い。これは慢性の異痛(軽い接触のような通常は痛みの応答を誘発しない刺激から生じる疼痛として定義される)及び痛覚過敏(通常は痛みの刺激に対する増大した感受性として定義される)を特徴とする場合が多く、そして如何なる損傷組織も見かけ上治癒した後にも数ヶ月又は数年間持続する場合がある。
【0006】
神経障害性疼痛は治療が困難である。正常な疼痛に有効な鎮痛剤(例えばオピオイド麻薬及び非ステロイド抗炎症剤)が神経障害性疼痛に有効であることは稀である。同様に、神経障害性疼痛において活性を有する薬剤は通常は侵害受容性疼痛には有効ではない。神経障害性疼痛を治療するために使用されていた標準的な薬剤は、ある患者において特定の症状の緩和に選択的に作用するが他の症状には作用しない場合が多い(例えば異痛は緩和されるが痛覚過敏は緩和されない)。この理由のため、治療を良好に行うためには複数の異なる薬剤の組合せ及び個別対応の治療法が必要となる場合がある(例えばBennett,Hosp.Pract.(Off Ed).33:95−98,1998参照)。神経障害性疼痛の管理において典型的に使用される治療薬は3環抗欝剤(例えばアミトリプチリン、イミプラミン、デシミプラミン及びクロミプラミン)、全身局所麻酔薬及び抗痙攣剤(例えばフェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸、クロナゼパム及びガバペンチン)を包含する。
【0007】
癲癇及び他の発作性障害の治療のために当初開発された多くの抗痙攣剤は非癲癇状態、例えば神経障害性疼痛、気分障害(例えば双極性情動障害)及び分裂病の治療において用途を有している(非癲癇状態の治療における抗癲癇剤の使用の考察に関してはRogawski and Loscher,Nat.Medicine,10:685−692,2004を参照できる)。即ち、癲癇、神経障害性疼痛及び情動障害は共通の病理生理学的機序(Rogawski & Loscher,前出;Ruscheweyh & Sandkuhler,Pain 105:327−338,2003)、即ちニューロン興奮性の病理学的増大とそれに伴った相当する不適切に高い頻度の自発的ニューロン発火を有している。しかしながら、全てではなく一部のみの抗癲癇剤が神経障害性疼痛の治療に有効であり、そして更に又、そのような抗癲癇剤は神経障害性疼痛を有する患者の特定のサブセットにおいて有効であるのみである(McCleane,Expert.Opin.Pharmacother.5:1299−1312,2004)。
【0008】
癲癇は大脳ニューロンの異常な放電を特徴とし、そして典型的には種々の型の発作として顕在化する。癲癇様の活性は電気生理学的手法を用いて測定できるニューロン集団の自発的に生じる同期した放電により発見される。非癲癇様の活性から癲癇様のものを識別するこの同期した活性は「過剰同期」と称されるが、その理由はこれが、個々のニューロンが相互にタイムロックされた態様で放電する可能性が増大する状態を説明するためである。過剰同期活性は典型的には興奮性シナプス電流を増大させるか抑制性のほうを低減するかによって癲癇の実験モデルにおいては誘導され、そしてこのため、過剰興奮自体が癲癇様活性の発生及び維持に関与する決定的特徴であると推定されていた。同様に、神経障害性疼痛は通常の感受性の状態から過敏性のものへの疼痛の伝達に関与するニューロンの変換を含んでいると考えられていた(Costigan & Woolf,Jnl.Pain 1:35−44,2000)。即ち癲癇と神経障害性疼痛の両方のための治療法の開発における着目点は(a)活動電位の発生を抑制するか;(b)抑制性シナプス伝達を増大させるか;又は(c)興奮性シナプス伝達を減少させることのいずれかによりニューロン過剰興奮性を抑制することであった。しかしながら、過剰同期癲癇様活性は過剰興奮性とは解離され、そしてカチオンクロリド共輸送阻害剤のフロセミドは過剰興奮したシナプス応答を低減することなく同期放電を可逆的にブロックすることが判っている(Hochman et al.Science 270:99−102,1995)。
【0009】
ナトリウムチャンネル遺伝子の異常な発現(Waxman,Pain 6:S133−140,1999;Waxman et al.Proc.Natl.Acad.Sci USA 96:7635−7639,1999)及びペースメーカーチャンネル(Chaplan et al.J.Neurosci.23:1169−1178,2003)の両方が神経障害性疼痛において分子レベルで役割を果たしている。
【0010】
神経精神学的障害、例えば不安障害は一般的にカウンセリング及び/又は薬剤で治療される。そのような障害の治療において現在使用されている薬剤の大部分は顕著な負の副作用、例えば依存性誘導傾向を有している。
【0011】
カチオンクロリド共輸送体(CCC)は細胞から細胞への連絡及びニューロンの発達、形成性及び外傷の種々の側面に影響すると考えられているニューロンクロリド濃度の重要な調節物質である。CCC遺伝子ファミリーは3つの大きなグループ、即ちNa+−Cl−共輸送体(NCC)、K+−Cl−共輸送体(KCC)及びNa+−K+−2Cl−共輸送体(NKCC)よりなる。2つのNKCCアイソフォームが発見されており、NKCC1は広範な種類の分泌上皮及び非上皮細胞中に存在し、NKCC2は主に腎臓で発現される。NKCC1の構造、機能及び調節に関する考察については、Haas and Forbush,Annu.Rev.Physiol.62:515−534,2000を参照できる。Randall等はNKCC1a及びNKCC1bと称されるNKCC1をコードするSlc12a2遺伝子の2つのスプライス変異体を発見している(Am.J.Physiol.273(Cell Physiol.42):C1267−1277,1997)。NKCC1a遺伝子は27エクソンを有するが、スプライス変異体のNKCC1bはエクソン21を欠失している。NKCC1bスプライス変異体は主に脳で発現される。NKCC1bはBKCC1aよりも10%超高活性であると考えられているが、それは脳内ではNKCC1aよりも遥かに少量で比例的に存在している。NKCC1転写産物の示差的スプライシングがヒト組織において調節的役割を果たしていると示唆されている(Vibat et al.Anal.Biochem.298:218−230,2001)。全ての細胞及び組織におけるNa−K−Cl共輸送はループ利尿剤、例えばフロセミド、ブメタニド及びベンズメタニドにより抑制される。
【0012】
Na−K−2Cl共輸送体ノックアウトマウスは減損した侵害受容表現型並びに異常な歩行及び運動性を有することがわかっている(非特許文献1)。Delpire及びMountはNKCC1が疼痛知覚に関与していることを示唆している(非特許文献2)。Laird等は最近、野生型及びヘテロ接合マウスと比較した場合のNKCC1ノックアウトマウスにおける低減した愛撫時痛覚過敏を示す試験を報告している(非特許文献3)。しかしながらこの急性疼痛モデルにおいては中断的痛覚過敏に置ける差はマウス3群の間で観察されていない。Morales−Aza等は関節炎においてNKCC1及びK−Cl共輸送体KCC2の改変された発現が脊髄の興奮性の制御に寄与し、そしてこれにより炎症性疼痛の治療のための治療上の標的となることを示唆している(非特許文献4)。Granados−Soto等はNKCC阻害剤ブメタニド、フロセミド又はピレタニドの投与によりホルマリン誘導侵害受容が低減したラット試験を報告している(非特許文献5)。ホルマリン誘導急性疼痛モデルは広範に使用されているが、慢性の疼痛状態には関連性を殆ど有さないと考えられている(非特許文献6)。フロセミドと共にNMDA受容体アンタゴニスト、非NMDA受容体及びCa2+チャンネルアンタゴニストを用いるエピソード性のアルコール曝露により誘導された脳の損傷の同時治療は、脳の水和及び電解質の上昇を防止しつつ、アルコール依存性の大脳皮質損傷を75〜85%低減することがわかっている(非特許文献7)。著者によれば、結果は、フロセミド及び関連の薬剤がアルコール乱用における神経保護剤として有用である可能性があることを示唆している。Willis等はネドクロミルナトリウム、フロセミド及びブメタニドが感覚神経の活性化を抑制することによりインビボのヒト皮膚におけるヒスタミン誘導の掻痒と発赤の応答を低減することを示す試験を報告している。Espinosa等及びAhmad等は以前にフロセミドが特定の型の癲癇の治療において有用であることを示唆している(非特許文献8;及び非特許文献9)。
【0013】
癲癇の場合と同様、神経障害性疼痛における薬理学的介入の焦点はニューロン過剰興奮を低減することであった。神経障害性疼痛を治療するために現在使用されている薬剤の大部分は例えば興奮性神経伝達物質の放出又は活性をモジュレートすること、抑制経路を強化すること、インパルス発生に関与するイオンチャンネルをブロックすること、及び/又は、膜安定化剤として機能することにより、興奮経路におけるシナプス活性をターゲティングしている。即ち、神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療のための従来の薬剤及び治療方法はニューロンの興奮性を低減し、そしてシナプス発火を抑制する。これ等の治療薬の1つの重大な難点はそれらが非選択性であり、そして正常及び異常ニューロン集団の両方に対してその作用を示すことである。これは意図しない負の副作用をもたらし、これは正常なCNS機能、例えば認知、学習及び記憶に対して影響する場合があり、そして、治療されている患者において有害な生理学的及び心理学的作用をもたらす。共通する副作用は過剰沈静化、眠気、記憶の損失及び肝臓の損傷を包含する。従って、末梢及び中枢神経系が正常に機能するために必要なニューロン興奮性及び自発的同期を減損することなく、過剰同期ニューロン活性を途絶させるニューロン障害治療のための方法及び組成物がなお必要とされている。
【非特許文献1】Sung et al.Jnl.Neurosci.20:7531−7538,2000
【非特許文献2】Ann.Rev.Physiol.64:803−843,2002
【非特許文献3】Neurosci.Letts.361:200−203,2004
【非特許文献4】Neurobiol.Dis.17:62−69,2004
【非特許文献5】Pain 114:231−238,2005
【非特許文献6】Walker et al.Mol.Med.Today 5:319−321,1999
【非特許文献7】Collins et al,FASEB J.,12:221−230,1998
【非特許文献8】Medicina Espanola 61:280−281,1969
【非特許文献9】Brit.J.Clin.Pharmacol.3:621−625,1976
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明の治療用組成物及び方法は神経障害性疼痛及び神経精神障害を含む状態、例えばニューロン過剰同期を特徴とする、双極性障害、不安障害(例えばパニック障害、社会不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、全般性不安障害及び特定の恐怖症(American Psychiatric Association,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第4版、2000年改定))、抑鬱症及び分裂病を治療するために有用である。本発明の組成物及び方法はニューロン興奮性を抑制することないため神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療の為に現在使用されている薬剤にしばしば伴っている望ましくない副作用を回避しつつ、神経障害性疼痛に関わるニューロン過剰同期及び/又は神経精神障害を低減するために使用し得る。
【0015】
本明細書に開示した方法及び組成物は一般的に非シナプス機序を使用しており、そしてニューロン集団活性の同期をモジュレート、一般的には低減する。ニューロン集団活性の同期は中枢及び/又は末梢神経系のアニオンの濃度及び勾配を操作することによりモジュレートする。より詳細には、本発明の組成物は、Na+−K+−2Cl−(NKCC)共輸送体の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。本発明の特に好ましい治療薬は中枢及び/又は末梢の神経系の細胞、例えば、グリア細胞、シュワン細胞及び/又はニューロン細胞の集団において高い程度のNKCC共輸送体アンタゴニスト活性を示し、そして腎細胞集団においてはより低い程度の活性を示す。1つの実施形態において、本発明の組成物は共輸送体NKCC1の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。NKCC1アンタゴニストは本発明の方法における使用の為に特に好ましい治療薬である。本発明の治療用組成物において通常使用し得るNKCC共輸送体アンタゴニストは限定しないが、CNS標的NKCC共輸送体アンタゴニスト、例えばフロセミド、ブメタニド、エタクリン酸、トルセミド、アゾセミド、ムゾリミン、ピレタニド、トリパミド等、並びにチアジド及びチアジド様利尿剤、例えばベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ポリチアジド、トリクロロメチアジド、クロロタリドン、インダパミド、メトラゾン及びキネタゾン、並びにこのような化合物のアナログ及び機能的誘導体を包含する。
【0016】
本発明の組成物及び方法において有用に使用されるフロセミド、ブメタニド、ピレタニド、アゾセミド及びトルセミドのようなCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストのアナログは式I〜Vとして以下に記載するものを包含する。本発明者等はこのようなアナログは、誘導元であるCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストと比較して、増大した親油性及び低減された利尿作用を有しており、従って本発明の治療方法において使用した場合に望ましくない副作用が低下すると考える。
【0017】
1つの実施形態において、式I〜Vとして以下に記載するアナログの有効量の投与後に生じる利尿の水準はアナログの誘導元である親分子のゆうこうりょうの投与後に生じるものの99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%未満となる。例えばアナログは同じmg/kg用量において投与された場合に親分子よりも低利尿性であり得る。或いは、症状の有効な緩和のために必要なアナログの用量が少量となり、これにより低い利尿作用を示すようになるように、アナログはその誘導元の親分子よりも更に強力でもあり得る。同様に、親分子よりも低頻度でアナログを投与してよく、これにより所定の期間内の全体的利尿作用が低下するように、アナログは親分子よりも疾患治療においてより長い作用持続時間を有し得る。
【0018】
本発明の方法及び組成物において有用に使用される他の治療薬は、限定しないが、NKCC1に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合フラグメント;可溶性NKCC1リガンド;NKCC1の小分子阻害剤;NKCC1のアンチセンスオリゴヌクレオチド;NKCC1特異的短鎖干渉RNA分子(siRNA又はRNAi);及び操作された可溶性NKCC1分子を包含する。好ましくは、そのような抗体又はその抗原結合フラグメント及びNJCC1の小分子阻害剤は、例えばHaas and Forbush,Annu.Rev.Physiol.62:515−534,2000に記載されているようにブメタニドの結合に関与するNKCC1のドメインに特異的に結合する。NKCC1のポリヌクレオチド配列は配列番号1に示す通りであり、相当するcDNA配列は配列番号2に示す。
【0019】
本発明の方法及び治療薬は「非シナプス」機序を使用しているため、ニューロン興奮性の抑制は殆ど、又は全く生じない。より詳細には、本発明の治療薬は活動電位の発生又は興奮性シナプス伝達の抑制を殆ど(投与前水準と比較して1%未満の変化)、又は全く起こさない。実際には、ニューロン興奮性の僅かな増大が本発明の治療薬の特定のものの投与時に生じる場合がある。このことはニューロン興奮性を実際に抑制する神経障害性疼痛の治療に現在使用されている従来の抗癲癇剤とは明らかに対照的である。本発明の方法及び治療薬はニューロン集団活性の同期又は相対的同期性に影響する。好ましい方法及び治療薬は中枢又は末梢神経系における細胞外アニオン性クロリドの濃度及び/又は勾配をモジュレートすることにより、ニューロン興奮性に実質的に影響することなく、ニューロン同期又は相対的同期性を低減する。
【0020】
1つの特徴において、本発明は、末梢神経系の特定の細胞及び神経線維、例えば一次感覚求心性線維、疼痛線維、背側角ニューロン及び脊柱上の感覚及び疼痛経路におけるニューロン活性の自発的過剰同期バースト及び活動電位の伝播又はインパルスの伝導に影響するかこれをモジュレートすることにより、神経障害性疼痛又は異常な疼痛知覚を緩和するための方法及び薬剤に関する。
【0021】
本発明の治療薬は他の知られた治療薬、例えば神経精神障害の治療に現在使用されているものと組み合わせて使用し得る。本発明の治療薬と他の既知の治療薬の組み合わせはシナプス及び非シナプス機序の両方が関与し得ることは当業者の知る通りである。
【0022】
本発明の治療用組成物及び方法は症状の発生後に治療的及びエピソード的に使用するか特定の症状の発生の前に予防的に使用し得る。例えば、本発明の治療薬は既存の神経障害性疼痛を治療するため、又は、化学療法、放射線療法、感染性物質への曝露等に二次的な神経毒性の傷害及び神経障害性疼痛から神経を保護するために使用できる。
【0023】
特定の実施形態においては、本発明の方法において使用される治療薬は血液脳関門を通過できるか、及び/又は、中枢神経系への薬剤の送達を促進する送達系を用いて投与される。例えば種々の血液脳関門(BBB)透過性増強剤を所望によりしようすることにより治療薬に対する血液脳関門の透過性を一過性及び過逆的に増大させることができる。そのようなBBB透過性増強剤はロイコトリエン、ブラジキニンアゴニスト、ヒスタミン、接着結合破壊剤(例えばゾヌリン)、低浸透圧溶液(例えばマンニトール)、細胞骨格収縮剤、短鎖アルキルグリセロール(例えば1−O−ペンチルグリセロール)及び現在当該分野で知られている他のものを包含し得る。
【0024】
本発明の上記及びその他の特徴並びにそれらを得る太陽は以下のより詳細な説明を参照することにより最も良好に理解される。本明細書に開示した全ての参考文献はそれらが個々に取り込まれるがごとく参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
上記した通り、神経障害性疼痛及び/又は神経精神障害の治療に使用する本発明の好ましい治療薬及び方法はNKCC共輸送体の活性を低減することにより上昇した同期の領域においてニューロン集団活性の同期性をモジュレート又は破壊する。以下に詳述する通り、そして実施例において説明する通り、イオン依存性共輸送体、好ましくはカチオン−クロリド依存性共輸送体を用いたイオンの移動及びイオン勾配のモジュレーションはニューロン同期の調節にとって重要である。クロリドの共輸送機能は、長期に渡り、細胞を出るクロリドの移動を主に指向していると考えられてきた。ニューロンに局在することがわかっているナトリウム非依存性輸送体はクロリドイオンをニューロン外に移動させる。好ましくは尿剤フロセミドの投与によるなどしてこの輸送体をブロックすると過剰興奮性が生じるが、これはフロセミドのようなカチオン−クロリド共輸送体に対する短期の応答である。しかしながら、フロセミドに対する長期の応答は、神経膠関連Na+−K+−2Cl−共輸送体NKCC1により媒介されるクロリドイオンの内向性ナトリウム依存型移動が興奮性及び刺激惹起細胞活性に影響することなくニューロン同期をブロックする場合に能動的役割を果たすことを示している。HaglundとHochmanはフロセミドが正常な脳の活性に影響することなくヒトにおいて癲癇活性をブロックすることができることを示している(J.Neurophysiol.(Feb.23,2005)doi:10.1152/jn.00944.2004)。これ等の結果は、本発明の方法及び組成物が従来の治療でしばしば観察されていた望ましくない副作用を生じさせること無く神経障害性疼痛の治療において有効に使用されることを裏付けている。
【0026】
上記した通り、NKCC1bと称されるNKCC1スプライス変異体はNKCC1a変異体よりも高活性である。即ち数パーセント高値のNKCC1bを発現する中枢又は末梢神経系は神経障害性疼痛及び癲癇のような障害により罹患しやすいと考えられる。同様に、NKCC1aと比較してNKCC1bに対してより特異的な治療薬はそのような障害の治療においてより効果的であると考えられる。
【0027】
本発明の方法は例えば以下の病因、即ち:アルコール乱用;糖尿病;好酸球筋肉痛症候群;ギャン・バレー症候群;砒素、鉛、水銀及びタリウムのような重金属への曝露;HIV/AIDS;抗HIV/AIDS薬への曝露;悪性腫瘍;医薬品、例えばアミオダロン、オーロチオグルコース、シスプラチナム、ダプソン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、ジスルフィラム、FK506、ヒドラジン、イソニアジド、メトロニダゾール、ニトロフラントイン、パクリタキセル、フェニトイン及びビンクリスチン;モノクローナルガンモパシー;多発性硬化症;卒中後の中枢痛、ヘルペス後の神経痛;外傷、例えば手根管症候群、頚部又は腰部の神経根障害、複雑な限局性の疼痛の症候群、脊髄傷害及び遮断神経痛;三叉神経痛;血管炎;ビタミンB6大量投与;及び特定のビタミン欠乏症(B12、B1、B6、E)を有する神経障害性疼痛の治療及び/又は予防の為に使用し得る。本発明の方法を用いて効果的に治療される神経精神障害は例えば限定しないが、双極性障害、不安障害、パニック障害、抑鬱症、分裂症、強迫性障害及び外傷後ストレス症候群を包含する。
【0028】
本発明の方法において効果的に使用される組成物はNa+−K+−2Cl−(NKCC)共輸送体の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。好ましくは、そのような組成物は共輸送体NKCC1の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。特定の実施形態においては、本発明の組成物はNKCC1アンタゴニスト(例えば限定しないがNKCC1の小分子阻害剤、NKCC1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、及び、可溶性NKCC1リガンド);NKCC1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド;NKCC1特異的短鎖干渉RNA分子(siRNA又はRNAi);及び操作された可溶性NKCC1分子からなる群より選択される治療薬少なくとも1つを含む。好ましい実施形態においては、治療薬はCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニスト、例えばフロセミド、ブメタニド、エタクリン酸、トルセミド、アゾセミド、ムゾリミン、ピレタニド、トリパミド等;チアジド及びチアジド様利尿剤、例えばベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ポリチアジド、トリクロロメチアジド、クロロタリドン、インダパミド、メトラゾン及びキネタゾン;及びこのような化合物のアナログ及び機能的誘導体からなる群より選択される。
【0029】
本発明の方法において使用し得るCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストのアナログは下記式I、II及び/又はIII:
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
[式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、例えばアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルヒドロキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールエステル(PEGエステル)、ポリエチレングリコールエーテル(PEGエーテル)、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、
そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される]の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物を包含する。
【0032】
本発明の一部の実施形態においては、アナログはブメタニドアルデヒド、ブメタニドジベンジルアミド、ブメタニドジエチルアミド、ブメタニドモルホリノエチルエステル、ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ブメタニドジメチルグリコールアミドエステル、ブメタニドピバキセチルエステル、ブメタニドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1エチルエステル、ブメタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩、及びブメタニドセチルトリメチルアンモニウム塩であることができる。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、アナログはフロセミドアルデヒド、フロセミドエチルエステル、フロセミドシアノメチルエステル、フロセミドベンジルエステル、フロセミドモルホリノエチルエステル、フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、フロセミドジベンジルアミド、フロセミドベンジルメチルアンモニウム塩、フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩、フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、フロセミドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1エチルエステル、フロセミドピバキセチルエステル、及びフロセミドプロパキセチルエステルであることができる。
【0034】
本発明の更に別の実施形態においては、アナログはピレタニドアルデヒド、ピレタニドメチルエステル、ピレタニドシアノメチルエステル、ピレタニドベンジルエステル、ピレタニドモルホリノエチルエステル、ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ピレタニドジエチルアミド、ピレタニドジベンジルアミド、ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、ピレタニドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1エチルエステル、ピレタニドピバキセチルエステル、及びピレタニドプロパキセチルエステルであることができる。
【0035】
本発明の方法において有用に用いられるCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストのアナログは下記式IV:
【0036】
【化8】
[式中、
R3、R4及びR5は上記の通り定義され;そして、
R6はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、例えばアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルヒドロキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールエステル(PEGエステル)、ポリエチレングリコールエーテル(PEGエーテル)、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される]の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物を包含する。
【0037】
本発明の一部の実施形態においては、アナログはテトラゾリル置換アゾセミド(例えばメトキシメチルテトラゾリル置換アゾセミド、メチルチオメチルテトラゾリル置換アゾセミド及びN−mPEG350−テトラゾリル置換アゾセミド)、アゾセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩及び/又はアゾセミドセチルトリメチルアンモニウム塩からなる群より選択し得る。
【0038】
本発明の方法において有用に用いられるアナログは下記式V:
【0039】
【化9】
[式中、
R7はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、例えばアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルヒドロキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールエステル(PEGエステル)、ポリエチレングリコールエーテル(PEGエーテル)、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;そして、
X−はハライド、例えばブロミド、クロリド、フロリド、ヨーダイド、又は、アニオン性部分、例えばメシレート、トシレートであるか;或いは、X−は存在せず、そして化合物はスルホニル尿素部分(−SO2−NH−CO−)からプロトンを消失することにより「内部」又は両性イオン性の塩を形成する]の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物を包含する。
【0040】
本発明の一部の実施形態においては、アナログはピリジン置換トルセミド四級アンモニウム塩又は相当する内部塩(両性イオン)からなる群より選択し得る。例としては限定しないが、メトキシメチルピリジニウムトルセミド塩、眼ヒルチオメチルピリジニウムトルセミド塩及びN−mPEG350−ピリジニウムトルセミド塩を包含する。
【0041】
本明細書において定義するR基の何れかは本明細書に開示したアナログから排除することができる。
【0042】
式I、II、III、IV及び/又はVの化合物を得るための以下に記載する合成方法を通じて形成される中間体化合物もまた、本明細書に記載する神経精神障害のための治療薬として有用性を保有している場合がある。
【0043】
本発明の方法において用いられるCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストの修飾は、官能基、及び/又は、水素化アルミニウム、アルキルハライド、アルコール、アルデヒド、アリールハライド、アルキルアミド、アリールアミン及び四級アンモニウム塩の非置換又は置換されたもの又はこれ等の組合せからなる群より選択される化合物に、アンタゴニストを反応させることを包含できる。出発物質として使用し得る化合物の非限定的な例を以下に例示する。
【0044】
【化10】
「アルキル」という用語は本明細書においては、直鎖又は分枝鎖の飽和又は部分不飽和の炭化水素基を指す。アルキル基の例は限定しないがメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ペンチル等を包含する。「不飽和」とは1、2又は3つの二重結合又は三重結合又はその組合せの存在を意味する。そのようなアルキル基は場合により後述するとおり置換され得る。
【0045】
「アルキレン」という用語は本明細書においては、直鎖の親アルカンの2つの末端炭素原子の各々から1つの水素原子を除去することにより誘導される2つの末端1価基中央部を有する直鎖又は分枝鎖を指す。
【0046】
「アリール」という用語は本明細書においては、芳香族基を指すか、又は、場合により適当な置換基、例えば限定しないが低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルスルファニル、低級アルキルスルフェニル、低級アルキルスルホニル、オキソ、ヒドロキシ、メルカプト、場合によりアルキルで置換されたアミノ、カルボキシ、テトラゾリル、場合によりアルキルで置換されたカルバモイル、場合によりアルキルで置換されたアミノスルホニル、アシル、アロイル、ヘテロアリール、アシルオキシ、アロイルオキシ、ヘテロアロイルオキシ、アルコキシカルボニル、ニトロ、シアノ、ハロゲン又は低級パーフルオロアルキルで置換されている場合により置換された芳香族基の1つ以上に縮合した場合により置換された芳香族基を指し、ここで多重の置換も可能である。アリールの例は限定しないがフェニル、2−ナフチル、1−ナフチル等を包含する。
【0047】
「ハロ」という用語は本明細書においては、ブロモ、クロロ、フルオロ又はヨードを指す。或いは、「ハライド」という用語は本明細書においては、ブロミド、クロリド、フロリド又はヨーダイドを指す。
【0048】
「ヒドロキシ」という用語は本明細書においては、基−OHを指す。
【0049】
「アルコキシ」という用語は本明細書においては、単独又は他の基の部分として、オキシ基を解して親分子部分に付加した本明細書において定義するアルキル基を指す。アルコキシの代表例は、限定しないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等を包含する。
【0050】
「アリールオキシ」という用語は本明細書においては、基−ArOを指し、ここでArはアリール又はヘテロアリールである。例としては限定しないがフェノキシ、ベンジルオキシ及び2−ナフチルオキシを包含する。
【0051】
「アミノ」という用語は本明細書においては、−NH2を指し、ここで水素原子の一方又は両方が場合によりアルキル又はアリール又は場合により置換された各々の1つにより置き換えられ得る。
【0052】
「アルキルチオ」という用語は本明細書においては、単独又は別の基の部分として、イオウ部分を介して親分子部分に付加している本明細書に定義したアルキル基を指す。アルキルチオの代表例は限定しないが、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ等を包含する。
【0053】
「カルボキシ」という用語は本明細書においては、基−CO2Hを指す。
【0054】
「四級アンモニウム」という用語は本明細書においては、「オニウム」状態にある窒素上の正電荷を有する窒素への4結合を有する化学構造、即ち「R4N+」又は「第4窒素」を指し、ここでRはアルキル又はアリールのような有機の置換基である。「四級アンモニウム塩」という用語は本明細書においては、カチオンとの四級アンモニウムの会合を指す。
【0055】
「置換された」という用語は本明細書においては、等業者の知る置換基により置き換えられ、そして、以下に記載する安定な化合物をもたらす、基の水素原子1つ以上の置き換えを指す。適当な置き換えの基の例は限定しないが、アルキル、アシル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アミノ、アミド、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアリール、ハロ、オキソ、メルカプト、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アミジノ、カルバモイル、ジアルコキシメチル、シクア、ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボン酸、カルボキシアミド、ハロアルキル、アルキルチオ、アラルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、グアニジノ、ウレイド等を包含する。置換はそのような組合せが意図する用途に対して安定である化合物をもたらす場合に許可される。例えば、置換は、得られる化合物が反応混合物からの有用な程度の純度までの単離操作、及び、治療薬又は診断薬への製剤に耐えられるための十分な頑健性を有する場合に許可される。
【0056】
「溶媒和物」という用語は本明細書においては、例えば、溶媒分子1つ以上との特定の化合物の物理的会合から生じる、化合物の生物学的有効性を保持している化合物の薬学的に受容可能な溶媒和型を指す。溶媒和物の例は限定しないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸又はエタノールアミンと組み合わせた本発明の化合物を包含する。
【0057】
「水和物」という用語は本明細書においては、溶媒が水である場合の化合物を指す。
【0058】
「生体適合性重合体」という用語は本明細書においては、実質的に非毒性であり、実質的な免疫応答、凝固又は他の望ましくない作用を発生させる傾向を有さない重合体部分を指す。ポリアルキレングリコールは生体適合性重合体であり、ここで、本明細書においては、ポリアルキレングリコールとは直鎖又は分枝鎖のポリアルキレングリコール重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロプレングリコール及びポリブチレングリコールを指し、そして更に、ポリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルも包含する。本発明の一部の実施形態においては、ポリアルキレングリコール重合体は低級アルキルポリアルキレングリコール部分、例えばポリエチレングリコール部分(PEG)、ポリプロピレングリコール部分又はポリブチレングリコール部分である。PEGは式HO(CH2CH2O)nHを有し、ここでnは約1〜約4000以上であることができる。一部の実施形態においては、nは1〜100であり、他の実施形態においては、nは5〜30である。PEG部分は直鎖又は分枝鎖であることができる。別の実施形態においては、PEGはヒドロキシル、アルキル、アリール、アシル又はエステルのような基に結合することができる。一部の実施形態においては、PEGはアルコキシPEG、例えばメトキシ−PEG(又はmPEG)であることができ、ここで一方の末端は比較的不活性のアルコキシ基であり、他方の末端はヒドロキシル基である。
【0059】
式I、II、III、IV及び/又はVの化合物は当該分野で良く知られている伝統的な合成手法を用いて合成できる。より特定される合成経路は以下に説明する通りである。
【0060】
ブメタニドアナログは種々の試薬にブメタニドのカルボン酸部分を反応させることにより合成する。例えば、ブメタニドはアルコール、例えば直鎖、分枝鎖、置換又は非置換のアルコールとの反応を介してエステル化を起こす場合がある。ブメタニドは又適当な置換又は非置換のアルキルハライド及びアリールハライド、例えばクロロアセトニトリル、ベンジルクロリド、1−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド等との反応を介してアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド、又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル(Axetil)」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。ブメタニドはまた、酸クロリドへの変換の後、又は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような活性化剤の使用により、適当な置換又は非置換のアルキルアミン又はアリールアミンとの反応によりアミド化を起こす場合がある。ブメタニドは又、四級アンモニウム水酸化物、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物又はセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応してブメタニド四級アンモニウム塩を形成する場合がある。以下のスキーム1及び7は式Iの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0061】
スキーム1.式Iによる例示的化合物の合成
【0062】
【化11】
フロセミドアナログはブメタニドアナログの合成に使用したものと同様の方法によって合成する。特に、フロセミドはアルコール、例えば直鎖、分枝鎖、置換又は非置換のアルコールとの反応を介してエステル化を起こす場合がある。フロセミドは又適当な置換又は非置換のアルキルハライド及びアリールハライド、例えば、クロロアセトニトリル、ベンジルクロリド、1−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド等との反応を介してアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。フロセミドはまた、酸クロリドへの変換の後、又は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような活性化剤の使用により、適当な置換又は非置換のアルキルアミン又はアリールアミンとの反応によりアミド化を起こす場合がある。フロセミドは又、四級アンモニウム水酸化物、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物又はセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応して、フロセミド四級アンモニウム塩を形成する場合がある。以下のスキーム2は式IIの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0063】
スキーム2.式IIによる例示的化合物の合成
【0064】
【化12】
ピレタニドアナログはブメタニドアナログの合成に使用したものと同様の方法によって合成する。特に、ピレタニドはアルコール、例えば直鎖、分枝鎖、置換又は非置換のアルコールとの反応を介してエステル化を起こす場合がある。ピレタニドは又、適当な置換又は非置換のアルキルハライド又はアリールハライド例えば、クロロアセトニトリル、ベンジルクロリド、1−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド等との反応を介してアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。ピレタニドはまた、酸クロリドへの変換の後、又は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような活性化剤の使用により、適当な置換又は非置換のアルキルアミン又はアリールアミンとの反応によりアミド化を起こす場合がある。ピレタニドは又、四級アンモニウム水酸化物、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物又はセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応して、ピレタニド四級アンモニウム塩を形成する場合がある。以下のスキーム3は式IIIの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0065】
スキーム3.式IIIによる例示的化合物の合成
【0066】
【化13】
アゾセミドアナログは種々の試薬にアゾセミドのテトラゾリル部分を反応させることにより合成する。アゾセミドはアルデヒドの添加によってヒドロキシアルキル化を起こす場合があり、これによってヒドロキシアルキル基が形成される。更に、アルコールをアルデヒドと反応させ、エーテルを得うる。更に、アルキルチオールをアルデヒドとともに添加し、チオールエーテルを形成し得る。アゾセミドは又適当なアルキルハライド又はアリールハライド、例えばメチルクロロメチルエステル及びベンジルクロロメチルチオエーテルのようなエーテル又はチオエーテル結合を有するアルキル又はアリールハライドを添加することによりアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。アゾセミドはアゾセミド四級アンモニウム塩を形成するために、四級アンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウム臭化物及び水酸化ナトリウムのような塩基、又はセチルトリメチルアンモニウム及び水酸化ナトリウムのような塩基と反応させ得る。以下のスキーム4は式IVの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0067】
スキーム4.式IVによる例示的化合物の合成
【0068】
【化14】
トルセミド(トラセミドとしても知られている)アナログは種々の試薬にトルセミドを反応させることにより合成する。N−置換四級アンモニウム塩を形成するために、トルセミドは適当なアルキル又はアリールハライド、例えばベンジルクロリドの添加によってアルキル化を起こす場合がある。N−置換エーテル四級アンモニウム塩を形成するために、エーテル結合を有するアルキルハライド及びアリールハライド、例えばメチルクロロメチルエーテル及びベンジルクロロメチルエーテルを使用し得る。N−置換チオエーテル四級アンモニウム塩を形成するために、チオエーテル結合を有するアルキルハライド及びアリールハライド、例えばメチルクロロメチルチオエーテル及びベンジルクロロメチルチオエーテルを使用し得る。PEG型のエーテル含有四級アンモニウム塩はMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型の四級アンモニウム塩もまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートの添加を介して形成し得る。以下のスキーム5は式Vの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0069】
スキーム5.式Vによる例示的化合物の合成
【0070】
【化15】
置換安息香酸ブメタニド、ピレタニド及びフロセミドは、文献の方法によりアミン置換アンモニウムハイドライド、例えばビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドを用いて対応するブメタニドアルデヒド、ピレタニドアルデヒド及びフロセミドアルデヒドに選択的に還元できる。Muraki,M.及びMukiayama,T.,Chem.Letters,1974,1447;Muraki,M.及びMukiayama,T.,Chem.Letters,1975,215;及びHubert,T.等,J.Org.Chem.,1984,2279を参照される。より親油性のベンズアルデヒドはより親油性の安息香酸に容易に大気酸化し、ベンズアルデヒドも又、NADPHコファクターの使用を介し、数種の酸化P450酵素とともに生体内で対応する安息香酸に代謝されることがよく知られている。
【0071】
スキーム6.例示的なブメタニド、ピレタニド及びフロセミドのベンズアルデヒドアナログの合成
【0072】
【化16】
安息香酸から対応するベンズアルデヒドに変換するために使用した還元操作法については、Muraki,M.及びMukiayama,T.,Chem.Letters,1974,1447;同書,1975,215;Hubert,T.D.,Eyman,D.P.及びWiemer,D.F.,J.Org.Chem.,1984,2279を参照
スキーム7.例示的なブメタニド、ピレタニド及びフロセミドのポリエチレングリコールエステルの合成
【0073】
【化17】
PEG−XはX−(CH2)m(OCH2CH2)n−1−Yであり、ここでXはハロ又は他の脱離基(メシレート「OMs」、トシレート「OTs」)及びYはOH又はアルコール保護基、例えばアルキル基、アリール基、アシル基又はエステル基であり、そしてここでm=1−5及びn=1−100である。
【0074】
スキーム8.例示的なアゾセミド及びトルセミドのアルキルポリエチレングリコールエーテルの合成
【0075】
【化18】
PEG−XはX−(CH2)m(OCH2CH2)n−1−Yであり、ここでXはハロ又は他の脱離基(メシレート「OMs」、トシレート「OTs」)及びYはOH又はアルコール保護基、例えばアルキル基、アリール基、アシル基又はエステル基であり、そしてここでm=1−5及びn=1−100である。
【0076】
本発明の化合物を合成するための出発物質は更にFeitへの米国特許3,634,583;Fietへの米国特許3,806,534;Struem等の米国特許3,058,882;Bormannへの米国特許4,010,273;Popelakへの米国特許3,665,002;及びDelargeへの米国特許3,665,002に記載の化合物を含むことができ、この開示はこれによって参照により組み込まれる。
【0077】
本発明の化合物は異性体、互変異性体、両性イオン、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合物又はその立体化学混合物を含有できる。「異性体」という用語は本明細書においては、同数及び同種の原子、従って同一分子量を有するが、空間の原子配列又は配置に関して異なっている化合物を表す。更にまた、「異性体」という用語は立体異性体及び幾何学異性体を含有する。「立体異性体」又は「光学異性体」という用語は本明細書においては、少なくとも1つのキラル原子又は垂直非対称面(例えば、あるビフェニル、アレン及びスピロ化合物)が引き起こす制限された回転を有し、面偏向された光を回転することができる安定した異性体を表す。立体異性体を引き起こし得る本発明の一部の化合物中に非対称な中心及び他の化学構造が存在できるため、本発明は立体異性体及びその混合物を考慮する。本発明の化合物及びその塩は、非対称炭素原子を含有でき、従って単立体異性体、ラセミ混合物及びエナンチオマー、及びジアステレオマーの混合物として存在し得る。典型的にはこのような化合物はラセミ混合物として製造される。しかしながら、所望であればこのような化合物は純粋な立体異性体として、例えば独立のエナンチオマー又はジアステレオマーとして、又は立体異性体リッチ化混合物として製造又は単離することができる。互変異性体は容易に生来の異性体に内部変換可能であり、アセト酢酸エーテルのケト及びエノール形態のようにリガンドの接続性が変化する。発明方法および組成物は、前述の化合物の互変異性体を採用する。両性イオンは同一分子中に酸性及び塩基性の基を所有する内部塩又は2重極性化合物である。中立のPHでは、ほとんどの両性イオンの陽イオンと陰イオンは等しくイオン化されている。
【0078】
更に本発明はここに記載する化合物を有するプロドラッグを提供する。「プロドラッグ」という用語は、加溶媒分解により又は代謝的に生理的な条件下で薬学的/薬理学的に活性である特定される化合物に変換される化合物を表すことを意図している。プロドラッグは化学的に派生された本発明の化合物であってよく、例えば(i)その母体の薬品化合物の生物活性を一部保持する、全て保持する、又は全く保持しない、及び(ii)母体の薬品化合物を得るために代謝される。本発明のプロドラッグは又、化学的に派生された化合物である「部分的プロドラッグ」であってもよく、例えば(i)その母体の薬品化合物の生物活性を一部保持する、全て保持する又は全く保持しない、及び(ii)化合物の生物的に活性な誘導体を得るために代謝される。プロドラッグはここに記載された化合物に対し加水分解可能なカップリングを利用して形成できる。プロドラッグについての議論は更にEttmayer等、J.Med.Chem.47(10):2394−2404(2004)で調べることができる。
【0079】
本発明のプロドラッグは血液脳関門通過することができ、CNSエステラーゼによって加水分解し、活性化合物を提供し得る。更に、ここで提供するプロドラッグは又、改良された生体利用性、改良された水溶性、改良された受動的腸吸収、改良された運搬媒体腸吸収、加速された代謝に対する保護、目的組織に対する組織選択的送達及び/又は受動的な強化も示し得る。
【0080】
本発明のプロドラッグはここに記載された式1、II、III、IV及び/又はVに従った化合物を含有できる。本発明のプロドラッグは更にインダクリノン及びオゾリノンの類似派生物だけでなく、ブメタニド、ブメタニドジベンジルアミド、ブメタニドジエチルアミド、ブメタニドモルホリノエチルエーテル、ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ブメタニドジメチルグリコールアミドエステル、ブメタニドピバキセチルエステル、フロセミド、フロセミドエチルエステル、フロセミドシアノメチルエステル、フロセミドベンジルエステル、フロセミドモルホリノエチルエステル、フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、フロセミドジベンジルアミド、フロセミドベンジルトリメチル−アンモニウム塩、フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩、フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、フロセミドピバキセチルエステル、フロセミドプロパキセチルエステル、ピレタニド、ピレタニドメチルエステル、ピレタニドシアノメチルエステル、ピレタニドベンジルエステル、ピレタニドモルホリノエチルエステル、ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ピレタニドジエチルアミド、ピレタニドジベンジルアミド、ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、ピレタニドピバキセチルエステル、ピレタニドプロパキセチルエステル、テトラゾリル置換アゾセミド、ピリジニウム置換トルセミド塩(ピリミジン置換トルセミド四級アンモニウム塩とも呼ばれる)を含有する。以前に示したスキームを参照。
【0081】
更にまた、以前に示したスキームで記載の通り、前述のような生体適合性重合体、例えばポリエチレングリコール(PEG)を生理的な条件下に劣化する結合を使用した本発明の化合物に付着させることによりプロドラッグを形成できる。Schacht,E.H.等.Poly(ethylene glycol)Chemistry and Biological Applications,American Chemical Society,San Francisco,CA 297−315(1997)も参照される。ここで提供された化合物の免疫原性を減少させる及び/又は半減期を延長させるためにPEGのタンパク質への付着を使用することができる。PEG化剤が薬学的活性を保持するのであれば、従来のPEG化方法はいずれも使用可能である。
【0082】
要件発明の組成物は人間及び家畜への適用に適しており、好ましくは医薬組成物として送達される。医薬組成物は1つ又はそれ以上の治療薬、又はその薬学的に受容可能な塩、及び薬学的に受容可能な担体からなる。ここで使用される薬学的に受容可能な塩とは、医薬品としてその使用又は製法が許される化合物の塩形態を示し、これは特定の化合物の遊離酸及び塩基の生物的有効性を保持し、生物的又はそれ以外でも好ましくないものでない。このような塩の例はHandbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,Wermuth,C.G.及びStahl,P.H.(eds.),Wiley−Verlag Helvetica Acta,Zurich,2002[ISBN3−906390−26−8]に記載されている。このような塩の例はアルカリ金属塩及び遊離酸及び塩基の追加塩を含有する。薬学的に受容可能な塩の例は、限定されるわけではないが、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化塩、臭化塩、ヨウ化塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタノン酸塩、プロピオン酸塩、オクサル酸塩、マロン酸塩、スクシン酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩及びマンデル酸塩を含有する。
【0083】
本発明の医薬組成物は又、他の化合物を含有してもよく、これは生理的に活性又は不活性であり得る。例えば、本発明の1つ又はそれ以上の治療薬は、治療の組み合わせにおいて、他の薬剤を添加し、本発明の用法に従って治療され得る。このような組み合わせは、分離した組成物として治療され、補足的な送達系で送達するために組み合わされ、又は組み合わされた組成物、例えば混合物又は融合化合物を形成し得る。更に、前述の治療の組み合わせはBBB透過性増強剤及び/又は透圧剤上昇剤を含有し得る。
【0084】
このような医薬組成物を使用した担体及び添加剤は所望の投与方法に依存して種々の形態を取ることができる。従って、経口投与に対する組成物は、例えば、デンプン、糖、結合剤、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、錠剤崩壊剤等からなる適当な担体及び添加剤を使用した錠剤、糖衣錠、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒、粉末等のような固体調製品であり得る。使用易さ及び高い服薬遵守のため、錠剤及びカプセルは多くの医学的状態で有利な経口投薬形態を提供する。
【0085】
同様に、液体調製物のための組成物は溶液、乳液、分散液、懸濁液、シロップ、エリキシル等を包含し、適当な担体及び添加剤は水、アルコール、油脂、グリコール、保存料、フレーバー剤、着色剤、懸濁剤等である。非経腸投与のための典型的な調製品は滅菌水又は非経腸的に許容される油脂、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、アラキス油又はゴマ油と共に活性成分を含み、そして溶解性又は保存に寄与する他の添加剤も包含し得る。溶液の場合は、凍結乾燥して粉末とし、その後、使用直前に希釈再調整することができる。分散液及び懸濁液の場合は、適切な担体及び添加剤は水性のガム類、セルロース、ケイ酸塩と又は油脂を包含する。
【0086】
本発明の実施形態による医薬組成物は経口、直腸、局所、経鼻、吸入(例えばエアロゾルを介して)、口内(例えば舌下)、膣内、局所(即ち皮膚及び粘膜の両方の表面、例えば気道表面)、経皮投与及び非経腸(例えば皮下、筋肉内、皮内、関節内、胸膜腔内、腹腔内、髄腔内、大脳内、頭蓋内、動脈内又は静脈内)投与に適するものを包含するが、所定の症例における最も適当な経路は治療すべき状態の性質及び重症度により、そして、使用される特定の活性剤の性質により変動する。本発明の医薬組成物は経口、舌下、非経腸、インプラント、経鼻及び吸入による投与に特に適している。
【0087】
注射用の組成物は適当な担体、例えばプロピレングリコール−水、等張性の水、注射用滅菌水(USP)、emulPhorTM−アルコール水、cremophor−ELTM又は当該分野で知られた他の適当な担体と共に活性成分を包含する。これ等の担体は単独又は他の従来の可溶化財、例えばエタノール、グリコール又は当該分野で知られた他の物質と組み合わせて使用し得る。
【0088】
本発明の化合物を溶液又は注射剤の形態で適用する場合、化合物は何れかの従来の希釈剤に溶解又は懸濁することにより使用し得る。希釈剤は例えば生理食塩水、リンゲル液、グルコース水溶液、デキストロース水溶液、アルコール、脂肪酸エステル、グリセロール、グリコール、植物又は動物の原料から誘導した油脂、パラフィン等を包含し得る。これ等の製剤は当該分野で知られた何れかの従来の方法により製造し得る。
【0089】
経鼻投与用の組成物はエアロゾル、ドロップ、粉末及びゲルとして製剤し得る。エアロゾル製剤は典型的には生理学的に許容される水性又は非水性の溶媒中の活性成分の溶液又は微細懸濁液を含む。そのような製剤は典型的には密封用期中の滅菌された形態において単回又は多用量の量として提供される。密封容器は霧状化装置と共に使用するカートリッジ又はレフィルであることができる。或いは、シールされた容器は均一分注装置、例えば単回使用型鼻用吸入器、ポンプ霧状化装置又は治療有効量を送達するように設定された計量弁付のエアロゾルディスペンサーであってよく、これは内容物が完全に使用された後に排気されることを意図している。剤型がエアロゾルディスペンサーを含む場合は、それは高圧ガス、例えば圧縮ガス、空気等、又は有機性の高圧ガス、例えばフルオロクロロ炭化水素又はフルオロ炭化水素を含有することになる。
【0090】
口内又は舌下の投与に適する組成物は錠剤、ロゼンジ剤及びパステル剤を包含し、この場合、活性成分は担体、例えば糖類及びアカシア、トラガカント又はゼラチン及びグリセリンと共に製剤される。
【0091】
直腸投与用の組成物はカカオ脂のような従来の坐剤基剤を含有する坐剤を包含する。
【0092】
経皮投与に適する組成物は、軟膏、ゲル及びパッチ剤を包含する。
【0093】
当該分野で知られた他の組成物、例えばプラスター剤もまた経皮又は皮下投与に適用させ得る。
【0094】
更に又、組成物の製剤化の為に必要な成分との混合物中に活性成分を含むそのような医薬組成物を製造する場合には、他の従来の薬学的に受容可能な添加剤、例えば賦形剤、安定化剤、防腐剤、水和剤、乳化剤、潤滑剤、甘味剤、着色料、フレーバー剤、等張性付与剤、緩衝剤、抗酸化剤等も又配合し得る。添加剤としては、澱粉、スクロース、フラクトース、デキストロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、沈降炭酸カルシウム、結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ゼラチン、アカシア、EDTA、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタ重亜硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0095】
別の実施形態においては、本発明は本発明の化合物1つ以上の有効量を含む薬学的投与単位を含む容器1つ以上を包含するキットを提供する。
【0096】
水性懸濁液又はエリキシルは経口投与の為に望まれる場合は、そこに含まれる必須の活性成分を種々の甘味料又はフレーバー剤、着色料又は染料、及び、所望により乳化又は懸濁剤、並びに希釈剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びこれ等の組合せと組み合わせ得る。
【0097】
本明細書に記載する組成物は除放性製剤の部分として投与し得る。そのような製剤は一般的によく知られた技術を用いて製造してよく、そして、例えば経口、直腸又は経皮送達系により、又は所望の標的部位1つ以上における製剤又は治療装置のインプラント処置により投与し得る。除放性製剤は、担体マトリックス中に分散又は又速度調節膜に包囲されたリザーバ内に含有された状態で、本発明の治療薬単独又は第2の治療薬を含む治療用組成物を含有する。そのような製剤において使用するための担体は生体適合性であり、そして、生体分解性であり得る。1つの実施形態によれば、除放性製剤は相対的に一定の水準の活性組成物の放出をもたらし得る。別の実施形態によれば、除放性製剤は、例えば治療用組成物の所定用量を送達するために、特定の症状の発症時に被験体又は医療担当者により駆動され得る装置内に含有され得る。除放性製剤内に含有される治療用組成物の量はインプラント処置の部位、放出の速度及び予測持続時間、及び治療又は防止すべき状態の性質に応じたものとなる。
【0098】
特定の実施形態においては、神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療のための本発明の組成物は中枢神経系への投与組成物の送達を促進する製剤及び投与経路を用いて投与する。NKCC1アンタゴニストのよう投与組成物は、上記した血液脳関門の通過を促進するために製剤してよく、又は、血液脳関門を通過する薬剤と同時投与し得る。投与組成物は例えば血液脳関門を通過するリポソーム製剤中で送達してよく、又は、血液脳関門を通過する他の化合物、例えばブラジキニン、ブラジキニンアナログ又は誘導体又は他の化合物、例えばSERAPORTTMと同時投与し得る。或いは、本発明の投与組成物は循環している脳脊髄液中に直接投与組成物を投入する脊椎穿刺を用いて送達し得る。一部の治療状態については、血液脳関門の一過性又は永久的な崩壊が起こる場合があり、血液脳関門を通過するための投与組成物の特殊な製剤は必要とならない場合がある。本発明者等は例えば、抗癲癇剤(AED)に対して不応性のヒト患者においてフロセミド20mgの瞬時静脈内注射が自発的発作活性及び電気刺激惹起癲癇様活性の両方を低減又は根絶することを測定している(Haglund & Hochman J.Neurophysiol.(Feb.23,2005)doi:10.1152/jn.00944.2004)。
【0099】
本明細書に開示した治療用組成物の投与の経路及び頻度並びに用量は適応症により、そして個体別に変動し、そして、一般的に入手できる情報から、そして、患者をモニタリングすること及び標準的手法を用いて適宜用量及び用法を調節することにより、医師が容易決定し得る。一般的に、適切な用量及び用法は治療上及び/又は予防上の利点を与えるために十分な量の活性組成物を与えるものである。用量及び用法は非投与患者と比較した場合の投与患者における改善された臨床結果をモニタリングすることにより確立し得る。
【0100】
「有効量」又は「有効」という用語は、臨床試験及び評価、患者の観察等を通じて察知される疾患又は障害の症状の緩和をもたらす用量を指すことを意図している。「有効量」又は「有効」とは更に、生物学的又は化学的な活性における検出可能な変化を誘発する用量を指すことができる。検出可能な変化を検出し、及び/又は、更に関連する機序又は過程に関して当業者が定量しておい。更に又、「有効量」又は「有効」とは、所望の生理学的状態を維持する、すなわち有意な悪化を低減又は防止し、及び/又は、目的の状態の改善を促進する量を指すことができる。治療上有効な用量及び用法は治療すべき患者の状態、状態の重症度、及び全身状態に応じたものとなる。本発明の投与組成物の薬物動態及び薬力学的特徴は種々の患者で変動するため、患者における治療有効量を決定するための好ましい方法は用量を徐々に増大させ、そして臨床検査指標をモニタリングすることである。複合療法の場合は、2種以上の薬剤を、薬剤の各々が治療又は予防作用をもたらすために十分な時間に渡り治療有効量において存在するように、同時投与する。「同時投与」という用語は同じ製剤又は単位剤型又は別個の製剤における、2種以上の薬剤の同時又は逐次的投与を包含することを意図している。急性エピソード状態、慢性状態の治療又は予防のための適切な用量及び用法は必然的に患者の状態に適合するように変動することになる。
【0101】
例示すれば、神経障害性疼痛の治療のためには、フロセミド一日当たり1〜3回の頻度で10〜40mgの量で、好ましくは一日当たり3回40mgの量で、患者に対し経口投与し得る。別の例においては、ブメタニドを一日当たり1〜3回の頻度で1〜10mgの量で神経障害性疼痛の治療のために経口投与し得る。例えば小児への適用においてはより少量の用量を使用し得ることは当業者の知る通りである。
【0102】
別の実施形態において、本発明によるブメタニドアナログを毎日1.5〜6mgの量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり3回投与し得る。一部の実施形態においては、本発明によるフロセミドアナログを60〜240mg/日の量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり3回投与し得る。別の実施形態においては、本発明によるピレタニドアナログを毎日10〜20mgの量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり1回投与し得る。一部の実施形態においては、本発明によるアゾセミドアナログを一日当たり60mgの量で投与し得る。別の実施形態においては、本発明のトルセミドアナログを毎日10〜20mgの量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり1回投与し得る。特にIV投与についてはより低用量を投与し得ることは当然である。
【0103】
本発明の方法及び系はまた神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療及び/又は予防のための候補となる化合物及び応報を評価するために使用し得る。所望のNKCC1共輸送体アンタゴニスト活性を潜在的に有している候補化合物を作成するための種々の手法を使用し得る。候補化合物は合成有機化学の当該分野で良く知られている操作法を用いて作成し得る。所望の活性及び特異性を付与するためにフロセミド、ブメタニド、エタクリン酸及び関連の化合物のような既知NKCC1アンタゴニストを修飾する目的の為には、構造−活性の関係及び分子モデリング手法が有用である。所望の活性に関して候補化合物をスクリーニングするための方法は参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許5,902,732、 5,976,825、6,096,510及び6,319,682に記載されている。
【0104】
候補化合物は、神経膠細胞、ニューロン細胞、腎細胞等のような培養細胞の種々の型を用いて、又はインサイチュの動物モデルにおいて、本発明のスクリーニング応報を用いてNKCC1アンタゴニスト活性に関してスクリーニングし得る。クロリド共輸送体アンタゴニスト活性を発見するためのスクリーニング手法では、例えば、「正常」より高値のアニオン性クロリド濃度を生じさせることにより、組織培養試料中又は動物モデルのインサイチュの細胞外空間のイオンバランスを改変する。この改変されたイオンバランスに付された細胞又は組織の試料の幾何学的及び/又は光学的な特性を測定し、候補薬剤を投与する。候補薬剤の投与の後、細胞又は組織の試料の相当する幾何学的及び/又は光学的な特性をモニタリングすることによりイオンの不均衡が残存しているかどうか、又は細胞外及び細胞内の空間におけるイオンバランスを改変することにより細胞が応答したかどうかを調べる。イオンの不均衡が残存している場合は、候補薬剤はクロリド共輸送体アンタゴニストの可能性がある。種々の型の細胞又は組織を使用しながらスクリーニングすることにより、高水準の神経膠細胞クロリド共輸送体アンタゴニスト活性を有し、そして、低水準のニューロン細胞及び腎細胞クロリド共輸送体アンタゴニスト活性を有する候補化合物が発見される。同様に、異なる型の細胞及び組織の系に対する作用も評価し得る。
【0105】
更に又、候補化合物の薬きょうは動物モデルにおいてインサイチュで神経障害性疼痛のような状態を刺激又は誘導し、状態の刺激の間の細胞又は組織の試料の幾何学的及び/又は光学的な特性をモニタリングし、候補薬剤を投与し、次に候補薬剤の投与の後の細胞又は組織の幾何学的及び/又は光学的な特性をモニタリングし、そして、細胞又は組織の試料の幾何学的及び/又は光学的な特性を比較して候補化合物の作用を調べることにより、評価し得る。神経障害性疼痛の緩和に関する投与組成物の薬効の試験はBennett,Hosp.Pract.(Off Ed).33:95−98,1998に記載されているもののような良く知られた方法を用いて実施することができる。
【0106】
上記した通り、本発明の方法において使用する組成物はNKCC1に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合フラグメント;NKCC1に結合する可溶性リガンド;NKCC1のアンチセンスオリゴヌクレオチド;及びNKCC1に特異的な短鎖干渉RNA分子(siRNA又はRNAi)からなる群より選択される治療薬を含み得る。
【0107】
NKCC1に特異的に結合する抗体は当該分野で知られており、そしてAlpha Diagnostic International,Inc.(San Antonio,Tex.78238)から入手できるものを包含する。抗体の「抗原結合部位」又は「抗原結合フラグメント」とは、抗原結合に参加する抗体の部分を指す。抗原結合部位は重(H)鎖及び軽(L)鎖のN末端可変(V)領域のアミノ酸残基により形成される。重鎖及び軽鎖のV領域内の3つの高度に発散したストレッチは「超可変領域」と称され、これは「フレームワーク領域」即ち「FR」として知られるより保存されたフランキングストレッチの間に挿入されている。即ち、「FR」という用語は免疫グロブリンの超可変領域の間に隣接して天然に存在するアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3超可変領域及び重鎖の3超可変領域は各々相対的に3次元空間に配置されることにより抗原結合表面を形成している。抗原結合表面は結合抗原の3次元表面に相補であり、そして、重鎖及び軽鎖の各々の3超可変領域は「相補性決定領域」即ち「CDR」と称される。
【0108】
抗体分子の結合特性を示すことができる抗原結合部位を含む多くの分子が当該分野で知られている。例えば、蛋白分解酵素パパインはIgG分子を優先的に切断して数個のフラグメントを形成し、その2つ(「F(ab)」フラグメント)は各々未損傷の抗原結合部位を包含する共有結合ヘテロ2量体を含む。酵素ペプシンはIgG分子を切断して数個のフラグメントを形成でき、それに含まれる「F(ab’)2」フラグメントは両方の抗原結合部位を含む。「Fv」フラグメントはIgM、IgG又はIgA免疫グロブリン分子の優先的蛋白分解切断により形成できるが、より一般的には当該分野で知られた組み換え手法を用いて誘導される。Fvフラグメントはネイティブの抗体分子の抗原認識結合能力の大部分を保持している抗原結合部位を含む非共有結合VH::VLヘテロ2量体である(Inbar et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2659−2662,1972;Hochman et al.Biochem 15:2706−2710,1976;及びEhrlich et al.Biochem 19:4091−4096,1980)。
【0109】
NKCC1に特異的に結合するヒト化抗体もまた本発明の方法において使用し得る。非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含む多くのヒト化抗体分子が報告されており、例えばげっ歯類V領域及びその関連CDRをヒト定常ドメインに融合させて保有しているキメラ抗体(Winter et al.Nature 349:293−299,1991;Lobuglio et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4220−4224,1989;Shaw et al.J Immunol.138:4534−4538,1987;及びBrown et al.Cancer Res.47:3577−3583,1987);適切なヒト抗体定常ドメインインとの融合の前にヒトサポートフレームワーク内にグラフトされたげっ歯類CDR(Riechmann et al.Nature 332:323−327,1988;Verhoeyen et al.Science 239:1534−1536,1988;及びJones et al.Nature 321:522−525,1986);及び組み換えにより修飾されたげっ歯類FRによりサポートされたげっ歯類CDR(1992年12月23日公開の欧州特許公開519,596)が包含される。これ等の「ヒト化」分子はヒトレシピエントにおけるこれ等の部分の治療適用の持続時間及び有効性を制限するげっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小限にするように設計される。
【0110】
NKCC1の活性をモジュレートすることは、別法としてはポリペプチドの発現を低減又は抑制することによっても行ってよく、これは相当するポリヌクレオチドの転写及び/又は翻訳に干渉することにより達成することができる。ポリペプチドの発現は例えばアンチセンス発現ベクター、アンチセンスオリゴデオキシルボヌクレオチド、アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシリボヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスホスホロチオエートオリゴリボヌクレオチドを導入することにより;又は当該分野で良く知られている別の手段により抑制し得る。全てのそのようなアンチセンスポリヌクレオチドは本明細書においては創傷して「アンチセンスオリゴヌクレオチド」と称する。
【0111】
本発明の方法において使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドはポリヌクレオチドに特異的に結合するために十分なNKCC1ポリヌクレオチドに対する相補性を有している。アンチセンスオリゴヌクレオチドが本発明の方法において有効であるためには、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列はポリヌクレオチドに100%相補である必要は無い。むしろ、ポリヌクレオチドへのアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合がポリヌクレオチドの正常な機能に干渉して用途を消失させる場合、及び、オリゴヌクレオチドの他の非標的配列への非特異的結合が回避される場合に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは十分相補である。適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計は当該分野で良く知られている。メッセージの5’末端、例えばAUG開始コドンを含むそこに至るまでの5’未翻訳配列に相補であるオリゴヌクレオチドは翻訳の抑制において最も効率的に機能するはずである。しかしながら、ターゲティングされたポリヌクレオチドの5’又は3’非翻訳非コーディング領域の何れかに相補であるオリゴヌクレオチドもまた使用し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞透過性及び活性は適切な化学的修飾、例えばフェノキサジン置換C−5プロピニルウラシルオリゴヌクレオチド(Flanagan et al.,Nat.Biotechnol.17:48−52,1999)又は2’−O−(2−メトキシ)エチル(2’−MOE)−オリゴヌクレオチド(Zhang et al.,Nat.Biotechnol.18:862−867,2000)の使用により増強することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる手法の使用は当該分野で良く知られており、例えばRobinson−Benion et al.(Methods in Enzymol.254:363−375,1995)及びKawasaki et al.(Artific.Organs 20:836−848,1996)に記載されている。
【0112】
NKCC1ポリペプチドの発現はRNA干渉(RNAi)のような方法異より特異的に抑制し得る。この手法の考察はScience,288:1370−1372,2000に記載されている。慨すれば、アンチセンスRNA又はDNAを使用する遺伝子抑制の伝統的方法は、結合が後の細胞過程に干渉するように目的の遺伝子の逆配列に結合することにより相当する蛋白の合成をブロックすることにより作用する。RNAiもまた翻訳後のレベルに対して作用し、配列特異的であるが、遥かに高効率に遺伝子発現を抑制する。遺伝子発現を制御又はモディファイするための例示される方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO99/49029,WO99/53050及びWO01/75164に記載されている。これ等の方法においては、配列関連遺伝子の転写産物の急速な分解をもたらす配列特異的RNA分解過程により翻訳後の遺伝子サイレンシングが行われる。研究によれば、2本鎖RNAは配列特異的遺伝子サイレンシングのメディエーターとして作用するとされている(例えばMontgomery and Fire,Trends in Genetics,14:255−258,1998を参照できる)。自己相補領域により転写産物を生成する遺伝子コンストラクトが遺伝子サイレンシングでは特に効率的である。
【0113】
1つ以上のリボヌクレアーゼが2本鎖RNAに特異的に結合して短鎖フラグメントに切断することが明らかにされている。リボヌクレアーゼはこれ等のフラグメントと会合したまま残存し、これ等が次に相補mRNAと特異的に結合し、即ち目的の遺伝子に関する転写されたmRNA鎖に特異的に結合する。遺伝子に関するmRNAはまたリボヌクレアーゼにより分解されて短鎖フラグメントとなり、これにより遺伝子の翻訳及び発現が防止される。更に又mRNAポリメラーゼは短鎖フラグメントの多くのコピーの合成を促進する作用を有し、これが系の効率を指数的に上昇させている。RNAiの独特の特徴はサイレンシングがそれが開始された細胞に限定されない点である。遺伝子サイレンシング作用は生物の他の部分に播種する場合がある。
【0114】
即ち、当該分野で知られた送達方法を用いながら本発明の方法において使用することができる遺伝子サイレンシングコンストラクト及び/又は遺伝子特異的自己相補性2本鎖RNA配列を形成するためにNKCC1ポリヌクレオチドを用い得る。遺伝子コンストラクトは自己相補RNA配列を発現するために使用し得る。或いは、RNA分子が細胞の原形質内に内在化して遺伝子サイレンシング作用を呈するように、細胞を遺伝子特異的2本鎖RNA分子と接触させ得る。2本鎖RNAは非標的遺伝子の発現に影響することなくRNAiを媒介するために十分なNKCC1遺伝子に対する相同性を有していなければならない。2本鎖DNAは少なくとも20ヌクレオチド長、好ましくは21〜23ヌクレオチド長である。好ましくは、2本鎖RNAは本発明のポリヌクレオチドに特異的に相当する。哺乳動物細胞における遺伝子発現を抑制するための21〜23ヌクレオチド長の短鎖干渉RNA(siRNA)分子の使用がWO01/75164に記載されている。最適な抑制性siRNAを設計するための手段はDNAengine Inc.(Seattle,WA.)より入手できるものを包含する。
【0115】
1つのRNAi手法はドナー及びアクセプタースプライシング部位を伴った適切なスプライシング方向のイントロン配列にフランキングした領域内にセンス及びアンチセンスの配列が位置している遺伝子コンストラクトを使用する。或いは、種々の長さのスペーサー配列を使用してコンストラクト内の配列の自己相補領域を分離し得る。遺伝子コンストラクト転写産物のプロセシングの間、イントロン配列がスプライスアウトされ、センス及びアンチセンス配列並びにスプライスジャンクション配列が結合できるようになり、2本鎖RNAが形成される。次に2本鎖RNAに結合して切断するリボヌクレアーゼを選択して、これにより特異的mRNA遺伝子配列の分解をもたらす事象のカスケードが開始され、特定の遺伝子がスプライスされる。
【0116】
インビボの使用のためには、遺伝子コンストラクト、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はRNA分子は種々の当該分野で知られた操作法により投与し得る(例えばRolland,Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Systems 15:143−198,1998及びその引用文献参照)。ウイルス性及び非ウイルス性の送達方法が遺伝子療法の為に使用されている。有用なウイルスベクターは例えばアデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ワクシニアウイルス及びトリポックスウイルスを包含する。例えばアデノウイルスをDNAポリリジン複合体にカップリングすることにより、及び、選択的ターゲティングのための受容体媒介エンドサイトーシスを利用することにより、アデノウイルスベクターを用いた腫瘍細胞への遺伝子ターゲティングの効率が向上されている(例えばCuriel et al.,Hum.Gene Ther.,3:147−154,1992;及びCristiano & Curiel,Cancer Gene Ther.3:49−57,1996参照)。ポリヌクレオチドを送達するための非ウイルス性の方法はChang & Seymour,(Eds)Curr.Opin.Mol.Ther.,vol.2,2000において考察されている。これ等の方法は細胞をネイキッドDNAに接触させること、カチオン性リポソーム又はカチオン性重合体とのポリヌクレオチドのポリプレックス、及び、全身投与のためのデンドリマーを包含する(Chang & Seymour前出)。リポソームは受容体媒介エンドサイトーシスによる取り込みのために細胞表面受容体を認識して特定の受容体のターゲティングを可能にするリガンドの配合により修飾することができる(例えばXu et al.,Mol.Genet.Metab.,64:193−197;1998;及びXu et al.,Hum.Gene Ther.,10:2941−2952;1999参照)。
【0117】
腫瘍ターゲティング細菌、例えばサルモネラは全身投与後の遺伝子の腫瘍への送達の為に潜在的に有用である(Low et al.,Nat.Biotechnol.17:37−41,1999)。細菌は、例えばインビボの哺乳動物の上皮細胞内に浸透して高効率でDNAを送達するように、エクスビボで操作することができる(例えばGrillot−Courvalin et al.,Nat.Biotechnol.16:862−866,1998参照)。分解安定化されたオリゴヌクレオチドをリポソーム内にカプセル化し、静脈内又は標的部位(例えば神経障害性疼痛の発生源)へ直接、注射することにより患者に送達し得る。或いは、本発明のポリペプチドに関するアンチセンスRNAを発現するレトロウイルス又はアデノウイルスベクター又はネイキッドDNAを患者に投与し得る。そのような方法を使用するための適当な手法は当該分野で良く知られている。
【0118】
本発明の投与組成物及び方法は特定の好ましい実施形態に関して上記説明した。以下の実施例は特定の実験の結果を説明しており、本発明を如何なる面でも限定する意図はない。
【実施例】
【0119】
実施例1
メチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドメチルエステル)
窒素下にメタノール(12mL)中のブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)のスラリーに5分間かけてメタノール(6mL)中の塩化チオニル(70uL)の混合物を添加した。5分間攪拌後、反応混合物が溶解状態になった。反応混合物をさらに30分間攪拌し、その時点で薄層クロマトグラフィー(TLC)による確認で反応が完了した。メタノールを減圧下に除去し、残存物を酢酸エチル中に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄した。酢酸エチルを無水硫酸マグネシウム上に乾燥し、濃縮し、白色固体としてメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.1g(89%)を得た。
【0120】
実施例2
シアノメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドシアノメチルエステル)
ブメタニド(1.0g、2.7ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、クロロアセトニトリル(195uL、2.7ミリモル)、次いでトリエチルアミン(465uL)を添加した。反応混合物を12時間100℃に加熱し、その時点でTLCおよび液体クロマトグラフィー連結質量分析器(LC/MC)が反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、スラリーに減少した。スラリーに水(25mL)を添加し、粗生成物をオフホワイトの固体として沈殿させた。アセトニトリル中の再結晶を介して純粋なシアノメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(850mg)を得た。
【0121】
実施例3
ベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドベンジルエステル)
ブメタニド(1.15g、3.15ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)に溶解し、塩化ベンジル(400uL、2.8ミリモル)、次いでトリエチルアミン(480uL)を添加した。反応混合物を12時間80℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、濃厚なスラリーに濃縮した。スラリーに水(25mL)を添加した。得られた固体を濾過し、12時間50℃で真空オーブン内に乾燥し、ベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.0g(80%)を得た。
【0122】
実施例4
2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドモルホリノエチルエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、12mL)に溶解し、塩酸4−(2−クロロエチル)モルホリン(675mg、3.62ミリモル)、次いでトリエチルアミン(1mL)およびヨウ化ナトリウム(500mg、3.33ミリモル)を添加した。反応混合物を8時間95℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、濃縮乾固した。Biotage社製フラッシュクロマトグラフィーを介した精製、精製溶離、真空下の蒸発の後、白色固体として2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得た(600mg、62%)。
【0123】
実施例5
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート[ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル]
実施例31と同様な方法で、ジメチルホルムアミド(DMF)中にブメタニドを塩酸塩化3−(ジメチルアミノ)プロピル、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0124】
実施例6
N,N−ジエチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(12mL)中に溶解し、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド(500mg、3.35ミリモル)、次いでトリエチルアミン(0.68mL)およびヨウ化ナトリウム(500mg、3.33ミリモル)を添加した。反応混合物を8時間95℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、濃厚なスラリーに減少した。スラリーに水(25mL)を添加し、得られた固体を溶液から沈殿させた。生成物を濾過し、12時間50℃で真空オーブン中に乾燥し、N,N−ジエチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.0gを得た。
【0125】
実施例7
N,N−ジエチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドジエチルアミド)
ブメタニド(1.16g、3.2ミリモル)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、690mg、3.6ミリモル)を添加した。5分後、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、498mg、3.6ミリモル)を添加し、溶液をさらに5分間攪拌した。ジエチルアミノ(332uL、3.2ミリモル)を添加し、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ジクロロメタンを減圧下に除去し、純粋なN,N−ジエチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート860mg(65%)を得た。
【0126】
実施例8
N,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドジベンジルアミド)
ブメタニド(960mg、2.6ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)に溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、560mg、3.6ミリモル)を添加した。10分後、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、392mg、2.9ミリモル)を添加し、溶液をさらに10分間攪拌した。ジベンジルアミン(1mL、5.2ミリモル)を添加し、反応混合物を2時間攪拌し、その時点でLC/MSにより反応が完了した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム(20mL)に注ぎ込み、酢酸エチル(2x100mL)で抽出した。酢酸エチルを飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウム上に乾燥した。酢酸エチルを減圧下に除去し、白色固体としてN,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.0g(75%)を得た。
【0127】
実施例9
ベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
水(10mL)中のベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物(451mg、2.7ミリモル)の溶液にブメタニド(1g、2.7ミリモル)を5分間かけて添加した。10分間攪拌後、反応混合物が透明になった。水を減圧下に除去し、粗製の無色油状物を得た。純粋な生成物を水およびヘプタンを使用した油状物の再結晶から得て、明桃色結晶物としてベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート690mgを得た。
【0128】
実施例10
セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、ブメタニドを水中のセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0129】
実施例11
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)に溶解し、2−クロロ−N,N−ジメチルアミド(410uL、3.9ミリモル)、次いでトリエチルアミン(0.70mL)およびヨウ化ナトリウム(545mg、3.6ミリモル)を添加した。反応混合物を10時間50℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。溶媒を減圧下に除去し、残存物を酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上に乾燥した。酢酸エチルを減圧下に除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、純粋なN,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート685mg(60%)を得た。
【0130】
実施例12
t−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドピバキセチルエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)中に溶解し、クロロメチルピバレート(575uL、3.9ミリモル)、次いでトリエチルアミン(0.70mL)およびヨウ化ナトリウム(545mg、3.6ミリモル)を添加した。反応混合物を10時間50℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。溶媒を減圧下に除去し、残存物を酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上に乾燥した。酢酸エチルを減圧下に除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、純粋なt−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート653mg(60%)を得た。
【0131】
実施例13
エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドプロパキセチルエステル)
実施例12と同様の方法で、ブメタニドをジメチルホルムアミド(DMF)中のクロロメチルプロピオネート、トリメチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0132】
実施例14
メチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドメチルエステル)
実施例1と同様の方法で、ピレタニドを塩化チオニルおよびメタノールと反応させ、メチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0133】
実施例15
シアノメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドシアノメチルエステル)
実施例2と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のクロロアセトニトリルと反応させ、シアノメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0134】
実施例16
ベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドベンジルエステル)
実施例3と同様の方法で、ピレタニドをDMF中の塩化ベンジルと反応させ、ベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0135】
実施例17
2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドモルホリノエチルエステル)
実施例4と同様の方法で、ピレタニドをDMF中の塩酸4−(2−クロロエチル)モルホリノ、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0136】
実施例18
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート[ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル]
実施例31と同様の方法で、ピレタニドをジメチルホルムアミド(DMF)中の塩酸3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0137】
実施例19
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル)
実施例6と同様の方法で、ピレタニドをジメチルホルムアミド(DMF)中の2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0138】
実施例20
N,N−ジエチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドジエチルアミド)
実施例7と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のEDC、HOBtおよびジエチルアミンと反応させ、N,N−ジエチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0139】
実施例21
N,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドジベンジルアミド)
実施例8と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のEDC、HOBtおよびジベンジルアミンと反応させ、N,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0140】
実施例22
ベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、ピレタニドをベンジルトリメチルアンモニウムと反応させ、ベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0141】
実施例23
セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例10と同様の方法で、ピレタニドをセチルトリメチルアンモニウムと反応させ、セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0142】
実施例24
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル)
実施例11と同様の方法で、ピレタニドをDMF中の2−クロロ−N,N−ジメチルアセトアミド、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0143】
実施例25
t−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドピバキセチルエステル)
実施例12と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のクロロメチルピバレート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、t−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0144】
実施例26
エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドプロパキセチルエステル)
実施例13と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のクロロメチルプロピオネート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0145】
実施例27
エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドエチルエステル)
Bundgaard,H.,Norgaad,T.およびNielsen,N.M.,Int.J.Pharmaceutics,1988,42,217−224の方法をエチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点163〜165℃。
【0146】
実施例28
シアノメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドシアノメチルエステル)
実施例2と同様の方法で、フロセミドをDMF中のクロロアセトニトリルと反応させ、シアノメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0147】
実施例29
ベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドベンジルエステル)
実施例3と同様の方法で、フロセミドをDMF中の塩化ベンジルと反応させ、ベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0148】
実施例30
2−(4−モルホリノ)エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドモルホリノエチルエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をエチル2−(4−モルホリノ)エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点134〜135℃。
【0149】
実施例31
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法を3−(N,N−ジメチルアミノプロピル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点212〜213℃。
【0150】
実施例32
N,N−ジエチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をN,N−ジエチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点135〜136℃。
【0151】
実施例33
N,N−ジエチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドジエチルアミド)
実施例7と同様の方法で、フロセミドをDMF中のEDC、HOBtおよびジエチルアミンと反応させ、N,N−ジエチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0152】
実施例34
N,N−ジベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドジベンジルアミド)
実施例8と同様の方法で、フロセミドをDMF中のEDC、HOBtおよびジベンジルアミンと反応させ、N,N−ジベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0153】
実施例35
ベンジルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、フロセミドをベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、ベンジルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0154】
実施例36
セチルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例10と同様の方法で、フロセミドをセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、セチルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0155】
実施例37
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル)
Bundgaard,H.,Norgaad,T.およびNielsen,N.M.,Int.J.Pharmaceutics,1988,42,217−224の方法をN,N−ジメチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点193〜194℃。
【0156】
実施例38
t−ブチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドピバキセチルエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をt−ブチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。
【0157】
実施例39
エチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドプロパキセチルエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をエチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点141〜142℃。
【0158】
実施例40
5−[1−(t−ブチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例12と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のクロロメチルピバレート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、5−[1−(t−ブチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0159】
実施例41
2−クロロ−5−[1−(エチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例12と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のクロロメチルプロピオネート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、2−クロロ−5−[1−(エチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0160】
実施例42
2−クロロ−5−[1−(ヒドロキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドを塩化メチレン、塩化メチレン−DMF混合物またはDMF中のホルムアルデヒドと反応させ、2−クロロ−5−[1−(ヒドロキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0161】
実施例43
2−クロロ−5−[1−(メトキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドを塩化メチレン、塩化メチレン−DMF混合物またはDMF中のホルムアルデヒドおよびメタノールと反応させ、2−クロロ−5−[1−(ヒドロキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0162】
実施例44
2−クロロ−5−[1−(メチルチオメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドを塩化メチレン、塩化メチレン−DMF混合物またはDMF中のホルムアルデヒドおよびメタンチオールと反応させ、2−クロロ−5−[1−(メチルチオメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0163】
実施例45
5−[1−(ベンジルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドをDMF中のベンジルクロロメチルエーテル、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、5−[1−(ベンジルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0164】
実施例46
2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのベンジルトリメチルアンモニウム塩(アゾセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、アゾセミドを水中のベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのベンジルトリメチルアンモニウム塩を得ることができる。
【0165】
実施例47
2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのセチルトリメチルアンモニウム塩(アゾセミドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、アゾセミドを水中のセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのセチルトリメチルアンモニウム塩を得ることができる。
【0166】
実施例48
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムt−ブチルカルボニルオキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例12と同様の方法で、トルセミドをDMF中のクロロメチルピバレート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムt−ブチルカルボニルオキシメトクロリドおよび多少の3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムt−ブチルカルボニルオキシ−メトヨーダイドを得ることができる。
【0167】
実施例49
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムエチルカルボニルオキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例12と同様の方法で、トルセミドをDMF中のクロロメチルプロピネート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムエチルカルボニルオキシメトクロリドおよび多少の3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムエチルカルボニルオキシ−メトヨーダイドを得ることができる。
【0168】
実施例50
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルオキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のベンジルクロロメチルエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルオキシメトクロリドを得ることができる。
【0169】
実施例51
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のメチルクロロメチルエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシメトクロリドを得ることができる。
【0170】
実施例52
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムフェニルメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中の塩化ベンジルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムフェニルメトクロリドを得ることができる。
【0171】
実施例53
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルチオメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のベンジルクロロメチルチオエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルチオメトクロリドを得ることができる。
【0172】
実施例54
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメチルチオメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のメチルクロロメチルチオエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメチルチオメトクロリドを得ることができる。
【0173】
実施例55
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドmPEG350エステル)
実施例3と同様の方法で、ブメタニドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0174】
実施例56
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドmPEG1000エステル)
実施例3と同様の方法で、ブメタニドをDMF中のMeO−PEG1000−OTs(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0175】
実施例57
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ブメタニドmPEG350エステル)
実施例3と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0176】
実施例58
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ブメタニドmPEG1000エステル)
実施例3と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のMeO−PEG1000−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0177】
実施例59
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドmPEG350エステル)
実施例3と同様の方法で、フロセミドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0178】
実施例60
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドmPEG1000エステル)
実施例3と同様の方法で、フロセミドをDMF中のMeO−PEG1000−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0179】
実施例61
5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(N−mPEG350−テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例3と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲である5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0180】
実施例62
5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(N−mPEG1000−テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例3と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のMeO−PEG1000−OTs(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲である5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0181】
実施例63
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリド(N−mPEG350−ピリジニウムトルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲である3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリドを得ることができる。
【0182】
実施例64
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリド(N−mPEG1000−ピリジニウムトルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のMeO−PEG1000−OTs(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲である3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリドを得ることができる。
【0183】
実施例65
3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンズアルデヒド(ブメタニドアルデヒド)
MurakiおよびMukiayama(Chem.Letters,1974,1447およびChem.Letters,1975,215)の方法により、ブメタニドをビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドと反応させ、3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンズアルデヒドを得ることができる。
【0184】
実施例66
3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンズアルデヒド(ピレタニドアルデヒド)
MurakiおよびMukiayama(Chem.Letters,1974,1447およびChem.Letters,1975,215)の方法により、ピレタニドをビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドと反応させ、3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンズアルデヒドを得ることができる。
【0185】
実施例67
5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンズアルデヒド(フロセミドアルデヒド)
MurakiおよびMukiayama(Chem.Letters,1974,1447およびChem.Letters,1975,215)の方法により、フロセミドをビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドと反応させ、5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンズアルデヒドを得ることができる。
【0186】
実施例68
海馬スライスにおける癲癇様放電に対するフロセミドの作用
これ等の試験の間、自発的癲癇様活性が種々の投与により誘発された。Sprague−Dawleyラット(雌雄、25〜35日齢)を断首し、頭蓋骨上面を迅速に除去し、脳を氷冷酸素添加スライス用培地中で冷却した。スライス用培地は220mMスクロース、3mM KCl、1.25mM NaH2PO4、2mM MgSO4、26mM NaHCO3、2mM CaCl2及び10mMデキストロース(295〜305mOsm)よりなるスクロース系の人工脳脊髄液(sACSF)とした。海馬を含有する脳半球をブロックし、Vibroslicer(Frederick Haer,Brunsick,ME.)のステージ上に糊付(シアノアクリル接着剤)した。400μm厚みの水平又は横断スライスを4℃の酸素添加(95%O2;5%CO2)スライス用培地中に切り出した。スライスは迅速に保持チャンバー内に移し、そこでそれらは124mM NaCl、3mM KCl、1.25mM NaH2PO4、2mM MgSO4、26mM NaHCO3、2mM CaCl2及び10mMデキストロース(295〜305mOsm)よりなる酸素添加バス培地(ACSF)中に浸積したままとした。スライスを少なくとも45分間室温に保持した後浸積型の記録チャンバーに移した(全ての他の実験)。記録チャンバー内では、スライスを34〜35℃において酸素添加記録培地で灌流した。全ての動物の操作法はNIH及びワシントン大学動物保護ガイドラインに従って実施した。
【0187】
大部分のスライス実験において、同時細胞外電場電極記録地をCA1及びCA3域から得た。双極性タングステン刺激電極をシャファー側枝上に置き、CA1においてシナプス駆動型の電場応答を誘発した。刺激は集団スパイク閾値の4倍の強度の100〜300μsec持続パルスよりなるものとした。後放電は60Hzにおいて送達下子のような刺激の2秒連続により誘発した。自発的発作間様バーストは以下のバス培地への変更又は追加
、即ち、10mMカリウム(6スライス;4匹;平均−81バースト/分);200〜300μM4−アミノピリジン(4スライス;2匹;平均−33バースト/分);50〜100μMビククリン(4スライス;3匹;平均−14バースト/分);MMg++(1時間灌流−3スライス;2匹;平均−20バースト/分;又は3時間灌流−2スライス;2匹);ゼロカルシウム/6mM KCl及び2mM EGTA(4スライス;3匹)により投与したスライスにおいて観察された。全投与につき、一定水準のバーストが確立された後はフロセミドを記録用培地に添加した。
【0188】
これ等の操作法の初回において、後放電のエピソードをシャファー側枝の電気刺激により誘発(Stasheff et al.,Brain Res.344:296,1985)し、そして、細胞外電場応答をCA1錐体細胞領域(13スライス;8匹)中でモニタリングした。バス培地中のMg++の濃度を0.9mMまで低下させ、集団スパイク閾値の4倍の強度で2秒間60Hzにおける刺激により後放電を誘発した(集団スパイク閾値強度は100〜300μsecパルス持続時間において20〜150μAの範囲で変動)。刺激の試行の間10分間組織を回復させた。各実験において、シナプスインプットに対するCA1の初期応答は先ず、単回刺激パルスにより誘発した電場の電位を記録することにより試験した。対照条件においては、シャファー側枝刺激により単回集団スパイクを誘発した(図1A、差込図)。強直刺激は焼く30秒の後放電(図1A、左)を誘発し、内因性シグナルの大きな変化が伴っていた(図1A、右)。
【0189】
内因性光学的シグナルを画像化するために、直立型顕微鏡のステージ上に位置し、顕微鏡コンデンサーを経由して指向された白色光線(タングステンフィラメント光及びレンズのシステム;Dedo Inc.)を照射した灌流チャンバー内にいれた。光は変動が最小限となるように制御及び調節(電源−Lamda Inc.)し、そしてスライスが長波長(赤色)で透視できるようにフィルターを通した(695nm ロングパス)。視野及び倍率は顕微鏡の対物レンズの選択により決定した(全スライスをモニタリングするためには4X)。画像フレームは電荷結合デバイス(CCD)カメラ(Dage MTI Inc.)を用いて30HZで取得し、Imaging Technology Inc.,151シリーズ画像化システムを用いて512x480が祖の空間的解像度で8ビットでデジタル化し;カメラコントロールボックス及びA/Dボードのゲインとオフセットはシステムの感度が最適となるように調節した。画像化ハードウエアは486−PC互換コンピューターにより制御した。シグナル/ノイズを増大させるために、平均画像を16個別画像フレームから作成し、0.5秒に渡って積分し、そして共に平均した。実験シリーズでは典型的には数分間の期間に渡る平均画像のシリーズの連続的獲得を行い;これ等の平均画像の少なくとも10点を対照画像として刺激の前に獲得した。擬似着色画像は後に獲得された画像から初回対照画像を差し引き、そして、カラールックアップテーブルを画素値に割り付けることにより計算した。これ等の画像につき、通常は一次ローパスフィルタを用いて高周波数ノイズを除去し、一次ヒストグラムストレッチを用いてシステムのダイナミックレンジに渡って画素値をマッピングした。これ等の画像に関する全ての操作は、定量的情報が温存されるように一次とした。ノイズは所定の獲得シリーズ内の対照画像のシーケンスのAR/Rの変動の最大標準偏差として定義し、ここでAR/Rは組織を経由する光の透過の変化の規模を示す。デルタR/Rは全ての差−画像をとり、そして初回対照画像で割ることにより、即ち(後の画像−初回対照画像)/初回対照画像により計算した。ノイズは選択された画像シーケンスの各々につき、常時<0.01であった。組織を経由する光の透過の絶対的変化は、カメラと光源の間にニュートラルデンシティーフィルターを置いた後に画像を獲得することにより一部の実験の間に推定した。平均してカメラ電子機器及び画像化システム電子機器はシグナルを10倍増幅した後にデジタル化しているため、組織を経由する光の透過の最大絶対変化は通常は1%〜2%であった。
【0190】
図1Dに示すグレースケール写真は記録チャンバー内の典型的な海馬スライスのビデオ画像である。組織を定位置に保持するために使用した微細金ワイアメッシュがスライスに渡って対角線に伸びる暗色の線として観察される。刺激電極はCA1の放線上の右上に観察される。記録用電極(薄片のため写真中は観察不能)は白矢印により示す位置に挿入した。図1Aは60Hzにおける刺激2秒が後放電活性を惹起したことを示しており、細胞外電極により記録された典型的な後放電エピソードを示している。図1Aの差込図はシャファー側枝に送達された単回200秒試験パルス(矢印は人為的)に対するCA1電場応答を示す。図1A1はシャファー側枝刺激により誘発された組織を通過する光学的透過の最大変化のマップである。最大の光学的変化の領域は刺激電極の何れかの側のCA1の尖端及び基部の樹状領域に相当する。図1Bは2.5mMフロセミドを含有する培地中で20分灌流後の刺激に対する応答を示す試料チャートである。電気的後放電活性(図1Bに示す)及び刺激誘発光学的変化(図1B1に示す)の両方がブロックされている。しかしながら、過剰興奮電場応答(多重集団スパイク)が被験パルスに対して観察された(差込図)。図1C及び1C1は初期応答パターンの回復が正常バス培地灌流45分後に観察されたことを示している。
【0191】
刺激誘発後放電のフロセミドブロック及び被験パルスへのシナプス応答の同時増大の逆行する作用は2つの重要な結果、即ち(1)フロセミドが癲癇様活性をブロックし、そして(2)同期(自発的癲癇様活性により反映される)及び興奮性(単回シナプスインプットへの応答により反映される)が解離したことを示している。フロセミドの用量依存性を調べた実験では、1.25mMの最低濃度が後放電と光学的変化の両方をブロックするためには必要であることがわかった。
【0192】
実施例69
高K+(10mM)バス培地を灌流した海馬スライスにおける癲癇様放電に対するフロセミドの作用
上記した通り作成したラット海馬スライスを、長時間の自発的発作間様バーストがCA3(上チャート)及びCA1(下チャート)錐体細胞領域において同時に記録されるまで、高K+溶液で灌流した(図2A及び2B)。フロセミド含有培地(2.5mMフロセミド)で15分間灌流した後、バースト放電の桁数が増大した(図2Cおよび2D)。しかしながら、フロセミド灌流45分の後、バーストは可逆的な態様においてブロックされた(図2E、2F、2G及び2H)。フロセミド灌流の全シーケンスの間、シャファー側枝に送達された単回被験パルスに対するシナプス応答は未変化であるか増強された(データ示さず)。放電の振幅の初期増大は抑制のフロセミド誘導減少を反映している可能性がある(Misgeld et al.,Science 232:1413,1986;Thompson et al.,J.Neurophysiol.60:105,1988;Thompson and Gahwiler,J.Neuropysiol.61:512,1989;and Pearce,Neuron 10:189,1993)。フロセミドは今回観察された増大した興奮性の発生までの時間と同様の潜時(<15分)で海馬スライス中の抑制電流の成分をブロックすることが以前に報告されている(Pearce,Neuron 10:189,1993)。自発的バーストのフロセミドブロックのために必要なより長い潜時は高K+条件下におけるフロセミド感受性の細胞容量調節機序の十分なブロックのために必要な追加的時間に相当していると考えられる。
【0193】
高K+と共に灌流したスライスに対するフロセミドの作用を試験した後、同様の試験を種々の他の一般的に試験されているインビトロの癲癇様放電モデル(Galvan et al.,Brain Res.241:75,1982;Schwartzkroin and Prince,Brain Res.183:61,1980;Anderson et al.,Brain Res.398:215,1986;and Zhang et al.,Epilepsy Res.20:105,1995)を用いて実施した。マグネシウム非含有培地(0−Mg++)に長時間(2〜3時間)曝露した後、スライスは一般的に臨床上使用されている抗痙攣剤に対して抵抗性の癲癇様放電を発生することがわかった(Zhang et al.,Epilepsy Res.20:105,1995)。内側嗅側皮質(図21)及び鉤状回(図示せず)からの記録によれば、0−Mg++培地灌流3時間の後スライスは以前に「抗痙攣剤抵抗性」バーストと説明されていたものと同様の現れ方のバーストパターンを発生した。バス培地にフロセミドを添加した1時間後、これ等のバーストはブロックされた(図2J)。フロセミドは又、以下のバス培地への追加/変更、即ち、(1)200〜300μM4−アミノピリジン(4−AP;カリウムチャンネルブロッカー)の添加(図2K及び2L);(2)GABAアンタゴニストビククリン50〜100μMの添加(図2M及び2N);(3)マグネシウムの除去(0−Mg++)−1時間灌流(図2O及び2P);及び(4)カルシウムの除去+細胞外キレート形成(0−Ca++)(図2Q及び2R)により観察された自発的バースト放電もブロックした。これらのマニュピレイションでは、自発的発作間様パターンは、CA1およびCA2サブフィールドから同時に記録される(図2K、2L、2M、および2NはCA3トレースのみを表示し、図2O、2P、2Q、および2RはCA1トレースのみを表示する)。0−Ca++実験においては、5mMのフロセミドが15〜20分の潜時でバーストをブロックした。全ての他のプロトコルに関し、バーストは2〜60分の潜時で2.5mMフロセミドによりブロックされた。フロセミドは全実験においてCA1及びCA3の両方における自発的バースト活性を可逆的にブロックした(図2L、2N、2P及び2R)。
【0194】
実施例70
麻酔ラットにおけるカイニン酸のiv注射により誘導された癲癇様活性に対するフロセミドの作用
本実施例は麻酔ラットへのカイニン酸(KA)のiv注射により癲癇様活性が誘導されるインビボモデルを説明するものである(Lothman et al.,Neurology 31:806,1981)。結果は図3A〜3Hに示す。Sprague−Dawleyラット(4匹;体重250〜270g)をウレタン(1.25g/kg i.p.)で麻酔し、更に必要に応じて追加的ウレタン注射(0.25g/kg i.p.)により麻酔を維持した。体温は直腸温度プローブを用いてモニタリングし、加熱パッドで35〜37℃に維持し;心拍数(EKG)は連続的にモニタリングした。静脈内薬剤投与のために頸静脈を片側で挿管した。ラットをKopf定位装置(頭蓋の高さの最上部を有するもの)にいれ、そして尖端0.5mmまで絶縁された双極性ステンレス鋼マイクロ電極を皮質表面から0.5〜1.2mmの深度まで挿入し、前頭頭頂皮質中の脳波律動(EEG)活性を記録した。一部の実験においては、2M NaCl含有ピペットを2.5〜3.0mmの深度まで提げることにより海馬EEGを記録した。データはVHSビデオテープに保存し、オフラインで分析した。
【0195】
外科的処置及び電極設置の後、動物を30分間回復させた後にカイニン酸注射(10〜12mg/kg i.v.)による実験を開始した。強力な発作活性、増大した心拍数及び鼻毛の急速な運動が約30分の潜時で誘導された。安定な電気的発作が顕在化した後、フロセミドを合計3回の注射となるまで30分毎に20mg/kgの瞬時注射で送達した。実験はウレタンの静脈内投与により終了した。動物の保護はNIHガイドラインに従い、ワシントン大学動物保護委員会により認可された。
【0196】
図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸誘発電気的「痙攣重積状態」のフロセミドブロックを示す。EKG記録は上チャートに、EEG記録は下チャートに示す。このモデルにおいて、KA注射(10〜12mg/kg)後30〜60分に皮質から(又は深部海馬電極から)強力な電気的放電(発電気的「痙攣重積状態」)が記録された(図3C及び3D)。対照実験(及び以前の報告、Lothman et al.,Neurology,31:806,1981)によれば、この重積状態様活性は3時間に渡って充分維持されることが示されている。その後のフロセミド静脈内注射(累積用量:40〜60mg/kg)は30〜45分の潜時で発作活性をブロックし、比較的フラットなEEGをもたらす場合が多かった(図3E、3F、3G及び3H)。フロセミド注射後90分においてさえも、皮質活性はほぼ正常なベースライン水準(即ちKA及びフロセミド注射の前に観察されたもの)を維持していた。ラットにおけるフロセミドの薬物動態に関する試験はこの実施例で使用した用量は毒性水準より十分低値であることを示している(Hammarlund and Paalzow,Biopharmaceutics Drug Disposition,3:345,1982)。
【0197】
実施例71〜74に関する実験方法
海馬スライスは前記の通りSprague−Dawley成熟ラットから調製した。厚み100μmの横断海馬スライスを振動カッターで切り出した。スライスは典型的には全海馬及び鉤状回を含有していた。切り出した後、スライスは記録前少なくとも1時間は室温で酸素添加保持チャンバー内に保存した。全ての記録は34〜35℃において酸素添加(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(ACSF)と共にインターフェイス型のチャンバー内で獲得した。通常のACSFは(mmol/l単位で)124NaCl、3KCl、1.25NaH2PO4、1.2MgSO4、26NaHCO3、2CaCl2及び10デキストロースを含有していた。
【0198】
CA1及びCA3錐体細胞からの細胞内記録のためのSharp電極に4M酢酸カリウムを充填した。CA1及びCA3細胞体層からの電場の記録は2MのNaClを充填した低抵抗ガラス電極を用いて獲得した。シャファー側枝又は肺門経路の刺激のためには、小型単極タングステン電極をスライス表面に設置した。電場からの自発的及び刺激誘発の活性及び細胞内記録をデジタル化(Neurocorder,Neurodata Instruments,New York,N.Y.)し、ビデオテープに保存した。パーソナルコンピューター上のAxoScopeソフトウエア(Axon Instruments)を用いてデータのオフライン分析を行った。
【0199】
一部の実験においては、ビククリン(20μM)、4−アミノピリジン(4−AP)(100μM)又は高K+(7.5又は12mM)を含有する通常又は低クロリドの培地を使用した。全ての実験においてNaClとNa+−グルコネート(Sigma)の等モル置き換えにより低クロリド溶液(7及び21mM[Cl−]o)を調製した。全ての溶液は約それらが35℃において、そして95%O2/5%CO2を用いた炭酸添加による平衡状態において7.4のpH及び290〜300mOsmの浸透圧を有するように調製した。
【0200】
インターフェースチャンバー内に入れた後、スライスを約1ml/分で表面洗浄した。この低流量においては、灌流培地の交換が完了するまで8〜10分間を要した。ここで報告した時間は全て、この遅延を考慮しており、約±2分の誤差を有している。
【0201】
実施例71
CA1及びCA3における域内の自発的癲癇様バーストの停止のタイミング
同期活性をモジュレートする因子の相対的寄与度はCA1及びCA3域の間で異なる。これ等の因子は局所的循環の差及び細胞の充填度と細胞外空間の容積比率における領域特異的な差を包含する。アニオン又はクロリド共輸送拮抗の抗癲癇作用がニューロン放電のタイミングにおける脱同期によるものであるとすれば、クロリド共輸送ブロックはCA1及びCA3域に示差的に影響することが予測される。これを試験するために、CA1及びCA3域における自発的癲癇様活性のブロックのタイミングの差を特徴付けるための一連の実験を実施した。
【0202】
電場活性はCA1及びCA3域で同時に記録(CA3領域の最も近位と遠位の間のほぼ中間点)し、そして、自発的バーストは高−[K+]o(12μM;n=12)、ビククリン(20mM;n=12)又は4−AP(100μM;n=5)の投与により誘導した。CA1及びCA3域の電場応答が各実験の持続時間全体に渡ってモニタリングされるように単回電気刺激を30秒毎にCA1及びCA3域の間の中央でシャファー側枝に送達した。全実験において、低−[Cl−]o(21mM)又はフロセミド含有(2.5mM)培地への切り替えの前に少なくとも20分の連続自発的癲癇様バーストが観察された。
【0203】
全ての場合において、フロセミド又は低クロリド培地への30〜40分の曝露の後、自発的バーストはCA1域においてはCA3域でバーストが停止する前に停止した。典型的に観察された事象の時間的シーケンスはバーストの周波数及び自発的電場事象の振幅の初期増大、次いでCA3よりもCA1においてより急速であったバースト放電の振幅の低下を包含していた。CA1がサイレントとなった後、CA3はそれが同様に自発的癲癇様事象を示さなくなるまで5〜10分間放電を継続した。
【0204】
バースト停止のこの時間的パターンは、自発的バーストのブロックの為に使用した薬剤がフロセミドであるか低−[Cl−]o培地であるかに関わらず、試験した全ての癲癇様誘導投与において観察された。これ等の実験の全段階を通じて、シャファー側枝の刺激はCA1及びCA3細胞体層の両方において過剰興奮電場応答を誘発した。CA1及びCA3域の両方において自発的バーストがブロックされた直後、過剰興奮集団スパイクはなお誘発できた。
【0205】
本発明者等はCA3の前にCA1におけるバーストの停止が観察されたことは記録部位の本発明者等の選択と比較した場合のこれ等の域の間のシナプス接触の組織化の人為的要因であると考えた。CA3の種々のサブ領域の投射はCA1においては組織化された態様において終了することが知られており;歯状回により近接するCA3細胞(近位CA3)CA1の遠位の部分(鉤状回境界近傍)に対して最も多大に投射する傾向があるのに対し、CA3においてより近位に位置する細胞から生じるCA3投射はCA2境界により近接して位置するCA1の部分においてより多大に終了する。バーストの停止が異なる時点にCA3の異なるサブ領域において生じるとすれば、上記実験セットの結果はCA1及びCA3の間の差としてではなく、CA3サブ領域に渡るバースト活性の変動性の関数として生じると考えられる。本発明者等はこの可能性を3実験において試験した。CA1において自発的バーストが停止した直後、本発明者等は記録電極を用いてCA3電場を調べた。数箇所の異なるCA3位置(CA3の最も近位から最も遠位の部分)からの記録はCA3域の全サブ領域がCA1がサイレントである時間中に自発的バーストしていたことを示していた。
【0206】
CA1がサイレントとなった後もCA3が自発的に放電を継続したという観察結果は、CA3における集団放電が一般的には興奮性シナプス伝達を介してCA1における放電を誘発すると考えられていることからすれば、予測されないものであった。前述の通り、シャファー側枝に送達された単回パルス刺激は自発的バーストのブロック後であってもなおCA1において多重集団スパイクを誘発しており;即ち、CA3からCA1への過剰興奮の興奮性シナプス伝達は未損傷であった。このように維持されたシナプス伝達及び継続的な自発的電場放電がCA3に存在すると仮定して、本発明者等はCA1における自発的バーストの損失は投入される興奮性駆動力の同期の低減に起因すると推定した。更に又、CA3における自発的癲癇様放電は最終的にはやはり停止するため、この脱同期課程は2つの海馬サブ電場において異なる時点で生じていたと考えられる。
【0207】
実施例72
CA1及びCA3電場集団放電の同期に対するクロリド共輸送拮抗の作用
実施例4の観察結果は低−[Cl−]o又はフロセミド含有培地への曝露時間と自発的バースト活性の特徴の間の時間的関係を示唆していた。更に又この関係はCA1及びCA3域の間で異なっていた。時間的関係をより明確化するため、本発明者等は自発的及び刺激誘発バースト放電の間のCA1及びCA3の電場応答において、CA1活動電位の発生と集団スパイク事象を比較した。
【0208】
細胞内記録はCA1電場電極に近接(<100μM)して配置した細胞内電極を用いてCA1錐体細胞から得た。シャファー側枝に送達される単回刺激を用いて20秒毎にスライスを刺激した。少なくとも20分間持続的自発的バーストが確立された後、バス培地をビククリン含有低−[Cl−]o(21mM)培地に切り替えた。約20分の後、バーストの周波数と振幅はその最大値となった。この時間の間の同時の電場及び細胞内の記録はCA1電場及び細胞内記録がCA2電場放電と緊密に同期していたことを示していた。各自発的放電の間、CA3電場の応答はCA1放電より数ミリ秒先行していた。刺激誘発事象の間、CA1錐体細胞の活動電位放電はCA3及びCA1の両方の電場放電と緊密に同期していた。
【0209】
低−[Cl−]o培地に連続して曝露したところ、CA1及びCA3域の自発的放電の間の潜時は増大し、最大潜時30〜40ミリ秒はビククリン含有低クロリド培地への曝露後30〜40分に起こった。この時間、CA1及びCA3療法の自発的電場放電の振幅は減少した。この時間の刺激誘発放電は形態学的特徴及び相対的潜時において自発的に生じる放電を緊密に模倣していた。しかしながら、ニューロンの初期刺激誘発脱分極(恐らくは単シナプスEPSP)は如何なる顕著な潜時増大も伴うことなく開始した。これ等のデータを獲得した時間の間隔はCA1における自発的バーストの停止の直前の時間に相当している。
【0210】
低−[Cl−]o培地を用いた灌流40〜50分の後、自発的バーストはCA1ではほぼ消失したが、CA3では影響が無かった。この時間のシャファー側枝刺激は、CA1錐体細胞の単シナプストリガー応答は潜時の如何なる顕著な増大も伴わずに生じたが、刺激誘発電場応答はほぼ消失したことを示している。これ等のデータを獲得した時間の間隔はCA3における自発的バーストの停止の直前の時間に相当している。
【0211】
低−[Cl−]o培地に長期間曝露した後、シャファー側枝刺激とその結果生じるCA3電場放電との間の潜時において多大な増大(>30ミリ秒)が生じた。最終的にはCA1及びCA3域のいずれにおいてもシャファー側枝刺激により誘発された電場応答は無かった。しかしながら、シャファー側枝に応答したCA1錐体細胞からの活動電位の放電は応答潜時の変化を殆ど伴うことなく誘発された。実際、実験の全持続時間(2時間超)につき、CA1錐体細胞からの活動電位放電はシャファー側枝刺激により短い潜時で誘発された。更に又、CA3の刺激誘発過剰興奮放電は低−[Cl−]o培地への長時間曝露後に最終的にはブロックされたが、CA3における逆行性の応答は温存されているように観察された。
【0212】
実施例73
CA1錐体細胞におけるバースト放電の同期に対するクロリド共輸送拮抗の作用
上記したデータは電場応答の消失はニューロン間の活動電位の発生の脱同期による可能性があることを示している。即ち、CA1錐体細胞のシナプス駆動興奮は温存されなかったが、CA1ニューロン集団内の活動電位の同期性は合算して測定可能なDC電場応答とするには十分ではなかった。これを試験するために、CA1錐体細胞のペア型細胞内記録をCA1電場応答と同時に獲得した。これらの実験においては、細胞内電極及び電場記録電極の両方を相互に200μm以内に設置した。
【0213】
ビククリン含有低−[Cl−]o培地により誘導された最大自発的活性の期間、記録はAC1ニューロンとCA1電場放電のペアの間の活動電位が自発的及び刺激誘発放電の間の両方で堅固に同期していたことを示している。低−[Cl−]o培地に連続曝露した後、CA1電場放電の振幅がブロード化して減衰し始めた時点において、自発的及び刺激誘発放電の両方とも、CA1ニューロンのペアの間の活動電位の発生のタイミングにおいて、及び、活動電位と電場応答の間において、脱同期を示していた。脱同期はCA1電場増幅の抑制と一致していた。CA1における自発的バーストが停止する時間までは、シャファー側枝刺激とCA1電場放電の間の潜時の顕著な増大が生じた。この時点において、ペア型細胞内記録はニューロンペアの間の活動電位放電のタイミングにおける、及び、活動電位の発生とシャファー側枝刺激誘発電場放電との間の劇的な脱同期を示していた。
【0214】
観察されたCA1活動電位放電の脱同期は、シナプス放出のタイミングの崩壊、又は、ニューロン過程におけるランダム伝導不全のようなシナプス駆動の活動電位発生の為に必要な機序のランダム化に起因する可能性がある。その場合、所定のニューロンペアの間の活動電位の発生が刺激ごとに相互に対して極めてランダムに変動することが予測される。本発明者等はこのことを、シャファー側枝の複数回の連続した刺激の間のニューロンペアの活動電位放電のパターンを比較することにより試験した。各刺激事象の間、活動電位は相互に対してほぼ同一の時点において発生し、刺激ごとにほぼ同一のバーストの形態学的特徴を示した。本発明者等は又自発的電場放電の間のニューロンの所定のペアの間の活動電位の発生が時間的に固定されているかどうか調べた。CA1ニューロンの所定のペアからの活動電位放電のパターンを、活動電位の発生が明らかに脱同期していた時間の連続自発的電場バーストの間で比較した。上記した刺激誘発活動電位放電の場合と同様、自発的集団放電の間に発生した活動電位は相互に対してほぼ同一の時点において生じ、1つの自発的放電と次のものとではほぼ同一のバーストの形態学的特徴が観察された。
【0215】
実施例74
自発的シナプス活性に対する低クロリド投与の作用
クロリド共輸送拮抗に関連する抗癲癇作用は伝達物質放出の一部の作用により媒介される可能性がある。クロリド共輸送のブロックは末端から放出される伝達物質の量とタイミングを改変し、これによりニューロン同期に影響する可能性がある。低−[Cl−]o曝露が伝達物質放出に関連する機序に影響するかどうかを調べるために、シナプス前末端からの伝達物質の自発的シナプス放出を劇的に増大させる投与の間、細胞内CA1応答をCA1及びCA3電場応答と同時に記録した。
【0216】
伝達物質の増大した自発的放出は4−AP(100μM)投与により誘導された。4−AP含有培地への40分曝露の後、自発的同期バースト放電がCA1及びCA3域で記録された。4−AP含有低−[Cl−]o培地への切り替えにより、最初は以前に観察された通り自発的バーストが増強された。ハイゲインの細胞内記録は高振幅自発的シナプス活性が4−AP投与により惹起されたことを示していた。低クロリド培地に更に曝露したところ、CA1におけるバースト放電はブロックされたが、CA3は自発的に放電を継続した。この時点において、CA1細胞内記録は自発的シナプスノイズが更に増大し、4−AP含有低クロリド培地への長期曝露時間においてその状態が維持された。これ等のデータは末端からのシナプス放出を担う機序は、CA1における4−AP誘導自発的バーストのブロックを説明する態様においては低クロリド曝露による悪影響を受けないことを示唆している。これ等の結果は又、低−[Cl−]o曝露の作用は、PSPを身体に伝導するそれらの効率を犠牲にするCA1樹状特性における改変に起因する可能性を排除している。
実施例75〜79に関する実験方法
以下の実験の全てにおいて、[Cl−]oはNaClとNa+−グルコネートの等モル置き換えにより低減した。幾つかの理由により他のアニオン交換ではなくグルコネートを使用した。第1にパッチクランプ試験により、グルコネートは実質的にクロリドチャンネルに対して非浸透性であるのに対し、他のアニオン(例えばスルフェート、イセチオネート及びアセテート)は種々の程度まで浸透性であると考えられることがわかった。第2に細胞外カリウムの神経膠NKCC1共輸送を介した輸送は細胞外クロリドがグルコネートによって置き換えられる場合はブロックされるが、イセチオネートで置き換えられる場合は完全にはブロックされない。このフロセミド感受性共輸送体は細胞膨潤及び細胞外空間(ECS)の体積変化において顕著な役割を果たすため、本発明者等の投与の作用が以前のフロセミド実験 (Hochman et al.Science,270:99−102,1995;U.S.Pat.No.5,902,732)に匹敵するように適切なアニオン置き換えを用いることを本発明者等は希望した。第3に、ホルメート、アセテート及びプロピオネートはCl−代替として使用すると弱酸を発生させ、細胞内pHの急速な低下をもたらし;グルコネートは細胞外に残存し、そして、細胞内pH変動を誘導するとは報告されていない。第4に、比較目的のために、本発明者等は、ECSの活性誘発変化に対する低−[Cl−]oの作用を調べる以前の試験で使用されていたものと同じアニオン置き換えを使用することを希望した。
【0217】
特定のアニオンの置き換えがカルシウムをキレートするという示唆が一部存在する。後の研究はカルシウムをキレートするアニオン置換の如何なる顕著な能力を明確にすることもできなかったが、この問題に関しては文献においてなお懸案となっている。カルシウムキレート形成は以下の実験においては、静止期の膜電位が正常に維持されており、そして、グルコネート置換により[Cl−]oが低減されている培地への曝露の数時間の値であってもシナプス応答(実際は過剰興奮シナプス応答)が起こりえることから、問題とならないと考えられた。更に又本発明者等は本発明者等の低−[Cl−]o培地におけるカルシウム濃度はCa2+選択的マイクロ電極を用いて測定した本発明者等の対照培地におけるものと同一であることを確認している。
【0218】
Sprague−Dawley成熟ラットを前述の通り調製した。慨すれば厚み400μmの横断海馬スライスを振動カッターで切り出した。スライスは典型的には全海馬及び鉤状回を含有していた。切り出した後、スライスは記録前少なくとも1時間は酸素添加保持チャンバー内に保存した。全ての記録は34〜35℃において酸素添加(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(ACSF)と共にインターフェイス型のチャンバー内で獲得した。通常のACSFは(mmol/l単位で)124NaCl、3KCl、1.25NaH2PO4、1.2MgSO4、26NaHCO3、2CaCl2及び10デキストロースを含有していた。一部の実験においては、ビククリン(20μM)、4−AP(100μM)又は高K+(12mM)を含有する通常又は低クロリドの培地を使用した。NaClとNa+−グルコネート(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)の等モル置き換えにより低クロリド溶液(7、16及び21mM[Cl−]o)を調製した。全ての溶液は約それらが35℃において、そして95%O2/5%CO2を用いた炭酸添加による平衡状態において7.4のpH及び290〜300mOsmの浸透圧を有するように調製した。
【0219】
CA1錐体細胞からの細胞内記録のためには4M酢酸カリウムを充填したSharp電極を使用した。CA1又はCA3細胞体層からの電場の記録はNaCl(2M)を充填した低抵抗ガラス電極を用いて獲得した。シャファー側枝経路の刺激のためには、小型単極電極をCA1及びCA3域の間の中央でスライス表面に設置した。電場からの自発的及び刺激誘発の活性及び細胞内記録をデジタル化(Neurocorder,Neurodata Instruments,New York,N.Y.)し、ビデオテープに保存した。PC−コンピューター上のAxoScopeソフトウエア(Axon Instruments)を用いてデータのオフライン分析を行った。
【0220】
イオン選択的マイクロ電極は当該分野で良く知られている標準的方法に従って作成した。ダブルバレルのピペットを引き伸ばし、約3.0μmの尖端直系となるように切断した。比較対照バレルにACSFを充填し、そして他のバレルはシラン処理し、尖端はK+に関して選択性の樹脂(Corning477317)で逆充填した。シラン処理バレルの残余にはKCl(140mL)を充填した。各バレルはAg/AgClワイアを介して高インピーダンスデュアル示差式増幅器(WPIFD223)に導入した。各イオン選択性のマイクロ電極は既知イオン組成の溶液を用いてカリブレーションし、そしてほぼNernst型の傾きの応答を特徴とする場合、及び実験期間中を通して安定であり続けた場合に適当とみなした。
【0221】
インターフェースチャンバー内に入れた後、スライスを約1ml/分で表面洗浄した。この低流量においては、灌流培地の交換が完了するまで8〜10分間を要した。ここで報告した時間は全て、この遅延を考慮しており、約±2分の誤差を有している。
【0222】
実施例75
CA1電場記録に対する低−[Cl−]oの作用
他の試験によれば皮質及び海馬スライスの低−[Cl−]oへの曝露は基礎的な内因性及びシナプス性の特徴、例えば入力抵抗、静止期の膜電位、脱分極誘導活動電位発生又は興奮性シナプス伝達には影響しないことが示されている。以前の試験は又海馬のCA1域への低−[Cl−]o曝露の癲癇誘発特性を部分的に特性化している。以下の試験は低−[Cl−]o誘導過剰興奮性及び過剰同期の開始及び考えられ得る停止の時間を観察するために実施した。スライス(n=6)はCA1錐体細胞及びCA1細胞体層においてそれぞれ安定な細胞内及び電場の記録が樹立されるまで先ず通常の培地で灌流した。2実験において、実験の全過程に渡り同じ細胞を保持した(2時間超)。残余の実験(n=4)においては、初期細胞内記録は培地交換の回には消失し、そして異なる細胞から追加的記録を獲得した。これらの実験におけるニューロン活性のパターンは単細胞を観察した場合に見とめられたものと同一であった。
【0223】
電場及び細胞内電極は常時、相互に近接して設置した(<200μm)。各々の場合において、低−[Cl−]o培地(7mM)への約15〜20分の曝露の後、最初は細胞レベルで、そして次に電場レベルで自発的バーストが生じた。この自発的電場活性はニューロンの大集団における同期バースト放電を示しており、5〜10分間継続した後、電場記録はサイレントとなった。電場が最初にサイレントとなった時点で、細胞は自発的に放電を継続した。この結果は集団活性は「脱同期」していたが、ここの細胞が放電する能力は減損していなかったことを示唆している。低−[Cl−]o培地への約30分の曝露の後、細胞内記録は、電場がサイレントを維持しているにもかかわらず細胞は自発的に放電を継続していたことを示している。2時点における細胞内電流注入に対する細胞の応答は、活動電位を発生させる細胞の能力が低−[Cl−]o曝露により減損されなかったことを示している。更に又、CA1放線状層における電気的刺激はバースト放電を惹起し、過剰興奮状態が組織内で維持されていたことを示していた。
【0224】
実施例76
CA1における高−[K+]o誘導癲癇様活性に対する低−[Cl−]oの作用
実験の以前のセットは低−[Cl−]o培地への組織曝露は10分以内に停止する短時間の自発的電場の電位バーストを誘導したことを示している。[Cl−]oの低下が実際に最終的に自発的癲癇様(即ち同期)バーストをブロックすることが可能であるとすれば、これ等の結果は、この初期期間のバースト活性が停止した後にのみ抗癲癇作用が観察可能であることを示唆している。従って本発明者等は、高−[K+]o誘導バースト活性に対する低−[Cl−]o投与の時間的作用を調べた。[K+]oを12mMまで上昇させておいた培地にスライス(n=12)を曝露し、電場の電位をCA1細胞体層中の電場電極を用いて記録した。自発的電場電位バーストは少なくとも20分間観察され、そして次に、[K+]oを12mMに維持しつつ[Cl−]oを21mMまで低下させた培地にスライスを曝露した。組織を低−[Cl−]o/高−[K+]o培地に曝露した後15〜20分以内に、バーストの振幅が増大し、各電場の事象はより長い持続時間を有していた。この短時間の促進された電場活性(5〜10分間継続)の後、バーストは停止した。このブロックが可逆であるかどうかを試験するために、電場電位が少なくとも10分間サイレントとなった後に、本発明者等は通常の[Cl−]oを有する高−[K+]o培地に戻した。バーストは20〜40分以内に復帰した。各実験中を通して、シャファー側枝刺激に対するCA1電場応答をモニタリングした。最大電場応答は、自発的バーストの停止直前、自発的バーストが最大の振幅を有していた期間中に記録された。しかしながら自発的バーストのブロック後であっても、多重集団スパイクがシャファー側枝刺激により惹起され、シナプス伝達が未損傷であること、及び組織が過剰興奮を維持していることを示していた。
【0225】
4スライスにおいて、CA1錐体細胞の細胞内記録をCA1電場記録と共に獲得した。高−[K+]o誘導自発的バーストの期間中、シナプス後電位(PSP)が良好に観察できるように細胞内に過剰分極電流を注入した。自発的バーストの低−[Cl−]oブロックの後、自発的に生じた活動電位及びPSPがなお観察された。これ等の観察結果はシナプス活性自体は低−[Cl−]o投与によりブロックされなかったという見解を更に裏付けている。
【0226】
実施例77
CA1及びCA3における4−AP、高−[K+]o及びビククリンにより誘導された癲癇様活性の低−[Cl−]oブロック
本発明者等は次に、本発明者等がフロセミド投与に関して示したように、異なる薬理学的投与により惹起されたCA1及びCA3域における癲癇様活性を低−[Cl−]o投与がブロックできるかどうかを試験した。この実験セットにつき、本発明者等は高−[K+]o(12μM)(n=5)、4−AP(100μM)(n=4)及びビククリン(20及び100μM)(n=5)により誘導しておいた自発的バーストに対する低−[Cl−]o投与の作用を試験することを選択した。実験の各々のセットにおいて、電場応答はCA1及びCA3域から自発的に記録し、そして各々の場合において、灌流培地中の[Cl−]oを21mMに低下させた後30分以内にCA1及びCA3域の両方における自発的癲癇様活性を可逆的にブロックした。これ等のデータは、フロセミドと同様、低−[Cl−]oは癲癇様活性の最も一般的に研究されているインビボモデルの幾つかにおいてに自発的バーストを可逆的にブロックすることを示唆している。
【0227】
実施例78
高−[K+]o誘導癲癇様活性のブロックに対する低−[Cl−]o及びフロセミドの間の比較
前の実験セットから得られたデータは、低−[Cl−]o及びフロセミドの両方の抗癲癇作用は同じ生理学的機序に対するそれらの作用により媒介されるという仮説と合致している。この仮説を更に検討するために、本発明者等はCA1内の電場電極を用いた記録として高−[K+]o誘導バーストに対する低−[Cl−]o(n=12)及びフロセミド(2.5及び5mM)(n=4)の作用の時間的シーケンスを比較した。これにより低−[Cl−]o及びフロセミド両方の投与が同様の時間的シーケンスの作用、即ち初期の短い時間の電場活性の増幅振幅及びその後の自発的電場活性ブロック(可逆)を誘導したことがわかった。両方の場合において、シャファー側枝の電気的刺激により、自発的バーストがブロックされた後であっても過剰興奮応答が惹起された。
【0228】
実施例79
変動[K+]oを含有する低−[Cl−]o培地への延長曝露の結果
上記した実験において、本発明者等は低−[Cl−]o曝露により自発的バーストがブロックされた後1時間を超えて一部のスライスにおける電場活性をモニタリングした。このような延長された曝露の後、自発的な長時間持続する脱分極シフトが発生した。これ等の後発電場事象の形態学的特徴及び頻度は細胞外カリウム及びクロリド濃度に関連すると考えられた。これ等の観察結果を理由として、本発明者等は、系統的に[Cl−]o及び[K+]oを変動させた実験セットを実施し、後発自発的電場事象に対するこれ等のイオンの変動の作用を観察した。
【0229】
本発明者等の最初の実験セットにおいて、低[Cl−]o含有(7mM)及び通常の[K+]o(3mM)(n=6)を含有する培地にスライスを曝露した。この培地に50〜70分間曝露した後、自発的事象をCA1域において記録し;これ等の事象はDC電場において5〜10mVネガティブシフトとして生じており、初回エピソードは30〜60秒持続した。その後の各エピソードは前のものより長時間であった。この観察結果は、非ホメオスタシス性の機序がバス培地中イオン濃度の結果として経時的に減衰したことを示唆している。これ等のネガティブDC電場シフトが誘導された一部の実験(n=2)において、CA1錐体細胞の細胞内記録をCA1電場記録と同時に獲得した。
これらの実験の為に、細胞内及び電場の記録を相互に近接して獲得した(<200μm)。各ネガティブ電場シフトの前(10〜20秒)にニューロンは脱分極を開始した。細胞の脱分極は休止期膜電位の減少、自発的発火頻度の上昇及び活動電位振幅の低下により示された。ネガティブ電場シフトの開始と合致して、細胞は十分脱分極したため、自発的又は電流惹起(説明せず)の活動電位を発火することができなかった。ニューロン脱文局は電場シフトの10〜20秒前に開始したため、細胞外カリウムの経時的増大によりニューロン集団の脱分極がもたらされ、これによりこれ等の電場事象が開始したと考えられる。[K+]oのこのような上昇は、通常はカリウムを細胞外から細胞内空間に移動させるクロリド依存性神経膠共輸送機序の改変に起因すると考えられる。[K+]oの上昇がこれ等のネガティブ電場シフト(及び平衡した細胞脱分極)に先行したかどうか試験するために、K+−選択性マイクロ電極を用いて[K+]oにおける変化を記録した実験(n=2)を実施した。
【0230】
各実験において、K+−選択性マイクロ電極及び電場電極を相互に近接(<200μm)させてCA1錐体層に設置し、そして集団スパイクの規模がモニタリングできるように20秒毎にシャファー側枝に刺激パルスを送達した。多重自発的発生ネガティブ電場シフトは低−[Cl−]o(7mM)培地で灌流することにより誘発した。各事象には[K+]oの顕著な上昇が伴っており、[K+]oの上昇はネガティブ電場シフト開始の数秒前に開始していた。緩徐な1.5〜2mMの[K+]oの上昇が各事象開始の前に、約1−2分秒の時間間隔に渡って発生した。刺激誘発電場応答は、ネガティブ電場シフトの直前まで[K+]oの上昇を伴いながら経時的に緩徐に振幅が増大した。
【0231】
第2の実験セット(n=4)においては、[K+]oを12mMまで上昇させ、そして[Cl−]oを16mMまで上昇させた。この培地に50〜90分間曝露した後、CA1域において緩徐な振動が記録された。これ等の振動は電場電位の5〜10mVのネガティブDCシフトを特徴としており、そして約1サイクル/40秒の周期性を有していた。初期にはこれ等の振動は完結的に生じ、そして不規則な形態を有していた。経時的にこれ等の振動は連続性となり、そして規則的な波形を生じさせた。フロセミド(2.5mM)への曝露により、振動の振幅は徐々に減少し、振動が完全にブロックされるまで周波数は増大した。これ等のスライスにおけるこのような低−[Cl−]o誘導振動は以前には報告されていない。しかしながら、振動事象の時間的特性は、純粋に軸索のプレパレーションで以前に報告されていた低−[Cl−]o誘導[K+]o振動に酷似していた。
【0232】
第3の実験セット(n=5)においては、[Cl−]oを更に21mMまで上昇させ、そして[K+]oを3mMまで再低下させた。これらの実験において、単一の頻繁ではない電場電位のネガティブシフトが40〜70分以内に生じた(データ示さず)。これ等の事象(5〜10mV)は40〜60秒間持続し、ランダムな間隔で起こり、そして実験中を通じて比較的一定の持続時間を維持した。これ等の事象はシャファー側枝に送達された単回電気刺激により惹起される場合がある。
【0233】
最後に、最終の実験セット(n=5)において、[Cl−]oを更に21mMまで上昇させ、そして[K+]oを12mMまで上昇させた。これらの実験において、遅発性の自発的電場事象は実験過程中(2〜3時間)観察されなかった。
【0234】
実施例80
低クロリド曝露中の[K+]oの変化
Sprague−Dawley成熟ラットは前述の通り調製した。厚み400μmの横断海馬スライスを振動カッターで切り出し、記録前1時間は酸素添加保持チャンバー内に保存した。K+選択的マイクロ電極記録の為には浸積型のチャンバーを使用した。スライスは34〜35℃において酸素添加(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(ACSF)で灌流した。通常のACSFは10mMデキストロース、124mM NaCl、3mM KCl、1.25mM NaH2PO4、1.2mM MgSO4、26mM NaHCO3及び2mM CaCl2を含有していた。一部の実験においては100μMで4−アミノピリジン(4−AP)を含有する通常又は低クロリドの培地を使用した。NaClとNa+−グルコネート(Sigma Chemical Co.)の等モル置き換えにより低クロリド溶液(21mM[Cl−]o)を調製した。
【0235】
CA1又はCA3細胞体層からの電場の記録はNaCl(2M)を充填した低抵抗ガラス電極を用いて獲得した。シャファー側枝経路の刺激のためには、単極ステンレス電極をCA1及びCA3域の間の中央でスライド表面に設置した。全記録はデジタル化(Neurocorder,Neurodata Instruments,New York,NY)し、ビデオテープに保存した。
【0236】
K+−選択性マイクロ電極は標準的な方法に従って作成した。慨すれば、ダブルバレルのピペットの比較対照バレルにACSFを充填し、そして他のバレルはシラン処理し、尖端はK+選択性樹脂(Corning477317)と共にKClで逆充填した。イオン選択性のマイクロ電極をカリブレーションし、そしてほぼNernst型の傾きの応答を有し、実験期間中を通して安定であり続けた場合に適当とみなした。
【0237】
低−[Cl−]o培地への海馬スライスの曝露はCA1錐体細胞の活性に対する変化の時間依存性シーケンスを包含することが分かっており、上記した3つの特徴的な段階をともなう。慨すれば、低−[Cl−]o培地への曝露により短時間の増大した過剰興奮及び自発的癲癇様放電が生じる。更に低−[Cl−]o培地に曝露すると、自発的癲癇様活性はブロックされるが、細胞内過剰興奮は残存し、活動電位発火時間は相互に低同期性となる。最終的に、曝露を延長すれば、活動電位発火時間は刺激誘発電場応答が完全に消失するように十分脱同期するが、なお個々の細胞はシャファー側枝刺激に対する単シナプス誘発応答を示し続ける。以下の結果はクロリド共輸送拮抗に対するフロセミドの抗痙攣作用は興奮性シナプス伝達に対する直接の作用とは無関係であり、そして本発明者等の何れかの付随した興奮性低下との集団活性の脱同期の結果である。
【0238】
6海馬スライスにおいて、K+選択性の電場マイクロ電極をCA1細胞体層に設置し、刺激電極をシャファー側枝経路に設置し、単回パルス刺激(300μs)を20秒毎に送達した。少なくとも20分間安定なベースライン[K+]oが得られた後、灌流を低−[Cl−]o培地に切り替えた。低−[Cl−]o培地曝露1〜2分以内に[K+]oの上昇が開始するに従って電場応答は過剰興奮性となった。低−[Cl−]o培地曝露約4〜5分の後、電場応答の規模が減衰し、完全に消失するに至った。[K+]oの相当する記録はカリウムが低−[Cl−]o培地曝露直後に上昇を開始し、そしてこの[K+]o上昇の最大値は時間において最大過剰興奮CA1電場応答に相当していた。電場応答の規模の低下と合致して、[K+]oは減衰を開始し、低−[Cl−]o培地曝露への8〜10分間曝露の後まで至り、そして実験の残余期間については1.8〜2.5mM対照水準より高値において一定となった。4スライスを対照培地に戻し、完全に回復させた。次に放線中に設置したK+選択性マイクロ電極を用いて実験を反復した。[K+]oの同様のシーケンス変化が樹状層において観察され、[K+]oの値は細胞体層で観察されたものよりも0.2〜0.3mM低値であった。
【0239】
4海馬スライスにおいて、対照状態とCA1電場応答が低−[Cl−]o培地曝露により完全に消失した後との間で[K+]oの刺激誘発変化の応答を比較した。各スライスにおいて、[K+]o選択性測定は先ず細胞体層において獲得し、そして次に、対照培地中で完全回復させた後、放線に移動させたK+選択性電極を用いて実験を反復した。各刺激の試行は5秒間シャファー側枝に送達した10Hzの斉射よりなるものとした。[K+]oの最大上昇は対照条件と低−[Cl−]o培地延長曝露後との間、及び、細胞体と樹状層の間で同様であった。しかしながら、低−[Cl−]o培地延長曝露後に観察された回復時間は対照条件の間に観察されたものよりも顕著に長期化していた。
【0240】
これ等の結果はフロセミドの投与が細胞外空間における増大した[K+]oをもたらしたことを示している。低−[Cl−]o培地への脳組織の曝露は即座に1〜2mMの[K+]oの上昇を誘導し、これは曝露持続時間中を通じて維持され、興奮性における初期の増大及びCA1電場応答の最終的消失と合致していた。低−[Cl−]o曝露中のCA1電場応答のこの消失はニューロン発火時間の脱同期により可能性が最も高い。重要な点として、細胞体及び樹状層の両方における[K+]oの刺激誘発上昇はCA1電場応答の完全低−[Cl−]oブロックの前後においてほぼ同一であった。このデータは対照条件下及び電場の低−[Cl−]oブロック後において、相互に匹敵する刺激誘発シナプス駆動及び活動電位発生が生じたことを示唆している。総括すると、これ等のデータは、クロリド共輸送アンタゴニストフロセミドの抗癲癇及び脱同期作用は興奮性シナプス伝達に対する直接の作用とは無関係であり、そして興奮性の低下を伴わない集団活性の脱同期の結果であることを示している。
【0241】
実施例81
低クロリド曝露中の細胞外pHの変化
フロセミド及び低−[Cl−]oのようなアニオン/クロリド依存性共輸送体のアンタゴニストは同期集団活性の維持に寄与する可能性がある細胞外pH変遷に影響する可能性がある。NaHCO3を等モル量のHEPES(26nM)と置き換え、そしてインターフェイス型チャンバーを使用した以外は実施例80に記載の通りラット海馬脳スライスを調製した。
【0242】
4海馬脳スライスにおいて、実施例13に記載の通り100μM4−APを含有する培地への曝露により連続自発的バーストが惹起された。電場記録はCA1及びCA3域において細胞体層から同時に獲得した。実験期間中を通じてシャファー側枝に30秒毎に刺激を送達した。連続的バーストが少なくとも20分間観察された後、スライスを名目上重炭酸非含有の4−AP含有HEPES培地に曝露した。HEPES培地への延長曝露(0.2時間)の結果としては、自発的及び刺激誘発の電場応答には顕著な変化は観察されなかった。スライスをHEPES培地に少なくとも2時間曝露した後、[Cl−]oを21mMまで低下させた4−AP含有HEPES培地に灌流を切り替えた。低−[Cl−]oHEPES培地への曝露は低−[Cl−]oNaHCO3含有培地を用いて以前に観察されたものと同じシーケンスの事象及び時間的経過を誘導した。自発的バーストの完全なブロックの後、灌流培地を通常の[Cl−]oを含有するHEPESに戻した。20〜40分以内に自発的バーストが再開した。自発的バーストが再開した時点で、スライスをは目上重炭酸非含有のHEPES培地で3時間超灌流されていた。
【0243】
このデータは同期及び興奮性に対するクロリド共輸送拮抗の作用は細胞外pHの動的特徴に対する作用とは無関係であることを示唆している。
【0244】
図4は低減された[Cl−]の条件下におけるイオン共輸送の模式的モデルを示す。図4Aの左パネルはフロセミド感受性K+、C−共輸送体を介したイオンの流出によりニューロン内のIPSPの生成に必要なクロリド勾配が維持されることを示している。通常の条件下においては、高濃度の細胞内カリウム(3Na+、2K+−ATPaseポンプにより維持されている)はCl−のその濃度勾配に対抗した排出のための駆動力として作用する。神経膠細胞においては、図4Aの右パネルに示す通り、フロセミド感受性NKCC共輸送体を介したイオンの移動は細胞外から細胞内空間に至る。この共輸送に必要なイオン勾配は部分的には「膜貫通ナトリウム周期」により維持され:NKCC共輸送を介して神経膠細胞内に取り込まれたナトリウムイオンは、低い細胞内ナトリウム濃度が維持されるように3Na+、2K+−ATPaseポンプにより連続的に排出される。フロセミド依存性共輸送体を介したイオン流出の速度及び方向は、ニューロンK+、Cl−共輸送体に関しては[K+]ix[Cl−]i−[K+]ox[Cl−]o)として、そしてNKCC共輸送に関しては[Na+]ix[K+]ix[Cl−]2i−[Na+]Ox[K+]ox[Cl−]2o)として記載されるそのイオン積差と関数的に比例している。このイオン積差の符号はイオン輸送の方向を示しており、正が細胞内から細胞外空間となる。
【0245】
図4Bは延長された低−[Cl−]o曝露の結果として上昇する遅発自発的電場事象の出現を説明する模式的現象学的モデルを示す。本発明者等はニューロン及び神経膠に関するイオン積の差をそれぞれQN及びQGと標記する。対照条件下(1)において、ニューロンに関するイオン積の差はK+及びC−が細胞内から細胞外空間に共輸送される場合のもの(QN>0)であり;神経膠細胞異関するイオン積の差はNa+、K+及びC−がECSから細胞内コンパートメントに共輸送される場合のもの(QG<0)である。[Cl−]oが低下(2)すると、KClのニューロン流出が増大するようにイオン積差が変化するが;細胞内から細胞外空間へのKCl及びNaClの実質的流出が存在するように神経膠のイオン共輸送は逆転する(QG>0)。これ等の変化により経時的な細胞外カリウムの蓄積が起こる。最終的には[K+]oはニューロン集団の脱分極を誘導する水準まで達し、より大量の[K+]o蓄積をもたらす。この細胞外イオン大量蓄積はその後、KClが細胞外から細胞内空間に移動するようにイオン積差を逆転するように機能する(QN<0、QG<0)(3)。細胞外カリウムのその後のクリアランスにより最終的には膜貫通イオン勾配は初期状態に戻る。この過程を周期的に行うことにより、反復負電場事象が発生する。
【0246】
実施例82
神経障害性疼痛の動物モデルにおける疼痛症状の緩和におけるフロセミドの治療効果
フロセミドが疼痛を緩和する能力をChungモデルを用いながらげっ歯類において検査する(例えばWalker et al.Mol.Med.Today 5:319−321,1999参照)。16匹の成熟雄性Long−Evansラットを本試験において使用する。全ラットは以下に詳述する通りL5神経の脊髄結紮に付す。ラット16匹のうち8匹にはフロセミドを注射(静脈内)し、そして残余の8匹にはビヒクルのみを静脈内注射する。機械的足蹠屈曲試験を用いて疼痛閾値を迅速に試験する。2群間の疼痛閾値の差を比較する。フロセミドが疼痛を緩和する場合は、フロセミド投与群はビヒクル投与群よりも高い疼痛閾値を示す。
【0247】
神経障害のChungモデル
脊髄神経結紮は左側L4−L6脊髄神経に接触するために動物を腹臥位としながらイソフロウラン麻酔下に実施する。拡大下に、約三分の一の横突起を除去する。L5脊髄神経を同定し、注意深く隣接するL4脊髄神経を切除し、次に6−0シルク縫合糸を用いて強く結紮する。創傷を消毒溶液で処理し、筋肉層を結紮し、切開を創クリップで閉鎖する。機械的足蹠屈曲閾値の行動試験を切開後3〜7日間内に行う。慨すれば、動物をプレクシガラスチャンバー(20x10.5x40.5cm)内に配置し、15分間馴化させる。チャンバーをメッシュスクリーンの最上部に配置したため、機械的刺激を両後肢の足底表面に与えることができる。各々の後肢の機械的閾値測定は8つのvon Freyモノフィラメント(5、7、13、26、43、64、106、及び202mN)による上/下方法を用いて得られる。各々の試験は約1秒間右後肢、次に左後肢に送達される13mNのvon Frey力で開始される。屈曲応答がない場合、次に高い力を送達する。応答があれば、次に低い力を送達する。最高力(202mN)で応答がないか、初期応答の後に4つの刺激が与えられるまで、この操作法を実行する。各々の足蹠に対する50%足蹠屈曲閾値は以下の式を用いて計算される:[Xth]log=[vFr]log+ky、ここで[vFr]は使用した最後のvon Frey力であり、ここでk=0.2268がvon Freyモノフィルメント間の平均間隔(対数単位)であり、yは屈曲応答のパターンに依存する値である。動物が最大von Frey毛(202mN)に応答しない場合、y=1.00であり、かつ足蹠に対する50%機械的足蹠屈曲反応は340.5mNであると計算される。機械的足蹠屈曲閾値試験は3回実行され、50%屈曲値は3回の試験を通して平均化され、各々の動物の右及び左足蹠に対する平均機械的足蹠屈曲閾値が決定される。
【0248】
実施例83
激しい不安又は心的外傷後ストレス障害における疼痛症状の緩和におけるフロセミド及びブメタニドの治療効果
心的外傷後ストレス障害の治療におけるフロセミド及びブメタニドの治療有効性をラットにおける文脈的恐怖条件付けにおける激しい不安の緩和に対するこれらの化合物の能力を決定することにより検査する。
【0249】
文脈的恐怖条件付けは、嫌悪事象、この場合は適度の足ショック、と独特の環境との組み合わせを必要とする。恐怖記憶の強度を、呼吸以外は完全な不動により特徴づけられるラットにおける種特有の防御的反応であるすくみ行動(freezing)を用いて評価する。ラットは独特の環境内に配置され、即座にショックを受けた場合、これらは文脈的に恐怖を学ばない。しかしながら、即座のショックの前に独特の環境の調査を許した場合、同一環境内に戻された際に激しい不安と恐怖を示す。本発明者等はこの事実を利用することができ、文脈的恐怖条件付けを2つの相に手続き的に分割することにより、文脈とショックの間の連想を学習すること又は(扁桃体を含む感情応答回路に依存した)ショックの摩損性を経験することから、文脈(特に海馬に基づく過程)に対する記憶上の治療効果を別々に研究できる。ヒトの心的外傷後ストレス障害(PTSD)は扁桃体中の感情応答回路に関連することが示されており、この理由で文脈記憶条件付けはPSTDに対し広く許容できるモデルである。
【0250】
実験には24匹のラットを使用した。各々のラットは小さな新しい環境の調査の1回の5分間エピソードを受けた。72時間後、ラットは同一環境内に配置され、即座に53秒離して2回の適度な足ショック(1ミリアンペア)を受けた。24時間後、8匹のラットにビヒクル(DMSO)中のフロセミド(100mg/kg)を(静脈)注射し、8匹のラットにビヒクル(DMSO)中のブメタニド(50mg/kg)を静脈注射した。残余の8匹にはDMSO単独を注射した。パブロフの条件付け恐怖の指標として、すくみ行動が測定されている間である8分間、同一環境内に各々のラット再び配置した。
【0251】
4つの同一のチャンバー(20x20x15cm)を使用した。タイミング及び事象の制御の全ての状況はマイクロコンピュータ(MedPC、MedAsscociates Inc.Vermont,USA)制御下であった。すくみ行動の測定はマイクロコンピュータに接続されたオーバーヘッドビデオカメラを通して実行され、専用のソフトウエアであるFreezeFrameTM(OER Inc.,Reston,VA)を使用して自動的に得点された。総すくみ行動時間を群内要因として薬剤投与を用いた一方向分散分析(ANOVA)試験で分析した。
【0252】
図5に示すように、ブメタニド又はフロセミドのいずれかで処理した動物はビヒクル単独を付与した動物より著しく少ないすくみ行動が観察され、ブメタニド及びフロセミドは心的外傷後ストレス障害の治療に有効に利用し得ることを示した。
【0253】
実施例84
不安緩和におけるフロセミド及びブメタニドの治療効果
不安緩和におけるフロセミド及びブメタニドの治療効果を、ラットにおける恐怖強化型驚愕(FPS)試験におけるこれらの物質の効果を評価することにより検査した。この試験は通常、抗不安薬の薬剤効果を一般的な効果、例えば鎮痛作用/筋肉弛緩と区別するために使用されている。
【0254】
24匹のラットをFPS装置に30分間馴化させた。24時間後、基準の驚愕振幅を採集した。次にラットを基準の驚愕振幅に基づいて3つの対等な群に分割した。ラットの一匹は、他に対し顕著に高い基準の驚愕を見せており、実験から除外した。従って群1及び2は各々8匹のラットからなり、群3は7匹のラットからなった。基準の驚愕振幅採集後、20回の光線/ショックの組み合わせを2連続日をかけて2つの期間で送達した。(例えば各々の日に10回の光線/ショックの組み合わせ)。最終日(5日目)に、群2及び3にビヒクル(DMSO)中のフロセミド(100mg/kg)又はブメタニド(70mg/kg)のいずれかを(静脈)注射し、群1はビヒクル単独を付した。注射の直後に、驚愕単独試験及び驚愕プラス恐怖(驚愕後に光線)試験の間、驚愕振幅を評価した。恐怖強化型驚愕(光線+驚愕振幅マイナス驚愕単独振幅)を処理群間で比較した。
【0255】
動物を4つの同一のスタビリメーター装置(Med−Associates)中で訓練し、試験した。慨すれば、各々のラットを小さなプレキシガラスシリンダ中に配置した。各々のスタビリメーターの床はそれを介してショックを送達できる18mm離れて置かれた4つの6mm直径のステンレス鋼バーからなっていた。シリンダの動きは加速度計の変位となり、得られた電圧はケージ変位の速度に比例する。驚愕振幅は驚愕刺激を送達後、最初の0.25秒間に発生する最大加速度計電圧として定義される。加速度計のアナログ出力は増幅され、0〜4096単位の尺度にデジタル化され、マイクロコンピュータ上に格納された。各々のスタビリメーターは換気され、光線及び音減衰された箱中に封入された。全ての音のレベル測定はプレシジョンサウンドレベルメーターで実行された。各々の木箱の側面に装着された換気扇のノイズが64dBの全体背景ノイズレベルを作り出した。驚愕刺激は、ホワイトノイズ発生器により発生された50msバーストのホワイトノイズ(増加−衰退時間5ms)であった。使用された視覚条件付け刺激はホワイトノイズ源に隣接した電球の照明であった。条件付けされない刺激はチャンバーの外に配置された4つの定電流ショック器により生成された0.5秒間の0.6mA足ショックであった。全ての刺激の実施及び順番はマイクロコンピュータの制御下であった。
【0256】
FPS操作法は5日間の試験からなった;1及び2日の間、基準の驚愕応答を採集し、3及び4日に光線/ショックの組み合わせを送達し、5日に恐怖強化型驚愕のための試験を実施した。
【0257】
マッチング:最初の2日、全てのラットをプレキシガラスシリンダ中に配置し、3分後、30秒の刺激間隔で30回驚愕刺激を与えた。105dB強度を使用した。2日目の30回驚愕刺激中の平均驚愕振幅を同様の方法でラットを処理群に割り当てるために使用した。
【0258】
訓練:その後の2日、ラットをプレキシガラスシリンダ中に配置した。各々の日、導入後3分後に10回のCS−ショックの組み合わせを送達した。平均試験間隔4分(3〜5分の範囲)において3.7秒のCSの最後の0.5秒の間にショックを送達した。
【0259】
試験:ラットを訓練したのと同じ驚愕箱に配置し、3分後、18回の(全て105dBで)驚愕誘引刺激を与えた。ラットを音響驚愕刺激に再び馴化させるため、これらの初期驚愕刺激を使用した。これらの刺激の最後から30秒後、各々の動物は半分が単独で与えられた刺激(驚愕単独試験)で、他の半分は3.7秒のCSの着手後3.2秒後に与えられた(CS−驚愕刺激)、60回の刺激を受けた。全ての驚愕刺激を無作為に20から40秒の間で変化する平均30秒の刺激間隔で与えた。
【0260】
測定:処理群をCS−驚愕及び驚愕単独試験の間の驚愕振幅の差分で比較した(恐怖相乗作用)。
【0261】
図6は試験日より前に決定したラットの各々の群に対する基準の驚愕振幅を示す。図7は試験日においてDMSO単独、ブメタニド又はフロセミドのいずれかを注射直後に決定した驚愕単独試験における応答の振幅を示し、図8は試験日の差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。図に示すように、ビヒクル単独で処理したラットよりフロセミド又はブメタニドのいずれかで処理したラットに統計上顕著に低い差分得点が観察され、フロセミド及びブメタニドの両方に不安減少効果があることを示している。
【0262】
図9及び10はそれぞれフロセミド又はブメタニドのいずれかで処理後一週間の驚愕単独振幅及び差分得点を示している。フロセミド又はブメタニドのいずれかで処理した動物はビヒクル単独で処理した動物より高い差分得点を有することがわかった。しかしながら、ビヒクル処理動物に対する誤差バーはかなり大きいので、ビヒクルとブメタニドの間でデータは統計上顕著な違いを示せず、ビヒクルとフロセミドの間で僅かな違いをかろうじて示した。
【0263】
図12はビヒクル単独(n=13)又はブメタニド10mg(n=13)、30mg(n=13)、40mg(n=5)、50mg(n=13)又は70mg(n=13)のいずれかで処理した動物の差分得点を示す。40mg、50mg及び70mgの投与は10mg又は30mgの投与より不安減少効果がより顕著であることがわかった。
【0264】
実施例85
不安緩和におけるブメタニドアナログの治療効果
不安緩和における種々のブメタニドアナログの治療効果を上述のラットにおける恐怖強化型驚愕(FPS)試験を用いて検査した。
【0265】
図11は以下のブメタニドアナログ:ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(2MIK053として参照);ブメタニドメチルエステル(3MIK054として参照);ブメタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル(3MIK069−11として参照);ブメタニドモルホリノジエチルエステル(3MIK066−4として参照);ブメタニドピバキセチルエステル(3MIK069−12として参照);ブメタニドシアノメチルエステル(3MIK047として参照);ブメタニドジベンジルアミド(3MIK065として参照);又はブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル(3MIK066−5として参照)の1つで処理したラットにおける試験日の差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。ビヒクルはDMSOであった。図11で示すように、ほとんどのブメタニドアナログの投与後に得られた差分得点はビヒクル単独投与後に観察されるものより顕著に低く、これらのアナログを不安減少のために有効に利用し得ることを示した。
【0266】
別の実験において、ラットにブメタニド、塩水又はブメタニドアナログのいずれかを注射し、その尿出力を測定した。図13に示すように、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(カラム2)、ブメタニドピバキセチルエステル(カラム3)及びブメタニドシアノメチルエステル(カラム4)は2つの異なる原料から得られたブメタニド(カラム1及び13)より顕著に低い利尿効果を示した。カラム6は塩水投与後に得られた結果を示している。
【0267】
本発明は異常のようにその特定の実施形態を参照しながら説明したが、当業者の知る通り本発明の精神及び範囲を外れることなく種々の変更を行い、等価物で代替し得る。更に、本発明を実施する場合に使用するために、多くの変更を特定の状況、材料、物質組成、方法、方法の工程に対して採用し得る。このような変更の全ては添付請求項の範囲内であることを意図している。
【0268】
本明細書において引用した全ての特許及び公開物及び2000年6月29日に公開されたPCT出願WO00/37616は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0269】
配列番号1〜2は添付の配列表に示す。添付の配列表において使用したポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のコードはWIPO Standard ST.25(1988),Appendix2と合致する。
【図面の簡単な説明】
【0270】
【図1A】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1A1】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1B】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1B1】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1C】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1C1】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1D】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図2A】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2B】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2C】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2D】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2E】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2F】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2G】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2H】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2I】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2J】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2K】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2L】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2M】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2N】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2O】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2P】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2Q】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2R】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図3A】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3B】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3C】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3D】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3E】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3F】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3G】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3H】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図4A】図4A及び4Bは低減したクロリド濃度の条件下のイオンの共輸送の模式的ダイアグラムを示す。
【図4B】図4A及び4Bは低減したクロリド濃度の条件下のイオンの共輸送の模式的ダイアグラムを示す。
【図5】図5はラットにおける文脈的恐怖条件付けの試験においてビヒクル単独投与動物よりもブメタニド又はフロセミドの何れかを投与した動物において有意に低値のフリージングが観察されたことを示す。
【図6】図6はラットにおける恐怖強化型の驚愕試験におけるベースライン驚愕増幅を示す。
【図7】図7はDMSO単独、ブメタニド又はフロセミドの何れかの投与直後に測定した驚愕単独試験に対するラットの応答の増幅を示す。
【図8】図8はDMSO、ブメタニド又はフロセミドの何れかを投与したラットの試験日における差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。
【図9】図9はDMSO、ブメタニド又はフロセミドの何れかの投与の1週間後のラットの驚愕単独増幅を示す。
【図10】図10はDMSO、ブメタニド又はフロセミドの何れかの投与の1週間後の差分得点を示す。
【図11】図11は以下のブメタニドアナログ、即ちブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(2MIK053と称する);ブメタニドメチルエステル(3MIK054と称する);ブメタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル(3MIK069−11と称する);ブメタニドモルホリノジエチルステル(3MIK066−4と称する);ブメタニドピバキセチルエステル(3MIK069−12と称する);ブメタニドシアノメチルエステル(3IK047と称する);ブメタニドジメンジルアミド(3MIK065と称する);及びブメタニド3−(ジメチル−アミノプロピル)エステル(3MIK066−5と称する)の1つを投与したラットの試験日における差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。ビヒクルはDMSOとした。
【図12】図12はブメタニドの種々の用量を投与したラットの差分得点を示す。
【図13】図13は2種の異なる原料に由来するブメタニド(カラム1及び5)、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(カラム2)、ブメタニドピバキセチルエステル(カラム3)、ブメタニドシアノメチルエステル(カラム4)又は食塩水(カラム6)の何れかの投与の後のラットにおける尿排出量を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、米国特許出願番号第11/251,724号(2005年10月17日出願);米国特許出願番号第11/130,945号(2005年5月17日出願);および米国特許出願番号第11/101,000号(2005年4月7日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は非シナプス機序を用いる中枢及び末梢神経系の選択された状態を治療するための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明はナトリウム−カリウム−クロリド共輸送体の発現及び/又は活性をモジュレートする薬剤を投与することにより神経精神学的障害を治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
神経障害性疼痛及び侵害受容性疼痛はその病因、病理生理学、診断及び治療において異なる。侵害受容性疼痛は末梢感覚ニューロンの特定のサブセット、即ち侵害受容器の活性化に応答して生じる。それは一般的に急性(関節痛を除く)で自己限定性であり、そして進行中の組織の損傷の警告として作用することにより保護的な生物学的機能を果たしている。それは典型的には明確に局在化し、頻繁には疼き又は脈動痛の性質を有する場合が多い。侵害受容性疼痛の例は術後痛、捻挫、骨折、熱傷、打撲、炎症(感染症又は関節障害由来)、閉塞及び筋膜痛を包含する。侵害受容性疼痛は通常はオピオイド及び非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)により治療することができる。
【0004】
神経障害性疼痛は慢性の非悪性の疼痛に共通の型であり、これは末梢又は中枢神経系における傷害又は機能不全の結果であり、そして保護的な生物学的機能は果たさない。これは合衆国人口のうち1.6百万人超が罹患していると推定されている。神経障害性疼痛は多くの異なる病因を有し、そして例えば外傷、糖尿病、ヘルペス・ゾスター(帯状疱疹)感染、HIV/AIDS末梢神経障害、末期癌、切断(乳房切除を包含する)、手根管症候群、慢性アルコール摂取、放射線への曝露及び特定の抗HIV及び化学療法剤のような神経毒性治療薬の意図しない副作用により生じる場合がある。
【0005】
侵害受容正当痛とは対照的に、神経障害正当痛は「焼けるような」、「電気的な」、「ちくちくする」又は「刺すような」などと表現される場合が多い。これは慢性の異痛(軽い接触のような通常は痛みの応答を誘発しない刺激から生じる疼痛として定義される)及び痛覚過敏(通常は痛みの刺激に対する増大した感受性として定義される)を特徴とする場合が多く、そして如何なる損傷組織も見かけ上治癒した後にも数ヶ月又は数年間持続する場合がある。
【0006】
神経障害性疼痛は治療が困難である。正常な疼痛に有効な鎮痛剤(例えばオピオイド麻薬及び非ステロイド抗炎症剤)が神経障害性疼痛に有効であることは稀である。同様に、神経障害性疼痛において活性を有する薬剤は通常は侵害受容性疼痛には有効ではない。神経障害性疼痛を治療するために使用されていた標準的な薬剤は、ある患者において特定の症状の緩和に選択的に作用するが他の症状には作用しない場合が多い(例えば異痛は緩和されるが痛覚過敏は緩和されない)。この理由のため、治療を良好に行うためには複数の異なる薬剤の組合せ及び個別対応の治療法が必要となる場合がある(例えばBennett,Hosp.Pract.(Off Ed).33:95−98,1998参照)。神経障害性疼痛の管理において典型的に使用される治療薬は3環抗欝剤(例えばアミトリプチリン、イミプラミン、デシミプラミン及びクロミプラミン)、全身局所麻酔薬及び抗痙攣剤(例えばフェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸、クロナゼパム及びガバペンチン)を包含する。
【0007】
癲癇及び他の発作性障害の治療のために当初開発された多くの抗痙攣剤は非癲癇状態、例えば神経障害性疼痛、気分障害(例えば双極性情動障害)及び分裂病の治療において用途を有している(非癲癇状態の治療における抗癲癇剤の使用の考察に関してはRogawski and Loscher,Nat.Medicine,10:685−692,2004を参照できる)。即ち、癲癇、神経障害性疼痛及び情動障害は共通の病理生理学的機序(Rogawski & Loscher,前出;Ruscheweyh & Sandkuhler,Pain 105:327−338,2003)、即ちニューロン興奮性の病理学的増大とそれに伴った相当する不適切に高い頻度の自発的ニューロン発火を有している。しかしながら、全てではなく一部のみの抗癲癇剤が神経障害性疼痛の治療に有効であり、そして更に又、そのような抗癲癇剤は神経障害性疼痛を有する患者の特定のサブセットにおいて有効であるのみである(McCleane,Expert.Opin.Pharmacother.5:1299−1312,2004)。
【0008】
癲癇は大脳ニューロンの異常な放電を特徴とし、そして典型的には種々の型の発作として顕在化する。癲癇様の活性は電気生理学的手法を用いて測定できるニューロン集団の自発的に生じる同期した放電により発見される。非癲癇様の活性から癲癇様のものを識別するこの同期した活性は「過剰同期」と称されるが、その理由はこれが、個々のニューロンが相互にタイムロックされた態様で放電する可能性が増大する状態を説明するためである。過剰同期活性は典型的には興奮性シナプス電流を増大させるか抑制性のほうを低減するかによって癲癇の実験モデルにおいては誘導され、そしてこのため、過剰興奮自体が癲癇様活性の発生及び維持に関与する決定的特徴であると推定されていた。同様に、神経障害性疼痛は通常の感受性の状態から過敏性のものへの疼痛の伝達に関与するニューロンの変換を含んでいると考えられていた(Costigan & Woolf,Jnl.Pain 1:35−44,2000)。即ち癲癇と神経障害性疼痛の両方のための治療法の開発における着目点は(a)活動電位の発生を抑制するか;(b)抑制性シナプス伝達を増大させるか;又は(c)興奮性シナプス伝達を減少させることのいずれかによりニューロン過剰興奮性を抑制することであった。しかしながら、過剰同期癲癇様活性は過剰興奮性とは解離され、そしてカチオンクロリド共輸送阻害剤のフロセミドは過剰興奮したシナプス応答を低減することなく同期放電を可逆的にブロックすることが判っている(Hochman et al.Science 270:99−102,1995)。
【0009】
ナトリウムチャンネル遺伝子の異常な発現(Waxman,Pain 6:S133−140,1999;Waxman et al.Proc.Natl.Acad.Sci USA 96:7635−7639,1999)及びペースメーカーチャンネル(Chaplan et al.J.Neurosci.23:1169−1178,2003)の両方が神経障害性疼痛において分子レベルで役割を果たしている。
【0010】
神経精神学的障害、例えば不安障害は一般的にカウンセリング及び/又は薬剤で治療される。そのような障害の治療において現在使用されている薬剤の大部分は顕著な負の副作用、例えば依存性誘導傾向を有している。
【0011】
カチオンクロリド共輸送体(CCC)は細胞から細胞への連絡及びニューロンの発達、形成性及び外傷の種々の側面に影響すると考えられているニューロンクロリド濃度の重要な調節物質である。CCC遺伝子ファミリーは3つの大きなグループ、即ちNa+−Cl−共輸送体(NCC)、K+−Cl−共輸送体(KCC)及びNa+−K+−2Cl−共輸送体(NKCC)よりなる。2つのNKCCアイソフォームが発見されており、NKCC1は広範な種類の分泌上皮及び非上皮細胞中に存在し、NKCC2は主に腎臓で発現される。NKCC1の構造、機能及び調節に関する考察については、Haas and Forbush,Annu.Rev.Physiol.62:515−534,2000を参照できる。Randall等はNKCC1a及びNKCC1bと称されるNKCC1をコードするSlc12a2遺伝子の2つのスプライス変異体を発見している(Am.J.Physiol.273(Cell Physiol.42):C1267−1277,1997)。NKCC1a遺伝子は27エクソンを有するが、スプライス変異体のNKCC1bはエクソン21を欠失している。NKCC1bスプライス変異体は主に脳で発現される。NKCC1bはBKCC1aよりも10%超高活性であると考えられているが、それは脳内ではNKCC1aよりも遥かに少量で比例的に存在している。NKCC1転写産物の示差的スプライシングがヒト組織において調節的役割を果たしていると示唆されている(Vibat et al.Anal.Biochem.298:218−230,2001)。全ての細胞及び組織におけるNa−K−Cl共輸送はループ利尿剤、例えばフロセミド、ブメタニド及びベンズメタニドにより抑制される。
【0012】
Na−K−2Cl共輸送体ノックアウトマウスは減損した侵害受容表現型並びに異常な歩行及び運動性を有することがわかっている(非特許文献1)。Delpire及びMountはNKCC1が疼痛知覚に関与していることを示唆している(非特許文献2)。Laird等は最近、野生型及びヘテロ接合マウスと比較した場合のNKCC1ノックアウトマウスにおける低減した愛撫時痛覚過敏を示す試験を報告している(非特許文献3)。しかしながらこの急性疼痛モデルにおいては中断的痛覚過敏に置ける差はマウス3群の間で観察されていない。Morales−Aza等は関節炎においてNKCC1及びK−Cl共輸送体KCC2の改変された発現が脊髄の興奮性の制御に寄与し、そしてこれにより炎症性疼痛の治療のための治療上の標的となることを示唆している(非特許文献4)。Granados−Soto等はNKCC阻害剤ブメタニド、フロセミド又はピレタニドの投与によりホルマリン誘導侵害受容が低減したラット試験を報告している(非特許文献5)。ホルマリン誘導急性疼痛モデルは広範に使用されているが、慢性の疼痛状態には関連性を殆ど有さないと考えられている(非特許文献6)。フロセミドと共にNMDA受容体アンタゴニスト、非NMDA受容体及びCa2+チャンネルアンタゴニストを用いるエピソード性のアルコール曝露により誘導された脳の損傷の同時治療は、脳の水和及び電解質の上昇を防止しつつ、アルコール依存性の大脳皮質損傷を75〜85%低減することがわかっている(非特許文献7)。著者によれば、結果は、フロセミド及び関連の薬剤がアルコール乱用における神経保護剤として有用である可能性があることを示唆している。Willis等はネドクロミルナトリウム、フロセミド及びブメタニドが感覚神経の活性化を抑制することによりインビボのヒト皮膚におけるヒスタミン誘導の掻痒と発赤の応答を低減することを示す試験を報告している。Espinosa等及びAhmad等は以前にフロセミドが特定の型の癲癇の治療において有用であることを示唆している(非特許文献8;及び非特許文献9)。
【0013】
癲癇の場合と同様、神経障害性疼痛における薬理学的介入の焦点はニューロン過剰興奮を低減することであった。神経障害性疼痛を治療するために現在使用されている薬剤の大部分は例えば興奮性神経伝達物質の放出又は活性をモジュレートすること、抑制経路を強化すること、インパルス発生に関与するイオンチャンネルをブロックすること、及び/又は、膜安定化剤として機能することにより、興奮経路におけるシナプス活性をターゲティングしている。即ち、神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療のための従来の薬剤及び治療方法はニューロンの興奮性を低減し、そしてシナプス発火を抑制する。これ等の治療薬の1つの重大な難点はそれらが非選択性であり、そして正常及び異常ニューロン集団の両方に対してその作用を示すことである。これは意図しない負の副作用をもたらし、これは正常なCNS機能、例えば認知、学習及び記憶に対して影響する場合があり、そして、治療されている患者において有害な生理学的及び心理学的作用をもたらす。共通する副作用は過剰沈静化、眠気、記憶の損失及び肝臓の損傷を包含する。従って、末梢及び中枢神経系が正常に機能するために必要なニューロン興奮性及び自発的同期を減損することなく、過剰同期ニューロン活性を途絶させるニューロン障害治療のための方法及び組成物がなお必要とされている。
【非特許文献1】Sung et al.Jnl.Neurosci.20:7531−7538,2000
【非特許文献2】Ann.Rev.Physiol.64:803−843,2002
【非特許文献3】Neurosci.Letts.361:200−203,2004
【非特許文献4】Neurobiol.Dis.17:62−69,2004
【非特許文献5】Pain 114:231−238,2005
【非特許文献6】Walker et al.Mol.Med.Today 5:319−321,1999
【非特許文献7】Collins et al,FASEB J.,12:221−230,1998
【非特許文献8】Medicina Espanola 61:280−281,1969
【非特許文献9】Brit.J.Clin.Pharmacol.3:621−625,1976
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明の治療用組成物及び方法は神経障害性疼痛及び神経精神障害を含む状態、例えばニューロン過剰同期を特徴とする、双極性障害、不安障害(例えばパニック障害、社会不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、全般性不安障害及び特定の恐怖症(American Psychiatric Association,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第4版、2000年改定))、抑鬱症及び分裂病を治療するために有用である。本発明の組成物及び方法はニューロン興奮性を抑制することないため神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療の為に現在使用されている薬剤にしばしば伴っている望ましくない副作用を回避しつつ、神経障害性疼痛に関わるニューロン過剰同期及び/又は神経精神障害を低減するために使用し得る。
【0015】
本明細書に開示した方法及び組成物は一般的に非シナプス機序を使用しており、そしてニューロン集団活性の同期をモジュレート、一般的には低減する。ニューロン集団活性の同期は中枢及び/又は末梢神経系のアニオンの濃度及び勾配を操作することによりモジュレートする。より詳細には、本発明の組成物は、Na+−K+−2Cl−(NKCC)共輸送体の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。本発明の特に好ましい治療薬は中枢及び/又は末梢の神経系の細胞、例えば、グリア細胞、シュワン細胞及び/又はニューロン細胞の集団において高い程度のNKCC共輸送体アンタゴニスト活性を示し、そして腎細胞集団においてはより低い程度の活性を示す。1つの実施形態において、本発明の組成物は共輸送体NKCC1の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。NKCC1アンタゴニストは本発明の方法における使用の為に特に好ましい治療薬である。本発明の治療用組成物において通常使用し得るNKCC共輸送体アンタゴニストは限定しないが、CNS標的NKCC共輸送体アンタゴニスト、例えばフロセミド、ブメタニド、エタクリン酸、トルセミド、アゾセミド、ムゾリミン、ピレタニド、トリパミド等、並びにチアジド及びチアジド様利尿剤、例えばベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ポリチアジド、トリクロロメチアジド、クロロタリドン、インダパミド、メトラゾン及びキネタゾン、並びにこのような化合物のアナログ及び機能的誘導体を包含する。
【0016】
本発明の組成物及び方法において有用に使用されるフロセミド、ブメタニド、ピレタニド、アゾセミド及びトルセミドのようなCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストのアナログは式I〜Vとして以下に記載するものを包含する。本発明者等はこのようなアナログは、誘導元であるCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストと比較して、増大した親油性及び低減された利尿作用を有しており、従って本発明の治療方法において使用した場合に望ましくない副作用が低下すると考える。
【0017】
1つの実施形態において、式I〜Vとして以下に記載するアナログの有効量の投与後に生じる利尿の水準はアナログの誘導元である親分子のゆうこうりょうの投与後に生じるものの99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%未満となる。例えばアナログは同じmg/kg用量において投与された場合に親分子よりも低利尿性であり得る。或いは、症状の有効な緩和のために必要なアナログの用量が少量となり、これにより低い利尿作用を示すようになるように、アナログはその誘導元の親分子よりも更に強力でもあり得る。同様に、親分子よりも低頻度でアナログを投与してよく、これにより所定の期間内の全体的利尿作用が低下するように、アナログは親分子よりも疾患治療においてより長い作用持続時間を有し得る。
【0018】
本発明の方法及び組成物において有用に使用される他の治療薬は、限定しないが、NKCC1に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合フラグメント;可溶性NKCC1リガンド;NKCC1の小分子阻害剤;NKCC1のアンチセンスオリゴヌクレオチド;NKCC1特異的短鎖干渉RNA分子(siRNA又はRNAi);及び操作された可溶性NKCC1分子を包含する。好ましくは、そのような抗体又はその抗原結合フラグメント及びNJCC1の小分子阻害剤は、例えばHaas and Forbush,Annu.Rev.Physiol.62:515−534,2000に記載されているようにブメタニドの結合に関与するNKCC1のドメインに特異的に結合する。NKCC1のポリヌクレオチド配列は配列番号1に示す通りであり、相当するcDNA配列は配列番号2に示す。
【0019】
本発明の方法及び治療薬は「非シナプス」機序を使用しているため、ニューロン興奮性の抑制は殆ど、又は全く生じない。より詳細には、本発明の治療薬は活動電位の発生又は興奮性シナプス伝達の抑制を殆ど(投与前水準と比較して1%未満の変化)、又は全く起こさない。実際には、ニューロン興奮性の僅かな増大が本発明の治療薬の特定のものの投与時に生じる場合がある。このことはニューロン興奮性を実際に抑制する神経障害性疼痛の治療に現在使用されている従来の抗癲癇剤とは明らかに対照的である。本発明の方法及び治療薬はニューロン集団活性の同期又は相対的同期性に影響する。好ましい方法及び治療薬は中枢又は末梢神経系における細胞外アニオン性クロリドの濃度及び/又は勾配をモジュレートすることにより、ニューロン興奮性に実質的に影響することなく、ニューロン同期又は相対的同期性を低減する。
【0020】
1つの特徴において、本発明は、末梢神経系の特定の細胞及び神経線維、例えば一次感覚求心性線維、疼痛線維、背側角ニューロン及び脊柱上の感覚及び疼痛経路におけるニューロン活性の自発的過剰同期バースト及び活動電位の伝播又はインパルスの伝導に影響するかこれをモジュレートすることにより、神経障害性疼痛又は異常な疼痛知覚を緩和するための方法及び薬剤に関する。
【0021】
本発明の治療薬は他の知られた治療薬、例えば神経精神障害の治療に現在使用されているものと組み合わせて使用し得る。本発明の治療薬と他の既知の治療薬の組み合わせはシナプス及び非シナプス機序の両方が関与し得ることは当業者の知る通りである。
【0022】
本発明の治療用組成物及び方法は症状の発生後に治療的及びエピソード的に使用するか特定の症状の発生の前に予防的に使用し得る。例えば、本発明の治療薬は既存の神経障害性疼痛を治療するため、又は、化学療法、放射線療法、感染性物質への曝露等に二次的な神経毒性の傷害及び神経障害性疼痛から神経を保護するために使用できる。
【0023】
特定の実施形態においては、本発明の方法において使用される治療薬は血液脳関門を通過できるか、及び/又は、中枢神経系への薬剤の送達を促進する送達系を用いて投与される。例えば種々の血液脳関門(BBB)透過性増強剤を所望によりしようすることにより治療薬に対する血液脳関門の透過性を一過性及び過逆的に増大させることができる。そのようなBBB透過性増強剤はロイコトリエン、ブラジキニンアゴニスト、ヒスタミン、接着結合破壊剤(例えばゾヌリン)、低浸透圧溶液(例えばマンニトール)、細胞骨格収縮剤、短鎖アルキルグリセロール(例えば1−O−ペンチルグリセロール)及び現在当該分野で知られている他のものを包含し得る。
【0024】
本発明の上記及びその他の特徴並びにそれらを得る太陽は以下のより詳細な説明を参照することにより最も良好に理解される。本明細書に開示した全ての参考文献はそれらが個々に取り込まれるがごとく参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
上記した通り、神経障害性疼痛及び/又は神経精神障害の治療に使用する本発明の好ましい治療薬及び方法はNKCC共輸送体の活性を低減することにより上昇した同期の領域においてニューロン集団活性の同期性をモジュレート又は破壊する。以下に詳述する通り、そして実施例において説明する通り、イオン依存性共輸送体、好ましくはカチオン−クロリド依存性共輸送体を用いたイオンの移動及びイオン勾配のモジュレーションはニューロン同期の調節にとって重要である。クロリドの共輸送機能は、長期に渡り、細胞を出るクロリドの移動を主に指向していると考えられてきた。ニューロンに局在することがわかっているナトリウム非依存性輸送体はクロリドイオンをニューロン外に移動させる。好ましくは尿剤フロセミドの投与によるなどしてこの輸送体をブロックすると過剰興奮性が生じるが、これはフロセミドのようなカチオン−クロリド共輸送体に対する短期の応答である。しかしながら、フロセミドに対する長期の応答は、神経膠関連Na+−K+−2Cl−共輸送体NKCC1により媒介されるクロリドイオンの内向性ナトリウム依存型移動が興奮性及び刺激惹起細胞活性に影響することなくニューロン同期をブロックする場合に能動的役割を果たすことを示している。HaglundとHochmanはフロセミドが正常な脳の活性に影響することなくヒトにおいて癲癇活性をブロックすることができることを示している(J.Neurophysiol.(Feb.23,2005)doi:10.1152/jn.00944.2004)。これ等の結果は、本発明の方法及び組成物が従来の治療でしばしば観察されていた望ましくない副作用を生じさせること無く神経障害性疼痛の治療において有効に使用されることを裏付けている。
【0026】
上記した通り、NKCC1bと称されるNKCC1スプライス変異体はNKCC1a変異体よりも高活性である。即ち数パーセント高値のNKCC1bを発現する中枢又は末梢神経系は神経障害性疼痛及び癲癇のような障害により罹患しやすいと考えられる。同様に、NKCC1aと比較してNKCC1bに対してより特異的な治療薬はそのような障害の治療においてより効果的であると考えられる。
【0027】
本発明の方法は例えば以下の病因、即ち:アルコール乱用;糖尿病;好酸球筋肉痛症候群;ギャン・バレー症候群;砒素、鉛、水銀及びタリウムのような重金属への曝露;HIV/AIDS;抗HIV/AIDS薬への曝露;悪性腫瘍;医薬品、例えばアミオダロン、オーロチオグルコース、シスプラチナム、ダプソン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、ジスルフィラム、FK506、ヒドラジン、イソニアジド、メトロニダゾール、ニトロフラントイン、パクリタキセル、フェニトイン及びビンクリスチン;モノクローナルガンモパシー;多発性硬化症;卒中後の中枢痛、ヘルペス後の神経痛;外傷、例えば手根管症候群、頚部又は腰部の神経根障害、複雑な限局性の疼痛の症候群、脊髄傷害及び遮断神経痛;三叉神経痛;血管炎;ビタミンB6大量投与;及び特定のビタミン欠乏症(B12、B1、B6、E)を有する神経障害性疼痛の治療及び/又は予防の為に使用し得る。本発明の方法を用いて効果的に治療される神経精神障害は例えば限定しないが、双極性障害、不安障害、パニック障害、抑鬱症、分裂症、強迫性障害及び外傷後ストレス症候群を包含する。
【0028】
本発明の方法において効果的に使用される組成物はNa+−K+−2Cl−(NKCC)共輸送体の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。好ましくは、そのような組成物は共輸送体NKCC1の有効量を低減すること、不活性化すること、及び/又は、活性を阻害することができる。特定の実施形態においては、本発明の組成物はNKCC1アンタゴニスト(例えば限定しないがNKCC1の小分子阻害剤、NKCC1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、及び、可溶性NKCC1リガンド);NKCC1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド;NKCC1特異的短鎖干渉RNA分子(siRNA又はRNAi);及び操作された可溶性NKCC1分子からなる群より選択される治療薬少なくとも1つを含む。好ましい実施形態においては、治療薬はCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニスト、例えばフロセミド、ブメタニド、エタクリン酸、トルセミド、アゾセミド、ムゾリミン、ピレタニド、トリパミド等;チアジド及びチアジド様利尿剤、例えばベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ポリチアジド、トリクロロメチアジド、クロロタリドン、インダパミド、メトラゾン及びキネタゾン;及びこのような化合物のアナログ及び機能的誘導体からなる群より選択される。
【0029】
本発明の方法において使用し得るCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストのアナログは下記式I、II及び/又はIII:
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
[式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、例えばアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルヒドロキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールエステル(PEGエステル)、ポリエチレングリコールエーテル(PEGエーテル)、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、
そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される]の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物を包含する。
【0032】
本発明の一部の実施形態においては、アナログはブメタニドアルデヒド、ブメタニドジベンジルアミド、ブメタニドジエチルアミド、ブメタニドモルホリノエチルエステル、ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ブメタニドジメチルグリコールアミドエステル、ブメタニドピバキセチルエステル、ブメタニドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1エチルエステル、ブメタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩、及びブメタニドセチルトリメチルアンモニウム塩であることができる。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、アナログはフロセミドアルデヒド、フロセミドエチルエステル、フロセミドシアノメチルエステル、フロセミドベンジルエステル、フロセミドモルホリノエチルエステル、フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、フロセミドジベンジルアミド、フロセミドベンジルメチルアンモニウム塩、フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩、フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、フロセミドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1エチルエステル、フロセミドピバキセチルエステル、及びフロセミドプロパキセチルエステルであることができる。
【0034】
本発明の更に別の実施形態においては、アナログはピレタニドアルデヒド、ピレタニドメチルエステル、ピレタニドシアノメチルエステル、ピレタニドベンジルエステル、ピレタニドモルホリノエチルエステル、ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ピレタニドジエチルアミド、ピレタニドジベンジルアミド、ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、ピレタニドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1エチルエステル、ピレタニドピバキセチルエステル、及びピレタニドプロパキセチルエステルであることができる。
【0035】
本発明の方法において有用に用いられるCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストのアナログは下記式IV:
【0036】
【化8】
[式中、
R3、R4及びR5は上記の通り定義され;そして、
R6はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、例えばアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルヒドロキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールエステル(PEGエステル)、ポリエチレングリコールエーテル(PEGエーテル)、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される]の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物を包含する。
【0037】
本発明の一部の実施形態においては、アナログはテトラゾリル置換アゾセミド(例えばメトキシメチルテトラゾリル置換アゾセミド、メチルチオメチルテトラゾリル置換アゾセミド及びN−mPEG350−テトラゾリル置換アゾセミド)、アゾセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩及び/又はアゾセミドセチルトリメチルアンモニウム塩からなる群より選択し得る。
【0038】
本発明の方法において有用に用いられるアナログは下記式V:
【0039】
【化9】
[式中、
R7はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、例えばアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルヒドロキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールエステル(PEGエステル)、ポリエチレングリコールエーテル(PEGエーテル)、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;そして、
X−はハライド、例えばブロミド、クロリド、フロリド、ヨーダイド、又は、アニオン性部分、例えばメシレート、トシレートであるか;或いは、X−は存在せず、そして化合物はスルホニル尿素部分(−SO2−NH−CO−)からプロトンを消失することにより「内部」又は両性イオン性の塩を形成する]の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物を包含する。
【0040】
本発明の一部の実施形態においては、アナログはピリジン置換トルセミド四級アンモニウム塩又は相当する内部塩(両性イオン)からなる群より選択し得る。例としては限定しないが、メトキシメチルピリジニウムトルセミド塩、眼ヒルチオメチルピリジニウムトルセミド塩及びN−mPEG350−ピリジニウムトルセミド塩を包含する。
【0041】
本明細書において定義するR基の何れかは本明細書に開示したアナログから排除することができる。
【0042】
式I、II、III、IV及び/又はVの化合物を得るための以下に記載する合成方法を通じて形成される中間体化合物もまた、本明細書に記載する神経精神障害のための治療薬として有用性を保有している場合がある。
【0043】
本発明の方法において用いられるCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストの修飾は、官能基、及び/又は、水素化アルミニウム、アルキルハライド、アルコール、アルデヒド、アリールハライド、アルキルアミド、アリールアミン及び四級アンモニウム塩の非置換又は置換されたもの又はこれ等の組合せからなる群より選択される化合物に、アンタゴニストを反応させることを包含できる。出発物質として使用し得る化合物の非限定的な例を以下に例示する。
【0044】
【化10】
「アルキル」という用語は本明細書においては、直鎖又は分枝鎖の飽和又は部分不飽和の炭化水素基を指す。アルキル基の例は限定しないがメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ペンチル等を包含する。「不飽和」とは1、2又は3つの二重結合又は三重結合又はその組合せの存在を意味する。そのようなアルキル基は場合により後述するとおり置換され得る。
【0045】
「アルキレン」という用語は本明細書においては、直鎖の親アルカンの2つの末端炭素原子の各々から1つの水素原子を除去することにより誘導される2つの末端1価基中央部を有する直鎖又は分枝鎖を指す。
【0046】
「アリール」という用語は本明細書においては、芳香族基を指すか、又は、場合により適当な置換基、例えば限定しないが低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルスルファニル、低級アルキルスルフェニル、低級アルキルスルホニル、オキソ、ヒドロキシ、メルカプト、場合によりアルキルで置換されたアミノ、カルボキシ、テトラゾリル、場合によりアルキルで置換されたカルバモイル、場合によりアルキルで置換されたアミノスルホニル、アシル、アロイル、ヘテロアリール、アシルオキシ、アロイルオキシ、ヘテロアロイルオキシ、アルコキシカルボニル、ニトロ、シアノ、ハロゲン又は低級パーフルオロアルキルで置換されている場合により置換された芳香族基の1つ以上に縮合した場合により置換された芳香族基を指し、ここで多重の置換も可能である。アリールの例は限定しないがフェニル、2−ナフチル、1−ナフチル等を包含する。
【0047】
「ハロ」という用語は本明細書においては、ブロモ、クロロ、フルオロ又はヨードを指す。或いは、「ハライド」という用語は本明細書においては、ブロミド、クロリド、フロリド又はヨーダイドを指す。
【0048】
「ヒドロキシ」という用語は本明細書においては、基−OHを指す。
【0049】
「アルコキシ」という用語は本明細書においては、単独又は他の基の部分として、オキシ基を解して親分子部分に付加した本明細書において定義するアルキル基を指す。アルコキシの代表例は、限定しないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等を包含する。
【0050】
「アリールオキシ」という用語は本明細書においては、基−ArOを指し、ここでArはアリール又はヘテロアリールである。例としては限定しないがフェノキシ、ベンジルオキシ及び2−ナフチルオキシを包含する。
【0051】
「アミノ」という用語は本明細書においては、−NH2を指し、ここで水素原子の一方又は両方が場合によりアルキル又はアリール又は場合により置換された各々の1つにより置き換えられ得る。
【0052】
「アルキルチオ」という用語は本明細書においては、単独又は別の基の部分として、イオウ部分を介して親分子部分に付加している本明細書に定義したアルキル基を指す。アルキルチオの代表例は限定しないが、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ等を包含する。
【0053】
「カルボキシ」という用語は本明細書においては、基−CO2Hを指す。
【0054】
「四級アンモニウム」という用語は本明細書においては、「オニウム」状態にある窒素上の正電荷を有する窒素への4結合を有する化学構造、即ち「R4N+」又は「第4窒素」を指し、ここでRはアルキル又はアリールのような有機の置換基である。「四級アンモニウム塩」という用語は本明細書においては、カチオンとの四級アンモニウムの会合を指す。
【0055】
「置換された」という用語は本明細書においては、等業者の知る置換基により置き換えられ、そして、以下に記載する安定な化合物をもたらす、基の水素原子1つ以上の置き換えを指す。適当な置き換えの基の例は限定しないが、アルキル、アシル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アミノ、アミド、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアリール、ハロ、オキソ、メルカプト、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アミジノ、カルバモイル、ジアルコキシメチル、シクア、ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボン酸、カルボキシアミド、ハロアルキル、アルキルチオ、アラルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、グアニジノ、ウレイド等を包含する。置換はそのような組合せが意図する用途に対して安定である化合物をもたらす場合に許可される。例えば、置換は、得られる化合物が反応混合物からの有用な程度の純度までの単離操作、及び、治療薬又は診断薬への製剤に耐えられるための十分な頑健性を有する場合に許可される。
【0056】
「溶媒和物」という用語は本明細書においては、例えば、溶媒分子1つ以上との特定の化合物の物理的会合から生じる、化合物の生物学的有効性を保持している化合物の薬学的に受容可能な溶媒和型を指す。溶媒和物の例は限定しないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸又はエタノールアミンと組み合わせた本発明の化合物を包含する。
【0057】
「水和物」という用語は本明細書においては、溶媒が水である場合の化合物を指す。
【0058】
「生体適合性重合体」という用語は本明細書においては、実質的に非毒性であり、実質的な免疫応答、凝固又は他の望ましくない作用を発生させる傾向を有さない重合体部分を指す。ポリアルキレングリコールは生体適合性重合体であり、ここで、本明細書においては、ポリアルキレングリコールとは直鎖又は分枝鎖のポリアルキレングリコール重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロプレングリコール及びポリブチレングリコールを指し、そして更に、ポリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルも包含する。本発明の一部の実施形態においては、ポリアルキレングリコール重合体は低級アルキルポリアルキレングリコール部分、例えばポリエチレングリコール部分(PEG)、ポリプロピレングリコール部分又はポリブチレングリコール部分である。PEGは式HO(CH2CH2O)nHを有し、ここでnは約1〜約4000以上であることができる。一部の実施形態においては、nは1〜100であり、他の実施形態においては、nは5〜30である。PEG部分は直鎖又は分枝鎖であることができる。別の実施形態においては、PEGはヒドロキシル、アルキル、アリール、アシル又はエステルのような基に結合することができる。一部の実施形態においては、PEGはアルコキシPEG、例えばメトキシ−PEG(又はmPEG)であることができ、ここで一方の末端は比較的不活性のアルコキシ基であり、他方の末端はヒドロキシル基である。
【0059】
式I、II、III、IV及び/又はVの化合物は当該分野で良く知られている伝統的な合成手法を用いて合成できる。より特定される合成経路は以下に説明する通りである。
【0060】
ブメタニドアナログは種々の試薬にブメタニドのカルボン酸部分を反応させることにより合成する。例えば、ブメタニドはアルコール、例えば直鎖、分枝鎖、置換又は非置換のアルコールとの反応を介してエステル化を起こす場合がある。ブメタニドは又適当な置換又は非置換のアルキルハライド及びアリールハライド、例えばクロロアセトニトリル、ベンジルクロリド、1−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド等との反応を介してアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド、又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル(Axetil)」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。ブメタニドはまた、酸クロリドへの変換の後、又は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような活性化剤の使用により、適当な置換又は非置換のアルキルアミン又はアリールアミンとの反応によりアミド化を起こす場合がある。ブメタニドは又、四級アンモニウム水酸化物、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物又はセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応してブメタニド四級アンモニウム塩を形成する場合がある。以下のスキーム1及び7は式Iの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0061】
スキーム1.式Iによる例示的化合物の合成
【0062】
【化11】
フロセミドアナログはブメタニドアナログの合成に使用したものと同様の方法によって合成する。特に、フロセミドはアルコール、例えば直鎖、分枝鎖、置換又は非置換のアルコールとの反応を介してエステル化を起こす場合がある。フロセミドは又適当な置換又は非置換のアルキルハライド及びアリールハライド、例えば、クロロアセトニトリル、ベンジルクロリド、1−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド等との反応を介してアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。フロセミドはまた、酸クロリドへの変換の後、又は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような活性化剤の使用により、適当な置換又は非置換のアルキルアミン又はアリールアミンとの反応によりアミド化を起こす場合がある。フロセミドは又、四級アンモニウム水酸化物、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物又はセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応して、フロセミド四級アンモニウム塩を形成する場合がある。以下のスキーム2は式IIの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0063】
スキーム2.式IIによる例示的化合物の合成
【0064】
【化12】
ピレタニドアナログはブメタニドアナログの合成に使用したものと同様の方法によって合成する。特に、ピレタニドはアルコール、例えば直鎖、分枝鎖、置換又は非置換のアルコールとの反応を介してエステル化を起こす場合がある。ピレタニドは又、適当な置換又は非置換のアルキルハライド又はアリールハライド例えば、クロロアセトニトリル、ベンジルクロリド、1−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド等との反応を介してアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。ピレタニドはまた、酸クロリドへの変換の後、又は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような活性化剤の使用により、適当な置換又は非置換のアルキルアミン又はアリールアミンとの反応によりアミド化を起こす場合がある。ピレタニドは又、四級アンモニウム水酸化物、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物又はセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応して、ピレタニド四級アンモニウム塩を形成する場合がある。以下のスキーム3は式IIIの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0065】
スキーム3.式IIIによる例示的化合物の合成
【0066】
【化13】
アゾセミドアナログは種々の試薬にアゾセミドのテトラゾリル部分を反応させることにより合成する。アゾセミドはアルデヒドの添加によってヒドロキシアルキル化を起こす場合があり、これによってヒドロキシアルキル基が形成される。更に、アルコールをアルデヒドと反応させ、エーテルを得うる。更に、アルキルチオールをアルデヒドとともに添加し、チオールエーテルを形成し得る。アゾセミドは又適当なアルキルハライド又はアリールハライド、例えばメチルクロロメチルエステル及びベンジルクロロメチルチオエーテルのようなエーテル又はチオエーテル結合を有するアルキル又はアリールハライドを添加することによりアルキル化し得る。PEG型のエステルはMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型のエステルもまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートを用いたアルキル化により形成し得る。アゾセミドはアゾセミド四級アンモニウム塩を形成するために、四級アンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウム臭化物及び水酸化ナトリウムのような塩基、又はセチルトリメチルアンモニウム及び水酸化ナトリウムのような塩基と反応させ得る。以下のスキーム4は式IVの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0067】
スキーム4.式IVによる例示的化合物の合成
【0068】
【化14】
トルセミド(トラセミドとしても知られている)アナログは種々の試薬にトルセミドを反応させることにより合成する。N−置換四級アンモニウム塩を形成するために、トルセミドは適当なアルキル又はアリールハライド、例えばベンジルクロリドの添加によってアルキル化を起こす場合がある。N−置換エーテル四級アンモニウム塩を形成するために、エーテル結合を有するアルキルハライド及びアリールハライド、例えばメチルクロロメチルエーテル及びベンジルクロロメチルエーテルを使用し得る。N−置換チオエーテル四級アンモニウム塩を形成するために、チオエーテル結合を有するアルキルハライド及びアリールハライド、例えばメチルクロロメチルチオエーテル及びベンジルクロロメチルチオエーテルを使用し得る。PEG型のエーテル含有四級アンモニウム塩はMeO−PEG350−Cl等のようなアルキルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルハライド又はMeO−PEG1000−OTs等のようなアルコルオキシ(ポリアルキルオキシ)アルキルトシレートを用いたアルキル化により形成し得る。「アキセチル」型の四級アンモニウム塩もまた、アルキルハライド、例えばクロロメチルピバリレート又はクロロメチルプロピオネートの添加を介して形成し得る。以下のスキーム5は式Vの一部の例示的化合物の合成スキームを示す。
【0069】
スキーム5.式Vによる例示的化合物の合成
【0070】
【化15】
置換安息香酸ブメタニド、ピレタニド及びフロセミドは、文献の方法によりアミン置換アンモニウムハイドライド、例えばビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドを用いて対応するブメタニドアルデヒド、ピレタニドアルデヒド及びフロセミドアルデヒドに選択的に還元できる。Muraki,M.及びMukiayama,T.,Chem.Letters,1974,1447;Muraki,M.及びMukiayama,T.,Chem.Letters,1975,215;及びHubert,T.等,J.Org.Chem.,1984,2279を参照される。より親油性のベンズアルデヒドはより親油性の安息香酸に容易に大気酸化し、ベンズアルデヒドも又、NADPHコファクターの使用を介し、数種の酸化P450酵素とともに生体内で対応する安息香酸に代謝されることがよく知られている。
【0071】
スキーム6.例示的なブメタニド、ピレタニド及びフロセミドのベンズアルデヒドアナログの合成
【0072】
【化16】
安息香酸から対応するベンズアルデヒドに変換するために使用した還元操作法については、Muraki,M.及びMukiayama,T.,Chem.Letters,1974,1447;同書,1975,215;Hubert,T.D.,Eyman,D.P.及びWiemer,D.F.,J.Org.Chem.,1984,2279を参照
スキーム7.例示的なブメタニド、ピレタニド及びフロセミドのポリエチレングリコールエステルの合成
【0073】
【化17】
PEG−XはX−(CH2)m(OCH2CH2)n−1−Yであり、ここでXはハロ又は他の脱離基(メシレート「OMs」、トシレート「OTs」)及びYはOH又はアルコール保護基、例えばアルキル基、アリール基、アシル基又はエステル基であり、そしてここでm=1−5及びn=1−100である。
【0074】
スキーム8.例示的なアゾセミド及びトルセミドのアルキルポリエチレングリコールエーテルの合成
【0075】
【化18】
PEG−XはX−(CH2)m(OCH2CH2)n−1−Yであり、ここでXはハロ又は他の脱離基(メシレート「OMs」、トシレート「OTs」)及びYはOH又はアルコール保護基、例えばアルキル基、アリール基、アシル基又はエステル基であり、そしてここでm=1−5及びn=1−100である。
【0076】
本発明の化合物を合成するための出発物質は更にFeitへの米国特許3,634,583;Fietへの米国特許3,806,534;Struem等の米国特許3,058,882;Bormannへの米国特許4,010,273;Popelakへの米国特許3,665,002;及びDelargeへの米国特許3,665,002に記載の化合物を含むことができ、この開示はこれによって参照により組み込まれる。
【0077】
本発明の化合物は異性体、互変異性体、両性イオン、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合物又はその立体化学混合物を含有できる。「異性体」という用語は本明細書においては、同数及び同種の原子、従って同一分子量を有するが、空間の原子配列又は配置に関して異なっている化合物を表す。更にまた、「異性体」という用語は立体異性体及び幾何学異性体を含有する。「立体異性体」又は「光学異性体」という用語は本明細書においては、少なくとも1つのキラル原子又は垂直非対称面(例えば、あるビフェニル、アレン及びスピロ化合物)が引き起こす制限された回転を有し、面偏向された光を回転することができる安定した異性体を表す。立体異性体を引き起こし得る本発明の一部の化合物中に非対称な中心及び他の化学構造が存在できるため、本発明は立体異性体及びその混合物を考慮する。本発明の化合物及びその塩は、非対称炭素原子を含有でき、従って単立体異性体、ラセミ混合物及びエナンチオマー、及びジアステレオマーの混合物として存在し得る。典型的にはこのような化合物はラセミ混合物として製造される。しかしながら、所望であればこのような化合物は純粋な立体異性体として、例えば独立のエナンチオマー又はジアステレオマーとして、又は立体異性体リッチ化混合物として製造又は単離することができる。互変異性体は容易に生来の異性体に内部変換可能であり、アセト酢酸エーテルのケト及びエノール形態のようにリガンドの接続性が変化する。発明方法および組成物は、前述の化合物の互変異性体を採用する。両性イオンは同一分子中に酸性及び塩基性の基を所有する内部塩又は2重極性化合物である。中立のPHでは、ほとんどの両性イオンの陽イオンと陰イオンは等しくイオン化されている。
【0078】
更に本発明はここに記載する化合物を有するプロドラッグを提供する。「プロドラッグ」という用語は、加溶媒分解により又は代謝的に生理的な条件下で薬学的/薬理学的に活性である特定される化合物に変換される化合物を表すことを意図している。プロドラッグは化学的に派生された本発明の化合物であってよく、例えば(i)その母体の薬品化合物の生物活性を一部保持する、全て保持する、又は全く保持しない、及び(ii)母体の薬品化合物を得るために代謝される。本発明のプロドラッグは又、化学的に派生された化合物である「部分的プロドラッグ」であってもよく、例えば(i)その母体の薬品化合物の生物活性を一部保持する、全て保持する又は全く保持しない、及び(ii)化合物の生物的に活性な誘導体を得るために代謝される。プロドラッグはここに記載された化合物に対し加水分解可能なカップリングを利用して形成できる。プロドラッグについての議論は更にEttmayer等、J.Med.Chem.47(10):2394−2404(2004)で調べることができる。
【0079】
本発明のプロドラッグは血液脳関門通過することができ、CNSエステラーゼによって加水分解し、活性化合物を提供し得る。更に、ここで提供するプロドラッグは又、改良された生体利用性、改良された水溶性、改良された受動的腸吸収、改良された運搬媒体腸吸収、加速された代謝に対する保護、目的組織に対する組織選択的送達及び/又は受動的な強化も示し得る。
【0080】
本発明のプロドラッグはここに記載された式1、II、III、IV及び/又はVに従った化合物を含有できる。本発明のプロドラッグは更にインダクリノン及びオゾリノンの類似派生物だけでなく、ブメタニド、ブメタニドジベンジルアミド、ブメタニドジエチルアミド、ブメタニドモルホリノエチルエーテル、ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ブメタニドジメチルグリコールアミドエステル、ブメタニドピバキセチルエステル、フロセミド、フロセミドエチルエステル、フロセミドシアノメチルエステル、フロセミドベンジルエステル、フロセミドモルホリノエチルエステル、フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、フロセミドジベンジルアミド、フロセミドベンジルトリメチル−アンモニウム塩、フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩、フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、フロセミドピバキセチルエステル、フロセミドプロパキセチルエステル、ピレタニド、ピレタニドメチルエステル、ピレタニドシアノメチルエステル、ピレタニドベンジルエステル、ピレタニドモルホリノエチルエステル、ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ピレタニドジエチルアミド、ピレタニドジベンジルアミド、ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、ピレタニドピバキセチルエステル、ピレタニドプロパキセチルエステル、テトラゾリル置換アゾセミド、ピリジニウム置換トルセミド塩(ピリミジン置換トルセミド四級アンモニウム塩とも呼ばれる)を含有する。以前に示したスキームを参照。
【0081】
更にまた、以前に示したスキームで記載の通り、前述のような生体適合性重合体、例えばポリエチレングリコール(PEG)を生理的な条件下に劣化する結合を使用した本発明の化合物に付着させることによりプロドラッグを形成できる。Schacht,E.H.等.Poly(ethylene glycol)Chemistry and Biological Applications,American Chemical Society,San Francisco,CA 297−315(1997)も参照される。ここで提供された化合物の免疫原性を減少させる及び/又は半減期を延長させるためにPEGのタンパク質への付着を使用することができる。PEG化剤が薬学的活性を保持するのであれば、従来のPEG化方法はいずれも使用可能である。
【0082】
要件発明の組成物は人間及び家畜への適用に適しており、好ましくは医薬組成物として送達される。医薬組成物は1つ又はそれ以上の治療薬、又はその薬学的に受容可能な塩、及び薬学的に受容可能な担体からなる。ここで使用される薬学的に受容可能な塩とは、医薬品としてその使用又は製法が許される化合物の塩形態を示し、これは特定の化合物の遊離酸及び塩基の生物的有効性を保持し、生物的又はそれ以外でも好ましくないものでない。このような塩の例はHandbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,Wermuth,C.G.及びStahl,P.H.(eds.),Wiley−Verlag Helvetica Acta,Zurich,2002[ISBN3−906390−26−8]に記載されている。このような塩の例はアルカリ金属塩及び遊離酸及び塩基の追加塩を含有する。薬学的に受容可能な塩の例は、限定されるわけではないが、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化塩、臭化塩、ヨウ化塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタノン酸塩、プロピオン酸塩、オクサル酸塩、マロン酸塩、スクシン酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩及びマンデル酸塩を含有する。
【0083】
本発明の医薬組成物は又、他の化合物を含有してもよく、これは生理的に活性又は不活性であり得る。例えば、本発明の1つ又はそれ以上の治療薬は、治療の組み合わせにおいて、他の薬剤を添加し、本発明の用法に従って治療され得る。このような組み合わせは、分離した組成物として治療され、補足的な送達系で送達するために組み合わされ、又は組み合わされた組成物、例えば混合物又は融合化合物を形成し得る。更に、前述の治療の組み合わせはBBB透過性増強剤及び/又は透圧剤上昇剤を含有し得る。
【0084】
このような医薬組成物を使用した担体及び添加剤は所望の投与方法に依存して種々の形態を取ることができる。従って、経口投与に対する組成物は、例えば、デンプン、糖、結合剤、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、錠剤崩壊剤等からなる適当な担体及び添加剤を使用した錠剤、糖衣錠、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒、粉末等のような固体調製品であり得る。使用易さ及び高い服薬遵守のため、錠剤及びカプセルは多くの医学的状態で有利な経口投薬形態を提供する。
【0085】
同様に、液体調製物のための組成物は溶液、乳液、分散液、懸濁液、シロップ、エリキシル等を包含し、適当な担体及び添加剤は水、アルコール、油脂、グリコール、保存料、フレーバー剤、着色剤、懸濁剤等である。非経腸投与のための典型的な調製品は滅菌水又は非経腸的に許容される油脂、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、アラキス油又はゴマ油と共に活性成分を含み、そして溶解性又は保存に寄与する他の添加剤も包含し得る。溶液の場合は、凍結乾燥して粉末とし、その後、使用直前に希釈再調整することができる。分散液及び懸濁液の場合は、適切な担体及び添加剤は水性のガム類、セルロース、ケイ酸塩と又は油脂を包含する。
【0086】
本発明の実施形態による医薬組成物は経口、直腸、局所、経鼻、吸入(例えばエアロゾルを介して)、口内(例えば舌下)、膣内、局所(即ち皮膚及び粘膜の両方の表面、例えば気道表面)、経皮投与及び非経腸(例えば皮下、筋肉内、皮内、関節内、胸膜腔内、腹腔内、髄腔内、大脳内、頭蓋内、動脈内又は静脈内)投与に適するものを包含するが、所定の症例における最も適当な経路は治療すべき状態の性質及び重症度により、そして、使用される特定の活性剤の性質により変動する。本発明の医薬組成物は経口、舌下、非経腸、インプラント、経鼻及び吸入による投与に特に適している。
【0087】
注射用の組成物は適当な担体、例えばプロピレングリコール−水、等張性の水、注射用滅菌水(USP)、emulPhorTM−アルコール水、cremophor−ELTM又は当該分野で知られた他の適当な担体と共に活性成分を包含する。これ等の担体は単独又は他の従来の可溶化財、例えばエタノール、グリコール又は当該分野で知られた他の物質と組み合わせて使用し得る。
【0088】
本発明の化合物を溶液又は注射剤の形態で適用する場合、化合物は何れかの従来の希釈剤に溶解又は懸濁することにより使用し得る。希釈剤は例えば生理食塩水、リンゲル液、グルコース水溶液、デキストロース水溶液、アルコール、脂肪酸エステル、グリセロール、グリコール、植物又は動物の原料から誘導した油脂、パラフィン等を包含し得る。これ等の製剤は当該分野で知られた何れかの従来の方法により製造し得る。
【0089】
経鼻投与用の組成物はエアロゾル、ドロップ、粉末及びゲルとして製剤し得る。エアロゾル製剤は典型的には生理学的に許容される水性又は非水性の溶媒中の活性成分の溶液又は微細懸濁液を含む。そのような製剤は典型的には密封用期中の滅菌された形態において単回又は多用量の量として提供される。密封容器は霧状化装置と共に使用するカートリッジ又はレフィルであることができる。或いは、シールされた容器は均一分注装置、例えば単回使用型鼻用吸入器、ポンプ霧状化装置又は治療有効量を送達するように設定された計量弁付のエアロゾルディスペンサーであってよく、これは内容物が完全に使用された後に排気されることを意図している。剤型がエアロゾルディスペンサーを含む場合は、それは高圧ガス、例えば圧縮ガス、空気等、又は有機性の高圧ガス、例えばフルオロクロロ炭化水素又はフルオロ炭化水素を含有することになる。
【0090】
口内又は舌下の投与に適する組成物は錠剤、ロゼンジ剤及びパステル剤を包含し、この場合、活性成分は担体、例えば糖類及びアカシア、トラガカント又はゼラチン及びグリセリンと共に製剤される。
【0091】
直腸投与用の組成物はカカオ脂のような従来の坐剤基剤を含有する坐剤を包含する。
【0092】
経皮投与に適する組成物は、軟膏、ゲル及びパッチ剤を包含する。
【0093】
当該分野で知られた他の組成物、例えばプラスター剤もまた経皮又は皮下投与に適用させ得る。
【0094】
更に又、組成物の製剤化の為に必要な成分との混合物中に活性成分を含むそのような医薬組成物を製造する場合には、他の従来の薬学的に受容可能な添加剤、例えば賦形剤、安定化剤、防腐剤、水和剤、乳化剤、潤滑剤、甘味剤、着色料、フレーバー剤、等張性付与剤、緩衝剤、抗酸化剤等も又配合し得る。添加剤としては、澱粉、スクロース、フラクトース、デキストロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、沈降炭酸カルシウム、結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ゼラチン、アカシア、EDTA、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタ重亜硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0095】
別の実施形態においては、本発明は本発明の化合物1つ以上の有効量を含む薬学的投与単位を含む容器1つ以上を包含するキットを提供する。
【0096】
水性懸濁液又はエリキシルは経口投与の為に望まれる場合は、そこに含まれる必須の活性成分を種々の甘味料又はフレーバー剤、着色料又は染料、及び、所望により乳化又は懸濁剤、並びに希釈剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びこれ等の組合せと組み合わせ得る。
【0097】
本明細書に記載する組成物は除放性製剤の部分として投与し得る。そのような製剤は一般的によく知られた技術を用いて製造してよく、そして、例えば経口、直腸又は経皮送達系により、又は所望の標的部位1つ以上における製剤又は治療装置のインプラント処置により投与し得る。除放性製剤は、担体マトリックス中に分散又は又速度調節膜に包囲されたリザーバ内に含有された状態で、本発明の治療薬単独又は第2の治療薬を含む治療用組成物を含有する。そのような製剤において使用するための担体は生体適合性であり、そして、生体分解性であり得る。1つの実施形態によれば、除放性製剤は相対的に一定の水準の活性組成物の放出をもたらし得る。別の実施形態によれば、除放性製剤は、例えば治療用組成物の所定用量を送達するために、特定の症状の発症時に被験体又は医療担当者により駆動され得る装置内に含有され得る。除放性製剤内に含有される治療用組成物の量はインプラント処置の部位、放出の速度及び予測持続時間、及び治療又は防止すべき状態の性質に応じたものとなる。
【0098】
特定の実施形態においては、神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療のための本発明の組成物は中枢神経系への投与組成物の送達を促進する製剤及び投与経路を用いて投与する。NKCC1アンタゴニストのよう投与組成物は、上記した血液脳関門の通過を促進するために製剤してよく、又は、血液脳関門を通過する薬剤と同時投与し得る。投与組成物は例えば血液脳関門を通過するリポソーム製剤中で送達してよく、又は、血液脳関門を通過する他の化合物、例えばブラジキニン、ブラジキニンアナログ又は誘導体又は他の化合物、例えばSERAPORTTMと同時投与し得る。或いは、本発明の投与組成物は循環している脳脊髄液中に直接投与組成物を投入する脊椎穿刺を用いて送達し得る。一部の治療状態については、血液脳関門の一過性又は永久的な崩壊が起こる場合があり、血液脳関門を通過するための投与組成物の特殊な製剤は必要とならない場合がある。本発明者等は例えば、抗癲癇剤(AED)に対して不応性のヒト患者においてフロセミド20mgの瞬時静脈内注射が自発的発作活性及び電気刺激惹起癲癇様活性の両方を低減又は根絶することを測定している(Haglund & Hochman J.Neurophysiol.(Feb.23,2005)doi:10.1152/jn.00944.2004)。
【0099】
本明細書に開示した治療用組成物の投与の経路及び頻度並びに用量は適応症により、そして個体別に変動し、そして、一般的に入手できる情報から、そして、患者をモニタリングすること及び標準的手法を用いて適宜用量及び用法を調節することにより、医師が容易決定し得る。一般的に、適切な用量及び用法は治療上及び/又は予防上の利点を与えるために十分な量の活性組成物を与えるものである。用量及び用法は非投与患者と比較した場合の投与患者における改善された臨床結果をモニタリングすることにより確立し得る。
【0100】
「有効量」又は「有効」という用語は、臨床試験及び評価、患者の観察等を通じて察知される疾患又は障害の症状の緩和をもたらす用量を指すことを意図している。「有効量」又は「有効」とは更に、生物学的又は化学的な活性における検出可能な変化を誘発する用量を指すことができる。検出可能な変化を検出し、及び/又は、更に関連する機序又は過程に関して当業者が定量しておい。更に又、「有効量」又は「有効」とは、所望の生理学的状態を維持する、すなわち有意な悪化を低減又は防止し、及び/又は、目的の状態の改善を促進する量を指すことができる。治療上有効な用量及び用法は治療すべき患者の状態、状態の重症度、及び全身状態に応じたものとなる。本発明の投与組成物の薬物動態及び薬力学的特徴は種々の患者で変動するため、患者における治療有効量を決定するための好ましい方法は用量を徐々に増大させ、そして臨床検査指標をモニタリングすることである。複合療法の場合は、2種以上の薬剤を、薬剤の各々が治療又は予防作用をもたらすために十分な時間に渡り治療有効量において存在するように、同時投与する。「同時投与」という用語は同じ製剤又は単位剤型又は別個の製剤における、2種以上の薬剤の同時又は逐次的投与を包含することを意図している。急性エピソード状態、慢性状態の治療又は予防のための適切な用量及び用法は必然的に患者の状態に適合するように変動することになる。
【0101】
例示すれば、神経障害性疼痛の治療のためには、フロセミド一日当たり1〜3回の頻度で10〜40mgの量で、好ましくは一日当たり3回40mgの量で、患者に対し経口投与し得る。別の例においては、ブメタニドを一日当たり1〜3回の頻度で1〜10mgの量で神経障害性疼痛の治療のために経口投与し得る。例えば小児への適用においてはより少量の用量を使用し得ることは当業者の知る通りである。
【0102】
別の実施形態において、本発明によるブメタニドアナログを毎日1.5〜6mgの量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり3回投与し得る。一部の実施形態においては、本発明によるフロセミドアナログを60〜240mg/日の量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり3回投与し得る。別の実施形態においては、本発明によるピレタニドアナログを毎日10〜20mgの量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり1回投与し得る。一部の実施形態においては、本発明によるアゾセミドアナログを一日当たり60mgの量で投与し得る。別の実施形態においては、本発明のトルセミドアナログを毎日10〜20mgの量で例えば1錠又は1カプセルを一日当たり1回投与し得る。特にIV投与についてはより低用量を投与し得ることは当然である。
【0103】
本発明の方法及び系はまた神経障害性疼痛及び神経精神障害の治療及び/又は予防のための候補となる化合物及び応報を評価するために使用し得る。所望のNKCC1共輸送体アンタゴニスト活性を潜在的に有している候補化合物を作成するための種々の手法を使用し得る。候補化合物は合成有機化学の当該分野で良く知られている操作法を用いて作成し得る。所望の活性及び特異性を付与するためにフロセミド、ブメタニド、エタクリン酸及び関連の化合物のような既知NKCC1アンタゴニストを修飾する目的の為には、構造−活性の関係及び分子モデリング手法が有用である。所望の活性に関して候補化合物をスクリーニングするための方法は参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許5,902,732、 5,976,825、6,096,510及び6,319,682に記載されている。
【0104】
候補化合物は、神経膠細胞、ニューロン細胞、腎細胞等のような培養細胞の種々の型を用いて、又はインサイチュの動物モデルにおいて、本発明のスクリーニング応報を用いてNKCC1アンタゴニスト活性に関してスクリーニングし得る。クロリド共輸送体アンタゴニスト活性を発見するためのスクリーニング手法では、例えば、「正常」より高値のアニオン性クロリド濃度を生じさせることにより、組織培養試料中又は動物モデルのインサイチュの細胞外空間のイオンバランスを改変する。この改変されたイオンバランスに付された細胞又は組織の試料の幾何学的及び/又は光学的な特性を測定し、候補薬剤を投与する。候補薬剤の投与の後、細胞又は組織の試料の相当する幾何学的及び/又は光学的な特性をモニタリングすることによりイオンの不均衡が残存しているかどうか、又は細胞外及び細胞内の空間におけるイオンバランスを改変することにより細胞が応答したかどうかを調べる。イオンの不均衡が残存している場合は、候補薬剤はクロリド共輸送体アンタゴニストの可能性がある。種々の型の細胞又は組織を使用しながらスクリーニングすることにより、高水準の神経膠細胞クロリド共輸送体アンタゴニスト活性を有し、そして、低水準のニューロン細胞及び腎細胞クロリド共輸送体アンタゴニスト活性を有する候補化合物が発見される。同様に、異なる型の細胞及び組織の系に対する作用も評価し得る。
【0105】
更に又、候補化合物の薬きょうは動物モデルにおいてインサイチュで神経障害性疼痛のような状態を刺激又は誘導し、状態の刺激の間の細胞又は組織の試料の幾何学的及び/又は光学的な特性をモニタリングし、候補薬剤を投与し、次に候補薬剤の投与の後の細胞又は組織の幾何学的及び/又は光学的な特性をモニタリングし、そして、細胞又は組織の試料の幾何学的及び/又は光学的な特性を比較して候補化合物の作用を調べることにより、評価し得る。神経障害性疼痛の緩和に関する投与組成物の薬効の試験はBennett,Hosp.Pract.(Off Ed).33:95−98,1998に記載されているもののような良く知られた方法を用いて実施することができる。
【0106】
上記した通り、本発明の方法において使用する組成物はNKCC1に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合フラグメント;NKCC1に結合する可溶性リガンド;NKCC1のアンチセンスオリゴヌクレオチド;及びNKCC1に特異的な短鎖干渉RNA分子(siRNA又はRNAi)からなる群より選択される治療薬を含み得る。
【0107】
NKCC1に特異的に結合する抗体は当該分野で知られており、そしてAlpha Diagnostic International,Inc.(San Antonio,Tex.78238)から入手できるものを包含する。抗体の「抗原結合部位」又は「抗原結合フラグメント」とは、抗原結合に参加する抗体の部分を指す。抗原結合部位は重(H)鎖及び軽(L)鎖のN末端可変(V)領域のアミノ酸残基により形成される。重鎖及び軽鎖のV領域内の3つの高度に発散したストレッチは「超可変領域」と称され、これは「フレームワーク領域」即ち「FR」として知られるより保存されたフランキングストレッチの間に挿入されている。即ち、「FR」という用語は免疫グロブリンの超可変領域の間に隣接して天然に存在するアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3超可変領域及び重鎖の3超可変領域は各々相対的に3次元空間に配置されることにより抗原結合表面を形成している。抗原結合表面は結合抗原の3次元表面に相補であり、そして、重鎖及び軽鎖の各々の3超可変領域は「相補性決定領域」即ち「CDR」と称される。
【0108】
抗体分子の結合特性を示すことができる抗原結合部位を含む多くの分子が当該分野で知られている。例えば、蛋白分解酵素パパインはIgG分子を優先的に切断して数個のフラグメントを形成し、その2つ(「F(ab)」フラグメント)は各々未損傷の抗原結合部位を包含する共有結合ヘテロ2量体を含む。酵素ペプシンはIgG分子を切断して数個のフラグメントを形成でき、それに含まれる「F(ab’)2」フラグメントは両方の抗原結合部位を含む。「Fv」フラグメントはIgM、IgG又はIgA免疫グロブリン分子の優先的蛋白分解切断により形成できるが、より一般的には当該分野で知られた組み換え手法を用いて誘導される。Fvフラグメントはネイティブの抗体分子の抗原認識結合能力の大部分を保持している抗原結合部位を含む非共有結合VH::VLヘテロ2量体である(Inbar et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2659−2662,1972;Hochman et al.Biochem 15:2706−2710,1976;及びEhrlich et al.Biochem 19:4091−4096,1980)。
【0109】
NKCC1に特異的に結合するヒト化抗体もまた本発明の方法において使用し得る。非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含む多くのヒト化抗体分子が報告されており、例えばげっ歯類V領域及びその関連CDRをヒト定常ドメインに融合させて保有しているキメラ抗体(Winter et al.Nature 349:293−299,1991;Lobuglio et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4220−4224,1989;Shaw et al.J Immunol.138:4534−4538,1987;及びBrown et al.Cancer Res.47:3577−3583,1987);適切なヒト抗体定常ドメインインとの融合の前にヒトサポートフレームワーク内にグラフトされたげっ歯類CDR(Riechmann et al.Nature 332:323−327,1988;Verhoeyen et al.Science 239:1534−1536,1988;及びJones et al.Nature 321:522−525,1986);及び組み換えにより修飾されたげっ歯類FRによりサポートされたげっ歯類CDR(1992年12月23日公開の欧州特許公開519,596)が包含される。これ等の「ヒト化」分子はヒトレシピエントにおけるこれ等の部分の治療適用の持続時間及び有効性を制限するげっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小限にするように設計される。
【0110】
NKCC1の活性をモジュレートすることは、別法としてはポリペプチドの発現を低減又は抑制することによっても行ってよく、これは相当するポリヌクレオチドの転写及び/又は翻訳に干渉することにより達成することができる。ポリペプチドの発現は例えばアンチセンス発現ベクター、アンチセンスオリゴデオキシルボヌクレオチド、アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシリボヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスホスホロチオエートオリゴリボヌクレオチドを導入することにより;又は当該分野で良く知られている別の手段により抑制し得る。全てのそのようなアンチセンスポリヌクレオチドは本明細書においては創傷して「アンチセンスオリゴヌクレオチド」と称する。
【0111】
本発明の方法において使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドはポリヌクレオチドに特異的に結合するために十分なNKCC1ポリヌクレオチドに対する相補性を有している。アンチセンスオリゴヌクレオチドが本発明の方法において有効であるためには、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列はポリヌクレオチドに100%相補である必要は無い。むしろ、ポリヌクレオチドへのアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合がポリヌクレオチドの正常な機能に干渉して用途を消失させる場合、及び、オリゴヌクレオチドの他の非標的配列への非特異的結合が回避される場合に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは十分相補である。適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計は当該分野で良く知られている。メッセージの5’末端、例えばAUG開始コドンを含むそこに至るまでの5’未翻訳配列に相補であるオリゴヌクレオチドは翻訳の抑制において最も効率的に機能するはずである。しかしながら、ターゲティングされたポリヌクレオチドの5’又は3’非翻訳非コーディング領域の何れかに相補であるオリゴヌクレオチドもまた使用し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞透過性及び活性は適切な化学的修飾、例えばフェノキサジン置換C−5プロピニルウラシルオリゴヌクレオチド(Flanagan et al.,Nat.Biotechnol.17:48−52,1999)又は2’−O−(2−メトキシ)エチル(2’−MOE)−オリゴヌクレオチド(Zhang et al.,Nat.Biotechnol.18:862−867,2000)の使用により増強することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる手法の使用は当該分野で良く知られており、例えばRobinson−Benion et al.(Methods in Enzymol.254:363−375,1995)及びKawasaki et al.(Artific.Organs 20:836−848,1996)に記載されている。
【0112】
NKCC1ポリペプチドの発現はRNA干渉(RNAi)のような方法異より特異的に抑制し得る。この手法の考察はScience,288:1370−1372,2000に記載されている。慨すれば、アンチセンスRNA又はDNAを使用する遺伝子抑制の伝統的方法は、結合が後の細胞過程に干渉するように目的の遺伝子の逆配列に結合することにより相当する蛋白の合成をブロックすることにより作用する。RNAiもまた翻訳後のレベルに対して作用し、配列特異的であるが、遥かに高効率に遺伝子発現を抑制する。遺伝子発現を制御又はモディファイするための例示される方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO99/49029,WO99/53050及びWO01/75164に記載されている。これ等の方法においては、配列関連遺伝子の転写産物の急速な分解をもたらす配列特異的RNA分解過程により翻訳後の遺伝子サイレンシングが行われる。研究によれば、2本鎖RNAは配列特異的遺伝子サイレンシングのメディエーターとして作用するとされている(例えばMontgomery and Fire,Trends in Genetics,14:255−258,1998を参照できる)。自己相補領域により転写産物を生成する遺伝子コンストラクトが遺伝子サイレンシングでは特に効率的である。
【0113】
1つ以上のリボヌクレアーゼが2本鎖RNAに特異的に結合して短鎖フラグメントに切断することが明らかにされている。リボヌクレアーゼはこれ等のフラグメントと会合したまま残存し、これ等が次に相補mRNAと特異的に結合し、即ち目的の遺伝子に関する転写されたmRNA鎖に特異的に結合する。遺伝子に関するmRNAはまたリボヌクレアーゼにより分解されて短鎖フラグメントとなり、これにより遺伝子の翻訳及び発現が防止される。更に又mRNAポリメラーゼは短鎖フラグメントの多くのコピーの合成を促進する作用を有し、これが系の効率を指数的に上昇させている。RNAiの独特の特徴はサイレンシングがそれが開始された細胞に限定されない点である。遺伝子サイレンシング作用は生物の他の部分に播種する場合がある。
【0114】
即ち、当該分野で知られた送達方法を用いながら本発明の方法において使用することができる遺伝子サイレンシングコンストラクト及び/又は遺伝子特異的自己相補性2本鎖RNA配列を形成するためにNKCC1ポリヌクレオチドを用い得る。遺伝子コンストラクトは自己相補RNA配列を発現するために使用し得る。或いは、RNA分子が細胞の原形質内に内在化して遺伝子サイレンシング作用を呈するように、細胞を遺伝子特異的2本鎖RNA分子と接触させ得る。2本鎖RNAは非標的遺伝子の発現に影響することなくRNAiを媒介するために十分なNKCC1遺伝子に対する相同性を有していなければならない。2本鎖DNAは少なくとも20ヌクレオチド長、好ましくは21〜23ヌクレオチド長である。好ましくは、2本鎖RNAは本発明のポリヌクレオチドに特異的に相当する。哺乳動物細胞における遺伝子発現を抑制するための21〜23ヌクレオチド長の短鎖干渉RNA(siRNA)分子の使用がWO01/75164に記載されている。最適な抑制性siRNAを設計するための手段はDNAengine Inc.(Seattle,WA.)より入手できるものを包含する。
【0115】
1つのRNAi手法はドナー及びアクセプタースプライシング部位を伴った適切なスプライシング方向のイントロン配列にフランキングした領域内にセンス及びアンチセンスの配列が位置している遺伝子コンストラクトを使用する。或いは、種々の長さのスペーサー配列を使用してコンストラクト内の配列の自己相補領域を分離し得る。遺伝子コンストラクト転写産物のプロセシングの間、イントロン配列がスプライスアウトされ、センス及びアンチセンス配列並びにスプライスジャンクション配列が結合できるようになり、2本鎖RNAが形成される。次に2本鎖RNAに結合して切断するリボヌクレアーゼを選択して、これにより特異的mRNA遺伝子配列の分解をもたらす事象のカスケードが開始され、特定の遺伝子がスプライスされる。
【0116】
インビボの使用のためには、遺伝子コンストラクト、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はRNA分子は種々の当該分野で知られた操作法により投与し得る(例えばRolland,Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Systems 15:143−198,1998及びその引用文献参照)。ウイルス性及び非ウイルス性の送達方法が遺伝子療法の為に使用されている。有用なウイルスベクターは例えばアデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ワクシニアウイルス及びトリポックスウイルスを包含する。例えばアデノウイルスをDNAポリリジン複合体にカップリングすることにより、及び、選択的ターゲティングのための受容体媒介エンドサイトーシスを利用することにより、アデノウイルスベクターを用いた腫瘍細胞への遺伝子ターゲティングの効率が向上されている(例えばCuriel et al.,Hum.Gene Ther.,3:147−154,1992;及びCristiano & Curiel,Cancer Gene Ther.3:49−57,1996参照)。ポリヌクレオチドを送達するための非ウイルス性の方法はChang & Seymour,(Eds)Curr.Opin.Mol.Ther.,vol.2,2000において考察されている。これ等の方法は細胞をネイキッドDNAに接触させること、カチオン性リポソーム又はカチオン性重合体とのポリヌクレオチドのポリプレックス、及び、全身投与のためのデンドリマーを包含する(Chang & Seymour前出)。リポソームは受容体媒介エンドサイトーシスによる取り込みのために細胞表面受容体を認識して特定の受容体のターゲティングを可能にするリガンドの配合により修飾することができる(例えばXu et al.,Mol.Genet.Metab.,64:193−197;1998;及びXu et al.,Hum.Gene Ther.,10:2941−2952;1999参照)。
【0117】
腫瘍ターゲティング細菌、例えばサルモネラは全身投与後の遺伝子の腫瘍への送達の為に潜在的に有用である(Low et al.,Nat.Biotechnol.17:37−41,1999)。細菌は、例えばインビボの哺乳動物の上皮細胞内に浸透して高効率でDNAを送達するように、エクスビボで操作することができる(例えばGrillot−Courvalin et al.,Nat.Biotechnol.16:862−866,1998参照)。分解安定化されたオリゴヌクレオチドをリポソーム内にカプセル化し、静脈内又は標的部位(例えば神経障害性疼痛の発生源)へ直接、注射することにより患者に送達し得る。或いは、本発明のポリペプチドに関するアンチセンスRNAを発現するレトロウイルス又はアデノウイルスベクター又はネイキッドDNAを患者に投与し得る。そのような方法を使用するための適当な手法は当該分野で良く知られている。
【0118】
本発明の投与組成物及び方法は特定の好ましい実施形態に関して上記説明した。以下の実施例は特定の実験の結果を説明しており、本発明を如何なる面でも限定する意図はない。
【実施例】
【0119】
実施例1
メチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドメチルエステル)
窒素下にメタノール(12mL)中のブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)のスラリーに5分間かけてメタノール(6mL)中の塩化チオニル(70uL)の混合物を添加した。5分間攪拌後、反応混合物が溶解状態になった。反応混合物をさらに30分間攪拌し、その時点で薄層クロマトグラフィー(TLC)による確認で反応が完了した。メタノールを減圧下に除去し、残存物を酢酸エチル中に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄した。酢酸エチルを無水硫酸マグネシウム上に乾燥し、濃縮し、白色固体としてメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.1g(89%)を得た。
【0120】
実施例2
シアノメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドシアノメチルエステル)
ブメタニド(1.0g、2.7ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、クロロアセトニトリル(195uL、2.7ミリモル)、次いでトリエチルアミン(465uL)を添加した。反応混合物を12時間100℃に加熱し、その時点でTLCおよび液体クロマトグラフィー連結質量分析器(LC/MC)が反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、スラリーに減少した。スラリーに水(25mL)を添加し、粗生成物をオフホワイトの固体として沈殿させた。アセトニトリル中の再結晶を介して純粋なシアノメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(850mg)を得た。
【0121】
実施例3
ベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドベンジルエステル)
ブメタニド(1.15g、3.15ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)に溶解し、塩化ベンジル(400uL、2.8ミリモル)、次いでトリエチルアミン(480uL)を添加した。反応混合物を12時間80℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、濃厚なスラリーに濃縮した。スラリーに水(25mL)を添加した。得られた固体を濾過し、12時間50℃で真空オーブン内に乾燥し、ベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.0g(80%)を得た。
【0122】
実施例4
2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドモルホリノエチルエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、12mL)に溶解し、塩酸4−(2−クロロエチル)モルホリン(675mg、3.62ミリモル)、次いでトリエチルアミン(1mL)およびヨウ化ナトリウム(500mg、3.33ミリモル)を添加した。反応混合物を8時間95℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、濃縮乾固した。Biotage社製フラッシュクロマトグラフィーを介した精製、精製溶離、真空下の蒸発の後、白色固体として2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得た(600mg、62%)。
【0123】
実施例5
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート[ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル]
実施例31と同様な方法で、ジメチルホルムアミド(DMF)中にブメタニドを塩酸塩化3−(ジメチルアミノ)プロピル、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0124】
実施例6
N,N−ジエチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(12mL)中に溶解し、2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド(500mg、3.35ミリモル)、次いでトリエチルアミン(0.68mL)およびヨウ化ナトリウム(500mg、3.33ミリモル)を添加した。反応混合物を8時間95℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、濃厚なスラリーに減少した。スラリーに水(25mL)を添加し、得られた固体を溶液から沈殿させた。生成物を濾過し、12時間50℃で真空オーブン中に乾燥し、N,N−ジエチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.0gを得た。
【0125】
実施例7
N,N−ジエチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドジエチルアミド)
ブメタニド(1.16g、3.2ミリモル)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、690mg、3.6ミリモル)を添加した。5分後、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、498mg、3.6ミリモル)を添加し、溶液をさらに5分間攪拌した。ジエチルアミノ(332uL、3.2ミリモル)を添加し、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ジクロロメタンを減圧下に除去し、純粋なN,N−ジエチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート860mg(65%)を得た。
【0126】
実施例8
N,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドジベンジルアミド)
ブメタニド(960mg、2.6ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)に溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、560mg、3.6ミリモル)を添加した。10分後、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、392mg、2.9ミリモル)を添加し、溶液をさらに10分間攪拌した。ジベンジルアミン(1mL、5.2ミリモル)を添加し、反応混合物を2時間攪拌し、その時点でLC/MSにより反応が完了した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム(20mL)に注ぎ込み、酢酸エチル(2x100mL)で抽出した。酢酸エチルを飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウム上に乾燥した。酢酸エチルを減圧下に除去し、白色固体としてN,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート1.0g(75%)を得た。
【0127】
実施例9
ベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
水(10mL)中のベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物(451mg、2.7ミリモル)の溶液にブメタニド(1g、2.7ミリモル)を5分間かけて添加した。10分間攪拌後、反応混合物が透明になった。水を減圧下に除去し、粗製の無色油状物を得た。純粋な生成物を水およびヘプタンを使用した油状物の再結晶から得て、明桃色結晶物としてベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート690mgを得た。
【0128】
実施例10
セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、ブメタニドを水中のセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0129】
実施例11
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)に溶解し、2−クロロ−N,N−ジメチルアミド(410uL、3.9ミリモル)、次いでトリエチルアミン(0.70mL)およびヨウ化ナトリウム(545mg、3.6ミリモル)を添加した。反応混合物を10時間50℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。溶媒を減圧下に除去し、残存物を酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上に乾燥した。酢酸エチルを減圧下に除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、純粋なN,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート685mg(60%)を得た。
【0130】
実施例12
t−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドピバキセチルエステル)
ブメタニド(1.2g、3.29ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF、10mL)中に溶解し、クロロメチルピバレート(575uL、3.9ミリモル)、次いでトリエチルアミン(0.70mL)およびヨウ化ナトリウム(545mg、3.6ミリモル)を添加した。反応混合物を10時間50℃に加熱し、その時点でTLCおよびLC/MSが反応が完了したことを示した。溶媒を減圧下に除去し、残存物を酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上に乾燥した。酢酸エチルを減圧下に除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、純粋なt−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート653mg(60%)を得た。
【0131】
実施例13
エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドプロパキセチルエステル)
実施例12と同様の方法で、ブメタニドをジメチルホルムアミド(DMF)中のクロロメチルプロピオネート、トリメチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0132】
実施例14
メチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドメチルエステル)
実施例1と同様の方法で、ピレタニドを塩化チオニルおよびメタノールと反応させ、メチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0133】
実施例15
シアノメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドシアノメチルエステル)
実施例2と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のクロロアセトニトリルと反応させ、シアノメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0134】
実施例16
ベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドベンジルエステル)
実施例3と同様の方法で、ピレタニドをDMF中の塩化ベンジルと反応させ、ベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0135】
実施例17
2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドモルホリノエチルエステル)
実施例4と同様の方法で、ピレタニドをDMF中の塩酸4−(2−クロロエチル)モルホリノ、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、2−(4−モルホリノ)エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0136】
実施例18
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート[ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル]
実施例31と同様の方法で、ピレタニドをジメチルホルムアミド(DMF)中の塩酸3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0137】
実施例19
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル)
実施例6と同様の方法で、ピレタニドをジメチルホルムアミド(DMF)中の2−クロロ−N,N−ジエチルアセトアミド、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0138】
実施例20
N,N−ジエチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドジエチルアミド)
実施例7と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のEDC、HOBtおよびジエチルアミンと反応させ、N,N−ジエチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0139】
実施例21
N,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドジベンジルアミド)
実施例8と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のEDC、HOBtおよびジベンジルアミンと反応させ、N,N−ジベンジル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0140】
実施例22
ベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、ピレタニドをベンジルトリメチルアンモニウムと反応させ、ベンジルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0141】
実施例23
セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例10と同様の方法で、ピレタニドをセチルトリメチルアンモニウムと反応させ、セチルトリメチルアンモニウム3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0142】
実施例24
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル)
実施例11と同様の方法で、ピレタニドをDMF中の2−クロロ−N,N−ジメチルアセトアミド、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0143】
実施例25
t−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドピバキセチルエステル)
実施例12と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のクロロメチルピバレート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、t−ブチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0144】
実施例26
エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ピレタニドプロパキセチルエステル)
実施例13と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のクロロメチルプロピオネート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、エチルカルボニルオキシメチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0145】
実施例27
エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドエチルエステル)
Bundgaard,H.,Norgaad,T.およびNielsen,N.M.,Int.J.Pharmaceutics,1988,42,217−224の方法をエチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点163〜165℃。
【0146】
実施例28
シアノメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドシアノメチルエステル)
実施例2と同様の方法で、フロセミドをDMF中のクロロアセトニトリルと反応させ、シアノメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0147】
実施例29
ベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドベンジルエステル)
実施例3と同様の方法で、フロセミドをDMF中の塩化ベンジルと反応させ、ベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0148】
実施例30
2−(4−モルホリノ)エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドモルホリノエチルエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をエチル2−(4−モルホリノ)エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点134〜135℃。
【0149】
実施例31
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法を3−(N,N−ジメチルアミノプロピル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点212〜213℃。
【0150】
実施例32
N,N−ジエチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をN,N−ジエチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点135〜136℃。
【0151】
実施例33
N,N−ジエチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドジエチルアミド)
実施例7と同様の方法で、フロセミドをDMF中のEDC、HOBtおよびジエチルアミンと反応させ、N,N−ジエチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0152】
実施例34
N,N−ジベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドジベンジルアミド)
実施例8と同様の方法で、フロセミドをDMF中のEDC、HOBtおよびジベンジルアミンと反応させ、N,N−ジベンジル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0153】
実施例35
ベンジルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、フロセミドをベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、ベンジルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0154】
実施例36
セチルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例10と同様の方法で、フロセミドをセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、セチルトリメチルアンモニウム5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0155】
実施例37
N,N−ジメチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル)
Bundgaard,H.,Norgaad,T.およびNielsen,N.M.,Int.J.Pharmaceutics,1988,42,217−224の方法をN,N−ジメチルアミノカルボニルメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点193〜194℃。
【0156】
実施例38
t−ブチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドピバキセチルエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をt−ブチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。
【0157】
実施例39
エチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドプロパキセチルエステル)
Mork,N.,Bundgaard,H.,Shalmi,M.およびChristensen,S.,Int.J.Pharmaceutics,1990,60,163−169の方法をエチルカルボニルオキシメチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートの製造に使用できる。融点141〜142℃。
【0158】
実施例40
5−[1−(t−ブチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例12と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のクロロメチルピバレート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、5−[1−(t−ブチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0159】
実施例41
2−クロロ−5−[1−(エチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例12と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のクロロメチルプロピオネート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、2−クロロ−5−[1−(エチルカルボニルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0160】
実施例42
2−クロロ−5−[1−(ヒドロキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドを塩化メチレン、塩化メチレン−DMF混合物またはDMF中のホルムアルデヒドと反応させ、2−クロロ−5−[1−(ヒドロキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0161】
実施例43
2−クロロ−5−[1−(メトキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドを塩化メチレン、塩化メチレン−DMF混合物またはDMF中のホルムアルデヒドおよびメタノールと反応させ、2−クロロ−5−[1−(ヒドロキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0162】
実施例44
2−クロロ−5−[1−(メチルチオメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドを塩化メチレン、塩化メチレン−DMF混合物またはDMF中のホルムアルデヒドおよびメタンチオールと反応させ、2−クロロ−5−[1−(メチルチオメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0163】
実施例45
5−[1−(ベンジルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(テトラゾリル−置換アゾセミド)
アゾセミドをDMF中のベンジルクロロメチルエーテル、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、5−[1−(ベンジルオキシメチル)−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0164】
実施例46
2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのベンジルトリメチルアンモニウム塩(アゾセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、アゾセミドを水中のベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのベンジルトリメチルアンモニウム塩を得ることができる。
【0165】
実施例47
2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのセチルトリメチルアンモニウム塩(アゾセミドセチルトリメチルアンモニウム塩)
実施例9と同様の方法で、アゾセミドを水中のセチルトリメチルアンモニウム水酸化物と反応させ、2−クロロ−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドのセチルトリメチルアンモニウム塩を得ることができる。
【0166】
実施例48
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムt−ブチルカルボニルオキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例12と同様の方法で、トルセミドをDMF中のクロロメチルピバレート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムt−ブチルカルボニルオキシメトクロリドおよび多少の3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムt−ブチルカルボニルオキシ−メトヨーダイドを得ることができる。
【0167】
実施例49
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムエチルカルボニルオキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例12と同様の方法で、トルセミドをDMF中のクロロメチルプロピネート、トリエチルアミンおよびヨウ化ナトリウムと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムエチルカルボニルオキシメトクロリドおよび多少の3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムエチルカルボニルオキシ−メトヨーダイドを得ることができる。
【0168】
実施例50
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルオキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のベンジルクロロメチルエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルオキシメトクロリドを得ることができる。
【0169】
実施例51
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のメチルクロロメチルエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシメトクロリドを得ることができる。
【0170】
実施例52
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムフェニルメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中の塩化ベンジルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムフェニルメトクロリドを得ることができる。
【0171】
実施例53
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルチオメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のベンジルクロロメチルチオエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムベンジルチオメトクロリドを得ることができる。
【0172】
実施例54
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメチルチオメトクロリド(ピリジニウム−置換トルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のメチルクロロメチルチオエーテルおよびトリエチルアミンと反応させ、3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメチルチオメトクロリドを得ることができる。
【0173】
実施例55
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドmPEG350エステル)
実施例3と同様の方法で、ブメタニドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0174】
実施例56
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエート(ブメタニドmPEG1000エステル)
実施例3と同様の方法で、ブメタニドをDMF中のMeO−PEG1000−OTs(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンゾエートを得ることができる。
【0175】
実施例57
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ブメタニドmPEG350エステル)
実施例3と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0176】
実施例58
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエート(ブメタニドmPEG1000エステル)
実施例3と同様の方法で、ピレタニドをDMF中のMeO−PEG1000−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンゾエートを得ることができる。
【0177】
実施例59
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドmPEG350エステル)
実施例3と同様の方法で、フロセミドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0178】
実施例60
メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエート(フロセミドmPEG1000エステル)
実施例3と同様の方法で、フロセミドをDMF中のMeO−PEG1000−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲であるメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンゾエートを得ることができる。
【0179】
実施例61
5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(N−mPEG350−テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例3と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲である5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0180】
実施例62
5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド(N−mPEG1000−テトラゾリル−置換アゾセミド)
実施例3と同様の方法で、アゾセミドをDMF中のMeO−PEG1000−OTs(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲である5−[1−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エチル]−1H−テトラゾール−5−イル]−2−クロロ−4−[(2−チエニルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドを得ることができる。
【0181】
実施例63
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリド(N−mPEG350−ピリジニウムトルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のMeO−PEG350−Cl(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−106−350)およびトリエチルアミンと反応させ、nが7〜8の範囲である3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリドを得ることができる。
【0182】
実施例64
3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリド(N−mPEG1000−ピリジニウムトルセミド塩)
実施例3と同様の方法で、トルセミドをDMF中のMeO−PEG1000−OTs(Biolink Life Sciences,Inc.,Cary,NC,BLS−107−1000)およびトリエチルアミンと反応させ、nが19〜24の範囲である3−イソプロピルカルバミルスルホンアミド−4−(3’−メチルフェニル)アミノピリジニウムメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−1−エトクロリドを得ることができる。
【0183】
実施例65
3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンズアルデヒド(ブメタニドアルデヒド)
MurakiおよびMukiayama(Chem.Letters,1974,1447およびChem.Letters,1975,215)の方法により、ブメタニドをビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドと反応させ、3−アミノスルホニル−5−ブチルアミノ−4−フェノキシベンズアルデヒドを得ることができる。
【0184】
実施例66
3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンズアルデヒド(ピレタニドアルデヒド)
MurakiおよびMukiayama(Chem.Letters,1974,1447およびChem.Letters,1975,215)の方法により、ピレタニドをビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドと反応させ、3−アミノスルホニル−4−フェノキシ−5−(1−ピロリジニル)ベンズアルデヒドを得ることができる。
【0185】
実施例67
5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンズアルデヒド(フロセミドアルデヒド)
MurakiおよびMukiayama(Chem.Letters,1974,1447およびChem.Letters,1975,215)の方法により、フロセミドをビス(4−メチルピペラジニル)アルミニウムハイドライドと反応させ、5−アミノスルホニル−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]ベンズアルデヒドを得ることができる。
【0186】
実施例68
海馬スライスにおける癲癇様放電に対するフロセミドの作用
これ等の試験の間、自発的癲癇様活性が種々の投与により誘発された。Sprague−Dawleyラット(雌雄、25〜35日齢)を断首し、頭蓋骨上面を迅速に除去し、脳を氷冷酸素添加スライス用培地中で冷却した。スライス用培地は220mMスクロース、3mM KCl、1.25mM NaH2PO4、2mM MgSO4、26mM NaHCO3、2mM CaCl2及び10mMデキストロース(295〜305mOsm)よりなるスクロース系の人工脳脊髄液(sACSF)とした。海馬を含有する脳半球をブロックし、Vibroslicer(Frederick Haer,Brunsick,ME.)のステージ上に糊付(シアノアクリル接着剤)した。400μm厚みの水平又は横断スライスを4℃の酸素添加(95%O2;5%CO2)スライス用培地中に切り出した。スライスは迅速に保持チャンバー内に移し、そこでそれらは124mM NaCl、3mM KCl、1.25mM NaH2PO4、2mM MgSO4、26mM NaHCO3、2mM CaCl2及び10mMデキストロース(295〜305mOsm)よりなる酸素添加バス培地(ACSF)中に浸積したままとした。スライスを少なくとも45分間室温に保持した後浸積型の記録チャンバーに移した(全ての他の実験)。記録チャンバー内では、スライスを34〜35℃において酸素添加記録培地で灌流した。全ての動物の操作法はNIH及びワシントン大学動物保護ガイドラインに従って実施した。
【0187】
大部分のスライス実験において、同時細胞外電場電極記録地をCA1及びCA3域から得た。双極性タングステン刺激電極をシャファー側枝上に置き、CA1においてシナプス駆動型の電場応答を誘発した。刺激は集団スパイク閾値の4倍の強度の100〜300μsec持続パルスよりなるものとした。後放電は60Hzにおいて送達下子のような刺激の2秒連続により誘発した。自発的発作間様バーストは以下のバス培地への変更又は追加
、即ち、10mMカリウム(6スライス;4匹;平均−81バースト/分);200〜300μM4−アミノピリジン(4スライス;2匹;平均−33バースト/分);50〜100μMビククリン(4スライス;3匹;平均−14バースト/分);MMg++(1時間灌流−3スライス;2匹;平均−20バースト/分;又は3時間灌流−2スライス;2匹);ゼロカルシウム/6mM KCl及び2mM EGTA(4スライス;3匹)により投与したスライスにおいて観察された。全投与につき、一定水準のバーストが確立された後はフロセミドを記録用培地に添加した。
【0188】
これ等の操作法の初回において、後放電のエピソードをシャファー側枝の電気刺激により誘発(Stasheff et al.,Brain Res.344:296,1985)し、そして、細胞外電場応答をCA1錐体細胞領域(13スライス;8匹)中でモニタリングした。バス培地中のMg++の濃度を0.9mMまで低下させ、集団スパイク閾値の4倍の強度で2秒間60Hzにおける刺激により後放電を誘発した(集団スパイク閾値強度は100〜300μsecパルス持続時間において20〜150μAの範囲で変動)。刺激の試行の間10分間組織を回復させた。各実験において、シナプスインプットに対するCA1の初期応答は先ず、単回刺激パルスにより誘発した電場の電位を記録することにより試験した。対照条件においては、シャファー側枝刺激により単回集団スパイクを誘発した(図1A、差込図)。強直刺激は焼く30秒の後放電(図1A、左)を誘発し、内因性シグナルの大きな変化が伴っていた(図1A、右)。
【0189】
内因性光学的シグナルを画像化するために、直立型顕微鏡のステージ上に位置し、顕微鏡コンデンサーを経由して指向された白色光線(タングステンフィラメント光及びレンズのシステム;Dedo Inc.)を照射した灌流チャンバー内にいれた。光は変動が最小限となるように制御及び調節(電源−Lamda Inc.)し、そしてスライスが長波長(赤色)で透視できるようにフィルターを通した(695nm ロングパス)。視野及び倍率は顕微鏡の対物レンズの選択により決定した(全スライスをモニタリングするためには4X)。画像フレームは電荷結合デバイス(CCD)カメラ(Dage MTI Inc.)を用いて30HZで取得し、Imaging Technology Inc.,151シリーズ画像化システムを用いて512x480が祖の空間的解像度で8ビットでデジタル化し;カメラコントロールボックス及びA/Dボードのゲインとオフセットはシステムの感度が最適となるように調節した。画像化ハードウエアは486−PC互換コンピューターにより制御した。シグナル/ノイズを増大させるために、平均画像を16個別画像フレームから作成し、0.5秒に渡って積分し、そして共に平均した。実験シリーズでは典型的には数分間の期間に渡る平均画像のシリーズの連続的獲得を行い;これ等の平均画像の少なくとも10点を対照画像として刺激の前に獲得した。擬似着色画像は後に獲得された画像から初回対照画像を差し引き、そして、カラールックアップテーブルを画素値に割り付けることにより計算した。これ等の画像につき、通常は一次ローパスフィルタを用いて高周波数ノイズを除去し、一次ヒストグラムストレッチを用いてシステムのダイナミックレンジに渡って画素値をマッピングした。これ等の画像に関する全ての操作は、定量的情報が温存されるように一次とした。ノイズは所定の獲得シリーズ内の対照画像のシーケンスのAR/Rの変動の最大標準偏差として定義し、ここでAR/Rは組織を経由する光の透過の変化の規模を示す。デルタR/Rは全ての差−画像をとり、そして初回対照画像で割ることにより、即ち(後の画像−初回対照画像)/初回対照画像により計算した。ノイズは選択された画像シーケンスの各々につき、常時<0.01であった。組織を経由する光の透過の絶対的変化は、カメラと光源の間にニュートラルデンシティーフィルターを置いた後に画像を獲得することにより一部の実験の間に推定した。平均してカメラ電子機器及び画像化システム電子機器はシグナルを10倍増幅した後にデジタル化しているため、組織を経由する光の透過の最大絶対変化は通常は1%〜2%であった。
【0190】
図1Dに示すグレースケール写真は記録チャンバー内の典型的な海馬スライスのビデオ画像である。組織を定位置に保持するために使用した微細金ワイアメッシュがスライスに渡って対角線に伸びる暗色の線として観察される。刺激電極はCA1の放線上の右上に観察される。記録用電極(薄片のため写真中は観察不能)は白矢印により示す位置に挿入した。図1Aは60Hzにおける刺激2秒が後放電活性を惹起したことを示しており、細胞外電極により記録された典型的な後放電エピソードを示している。図1Aの差込図はシャファー側枝に送達された単回200秒試験パルス(矢印は人為的)に対するCA1電場応答を示す。図1A1はシャファー側枝刺激により誘発された組織を通過する光学的透過の最大変化のマップである。最大の光学的変化の領域は刺激電極の何れかの側のCA1の尖端及び基部の樹状領域に相当する。図1Bは2.5mMフロセミドを含有する培地中で20分灌流後の刺激に対する応答を示す試料チャートである。電気的後放電活性(図1Bに示す)及び刺激誘発光学的変化(図1B1に示す)の両方がブロックされている。しかしながら、過剰興奮電場応答(多重集団スパイク)が被験パルスに対して観察された(差込図)。図1C及び1C1は初期応答パターンの回復が正常バス培地灌流45分後に観察されたことを示している。
【0191】
刺激誘発後放電のフロセミドブロック及び被験パルスへのシナプス応答の同時増大の逆行する作用は2つの重要な結果、即ち(1)フロセミドが癲癇様活性をブロックし、そして(2)同期(自発的癲癇様活性により反映される)及び興奮性(単回シナプスインプットへの応答により反映される)が解離したことを示している。フロセミドの用量依存性を調べた実験では、1.25mMの最低濃度が後放電と光学的変化の両方をブロックするためには必要であることがわかった。
【0192】
実施例69
高K+(10mM)バス培地を灌流した海馬スライスにおける癲癇様放電に対するフロセミドの作用
上記した通り作成したラット海馬スライスを、長時間の自発的発作間様バーストがCA3(上チャート)及びCA1(下チャート)錐体細胞領域において同時に記録されるまで、高K+溶液で灌流した(図2A及び2B)。フロセミド含有培地(2.5mMフロセミド)で15分間灌流した後、バースト放電の桁数が増大した(図2Cおよび2D)。しかしながら、フロセミド灌流45分の後、バーストは可逆的な態様においてブロックされた(図2E、2F、2G及び2H)。フロセミド灌流の全シーケンスの間、シャファー側枝に送達された単回被験パルスに対するシナプス応答は未変化であるか増強された(データ示さず)。放電の振幅の初期増大は抑制のフロセミド誘導減少を反映している可能性がある(Misgeld et al.,Science 232:1413,1986;Thompson et al.,J.Neurophysiol.60:105,1988;Thompson and Gahwiler,J.Neuropysiol.61:512,1989;and Pearce,Neuron 10:189,1993)。フロセミドは今回観察された増大した興奮性の発生までの時間と同様の潜時(<15分)で海馬スライス中の抑制電流の成分をブロックすることが以前に報告されている(Pearce,Neuron 10:189,1993)。自発的バーストのフロセミドブロックのために必要なより長い潜時は高K+条件下におけるフロセミド感受性の細胞容量調節機序の十分なブロックのために必要な追加的時間に相当していると考えられる。
【0193】
高K+と共に灌流したスライスに対するフロセミドの作用を試験した後、同様の試験を種々の他の一般的に試験されているインビトロの癲癇様放電モデル(Galvan et al.,Brain Res.241:75,1982;Schwartzkroin and Prince,Brain Res.183:61,1980;Anderson et al.,Brain Res.398:215,1986;and Zhang et al.,Epilepsy Res.20:105,1995)を用いて実施した。マグネシウム非含有培地(0−Mg++)に長時間(2〜3時間)曝露した後、スライスは一般的に臨床上使用されている抗痙攣剤に対して抵抗性の癲癇様放電を発生することがわかった(Zhang et al.,Epilepsy Res.20:105,1995)。内側嗅側皮質(図21)及び鉤状回(図示せず)からの記録によれば、0−Mg++培地灌流3時間の後スライスは以前に「抗痙攣剤抵抗性」バーストと説明されていたものと同様の現れ方のバーストパターンを発生した。バス培地にフロセミドを添加した1時間後、これ等のバーストはブロックされた(図2J)。フロセミドは又、以下のバス培地への追加/変更、即ち、(1)200〜300μM4−アミノピリジン(4−AP;カリウムチャンネルブロッカー)の添加(図2K及び2L);(2)GABAアンタゴニストビククリン50〜100μMの添加(図2M及び2N);(3)マグネシウムの除去(0−Mg++)−1時間灌流(図2O及び2P);及び(4)カルシウムの除去+細胞外キレート形成(0−Ca++)(図2Q及び2R)により観察された自発的バースト放電もブロックした。これらのマニュピレイションでは、自発的発作間様パターンは、CA1およびCA2サブフィールドから同時に記録される(図2K、2L、2M、および2NはCA3トレースのみを表示し、図2O、2P、2Q、および2RはCA1トレースのみを表示する)。0−Ca++実験においては、5mMのフロセミドが15〜20分の潜時でバーストをブロックした。全ての他のプロトコルに関し、バーストは2〜60分の潜時で2.5mMフロセミドによりブロックされた。フロセミドは全実験においてCA1及びCA3の両方における自発的バースト活性を可逆的にブロックした(図2L、2N、2P及び2R)。
【0194】
実施例70
麻酔ラットにおけるカイニン酸のiv注射により誘導された癲癇様活性に対するフロセミドの作用
本実施例は麻酔ラットへのカイニン酸(KA)のiv注射により癲癇様活性が誘導されるインビボモデルを説明するものである(Lothman et al.,Neurology 31:806,1981)。結果は図3A〜3Hに示す。Sprague−Dawleyラット(4匹;体重250〜270g)をウレタン(1.25g/kg i.p.)で麻酔し、更に必要に応じて追加的ウレタン注射(0.25g/kg i.p.)により麻酔を維持した。体温は直腸温度プローブを用いてモニタリングし、加熱パッドで35〜37℃に維持し;心拍数(EKG)は連続的にモニタリングした。静脈内薬剤投与のために頸静脈を片側で挿管した。ラットをKopf定位装置(頭蓋の高さの最上部を有するもの)にいれ、そして尖端0.5mmまで絶縁された双極性ステンレス鋼マイクロ電極を皮質表面から0.5〜1.2mmの深度まで挿入し、前頭頭頂皮質中の脳波律動(EEG)活性を記録した。一部の実験においては、2M NaCl含有ピペットを2.5〜3.0mmの深度まで提げることにより海馬EEGを記録した。データはVHSビデオテープに保存し、オフラインで分析した。
【0195】
外科的処置及び電極設置の後、動物を30分間回復させた後にカイニン酸注射(10〜12mg/kg i.v.)による実験を開始した。強力な発作活性、増大した心拍数及び鼻毛の急速な運動が約30分の潜時で誘導された。安定な電気的発作が顕在化した後、フロセミドを合計3回の注射となるまで30分毎に20mg/kgの瞬時注射で送達した。実験はウレタンの静脈内投与により終了した。動物の保護はNIHガイドラインに従い、ワシントン大学動物保護委員会により認可された。
【0196】
図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸誘発電気的「痙攣重積状態」のフロセミドブロックを示す。EKG記録は上チャートに、EEG記録は下チャートに示す。このモデルにおいて、KA注射(10〜12mg/kg)後30〜60分に皮質から(又は深部海馬電極から)強力な電気的放電(発電気的「痙攣重積状態」)が記録された(図3C及び3D)。対照実験(及び以前の報告、Lothman et al.,Neurology,31:806,1981)によれば、この重積状態様活性は3時間に渡って充分維持されることが示されている。その後のフロセミド静脈内注射(累積用量:40〜60mg/kg)は30〜45分の潜時で発作活性をブロックし、比較的フラットなEEGをもたらす場合が多かった(図3E、3F、3G及び3H)。フロセミド注射後90分においてさえも、皮質活性はほぼ正常なベースライン水準(即ちKA及びフロセミド注射の前に観察されたもの)を維持していた。ラットにおけるフロセミドの薬物動態に関する試験はこの実施例で使用した用量は毒性水準より十分低値であることを示している(Hammarlund and Paalzow,Biopharmaceutics Drug Disposition,3:345,1982)。
【0197】
実施例71〜74に関する実験方法
海馬スライスは前記の通りSprague−Dawley成熟ラットから調製した。厚み100μmの横断海馬スライスを振動カッターで切り出した。スライスは典型的には全海馬及び鉤状回を含有していた。切り出した後、スライスは記録前少なくとも1時間は室温で酸素添加保持チャンバー内に保存した。全ての記録は34〜35℃において酸素添加(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(ACSF)と共にインターフェイス型のチャンバー内で獲得した。通常のACSFは(mmol/l単位で)124NaCl、3KCl、1.25NaH2PO4、1.2MgSO4、26NaHCO3、2CaCl2及び10デキストロースを含有していた。
【0198】
CA1及びCA3錐体細胞からの細胞内記録のためのSharp電極に4M酢酸カリウムを充填した。CA1及びCA3細胞体層からの電場の記録は2MのNaClを充填した低抵抗ガラス電極を用いて獲得した。シャファー側枝又は肺門経路の刺激のためには、小型単極タングステン電極をスライス表面に設置した。電場からの自発的及び刺激誘発の活性及び細胞内記録をデジタル化(Neurocorder,Neurodata Instruments,New York,N.Y.)し、ビデオテープに保存した。パーソナルコンピューター上のAxoScopeソフトウエア(Axon Instruments)を用いてデータのオフライン分析を行った。
【0199】
一部の実験においては、ビククリン(20μM)、4−アミノピリジン(4−AP)(100μM)又は高K+(7.5又は12mM)を含有する通常又は低クロリドの培地を使用した。全ての実験においてNaClとNa+−グルコネート(Sigma)の等モル置き換えにより低クロリド溶液(7及び21mM[Cl−]o)を調製した。全ての溶液は約それらが35℃において、そして95%O2/5%CO2を用いた炭酸添加による平衡状態において7.4のpH及び290〜300mOsmの浸透圧を有するように調製した。
【0200】
インターフェースチャンバー内に入れた後、スライスを約1ml/分で表面洗浄した。この低流量においては、灌流培地の交換が完了するまで8〜10分間を要した。ここで報告した時間は全て、この遅延を考慮しており、約±2分の誤差を有している。
【0201】
実施例71
CA1及びCA3における域内の自発的癲癇様バーストの停止のタイミング
同期活性をモジュレートする因子の相対的寄与度はCA1及びCA3域の間で異なる。これ等の因子は局所的循環の差及び細胞の充填度と細胞外空間の容積比率における領域特異的な差を包含する。アニオン又はクロリド共輸送拮抗の抗癲癇作用がニューロン放電のタイミングにおける脱同期によるものであるとすれば、クロリド共輸送ブロックはCA1及びCA3域に示差的に影響することが予測される。これを試験するために、CA1及びCA3域における自発的癲癇様活性のブロックのタイミングの差を特徴付けるための一連の実験を実施した。
【0202】
電場活性はCA1及びCA3域で同時に記録(CA3領域の最も近位と遠位の間のほぼ中間点)し、そして、自発的バーストは高−[K+]o(12μM;n=12)、ビククリン(20mM;n=12)又は4−AP(100μM;n=5)の投与により誘導した。CA1及びCA3域の電場応答が各実験の持続時間全体に渡ってモニタリングされるように単回電気刺激を30秒毎にCA1及びCA3域の間の中央でシャファー側枝に送達した。全実験において、低−[Cl−]o(21mM)又はフロセミド含有(2.5mM)培地への切り替えの前に少なくとも20分の連続自発的癲癇様バーストが観察された。
【0203】
全ての場合において、フロセミド又は低クロリド培地への30〜40分の曝露の後、自発的バーストはCA1域においてはCA3域でバーストが停止する前に停止した。典型的に観察された事象の時間的シーケンスはバーストの周波数及び自発的電場事象の振幅の初期増大、次いでCA3よりもCA1においてより急速であったバースト放電の振幅の低下を包含していた。CA1がサイレントとなった後、CA3はそれが同様に自発的癲癇様事象を示さなくなるまで5〜10分間放電を継続した。
【0204】
バースト停止のこの時間的パターンは、自発的バーストのブロックの為に使用した薬剤がフロセミドであるか低−[Cl−]o培地であるかに関わらず、試験した全ての癲癇様誘導投与において観察された。これ等の実験の全段階を通じて、シャファー側枝の刺激はCA1及びCA3細胞体層の両方において過剰興奮電場応答を誘発した。CA1及びCA3域の両方において自発的バーストがブロックされた直後、過剰興奮集団スパイクはなお誘発できた。
【0205】
本発明者等はCA3の前にCA1におけるバーストの停止が観察されたことは記録部位の本発明者等の選択と比較した場合のこれ等の域の間のシナプス接触の組織化の人為的要因であると考えた。CA3の種々のサブ領域の投射はCA1においては組織化された態様において終了することが知られており;歯状回により近接するCA3細胞(近位CA3)CA1の遠位の部分(鉤状回境界近傍)に対して最も多大に投射する傾向があるのに対し、CA3においてより近位に位置する細胞から生じるCA3投射はCA2境界により近接して位置するCA1の部分においてより多大に終了する。バーストの停止が異なる時点にCA3の異なるサブ領域において生じるとすれば、上記実験セットの結果はCA1及びCA3の間の差としてではなく、CA3サブ領域に渡るバースト活性の変動性の関数として生じると考えられる。本発明者等はこの可能性を3実験において試験した。CA1において自発的バーストが停止した直後、本発明者等は記録電極を用いてCA3電場を調べた。数箇所の異なるCA3位置(CA3の最も近位から最も遠位の部分)からの記録はCA3域の全サブ領域がCA1がサイレントである時間中に自発的バーストしていたことを示していた。
【0206】
CA1がサイレントとなった後もCA3が自発的に放電を継続したという観察結果は、CA3における集団放電が一般的には興奮性シナプス伝達を介してCA1における放電を誘発すると考えられていることからすれば、予測されないものであった。前述の通り、シャファー側枝に送達された単回パルス刺激は自発的バーストのブロック後であってもなおCA1において多重集団スパイクを誘発しており;即ち、CA3からCA1への過剰興奮の興奮性シナプス伝達は未損傷であった。このように維持されたシナプス伝達及び継続的な自発的電場放電がCA3に存在すると仮定して、本発明者等はCA1における自発的バーストの損失は投入される興奮性駆動力の同期の低減に起因すると推定した。更に又、CA3における自発的癲癇様放電は最終的にはやはり停止するため、この脱同期課程は2つの海馬サブ電場において異なる時点で生じていたと考えられる。
【0207】
実施例72
CA1及びCA3電場集団放電の同期に対するクロリド共輸送拮抗の作用
実施例4の観察結果は低−[Cl−]o又はフロセミド含有培地への曝露時間と自発的バースト活性の特徴の間の時間的関係を示唆していた。更に又この関係はCA1及びCA3域の間で異なっていた。時間的関係をより明確化するため、本発明者等は自発的及び刺激誘発バースト放電の間のCA1及びCA3の電場応答において、CA1活動電位の発生と集団スパイク事象を比較した。
【0208】
細胞内記録はCA1電場電極に近接(<100μM)して配置した細胞内電極を用いてCA1錐体細胞から得た。シャファー側枝に送達される単回刺激を用いて20秒毎にスライスを刺激した。少なくとも20分間持続的自発的バーストが確立された後、バス培地をビククリン含有低−[Cl−]o(21mM)培地に切り替えた。約20分の後、バーストの周波数と振幅はその最大値となった。この時間の間の同時の電場及び細胞内の記録はCA1電場及び細胞内記録がCA2電場放電と緊密に同期していたことを示していた。各自発的放電の間、CA3電場の応答はCA1放電より数ミリ秒先行していた。刺激誘発事象の間、CA1錐体細胞の活動電位放電はCA3及びCA1の両方の電場放電と緊密に同期していた。
【0209】
低−[Cl−]o培地に連続して曝露したところ、CA1及びCA3域の自発的放電の間の潜時は増大し、最大潜時30〜40ミリ秒はビククリン含有低クロリド培地への曝露後30〜40分に起こった。この時間、CA1及びCA3療法の自発的電場放電の振幅は減少した。この時間の刺激誘発放電は形態学的特徴及び相対的潜時において自発的に生じる放電を緊密に模倣していた。しかしながら、ニューロンの初期刺激誘発脱分極(恐らくは単シナプスEPSP)は如何なる顕著な潜時増大も伴うことなく開始した。これ等のデータを獲得した時間の間隔はCA1における自発的バーストの停止の直前の時間に相当している。
【0210】
低−[Cl−]o培地を用いた灌流40〜50分の後、自発的バーストはCA1ではほぼ消失したが、CA3では影響が無かった。この時間のシャファー側枝刺激は、CA1錐体細胞の単シナプストリガー応答は潜時の如何なる顕著な増大も伴わずに生じたが、刺激誘発電場応答はほぼ消失したことを示している。これ等のデータを獲得した時間の間隔はCA3における自発的バーストの停止の直前の時間に相当している。
【0211】
低−[Cl−]o培地に長期間曝露した後、シャファー側枝刺激とその結果生じるCA3電場放電との間の潜時において多大な増大(>30ミリ秒)が生じた。最終的にはCA1及びCA3域のいずれにおいてもシャファー側枝刺激により誘発された電場応答は無かった。しかしながら、シャファー側枝に応答したCA1錐体細胞からの活動電位の放電は応答潜時の変化を殆ど伴うことなく誘発された。実際、実験の全持続時間(2時間超)につき、CA1錐体細胞からの活動電位放電はシャファー側枝刺激により短い潜時で誘発された。更に又、CA3の刺激誘発過剰興奮放電は低−[Cl−]o培地への長時間曝露後に最終的にはブロックされたが、CA3における逆行性の応答は温存されているように観察された。
【0212】
実施例73
CA1錐体細胞におけるバースト放電の同期に対するクロリド共輸送拮抗の作用
上記したデータは電場応答の消失はニューロン間の活動電位の発生の脱同期による可能性があることを示している。即ち、CA1錐体細胞のシナプス駆動興奮は温存されなかったが、CA1ニューロン集団内の活動電位の同期性は合算して測定可能なDC電場応答とするには十分ではなかった。これを試験するために、CA1錐体細胞のペア型細胞内記録をCA1電場応答と同時に獲得した。これらの実験においては、細胞内電極及び電場記録電極の両方を相互に200μm以内に設置した。
【0213】
ビククリン含有低−[Cl−]o培地により誘導された最大自発的活性の期間、記録はAC1ニューロンとCA1電場放電のペアの間の活動電位が自発的及び刺激誘発放電の間の両方で堅固に同期していたことを示している。低−[Cl−]o培地に連続曝露した後、CA1電場放電の振幅がブロード化して減衰し始めた時点において、自発的及び刺激誘発放電の両方とも、CA1ニューロンのペアの間の活動電位の発生のタイミングにおいて、及び、活動電位と電場応答の間において、脱同期を示していた。脱同期はCA1電場増幅の抑制と一致していた。CA1における自発的バーストが停止する時間までは、シャファー側枝刺激とCA1電場放電の間の潜時の顕著な増大が生じた。この時点において、ペア型細胞内記録はニューロンペアの間の活動電位放電のタイミングにおける、及び、活動電位の発生とシャファー側枝刺激誘発電場放電との間の劇的な脱同期を示していた。
【0214】
観察されたCA1活動電位放電の脱同期は、シナプス放出のタイミングの崩壊、又は、ニューロン過程におけるランダム伝導不全のようなシナプス駆動の活動電位発生の為に必要な機序のランダム化に起因する可能性がある。その場合、所定のニューロンペアの間の活動電位の発生が刺激ごとに相互に対して極めてランダムに変動することが予測される。本発明者等はこのことを、シャファー側枝の複数回の連続した刺激の間のニューロンペアの活動電位放電のパターンを比較することにより試験した。各刺激事象の間、活動電位は相互に対してほぼ同一の時点において発生し、刺激ごとにほぼ同一のバーストの形態学的特徴を示した。本発明者等は又自発的電場放電の間のニューロンの所定のペアの間の活動電位の発生が時間的に固定されているかどうか調べた。CA1ニューロンの所定のペアからの活動電位放電のパターンを、活動電位の発生が明らかに脱同期していた時間の連続自発的電場バーストの間で比較した。上記した刺激誘発活動電位放電の場合と同様、自発的集団放電の間に発生した活動電位は相互に対してほぼ同一の時点において生じ、1つの自発的放電と次のものとではほぼ同一のバーストの形態学的特徴が観察された。
【0215】
実施例74
自発的シナプス活性に対する低クロリド投与の作用
クロリド共輸送拮抗に関連する抗癲癇作用は伝達物質放出の一部の作用により媒介される可能性がある。クロリド共輸送のブロックは末端から放出される伝達物質の量とタイミングを改変し、これによりニューロン同期に影響する可能性がある。低−[Cl−]o曝露が伝達物質放出に関連する機序に影響するかどうかを調べるために、シナプス前末端からの伝達物質の自発的シナプス放出を劇的に増大させる投与の間、細胞内CA1応答をCA1及びCA3電場応答と同時に記録した。
【0216】
伝達物質の増大した自発的放出は4−AP(100μM)投与により誘導された。4−AP含有培地への40分曝露の後、自発的同期バースト放電がCA1及びCA3域で記録された。4−AP含有低−[Cl−]o培地への切り替えにより、最初は以前に観察された通り自発的バーストが増強された。ハイゲインの細胞内記録は高振幅自発的シナプス活性が4−AP投与により惹起されたことを示していた。低クロリド培地に更に曝露したところ、CA1におけるバースト放電はブロックされたが、CA3は自発的に放電を継続した。この時点において、CA1細胞内記録は自発的シナプスノイズが更に増大し、4−AP含有低クロリド培地への長期曝露時間においてその状態が維持された。これ等のデータは末端からのシナプス放出を担う機序は、CA1における4−AP誘導自発的バーストのブロックを説明する態様においては低クロリド曝露による悪影響を受けないことを示唆している。これ等の結果は又、低−[Cl−]o曝露の作用は、PSPを身体に伝導するそれらの効率を犠牲にするCA1樹状特性における改変に起因する可能性を排除している。
実施例75〜79に関する実験方法
以下の実験の全てにおいて、[Cl−]oはNaClとNa+−グルコネートの等モル置き換えにより低減した。幾つかの理由により他のアニオン交換ではなくグルコネートを使用した。第1にパッチクランプ試験により、グルコネートは実質的にクロリドチャンネルに対して非浸透性であるのに対し、他のアニオン(例えばスルフェート、イセチオネート及びアセテート)は種々の程度まで浸透性であると考えられることがわかった。第2に細胞外カリウムの神経膠NKCC1共輸送を介した輸送は細胞外クロリドがグルコネートによって置き換えられる場合はブロックされるが、イセチオネートで置き換えられる場合は完全にはブロックされない。このフロセミド感受性共輸送体は細胞膨潤及び細胞外空間(ECS)の体積変化において顕著な役割を果たすため、本発明者等の投与の作用が以前のフロセミド実験 (Hochman et al.Science,270:99−102,1995;U.S.Pat.No.5,902,732)に匹敵するように適切なアニオン置き換えを用いることを本発明者等は希望した。第3に、ホルメート、アセテート及びプロピオネートはCl−代替として使用すると弱酸を発生させ、細胞内pHの急速な低下をもたらし;グルコネートは細胞外に残存し、そして、細胞内pH変動を誘導するとは報告されていない。第4に、比較目的のために、本発明者等は、ECSの活性誘発変化に対する低−[Cl−]oの作用を調べる以前の試験で使用されていたものと同じアニオン置き換えを使用することを希望した。
【0217】
特定のアニオンの置き換えがカルシウムをキレートするという示唆が一部存在する。後の研究はカルシウムをキレートするアニオン置換の如何なる顕著な能力を明確にすることもできなかったが、この問題に関しては文献においてなお懸案となっている。カルシウムキレート形成は以下の実験においては、静止期の膜電位が正常に維持されており、そして、グルコネート置換により[Cl−]oが低減されている培地への曝露の数時間の値であってもシナプス応答(実際は過剰興奮シナプス応答)が起こりえることから、問題とならないと考えられた。更に又本発明者等は本発明者等の低−[Cl−]o培地におけるカルシウム濃度はCa2+選択的マイクロ電極を用いて測定した本発明者等の対照培地におけるものと同一であることを確認している。
【0218】
Sprague−Dawley成熟ラットを前述の通り調製した。慨すれば厚み400μmの横断海馬スライスを振動カッターで切り出した。スライスは典型的には全海馬及び鉤状回を含有していた。切り出した後、スライスは記録前少なくとも1時間は酸素添加保持チャンバー内に保存した。全ての記録は34〜35℃において酸素添加(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(ACSF)と共にインターフェイス型のチャンバー内で獲得した。通常のACSFは(mmol/l単位で)124NaCl、3KCl、1.25NaH2PO4、1.2MgSO4、26NaHCO3、2CaCl2及び10デキストロースを含有していた。一部の実験においては、ビククリン(20μM)、4−AP(100μM)又は高K+(12mM)を含有する通常又は低クロリドの培地を使用した。NaClとNa+−グルコネート(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)の等モル置き換えにより低クロリド溶液(7、16及び21mM[Cl−]o)を調製した。全ての溶液は約それらが35℃において、そして95%O2/5%CO2を用いた炭酸添加による平衡状態において7.4のpH及び290〜300mOsmの浸透圧を有するように調製した。
【0219】
CA1錐体細胞からの細胞内記録のためには4M酢酸カリウムを充填したSharp電極を使用した。CA1又はCA3細胞体層からの電場の記録はNaCl(2M)を充填した低抵抗ガラス電極を用いて獲得した。シャファー側枝経路の刺激のためには、小型単極電極をCA1及びCA3域の間の中央でスライス表面に設置した。電場からの自発的及び刺激誘発の活性及び細胞内記録をデジタル化(Neurocorder,Neurodata Instruments,New York,N.Y.)し、ビデオテープに保存した。PC−コンピューター上のAxoScopeソフトウエア(Axon Instruments)を用いてデータのオフライン分析を行った。
【0220】
イオン選択的マイクロ電極は当該分野で良く知られている標準的方法に従って作成した。ダブルバレルのピペットを引き伸ばし、約3.0μmの尖端直系となるように切断した。比較対照バレルにACSFを充填し、そして他のバレルはシラン処理し、尖端はK+に関して選択性の樹脂(Corning477317)で逆充填した。シラン処理バレルの残余にはKCl(140mL)を充填した。各バレルはAg/AgClワイアを介して高インピーダンスデュアル示差式増幅器(WPIFD223)に導入した。各イオン選択性のマイクロ電極は既知イオン組成の溶液を用いてカリブレーションし、そしてほぼNernst型の傾きの応答を特徴とする場合、及び実験期間中を通して安定であり続けた場合に適当とみなした。
【0221】
インターフェースチャンバー内に入れた後、スライスを約1ml/分で表面洗浄した。この低流量においては、灌流培地の交換が完了するまで8〜10分間を要した。ここで報告した時間は全て、この遅延を考慮しており、約±2分の誤差を有している。
【0222】
実施例75
CA1電場記録に対する低−[Cl−]oの作用
他の試験によれば皮質及び海馬スライスの低−[Cl−]oへの曝露は基礎的な内因性及びシナプス性の特徴、例えば入力抵抗、静止期の膜電位、脱分極誘導活動電位発生又は興奮性シナプス伝達には影響しないことが示されている。以前の試験は又海馬のCA1域への低−[Cl−]o曝露の癲癇誘発特性を部分的に特性化している。以下の試験は低−[Cl−]o誘導過剰興奮性及び過剰同期の開始及び考えられ得る停止の時間を観察するために実施した。スライス(n=6)はCA1錐体細胞及びCA1細胞体層においてそれぞれ安定な細胞内及び電場の記録が樹立されるまで先ず通常の培地で灌流した。2実験において、実験の全過程に渡り同じ細胞を保持した(2時間超)。残余の実験(n=4)においては、初期細胞内記録は培地交換の回には消失し、そして異なる細胞から追加的記録を獲得した。これらの実験におけるニューロン活性のパターンは単細胞を観察した場合に見とめられたものと同一であった。
【0223】
電場及び細胞内電極は常時、相互に近接して設置した(<200μm)。各々の場合において、低−[Cl−]o培地(7mM)への約15〜20分の曝露の後、最初は細胞レベルで、そして次に電場レベルで自発的バーストが生じた。この自発的電場活性はニューロンの大集団における同期バースト放電を示しており、5〜10分間継続した後、電場記録はサイレントとなった。電場が最初にサイレントとなった時点で、細胞は自発的に放電を継続した。この結果は集団活性は「脱同期」していたが、ここの細胞が放電する能力は減損していなかったことを示唆している。低−[Cl−]o培地への約30分の曝露の後、細胞内記録は、電場がサイレントを維持しているにもかかわらず細胞は自発的に放電を継続していたことを示している。2時点における細胞内電流注入に対する細胞の応答は、活動電位を発生させる細胞の能力が低−[Cl−]o曝露により減損されなかったことを示している。更に又、CA1放線状層における電気的刺激はバースト放電を惹起し、過剰興奮状態が組織内で維持されていたことを示していた。
【0224】
実施例76
CA1における高−[K+]o誘導癲癇様活性に対する低−[Cl−]oの作用
実験の以前のセットは低−[Cl−]o培地への組織曝露は10分以内に停止する短時間の自発的電場の電位バーストを誘導したことを示している。[Cl−]oの低下が実際に最終的に自発的癲癇様(即ち同期)バーストをブロックすることが可能であるとすれば、これ等の結果は、この初期期間のバースト活性が停止した後にのみ抗癲癇作用が観察可能であることを示唆している。従って本発明者等は、高−[K+]o誘導バースト活性に対する低−[Cl−]o投与の時間的作用を調べた。[K+]oを12mMまで上昇させておいた培地にスライス(n=12)を曝露し、電場の電位をCA1細胞体層中の電場電極を用いて記録した。自発的電場電位バーストは少なくとも20分間観察され、そして次に、[K+]oを12mMに維持しつつ[Cl−]oを21mMまで低下させた培地にスライスを曝露した。組織を低−[Cl−]o/高−[K+]o培地に曝露した後15〜20分以内に、バーストの振幅が増大し、各電場の事象はより長い持続時間を有していた。この短時間の促進された電場活性(5〜10分間継続)の後、バーストは停止した。このブロックが可逆であるかどうかを試験するために、電場電位が少なくとも10分間サイレントとなった後に、本発明者等は通常の[Cl−]oを有する高−[K+]o培地に戻した。バーストは20〜40分以内に復帰した。各実験中を通して、シャファー側枝刺激に対するCA1電場応答をモニタリングした。最大電場応答は、自発的バーストの停止直前、自発的バーストが最大の振幅を有していた期間中に記録された。しかしながら自発的バーストのブロック後であっても、多重集団スパイクがシャファー側枝刺激により惹起され、シナプス伝達が未損傷であること、及び組織が過剰興奮を維持していることを示していた。
【0225】
4スライスにおいて、CA1錐体細胞の細胞内記録をCA1電場記録と共に獲得した。高−[K+]o誘導自発的バーストの期間中、シナプス後電位(PSP)が良好に観察できるように細胞内に過剰分極電流を注入した。自発的バーストの低−[Cl−]oブロックの後、自発的に生じた活動電位及びPSPがなお観察された。これ等の観察結果はシナプス活性自体は低−[Cl−]o投与によりブロックされなかったという見解を更に裏付けている。
【0226】
実施例77
CA1及びCA3における4−AP、高−[K+]o及びビククリンにより誘導された癲癇様活性の低−[Cl−]oブロック
本発明者等は次に、本発明者等がフロセミド投与に関して示したように、異なる薬理学的投与により惹起されたCA1及びCA3域における癲癇様活性を低−[Cl−]o投与がブロックできるかどうかを試験した。この実験セットにつき、本発明者等は高−[K+]o(12μM)(n=5)、4−AP(100μM)(n=4)及びビククリン(20及び100μM)(n=5)により誘導しておいた自発的バーストに対する低−[Cl−]o投与の作用を試験することを選択した。実験の各々のセットにおいて、電場応答はCA1及びCA3域から自発的に記録し、そして各々の場合において、灌流培地中の[Cl−]oを21mMに低下させた後30分以内にCA1及びCA3域の両方における自発的癲癇様活性を可逆的にブロックした。これ等のデータは、フロセミドと同様、低−[Cl−]oは癲癇様活性の最も一般的に研究されているインビボモデルの幾つかにおいてに自発的バーストを可逆的にブロックすることを示唆している。
【0227】
実施例78
高−[K+]o誘導癲癇様活性のブロックに対する低−[Cl−]o及びフロセミドの間の比較
前の実験セットから得られたデータは、低−[Cl−]o及びフロセミドの両方の抗癲癇作用は同じ生理学的機序に対するそれらの作用により媒介されるという仮説と合致している。この仮説を更に検討するために、本発明者等はCA1内の電場電極を用いた記録として高−[K+]o誘導バーストに対する低−[Cl−]o(n=12)及びフロセミド(2.5及び5mM)(n=4)の作用の時間的シーケンスを比較した。これにより低−[Cl−]o及びフロセミド両方の投与が同様の時間的シーケンスの作用、即ち初期の短い時間の電場活性の増幅振幅及びその後の自発的電場活性ブロック(可逆)を誘導したことがわかった。両方の場合において、シャファー側枝の電気的刺激により、自発的バーストがブロックされた後であっても過剰興奮応答が惹起された。
【0228】
実施例79
変動[K+]oを含有する低−[Cl−]o培地への延長曝露の結果
上記した実験において、本発明者等は低−[Cl−]o曝露により自発的バーストがブロックされた後1時間を超えて一部のスライスにおける電場活性をモニタリングした。このような延長された曝露の後、自発的な長時間持続する脱分極シフトが発生した。これ等の後発電場事象の形態学的特徴及び頻度は細胞外カリウム及びクロリド濃度に関連すると考えられた。これ等の観察結果を理由として、本発明者等は、系統的に[Cl−]o及び[K+]oを変動させた実験セットを実施し、後発自発的電場事象に対するこれ等のイオンの変動の作用を観察した。
【0229】
本発明者等の最初の実験セットにおいて、低[Cl−]o含有(7mM)及び通常の[K+]o(3mM)(n=6)を含有する培地にスライスを曝露した。この培地に50〜70分間曝露した後、自発的事象をCA1域において記録し;これ等の事象はDC電場において5〜10mVネガティブシフトとして生じており、初回エピソードは30〜60秒持続した。その後の各エピソードは前のものより長時間であった。この観察結果は、非ホメオスタシス性の機序がバス培地中イオン濃度の結果として経時的に減衰したことを示唆している。これ等のネガティブDC電場シフトが誘導された一部の実験(n=2)において、CA1錐体細胞の細胞内記録をCA1電場記録と同時に獲得した。
これらの実験の為に、細胞内及び電場の記録を相互に近接して獲得した(<200μm)。各ネガティブ電場シフトの前(10〜20秒)にニューロンは脱分極を開始した。細胞の脱分極は休止期膜電位の減少、自発的発火頻度の上昇及び活動電位振幅の低下により示された。ネガティブ電場シフトの開始と合致して、細胞は十分脱分極したため、自発的又は電流惹起(説明せず)の活動電位を発火することができなかった。ニューロン脱文局は電場シフトの10〜20秒前に開始したため、細胞外カリウムの経時的増大によりニューロン集団の脱分極がもたらされ、これによりこれ等の電場事象が開始したと考えられる。[K+]oのこのような上昇は、通常はカリウムを細胞外から細胞内空間に移動させるクロリド依存性神経膠共輸送機序の改変に起因すると考えられる。[K+]oの上昇がこれ等のネガティブ電場シフト(及び平衡した細胞脱分極)に先行したかどうか試験するために、K+−選択性マイクロ電極を用いて[K+]oにおける変化を記録した実験(n=2)を実施した。
【0230】
各実験において、K+−選択性マイクロ電極及び電場電極を相互に近接(<200μm)させてCA1錐体層に設置し、そして集団スパイクの規模がモニタリングできるように20秒毎にシャファー側枝に刺激パルスを送達した。多重自発的発生ネガティブ電場シフトは低−[Cl−]o(7mM)培地で灌流することにより誘発した。各事象には[K+]oの顕著な上昇が伴っており、[K+]oの上昇はネガティブ電場シフト開始の数秒前に開始していた。緩徐な1.5〜2mMの[K+]oの上昇が各事象開始の前に、約1−2分秒の時間間隔に渡って発生した。刺激誘発電場応答は、ネガティブ電場シフトの直前まで[K+]oの上昇を伴いながら経時的に緩徐に振幅が増大した。
【0231】
第2の実験セット(n=4)においては、[K+]oを12mMまで上昇させ、そして[Cl−]oを16mMまで上昇させた。この培地に50〜90分間曝露した後、CA1域において緩徐な振動が記録された。これ等の振動は電場電位の5〜10mVのネガティブDCシフトを特徴としており、そして約1サイクル/40秒の周期性を有していた。初期にはこれ等の振動は完結的に生じ、そして不規則な形態を有していた。経時的にこれ等の振動は連続性となり、そして規則的な波形を生じさせた。フロセミド(2.5mM)への曝露により、振動の振幅は徐々に減少し、振動が完全にブロックされるまで周波数は増大した。これ等のスライスにおけるこのような低−[Cl−]o誘導振動は以前には報告されていない。しかしながら、振動事象の時間的特性は、純粋に軸索のプレパレーションで以前に報告されていた低−[Cl−]o誘導[K+]o振動に酷似していた。
【0232】
第3の実験セット(n=5)においては、[Cl−]oを更に21mMまで上昇させ、そして[K+]oを3mMまで再低下させた。これらの実験において、単一の頻繁ではない電場電位のネガティブシフトが40〜70分以内に生じた(データ示さず)。これ等の事象(5〜10mV)は40〜60秒間持続し、ランダムな間隔で起こり、そして実験中を通じて比較的一定の持続時間を維持した。これ等の事象はシャファー側枝に送達された単回電気刺激により惹起される場合がある。
【0233】
最後に、最終の実験セット(n=5)において、[Cl−]oを更に21mMまで上昇させ、そして[K+]oを12mMまで上昇させた。これらの実験において、遅発性の自発的電場事象は実験過程中(2〜3時間)観察されなかった。
【0234】
実施例80
低クロリド曝露中の[K+]oの変化
Sprague−Dawley成熟ラットは前述の通り調製した。厚み400μmの横断海馬スライスを振動カッターで切り出し、記録前1時間は酸素添加保持チャンバー内に保存した。K+選択的マイクロ電極記録の為には浸積型のチャンバーを使用した。スライスは34〜35℃において酸素添加(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(ACSF)で灌流した。通常のACSFは10mMデキストロース、124mM NaCl、3mM KCl、1.25mM NaH2PO4、1.2mM MgSO4、26mM NaHCO3及び2mM CaCl2を含有していた。一部の実験においては100μMで4−アミノピリジン(4−AP)を含有する通常又は低クロリドの培地を使用した。NaClとNa+−グルコネート(Sigma Chemical Co.)の等モル置き換えにより低クロリド溶液(21mM[Cl−]o)を調製した。
【0235】
CA1又はCA3細胞体層からの電場の記録はNaCl(2M)を充填した低抵抗ガラス電極を用いて獲得した。シャファー側枝経路の刺激のためには、単極ステンレス電極をCA1及びCA3域の間の中央でスライド表面に設置した。全記録はデジタル化(Neurocorder,Neurodata Instruments,New York,NY)し、ビデオテープに保存した。
【0236】
K+−選択性マイクロ電極は標準的な方法に従って作成した。慨すれば、ダブルバレルのピペットの比較対照バレルにACSFを充填し、そして他のバレルはシラン処理し、尖端はK+選択性樹脂(Corning477317)と共にKClで逆充填した。イオン選択性のマイクロ電極をカリブレーションし、そしてほぼNernst型の傾きの応答を有し、実験期間中を通して安定であり続けた場合に適当とみなした。
【0237】
低−[Cl−]o培地への海馬スライスの曝露はCA1錐体細胞の活性に対する変化の時間依存性シーケンスを包含することが分かっており、上記した3つの特徴的な段階をともなう。慨すれば、低−[Cl−]o培地への曝露により短時間の増大した過剰興奮及び自発的癲癇様放電が生じる。更に低−[Cl−]o培地に曝露すると、自発的癲癇様活性はブロックされるが、細胞内過剰興奮は残存し、活動電位発火時間は相互に低同期性となる。最終的に、曝露を延長すれば、活動電位発火時間は刺激誘発電場応答が完全に消失するように十分脱同期するが、なお個々の細胞はシャファー側枝刺激に対する単シナプス誘発応答を示し続ける。以下の結果はクロリド共輸送拮抗に対するフロセミドの抗痙攣作用は興奮性シナプス伝達に対する直接の作用とは無関係であり、そして本発明者等の何れかの付随した興奮性低下との集団活性の脱同期の結果である。
【0238】
6海馬スライスにおいて、K+選択性の電場マイクロ電極をCA1細胞体層に設置し、刺激電極をシャファー側枝経路に設置し、単回パルス刺激(300μs)を20秒毎に送達した。少なくとも20分間安定なベースライン[K+]oが得られた後、灌流を低−[Cl−]o培地に切り替えた。低−[Cl−]o培地曝露1〜2分以内に[K+]oの上昇が開始するに従って電場応答は過剰興奮性となった。低−[Cl−]o培地曝露約4〜5分の後、電場応答の規模が減衰し、完全に消失するに至った。[K+]oの相当する記録はカリウムが低−[Cl−]o培地曝露直後に上昇を開始し、そしてこの[K+]o上昇の最大値は時間において最大過剰興奮CA1電場応答に相当していた。電場応答の規模の低下と合致して、[K+]oは減衰を開始し、低−[Cl−]o培地曝露への8〜10分間曝露の後まで至り、そして実験の残余期間については1.8〜2.5mM対照水準より高値において一定となった。4スライスを対照培地に戻し、完全に回復させた。次に放線中に設置したK+選択性マイクロ電極を用いて実験を反復した。[K+]oの同様のシーケンス変化が樹状層において観察され、[K+]oの値は細胞体層で観察されたものよりも0.2〜0.3mM低値であった。
【0239】
4海馬スライスにおいて、対照状態とCA1電場応答が低−[Cl−]o培地曝露により完全に消失した後との間で[K+]oの刺激誘発変化の応答を比較した。各スライスにおいて、[K+]o選択性測定は先ず細胞体層において獲得し、そして次に、対照培地中で完全回復させた後、放線に移動させたK+選択性電極を用いて実験を反復した。各刺激の試行は5秒間シャファー側枝に送達した10Hzの斉射よりなるものとした。[K+]oの最大上昇は対照条件と低−[Cl−]o培地延長曝露後との間、及び、細胞体と樹状層の間で同様であった。しかしながら、低−[Cl−]o培地延長曝露後に観察された回復時間は対照条件の間に観察されたものよりも顕著に長期化していた。
【0240】
これ等の結果はフロセミドの投与が細胞外空間における増大した[K+]oをもたらしたことを示している。低−[Cl−]o培地への脳組織の曝露は即座に1〜2mMの[K+]oの上昇を誘導し、これは曝露持続時間中を通じて維持され、興奮性における初期の増大及びCA1電場応答の最終的消失と合致していた。低−[Cl−]o曝露中のCA1電場応答のこの消失はニューロン発火時間の脱同期により可能性が最も高い。重要な点として、細胞体及び樹状層の両方における[K+]oの刺激誘発上昇はCA1電場応答の完全低−[Cl−]oブロックの前後においてほぼ同一であった。このデータは対照条件下及び電場の低−[Cl−]oブロック後において、相互に匹敵する刺激誘発シナプス駆動及び活動電位発生が生じたことを示唆している。総括すると、これ等のデータは、クロリド共輸送アンタゴニストフロセミドの抗癲癇及び脱同期作用は興奮性シナプス伝達に対する直接の作用とは無関係であり、そして興奮性の低下を伴わない集団活性の脱同期の結果であることを示している。
【0241】
実施例81
低クロリド曝露中の細胞外pHの変化
フロセミド及び低−[Cl−]oのようなアニオン/クロリド依存性共輸送体のアンタゴニストは同期集団活性の維持に寄与する可能性がある細胞外pH変遷に影響する可能性がある。NaHCO3を等モル量のHEPES(26nM)と置き換え、そしてインターフェイス型チャンバーを使用した以外は実施例80に記載の通りラット海馬脳スライスを調製した。
【0242】
4海馬脳スライスにおいて、実施例13に記載の通り100μM4−APを含有する培地への曝露により連続自発的バーストが惹起された。電場記録はCA1及びCA3域において細胞体層から同時に獲得した。実験期間中を通じてシャファー側枝に30秒毎に刺激を送達した。連続的バーストが少なくとも20分間観察された後、スライスを名目上重炭酸非含有の4−AP含有HEPES培地に曝露した。HEPES培地への延長曝露(0.2時間)の結果としては、自発的及び刺激誘発の電場応答には顕著な変化は観察されなかった。スライスをHEPES培地に少なくとも2時間曝露した後、[Cl−]oを21mMまで低下させた4−AP含有HEPES培地に灌流を切り替えた。低−[Cl−]oHEPES培地への曝露は低−[Cl−]oNaHCO3含有培地を用いて以前に観察されたものと同じシーケンスの事象及び時間的経過を誘導した。自発的バーストの完全なブロックの後、灌流培地を通常の[Cl−]oを含有するHEPESに戻した。20〜40分以内に自発的バーストが再開した。自発的バーストが再開した時点で、スライスをは目上重炭酸非含有のHEPES培地で3時間超灌流されていた。
【0243】
このデータは同期及び興奮性に対するクロリド共輸送拮抗の作用は細胞外pHの動的特徴に対する作用とは無関係であることを示唆している。
【0244】
図4は低減された[Cl−]の条件下におけるイオン共輸送の模式的モデルを示す。図4Aの左パネルはフロセミド感受性K+、C−共輸送体を介したイオンの流出によりニューロン内のIPSPの生成に必要なクロリド勾配が維持されることを示している。通常の条件下においては、高濃度の細胞内カリウム(3Na+、2K+−ATPaseポンプにより維持されている)はCl−のその濃度勾配に対抗した排出のための駆動力として作用する。神経膠細胞においては、図4Aの右パネルに示す通り、フロセミド感受性NKCC共輸送体を介したイオンの移動は細胞外から細胞内空間に至る。この共輸送に必要なイオン勾配は部分的には「膜貫通ナトリウム周期」により維持され:NKCC共輸送を介して神経膠細胞内に取り込まれたナトリウムイオンは、低い細胞内ナトリウム濃度が維持されるように3Na+、2K+−ATPaseポンプにより連続的に排出される。フロセミド依存性共輸送体を介したイオン流出の速度及び方向は、ニューロンK+、Cl−共輸送体に関しては[K+]ix[Cl−]i−[K+]ox[Cl−]o)として、そしてNKCC共輸送に関しては[Na+]ix[K+]ix[Cl−]2i−[Na+]Ox[K+]ox[Cl−]2o)として記載されるそのイオン積差と関数的に比例している。このイオン積差の符号はイオン輸送の方向を示しており、正が細胞内から細胞外空間となる。
【0245】
図4Bは延長された低−[Cl−]o曝露の結果として上昇する遅発自発的電場事象の出現を説明する模式的現象学的モデルを示す。本発明者等はニューロン及び神経膠に関するイオン積の差をそれぞれQN及びQGと標記する。対照条件下(1)において、ニューロンに関するイオン積の差はK+及びC−が細胞内から細胞外空間に共輸送される場合のもの(QN>0)であり;神経膠細胞異関するイオン積の差はNa+、K+及びC−がECSから細胞内コンパートメントに共輸送される場合のもの(QG<0)である。[Cl−]oが低下(2)すると、KClのニューロン流出が増大するようにイオン積差が変化するが;細胞内から細胞外空間へのKCl及びNaClの実質的流出が存在するように神経膠のイオン共輸送は逆転する(QG>0)。これ等の変化により経時的な細胞外カリウムの蓄積が起こる。最終的には[K+]oはニューロン集団の脱分極を誘導する水準まで達し、より大量の[K+]o蓄積をもたらす。この細胞外イオン大量蓄積はその後、KClが細胞外から細胞内空間に移動するようにイオン積差を逆転するように機能する(QN<0、QG<0)(3)。細胞外カリウムのその後のクリアランスにより最終的には膜貫通イオン勾配は初期状態に戻る。この過程を周期的に行うことにより、反復負電場事象が発生する。
【0246】
実施例82
神経障害性疼痛の動物モデルにおける疼痛症状の緩和におけるフロセミドの治療効果
フロセミドが疼痛を緩和する能力をChungモデルを用いながらげっ歯類において検査する(例えばWalker et al.Mol.Med.Today 5:319−321,1999参照)。16匹の成熟雄性Long−Evansラットを本試験において使用する。全ラットは以下に詳述する通りL5神経の脊髄結紮に付す。ラット16匹のうち8匹にはフロセミドを注射(静脈内)し、そして残余の8匹にはビヒクルのみを静脈内注射する。機械的足蹠屈曲試験を用いて疼痛閾値を迅速に試験する。2群間の疼痛閾値の差を比較する。フロセミドが疼痛を緩和する場合は、フロセミド投与群はビヒクル投与群よりも高い疼痛閾値を示す。
【0247】
神経障害のChungモデル
脊髄神経結紮は左側L4−L6脊髄神経に接触するために動物を腹臥位としながらイソフロウラン麻酔下に実施する。拡大下に、約三分の一の横突起を除去する。L5脊髄神経を同定し、注意深く隣接するL4脊髄神経を切除し、次に6−0シルク縫合糸を用いて強く結紮する。創傷を消毒溶液で処理し、筋肉層を結紮し、切開を創クリップで閉鎖する。機械的足蹠屈曲閾値の行動試験を切開後3〜7日間内に行う。慨すれば、動物をプレクシガラスチャンバー(20x10.5x40.5cm)内に配置し、15分間馴化させる。チャンバーをメッシュスクリーンの最上部に配置したため、機械的刺激を両後肢の足底表面に与えることができる。各々の後肢の機械的閾値測定は8つのvon Freyモノフィラメント(5、7、13、26、43、64、106、及び202mN)による上/下方法を用いて得られる。各々の試験は約1秒間右後肢、次に左後肢に送達される13mNのvon Frey力で開始される。屈曲応答がない場合、次に高い力を送達する。応答があれば、次に低い力を送達する。最高力(202mN)で応答がないか、初期応答の後に4つの刺激が与えられるまで、この操作法を実行する。各々の足蹠に対する50%足蹠屈曲閾値は以下の式を用いて計算される:[Xth]log=[vFr]log+ky、ここで[vFr]は使用した最後のvon Frey力であり、ここでk=0.2268がvon Freyモノフィルメント間の平均間隔(対数単位)であり、yは屈曲応答のパターンに依存する値である。動物が最大von Frey毛(202mN)に応答しない場合、y=1.00であり、かつ足蹠に対する50%機械的足蹠屈曲反応は340.5mNであると計算される。機械的足蹠屈曲閾値試験は3回実行され、50%屈曲値は3回の試験を通して平均化され、各々の動物の右及び左足蹠に対する平均機械的足蹠屈曲閾値が決定される。
【0248】
実施例83
激しい不安又は心的外傷後ストレス障害における疼痛症状の緩和におけるフロセミド及びブメタニドの治療効果
心的外傷後ストレス障害の治療におけるフロセミド及びブメタニドの治療有効性をラットにおける文脈的恐怖条件付けにおける激しい不安の緩和に対するこれらの化合物の能力を決定することにより検査する。
【0249】
文脈的恐怖条件付けは、嫌悪事象、この場合は適度の足ショック、と独特の環境との組み合わせを必要とする。恐怖記憶の強度を、呼吸以外は完全な不動により特徴づけられるラットにおける種特有の防御的反応であるすくみ行動(freezing)を用いて評価する。ラットは独特の環境内に配置され、即座にショックを受けた場合、これらは文脈的に恐怖を学ばない。しかしながら、即座のショックの前に独特の環境の調査を許した場合、同一環境内に戻された際に激しい不安と恐怖を示す。本発明者等はこの事実を利用することができ、文脈的恐怖条件付けを2つの相に手続き的に分割することにより、文脈とショックの間の連想を学習すること又は(扁桃体を含む感情応答回路に依存した)ショックの摩損性を経験することから、文脈(特に海馬に基づく過程)に対する記憶上の治療効果を別々に研究できる。ヒトの心的外傷後ストレス障害(PTSD)は扁桃体中の感情応答回路に関連することが示されており、この理由で文脈記憶条件付けはPSTDに対し広く許容できるモデルである。
【0250】
実験には24匹のラットを使用した。各々のラットは小さな新しい環境の調査の1回の5分間エピソードを受けた。72時間後、ラットは同一環境内に配置され、即座に53秒離して2回の適度な足ショック(1ミリアンペア)を受けた。24時間後、8匹のラットにビヒクル(DMSO)中のフロセミド(100mg/kg)を(静脈)注射し、8匹のラットにビヒクル(DMSO)中のブメタニド(50mg/kg)を静脈注射した。残余の8匹にはDMSO単独を注射した。パブロフの条件付け恐怖の指標として、すくみ行動が測定されている間である8分間、同一環境内に各々のラット再び配置した。
【0251】
4つの同一のチャンバー(20x20x15cm)を使用した。タイミング及び事象の制御の全ての状況はマイクロコンピュータ(MedPC、MedAsscociates Inc.Vermont,USA)制御下であった。すくみ行動の測定はマイクロコンピュータに接続されたオーバーヘッドビデオカメラを通して実行され、専用のソフトウエアであるFreezeFrameTM(OER Inc.,Reston,VA)を使用して自動的に得点された。総すくみ行動時間を群内要因として薬剤投与を用いた一方向分散分析(ANOVA)試験で分析した。
【0252】
図5に示すように、ブメタニド又はフロセミドのいずれかで処理した動物はビヒクル単独を付与した動物より著しく少ないすくみ行動が観察され、ブメタニド及びフロセミドは心的外傷後ストレス障害の治療に有効に利用し得ることを示した。
【0253】
実施例84
不安緩和におけるフロセミド及びブメタニドの治療効果
不安緩和におけるフロセミド及びブメタニドの治療効果を、ラットにおける恐怖強化型驚愕(FPS)試験におけるこれらの物質の効果を評価することにより検査した。この試験は通常、抗不安薬の薬剤効果を一般的な効果、例えば鎮痛作用/筋肉弛緩と区別するために使用されている。
【0254】
24匹のラットをFPS装置に30分間馴化させた。24時間後、基準の驚愕振幅を採集した。次にラットを基準の驚愕振幅に基づいて3つの対等な群に分割した。ラットの一匹は、他に対し顕著に高い基準の驚愕を見せており、実験から除外した。従って群1及び2は各々8匹のラットからなり、群3は7匹のラットからなった。基準の驚愕振幅採集後、20回の光線/ショックの組み合わせを2連続日をかけて2つの期間で送達した。(例えば各々の日に10回の光線/ショックの組み合わせ)。最終日(5日目)に、群2及び3にビヒクル(DMSO)中のフロセミド(100mg/kg)又はブメタニド(70mg/kg)のいずれかを(静脈)注射し、群1はビヒクル単独を付した。注射の直後に、驚愕単独試験及び驚愕プラス恐怖(驚愕後に光線)試験の間、驚愕振幅を評価した。恐怖強化型驚愕(光線+驚愕振幅マイナス驚愕単独振幅)を処理群間で比較した。
【0255】
動物を4つの同一のスタビリメーター装置(Med−Associates)中で訓練し、試験した。慨すれば、各々のラットを小さなプレキシガラスシリンダ中に配置した。各々のスタビリメーターの床はそれを介してショックを送達できる18mm離れて置かれた4つの6mm直径のステンレス鋼バーからなっていた。シリンダの動きは加速度計の変位となり、得られた電圧はケージ変位の速度に比例する。驚愕振幅は驚愕刺激を送達後、最初の0.25秒間に発生する最大加速度計電圧として定義される。加速度計のアナログ出力は増幅され、0〜4096単位の尺度にデジタル化され、マイクロコンピュータ上に格納された。各々のスタビリメーターは換気され、光線及び音減衰された箱中に封入された。全ての音のレベル測定はプレシジョンサウンドレベルメーターで実行された。各々の木箱の側面に装着された換気扇のノイズが64dBの全体背景ノイズレベルを作り出した。驚愕刺激は、ホワイトノイズ発生器により発生された50msバーストのホワイトノイズ(増加−衰退時間5ms)であった。使用された視覚条件付け刺激はホワイトノイズ源に隣接した電球の照明であった。条件付けされない刺激はチャンバーの外に配置された4つの定電流ショック器により生成された0.5秒間の0.6mA足ショックであった。全ての刺激の実施及び順番はマイクロコンピュータの制御下であった。
【0256】
FPS操作法は5日間の試験からなった;1及び2日の間、基準の驚愕応答を採集し、3及び4日に光線/ショックの組み合わせを送達し、5日に恐怖強化型驚愕のための試験を実施した。
【0257】
マッチング:最初の2日、全てのラットをプレキシガラスシリンダ中に配置し、3分後、30秒の刺激間隔で30回驚愕刺激を与えた。105dB強度を使用した。2日目の30回驚愕刺激中の平均驚愕振幅を同様の方法でラットを処理群に割り当てるために使用した。
【0258】
訓練:その後の2日、ラットをプレキシガラスシリンダ中に配置した。各々の日、導入後3分後に10回のCS−ショックの組み合わせを送達した。平均試験間隔4分(3〜5分の範囲)において3.7秒のCSの最後の0.5秒の間にショックを送達した。
【0259】
試験:ラットを訓練したのと同じ驚愕箱に配置し、3分後、18回の(全て105dBで)驚愕誘引刺激を与えた。ラットを音響驚愕刺激に再び馴化させるため、これらの初期驚愕刺激を使用した。これらの刺激の最後から30秒後、各々の動物は半分が単独で与えられた刺激(驚愕単独試験)で、他の半分は3.7秒のCSの着手後3.2秒後に与えられた(CS−驚愕刺激)、60回の刺激を受けた。全ての驚愕刺激を無作為に20から40秒の間で変化する平均30秒の刺激間隔で与えた。
【0260】
測定:処理群をCS−驚愕及び驚愕単独試験の間の驚愕振幅の差分で比較した(恐怖相乗作用)。
【0261】
図6は試験日より前に決定したラットの各々の群に対する基準の驚愕振幅を示す。図7は試験日においてDMSO単独、ブメタニド又はフロセミドのいずれかを注射直後に決定した驚愕単独試験における応答の振幅を示し、図8は試験日の差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。図に示すように、ビヒクル単独で処理したラットよりフロセミド又はブメタニドのいずれかで処理したラットに統計上顕著に低い差分得点が観察され、フロセミド及びブメタニドの両方に不安減少効果があることを示している。
【0262】
図9及び10はそれぞれフロセミド又はブメタニドのいずれかで処理後一週間の驚愕単独振幅及び差分得点を示している。フロセミド又はブメタニドのいずれかで処理した動物はビヒクル単独で処理した動物より高い差分得点を有することがわかった。しかしながら、ビヒクル処理動物に対する誤差バーはかなり大きいので、ビヒクルとブメタニドの間でデータは統計上顕著な違いを示せず、ビヒクルとフロセミドの間で僅かな違いをかろうじて示した。
【0263】
図12はビヒクル単独(n=13)又はブメタニド10mg(n=13)、30mg(n=13)、40mg(n=5)、50mg(n=13)又は70mg(n=13)のいずれかで処理した動物の差分得点を示す。40mg、50mg及び70mgの投与は10mg又は30mgの投与より不安減少効果がより顕著であることがわかった。
【0264】
実施例85
不安緩和におけるブメタニドアナログの治療効果
不安緩和における種々のブメタニドアナログの治療効果を上述のラットにおける恐怖強化型驚愕(FPS)試験を用いて検査した。
【0265】
図11は以下のブメタニドアナログ:ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(2MIK053として参照);ブメタニドメチルエステル(3MIK054として参照);ブメタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル(3MIK069−11として参照);ブメタニドモルホリノジエチルエステル(3MIK066−4として参照);ブメタニドピバキセチルエステル(3MIK069−12として参照);ブメタニドシアノメチルエステル(3MIK047として参照);ブメタニドジベンジルアミド(3MIK065として参照);又はブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル(3MIK066−5として参照)の1つで処理したラットにおける試験日の差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。ビヒクルはDMSOであった。図11で示すように、ほとんどのブメタニドアナログの投与後に得られた差分得点はビヒクル単独投与後に観察されるものより顕著に低く、これらのアナログを不安減少のために有効に利用し得ることを示した。
【0266】
別の実験において、ラットにブメタニド、塩水又はブメタニドアナログのいずれかを注射し、その尿出力を測定した。図13に示すように、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(カラム2)、ブメタニドピバキセチルエステル(カラム3)及びブメタニドシアノメチルエステル(カラム4)は2つの異なる原料から得られたブメタニド(カラム1及び13)より顕著に低い利尿効果を示した。カラム6は塩水投与後に得られた結果を示している。
【0267】
本発明は異常のようにその特定の実施形態を参照しながら説明したが、当業者の知る通り本発明の精神及び範囲を外れることなく種々の変更を行い、等価物で代替し得る。更に、本発明を実施する場合に使用するために、多くの変更を特定の状況、材料、物質組成、方法、方法の工程に対して採用し得る。このような変更の全ては添付請求項の範囲内であることを意図している。
【0268】
本明細書において引用した全ての特許及び公開物及び2000年6月29日に公開されたPCT出願WO00/37616は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0269】
配列番号1〜2は添付の配列表に示す。添付の配列表において使用したポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のコードはWIPO Standard ST.25(1988),Appendix2と合致する。
【図面の簡単な説明】
【0270】
【図1A】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1A1】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1B】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1B1】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1C】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1C1】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図1D】図1A、1A1、1B、1B1、1C、1C1及び1Dは海馬スライスにおける放電活性後に惹起された刺激に対するフロセミドの作用を示す。
【図2A】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2B】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2C】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2D】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2E】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2F】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2G】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2H】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2I】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2J】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2K】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2L】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2M】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2N】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2O】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2P】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2Q】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図2R】図2A〜2Rはインビトロモデルのスペクトルにわたる自発的癲癇様バースト放電のフロセミドブロックを示す。
【図3A】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3B】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3C】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3D】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3E】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3F】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3G】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図3H】図3A〜3Hはウレタン麻酔ラットにおけるカイニン酸惹起電気的「癲癇状態」のフロセミドブロックを示し、上チャートはEKGの記録結果、下チャートは皮質EEGの記録結果を示す。
【図4A】図4A及び4Bは低減したクロリド濃度の条件下のイオンの共輸送の模式的ダイアグラムを示す。
【図4B】図4A及び4Bは低減したクロリド濃度の条件下のイオンの共輸送の模式的ダイアグラムを示す。
【図5】図5はラットにおける文脈的恐怖条件付けの試験においてビヒクル単独投与動物よりもブメタニド又はフロセミドの何れかを投与した動物において有意に低値のフリージングが観察されたことを示す。
【図6】図6はラットにおける恐怖強化型の驚愕試験におけるベースライン驚愕増幅を示す。
【図7】図7はDMSO単独、ブメタニド又はフロセミドの何れかの投与直後に測定した驚愕単独試験に対するラットの応答の増幅を示す。
【図8】図8はDMSO、ブメタニド又はフロセミドの何れかを投与したラットの試験日における差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。
【図9】図9はDMSO、ブメタニド又はフロセミドの何れかの投与の1週間後のラットの驚愕単独増幅を示す。
【図10】図10はDMSO、ブメタニド又はフロセミドの何れかの投与の1週間後の差分得点を示す。
【図11】図11は以下のブメタニドアナログ、即ちブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(2MIK053と称する);ブメタニドメチルエステル(3MIK054と称する);ブメタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル(3MIK069−11と称する);ブメタニドモルホリノジエチルステル(3MIK066−4と称する);ブメタニドピバキセチルエステル(3MIK069−12と称する);ブメタニドシアノメチルエステル(3IK047と称する);ブメタニドジメンジルアミド(3MIK065と称する);及びブメタニド3−(ジメチル−アミノプロピル)エステル(3MIK066−5と称する)の1つを投与したラットの試験日における差分得点(驚愕単独−恐怖強化型驚愕)を示す。ビヒクルはDMSOとした。
【図12】図12はブメタニドの種々の用量を投与したラットの差分得点を示す。
【図13】図13は2種の異なる原料に由来するブメタニド(カラム1及び5)、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル(カラム2)、ブメタニドピバキセチルエステル(カラム3)、ブメタニドシアノメチルエステル(カラム4)又は食塩水(カラム6)の何れかの投与の後のラットにおける尿排出量を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストを含む組成物の有効量を哺乳動物被験体に投与することを含む、被験体における不安障害を治療するための方法。
【請求項2】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが非シナプス作用による過剰同期ニューロン集団放電を低減又はブロックする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストがNKCC1共輸送体アンタゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストがCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、フロセミド;ブメタニド;エタクリン酸;トルセミド;アゾセミド;ムゾリミン;ピレタニド;トリパミド;及びこれ等の機能的アナログ及び誘導体からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、チアジド;及びチアジド様利尿剤からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式I:
【化1】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ブメタニドアルデヒド;ブメタニドジベンジルアミド;ブメタニドジエチルアミド;ブメタニドモルホリノエチルエステル;ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル;ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル;ブメタニドジメチルグリコールアミドエステル;ブメタニドピバキセチルエステル;ブメタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩;及びブメタニドセチルトリメチルアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式II:
【化2】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、フロセミドアルデヒド;フロセミドエチルエステル;フロセミドシアノメチルエステル;フロセミドベンジルエステル;フロセミドモルホリノエチルエステル;フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル;フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル;フロセミドジベンジルアミド;フロセミドベンジルメチルアンモニウム塩;フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩;フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル;フロセミドピバキセチルエステル;及びフロセミドプロパキセチルエステルからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式III:
【化3】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ピレタニドアルデヒド;ピレタニドメチルエステル;ピレタニドシアノメチルエステル;ピレタニドベンジルエステル;ピレタニドモルホリノエチルエステル;ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル;ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル;ピレタニドジエチルアミド;ピレタニドジベンジルアミド;ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩;ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩;ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル;ピレタニドピバキセチルエステル;及びピレタニドプロパキセチルエステルからなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式IV:
【化4】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;そして、
R6はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、テトラゾリル置換アゾセミド;アゾセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩;及びアゾセミドセチルトリメチルアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式V:
【化5】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R7はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;そして、
X−はブロミド、クロリド、フロリド、ヨーダイド、メシレート、トシレートであるか;或いは、X−は存在しない、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ピリジン置換トルセミド四級アンモニウム塩である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ベンドロフルメチアジド;ベンズチアジド;クロロチアジド;ヒドロクロロチアジド;ヒドロフルメチアジド;メチルクロチアジド;ポリチアジド;トリクロロメチアジド;クロロタリドン;インダパミド;メトラゾン;キネタゾン;及びこれ等の機能的アナログ及び誘導体からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項18】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、神経系組織における細胞外イオン組成及びクロリド勾配をモジュレートする、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記組成物を経口、舌下、経鼻、経皮、静脈内、髄腔内又は吸入により送達する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記不安障害が、パニック障害;社会不安障害;強迫性障害;心的外傷後ストレス障害;全般性不安障害;及び特定の恐怖症からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項1】
Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストを含む組成物の有効量を哺乳動物被験体に投与することを含む、被験体における不安障害を治療するための方法。
【請求項2】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが非シナプス作用による過剰同期ニューロン集団放電を低減又はブロックする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストがNKCC1共輸送体アンタゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストがCNSターゲティングNKCC共輸送体アンタゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、フロセミド;ブメタニド;エタクリン酸;トルセミド;アゾセミド;ムゾリミン;ピレタニド;トリパミド;及びこれ等の機能的アナログ及び誘導体からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、チアジド;及びチアジド様利尿剤からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式I:
【化1】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ブメタニドアルデヒド;ブメタニドジベンジルアミド;ブメタニドジエチルアミド;ブメタニドモルホリノエチルエステル;ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル;ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル;ブメタニドジメチルグリコールアミドエステル;ブメタニドピバキセチルエステル;ブメタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩;及びブメタニドセチルトリメチルアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式II:
【化2】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、フロセミドアルデヒド;フロセミドエチルエステル;フロセミドシアノメチルエステル;フロセミドベンジルエステル;フロセミドモルホリノエチルエステル;フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル;フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル;フロセミドジベンジルアミド;フロセミドベンジルメチルアンモニウム塩;フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩;フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル;フロセミドピバキセチルエステル;及びフロセミドプロパキセチルエステルからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式III:
【化3】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R1は存在しないか、H又はOであり;
R2はHであるか、又は、R1がOである場合は、アルキルアミノジアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアルデヒド、アルキルケトンアルキル、アルキルアミド、アルキルアンモニウム基、アルキルカルボン酸、アルキルヘテロアリール、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキルアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され、そしてR1が存在しない場合は、R2は水素、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジアルキルアミノジアルキル、ジアルキルカルボニルアミノジアルキル、ジアルキルエステルアルキル、ジアルキルアルデヒド、ジアルキルケトンアルキル、ジアルキルアミド、ジアルキルカルボン酸及びジアルキルヘテロアリールの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ピレタニドアルデヒド;ピレタニドメチルエステル;ピレタニドシアノメチルエステル;ピレタニドベンジルエステル;ピレタニドモルホリノエチルエステル;ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル;ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル;ピレタニドジエチルアミド;ピレタニドジベンジルアミド;ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩;ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩;ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル;ピレタニドピバキセチルエステル;及びピレタニドプロパキセチルエステルからなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式IV:
【化4】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R3はアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ及びアリールオキシの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;
R4及びR5は各々独立して水素、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシアミノジアルキルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;そして、
R6はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、テトラゾリル置換アゾセミド;アゾセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩;及びアゾセミドセチルトリメチルアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが下記式V:
【化5】
の化合物又はその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、互変異性体又は水和物であり、
式中、
R7はアルキルオキシカルボニルアルキル、アルキルアミノカルボニルジアルキル、アルキルアミノジアルキル、アルキルヒドロキシ、生体適合性重合体、メチルオキシアルキル、メチルオキシアルカリル、メチルチオアルキル及びメチルチオアルカリルの非置換又は置換されたものからなる群より選択され;そして、
X−はブロミド、クロリド、フロリド、ヨーダイド、メシレート、トシレートであるか;或いは、X−は存在しない、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ピリジン置換トルセミド四級アンモニウム塩である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、ベンドロフルメチアジド;ベンズチアジド;クロロチアジド;ヒドロクロロチアジド;ヒドロフルメチアジド;メチルクロチアジド;ポリチアジド;トリクロロメチアジド;クロロタリドン;インダパミド;メトラゾン;キネタゾン;及びこれ等の機能的アナログ及び誘導体からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項18】
前記Na+K+2Cl共輸送体アンタゴニストが、神経系組織における細胞外イオン組成及びクロリド勾配をモジュレートする、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記組成物を経口、舌下、経鼻、経皮、静脈内、髄腔内又は吸入により送達する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記不安障害が、パニック障害;社会不安障害;強迫性障害;心的外傷後ストレス障害;全般性不安障害;及び特定の恐怖症からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【図1A】
【図1A1】
【図1B】
【図1B1】
【図1C】
【図1C1】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図2P】
【図2Q】
【図2R】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1A1】
【図1B】
【図1B1】
【図1C】
【図1C1】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図2P】
【図2Q】
【図2R】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
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【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−535836(P2008−535836A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505285(P2008−505285)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/043177
【国際公開番号】WO2006/110187
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507332435)ニューロセラピューティクス ファーマ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/043177
【国際公開番号】WO2006/110187
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507332435)ニューロセラピューティクス ファーマ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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