説明

不要追尾目標除去装置

【課題】本発明は不要な追尾目標の捕捉を防止する不要追尾目標除去装置を提供する。
【解決手段】レーダ機能に基づき追尾目標を追尾する追尾制御手段30に対し不要な追尾目標を除去する制御を行う不要追尾目標除去装置3Aである。追尾目標の追尾目標距離情報及び追尾目標方位情報と、レーダ設置位置の緯度経度情報に基づき追尾目標の緯度経度を算出する追尾目標位置情報算出手段62と、追尾目標位置情報を基点とする追尾目標周辺領域を生成する追尾目標周辺領域生成手段63と、電子図データを構成する図形構成要素の特徴をもとに、図形構成要素と追尾目標周辺領域との包含関係を判定し、追尾目標周辺領域内に図形構成要素が含まれると判定すると追尾中止命令を出力する包含関係判定制御手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要追尾目標除去装置に関し、特に港湾陸上レーダや船舶用レーダなどレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、ARPA(Automatic Rader Plotting Aids)機能(自動追尾機能)を有しており、この自動追尾機能により、レーダで観測された目標について、等時間間隔の観測データからその速度・進行方向を予測計算して当該目標を自動追尾し、自船との衝突の可能性を算出・表示することができる。
【0003】
自動追尾機能による目標捕捉は、現状では、装置使用者が表示部上に表示された複数の船の候補を参照しつつ、目標となる危険船の追尾を操作部を用いて手動で表示設定することで行われている。
【0004】
このような自動追尾機能では、追尾対象の船の設定を手動で行うことは、装置使用者の負担となっていた。このため、自動追尾機能では、捕捉に関する設定を手動で行わずに、対象となる船の捕捉処理を全自動で行うことが考えられるが、全自動で捕捉処理を行おうとすると、例えば陸地の反射エコーがレーダに捕らえてしまうため、陸地なども追尾計算を行う捕捉対象として多数捕捉されてしまうという改善すべき点があった。
【0005】
この改善すべき点に対して、例えば以下に示す特許文献1乃至特許文献4が提案されている。
【0006】
特許文献1は、レーダ映像信号によって得られる物標を、海上の物標と陸上の物標とに区別し、海上の物標に対してのみ追尾を行う技術である。そして、陸地判定方法として、海図データを緯度・経度でメッシュに区切り、各メッシュの区画毎に、その区画が陸地であるか否かをメモリ上に記録する。追尾目標の緯度・経度を、作成されたメッシュの区画位置に変換して、メモリを参照し、陸地の判定をする。
【0007】
特許文献2では、目標データ処理部が、検出された目標の位置に関して、電子海図データを参照することで陸地であるか否かを判定し、該目標の位置が陸地内であれば、目標データを消去する(段落番号0015)。また、特許文献2では、電子海図データ読出し部が、GPS等の外部の自船位置検出装置から自船位置データを受け、当該自船位置を中心とした海図データを読み出し、陸地遮断ゲート発生部が、該海図データと、空中線方位信号とに基づいて、空中線の向いている方位における陸地部分に対応する時間位置に遮断用のゲート信号を発生する(段落番号0012)。
【0008】
特許文献3は、船舶等の目標データと、海上のブイ、灯標などの固定目標からの目標データとを区別して、船舶の自動追尾を可能とする技術である。固定目標消去処理部が、自動追尾処理に不要なブイ、灯標等の固定目標からの目標データの削除を行う。海図からのブイ位置データ(R´、θ´)を基準として、基準から(ΔR、Δθ)以内にある目標データ(R、θ)を捜し、もし(ΔR、Δθ)以内に目標データがあれば、このデータはブイからのデータと判断する(第2頁左下欄)。
【0009】
特許文献4では、ENC等の電子海図を用いる場合、陸上データと海上データとはエリアデータとして識別可能であり、陸地データ出力部で海上部分と陸上部分との2つに区別されたマップデータに変換される。このマップデータは、緯度・経度のデータであり、マップデータフォーマット変換部により、距離・方位(R、θ)の座標データに変換され、ARPA信号処理部に入力され、APRA信号処理部にて不要な陸上からの信号を除去するようにしている。
【0010】
このように、特許文献2乃至特許文献4では、地形データ(緯度・経度のデータ)を船舶の位置を中心とする距離方位の座標系(極座標系)に変換した上で、不要追尾目標の除去判定を行っている。
【特許文献1】特開平01−202682号公報
【特許文献2】特開平10−020031号公報
【特許文献3】特公平03−067593号公報
【特許文献4】特開平11−023707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、メモリが大量に消費されてしまい、処理に時間がかかるという改善すべき点があった。すなわち、特許文献1では、例えば、5度×5度の海図データを、1秒×1秒のメッシュで区切り、メッシュの一区画が陸地か否かを、1byteで記録する場合、メモリの消費量は、およそ300Mbyteとなり、さらに、0.5秒×0.5秒のメッシュで区切った場合、メモリの消費量は、およそ1200Mbyteとなり、判定の制度を2倍にする度にメモリの消費量は、4倍に増えていくなど、柔軟性にかけ、現実的に処理を行おうとすると膨大な処理時間を費やすという改善すべき点があった。
【0012】
また、特許文献2乃至特許文献4では、いずれも、海図データを定義する頂点座標(例えば、陸上付近ではおよそ4000〜8000点程度の頂点座標を有する)を、時々刻々と変化する船舶位置に合わせて、緯度・経度データを距離方位の極座標系に座標変換する処理を要するため、膨大な処理時間がかかり自動追尾機能として実際に運用することができない、という改善すべき点があった。
【0013】
本発明は、上記した技術の改善点を解決することを課題としてなされたものであって、その目的とするところは、追尾目標を捕捉するに際し、不要な物標までをも捕捉してしまうことを防止し、処理の高速化を図ることの可能な不要追尾目標除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。この発明の概要は、必要な特徴すべてを列挙しているものではなく、よってここには記載されない下位請求項並びにこれらの特徴群の下位結合(サブコンビネーション)も発明になり得る。
本発明の不要追尾目標除去装置は、レーダ機能に基づいて追尾目標を自動追尾する追尾制御手段に対し、不要な追尾目標を制御対象から除去する制御処理を行う不要追尾目標除去装置であって、前記追尾制御手段より通知される前記追尾目標の追尾目標距離情報及び追尾目標方位情報とレーダ設置位置の緯度・経度情報とに基づいて、前記追尾目標の緯度・経度に関する位置情報を算出する追尾目標位置情報算出手段と、前記追尾目標位置情報算出手段にて算出された追尾目標位置を基点とする周辺領域を示す追尾目標周辺領域を生成する追尾目標周辺領域生成手段と、前記追尾目標の位置に対応する電子図データの図形構成要素の特徴をもとに、前記図形構成要素と前記追尾目標周辺領域との包含関係により前記追尾目標が不要な物標であるか否かを判定し、不要な前記物標であると判定された場合に、前記追尾制御手段に対して追尾中止命令を出力する制御処理を行う包含関係判定制御手段と、を含むことを特徴としている。
【0015】
本発明の作用及び他の利得は以下に説明する「発明を実施するための最良の形態」から明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、追尾目標を自動追尾するに際し、不要な物標を制御対象から除去する場合に、追尾目標の位置に対応する電子海図上の海図データの図形構成要素と追尾目標周辺領域との包含関係を図形的特徴をもとに判定するので、メモリ消費量を低減し、かつ、追尾目標は緯度・経度情報をもとにして判定されるので、膨大な海図データを極座標に変換する必要もなく判定処理の高速化を図りながらも、不要な物標を誤って捕捉してしまうことを防止しつつ、追尾目標の捕捉を全自動で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、実施の形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態の一例について、図面を参照して具体的に説明する。
〔第1の実施の形態〕
(本実施の形態の基本的構成)
先ず、本実施の形態の不要追尾目標除去装置の基本的構成を説明する。
本実施の形態の不要追尾目標除去装置(例えば図1に示す符号3A)は、レーダ機能に基づいて追尾目標を自動追尾する追尾制御手段(例えば図1に示す符号30)に対し、不要な追尾目標を制御対象から除去する制御処理を行うものであって、その基本的構成は、前記追尾制御手段より通知される前記追尾目標の追尾目標距離情報及び追尾目標方位情報と、レーダ設置位置の緯度・経度情報と、に基づいて、前記追尾目標の緯度・経度に関する位置情報を算出する追尾目標位置情報算出手段(例えば図2に示す符号62)と、前記追尾目標位置情報算出手段にて算出された追尾目標位置を基点(例えば、中心、重心、焦点など)とする周辺領域を示す追尾目標周辺領域(例えば多角形、円など)を生成する追尾目標周辺領域生成手段(例えば図2に示す符号63)と、前記追尾目標の位置に対応する電子図データ(例えば、電子海図上の海図データや電子地図上の地図データなど)の図形構成要素(例えば、点、線、面など)の特徴をもとに、前記図形構成要素と前記追尾目標周辺領域との包含関係により前記追尾目標が不要な物標であるか否かを判定し、不要な前記物標であると判定された場合に、前記追尾制御手段に対して追尾中止命令を出力する制御処理を行う包含関係判定制御手段(例えば図2に示す符号65、66a、66b、69による構成)と、を含むことを特徴としている。
【0019】
このような「不要追尾目標除去装置」を「レーダ装置」に適用した具体的構成について、全体構成から説明し、続いて各部の詳細構成について説明することとする。
【0020】
(レーダ装置の全体構成)
本実施の形態の不要追尾目標除去装置を含むレーダ装置の全体構成について、図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明の不要追尾目標除去装置を含むレーダ装置の全体の概略構成を示す説明図である。
【0021】
本実施の形態のレーダ装置1は、追尾目標として不要な物標を捕捉することのないよう、自動追尾制御における不要物標を除去する処理を可能とするものであり、図1に示すように、空中線であるレーダアンテナ10と、レーダアンテナ10にて受信された受信波に基づいて、レーダエコーデータを生成するレーダエコー生成部20と、レーダエコーデータに基づいて検出した追尾目標の捕捉追尾の制御を行う目標追尾制御部30と、電子海図上の物標などの緯度・経度で表される海図データを格納する海図データ格納部40と、レーダ設置位置の位置情報を取得する位置情報取得手段としての位置情報取得部50と、海図データ格納部40の海図データと、目標追尾制御部30からの追尾目標の距離・方位情報と、位置情報取得部50からのレーダ設置位置情報とに基づいて、不要な物標を除去する判定を行う不要物標除去判定制御部60Aと、レーダエコー生成部20にて生成されたレーダエコーデータ(受信ビデオ信号)をPPI表示する機能、及び/又は目標追尾制御部30からの目標追尾データを表示する機能を含むPPI表示部70と、を含んで構成される。
【0022】
目標追尾制御部30は、レーダ装置1のARPA機能を実行制御し、レーダアンテナ10から送られてくる信号から目標船を自動的に検出追尾して、目標船の位置、速度ベクトルを予測し、PPI表示部70に目標船の航跡をプロットさせて、その速度ベクトルを表示させる。同時に、GNSS又はGPS受信機、ジャイロコンパス、スピードログ等からの信号から自船の位置情報及び速度ベクトルを求めてPPI表示部70に表示させることもできる。目標追尾制御部30によって算出される情報には、目標船の位置情報に基づく目標船の速度ベクトル、自船の位置情報に基づく自船の速度ベクトルなどの各情報を含む。
【0023】
海図データ格納部40は、電子海図上の物標の位置を示す物標位置情報と、前記物標の属性を示す物標属性情報とを対応付けて記憶した海図データ記憶手段として機能する。
海図データ格納部40は、例えばベクトル形式の海図データが格納されており、海図を構成するブイ、灯台など海図構成要素の種類を示す海図属性情報と、海図構成要素の位置情報を示す経度緯度情報とが対応づけて格納されている。また、陸地と海との境界を示す陸地レイヤー、ブイの位置のみを示すブイレイヤーなど、各海図構成要素毎に複数のレイヤーからなる階層構造を有してよい。これらの各階層を重ね合わせることにより海図を実現することで、各レイヤー単位での処理を行うことができる。
【0024】
位置情報取得部50は、例えばGNSSやGPS等からの緯度・経度情報などのレーダの設置位置に関する位置情報を取得する。
【0025】
PPI表示部70は、レーダエコーデータを表示する他、他のモード(自動追尾モード)において、追尾目標となる目標船などの速度ベクトルを表示することができる。また、PPI表示部70は、海図データを重畳表示することもできる。このため、PPI表示部70は、レーダ機能に基づいて追尾目標を表示可能な表示手段ということもできる。さらに、PPI表示部70は、CRTや液晶ディスプレイで構成することができる。
【0026】
ここで、レーダ装置1のうち、不要物標除去判定制御部60Aと、位置情報取得部50と、海図データ格納部40とで「不要追尾目標除去装置3A」を構成できる。不要追尾目標除去装置3Aは、目標追尾制御部30(追尾制御手段)に対して不要な追尾目標を制御対象から除去する制御処理を行うものであって、プログラム制御により動作し、コンピュータその他無線・有線通信機能を有する情報機器、またはこれに類するコンピュータなどいかなるコンピュータでもよい。不要追尾目標除去装置3Aは、図示しないが、各種信号・データを送受信するための通信部(送受信手段)と、各種プログラム・各種データを記憶しておく記憶部(例えばメモリ等)と、これらの制御を司る制御部(例えばCPU等)などを含んで構成される。
【0027】
(装置の全体の概略動作)
図1において、全体の概略動作を説明する。上述のような構成を有するレーダ装置1において、自動追尾に関する機能を実行し、目標追尾制御部30による捕捉処理が行われると、目標追尾制御部30より追尾目標の距離・方位情報が不要物標除去判定制御部60Aに通知される。不要物標除去判定制御部60Aは、位置情報取得部50からのレーダ設置位置における緯度・経度情報と、目標追尾制御部30から通知される距離・方位情報とに基づいて、追尾目標の緯度・経度情報を算出する。
【0028】
さらに、不要物標除去判定制御部60Aは、算出された追尾目標の緯度・経度情報と、海図データ格納部40からの海図データとに基づいて、当該追尾目標である物標が不要な物標であるかの判定を行う。判定の結果、不要な物標であると判定された場合には、目標追尾制御部30に対して追尾中止命令を出力する。目標追尾制御部30は、不要物標除去判定制御部60Aからの追尾中止命令を受領すると、目標追尾制御処理を中止するとともに、その中止が決定された追尾目標(物標)に関しては、追尾目標データをPPI表示部70に供給しないようにする。
また、判定の結果、不要な物標ではないと判定された場合には、その旨を目標追尾制御部30に通知し、目標追尾制御部30は、追尾制御処理を続行または開始する。
【0029】
目標追尾制御部30及び不要物標除去判定制御部60Aは、一の追尾目標についての上記のような一連の処理が終了すると、他の追尾目標についても同様の処理を繰り返して行う。
【0030】
(不要物標除去判定制御部の詳細構成)
次に、不要物標除去判定制御部の詳細構成について、図2を参照しつつ説明する。図2には、前記不要追尾目標除去装置3Aの不要物標除去判定制御部60Aの具体的構成が示されている。
不要物標除去判定制御部60Aは、図2に示すように、目標追尾制御部30から通知される追尾目標の追尾目標距離情報、及び追尾目標の追尾目標方位情報を取得する追尾目標情報取得手段としての距離・方位情報受付処理部61と、位置情報取得部50にて取得されたレーダ設置位置の位置情報と、距離・方位情報受付処理部61にて取得された前記追尾目標距離情報及び前記追尾目標方位情報とに基づいて、前記追尾目標の追尾目標位置情報を算出する追尾目標位置情報算出手段としての緯度・経度算出処理部62と、前記追尾目標位置情報である緯度・経度を基点(例えば中心)とした追尾目標周辺領域の一例である多角形を生成する多角形生成処理部63と、追尾目標の位置に対応する領域の海図データを海図データ格納部40より取得する海図データ取得部64と、を含んで構成される。
【0031】
さらに、不要物標除去判定制御部60Aは、図2に示すように、多角形生成処理部63にて生成された多角形の多角形領域情報と、電子海図による海図データの位置情報とに基づいて、不要な物標があるか否かを判定する包含関係判定制御部65と、包含関係判定制御部65にて判定された判定結果に基づいて、不要物標であると判定された場合に追尾中止命令を目標追尾制御部30に対して出力する追尾中止命令出力処理部67aと、包含関係判定制御部65にて判定された判定結果に基づいて、不要物標でないと判定された場合に追尾開始命令を目標追尾部30に対して出力する追尾開始命令出力処理部67bと、一の追尾目標についての多角形生成の後、他の追尾目標についての多角形生成の追尾目標データ(エコ−データ)のスキャンする多角形生成方向を特定の方向に従って順次制御する多角形生成方向制御部68と、これらの各部を制御するとともにこれらの実行手順を制御するモジュール制御部としての実行手順制御部69と、を含んで構成される。
【0032】
緯度・経度算出処理部62は、距離・方位情報受付処理部61にて取得された前記追尾目標距離情報及び前記追尾目標方位情報と、前記位置情報取得部50にて取得された位置情報と、に基づいて、前記追尾目標の追尾目標位置情報を算出する。
【0033】
多角形生成処理部63(追尾目標周辺領域生成手段)は、緯度・経度算出処理部62にて算出された追尾目標位置情報を中心とする周辺領域を示す追尾目標周辺領域を生成する。ここで、前記追尾目標周辺領域は、追尾目標位置を中心とする特定半径の円形、近似的な多角形、多角形の角数を多くして円形に近づけることができ、任意の多角形とすることもできる。また、その形状も正多角形に限らず任意であり、特定の辺の領域を広くしたり狭くしたりできる。また、別途、装置使用者が任意に設定することもできる。多角形の角数、多角形の一の角度とも固定、可変とすることができる。
【0034】
海図データ取得部64は、追尾目標に対応する緯度・経度の周辺の物標などの海図データに関する情報を取得する。
【0035】
包含関係判定制御部65は、多角形生成処理部63にて生成された追尾目標周辺領域に関する情報と、前記海図データ格納部40の物標に対応する位置情報とに基づいて、前記追尾目標周辺領域内に前記物標が含まれるか否かを判定する。
【0036】
より詳細には、包含関係判定制御部65は、前記物標に対応する海図データ上の位置領域が海図データ上の図形構成要素である点データとして示されている場合に、前記追尾目標周辺領域が点に含まれるか否かを判定する第1判定手段としての第1の判定処理部66aと、前記物標に対応する海図データ上の位置領域が海図データ上の図形構成要素である線データとして示されている場合に、前記追尾目標周辺領域が線と交差するか否かを判定する第2判定手段としての第2の判定処理部66bと、前記物標に対応する海図データ上の位置領域が海図データ上の図形構成要素である面データとして示されている場合に、前記追尾目標周辺領域が面と重なり合うか否かを判定する第3判定手段としての第3の判定処理部66cと、を含んで構成される。
【0037】
第1判定処理部66aは、除去するデータが「点」で定義されるものの場合(例えば、ブイ等)には、生成された多角形が、該多角形内部に除去するデータを含むか否かを判定する処理を行う。第1判定処理部67aの判定処理において、「多角形内部にデータを含む」と判定された場合には、不要な物標であるとみなされ(例えば図7(A))、追尾中止命令出力処理部67aに対して追尾中止命令を出力するよう指示する。
【0038】
ここで、第1判定処理部66aにおいて、例えば図7(A)に示すように、追尾目標周辺領域の一例である多角形T1領域内に点P1が含まれるか否かの判定(多角形と点との包含関係の判定)には、例えば鉛直線算法などの手法が挙げられる。
【0039】
鉛直線算法では、点P1から特定方向に半直線を延ばしたとき、多角形と1回だけ交差すれば、点P1は多角形の内部にあると判定される手法である。
例えば、与えられた点P1からスタートする仮想水平線を引き、当該仮想水平線と多角形との交点の数をカウントする。交点の数が偶数(交点のない0は偶数)であれば多角形の外部にあると判定し、交点の数が奇数であれば多角形の内部にあると判定する。
【0040】
第2判定処理部66bは、除去するデータが「線」で定義されるものの場合(例えば、海上施設のパイプライン等)には、生成された多角形が、除去するデータと交差するか否かを判定する処理を行う。この判定処理において、「交差する」と判定された場合には、不要な物標であるとみなされ(例えば図7(B))、追尾中止命令出力処理部67aに対して追尾中止命令を出力するよう指示する。
【0041】
ここで、第2判定処理部66bにおいて、図7(B)に示すように、追尾目標周辺領域の一例である多角形T1領域と、点P2、点P3からなる線P2P3とが交差するか否かの判定(多角形と線との包含関係の判定)は、多角形のいずれか一つの辺(頂点Q2、頂点Q3を結ぶ辺Q2Q3)と線との交差判定を行い、これらの辺と線との交差判定をすべての多角形の辺について順次行っていき、いずれか一つの辺について「交差あり」と判定された場合には、交差判定の決定を行う。
【0042】
より具体的には、第2判定処理部66bにて処理される多角形と線との包含判定には、例えば、符号付き面積が異なる符号を持つか否かで判定する手法等が挙げられる。多角形の頂点Q2、Q3の辺Q2Q3と点P2、P3よりなる線P2P3との交差判定では、三角形Q2P2P3×三角形Q3P2P3<0、かつ、三角形P2Q2Q3×三角形P3Q2Q3<0によって判定可能である。これらを多角形の辺の数(線分対の数)だけ行い、多角形に交差する線分の有無が判定可能である。
【0043】
第3判定処理部66cは、除去するデータが「面」で定義されるものの場合(例えば、陸地など)には、生成された多角形領域が、除去する面データの面領域と重なり合うか否かを判定する処理を行う。この判定処理において、「重なり合う」と判定された場合には、不要な物標であるとみなされ(例えば図7(C))、追尾中止命令出力処理部67aに対して追尾中止命令を出力するよう指示する。
【0044】
ここで、第3判定処理部66cにおいて、図7(C)に示すように、追尾目標周辺領域の一例である多角形T1領域と面K領域とが重なりあうかの判定(多角形と面との包含関係の判定)には、例えば、多角形領域と面領域の両方に含まれる点がある場合、多角形領域と面領域とが交差し、多角形と面とが重なりあうとする判定を行う手法などが挙げられる。
【0045】
また、第3判定処理部66cにて処理される多角形と面との包含判定の他の例として、例えば、多角形T1の1辺と海図データの図形構成要素の図形K(面)の1辺を選択して交差があるかを判定し、この判定をすべての辺の組合わせに対して行う場合などが挙げられる。
すなわち、多角形を構成する全ての線分に対して総当たりで前述した2線分の交差判定を行なう。例えば、すべての辺の組合わせに対して交差がなければ、多角形と面とは交差がないと判定し、一組でも辺の交差が検出されれば、その時点で多角形と面(2つの図形)には交差があると判定する。
【0046】
以上、第1ないし第3のいずれか一つの判定処理部(66a・66b・66c)において、不要な物標であるとみなされた場合には、不要物標除去判定制御部60Aは、目標追尾制御部30に追尾中止命令を出力する。
【0047】
追尾中止命令出力処理部67aは、包含関係判定制御部65にて不要な物標であると判定された場合に、目標追尾制御部30に対して追尾中止命令を出力する。
【0048】
追尾開始命令出力処理部67bは、包含関係判定制御部65にて不要な物標でないと判定された場合に、目標追尾制御部30に対して追尾開始命令(ないしは追尾継続命令)を出力する。
【0049】
多角形生成方向制御部68は、一の多角形を生成した後に、他の多角形を生成する多角形生成方向を制御するものである。多角形生成方向制御部68は、レーダエコーデータ記憶部(不図示)を参照し、一の追尾目標のレーダエコーに対する多角形を多角形生成処理部63に生成させ、他の追尾目標のレーダエコーに対する多角形を多角形生成処理部63に生成させる。多角形生成方向制御部68は、多角形の生成処理毎に多角形の生成方向を制御できる。多角形生成方向制御部68は、レーダによるスキャンにて取得されるレーダエコーに対応する追尾目標の情報を取得し、多角形生成方向スキャンのスキャン方法、多角形生成間隔制御、多角形生成位置制御、多角形生成方向スキャンの回数制御などの機能を含んでよい。
【0050】
実行手順制御部69は、上述した各部の制御を司り、各部の実行手順を制御するモジュール制御部として機能する。また、一つの追尾目標に対して追尾中止もしくは追尾開始に関する命令を出力した後には、他の追尾目標に対しても順次同様の処理を繰り返し行う繰り返し処理制御機能を含む。
【0051】
さらに、図1、図2に示すブロック図における一部の各ブロック(例えば符号30、60A、61、62、63、64、65、66a、66b、66c、67a、67b、68、69等)は、コンピュータが適宜なメモリに格納された各種プログラムを実行することにより、該プログラムにより機能化された状態を示すソフトウエアモジュール構成である。すなわち、物理的構成は例えば一又は複数のCPU(或いは一又は複数のCPUと一又は複数のメモリ)等ではあるが、各手段によるソフトウエア構成は、プログラムの制御によってCPUが発揮する複数の機能を、それぞれ複数の手段による構成要素として表現したものである。CPUがプログラムによって実行されている動的状態(プログラムを構成する各手順を実行している状態)を機能表現した場合、CPU内に各手段が構成されることになる。プログラムが実行されていない静的状態にあっては、各手段の構成を実現するプログラム全体(或いは各手段の構成に含まれるプログラム各部)は、メモリなどの記憶領域に記憶されている。以下に示す各手段の説明は、プログラムにより機能化されたコンピュータをプログラムの機能と共に説明したものと解釈することも出来るし、また、固有のハードウエアにより恒久的に機能化された複数の電子回路ブロックからなる装置を説明したものとも解釈することが出来ることは、当然である。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現でき、いずれかに限定されるものではない。
【0052】
加えて、前記目標追尾制御部30は、「追尾制御手段」ということもできる。「追尾制御手段」は、レーダ機能に基づいて追尾目標を自動追尾する。また、前記距離・方位情報受付処理部61と緯度・経度算出処理部62とで「追尾目標位置算出手段」を構成することもできる。この「追尾目標位置算出手段」は、目標追尾制御部40より通知される前記追尾目標の追尾目標距離情報及び前記追尾目標方位情報と、レーダ設置位置の緯度・経度情報と、に基づいて、前記追尾目標の緯度・経度に関する位置情報を算出することができる。
【0053】
さらに、多角形生成処理部63により「追尾目標周辺領域生成手段」を構成することもできる。「追尾目標周辺領域生成手段」は、追尾目標位置情報算出手段にて算出された追尾目標位置を基点とする周辺領域を示す判定用図形の追尾目標周辺領域を生成することができる。さらにまた、海図データ取得部64、包含関係判定処理部65、追尾中止命令出力処理部67a、追尾開始命令(又は追尾継続命令)出力処理部67b、実行手順制御部69により、「包含関係判定制御手段」を構成することもできる。「包含関係判定制御手段」は、前記追尾目標の位置に対応する電子海図上の海図データの図形構成要素の特徴をもとに、前記図形構成要素と前記追尾目標周辺領域との包含関係により前記追尾目標が不要物標であるか否かを判定し、前記不要物標であると判定された場合に、前記追尾制御手段に対して追尾中止命令を出力する制御処理を行うことができる。
【0054】
(処理手順について)
次に、上述のような構成を有する不要追尾目標除去装置を含むレーダ装置における各種の処理手順について、図3を参照しつつ説明する。図3は、不要追尾目標除去装置を含むレーダ装置の第1の実施の形態における処理手順(情報処理方法)の一例を示すフローチャートである。
本実施の形態の不要追尾目標除去装置における情報処理方法は、レーダ機能に基づいて追尾目標を自動追尾する追尾制御を行うに際し、不要な追尾目標を除去する制御処理を行う情報処理方法であって、その基本的手順(ステップ)として、コンピュータが、追尾制御による前記追尾目標の追尾目標距離情報及び追尾目標方位情報と、レーダ設置位置の緯度・経度情報と、に基づいて、前記追尾目標の緯度・経度に関する位置情報を算出する追尾目標位置情報算出ステップ(例えば図3に示すS102)と、コンピュータが、前記追尾目標位置情報算出ステップにて算出された追尾目標位置を基点とする周辺領域を示す追尾目標周辺領域を生成する追尾目標周辺領域生成ステップ(例えば図3に示すS103)と、コンピュータが、前記追尾目標の位置に対応する電子海図上の海図データの図形構成要素の特徴をもとに、前記図形構成要素と前記追尾目標周辺領域との包含関係により前記追尾目標が不要な物標であるか否かを判定し、不要な前記物標であると判定された場合に、追尾中止命令を出力する制御処理を行う包含関係判定制御ステップ(例えば図3に示すS105、S110、S111からなるステップ)と、を含むことを特徴としている。
【0055】
より具体的には、図3に示すように、先ず、CPU(より広義にはコンピュータより狭義には不要物標除去判定制御部60A)<以降、CPUで説明>が、追尾目標のレーダ設置位置からの距離・方位情報を受け付ける処理を行う(ステップS101)<追尾目標位置情報取得ステップないしは追尾目標位置情報取得機能>。
【0056】
次に、CPUは、GNSS又はGPSなどの通知するレーダ設置箇所の位置情報と、追尾目標の距離・方位情報と、に基づいて、追尾目標の緯度・経度を算出する処理を行う(ステップS102)。<追尾目標位置情報算出ステップないしは追尾目標位置情報算出機能>
【0057】
そして、緯度・経度を中心とする追尾目標周辺領域の一例である多角形などの図形を生成する処理を行う(ステップS103)<追尾目標周辺領域生成ステップないしは追尾目標周辺領域生成機能>。
【0058】
さらに、海図データ格納部40より物標などの海図データを取得する処理を行う(ステップS104)<海図データ取得ステップないしは海図データ取得機能>。
【0059】
次いで、ステップS103にて生成された多角形と、ステップS104にて取得された海図データとに基づいて、追尾不要な物標か否かを判定する処理を行う(ステップS105)<包含関係判定処理ステップないしは包含関係判定処理機能>。
【0060】
より詳細には、先ず、多角形内に除去するデータ(点)があるか否かを判定する処理を行う(ステップS107)<第1判定処理ステップないしは第1判定処理機能>。
本第1判定処理ステップでは、点が多角形に含まれるか否かを判定するが、多角形と点との包含関係の判定手法としては、上述した「包含関係判定処理部65」、「第1判定処理部66a」の説明にて例示した各々の手法のいずれかの判定手法を用いることが好ましい。図7(A)に示すように、生成された多角形T1内に、海図データの図形構成要素としてブイや灯台などに対応する点P1のデータがあれば、不要物標であると判定される。
【0061】
前記ステップS107の第1判定処理ステップにおいて、多角形内に点があると判定された場合には、不要物標であるとみなされ、ステップS110にて追尾中止命令を目標追尾部30に対して出力する処理を行う(ステップS110)<追尾中止命令出力処理ステップないしは追尾中止命令出力処理機能>。
【0062】
一方、前記ステップS107の第1判定処理ステップにおいて、多角形内に点がないと判定された場合には、多角形のいづれか一辺と交差するデータ(線)があるか否かを判定する処理を行う(ステップS108)<第2判定処理ステップないしは第2判定処理機能>。
本第2判定処理ステップでは、多角形と線とが交差するか否かを判定するが、多角形と線との包含関係の判定手法としては、上述した「包含関係判定処理部65」、「第2判定処理部66b」の説明にて例示した各々の手法のいずれかの判定手法を用いることが好ましい。図7(B)に示すように、生成された多角形T1内に、海図データの海上に露出したパイプラインなどに対応する線データ(点P2、点P3よりなる線P2P3)が交差していれば、不要物標であると判定される。物標に対応する海図データ上の線データが多角形T1に含まれるか否かの判定は、点P2、P3による線P2P3と多角形T1の頂点Q2、Q3よりなる辺Q2Q3とが交差するか否かを判定することにより行ってよい。
【0063】
続いて、前記ステップS108の第2判定処理ステップにおいて、多角形のいずれか一辺と交差する線があると判定された場合には、不要物標であるとみなされ、ステップS110にて追尾中止命令を目標追尾部30に対して出力する処理を行う。
【0064】
一方、前記ステップS108の第2判定処理ステップにおいて、多角形のいずれか一辺と交差する線がないと判定された場合には、多角形と重なるデータ(面)があるか否かを判定する処理を行う(ステップS109)<第3判定処理ステップないしは第3判定処理機能>。
本第3判定処理ステップでは、多角形と面とが重なり合うか否かを判定するが、多角形と面との包含関係の判定手法としては、上述した「包含関係判定処理部65」、「第3判定処理部66c」の説明にて例示した各々の手法のいずれかの判定手法を用いることが好ましい。図7(C)に示すように、生成された多角形T1内に、海図データの陸などに対応する面データ(K)が重なりあっていれば、不要物標であると判定される。
【0065】
さらに、前記ステップS109の第3判定処理ステップにおいて、多角形と重なる面があると判定された場合には、不要物標であるとみなされ、ステップS110にて追尾中止命令を目標追尾制御部30に対して出力する処理を行う(ステップS110)<追尾中止命令出力処理ステップないしは追尾中止命令出力処理機能>。
【0066】
一方、前記ステップS109の第3判定処理ステップにおいて、多角形と重なる面がないと判定された場合には、ステップS111にて追尾開始命令(ないしは追尾継続命令)を目標追尾制御部30に対して出力する処理を行う(ステップS111)<追尾開始命令出力処理ステップないしは追尾開始命令出力処理機能>。
【0067】
このような図形的特徴を利用して不要物標の除去判定を行うことによって、海図データを構成する頂点データを極座標などに変換することなく不要物標の判定を行える。
【0068】
続いて、一つの追尾目標に対して追尾中止もしくは追尾開始に関する命令を出力した後には、他の追尾目標に対しても順次同様の処理を繰り返し行うこととなる。すなわち、次の追尾目標があるか否かを確認する処理を行う(ステップS112)<不要追尾目標判定繰り返しステップないしは不要追尾目標判定繰り返し機能>。
【0069】
このステップS112において、次の追尾目標があると判定された場合には、ステップS101に戻り次の追尾目標について、同様の処理を繰り返す。一方、ステップS112において、次の追尾目標がないと判定された場合には、不要追尾目標判定に関する処理を終了する。
【0070】
この際、一の追尾目標に対する不要か否かの判定後に、他の追尾目標に判定処理を移行する場合には、先に述べた多角形生成方向制御部による特定のスキャン方向に従って追尾目標の対象を、エコーデータの格納された特定の記憶領域の特定アドレスから取得することが好ましい。
【0071】
このように、不要な物標と判定された場合に、追尾中止命令を出力し、当該追尾目標を追尾対象としない制御処理を行う。
勿論、多数の多角形のそれぞれについて前述した処理を行うことで、多数のそれぞれの不要な物標については、追尾を行わずに済み、必要な船舶のみの追尾処理で済むこととなる。
【0072】
図4には、不要物標の除去判定にかかる多角形生成のスキャン方向の一例が開示されている。自動追尾制御機能(ARPA機能)オン状態とすると、レーダエコーデータが取得される。レーダエコーデータは、レーダ設置位置を中心として追尾目標に応じた各部に有することとなる。自動追尾制御の前処理として不要物標を除去するための多角形を、追尾目標に対応する位置に生成するが、追尾目標の位置に対応させるためにエコーの位置を確認する必要がある。このエコーの位置を確認するために、レーダーエコーデータ記憶部(不図示)を参照し、多角形生成方向スキャンを行うことによって、エコーの位置を抽出し、多角形生成方向に従って、エコーの位置に対応する位置に順次多角形を生成するように制御する。
【0073】
多角形の生成及び判定処理は、例えば、レーダ設置位置を中心とし、中心部領域の周縁部に亘って各々の多角形を順次生成するための第1の多角形生成方向スキャンラインを形成し、中心から周辺に向かうに従い第2、第3、・・、の各多角形生成方向スキャンラインが順次略同心円状に形成される。なお、形成には、同心円に限らず、種々の形成パターンが想定され得る。
【0074】
一つの多角形生成方向スキャンラインでは、第1多角形PO11、第2多角形PO12、・・・第n多角形PO1nなどが生成される。他の多角形生成方向スキャンラインでは、第1多角形PO21、第2多角形PO22、・・・第n多角形PO2nなどが生成される。さらに、他の多角形生成方向スキャンラインでは、第1多角形PO31、第2多角形PO32、・・・第n多角形PO1nなどが生成される。さらにまた、他の多角形生成方向スキャンラインでは、第1多角形PO41、第2多角形PO42、・・・第n多角形PO4nなどが生成される。
【0075】
図4では、各多角形が同心円状に生成されてゆく過程を概念的に示しているが、実際には、目標追尾制御部30にて取得された反射エコーの方位・距離情報に対応する物標の箇所に多角形が生成される。
【0076】
図5は、この対応箇所に多角形が生成される状況を示している。追尾目標の反射エコーの方位・距離情報とレーダ設置箇所の位置情報とをもとに、追尾目標の緯度・経度を算出し、海図データを参照することによって、海図データの対応する緯度・経度の物標を確認する。
図5では、反射エコーに対応する位置の追尾目標に多角形が生成され、海図データを重畳することによって、多角形内にブイ、灯台、陸地、パイプライン、船舶などの各種物標が生成される様子を模式的に示している。実際には、前記多角形生成方向スキャンによる生成方向に従って、順次判定処理が行われる。
【0077】
そして、これらの生成された各多角形にて不要物標の有無が各々判定される。不要物標除去判定制御部60Aは、不要物標と判定された追尾目標については、追尾中止命令を目標追尾制御部30に出力することで追尾を行わないように制御する。これにより、目標追尾部は、不要物標以外の船舶に対してのみ追尾を行うこととなる。
不要物標を追尾対象から除外しつつ目標追尾制御部にて追尾した船舶に速度ベクトル等のARPA情報を表示した状態が図6である(自動追尾機能表示)。
【0078】
図8は、レーダ設置位置を基点として海図データを重畳させて不要物標を多角形判定によって除去する様子を検証した例を示している。同図では、レーダアンテナ位置を中心として、同心円状に物標を配置したシミュレーションを行い、不要な物標の一例であるブイが追尾する制御対象から除去された状態を示している。ブイなどの物標を四角で示し、除去されたブイなどの不要物標を該四角を囲む丸印(例えばE1、E2)で示している。丸印で囲んだ物標に対しては、追尾目標の対象外となり追尾計算を行わずに済む。追尾される制御対象を、レーダ設置位置を基点として同心円状に特定間隔でスキャン(例えば符号Mなど)し、不要な物標と重なり合う場合には、物標が除去される。また、海図データ上でブイなどの物標があっても、反射エコーを捕らえていない領域では、目標追尾制御部が追尾目標として捕らえていないので、物標はそのまま重畳表示されている。
【0079】
一方、図9には、比較例として、不要物標を除去していない状態を示している。不要物標に相当する箇所を黒丸(例えばNE1、NE2、NE3、NE4)で示している。同図に示すように、ブイが追尾対象として除去されない場合(NE1、NE2)、浅瀬(NE3)、陸地(NE4)などの反射エコーが捕らえられたまま追尾目標として残っている様子を示す。
これに対して、図11では、これらの対応箇所の不要な追尾目標が、多角形判定によって除去され制御対象から除外されている。これによって、不要な追尾目標が除去されたことが確認された。
【0080】
以上のように本実施の形態によれば、緯度・経度の座標で定義された多角形を判定に用いることにより、もとの地形データに変更を加えることなく(座標変換を行うことなく)、使用されているすべてのデータ型について、単純な図形の重なりを用いて除去判定を行うことが可能である。
【0081】
このように、追尾目標を自動追尾するに際し、不要な物標を制御対象から除去する場合に、追尾目標の位置に対応する電子海図上の海図データの図形構成要素と追尾目標周辺領域との包含関係を図形的特徴をもとに判定するので、メモリ消費量を低減し、かつ、追尾目標は緯度・経度情報をもとにして判定されるので、膨大な海図データを極座標に変換する必要もなく判定処理の高速化を図りながらも、不要な物標を誤って捕捉してしまうことを防止しつつ、追尾目標の捕捉を全自動で行うことが可能となる。
【0082】
また、包含関係判定制御部65は、海図データ取得部64にて取得された海図データに基づいて、追尾対象の物標が船舶以外のデータであるか否か判定する物標判定処理部を含んでよい。その場合、包含関係判定制御部65は、物標判定処理部にて海図データ取得部64にて取得された海図データに基づいて、追尾対象の物標が船舶以外のデータであるか否か判定し、船舶以外のデータである場合には、第1、第2、第3判定処理部66a、66b、66cでの判定を行わせるよう制御する。
【0083】
さらに、上記の説明において、上述した各ステップの動作内容及び各部の構成要素をプログラム化し、コンピュータに実行させてもよい。
【0084】
[第2の実施の形態]
次に、本発明にかかる第2の実施の形態について、図10に基づいて説明する。以下には、前記第1の実施の形態の実質的に同様の構成ないしは処理手順に関しては説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。図10は、本発明の不要追尾目標除去装置の第2の実施の形態の一部の構成一例を示すブロック図である。
【0085】
上述の第1の実施の形態では、追尾目標を中心として生成される多角形のサイズや形状が自動的に設定され不要物標削除判定処理を行う構成としたが、本実施の形態では、前記多角形のサイズや形状を任意に予め設定できる構成とする場合を開示している。加えて、物標などの地図上で定義されているデータについても、予め除去対象を設定できる構成とする場合を開示している。さらに加えて、最適条件の多角形を自動生成できる構成とする場合を開示している。
【0086】
具体的には、本実施の形態の不要追尾目標除去装置3Bは、図10に示すように、上述の第1の実施の形態と同様の構成に加え、不要物標除去判定制御部60Bと、除去対象となる物標を設定するための除去対象設定部91と、追尾目標周辺領域に関する各種設定条件を設定するための追尾目標周辺領域設定部92と、除去対象設定部91にて設定された除去対象設定条件を記憶して蓄積処理する除去対象設定条件情報記憶部93aと、追尾目標周辺領域設定部92にて設定された追尾目標周辺領域の設定条件を記憶して蓄積処理する領域設定条件情報記憶部93bと、これらの各設定部にて設定された設定条件を記憶させる設定制御を行い、各部の要求に応じて前記条件に基づいて処理を行わせる制御を行う設定制御部80と、を含んで構成される。
【0087】
不要物標除去判定制御部60Bは、追尾目標周辺領域の最適サイズ・最適形状などの最適条件を算出する最適条件算出部94と、前記領域設定条件情報記憶部93bの領域設定条件に従って多角形の生成制御を行う多角形生成制御処理部63Bと、除去対象設定条件情報記憶部93aに記憶された除去対象設定条件と前記多角形生成制御処理部63Bにて生成された多角形とに基づいて多角形と除去対象の物標との包含関係の判定制御を行う包含関係判定制御処理部65Bと、を含んで構成される。
【0088】
除去対象設定部91は、除去対象として陸地を設定するための陸地設定部91aと、除去対象として灯標、灯柱、灯浮標などのブイを設定するためのブイ設定部91bと、除去対象として灯台(灯色、灯質、周期などにより異なる種類に応じてもよい)を設定するための灯台設定部91cと、除去対象として浅瀬を設定するための浅瀬設定部91dと、除去対象としてドックを設定するためのドック設定部91eと、除去対象としてレーダビーコンを設定するためのレーダビーコン設定部91fと、除去対象としてその他の物標を設定するためのその他の設定部91gと、を含んで構成される。
その他の設定部91gは、灯台無線標識局、レーダ局、ロラン局などの物標や、サンドウェーブ、魚礁や、土砂捨場、湾岸道路、湾岸鉄道、湾岸架空船、湾岸橋など沿岸付近のもの、湾岸煙突、湾岸塔、湾岸タンクなどの湾岸施設などの物標などを含んでよい。
【0089】
追尾目標周辺領域設定部92は、追尾目標周辺領域の形状を設定する追尾目標周辺領域形状設定部92aと、追尾目標周辺領域のサイズを設定する追尾目標周辺領域サイズ設定部92bと、追尾目標周辺領域の設定条件を手動設定モードから自動設定モードへ切替て前記追尾目標周辺領域の最適設定条件の自動設定を行うようにする追尾目標周辺領域最適自動設定部92cと、追尾目標周辺領域のその他の設定条件(パラメータ)を設定する追尾目標周辺領域その他のパラメータ設定部92dと、を含んで構成される。
【0090】
追尾目標周辺領域その他のパラメータ設定部92dにおけるその他の設定条件としては、一の追尾目標周辺領域と他の追尾目標周辺領域とで各々異なる形状やサイズを、目標とする精度に応じて任意に設定できる機能などが挙げられる。
【0091】
ここで、除去対象設定部91は、「不要物標設定手段」ということもできる。この「不要物標設定手段」は、複数種類の物漂の中から自動追尾しない不要物標の種類を選択設定することができる。また、追尾目標周辺領域サイズ設定部92bは、「追尾目標周辺領域サイズ設定手段」ということもできる。この「追尾目標周辺領域サイズ設定手段」は、前記追尾目標周辺領域のサイズを設定することができる。さらに、多角形生成制御処理部63Bは、「追尾目標周辺領域生成手段」ということもできる。さらに加えて、最適形状算出部94と包含関係判定制御処理部65により「包含関係判定制御手段」を構成することもできる。前記「追尾目標周辺領域生成手段」が、前記追尾目標の位置が前記レーダ設置位置より離れるに従い前記追尾目標周辺領域のサイズが拡大するように生成すると、前記「包含関係判定制御手段」は、前記追尾目標の位置に応じて異なるサイズの各前記追尾目標周辺領域にて各々判定を行うことができる。
【0092】
また、「包含関係判定制御手段」は、前記不要物標設定手段にて設定された不要物標に対して判定する制御を行うこともできる。さらに、「包含関係判定制御手段」は、前記追尾目標周辺領域サイズ設定手段にて設定されたサイズの追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うこともできる。またさらに、「包含関係判定制御手段」は、前記追尾目標周辺領域設定手段にて設定された前記追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うことができる。加えて、「包含関係判定制御手段」は、前記追尾目標周辺領域形状設定手段にて設定された形状の追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うこともできる。
【0093】
設定制御部80は、各設定部にて設定された情報に基づき、設定先の制御を行う機能を内在している。すなわち、複数種類の物漂の中から自動追尾しない不要物標の種類を選択設定制御する不要物標設定制御手段、追尾目標周辺領域に関する設定条件を設定制御する
追尾目標周辺領域設定制御手段を含んでいる。追尾目標周辺領域設定制御手段は、追尾目標周辺領域のサイズを設定可能な追尾目標周辺領域サイズ設定制御手段、追尾目標周辺領域の形状を設定可能な追尾目標周辺領域形状設定制御手段などを含むことができる。
【0094】
ここで、「包含関係判定制御手段」は、前記追尾目標周辺領域設定制御手段にて設定された前記追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うことができる。また、「包含関係判定制御手段」は、追尾目標周辺領域サイズ設定制御手段にて設定された形状の追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うことができる。さらに、「包含関係判定制御手段」は、追尾目標周辺領域形状設定制御手段にて設定された形状の追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うことができる。
【0095】
上述のような構成を有する不要追尾目標除去装置3Bにおいて、概略以下のように動作する。この際、本実施の形態では、主として3つの機能を有する。第1は、最適サイズの多角形が自動設定される機能(図11)。第2は、多角形のサイズや形状を自由に設定できる機能(図12)。第3は、除去対象となる物標を自由に設定できる機能<例えば、ブイは除去対象とするが、灯台は除去対象としないなど>。
【0096】
このような機能を実行する際に、先ず、追尾目標周辺領域設定部92にて、追尾目標周辺領域に関する設定条件(例えば追尾目標周辺領域の形状、追尾目標周辺領域のサイズなど)が設定される、設定制御部80は、当該設定条件情報を領域設定条件情報記憶部93bに記憶する処理を行う。
【0097】
具体的には、追尾目標周辺領域形状設定部92aにて設定された追尾目標周辺領域形状条件情報は、領域設定条件情報記憶部93bの特定の記憶領域に記憶される。また、追尾目標周辺領域サイズ設定部92bにて設定された追尾目標周辺領域サイズ条件情報は、領域設定条件情報記憶部93bの他の特定の記憶領域に記憶される。さらに、追尾目標周辺領域その他のパラメータ設定部92cにて設定された追尾目標周辺領域のその他の条件情報は、領域設定条件情報記憶部93bのさらに他の特定の記憶領域に記憶される。
ここで、追尾目標周辺領域最適自動設定部92cが設定された場合には、設定制御部80は、前記領域設定条件情報記憶部93bに予め記憶されている最適領域設定条件情報が利用され、他の設定条件が利用されないよう制約に基づいて、制御する。
【0098】
設定制御部80は、除去対象設定部91からの除去対象設定条件情報の設定入力に基づいて、除去対象設定条件情報を除去対象設定条件情報記憶部93aに記憶する処理を行う。
【0099】
具体的には、陸地設定部91aにて設定された「陸地」が除去対象となることを示す除去対象設定条件情報は、除去対象設定条件情報記憶部93aの特定の記憶領域に記憶される。また、ブイ設定部91bにて設定された「ブイ」が除去対象となることを示す除去対象設定条件情報は、除去対象設定条件情報記憶部93aの他の記憶領域に記憶される。さらに、灯台設定部91cにて設定された「灯台」が除去対象となることを示す除去対象設定条件情報は、除去対象設定条件情報記憶部93aのさらに他の記憶領域に記憶される。さらにまた、浅瀬設定部91dにて設定された「浅瀬」が除去対象となることを示す除去対象設定条件情報は、除去対象設定条件情報記憶部93aのまたさらに他の記憶領域に記憶される。また、ドック設定部91eにて設定された「ドック」が除去対象となることを示す除去対象設定条件情報は、除去対象設定条件情報記憶部93aの他の記憶領域に記憶される。さらに、レーダビーコン設定部91fにて設定された「レーダビーコン」が除去対象となることを示す除去対象設定条件情報は、除去対象設定条件情報記憶部93aのさらに他の記憶領域に記憶される。またさらに、その他の設定部91gにて設定された「その他の設定条件」が除去対象となることを示す除去対象設定条件情報は、除去対象設定条件情報記憶部93aのまたさらに他の記憶領域に記憶される。
【0100】
次に、不要物標除去判定制御部60B内にて処理される各段階において、多角形生成制御処理部63Bによる多角形情報取得要求に基づいて、設定制御部80は、領域形状設定条件情報記憶部93bから多角形の設定条件(サイズや形状など)を取得し、不要物標除去判定制御部60Bに多角形の設定条件を供給するよう制御する。
不要物標除去判定制御部60Bの多角形生成制御処理部63Bは、前記設定条件に基づいて、多角形を生成する。
【0101】
この際、追尾目標周辺領域設定部92の追尾目標周辺領域最適自動設定部92cにて、最適サイズの多角形を自動設定する機能が設定された場合には、最適条件算出部94にて追尾目標周辺領域(多角形)の最適条件(例えば、最適形状、最適サイズなど)を算出し、この最適条件算出部94の算出結果に基づいて、不要物標除去判定部60の多角形生成処理部は、多角形を生成する。
【0102】
最適条件としては、例えば、前記追尾目標の位置が前記レーダ設置位置より離れるに従い前記追尾目標周辺領域の大きさが拡大するように生成することが好ましい。さらには、前記追尾目標周辺領域生成手段としての多角形生成制御処理部63Bは、前記レーダ設置位置を中心とする距離rの位置にある図形の一辺の長さを、レーダが発信する電波の水平ビーム幅2θに対して、2rsinθより長い辺とする追尾目標周辺領域を生成することが好ましい。
【0103】
具体的には、図11に示すように、レーダ設置位置を中心として、中心部領域に形成される第1の多角形T2a、その第1の多角形T2aの形成領域の周囲に形成され前記第1の多角形T2aより大きいサイズの第2の多角形T2b、その第2の多角形T2bの形成領域の周囲に形成され前記第2の多角形T2bより大きいサイズの第3の多角形T2c、その第3の多角形T2cの形成領域の周囲に形成され前記第3の多角形T2cより大きいサイズの第4の多角形T2d、その第4の多角形T2dの形成領域の周囲に形成され前記第4の多角形T2dより大きいサイズの第5の多角形T2e、・・・などが順次生成される。
【0104】
これらの各多角形は、中心から外方に向かうに従いサイズが大きくなる略扇形となるように形成される。また、一つの多角形の4辺のうちのニ辺は、自船位置を中心とする半径r1の円の第1円弧、半径r1より大きい半径r2の円の円弧で第1円弧より長い第2円弧を構成し、他の二辺は、第1円弧及び第2円弧の各端部同士をそれぞれ結線する直線部を構成している。
【0105】
この原理は、レーダの空中線から発信される電波の水平ビーム幅を2θとすると、半径rの位置にある多角形の一辺を、2rsinθ(ビーム幅をθとした場合にはrsinθ)より長い辺の長さと設定することで、レーダーの表示画面上では、1つの点物標でも空中線から発信される電波の水平ビーム幅に等しい横幅を持った映像として表示されるため、これより大きいサイズに設定する必要がある。
【0106】
さらに、レーダの空中線から発信される電波の水平ビーム幅の分だけ映像が横方向に拡大する性質(方位拡大効果)を考慮して多角形のサイズを対応させることが好ましい。この場合には、レーダの空中線から発信される電波の水平ビーム幅を2θとすると、半径rの位置にある多角形の一辺を、方位拡大効果による拡大度がk倍であるとして2krsinθより長い辺の長さと設定することが好ましい。
【0107】
このため、「追尾目標周辺領域生成手段」は、前記レーダ設置位置を中心とする距離rの位置にある図形(追尾目標周辺領域)の少なくとも一辺の長さを、レーダが発信する電波の水平ビーム幅2θに対して、2rsinθより長い辺とする追尾目標周辺領域を生成することができる。言い換えれば、「追尾目標周辺領域生成手段」は、レーダ設置位置(追尾目標を極座標系で示す原点)を中心とする距離rの位置にある前記追尾目標周辺領域の少なくとも一方向の幅領域を、レーダが発信する電波の水平ビーム幅2θに対して、2rsinθより長くした(又は水平ビーム幅θに対して、rsinθより長くした)前記追尾目標周辺領域を生成することができる。このため、包含関係判定制御手段は、前記幅領域を有する前記追尾目標周辺領域にて判定を行うことができる。
【0108】
さらに、多角形生成制御処理部63Bは、演算処理負荷に応じて、多角形の頂点数を増減させたり、円を生成するなど、各種図形を生成するように構成してもよい。
【0109】
図12では、レーダ設置位置の中心部から周辺部に向かうに従い追尾目標周辺領域のサイズが拡大するように形成される点は、前記例と同様であるが、前記周辺部ではサイズが大きくなると判定精度が劣るとの観点から、任意に小サイズ任意形状の追尾目標周辺領域を設定した場合の例を示している。
このように構成することで、多角形の最適サイズを自動生成するモードにおいては、レーダ設置位置の周辺部では、多角形のサイズが大きくなり判定制度が中央部に比して低くなることが考えられるが、多角形を任意のサイズで任意の位置(又はエリア)にて予め設定可能とすることで、レーダ設置位置より比較的離れた遠方のエリアである周辺部での判定制度を向上させることもできる。
【0110】
次に、多角形が生成された後に、包含関係判定制御処理部65Bが判定処理を行う。この際に、除去対象設定条件記憶部93aを参照することによって、除去対象となっているもについて判定の結果、除去処理を行い、除去対象となっていないものについては判定の対象外とする制御を行う。これにより、例えば、ブイなどは除去対象として設定されていると、判定処理が行われ、判定結果に応じて不要な物標として除去されるが、例えばドックなどが除去対象として設定されていないと、判定処理の対象外となり、不要な物標として除去されないように制御される。
【0111】
さらに、以上のような設定を設定可能な設定部の一例である設定画面の例を以下に示す。
【0112】
設定画面には、ARPA機能の演算結果表示部と、船舶詳細情報表示部と、不要物標判定条件表示設定部とが表示形成される。
【0113】
不要物標判定条件表示設定部は、陸地判定におけるマージンなどの第1の判定条件を設定する第1の判定条件設定部、ブイマージンなどの第2の判定条件を設定する第2の判定条件設定部、灯台マージンなどの第3の判定条件を設定する第3の判定条件設定部、その他の種々のマージンを設定する第4の判定条件を設定する第4の判定条件設定部、物標の種類に応じて不要物標として除外するか否かを設定可能な物標種類設定部などが表示形成される。
その他のマージンとしては、例えば、停泊地域、浅瀬、ドック、レーダビーコンなどが挙げられる。
【0114】
ここで、物標種類設定部は、例えば、陸地(からの反射エコー)を不要物標として追尾不要の物標として扱うか、あるいは陸地を追尾可能な物標として扱うかを任意に設定可能に構成されている。例えば、陸地、浅瀬、ブイ、灯台、その他の物標などをチェックボックスによって設定の可否を選択できるように構成することが好ましい。
【0115】
(処理手順について)
次に、上述のような機能を実現するための本例装置の処理手順について、図13を参照しつつ説明する。図13は、多角形の設定並びに除去対象の物標の設定を行う場合の処理を示す例が開示されている。
【0116】
先ず、ステップS201、S202、S203aは、前記第1の実施の形態のステップS101、S120、S103と同様の処理を行う。
【0117】
そして、CPUは、生成された多角形を、特定サイズないしは特定形状に調整する制御処理を行う(ステップS203b)<多角形調整制御処理ステップないしは多角形調整制御処理機能(手段)>。
【0118】
この多角形調整制御処理ステップでは、デフォルトで予め設定されているベースとなる基本図形(設定がなされていない場合ではこの状態の図形で判定が行われる:例えば四角形など)を、追尾目標周辺領域形状設定部92aにて設定された設定形状図形(例えば八角形など)に調整する処理が行われる(設定形状図形調整処理)。
また、この多角形調整制御処理ステップでは、追尾目標周辺領域形状設定部92bにてサイズが設定されている場合には、設定形状図形(例えば八角形)を設定サイズ図形、すなわち設定形状図形の各辺のサイズを調整する処理を行う(設定サイズ図形調整処理)。
【0119】
次に、CPUは、海図データを取得する処理を行う(ステップS204)。
【0120】
さらに、CPUは、除去対象として設定されている物標種類情報を取得する処理を行う(ステップS206)<物標種類情報取得処理ステップないしは物標種類情報取得処理機能(手段)>。
【0121】
この物標種類情報取得処理ステップでは、除去対象設定部91にて除去対象として設定されていない物標の種類(例えばドックなど)、設定されている物標の種類(例えばブイなど)に関する情報を各々取得する。
そして、以降の判定ステップでは、設定されていない物標の種類(例えばドックなど)は、判定の対象外となり、不要物標として除去されないようにする前処理を行う。この前処理によって、ブイなどは不要物標として除去対象となり、以降の判定にて除去されることになる。
【0122】
さらに、上記の条件(除去対象として設定された物標の種類に対してのみ判定処理を行うという条件)のもとで、ステップS207、S208、S209の判定処理が行われる。これらは、前記第1の実施の形態のS107、S108、S109と同様である。また、ステップS210、S211、S212は、前記第1の実施の形態のステップS110、S111、S112と同様に処理が行われる。
【0123】
ここで、上述のステップS203aとステップS203bは、「追尾目標周辺領域生成ステップ」ということができる。この「前記追尾目標周辺領域生成ステップでは、前記追尾目標の位置が、前記追尾目標を極座標系で示す原点(例えばレーダ設置位置)より離れるに従い前記追尾目標周辺領域のサイズが拡大するように生成することができる。
【0124】
また、上述のステップS205、S210、S211は、「包含関係判定制御ステップ」といことができる。この「包含関係判定制御ステップ」では、追尾目標の位置に応じて異なるサイズの各前記追尾目標周辺領域にて各々判定を行うようにすることができる。また、「包含関係判定制御ステップ」では、予め選択設定された種類の不要物標に基づいて、判定制御を行うようにすることができる。さらに、「包含関係判定制御ステップ」では、予め設定されたサイズの追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うようにすることができる。
【0125】
さらに、「追尾目標周辺領域生成ステップ」は、前記レーダ設置位置(追尾目標を極座標系で示す原点)を中心とする距離rの位置にある図形(追尾目標周辺領域)の少なくとも一辺の長さを、レーダが発信する電波の水平ビーム幅2θに対して、2rsinθより長い辺とする追尾目標周辺領域を生成することができる。言い換えると、「追尾目標周辺領域生成ステップ」は、前記追尾目標を極座標系で示す原点を中心とする距離rの位置にある前記追尾目標周辺領域の一方向の幅領域を、レーダが発信する電波の水平ビーム幅2θに対して、2rsinθより長くした(又は水平ビーム幅θに対して、rsinθより長くした)前記追尾目標周辺領域を生成することができる。このため、包含関係判定制御ステップでは、前記幅領域を有する前記追尾目標周辺領域にて判定を行うようにすることができる。
【0126】
また、上述のステップS203bは、「追尾目標周辺領域調整制御ステップ」ということができる。この「追尾目標周辺領域調整制御ステップ」は、前記追尾目標周辺領域を、設定された条件に調整制御することができる。このため、「包含関係判定制御ステップ」は、前記追尾目標周辺領域調整制御ステップにて調整された前記追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うことができる。すなわち、包含関係判定制御ステップは、サイズ調整された前記追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うことができる。また、前記包含関係判定制御ステップは、形状調整された前記追尾目標周辺領域に基づいて、不要物標の判定制御を行うことができる。
【0127】
さらに、上述のステップS206は、「不要物標種類条件情報取得ステップ」といことができる。この「不要物標種類条件情報取得ステップ」は、追尾しない不要物標の種類に関する条件情報を取得することができる。このため、「包含関係判定制御ステップ」は、前記条件情報の不要物標に対して、不要物標の判定を行わない制御を行うことができる。
【0128】
以上のように本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、最適自動設定では、多角形の最適条件(最適サイズ、最適形状)を算出し、この最適条件の多角形に基づいて、不要物標判定を行うことができる。
【0129】
また、多角形の最適サイズ自動設定の場合、レーダ装置の表示画面においては、レーダ設置位置の中心から周辺部に向かうに従い、多角形のサイズが大きくなるが、サイズが大きくなると、判定精度が低くなる可能性が想定される。そこで、追尾目標周辺領域設定部にて、前記周辺部での多角形のサイズなどを適宜設定変更することによって判定精度を高めた状態での不要物標の除去判定を行うことができる。
【0130】
また、除去対象として追尾しない物標を任意に設定可能とすることによって、ユーザが所望する不要物標を選択的に除去することができる。逆に、必要な物標は除去しないようにすることもできる。
【0131】
すなわち、緯度・経度の座標で定義された多角形を判定に用いることにより、もとの地形データに変更を加えることなく(座標変換を行うことなく)、使用されているすべてのデータ型について、単純な図形の重なりを用いて除去判定を行うことが可能である。この際、除去対象を陸地・ブイになどに限定する必要はない。ユーザが除去したいと思う対象を好きに選ぶことができる。選ばれた対象は、その図形的特徴を自動で判断されて、除去判定処理が行われる(例えば、停泊地域、浅瀬、ドック、レーダビーコンなど、地図上で定義されているデータであれば、自由に除去対象として選択することが可能である)。また、例えば、港湾施設に停泊中の船に関しては、追尾対象としないこともできる。
【0132】
その他の構成およびその他のステップ並びにその作用効果については、前述した第1の実施の形態の場合と同一となっている。また、上記の説明において、上述した各ステップの動作内容及び各部の構成要素をプログラム化し、コンピュータに実行させてもよい。
【0133】
[第3の実施の形態]
次に、本発明にかかる第3の実施の形態について、図14及び図15に基づいて説明する。なお、以下には、前記第1の実施の形態の実質的に同様の構成に関しては説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。図15は、本発明の不要追尾目標除去装置の第3の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【0134】
本実施の形態では、図14に示すように、ガードリングを形成し、このガードリング内の不要物標についてのみ追尾しない構成例を示している。
【0135】
具体的には、本実施の形態のレーダ装置1Bは、図15に示すように、前記第1の実施の形態の図1及び図3に示す構成に加え、目標追尾制御部30Bと、不要物標除去判定制御部60Eと、特定領域にガードリングを設定するためのガードリング設定部95aと、ガードリング設定部95aにて設定されたガードリング設定条件情報を記憶するガードリング設定情報記憶部93bと、を含んで構成される。
【0136】
目標追尾制御部30Bは、ガードリング設定情報記憶部93bを参照し、ガードリング設定部95aにて設定された特定範囲内でのみ追尾目標の自動追尾を制御する追尾範囲制御部30B−1を含む。
【0137】
不要物標除去判定制御部60Eは、多角形生成制御処理部63Eと、多角形生成方向制御部68Eと、包含関係判定制御処理部65Eとを含んで構成される。
【0138】
多角形生成方向制御部68Eは、ガードリング設定情報記憶部93aを参照することによって、多角形が生成される範囲を制御し、ガードリングの設定範囲に応じた範囲内のみ多角形を生成するように制御する。
【0139】
多角形生成制御処理部63Eは、多角形生成方向制御部68Eが規定する範囲内にて多角形を生成制御する。
【0140】
包含関係判定制御処理部65Eは、前記ガードリングの設定範囲内の多角形と海図データの海図構成要素との包含関係を判定する。
【0141】
このような機能を実現するためには、包含関係判定制御処理部65Eが、ガードリング設定部95aにて設定された領域に対してのみ、多角形を生成し、包含関係の判定を行い、不要物標を除去する。そして、目標追尾制御部が、ガードリング設定部95aにて設定されたガードリング内の追尾目標のみを追尾するように制御する。
【0142】
以上のように本実施の形態によれば、前記実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、ガードリング外方の領域に対しては、船舶を含む目標追尾を行わない制御を、目標追尾制御部が行うことにより、該外方の領域では不要物標の除去制御を行う必要がない。このため、ガードリング設定時においては、不要物標の除去判定処理をさらに高速化できる。
【0143】
このように、捕捉領域内の目標に対して所定の数までの自動捕捉が可能な全自動捕捉機能を備えた装置に限らず、設定したガードリングをクロスする目標に対してのみ捕捉が実行される半自動捕捉機能を備えた装置にも適用可能である。
【0144】
すなわち、目標船とのDCPAを求め(DCPA算出手段)、この値がある設定値以下になる場合、目標船との再接近時間(Time to Closest Point Approach:TCPA)を求め(再接近時間算出手段)、この値がある設定値以下になる場合、ガードリングを設定し、目標船がこの領域に侵入した場合、ガードリングによって囲まれるガードリング内領域のみ不要物標を削除する構成としてもよい。
【0145】
その他の構成およびその他のステップ並びにその作用効果については、前述した第1の実施の形態の場合と同一となっている。また、上記の説明において、上述した各ステップの動作内容及び各部の構成要素をプログラム化し、コンピュータに実行させてもよい。
【0146】
[第4の実施の形態]
次に、本発明にかかる第4の実施の形態について、図16に基づいて説明する。なお、以下には、前記第1の実施の形態の実質的に同様の構成に関しては説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。図16は、本発明の不要追尾目標除去装置の第4の実施の形態の一例を示すフロ−チャートである。
【0147】
上述した各実施の形態では、一つの追尾目標について、一つの多角形を生成し、包含関係を判定し、前記一つの追尾目標に対しての追尾中止命令などを出力する手順としたが、本実施の形態では、全追尾目標について全多角形を生成し、その後、個々の多角形について包含関係を判定していくという手順としている。
【0148】
具体的には、図16に示すように、本実施の形態の不要追尾目標除去装置の処理手順では、先ず、ステップS501、S502、S503aと前記第1の実施の形態同様の処理を行った後に、次の追尾目標があるか否かの判定処理を行う(ステップS503b)<追尾目標有無判定処理ステップないしは追尾目標有無判定処理機能>。
【0149】
ステップS503bの判定処理において、次の追尾目標があると判定された場合には、ステップS501に戻りステップS501〜ステップS503aを繰り返す。
一方、ステップS503bの判定処理において、次の追尾目標があると判定された場合には、海図データを取得する処理を行う(ステップS504)。この時点で、特定範囲の全エコーデータ(追尾目標)に対応する全多角形が生成される。
【0150】
以降ステップS507〜ステップS510、ステップS511は、前記第1の実施の形態と同様である。
【0151】
そして、次の判定対象があるか否か判定処理を行う(ステップS512)<判定対象有無判定処理ステップないしは判定対象有無判定処理機能>。このステップS512において、次の判定対象があると判定された場合には、ステップS507に戻り、包含関係判定処理を繰り返す。これによって、複数の各多角形について各々包含関係判定処理を一斉に行うことができる。
【0152】
一方、前記ステップS512の判定処理において、次の判定対象がないものと判定された場合には、処理を終了する。
【0153】
以上のように本実施の形態によれば、前記実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、複数の各多角形について各々包含関係判定処理を一斉に行うことができ、処理の高速化を図ることができる。
【0154】
その他の構成およびその他のステップ並びにその作用効果については、前述した第1の実施の形態の場合と同一となっている。
上記の説明において、上述した各ステップの動作内容及び各部の構成要素をプログラム化し、コンピュータに実行させてもよい。
【0155】
[第5の実施の形態]
次に、本発明にかかる第5の実施の形態について説明する。なお、以下には、前記第1の実施の形態の実質的に同様の構成に関しては説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
【0156】
上述の第1の実施の形態では、レーダ装置と不要追尾目標除去装置とが一体的に形成される装置について説明したが、本実施の形態では、レーダ装置と、上述の第1乃至第4のうちいずれかの不要追尾目標除去装置とが同一筐体中になく各々独立分離しており、ネットワークを介して通信可能に接続されている場合の例を開示している。
【0157】
具体的には、本実施の形態のレーダシステムは、レーダ装置と、位置情報取得装置(位置情報取得手段)としてのGNSSと、不要追尾目標除去装置と、を含んで構成されている。
【0158】
レーダ装置は、前記第1の実施の形態のレーダアンテナ、レーダエコー生成部、目標追尾制御部(追尾制御手段)、PPI表示部(表示手段)、前記実施の形態のように除去対象設定部や追尾目標周辺領域設定部などを含む操作部、これらの制御を司る全体制御部などを構成することができる。
【0159】
不要物標除去判定装置は、海図データ格納部を含んで構成される。不要物標除去判定装置内の包含関係判定制御部は、レーダ装置の追尾制御手段に対して各々の包含関係を各々判定する機能を含む。
【0160】
不要追尾目標除去装置は、各前記実施の形態と同様の構成を有して全ての機能を内在し、プログラム制御によって動作し、電子海図データの不要物標を除去する処理に、上述の図形的特徴を利用した判定処理を行う場合であってもよい。ここで、不要追尾目標除去装置は、コンピュータその他無線・有線通信機能を有する情報機器、またはこれに類するコンピュータなどいかなるコンピュータでもよい。また、不要追尾目標除去装置は、種々の画像情報等を表示するための表示手段(スクリーン)、この表示手段の表示画面上にデータを入力するための操作入力手段、各種信号・データを送受信するための通信手段(送受信手段)と、各種プログラム・各種データを記憶しておく記憶手段(例えばメモリ等)と、これらの制御を司る制御手段(例えばCPU等)などを含んで構成してよい。
【0161】
上述のような構成を有するレーダシステムにおいて、概略以下のように動作する。すなわち、レーダ装置にてARPA機能を有効にすると、不要追尾目標除去装置は第1のレーダ装置より追尾目標データを受信する。不要追尾目標除去装置は、GNSSよりレーダ装置の設置位置における位置情報を取得する。不要追尾目標除去装置は、位置情報と追尾目標データとから、前記各実施の形態と同様にして多角形を生成し、海図データ格納部の海図データを参照しつつ、不要な物標を追尾目標の制御対象から除去する判定制御を行う。不要追尾目標除去装置は、判定の結果、不要な物標であると判定された場合には、追尾中止命令をレーダ装置に送信する。
【0162】
レーダ装置は、追尾中止命令を受信すると、追尾中止によって不要な物標に相当する追尾目標が除去され、不要でない物標に相当する追尾目標のみが追尾制御対象として存在する状態が形成される。これによって、ARPA機能に含まれる追尾制御手段は、表示手段に不要な物標の除去された状態の追尾目標の速度ベクトルなどが表示された表示内容を表示させることができる。
【0163】
装置使用者は、レーダ装置に表示された不要な物標の除去された状態の追尾目標の速度ベクトルなどを参照しつつ航行を行う。また、レーダ装置において、ガードリングなどを設定した場合には、前記第3の実施の形態のようにガードリング内のみの不要な物標(追尾制御対象)を除去するように、不要追尾目標除去装置は、制御を切り替えることができる。レーダ装置において、表示画面上のガードリング内に目標船が侵入した場合には、表示画面上の警報情報あるいは他の音声などによって警報を発生させてよい。
【0164】
また、レーダ装置には、前記実施の形態のように除去対象設定部や追尾目標周辺領域設定部を構成することもでき、レーダ装置が不要追尾目標除去装置に対して設定条件データを送信し、不要追尾目標除去装置が該設定条件データをもとに除去判定を行い、不要追尾目標除去装置が判定結果をレーダ装置に対して送信することもできる。
【0165】
このような構成とすることにより、レーダ装置本体に対して、独立して不要物標判定機能を備えた追尾機能を電子海図データと共に提供できる。このため、ARPA機能を備えたレーダ装置を、他の種々のバージョンのレーダ装置や、他のARPA機能を有する装置におきかえることによっても、不要追尾目標除去の機能を実現できる。
【0166】
以上のように本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、異なる機能やバージョンなどのレーダ装置に不要追尾目標除去装置の機能を対応させることが可能となる。
【0167】
その他の構成およびその作用効果については、前述した第1の実施の形態の場合と同一となっている。
【0168】
[第6の実施の形態]
次に、本発明にかかる第6の実施の形態について説明する。なお、以下には、前記第1の実施の形態の実質的に同様の構成に関しては説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
【0169】
本実施の形態では、不要物標除去判定装置と電子海図情報表示装置とが独立して構成される場合の例を示している。
【0170】
具体的には、本実施の形態のレーダシステムは、電子海図情報表示装置と、位置情報取得装置(位置情報取得手段)としてのGNSSと、不要追尾目標除去装置と、オートパイロットと、警報装置と、を含んで構成されている。不要追尾目標除去装置は、海図データ格納部を含む。
【0171】
電子海図情報表示装置は、電子海図データとともに各種機能を表示手段に重畳表示するものであり、プログラム制御によって動作し、海図データ上に、例えば、ARPAターゲット重畳機能(前記実施の形態の追尾制御手段を含む)、物標位置測定機能、レーダ重畳機能などを表示する各種機能を含む。また、電子海図情報表示装置は、オートパイロット(航行操作部)からの指令舵角等の要求に基づいて、航行監視機能を有する。航行監視機能は、選択航路に対する航路監視、自船位置から計画ルートまでのリアルタイムな航行ルートの監視を行う。
【0172】
ここで、電子海図情報表示装置は、コンピュータその他無線・有線通信機能を有する情報機器、またはこれに類するコンピュータなどいかなるコンピュータでもよい。また、電子海図情報表示装置は、種々の画像情報等を表示するための表示手段(スクリーン)、この表示手段の表示画面上にデータを入力するための操作入力手段、各種信号・データを送受信するための通信手段(送受信手段)と、各種プログラム・各種データを記憶しておく記憶手段(例えばメモリ等)と、これらの制御を司る制御手段(例えばCPU等)などを含んで構成される。
【0173】
警報装置は、電子海図情報表示装置にて航路離脱やガードリング(ガードフレーム)へのARPAターゲットの侵入時、CPA、TCPAリミット時などが判断された場合に、電子海図表示装置からの警報要求に基づき、警報を発生させる機能を有する。
【0174】
不要追尾目標除去装置は、各前記実施の形態と同様の構成を有して全ての機能を内在し、プログラム制御によって動作し、電子海図データの不要物標を除去する処理に、上述の図形的特徴を利用した判定処理を行う場合であってもよい。ここで、不要追尾目標除去装置は、コンピュータその他無線・有線通信機能を有する情報機器、またはこれに類するコンピュータなどいかなるコンピュータでもよい。また、不要追尾目標除去装置は、種々の画像情報等を表示するための表示手段(スクリーン)、この表示手段の表示画面上にデータを入力するための操作入力手段、各種信号・データを送受信するための通信手段(送受信手段)と、各種プログラム・各種データを記憶しておく記憶手段(例えばメモリ等)と、これらの制御を司る制御手段(例えばCPU等)などを含んで構成してよい。
【0175】
上述のような構成を有するレーダシステムにおいて、概略以下のように動作する。すなわち、電子海図情報表示装置にてARPAターゲット重畳機能を有効にすると、不要追尾目標除去装置は電子海図情報表示装置より追尾目標データを受信する。不要追尾目標除去装置は、GNSSより電子海図情報表示装置の設置位置における位置情報を取得する。不要追尾目標除去装置は、位置情報と追尾目標データとから、前記各実施の形態と同様にして多角形を生成し、海図データ格納部の海図データを参照しつつ、不要な物標を追尾目標の制御対象から除去する判定制御を行う。不要追尾目標除去装置は、判定の結果、不要な物標であると判定された場合には、追尾中止命令を電子海図情報表示装置に送信する。
【0176】
電子海図情報表示装置は、追尾中止命令を受信すると、追尾中止によって不要な物標に相当する追尾目標が除去され、不要でない物標に相当する追尾目標のみが追尾制御対象として存在する状態が形成される。これによって、ARPA機能に含まれる追尾制御手段は、表示手段に不要な物標の除去された状態の追尾目標の速度ベクトルなどが表示された表示内容を表示させることができる。
【0177】
装置使用者は、電子海図情報表示装置に表示された不要な物標の除去された状態の追尾目標の速度ベクトルなどを参照しつつ、必要に応じてオートパイロットを操作して航行を行う。また、電子海図情報表示装置において、ガードリングなどを設定した場合には、前記第3の実施の形態のようにガードリング内のみの不要な物標(追尾制御対象)を除去するように、不要追尾目標除去装置は、制御を切り替えることができる。電子海図情報表示装置において、表示画面上のガードリング内に目標船が侵入した場合には、警報装置は、表示画面上の警報情報あるいは他の音声などによって警報を発生させる。
【0178】
また、電子海図情報表示装置には、前記実施の形態のように除去対象設定部や追尾目標周辺領域設定部を構成することもでき、電子海図情報表示装置が不要追尾目標除去装置に対して設定条件データを送信し、不要追尾目標除去装置が該設定条件データをもとに除去判定を行い、不要追尾目標除去装置が判定結果を電子海図情報表示装置に対して送信することもできる。さらに、電子海図情報表示装置に、生成された多角形に関する情報を表示可能に構成してもよい(多角形情報表示制御手段)。
【0179】
以上のように本実施の形態によれば、前記実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、レーダ装置以外の他の自動追尾可能な種々の装置に不要追尾目標除去装置の機能を対応させることが可能となる。
【0180】
その他の構成およびその作用効果については、前述した第1の実施の形態の場合と同一となっている。
【0181】
(各種変形例)
また、本発明にかかる装置及び方法は、そのいくつかの特定の実施の形態に従って説明してきたが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく本発明の本文に記述した実施の形態に対して種々の変形が可能である。
例えば、上述の各実施の形態では、ARPA機能を備えたレーダ装置を例に説明したが、これに限らず、ARPA装置であってもよいし、APRA機能及びATA機能を備えたレーダ装置であってもよい。
【0182】
さらに、ARPA機能を備えたレーダ装置と、該レーダ装置とネットワークを介して通信可能に形成された電子海図情報表示装置、ブリッジモニタ、オートパイロット(自動航行)、ジャイロコンパス、GPS航法装置、ドプラスピードログなどを含むレーダシステムとして構成してもよい。
【0183】
ここにいう「システム」或いは前記実施の形態における「システム」とは、複数の装置が論理的に集合した物をいい、各構成の装置が同一筐体中にあるか否かは問わない。このため、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0184】
さらに、「物標」には、灯台(灯色、灯質、周期)、灯標、灯柱、灯浮標、無線標識局、レーダ局、ロラン局などの物標や、サンドウェーブ、魚礁、土砂捨場、湾岸道路、湾岸鉄道、湾岸架空船、湾岸橋など沿岸付近のもの、湾岸煙突、湾岸塔、湾岸タンクなどの湾岸施設などの物標などを含んでよい。
【0185】
また、「追尾目標周辺領域」としては、凸多角形や凹多角形などの多角形に限らず、扇形などの複数の辺のうちいずれかの辺又は辺の一部が曲線であるものを含む。さらに、図形は、例えば円で形成した方が正確に判定されるので円の方が好ましい。また、多角形は、領域面積を少なくすることによって処理を高速化することができる。
【0186】
「不要物標除去判定装置」は、レーダ装置の機能として含むことができる他、自動追尾シィミュレータ装置ないしは航行シミュレータ装置(不要物標除去シミュレート手段)の機能としても含めることができる。
【0187】
さらに、レーダの回転によるレーダエコーのスキャンと、「多角形生成方向スキャン」(多角形を全方位に亘って生成するための処理)とは各々独立して実行処理されてもよい。例えば、レーダエコーのk回分のスキャンにつき、多角形生成のスキャンを1回行うなどでもよい。この場合、レーダエコー情報を記憶部に順次格納しておき、当該記憶部のレーダエコー情報を多角形生成処理部及び不要物標除去判定制御部が特定時間毎に取得すればよい。
【0188】
また、目標追尾部の観測データを取得する時間間隔と、多角形を生成する時間間隔とは異なるように形成してもよい。さらに、自船の移動に従い、第1の期間にて生成される第1多角形(又は第1判定基準)と、前記第1の期間の後の第2の期間にて生成される第2の多角形(又は第2判定基準)とは各々異なるように形成してもよい。これにより、自船の移動に従い自船の周囲の環境条件が変化するが、この環境条件の変化に応じて、多角形の生成条件・除去判定対象となる物標の条件などを変更制御することで、環境条件に適合した最適制御が可能となる。
【0189】
さらに、追尾目標周辺領域生成手段により生成された追尾目標周辺領域内に複数種の物標(点・線・面)を有する場合に、その領域で判定除去ステップを繰り返して、物標を除去する場合に限らず、1回目の「多角形生成方向スキャン」によって、通常の除去判定を行い、それによってもなお除去されなかった領域の物標を2回目の「多角形生成方向スキャン」によって該物標を除去するようにしてもよい。すなわち、特定時間単位にて複数回の「多角形生成方向スキャン」を繰り返すことによって前記特定時間単位でのレーダエコー情報に基づく不要物標を除去するようにしてもよい。
【0190】
また、追尾目標周辺領域生成手段の一例である多角形生成処理部は、(レーダ設置位置を中心とする)一の特定領域に対しては、第1の多角形を生成し、前記一の特定領域と異なる他の特定領域に対しては、前記第1の多角形と異なる第2の多角形を生成するようにしてもよい。
【0191】
複数の多角形が特定数集まった多角形マクロ単位で、判定処理回数を異なるように構成してもよい。
【0192】
追尾目標周辺領域は、追尾目標の位置情報を中心として生成する場合に限らず、位置情報を基点として生成する場合であってよい。基点には、生成された周辺領域の偏心位置であってもよいし、多角形などの図形を含む周辺領域の重心であってもよい。また、複数の基点(例えば楕円における2焦点)をもとに周辺領域を生成してもよい。この際、追尾目標の位置情報は、いずれかの基点でもよいし、複数の基点の中点でもよい。さらに、図形には、一部が種々の関数が含まれてもよい。関数には、例えば双曲線関数などを含んでよい。
【0193】
追尾目標周辺領域の設定条件(図形のサイズや形状など)は、各領域に応じて各々独立して異なる条件で設定できるようにしてもよい(追尾目標周辺領域範囲設定部)。
【0194】
さらに、レーダアンテナ10、レーダエコーデータ生成部20、及び目標追尾制御部30は、レーダ設置位置を基点とする追尾目標の追尾目標距離情報、及び追尾目標の追尾目標方位情報を取得する追尾目標情報取得手段ということもできる。
【0195】
また、海図データ記憶手段には、電子海図上の物標の位置を示す物標位置情報と、前記物標の属性を示す物標属性情報とを対応付けて記憶することができる。
【0196】
さらに、海図データ格納部の海図データは、以下に示すように構成される。すなわち、海図データは、3つの構造、すなわち、点データ、線データ、面データに分けられる。点データは、領域の面積が一つのものである。線データは、縦方向又は横方向への直線構造を持つものである。面データは、点データ、線データ以外の全てのデータである。点データは、座標値(x、y)に指定された色のデータである。線データは、座標(x1、y1)から(x2、y2)までの間を指定された色で塗りつぶされて形成される。面データは、座標(x1、y1)から(xn、yn)の座標で囲まれた領域を指定された色で塗りつぶされて形成される。このようにして海図データが構成されている。
【0197】
また、包含関係判定ステップにて、第1ないし第3判定処理ステップを行う前に、以下の処理を行ってもよい。すなわち、電子海図データなどの電子図データを参照し、追尾対象の緯度・経度に対応する箇所にて船舶以外の物標の有無を確認する。すなわち、レーダにて測定された追尾対象の物標が、船舶以外のデータを示す情報(例えば属性情報)として存在するか否か判定する処理を行う<物標判定処理ステップないしは物標判定処理機能>。この物標判定処理ステップにて、レーダにて測定された追尾対象の物標が、船舶以外のデータを示す情報として海図データにないと判定された場合(船舶であると判定された場合)には、追尾開始命令(ないしは追尾継続命令)を、目標追尾制御部30に対して出力する処理を行う<追尾開始命令出力処理ステップないしは追尾開始命令出力処理機能>。一方、物標判定処理ステップにて、レーダにて測定された追尾対象の物標が、船舶以外のデータを示す情報として海図データにあると判定された場合(船舶でないと判定された場合)には、以降の各判定処理を行う。
【0198】
さらに、レーダシステムの各装置を通信可能とするネットワークにおける「通信」では、無線通信および有線通信は勿論、無線通信と有線通信とが混在した通信、即ち、ある区間では無線通信が行われ、他の区間では有線通信が行われるようなものであってもよい。さらに、ある装置から他の装置への通信が有線通信で行われ、他の装置からある装置への通信が無線通信で行われるようなものであってもよい。
【0199】
さらに、ネットワークは、TCP・IPプロトコルの他、種々の通信プロトコルを用いたネットワークあるいはソフトウエア的に構築された仮想ネットワークやこれに類するあらゆるネットワークを含むネットワークなどいかなる通信プロトコルであってもよく、他のネットワークと接続されたシステムであってもよい。
【0200】
また、レーダ装置と不要物標除去装置との間の通信構造、或いは、位置情報取得装置と不要物標除去装置との間の通信構造に際し、いずれか一方又は双方に形成されるインタフェースの種類は、例えばLAN等のネットワークやその他これに類するもの、もしくは今後開発される如何なるインタフェースであっても構わない。
【0201】
船舶用レーダなどのレーダ装置に限らず、港湾陸上レーダなどのレーダ装置であってもよい。
【0202】
また、本明細書において、フローチャートに示されるステップは、記載された手順に従って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。さらに、実装の必要に応じて、本明細書で説明した特定の手順(ステップ)を、組み合わされた手順(ステップ)として実装、除去、追加、または再配置することができる。
【0203】
さらに、不要追尾目標除去装置、レーダ装置、レーダシステムなどの各手段、各機能、各ステップの手順の機能などのプログラムの機能を、専用のハードウエア(例えば専用の半導体回路等)によりその機能を達成してもよく、プログラムの全機能のうち一部の機能をハードウエアで処理し、全機能のうちさらに他の機能をソフトウエアで処理するようにしてもよい。専用のハードウエアの場合、各部を集積回路例えばLSIにて形成されてもよい。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部または全部を含むように1チップ化されても良い。また、LSIには、ストリーミングエンジンなど他の機能ブロックが含まれていても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【0204】
さらに、追尾目標周辺領域を生成し、図形的特徴によって不要物標を除去する手法は、必ずしも実体のある装置に限られる必要はなく、その方法としても機能することは容易に理解できる。このため、方法にかかる発明も、必ずしも実体のある装置に限らず、その方法としても有効であることに相違はない。この場合、方法を実現するための一例として不要追尾除去装置や自動追尾装置、レーダ装置、ARPA装置、電子海図情報表示装置なども含めることができる。
【0205】
ところで、このような不要追尾目標除去装置は、単独で存在する場合もあるし、ある機器(例えばレーダ装置)に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。発明の思想の具現化例として不要追尾目標除去装置のソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアを記憶した記憶媒体上においても当然に存在し、利用されるといわざるをえない。
【0206】
さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記憶媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。本発明をソフトウェアで実現する場合、ハードウェアやオペレーティングシステムを利用する構成とすることも可能であるし、これらと切り離して実現することもできる。
実現方法は、オペレーティングシステムにおける所定の関数を呼び出して処理することも可能であれば、このような関数を呼び出すことなくハードウェアから入力することも可能である。そして、オペレーティングシステムの介在のもとで実現するとしても、プログラムが媒体に記録されて流通される過程においては、このプログラムだけで本発明を実施できるものと理解することができる。
【0207】
さらに、上記各実施の形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。つまり、上述の各実施の形態同士、あるいはそれらのいずれかと各変形例のいずれかとの組み合わせによる例をも含む。この場合において、本実施形態において特に記載しなくとも、各実施の形態及びそれらの変形例に開示した各構成から自明な作用効果については、当然のことながら実施の形態の作用効果として含めることができる。逆に、本実施の形態に記載されたすべての作用効果を奏することのできる構成が、本発明の本質的特徴部分の必須構成要件であるとは限らない。また、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除された構成による実施の形態並びにその構成に基づく技術的範囲も発明になりうる。
【0208】
そして、各実施の形態及びそれらの変形例を含むこれまでの記述は、本発明の理解を容易にするために、本発明の多様な実施の形態のうちの一例の開示、すなわち、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、例証するものであり、制限するものではなく、適宜変形及び/又は変更が可能である。本発明は、その技術思想、またはその主要な特徴に基づいて、様々な形で実施することができ、各実施の形態及びその変形例によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
従って、上記に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物を含む趣旨である。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明は、レーダ装置やレーダシステムなどの製造業や、コンピュータ産業に適用可能であり、必ずしも特定の基準に準拠していない可能性のあるコンピュータソフトウェアアプリケーションにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】本発明の第1の実施の形態による不要追尾目標除去装置を含むレータ装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の不要追尾目標除去装置の不要物標除去判定部の詳細構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による不要追尾目標除去装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1の不要追尾目標除去装置の不要物標除去に関する処理を物標を用いて説明するための説明図である。
【図5】図1の不要追尾目標除去装置の不要物標除去に関する処理を物標を用いて説明するための説明図である。
【図6】図1の不要追尾目標除去装置の不要物標除去に関する処理を物標を用いて説明するための説明図である。
【図7】図1の不要追尾目標除去装置の不要物標除去に関する処理を物標を用いて説明するための説明図であって、同図(A)は、追尾目標周辺領域と点データとの包含関係の判定を説明する説明図、同図(B)は、追尾目標周辺領域と線データとの包含関係の判定を説明する説明図、同図(C)は、追尾目標周辺領域と面データとの包含関係の判定を説明する図である。
【図8】図1の不要追尾目標除去装置の不要物標除去に関する処理を物標を用いて説明するための説明図である。
【図9】図1の不要追尾目標除去装置の不要物標除去に関する処理を物標を用いて説明するための説明図であって、不要物標が除去されない状態の比較例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態による不要追尾目標除去装置の一部の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】本発明の不要追尾目標除去装置において、追尾目標周辺領域の具体例を示す説明図であって、特に、追尾目標周辺領域の配列を示す図である。
【図12】本発明の不要追尾目標除去装置において、追尾目標周辺領域の具体例を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態による不要追尾目標除去装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施の形態による不要追尾目標除去装置の不要物標除去に関する処理を物標を用いて説明するための説明図であって、特に、ガードリング内に追尾目標周辺領域が生成される場合を示す。
【図15】本発明の第3の実施の形態による不要追尾目標除去装置を含むレーダ装置の一部の構成の一例を示すブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態による不要追尾目標除去装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0211】
1 レーダ装置
3A 不要追尾目標除去装置
10 レーダーアンテナ
20 レーダーエコー生成部
30 目標追尾制御部(追尾制御手段)
40 海図データ格納部(海図データ記憶手段)
50 位置情報取得部
60 不要物標除去判定制御部
61 距離・方位情報受付処理部
62 緯度・経度算出処理部(追尾目標位置情報算出手段)
63 多角形生成処理部(追尾目標周辺領域生成手段)
64 海図データ取得部
65 包含関係判定処理部
66a 第1判定処理部
66b 第2判定処理部
66c 第3判定処理部
67a 追尾中止命令出力処理部
67b 追尾開始命令出力処理部
68 多角形生成方向制御部
69 実行手順制御部
70 PPI表示部(表示手段)
100、200、300 レーダシステム
110 レーダ装置
120 GNSS(位置情報取得部)
130 不要追尾目標除去装置
130a 海図データ格納部(海図データ記憶手段)
S102 追尾目標位置情報算出ステップ
S103 追尾目標周辺領域生成ステップ
S105 包含関係判定処理ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ機能に基づいて追尾目標を自動追尾する追尾制御手段に対し、不要な追尾目標を制御対象から除去する制御処理を行う不要追尾目標除去装置であって、
前記追尾制御手段より通知される前記追尾目標の追尾目標距離情報及び追尾目標方位情報とレーダ設置位置の緯度・経度情報とに基づいて、前記追尾目標の緯度・経度に関する位置情報を算出する追尾目標位置情報算出手段と、
前記追尾目標位置情報算出手段にて算出された追尾目標位置を基点とする周辺領域を示す追尾目標周辺領域を生成する追尾目標周辺領域生成手段と、
前記追尾目標の位置に対応する電子図データの図形構成要素の特徴をもとに、前記図形構成要素と前記追尾目標周辺領域との包含関係により前記追尾目標が不要な物標であるか否かを判定し、不要な前記物標であると判定された場合に、前記追尾制御手段に対して追尾中止命令を出力する制御処理を行う包含関係判定制御手段と、
を含むことを特徴とする不要追尾目標除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不要追尾目標除去装置において、
前記追尾目標周辺領域生成手段は、
前記追尾目標の位置が前記レーダ設置位置より離れるに従い前記追尾目標周辺領域のサイズが拡大するように生成し、
前記包含関係判定制御手段は、
前記追尾目標の位置に応じて異なるサイズの各前記追尾目標周辺領域にて各々判定を行うこと
を特徴とする不要追尾目標除去装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の不要追尾目標除去装置において、
前記包含関係判定制御手段は、
前記追尾目標周辺領域が、前記図形構成要素を構成する点データを含むか否かを判定する第1判定手段と、
前記追尾目標周辺領域が、前記図形構成要素を構成する線データと交差するか否かを判定する第2判定手段と、
前記追尾目標周辺領域が、前記図形構成要素を構成する面データと重なり合うか否かを判定する第3判定手段と、
を含むことを特徴とする不要追尾目標除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−47550(P2009−47550A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213934(P2007−213934)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】