説明

不審船監視装置

【課題】コスト的及び人的負担が少なく、確実に監視エリアに侵入した不審船を検出することができるようにする。
【解決手段】監視エリアにある船舶に搭載されるレーダ装置から発信されるレーダ波を受信し、受信したレーダ波の受信波形のパターンデータを、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶の属性データと関連付けて予めデータベース38に格納し、レーダ逆探装置16によって受信されたレーダ波の受信波形のパターンデータを取得し、該取得したパターンデータとデータベース38に格納された各パターンデータとの比較を行ってマッチングしているか否かの判定を行い、取得したパターンデータとデータベース38に格納された全パターンデータがマッチングしなかったときに、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶を不審船と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶を特定することができない船、無許可漁業船、違法侵入船、海賊船といった不審船を検出する不審船監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の不審船監視装置としては、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の不審船探知方法及び装置は、自船周囲に存在する船舶をレーダで監視して、自船周囲を航行する船舶の行動パターンを解析し、この行動パターンを予めデータベースに登録した不審船の不審行動パターンと比較し、行動パターンが不審行動パターンと一致または近似する船舶を不審船として認定している。
【0004】
特許文献2に記載の不審船舶監視システムでは、レーダ情報に基づき、領域内に船舶が侵入したことを検出すると、監視センタが領域内での操業を許可された船舶に対して、そのID確認のためのID確認信号を無線送信し、このID確認信号の受信に応答して操業を許可された船舶ではGPS測位データと自船舶に割り当てられたIDを無線返送し、これらを受けて、監視センタはレーダ情報から得られた船位データ及び受信されたGPS測位データに基づき不審船を発見するようにしている。
【0005】
特許文献3に記載の漁場監視装置では、海中に複数のマイクロホンを設置し、該マイクロホンで捕捉した音響信号をフーリエ変換して周波数成分を抽出して、船舶に固有のパターンを予めデータベースに記録することにより、過去の履歴と比較対照することを可能とし、不審船が前歴のある密漁船か否かの判断を行うようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−96674号公報
【特許文献2】特開2004−318561号公報
【特許文献3】特開2002−181618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の不審船探知方法及び装置では、データベースに予め登録するべき不審船の不審行動パターンを予測することが困難であることから、不審船を適切に認定することができないという問題がある。つまり、不審船が必ずしもデータベースに予め登録された不審行動パターンをとるとは限らず、不審船の認定に無理がある。
【0008】
特許文献2に記載の不審船舶監視システムでは、操業を許可された船舶の全てに、ID確認信号に対して応答してGPS測位データと自船舶に割り当てられたIDを無線返送する装置を装備する必要があり、装置の設置にコスト的及び人的負担がかかるという問題がある。また、通常の操業にも負担を強いられるという問題がある。
【0009】
特許文献3に記載の漁場監視装置では、海中に複数のマイクロホンを設置する必要があり、マイクロホンの設置にコスト的及び人的に負担がかかるという問題がある。また、水中のマイクロホンでは雑音などにより正確に船舶からの音響信号を傍受することが困難であるという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、その目的はコスト的及び人的負担が少なく、確実に不審船を検出することができる不審船監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
船舶が搭載するレーダ装置のレーダ波は一般的にマグネトロンによって発振されるが、本発明者らは、マグネトロンの特性によって、同じ種類のレーダ装置であっても、そのレーダ波の波形は船舶によって異なることに着目し、この受信波形のパターンデータを、不審船か否かの判定に用いることに着目して、本発明を完成させたものである。
【0012】
即ち、本発明の請求項1に記載の発明は、不審船を検出する不審船監視装置において、
船舶に搭載されるレーダ装置から発信されるレーダ波を受信するレーダ逆探装置と、
該レーダ逆探装置によって収集されたレーダ波の受信波形のパターンデータを、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶の属性データと関連付けて予め格納するデータベースと、
前記レーダ逆探装置によって受信されたレーダ波の受信波形のパターンデータを取得するレーダ信号処理手段と、
該レーダ信号処理手段によって取得したパターンデータとデータベースに格納された各パターンデータとの比較を行ってマッチングしているか否かの判定を行い、レーダ信号処理手段によって得たパターンデータとデータベースに格納された全パターンデータがマッチングしなかったときに、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶を不審船と判定するマッチング手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の前記パターンデータが、レーダ波のパルス信号の包絡波形のパルスパターンと、レーダ波の搬送波の波形の搬送波パターンとのいずれか一方または両方のデータであることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、不審船を検出する不審船監視装置において、
船舶に搭載されるレーダ装置から発信されるレーダ波を受信するレーダ逆探装置と、
該レーダ逆探装置によって収集されたレーダ波の受信波形のパターンデータを、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶の属性データと関連付けて予め格納するデータベースと、
前記レーダ逆探装置によって受信されたレーダ波の受信波形のパターンデータを取得するレーダ信号処理手段と、
該レーダ信号処理手段によって取得したパターンデータとデータベースに格納された各パターンデータとの比較を行ってマッチングしているか否かの判定を行い、その判定結果に基づき不審船を判定するマッチング手段と、
を備え、前記パターンデータは、レーダ波のパルス信号の包絡波形のパルスパターンと、レーダ波の搬送波の波形の搬送波パターンとのいずれか一方または両方のデータであることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記パターンデータが、少なくともパルスパターンのデータを含み、
前記レーダ信号処理手段は、パルスパターンの立上りと立下りとを除いた中間部分のパルス幅が所定の長さになるように、パルスパターンを補正することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものが、レーダ波を送信して船舶からの反射波を受信するレーダ装置と、
船舶から送信された船舶データを受信する船舶自動識別装置と、
レーダ装置からのレーダ受信データと、船舶自動識別装置からの船舶データとを照合し、レーダ受信データに対応する船舶の船舶データを対応付けるデータ識別処理手段と、
をさらに備え、
前記マッチング手段は、該データ識別処理手段において、対応する船舶データがないレーダ受信データに対応する船舶からのレーダ波のパターンデータについて、データベースに格納された各パターンデータとの比較を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の前記データ識別処理手段が、対応する船舶データがないレーダ受信データに対応する船舶の方位を求めており、
該方位に基づき、前記レーダ逆探装置で受信する方位を制御するレーダ逆探装置制御処理手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6記載の前記データ識別処理手段が、対応する船舶データがないレーダ受信データに対応する船舶までの距離を求め、
前記レーダ信号処理手段は、該距離に対応する船舶からのレーダ波の受信波形のパターンデータを取得することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のものが、前記不審船と判定された船舶からのレーダ波の受信波形のパターンデータをデータベースに格納するパターンデータ収集手段をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、監視エリアにおける不審船を検出する不審船監視方法において、
レーダ波の受信波形のパターンデータを、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶の属性データと関連付けて予めデータベースに格納し、
監視エリアにある船舶に搭載されるレーダ装置から発信されるレーダ波を受信し、
前記受信したレーダ波の受信波形のパターンデータを取得し、
該取得したパターンデータとデータベースに格納された各パターンデータとの比較を行ってマッチングしているか否かの判定を行い、そのマッチング結果に基づきそのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶を不審船と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、受信波形のパターンデータを用いて予めデータベースに格納された既知の各パターンデータとの比較を行うことで、不審船か否かの判定をするので、監視される側には一切の負担がかからず、監視する側にのみ装置の設置を行えばよく、コスト的及び人的負担が軽減される。
【0022】
船舶からのレーダ波を受信することで不審船か否かの判定を行うので、広い監視エリアに亘り監視することができる。
【0023】
請求項2及び3記載の発明によれば、パルス信号のパルスパターンと搬送波の搬送波パターンのいずれか一方または両方を用いて判定することにより、船舶を確実に識別し、よって、不審船を識別することができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、レーダ装置から繰り返し送信されるパルス信号のパルス幅は、船舶に搭載されるレーダ装置に応じた差はほとんどないが、船舶のレーダ装置の測定レンジに対応するモードに応じて、通常複数種類のパルス幅が存在する。但し、立上りと立下りの形状はそのモードによって変化しないので、立上りと立下りとを除いた中間部分のパルス幅、即ち時間軸長さが一定になるように補正することで、測定レンジの影響を除去して、マッチング処理を行うことができる。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、船舶自動識別装置からの船舶データによって属性等が識別される船舶は不審船ではないので、そのような船舶以外の船舶からのパターンデータを処理することにより、不審船の絞込を行い確実に不審船を判定することができる。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、船舶データによって属性等が識別できなかった船舶が存在する方位からのレーダ波を受信することにより、不審船の特定を効率的に行うことができる。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、船舶データによって属性等が識別できなかった船舶が存在する距離からのレーダ波を受信することにより、不審船の特定を効率的に行うことができる。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、新たに不審船と判定された船舶のパターンデータをデータベースに格納していくことで、データベースに不審船に関する情報を蓄積していくことができる。その後の別手段による確認により、その不審船と判定された船舶が不審船でないことが判明した場合には、データベースに格納したパターンデータを非不審船のものとして識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の不審船監視装置及び不審船監視方法を実施するための装置のブロック図である。この不審船監視装置10は、図2に示すような湾岸や漁港等において監視エリアの監視を行う局に設置することができ、地上や海上に固定的に設置することができるが、必ずしも固定的に設置するのに限ることなく、移動体に設置することも可能である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の不審船監視装置10は、主に、レーダ装置12、船舶自動識別装置14、レーダ逆探装置16、処理コンピュータ18及び表示警報装置20を備える。また、処理コンピュータ18は必要に応じて外部ネットワークと接続することが可能である。各装置の詳細ブロック図を図3に示す。
【0031】
レーダ装置12は、レーダアンテナ122及びレーダ制御部124を備える。レーダアンテナ122は、マイクロ波のレーダパルス信号を送信し、周囲の船舶等からの反射波を受信する。レーダ制御部124は、受信信号を中間周波信号に変換して検波する。検波されたビデオ信号は、A/D変換器126によってA/D変換されて、方位データと共にレーダ受信データとして、処理コンピュータ18に送出される。
【0032】
船舶自動識別装置(AIS)14は、送受信可能な装置または受信専用装置のいずれかとすることができ、監視エリアにある船舶に搭載された自動識別装置からの船舶データを受信する。船舶データには、海上移動業務識別(MMSI)、船名、船種、喫水、目的地、到着予定時刻、船舶名、航海情報、緯度、経度、速力、針路、船体長、船首方位などが含まれる。船舶自動識別装置14は、各船舶の自動識別装置から定期的にVHF帯電波で周囲に送信される船舶データを受信する。自動識別装置は、所定条件を具備する船舶には搭載が義務付けられているので、船舶自動識別装置14で船舶データを受信することで、識別された船舶を非不審船として、以下で述べるレーダ逆探装置16からの信号を用いた処理コンピュータ18による処理おいて不審船の絞込みを行うことができ、また、処理コンピュータ18の処理を軽減することもできる。
【0033】
レーダ逆探装置16は、アンテナ162及び逆探制御部164を備える。アンテナ162は、監視エリアにある船舶からのレーダ波を受信する。逆探制御部164では、受信信号を中間周波信号に変換する。中間周波信号は、A/D変換器166によってA/D変換されて、レーダ逆探データとして、処理コンピュータ18に送出される。
【0034】
処理コンピュータ18は、CPU、ROM、RAM等を有し、データの転送、演算、一時的なデータの格納、メインプログラムの格納を行う制御回路と、データの格納を行う記憶装置と、各種データを入力するための入力装置を備える。処理コンピュータ18は、レーダ装置12からのレーダ受信データ、船舶自動識別装置14からの船舶データ、レーダ逆探装置16からのレーダ逆探データを受けており、不審船を検出すると共に、新たなパターンデータを収集する。
【0035】
処理コンピュータ18に格納されるプログラムにより処理コンピュータ18が実行する機能として、目標探知/追尾処理部30、データ識別処理部32、レーダ逆探装置制御処理部34、レーダ信号処理部36、データベース38、データマッチング部40、パターンデータ収集部42、データ識別管理処理部44、表示処理部46に大別することができる。
【0036】
目標探知/追尾処理部30は、レーダ受信データを格納するメモリと、該レーダ受信データから目標船の物標を抽出し、その目標船の位置を予測しながら継続追尾をする演算部とを備える。目標船の継続追尾をする演算部は、過去の目標船の位置からディジタルフィルタを用いて未来位置を予測し、この未来位置周辺にサンプリングウィンドウ(抽出領域)を設定し、レーダ受信データから目標船の物標を抽出して目標船の現在の位置を特定するとともに、目標船の針路・速力等を算出する処理を繰り返す。
【0037】
データ識別処理部32は、目標探知/追尾処理部30で抽出された目標船と、船舶自動識別装置14で受信した船舶データとの照合を行う。照合は、目標探知/追尾処理部30で算出された目標船の位置、針路、及び/または速力と、船舶データとの差異を求め、差異に基づき、目標船と船舶データとの対応関係を決定する。船舶データが対応づけられた目標船は非不審船であるが、船舶データと対応づけることができない目標船は、不審船の可能性がある。以下、この不審船の可能性のある目標船を不明船と称する。レーダ装置12の受信信号から、不明船の方位及びその受信信号の強度から不明船までの距離を求め、方位データをレーダ逆探装置制御処理部34に送出し、距離データをレーダ信号処理部36に送出する。
【0038】
また、レーダ装置12からのレーダ受信データでは、同一方位でほぼ同じ距離に2つの目標船が存在し、一方の目標船から船舶データが送信されているために、2つの目標船のいずれか一方は非不審船であり、他方は不明船であるが、どちらが非不審船か不明船かを識別することができない場合がある。その場合には、目標船と船舶データの対応づけを正確に行うことができないので、この段階では対応づけは行わず、両方とも不明船とする。
【0039】
レーダ逆探装置制御処理部34は、レーダ逆探装置16のアンテナの方位の制御を行うもので、方位の制御は、データ識別処理部32から送出された方位データに基づき行い、完了したときにレーダ方位制御完了信号をレーダ信号処理部36に送出する。
【0040】
レーダ信号処理部36は、図4に示すように、A/D変換器166からのレーダ逆探データを切り替える切替器360と、レーダ逆探データのうちの所望のレーダ逆探データのみを抽出するためのゲート部361、362と、レーダ逆探データのフィルタリングを行うフィルタ部363、364と、フィルタリング後のデータを格納するメモリ365、366と、該メモリ365、366で格納されたデータに対してスケーリングといった補正を行い、パターンデータを出力する補正部367、368と、を備える。
【0041】
A/D変換器166は、異なるサンプリングレートで、船舶から繰り返し送信されるレーダパルス信号の包絡線であるパルスパターンのデータと、該レーダパルス信号の搬送波のパターンのデータのいずれかのデータをA/D変換しており、切替器360は、パルスパターンのデータの場合にはゲート361に、搬送波パターンのデータの場合にはゲート362にデータを送る。
【0042】
ゲート部361、362は、前記レーダ逆探装置制御処理部34からの距離データ等を受けて、その距離に対応するデータのみを通過させるようにする。つまり、距離データに対応して受信強度が決まってくるので、対応する受信強度の信号を通過させるようにする。ゲート部361、362は、それぞれ所定数のパルスパターンまたは搬送波パターンを通過させた後、切替器360を切り替えると共にA/D変換器166のサンプリングレートを変更させる。
【0043】
フィルタ部363、364は、外部からの気象データ、波浪データによって、時定数を変化させてデータの平滑化を行う。降雨、降雪、降雹時、または波が高い時にはレーダ逆探装置16からのデータが乱れるため、その影響を低減するようにフィルタリングを行う。
【0044】
補正部367は、不明船から繰り返し送信される所定数(m個)のレーダパルス信号の包絡線であるパルスパターンを補正して、パルスパターンデータを出力し、補正部368は、不明船からの所定数(m個)のレーダパルス信号の搬送波のパターンを補正して、搬送波パターンデータを出力する。その補正の詳細については後述する。
【0045】
データベース38には、図5に示すように、予め収集されたパターンデータが、船舶を特定する船舶識別データ、不審船であるか否かを表す不審船識別データ、気象データ及び波浪データと対応づけられて格納されている。ここで、船舶識別データ及び不審船識別データは船舶の属性データの一例である。船舶識別データは、船名等といったデータとすることができる。船舶を特定することができる適法な船は、不審船識別データが「非不審船」またはこれに対応するコードとなる。これに対して、船舶を特定することができない船は、船舶識別データは無く、不審船識別データは「不審船」またはこれに対応するコードとなる。無許可漁業船、違法侵入船、海賊船の場合で、過去に監視エリアに侵入しており、パターンデータが既に格納されており、船舶が特定されている場合には、船舶識別データが有り、且つ不審船識別データは「不審船」またはこれに対応するコードとなる。気象データ及び波浪データは、そのパターンデータを収集したときの気象データと波浪データが格納される。
【0046】
データマッチング部40は、レーダ信号処理部36からのパターンデータと、データベース38で格納されているパターンデータとの比較を行い、マッチングするか否かを判断する。マッチングの判定の具体例については後述する。マッチングする場合、そのマッチングしたパターンデータに対応する不審船識別データが「非不審船」となっているか、または、不審船識別データが「不審船」となっているかを判定する。また、レーダ信号処理部36からのパターンデータと、データベース38で格納されている全パターンデータとがマッチングしない場合には、不審船と判定し、パターンデータ収集部42へとパターンデータを送出する。
【0047】
パターンデータ収集部42では、データマッチング部40でマッチングできなかったパターンデータをデータベース38へと格納する。このパターンデータに対応する船舶識別データは無く、不審船識別データは「不審船」またはこれに対応するコードとなる。
【0048】
データ識別管理処理部44では、データ識別処理部32で識別された非不審船、データ識別処理部32で識別された不明船のうちパターンマッチング部40で判定された非不審船、及びデータ識別処理部32で識別された不明船のうちパターンマッチング部40で判定された不審船を、それぞれレーダ受信データ、船舶データまたはレーダ逆探データに対応づけて表示処理部46に送出する。
【0049】
表示処理部46では、表示メモリと制御部とを備え、データ識別管理処理部44からのデータに基づき、表示メモリに非不審船、及び不審船の表示をするためのデータを書き込み、制御部は表示タイミングに同期して表示メモリのデータを読み出し、表示警報装置20へと出力する。
【0050】
次に、レーダ信号処理部36の補正部367、368におけるパターンの補正、データマッチング部40におけるマッチング判定、不審船の判定、及びデータ識別管理処理部44における警報表示処理について説明する。但し、ここでの補正及びマッチング判定は一例であり、任意の手法を採用することが可能である。
【0051】
1.パルスパターンの補正
パルスパターンの主に立上り、立下り形状は、同じメーカーの同じタイプのレーダ装置であっても、レーダ装置のマグネトロンの特性のばらつきにより図6に示すように固有な形状となるために、船舶を識別するのに使用することができる。一方、パルス幅は、船舶に搭載されるレーダ装置に応じた差はほとんど表れないが、船舶のレーダ装置の測定レンジに対応するモードに応じて、通常複数種類のパルス幅が存在する。また、受信電波強度に対応するパルス強度は船舶までの距離に応じて変化する。図7は、横軸が時間軸、縦軸がパルス強度となった1つのパルスパターンを表しており、+側及び−側の包絡線に対応して、サンプリングされた時系列データが得られている。ここで、説明のために時間軸である横軸をX軸、パルス強度に対応する縦軸をY軸とする。
【0052】
1.1 パルスパターンのY値補正
パルスパターンのY値は、前述のように船舶までの距離に依存する受信電波強度によって変化するので、これを標準スケールに合せる必要がある。パルスパターンは、通常、立上り、立下り以外の中間部分においては、Y軸における変化が少ないので、この中間部分の平均値を利用する。
【0053】
具体的には、図7(b)において、サンプリングされた時系列データの中で最大値(Ymax)を求め、最大値から数dB下がった値(Ymaxdb)を求め、データのY値がこの値を横切るX値(図のE点とF点のX値)を求め、E点とF点との間にあるデータの平均Y値(Yave+)を求める。同様に、サンプリングされた時系列データの中で最小値(Ymin)を求め、最小値から数dB上がった値(Ymindb)を求め、データのY値がこの値を横切るX値(図のH点とG点のX値)を求め、H点とG点との間にあるデータの平均Y値(Yave-)を求める。
そして、それぞれの平均Y値(Yave+、Yave-)が、予め決められた基準Y値(Y+、Y-)になるように、全体のデータのY値を拡大/縮小する(図7(c))。
【0054】
1.2 パルスパターンのX値補正
パルス幅は、前述のように船舶のレーダ装置でどのような測定レンジのモードが選択されるかによって変化するので、これを標準スケールに合せる必要がある。但し、モードが変化してパルス幅が変化しても、立上り、立下り形状は、変化しないことに注意する必要がある。そこで、E点とF点の長さ、及びH点とG点の長さを求め、これらの平均をとり(EF+HG)/2、この値が予め決められた基準値になるように、全体のデータのX値を拡大/縮小する。
【0055】
2.搬送波パターンの補正
搬送波パターンの周波数は船舶に搭載されるレーダ装置でほぼ共通であるため、周波数で船舶を識別することは困難であるが、搬送波パターンの形状は、完全な正弦波ではなく、船舶に搭載されるレーダ装置のマグネトロンの特性のばらつきにより図6に示すように固有な形状となるために、船舶を識別するのに使用することができる。
【0056】
2.1 搬送波パターンのY値補正
受信電波強度に対応するパルス強度が船舶までの距離に応じて変化するのは、パルスパターンと同じであるので、搬送波パターンのY値補正を行う必要がある。
具体的には、図8(b)、(c)に示すように、サンプリングされた時系列データの中で最大値(Y1max)を求め、最大値が基準Y値(Y1+)になるように、同様に、サンプリングされた時系列データの中で最小値(Y1min)を求め、最小値が第2所定値(Y1−)になるように、全体のデータのY値を拡大/縮小する。
【0057】
2.2 搬送波パターンのX値補正
前述のように搬送波の周波数はほぼ同じであるため、X値補正は不要となるが、搬送波の周波数がずれている場合または異なる場合には、周期が一定となるように全体のデータのX値を拡大/縮小する。
【0058】
3.マッチング判定
3.1 パルスパターンのマッチング
補正後のパルスパターンの時系列データとデータベース38に格納されている各パルスパターンの時系列データとの偏差を以下のように求める。
【0059】
【数1】

また、偏差からパルスパターンの信頼度数を求める。偏差と信頼度数との関係は、立上り部分に相当するI−E間、I−H間、立下り部分に相当するJ−F間、J−G間については、図9(a)に示すグラフに基づくものとする。
【0060】
ここで、図9(a)における傾きは、外部からの現在の気象データ、波浪データ及び今、比較を行っているパルスパターンに対応するデータベース38に格納されている気象データ、波浪データによって変化させる。降雨、降雪、降雹時、または波が高い時には、波形に乱れが生じるため、信頼度数を緩めるべく、図のa方向に傾きを小さくするように変更する。
【0061】
降雨時には、降雨量が多くなり、または、雨粒の大きさが大きくなるにつれてaの方向に傾きを小さくするように変更する。
【0062】
降雪時には、降雪量が多くなるにつれて、aの方向に傾きを小さくするように変更する。
降雹時には、降雹量が多くなるにつれて、aの方向に傾きを小さくするように変更する。
【0063】
また、波が高くなるにつれて、aの方向に傾きを小さくするように変更する。aの変更の度合いはそれぞれ降雨、降雪、降雹時、または波が高い時で、異ならしめることが望ましい。
【0064】
E−F間、H−G間は物体干渉が大きいために、信頼度数を図9(b)の実線で示す値とする。補正前のパルス幅の大きさによってbの方向に信頼度数1の範囲を増やす。また、外部からの気象データ、波浪データ及び今、比較を行っているパルスパターンに対応するデータベース38に格納されている気象データ、波浪データによって傾きをaの方向に変更するのは、図9(a)の場合と同様である。
【0065】
3.2 搬送波パターンのマッチング
補正後の搬送波パターンの時系列データとデータベース38に格納されている各搬送波パターンの時系列データとの偏差を以下のように求める。
【0066】
【数2】

また、偏差から搬送波パターンの信頼度数を求める。偏差と信頼度数との関係は、図10に示すグラフに基づくものとする。また、外部からの気象データ、波浪データ及び今、比較を行っているパルスパターンに対応するデータベース38に格納されている気象データ、波浪データによって傾きをaの方向に変更するのは、パルスパターンの場合と同様である。
【0067】
3.3 判定
パルスパターンの偏差Pconfと搬送波パターンの偏差CWconfは、n個の時系列データに対して以下の式で表される。
【0068】
【数3】

それぞれm個のパルスパターンとm個の搬送波パターンについて、偏差(Pconf(1)・・・Pconf(m))、(CWconf(1)・・・CWconf(m))を求める。
【0069】
また、パルスパターンの信頼度Pdと搬送波パターンの信頼度CWdは、n個の時系列データに対して以下の式で表される。
【0070】
【数4】

それぞれm個のパルスパターンとm個の搬送波パターンについて、信頼度(Pdconf(1)・・・Pdconf(m))、(CWdconf(1)・・・CWdconf(m))を求める。
【0071】
パルスパターンの偏差に関してパルスパターンの判定1は、以下の通りとする。
【0072】
【数5】

【0073】
ここで、P-criterion1 は、続く論理式が真である場合に真であり、論理式が偽である場合に偽となる。RVp1 はパルスパターンの判定基準値であり、αpは計測機器の精度調整値と気象データ及び波浪データからの気象及び海面反射補正値との合計を表す。ここでの判定は、m個のパルスパターンのうちの少なくとも1つでも、偏差が判定基準値に基づき決まる判定閾値よりも小さい場合にはP-criterion1を真とする。
【0074】
また、搬送波パターンの偏差に関して搬送波パターンの判定1は、以下の通りとする。
【0075】
【数6】

【0076】
ここで、CW-criterion1 は、続く論理式が真である場合に真であり、論理式が偽である場合に偽となる。RVcw1 は搬送波パターンの判定基準値であり、αcwは計測機器の精度調整値と気象データ及び波浪データからの気象及び海面反射補正値との合計を表す。ここでの判定は、m個の搬送波パターンのうちの少なくとも1つでも、偏差が判定基準値に基づき決まる判定閾値よりも小さい場合にはCW-criterion1を真とする。
【0077】
パルスパターンの信頼度に関してパルスパターンの判定2は、以下の通りとする。
【0078】
【数7】

【0079】
ここで、P-criterion2 は、続く論理式が真である場合に真であり、論理式が偽である場合に偽となる。RVp2 はパルスパターンの判定基準値であり、αpは計測機器の精度調整値と気象データ及び波浪データからの気象及び海面反射補正値との合計を表す。ここでの判定は、m個のパルスパターンのうちの少なくとも1つでも、信頼度が判定基準値に基づき決まる判定閾値よりも大きい場合にはP-criterion2を真とする。
【0080】
搬送波パターンの信頼度に関して搬送波パターンの判定2は、以下の通りとする。
【0081】
【数8】

【0082】
ここで、CW-criterion2 は、続く論理式が真である場合に真であり、論理式が偽である場合に偽となる。RVcw2 は搬送波パターンの判定基準値であり、αcwは計測機器の精度調整値と気象データ及び波浪データからの気象及び海面反射補正値との合計を表す。ここでの判定は、m個の搬送波パターンのうちの少なくとも1つでも、信頼度が判定基準値に基づき決まる判定閾値よりも大きい場合にはCW-criterion2を真とする。
【0083】
データマッチング部40による最終判定は、
【数9】

【0084】
とする。ここでの判定は、P-criterion1、CW-criterion1、P-criterion2、CW-criterion2のいずれか1つでも真となれば、最終判断は真とする。最終判定が真となった場合には、今比較しているパターンデータとのマッチングがとれたことになり、そのマッチングがとれたパターンデータの不審船識別データが「非不審船」であれば、「非不審船」であり、パターンデータの不審船識別データが「不審船」であれば、「不審船」であると判定する。一方、データベース38に格納されている全てのパターンデータに対する最終判定が偽となった場合には、「不審船」であると判定する。
【0085】
データベース38に格納されている全てのパターンデータとのマッチング判定を行いマッチングが出来なかった場合には、パターンデータ収集部42によりそのパルスパターンと搬送波パターンのパターンデータをデータベース38に新たなパターンデータとして格納する。格納するパターンデータは、m個のパターンデータの平均値とするとよい。この段階では、船舶識別データは「なし」であり、不審船識別データは「不審船」として格納する。また、パターンデータ収集時の気象データ及び波浪データも格納する。
【0086】
4. 警報表示
データ識別管理処理部44において、データ識別処理部32で既に非不審船であることが識別された目標船と、パターンマッチング部40で非不審船であることが判定された目標船については、表示警報装置20が図11の(イ)に示すように、通常の表示とし、それ以外は、(ロ)で示すように警報表示とするように処理する。
【0087】
また、データ識別処理部32で同一方位でほぼ同じ距離に目標船が存在し、2つの目標船のいずれか一方は非不審船であり、他方は不明船であると処理されていた目標船に対して、2つの目標船のパターンデータのうちの一方のマッチングがとれて「非不審船」であるとなった場合には、いずれも非不審船として、図11の(ハ)に示すように通常の表示とする。一方、2つの目標船のパターンデータともにマッチングがとれなかった場合には、どちらが不審船であるか分からないので、図11の(ニ)に示すようにいずれも中間の表示とする。
【0088】
また、同一方位にあっても、距離が異なる場合には、識別することが可能である(図11の(ホ)の場合)。
【0089】
表示警報装置20での警報表示と併せて、またはこれに代えて、外部ネットワークに警報信号を送出して、音、光等を用いた警報を発信(これらも警報表示と称する)することも可能である。
【0090】
5.不審船の特定
前記警報表示がなされると、監視員は視認等により該当する船舶を確認して、不審船の特定を行う。そして、データベース38に未登録ではあるが、言い換えれば、その監視エリアに始めて侵入したものの許可船または適法船である場合には、その船名等を確認して、データベース38に船舶識別データの入力を行うと共に、不審船識別データを「非不審船」と変更する。よって、その船は、データベース38に登録された以降は、再度監視エリアに入ったときに、データベース38に登録されたパターンデータとのマッチングがなされるために、非不審船との判定がなされることとなる。
【0091】
これに対し警報表示がなされた船が無許可船、違法侵入船、海賊船である場合には、船名が判明すれば船舶識別データの入力を行い、不審船識別データは「不審船」のままとする。よって、データベース38に登録された以降に、その船が再度監視エリアに入ったときに、データベース38に登録されたパターンデータとのマッチングがなされて、不審船との判定がなされることとなる。
【0092】
6.経年変化
以上のように、マグネトロンの特性は各船舶のレーダ装置で固有となるので、データベース38にパターンデータを一度登録しておけば、マッチング処理により確実に不審船の判定を行うことができるが、パターンデータはマグネトロンの特性の経年変化によって変化することが考えられる。その場合には、マッチングをとることができなくなるので、警報表示がなされデータベース38にパターンデータが新たに登録されることになり、その際に、監視員が視認して、非不審船であることを確認して、船舶識別データ及び不審船識別データを登録することで、パターンデータの更新を行うことができる。
【0093】
図12は、以上の処理コンピュータ18による一連の処理を表すフローチャートである。レーダ装置12からのレーダ受信データと船舶自動識別装置14からの船舶データとを収集し(ステップS10)、レーダ受信データと船舶データとの照合を行い(ステップS12)、すべて照合できたかどうかを判定し(ステップS14)、すべて照合できた場合にはステップS10に戻り、処理を繰り返し、すべて照合できなかった場合には不明船があるので、そのレーダ受信データの方位と距離を求め(ステップS16)、その方位から及び対応する距離からの受信強度をもつレーダ逆探装置16からのレーダ逆探データを収集する(ステップS18)。そして、そのパルスパターンと搬送波パターンとが標準スケールとなるようにレーダ逆探データを補正し(ステップS20)、補正後のパルスパターン及び搬送波パターンと、データベース38に格納されたパターンデータとのマッチングを行い(ステップS22)、マッチングするパターンデータがデータベース38に格納されていなかったときには(ステップS24で判定がNo.)、そのパルスパターンと搬送波パターンをデータベース38に格納すると共に、その不審船識別データを不審船として格納し(ステップS26)、表示警報装置20に警報表示を行い(ステップS28)、データベース38にマッチングするパターンデータがあるときには(ステップS24で判定がYes)、そのデータベース38に格納されている不審船識別データが不審船か非不審船であるかを読み取り、その結果に応じて、表示警報装置20に表示を行う(ステップS28)。または、ステップS28において、警報表示をするときには合わせて、音、光による警報表示を行う。そして、監視処理の停止の割り込み信号の入力のない限り、ステップS10に戻り処理を繰り返す。
【0094】
また、不審船との警報表示が行われて、不審船を監視員が確認後、その不審船についてのデータをデータベース38に登録する際には、監視処理を一旦停止させて、入力処理を行う。
【0095】
尚、以上の説明では、パルスパターンと搬送波パターンの両方のパターンについてのマッチングの判定を行っており、両方のパターンの判定を行うことにより、判定の信頼性を高めているが、いずれのパターンも固有の形状をなすために、一方のパターンについてのみマッチングの判定を行うことも可能である。
【0096】
また、以上の説明では、レーダ装置12からのレーダ受信データと船舶自動識別装置14からの船舶データとの照合を行い、照合を行うことができない目標船について、レーダ逆探装置16からのレーダ逆探データを処理することにより、マッチング処理の負担を軽減し、処理の効率化を図っていたが、処理の負担が大きくなければ、レーダ逆探装置16で全てのレーダ波を受信して、すべてのレーダ波に対してマッチング処理を行うことも可能である。及び/または、データベース38には、船舶自動識別装置14からの船舶データによって船舶を識別することができる船舶からのレーダ波のパターンデータも格納しておくことが可能である。
【0097】
レーダ逆探装置16で受信する全てのレーダ波に対してマッチング処理を行う場合には、レーダ装置12、船舶自動識別装置14及びアンテナ方位制御を行うレーダ逆探装置制御処理部34は不要としてもよく、レーダ逆探装置16は監視エリアをカバーする全ての方位からのレーダ波を受信する。
【0098】
または、図13に示すように、レーダ装置12からのレーダ受信データと船舶自動識別装置14からの船舶データとの照合を行い、照合を行うことができない目標船について、レーダ逆探装置16からのレーダ逆探データを処理すると共に、照合ができた場合にも、レーダ逆探装置16は、監視エリアをカバーする全ての方位からのレーダ波を受信して、マッチング判定及びマッチングができない場合にはそのパターンデータをデータベース38に格納する処理を行うこともできる。
【0099】
この場合、レーダ逆探装置16で受信できるレーダ波は船舶と装置との間の片道の距離を伝搬しており、レーダ装置12で送受信するレーダ波は船舶と装置との間の往復の距離を伝搬しており、従って、レーダ逆探装置16の方がレーダ装置12よりも2倍の距離の船舶からのレーダ波を受信することができる。そのために、監視エリアの距離は、レーダ装置12を使用して不明船を絞込む場合と比較して2倍とすることができる。よって、不審船が遠いところにある早い時点で不審船の特定をすることができるために、迅速な対応をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の不審船監視装置及び不審船監視方法を実施するための装置のブロック図である。
【図2】本発明が使用される例を表す説明図である。
【図3】図1の詳細ブロック図である。
【図4】図3のレーダ信号処理部の詳細ブロック図である。
【図5】データベースの格納項目を表す図である。
【図6】船舶によるパルスパターンと搬送波パターンの相違を表す例である。
【図7】パルスパターンの補正を表す図である。
【図8】搬送波パターンの補正を表す図である。
【図9】パルスパターンの偏差と信頼度数との関係を表すグラフである。
【図10】搬送波パターンの偏差と信頼度数との関係を表すグラフである。
【図11】表示警報装置の表示例である。
【図12】不審船監視装置の処理コンピュータでの処理を表すフローチャートである。
【図13】不審船監視装置の処理コンピュータでの別の処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
10 不審船監視装置
12 レーダ装置
14 船舶自動識別装置
16 レーダ逆探装置
18 処理コンピュータ
20 表示警報装置
32 データ識別処理部
34 レーダ逆探装置制御処理部
36 レーダ信号処理部
38 データベース
40 データマッチング部
42 パターンデータ収集部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不審船を検出する不審船監視装置において、
船舶に搭載されるレーダ装置から発信されるレーダ波を受信するレーダ逆探装置と、
該レーダ逆探装置によって収集されたレーダ波の受信波形のパターンデータを、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶の属性データと関連付けて予め格納するデータベースと、
前記レーダ逆探装置によって受信されたレーダ波の受信波形のパターンデータを取得するレーダ信号処理手段と、
該レーダ信号処理手段によって取得したパターンデータとデータベースに格納された各パターンデータとの比較を行ってマッチングしているか否かの判定を行い、レーダ信号処理手段によって得たパターンデータとデータベースに格納された全パターンデータがマッチングしなかったときに、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶を不審船と判定するマッチング手段と、
を備えることを特徴とする不審船監視装置。
【請求項2】
前記パターンデータは、レーダ波のパルス信号の包絡波形のパルスパターンと、レーダ波の搬送波の波形の搬送波パターンとのいずれか一方または両方のデータであることを特徴とする請求項1記載の不審船監視装置。
【請求項3】
不審船を検出する不審船監視装置において、
船舶に搭載されるレーダ装置から発信されるレーダ波を受信するレーダ逆探装置と、
該レーダ逆探装置によって収集されたレーダ波の受信波形のパターンデータを、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶の属性データと関連付けて予め格納するデータベースと、
前記レーダ逆探装置によって受信されたレーダ波の受信波形のパターンデータを取得するレーダ信号処理手段と、
該レーダ信号処理手段によって取得したパターンデータとデータベースに格納された各パターンデータとの比較を行ってマッチングしているか否かの判定を行い、その判定結果に基づき不審船を判定するマッチング手段と、
を備え、前記パターンデータは、レーダ波のパルス信号の包絡波形のパルスパターンと、レーダ波の搬送波の波形の搬送波パターンとのいずれか一方または両方のデータであることを特徴とする不審船監視装置。
【請求項4】
前記パターンデータは、少なくともパルスパターンのデータを含み、
前記レーダ信号処理手段は、パルスパターンの立上りと立下りとを除いた中間部分のパルス幅が所定の長さになるように、パルスパターンを補正することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の不審船監視装置。
【請求項5】
レーダ波を送信して船舶からの反射波を受信するレーダ装置と、
船舶から送信された船舶データを受信する船舶自動識別装置と、
レーダ装置からのレーダ受信データと、船舶自動識別装置からの船舶データとを照合し、レーダ受信データに対応する船舶の船舶データを対応付けるデータ識別処理手段と、
をさらに備え、
前記マッチング手段は、該データ識別処理手段において、対応する船舶データがないレーダ受信データに対応する船舶からのレーダ波のパターンデータについて、データベースに格納された各パターンデータとの比較を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不審船監視装置。
【請求項6】
前記データ識別処理手段は、対応する船舶データがないレーダ受信データに対応する船舶の方位を求めており、
該方位に基づき、前記レーダ逆探装置で受信する方位を制御するレーダ逆探装置制御処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の不審船監視装置。
【請求項7】
前記データ識別処理手段は、対応する船舶データがないレーダ受信データに対応する船舶までの距離を求め、
前記レーダ信号処理手段は、該距離に対応する船舶からのレーダ波の受信波形のパターンデータを取得することを特徴とする請求項5または6記載の不審船監視装置。
【請求項8】
前記不審船と判定された船舶からのレーダ波の受信波形のパターンデータをデータベースに格納するパターンデータ収集手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の不審船監視装置。
【請求項9】
監視エリアにおける不審船を検出する不審船監視方法において、
レーダ波の受信波形のパターンデータを、そのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶の属性データと関連付けて予めデータベースに格納し、
監視エリアにある船舶に搭載されるレーダ装置から発信されるレーダ波を受信し、
前記受信したレーダ波の受信波形のパターンデータを取得し、
該取得したパターンデータとデータベースに格納された各パターンデータとの比較を行ってマッチングしているか否かの判定を行い、そのマッチング結果に基づきそのレーダ波を発信するレーダ装置を搭載する船舶を不審船と判定する
ことを特徴とする不審船監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−31188(P2009−31188A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197205(P2007−197205)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】