説明

不燃性メラミン化粧板

【課題】指紋などが目立ちにくい不燃性メラミン化粧板を提供すること。
【解決手段】不燃性メラミン化粧板の表面に撥水撥油性・低屈折率層を形成する。該撥水撥油性・低屈折率層は、常温ガラスコーティング剤、或いはフッ素樹脂又はアクリル樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーにより形成する。常温ガラスコーティング剤としては、アルコール可溶型有機ケイ素化合物を、水や有機溶媒などからなる溶液中でイオン化し、触媒としてハロゲン、ホウ素を添加したものを用いる。シロキサングラフト型ポリマーとしては、フッ素樹脂又はアクリル樹脂とシロキサンとが複合されたものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面に撥水撥油性・低屈折率層を有する不燃性メラミン化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メラミン化粧板は、表面硬度、耐熱性、耐摩耗性等の諸物性に優れることから、カウンター、机などの水平面用途に好適に用いられている。このメラミン化粧板は、一般に、化粧板用パターン原紙にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を含浸、乾燥させたメラミン樹脂含浸パターン紙と、クラフト紙にフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を含浸、乾燥させたフェノール樹脂含浸コア紙とを積層し、平板プレス機で加熱加圧することにより得られる。
【0003】
近年では、このメラミン化粧板に防火、不燃性を付与した不燃性メラミン化粧板が知られており、コア層には無機繊維不織布にフェノール樹脂或いはメラミン樹脂をバインダー成分とするプリプレグを用いている(特許文献1〜7)。
【特許文献1】特開平6−199528号公報
【特許文献2】特開2004−230611号公報
【特許文献3】特開平10−44323号公報
【特許文献4】特開昭64−56540号公報
【特許文献5】特開2005−146272号公報
【特許文献6】特開2003−292870号公報
【特許文献7】特開2000−119354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不燃性メラミン化粧板は、メラミン樹脂の特性から、表面硬度、耐熱性、耐摩耗性等に優れる一方で、指紋(皮脂膜)等の油汚れが付着しやすいという欠点があった。特に、表面に凹凸のあるエンボス仕上げの化粧板の場合、エンボス部は光の乱反射のため低光沢となるが、指紋付着部は濡れ色となるため、周囲とのコントラストで指紋が著しく目立つ。さらに、メラミン樹脂層での光の照り返しや、白ボケにより印刷紙の絵柄が鮮明に表現できないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みなされたものであり、指紋などが目立ちにくい不燃性メラミン化粧板を提供することを目的とし、本発明は、メラミン樹脂層とコア層とからなり、前記メラミン樹脂層よりも屈折率が低く、前記メラミン樹脂層よりも上層に形成された低屈折率層と、を備えることを特徴とする不燃性メラミン化粧板を要旨とするする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の構成要素である低屈折率層は、メラミン樹脂層よりも屈折率が低いので、
指紋と低屈折率層の屈折率差は、指紋とメラミン樹脂層との屈折率差よりも小さくなる。そのことにより、本発明の不燃性メラミン化粧板に付着した指紋は、メラミン樹脂層上に直接付着した指紋よりも目立たない。
【0007】
また、低屈折率層は、低反射率であることが好ましい。この場合、低屈折率層は低反射率・低屈折率となるため、不燃性メラミン化粧板における光の照り返し、白ボケが改善され、不燃性メラミン化粧板が印刷紙の絵柄を有する場合は、その絵柄が鮮明になり、意匠性が向上する。
【0008】
低屈折率層の屈折率は1.55以下であることが好ましい。指紋の屈折率は1.4〜1.5程度であり、メラミン樹脂層の屈折率は1.6〜1.7程度であるから、低屈折率層の屈折率を1.55以下にすることにより、指紋と低屈折率層との屈折率差を、指紋とメラミン樹脂層との屈折率差よりも小さくし、不燃性メラミン化粧板に付着した指紋を目立たなくすることができる。
【0009】
低屈折率層は、撥水撥油性を有することが好ましい。撥水撥油性を有することにより、不燃性メラミン化粧板への指紋の付着が低減される。特にエンボス仕上げの不燃性メラミン化粧板の場合は、低屈折率層の撥水撥油性により指紋は弾かれて球状に付着するため、指紋付着部でも光が乱反射して目立たない。
【0010】
低屈折率層が撥水撥油性を有する場合、低屈折率層の水接触角が90°以上、オレイン酸接触角が45°以上であることが好ましい。このことにより、不燃性メラミン化粧板への指紋の付着が低減される効果が一層著しい。
【0011】
本発明における低屈折率層は、(a)常温ガラスコーティング剤、又は、(b)フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーを主成分とすることができる。低屈折率層は、上記(a)又は(b)のみから成っていてもよいし、その他の添加成分を含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の不燃性メラミン化粧板の製造方法としては、例えば、(1)撥水撥油性・低屈折率層形成剤(例えば(a)常温ガラスコーティング剤、又は(b)フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーと硬化剤を含む塗料)が塗布されたメラミン樹脂含浸パターン紙を、コア材とともに積層して熱圧成形(例えば、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPa)する方法、(2)撥水撥油性・低屈折率層形成剤が塗布されたメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を、コア材及びメラミン樹脂含浸パターン紙に積層して熱圧成形(例えば、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPa)する方法、(3)基材に撥水撥油性・低屈折率層形成剤を塗布して転写シートを作成し、その転写シートを、最上層となるメラミン樹脂含浸パターン紙の上に置き、コア材とともに積層して熱圧成形(例えば、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPa)し、成形後基材を除去する方法、(4)基材に撥水撥油性・低屈折率層形成剤を塗布して転写シートを作成し、その転写シートをメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙の上に置き、コア材とメラミン樹脂含浸パターン紙を積層して熱圧成形(例えば、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPa)し、成形後基材を除去する方法等が挙げられる。
【0013】
メラミン樹脂含浸パターン紙は坪量80〜140g/m程度の化粧板用化粧紙に、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を数1で示される算出方法で70〜160%の含浸率で含浸し、乾燥させて得る。
【0014】
【数1】

【0015】
更に、メラミン化粧板の表面における耐摩耗性を向上させる目的で、オーバーレイ原紙にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を含浸したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を最上層に積層して熱圧成形してもよい。メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙は、例えば、坪量20〜60g/m程度のオーバーレイ原紙に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を200〜400%の含浸率で含浸し、乾燥させて得ることができる。
【0016】
本発明で用いる不燃性メラミン化粧板のコア材は、無機繊維基材に有機樹脂分と無機充填剤を含むスラリーを含浸させたプリプレグからなるものである。
【0017】
無機繊維基材としては、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維、セラミック繊維などの無機繊維からなる不織布、織布などが挙げられ、無機繊維基材の坪量は、10〜200g/mの範囲が好適であり、とりわけ、耐熱性、耐炎性に優れ、スラリーの含浸性が優れるガラス繊維不織布を用いるのが好ましい。
【0018】
有機樹脂分としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とアミノ−ホルムアルデヒド樹脂を併用することにより、不燃性、強度、耐熱性などの物性が優れたものとなる。
【0019】
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類とをフェノール性水酸基1モルに対してアルデヒド類を1〜3モルの割合で塩基性触媒下或いは酸性触媒下にて反応させて得られるもので、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられ、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、トリオキザールなどが挙げられる。
【0020】
また、必要に応じて尿素、尿素誘導体、パラトルエンスルフォンアミド、桐油、燐酸エステル類、グリコール類などの可塑化を促す変性剤で変性されたものも適用でき、塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、アンモニアが挙げられ、酸性触媒としては、パラトルエンスルフォン酸、塩酸などが挙げられる。
【0021】
アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはアミノ化合物、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどとホルムアルデヒドを反応させた初期縮合物のほか、メチルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコ−ルによるエ−テル化、パラトルエンスルホンアミドなどの可塑化を促す反応性変性剤で変性されたものが適用でき、中でも耐久性に優れるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0022】
スラリー中に含まれる無機充填剤としては、結晶水を含み高温時に分解し、吸熱、結合水を放出する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を必須成分とし、平均粒子径が0.5〜200μmの範囲のものを採用すると無機繊維基材への含浸適正が優れる。
【0023】
該スラリー中の有機樹脂分としてのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とアミノ−ホルムアルデヒド樹脂の配合割合は固形分比で、1:0.1〜5とするのが望ましく、フェノール樹脂に対してアミノ−ホルムアルデヒド樹脂が少ないと強度、密着性が劣りやすくなり、多いと反りが大きくなる。また、有機樹脂分と無機充填剤との配合割合は5〜20:95〜80とするのが望ましく、有機樹脂分に対して無機充填剤が多くなると不燃性能が向上するものの密着性が低下し、また、無機充填剤が少なくなると密着性が向上するものの不燃性能が低下する。
【0024】
無機繊維基材へのスラリー固形分含有率(%)は、数2で示される算出方法で、500〜3000%の範囲が好ましい。
【0025】
【数2】

【0026】
上限を超えると固形分の脱落が多くなり取り扱いにくく、また下限に満たないと層間剥離しやすくなる。
【0027】
本発明で用いる常温ガラスコーティング剤として、例えば、アルコール可溶型有機ケイ素化合物を、水や有機溶媒などからなる溶液中でイオン化し、触媒としてハロゲン、ホウ素を添加したものがある。
【0028】
3+イオンの役割は、Fイオンと反応することで、SiFの生成・揮発によるSiO量の減少を防ぐことにある。B3+イオンはFイオンと反応することでBF錯イオンを生成し、Si(OR)nのSiと極めて容易に交換してSiFn+1錯イオンとなり、下式の加水分解、脱水縮合が促進される結果、常温領域で金属酸化物ガラスが得られる。残存するB3+イオンはメタノール(CH)の存在によりB(OCHとして、Fイオンは基材等に含まれるOH基等と接触反応しHFとして気化消失する。ここで、Rはアルキル基、Mは金属、Xはハロゲンである。
【0029】
3++4X → BX4
M(OR)n +BX4+n/2H2O → MXn+1+nROH+B3+
MXn+1 +nHO → M(OH)n + (n+1)X
M(OH)n → 金属酸化物ガラス + H
ホウ素イオンB3+を与える化合物としては、トリアルコキシボランB(OR)3が用いられる。中でもトリエトキシボランB(OEt)3は好適である。反応液中のB3+イオン濃度は1.0〜10.0モル/リットルの範囲が好ましい。また、ハロゲンイオンはFおよびClもしくはこれらの混合物が用いられる。用いる化合物としては、上記反応液中でFイオンおよびClイオンを生ずるものであればよく、例えばFイオン源にはフッ化水素アンモニウムNH4F・HF、フッ化ナトリウムNaF等、Clイオン源は塩化アンモニウムNH4Cl等が好適である。
【0030】
常温ガラスコーティング剤の市販例としては、シラグシタールA6200、シラグシタールB4373(BN)(いずれも墨東化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0031】
フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとしては、例えば、フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとを複合化したものが挙げられる。具体的には、(α)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂2〜70重量%、(β)下記の化学式1(化学式1において、R1は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3、R4、R5、及びR6は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、nは2以上の整数である)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び/又は、下記化学式2(化学式2において、R7は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R8、R9、R10、R11、及びR12は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、pは0〜10の整数であり、qは2以上の整数である)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン4〜40重量%、及び(γ)ラジカル重合反応条件下において、前記(α)成分と、二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体15〜94重量%を共重合することにより得られる。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
また、他の、フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとしては、(α)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂2〜70重量%、(β)上記化学式1で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン及び/又は上記化学式2で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン5〜55重量%、(γ)アルコキシシリル基を有する単量体5〜55重量%、(δ)水酸基を有する単量体15〜50重量%、(ε)前記(α)〜(δ)成分とはラジカル重合以外に反応しない官能基を有する単量体0〜73重量%を共重合させて得られるものがある。
【0035】
また、フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとしては、前記(α)成分の代わりに、ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有し,かつ有機溶剤に可溶なる硬化性基含有アクリル系(共)重合体を用いたものが挙げられる。
【0036】
フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーの市販例としては、ZX−007C、ZX−001、ZX−022、ZX−022H,ZX−028R、ZX−036(いずれも富士化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
硬化剤としては、フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーにおける水酸基と反応可能な硬化剤が適宜選ばれ、例えば、アニリンアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート等が挙げられる。また、アルコキシシリル基を有する単量体を有する場合は、シリケート系の硬化剤を使用することもできる。反応基/OH(当量比)は1.0以上が好ましい。1.0以上であることにより、硬化を充分に行うことができる。
【0038】
メラミン樹脂含浸パターン紙或いはメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙の表面に、前記の撥水撥油性・低屈折率層形成剤を塗布する場合は公知の方法、例えば、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、カーテンコート法などを用いることができる。
【0039】
乾燥後における低屈折率層の塗膜の厚みは、常温ガラスコーティング剤を用いる場合は、1〜10μmが好ましい。フッ素樹脂又はアクリル樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーを用いる場合は0.1〜100μmの範囲、好ましくは0.5〜50μmの範囲が好ましい。塗膜の厚みをこのような範囲とすることで、不燃性メラミン化粧板の表層の水接触角が90°以上、オレイン酸接触角が45°以上、屈折率が1.55以下となり、極めて耐指紋性に優れたものとなる。乾燥後における塗膜の厚みが上記の上限値以下であれば、白化により外観不良となってしまうようなことが生じにくい。また、乾燥後における塗膜の厚みが上記下限値以上であれば、外観ムラが生じにくい。
【0040】
前記撥水撥油性・低屈折率層形成剤が塗布されたメラミン樹脂含浸パターン紙をコア材の上に積層、或いは、前記撥水撥油性・低屈折率層形成剤が塗布されたメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を、メラミン樹脂含浸パターン紙およびコア材に積層し、これらを加熱加圧プレスを用いて、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPaの成形条件で熱圧することにより不燃性メラミン化粧板を得ることができる。
【0041】
本発明の不燃性メラミン化粧板を転写方式により成形する場合に用いる基材としては、例えば、プラスチックフィルムや金属箔が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等を使用することができる。
【0042】
金属箔としては金箔、銀箔、銅箔、亜鉛箔、インジウム箔、アルミニウム箔、錫箔、鉄(ステンレス(SUS)箔を含む)箔、チタン箔等が挙げられる
前記基材表面に前記の撥水撥油性・低屈折率層形成剤を塗布する場合は公知の方法、例えば、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、カーテンコート法などを用いることができる。乾燥後の塗膜の厚みは常温ガラスコーティング剤の場合は1〜10μm、フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーの場合は0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μmとなるように塗布する。塗膜の厚みをこのような範囲とすることで、撥水撥油性・低屈折率層の水接触角が90°以上、オレイン酸接触角が45°以上、屈折率が1.55以下となり、極めて耐指紋性に優れたものとなる。乾燥後の塗膜の厚みが上記の上限値以下であれば、白化により外観不良となってしまうようなことが生じにくい。また、乾燥後の塗膜の厚みが上記下限値以上であれば、外観ムラが生じにくい。
【0043】
上記方法により、基材に撥水撥油性・低屈折率層形成剤を塗布し、前処理乾燥により溶剤を揮散させ、転写シートを得る。
【0044】
前記転写シートを、メラミン樹脂含浸パターン紙の上に置きコア材の上に積層、あるいは転写シートをメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙の上に置きコア材及びメラミン樹脂含浸パターン紙に積層し、これらを加熱加圧プレスを用いて、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPaの成形条件で熱圧することにより表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得ることができる。
【0045】
以下、本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明は以下に示される例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
1.常温ガラスコーティング剤(A)の調製
アルコール可溶型有機ケイ素化合物(例えばSi(OR))を、アルコール類(例えばイソプロパノ−ル)に混合した。さらに、触媒として、ホウ素イオンB3+とハロゲンイオンFを添加し、pHを4.5〜5.0に調整し、1液型の常温ガラスコーティング剤(A)(商品名シラグシタールA6200 墨東化成工業株式会社製)とした。
【0047】
2.メラミン樹脂含浸パターン紙(B)の製造
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を、坪量100g/mの黒色の化粧板用原紙に含浸、乾燥して、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)を得た。樹脂の含浸率は、上記数1で示される算出方法で、100%であった。
【0048】
3.プリプレグ(C)の製造
50g/mのガラス繊維不織布に、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂4.5部に対して、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂3.5部、平均粒子径12μm水酸化アルミニウム92部を配合したスラリーを、数2に示すスラリー固形分含有率が1200%となるように含浸してプリプレグ(C)を得た。
【0049】
4.常温ガラスコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)の製造
メラミン樹脂含浸パターン紙(B)の表面に、バーコート法により、乾燥膜厚が1μmとなるように常温ガラスコーティング剤(A)を塗布し、前処理乾燥させて常温ガラスコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)を得た。常温ガラスコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)の表面には、常温ガラスコーティング剤(A)の層(以下では、常温ガラスコーティング層(E)とする)が形成されている。
5.不燃性メラミン化粧板の製造
下から順に、常温ガラスコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)を1枚、プリプレグ(C)を5枚、常温ガラスコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)を1枚積層して、140℃,10MPa、80分間の条件で熱圧成形して、実施例1の不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例2】
【0050】
実施例1において、常温ガラスコーティング層(E)の乾燥膜厚を5μmとした以外は、同様に実施して、実施例2の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例3】
【0051】
実施例1において、常温ガラスコーティング層(E)の乾燥膜厚を10μmとした以外は、同様に実施して、実施例3の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例4】
【0052】
常温ガラスコーティング剤(A)を厚み30μmのOPP(延伸ポリプロピレン)フィルムの表面に、バーコート法により乾燥膜厚が1μmとなるように塗布して転写シートを作成した。転写シートの表面には常温ガラスコーティング層(E)が形成されている。
次いで、上記転写シート、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)、プリプレグ(C)、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)、上記転写シートの順に積層し、前記実施例1と同様に熱圧成形した。最後に転写シートを除去し、実施例4の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例5】
【0053】
実施例4において、常温ガラスコーティング層(E)の乾燥膜厚を5μmとした以外は、同様に実施して、実施例5の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例6】
【0054】
実施例4において、常温ガラスコーティング層の乾燥膜厚を10μmとした以外は、同様に実施して、実施例6の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例7】
【0055】
常温ガラスコーティング剤(A)に代えて、下記の常温ガラスコーティング剤(B)を用いた以外は同様に実施して、実施例7の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
常温ガラスコーティング剤(B)
アルコール可溶型有機ケイ素化合物(例えばSi(OR))を主剤、ホウ素イオンB3+とハロゲンイオンX−を触媒とする2液型のコーティング剤(商品名 シラグシタールB4373(BN)、墨東化成工業株式会社製)である。主剤と触媒とは、主剤:触媒=10:1の割合で混合し、希釈溶剤で任意の濃度に希釈したものを用いる。
【実施例8】
【0056】
実施例7において、常温ガラスコーティング層(E)の乾燥膜厚を10μmとした以外は、同様に実施して、実施例8の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例9】
【0057】
1.シロキサングラフト型ポリマーコーティング溶液(A)の調整
フッ素樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとして、ZX−022H(水酸基価120、酸価0、溶剤種;キシレン/酢酸ブチル/イソプロパノール、富士化成工業株式会社製)を用いた。また、硬化剤としてポリイソシアネート系硬化剤(商品名、コロネートHX、日本ポリウレタン工業株式会社製)を用いた。シロキサングラフト型ポリマーと硬化剤とを、NCO/OH=1.2となるように混合し、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを主剤固形分に対して0.1wt%添加し、イソプロパノールにて任意に希釈して、シロキサングラフト型ポリマーコーティング溶液(A)を得た。
【0058】
2.メラミン樹脂含浸パターン紙(B)の製造
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を、坪量100g/mの黒色の化粧板用原紙に含浸、乾燥して、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)を得た。樹脂の含浸率は、上記数1で示される算出方法で、100%であった。
【0059】
3.プリプレグ(C)の製造
50g/mのガラス繊維不織布に、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂4.5部に対して、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂3.5部、平均粒子径12μm水酸化アルミニウム92部を配合したスラリーを、数2に示すスラリー固形分含有率が1200%となるように含浸してプリプレグ(C)を得た。
【0060】
4.シロキサングラフト型ポリマーコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)の製造
メラミン樹脂含浸パターン紙(B)の表面に、バーコート法により、乾燥膜厚が0.5μmとなるようにシロキサングラフト型ポリマーコーティング溶液(A)を塗布し、前処理乾燥させてシロキサングラフト型ポリマーコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)を得た。シロキサングラフト型ポリマーコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)の表面には、シロキサングラフト型ポリマーの層(以下では、シロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)とする)が形成されている。
【0061】
5.不燃性メラミン化粧板の製造
下から順に、シロキサングラフト型ポリマーコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)を1枚、プリプレグ(C)を5枚、シロキサングラフト型ポリマーコーティングメラミン樹脂含浸パターン紙(D)を1枚積層して、140℃,10MPa、80分間の条件で熱圧成形して、実施例9の不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例10】
【0062】
実施例9において、シロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)の乾燥膜厚を10μmとした以外は、同様に実施して、実施例10の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例11】
【0063】
実施例9において、シロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)の乾燥膜厚を50μmとした以外は、同様に実施して、実施例11の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例12】
【0064】
実施例10において、フッ素樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとして、ZX−007−C(水酸基価58、酸価5、溶剤種;キシレン/酢酸ブチル、富士化成工業株式会社製)を用いた以外は、同様に実施して、実施例12の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例13】
【0065】
実施例10において、フッ素樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとして、ZX−001(水酸基価94、酸価0、溶剤種;キシレン/イソブタノール、富士化成工業株式会社製)を用いた以外は、同様に実施して、実施例13の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例14】
【0066】
実施例10において、アクリル樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとして、ZX−028−R(水酸基価100、酸価5、溶剤種;酢酸ブチル、富士化成工業株式会社製)を用いた以外は、同様に実施して、実施例14の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例15】
【0067】
実施例10において、フッ素樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとして、ZX−022(水酸基価120、酸価5、溶剤種;キシレン/酢酸ブチル、富士化成工業株式会社製)を用いた以外は、同様に実施して、実施例15の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例16】
【0068】
実施例10において、アクリル樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーとして、ZX−036(水酸基価119,溶剤種 酢酸ブチル/2−プロパノール、富士化成工業株式会社製)を用いた以外は、同様に実施して、実施例16の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例17】
【0069】
実施例10において、硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート系硬化剤(商品名コロネート2507、日本ポリウレタン工業株式会社製)を用い、シロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)の乾燥膜厚を10μmとした以外は、同様に実施して、実施例17の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例18】
【0070】
実施例10において、硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート系硬化剤(商品名スミジュールBL3173、住化バイエルウレタン株式会社製)を用いた以外は、同様に実施して、実施例18の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例19】
【0071】
実施例10において、硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート系硬化剤(商品名デスモジュールBL4265SN、住化バイエルウレタン株式会社製)を用いた以外は、同様に実施して、実施例19の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例20】
【0072】
実施例10において、硬化剤としてシリケート系硬化剤(商品名メチルシリケート51、コルコート株式会社製)を用い、これを主剤100部に対し20部混合するようにした。また、触媒としてアルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(商品名ALCH、川研ファインケミカル株式会社製)を7部用い、反応停止剤としてアセチルアセトンを20部添加した。その他の点は、前記実施例10と同様にして、実施例20の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例21】
【0073】
前記実施例9と同様に、シロキサングラフト型ポリマーコーティング溶液(A)、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)、プリプレグ(C)を製造した。
【0074】
シロキサングラフト型ポリマーコーティング溶液(A)を厚み30μmのOPP(延伸ポリプロピレン)フィルムの表面に、バーコート法により乾燥膜厚が0.5μmとなるように塗布して転写シートを作成した。転写シートの表面にはシロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)が形成されている。
次いで、上記転写シート、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)、プリプレグ(C)、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)、上記転写シートの順に積層し、前記実施例9と同様に熱圧成形した。最後に転写シートを除去し、実施例21の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例22】
【0075】
実施例21においてシロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)の乾燥膜厚を10μmとした以外は、同様に実施して、実施例22の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例23】
【0076】
実施例21において、シロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)の乾燥膜厚を50μmとした以外は、同様に実施して、実施例23の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例24】
【0077】
実施例1において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を10.0部、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂を9.0部とした以外は同様に実施して、実施例24の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【実施例25】
【0078】
実施例1において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を2.5部、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂を2.5部とした以外は同様に実施して、実施例25の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【0079】
実験例1
実施例1において、常温ガラスコーティング層(E)の乾燥膜厚を0.5μmとした以外は、同様に実施して、実験例1の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【0080】
実験例2
実施例1において、常温ガラスコーティング層(E)の乾燥膜厚を15μmとした以外は、同様に実施して、実験例2の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【0081】
実験例3
実施例9において、シロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)の乾燥膜厚を0.05μmとした以外は、同様に実施して、実験例3の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【0082】
実験例4
実施例9において、シロキサングラフト型ポリマーコーティング層(E)の乾燥膜厚を150μmとした以外は、同様に実施して、実験例4の、表面に撥水撥油性・低屈折率層が形成された不燃性メラミン化粧板を得た。
【0083】
実験例5
実施例1において、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂を0.3部とした以外は同様に実施した。
【0084】
実験例6
実施例1において、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂を21部とした以外は同様に実施した。
【0085】
実験例7
実施例1において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を13.5部、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂を10.5部とした以外は同様に実施した。
【0086】
実験例8
実施例1において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を2.5部、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂を2部とした以外は同様に実施した。
比較例1
下から順に、メラミン樹脂含浸パターン紙(B)を1枚、プリプレグ(C)を5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙(C)を1枚積層し、温度140℃、圧力10MPa、時間80分で熱圧成形し、比較例1の化粧板を得た。
【0087】
次に、実施例1〜25、実験例1〜8、及び比較例1で製造した不燃性メラミン化粧板の評価を行った。
(評価方法)
耐指紋性の評価
1)実指紋による評価
基材表面に実際に指紋を付着させ目視にて確認する。
○:指紋が目立たない。
△:指紋が若干目立つ。
×:指紋が目立つ。
2)人工指紋液による評価
評価の定量性・再現性の観点から、人工指紋液を用い耐指紋性を評価した。評価法を以下に示す。
【0088】
メトキシプロパノールを希釈剤として20%トリオレイン溶液を調製し、関東ロームを4部添加し人工指紋液とする。人工指紋液をアクリル板上にバーコーターにて均一に塗布し、100℃で3分間乾燥させる。シリコン栓(直径50mm)をアクリル板上に置き、300g/cmにて10秒間荷重をかけ、人工指紋液をシリコン栓に転写する。その後シリコン栓を試験体上に置き、300g/cmにて10秒間荷重をかけ、人工指紋液を試験体に転写する。人工指紋液転写前後の表面色差を測定し、ΔE値により耐指紋性を評価する(ΔE値が小さい=耐指紋性に優れる)。
接触角
機器として協和界面化学株式会社製CA−X型接触角計を用い、基材表面に約5μlの脱イオン水およびオレイン酸を載せ、この際の接触角を測定した。接触角は、載せる位置を変えて5点測定し、5点の平均値を計算して四捨五入することで求めた。
鮮明性の評価
化粧板の印刷柄の鮮明性について、斜光にて目視で確認する。
○:印刷柄が鮮明に確認できる。
△:若干光の照り返し・白ボケがある。
屈折率の測定
多波長アッベ屈折計 DR−M2(株式会社アタゴ)により測定した。測定波長589nm。
耐摩耗性の測定
JIS K 6902;1998(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)に基づいて測定した。
不燃性の評価
ISO5660準拠したコーンカロリーメーターによる20分試験の発熱性試験。評価方法において総発熱量が8MJ/m以下であり、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えておらず、試験後の試験体において裏面まで貫通する割れ、ひび等がない場合を○とした。この3条件を一つでも満たさないものを×とした。
耐熱密着性:200℃に保持した熱体を10分間化粧板表面に接触させて、層間の剥離、パンクが無いものを○、剥離、パンクしたものを×とした。
強度:500gの鉄球をサンプルの20cm上方より落下させ、割れなかったものを○、割れたものを×とした。
【0089】
(評価結果)
化粧面の評価結果を表1、表2に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】


【0092】
不燃性、耐熱密着性、強度の評価結果を表3に示す。
【0093】
【表3】




【0094】
なお、表1、表2において、「塗布方法(1)」は、 化粧板の製造において、含浸紙の表面に塗布する方法を意味し、「塗布方法(2)」は、転写シートを用いる方法を意味する。
【0095】
表1、表2に示すように、実施例1〜25のメラミン化粧板は、指紋が目立ちにくく、水及びオレイン酸の接触角が大きく(撥水撥油性を有し)、鮮明性に優れ、屈折率が小さく、耐摩耗が高かった。また、実施例1〜25のメラミン化粧板は、外観が良好であり、白化や反りが発生しなかった。
【0096】
それに対し、比較例1のメラミン化粧板では、指紋が目立ち、水及びオレイン酸の接触角が小さく、鮮明性に劣り、屈折率が大きかった。
【0097】
また、実験例1のメラミン化粧板では、外観に塗布ムラが現れ、外観が良好でなかった。
【0098】
また、実験例2のメラミン化粧板では、耐指紋性、鮮明性は良好だったが、一部に白化が見られ外観が良好でなかった。
【0099】
また、実験例3のメラミン化粧板では、外観に塗布ムラが現れ、外観が良好でなかった。
【0100】
また、実験例4のメラミン化粧板では、含浸紙が反るなどして取り扱いの面で実施例1〜25に比較してやや劣る結果であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン樹脂層とコア層とからなる不燃化粧板であって、前記メラミン樹脂層よりも屈折率が低く、前記メラミン樹脂層よりも上層に形成された低屈折率層とを備えることを特徴とする不燃性メラミン化粧板。
【請求項2】
前記低屈折率層の屈折率が1.55以下であることを特徴とする請求項1記載の不燃性メラミン化粧板。
【請求項3】
前記低屈折率層が撥水撥油性を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の不燃性メラミン化粧板。
【請求項4】
前記低屈折率層の水接触角が90°以上、オレイン酸接触角が45°以上であることを特徴とする請求項3記載の不燃性メラミン化粧板。
【請求項5】
前記低屈折率層が、
(a)常温ガラスコーティング剤、又は、
(b)フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の不燃性メラミン化粧板。
【請求項6】
前記コア層が、無機繊維基材に、有機樹脂分としてのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とアミノ−ホルムアルデヒド樹脂と金属水酸化物を必須成分とするスラリーが含浸されたプリプレグからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の不燃性メラミン化粧板。

【公開番号】特開2009−196247(P2009−196247A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41497(P2008−41497)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】