説明

不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類を含む組成物

不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類を含むペトロラタム類似組成物が開示される。不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類を含むエマルジョンも開示される。ペトロラタム類似組成物は、石油ベースのペトロラタムの代替物として使用することができる。エマルジョンは、油中水型または水中油型エマルジョンであることができ、様々な最終用途に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、その開示内容が参照により本明細書に援用される、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類を含む組成物(COMPOSITIONS COMPRISING METATHESIZED UNSATURATED POLYOL ESTERS)というタイトルの2006年3月7日に出願された米国仮特許出願第60/780,125号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
石油ベースのペトロラタムおよびワックス組成物はよく知られており、例えば、クリーム、ローション、ヘア製品、化粧品、蝋燭、軟膏、潤滑剤、接着剤、およびコーティングなどの様々な用途で一般に使用されている。石油の再生不可能な性質を考慮して、石油から従来生成されているペトロラタムまたはワックスなどの材料の非石油代替物を提供することが非常に望ましい。
【特許文献1】米国特許第7,102,047号明細書
【特許文献2】米国特許第6,794,534号明細書
【特許文献3】米国特許第6,696,597号明細書
【特許文献4】米国特許第6,414,097号明細書
【特許文献5】米国特許第6,306,988号明細書
【特許文献6】米国特許第5,922,863号明細書
【特許文献7】米国特許第5,750,815号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開2007/0004917A1号明細書
【特許文献9】米国特許第3,351,566号明細書
【特許文献10】欧州特許第0 168 091号明細書
【特許文献11】欧州特許第0 167 201号明細書
【特許文献12】米国特許第6,846,772号明細書
【特許文献13】米国特許第4,490,480号明細書
【非特許文献1】Chemical & Engineering News;2007年2月12日、37−47頁
【非特許文献2】Bailey,A.E.;Baileys Industrial Oil and Fat Products(第11章);第2巻:Edible Oil & Fat Products:Oils and Oil Seeds;第5版(1996年)Y.H.ホイ(Y.H.Hui)編(ISBN 0−471−59426−1)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本発明は、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類を含むペトロラタム類似組成物を提供する。多くの実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、室温で粘性を有する半固体であり、多くの実施形態では、例えばコーン貫入(cone penetration)(ASTM D−937)、凝固点(ASTM D−938)、滴下融点(drop melt point)(ASTM D−127)、および粘度(ASTM D−445/D−2161)など、石油由来ペトロラタム組成物と同様な特性を示す。
【0004】
一部の実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、所望のペトロラタム類似特性をそれ自体が示し、かつペトロラタム類似材料としてそれ自体で(または他の微量の成分を添加して)使用することができる、水素化された(すなわち、完全および部分水素化を含む)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含む。さらに、一部の実施形態では、ペトロラタム類似組成物は、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物から本質的になるか、または水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物からなる。一般に、ポリオールエステルメタセシス反応生成物の水素化度(例えば、ヨウ素価(IV)により測定される)およびオリゴマー化度は、ペトロラタム類似特性を有する水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が得られるように制御される。
【0005】
一部の実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、(a)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物;(b)ポリオールエステルを含む。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、水素化されている。ペトロラタム類似組成物の特性は、例えば以下の:(a)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物の水素化度;(b)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物のオリゴマー化度;(c)ポリオールエステルの水素化度;および/または(d)組成物における成分(i)と成分(ii)の相対量のうちの1つまたは複数を変化させることによって制御することができる。
【0006】
一部の実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、植物油メタセシス反応生成物、例えば、ダイズ油メタセシス反応生成物、カノーラ油メタセシス反応生成物、ナタネ油メタセシス反応生成物、ヤシ油メタセシス反応生成物、トウモロコシ油メタセシス反応生成物、綿実油メタセシス反応生成物、オリーブ油メタセシス反応生成物、パーム油メタセシス反応生成物、ラッカセイ油メタセシス反応生成物、サフラワー油メタセシス反応生成物、ゴマ油メタセシス反応生成物、ヒマワリ油メタセシス反応生成物、アマニ油メタセシス反応生成物、パーム核油メタセシス反応生成物、キリ油メタセシス反応生成物、およびヒマシ油メタセシス反応生成物である。他の実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、動物油脂メタセシス反応生成物、例えば、ラードメタセシス反応生成物、獣脂メタセシス反応生成物、鶏脂メタセシス反応生成物(すなわち、イエローグリース)、および魚油メタセシス反応生成物である。上述のエステルの混合物も有用である。
【0007】
例示的な実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は水素化されている(すなわち、完全および一部水素化を含む)。代表的な例としては、水素化植物油メタセシス反応生成物、例えば、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物、水素化カノーラ油メタセシス反応生成物、水素化ナタネ油メタセシス反応生成物、水素化ヤシ油メタセシス反応生成物、水素化トウモロコシ油メタセシス反応生成物、水素化綿実油メタセシス反応生成物、水素化オリーブ油メタセシス反応生成物、水素化パーム油メタセシス反応生成物、水素化ラッカセイ油メタセシス反応生成物、水素化サフラワー油メタセシス反応生成物、水素化ゴマ油メタセシス反応生成物、水素化ヒマワリ油メタセシス反応生成物、水素化アマニ油メタセシス反応生成物、水素化パーム核油メタセシス反応生成物、水素化キリ油メタセシス反応生成物、水素化ヒマシ油メタセシス反応生成物、水素化ラードメタセシス反応生成物、水素化獣脂メタセシス反応生成物、水素化鶏脂メタセシス反応生成物(イエローグリース)、および水素化魚油メタセシス反応生成物が挙げられる。上述のエステルの混合物も有用である。
【0008】
多くの実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物または水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、メタセシス反応生成単量体、メタセシス反応生成二量体、メタセシス反応生成三量体、メタセシス反応生成四量体、メタセシス反応生成五量体、および反応生成六量体以上のメタセシス反応生成オリゴマーのうちの1つまたは複数を含む。一般に、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物または水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、メタセシス反応生成単量体、メタセシス反応生成二量体、メタセシス反応生成三量体、メタセシス反応生成四量体、メタセシス反応生成五量体、および六量体以上のメタセシス反応生成オリゴマーの混合物を含む。
【0009】
多くの実施形態において、ペトロラタム類似組成物のポリオールエステル成分は、植物油、藻油、または動物油脂などの天然油を含む。植物油の例としては、カノーラ油、ナタネ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ラッカセイ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、キリ油、ヒマシ油等が挙げられる。混合物も有用である。その植物油は、部分水素化された油、脱ろうされた油、または部分水素化され脱ろうされた油であってもよい。例示的な実施形態において、植物油は、精製、脱色、および脱臭(RBD)ダイズ油である。
【0010】
多くの実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物または水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、約50重量%以下、例えば約40重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、または約10重量%以下の量でペトロラタム類似組成物中に存在する。例示的な実施形態では、ペトロラタム類似組成物は、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物を約30重量%以下、精製、脱色、および脱臭(すなわち、RBD)ダイズ油を約70重量%以上含有する。他の例示的な実施形態では、ペトロラタム類似組成物は、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物約5重量%〜約25重量%、ダイズ油約75重量%〜約95重量%を含有する。
【0011】
一部の実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な77°F(25℃)でのコーン貫入(ASTM D−937)を有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、77°F(25℃)でのコーン貫入約100dmm〜約300dmmを有する。例示的な実施形態において、組成物は、77°F(25℃)でのコーン貫入約150dmm〜約160dmmを有する。
【0012】
一部の実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な凝固点(ASTM D938)を有する。例えば、一部の実施形態において、組成物は、約100°F〜約140°F(37.8℃〜60℃)の凝固点を有する。例示的な実施形態において、組成物は、約105°F〜約135°F(40.6℃〜57.2℃)の凝固点を有する。
【0013】
一部の実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な滴下融点(ASTM D−127)を有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、約100°F〜約150°F(37.8℃〜65.6℃)の滴下融点を有する。
【0014】
一部の実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な210°Fでの粘度(ASTM D−445およびD−2161)を有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、100SUS以下、さらに一般的には約40SUS〜約90SUS、または約55〜約80SUSの動粘度を有する。
【0015】
本発明のペトロラタム類似組成物は、例えば、石油由来ペトロラタム組成物の代替物として使用される。一般的な用途の代表的な例としては、パーソナルケア製品(例えば、化粧品、リップクリーム、口紅、ハンドクリーナー、整髪料、軟膏、紫外線ケア製品、モイスチャーライザー、薬剤軟膏、芳香スティック(fragrance stick)、および香料担体);プラスチック類(例えば、PVC用の加工助剤);食品(例えば、チーズコーティング、ベーキング用グリース);電気通信(例えば、ケーブル充填またはフラッディングコンパウンド(flooding compound));工業用途(例えば、粉塵抑制剤、錆び止めコーティング、接着剤、便器のリング、ボーンガード、および織物被覆)が挙げられる。
【0016】
他の態様において、本発明は、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類を含むエマルジョンを提供する。不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、水素化、例えば、完全または部分水素化エステルであることができる。エマルジョンは、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンであることができる。エマルジョンの油相は、ペトロラタム類似特性を有するか、またはワックスメタセシス反応生成物であることができる。一部の実施形態において、水中油型エマルジョンは:(a)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含有する分散相;(b)水を含有する連続相を含む。他の実施形態において、水中油型エマルジョンは:(a)(i)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物と(ii)ポリオールエステルとの混合物を含有する分散相;(b)水を含有する連続相を含む。
【0017】
本発明のエマルジョンは、例えば、石油由来ワックスエマルジョンの代替物として使用される。本発明のエマルジョンの用途の代表的な例としては、建築材料(例えば、配向性ストランドボード(OSB)または中密度ファイバーボード用のコーティング、木材コーティング);金属コーティング(例えば、缶のスリップコーティング、コイルコーティング);ダンボール板紙コーティング;インク(例えば、水性インクにおける耐摩擦性または耐擦り傷性を改善するための添加剤);ガラス繊維(例えば、粘着防止剤または潤滑剤);成形ラテックス物品(例えば、手袋またはコンドーム用の離型剤);織物(例えば、のり剤または糸の潤滑剤);床仕上げ塗装(例えば、耐摩擦性を付与する添加剤);可撓性フィルム(例えば、加工助剤);コーティング(例えば、デッキステインまたはウッドワニスに撥水性を付与するため);果物/野菜のコーティング(例えば、保湿バリアコーティングとして);化粧品およびパーソナルケア製品(例えば、モイスチャーライザーまたは保湿バリアコーティングとしてのフェース、ハンドおよびボディーローション/クリーム、リップケア製品、ヘアケア製品)が挙げられる。
【0018】
本発明は、添付の図面と関連してさらに説明され、パーツ等を示すために参照番号等が使用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物:
本発明のペトロラタム類似組成物およびエマルジョンは、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含む。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、水素化、例えば、部分または完全水素化されている。
【0020】
不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物とは、1つまたは複数の不飽和ポリオールエステル成分がメタセシス反応に供された場合に得られる生成物を意味する。メタセシス反応は、炭素間二重結合の形成および切断による、1つまたは複数の二重結合を含有する化合物(すなわち、オレフィン化合物)間でのアルキリデン単位の相互交換を伴う触媒反応である。メタセシス反応は、同じ2つの分子間で起こり(セルフメタセシスと呼ばれることが多い)、および/または異なる2つの分子間で起こる(クロスメタセシスと呼ばれることが多い)。セルフメタセシスは、模式的に式Iのように示される。
−CH=CH−R+R−CH=CH−R←→
−CH=CH−R+R−CH=CH−R
(I)
式中、RおよびRは有機基である。
【0021】
クロスメタセシスは、模式的に式IIのように示される。
−CH=CH−R+R−CH=CH−R←→
−CH=CH−R+R−CH=CH−R+R−CH=CH−R+R−CH=CH−R
+R−CH=CH−R+R−CH=CH−R+R−CH=CH−R+R−CH=CH−R
(II)
式中、R、R、R、およびRは有機基である。
【0022】
不飽和ポリオールエステルが、2つ以上の炭素間二重結合を有する分子を含む場合(すなわち、多価不飽和ポリオールエステル)、セルフメタセシス反応の結果、不飽和ポリオールエステルのオリゴマー化が起こる。セルフメタセシス反応の結果、メタセシス反応生成二量体、メタセシス反応生成三量体、およびメタセシス反応生成四量体が形成される。メタセシス反応生成五量体およびメタセシス反応生成六量体などのより高次のメタセシス反応生成オリゴマーもまた、引き続きのセルフメタセシス反応によって形成される。
【0023】
出発原料として、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類は、1種または複数種の不飽和ポリオールエステル類から調製される。本明細書で使用される、「不飽和ポリオールエステル」という用語は、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であって、そのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つがエステルの形をとり、かつそのエステルが、少なくとも1つの炭素間二重結合を含有する有機基を有する、化合物を意味する。多くの実施形態において、不飽和ポリオールエステルは、一般構造(I):
【化1】

によって表すことができる。
【0024】
本発明の多くの実施形態において、不飽和ポリオールエステルは、グリセロールの不飽和ポリオールエステルである。グリセロールの不飽和ポリオールエステルは、一般構造(II):
【化2】

を有する。
【0025】
構造(II)において、−X、−Yまたは−Zのうちの少なくとも1つは、−(O−C(=O)−R’)である。
【0026】
一部の実施形態において、R’は、炭素原子約50個以下(例えば、炭素原子約36個以下または炭素原子約26個以下)およびその鎖に少なくとも1つの炭素間二重結合を有する、直鎖または分枝鎖炭化水素である。一部の実施形態では、R’は、炭素原子約6個以上(例えば、炭素原子約10個以上または炭素原子約12個以上)およびその鎖に少なくとも1つの炭素間二重結合を有する、直鎖または分枝鎖炭化水素である。一部の実施形態では、R’は、その鎖に2つ以上の炭素間二重結合を有する。他の実施形態では、R’は、その鎖に3つ以上の二重結合を有する。例示的な実施形態において、R’は、その鎖に炭素原子17個および炭素間二重結合1〜3個を有する。R’の代表的な例としては:
−(CHCH=CH−(CH−CH
−(CHCH=CH−CH−CH=CH−(CH−CH;および
−(CHCH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH
が挙げられる。
【0027】
一部の実施形態において、R”は、炭素原子約50個以下(例えば、炭素原子約36個以下または炭素原子約26個以下)を有する飽和直鎖または分枝鎖炭化水素である。一部の実施形態では、R”は、炭素原子約6個以上(例えば、炭素原子約10個以上または炭素原子約12個以上)を有する飽和直鎖または分枝鎖炭化水素である。例示的な実施形態において、R”は、炭素原子15個または炭素原子17個を有する。
【0028】
グリセロールの不飽和ポリオールエステル類の原料としては、合成油、天然油(例えば、植物油、藻油、および動物油脂)、これらの組み合わせ等が挙げられる。植物油の代表的な例としては、カノーラ油、ナタネ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ラッカセイ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、キリ油、ヒマシ油、これらの組み合わせ等が挙げられる。動物油脂の代表的な例としては、ラード、獣脂、鶏脂、イエローグリース、魚油、これらの組み合わせ等が挙げられる。合成油の代表的な例としては、木材パルプ製造の副生成物である、トール油が挙げられる。
【0029】
例示的な実施形態において、植物油は、ダイズ油、例えば、精製、脱色、および脱臭ダイズ油(すなわち、RBDダイズ油)である。ダイズ油は、一般に脂肪酸のトリグリセリドを約95重量%以上含有する、グリセロールの不飽和ポリオールエステルである。ダイズ油のポリオールエステルにおける主要な脂肪酸としては、飽和脂肪酸、例えば、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)およびステアリン酸(オクタデカン酸)、および不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸(9−オクタデセン酸)、リノール酸(9,12−オクタデカジエン酸)、およびリノレン酸(9,12,15−オクタデカトリエン酸)が挙げられる。ダイズ油は、そのトリグリセリド分子の多くが少なくとも2つの不飽和脂肪酸を有する(すなわち、多価不飽和トリグリセリド)高度不飽和植物油である。
【0030】
例示的な実施形態において、不飽和ポリオールエステルは、メタセシス触媒の存在下でセルフメタセシスされ、メタセシス反応生成組成物が形成される。多くの実施形態において、メタセシス反応生成組成物は:メタセシス反応生成単量体、メタセシス反応生成二量体、メタセシス反応生成三量体、メタセシス反応生成四量体、メタセシス反応生成五量体、および六量体以上のメタセシス反応生成オリゴマー(例えば、メタセシス反応生成六量体)のうちの1つまたは複数を含む。メタセシス反応生成二量体とは、2つの不飽和ポリオールエステル分子が、セルフメタセシス反応によって互いに共有結合した場合に形成される化合物を意味する。多くの実施形態において、メタセシス反応生成二量体の分子量は、二量体を形成する、個々の不飽和ポリオールエステル分子の分子量を超える。メタセシス反応生成三量体とは、メタセシス反応によって3つの不飽和ポリオールエステル分子が互いに共有結合した場合に形成される化合物を意味する。多くの実施形態において、メタセシス反応生成三量体は、メタセシス反応生成二量体と不飽和ポリオールエステルとのクロスメタセシスによって形成される。メタセシス反応生成四量体とは、メタセシス反応によって、4つの不飽和ポリオールエステル分子が互いに共有結合した場合に形成される化合物を意味する。多くの実施形態において、メタセシス反応生成四量体は、メタセシス反応生成三量体と不飽和ポリオールエステルとのクロスメタセシスによって形成される。例えば、2つのメタセシス反応生成二量体のクロスメタセシスによって、メタセシス反応生成四量体も形成することができる。より高次のメタセシス反応生成物も形成することができる。例えば、メタセシス反応生成五量体およびメタセシス反応生成六量体も形成することができる。
【0031】
例示的なメタセシス反応スキームを図1〜1Bに示す。図1に示すように、トリグリセリド30およびトリグリセリド32は、メタセシス触媒34の存在下でセルフメタセシスされ、メタセシス反応生成二量体36および内部オレフィン38が形成される。図1Aに示すように、メタセシス反応生成二量体36はさらに、もう1つのトリグリセリド分子30と反応し、メタセシス反応生成三量体40および内部オレフィン42を形成する。図1Bに示すように、メタセシス反応生成三量体40はさらに、もう1つのトリグリセリド分子30と反応し、メタセシス反応生成四量体44および内部オレフィン46を形成する。このようにして、セルフメタセシスの結果、メタセシス反応生成単量体、メタセシス反応生成二量体、メタセシス反応生成三量体、メタセシス反応生成四量体、およびより高次のメタセシス反応生成オリゴマーの分布が形成される。一般には、未反応トリグリセリドまたはメタセシス反応において反応しているがオリゴマーを形成していないトリグリセリドを含み得る、メタセシス反応生成単量体も存在する。セルフメタセシス反応によって、直鎖状または環状であり得る内部オレフィン化合物も形成される。図1Cは、セルフメタセシス反応中に形成され得る、特定の直鎖状および環状内部オレフィン38、42、46の代表的な例を示す。ポリオールエステルメタセシス反応生成物が水素化エステルである場合、直鎖状および環状オレフィン類は一般に、相当する飽和の直鎖状および環状炭化水素に変換されるであろう。直鎖状/環状オレフィン類および飽和の直鎖状/環状炭化水素類は、ポリオールエステルのメタセシス反応生成物中に残るか、または公知のストリッピング技術を用いてポリオールエステルのメタセシス反応生成物から除去または一部除去される。図1は、メタセシス反応スキームの単に例示的な実施形態およびそれから得られる組成物を提供することを理解されたい。
【0032】
単量体、二量体、三量体、四量体、五量体、および六量体以上のオリゴマーの相対量は、例えば、液体クロマトグラフィー、特にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による、ポリオールエステルメタセシス反応生成物の化学分析によって決定される。例えば、単量体、二量体、三量体、四量体、および五量体以上のオリゴマーの相対量は、例えば「面積%」または重量%によってキャラクタライズされる。すなわち、GPCクロマトグラフの面積%は、重量%と相関付けられる。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、四量体および/または他の五量体以上のオリゴマーを少なくとも約30面積%または重量%、あるいは四量体および/または他の五量体以上のオリゴマーを少なくとも約40面積%または重量%で含む。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、四量体および/または他の五量体以上のオリゴマーを約60面積%または重量%以下で、または四量体および/または他の五量体以上のオリゴマーを約50面積%または重量%以下で含む。他の実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、四量体および/または他の五量体以上のオリゴマーを約1面積%または重量%で以下含む。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、二量体を少なくとも約5面積%または重量%、または二量体を少なくとも約15面積%または重量%で含む。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、二量体を約25面積%または重量%以下で含む。これらの実施形態のうちの一部では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、二量体を約20面積%または重量%以下、または二量体を約10面積%または重量%以下で含む。一部の実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、三量体を少なくとも1面積%または重量%で含む。これらの実施形態のうちの一部では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、三量体を少なくとも約10面積%または重量%で含む。一部の実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、三量体を約20面積%または重量%以下、または三量体を約10面積%または重量%で以下含む。これらの実施形態のうちの一部にしたがって、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、三量体を1面積%または重量%以下で含む。
【0033】
一部の実施形態において、不飽和ポリオールエステルは、メタセシス反応前に部分水素化されている。例えば、一部の実施形態では、ダイズ油は、部分水素化ダイズ油をメタセシス反応に供する前に、ヨウ素価(IV)約120以下を得られるように部分水素化される。
【0034】
一部の実施形態において、水素化ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、ヨウ素価(IV)約100以下、例えば、約90以下、約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約20以下、約10以下または約5以下を有する。
【0035】
不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を製造する方法:
不飽和ポリオールエステル類のセルフメタセシスは一般に、触媒有効量のメタセシス触媒の存在下で行われる。「メタセシス触媒」という用語は、メタセシス反応を触媒する任意の触媒または触媒系を包含する。公知の触媒または将来開発されるすべての触媒が単独で、または1種または複数種の更なる触媒と組み合わせて、使用できる。例示的なメタセシス触媒としては、例えば、ルテニウム、モリブデン、オスミウム、クロム、レニウム、およびタングステンのような遷移金属に基づくカルベン金属触媒が挙げられる。図2を参照して、例示的なルテニウムベースのメタセシス触媒としては、構造12(グラブス触媒として一般に知られる)、14および16によって表される触媒が挙げられる。図3を参照して、構造18、20、22、24、26、および28は、その他のルテニウムベースのメタセシス触媒を表す。図4を参照して、構造60、62、64、66、および68は、その他のルテニウムベースのメタセシス触媒を表す。図5を参照して、触媒C627、C682、C697、C712、およびC827は、さらに他のルテニウムベースの触媒を表す。図6を参照して、一般構造50および52は、(非特許文献1)に報告されている種類のその他のルテニウムベースのメタセシス触媒を表す。図2〜6の構造において、Phはフェニルであり、Mesはメシチルであり、pyはピリジンであり、Cpはシクロペンチルであり、Cyはシクロヘキシルである。メタセシス触媒を使用する技術は当該技術分野で公知である(例えば、(特許文献1);(特許文献2);(特許文献3);(特許文献4);(特許文献5);(特許文献6);(特許文献7);および(特許文献8)におけるリガンドを有するメタセシス触媒を参照)。例えば、図2〜5に示すメタセシス触媒は、マテリア社(Materia,Inc.)(カリフォルニア州パサデナ(Pasadena,CA))によって製造されている。
【0036】
その他の例示的なメタセシス触媒としては、限定されないが、モリブデン、オスミウム、クロム、レニウム、およびタングステンからなる群から選択されるカルベン金属錯体が挙げられる。「錯体」という用語は、金属原子と、該金属原子が配位または結合する少なくとも1つのリガンドまたは錯化剤とを言う。該リガンドは一般に、アルキン−またはアルケン−メタセシス反応に有用なカルベン金属錯体においてはルイス塩基である。かかるリガンドの一般的な例としては、ホスフィン類、ハロゲン化物類、および安定化されたカルベン類が挙げられる。一部のメタセシス触媒では、複数種の金属または金属共触媒が使用される(例えば、ハロゲン化タングステン、テトラアルキルスズ化合物、および有機アルミニウム化合物を含む触媒)。
【0037】
メタセシス反応プロセスに固定化触媒を使用することができる。固定化触媒は、触媒および担体を含む系であり、その触媒は担体と会合する。触媒と担体との例示的な会合は、化学結合または弱い相互作用(例えば、水素結合、ドナー・アクセプター相互作用)によって触媒またはその一部と担体またはその一部との間で起こり得る。担体は、触媒を担持するのに適した任意の材料を包含することが意図される。一般に、固定化触媒は、液相または気相反応物および生成物に作用する固相触媒である。例示的な担体は、ポリマー、シリカまたはアルミナである。かかる固定化触媒は、流動プロセスで使用することができる。固定化触媒は、生成物の精製および触媒の回収を簡易化することができ、その結果、触媒の再循環がより簡便となる。
【0038】
メタセシス反応プロセスは、所望のメタセシス反応生成物を生成するのに適した任意の条件下で行われる。例えば、所望の生成物を生成し、かつ望ましくない副生成物を最小限に抑えるように化学量論、雰囲気、溶媒、温度および圧力が選択される。メタセシス反応プロセスは、不活性雰囲気下で行われ得る。同様に、試薬を気体として供給する場合、不活性気体希釈剤が使用できる。不活性雰囲気または不活性気体希釈剤は一般に、不活性ガスであり、その気体はメタセシス触媒と相互作用せず、触媒作用を実質的に妨げないことを意味する。例えば、特定の不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
同様に、溶媒を使用する場合には、選択される溶媒は、メタセシス触媒に対して実質的に不活性であるように選択される。例えば、実質的に不活性な溶媒としては、限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族溶媒;およびジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の塩素化アルカン類が挙げられる。
【0040】
特定の実施形態において、メタセシス反応混合物にリガンドが添加される。リガンドを使用する多くの実施形態では、リガンドは、触媒を安定化し、したがって触媒のターンオーバー数を増加させる分子であるように選択される。場合によっては、リガンドによって、反応選択性および生成物分布が変化する。使用することができるリガンドの例としては、限定されないが、例えば、トリシクロヘキシルホスフィンおよびトリブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン類;トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類;ジフェニルシクロヘキシルホスフィンなどのジアリールアルキルホスフィン類;2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンなどのピリジン類;などのルイス塩基リガンドならびに、ホスフィンオキシド類およびホスフィニット類などの他のルイス塩基リガンドが挙げられる。触媒の寿命を延ばす添加剤もまた、メタセシス反応時に存在することができる。
【0041】
任意の有効な量の選択されたメタセシス触媒がプロセスで使用できる。例えば、不飽和ポリオールエステルと触媒のモル比は、約5:1〜約10,000,000:1または約50:1〜500,000:1の範囲であることができる。一部の実施形態では、出発組成物の二重結合1つ当たり(すなわち、1モルに対して/モル基準で)約1〜約10ppm、または約2ppm〜約5ppmの量のメタセシス触媒が使用される。
【0042】
メタセシス反応温度は反応速度を変える変数であり、その温度は、許容可能な速度で所望の生成物が得られるように選択される。メタセシス反応温度は、−40℃を超えることができ、約−20℃を超えることができ、一般には約0℃を超え、または約20℃を超える。一般に、メタセシス反応温度は、約150℃未満、一般に約120℃未満である。メタセシス反応の例示的な温度範囲は、約20℃〜約120℃の範囲である。
【0043】
メタセシス反応は、任意の望ましい圧力下で行うことができる。一般に、溶解状態でクロスメタセシス試薬を維持するのに十分に高い全圧を維持するのが望ましいであろう。したがって、クロスメタセシス試薬の分子量が増加するにしたがって、クロスメタセシス試薬の沸点が高くなることから、圧力範囲の下限が一般に低下する。全圧は、約10kPaを超えるように、一部の実施形態では、約30kPを超えるように、または約100kPaを超えるように選択される。一般に、反応圧力は、約7000kPa以下であり、一部の実施形態では、約3000kPa以下である。メタセシス反応の例示的な圧力範囲は、約100kPa〜約3000kPaである。
【0044】
一部の実施形態において、メタセシス反応は、遷移金属成分および非遷移金属成分の両方を含有する系によって触媒される。最も活性かつ最大数の触媒系は、第VIA族遷移金属、例えば、タングステンおよびモリブデンから誘導される。
【0045】
水素化:
一部の実施形態において、不飽和ポリオールエステルは、メタセシス反応に供する前に部分水素化される。不飽和ポリオールエステルの部分水素化によって、その後のメタセシス反応において利用可能な二重結合の数が減少する。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルをメタセシス反応させ、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を形成し、次いで、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を水素化して(例えば、部分または完全水素化して)、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が形成される。
【0046】
水素化は、植物油などの二重結合含有化合物を水素化する公知の方法にしたがって行われる。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルまたは不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、活性状態まで水素で化学的に還元されたニッケル触媒の存在下で水素化される。担持ニッケル水素化触媒の市販の例としては、商品名「NYSOFACT」、「NYSOSEL」、および「NI5248D」(ニューハンプシャー州アイセリンのエンゲルハード社(Englehard Corporation,Iselin,NH))が挙げられる。その他の担持ニッケル水素化触媒としては、商品名「PRICAT 9910」、「PRICAT 9920」、「PRICAT 9908」、「PRICAT 9936」(マサチューセッツ州ウォードヒルのジョンソン・マッセイ社触媒部門(Johnson Matthey Catalysts,Ward Hill,MA))で市販されている触媒が挙げられる。
【0047】
一部の実施形態において、水素化触媒は、例えば、ニッケル、銅、パラジウム、白金、モリブデン、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウムまたはイリジウムを含む。金属の組み合わせも使用することができる。有用な触媒は、不均一系または均一系触媒である。一部の実施形態では、触媒は、担持ニッケルまたはスポンジニッケル系触媒である。
【0048】
一部の実施形態において、水素化触媒は、担体上に提供された、活性状態まで水素で化学的に還元されたニッケル(すなわち、還元ニッケル)を含む。一部の実施形態では、担体は、多孔性シリカ(例えば、多孔質珪藻土、滴虫土、珪藻土、または珪質土)またはアルミナを含む。触媒は、ニッケル1g当たりの高ニッケル表面積を特徴とする。
【0049】
一部の実施形態において、担持ニッケル触媒の粒子は、硬化トリアシルグリセリド、食用油または獣脂を含む保護媒質中に分散される。例示的な実施形態において、担持ニッケル触媒は、ニッケル約22重量%のレベルで保護媒質中に分散される。
【0050】
一部の実施形態において、担持ニッケル触媒は、(特許文献9)(タイラー(Taylor)ら)に報告されている種類の触媒である。これらの触媒は、安定化された高ニッケル表面積45〜60平方メートル/gおよび総表面積225〜300平方メートル/gを有する、固体ニッケル・シリカを含む。活性化触媒がニッケル25〜50重量%を含有し、シリカ総含有率30〜90重量%を有するような割合で、多孔性シリカ粒子上へのニッケルヒドロシリケートなどのように、溶液からニッケルイオンおよびケイ酸イオンを沈殿させることによって、触媒が製造される。粒子は、空気中で600°F〜900°Fでか焼し、次いで水素で還元することによって活性化される。
【0051】
高ニッケル含有率を有する有用な触媒は、(特許文献10)に記載されており、その触媒は、ニッケル化合物の沈殿によって生成される。可溶性アルミニウム化合物を沈殿ニッケル化合物のスラリーに添加し、沈殿物を熟成させる。得られた触媒前駆物質を還元した後、還元された触媒は一般に、全ニッケル1g当たり、ニッケル表面積約90〜150平方メートルを有する。その触媒は、範囲2〜10のニッケル/アルミニウム原子比を有し、かつ約66重量%を超えるニッケル総含有率を有する。
【0052】
有用な高活性ニッケル/アルミナ/シリカ触媒が、(特許文献11)に記載されている。還元された触媒は、触媒における全ニッケル1g当たりで、高ニッケル表面積を有する。
【0053】
有用なニッケル/シリカ水素化触媒が、(特許文献12)に記載されている。この触媒は、ニッケルアミン炭酸塩水溶液中の粒状シリカ(例えば、多孔質珪藻土)のスラリーを合計少なくとも200分間、7.5を超えるpHで加熱し、続いて濾過し、洗浄し、乾燥し、任意にか焼することによって生成される。ニッケル/シリカ水素化触媒は、向上した濾過特性を有すると報告されている。(特許文献13)には、ニッケル総含有率5〜40重量%を有する高表面積のニッケル/アルミナ水素化触媒が報告されている。
【0054】
担持ニッケル水素化触媒の市販の例としては、商品名「NYSOFACT」、「NYSOSEL」、および「NI5248D」(ニューハンプシャー州アイセリンのエンゲルハード社(Englehard Corporation,Iselin,NH))で入手可能な触媒が挙げられる。その他の担持ニッケル水素化触媒としては、商品名「PRICAT 9910」、「PRICAT 9920」、「PRICAT 9908」、「PRICAT 9936」(マサチューセッツ州ウォードヒルのジョンソン・マッセイ社触媒部門(Johnson Matthey Catalysts,Ward Hill,MA))で市販されている触媒が挙げられる。
【0055】
水素化は、バッチプロセスまたは連続プロセスで行うことができ、部分水素化または完全水素化であることができる。代表的なバッチプロセスにおいて、攪拌反応容器のヘッドスペースから真空を引いて、水素化される材料(例えば、RBDダイズ油またはRBDダイズ油メタセシス反応生成物)を反応容器に装入する。次いで、材料を所望の温度に加熱する。一般に、温度は、約50℃〜350℃、例えば、約100℃〜300℃または約150℃〜250℃の範囲である。望ましい温度は、例えば水素ガス圧力によって異なる。一般に、ガス圧力が高くなると、温度を下げる必要がある。別の容器内で、水素化触媒を混合容器に計り入れ、少量の水素化される材料(例えば、RBDダイズ油またはRBDダイズ油メタセシス反応生成物)中でスラリー化する。水素化される材料が所望の温度に達した際に、水素化触媒のスラリーを反応容器に添加する。Hガスが所望の圧力に達するように、水素ガスを反応容器内に注入する。一般に、Hガス圧力は、約15〜3000psig、例えば、約15psig〜90psigの範囲である。ガスの圧力が増加するにしたがって、より特殊な高圧処理装置が必要となる。これらの条件下にて、水素化反応を開始し、温度を所望の水素化温度(例えば、約120℃〜200℃)に上昇させ、例えば冷却コイルで反応物を冷却することによって温度を維持する。所望の水素化度に達した際に、反応物を所望の濾過温度に冷却する。
【0056】
水素化触媒の量は一般に、例えば、使用する水素化触媒の種類、使用する水素化触媒の量、水素化される材料における不飽和度、所望の水素化速度、所望の水素化度(例えば、ヨウ素価(IV)により測定される)、試薬の純度、およびHガス圧力などの多くの因子を考慮して選択される。一部の実施形態において、水素化触媒は、約10重量%以下、例えば約5重量%以下または約1重量%以下の量で使用される。
【0057】
水素化後、水素化触媒は、公知の技術を用いて、例えば濾過によって水素化生成物から除去することができる。一部の実施形態では、水素化触媒は、テキサス州コンローのスパークラーフィルター社(Sparkler Filters,Inc.,Conroe TX)から市販のフィルターなどのプレート・フレームフィルター(plate and frame filter)を使用して除去される。一部の実施形態では、濾過は、圧力または真空を用いて行われる。濾過性能を向上させるために、濾過助剤を使用してもよい。濾過助剤をメタセシス反応生成物に直接添加してもよく、あるいはフィルターに適用してもよい。濾過助剤の代表的な例としては、珪藻土、シリカ、アルミナ、および炭素が挙げられる。一般に、濾過助剤は、約10重量%以下、例えば約5重量%以下または約1重量%以下の量で使用される。使用された水素化触媒を除去するために、他の濾過技術および濾過助剤も使用することができる。他の実施形態において、水素化触媒は、遠心分離を用い、続いて生成物をデカントすることによって除去される。
【0058】
ペトロラタム類似組成物:
本発明のペトロラタム類似組成物は、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含む。一部の実施形態では、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、水素化されている。水素化は、部分水素化または完全水素化であることができる。所望の特性を達成するために、水素化度を制御することができる。例えば、水素化度が増加するにしたがって、組成物の融点が上昇し、その結果、室温でより固体状である(すなわち、より硬い)組成物が得られる。
【0059】
一部の実施形態において、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物はそれ自体でペトロラタムに類似する特性を有する。一部の実施形態では、ペトロラタム類似組成物は、(a)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物と(b)ポリオールエステルとの混合物を含む。多くの実施形態において、不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、水素化(例えば、部分水素化または完全水素化)されている。一般に、これらの実施形態において、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、室温で固体または高粘度半固体(例えば、ワックス)であり、ポリオールエステルは、室温で液体である。互いに混合した場合に、2つの材料は、ペトロラタム類似特性を有する組成物を形成する。
【0060】
水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物およびポリオールエステルを所望の量で混合し、所望のペトロラタム類似特性を有する本発明のペトロラタム類似組成物を形成することができる。一般に、組成物における水素化ポリオールエステルメタセシス反応生成物の量が増加するにしたがって、得られるペトロラタム類似組成物の粘度は増加する。一部の実施形態では、水素化ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、約75重量%の量で、例えば約50重量%まで、約40重量%まで、約35重量%まで、約30重量%まで、または約25重量%までの量で存在する。例示的な実施形態において、水素化ポリオールエステルメタセシス反応生成物は、約5重量%〜約50重量%または約5重量%〜25重量%の量で存在する。
【0061】
ペトロラタム類似組成物において使用されるポリオールエステル類の代表的な例としては、天然油、例えば、植物油、藻油、動物油脂、またはそれらの混合物が挙げられる。植物油の代表的な例としては、カノーラ油、ナタネ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ラッカセイ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、キリ油、ヒマシ油等、およびそれらの混合物が挙げられる。動物油脂の例としては、ラード、獣脂、鶏脂(イエローグリース)、魚油、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい天然油は、室温で液体であり、かつ時間が経過しても安定である。例示的な実施形態において、天然油は、精製、脱色、および脱臭ダイズ油(すなわち、RBDダイズ油)である。適切なRBDダイズ油は、カーギル社(Cargill,Incorporated.)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN))から入手することができる。
【0062】
一部の実施形態において、油の安定性を高めるため、またはその粘度または他の特性を改良するために、天然油を水素化(例えば、完全または部分水素化)することができる。天然油を水素化する代表的な技術は、当該技術分野で公知であり、かつ本明細書に記載されている。例えば、特定の植物油の水素化が、(非特許文献2)に報告されている。一部の実施形態では、天然油は、ヨウ素価(IV)約100以上、例えば、約100〜約110を達成するように軽度に水素化されたRBDダイズ油である。適切な軽度水素化RBDダイズ油は、カーギル社(Cargill,Incorporated.)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN))から市販されている。
【0063】
一部の実施形態において、天然油は脱ろうされる。脱ろうとは、(1)ワックスおよび他の非トリグリセリド成分を除去し、(2)天然の高融点トリグリセリドを除去し、(3)部分水素化中に形成された高融点トリグリセリドを除去する、プロセスを意味する。油から除去される、さらに高融点の成分を結晶化させるために、例えば制御速度で油を冷却するなど、公知の方法によって脱ろうを行うことができる。次いで、結晶化された高融点成分は、濾過によって油から除去され、脱ろう油が得られる。脱ろうダイズ油は、カーギル社(Cargill,Incorporated.)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN))から市販されている。
【0064】
一部の実施形態において、ポリオールエステルは、2種類以上の天然油の混合物を含み得る。例えば、一部の実施形態では、ポリオールエステルは、完全水素化ダイズ油と部分水素化または非水素化ダイズ油との混合物を含み得る。他の実施形態において、ポリオールエステルは、部分水素化ダイズ油と非水素化ダイズ油との混合物を含み得る。さらに他の実施形態では、ポリオールエステルは、2種類以上の異なる天然油の混合物、例えばダイズ油とヒマシ油との混合物を含み得る。例示的な実施形態において、ペトロラタム類似組成物は、(i)水素化植物油メタセシス反応生成物と(ii)植物油との混合物を含む。例えば、一部の実施形態では、ペトロラタム類似組成物は、(i)水素化ダイズ油メタセシス反応生成物(HMSBO)と(ii)ダイズ油との混合物を含む。一部の実施形態では、例えば、ヨウ素価(IV)約80〜120を有するダイズ油は、部分水素化される。
【0065】
一部の実施形態において、本発明のペトロラタム類似組成物は、約5〜約100の範囲、さらに一般的には約20〜約100の範囲のヨウ素価(IV)を有する。一部の実施形態では、ヨウ素価は、約70〜約90の範囲である。
【0066】
一部の実施形態において、ペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な77°F(25℃)でのコーン貫入(ASTM D−937)を有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、77°F(25℃)でのコーン貫入約100dmm〜約300dmを有し得る。例示的な実施形態において、組成物は、77°F(25℃)でのコーン貫入約150dmm〜約160dmmを有する。
【0067】
一部の実施形態において、ペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な凝固点(ASTM D−938)を有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、凝固点約100°F〜約140°F(37.8℃〜60℃)を有し得る。例示的な実施形態において、組成物は、凝固点約105°F〜約135°F(40.6℃〜57.2℃)を有する。
【0068】
一部の実施形態において、ペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な滴下融点(ASTM D−127)を有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、滴下融点約100°F〜約150°F(37.8℃〜65.6℃)を有し得る。
【0069】
一部の実施形態において、ペトロラタム類似組成物は、石油由来ペトロラタムと同様な210°Fでの粘度(ASTM D−445およびD−2161)を有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、動粘度約100SUS以下、さらに一般的には約40SUS〜約90SUS、または約55〜約80SUSを有する。
【0070】
ペトロラタム類似組成物の製造方法:
(i)水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物と、(ii)ポリオールエステルとの混合物を含むペトロラタム類似組成物は、例えば、以下の一般的なプロセスによって調製することができる。最初に、ポリオールエステル(例えば、ダイズ油)を温度約100°F〜150°F(37.8℃〜65.6℃)に加熱する。次に、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物(例えば、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物)をポリオールエステルに添加し、2つの材料を互いに混合して、均一な組成物を形成する。安定剤などの任意の成分が一部の実施形態では添加される。完全に混合した後、得られた混合物を冷却すると、混合物はペトロラタム類似組成物を形成する。
【0071】
安定剤:
一部の実施形態において、ペトロラタム類似組成物はさらに、1種または複数種の安定剤を含有する。代表的な安定剤としては、酸化防止剤(例えば、トコフェロールまたはBHT)または乳化剤が挙げられる。一般に、安定剤は、約2重量%未満の量で添加されるが、他の量も有用である。
【0072】
ペトロラタム類似組成物の代表的な用途:
本発明のペトロラタム類似組成物は、例えば、石油由来ペトロラタム組成物が従来から使用されている用途など、多種多様な用途に適している。一般的な用途の代表的な例としては、パーソナルケア製品(例えば、化粧品、リップクリーム、口紅、香料、ハンドクリーナー、整髪料、軟膏、紫外線ケア製品、モイスチャーライザー、薬剤軟膏);プラスチック類(例えば、PVC用の加工助剤);食品(例えば、チーズコーティング、ベーキング用グリース);電気通信(例えば、ケーブル充填またはフラッディングコンパウンド(flooding compound));工業用途(例えば、粉塵抑制剤、錆び止めコーティング、接着剤、便器のリング、ボーンガード、および織物被覆)が挙げられる。
【0073】
ペトロラタム類似組成物を含むエマルジョン
一部の実施形態において、本発明は、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物類を含むエマルジョンを提供する。本明細書で使用される、「エマルジョン」という用語は、2種類以上の非混和性液体の安定な分散液を意味する。エマルジョンにおいて、第1液体(「分散相」)は、乳化剤で第2液体(「連続相」)中に分散され、懸濁状態で維持される。本発明のエマルジョンは、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンであることができる。水中油型エマルジョンは、有機材料(油状またはワックス状材料)を含有する分散相と、水を含有する連続相とを有する。油中水型エマルジョンは、水を含有する分散相と、有機材料(油状またはワックス状材料)を含有する連続相とを有する。
【0074】
一部の実施形態において、本発明の水中油型エマルジョンは、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含有する分散相を含む。他の実施形態では、水中油型エマルジョンは、(i)水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物;(ii)ポリオールエステルを含む混合物を含有する分散相を含む。多くの実施形態において、分散相は、ペトロラタム類似特性を有する材料を含む。他の実施形態では、分散相はワックスを含む。
【0075】
一部の実施形態において、本発明の水中油型エマルジョンは、分散相を約60重量%以下、連続相を約40重量%以上含む。他の実施形態において、本発明の水中油型エマルジョンは、分散相約1重量%〜約60重量%、連続相約40重量%〜約99重量%を含む。例示的な実施形態において、エマルジョンは、分散相約1重量%〜約30重量%、連続相約70重量%〜約99重量%を含む。
【0076】
一部の実施形態において、エマルジョンの分散相は、粒径約1μm以下を有する。粒径が小さいと、エマルジョンを含有する配合物中に存在する他の成分との完全な、均一な混和が促進される。
【0077】
適切な乳化剤および界面活性剤としては、非イオン性乳化剤、イオン性乳化剤(例えば、陰イオンまたは陽イオン乳化剤)、および両性乳化剤が挙げられる。非イオン性乳化剤は、立体化学的メカニズムによって安定化するのに対して、イオン性乳化剤は、静電気的メカニズムによって安定化する。一部の実施形態では、2種類以上の乳化剤の組み合わせが使用される。例えば、一部の実施形態では、陰イオン乳化剤と非イオン性乳化剤を合わせて、エマルジョンに向上した安定性が提供される。
【0078】
非イオン界面活性剤の例としては、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル類;モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタンエステル類;モノイソステアリン酸グリセロール、モノミスチリン酸グリセロールなどのグリセロールエーテル類;モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセロール、モノミスチリン酸ポリオキシエチレングリセロールなどのポリオキシエチレングリセロールエーテル類;モノステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル類;モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミスチリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノジリノール酸グリセリル、モノジカプリン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル類;モノミスチリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンオクチルドデシルアルコール、ポリオキシエチレン−2−デシルテトラデシルアルコールなどのポリオキシエチレン分岐状アルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンジヒドロコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油イソステアレートなどのポリオキシエチレン水素化ヒマシ油脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類が挙げられる。非イオン性乳化剤の代表的な例としては、セタリルアルコールと混合されたエトキシ化セタリルアルコール(例えば、オハイオ州クリーブランドのノベオン社(Noveon、Cleveland OH)から市販の「PROMULGEN D」およびステアリン酸グリセリル(例えば、オランダのユニケマ・ケミー社(Unichema Chemi BV,Netherlands)から市販の「アルラセル(ARLACEL)165」)が挙げられる。アニオン界面活性剤の例としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸の塩、例えば、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩、エーテルカルボン酸アルカリ塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルサルコシン酸塩、高級アルキルスルホン酸塩が挙げられる。
【0079】
陽イオンまたは両性界面活性剤の例としては、アルキル第4級アンモニウム塩、ポリアミンおよびアルキルアミン塩が挙げられる。コロイド乳化剤の例としては、クレイ/リグノスルホン酸塩およびクレイ/ナフタレンスルホン酸塩が挙げられる。
【0080】
一部の実施形態において、エマルジョンは、約6〜7の範囲、さらに一般的には約6.0〜6.5の範囲のpHを有する。一般には、エマルジョンのpHは、エマルジョンが添加される材料の約1pH単位以内になるように調節される。エマルジョンのpHは、例えばアンモニア水溶液(すなわち、pHを上昇させるため)または酢酸(pHを低下させるため)を添加することによって調節することができる。
【0081】
一部の実施形態において、本発明の油中水型エマルジョンは、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含有する連続相を含む。例えば、連続相は、(i)水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物と(ii)ポリオールエステルとの混合物を含み得る。連続相は、ペトロラタム類似特性を有するか、またはワックスであることができる。
【0082】
多くの実施形態において、油中水型エマルジョンは、連続(すなわち、油)相約30重量%〜約70重量%;分散(すなわち、水)相約20重量%〜約68重量%;乳化剤約2重量%〜約10重量%を含む。油中水型エマルジョンに使用される乳化剤の代表的な例としては、非イオン性PEGエステルと組み合わされた多価セッケン乳化剤、シリコーンベースの乳化剤、および非イオン性乳化剤が挙げられる。
【0083】
エマルジョンの製造方法:
本発明のエマルジョンは、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンを製造するための、当該技術分野で公知の方法にしたがって製造することができる。水中油型エマルジョンについては、水および乳化剤を均一になるまで混合する。次いで、その混合物を例えば、約80℃に加熱し、溶融ワックス(例えば、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物)を添加し、ワックスの均一な分散液が形成されるまで、水/乳化剤相に混合する。多くの実施形態において、ホモジナイザーまたは高せん断ミキサーを使用して、エマルジョンが安定となるサイズ(例えば、約0.1〜1.5ミクロン)に粒径を低減する。次いで、エマルジョンを衝撃冷却し、所望の粒径に粒子を設定する。
【0084】
油中水型エマルジョンは一般に、2段階プロセスによって調製される。水相および油相が別々に加熱される(例えば、約70℃〜75℃(配合物中の最高融点成分の融点の5〜10℃付近))。次いで、水相および油相を互いに混合する。混合物が均一になったら、混合物を約40℃〜45℃にゆっくりと冷却し、他の成分(例えば、芳香剤等)を添加する。
【0085】
エマルジョンの用途:
本発明のエマルジョンは、限定されないが、石油由来ペトロラタムまたはパラフィンワックスが従来から使用されてきた用途など、多種多様な用途において適している。本発明のエマルジョンの代表的な用途としては、建築材料(例えば、配向性ストランドボード(OSB)または中密度ファイバーボード用のコーティング、木材コーティング);金属コーティング(例えば、缶のスリップコーティング、コイルコーティング);インク(例えば、水性インクにおける耐摩擦性または耐擦り傷性を改善するための添加剤);ガラス繊維(例えば、粘着防止剤または潤滑剤);成形ラテックス物品(例えば、手袋またはコンドーム用の離型剤);織物(例えば、のり剤または糸の潤滑剤);床仕上げ塗装(例えば、耐摩擦性を付与する添加剤);可撓性フィルム(例えば、加工助剤);コーティング(例えば、デッキステインまたはウッドワニスに撥水性を付与するため);艶出し剤(例えば、硬質面、床または自動車の艶出し剤);および果物/野菜のコーティング(例えば、保湿バリアコーティングとして);化粧品およびパーソナルケア製品(例えば、モイスチャーライザーまたは保湿バリアコーティングとしてのフェース、ハンドおよびボディーローション/クリーム、リップケア製品、ヘアケア製品)が挙げられる。油中水型エマルジョンは、例えば、耐水性日焼け止め剤およびナイトクリームに使用するのに適している。
【0086】
本発明のエマルジョンは、簡単な混合によって配合物に組み込むことができる。微粒径であれば、他の配合成分と完全かつ均一に混和される。
【0087】
ここで、以下の非限定的な例を参照して、本発明が説明される。
【実施例】
【0088】
実施例1
実施例1A 大規模バッチ式メタセシス反応
50ガロンのバッチ反応器において、推定速度10mL/分にてアルゴンまたは窒素でダイズ油(87Kg)を一晩(約16時間)脱気した。ダイズ油を脱気すると、最適な触媒効率が得られ、メタセシス触媒の分解が防止される。次いで、油を70℃に加熱した。ルテニウム触媒(C827、4.2g、50ppm)を添加した。アルゴン雰囲気下にて、メタセシス反応を2時間行った。攪拌速度は測定しなかったが、攪拌は、バッフル(baffle)からの少量のはね返しが生じるのに十分であった。相当するメチルエステルのGC分析から、転化率68%が示された。水素化前にメタセシス触媒は除去しなかった。
【0089】
メタセシス触媒の除去手順
テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライド(TKC)(1.03mol、サイテック社(Cytec))245gおよびイソプロピルアルコール(IPA)500mLを2L丸底フラスコに添加し、その混合物を窒素で20分間脱気し、激しく攪拌された溶液に窒素雰囲気下にて水酸化カリウム64g(1.03mol、純度90%、アルドリッチ社(Aldrich))をゆっくりと添加し、水酸化カリウムが添加された後に、反応をさらに30分間攪拌することによって調製されたTHMPを使用してメタセシス触媒を除去した。その反応は発熱反応であり、THMP、ホルムアルデヒド、塩化カリウム、および水が生成された。次いで、THMPを使用して、ルテニウム触媒1モルにつきTHMP25〜100モル当量を添加し、窒素下にて60〜70℃で18〜24時間激しく攪拌し、脱気水またはメタノール(約150mL/L(反応混合物))を添加し、10分間激しく攪拌し、相分離させるために混合物を遠心分離することによって、触媒を除去した。これによって一般に、<1ppmレベルまでルテニウムが除去される。油を加熱して、残存する水またはメタノールを除去しなければならない。水相は、少量のIPA、ホルムアルデヒド、および塩化カリウムを含有し、再循環させるためにはパージまたは浄化する必要があるであろう。
【0090】
第2の触媒除去技術は、メタセシス反応生成混合物をPure Flo 80漂白用クレイ5重量%すなわち、漂白用クレイ5g/メタセシス反応生成混合物100g)と70℃で4時間接触させ(、続いて、漂白用クレイおよび砂のプラグを通してメタセシス反応生成混合物を濾過することを要する。この技術では一般に、<1ppmレベルまでルテニウムが除去される。
【0091】
水素化の手順
次いで、窒素下で維持しながら、ダイズ油セルフメタセシス反応生成物を350°Fに加熱し、350°Fで一度にNi触媒0.4重量%を油に添加し、圧力35psiで保持温度約410°Fを有する水素の流れを開始することによって、メタセシス反応生成物が水素化される。目標と比較してIVがどうであるかを調べるために、反応を1時間の時点で確認する。2.5kgバッチでは、約30〜45分かかる。約2時間後(油が完全に水素化しているはずである)、窒素を容器に戻し、油を冷却する。次いで、水素化ダイズ油セルフメタセシス反応生成物を濾過し、余分な触媒を除去する。
【0092】
実施例2
実施例1に記載のように、3つのメタセシス反応生成物試料(A、C、およびE)を様々な程度でメタセシス反応に供した。これらの3つのメタセシス反応生成物を実施例1に記載のように水素化し、メタセシス反応生成物の水素化物(B、D、およびF)を形成した。
【0093】
未精製ダイズ油(100g)および触媒C627 100ppmを使用して、試料Aを調製した。反応を室温で20時間行い、次いで40℃に5時間温め、転化メチルエステルのGC分析による転化率62%を得た。水素化前に、THMPおよび水でメタセシス触媒を除去した。
【0094】
未精製ダイズ油(58g)および触媒C627 50ppmを使用して、試料Cを調製した。反応を室温で22時間行い、転化率14%を得た。水素化前に、メタセシス触媒を除去しなかった。
【0095】
未精製ダイズ油(68g)および触媒C715 50ppmを使用して、試料Eを調製した。触媒C715は、それが臭素リガンドを有し、C627が塩素リガンドを有することを除いては、触媒C627と同じであった。セルフメタセシス反応を室温で22時間行い、転化率27%を得た。水素化前に、THMPおよび水でメタセシス触媒を除去した。
【0096】
ポリマー分析から、メタセシス反応生成試料およびそれに相当する水素化試料(括弧内)のそれぞれ、A(B)、C(D)、およびE(F)が様々な終点まで反応したことが示された。表1から分かるように、試料Cは最も低く反応し(すなわち、大部分のトリグリセリドが残った)、試料Aは最も反応した(すなわち、最低のトリグリセリド濃度および最高のオリゴマー濃度)。HPSEC分析によって、試料Bは未反応トリグリセリド21.2%を有し、試料Dは未反応トリグリセリド93.3%を有し、試料Fは未反応トリグリセリド80.8%を有することが示された。試料A、C、およびEは、それに相当する水素化試料と同様なHPSECクロマトグラムを有した。
【表1】

【0097】
表2は、6つの試料の脂肪酸組成を示す。油の含有率は、内部標準を使用して、脂肪酸メチルエステル(FAME)をそのトリアシルグリセロール相当物に変換することによって決定され、その値は重量%に基づく。FAMEを脂肪酸(FA)相当物に変換することによって、個々のすべての脂肪酸を決定し、その値は重量に基づく。
【表2】

【0098】
実施例3:ペトロラタム組成物の調製:
実施例2のメタセシス反応生成物Bを90IVダイズ油と様々な比でブレンドすることによって、化粧品に使用するのに適しているペトロラタム類似組成物(例えば、石油由来ペトロラタムの代替物として)を調製した。表3は例示的な組成物を示す。
【表3】

【0099】
実施例4:
エマルジョン




【0100】
エマルジョン4−A〜4−Eを以下の一般手順にしたがって調製した。配合を以下に示す。
(1)A段階成分を互いに合わせ、混合しながら70℃に加熱した。
(2)それと別に、B段階成分を合わせ、混合しながら70℃に加熱した。ワックスが溶融し、B段階成分が均一になるまで、B段階成分を混合した。次いで、B段階成分をA段階成分に添加した。
(3)C段階成分を用いて、バッチのpHを6.0〜6.5に調整した。
(4)次いで、バッチを40℃に冷却し、D段階成分をバッチに添加した。
(5)得られたエマルジョンを混合しながら、室温に冷却した。

【0101】
実施例4−Aの特性:
pH=6.23
粘度=50,000cps(5RPMでのTCスピンドル)

【0102】
実施例4−Bの特性:
pH=6.01
粘度=46,000cps(5RPMでのTCスピンドル)

【0103】
実施例4−Cの特性:
pH=6.14
粘度=66,000cps(5RPMでのTCスピンドル)

【0104】
実施例4−Dの特性:
pH=5.93
粘度=58,000cps(5RPMでのTCスピンドル)

【0105】
実施例4−Eの特性:
pH=6.37
粘度=40,400cps(5RPMでのTBスピンドル)

【0106】
実施例4−Fの特性:
pH=6.34
粘度=36,000cps(5RPMでのTBスピンドル)
【0107】
【表4】

エマルジョンの安定性の試験
それぞれのサイクル中、試料を−5℃で24時間凍結し、続いて室温で24時間融解した。
オーブン温度は45℃であった。
安定性は28日目、35日目、44日目、および57日目に試験した。
【0108】
観察:
28日目−オーブンおよび室温におけるすべての試料が同じに見えた。試料の色または臭いは変化していなかった。
35日目−同じに見えたが、45℃にて3日後にゼラチン状となった実施例4−Eを除いて、オーブンおよび室温におけるすべての試料が非常に安定であると思われた。
44日目−オーブンおよび室温におけるすべての試料の色および臭いが安定であった。実施例4−Eは室温でゼラチン状となった。
【0109】
エマルジョン組成物4−A〜4−Fをハンドクリームとしての使用について評価した。その結果を表5に示す。
【表5】

【0110】
実施例5:
試験手順:
皮膚保護の回復における局所用配合物の有効性を評価した。そのプロトコルは、前腕の掌面上を試験部位とした。各試験材料を少なくとも25名の被検者で試験した。すべての被験者が未処置部位を有した。各試験部位は、幅5cm×長さ5cmであった。各部位にてTEWL測定値を取得した。次いで、TEWL測定値が少なくとも20mg/m/hになるまで、テープの剥ぎ取り(ブレンダーム(Blenderm)(商標)サージカルテープ(3M社(3M Company)から市販))によって部位にダメージを与えた。製品を塗布する直前に、ベースラインTEWL測定値を記録した。スキコン(Skicon)およびコルネオメータ(Corneometer)のベースライン測定値もこの時点で記録した。Dermalab Evaporimeter(デンマーク、コルテックス・テクノロジー社(Cortex Technology,Denmark))でTEWLを測定した。スキコン(Skicon)−200(日本、アイ・ビイ・エス株式会社(I.B.S.,Japan))およびMT8Cプローブ(オハイオ州シンシナティのメジャーメント・テクノロジーズ社(Measurement Technologies,Cincinnati,Ohio))を用いて電気伝導度測定によって、かつコルネオメータ(Corneometer)820(ドイツ(Germany)、Courage+Khazaka社)を用いてキャパシタンス測定によって、皮膚の水分量を測定した。試験材料を部位に適宜、塗布量2μl/cm(50μl)または2μg/cm(0.05g)で塗布した。被験者は、装置測定前に最低30分間順応させた。被験者は、温度湿度が調節された部屋に入れられた。TEWL測定値を塗布して30分後、1時間後、4時間後で記録した。スキコン(Skicon)およびコルネオメータ(Corneometer)の最終測定値は、塗布して4時間後に記録した。
【0111】
試験された配合物:
ペトロラタム類似組成物:
実施例5−1:植物蝋2重量%;HMSBO8重量%、およびSBO90重量%
実施例5−2:植物蝋6重量%、HMSBO26重量%、およびSBO71重量%
ペトロラタム:クロンプトン・ホワイト・フォノライン(Crompton White Fonoline)USPペトロラタム
ダイズ油:カーギル(Cargill)精製、脱色、および脱臭ダイズ油
鉱油:ミネラル・オイル(Mineral Oil)USP(重質油)
【0112】
コルネオメータ(CORNEOMTER)試験:
皮膚ダメージ後の処置の4時間後、実施例5−1によって、ベースラインからの皮膚水分量の著しい増加、未処置皮膚に対して向上した水分量が得られ、市販のペトロラタムと同様な結果が示された。実施例5−1での皮膚の感触はべたべたしていなかった。コルネオメータの結果を表6に示す。
【表6】

【0113】
スキコン(SKlCON)試験:
実施例5−1によって、ベースラインからの皮膚水分量の著しい増加、未処置皮膚に対して向上した水分量が得られ、ダイズ油よりも高い水分量が示された。スキコンの結果を表7に示す。
【表7】

【0114】
TEWL試験:
実施例5−2によって、ベースラインからの水分損失の著しい減少が得られ、未処置およびダイズ油よりも優れたTEWL特性が示され、かつTEWLの利点のために、鉱油の天然代替物となり得る。TEWLの結果を表8に示す。
【表8】

【0115】
実施例5−1および5−2によって、ベースラインからの有意な皮膚への水和性、未処置の皮膚に対して向上した水分レベルが得られており、皮膚保護が著しく向上した結果、保護の破壊を防ぐ配合物の利点が得られた。
【0116】
実施例6:
本発明の特定のペトロラタム類似組成物を使用して、口紅を配合した。口紅配合物を表9に示す。
【0117】
成分リスト:
62A:HMSBO(水素化ダイズ油セルフメタセシス反応生成物)
62D:300オイル中HMSBO20%(300オイルは、部分水素化され、冷却され、濾過されたダイズ油である)
62E:HMSBO33%/水素化ダイズ油67%
91A:MSBO(ダイズ油セルフメタセシス反応生成物)
【表9】

【0118】
上記の結果から、ダイズ油メタセシス反応生成物および水素化ダイズ油メタセシス反応生成物は、ラノリン、カルナウバろう、カンデリラろう、およびヒマシ油など、口紅の配合に使用されるいくつかの一般的な成分の代わりとなり得ることが実証されている。水素化ダイズ油単独で(ダイズワックス)、これを達成することはできない。
【0119】
本明細書に記載のすべての刊行物および特許は参照により本明細書に援用される。本明細書に開示される刊行物および特許は、単にその開示内容のために記載される。本明細書におけるいかなる記載も、本明細書に引用された刊行物および/または特許を含む、刊行物および/または特許に先行する権利を本発明者らが有さないことを認めたものと解すべきではない。
【0120】
本発明の他の実施形態は、本明細書を熟考すれば、または本明細書に開示される本発明の実施から、当業者には明らかであろう。添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載される原理および実施形態に、種々の省略、修正、および変更を当業者によって加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】例示的なメタセシス反応スキームである。
【図1A】例示的なメタセシス反応スキームである。
【図1B】例示的なメタセシス反応スキームである。
【図1C】図1〜1Bのメタセシス反応の副生成物であり得る、特定の内部および環状オレフィン類を示す。
【図2】例示的なルテニウムベースのメタセシス触媒を示す図である。
【図3】例示的なルテニウムベースのメタセシス触媒を示す図である。
【図4】例示的なルテニウムベースのメタセシス触媒を示す図である。
【図5】例示的なルテニウムベースのメタセシス触媒を示す図である。
【図6】例示的なルテニウムベースのメタセシス触媒を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含むペトロラタム類似組成物を含む組成物。
【請求項2】
前記不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、水素化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ペトロラタム類似組成物が、基本的に水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物から構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ペトロラタム類似組成物が、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ペトロラタム類似組成物が、ポリオールエステルをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオールエステルが、天然油を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記天然油が、液体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記天然油が、植物油、藻油、または動物油脂を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記天然油が、カノーラ油、ナタネ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ラッカセイ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、キリ油、ヒマシ油、およびそれらの混合物から選択される植物油を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記植物油が、ダイズ油を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記ダイズ油が、精製、脱色、および脱臭ダイズ油である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記精製、脱色、および脱臭ダイズ油の少なくとも一部が、部分水素化されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、水素化植物油メタセシス反応生成物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
前記水素化植物油メタセシス反応生成物が、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物、水素化カノーラ油メタセシス反応生成物、水素化ナタネ油メタセシス反応生成物、水素化ヤシ油メタセシス反応生成物、水素化トウモロコシ油メタセシス反応生成物、水素化綿実油メタセシス反応生成物、水素化オリーブ油メタセシス反応生成物、水素化パーム油メタセシス反応生成物、水素化ラッカセイ油メタセシス反応生成物、水素化サフラワー油メタセシス反応生成物、水素化ゴマ油メタセシス反応生成物、水素化ヒマワリ油メタセシス反応生成物、水素化アマニ油メタセシス反応生成物、水素化パーム核油メタセシス反応生成物、水素化キリ油メタセシス反応生成物、水素化ヒマシ油メタセシス反応生成物、またはそれらの混合物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記水素化植物油メタセシス反応生成物が、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、メタセシス反応生成単量体、メタセシス反応生成二量体、メタセシス反応生成三量体、メタセシス反応生成四量体、メタセシス反応生成五量体、および六量体以上のメタセシス反応生成オリゴマーのうちの1つまたは複数を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物約50重量%以下を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項18】
水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物約5重量%〜約25重量%を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項19】
水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物約5重量%〜約25重量%、ポリオールエステル約75重量%〜約95重量%を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項20】
前記水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、ヨウ素価約120以下を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、ヨウ素価約100以下を有する水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含み、かつ前記組成物が、ヨウ素価約80〜120を有するポリオールエステルを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項22】
凝固点約100°F〜約140°F(37.8℃〜60.0℃)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
77°F(25℃)でのコーン貫入約100dmm〜約300dmmを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
滴下融点約100°F〜約150°F(37.8℃〜65.6℃)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
210°F(98.9℃)での粘度約100SUS以下を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
約5〜約100の範囲のヨウ素価(IV)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
1種または複数種の内部オレフィン化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が水素化されており、かつ前記組成物が1種または複数種の飽和炭化水素化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含有するエマルジョンを含む組成物。
【請求項30】
水中油型エマルジョンである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
油中水型エマルジョンである、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
(a)不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含む分散相と、(b)水を含む連続相と、(c)乳化剤とを含む水中油型エマルジョンである、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記分散相が、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記分散相が、ポリオールエステルをさらに含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記ポリオールエステルが、天然油を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記天然油が、液体である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記天然油が、植物油または動物油脂を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記天然油が、カノーラ油、ナタネ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ラッカセイ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、キリ油、ヒマシ油、およびそれらの混合物から選択される植物油を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記植物油が、ダイズ油を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記ダイズ油が、精製、脱色、および脱臭ダイズ油を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記精製、脱色、および脱臭ダイズ油の少なくとも一部が、部分水素化されている、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、水素化植物油メタセシス反応生成物を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項43】
前記水素化植物油メタセシス反応生成物が、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物、水素化カノーラ油メタセシス反応生成物、水素化ナタネ油メタセシス反応生成物、水素化ヤシ油メタセシス反応生成物、水素化トウモロコシ油メタセシス反応生成物、水素化綿実油メタセシス反応生成物、水素化オリーブ油メタセシス反応生成物、水素化パーム油メタセシス反応生成物、水素化ラッカセイ油メタセシス反応生成物、水素化サフラワー油メタセシス反応生成物、水素化ゴマ油メタセシス反応生成物、水素化ヒマワリ油メタセシス反応生成物、アマニ油、パーム核油、キリ油、ヒマシ油、またはそれらの混合物を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記水素化植物油メタセシス反応生成物が、水素化ダイズ油メタセシス反応生成物を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、メタセシス反応生成二量体、メタセシス反応生成三量体、メタセシス反応生成四量体、メタセシス反応生成五量体および六量体以上のメタセシス反応生成オリゴマーのうちの1つまたは複数を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項46】
前記分散相が、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を約50重量%以下含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項47】
前記分散相が、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を約5重量%〜約25重量%含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項48】
前記分散相が、水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物を約5重量%〜約25重量%、ポリオールエステルを約75重量%〜約95重量%含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項49】
前記水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、ヨウ素価約100以下を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項50】
前記水素化不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が、ヨウ素価約100以下を有し、かつ前記ポリオールエステルが、ヨウ素価約80〜120を有する、請求項34に記載の組成物。
【請求項51】
前記エマルジョンが、約20,000cps〜80,000cpsの範囲の粘度を有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項52】
前記分散相が、凝固点約100°F〜約140°F(37.8℃〜60.0℃)を有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項53】
前記分散相が、77°F(25℃)でのコーン貫入約100dmm〜約300dmmを有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項54】
前記分散相が、滴下融点約100°F〜約150°F(37.8℃〜65.6℃)を有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項55】
前記分散相が、210°Fでの粘度約100SUS以下を有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項56】
前記分散相が、約5〜約100の範囲のヨウ素価(IV)を有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項57】
前記分散相が、前記組成物の約1重量%〜約60重量%を構成し、かつ前記連続相が、前記組成物の約40重量%〜約99重量%を構成する、請求項32に記載の組成物。
【請求項58】
前記乳化剤が、非イオン性乳化剤、陰イオン乳化剤、陽イオン乳化剤、両性乳化剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項59】
1種または複数種の内部オレフィン化合物を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項60】
前記不飽和ポリオールエステルメタセシス反応生成物が水素化されており、かつ前記組成物が1種または複数種の飽和炭化水素化合物を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項61】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、パーソナルケア製品。
【請求項62】
前記製品が、化粧品、リップクリーム、口紅、ハンドクリーナー、整髪料、軟膏、紫外線ケア製品、モイスチャーライザー、芳香スティック、香料担体、または薬剤軟膏である、請求項61に記載のパーソナルケア製品。
【請求項63】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、プラスチック。
【請求項64】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、食品コーティング。
【請求項65】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、ケーブル充填コンパウンドまたはフラッディングコンパウンド。
【請求項66】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、粉塵抑制剤。
【請求項67】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、錆び止めコーティング。
【請求項68】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、接着剤。
【請求項69】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、便器のリング。
【請求項70】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、ボーンガード。
【請求項71】
請求項1に記載のペトロラタム類似組成物を含む、織物被覆。
【請求項72】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、建築材料。
【請求項73】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、金属コーティング。
【請求項74】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、ダンボール板紙コーティング。
【請求項75】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、インク。
【請求項76】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、ガラス繊維。
【請求項77】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、成形ラテックス物品。
【請求項78】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、織物。
【請求項79】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、床仕上げ塗装剤。
【請求項80】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、可撓性フィルム。
【請求項81】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、コーティング。
【請求項82】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、果物または野菜コーティング。
【請求項83】
請求項29に記載のエマルジョンを含む、パーソナルケア製品。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−529092(P2009−529092A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558363(P2008−558363)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/005736
【国際公開番号】WO2007/103398
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508270613)エレバンス リニューアブル サイエンシーズ, インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】ELEVANCE RENEWABLE SCIENCES, INC.
【Fターム(参考)】