説明

不揮発性記憶装置

【課題】消費電力を低減することができるプレート方式の不揮発性記憶装置を提供する。
【解決手段】複数のメモリセルをそれぞれ有する複数のメモリマットと、メモリマット毎に設けられ、複数のメモリセルに電圧を与える複数のプレート電極と、複数のプレート電極に電圧を与える電源部と、電源部とプレート電極との間、及びプレート電極間にそれぞれ設けられた複数のスイッチを有するスイッチ回路と、スイッチ回路を制御して、電源部とプレート電極の間を非接続とすると共にプレート電極間を接続して、プレート電極間で電荷の充放電を行う制御部と、を備えた不揮発性記憶装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶装置に関し、詳細には、複数のメモリセルに電圧を与える複数のプレート電極を有する不揮発性記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報機器においては、記憶装置として、動作が高速で、高密度のDRAM(Dynamic Random Access Memory)が広く使用されている。しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性の記憶装置であるため、情報が消えない不揮発の記憶装置が望まれている。
【0003】
そこで、不揮発性記憶装置として、FeRAM(強誘電体メモリ)、MRAM(磁気メモリ)、相変化メモリ、PMC(Programmable Metallization Cell)やRRAM等の抵抗変化型記憶装置が提案されている。これらの不揮発性記憶装置の場合、電源を供給しなくても書き込んだ情報を長時間保持し続けることが可能になり、また、リフレッシュ動作を不要にして、その分消費電力を低減することが可能となる。
【0004】
このような不揮発性記憶装置においては、プレート方式が採用されているものがある。プレート方式の不揮発性記憶装置は、複数のメモリセルの記憶素子が電気的に同電圧の共通のプレート電極に接続されており、このプレート電極にメモリセルへのデータの書き込みやデータの消去などのための電圧を与えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−351779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したプレート方式の不揮発性記憶装置では、素子の加工プロセスが楽であるという利点がある一方で、回路的にはメモリセルへのデータの書き込み又は消去などにプレート電極の電圧を遷移させる必要がある。そのため、消費電力が課題となっている。特に、メモリ容量の大容量化を行った場合、プレート電極の面積が増加してしまい、プレート電極の充放電にかかる消費電力が更に大きくなってしまうことになる。
【0007】
そこで、本発明は、消費電力を低減することができるプレート方式の不揮発性記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数のメモリセルをそれぞれ有する複数のメモリマットと、前記メモリマット毎に設けられ、前記複数のメモリセルに電圧を与える複数のプレート電極と、前記複数のプレート電極に電圧を与える電源部と、前記電源部とプレート電極との間、及び前記プレート電極間にそれぞれ設けられた複数のスイッチを有するスイッチ回路と、前記スイッチ回路を制御して、前記電源部と前記プレート電極の間を非接続とすると共に前記プレート電極間を接続して、前記プレート電極間で電荷の充放電を行う制御部と、を備えた不揮発性記憶装置とした。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の不揮発性記憶装置において、前記制御部は、前記スイッチ回路を制御して、一つのプレート電極を、他のプレート電極に接続して、前記一つのプレート電極に蓄積した電荷を前記他のプレート電極に移動させ、その後、前記一つのプレート電極を、前記他のプレート電極に接続して、前記他のプレート電極に蓄積した電荷を前記一つのプレート電極に移動させることとした。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の不揮発性記憶装置において、前記制御部は、前記スイッチ回路を制御して、一つのプレート電極を、他の複数のプレート電極に所定の順番で接続して、前記一つのプレート電極に蓄積した電荷を前記他の複数のプレート電極に移動させ、その後、前記一つのプレート電極を、前記他の複数のプレート電極に前記所定の順番とは逆順で接続して、前記他の複数のプレート電極に蓄積した電荷を前記一つのプレート電極に移動させることとした。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の不揮発性記憶装置において、前記メモリセルは、抵抗変化型記憶素子と、抵抗変化型記憶素子の一端に接続されたアクセストランジスタとを有し、前記抵抗変化型記憶素子の他端に前記プレート電極を接続した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレート方式の不揮発性記憶装置において、プレート電極に蓄積した電荷を再利用するようにしており、これにより、消費電流を低減することができる。特に、プレート電極を配置するメモリマットの数を増やすことにより、消費電力削減の効果は大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る不揮発性記憶装置の概要の説明図である。
【図2】不揮発性記憶装置の基本動作の説明図である。
【図3】不揮発性記憶装置の各メモリマット間の電荷再利用の概要の説明図である。
【図4】不揮発性記憶装置のスイッチ回路の説明図である。
【図5】不揮発性記憶装置の各メモリマット間の電荷再利用の詳細の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.不揮発性記憶装置の特徴概要
2.不揮発性記憶装置の具体的構成
3.プレート電極の電圧制御
【0015】
[1.不揮発性記憶装置の特徴概要]
本実施形態に係る不揮発性記憶装置は、複数のメモリセルをそれぞれ有する複数のメモリマットを有しており、メモリマット毎にプレート電極が設けられている。このプレート電極は、メモリマットを構成する複数のメモリセルに電圧を与えるものであり、その電圧は電源部から与えられるものである。
【0016】
さらに、電源部とプレート電極との間には、スイッチが設けられている。具体的には、電源部の接地ノード(接地電圧GNDとなるノード)とプレート電極との間、及び電源ノード(電源電圧VDDとなるノード)とプレート電極との間に、それぞれスイッチが設けられている。制御部は、これらのスイッチを制御し、電源部の接地ノードとプレート電極との間や電源部の電源ノードとプレート電極との間を選択的に接続してプレート電極に電圧を与える。
【0017】
しかも、プレート電極間には、それぞれ設けられた複数のスイッチが設けられており、制御部は、プレート電極間を接続して、プレート電極間で電荷の充放電を行っており、これにより消費電力を低減している。
【0018】
例えば、データの書き込みのために電源部により電源電圧VDDが与えられたプレート電極(以下、第1プレート電極とする)があるとする。そして、その後、データの消去のために第1プレート電極を接地電圧GNDにする必要があるとする。このとき、従来であれば、第1プレート電極を接地電圧GNDにし、第1プレート電極に蓄積された電荷を接地ノード(グランド)に移動させて第1プレート電極を接地電圧GNDにしていた。一方、本実施形態に係る不揮発性記憶装置では、第1プレート電極と他のプレート電極(以下、第2プレート電極とする)を接続して、第1プレート電極に蓄積された電荷を第2プレート電極に一旦移動させておく。その後、第1プレート電極と接地ノードとを接続して、第1プレート電極の電圧を接地電圧GNDにして、データの消去を行う。この第2プレート電極に蓄積された電荷は、データの書き込みのために電源電圧VDDにする必要がある低電圧のプレート電極(以下、第3プレート電極という)に移動させる。例えば、接地電圧GNDとなった第1プレート電極が第3プレート電極として第2プレート電極から電荷を取得する。その後、第1プレート電極と電源部の電源ノードとを接続して、第1プレート電極の電圧を電源電圧VDDにして、データの書き込みを行う。
【0019】
このように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置では、電源電圧VDDとなっているプレート電極を接地電圧GNDにするときには、他のプレート電極へ電荷を移動させている。接地電圧GNDのプレート電極を電源電圧VDDにするときには、他のプレート電極から電荷を取得するようにしている。そのため、従来であれば接地ノード(グランド)に放出していた電荷を利用することができ、消費電力を低減させることができる。
【0020】
ここで、各メモリセルは、抵抗変化型記憶素子とアクセストランジスタから構成され、アクセストランジスタのドレインはビット線に接続され、ゲートはワード線に接続され、ソースは抵抗変化型記憶素子を介してプレート電極に接続されている。そして、ビット線、ワード線及びプレート電極の電圧を制御することで、メモリセル内の抵抗変化型記憶素子の抵抗値を高抵抗又は低抵抗に変化させている。上述したデータの書き込みは、抵抗変化型記憶素子を高抵抗から低抵抗に変化させることによって行っており、この動作をSet動作という。また、上述したデータの消去は、抵抗変化型記憶素子を低抵抗から高抵抗に変化させることによって行っており、この動作をReset動作という。また、Set動作やReset動作が正常に行われたか否かを判定するために抵抗変化型記憶素子の抵抗値の状態を読み出すことをVerify動作という。なお、抵抗変化型記憶素子の抵抗値が高抵抗の場合をデータの書き込み状態とした場合には、データの書き込みはReset動作によって行い、データの消去はSet動作によって行うことになる。
【0021】
以下、本実施形態に係る不揮発性記憶装置の具体的構成及び具体的動作について図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
[2.不揮発性記憶装置の具体的構成]
まず、本実施形態に係る不揮発性記憶装置の具体的構成の一例について図1を参照して説明する。
【0023】
不揮発性記憶装置10は、図1に示すように、複数のメモリマット(単位セルアレイ)20を有している。各メモリマット20は、カラム制御回路40及びロウ制御回路30及びプレート電極制御回路70などからなる制御回路により上述したSet動作、Reset動作又はVerify動作が制御される。
【0024】
メモリマット20は、複数のメモリセルMCがマトリクス状に配置されている。各メモリセルMCは、抵抗変化型記憶素子TMRとアクセストランジスタTrから構成されている。各メモリセルMCにおいては、アクセストランジスタTrのドレインは各ビット線BLに接続され、ゲートは各ワード線WLに接続され、ソースは抵抗変化型記憶素子TMRを介してプレート電極PLに接続されている。そして、各メモリセルMCにそれぞれ接続されているビット線BL、ワード線WL及びプレート電極PLの電圧を制御することで、Set動作、Reset動作又はVerify動作が行われる。
【0025】
カラム制御回路40は、ビット線BLの電圧を制御してそのビット線BLの接続先のメモリセルMC内の抵抗変化型記憶素子TMRの抵抗値を低抵抗又は高抵抗に変化させるSet動作又はReset動作を行う。また、Set動作又はReset動作後に抵抗変化型記憶素子TMRの抵抗値の状態を読み出して検証するVerify動作を行う。ロウ制御回路30は、ワード線WLを介して、Set動作、Reset動作又はVerify動作を行うメモリセルMCを含む行のメモリセルMCに与える電圧を制御する。
【0026】
各メモリマット20に接続されたプレート電極PLは、スイッチ回路50部に接続されている。このスイッチ回路50は、プレート電極PLと電源部60との間をそれぞれ接続するスイッチ、プレート電極PL間をそれぞれ接続するスイッチを有しており、プレート電極制御回路70により制御される。すなわち、プレート電極制御回路70は、メモリマット20のプレート電極PLに与える電圧を制御する。さらに、プレート電極制御回路70は、複数のメモリマット20のプレート電極PL間で電荷の充放電の制御を行うことで、不揮発性記憶装置10の消費電力を低減している。
【0027】
ここで、メモリマット20上の複数のメモリセルMCに対して、各メモリセルMCにそれぞれ接続されているビット線BL、ワード線WL及びプレート電極PLの電圧を制御することで実行されるSet動作、Reset動作又はVerify動作を説明する。以下、図2を用いて、詳細に説明する。
【0028】
図2に示すように、Set動作では、まず、Set対象のメモリセルMC(以下、Set対象セルという)を有するメモリマット20のプレート電極PLの電圧を電源電圧VDDとする。そして、さらにSet対象セルに接続されたビット線BLの電圧をVblwにする。その後、Set対象セルに接続されたワード線WLの電圧をVgwにして、Set対象セルを選択する。その後、Set対象セルに接続されたビット線BLを接地電圧GNDとすることで、プレート電極PLからビット線BLへ向かう電流を供給して、Set対象セルの抵抗変化型記憶素子TMRを高抵抗から低抵抗に変化させる。その後、ビット線BLの電圧をVblwにし、さらに、ワード線WL、プレート電極PL、ビット線BLを順次接地電圧GNDとしても、抵抗変化型記憶素子TMRは低抵抗の状態を維持した状態となり、Set動作が終了する。
【0029】
また、Reset動作では、Reset対象のメモリセルMC(以下、Reset対象セルという)を有するメモリマット20のプレート電極PLの電圧とReset対象セルに接続されたビット線BLの電圧とを接地電圧GNDに維持する。この状態で、Reset対象セルに接続されたワード線WLの電圧をVgeにして、Reset対象セルを選択する。その後、Reset対象セルに接続されたビット線BLを電源電圧Vleとすることで、ビット線BLからプレート電極PLへ電流を供給して、Reset対象セルの抵抗変化型記憶素子TMRを低抵抗から高抵抗に変化させる。その後、ビット線BL、ワード線WLを順次接地電圧GNDとしても、抵抗変化型記憶素子TMRは高抵抗の状態を維持した状態となり、Reset動作が終了する。
【0030】
また、Verify動作では、Verify対象のメモリセルMC(以下、Verify対象セルという)を有するメモリマット20のプレート電極PLの電圧とVerify対象セルに接続されたビット線BLの電圧とを接地電圧GNDに維持する。そして、その状態で、Verify対象セルに接続されたワード線WLの電圧をVgvにして、Verify対象セルを選択する。その後、Verify対象セルに接続されたビット線BLを電源電圧Vblvとすることで、ビット線BLからプレート電極PLへデータ読み出し用の電流を供給して、Verify対象セルの抵抗変化型記憶素子TMRのデータを読み出す。その後、ビット線BL、ワード線WLを順次接地電圧GNDとする。Verify動作はSet動作又はReset動作の後に、Set動作又はReset動作が確実に行われたかを検証するための動作である。Set動作の後のVerify動作では、抵抗変化型記憶素子TMRが低抵抗であるかを判定する。また、Reset動作の後のVerify動作では、抵抗変化型記憶素子TMRが高抵抗であるかを判定する。
【0031】
以上の基本動作から分かる通り、プレート電極PLの電圧は、Set動作では電源電圧VDDにすることが必要であるが、Reset動作又はVerify動作では接地電圧GNDに遷移させることが必要である。このため、例えば、Set動作からReset動作又はSet動作からVerify動作に移行する場合は、プレート電極PLに蓄えた電荷を接地ノードに放電していた。
【0032】
そこで、本実施形態に係る不揮発性記憶装置10では、プレート電極PLの電圧の遷移における消費電力を低減するために、複数のメモリマット20に接続されたプレート電極PL間で電荷の充放電を行い電荷再利用して、消費電力の低減を図るものである。
【0033】
[3.プレート電極PLの電圧制御]
次に、消費電力の低減を図るためのプレート電極PLの電圧の制御を説明する。以下においては、メモリマット20の数を4つとした時の電荷再利用について説明する。また、4つのメモリマット20のうち1つのメモリマット20にSet動作を行うことでデータの書き込みが行われると想定している。そのため、その1つのメモリマット20のみにデータの書き込みが行なわれる場合は、上記基本動作のうちのSet動作とVerify動作とがSet動作によるデータの書き込みが完了するまで所定回数(例えば、4回)繰り返される。これに応じて、1つのメモリマット20のプレート電極PLから残りの3つのメモリマット20のプレート電極PLに対して放電と充電が繰り返される。また、残りの3つのメモリマット20のプレート電極PLには、1つのメモリマット20のプレート電極PLから放電された電荷が充電用の電荷として蓄えられる。
【0034】
図3に4つのメモリマット20間の電荷の移動の概要の手順を示す。図4に4つのメモリマット20間の電荷の移動のためのスイッチ回路50の構成を示す。図5に4つのメモリマット20間の電荷の移動のタイミングと電荷の移動量を示す。以下の説明では、便宜上、4つのメモリマット20の名称をそれぞれMAT1、MAT2、MAT3、MAT4としている。
【0035】
図3に示すように、4つのメモリマット20で構成された不揮発性記憶装置10は、以下の手順でMAT1のプレート電極PLの電荷を、他のMAT2〜4のそれぞれに設けられたプレート電極PLへ移動させて蓄えておく。すなわち、上述したSet動作が終了すると、Verify動作の開始前に、MAT1のプレート電極PLに充電された電荷を、MAT2〜4に移動させる放電を実行する。なお、このとき、MAT1〜4は電源ノードや接地ノードには接続されていない。
【0036】
図3のt1〜t3はこの放電の順序を示す。まず、t1において、MAT1とMAT2とのプレート電極PL間に設けられたスイッチを所定時間ONとして、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT2のプレート電極PLに移動させる。次に、t2において、MAT1とMAT3とのプレート電極PL間に設けられたスイッチを所定時間ONとして、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT3のプレート電極PLに移動させる。最後に、t3において、MAT1とMAT4とのプレート電極PL間に設けられたスイッチを所定時間ONとして、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT4のプレート電極PLに移動させる。
【0037】
このようにして、MAT1のプレート電極PLに充電された電荷を、次のSet動作時に用いるために、MAT2〜4のプレート電極PLに放電して蓄えておく。そして、MAT1の残った電荷は接地ノードとの間の接続スイッチをONし、接地ノードに放電させて、MAT1のプレート電極PLの電圧を接地電圧GND(0V)にする。そして、Verify動作が終了すると次のSet動作開始前にMAT2〜MAT4に充電して蓄えられた電荷を、MAT1に移動させる充電を実行する。
【0038】
図3のt4〜t6はこの充電の順序を示す。この時、MAT1の電圧は接地電圧(0V)であり、MAT2〜4は前回の放電処理で、MAT1から移動した電荷を保持している。まず、t4において、MAT4とMAT1とのプレート電極PL間に設けられたスイッチを所定時間ONとして、MAT4のプレート電極PLの電荷をMAT1のプレート電極PLに移動させる。次に、t5において、MAT3とMAT1とのプレート電極PL間に設けられたスイッチを所定時間ONとして、MAT3のプレート電極PLの電荷をMAT1のプレート電極PLに移動させる。最後に、t6において、MAT2とMAT1とのプレート電極PL間に設けられたスイッチを所定時間ONとして、MAT2のプレート電極PLの電荷をMAT1のプレート電極PLに移動させる。
【0039】
MAT2〜MAT4からMAT1への電荷の移動する充電が終了すると、Set動作に必要な分の残りの電荷を、MAT1のプレート電極PLと電源部60との間のスイッチをONすることにより、電源部60から充電してSet動作を実行する。
【0040】
なお、MAT1への電荷の充電では、MAT2〜4に蓄えられた電荷は全てMAT1に移動するわけではなく、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT2〜4のそれぞれのプレート電極PLと共有させて電圧が落ち着いた状態で電荷の移動を終了する。つまり、充電後にもMAT2〜4には電荷が残る。
【0041】
このため、MAT1とMAT2〜4とのプレート電極PLの放電(t1〜t3)と、充電(t4〜t6)を繰り返すことにより、MAT2〜4に蓄えられる電荷の量は徐々に増えてゆき、それに応じてMAT1への充電で移動する電荷の量も増えてゆく。
【0042】
従って、MAT1のみに対して放電と充電を繰り返すことで、省電力を図ることができる。また、この放電と充電におけるMAT1とMAT2〜4への電荷の移動のためのMAT1〜4間にそれぞれ設けられた後述の複数のスイッチのON/OFF制御は、プレート電極制御回路70が行う。
【0043】
上述したように、プレート電極制御回路70は、MAT1〜4のプレート電極PL間に設けられたスイッチを制御して、MAT1のプレート電極PLが蓄えた電荷を、MAT2〜4のプレート電極PLに所定の順番(t1→t2→t3)で移動させる。その後、MAT1のプレート電極PLに、MAT2〜4のプレート電極PLから所定の順番(t1→t2→t3)とは逆順(t4→t5→t6)で、MAT2〜4のプレート電極PLに蓄えた電荷を移動させる。このように、MAT1からMAT2〜4への電荷の移動とは逆順で、MAT2〜4からMAT1へ電荷を移動させることで、MAT2〜4に蓄えられた電荷を効率よくMAT1へ移動させることができる。
【0044】
図4は、MAT1〜4と電源部(以下、VDDともいう)及びGNDとをそれぞれ接続するためのスイッチ、MAT1〜4の4つのプレート電極PLのうち、二つのプレート電極PLを接続するための複数のスイッチで構成されたスイッチ回路50を示す。MAT1とMAT2の間には、それぞれのプレート電極PLの電荷を移動させるためのスイッチSw1が設けられている。MAT1とMAT3の間にはスイッチSw2が設けられている。MAT1とMAT4の間にはスイッチSw3が設けられている。MAT2とMAT3の間にはスイッチSw4が設けられている。MAT2とMAT4の間にはスイッチSw5が設けられている。MAT3とMAT4の間にはスイッチSw6が設けられている。
【0045】
すなわち、MAT1〜4の4つのプレート電極PLうち、二つのプレート電極PL間は、6個のスイッチSw1〜Sw6でそれぞれ接続されている。このスイッチSw1〜Sw6を接続することで、MAT1〜4の4つのプレート電極PLうち、二つのプレート電極PL間で電荷を移動させる。MAT1〜4には、それぞれプレート電極PLに所定の電圧を与えるためのVDDに接続するスイッチVSwと、プレート電極PLの電荷をGNDに落とすためのスイッチGSwが設けられている。
【0046】
上述したMAT1とMAT2〜4間とのプレート電極PLの電荷の放電及び充電をさらに図5を用いて詳細に説明する。図5では初期の状態においてMAT1、MAT2、MAT3、MAT4のプレート電極PLの電圧はそれぞれ0Vである。また、図5においては、上述した基本動作であるSet動作とVerify動作がMAT1に対して複数回繰り返し実行される場合を一例として説明する。
【0047】
MAT1のSet動作時のプレート電極PLの電圧は3.2Vとする。MAT1への1回目のSet動作では、MAT1のプレート電極PLの電圧(以下、Vp1という)を3.2Vにし、MAT1のSet動作を行う。Set動作後のVerify動作ではVp1を3.2Vから0Vにするのであるが、このままVp1をGNDには落とさない。つまり、MAT1のプレート電極PLに溜まった電荷を、MAT2〜4に移す動作である放電と、電荷をMAT2〜4からMAT1に移す動作である充電を行う。このようにして、MAT1のプレート電極PLに蓄えた電荷を、次のSet動作時に再利用させる。以下の説明では、MAT2、MAT3、MAT4のそれぞれのプレート電極PLの電圧はVp2、Vp3、Vp4という。以下、プレート電極PL間のスイッチSw1〜Sw6、GNDと接続するスイッチGSw及び電源部60と接続するスイッチVSwをON/OFFすることで行なわれるプレート電極PL間の充放電は、プレート電極制御回路70が制御する。
【0048】
[1回目の放電]
MAT1からの放電はMAT1〜4の4つのメモリマット20で構成されている場合、MAT1→MAT2(Step1)、MAT1→MAT3(Step2)、MAT1→MAT4(Step3)の順序で行う。Step1では、スイッチSw1をONにし、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT2のプレート電極PLと共有させ、電圧が落ち着くまで所定時間(T1)待った後、スイッチSw1をOFFにする。この時、MAT1〜4のプレート電極PLの電圧は、計算上それぞれVp1=1.60V,Vp2=1.60V,Vp3=0.00V,Vp4=0.00Vとなる。
【0049】
Step2では、スイッチSw2をONにし、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT3のプレート電極PLと共有させ、電圧が落ち着くまで所定時間(T2)待った後、スイッチSw2をOFFにする。この時、MAT1〜4のプレート電極PLの電圧は計算上それぞれVp1=0.80V,Vp2=1.60V,Vp3=0.80V,Vp4=0.00Vとなる。
【0050】
Step3では、スイッチSw3をONにし、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT4のプレート電極PLと共有させ、電圧が落ち着くまで所定時間(T3)待った後、スイッチSw3をOFFにする。この時、MAT1〜4のプレート電極PLの電圧は、計算上それぞれVp1=0.40V,Vp2=1.60V,Vp3=0.80V,Vp4=0.40Vとなる。
【0051】
この後、Verify動作を行う為にMAT1のプレート電極PLに残った電荷は、接地ノードとの間のスイッチGSwをONして接地ノードに放電させて、MAT1のプレート電極PLの電圧を接地電圧GND(Vp1=0V)とする。GNDに流れる電荷量が放電を行わない(3.2Vから0Vへ一気に電圧を下げる)場合に較べて少ないことから、グラウンドバウンスが抑えられる。放電を行わない場合のバウンス量を許容するならば、バウンスを抑えるために太くしていた電源の配線を細くすることができる。
【0052】
[1回目の充電]
次にSet動作を行う為にMAT1のプレート電極PLの電圧を3.2Vにする充電を行う。この充電は、Set動作前にMAT2〜4のプレート電極PLに蓄えた電荷を再利用し、MAT1のプレート電極PLへ電荷を移す動作を行う。Set動作前のMAT1のプレート電極PLの電圧は、上記1回目の放電の結果、それぞれVp1=0.00V,Vp2=1.60V,Vp3=0.80V,Vp4=0.40Vとなっているものとする。MAT1のプレート電極PLへのMAT2〜4のプレート電極PLからの充電は、上述した放電とは逆順のMAT4→MAT1(Step4)、MAT3→MAT1(Step5)、MAT2→MAT1(Step6)の順序で行う。
【0053】
Step4では、スイッチSw3をONにし、MAT4のプレート電極PLの電荷をMAT1のプレート電極PLと共有させ、電圧が落ち着くまで所定時間(T4)待った後、スイッチSw3をOFFにする。これにより、Step4では、Vp4からVp1へ0.2Vの電圧が充電される。この結果、MAT1〜4のプレート電極PLの電圧は計算上それぞれVp1=0.20V,Vp2=1.60V,Vp3=0.80V,Vp4=0.20Vとなる。
【0054】
Step5では、スイッチSw2をONにし、MAT3のプレート電極PLの電荷をMAT1のプレート電極PLと共有させ、電圧が落ち着くまで所定時間(T5)待った後、スイッチSw2をOFFにする。これにより、Step5では、Vp3からVp1へ0.3Vの電圧が充電される。この結果、MAT1〜4のプレート電極PLの電圧は計算上それぞれVp1=0.50V(0.2V+0.3V),Vp2=1.60V,Vp3=0.50V,Vp4=0.20Vとなる。
【0055】
Step6では、スイッチSw1をONにし、MAT2のプレート電極PLの電荷をMAT1のプレート電極PLと共有させ、電圧が落ち着くまで所定時間(T6)待った後、スイッチSw1をOFFにする。これにより、Step6では、Vp2からVp1へ0.55Vの電圧が充電される。この結果、MAT1〜4のプレート電極PLの電圧は計算上それぞれVp1=1.05V(0.2V+0.3V+0.55V),Vp2=1.05V,Vp3=0.50V,Vp4=0.20Vとなる。
【0056】
上記Step4〜6の充電が終了すると、Set動作に必要な分の残りの電荷を、MAT1のプレート電極PLと電源部60との間のスイッチVSwをONすることにより、電源部60から充電してVp1=3.20Vとする。
【0057】
Set動作前にMAT1のプレート電極PLへの充電をVDDからのみ行った場合、MAT1のプレート電極PLの容量をCとすると、充電に必要な電荷量は、dQ=C*3.20=3.20・Cとなる。一方、Verify動作前に放電を行い、MAT1のプレート電極PLの電荷をMAT2〜4へ一旦蓄積して、Set動作前にMAT1に充電して再利用すると、MAT1のプレート電極PLには1.05Vの電圧が充電される。この場合、MAT1のプレート電極PLがSet動作に必要な分の残りの電荷量は、dQ=C*(3.20−1.05)=2.15・Cとなる。
【0058】
[2回目の放電]
2回目の放電は1回目の充電およびSet動作後に行う。この時、プレート電極PLの電圧はそれぞれVp1=3.20V,Vp2=1.05V,Vp3=0.50V,Vp4=0.20Vとなっているものとする。2回目の放電も1回目の放電と同様の動作で行う。放電後のMAT1〜4のプレート電極PLの電圧は計算上、およそVp1=0.76V,Vp2=2.10V,Vp3=1.30V, Vp4=0.76Vとなる。Verify動作を行う為にMAT1のプレート電極PLに残った電荷は、接地ノードとの間のスイッチGSwをONして接地ノードに放電させて、MAT1のプレート電極PLの電圧を接地電圧GND(Vp1=0V)とする。
【0059】
[2回目の充電]
2回目の充電も1回目の充電と同様の動作で行う。この時、MAT1〜4のプレート電極PLの電圧はそれぞれVp1=0.00V,Vp2=2.10V,Vp3=1.30V,Vp4=0.76Vとなっているものとする。充電後のMAT1〜4のプレート電極PLの電圧は計算上、およそVp1=1.49V,Vp2=1.49V,Vp3=0.84V,Vp4=0.38Vとなる。Set動作に必要な分の残りの電荷を、MAT1のプレート電極PLと電源部60との間のスイッチVSwをONすることにより、電源部60から充電してVp1=3.20Vとする。このときMAT1のプレート電極PLがSet動作に必要な分の残りの電荷量はdQ=C*(3.20−1.49)=1.71・Cとなる。
【0060】
[N回目の放電]
上述したように、MAT1のプレート電極PLとMAT2〜4のプレート電極PLとの間で放電と充電を繰り返すことにより、MAT2〜4に蓄えられる電荷の量は徐々に増えてゆき、それに応じてMAT1への充電で移動する電荷の量も増えてゆく。そのため、放電と充電を繰り返すほど、MAT1のプレート電極PLにSet動作に電源部60から充電が必要な電荷量は減少するので消費電力の削減を図ることができる。
【0061】
以下、最大の消費電力の削減を図ることができるMAT1のプレート電極PLとMAT2〜4のプレート電極PLとの間の放電と充電の回数がN回であるとしたときの、N回目の放電を説明する。放電と充電の繰り返しをN−1回行い、Set動作を行った後のMAT1〜4のプレート電極PLの電圧は、所定の計算により、およそVp1=3.20V,Vp2=1.92V,Vp3=1.28V,Vp4=0.64Vとなっていると予測できる。この状態でMAT2〜4のプレート電極PLに対してN回目の放電を行った場合、放電後のMAT1〜4のプレート電極PLの電圧はおよそVp1=1.28V,Vp2=2.56V,Vp3=1.92V,Vp4=1.28Vとなる。Verify動作を行う為にMAT1のプレート電極PLに残った電荷は、接地ノードとの間のスイッチGSwをONして接地ノードに放電させて、MAT1のプレート電極PLの電圧を接地電圧GND(Vp1=0V)とする。
【0062】
[N回目の充電]
N回目の放電を行い、Verify動作を行った後のMAT1〜4のプレート電極PLの電圧はおよそVp1=0V,Vp2=2.56V,Vp3=1.92V,Vp4=1.28Vとなる。N回目の充電を行った後のMAT1〜4のプレート電極PLの電圧はおよそVp1=1.92V,Vp2=1.92V,Vp3=1.28V,Vp4=0.64Vとなる。Set動作に必要な分の残りの電荷を、MAT1のプレート電極PLと電源部60との間のスイッチVSwをONすることにより、電源部60から充電してVp1=3.20Vとする。このときMAT1のプレート電極PLがSet動作に必要な分の残りの電荷量はdQ=C*(3.20−1.92)=1.28・Cとなる。電荷の再利用を繰り返し所定回数(N回)行うことで、Set動作を行う為に必要な消費電力は、再利用を行わない場合と較べて40%の消費電力で済む。つまり、60%の消費電力を削減することが出来る。
【0063】
また、Set動作を行う為に必要な消費電力を削減するためには、より多くのメモリマット20数において、電荷の再利用を行うほうがより効率が良い。上述した4つのメモリマット20で行った場合は、60%の消費電力を削減することができるが、計算によると、8つのメモリマット20で行った場合は、78%の消費電力を削減することができる。
【0064】
上述してきたように、プレート方式の不揮発性記憶装置10において、プレート電極PLに蓄積した電荷を再利用することで、消費電流を低減することができる。特に、プレート電極PLを配置するメモリマット20の数を増やすことにより、消費電力削減の効果は大きくすることができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 不揮発性記憶装置
20 メモリマット
30 ロウ制御回路
40 カラム制御回路
50 スイッチ回路
60 電源部
70 プレート電極制御回路
PL プレート電極
TMR 抵抗変化型記憶素子
Tr アクセストランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルをそれぞれ有する複数のメモリマットと、
前記メモリマット毎に設けられ、前記複数のメモリセルに電圧を与える複数のプレート電極と、
前記複数のプレート電極に電圧を与える電源部と、
電源部とプレート電極との間、及び前記プレート電極間にそれぞれ設けられた複数のスイッチを有するスイッチ回路と、
前記スイッチ回路を制御して、前記電源部と前記プレート電極の間を非接続とすると共に前記プレート電極間を接続して、前記プレート電極間で電荷の充放電を行う制御部と、を備えた不揮発性記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スイッチ回路を制御して、一つのプレート電極を、他のプレート電極に接続して、前記一つのプレート電極に蓄積した電荷を前記他のプレート電極に移動させ、その後、前記一つのプレート電極を、前記他のプレート電極に接続して、前記他のプレート電極に蓄積した電荷を前記一つのプレート電極に移動させる請求項1に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記スイッチ回路を制御して、一つのプレート電極を、他の複数のプレート電極に所定の順番で接続して、前記一つのプレート電極に蓄積した電荷を前記他の複数のプレート電極に移動させ、その後、前記一つのプレート電極を、前記他の複数のプレート電極に前記所定の順番とは逆順で接続して、前記他の複数のプレート電極に蓄積した電荷を前記一つのプレート電極に移動させる請求項1に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項4】
前記メモリセルは、抵抗変化型記憶素子と、抵抗変化型記憶素子の一端に接続されたアクセストランジスタとを有し、前記抵抗変化型記憶素子の他端に前記プレート電極を接続した
請求項1〜3のいずれか1項に記載の不揮発性記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−204340(P2011−204340A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73368(P2010−73368)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.RRAM
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】